第零遺跡の「鍵の管理者」   作:奈々歌

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どうも、遅くなりました<(_ _)>

完全に書き方迷走中です(笑

アドバイス、意見があればお願いします………。


それではどうぞ!


『警戒』と『興味』と『好意』。

次の日。

 

午前の授業を終えると、ルクスはリーシャに誘われ食堂に来ていた。

 

ルクスは手に持っているトレイに昼食としてサンドイッチ、サラダなどを乗せると、リーシャと隣同士になるように席に腰を下ろす。

 

隣にいるリーシャはご機嫌な様子でルクスと同じサンドイッチを頬張っていた。

 

「ふぁ………、眠かった………」

 

席に着くなりルクスは大きく欠伸をする。

 

昨日は遅くまで見回りの依頼を『三和音(トライアド)』とこなしていたのもあるのだが、この疲れの一番の原因は―――、女装だろう。

 

「だらしないぞ、ルクス。でもまぁ、私もその………、お前の眠くなる気持ちが分からなくもないけどな」

 

頬張っていた物を飲み込んだ後、リーシャはルクスに注意を促す。

 

だが、彼女自身も工房(アトリエ)で徹夜ばかりしており、授業では居眠りしてしまうことが多いためあまり強く言えない様子だった。

 

「すみませんリーシャ様。昨日は遅くまで雑用がありましたので、ちょっと………」

 

「それはしょうがないだろうが………。いいかルクス、雑用を頑張るのはいいがそれで体を壊してしまったら元も子もないんだからな? 気を付けるんだぞ」

 

リーシャはビシッっとまるで音が聞こえてくるような勢いで人差し指をルクスに向ける。

 

そんなリーシャに対してルクスは申し訳なさそうに笑顔を向けていた。

 

「はい、ありがとうございますリーシャ様。その、僕なんかに気遣ってくれて―――」

 

彼の笑顔を見ているとリーシャは思う。

 

ルクスはどうしていつもこうなのだ………。

 

自分がどれだけ苦労し、疲れていても、自分が誰かのために傷だらけになってもこの笑みだけは絶やさない。心配を掛けないように、と。

 

でも、リーシャはその笑顔が嫌いではなかった。寧ろ好きなのかも知れない。自分を助けてくれた少年の笑顔。自分が好きな少年の笑顔だからなのか………。

 

「べっ、別に深い意味はないからな!? ほら、私は普段からルクスに頼ってしまうことが多いからお前を心配してだな―――」

 

リーシャは頬を赤らめルクスから目線を逸らし、もじもじと指を絡めている。

 

最近は特にそうだ。ルクスの笑顔を見ると顔が熱く火照ってしまう。だが、ルクスはリーシャのその様子に小首を傾げていた。

 

「どうしました、リーシャ様?」

 

「お前はどうしてそう………。いや、何でもない」

 

リーシャは相変わらずだなと思い、一つため息をつく。

 

自分だけ照れているのも馬鹿らしくなり、そっぽを向いたリーシャ。

 

そして隣にいるルクスにも聞こえないほどの小声で「この鈍感め」と呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、ルクスとリーシャは何気ない会話をしながら昼食を続けていると、不意にルクスがリーシャの耳元に顔を近づけて来る。

 

「あの、リーシャ様………」

 

「ど、どうしたルクスッ!?」

 

ルクスの顔が間近に迫ったことで慌てて顔を離すリーシャ。そんな彼女にルクスは声を抑えて下さいと言うように口に人差し指を当てている。

 

それを見たリーシャは一度小さく深呼吸をすると、ルクスに顔を近づけ耳を傾けていた。

 

まだ赤く染まっているその耳にルクスは小声で『あること』を尋ねる。

 

「僕の思い過ごしかもしれないんですが………。その、さっきから周囲の視線が普段よりも多い気がするんですけど―――」

 

この士官学園に編入生として入学したルクスとノエルの二人。

 

二人だけの男子生徒であるためか、普段の学園生活からして多くの女生徒達に注目されながら日々を過ごしていた。

 

注目の中には『興味』や『好意』といったものを感じさせる視線が多くを占めており、最初の内は慣れず、場違いな生活だなと精神的に疲弊していた時期もあったルクス。

 

その一方、ノエルは持ち前の「何とかなる」精神からくる適応能力ですぐに馴染んでいたようだった。

 

そういった面では器用な奴だよな、とルクスは思っていた。

 

ここ数ヵ月学園生活を過ごしてきて、クラスメイト達や雑用を依頼してきた学年の違う女生徒、他クラスの女生徒達とも交流が増え、最近ではあまり気にせずにしていられたのだが―――。

 

今現在向けられている視線の中は明らかに『警戒』の色が含まれている。

 

ルクスは長年圧制を敷いていた旧帝国の元王子であり、アティスマータ新王国となった今は国の恩赦で釈放されている『咎人』という立場。

 

学園に来る以前の多忙な雑用生活の中で、後ろ指を指されたり、陰口を言われたり、露骨な嫌がらせと取れる待遇をしてくる依頼主もいた事があった。

 

泊まり掛けの依頼では食事を出して貰えず、時には外で寝泊まりするといった場合も数回。

 

ルクスにとって雑用を引き受けるということは義務であるため、どんな対応を取られても断ることはしなかったが、悲しく思うことはあった。

 

だが、帝国を滅ぼしたのは自分。その国の元王子の自分。我慢はいくらでも出来た。

 

勿論いい人達も沢山いた。ポシェットを猫に取られた少女の家族などがそうだったように。

 

そんな生活を送って来たせいか、その類の視線や相手の表情から『それ』を察することに関して嫌でも敏感になってしまっていた。

 

「ああ、そのことか。確かに私も気にはなっていた。最近になって王都に演習に行っていた三年生達が次々と帰って来たのもあるのだろう。あいつらはお前の活躍を知らない者が多いからな」

 

リーシャはルクスの視線の後を辿るように食堂内の様子を一通り見ると、彼女なりの考えを口にする。

 

食堂には多くの女生徒が昼食をとっている。その中の一学年、二学年の生徒からか向けられている視線は普段と変わらない。

 

やはりこの視線を向けてきているのは三学年の生徒達だ。

 

リーシャは口元に手を当て、少し思案顔を見せると、何かを思いついたのか一つ提案をしし出す。

 

「………。よし、決めたぞルクス! 今日の放課後、工房(アトリエ)まで来てくれ。いいな?」

 

「………? 分かりました、リーシャ様」

 

リーシャの提案に小首を傾げながらも、了承の言葉を返すルクス。

 

「あ、でもリーシャ様―――」

 

今日の早朝もそうだったが、雑用の依頼が放課後も数件入っているので工房に行くのが遅れることになるという事を伝える。

 

その後、二人は食事を再開していた。

 

視線を気にしつつ食べ進めること数十分。

 

昼休みの終わりと午後の授業への予鈴を知らせる鐘が鳴るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の授業を受けているルクスだったが、先ほどの昼の件もあったからなのかあまり授業に集中出来ずにいた。

 

(どうしよう………)

 

ルクスとノエルは編入生という立場。

 

いくら装甲機竜の操縦技術が学園の生徒達より飛び抜けているとしても、座学の方は未だに追いつけていない部分が多々ある。そのためこれ以上遅れを取るわけにはいかないのだが―――。

 

(ていうか、ノエルはいつの間にかほとんど追いついているみたいだったしなぁ………)

 

この間行われた座学の小テストでノエルは高得点を取っていた。このクラスにいる生徒達でも難しさに頭を悩ませるほどのものをだ。

 

どうやらノエルは学年で一番の成績を誇る秀才、クルルシファーに放課後や夜など雑用がない空いた時間を使い勉強を教えて貰っているらしい。

 

クルルシファーの教えが上手いのと、ノエル自身飲み込みが恐ろしく早いので点数はその結果なのだろう。

 

座学についてはまだ王宮にいた幼少の頃、教育係から基本的は部分を学んでいたこともあり、王族や貴族ではないと言っていたノエルに遅れを取ってはいないと思っていたのだけれど………。

 

(僕も時間を作ってクルルシファーさんに頼んでみようかな………)

 

ルクスがそんなことを思っていると、いつの間にか時間が経っていたらしく最後の授業の終わりと放課後が来たことを知らせる鐘が鳴り響く。

 

それを合図に講師の先生が教室を後にして行くと生徒達は各々帰り支度を始めていた。

 

そんな中ではぁとルクスは小さくため息をつく。

 

(何か色々と前途多難だなぁ………)

 

苦笑いを浮かべているルクスに近づいてくる人影が一つ。リーシャだ。

 

「それじゃあルクス。先に行って待っているからな! その、片づけもしておかなくてはいけないしな………」

 

そう言い残すとリーシャは急ぎ足で工房(アトリエ)へと向かって行った。

 

定期的にリーシャからの依頼で工房(アトリエ)の片づけや掃除を行っているルクス。だけどここ最近で最後に依頼を受けたのはつい二日前のことだった。

 

急ぎ足だったのもこの短期間でルクスに見られたくないほど散らかしているからなのかもしれないが、ルクスに知る由は無い。

 

リーシャの背中を見届けた後、ルクスも鞄に教科書をしまうと席を立つ。

 

そして雑用をこなしに依頼人達の元へ向かった。

 

学園の先生からの依頼で書物の整理を。

 

女生徒からの依頼で部屋の掃除を。

 

女子寮の寮母から大浴場で破損してしまった蛇口の修理を。

 

それらをこなし終えるとルクスは工房(アトリエ)へと足を運んでいた。

 

その途中、自分を待っていたのか噴水の縁の石に腰掛けて本を開いているアイリの姿を見つける。

 

アイリもルクスの姿が目に映ったようで、読んでいた本をパタンッと閉じ腰を上げた。

 

「やっと来ましたね、兄さん。遅いですよ?」

 

「あれ、アイリ? どうしたの?」

 

「どうしたのって………。兄さんのこれからについて対策会議があると言うのに妹の私が参加しなくてどうするんです? 兄さんは危機感が足りないんじゃありませんか?」

 

「そ、そうだよね。あはは………」

 

アイリからジト目を向けられ苦笑するルクス。一体どこから聞きつけて来たのだろうか?

 

二人は並んで工房(アトリエ)へと歩き出す。工房(アトリエ)への道中、隣で小言をあれこれ言われたのは言うまでもない。

 

ノエルはよくこれに耐えるなと思う。

 

 

工房(アトリエ)に着くと、ルクスは軽くノックをしてから扉を開けた。

 

ルクスが先に中に入り、後に続くようにアイリも中に入って行く。

 

「おお、来たかルクス。それに妹も」

 

「すいませんリーシャ様、思っていたよりも遅れてしまいました………。って、何で皆もいるの!?」

 

工房(アトリエ)内には既に作戦会議の参加者が集まっているようだった。

 

クルルシファーにフィルフィ、それと『三和音(トライアド)』の二人、ノクトとシャリスだ。

 

普段リーシャが機竜に関する資料などを乱雑に置いている大きな作業机にはノクトにより綺麗に片づけられ、代わりに紅茶が入ったカップが人数分並べられている。

 

そしてその机を囲むように皆はそれぞれ椅子に腰を下ろしていた。

 

「さて、皆にはこうして集まって貰った理由は話さなくても分かるな?」

 

「やっぱりセリスティア先輩のこと………、ですよね?」

 

リーシャの言葉にルクスが答える。

 

「そうだな。『騎士団(シヴァレス)』団長―――、セリスティアが帰還してから三学年の間でルクス、お前やノエルを退学にしようという動きが大きくなってきているのが現状だ」

 

情報を集めて来てくれた皆の話を聞くと、セリスティアが帰還するまでは一学年、二学年の生徒達の説得もあり、三学年のルクスとノエルの印象はそれほど悪いものではなかったらしい。

 

だが、セリスティアがどう動くかによっては三学年全体の意見も変わることがある。それだけ彼女を支持する者が多いということなのだろう。

 

「でも問題なのはルクス君だけよね? ノエル君のほうは問題ないでしょうし」

 

「何故ノエルは大丈夫なんだ? クルルシファー」

 

クルルシファーの言葉に小首を傾げるリーシャ。

 

ノエルもルクスと同じ『男』であるのにどうしてなのかと。それに対してクルルシファーは微笑を浮かべ答える。

 

「何故って、簡単なことよ。ノエル君はあなたの母親である女王陛下の推薦でこの学園に編入することになったことを忘れたのかしら? 誰も反対なんて出来ないわ」

 

「そういえばそうだったな………。すっかり忘れていたぞ」

 

それを聞いたノクトとシャリスも「そういえば」と納得していた。

 

三和音(トライアド)』のメンバーはノエルがこの学園に初めて来た時、女王陛下から言われて来たということを聞いていたからだ。

 

「だから問題なのは覗きと痴漢行為で編入することになったルクス君だけってことよ」

 

「ちょ!? そこだけ言われると僕が変態みたいじゃないか!」

 

「あら、そうじゃないのかしら?」

 

「違うからね!?」

 

クルルシファーがさらりと誤解しか生まない発言を口にしてきたので、ルクスは全力で否定する。

 

そんな説明で三年生に変な誤解をされたら本当に取り返しのつかないことになってしまう。

 

「こほん。ともかく皆さんの対策を聞いていきましょうか」

 

アイリが咳払いをし一度注目を集めると、会議の舵を取り意見を求め始めた。

 

最初にアイリが視線を向けたのは同級生でルームメイトのノクト。

 

「私から、ですか。そうですね………。セリス先輩の意見で三年生の動向が変わるのでしたらルクスさんやノエルさんを害のない『男』なのだと理解してもらうのが一番かと思うのですが、どうでしょうか?」

 

「確かにノクトの言う通りだな。セリスが君達のことを他の男性とは違う、と例外視してくれればいい話こと。要するに気に入られてしまえばいいのさ」

 

ノクトの提案にシャリスが頷く。

 

シャリスは簡単に言っているように思えるのだが、男嫌いで有名であるセリスティアに気に入られるなど至難の業である。特にルクスにとっては………。

 

「Yes.シャリスの意見には賛成ですが、気に入られるという点ではルクスさんに期待するのは少々無謀かと思います。ルクスさんの女心に対する甲斐性の無さは日頃の生活からでもよく分かりますので」

 

「それは分かっているさノクト。それを『前提』として何かいい案がないかを今皆に聞こうと思っていたのだよ」

 

「自分でも分かってはいますけど、『前提』って言わないで下さいよシャリス先輩! 普通に傷つきますからね!?」

 

自分でも自覚している事を他の人から言われてしまうとかなり精神的にくるものがある。

 

ルクスはがっくりと肩を落とし、落ち込んでしまっていた。

 

 

それから暫くして。

 

ルクスがセリスティアに気に入られる方法を皆で考えているが、中々良い案が出てこない。

 

皆が思い思いに案を出すのだが、出てくるのは変なものや危ないものばかり―――。

 

リーシャの考えた機竜のレアパーツをプレゼントする。

 

セリスティアはお酒に弱いということなので、シャリスが飲ませて勢いで………。などというもの。

 

結局はここにいる女生徒のメンバーも『男』の人との交流が少ない為、どうすればいいかよく分からないのだ。

 

「そういえば天然娘、お前はどうなんだ? さっきから話し合いに参加してないようだが―――」

 

リーシャが自分の意見を否定され、少し落ち込んでいると、思い出したかのようにお菓子を食べているフィルフィに話を振る。

 

話を振られたフィルフィは短く間を置いた後、ゆっくりと口を開いた。

 

「ん………、私? ………。別に大丈夫、じゃないかな………。ルーちゃんとノエルちゃんのことだし」

 

もぐもぐと口に含んでいたお菓子を飲み込んだ後、そう呟いた。

 

それにリーシャはため息をつく。

 

「そんな根拠もないことを言われても困るぞ、天然娘」

 

「大丈夫だよ、お姫様。私のお姉ちゃんがそんなことさせないと思うから、絶対。だから問題が起きたら私達は二人を退学して欲しくないって、言えばいいと思う、よ?」

 

フィルフィの答えに工房(アトリエ)内の皆は考え込んでいた。

 

「―――、結局は現状維持って所ですね」

 

アイリが皆の考えを代弁するように口を開く。

 

他に代案がないところを見るととりあえずはフィルフィの案で決まりのようだった。

 

「現状維持となると、もう少し三年生の様子を知りたい所だな。また情報でも集めに行くとするか………」

 

「ああ、それは今ティルファーにだな―――」

 

リーシャの言葉に反応したシャリスが何かを言いかけた瞬間。

 

誰かが走って来る足音が聞こえてきた。

 

工房(アトリエ)の中にいる皆は一斉に警戒の姿勢を向ける。

 

工房(アトリエ)はリーシャの許可無しに入ることは基本的に出来ない場所だ。つまりは関係者以外立ち入り禁止。いきなり入って来るということはないと思うのだが―――。

 

扉の前まで足音が近づいて来ると、勢いよく扉が開かれる。走ってきたのは息を荒げている『三和音(トライアド)』の一人、ティルファー。

 

「どうしたんだティルファー。そんなに急いで―――」

 

入って来た人物が見知った顔だと分かると、警戒を解いたリーシャが尋ねる。

 

「ティルファーには我々の会議中セリスの動きを監視してもらっていたんだ。何があったんだ?」

 

息が整わず、まだ話せないティルファーに変わりシャリスが答える。

 

その後、何とか話せるまで息を整えたティルファーが口を開いた。

 

「はぁはぁ………。み、皆、大変だよ! 今セリス先輩が学園長に直談判しに行っちゃった!」

 

「なんだと!?」

 

ティルファーの言葉にリーシャは椅子を倒すほど勢いよく立ち上がる。

 

そしていち早く工房を出て行き学園長室へ駆け出して行ってしまった。

 

「ま、待ってくださいリーシャ様!」

 

その後を追うようにルクス達も立ち上がり走りだす。

 

リーシャを先頭に皆は学園長室―――、校舎の方へと急いだ。

 




次回、ノエル君が久しぶりに登場します。王都での話はほとんどオリジナルとなるので、変な部分があっても許してください(笑

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