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私は動けませんでした……。
大きな翼を広げた翼人のフォルムを持つ幻神獣のガーゴイル。その細長い腕と、紫に光る爪が私に襲い掛かってきていた。
幻神獣が私の目前にまで迫る。避難していた生徒が息を呑んだ―――その刹那。
ガキィィン!!
金属同士が交わるような音が響き、私に幻神獣の斬撃が届くことはなかった。
「何とか間に合ったか。今のうちに離れるんだ!」
見知らぬ少年が私の前に立ち、ブレードで幻神獣の振り下ろされた腕を受け止めていた。
「わ、分かりました。ですがこのままでは貴方が危険です!」
ノクトと呼ばれていた子は距離をとりながら少年に告げた。
「大丈夫、俺が幻神獣の相手をするから今のうちに生徒の避難を早く!」
「Yes.避難が完了しましたら援護にまわります」
そして避難誘導に向かって行ったのを確認した少年は、
「さて、時間稼ぎがんばりますか。「機竜咆哮!」」
幻創機核から発生させた衝撃波で幻神獣を上空へと弾き飛ばすと、ブレードを構え加速していった。
「ノクト大丈夫!?」
《ワイアーム》を纏っている女の子が近づいてくる。
「Yes.あの《ワイバーン》の少年に助けられました。それと自分が幻神獣を引きつけるから避難を早くと言っていました」
「彼は一体……。いや、今は避難させることに専念させてもらおう」
《ワイバーン》を纏った女の子が二人にそう指示を出す。
「そうだね! 早く避難させて援護に行ってあげよう!」
女の子は《ワイアーム》を駆りながらそう言うと、三人は避難誘導へと戻っていった。
†
避難誘導へと三人が戻って行ったころ、上空ではノエルの駆る《ワイバーン》と幻神獣が何度も剣と爪を交錯させ、激しい火花を散らしていた。
「幻神獣相手は久しぶりだな。やはり一筋縄ではいかないか……」
そう言いつつも、全く隙のない剣さばきで幻神獣の攻撃をいなしていた。
「あの『技』で決めてしまいたい所だけど、避難がおわらないことには幻神獣から距離を取るわけにもいかないしなぁ……。どうしようか…」
ノエルが使おうとしている『技』を汎用機竜で行うには距離がいる。避難がおわってない今の状況で距離を取れば下にいる生徒に攻撃対象が変わってしまう可能性があった。
「そこの少年!! 援護する!」
不意に竜声の通信が届いた。
ノエルは通信を聞いて下の方を見る。すると、すでに避難誘導を終えた先ほどの機竜使いの三人がブレスガンやキャノンを構えていた。
「少し距離を取りたいので、隙をつくってくれませんか?」
ノエルは竜声を使い頼んだ。
「わかった。こちらの砲撃に当たらないように気を付けてくれよ?」
「了解しました!」
ノエルはそう答えると、幻神獣から距離を取る準備をする。下の方から砲撃が始まり幻神獣がそちらに気を取られた瞬間、ノエルは上昇して『技』の発動に必要な距離を取る。
幻神獣がノエルの行動に反応した時、ノエルは《ワイバーン》を急降下させて疾風の如くブレードを構えながら接近していった。
幻神獣は迎撃しようと爪を構え、腕を突き出した――――――瞬間。ノエルの《ワイバーン》が目の前から姿を消した。
「終わりだ幻神獣。『幻撃』!」
ノエルが幻神獣の横を通り過ぎたかと思えば、幻神獣の核をブレードが正確に捉え破壊していた。
「ギ、ィアアァァ……」
幻神獣は断末魔をあげて灰と化していった。
それとほぼ同時に、演習場から七筋の光柱が放たれる。どうやらあちらも片付いたようだ。
「さてと、どうにかなったな……」
ノエルは地上まで降りてきて《ワイバーン》を解除し、鞘に機攻殻剣をしまった。瞬間、避難していた生徒達から大きな歓声が沸き上がる。
「うおっ!? いったいなに!?」
いきなりの歓声に驚くノエル。
「すごいねー君! 幻神獣を倒しちゃうなんてさ!」
《ワイアーム》の接続を解除しながら女の子が近づいてくる。
「Yes.本当ですね。それと先ほどは助けて頂きありがとうございました」
《ドレイク》を纏っていた子もお礼を言いながら近づいてきた。
「ありがとう。君のおかげで全員無事だったよ」
最後に《ワイバーン》を解除して、みんなに指示をだしていた女の子が手を差し出してきた。
ノエルはその手を握り、
「いえいえ。皆さんの協力があったからですよ」
と伝えた。
「ほとんど君一人で倒したようなものじゃないか。おっと、自己紹介がまだだったな、私はシャリス・バルトシフトだ。よろしくな」
「私はティルファー・リルミット! ティルファーでいいよ!!」
「一年のノクト・リーフレットと申します」
シャリスの自己紹介に続くように二人もノエルに自己紹介をしていった。
「我々、「三和音」がいながら事態を上手く収拾できなかった。君のおかげで助かったよ」
「三和音?」
ノエルがシャリスに尋ねた。
「私たち三人がやってる自警団のことだ。ちなみに私がリーダーをしている」
そうなんですか。とノエルが答えると、
「ねぇねぇ! 君の名前はなんていうの?」
ティルファーがシャリスとノエルの間に入ってきた。
「そういえば名乗ってなかったな。俺はノエルだ」
「ノエル…なんていうの?」
ティルファーはノエルの名前に疑問をもった。
「あぁ、『ノエル』だけなんだ。それ以上は記憶がなくてね」
「ノエル君は記憶をなくしているのかい?」
「小さい頃の記憶がないんですよ。断片的に覚えてる部分はあるんですがね」
そうなのかとシャリスは頷く。
「ところで、ノエルさんはどうしてこの学園にいるのでしょうか?」
「それもそうだな。どうしてなんだい?」
ノクトの質問でシャリスも気づいたようだった。
「女王陛下から学園に通えって言われまして、先ほど着いた所だったんですよ」
「ええっ!? ノエルって女王と知り合いなの!?」
「まぁそんなところかな。ところで俺、学園長に話があるんだけど……学園長室どこだったっけ?」
「Yes.私も学園長に今回の報告に行く所なのでご一緒しましょう」
「助かるよ、リーフレット」
「No.ノクトとお呼び下さい。ノエルさん」
「わかったよ、じゃあ案内よろしく。ノクト」
ノエルは校舎に向かって歩いていくノクトの後を追った。
†
ノエル達は学園長室の前まで来ていた。
「失礼します」
ドアをノックし、ノエルとノクトは入室する。
「あら、久しぶりノエル君。あなたのことはすでに聞いているわ」
部屋の中ではこの学園の学園長―――レリィ・アイングラムが机にある書類を整えていた。
「お久しぶりですレリィさん。ですが、本当に男である自分がこの学園に通ってもいいのでしょうか?」
「ええ、いずれこの学園の共学化を考えて試験的な意味もこめてね」
「でもみんなが受け入れてくれるとは思えないんですが……」
旧帝国時代にあった男尊女卑の影響もあり、男に警戒心を持っている子もたくさんいるはずの学園に男である自分が通うのは大丈夫なのかとノエルは思う。
「No.その心配は無用だと思います」
後ろで会話を聞いていたノクトが、ノエルの疑問に答えた。
「ノエルさんは生徒の皆さん、それから私のことも幻神獣から守ってくれました。ですからそれほど警戒心もないかと思います」
「そうかねぇー」
ノエルは腕を組み、うーんと考え込む。
「まぁ、その問題の答えは実際に通ってみればわかるはずだから。明日からよろしくねノエル君」
「はぁ、相変わらずですね……。わかりましたよ。こちらこそよろしくお願いします」
ノエルは不安を抱えながらも学園室を後にしていった。
「では私はノエルさんの後輩ということになりますね。よろしくお願いしますノエル先輩」
「先輩じゃなくて、年上だしお兄ちゃんでもいいぞ?」
「Yes.わかりました。ノエルお兄ちゃん」
「ごめん。やっぱやめて……。恥ずかしい」
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