私は世界の事が大好き。だからこそ、私達は殺戮を続ける(愛情を注ぎ続ける)の。

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結構前から何となく書いていた物です。もしかしたらいつか続きを書く…かもしれない。


彼女のお話

あの日、私は全てを失った。

元々まともな才能も居場所も無かったけど、あの日、私は本当の意味で〝全て〟を失った。

私の家庭は、普通じゃないと言えば普通じゃない。何せ、世界規模で有名なスポーツ(お遊戯)、IS業界の中の世界最強 ブリュンヒルデ が居るからね。

言い忘れてたけど、私には姉と兄が1人ずついる。姉は、世界最強の証 ブリュンヒルデを二つ名に持ち、兄はあらゆる事をこなす…所謂、天才。

世界最強の姉、天才の兄。なら、私は?と周りは自然に注目を集めるのはすぐだった。

だけど、私はその期待全てを裏切った。その理由は簡単。私が〝凡人〟だったから。何をやっても、平凡な結果ばかり。成績、運動神経、才能、記憶力、暗記力…とにかく、ありとあらゆるものが、平凡だった。

当然と言うべきなのか、しばらくしたら私を標的に虐めが始まった。最初は悪戯程度だったけど、次第にそれはエスカレートしていって、殴る蹴るは当たり前になった。しかも、生徒だけじゃなくて教師達、私の兄、更には町の人々まで、私の事を白い目で見た。

何故姉のように出来ないのか、何故兄のように出来ないのか。そんな言葉ばかりを掛けられ、私の精神は疲弊していった。

まぁ、全てを捨てたもんじゃ無かったけどね。こんな私でも友達になってくれたのが居るし。篠ノ之箒、篠ノ之束、鳳鈴音、五反田弾、五反田蘭、御手洗数馬。この6人は、私をいつも気遣ってくれた。生憎、箒と束さんとはすぐに離れ離れになっちゃったけど。

そして、姉さんも私の事を支えてくれていたおかげで、私の心は壊れずに済んだ。あの日までは、ね。

2027年10月24日、第二回モンドグロッソ大会決勝直前、ドイツで私は誘拐された。

誘拐された目的は、姉さん…織斑千冬の決勝戦の参加辞退。今考えると、決勝戦の相手国だったイタリアの差し金だったのかもね。

私が誘拐された事は日本政府、そして姉さん本人にも直接伝えられたらしい。

だけど…だけど、私は裏切られた。

あの姉さんが、私を裏切った。私を捨てて、名誉を取った。

決勝後のインタビューの様子を、誘拐犯が用意してたテレビで見てたけど、ホント馬鹿みたいな内容だった。「一番に妹にこの気持ち伝えたい」? 見捨てた癖に良くそんな言葉が出たよね。

その時の私は、それはもう笑ったよ。全てが馬鹿馬鹿しくてさ。喉が裂けても、口から血が出ても、笑いが止まらなかった。それ以上は薬を打たれて意識を失ったんだけどね。

 

 

 

次に私が目を覚ました時は、何もない小さな密室の中。

簡単に言うと、意識を失った後、私は何処かの地下組織に売られた。実験体として。

目を覚ました直後から、私の身体は犯された。投薬から身体の内蔵まで、数え切れない程の実験で、私の身体はどんどんおかしくなっていった。実験の外で処女も失った。まぁ、研究員からしたら実験体なんて唯の道具だから、そんな事は当たり前なんだろうけど。

そして武器を持たせられ、実験体の選別という名の殺し合いを強制させられた。

それを繰り返しているある日、私にある実験が行われた。その実験の目的は、ISコアの埋め込みによる身体能力の限界突破。

どういう理論なのかは知らないけど、ISコアそのものを身体に埋め込んで、精神融合する事によってISコアとの同調を行う事で、〝生身でISと同等の能力を使用可能とする〟っていう実験。勿論、今までに成功した例は無かった。

…私が最初の成功例になったんだけど。その実験以降、選別では無類の強さを誇るようになって、次々と私以外の実験体を殺していった。ISも与えられて、IS同士で殺しあったりもした。

選別を重ねていくうちに、私は殺戮を楽しみ始めた。私は初めて〝殺戮〟っていう才能を手に入れたから。人を殺すのが凄く楽しかった。だから私は殺戮を楽しんだ。

そして、私だけに何かの声が聞こえるようになった。最初はとうとう幻聴でも聞こえ始めたって思ってたけど、数週間後にその正体が分かった。

それは、ラファール。正確に言うと、ラファールのISコアの声だった。なんで聞こえるかは分からないけど、多分私に埋め込まれ、精神に融合したISコアに関係があるんだと思う。

私は、暇な時にはISコアと話した。そして、次第に私とpjgmdとtmxgpは絆を築いていった。あ、pjgmdとtmxgpっていうのは名前ね。それぞれのISコアには名前があるんだけど、言語化は出来ない。私が無理矢理言語化したのを呼んでるだけ。

そうしてる内に、次第に私は殺戮衝動が抑え切れなくなっていった。単純に殺し足りなくなってきたから。だから私は行動に移し、機会を待った。

だけど、機会が訪れる前に研究員がやって来た。目的は新たな実験の1号目にする為。

こういうのも今更だったから素直に従おうとしたんだけど…助けが来たんだよね。

誰かって?pjgmdとtmxgp。どうやってか、自立起動して私を実験室に連れて行こうとした研究員を殺した。吃驚したよ。まさかpjgmdとtmxgpが自立起動して私を助けるなんて思ってなかったから。

まぁそんな事になったから、私とpjgmdとtmxgpは行動を始めて、地下施設で暴れまくった。

 

そして、今はどうしてるのかと言うと──

 

 

 

■■■■■

 

 

 

戦塵が立ち込める、世界の何処かにある紛争地帯。国同士が争い、兵士が殺し合う戦場は今、沈黙していた。

その理由は、"兵士が全員死亡、もしくは戦意喪失"。

戦場だったそこは、尋常ではない数の死体が転がり、周囲に鉄の匂いを匂わせる。死体のレパートリーは様々。銃弾で撃たれた者、爆発に巻き込まれた者は勿論、8割を占めるのが大口径の銃弾を全身に浴びてバラバラになった者、腹を食い破られたように内臓をブチまけた者、四肢を引き千切られ、出血多量で死んだ者。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ!!」

 

その地獄絵図の中を、1人の傭兵が走っていた。何回か転んだせいで全身が血塗れなのだが、そんな事を気にする事もなく、走っていた。

傭兵がいた部隊は、他の部隊と一緒に襲撃を受けて四散し、最早合流は不可能と言っていい。それ以前に敵も味方も壊滅している状態で、合流も何もないのだが。

 

「────♪」

「ッ──!?」

 

突如、傭兵の前方から声が聞こえ、傭兵は立ち止まって自身の愛銃である"IMI ガリル"を構える。逃げるのに必死だった為、声を聞き取ることが出来なかったのを悔いる。立ち込める戦塵が邪魔をし、周囲の視界を狭めているからだ。

 

「stars!!」

 

傭兵は前以て決められていた合言葉を叫ぶ。沈静化した戦場では遭遇と同時にいきなり銃撃戦、という訳では必ずではなく、何方から合言葉が出る。その合言葉の返し方を知っていれば仲間、返事の代わりに銃弾が飛んで来れば敵。これが基本的な遭遇戦。

 

「──a♪」

「…?」

 

しかし、今回はその何方でもなかった。

 

「La──La──La──La──La──La、LaLa──♪」

「──ッ!!!!!!?」

 

それは、歌声。何処までも透き通った、しかし何処か哀しみを潜めた、美しい少女の歌声。だが傭兵からしたら、死神の声に等しい声。

全身から発せられる危機信号に従い、逃げようと両脚を動かそうとした瞬間、2発の5.56×45mm NATO弾が両脚を貫通。命中箇所の筋肉を抉り取って傭兵の歩行能力を奪い取った。

 

「La、La──La、La──La─La─La───♪」

「グッ…クソッタレがぁ!!」

 

幸いというべきか、傭兵の両手はまだ使える。IMI ガリルのセレクターをフルオートに設定し、前方に弾をバラ撒く。毎分650発の連射速度では、30発入りマガジンに入っていた30発の弾丸を全て吐き出すのは、僅か3秒。

あっという間に全ての弾丸を吐き出して空になったマガジンを破棄し、新たなマガジンを取り出そうとポーチに手を伸ばそうとしたが、銃声と共に飛来した超大口径弾がガリルの銃身を破壊した。

 

「!!!?」

「La──La──La──La──La──La、LaLa──♪」

 

横を見れば、建物の中にアサルトカノン"ヴェント"を片手に構えた黒と灰のツートンカラーの装甲を全身に纏い、肩に死神の鎌のエンブレムをつけた第2世代IS "ラファール・リヴァイヴ"がいた。

 

「やめろ…来るな、来るなぁ!!」

「La、La──La──La、LaLaLa、LaLa──♪」

 

唯一の武器を失った傭兵は必死に這って逃げようとするが、当然逃げられる筈も無く、ラファール・リヴァイヴに首元を掴まれ、地面に押し付けられる。

 

「ガッ…!!」

「La────────♪La────────♪」

 

地面に押し付けられる事によって視界を失うが、足音が聞こえ始める。一歩一歩それが近付くと共に、歌声もハッキリと聞こえ始める。同時に、恐怖が傭兵の身体を強く支配する。

 

「La────La────La──LaLaLa♪La────La────La──LaLaLa♪」

 

そして、足音がすぐ近くまで聞こえ、そして止まる。

 

「La────La────La──LaLaLa♪La────La────La──LaLaLaLa、La、La♪」

「…!!」

 

歌声が止まると同時に、ラファール・リヴァイヴが無理矢理上半身を起き上がらせる。

 

「こんにちは」

 

そして、傭兵の目の前には1人の少女がいた。

身長は160cmより少し低く、ショートヘアな黒髪、黒色のスカートに、元は白色だったであろう、今は返り血で染められた、何処にでもあるようなトップス。右手には伸縮式ストックを取り除き、銃身を極限にまで短くしてハンドガンサイズにまで短縮したカスタムを施した"M4カービン"が握られている。

 

「…」

「うーん…やっぱり怖がっちゃってるな〜。ま、お手柄だよ。xdmgdtg」

 

少女が何処の言語にも通用しない単語を発した時、傭兵は一瞬だけ掴まれている装甲の手の力が緩んだような気配を感じ取った。最も、両脚が使えない為逃げられないのだが。

 

「そ〜だね〜…とりあえず左腕頂戴。殺っちゃって良いから」

 

その言葉と同時、ラファール・リヴァイヴが傭兵の左腕を掴み、次の瞬間には左腕をもぎ取った。唐突に走る強烈な痛みに傭兵は叫びかけたが、その前にラファール・リヴァイヴは傭兵の頭部を地面に叩きつけ、粉砕した。粉砕されるのと同時に脳漿が周囲に飛び散り、少女の足元にも掛かる。しかし、少女は気にする事なく、それどころか足元に掛かった脳漿を左手の指で取り、口に運んだ。

 

「ん、ありがとね」

 

そして、ラファール・リヴァイヴから傭兵の左腕を受け取り、少女は小さな口を目一杯に開けて、左腕の断面から大量に流れる血を飲み始める。すぐに口の中と周囲は血で一杯になって溢れ始めるが、気にする事なくゴクゴクと飲み進める。

ある程度飲んだら断面から口を離し、中に溜まった血を全て飲み込むと、左腕に残った服を取り除き、あろう事か二の腕に噛み付いた。そして、ブチブチという音と共に肉が噛み千切られ、左腕から完全に分離した。よく咀嚼し、飲み込む。

 

「ん〜、美味しい♪」

 

満足そうに頷き、もう一口と言わんばかりにもう一回嚙みつこうとしたが、その前に少女の胸ポケットに入れている携帯が鳴る。思わず少女は舌打ちをして近くの階段に座り、携帯を取り出して通話をオンにする。

 

「もしもーし」

『"ルーラー"、上層部が貴女を探してるわよ。今何処にいるの?』

「南アフリカだけど、あと数日でそっちに戻るから」

『上層部は今すぐにでも戻れって騒いでるわよ。相当お怒りみたい』

「…スコール。私からしたら老害がどれだけ騒いでも知ったこっちゃないんだけど。私を怒らせる意味、分かってるでしょ?」

『──ッ。幾ら貴女でも、上層部を本気で怒らせると』

「fxjgrcj、qvaurgkitxyxjif」

『…?』

「スコール、貴女の相棒の調子はどう?」

『──貴女、まさかっ!!!?』

 

電話越しから聞こえる焦燥の声に、ルーラーと呼ばれた少女は笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。

 

「ゴールデン・ドーン…ううん、fxjgrcjには感謝してるよ。お蔭で、亡国機業にある全てのISを"掌握"出来たから。それで?老害を本気で怒らせるとどうなるって?」

『…』

「貴女達じゃ、私を支配する事は出来ない。老害達に〝立場を弁えろ〟って伝えといてね」

『…………貴女は、一体何をしようとしたいの?』

「…愚問だね。私は、女尊男卑とか、ISとか、この世界には何の憎しみも、悲しみも持ってない。寧ろ、愛しさと慈しみさえ覚えてる。だからこそ、私は殺戮をしたいの」

「私は、殺人が好き。ううん、大好きなの。拳で、脚で、ナイフで、拳銃で、小銃で、短機関銃で、散弾銃で、ライフルで、軽機関銃で、重機関銃で、火炎放射器で、無反動砲で、手榴弾で、爆弾で、地雷で、化学兵器で、毒薬で、ISで、世界で行われるありとあらゆる殺人がだーい好き♪

 

アサルトライフルのフルオートで人を蜂の巣にするのが大好き。運良く生きてたら死ぬまでの様子をじっくりと楽しむ位にね。

 

両手足を撃って動けなくした人の腹部に手榴弾を置いて、バラバラになる瞬間を見るのが大好き。爆発するまでの生きたいって必死な顔はもうさいっこう。

 

瀕死の人に馬乗りして、手加減しながら死ぬまで顔を殴り続けるのが大好き。殴る度に骨が折れ、血を流す感触が堪らないの。

 

至近距離から散弾銃で腹部を吹き飛ばすのが大好き。血肉を散らしながら吹き飛んでいく姿は芸術だね。

 

泣き叫んで助けを求める人の腹を開いて胃腸を取り出すのが大好き。苦痛に苦しむ表情もスパイスになって、より苦しませたくなっちゃう。

 

敵陣に化学兵器を流し込むのが大好き。呼吸困難を引き起こしてもがき苦しみながら死んでいく人達の姿や、幻覚作用を引き起こして発狂しながら同士討ちをしていく人達の姿は、それはもう滑稽だったよ。

 

スナイパーライフルで背骨を避けて喉を撃ち抜くのが大好き。えっ?ていう顔をしながら大量の血をブチ撒けて倒れ、もがき苦しむ姿は感動しちゃう。

 

ISで戦場を蹂躙するのが大好き。ISが出てきた時の敵の絶望した表情は心をそそらせるよ。

 

身体を固定させて、ISで四肢を一つずつ無理矢理もぎ取るのが大好き。最後に頭をもぎ取って、その時の顔を保存するのがミソだね。

 

ISの武装で身体を肉塊にするのが大好き。10人以上が同時に肉塊になった瞬間なんて、興奮し過ぎてイっちゃったもん。

 

けど、私はもう普通の殺戮じゃ物足りない、満たされなくなった。私の心が、これ以上の殺戮(愛情)を求めるの。

 

だから、私は更なる殺戮を求めるの。世界に対する殺戮(愛情)を!!」

 

そう言い放った少女の表情には笑みが浮かび、そこにはドス黒い狂気が、どうしようもなく浮かび上がっていた。それだけで、少女がどれ程狂っているのかを証明してしまっている。

 

『────ッ!!』

「だから、私は殺戮を続けるの。私の思うままに。そこに誰かの介入は要らない。ただ私の盾になっているだけでいいの。私の前にいるのは、邪魔なだけだから」

『…』

「あ…fxjgrcj、pgbjutedktfcje。これで、貴方の相棒は使えるようにしたから。それじゃあね」

 

ピ、と通話を切って携帯をしまい、再び持っていた左腕を食す。しかし、少女の表情は先程とは正反対の鬱な表情を見せていた。

 

「あーもう…テンション上げ過ぎて余計な事言いまくっちゃった。まぁあいつらと敵対しても私達の敵じゃないけど。そうでしょ?〝皆〟」

 

その言葉は、そこにいる者に掛けられてはいない。少女と繋がっている、〝彼等(彼女等)〟に掛けられている。

 

「…ふふっ、皆頼もしいんだから。それじゃ、次の場所に行こうか。次は〜…イタリアにでも行ってみようかな。一旦帰るから、適当な塗装用具と武器と光学迷彩、あと仮面を用意しといてね」

 

食べかけの左腕を捨てて立ち上がった少女の胸元が発光した一瞬後、少女は世界最強の兵器〝IS(インフィニット・ストラトス)〟機体名〝ストレイド〟を纏っていた。

その黒色の機体を構成する背の2対の翼にあるスラスターが噴出し、上空へと上昇する。そして1機のラファール・リヴァイブも追従する。

 

「それじゃ、行こうか」

 

そして、次の瞬間には抑えられていた出力が解放され、その場からあっという間に姿を消した。

 

 

──それから16時間後。イタリアのローマにて、〝最低〟でも5000人以上が虐殺される大規模テロが発生した。

 

 

──後に、彼女は様々な出来事を経てIS学園へと入学。そして、世界をも大きく揺るがす一大事変の中心人物となっていく。

 

 

──しかし、それはまた別のお話。今はまだ、誰も知る由のない未来。

 

 

 

「La──La──La──La──La──La、LaLa──♪La、La──La、La──La─La─La───♪」



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