こーいう幼馴染ものが見たいなっていう妄想。

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ちょっとした暇つぶしに読んでやってください。


CHOPIN

「「いただきます」」

 

 照明の抑えられた室内に、二人分の声が小さく響く。

 学生服に身を包んだ二人組は、向かい合って手を合わせながら目の前の軽食に手をつけ始めた。

 

 

 ///

 

 

「お腹がすいた」と一言こぼせば、和菓子が出てくる。

 幼少期からそんな生活を送ってきた和菓子屋の娘がいる。

 そんな娘に昔から付き合ってきた少年がいる。

 もちろん和菓子つきで。

 すると必然とその少年も、好んで和菓子を口にしなくなる。

 端的に言うと、飽きる。

 あんこは口の中でもたつくし、餅は必要以上に腹を重くする。

 少女はまだいい。実子なのだから、素直に飽きたと口にして素直に叱られればいい。

 しかし少年はそうはいかない。なにせ見知った大人とはいえ友達の親だ。

 手作りでしかも売り物のお菓子を、少しでも悪し様に言う事は躊躇われた。

 少年はちょっと少女の家に行くのが億劫になり始めた。

 面白くないのは少女である。

 家に誘えば必ず寄って行ってくれた少年の尻が急に重くなる。

 不審がる。機嫌が悪くなる。ごねる。

 そのうち耐え切れず詰問する。

 たまらず少年は

 

「ごめん、和菓子がちょっと……」

 

 と零す。

 自分の家の和菓子に誇りを持っている少女の額には青筋。

 しかし思い返せば自分も同じ穴の狢であると気づく。

 あわてて少年が「穂むらの和菓子はおいしいけれども」と弁解するころには、

 少女はすっかり同情と共感、そして安心から笑顔を浮かべていた。

 では少年の家で遊ぼうじゃないかと少女。

 しかし少年は首を横に振る。家では美味しいおやつが出ないと。

 あろうことか既製品では舌が満足できないと贅沢をのたまう。

 ではどうする?

 少女の脳裏に最近友達になったとても可愛い二人の女の子がよぎる。

 片方は家に上げてもらったときにショートケーキが出てきた。

 もう片方の少女の家では酢昆布、梅干し、たくあんが出てきた。

 どちらもとても美味であった。

 しかしだめだ。断固だめだ。

 少女は首を振ってその案を棄却した。

 少年がふと言う。「今いくらもってる?」と。

 少女は百円玉を、開いた右手に乗せて少年に見せた。

 駄菓子や水風船を買うための軍資金だ。

 少年は五百円玉を取り出し少女に見せた。少女の目が輝く。

 

「これなら駄菓子食べ放題だね!」

 

 少年が首を横に振った。そうじゃない。

 少年は少女の右手を取り、歩き出す。

 交通量の多い靖国通りを右手に、北方向の路地に入る。

 赤と黒のランドセルを背負った子供二人は、少し陰気な雰囲気の残る路地を進んでいく。

 やがて開けた場所に出た。

 道が五股に分かれている。

 どことなく肉の焼ける匂いと、トマトの甘い匂いがした。

 成長期の胃袋をいたずらに刺激する香りを振り切って、少年は北東に伸びる道を選ぶ。

 分けもわからず手を引かれているというのに、少女は満面の笑みで少年の後ろを歩く。

 左手からかすかに香る味醂と醤油の甘辛い匂いに口内の唾液を増やしながら、

 やがて右に色落ちの激しいコンクリートの建物が見えてくる。

 

「なんとかショパン!」

 

 少女が元気よく読みあげた。

 

「上の英語はなんて言うのかな」

「チョピンだろ」

「英語できるんだ!すごーい!」

 

 そんなのどうだっていいだろ、と少年は手を引いて店に入った。

 細く伸びる店内の、一番手前の四人席に二人差し向かいで座る。

 学校終わりの三時半。店内は客が居なかった。

 店主がメニューと水を持ってくる。

 少年は泡を食って「お金は持ってます!」と言った。

 店主はやわらかく笑うとゆっくりしていきなさいと少年に言った。

 

「ランドセルはずせばいーのに」

 

 少女が不思議そうに少年に言う。

 いまさらに恥ずかしくなりあわてて少年はランドセルを下ろした。

 

「えへへ。こんなとこ来たのはじめて」

 

 からからと笑う少女を見ていると、一人緊張しているのが馬鹿らしくなってきて、

 少年も相好を崩した。

 二人はメニューに手を付ける。向かいで座っているとメニューが見づらいことに気づく。

 少年は隣の椅子においたランドセルを床にどかす。

 少女は笑って空いた席に収まった。

 ひとつのメニューを二人で眺める。

 いいか、ろっぴゃくえんだからな、と少年が少女に言い含める。

 ろっぴゃくえんと少女が鸚鵡返しに言う。

 

「ウインナーコーヒーだって!」

 

 おとなは変な飲み物がすきなんだねと少女。

 まったくだなと少年も頷いた。店主が震えていた。

 ざっと見渡すと、大体手持ちの六百円ですべてのメニューが買える事がわかる。

 しかし一品のみだ。二人で分け合うことになるだろう。

 これは慎重な協議が必要だぞ、と少年。

 

「ソーダフロートだって!!」

 

 そんな少年などおかまいなしに、少女は気になるものをかたっぱしから叫ぶ。

 飲み物じゃないかと少年。

 でもアイスもあるよ、と少女。

 二人できちんとはんぶんこできるものにしようと少年が言う。

 それまで渋面していた少女は、急にきらきらと笑い出してその案に賛成の意を唱えた。

 まったくわからんぞと首を傾げつつ、少年はメニューを注視する。少女は少年を注視する。

 

「サンドイッチ……」

 

 じゅるり、と少年。

 道中さんざん胃袋を刺激されたので、少年はからいものが食べたくなっていた。

 

「ご飯食べるの?お母さんに怒られちゃうよ?」

 

 と少女。

 それもそうだなと少年は思い直す。

 少女がこれなんだろーとメニューを指さした。

 

「あんぷれす……?」

 

 この馴染みのない、けれど不思議と心引かれる響きは何だろう。

 少年少女は目と舌を輝かせ始めた。

 それまで黙して見守っていた店主が二人に言った。

 

「甘いパンだよ」

「甘い……」

「パン!!!」

 

 パン好きな少女は両手をあげて叫んだ。

 少年は少女の喜びようを見て、これにすることを決めた。

 

「これください」

 

 

 ///

 

 

 二人は軽食を取り終わり、各々飲み物を飲んでいた。

 

 

「結局餡子じゃねーかよっていう」

 

 ホットコーヒーを片手に詰襟の少年がぼやく。

 向かいのセーラーの少女が苦笑いしながら

 

「餡子のホットプレスだもんねー」

 

 と言った。

 

「でも穂乃果はこれ大好きだよ?」

「俺も好物だよ」

「えへへ」

「でもアンプレスにイチゴジュースはどうかと思う」

「えー、美味しいよ!」

「紅茶とか、珈琲とかさあ。甘いものに甘いものとってもよくわからんだろう」

「そんなことないよ。イチゴ大福だってあるんだし、相性はばっちり!」

 

 ニコニコと少女が笑う。

 そうしているのを見ていると、いつでも昔のままの気持ちに戻れる気がして、

 少年は嬉しくも面映い。

 あの時と同じ四人席で二人アンプレスをとっているこの状況が、それに拍車をかけていた。

 珈琲カップを傾けながら、少年は一思案した。

 何も考えずアンプレスをほお張り、イチゴジュースを口に含む穂乃果を尻目に、

 少年は左手で、隣の席に置いたスクールバッグをなでる。バッグの口からは黒色の円筒がはみ出している。

 結構にぶちんなとこもあるので、大真面目にどういうこと?と聞かれるかもしれない。と少年は想像した。

 しかしまあ、いい加減動き出すべきだ。欲しい未来があるのならば。

 その一手目としてはうん、妥当じゃないだろうか。いや迂遠か。ええいめんどうくさい、やってしまえ。うごいてしまえ。

 

「穂乃果」

 

 呼んで、少年はスクールバッグを床に落とした。

 

 それを見て、少女は向日葵のように笑った。

 

 

 end

 

 

 

 





読んでくれてどうも有難う御座います。

とりあえず思いついた要素のごった煮でした。

二年生組全員と幼馴染っていうのはそれはそれで確かにいいんだけど、幼馴染って閉じた関係であればあるほど夢がある気がするんだ。

妄想性癖その他諸々全開でスマン。

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