岸波白乃は施しの英雄に出会う   作:gurenn

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全ての始まり。

カルナさん召喚です。


プロローグ

【白乃視点】

 

おかしい。何かがおかしい。私は、ノイズにまみれた視界を、頭を振ってかき消そうとする。でも一向に視界は晴れなかった。そして、頭に響くそんな違和感に吐き気が込み上げてくる。気持ち悪い……

 

友人が、訳の分からない事を口にして消えてしまった。間桐慎二。この私、『岸波白乃』の友人で……あれ? 本当にそうだった? 私と慎二は、どうやって知り合ったんだっけ? ……思い出せない……

 

おかしい。どうして、思い出せないの? 私は、この月海原学園の生徒で……ん? 私の家は? 家族は? そもそも、私は本当に学生だったっけ? 分からない、分からない、分からない! どうして!?

 

「……私は、誰なの?」

 

それすらも分からない。混乱する私の視界に、クラスメイトの男子が走っていくのが見えた。あれは、確か新聞部の? 私は、何となく彼についていった。するとそこには……赤い制服の転校生がいた。

 

確か、名前はレオ。彼は、新聞部の男子に何かを話している。そして、何もない壁に手を当てていた。そして彼は、私を見た。その瞬間、私は金縛りにあったように一歩も動けなくなってしまった。

 

「貴女とはまた会える気がしますよ。それでは、またお会いしましょう」

 

レオはそう言って、壁の中に消えていってしまった。そしてその後を追って、新聞部の男子も壁の中に消えていった。私は何かに導かれるように、彼らが消えていった壁に近付いて手を当てていた。

 

「……この壁、普通じゃない」

 

何故かそれが分かった。そして私は、壁の中に入っていく。彼らがそうしたように。するとそこには、不思議な空間が広がっていた。横からカタカタと音がして、私はそちらを見てみた。するとそこには……

 

「……人形?」

 

奇妙な人形が動き出して、私の側に歩いてきた。どこからともなく、声が聞こえてくる。この人形は私の武器だとかなんとか、訳が分からない事を言っている。状況が掴めないまま、私はその声に従って歩く。

 

奇妙な人形の従者と共に。奇妙な空間を、人形と共に走り抜けて、広い空間にたどり着いた。するとそこには、新聞部の男子が倒れていた。私は慌てて彼に駆け寄って、何とか助けようとした。ところが……

 

私の人形と同じ人形が動き出して、私に襲い掛かってきた。私は、道中と同じように人形を操って戦うけど、あちらの方が一枚上手だった。私の操る人形は呆気なく倒されて、私もあっさりとやられた。

 

「……痛い、よ……」

 

私の腹部を貫いた人形。私は気の遠くなるような痛みを感じ、それからは凍えるような寒さを感じた。私の体から、急速に熱が失われていく。命の火が失われて行くのがはっきりと分かった。そして、私は見た。

 

折り重なるように倒れている生徒達。私と同じように、違和感に突き動かされてここまでやって来た。そして、今の私のように力及ばずに、倒された。私も、すぐにあの仲間入りをするんだと分かった。

 

「……だ」

 

声が聞こえてくる。残念だと。私には期待していたと。私の敗北を持って、今回は終わりだと言っている。この声は落胆を隠さずに私を諦めた。私の体はどんどん生から離れていく。 私、このまま死ぬの?

 

「……やだ」

 

少しずつ薄れていく意識。その中で、私は必死に抗っていた。だって私はまだ終わっていない。まだ生きている。でも、死は私を捉えようとその腕を伸ばしてくる。私の体温が、生と共に失われていく。

 

「……いやだ」

 

どうしてこんなに抗うの? 抵抗しても、苦しいだけだ。動かしたら痛いでしょ? 私の内から声が聞こえてくる。諦めろと。でも嫌だよ。そうだ、私は死にたくない。どうして? どうして、そんなに死にたくないの? それは何も分からないからだ。

 

「嫌だ!」

 

私は、それが分かって、全力で抵抗した。全身を貫く鋭い痛みを無視して抗う。だって何も分からない。自分の事すらも分からないまま、こんな所では死ねない! 私は叫ぶ。魂の叫びを。例えこの声が、誰にも届かないとしても。けれど……

 

「その願い、確かに聞き届けた。オレの力で果たしてどこまでできるのかは分からないが、この身を賭して戦おう」

 

声が、聞こえた。力強い声が。私の悲痛な叫びを、聞き届けたと言って。この空間に光が溢れた。ステンドグラスを砕いて現れた彼は、太陽のように輝いていた。圧倒的な存在感をその身に宿して。

 

「……貴方、は……?」

 

「そうだな。オレの事は、『ランサー』とでも呼んでくれ。君がオレのマスターで間違いはないな? 指示をくれ、我が主よ」

 

黄金に輝く鎧と耳輪を持ち、圧倒的な存在感を纏う男は、『ランサー』と名乗った。彼は、私をマスターと呼び、指示をくれと言ってきた。私は、それにまともに答える事ができなかった。それでも……私は、力の限り彼に向かって叫んだ。

 

「勝って、ランサー!」

 

「承知した。サーヴァント、ランサー。これより、敵勢力を駆逐する。その身に降り掛かる風雨は、この身を持って遮ろう」

 

ランサーは、私の願いに、力強く答えた。そして彼は、敵の人形をあっさりと倒してしまった。凄い、凄すぎる。あまりにも圧倒的なランサーの力。人形とは、まさに格が違う。光る拳打で、あっという間に人形を倒してしまった。その事に呆然とする。

 

「ありがとう、ランサー……って、あ……れ……? ……体が、動かない……よ」

 

私は、そのまま倒れてしまった。ぴくりとも動かせない。でも、死は私から離れていく感じがした。視界が黒く染まっていく中で再び奇妙な声が聞こえたけど、穏やかなランサーの声にかき消された。

 

「弱きマスターよ、君の願いはこのオレが叶えよう。その為に、君に時間を与える。生きるがいい、マスター」

 

私は、そんなランサーの声を聞きながら、静かに意識を失ったのだった。




今回は短めです。
カルナさんの口調が中々難しい。

はくのんは少し乙女かもしれません。
カルナさんの黄金の鎧は、あまりにもチートすぎるので処置しました。
あったら無敵ですからね。

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