仮面ライダーW ジョーカー空白の一幕   作:幻想の投影物

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遅れました
後編です。15000字くらいです。


駆け出したU/その心のままに

「それ知ってる。風都の白い影ってやつだね」

「白い影…あいつが言ったとおりだな」

 

 クイーン、というあだ名の女生徒の言葉に翔太郎は頷いた。この街の学生事情に詳しい。つまり、この街の学生が噂するもの全てを集めることが出来る情報屋としての側面を持っているのだ。

 ここにいるのは彼女だけではない。その相棒のエリザベスという少女も、やや興奮気味に翔太郎へ話を振った。

 

「会ってみたいなあ白い影! あたしも白馬そのものの王子様に助けられてみた~い……」

「白馬そのものっておい、いやまあ見る限りは合ってるんだがなあ。つか危険な目に合わないのが一番だろうがよ」

「分かってないなあ翔ちゃんは! 女の子の夢っても・の・が」

「ああはいはい、わかったわかった。とにかく詳しく教えてくれ」

「えっとね」

 

 クイーンの口から、ユニコーンの話が語られる。

 この街に蔓延るドーパント事件。それはミュージアム壊滅後もアチラコチラに散らばったガイアメモリのせいで休まることはない。大なり小なり、ドーパント絡みの事件は巻き起こっていて、二人のライダーはこの街を毎日駆けずり回っている。だが、当然たった二人ではカバーしきれるはずもないのだ。

 見過ごされた悲劇が有る。失われた命がある。だが、そこにもう一人救い手が現れれば? 決して広すぎないこの街で、その負担を減らす存在が現れたら悲劇は大幅に減らすことが出来るだろう。

 

「それが…ユニコーンだってのか」

「友達も何人か救われてるの。例えば、この前の植物事件とか倒壊した建物の瓦礫を白い影の槍が粉々にしてくれた、とか」

 

 暴走しかけた、小さな身内同士でのいざこざ。この街を救う仮面ライダーですら知り得ない小さな事件にいち早く白い影は滑り込み、持ち込まれたガイアメモリを破壊する。探偵でもなければ警察でもない。だから、人と人の事件を解決することは出来ずとも、その力任せな姿でドーパントから守ることの出来る命はある。

 白い影自身、芝居がかったゆったりとした口調であること。感謝する人々への返答もなく無言で去っていくこと。これらの要因が重なって、なおさら噂は一部にしか広まっていないのだとか。現実的に死ねだのと口走るドーパントがいれば危険だと思うが、芝居がかった人間は相手にしたくない、などと心の何処かで避けてしまうのだろうか。

 

「そっか。情報サンキュー、これで何か美味いもんでも買ってこい」

「そこは翔ちゃんが直接奢ってくれないと!」

 

 駄々をこねるように言うエリザベスに押されるが、翔太郎の顔色は悪い。話を聞く限り、ドーパント体として活動している時間は相当に長そうだ。つまり、オーシャンメモリの使用者であるよしえの旦那を救ってくれたユニコーン自身、毒が回り切って手遅れになる可能性が高い。それは、この風都を愛し、涙を流す人間を生み出さないため奔走する翔太郎にとって望む結末ではない。

 小遣い程度の金額を渡して、情報に感謝した翔太郎は自らの足で鳴海探偵事務所へ歩み始めた。検索する自慢の相棒がいないが、「ユニコーンメモリ」が相手だというのなら翔太郎にだって打つ手はある。脳裏に思い描くのは相棒が残したデータが詰まったパソコン。

 

「おい亜樹子ォ!」

≪だぁっ!? 電話口で大声出すの止めてよね!? そんで何よ!≫

 

 バイクに跨がりつつ翔太郎が続ける。

 

「お前にガイアメモリ説明した時見せたガレージのパソコンあるだろ。あれ開いてAtoZってフォルダ開いといてくれ」

≪あれね、わかった≫

 

 真面目なトーンになったのが電話越しに伝わったのだろう。亜樹子も肩を震わせ叫び返していたところ、目の色を変えて帽子の掛かった壁――偽造した扉――を開いた音が聞こえた。亜樹子が素直に行動を起こしてくれていることに安堵し、通話を切った翔太郎はヘルメットを被りエンジンを回した。

 

 しばらくして、クイーン達と話していた喫茶店から帰宅した翔太郎はガレージへの扉を開けると、こっちこっちとオーバーなリアクションで手招きする亜樹子の姿が見えた。AtoZ……かつての悪の仮面ライダーE永遠(エターナル)が引き起こしたT2ガイアメモリは、26英文字のイニシャルを持つ。

 A加速(アクセル)に始まり、Z空間(ゾーン)に終わるそれらの中に、Uユニコーンという一角幻獣のメモリもあった。その時はマキシマムドライブによって装填され、パワーアップした拳に攻撃されただけであるが、データはそれだけではない。

 

「フィリップ……使わせてもらうぜ」

「それって」

「ああ、相棒が残したある限りのガイアメモリのデータだ」

 

 その都合上、フィリップの検索やフィリップ自身が居なくなることは何度かあった。だから、彼が消失する前にまたこういうことが起こった時のために、フィリップは戦いの時翔太郎だけになってもやられないようにと、パソコンの中に多くのガイアメモリの事を書き記してあるのだ。

 AtoZもまた同じ。ピックアップされただけあって強力な効果を持つガイアメモリばかりだ。これらがまた形を変えて立ちふさがった時は? その時にフィリップが居なかったら? 知識さえあれば劣る力を埋めることが出来る。

 

「あった、ユニコーン」

「これが、翔太郎くんが追ってるドーパント?」

「何度かあぶねえところを助けてもらったんだが……既に長くメモリを使ってるらしい。だが見る限りかなり強かったからな、戦った時に逆にやられちまったら元も子もねえ。…っと、これだ」

 

 ユニコーンの前足と頭部が端にあり、U字を描いたデザイン。

 次いでクリック音とともにユニコーンの詳細が開かれた。まず能力は幻獣としての強力なパワー、そしてスピード。これだけでも通常のドーパントよりも強力だと描かれているが、トライセラトップスのように固有の長物武器を持つ。

 槍は腕までカバーする盾を兼ねた投槍で、額の一角から無限に創りだすことが可能。加えて螺旋状のエネルギーを各所にまとわせることが出来る能力がある。風都タワー内部での決戦時、エターナルが使ったマキシマムドライブの能力がこれだ。

 

「なにこれ、めっちゃ強いじゃん」

「しかも使いこなしてるようだった。こりゃ厄介だな……」

 

 ともなれば、地力が劣るジョーカー単体では正面から戦って勝てる可能性は低い。能力が変幻自在であったりする相手なら、翔太郎自身の技量や機転で抑えられる。だがV暴力(バイオレンス)・ドーパントのように単純なパワーを持つ相手では、ジョーカーではどうしても力負けする。

 翔太郎自身、戦いが好きなわけではない。彼は戦わずに済むなら言葉と手を差し伸べる。それこそが彼の掲げるポリシー。もっとも、その度に翔太郎は掌を返したガイアメモリの精神汚染者に殺されかかっているのだが――G遺伝子(ジーン)・ドーパントのように、自らメモリを差し出した者が居ないわけでもない。

 今回のユニコーンもまた、翔太郎の見る限りは根っからの悪人ではない。そしてメモリの毒素に抗っているようにも見える。よしえの夫に使ったように、単に不浄を癒やす力を自分に使用しているだけとも思えるが。

 

「…待てよ?」

「どうしたの翔太郎くん」

 

 T2ユニコーンメモリは、通常のメモリよりも純正かつある程度強力である。しかし、通常のメモリと違ってある程度完成されているため成長性はない。だから、「不浄を癒やす力」も記されていない。強力な水準でドーパントとしての能力を発揮できるが、それだけだ。ナスカメモリはレベル2にすら到達できず、ウェザーメモリは気象の力を発揮できない。

 だが通常のメモリは毒素の進行や本人の適合率、そして意志次第で思いもよらぬ成長を発揮する。B始祖鳥(バード)は毒素でパワーアップし、Tトリケラトプス(トライセラトップス)は増幅された復讐心で巨大化した。

 ユニコーンもソレと同じなら、もはやあの手遅れだった彼女らと同じほど毒素が進行しているはず。

 

「こりゃ本気で見つけ出さねえとな……」

 

 内心で冷や汗がたらりと垂れる気がした。

 あんな根のよさ気な人間が死ぬのは翔太郎の望むところではない。

 

 亜樹子に事務所を任せ、翔太郎はしばらく独りで行動することを告げた。当然、フィリップが居ない以上強がっても仕方ないと亜樹子に諭されたのだが、こうなった翔太郎はテコでも自分の意志を変えるつもりはない。

 ウォッチャマンやサンタちゃん、クイーン&エリザベス。彼が知りうる限りの情報屋を伝って徹底的にユニコーンの出没地帯を聞いていくが、どこから嗅ぎつけたのか、ドーパントが現れた場所にしか彼の目撃情報はなかった。

 

 八方ふさがりか。だからといって別のドーパントが現れる瞬間を待つしか無いのか。だがそれには犠牲になる人間と、欲に呑まれた人間、そして毒素が進むユニコーンとこの街の涙が3つも重なってしまう。

 アチラコチラにバイクを走らせていた翔太郎は、焦燥感に支配されかけていた。心の支えの一つが消えて、彼は今非常にバランスが危うい状態である。どこだ、どこにいる。目的すら忘れそうな意識が彼の視界すら覆い隠そうとしていたその時であった。

 

「左!」

「ッ!」

 

 甲高いブレーキ音とともにハードボイルダーは車輪を止めた。人がほとんど居ない通りを走っていたことに気づいた翔太郎は、どこだここ、などと呟いて声を掛けられた方を見る。赤が映えるおよそ警察らしくない姿の男がこれまた赤いバイクの隣に立っていた。

 バイクを降りた彼は、翔太郎に近づいていくとヘルメットを外すと、翔太郎自身もよく知る顔があらわれた。

 

「照井…どうしてこんなとこに」

「お前が風都の白い影を追っていると聞いた。俺もその噂については思うところがあったのでな……これを見ろ」

 

 懐から取り出した一枚の紙。それを翔太郎に手渡したのは、この街の二人目の仮面ライダー…照井竜。風都警察署の超常犯罪捜査課に属する警視である。またの名を仮面ライダーアクセル。かつてWのメモリを持った男に復讐するために仮面ライダーとなり、今は守るもののために戦う一人の戦士だ。

 翔太郎は彼から渡された紙を覗き込むと、驚きに目を見開かせた。

 

「ユニコーン・ドーパントの活動地域だ。一見バラバラに見えるが、それらを繋いでよく考えて見れば拠点に近しい場所で最も目撃情報が多い。その様子では駆けずり回るばかりで、一度でも腰を落ち着けては居ないようだな」

「この、場所は……」

「何を焦っているかは知らんが、落ちつけ左」

 

 地図上の点が集中している場所、そしてその中心はかつてのビーン・ドーパント事件で潰されたスーパーが建っている場所。その近くに住んでいて、この街を愛していて、高潔な精神を持つ人間といえば……?

 翔太郎には心当たりがあった。いや、だが彼がユニコーンであるなら納得は行く。それでもメモリに手を出したことが信じられないのだ。

 

「心当たりがあるようだな。行くぞ」

「いや、待ってくれ照井」

「……何だ」

 

 再びバイクに跨がり、ともにドーパントの退治へ赴こうとした竜を翔太郎は止めた。訝しむように視線を投げかける彼に、俯き気味に翔太郎が続けた。

 

「このドーパント、俺にやらせてくれないか」

「だが所長から聞いた。今のお前にとって圧倒的に不利な相手だ」

「いや、こいつがある。地力だけなら負けないはずだ」

 

 翔太郎が取り出したのはM鋼鉄の闘士(メタル)メモリ。かつてフィリップから託されたロストドライバーを手に、彼は鉄をも超える硬い意志を表現したのだろうか。

 

「出来るのか」

「やるしかねぇだろ」

「ふっ、そうだったな。お前はそう言うハーフボイルド(甘いやつ)だ」

「言ってろ」

 

 笑みを浮かべた照井にそう返して、ハードボイルダーに跨る翔太郎。

 彼ならきっとそこにいる。そう考えて、翔太郎はアクセルを今一度回した。

 

 

 

 再建中のスーパーは一角が崩れた程度だったからか、既に元の姿を取り戻しつつあった。それを眺める一人の男。だが建築現場そのものを見ているというよりは、ずっと遠くを見ているような。

 目的の人物だった。同じく風都を愛しながら、その愛の形は翔太郎とはまた別のベクトルを持つ男。彼の後ろから近づいていった翔太郎は、彼の肩へと手をおいた。

 

「よお、宇佐美さん」

「翔太郎さん…どうして此処に?」

「ちょっと宇佐美さんを探しててな。無性に風都について語り合いたくなっちまった」

「それでしたら私もです。貴方という同士が居て、別の視点から風都を見ることが出来る。ワタシは、貴方のことを素晴らしい友人だと思っていますよ」

「お、おう」

 

 宇佐美俊人。目的の人物は、爽やかな笑顔とともに、突然の切り返しに戸惑う翔太郎。友人と言われて悪い気はせず、恥ずかしそうに翔太郎は帽子に手を掛け視線を左右に振る。

 

「場所を移しましょうか?」

「いや、此処で良いんだ」

 

 俊人の提案を蹴った翔太郎に、不思議そうな表情になる彼。

 

「なぁ俊人さん。本当にこの風都はいい街だな」

「どうしたんですか、改まって」

「だけどこの街を騒がせるドーパントだの、そういった存在が居るのも確かだ」

「……ええ、嘆かわしいばかりです。住み慣れた街を思う心が無い人が居るのもわかります。ですが、その悪意を外へ向ける輩が何故かこの街には多い。いえ、きっとドーパントという手段が存在するからなのでしょうが」

「そうだな……俺もそれで、幼なじみや尊敬する人が変貌し、死んでいくのを見せられたもんだ」

 

 かつてのTレックスの女、マリナ。そしてドーパントを作り出すミュージアムによって殺された鳴海荘吉。彼の回りの親しい人間は、そうしてガイアメモリに関わったことで堕ちていった。落としたのは尊厳か、命か。どちらにせよ人として失くしてはいけないものばかりだ。

 

「だからそれを防ぐ仮面ライダーや、風都の白い影には感謝してるんだ」

「白い影……翔太郎さんもあの噂を?」

「実際の目撃証言もあるし、あったこともあるからな」

 

 翔太郎は、その瞬間に確信した。

 

「彼もまた、この街のために戦う戦士だそうですね」

「ああ、そうだな宇佐美さん。―――だからメモリを渡してくれ」

「……はい?」

 

 素っ頓狂な顔で尋ねる俊人。

 まるで宛が外れたかのような反応だが、翔太郎はそんな彼に構うことはない。帽子の下から、隠し切れない熱い心の篭もった鋭い視線を投げかけた。

 

「わかってるんだ、宇佐美さん。あんたはユニコーン・ドーパント……風都の白い影だってことに」

「何を言っているんですか、ワタシがそんな」

「俺が会った、って言った時だ。確かに肩が震えたのを感じた」

「そんなの―――」

「あとな、本当は言いたくなかったんだが」

 

 目を伏せて、彼は言う。

 

「あのオーシャンの男、メモリの毒素にやられて病院で死んじまったんだ」

 

 

 

「――――バカなッ!!?」

 

 

 

 あらん限りに目を見開いて、俊人が言った。

 直後、ハッとした表情で口を覆うが、もう遅い。

 今のは何よりの証言だ。あの場に俊人は居なかった。知っているのは、仮面ライダージョーカーと、ユニコーン・ドーパント。ジョーカーは翔太郎、だから病院で死んだ者がオーシャンのメモリを使っていた事を知っているのはユニコーン・ドーパントの中身が俊人で無ければならない。

 

「ああ、嘘さ。本当はまだ眠ってるが命に別状はねぇ。だけどこれではっきりしたぜ」

 

 翔太郎は腕を伸ばし、手のひらを見せるように開いた。

 

「もう一度言う。メモリを渡してくれ。宇佐美さん、確かに俺達じゃ手の届かないところがあって見過ごした悲劇があるのも確かだが―――あんたが悲劇を生み出す怪物に成り果てる理由にはならねぇんだよ」

「……流石、仮面ライダーは言うことが違いますね」

「バイク見てんなら分かっちまう、か。今更隠すことでもないがな」

 

 俊人は懐に手を伸ばすと、一本のメモリを取り出した。

 

「やっぱ、ユニコーン……」

「それにしても、わからないことがあります。なぜこのタイミングで?」

「メモリの毒素だ。何時かは人を狂わせ、その生命も蝕む最悪の毒素がミュージアムのメモリに埋まってる。それが風都で起きてるドーパントが暴走する原因だ」

「なるほど」

 

 言いながら、彼は腕にある生体コネクタを見せる。

 次の瞬間にはメモリを掲げ―――

 

「おい、何してんだ宇佐美さん!? メモリを渡してくれないのかよ!?」

「ワタシはまだ、やるべきことがあるんです。君たちだけでは拭い切れないこの街の汚れを拭き取らなければならない! そのために、このユニコーンメモリは必要なんですよっ!」

 

 【ユニコーン!】

 

「……ッ!」

「止めろおおおおお!」

「っがああああああああああああああ!!!」

 

 額に脂汗を滲ませながら、決死の表情でコネクタにメモリを差し込む俊人。だが、その苦しみ方は尋常ではない。普通、ドーパント体になることに苦痛は生じない筈なのだ。だが、その毒素が体をも犯すほど肥大化していれば? それらを己の意志一つで抑えこみ、もはや許容量限界にまで達していれば?

 メモリそのものと引き合う俊人は、なるほど、ユニコーンの地球の記憶(メモリ)との相性は良いのだろう。だが外殻(メモリ)の内に潜むミュージアムの悪意とは相容れなかった。

 引き合う2つの力を繋ぎ止めるのは、触るもの皆傷つける茨のロープ。俊人は己の手が血まみれになろうとも、それでもユニコーンを求めて超人体へと変身した。

 

 馬の頭部に、真っ白な肉体。二の腕まで続く青白いタテガミを棚引かせた引き締まった体のドーパント。天を突く螺旋状の角が陽光を浴びて煌めいた瞬間、周囲の民衆はこの風都を脅かす「ドーパント」が出現したことにより、慌てふためいて逃げていく。

 工事中の現場の者たちも、手にした道具を放り投げて我先にと逃げた姿を見届けて、ユニコーンはゆったりと翔太郎に向き直った。

 

「悪いが、この場は逃げさせてもらおう。我はユニコーン、未だ影として在り続けるためにも……」

「そうやって口調も変えて、精神を誤魔化して毒素の影響を免れていたのか。だがさっきの声……宇佐美さん、あんた自分のメモリの毒素は癒せねえみたいだな。なおさら、そのメモリを破壊する理由ができたぜ」

 

 翔太郎の言葉を肯定するかのように、ユニコーンの頭部が明後日の方向へ向けられる。

 

「……邪魔立てするのか、仮面ライダー」

「ああ、あんたは此処で止めねぇとダメなんだ」

 

 ロストドライバーが翔太郎の手に握られる。

 腰に装着し、ベルトがドライバーを固定した。

 彼の()()にジョーカーメモリが握られた。

 

 今度は間違えない。フィリップも関係ない。

 左翔太郎として、彼を止める。

 

 【ジョーカー!】

 

 ガイアウィスパーが轟いた。

 今はまだ、只の人間であるはずの翔太郎にユニコーンが気圧される。

 スロットにメモリが装填され、紫色の波導が脈打つように広がった。

 

「変身!」

 

 鎧の欠片が彼の周囲を舞い、顔には肉体が変化する過程を描く文様が浮かぶ。それもほんの一瞬で、すぐさま彼の全身を覆い尽くした真っ黒な鎧に塗りつぶされる。そして、漆黒の闇夜に浮かぶ赤い光が光輝き、まっすぐにユニコーン・ドーパントを見据えている。

 仮面ライダージョーカー。風都に流れる涙を拭い、溢れる前に涙を止める男。左翔太郎のもう一つの姿だ。

 

 右手を天へ突き出し、左手に切り替え指をさす。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ!」

「我の罪、だと……ふざけたセリフだ!」

 

 ユニコーンにとって、己の行動のすべてを否定されたかのような言葉だった。自分が罪を犯しているなどと、信じたくはないし信じられない。だが仮面ライダーは、その片割れは確かにこうして自分に立ち向かってきている。

 自分が信じた仮面ライダーが、敵として立ちはだかっている。

 

 肩を震わせたユニコーンは逆上して襲いかかってきた。

 両手に持っていた槍を片手にし、空いた左手を額にかざす。生み出された槍は、盾として覆っていたガードが消えて幾分かスマートになっていた。もう片方の槍もソレに合わせて細長い投槍に変化する。

 

「我の……ワタシの行いが!」

 

 突き出された槍を裏拳でいなし、振るわれた槍をくぐり抜ける。

 その両腕を抑えこんだジョーカーはユニコーンの懐に潜り込んだ。

 

「罪だというのか…! 弱きを助け、強気をくじくこの行いは…!」

 

 両腕を抑えるジョーカーを無理やり弾き飛ばしたユニコーン。交差させた槍の間にジョーカーを捉えると、そのまま押し出し姿勢をよろけさせる。バットのように重ねて横へ振るわれた槍は、ジョーカーの胸部に当たり火花を弾けさせた。

 地面を転がるジョーカー。彼は熱のこもった喉から出てくる言葉を吐き出すため、その口を開いた。

 

「ああ、あんたはそれで涙を流している。それは、罪だ。宇佐美さん、あんた自身が認めていない行いなんだ」

「ぐ、おおおおおおおおおおお!」

「だから、まずは受け止めてやるぜ…!」

 

 ジョーカーメモリを抜き出した翔太郎。このままマキシマムドライブへ移行するのか。そう思われるが、彼が取った行動はそれではない。彼の目に見えるのは、背中を向ける鋼鉄の心を持った人物。硬く、そして熱く。完熟(ハードボイルド)な男の背中。

 ユニコーンは槍を統合させ、螺旋状のエネルギーを纏った槍を膝突くジョーカーへと投擲。すさまじい勢いで風を切り裂き迫るそれに、ジョーカーは臆せず一本のメモリを取り出した。

 

【メタル!】

 

 ガイアウィスパーが響き、ロストドライバーにはメタルメモリが挿入される。

 途端に、その全身が鈍い鋼の色に覆われ、背中に武器であるメタルシャフトが現れる。すぐさまシャフトの両端を伸ばし、ユニコーンの追撃を防いだ翔太郎は、メタルは立ち上がった。

 

「来やがれ!」

 

 挑発の言葉を皮切りに、槍を一本に持ち替えたユニコーンが迫る。

 メタルはシャフトを自由自在に扱って攻撃の全てを防ぎ、時には体で受けながらも後退することはない。いや、むしろ一歩ずつだが僅かに進んでいる。押しているのだ、猛攻のユニコーンをその体一つで。

 鳴り止まぬ剣戟の隙間を付き、ボッと空気を破裂させるほどの速度でメタルシャフトが突き出される。胸部を打ち据えられたユニコーンは胸元を抑えながら後退し、その場に膝をついた。

 

「な、なぜですか……なぜこうも強いんですか……教えてくださいよ、仮面ライダー。ワタシには、ワタシには……一体何が足りていないんだ!?」

「さぁな。あんたが宇佐美さんであり続けたなら、簡単にわかったことかもしれねえぜ。ドーパント!」

「き、さまぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 メタルシャフトを振り回し、襲い来るユニコーンを受け流しながら背中に一撃をかます。今度こそ無様に地面を転がるユニコーン。だが、そのいくら防御や耐久に秀でたメタルメモリの姿だからといって、攻撃をモロに受け続けたからだろう。仮面ライダー自身の息も荒く、上がっている。ダメージが一切無いわけではないのだ。

 何より、メタルメモリは翔太郎自身使えるが、使いこなしたメモリではない。かつての相棒、フィリップがソウルサイドのメモリとバランスよく使っていた頃と比べ、単体のメタルは彼の精神と体力を大きく削っている。

 

「くっ……やっぱ無理があったか」

 

 【ジョーカー!】

 ユニコーンと同じく膝をついたメタル。彼はジョーカーメモリを取り出し、再びスロットに差し込み仮面ライダージョーカーへ戻った。体全体を阻害するようなギシギシとした圧迫感は消え、全身を流れる血流のような軽い感触が戻ってくる。

 最も親和性が高く、かつ彼と適合率の高いJ切り札(ジョーカー)のメモリこそ、左翔太郎に相応しいメモリであることの裏返しだろう。

 

「どうだ」

「何の話ですか……!」

「言いたいもん吐き出して、なにか見えてきたかよ」

 

 翔太郎は、まだ俊人が自分からメモリを差し出すように訴える。

 このままメモリブレイクしドーパント体から助け出すのは容易だろう。だが、それでは俊人の心に陰りを残したままになってしまう。翔太郎はそれが我慢ならない。

 

「この街には涙は似合わないぜ」

「…ッ!」

 

 たとえソレが誰の涙であっても、翔太郎はそう言うだろう。

 風都を濡らす水は風が運んでくる雲の雨だけで十分なのだから。

 

「……ぉ」

 

 その言葉を受け取ったユニコーンは一度フリーズしたように動きを止める。その直後に、ブルブルと体を震わせた。両手に握ったのは拳。槍はその手からこぼれ落ちて、地面に打ち付けられた拳は何度も何度も天と地を行き来する。

 

「そうだ、ワタシは、ワタシは…! 気に入らなかった! この風都を破壊するドーパントが! 犯罪者が! だから、美しい町並みを破壊するドーパント共にくだされる仮面ライダーの鉄槌が何よりの喜びだった!」

 

 心から吐き出されたのは、ユニコーンの、俊人の本心だった。

 

「だがそれでもドーパントは減らない! 街の車を使って、電波塔を使って、時には風都タワーすら使い! この街を破壊し、さらなる悲劇を生み出した! 我は、その愚か者どもをこの手で自ら葬り去らねばならないと決意したのだ!」

 

 その汚らしい破壊衝動への憎悪。

 覆い隠すためのヴェールが白い影。

 この街を守ると嘯いて、自分の小さな心が満たすためにドーパントを襲った。

 

 自分が最も嫌いな、ユニコーン(ドーパント)の力を使って。

 

「……それが、あんたの罪か」

「そう、これがワタシの罪なのでしょう」

 

 ジョーカーは、その言葉を受け止める。

 ずっと親しい関係を築いていた人間が、激情を曝け出して暴挙に出る。ドーパントやガイアメモリと関わって、そんな人間ばかりを見てきた翔太郎は、この俊人もまた一人の人間であるのだと、そう思って拳を握る。

 

「結局のところ、ワタシは怪物なんです。誤魔化していましたが、攻撃を受け止め続ける貴方を見ていたら……つい、吐き出してしまった。だから―――」

 

 もう戦う気力はない。心を裸にされたユニコーンは、そのメモリを排出しようと腕のコネクタがあった場所へと手をかざす。ユニコーンのメモリはそのままジョーカーへと手渡されればこの白い影の噂も終わりを告げるだろう。

 俊人は憎悪とともに、気づいてしまったのだ。いくらドーパントを撃破しても満たされない心に、その虚しさに。今まで被っていた偽りの理由からくる満足感で誤魔化していたが、今となっては心を縛る精神全てが空虚に抜け落ちていた。

 

「仮面ライダー、このメモリを……メモリ、を……」

 

 だが―――

 

「メモリが……メモリが出ない!?」

「何だと、くそっ、待ってろ俊人さん! 今すぐブレイクして」

「あ、っがあああああああああっ!? ぐあああああああああっ!」

 

 突如、ユニコーンドーパントが苦しみ始めた。

 その体にタテガミの色と同じ青白い稲光が走り、ユニコーン自身を苦しめている。

 

 当然だ。翔太郎の言葉のおかげで俊人は自分の行いを恥じ、覆っていた心の壁を取り払った。だが、それこそが最大の問題だったのだ。

 取り払われた心の壁を通りぬけ、いち早く浸透したのはメモリの毒素。これまで押さえつけられていた毒は急激に俊人の体を痛みとともに蝕み、心の底まで白い影(ユニコーン)から怪物(ドーパント)へと変貌させていく。

 

「なんで、なんでこうなっちまうんだよ!」

 

 【ジョーカー! マキシマムドライブ!】

 

 ジョーカーのマキシマムが発動し、走りだす彼の拳にまとわれた紫のオーラが尾を引いた。そのままユニコーンの腹部めがけて吸い込まれていくようにラインを描いた美麗なまでの一撃がヒットする瞬間―――ユニコーンの左手がその拳を受け止める。

 

「何っ!? うおおっ!!」

 

 ユニコーンから白い波導が発せられ、吹き飛ばされるジョーカー。

 見る見るうちにユニコーンの胸部、肩には白銀のアーマープレートが装着され、チェインメイルのようなボロボロの腰装備がまとわり付く。シンボルである一角を覆い尽くすフルフェイスのメットがユニコーンの頭を覆い隠し、鎧の隙間から赤く輝く双眸の光が輝いた。

 

「がああああああああああああああああああああああ!」

 

 ユニコーン強化体。かつて白い影として知られた優しき心の仮面の代わりに、メモリがもたらした心の拘束具。全身を締め付けるような痛みをユニコーンに走らせながらも、馬の尻を叩くムチのように強制的に体を暴れさせる毒素の悪意が走った姿であった。

 マキシマムを阻害されたジョーカーは襲い掛かってくるユニコーンをいなそうとするが、先程よりも篭もった重みが違う。先程までは仮面ライダーを倒さないように手加減されていた攻撃だったが、これはメモリのせいで本能と殺意があふれた姿。容赦のない重みが攻撃をそらそうとしたジョーカーの手を弾き飛ばし、凶器となった全身の体重を乗せたタックルがジョーカー自身をもスーパーの壁に激突させる。

 

「俊人さん…!」

 

 いち早く開放しなければならない。ただでさえ無理をしてメモリを使っていた俊人の体は既にボロボロだ。その上で毒素に侵されたのだから、これ以上ドーパント体で居させればそれだけで死んでしまう。

 

 立ち上がったジョーカーは後ろ壁を蹴り、槍を作り出したユニコーンへ向かう。振るっただけでユニコーンとしての螺旋の力が付加された槍は空気を見えない衝撃波として打ち出し、触れていないジョーカーの体にダメージを与える。

 こうなれば万事休すか。そう思ったジョーカーの前に、特徴的な赤いズボンの足があらわれた。

 

「このまま終われば手を出すつもりはなかったが、こうなれば話は別だ、左」

「照井……お前なんで」

「ドーパントとあらば本当に俺が放っておくと思ったのか」

 

 さっそうと現れたのは、メーターがついたバイクのハンドルのようなそれを取り出した照井竜。アクセルドライバーはエンジン音を吹かせ、真っ赤なメモリをスロットに受け入れる。

 

「変……身ッ!!」

 

 【アクセル!】

 二人目の仮面ライダー、アクセル。今此処に二人のライダーが揃った。

 

「さぁ、振り切るぜ!」

「おおおおおおああああああああああああああああ!」

 

 理性をなくした雄叫びをあげ、新たな敵を迎え撃つユニコーン・ドーパント。エンジンブレードを振り上げたアクセルは槍と打ち合い、的確かつ力強い一撃を食らわせユニコーン強化体とたったひとりで互角の力比べを始める。

 勿論黙って見ているジョーカーではない。すぐさまアクセルに加勢し、ユニコーンの横っ面に回し蹴りを食らわせる。頭を揺らされたユニコーンが怯んだ瞬間、返す刃で振るわれたアクセルのエンジンブレードに装填されたメモリが叫ぶ。

 

 【エンジン! エレクトリック!】

 

 紫電が走り、ユニコーンを吹き飛ばしながら雷撃が体を覆う。

 それも一瞬のこと。ユニコーンの纏う白金の鎧がまばゆく光輝き、両手を組んだユニコーンが何かを開放するように両手を広げた瞬間、紫電は消え去った。不浄を癒す力を消す力に変えたのだろうか。コキリと首を鳴らし、唸りを上げるユニコーンに理性は見受けられない。

 

「厄介な……」

 

 アクセルが呟いた瞬間、ユニコーンは二本の槍を作り出し、更にそれを一本に束ねた。それぞれの穂先が交じり合い、槍自身が螺旋を描いたそれは巨大で、いかにもな雰囲気を放っている。

 先ほどのエレクトリックで距離を取ってしまったことが仇となったのだろう。トライアルメモリの力なら余裕で追いつくが、そもそものメモリをチェンジする時間が足りていない!

 

「ああああああああ……が、ああ……!?」

 

 膨大なエネルギーを纏ったソレがいざ投げられんとした瞬間、ユニコーン強化体は動きを止める。激しく震える右手は己の意に反するかのように骨を軋ませながら奇妙に動居たかと思うと、強化体になって追加された胸部のアーマープレートの端に手を掛けた。

 

「……………だー……」

 

 弱々しく震える声が、雄叫びの合間を縫って聞こえてくる。訝しみ二人のライダーが様子を見る時間とともに、その単語ははっきりとした意味を持つ言葉に変わっていった。

 

「今だ、仮面ライダー……!」

 

 それはドーパントではなく、俊人自身の声。

 

「ワタシを、助けてください……仮面ライダァァァアァアアァァァアアァァァ!」

 

 俊人の掛け声とともに、右手が引っ掛けていた胸元のアーマープレートが取り払われる。そこにはドーパントが必ず体のいずれかに持つ「核」の部分が露出していた。強化体になる前には腰にあったそれは、意図しなければ安全な装甲の下に隠れ移動していたということだろう。

 

「ああ、これで決まりだ」

「全て……振り切るぜ!」

 

 【アクセル! マキシマムドライブ!】

 【ジョーカー! マキシマムドライブ!】

 

「相手は強化体、油断は出来んぞ左」

「ならツインマキシマムだ、照井!」

「ああ!」

 

 この一瞬がチャンスだ。

 一気に駆け出して、宙へ跳んだ仮面ライダーは紫と赤のオーラを纏い急降下。狙いは、俊人自身が曝け出したドーパントの核。青白く、そして激しく発光する力の源と思しきそれへと、一分の狂いなく叩き込まれる二人の攻撃。

 

「ぐわああああああああああああ!!」

 

 核を蹴り飛ばしたダブルライダーが着地した瞬間、爆発するユニコーン。

 爆炎が晴れた中には、メモリの過剰仕様の後遺症で全身汗まみれの俊人が仰向けで倒れている。未だその息は荒く、すぐにでも病院に送り届けなければならない状態だった。変身を解除するアクセルに続き、ジョーカーもまたスロットからメモリを抜き出そうとして―――

 

「待って、ください」

 

 俊人に引き止められる。

 

「ワタシは、仮面ライダー……に……なれたでしょう、か……?」

 

 力に呑まれた男が言うセリフではない。だが、そのユニコーンの力に苦しみ、たとえ偽りだとしてもこの街を救う活動を続けていた彼が最後の最後に、呑まれていた力に抵抗して己を開放してみせた。

 ジョーカーはゆっくりと近づき、彼を見下ろす。

 

「ああ、だけどあんたにはもっと良い名前があるだろ。宇佐美さん」

「…?」

「白い影は、確かに黒く塗りつぶされてなんて無かったぜ」

「は、は…ははは……ありがとう」

 

 気を失い、こんどこそ力なく全身を道路に投げ出した俊人。

 こうしてまた、この街に飛び交う噂の一つは永遠に失わるのであった。

 

 

 

 

≪速報です。巷を騒がせていた連続怪死事件の犯人である宇佐美俊人容疑者が自首しました≫

 

 あれから数日後、すっかり毒素の抜けきった宇佐美さんは今まで倒した―――ドーパントになっていた人間を殺した罪を自首することで数えきった。彼は結局、仮面ライダーではなくタダのドーパントとして他のドーパントを攻撃、撃破していたのだ。メモリブレイクができないドーパント同士の戦いは変身が解除されない時、死を意味する。

 正義の名のもとに隠したつもりだった罪を自覚した宇佐美さんは暗い表情だったが、彼が殺したドーパントは捕まっていない凶悪犯罪者であったり、宇佐美さんが心から嫌っている人種だった。だとしても、殺人には違いない。彼の罪は重いだろう。

 

 それでも彼が愛したこの街を、またいつか語り合える日が来ると俺は信じている。

 

「またやってんの? そろそろちゃんと英語覚えたらどうなのよ」

「え、あー……それはだな」

「結局今回は全然出番無かったし、翔太郎くんはいつの間にか突っ走るし、しかもボロボロだし! 私、聞いてない!」

「いってぇ!? 怪我人にスリッパやめろ亜樹子ォ!」

 

 無理をしたメタル単体で変身。あの時に受けた傷は、変身している姿こそ無傷に見えるが実際には翔太郎の体へ大きなダメージを与えていた。これをしれば、出頭した俊人はさらなる罪悪感で申し訳ない気持ちでいっぱいになるだろう。あの時変身を解除しないうちに気絶したのは、ある意味で幸運だったかもしれない。

 

「どっちにしろ、これからはもっと周りに目を向けねぇとな…」

「竜くんから聞いたよ。俊人さん、良い人だったのにな」

 

 買い出しに行ってスーパーで会っていたのは翔太郎だけではない。亜樹子も何度か顔を合わせるうちに仲良くなった一人である。だから顔見知りがドーパントになり、そしてメモリの犠牲者となったことを知って受けた衝撃は少なくはなかった。

 最初に知ったティーレックスの事件のとき、翔太郎もマリナがああなってこんな気持ちになったのだろうか。普段よりも少しだけ、亜樹子も大人しさを見せている。

 

 微妙な空気が流れる中、事務所の扉がノックとともに開いた。

 

「あの、依頼をしたいんですけど……」

 

 ここは風都の鳴海探偵事務所。

 今日も風を受け、カモメはカラカラと翼を回していた。

 





戦闘とかどうでしょうか
迷ったんですが、あってもいいかなと思ってメタル単体の変身をいれてみました。
スカルのような硬い心。体でメタル
スカルマグナムを特化させたトリガー
ジョーカー以外だとこんな風に妄想してます。

あとダブルの展開っぽくなかったことはご了承を。
とにかく書きたいものが書けて満足です。

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