僕の先輩はキョンシー   作:蒼雲

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※注意

キャラ崩壊を起こしてしまうような描写と、他作品ネタが含まれています。ご注意ください。


その三、先輩キョンシーの生態~最初の数ページ~

僕の先輩はキョンシーだ。

混じりっけ無しの、マジものだ。

肘は曲がらない、跳ねて移動する、おでこにお札が貼ってある。

そんな先輩キョンシーの生態をここに記しておくことで、ビギナーキョンシーである僕の今後の糧としたいと思う。

 

 

1、先輩は何でも食べる

 

 

「おーなーかーすーいーたー!」

 

僕たちキョンシーの体は人間の死体から出来ている。そのため、食事は必要としないのが一般的なキョンシー(略してパンシー)だ。そもそも胃がない(腐って欠落している)ので食べたとしても消化できない。だが、先輩は少し違う。先輩の能力である『何でも喰う程度の能力』が働いている...らしい。

その名の通り、先輩は何でも喰うことが出来る。食べ物以外にも石、土といったものから霞までも食べ、自分の体の一部としてしまう。

だが性質までは取り込めない。人間が魚を食べても水中で呼吸ができないように、今先輩が嬉しそうに食べているネズミらしきもの(ここではネズミと表記するが)を食べたからと言って、四足歩行になったり尻尾が生えることはない。

 

というか先輩、またネズミ捕まえて食べてたのか。美味しいのかな?あれは......

言うまでもないことだが、食べ方は相変わらず頭からひとかじりオンリーである。

 

 

2、先輩はグルメ

 

 

先ほどは先輩の能力『何でも喰う程度の能力』について取り上げたが、名前と違って先輩にも好みがあるらしい。

あくまでも僕が観察した範囲内の話だが、先輩の好物は、

・ネズミ(頭からがぶっと)

・鶏、牛、豚などの肉(腐りかけている方が好みのようだ。豪快に一口。)

・せいがさんから貰う謎の肉(せいがさんの腕ごと一口)

・乳製品(こちらも腐りかけのもの。お肉と一緒に一口。)

 

纏めてみると肉ばかりである。生よりは腐っている方が好みのようだが、ネズミのように生け捕りの後踊り食い(一口目のみ)が好きという場合もあるようだ。

 

逆に嫌いなもの(食べているところを見たことがないもの)は、

・雑草

・農作物(特に葉物)

・水気が多いもの(生け捕りの肉から滴る赤いヤツは除く)

 

このようになっている。

グルメというかただ単純に好き嫌いが激しいだけのような気がする。何でも喰うとはなんだったのか。せいがさんも苦労(本人は楽しそうにしているので一概にはそうと言い切れないが)しているようで。謎の肉の隙間に野菜を忍ばせたり、野菜の中に肉を詰めたりと工夫をしてどうにか先輩に野菜を食べさせようとしていた。実にほほえましい光景である。

一言で纏めると、『肉が好きで野菜が嫌い』

......先輩ってほんとにキョンシーなのかな?

 

 

3、先輩はトラブルメーカー

 

 

もう特徴でも何でもないような気がするし、これは見習うべきものでもないというかそういう次元のものじゃないような気がする。

自分からトラブルに足を(無意識に)突っ込んでいくし、何もないところからトラブルを生成したりともう好き放題である。それらは全て無自覚なので余計にたちが悪い。言い換えるならトラブルの女神(?)に愛されてるというか、トラブルをくっつけて歩いているというか...

そう、そんな先輩だからこそ...

 

「あれー?このねずみ、わっかがついてるぞ?」

 

...新たなトラブルを持ってくるペースもきっと早いはずなのである。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

先輩が言っていたわっかというのは言い換えると「首輪」であった。

動物に首輪をつけるというのは、その動物を世話している動物がいる、ということだ。つまり、そのネズミには飼主がいる。

(ここで誰が好き好んでネズミに首輪を付けて飼うんだよと思ってはいけない。ペットの基準は生き物それぞれだ。人間が人間を飼っているケースもあるらしいし、それに比べればネズミをペットとして飼っているというのはそこまでおかしくないだろう。)

そのペットのネズミを、先輩はひとかじりしてしまった。トラブル待ったなし、である。

 

先ほど先輩がトラブルを持ってくるペースが早いという話をしたが、ペースも早ければ進展ももちろん早い。

何故か?それは、

 

「お前だな!うちの『ぱるみ』をひとかじりしやがったやつは!」

 

飼い主の生き物ー言葉を話す人間の形を持ったのネズミーが現れたからだ。

ここで一つ、訂正することがある。

......ネズミがペットって、やっぱりちょっとおかしいかもしれない。

 

 

「『ぱるみ』は…ただの若いネズミだった…普通のネズミたちと同じに…家族を愛し、つがいのネズミを愛し、皆を愛する、私に忠実なただの若いネズミだった…」

 

 

人形ネズミはナズーリン、と名乗った。

短髪の髪に袖口が広い服を着ている。両手には複雑に折れ曲がった鉄の棒が握られていた。

随分と達者な口上をぼーっと聞いている限りでは、どうやら先輩がひとかじりしたネズミはこの人形ネズミの部下(配下、ペットでも可)だったらしく、その仇討ちとして参上したとのこと。

 

「いざ尋常に!勝負!」

 

「じんじょうにー」

 

ここでは、揉め事といったら弾幕ごっこで解決するのが決まりだ。

弾幕ごっこというのは、霊力や妖力などを使って、弾幕を作り、それを撃ち合う遊びのことだ。自分の能力を駆使してその弾幕の美しさを競ったりもする。

 

「後輩」

 

先輩の声がした。でも、口調やトーンが先輩のソレではない。声が低くなってなんだか歴戦の傭兵って感じだ。

 

「特と見ておくがいい。先輩の勇姿を!」

 

そう言ってから人形ネズミと傭兵キョンシーとの弾幕ごっこが始まった。

僕にはどっちが勝ってるとかわからないけど、ぼんやりと弾幕ごっこを見ながら考えていたことがあった。

 

4、先輩は戦いになると、キャラが変わる

 

弾幕ごっこはどうやら先輩の勝利という形で終わったようだ。

 

「くっ...無念...」

 

「さー、かんねんしてくわれるのだー」

 

なんだか目的が変わってるような気がする。そもそもどうして弾幕ごっこしてたんだっけ?

まぁ、そんなことはどうでもいいよね。

どうやらネズミの件は首輪のないネズミに関しては食べてもよい、という話でまとまったらしい。でも先輩なら半日...下手すれば一時間後には忘れてるかもしれない。

 

「いやぁ、あんたにも迷惑をかけるね。」

 

「いえ、改めて先輩がご迷惑を。」

 

なので僕が食べてもよいネズミかどうかを判断することになった。

 

「そういえば君は...キョンシーになったばかりなのかい?」

 

「はい。そうみたいで...」

 

「どうりで会話がまだしっかりと出来るんだね。」

 

まだしっかりと出来ていると思いたい。切実に。僕まで脳が腐り落ちたら、誰が先輩のネズミのあれを管理するのか。いや、違うな。脳が腐り落ちたらビギナーキョンシーを卒業出来るのかな?もしそうなら、卒業なんてしたくはない。

 

ナズーリンさんは近いうちにまた会おうと言って、帰っていった。僕はひそかに安心していた。だってネズミはチーズ、つまり腐った食べ物が好きだ。僕も防腐の術はかけられているとしてもキョンシーの端くれとして、一応死体な訳で。かじられたりしないかとよくわからない心配をしていたのだ。

 

「あのねずみはおいしいのか?」

 

先輩は弾幕ごっこが終わってからずっとそんなことを言っていた。どこまで食欲旺盛なのか。何でも喰うとは伊達ではないということか。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

「今日は楽しかったな。久しぶり弾幕ごっこなんてやったな。」

 

件の人形ネズミは上機嫌にそう言って、スキップしながら帰路についた。

 

このときの僕は一つ忘れていたことがあった。

それは『先輩はトラブルメーカーだった』ということである。トラブルを自分から持ってくるし、トラブルの方から来ることもある。言い換えれば、トラブルを引き付ける。

 

「後で寺の皆にも話してやろう。キョンシーなのになんか変なキョンシーがいるって。」

 

なので、この事が新たなトラブルを引き起こすことなんて、思いもしなかったのである。

 

 

 

 

ちなみに、この事をせいがさんに話してみると...

 

「ぱるめ?ソレってパルメジャーノじゃない?あのネズミ自分のペットに好物の名前つけてるの?」

 

せいかさんはいつかみたいにぽかんとしていた。

...知らなくてもいい事実ってあるものだなぁ。

 





3260文字、かなり難産でした。

ナズーリンがここから話に関わってくるかは...その...なんだ。未定です。

せいがさんが若干空気なのは気のせいです。多分。

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