Fate/after Redoing   作:藤城陸月

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 藤城です。えー……本当にお久しぶりです(汗)。
 忙しかったとは言え、ほぼ一年ぶりの投稿となってしまい、申し訳ありません。



 ──────それではどうぞ。



1騎目 1 微調整────────気付いた事、気付けなかった事

 サーヴァント、騎乗兵(ライダー)

 

 意味は文字通り騎乗する英霊(Rider)

 聖杯戦争に召喚される基本の七クラスの内、最大の機動力を持つクラス。

 戦車や幻獣。果ては神殿などを宝具として保有している事が多く、卓越した騎乗スキルによってそれらを操る。

 

 また、多くの宝具を保有している事が多く、筋力、耐久、敏捷ステータスが若干低めの代わりに様々な状況に対応することが出来る。

 但し、宝具が多いという事は魔力消費が多くなる、という事を意味しているので単独行動のスキルなどの魔力消費を軽減するスキルを持っていない場合は注意が必要である。

 

 

 真名──────メローラ。

 

 かのアーサー王の娘。

 恋人を救うための秘宝を集めるために、一人で世界中を旅をした男装の騎士。

 その逸話から、多くの宝具を保有しながら、同時に単独行動のスキルをBランクの高さで保有しているサーヴァントである。

 

 保有している宝具は4つ。

 男装に用いた『衣装』と探し求めた三種類の『秘宝』、微かな神性を帯びた幻想種の『騎馬』───────そして、人々の幻想を受け止めた正体不明の『聖槍』。

 『秘宝』は3種類の常時発動型の宝具を一纏めにしたものであり、それぞれが絶妙に噛み合い、ほとんどの搦手を対策、封殺している。

 

 

 知名度の低さからか、近接戦闘に関わるステータスが若干低く、宝具のランクも評価規格外(ランクEX)の『聖槍』以外は低めである。

 しかしながら、魔力消費の激しさを保有している高い単独行動のスキルで補い、本人のステータスの低さをスキル直感、魔力放出で補っている。

 また、幸運、魔力、宝具の直接戦闘に関わらないステータスは総じて高めであり、搦手や不意を付かれての敗北の危険性は極めて低いだろう。

 

 

 強いて欠点を上げれば宝具による決戦力に欠けるぐらいだが、長期戦に優れていると言い換えられるだろう。

 また、マスターの負担が大きいため連戦が予想される聖杯戦争では余り勧められないが、高ランクで保有している魔力放出スキルで短期決戦を挑むことも可能だろう。

 

 後は、マスターとの相性のみである。

 秘宝を集めるために世界中を旅をしていたメローラ。その旅路は一人旅であり、誰かと共に戦うことになれていないのではないだろか。そんな不安が───────

 

 

「──────怖かったりはしませんか?」

「いや、大丈夫。後ろにライダーがいるし」

「それなら良いのですが………。実際に乗ってみてどうですか?」

「宝具に乗っているっていう緊張が凄い。膨大な神秘に気が遠くなりそう」

「……なるほど。神秘に触れるものらしい感想ですね」

「後は……そうだね。普段と違う視線の高さなのに一体感がある。それに違和感を感じるけど、この景色をもう少し見てみたく感じる」

「───それなら良かった。

 しかし、思っていたよりも上手いですねアキラ。乗馬の経験があるのですか?それとも、この時代の人でも、日常的に馬に乗っているのですか?」

「現代人が馬に乗る事はまずないよ。単に、俺が乗馬経験があるだけ」

 

 

 ライダーの象徴たる『馬』に乗る二人の姿。

 後ろに乗っているライダーがマスターに乗馬を教えている。

 

 文字通り、手取り足取り。

 馬上で二人歓談している。

 

 

 ──────そんな不安が吹き飛んだ。

 

 

 正直、早く付き合ってしまえば良いと思った。

 

 

 

 

 

 一昨日の夕方、息子が帰って来た。

 そして、その夜にサーヴァント───ライダーを召喚し、6人目のマスターとなった。

 

 

 帰省3日目の昼過ぎ。

 場所は再び冬木市郊外───アインツベルンの森。

 

 

 木々の切れ間、森の中の空地にて。

 

 十一月の下旬。

 寒風荒ぶ中、赤と青の主従は昨日に引き続き互いの強さを確認している。

 

 槍と双剣、体術と魔術。それらを軽く(と言っても二時間ほど)打ち合い、その後はマスターによる援護の術について、弓と投影を利用した実演を含めて互いの連携を確認する。

 戦闘時の行動のうち、最低限、基本的なものを確認しないで、戦場に向かうのは致命行為であることを二人は言われずとも分かっている。

 また、戦闘時の行動を確認、検討することで、新たに礼装を作成する必要が出てくることなども当然ある。それ以前に、昨日の模擬戦で調子に乗り、使い捨ての礼装を消費しすぎた、という理由もあるのだが。

 

 肉体労働と頭脳労働を並行して行う事しばし。

 正午過ぎに空腹で集中が切れそうになっていたので、既に頂点近くに昇っている太陽の下で用意していた昼食をコートから取り出した。

 その後、草むらに寝ころび歓談。

 話の話題がどの様に推移したのかは今一つ定かではないが、徐にライダーが『騎馬』を召喚した。

 

 至る現在、という訳である。

 

 

 

 ──────心配して損した。

 それ以外の感想は特にない。

 

『アーチャーは損をしたな』

 

 後ろからの声。

 聞きなれている、とは言え心臓に悪い。

 

『そうね。今ここに居たら、どんな反応するかしらね』

『さて。だが、少なくとも私たちに見られたくはあるまい』

『でしょうね』

 

 当事者には自覚は無いかも知れないが、傍から見ていると一目瞭然である。

 岡目八目。況や、それがもう一人の自分なら尚更だろう。

 

 

 

 ──────宝具『××××』。

 

 アサシンが生前立ち上げた組織の名前が由来となっており、生前の関係者をサーヴァントとして任意で召喚することが出来る。

 人数に上限はなく、召喚されたサーヴァントは固有の宝具とそれぞれ個別のクラススキルとアサシンとしての気配遮断スキルを保有している。

 

 破格の効果の宝具だが召喚できるのは、アサシンが出会った事があり、生年と没年の間が被った部分がある人物───例えば、アサシンが生前召喚したサーヴァントなどは不可───に限られる。

 この性質から召喚できるのは現代人に限られる。

 その上で、マスターには激しい魔力消費が課されることになる。

 

 ──────この宝具で召喚したサーヴァントに独自の魔力供給方法がない場合は。

 

 例えば、召喚したサーヴァントの中に第二魔法の一端の使い手が居た場合、などだ。

 

 

 

 

 

『──────しかし、アーチャーか』

 

 かつて私が召喚したサーヴァントを思い出す。

 

 

 服が、肌が、髪が─────。神霊の影法師の名を着せられた故に、記憶を含めた凡そ全てが白化した青年。

 

 通常の聖杯戦争の形から大きく外れた聖杯戦争。

 決戦の舞台に乗り込む直前─────地上を遥か、雲の上。逆光の中で振り向いたその顔に、その背中に、自分が知っているはずのダレカの姿を見た。

 

 ─────その時、私は彼の名を読んだ。

 

 アーチャーは嬉し気に、満足げに笑った。

 その笑顔を最後、彼は逆光の中に消えていった。

 

 

 ─────しかし、参ったものだ。

 

 自分が───連鎖召喚という形であれ───聖杯戦争にサーヴァントとして召喚されて改めて実感したが─────。

 

 サーヴァントを聖遺物なしで召喚したした場合、呼ばれるのは縁があるものとなる。

 そして、英霊の座に時間的概念は存在しない。

 

 

 ──────成長と共に、自分が召喚したサーヴァントに似て来る。

 

 その絶望を知った。

 

 

 幼い頃に留学先から帰って来た時。

 私に黙って魔術刻印を移植した時。

 そして昨日──────長い旅から帰って来た時。

 

 折あるごとに、成長と無事の喜びと共にその絶望を知った。

 

 

 体内に聖遺物が封入されている影響で、老化───正確には精神と肉体、魂の経年劣化───の速さが鈍くなっている。

 魔術的に優れた素養を持つことも有り、聖遺物が正しく作用しているのなら、髪や肌の色が大きく変質するはずは無い。

 

 ならば──────聖杯戦争に呼ばれた姿が全盛期になるためには、どの様な工程があったのだろうか。

 

 それらの一切は全く分からない。

 そもそも、他人の空似、という可能性もある。

 

 だが、ただ一つだけ願うのならば──────。

 

 

 ──────彼の行く末に幸多からんことを。

 

 

 彼が自身の結末に──────人生に満足しているのならば、それ以上に望むものはないのだから──────。

 

 

 

  †

 

 

 

 日が暮れかけ、疲れ果てて心身を引きずりながら帰路につく。

 歩きなれた/久しぶりな道を通り、特徴的な武家屋敷が見えて来る。

 角を曲がり─────

 

「─────アキラ!」

 

 ─────家の前で待っていた青年に、急に声を掛けられた。

 

「テツ?」

 

 中学時代の同級生。そのニックネーム。

 なぜ此処に?

 

「いや、■■せんせーに聞いたんだよ。アキラが帰って来てるって」

「寒い中待っていたのか?」

「交代でな」

「交代って─────」

「せっかくだから、遊んで来いってさ」

 

 せんせー公認でなー。こずかいも貰ったし。ハルもチーちゃんもタケもヤッサンもいるから、飯でも食って、朝までカラオケでも行こうぜ。

 

「─────って、どうしたアキラ?」

「いや、何でもない」

 

 ただ、良い友人を持ったな、と思っただけだ。

 

「まあ、いいや。みんな待ってるから早く─────って、この金髪美女はだれ?」

 

 あ、何かデジャブ。

 

 

 

 

 

 宵闇の街──────。

 海外交流が盛んな冬木市でも目を引くような美しい金髪碧眼の女性。

 一人で歩くには危ない時間ではあるが、清廉な気配が一切の穢れを掃っていた。

 

 成人男性を同伴していれば、尚更ではあるが。

 

「大丈夫ですか。アキラ」

「だいじょぶ……」

 

 調子に乗って飲み過ぎました。

 

 酔いつぶれた男性に肩を貸している。

 そんな状況であれば、どれほど女性が目を引く容姿をしていても、声を掛ける男はまずいないだろう。

 面倒ごとに発展することを承知で声を掛けた、判断能力の欠如した者たちは、酔いつぶれた男が一瞬だけ発した殺気に中てられ、自分の行動が文字通り命知らずだったことを本能で理解させられた。

 

 二時間飲み放題の一次会を終え、二次会の後、カラオケで朝まで三次会。

 精魂尽き果てた一行は、酔い覚ましと睡眠時間を求め、ファミレスの机を一つ占拠。

 そんな中、帰りが遅い(マスター)を心配した忠実なる従者(サーヴァント)が魔力経路(パス)を辿り、迎えに来た。

 

 ──────著しくはた迷惑である。

 

「済まないねライダー……」

「いえ、むしろ年相応で安心しました」

「そっか……何となく複雑だけど、まぁいいか」

「そういうモノですからね」懐かしむように「男の子というのはそういうモノです」

「むぅ……ますます、複雑な感じ」

「サーヴァントの外見と体験した年月は一致しませんからね、そういう感情になるのも仕方ないかと」

「いや、そう言うんじゃない──────と、思う」

「思う、ですか」

「そう、思う」何かを考えようとして「ダメだ、頭が回らない」

「そうですか」ふふ、と笑みが零れる「弟を思い出します」

 

「弟……弟かぁ」ぼやけた思考の中で、その一言を反芻する。何か、何かが引っかかる。

 英霊の座。時空間が存在しない場所から召喚されるサーヴァントに通常の時間軸は適応されない。

 今は頼りになる使い魔であり、同時に信頼し合う隣人として存在しているが、本来ならば文字通り手の届かない彼ら。

 彼らに弟のように思われることは、別に可笑しなことではない。ないのだ。

 だが、どこか引っかかる。

 何処に、だ。

 弟、弟……。

 

「弟、というと有名なモードレッドかな?」

 

 モードレッド。

 アーサー王と共に死んだ、とされる忠義熱い騎士。

 一説には主君たるアーサー王とその姉モルガンの子とされ、宮廷魔術師マーリンから円卓崩壊のきっかけになると予言された破滅の象徴。

 後日、その予言は事実となるが、最後まで主にして父の側を離れなかったと伝えれらている。

 

「モードレッドですか」少し、悩む素振りを見せ「彼は自分で騎士になることを選んだ。そんな誇り高い面を持っていました───」

 

 目を閉じ、在りし日の姿を思い出し、語る。

 物思いに耽るかのような。不思議と、その姿から目を逸らせない。

 

「───ですが、やんちゃな一面を持っていまして───」

 

 思い出し笑いをする。LEDぼ電灯が薄青く照らすその横顔に──────

 

「───私にとって彼は自慢の、そして可愛い弟なのです」

 

 満面の笑みでこちらを振り返る。その横顔に──────

 

 もう少しだけ、話を聞きたいと思うと同時に──────

 

 

 自分が聞きたかったことはモードレッドの事ではない、という事に何となく気がついた。

 

 

 実際の戦場を潜り抜け、一瞬の判断が生死を分ける殺し合いを経験した。

 そもそも魔術とは生と死が隣合わせであり、一般人とはくぐり向けた経験が違う。

 

 それでも、彼はまだ19歳の少年であった。

 

 久しぶりに故郷に帰って来て、旧友と再会しハメを外して飲み食いをして朝まで遊ぶ。

 むしろ、こういった人間関係に関しては、一般人よりも経験が浅いのかもしれない。

 正確には、魔術師という閉鎖的なコミュニティではない、普通の場での人間関係に疎い、と評するべきだろう。

 

 

  †

 

 

『──────やれやれ、前途多難だな』

 

 闇の中で、誰かが呟いた。

 

 その誰か”たち”は、協力して二人を見守り続けていた。

 

 対して、ライダーは気配を感じて警戒し/遠坂晶は存在を知り安心していた。

 

 朝凪の中、主従と”誰かたち”の視線は決して交わらない。

 

 

「ところでアキラ。彼らに渡したのは何ですか?」

「お土産だよ。幸運とか金運とかが上昇する効果と厄払いをするように細工したけどね」

「なるほど……。たしか、神秘は秘匿する物では?」

「しゃべっては無し、ばれないように作ったから大丈夫。それに、俺に関わった時点で危ないから、アイツらを人質にしようとした時点で相手が即死するくらいの”お守り”を渡しても問題ないだろ」

「そうでしたか。それならば安心ですね」

 

『確かに、ケルト神話に因んだお土産と言って渡せば一般人にはバレないだろうから神秘の秘匿に関しては問題がない。

 対して魔術師ならば、即興で作ったはずのソレにどれ程の神秘が込められているかを知るだろう。”お守り”の呪いを突破できる魔術師は限られるだろうし──────』

 

 

『──────突破できる程の魔術師が来たのならば、私に分からない筈がない』

 

 冬木市において、最も大きな霊脈に存在する建屋──────柳洞寺を起点に、冬木市中に張られた結界を扱う神代の魔女は静かに微笑む。

 

 

 彼らは、第九次聖杯戦争に向けて整えた準備を、更に盤石なものにしようとしていた。

 

 

 

 

 




 という訳で、一章で語らなかった場所の補完でした。


 今回の話は、ちまちまと書き続けて、じっくりと見直して──────という感じで書いたモノの展開が気に入らず、強引に時間を作り出して途中から内容を変えて、一気に書き上げました。
 後日、タイトルとかを修正すると思います。ご了承願いますm(__)m

 正直、次回の投稿が何時になるか見当もつかない状況が続いています。
 待っていただいている方々には誠に申し訳ないのですが、今しばらくの辛抱をお願いします。


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