駆逐艦響はロシアに渡り駆逐艦Верныйとなった。そんな彼女のはかない物語。

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ロシアに渡った駆逐艦娘

「Верный、撃て、撃つんだ」

 

 Верныйは躊躇った。目の前の娘、実の姉であり、数少ない信頼出来る人物暁は自分が殺らなければならない目標。躊躇わない訳がない。ロシア正式採用の拳銃MP-443グラッチを向けてはいるもののトリガーには指を掛けていない。横にいる厳つい体格の政治将校が再び怒鳴る。

 

「どうした早く殺れ」

 

 Верныйはトリガーガードからトリガーに人差し指を移した。暁が塞がれた口から何か言っている。その目には涙を浮かべ必死に訴えている。

 

「さっさと撃て!この薄汚いヤポンスキーめ!」

 

 Верныйは目を見開き、トリガーを引いた。発射音が響き渡り、Верныйの顔に影が落ちる。Верныйはどうしてこんな状況に陥ったのかを整理すべく、過去を振り返った。

 

 

 私ロシア連邦軍の輸送機に乗っている。見たことも無い大きさだ。が、一度だけ乗った空軍の輸送機より乗り心地は悪かった。見渡すとロシア兵数十人と政治将校に加え、あれは……ソビエツキー・ソユーズだったかな。大和型戦艦に近い排水量、アイオワ級戦艦と同等らしい40.6センチ三連装砲三基、多数の副砲と高角砲。装甲も40.6センチ砲搭載艦としては充分すぎる装甲を持ち、速力も28ノットとそこそこある。まあ、ソビエトの工業力ではそんな高スペック艦が作れる訳がなく、艦娘になってもカタログスペック以下の性能らしい。ロシアが情報公開をしていないので詳細は不明だが。彼女と目が合うと不敵な笑みを浮かべた。睨み返そうかと思ったがこの状態では流石に不味いと思いやめた。明らかに場違いな場所に居る気がする。ロシア兵は政治将校の近くにいる数名を除いて私を見張り、必要ならば殺害する為に居るだろう。行動の様子から特殊部隊。海軍の階級を付けている?海軍の特殊部隊は何だったけ。天龍が言ってた記憶があるけど思い出せない。あの艦娘も同じ任務に付いているんだろう。周囲に味方はいない。その事が私を絶望させた。ああ、暁姉さんに会いたい。姉さんは私がロシアに譲渡されるのが決まった時私を抱きしめてくれた。ただ1人生き残った妹を。私は大声で泣いた。そんな私に姉さんは話しかけた。『響、あなたはどこへ行っても私の妹。大切な妹なんだから。だから……もう……泣かないで。私だって、私だって……』その後は声にならなかった。私達はロシアに渡るまでに僅かに残された時間を可能な限り一緒に過ごした。その時の思い出は一生手放したくない。私にとって最後の宝物。生きる希望なんだから。ああ、姉さんに会いたい。もう一度、一瞬で良いから、会いたい!姉さん、姉さん……。

 

 

 

 突然強い衝撃に襲われた。寝ぼけた頭で状況を整理しようとする。窓から外を見ると地上と翼が見えた。そうか私はロシアに来たんだ。地上走行した輸送機は周囲をロシア兵が取り囲む格納庫に進入した。横幅の広い政治将校から降りろと言われ従う。立ち上がると立ちくらみが起きた。精神でそれを抑えると政治将校の後を追った。機外に出ると肌寒く感じた。日本にいた時は南方配備が多かったせいと最後にいたのが佐世保だったからかな。再び暁姉さんの事が脳裏に浮かんだが私はВерныйだと思い底に沈めた。タラップを降りると初老の男性とロシア海軍陸戦隊の制服を来た若い男が二人敬礼で迎えた。答礼すると彼らは政治将校と一、二言会話を交わし初老の男性に引き渡された。若い二人の陸戦隊員に挟まれそのまま車に載せられる。そこからの記憶は曖昧だ。何処かの再教育施設なる物に連れて行かれ数日過ごした。ウラジオストクの海軍施設に連れて行かれ艤装を受け取った。洋上訓練をしたはず。何か言われた様な気がするが思い出せない。非常に重要な事だったと思う。日本には近づくなだったかな? それとも共産党の命令? 何方でも構わない。ロシアに忠誠を誓わされたから……。ロシアの艦娘は誰も私に近づこうとしない。私自身も構わない。あいつらと友好関係を築きたくない、味方と思いたくない。暁姉さんが唯一の味方だ。任務で一緒になってもその一時の関係。決して友人とよべる者を作らなかった。暁姉さんが唯一の友人、いやそれ以上の関係だ。ちっ、なんでロシアなんかに来たんだ。なんで、なんで……。自分の意思を必死に出さないよう努めながら幾度か哨戒に出たり遠征等を繰り返した。今思うと休憩が無い程の過密スケジュールは上がまだ私を信用できなかったからだろう。

 明くる日町外れの古びた巨大施設に連れて行かれる。コンクリートで出来た窓ひとつ無い不気味な建物だ。検問を抜けたらいかにも強制収容所とも言いたげな鉄製扉の前で車は止まった。護衛兵に導かれて車を降りると目の前で扉がゆっくりと開いた。湿った空気と危険な香りが漂う強制収容所に私は案内された。粗製なコンクリート性の廊下にはコツコツと私達の足音が響く。その中に時折悲鳴が交じる。『響』の頃なら何か感じたかもしれないが『Верный』になった今では何も感じない。まだ半年しかロシアに居ないのにもう、もうこんな思想に染まった事を実感し、そんな自分に恐怖を覚えた。気を紛らわすため辺りを見る。さっきまでは気付かなかった。牢屋が延々と続いている。多くが空だが一部、囚人が居る。彼ら彼女らは全員生気のない目でうなだれるように鎖で手を繋がれている。少なからずの人が傷を負っている。意味する事は唯一。それは……。考えていると案内役のロシア連邦内務省職員がこれまたロシア兵が警護する鉄製扉の前で止まる。彼は証明書を見せ、指紋認証と虹彩認証を行った。これ程まで厳重に守られる設備がこんな場所にあったかと不思議に思いながら案内に従う。脳内で危険と言うアラームと好奇心が対立したが好奇心の方が勝った。先ほどまでとは打って変わり明るく白で統一れた通路が見えた。眩しさに思わず手で隠す。明順応するまで時間が掛かった。やっとまともに見えるようになった時、既にMVD職員は歩き出していた。遅れるのは不味い。私は急いで後を追った。螺旋状に下がっていく通路をどれほど降りたか分からない。数分は同じ光景ばかりでここで合っているのかと不安になった。MVD職員が見えた時安堵した。MVD職員を見て安堵するというおかしさに自嘲した。MVD職員は私が遅れようと自嘲しようとお構いなしに進んで行く。MVD職員と合流してから更に数分、やっと最下層と思わしき所まで来た。MVD職員は目の前にある様々な警告と鍵がつけられた扉に向き合い腰から下げていた鍵で一個一個解錠して行く。最後に一番大きい鍵を開けたらゆっくりと扉は開いた。ベットと医療器具が所狭しと並べられている血生臭い部屋にでた。野戦病院と言えばそれだけだが明らかに違う。白い壁と床、天井はところどころ漂白剤を使っても落とせない血の色で染まっている。ふと目に止まったポスターには《医学の為のボランティア》とキリル文字で書いてあった。その瞬間Верныйは悟った。ここはソビエト連邦時代から使われているであろう医学実験施設なんだ。ソ連崩壊後もこっそりと使用され続けた極秘施設、幾つかある内の一つに私はいるんだ。私を殺すつもりか?実験台として利用するのか?何がしたいんだ。悩んでいるといつの間にか一番奥の扉に着いた。ここまでにあった扉も重厚だったがこいつは違う。まるで戦艦の様な重厚感を放っている。怖い。ここに入ったら今の自分に戻れない気がする。だがMVD職員に逆らうことはできず入室した。薄暗い部屋の壁は岩が剥き出しでX字状の柱で支えられてる。湿った空気の中にツーンとした匂いと血の匂いが混じっている。本当に何をする気なんだ。訳がわからない。道なりに進んで行くと曲がり角があった。MVD職員はそこに立っている。彼の近くに行き、角の先を見ると信じられない光景を見た。意識がない男が柱に縛りつけられている。手前に銃が入ったラックがある。ロシア連邦軍の紋章が付いている。後ろの壁や床等に銃痕が有る事を踏まえるとこの空間は、人を射殺する訓練所だ。案の定MVD職員は銃ラックを指さし奴をやれと言っている。惨い事を……。私はそう思ったが躊躇いを感じずラックからロシア正式採用の拳銃MP-443グラッチを選び取った。不思議と手に馴染む銃を見詰めながら最終確認をした。

 

「本当に良いんだね」

 

 MVD職員は短く

 

「ああ」

 

 とだけ答えた。彼の表情はなく、腕を組んで私を見ていた。裏切れないこの状況下では従うに限る。私は赤いラインまで進み立ち止まった銃口を目標の額に向ける。片手で撃とうと思ったが銃口が振れるので両手で構えた。トリガーガードからトリガーに人差し指を移す。心には何も感じない。全くの無だった。過去も未来も周りも何もなくただ拳銃を構えたВерныйと目標がいた。そこに風が吹いた。黒髪の懐かしい人を思い出した。だがそれを消し去りトリガーを引いた。銃口から飛び出した一発の銃弾は回転しながら男の額に一直線で向かい、ぶつかり、潰れた。潰れながら前に進む銃弾は男の脳を抉り取り反対側へ突き抜けた。私は腕を下ろし俯いた。初めて人を殺した。何故かその事に罪悪感を感じずただ殺したと言う事実が心にあった。MVD職員は拍手をしながら素晴らしいと言った。なんと答えればいいかわからずありがとうございますとだけ言った。

 それ以降、私は暗殺任務も任されるようになった。AKやらVSSと言った様々な銃を扱い反逆者から反政府組織幹部、変わったとこでは麻薬密輸員。某国政府高官を殺した。どの任務も私は極力目標以外には手を出さないようにした。目標はヘッドショットか心臓を狙い苦しまないように殺した。これは私なりの情けだったかもしれない。他の奴らは腕や足を狙い動けないようにしてからなぶり殺す所を即死させているから。殺しに喜びや快感を感じない私は代わりに任務を達成する事に喜びや快感を感じた。何時しか私は内部からMs.Perfectと何故か英語で呼ばれ、外からは純白の堕天使と呼ばれた。純白の堕天使はともかく、Ms.Perfectと呼ばれるのは不愉快だった。私は完璧で無い。弱点がある、弱点があるんだ。姉と言う弱点が。姉さんを思い出したくないと思っても思い出してしまう。ロシアに付いてから仕舞い込んでいた記憶の鍵が少しづつ開いている。私はいつまでВерныйで有ることに耐えられるだろうか。耐えなくては行けない時Верныйが崩壊しないか、とても不安だった。Верныйは誰? 響は誰?  私は響? それともВерный? 私は誰? 人間? 艦娘? 生きている存在?死んでいる存在? 私が誰だか分からない。? あなた達は誰? 亡霊? 私が殺した目標……自分を殺した私に復讐しようとしている。殺される、殺される! どうしてこうなったんだ。思い出せ無い!

 

 怖い。怖い、怖い、怖い。生きたくない、生きたくない、生きたくない、生きたくない……。……死にたい……。

 

 

 

 ある日、私の寮にまたMVD職員が来た。呼び鈴がなって横になっていた私はむりやり体を起こした。体に鉛が入っているみたいだ。感覚も何処か遠くにいっている。カーテンを締め電灯をつけてない部屋は不気味な様子だ。気がつくと玄関が目の前にあった。鍵を開け、扉を開けると私と政府の通信役を務めていた顔なじみの職員がいた。彼は驚いた表情をすると、待っててやるから早く身だしなみを整えて来いと言った。そんなにひどいのかと思った私は洗面所へとのそのそ歩いた。電灯を付け鏡を覗いてみると髪はボサボサで目の下に大きな隈が出来たはしたない顔があった。服も配給された安っぽい下着のままだった。溜息をつきながら髪を整え、制服を着た。目の下の隈が気になるが帽子を深く被ることで誤魔化した。再びい扉を開けると職員に駐車場に行くよう支持された。貴様はどうするんだと聞くとここで別の任務があると答えた。仕方なく1人で駐車場に歩いていった。待っていたのはなんの変哲もないただの日本車だった。海上輸送が制限されている現在でも日本車は絶大な人気を保っている。その車にはMVD職員と政治将校が乗っていた。後ろには私の艤装が積み込まれている。招かれるままに乗ると車は直ぐに走り出した。幹線道路を抜け細い横道に入ったと思えば森の中の道なき道を進んだ。森を抜けると海岸沿いに猛スピードで駆けた。崖の上にぽつんと立つ監獄の様な施設に連れてかれた。寂しげな雰囲気漂う施設は帝政ロシア時代から立っているみたいに古めかしい。案内されるままに入っていく。衛兵が2人しか居ない。どうして? 奥の部屋に案内された。そこで待っていたのは私にとってここにはいてはいけない、いる訳がない艦娘だった。

 

「暁姉、さん?」

 

 思わず息を呑んだ。暁姉さんが拘束され目の前にいる。自分の目が信じられない。ありえないそう思った。私の声に気づいたのか暁姉さんが目を開ける。目を見開き私に何か話そうとするが口が塞がられててなんと言っているのか分からない。当の私も頭が真っ白になった。

「こいつは同志がお前を覚醒させる為に捕まえたんだ。さあ、そこにある銃で撃て。」

 指示通り銃を向けた実の姉に。かけがえのない大切な姉に。暁姉さんは何か訴えようとしている。

 

「Верный、撃て、撃つんだ」

 

 Верныйは躊躇った。目の前の娘、実の姉であり、数少ない信頼出来る人物暁は自分が殺らなければならない目標。躊躇わない訳がない。ロシア正式採用の拳銃MP-443グラッチを向けてはいるもののトリガーには指を掛けていない。横にいる厳つい体格の政治将校が再び怒鳴る。

 

「どうした早く殺れ」

 

 Верныйはトリガーガードからトリガーに人差し指を移した。暁が塞がれた口から何か言っている。その目には涙を浮かべ必死に訴えている。

 

「さっさと撃て!この薄汚いヤポンスキーめ!」

 

 Верныйは目を見開き、トリガーを引いた。四つの銃音が響き渡る。これで良かったと思う。後悔はしてない。Верныйは俯いた。

 

 

 

 二人の衛兵にMVD職員、政治将校は眉間を撃ち抜かれて即死した。Верныйは銃を捨て暁に駆け寄る。震え上がっている暁の拘束を解く。

 

「暁姉さん、暁姉さん」

「響、う、うわぁぁぁん」

 

 私が抱きしめた瞬間姉さんは泣き出した。私も泣いた。もう二度と会えない。私の唯一の心の支えだった暁姉さんに会えたから。二人の間に言葉等必要無かった。暖かい雰囲気が漂う。いつまでもいつまでも抱きしめて居たかった。だが現実はそれを許さない。遠くから車の音が聞こえる。誰か向かってきている。4人の死体がここにある以上私が裏切った事がバレる。海に捨てるのもいいが、時間が無さそうだ。日本に、逃げるか。

 

「暁姉さん、暁姉さん」

 

 暁姉さんに呼びかけるが返事はない。まさかと思い覗き込むと寝ていた。安堵したがこれは面倒だ。起こしても良いが隣の部屋に暁姉さんの艤装があったが徹底的に破壊されていて使い物にならない。私は埋め込まれていたICチップだけ回収すると暁姉さんを担いで外に出た。これしか方法は無い。意識がある方が大変だ。外は既に闇に包まれていた。車から艤装を出し装着する。車に私の主砲弾を利用したIEDを仕掛け崖を駆け下りた。運が良い事に降りた先に繊維強化プラスチック製ボートが流れ着いていた。これはしめたと思い暁姉さんをボートに乗せた。艤装からロープを出しボートに引っ掛ける。引っかかった事を確認して私は弾丸の如く飛び出した。さらばロシアよ。さらば赤い国よ!

 

 

 

 暁は目が覚めると日本の病室にいた。何故こんなところにいるのか理解できなかった。ロシア艦娘に攫われて監禁されて響に助けられ抱き合った事は覚えている。なのになんでこんな日本の病室にいるんだ。頭が混乱している中、長門が入ってきた。

 

「おお、気がついたのか!」

「長門さん!私は、私はどうしてここに。それにひび、Верныйはどこに」

 

 長門は苦い顔をした。

 

「お前が乗ったボートを哨戒艇が見つけたんだ。治療が必要な状態だからここに運び込まれた」

 

 そして一枚の手紙を私に差し出した。受け取って見ると響からだった。

 

 暁姉さん、ごめんなさい。私のせいで酷い目を受けた。それが私に大きな罪悪感として残っている。その事も含めて色々話したかった。新しい思い出を作りたかった。もっともっと一緒に居たかった。でもそれは出来ない見たいだ。生きて帰れるかどうか怪しい。もし私が死んでも鳥になって会いに行くよ。またその時までさようなら。

      響より

 

「長門さん、これって、もしかして……」

 

 長門は頷いた。

 

「嫌よ、嘘に決まっている。どんな時だって帰った来た響は、響は……」

 

 もう帰って来ない。暁はうまれてから此の方味わった事が無い程の悲しみを味わった。

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 追手の攻撃を受けながらもなんとか哨戒線の近くに暁が乗ったボートを押し出したВерныйは追手に向かって突撃した。無線機は壊れていて聞こえない。追手は例のソビエツキー・ソユーズと駆逐艦三。ここで止めないと暁姉さんが殺られる。そう確信したВерныйは死んでも止める覚悟だった。各艦娘から砲撃を受けるが構わず突撃する。一番奥にいるソビエツキー・ソユーズからと思わしき艦娘からの砲撃が降り注ぐ。回避したが左腕をもぎ取られた。激しい痛みに襲われるが突撃をやめない。恐怖に陥った追手の駆逐艦は魚雷をばら撒く。一発がВерныйに辺り右足が焼け焦げた。小口径の砲弾が腹を貫く。頭に迫った砲弾を防盾で防ぐが破片が頭部に当たり血が流れる。鬼神とかしたВерный。ソビエツキー・ソユーズが何か叫ぶが聞こえない。痛いと言う感覚も感じない。駆逐艦の間を突破しソビエツキー・ソユーズに迫る。すぐ近くに味方がいるにもかかわらずソビエツキー・ソユーズは撃ちまくった。私を外れた砲弾が3人の駆逐艦に辺りあっという間に沈んでいった。全身血まみれになり生きているのが不思議なぐらい傷を負ったВерныйはソビエツキー・ソユーズの懐に飛び込んだ。残った右腕の砲を相手の首もとに突き付ける。もう砲弾は残っていない為脅しにしかならない。ソビエツキー・ソユーズを仕留めるため最後の手段を取る。姉さん、やっぱり会いに行けなかった。生まれ変わったら会いに行くよ。ソビエツキー・ソユーズの腕を掴み。

「さようなら」

 

 駆逐艦Верныйいや駆逐艦響の人生はここで幕を引いた。

 

 

 

 数年後、対深海棲艦戦役が終結し平和となった世界でも暁は艦娘と言う職業をやめなかった。自分の居場所はここしかないと言うのもあるが死んでいった妹達の為と言うのが理由だった。ある日、仕事を終え自室に戻り窓を開けた時、目の前の木に純白の毛並みを持った鳥が舞い降りてきた。一瞬ただの鳥かと思ったが見た瞬間、響の生まれ変わりだと思った。そんな事はありえないと思いながらも手を伸ばす。その美しい毛並みに触れた瞬間、鳥は飛び立った。私ったら馬鹿ね、人が生まれ変わる訳がないのに。あれ、なんで泣いているんだろう。涙が止まらない。今の鳥はまさか。

 暁は窓から身を乗り出し叫んだ。

 

「響、また会いましょう!また、会いましょう!」

 

 響を失ってからふさぎ込みがちな自分の心が一気に明るくなった。他人から見れば馬鹿馬鹿しいと思うが私はあの鳥が響だと信じている。ずっと信じている。




 

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