もしも、百夜優一郎が子供のとき(孤児院に入る前)に吸血鬼に会っていたら   作:ブラッディー・メアリー

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気づいたら前回から一年以上が経過しておりました
もう、何というか、申し訳も御座いません


クレアは期待する

「やぁ、天音、じゃなくて、百夜 優一郎くん」

 

取り敢えず友好的な雰囲気で切り出すかと考えたクレアはそう言って優一郎に手を振った。

その間も子供達は得体の知れないクレアに怯え身を寄せ合って震えていたが、優一郎ともう1人の男の子、百夜 ミカエラだけは他の子供達を庇うようにいた。

腰が抜け立つこともできないくらい恐怖に襲われているのにもかかわらず他の子供達を守ろうとするその瞳には小さくとも強い意志が感じられた。

 

「な、何で俺の名前を知っているんだ?」

 

震える声を出しながらも、そう、気丈に返した優一郎は自分がそう答えると同時にクレアの瞳に映った失望のような色を見落とさなかった。

 

「やっぱり、覚えてない、かな?」

「••••••」

 

何とも答えることができずにいる優一郎はただただクレアの瞳から目をそらさないでいることしか出来なかった。

それを、肯定と取ったクレアは少しの悲しみとともに人の記憶力の低さを改めて痛感していた。

 

「あははは、はは、は。覚えて、ない、か。そう、だよ、ね。もう、2年も、たっているもんね。覚えているわけない、か」

 

いや、そうじゃない。2年も、じゃない。2年だけしか経ってない!と、そう、心の中で叫びつつも、何を言っても詮無いこととクレアは悲しみとともに納得した。

否、納得しようとした。

 

「あんた、何処かで•••••」

 

優一郎の言葉は蚊の羽音のように小さく、普通の人間であったならば聞き取ることなど不可能であっただろう。しかし、クレアは曲がりなりにも第一位始祖。その身体能力と諸々は他の吸血鬼を凌ぎ、当然のことながら人間の能力など遥かに凌駕していた。

つまり、何を言いたいのかというと優一郎の発した小さなつぶやきはクレアの耳にはしっかりと届き、諦めようとしていたその心を引き止めるに十分であったということだ。

 

「優一郎、くん?」

 

そう返したクレアの声も小さく、言い知れぬ緊張感を孕んでいた。

クレアの声を聞いてか、優一郎は1人思案するように呟いた。

 

「何処かで、聞いた気がする」

 

その呟きはクレアにははっきりと聞こえ、少しなれども優一郎が覚えていることに喜びを感じていた。

 

「やっぱり、君は優しいね」

 

人間には聞こえないほどの声で1人呟くクレアの顔には先ほどのような悲しさは見受けられず、吹っ切れたようなすっきりとした顔をしていた。

スッキリとしたことで本来の目的を思い出したクレアは今更遅いと思いつつも子供達をサングィネムに連れて行くために少しばかりの威圧感を持って行動を開始した。

 

「ゴホン。・・・あー、なんだ。そろそろ要件をいうとしよう。君たちもわかっているとは思うが、現在この地上ではウイルスが蔓延して大人がいない状況になっている。見たところここは孤児院のようだし、君達は大人の保護が必要だろう。よって、私について来てほしい。君たちを保護しよう」

 

それは、ただの建前。だが、クレアの言葉には僅かばかりの本音も含まれていた。その言葉は意外と本質を見抜くことの多い子供達には建前よりもすんなりと理解できた。

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