もしも、百夜優一郎が子供のとき(孤児院に入る前)に吸血鬼に会っていたら 作:ブラッディー・メアリー
「もし、生き残りたいならここから出ない方がいいよ」
復讐をするなら下手にこちらが保護するより、置いておいた方がいいと考えたクレアは、そう言い残して、家を出て次の目的地に向かおうとしていた。
「次の場所は・・・ここからだと結構遠いなぁ」
大抵のことは力技でどうにかなってしまうクレアは、計画性というものが結構欠けていた。クレア自身がそんなんであるから、クルルのような慎重で思慮の深いものを困らせるのだ。
クレアがボヤきながら、それなりの速さで移動していると、遠方から召集の声がした。
「人間どもの捕獲は終了しました!これより、帰還します!全ての吸血鬼は至急門まで集合してください!繰り返します!全てのーーー」
人間であれば、通信機やら伝令やらが必要なところだが、並外れた聴覚を持つ吸血鬼にはそんなものは必要なかった。
ある意味では、非常に効率のいい伝達方法だとも言える。
「ありゃりゃ?時間切れか。まぁ、ラクスとレーネが最後なんだからそうなるか」
自分でラクス達を追い払っておきながら、召集がかかるまで思いつきもしない。結構なアホゥ・・・ドジっ子である。
「うーん、一度顔を見ておきたかったけど・・・仕方ないか」
そう結論づけたクレアは門へと急いだ。
ーーーーサングィネム城内例の談話室ーーーー
扉で何重にも隔離された部屋の中。もっとも上位の吸血鬼と、この国だ最も高貴とされる吸血鬼が向かい合うようにして座っていた。
静かな沈黙の中、初めに口を開いたのはクルルだった。
「で?楽しかったですか?地上は」
少しばかり棘を感じる言い方である。
「ん?まぁね。1人、顔を見れなかったのは残念だけど」
とうの昔に思いやりやら同情やら空気を読む力やらをなくしたクレアは、クルルの発言に対してフォローするでもなく、簡潔に返した。
「はぁ。左様でございますか」
クレアの性格に関してはある程度理解している、クルルは早々に鬱憤をぶつけるのは諦めた。
言う時には言うが、マジで理解していないクレアになにを言っても無駄だと分かっているからだ。
なんとも不憫な女王さまである。
「で、捕獲した人間どもの様子はどうだ?」
そんな、クルルの心労などいざ知らず、クレアはそう問うた。
相変わらずのクレアの様子にかすかにため息をつきつつも、クルルは簡潔に答えた。
「はぁ。。特に問題は御座いません。特に争いも起こっていませんし。多少泣き喚いているのもありますが、まぁ、子供ですし、こんなものでしょう」
逃げようとすることも想定内だし、泣かれるのもある程度想定内であった、クルルは飽きたような目でそう答えた。
「そうかそうか、流石クルルだなぁ」
特に気負うでも無く、そうするのが当たり前かのように、クレアはクルルの頭を撫でた。
「ななななにを!」
頭などついぞ撫でられたことのないクルルは、クレアの行為に、顔を真っ赤にして後ずさった。
それを見たクレアは苦笑しながら、ゆでダコみたいだぞ、とからかった。
そのまま話はクルルが怒って、たわいない世間話になって終了した。