もしも、百夜優一郎が子供のとき(孤児院に入る前)に吸血鬼に会っていたら   作:ブラッディー・メアリー

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今回はクルル・ツェペシ女王陛下視線で行きます。
キャラ崩壊ものです。ご注意を


女王陛下の憂鬱

私は第一位始祖クレア・バートン様にこの日本の統治を任されているクルル・ツェペシだ。

いと尊きお力をお持ちで、才覚溢れる、我が愛しの君は現在、

 

「はぁ」

 

いつもと変わらぬ美しい顔に、少しばかりの憂いを含み、色気を孕んだ顔で、頬杖をついていらっしゃった。

普通であれば、色恋にでも悩んでいらっしゃるのだろうかと思うところではあるが、幸か不幸か、このお方はとうの昔に恋愛など諦めていらっしゃるので、そう言うわけではないのだろう。

しかし、色気を含んだ顔は同性の私でさえ、なにやら怪しい気分になる。

これでは、下々のものどもへの示しがつかぬので、原因を伺うことにする。

 

「どうかなさいましたか?クレア様」

 

私が声をかけるとふと、顔を上げて私の顔を見る。ぽやぁ、としたその顔は可愛いとも取れるのだろうが、そんな可愛い性格でないことは長い時を共に過ごしたものとして、知っている。

クレア様は、少し迷うような素振りをなさると、またも憂いを含んだ顔をなさって、おっしゃられた。

 

「優一郎君たちなんだけどね‥‥‥」

 

優一郎‥‥…百夜優一郎のことだろう。

確か、その子供はクレア様が自ら迎えにお出向きになられた人間だった、と記憶している。

また、終わりのセラフの実験体であったことも。

 

その子供がどうしたのだろうか?

もしや、クレア様に何か失礼な事を⁉︎

もしそうであるならば、注意しておかねばなるまい。そう、懇切丁寧に、じっくりと‥‥…フフフ

と、いかんいかん!まだ、なにも聞いておらぬのにそのような事を考えては!

続きを聞かねば!

 

「百夜優一郎ですか。そのものがどうかなさいましたか?」

 

私が知っていることに驚かれたのだろうか?

少し瞳を大きくなさったクレア様の顔は驚きに彩られていた。

吸血鬼の象徴とも言える赤い瞳。クレア様のその瞳は他のどの吸血鬼よりも、輝いておられるように見える。

と、いかん!また、思考が脱線した!

 

「いや。優一郎君がどうって話ではないんだけど。優一郎の友達がね、ちょぉっと厄介な事になってるぽくって‥‥…‥」

 

美しいお顔に暗い陰りを落とされたクレア様は、こんな事を言っては不敬かもしれないが、酷く嗜虐心を唆られるお顔をされている。少し泣いている顔が見てみたい気もする。きっとすごく、お美しく、えもいえぬ色香をお出しになるのだろう。

いかんいかん!また思考がそれた!

 

「厄介なこと、ですか?」

 

私が抱いた、不敬な想いなど、この鈍感なクレア様はお気づきになられていないのだろう。私の方を向いていた瞳は、また少し迷うようにして机に向けられ、そして、何もない虚空をまるで仇がいるかのように、睨みつつ仰られた。

 

「フェリド・バートリーの奴に血を吸わせているらしい」

 

あぁ。と、その言葉を聞いた私も自分の眼光が鋭くなるのを自覚した。

フェリド・バートリー、クレア様に敬意を払っているのか払っていないのか分からない態度をとり、また、怪しげな言動の多い厄介者。おまけに性格も悪く、嗜虐心旺盛。

私もはっきり言って関わり合いになりたくない奴だ。

それに、ここ最近の人間の子供の逃亡未遂事件の際、必ずと言っていいほど奴がいる。非常に怪しい。

なるほど。クレア様が苦慮されるのもわかる。

 

「よりにもよって、フェリドですか」

 

この地下の国では人間の食べれるものは少ない。

必然的に人間の子供への配当物も最低限だ。ゆえに、貴族に血を売って、少しでも良いものを食べようとする人間は、恐怖心もあるからだろう、決して多くはない、が、少なくもない。それを、私達が黙認しているのも事実だ。

本来であれば、これまで通り知らぬ存ぜぬを通すものの、相手はフェリド。

十中八九何かしら企んでいるのは確定だ。それを分かっていらっしゃるからこそ、クレア様もここまで気にしておいでなのだろう。

 

「また何か企んでいるのでしょうか」

 

人間の1人や2人、どうなろうと知ったことではない。が、終わりのセラフ実験体の人間が死ぬのは、クレア様の意に反する行為。まして、クレア様はどういうことか、かの優一郎とやらを殊更、大事にしておられる様子。

なれば、死力を尽くして守らねばなるまい。

 

「まぁ、フェリド君のことだからねぇ‥‥何かしら企んでるのは間違いないだろう。問題は、一体何をしようとしているのか、だ」

「ええ。もしこれまで通りであるなら、嗜虐趣味の発言による人間の殺傷、でしょうが‥‥…‥」

 

この可能性は高くはないと思う。

奴も貴族ゆえ、この国での事はほとんど把握しているだろう。なればこそ、クレア様が優一郎とやらを大事にしているのはご存知のはず。

たかが、人間1人のために自らの命を危険に晒すとは到底思えぬ。そこら辺の損得勘定は奴の得意とするところだ。

 

「いや、違うな」

 

当然クレア様もその辺りはお考えになられたようで、思案するように目を伏せられた。

暫しの黙考の後、あぁ、と、呟いたクレア様は独り言のように話し始められた。

 

「優一郎君じゃないのかもしれない。考えてみれば、あの時話してたのは優一郎君の友達。たしか、ミカエラといったか。その子が目当てだとするなら、合点がいく」

「と、いいますと?」

 

確かにクレア様ははじめ、「優一郎君の友達」と、いっておられた。つい、優一郎の名が出たため忘れてしまっていたが、普通に考えるならばそうなるだろう。

だが、何故合点がいくのだろうか?

そのミカエラとやらが優一郎の友達だという事は、フェリドも知っている事だろう。

クレア様がお聞きになられている事実からも、優一郎と共にミカエラがいたのは明白。

ミカエラを害する事がすなわち、優一郎を害する事になるなどという事は、簡単に想像がつく。

故に、何故ミカエラならば合点がいくのか。

 

「あぁ。クルルは知らなかったっけ?」

「何をですか?」

 

あら意外、とでもいいたげな顔でクレア様は聞いてきた。

そして、何か大きな秘密を教えるような、それでいて、なんだか面白いような、恥ずかしいような顔をしておっしゃった。

 

「フェリド君はね、びしょーねんに目がないんだよ」

 

は?

 

目が点になったことを責められる者など誰もいるまい。

ここまで、シリアスに話をしていたのに、いきなりの謎の性癖暴露。

感情と表情がついていかないといったものだ。

そんな私の様子が面白かったのだろうか、クレア様は口元に笑みを浮かべると言い募った。

 

「優一郎君もまぁ、びしょーねんなんだろうけど、綺麗系というよりは可愛い、小動物?みたいな、それがキャンキャン吠えてるみたいな感じなんだよ。で、ミカエラ君は金髪碧眼な見た目に、作り物ではあるが笑みを浮かべるびしょーねん。これは、風の噂で聞いたんだけど、彼のことを微笑みの天使、なんぞと呼んでる吸血鬼もいるらしい」

 

なんか、いろいろと、あれだ。

え〜と、あほ?ばか?へんたい?なんていうんだこれ。

あぁ!残念美女というやつだな!

フェリドなんぞの性癖を、面白そうに語るクレア様はその美しい顔も相まって、話す内容が内容だけに、なかなかに残念な絵になっていた。

もちろん、クレア様自身がびしょーねん趣味だとか、わけのわからぬ、呼び名を使っていることなどないのだろうが、それとこれとは話が別レベルで、うん、残念。

 

私のジト目にお気づきになられたのだろうクレア様は、コホンと咳払いをして本題に戻られた。

 

「あー、まあそれは置いといて、であるからして、フェリド君はミカエラ君を狙っているようだ。ふむ、由々しき事態だな!」

 

なんか、それっぽくまとめていらっしゃるが、残念美女説に拍車がかかっている。

まあ、こういうところも含めて私の愛しき敬愛する君ではあるのだがな!




シリアスにしようと思ったんですけどね、、、、。

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