貴方ももうすでに出会っているかもしれない。
新しい世界の案内人。
──今日は何処へ行きますか?
今日も多くの人々が行きかい、何かを求めて旅に出るこの駅──働き始めて、もう数年が経った。
私も幼いころからよくこの駅を使っていた。とてもお世話になったし、思い出もいっぱいある。そんな場所で駅員をやることになったのだ。人生本当に何があるか分からない。元々お喋りなところは有ったし、接客業には興味もあったから、割とこの仕事は性に合っていると思う。
一日に多くの人が利用するこの駅。ご利用されるお客様には良い旅にしてほしい。私の仕事は、お客様が求めている行先を提供すること。昔自分がやってもらったように、お客様に合った行先を提案できるようにしたいと常日頃から心掛けている。
けどやっぱり仕事。辛いときや大変なときはある。むしろその方が多い。ご利用してくれるお客様が多いのは嬉しいけど、捌ききらなければいけない。それにイレギュラーなことが起こるのは日常茶飯事で……。
「──え? あそこの路線、無くなっちゃったんですか?」
おすすめしようと思った場所が、突然駄目になってしまったり。
「えっとですね……この場所に行くためには、まずここに行った方が……え? 時間がない?」
うまくスケジュールが合わなかったりとか。
けど旅から帰ってきたときに、お客様の笑顔を見れると、やっぱりこの仕事いいな──と心の底から思う。
「あの……すみませーん!」
「あ、はい! どうされましたか?」
お客様の声で我に返る。──いけない、いけない。しっかりしないと。
見たところお客様は十代の女の子。言葉に詰まったり、目が泳いでいるところから見ると、初めてご利用されるようだ。
「本日はどうなさいましたか?」
「えっと……変な話かもですが、これといった目的はありません。ふと何処かへ行きたいなと思いまして。どこかいい場所ありませんか?」
「そういうお客様もいらっしゃいますよ。ではまずこれを」
私はタブレット端末をお客様に手渡す。
「お客様が興味のあるもののキーワードや、ジャンルをしてください」
「……はい、できました」
「入力欄の横にある検索ボタンを押せば、条件に合った場所が出てきますよ」
「四十五件……結構あるんですね。何処にしようかな?」
「場所には評価されているものや感想が書き込まれているものもありますので参考にしてみてください。入力欄と検索ボタンの間にあるボックスで並び変えることができますよ。総合評価順とか、訪れた人の多さとか」
お客様はいろいろ考え悩んだ末、行き場所を決定された。
「あ、そうそう知っていますか?」
切符の手配をしている片手間、お客様に話しかける。悪い癖なのはわかっているのだが──中々治らない。私はとてもお喋りなのだ。何も知らずに旅に出るのも楽しいと思うのだが、少し予備知識があった方が楽しめる時もある。今回のお客様が選ばれた場所はオカルト話が有名だったので、少しだけ──全てを話さず、細部をぼかして話した。そっちの方が考察の余地が出来て、電車に乗っている間も考え事で退屈しないだろう。──この仕事一番の楽しみである。
「ちょっぴり怖くなってきました……」
「大丈夫ですよ、きっと──こちらが切符になります。ではお気をつけて」
私から切符を受け取ると、お客様は小さく礼をして改札へ走って行った。私もその背中を見送りながら、小さく礼を返す。──いい旅になるといいな。
「すみません、予約していた者ですが」
すぐさま次のお客様が来る。チケットのご予約だそうで、お客様から予約番号を聞いて検索をかける。
「ありましたね。ここは──」
目的地の場所を見て、私の口が三日月を描く。
「いい場所ですよね。初めてこの駅を利用したときに行ったんですよ。ここは初めてですか?」
「いいえ、もう何度も行っています。何か悩んだり、迷ったりしたときはよく行くんです。原点回帰ってやつですね」
「そうなんですか……私も今度の休みにもう一度行ってみようかな」
世間話をしつつ切符を発行する。私も小さい頃は、この切符を握りしめて電車に乗って、初めて見る世界に感動したっけ。
懐かしい思い出に浸りながら、刷りたてでまだ温かい切符をお客様に差し出す。
「はい、こちらが───現実発幻想行きの切符になります。改札を抜けて左側、016番ホームでお待ちください」
お客様は楽しげに笑いながらホームへ向かった。
それからもお客様が途切れることなくやってくる──皆いろいろな世界を求めて。先ほどのお客様同様に幻想を求める方、死んだ後、別世界で生きることを求める方、どのカテゴリーにも属さない、見たことがないものを求める方、他にもたくさん──。どんなお客様にも満足いただける路線がこの駅にはある。その出会いをお手伝いするのが私の仕事だ。
──プルルルル
固定電話が鳴り響く。
ゆっくりと手に取り、見えはしないが、向こうのお客様に笑顔を向ける。
「はい、こちら
どうもみなさん。空。(てんのうみ)です。
今回は思いつきで、こんな駅員さんを書いてみました。ラストのシーンを見ずとも、気づいた方はいると思いますが、このハーメルンサイトをモデルに話を作りました。イメージは世界の案内人。私がプロローグを書くときは、大体登場します。(投稿していませんけど)元々は秘封倶楽部の登場人物として描く予定だったのですが、このような形で出力となりました。
ではまたどこかで。