目高箱と幽波紋!!   作:人参天国

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やっぱり更新頻度がガクッと落ちます。
大変申し訳ない……




第三十六話:無事が何より

 

 

「『単刀直入に言うよくじらちゃん』『僕の仲間にならないかい?』」

「断る」

「『だろうね!』」

 

 とりあえずやってみた球磨川の勧誘は、わかってはいたものの躊躇なくくじらに却下された。

 本当に、驚くほど躊躇がない。周りを球磨川、蝶ヶ崎、志布志に囲まれているにも関わらず。

 断ったら何をされるかわからないとか、交渉するフリをして情報を引き出そうとか、スパイになってみようとか、そういう思考が一切ない様に見える。

 

「『わかっちゃいたけどこうもすげなくされると』『いくら僕でもハートに傷がついちゃいそう』『よよよ……』」

「なんだ傷つくハートがあったのかよ。仕方ねえなあ、お詫びにめだかのおっぱいマウスパッドでも作ってやろうか?」

「『君の要求を聞かせてもらおう(キリッ)』」

「おっ、それならせっかくのもてなしだし、菓子とか欲しーな俺は。三時のオヤツを食い損ねちゃったんだよお前らの後始末のせいで」

「……随分寝ぼけたこと言ってくれるじゃねーか。そんなに欲しいなら惨事の瑕疵(かし)でも喰らわせてやろうかァ?」

「おっと怖いじゃねーか一年生。先輩をあんまりビビらせないでくれよ? こー見えて小心者なんだよ俺は」

「『まあまあ飛沫ちゃんいいじゃあないか!』『この面の皮の厚さときたら』『流石の僕も親近感を覚えちゃうね!』『ちょうど打ち上げ用にお菓子をたくさん用意してたんだ』『どーぞどーぞ遠慮せずに食べなよ!』『マウスパッドの件お忘れなく』」

「皮の厚さなら他でもないあんたにゃ一歩譲るさ。一歩だけだがね! せんべい系ある? 無駄な抵抗をバリバリ嚙み砕いてやるのが好きなんだよ」

 

 あまつさえお菓子の要求までする始末。

 ここまで来ると、球磨川だけでなく蝶ヶ崎にとっても大きな違和感が湧いて来た。

 この女、あまりに平然とし過ぎている。いや、それどころか……

 

「……球磨川さん! コイツあたしらをナメてんだよ! ふざけやがって、そんなに死にてーならお望み通りぶっ殺してやるのが親切ってもんだ!」

「いえ、志布志さん。もう少し待ってください」

「蛾々丸くんも何言ってんだ! そんなにおっぱいマウスパッドが欲しいのかよ!?」

「ちっ、違いますよ失礼な!? そういう理由ではありません!」

「はっはっは、おもしれっ!(バリボリ)」

「てめぇえええ!!」

「『もーくじらちゃん』『僕の可愛い後輩をからかわないでくれよ』『イジり甲斐があるのは否定しないけどねっ!』」

 

 球磨川が見る限り更に奇妙なのが……少なくともくじらがヤケクソになっているわけではないということだ。

 これだけ挑発しているのだから当然だが、志布志は今にもくじらに飛び掛かりそうな様子で怒っている。そしてその危険を認識した上でくじらは今、おかしなことに間違いなく身構え、警戒しているのだ。

 戦うタイプではないくじらが球磨川達を相手に喧嘩上等な態度を取り、にもかかわらず攻撃された時は身を守るために動こうとしている。

 矛盾だ。くじらの行動には明らかな矛盾があり、何か……直感だが、()()()()()()()()()()

 

「後輩イジリはこの辺にしてやっか。せっかくなんで俺も単刀直入に聞いておくぜ。さっきからいたみちゃんと電話できてねーんだが、これはお前らが原因か?」

「……へっ、いたみちゃん! ひひ、いたみちゃんねぇ! 心配すんなよ。いたみちゃんなら今頃過負荷(ウチ)の連中が丁重にもてなしてるからさ」

「…………」

「お前が今ここにいるって話も聞いてんだろうさ! 何されようが何食わされようが、いたみちゃんは大人しくもてなされるしかねーってわけよ!」

「『断られたら腹いせに古賀さんを襲わせようと思ってたんだけど……』『あーあ』『せっかくのサプライズを早くもバラしちゃった』『僕は死体同然のいたみちゃんを見てびっくりしてほしかったのになあ』」

「……ふーん、そうかい」

 

 球磨川はいたみの所へ派遣したクラスメイトに連絡すべく携帯電話を取り出したが、しかし……やはりおかしい。

 身内にはかなり情に篤いくじらが、唯一の親友に危害があったというのに妙に落ち着いている。自分だけの問題だったならまだわかるが、親友のためなら動揺して命乞いの一つくらいしてもいいはずなのに。

 そう思いつつも、球磨川は適当な仲間の一人に電話をかけ始める。

 

「今からお前に頭下げて生徒会を裏切ったら連中は引き上げてくれんのか?」

「『どーしよっかなー』『でも』『ちょっとお願いされたくらいでころころ意見変えるような人に』『僕はなりたくないしなあ』」

「いたみちゃんは関係ないだろ。攻撃したいなら俺にしてこいよ」

「『関係ないとか冷たいこと言うなよ』『君のたった一人の君の友達だろ?』」

「どうあっても引き上げてくれねえって?」

「『君といたみちゃんのマウスパッドも追加してくれる?』」

「そりゃイヤだ。いたみちゃんのおっぱいをオモチャにしていいのは俺だけだからな」

「『じゃあ引き上げるわけにはいかないね』」

()()()()()()()()()

「『…………』」

 

 電話が向こうと繋がった。

 

「『もしもーしみんなー?』『もう我慢しなくていいよー』」

『ごめーん! こっちが全然我慢できなかったー!』

「『…………』」

『もーちょっと早く電話くれればみんなまだ喋れたのに~☆』

 

 電話に出たのは、明るく楽しげな声の女の子だった。こんな声の子はマイナス十三組にはいない。

 じゃあ誰なのか? そんなこと、球磨川にはわかりきっている。魔王(マイナス)らしい邪悪(マイナス)な笑みを浮かべているくじらが何より雄弁だ。

 

『はろはろ~! くじらちゃんの可愛い実験動物(しんゆう)いたみちゃんで~すっ!』

「『……はぁ~』」

 

 無駄なテンションの高さに、思わずため息が出た。

 

「『こっちには君の愛するくじらちゃんがいるんだよ?』『いーのかいそんなことしちゃって』『それじゃあ何されたって文句は言えないぜ』」

『良くないに決まってんじゃん! 私だって本当は大人しくしてたかったんだけどさー、くじらちゃんがこういうことになっても構わず暴れろって言ってたからね! もーホント心配! お説教したいから、良かったら後で何しでかしたか教えてよ! まったく~……そんじゃーね!(グシャッ)』

「『うわお』『携帯握り潰したねこりゃあ!』『本当に花の女子高生かよ』『ゴリラだってもうちょっとスマートに携帯扱えるって』」

 

 派遣したクラスメイトも、既に同じ様に捻り潰されていたのだろう。事前の警戒通り、やはり古賀いたみは真正面から相手にしたらいけないタイプの敵だ。

 

「『並の過負荷(マイナス)じゃいたみちゃんの相手にならなかった以上』『彼女を下した今のめだかちゃんは更にヤバいってわかったのは収穫かな』『君が平然としてたのはいたみちゃんの無事を知ってたから?』『電話できてないって言ってたけど』」

「信じてくれてたのかい球磨川先輩。もちろんウソは言ってねーがな。電話できてねーのは本当さ。連絡がついてないとは言ってないしな!」

「『……やれやれ』『どーやら元々こーするつもりだったみたいだし』『君の予想を越えられなかったのはお恥ずかしいばかり!』」

「お前らはいたみちゃんが試合に出てくんのを警戒してるんだろ? 万全ないたみちゃんなら過負荷なんざ屁でもねえからな。対策としてちょっかいかけてくるのは当然だと思ってたよ」

「だがテメーが孤立無援ってことは結局変わらねーだろ! 親友が暴れるために犠牲になろうなんざ、実にお綺麗で反吐が出る覚悟だ! だったらこれから何されようと文句もねェってことだよなぁ!」

「『ダメだよ飛沫ちゃん』『くじらちゃんはこのまま帰してあげよう』『どーも今は彼女の望み通りに事が進んでるらしいや』」

「なっ! 球磨川さん!?」

「『それにどー見たって』『くじらちゃんは”犠牲の心”なんて殊勝な覚悟』『これっぽちもしちゃあいないみたいだしね~』」

「……今は帰す、というのは私も同感です。彼女、どう考えても意図して挑発を繰り返しているようですからね」

「蛾々丸くんまで!? やっぱり「マウスパッドではありませんからね!?」ホントかよぉ……?」

 

 過負荷側の仲間割れを楽しんでいるくじらを見て、球磨川は確信する。

 

「『(今ここで手を出すのはマズそうだ)』」

 

 くじらは間違いなく、ここで戦闘になってもいいと考えている。

 そう、戦闘だ。

 志布志の言う通り、孤立無援で本来なら絶望するような状況なのに、むしろ喜んで抵抗しようとしている。身の安全を思えばどう考えても悪手のはずだが、くじらは現状を歓迎している。これはおそらくハッタリではない。

 だとすれば。

 今、追い詰められているのは下手したら自分達の方だ。ここで戦闘した場合……最悪、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 敗北がイヤってわけではない。愛しい恋人の様に敗北を抱きしめられないヤツなどマイナス十三組には存在しない。

 気に入らないのは相手の望み通りに動いてしまうことだ。生粋のひねくれ者集団である自分達が、誰かの手のひらで予想通りに踊るなんて冗談じゃない。

 

「そうかよ。まあ、何よりなのは無事が一番。何事もないのは良いことだ」

「…………(ギリギリギリ)」

「……だがまあそこの一年が納得してないのは俺でもわかるぜ。先輩としては納得いくまで付き合ってやりたいところだ」

「『だったらどうする?』『君から襲ってくるなら』『流石に僕達も正当防衛しないといけなくなるよ』」

「いやいや、正当防衛の権利は渡さねえぞ? 俺から仕掛けたってバレたら後の言い訳が大変なんだよ。それよりもイイ提案があるぜ」

「『ほほう!』『それは裸エプロンになってくれるくらいイイ提案だろうね?』」

「誰がテメーに見せるかよ。そーじゃなくていたみちゃんのことさ」

「『彼女が裸エプロンに!?』」

「それも俺が個人的に楽しむからダメだ!

 とにかく! お前らがいたみちゃんとのバトルを避けたいのはよぉ~くわかった。そして今後もそのためにうっとおしい策を仕掛けてくるであろうこともな。

 だからスパッとこの件は片づけよう。その方が互いにとって面倒がない」

「『うーん裸エプロンは惜しいけど』『それはそれで建設的な良い提案だね!』『それで?』」

「約束しよう。生徒会戦挙にいたみちゃんは出さねえ。しかも次の書記戦、高貴くんに代わって俺が出てやるよ。それで俺といたみちゃんへのちょっかいは終いにしな」

「『ふむん?』」

 

 ……やはりそうだ。くじらはどうあっても戦いたがっている。

 

「そりゃいい! だったら書記戦の相手はあたしだ! チビのくせに調子に乗りやがって。先輩は先輩らしく、後輩の文字通り踏み台になってもらうから覚悟しなよ!」

「『でも果たしてめだかちゃんがそんなこと許すかな?』『高貴ちゃんだって結局怪我はないんだし』『君が代理をできる理由としては薄いよねー?』」

「おいおい何言ってんだよ。俺はお前ら過負荷共に親友を人質に取られて! 仕方なく、泣く泣く決闘に臨むんだよ! まったくひでー奴らだぜマイナス十三組! 赦せねえ! いたみちゃんのカタキは俺の手で討たねーといけねーなあ!」

「アナタ……人のせいにしちゃいけないって怒られたことないんです?」

「あるぜ。思い出せば心に響く良い説教だったぜ。また受けてもいいくらいだな!」

 

 そう言って、話は終わったとくじらは席を立つ。教室を出ようとする間もくじらは背後からの不意打ちを警戒しているようで、やはり油断がない。

 

「『やっぱり君こっち来ない?』『マイナス十三組でもうまくやってけるよ』」

「そりゃどーも。生徒会側(あっち)をクビになった時は優しく受け入れてくれや」

 

 そして球磨川達に背中を見送られ、くじらは教室を出ることができた。

 結局何もされなかったわけだが、くじらとしては拍子抜け……というよりはむしろ反省する気持ちが大きい。煽り過ぎ、露骨過ぎだったせいで、流石の球磨川にも警戒されてしまったのだ。逸る気持ちが抑えきれないようでは自分もまだまだ、といったところか。

 

「…………ああ?」

「…………」

 

 廊下の壁にもたれている生徒がいた。

 ……江迎怒江だ。

 くじらなど知ったことではないと言うように、澄ました顔で目を閉じている。

 

「…………」

「…………」

 

 だからくじらも何食わぬ顔で怒江の前を通り過ぎて……視線を合わせないまま、背中越しに話しかけた。

 

「俺の健闘を見に来てくれたのかい、お嬢ちゃん。ファンならサインくらいしてやるぜ」

「ボロ雑巾になったあなたが見られるかなーって思ったんですけどねえ。ファンサービスが足りてないんじゃないですう?」

「そりゃ悪かったな。お詫びに次の試合じゃあ最高のショーを見せてやるさ」

「そーですか。頑張ってくださいねえ」

 

 ……くじらは、自分が苛立っているのを自覚していた。

 それは怒江があまりにも余裕な態度で答えているからだけではない。

 

「…………恩でも売るつもりだったかよ」

「あなたなんて私にとってはどーでもいいですけどお、何かあったら奏丞くんが自分を責めちゃうかもしれないですからねえ。死ぬなら周りに迷惑かけないようにお願いしますねえ」

「随分余裕かましてくれやがって。そんなにスタンド使い同士ってのがご自慢かァ?」

「ん〜、それもありますかねえ」

「……十三年間毎日文通してたんだってな。だがこちとら「毎日じゃないですよぉ」あ?」

 

 くじらは振り向いて怒江を見た。

 怒江の様子はさっきと変わっていない。ずっと澄ました表情のまま、目を閉じている。

 

「小学生の時、一日だけ手紙を出しませんでした。だから毎日じゃありません。

 何千日分の一日でも、何万日分の一日になったとしても、出さなかった日がありますう。

 だから、毎日じゃありません」

「……ハッ! そりゃ惜しかったな! 気の毒にもその一日はこの先の人生ずーっと汚点として残り続けちまうわけだ!」

「いいえ?」

「…………」

「あの一日があったから、私は誰にも負けませんよお。あなたにも。他の誰にも」

 

 揺らがない。

 怒江の表情は変わらない。

 くじらの挑発など、物ともしない。

 

「……アイツを誰よりも近くで見て来たのは俺だ。誰よりも深く知ってるのは俺だ。

 遠くからお手紙でせこせこやり取りしてただけの奴が大層な口ぶりじゃねーか」

「あなたは、私たちが十三年間文通を続けてきたことの意味がな~んにもわかっていません」

「…………」

「奏丞くんもまだちょっと自覚が薄いかも。ま、それはあんまり関係ないんだけどね」

「…………ケッ! 今は好きに言わせてやるぜ。負け犬のように去るのも已む無しだ。

 だけど代わりに一週間後! 俺の戦いぶりを見てビビり散らすお前の姿を楽しみにさせてもらうがな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーす機材持って来たぞー」

 

 何食わぬ顔で戻って来たくじらに、奏丞達が揃って顔を向ける。

 何か様子が変だ……とくじらが思う間もなく。

 

「くじら」

「お姉さま」

「くじら先輩」

「くじらちゃん」

「……なんだよお前ら揃って」

「「「「正座」」」」

「…………」

 

 まさか、と嫌な予感を覚えつつ、くじらは機材を置いて無言で正座する。

 奏丞は座ったくじらの肩に手を伸ばし……米粒のような機械を取った。

 

「……盗聴器!? さっき肩叩いた時に!? おまっ、そんなことするキャラじゃなかったろ! もしかして彼女が出来たら束縛するタイプか?!」

「うるせえ! あからさまに怪しいんだよお前の行動は! なんか文句あっか!」

「……いや、案外文句ねえ。むしろちょっと興奮してきた。次の議題は決まったな」

「……おいコラ、議題ってなんだ?」

「……あっ、というかそんなら江迎との会話も聞いてたのか!?」

「大丈夫よ、安心して。くじらちゃんと江迎ちゃんが話し始めた段階で私の判断で切らせてもらったわ。なんだか聞いちゃいけなさそうな予感がしてね」

「……人吉先生が有能で助かったぜ」

「それよりお姉さま! 書記戦に出るなど、危険すぎてとても看過できません!! 戦えないお姉さまでは相手が悪すぎる!」

「その通りだぜ! いくら師匠でも運動神経は全然だし、前線で戦うタイプじゃないだろ!」

「そもそもマイナス十三組の本拠地に一人で乗り込むなんて無茶したらダメよ! 死んでもおかしくなかったのよ!?」

「もー! こーなるから黙ってたのによー! 全部俺にとって必要だからこーしてんだよ! とにかく俺は書記戦に出るぜ! 今更約束を反故にしたら何されるか余計にわかんねーだろ!」

「ぐっ、それは……しかしっ!」

「戦えないことは戦わない理由にはならねーんだ! そこは頑張れーとか勝てーとかって応援しとけ! 全部聞いてたんなら話は以上だ!

 おらっ、善吉! さっさとおめーの検査するぞ!」

 

 立ち上がったくじらは有無を言わさず善吉に検査機器を取り付けていく。

 しかし奏丞も気になっていることをくじらに聞くことにした。

 

「くじら…………おっぱいマウスパッドのくだりって必要だったか?」

「……………………」

 

 痛いとこ突かれたって顔だった。

 

「…………お姉さま? まさかその場のノリで妹を売ったわけではないのでしょうね……?」

「…………渡すのは球磨川と善吉だけにすっから」

「アンタ俺を買収する方針にしたな!? そんなんいらねーから!」

「!? そ、そうか。善吉は私のマウスパッドは、いらんのか……」

「あっ、いやっ、そんな落ち込まれても……!」

「すまない善吉。考えてみればこんな(もの)、マウスパッドには邪魔だしな……」

「肯定してもめだかちゃんが傷つくし否定しても俺の尊厳が死ぬゥ!」

「善吉くんくらいの年齢の子はそういうのに興味があってもいいのよ? もちろんそのことを周囲に知られるのは恥ずかしいだろうけど、興味があること自体はむしろ健全と言えるわ」

「おお、流石人吉先生だ。医者らしい理解ある言葉だ。良いお母さんで良かったな」

「お前が余計なこと言ったからだぞ!? 他人事みたいに言いやがってェ!」

 

 あーだこーだと善吉が一生懸命めだかを落ち着かせ、瞳がそこを大人らしくフォローしている間に、こっそり奏丞がくじらに話しかける。

 

「……お前のことだからやっぱりなんか企んでんだろ。色んな意味で心配はするけど、お前にも考えがあるんだろうから止めはしないでおくよ」

「さんきゅー。理解のある彼クンで助かるぜ」

「やかましいわっ! 古賀先輩はそのこと知ってんのか?」

「おう、議会メンバーには話してるぜ。なんだかんだ応援してもらってるからあとは突っ走るのみだ」

「……おい、だから議会メンバーってなんだ?」

「ただでさえ、言われっぱなしにはウンザリしてたんだ」

 

 くじらの嗤い顔を奏丞は何度も見て来ているわけだが、それは大抵、相手を自分の思い通りに動かす時の女子にあるまじき嫌らしい笑み。直接手を下すことがないからこその顔なのだが……今回はちょっと珍しい感じの嗤い方だった。

 なんというか……獰猛で、これから食い殺してやるって感じで、歯を剝いて嗤っていた。俺の手でぶっ殺してやると言わんばかりに。

 

「俺がその気になりゃあテメェなんざ相手にならねえと、いい加減見せつけてやらなきゃあな!!」

 

 






くじらがやらかす展開は書きやすいです。

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