ソードアート・オンライン Dragon Fang《リメイク版》 作:グレイブブレイド
前回の回で本作にもユウキが登場し、今回はリュウ君との対決になります。
種族がインプで片手剣使い、11連撃のオリジナルソードスキルを習得しているといった共通点を持つこの2人の対決はどうなるのか…。
挿入歌:「Just The Beginning」(仮面ライダーGIRLS)
フィールドとなる小島の中央へと向かっている最中、絶剣が話しかけてきた。
「ねえねえ、お兄さん。さっき話してたシルフのお姉さんって、お兄さんの彼女さん?」
「あ、ああ。そうだけど……」
「やっぱり! なんか友達や仲間以上に親しそうに見えていたからそうだって思っていたんだ~。となると、彼女さんの前でカッコいいところを見せたいってなるよね」
「な、何言ってるんんだよっ!」
「アハハハ。お兄さん面白いね。で、どうなの?」
「まぁ、カッコいいところを見せたいっていう気持ちが一切ないって言ったら嘘になるかな……」
少し恥ずかしそうにしてそう答えた。
――今思うと、ここに来る前にリーファから応援のキスをしてくれたから、ある意味頑張らないといけないんだよな。
戦う直前に余計なことまで考えてしまい、心が掻き乱されそうになる。何とか平常心になろうと心の中で葛藤する。
小島の中央へと着いた頃には落ち着きを取り戻し、俺は絶剣に声をかけた。
「戦う前にもう一度ルール確認でもしておこうか」
「いいよ。さっき言った通り、ボクが使うのは剣だけなんだけど、お兄さんは魔法もアイテムも使ってもいいよ。でも……お兄さんも剣だけなんだよね?」
「ああ。さっき言った通り、俺も剣だけでいいよ」
そう言いながら俺は、右手で鞘に収まっている愛剣を軽く叩いた。
先ほどのアスナさんとの戦いを見ても闘志を失わず、剣だけで戦おうと宣言する俺に対して、ギャラリーからは「よく言ったぞ!」、「流石、アスルドラグーンだ!」などと賞賛の声がいくつも上がった。
「あ、まだ聞いてなかったんだけど、お兄さんは、地上戦と空中戦、どっちが好き?」
地上戦と空中戦、どっちにするか悩むな。
どちらかと言えば、長く戦ってきた地上戦の方が得意だが、SAOでもトップクラスの実力を持つザックさんとアスナさん、そしてキリさんでも倒せなかったとなると容易なことではない。だからと言って、空中戦にしたとしても、俺よりも空中戦が得意なリーファでも倒せなかったから、地上戦よりも有利になる訳じゃない。
悩んでいる俺を見た絶剣は、こんな案を出してきた。
「地上戦と空中戦、どっちもアリっていうのはどうかな?」
「どっちもアリ?」
「うん。通常の地上戦と違って、ジャンプだけじゃなくて翅を使って攻撃したり回避するっていうのもOKだよ。ちなみに、通常の空中戦と同じで、飛べる範囲はこの広場の中、上空の制限は限界高度までだから」
「地上戦に空中戦を合わせたような感じか。そのルールでいいよ」
地上戦と空中戦を合わせた変則ルールということで、ギャラリーも見たことがない戦いが見られるとより一層盛り上がった。
「どっちもアリってマジかよ! スゲー戦いが見られそうだぞ!」
「アスルドラグーンいけー!」
「絶剣も負けるなー!」
「リア充なんかぶっ殺せー!!」
――一部の男性プレイヤーからは何か物騒な声が上がっているんですけど……。何で俺だけいつもこんなこと言われなきゃいけないんだよ……。
ウンザリして軽くため息を吐くが、強敵との対戦前ということで、すぐに心を切り替えて絶剣の方を見る。
絶剣は手慣れた動きでシステムウインドウを操作していた。すると、俺の視界に、デュエルを申し込むウインドウが出現した。
【Yuuki is challenging you】
《ユウキ》、それが絶剣の名前のようだ。
ウインドウの下には、SAOと同様に3つのモードが存在した。《初撃決着モード》、《半減決着モード》、そして《全損決着モード》だ。
SAO時代は、HPを全損させるわけにはいかなかったため、 初撃決着モードしか選ばれなかった。だが今は、 全損決着モードが選ばれるのが主流となっている。SAOにいた頃は、これが選ばれる日が来るなんて思いもしなかっただろう。
こんなことを思いながら、メニューウィンドウを操作していく。全て終えた終えたところで、0秒のカウントダウンが開始される。俺と絶剣は、それぞれ左手、右手で剣の柄を掴み、鞘から引き抜いた。
絶剣が持つ剣は、黒曜石のような色合いをしたレイピアみたいに細めの片手用両刃直剣だ。
俺たちは剣を中段に構え、自然な半身の姿勢を取った。
カウントダウンが0になり、【DUEL】の文字の出現した直後、俺は全力で地を蹴った。
俺は高速の斬撃を次々と繰り出していき、対する絶剣は軽々と剣で防ぎながら攻撃を全て回避していく。一瞬の隙を見て、片手剣の単発ソードスキル《スラント》を発動。
――先制攻撃はこっちが貰った!
だが、絶剣はソードルキルによる攻撃さえも捉えて剣で防ぎ、お返しにと言わんばかりに俺に突きを放ってきた。
俺は間一髪のところで剣で攻撃を防ぎ、後ろへ飛んで一旦距離をとる。
少しでも動きが遅れていたり、剣で受け止める場所がズレていたら、確実に俺のほうがダメージを受けるところだった。
俺のようにサウスポーのプレイヤーだと動きが左右逆になるため、多くのプレイヤーは通常とは逆方向から放たれる剣戟への対応に手こずりやすい場合が多い。しかし、絶剣は問題なく俺の動きに対応出来ていた。サウスポーの俺なら多少有利になるのではないかと思っていたが、その認識は甘かったみたいだ。
息を整えながら絶剣の方を見る。その絶剣はというと、相変わらず笑顔を崩さないまま、再び剣を中段に構えて動きを止めていた。
実際に少し剣を交えただけでも改めて思い知った。
――この娘は本当に強いと。
これならアスナさんだけでなく、キリさんも負けた理由がわかる気がする。
だが、これだけの強敵を前に俺の戦意が喪失することはなかった。むしろ、戦う前と変わらずこの少女……絶剣に勝ちたいという気持ちの方が勝っていた。
深く息を吸い、剣を持つ左手をやや前に出し、何も持たない右手をわずかに後方に引き、絶剣をジッと見る。
絶剣も今の俺を見て何かを感じ取り、気を引き締めた表情へと変えた。
すると、今度は絶剣の方から動き、剣を振り下ろしてきた。俺は左からの切り払いで受けた。火花、金属音と同時にすさまじい衝撃が左手に伝わる。絶剣の攻撃はここで終わらず、次々と斬撃を打ち込んできた。
俺は攻撃を食らいつつも、回避や剣による防御でダメージを軽減する。
一度攻撃が止むと今度は俺の方から斬撃を繰り出していき、絶剣も攻撃を食らってたまるかと俺の攻撃を一撃一撃を剣で防いでいく。時折完全に防ぎきれなかった剣がお互いの体を掠め、俺たちのHPは少しずつ減少していく。しかし、クリーンヒットと言えるものはまだ1回もない。
何度目かの鍔迫り合いが行われた後、絶剣はインプの特徴であるコウモリの羽を模した黒い翅を出し、一旦後方へ飛んで距離を取ると、翅を広げて弾丸のような速さで強力な突き攻撃を放ってきた。
俺も絶剣と同じ黒い翅を出し、飛翔能力と合わせてジャンプして上空へと回避。そのまま上空へと飛び立ち、絶剣も俺の後を追うように飛んで追いかけてきた。
絶剣が俺に追いついてきたところで、俺たちの激しい剣戟戦が再開させた。
飛翔能力を活かした攻撃と回避。地上から上空へと移動した俺たちの戦いは激しさが増す一方だった。
俺より空中戦が得意なリーファを破っただけはあり、空中戦になったからと言って、俺の方が有利になる訳ではなかった。
両者ともに一歩も譲らない状況の中、俺は一旦絶剣から距離を取り、片手剣の単発ソードスキル《バーチカル》を発動。目にも止まらない速さの垂直斬りが絶剣に目掛けて振り下ろそうとする。だが、絶剣は片手剣の単発ソードスキル《ホリゾンタル》を発動させ、水平斬りで俺の攻撃を防いだ。
渾身の一撃がぶつかり合い、巨大な火花と金属音が起き、俺たちは衝撃で後方へと飛ばされる。
激しい剣戟を繰り返している内に、俺はあることに気が付いた。
確かに、絶剣の攻撃速度と反応速度は、キリさんを超えると言ってもいいだろう。しかし、先ほどのアスナさんとの戦いを含めても絶剣はフェイント攻撃を1回もしてこなかったから、まだ対プレイヤー戦闘の経験はあまりないのかもしれない。
もしそうなら、俺にも勝算は十分あるだろう。
先に硬直状態が解けると同時に、翅を広げて絶剣に急接近。絶剣が迎え撃とうと剣を振り上げた瞬間、俺は剣を左手の中で素早く回転させて、逆手持ちにした剣を振るった。
圧倒的な反応速度を誇る絶剣でも、急には逆手持ちの剣による斬撃には対処出来ず、俺の斬撃を受けて体勢を崩した。
俺は飛翔能力を巧みに使って体勢を整えながら、剣を左手の中で素早く回転させて順手に持ち直す。
絶剣の方へと視線を向けると、絶剣が体勢を直しつつ、青紫色の光が纏った黒曜石の剣で俺に狙いを定めようとしている光景が目に入った。
――あれはさっきのアスナさんとの戦いで見せた
俺の左手に握られた剣に蒼炎が纏う。
オリジナルソードスキル11連撃《ドラゴニック・ノヴァ》
絶剣が放った左肩から斜め右下へ放たれた超高速の5連撃を、蒼炎を纏った剣による斬撃で一撃ずつ相殺していく。完全には相殺出来ず、俺たちのHPは少しずつ減少していく。
俺たちの攻撃はここで終わらなかった
絶剣は青紫色の光を纏った剣を左上に構え、俺の右肩から左下にかけて5連撃の突きを放った。対する俺も攻撃を受けながらも、蒼炎を纏った剣で5連撃の斬撃を絶剣にお見舞いした。
そして、11連撃目となる俺の斬撃と絶剣がぶつかり合い、青と紫の強烈な光が発生した瞬間、巨大な爆発が起きた。激しい衝撃が襲い掛かり、俺と絶剣は大きく後方へと吹き飛ばされる。
翅を広げて衝撃を和らげようとする。何とか止まったところで目を開けると、絶剣も俺と同じく翅を広げた状態で宙に浮いていた。そして、HPゲージを確認してみると、俺も絶剣もレッドゾーンに突入していたが、絶剣の方が僅かに多くHPが残っていた。
「絶剣は、俺が11連撃を使っても倒せない相手なんだな……」
勝負はまだ完全についていない。だが、この時点で俺の中では勝敗が確定していた。
「リザイン!」
俺がそう宣言した直後、デュエル終了のファンファーレが宙に鳴り響いた。そして、地上からは観戦していたプレイヤーが上がったのが聞こえてきた。
絶剣は 少し戸惑ったような表情をして俺の方に飛んできた。
「よかったの? まだデュエルの決着はついてなかったのに……」
「君の方が俺よりHPが多く残っていたから、あのまま続けていても俺の負けは確定していたよ。それに、俺が11連撃を使っても君を倒せなかった時点で勝負は着いていたからな……。流石、絶剣って呼ばれているだけはあるな……」
すると、絶剣は笑みを浮かべてこう言ってきた。
「でも、お兄さんも凄かったよ。まさか、とても強いだけじゃなくて、ボクと同じく11連撃の必殺技を使ってくる人がいるなんて……。ホントにビックリしたよ。下手したらボクの方が負けていたかも……」
お互いに相手を賞賛した後、俺たちは握手を交わした。
地上に戻ってくると観客たちの歓声はより一層上がった。
「すっげぇ! 絶剣がバーサクヒーラーだけじゃなくて、アスルドラグーンにも勝ったぞ!」
「でも、絶剣をあそこまで追い詰めたアスルドラグーンも凄かったぜ!」
「ていうか、アスルドラグーンも11連撃使ってなかったか!?」
「アスルドラグーンも11連撃使えるのかよ!?」
――覚悟していたが、やっぱり大事になってしまったな。
後で色々と面倒なことにならなければいいなと思っている中、絶剣が「さっきのお姉さん、ちょっと来て!」アスナさんを呼んでいた。
呼ばれたアスナさんは絶剣の前へときた。
「お姉さんに決めたって思っていたけど、お兄さんも捨てがたいなぁ~。う~ん、どっちにしよう……。悩むな~」
絶剣は俺とアスナさんを交互に見て何か考え込んでいた。
「どっちかなんて決められないから、とりあえず2人でいいや! お兄さんとお姉さん、まだ時間大丈夫!?」
「あ、ああ……。大丈夫だけど……」
「わ、わたしも……」
「じゃ、ボクにちょっと付き合って!」
そう言って、俺の左手とアスナさんの右手を取り、再び翅を出して飛ぼうとする。
「ちょっ!」
「あの!」
俺とアスナさんも慌てて翅を出して宙に浮き上がる。
「ちょっと、アンタ達どこいくのよ!」
声がした方を振り向くと、リズさんが驚き半分呆れ半分と言った顔で手を上げていた。そして、突然の出来事にリーファ達も唖然としていたが、キリさんだけは何故かこの展開をある程度予測していた感じで俺たちにこう言った。
「行ってこい、リュウ、アスナ」
何か訳ありだと思い、皆に向かって叫んだ。
「え、えっと……、とりあえず行ってきますー!」
「あとで連絡するからー!」
直後、絶剣は猛ダッシュに入った。俺とアスナさんも手を引かれつつも、絶剣の後を追いかけた。
これが俺達と絶剣……ユウキとの出会いだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
同じ頃、絶剣のデュエルを見ようと24層の小島に集まった大勢のプレイヤーの中に、ある1人のプレイヤーがいた。そのプレイヤーは、白いフードを深くかぶり、水色と白を基調とした魔導師のような恰好をしている。フードの中から少しだけ見える髪の色が水色がかった銀髪をしていることから、ウンディーネのプレイヤーだと思われる。
「あの喋り方……。まさか、アイツもここに来ていたのか……。しかも、リュウと接触することになるとは……。これは少し調べてみる必要があるな」
ウンディーネのプレイヤーはそう言い残し、小島を後にした。
リュウ君vsユウキの対決は、紙一重の差でユウキの勝利となりました。リュウ君がキャリバー編で使用した《聖剣ジュワユーズ》を今回の戦いで使っていたら等、状況次第ではリュウ君が勝っていたかもしれないです。
X(Twitter)で何度か話しましたが、ユウキ生存ルートは決定事項です。というか、今後の展開にユウキがいてくれないと、マジで詰みポイントが発生してしまう事態になるんですよね…。
次回の投稿がいつになるか分かりませんが、今後もどうかよろしくお願いします。