自動書記の、自動書記による、禁書目録のための。   作:ふらみか

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第八章

*第八章*

 

 月詠小萌宅にて一夜を明かし、俺は焦っていた。

 そのまんまの意味で焦っていた。

「おいおい、夜になっても起きないとか……。こりゃ、いよいよもって不味いんじゃ……?」

 なんとか見つけた食糧を少しだけ口に運んで(あとで食ったこと小萌先生に言わないとな)、本気になって起こそうとしたが、ピクリともしない。心地よさそうに眠っている。寝息が安定していて、安眠中であることが分かる。こんなに気持ちよさそうに寝やがって。無理矢理起こそうとしてる俺が悪者みてぇじゃねえか、へっ。……なんて想いは全く芽生えず、ただただ焦りだけが募っていく。やっぱりIDある無し関係なしに病院に連れて行くか?

 と、

「ただいまなのですよー」

 きた!

「先生! 先生!」

「ど、どうしたのですか上条ちゃん。熱烈なお出迎えは嬉しいのですけど、その……」

 なぜかもじもじしている小萌先生に、俺は詰め寄る。

「助けてください先生!」

「ふぇ? ど、どうしたのですか? ひとまず落ち着いて下さい、上条ちゃん」

「ペンデックスが起きないんです!」

 説明が終わり、小萌先生はペンデックスの様子を見る。

 額に手を翳したり、心拍数を測ったりしている。彼女は看護師の免許でも持っているのだろうか、やけに手慣れていた。

「ただ眠ってるだけみたいですけど……」

 小萌先生の初診はそれだけだった。いや、それは俺も分かるよ、うん。

「でも、いくら起こそうとしても起きないんですよ! あれからずっと眠りっぱなしですよ!? 眠り姫かって話ですよ!」

「でも、なんとなく異常には見えないのです」

「けど……!」

「心配なら、病院に連れて行きます?」

 もうこうなったら腹をくくるか。ID云々は仕方ない! あの医者なら得意先として色々とわがまま聞いてくれるだろ!

 で、連れて行こうかと仕度を始めた瞬間に、玄関の方から声が聞こえてきた。

『かーみやーん! 困った時の土御門さんだぜーい!』

「土御門?!」

 頼りになる親友が来たということで、俺は急いで玄関に向かう。

『諸事情により声だけでお届けするにゃー!』

「なんでだよ! こっちきてペンデックスを見てけばいいじゃねえか! つか見てくれよ! 魔術攻撃かもしれねえんだぞ!」

『ペンデックスってなんだぜい……ま、とにかく、話を聞けばいいんだにゃー、かみやん! インデックスは三日後に起きるようになってるにゃー!』

 ちょっと待て。

「……どうしてお前が今の状況を知ってるんだよ」

 今のこいつの言葉でだんだん冷静になってきた。

『にゃっはははは、そんなことはどうでもいいぜい。かみやんはインデックスが三日後に起きるってことだけを認識しておけばいいんだにゃー』

「なんでだよ、おい!」

『そういうもんだから、としか言えねーぜよ。なにしろ、禁書目録自身が組み上げた防御術式だからにゃー』

「な、に?」

 防御術式?

『眠る時になんか言ってなかったかにゃー?』

 思い出せ。……思い出す。そういえば、なにか……具体的にいえば、第何章第何節とか呟いていたような……。

『それと、この術に右手は効かないぜい。発動した段階で完成しちまってるからにゃー』

「わ、分かった。けど、何でお前がそれを知ってるんだ?」

『分からないことがあるとはいえ、こっちはプロの集まりだぜい? しかも、インデックスは身内だからにゃー』

「そういうもんなのか?」

『そういうもんだぜよ』

 そういうものらしい。じゃあ仕方ないな。うん。納得した。

「えっと、土御門ちゃんがいるんです?」

 いつのまにか小萌先生が俺のすぐ後ろに来ていた。

『その声は小萌先生ー! いやー一昨日ぶりだにゃー! それにしても、かみやん。先生の家でなにやってたんだぜよ?』

「つ、土御門ちゃん! 上条ちゃんはなにもしてないのですよ!」

『かみやん“は”? ってことは小萌先生がしてあげたってことかにゃー? さっすが大人の女性は違うぜよ。ひゅー』

「何言ってるんだよお前は。言うこと言ったならさっさと帰っていいぞ」

『おいおい。俺を帰したがるってのは、つまりそういうことか? さすがに怒るぞ?』

「なに声のトーン下げてんだこら! いいから帰れ変態!」

『せっかくインデックスのこと教えてあげたのに、それはないぜよ……』

「言うこと言い終わっただろ? あと小萌先生も真に受けなくていいから!」

『まったく……避妊はしろよ?』

「だから何言ってんだ!」

『そんじゃまたにゃー、かみやん! もう少ししたら一緒に遊ぼーぜい!』

 言うだけ言って帰りやがった。帰したがったのは俺だけどさ。なんていうか、もうちょっと詫びの一言でも欲しい気がするんだが。どうすんだよ……小萌先生、変な世界にトリップしてるぞ。顔真っ赤にしながらぶつぶつ呟いてるし。ほんとどうすんだ。

「せ、先生はその……でも、上条ちゃんは、かわいい生徒ですし……」

「あのー小萌先生ー? だめだ、完全に聞こえてない。はぁ、不幸だ……」

 小萌先生が復活するまで一時間かかったのは、仕方のないことだろう。

 結局、俺と小萌先生は話し合った結果、土御門の言葉を信じることにした。

 小萌先生は、どうやら用事が長引いているらしく、今日も黄泉川先生のところへ行くらしい。俺は小萌先生に甘えて、泊っていくことにした。ペンデックスを一人にさせたくないからだ。ってことは、これから三日間はここで寝泊まり……になるのか? その間小萌先生は黄泉川先生のとこ? なんだか悪いことしてるな、俺。食事の心配はしなくていいって言われたけど、それもなんだか悪い気がする。

 ……よくよく考えてみれば、ペンデックスになってから、俺結構迷惑かけすぎじゃね? 今更?

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