自動書記の、自動書記による、禁書目録のための。 作:ふらみか
*会議 二*
上条当麻が月詠小萌宅で一晩明かし、ペンデックスの様子に気付き始めたころ。
土御門元春は、ステイル=マグヌスと神裂火織を部屋に招いていた。
「やっぱり君も聞かされてたんだね」
「にゃー。わざわざ、即席で念話術式を組んでまで話してきたぜい」
「僕と同じだ」
「私は直接聞いていないのですが……」
「やーいやーいねーちんハブられてるー。ぷーくすすす」
「つ、土御門っ! 怒りますよ! 状況は既に把握済みです!」
「もう怒ってるように見えるぜよー」
聖人相手をからかう土御門。実は彼、必要悪の教会所属の陰陽博士である。学園都市にはスパイとしてやって来ていた。
「無駄話はもういいだろう。で、僕らはどう動くべきだと思う?」
「それがアレだにゃー。『自動書記』の言ってた『計画』だと、今頃禁書目録は夢の世界か?」
計画。それは今回の会議の要だ。
「多分ね」
「一応、天草式には護衛と監視を命じています。定期連絡によると、速やかに眠ったらしいですよ」
「『計画』通りってわけか」
「にやりってか? 全く、無防備になるんだからもう少し危機感を持って欲しいぜよ」
眠ると言うのは、それだけで危険との距離を縮めてしまう行為だ。それも、世界中の魔術師が狙う禁書目録が、だ。今では魔術師だけでない人間も狙っていたりする。平和になったとはいえ、まだここら辺の火種は未だに消えていない。
「危機感云々は君にそっくりそのまま返すけどね」
「俺はいつでも危機感持ちまくりだぜい?」
「話を逸らさないでください。今のところ彼女は大丈夫なようです。問題は彼――上条当麻です」
「かみやんが問題? まさか、幻想殺しで睡眠術式を打ち消しちまうとかか?」
聞かされた『計画』じゃあ心配いらないって言ってたけど、と土御門は記憶を確認した。
「いえ、そうではなくて。今入った報告によると、どうも、何をやっても起きないあの子に慌てふためいているようなんです」
「あー、そりゃかみやんらしいぜよ。ま、ここら辺は俺が“きちんと”説明しとくとするか」
「そうしてもらうとありがたいです。『計画』通りに運びやすくなるようお願いします」
「それはいいんだけどにゃー。『何をやっても起きない』ってのは、一体『ナニを』したのか……気にならないか、ねーちん」
土御門は、話の途中から真面目モードに切り替わった。
「土御門?」
直後、神裂は瞬時に二メートルはある日本刀、七天七刀を構える。これにはさすがの土御門も苦笑い。
「じょ、冗談だぜい、冗談」
言うと、神裂は構えを解く。ほっとする土御門だったが、彼の試練は、まーだ、終わらない。
「言っていい冗談と悪い冗談があるのを、君は分かってないようだ。せっかくだ、その皮膚に焼きつけていつでも確認できるようにしておくか?」
今度はステイルが構えたのだった。どうもこの二人、インデックスの事になると、最優先がそれになってしまうようである。
「す、ステイル? なんでカード持ってるんだにゃー? 火が着きそうだぜい?」
「ちなみにこの学生寮には五〇〇〇枚のルーンのカードを配置させてもらっててね?」
ステイルの目は据わっている。こやつ、本気だ。
「にゃー!? やめるんだぜい! 火事だけはどうかー!」
「知ったことか。――顕現せよ、」
「待って下さい、ステイル。あまり騒ぎを大きくするといけません」
神裂の言葉でステイルは落ち着きを取り戻す。が、忘れてはならない。彼女も取り乱した口である。
「……命拾いしたね、土御門元春」
「ち、ちびりそうだったぜよ……」
冷や汗を流しながら、土御門は乾いた笑いを零した。
「話を戻しましょう。それで、私達はどう動けばいいか、ということですが」
「……去年の通りでいいんじゃないかな」
去年の今頃。ステイルと神裂はインデックスを追っていた。敵として。つまり彼は、それを今もう一度なぞれ、と言っている。
「ま、結局はそうなるんだにゃー。俺だけは自由行動だけども!」
ただ去年と違うところはたくさんある。例えば土御門元春。彼は去年の今頃、インデックスと接触していない。ステイルと神裂はインデックスを「保護」するために「追う側」となっていたが、今はもう深い仲を取り戻している。
「去年……」
その去年を思い出したのか、神裂は表情を曇らせた。
「再び彼に立ち向かうのは、例え『計画』上必要なことだとしても、心苦しいです」
そうなのだ。
どんなに状況が変わろうと、去年と同じ行動をするということは。
上条当麻を、再び傷付けなくてはいけない。
「なんだったら俺がするぜい?」
「……いえ、これは、私がやるべきことなんだろうと思います。あの子の考えを無碍にするつもりもありませんし」
「損な役を回してしまってすまないね」
「ホントだぜい。そういうのは、俺がやればいいことだと思うんがにゃー」
「仕方ありません。お気遣いだけでも感謝します」
必要悪の教会。
今や、どこかのヒーローのおかげで角が丸くなり過ぎているような気がするが。
それでいいのかもしれない。
世界はこうして変わるのだ。