自動書記の、自動書記による、禁書目録のための。 作:ふらみか
*行間 一*
起きると、真っ暗だった。
目を開けている感覚はあるけど、一面に黒しか見えない。
何度も目を擦りながら周りを確認する。
「あれ、とうまの部屋……じゃ、ない……? どこだろう、ここ?」
かといって、不安な気持ちにはならなかった。
ひとまず私は立ち上がる。
「なんか不思議な気分かも」
この状況に安心できている、とは言いづらい。
魔術的な知識ならば右に出る者はいないくらい自信がある私でも、この現象は不可解なのだ。
この一〇万三〇〇〇冊の魔道書のどこを探して――、
「あ、あれ!? ないんだよ! え、うそっ!?」
私は魔道書の知識の部分だけごっそりと抜け落ちていることを確認した。
*第二章*
「にゃー、一応連絡しておいたぜい」
「必要はないと告げたはずです」
めでたく朝食にありつけた俺とインデックスは、食べ終わるとちょっとした会議をすることとなった。
「保険はあった方がいいぜよ。それにしても、『自動書記』原因不明の起動、ねぇ……。かみやん、なにか覚えは?」
「ねぇよ。あったら相談してるって」
「んー……」
「あっちはなんて言ってたんだ?」
あっち、というは、インデックスや土御門が所属するイギリス清教のことである。
「信じられないことに現状維持って言われたんだにゃー」
信じられない? 何が? 俺が不思議に思っていると、土御門はそれを見抜いてきた。
「何か不思議なことでも言ったかにゃー?」
「いや、信じられないってお前が言ったから……。なんで信じられないんだ?」
「あの、『自動書記』ぜよ? 学園都市どころか、国の二、三個が簡単に消えちまうぜい。それを『放置』だ。裏があるんじゃにゃーかと疑っちまうぜい」
「物騒な例えだなおい」
「事実ぜよ」
「異論を唱えます。現在、私には、そういう行動を取る程の理由が存在していません」
「……なにが一番信じられないって、きちんと会話できてるとこだにゃー」
「おかしいことなのかよ」
「かみやん、思い出すんだにゃー。『自動書記』ってのは、自己防衛プログラム。つまりAIみたいなものだぜよ。それも、特定の行動しかできなくなるようにする仕組みだぜい。魔道書を守るためっていう信念に基づくように行動するはずなんだにゃー。もっとも、霊装で制御できれば話は変わるんだが……あいにく、そういった痕跡は見受けられないぜよ」
「痕跡?」
「一応スペシャリストとしての意見を言えば、魔力制御をしているような、言わば外部からの力っていうのが感じられないんだぜい。個人的な意見で言えば……」
「言えば?」
「無理やり動かされることになるから、もっとこう、機械っぽくなるはずなんだぜい。それこそロボットみたいににゃー。ロボットは決められた動きしかできないだろ? それを無理やり範囲外の動きをさせると、ぎこちなさがどうしても出てしまうんだにゃー。だが、今の禁書目録にはそういう雰囲気がない。つまり、外部霊装による強引な起動っていう線は薄いぜよ」
ふーむ。確かに、イギリスの時は無理やり動かされてたからな。ああいう感じがないっていうことは、第三者による操作ではないんだろうな。それに、遠隔制御霊装は俺がぶっ壊してるし。代わりになるようなもんがあったとしても、土御門ぐらいなら感知できるだろうしな。
「ただまぁ、一応、ステイルと神崎ねーちんはこっちに向かってるんだぜい。ねーちんは仕事の途中だったから少し遅れるらしいが、ステイルは今まさにここにむかってるにゃー」
「マジか……俺、ステイルに殺されねーかな?」
「しらねーぜよ」
にゃはははと楽しそうに笑う悪友は置いといて。
まぁ俺が殺されようがどうされようがはともかく、インデックスを心配してるプロの魔術師が来てくれるならそれに越したことはないんだろう。
正直、このインデックスは調子が狂う。
元に戻せるのなら、拳のひとつふたつ……は貰いたくねぇな、やっぱり。事は穏便に済ませたい。平和が一番。
「お、ステイルからメールが来たぜい。……夕方辺りに着くらしいにゃー」
「あいつ、インデックスのことになるとすごい行動力だよな」
「かみやんには言われたくねえと思うぜい」
どういうことだおい。
「……警――。第――――三――。精――――ぎを確――。――因の――対……成――」
俺が土御門を睨んでいると、インデックスがぼそりと呟いた。ような気がした。
「どうした? なんか言ったか?」
「……いえ、心配には及びません」
「そうか? なんかあったら言えよ?」
「気遣いに感謝します」
感謝、という言葉を聞いて、土御門がほーと声を上げた。関心があるのかもしれない。
ま、とにかく。
土御門のいうことだと、現段階で俺たちにできることは何もないらしい。
それに、土御門が今のインデックスに興味を抱かせる程度には、状況は切迫していないようだ。