自動書記の、自動書記による、禁書目録のための。 作:ふらみか
*第一三章*
インデックスへと向かう足を、俺は無理やり止めた。こけそうになるのをなんとか踏ん張り、右手をひっこめる。
魔術攻撃をされた訳じゃない。
唐突に、インデックスの様子が変わったのだ。
インデックスは信じられない光景を見ているかのような表情を浮かべている。気がする。俺はただ向かって行っただけだったはずなのに。俺が何かした訳じゃない。……と思う。
「……なんだ?」
インデックスのカウントも止まっている。これはむしろ、インデックス自体が止まっていると言った方がいいのかもしれない。
「えーっと……おーい」
「……、」
「あのー……」
この隙に止めちゃっていいのか? つか、どうやって止めればいいんだ? そもそも、俺で止められんの? なんか、勢いで動いてたけど。
と。
「――警告。第二二章第二一節。『心象の檻』の内部からの崩壊を確認しました。同時に『初代の鏡像』の消滅も確認……再構築は不可能と断定。続けて禁書目録の探索を開始……、禁書目録の存在を感知。安全の確認ができました」
なんか言い始めたんですけど。俺どうしたらいいの?
ちらと神裂の方を見ると、どうやら俺と同じように状況が理解できていないようだった。目を丸くして、怪訝そうな顔をしている。姿勢がアレだから奇妙な光景だ。
「……間接的に禁書目録が『上条当麻』との邂逅を果たしていると判断。計画は破綻とみなします」
もう一度インデックスの方を見ると、目に浮かぶ魔法陣は消え、前までの『自動書記』……俺にとってのペンデックスに戻っていた。
「えっと、なんだか終わったような雰囲気を感じるのですが……」
「……禁書目録が私に必死に訴えてきています。ここから出して欲しい、と。しかし、それでは彼女を守れません」
「……あのさ」
会話できそうなので、試みてみる。 彼女からはもう、攻撃の意志を感じられなかった。
「お前はインデックスを守るために起動したんだろ?」
「はい」
「インデックスは、そんなに弱いやつだと思うか?」
「……いえ。しかし、それでも上条当麻――貴方は彼女にとって十分な脅威だと判断しました」
「そっか。でもさ、」
確かに『俺』はアイツの心の傷になっているのかもしれない。
けれど。
「挑戦するしないは、インデックスに選ばせようぜ」
「……、」
「俺は、アイツにとっての苦痛になってるのかもしれない。この時期が来るたびに、アイツに辛い思いをさせるのかもしれない。けど、だからって、向き合おうとするチャンスをアイツから奪うのは違うと思うんだ」
「……、」
「もしかしたら、向き合おうとすることすら思っていないかもしれないけどさ。でも、最初から全部否定しちゃいけないだろ。で、仮にだ。向き合ってダメだったら、そん時はお前がクッションになればいいだろ。アイツの誰よりも側に居たんだから、なれるはずだよ、きっと。そうすれば、インデックスも安心して挑戦できるんじゃないかな」
「……私は、」
弱々しい声が聞こえる。こんなにも『自動書記』を人間的だと思ったのは初めてだ。
「私は、間違っていたのでしょうか?」
「守りたいと思う気持ちは間違ってないと思うけど、方法はちょっと考えなきゃダメかな。なんだったら、相談してくれればよかったのに」
「……私は、彼女を守ろうとして、傷付けてしまったのでしょうか?」
「それは……直接聞くのもおかしいしな。でもこう思えばいい。例え傷付けたとしても、後々笑えるようになればいい。思い返したとしても、そんな思い出に変わっているくらいに、アイツに幸せな時間をこれから過ごさせてやればいい。独りよがりかもしれないけどさ、絶対に取り返しのつかないことでもないと思うよ、俺は」
「……禁書目録も、貴方の言葉を聞いて感銘を受けているようです」
「え、聞いてんの?」
「はい。聞こえています」
「マジか……何かこっぱずかしいな……。うわ、なんだか急に恥ずかしくなってきた」
俺は照れながら、頭を掻く。
すると、
「あのっ!」
神裂の声が聞こえてきた。
「うん?」
「和やかになっているところ申し訳ないのですが、拘束術式を解いてくれませんか?」
あーなるほど。神裂がそんな体勢なのはそういう理由だからか。よし、ここは俺の出番だな。
「おう、今壊すぜ」
俺は神裂の真正面へと歩み、右手で肩を触れようとする。
「あ、ちょっと待って下さい。このまま解いたら――」
どうして俺は予測していなかったんだろうか。
俺の右手は神裂の言葉を無視して、彼女の肩に触れた。
何かが壊れる感触が伝わった直後、神裂の体温を左肩から感じ取った。
「きゃっ――」
「わわっ!」
瞬間、神裂は“そのままの体勢で”こちらに崩れてきた。これくらい考えれば分かることだろ。バカだな、俺。
で、どうなったかというと。
「――ど、どこを触っているのですか!!」
どうやら触ってはいけないところを触ったらしく。
神速のビンタ(手加減あり)を食らい、気絶したのであった、まる。