自動書記の、自動書記による、禁書目録のための。 作:ふらみか
*会議 一*
「――ということらしいよ」
「それは本当ですか?」
赤い長髪、目元のバーコード、黒い神父服の魔術師、ステイル=マグヌスは、学園都市の夜に溶けるようにビルの屋上で煙草を吹かしていた。
隣には女性が居る。彼女は世界に二十人と居ない聖人の神裂火織という。腰まである長い黒髪を一つに纏め、それでもその髪は腰まで伸びていた。腰には二メートルもある刀を革のウエスタンホルダーにぶら下げている。白のティーシャツは豊満な胸のすぐ下で結ばれていて、雰囲気に似合わない可愛らしいへそが見えていた。穿いているジーンズは、ただのダメージジーンズではなく、魔術的意味を含めるよう左右非対称になっていて、裾の片方を太腿のつけ根まで切り落とされている。エロい。
赤髪ロングのヘビースモーカー不良神父は、露出狂サムライガールに向かって、真剣な話をしていた。
「なんたって彼女本人から聞いたからね。ご丁寧に、即席で組み上げた術式による念話で、だ」
「……でしたら、私達は従うまでですね」
「ああ。あの子が望むことだ。逆らうことはあり得ない。……例え、術式の言うことであっても」
「そこが不可解ですね」
ふう、とステイルは紫煙を吐く。夏の夜の空気に霞んで消えていった。
「『分からないものは分からない。前例がないので仕方がない』ね……」
「教会の見解ですか」
「仕方がないと言いだしたことが一番ムカツクけど、実際そうだから何も言い返せない。非常に腹立たしいことだ」
ふむ、と神裂は一呼吸置く。
「いざとなれば彼の右手に頼る、ということなのでしょうね」
「ま、そっちは前例があるからね。だからあの女狐も様子見なんて言ったんだろう。まったく……どうも僕には、教会のあの子への扱いがおざなりになっているような気がしてならない」
「確かにそうですね……」
神裂は思いつめたように、彼らと呼ばれた二人の歩みを振り返る。もちろん把握出来る範囲内でだが。
それでもはっきりしていることがあった。神裂はそれに気付いて、呟く。
「せめて、生活費だけでも彼らに与えていいはずです。彼は色々と苦労しているようですし……。むしろ、それでも足りないくらいな気がします」
「そこは、あれなんだろう? 未だにあの女狐は素直になれないんだろう? いい加減にデレてもいいと思うんだけどね、時期的に」
「それはあなたにそっくりそのまま返されそうですけど」
「なら僕は君にそっくりそのまま渡すけどね」
「ど、どういう意味ですか!」
神裂には思うところがあるのだろう。素直になれというステイルの言葉に、えらく噛みついた。
「うん? そのまんまの意味だけど?」
これ以上反論しても何も変わらないと思ったのか、彼女は話題を戻す。
「と、とにかく、私は予定通り動くことにします! 幸い、仕事も終わってますし、しばらくここに居れそうですからっ」
「うん、それでよろしく。あとは流れで」
ステイルがそう言うと、神裂は消えた。
いや、消えたように見えたのだ。彼女は世界で二〇人も居ない聖人で、その身体能力は並みの人間を遥かに凌駕する。
今のも、消えたのではなく、彼女はただ跳び跳ねただけである。速すぎて消えたように見えたのだ。
一人残されたステイルは、ゆっくりと思考の海に飛び込んだ。
さて、次は四日後か。