青春ラブコメ神話大系   作:鋼の連勤術士

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思い起こせば中学の三年間に実益のあることを行った記憶は全くと言っていいほど無かったと断言をする。
社会的に有意義足る人材になるための布石を尽くはずし、ダメ人間になるための打たなくてもいい布石を狙い済まして打ってきてしまった。

どうしてこうなってしまった。
責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

人間、経験の積み重ねだというが、今の総決算がこの様なのであろうか。
そもそも人は変われると言うが、三つ子の魂百までといって、この世に生を受け16年。この魂は凝り固まってしまい、変えることはできないのではないのだろうか。

俺は気が付いたらどうしようもない阿呆になっていた。

ここで、俺が劣等感と自尊心の海に溺れている時分に呟いた言葉を使うとしよう。

やはり俺の青春ラブコメは間違っている


三畳紀 自虐的代理姉妹戦争
十話


まずこの手記を読むに当たり、必要になるのは登場人物の情報であろうから最初にそれを乗せておこうと思う。

 

主人公はこの俺、比企谷八幡。頭脳明晰で体格は今流行りの細マッチョ。もちろん運動神経もよい。

人望に優れ、その足取りからは強い意志を感じられる。道行く乙女の視線をかっさらい、成田山を歩けば拝まれ、酒々井のアウトレットを歩けば黒髪の乙女に囲まれる程の威光を放っている。

 

 

それになりより目が光輝いている。

 

 

多少、盛っているところもあるかもしれないが、大体こんな感じだと考えてくれればいいと思う。

大事なのは見た目ではなく、心なのだから。

 

 

第二の主役として雪ノ下陽乃がいる。

 

俺が師匠と仰ぐ大学二年生。眉目秀麗、才色兼備、道行く人が10人中15人が思わず振り返ってしまうような人間で、どこか浮世離れした雰囲気がある。

多い5人分は二度見した人だ。

強化外骨格に覆われていて底知れぬ凄味があり、何処と無く胡散臭い陽気な微笑を浮かべ、その姿は高貴である。

俺と同じ学校に通う雪ノ下雪乃を妹に持ち、俺と同じ学校に通う葉山隼人を弟子に持つ。

何をしているのかの全容がつかめず、片鱗を垣間見る限り相当えげつないことをしていると思われる。

俺は学問そっちのけで彼女の修業に励んだ結果、およそ役に立たない事ばかり学び、人間として高めるべきでないところばかり高め、高めるべきところはむしろ低まって見えなくなってしまった。

 

最後に葉山隼人。

 

先ほども述べたが、師匠の弟子で、俺の兄弟子にあたる人物。

彼も容姿端麗、頭脳明晰、リア充を絵にかいたような人間である。

気に食わないので以下省略。

 

それ以外にも多くの登場人物がとりまき、こんな人々に囲まれながら過ごしていくのだが、俺は少々選択肢を間違っていたようだ。

まあ、この手記は俺の部屋の中の最深部に眠っていて無理やり開けようとすると燃える仕組みになっているから誰も見ないとは思うけれど。

 

 

高校に入学し俺が退院した頃、既にクラス内ではグループが出来上がっていて、そこには俺の入る余地などなかった。

 

しかし、薔薇色のスクールライフを過ごすには何もクラスだけではない。部活でのあれこれだって充分にスクールライフを謳歌できるだろうと意気揚々と俺が選びとったのはサッカー部だった。

 

黒髪のマネージャーと恋の試合を一戦交えるのもいい。

もしくは、友達百人出来るのも悪くはないとたかを括っていたが、その俺に現実という刃が一閃した。

 

サッカー部を選んだのはいいが、他の一年生は誰もが以前中学でサッカーまたは運動部に入っていた者達で、技術的にも体力的にも俺は劣っていた。

ならば、コミュニケーションだとも思ったが、会話のパスが通らない。

こちらがトラップをしようとしても、来るボール全てがキラーパスに見え、気がついたときにはそのボールは通り過ぎてしまった後だった。

 

円滑なコミュニケーションをとる前に最低限のコミュニケーション能力を違うところで養っておくべきだったと後悔したが既に遅かった。

 

部活内から孤立した俺はいつしか幽霊部員として籍だけを残したまま、冷えたマッ缶を手に部活からの決別をベストプレイスで独り宣言した。

これをこの手記では、第一次比企谷独立宣言と言う。

 

 

そもそも俺が師匠と仰ぐ雪ノ下陽乃との出会いは今から十か月程前にさかのぼる。

 

第一次比企谷独立宣言から約一年、宣言をしたはいいが特に日常生活で変わったところはなく、部活、学問、恋人という高校生三種の神器をどこか遠くへ放り投げたままの俺が、早めの五月病にかかっていた頃、二年に上がっても幽霊部員のまま腐っていた俺のことを心配したのか、平塚静という黒髪の教師から

 

「紹介したい人物がいる」

 

と言われ、俺は師匠に出会った。

 

嫌々ながら指定されたところに行くと、えらい美人がそこにいた。

教師が美人局を斡旋する事はないだろうと思もい、声をかけると

 

「静ちゃんから弟子入りを頼まれたのは君?ふむふむ確かに腐った目をしてるね。なるほどなー」

 

えらい美人さんは一人納得したように頷いた。

 

「弟子入りって何のことですか、俺はただ……」

 

なんのこっちゃわからないこっちにとっては、弟子入りの件を聞きたかったが彼女はそれを遮り

 

「そう慌てないで、私は雪ノ下陽乃。こっちは君の兄弟子の隼人。って同じクラスだから知ってるかな」

 

と言って隣にいる男を紹介してきた。

師匠の傍らに立っている男は、爽やか純度100%のスマイルを浮かべ握手しようと手を差し出してくる。

マックのクルーでもそこまで爽やかなスマイルは出来ないだろう。風の噂じゃ男子高校生は友人達と罰ゲームと称して綺麗なお姉さんにスマイル下さい。と言うのがあるみたいだが、その妙味を味わう事はついぞ無いのだろう。

 

「サッカー部以来だね。よろしくヒキタニ君」

 

スマイルから青春の妙味にまで思考が飛んでいた俺に、この爽やかイケメンはサッカー部という禁句を使いよろしくしようとしてきた。

因みにサッカー部が禁句というのは独立宣言に書かれている事項で、破った野郎がいたら漏れなく絶対に許さないリストへの登録がされるが、登録されたところで誰も困らないと言うのが困った点だ。

 

そういえば、まだ俺がサッカー部に顔を出していた頃、こいつは部でたまに話しかけ来ていた男のような気がする。

 

「……うっす」

 

「まあ、兄弟子と言ってもそんなに日は経ってないけどね」

 

師匠はそう言ってからからと笑った。

 

それが師匠とのファーストコンタクトであった。

 

きっと彼女と関わらなければ俺の心はもっと清らかで薔薇色のスクールライフを謳歌できていたに違いない。

 

 

挨拶もそこそこに何故かそのまま、見るからに高級そうなレストランに俺と葉山は連れて行ってもらった。

俺の人生の中でこれから行くことはないであろうという場所に、ドレスコードも無視して入っていく師匠はどこか格好良く見えた。

 

友人との食事というものを知らない俺にとっては、その会食は最初こそむず痒かったが、師匠の話術のお陰で、普段からは想像もできないほど話が弾み、ついつい中学生時代の布団でばたばたしてしまうような話もしてしまった。

 

師匠はこの話をえらく気に入ったようで、二次会と称して俺の部屋に転がり込み部屋の中で葉山と一緒に黒歴史の発掘にいそしんだ。

 

妹の小町からは

 

「え、うそ。おおお兄ちゃんが男友達に綺麗な女の人を連れてくるなんて、ありえないってばよ」

 

と御言葉を貰い、しまいには

 

「分かった。これは月読なんだ。ちょっと小町72時間ほど寝てくるってばよ」

 

語尾まで崩壊して自分の部屋に篭城しに行った。

俺の部屋でも大いに盛り上がった帰り際

 

「学校では今日のことは忘れて、普段の感じでよろしくね。じゃないとばれちゃうから」

 

と意味深なことを残し去って行った。

 

かくして俺は雪ノ下陽乃の弟子となり、高校二年生を棒に振るうようになったのだ。

 

 

師匠と付き合っていくのに欠かせないものは『貢物』である。

 

それは珍しいものであったり、雑多な情報であったりと、とにかく師匠が喜びそうな物を持ってくることが弟子としての条件だった。

貢いだ物の中には、精巧な猫のぬいぐるみや巨大なパンさんのぬいぐるみ等と用途不明な物まで含まれていた。

 

その代わりとして師匠は色々なことを教えてくれた。

強化外骨格の作り方、潤滑な人間関係を保つための社交性の身に付け方、正しい暗躍の仕方etc……

これで分かるように学生の身で身に付けるべきでないものばかり、俺と葉山は身に付けていった。

 

師匠はいつも無理難題な品物や情報ばかり求める。

 

しかし、本当は俺たちの貢物を師匠は必要としていないような気はした。

その気になれば、どんな事柄でも手に入れることのできる能力や人脈を持っているためだ。

だからただ単に、弟子である俺たちが奔走する姿を見て楽しんでいるだけなのではと思い、俺と葉山でなぜこんな物ばかり求めるのかと尋ねた所

 

 

「私なりの愛ってやつよ」

 

 

と返され、2人して顔を真っ赤にしてしまった記憶がある。

 

そんな師匠に師事しているのにも係らず、俺と葉山のやり方は正反対だった。

 

人気や人脈、社交性を最大限に使い貢物を手に入れる葉山。

操作した噂やブラフ等の餌を使って貢物を釣り上げる俺。

 

元から有った学校での影響力をぐんぐんと伸ばしていく葉山。

元々無かった学校での存在を抹消していく俺。

 

こうも差がついてしまっては面白くなかったが、気が付いた頃には変えることが出来なかった。

 

それに何よりダークヒーローって格好良いじゃん。と、そんな事を今も思ってしまうというのは、俺はどうしようもない阿呆なのかもしれない。

 

しかし、俺はこの生き方を曲げなかった。いや、曲げることができなかった。

 

曲げていればもっと幸せになったに違いない。

 

 

そんな師匠でも、唯一怖いものがあると言ったことがある。

 

「私は母親が怖いわ」

 

「師匠が怖がる人なんてどんな人なんですか?」

 

両腕を胸の前で組み身震いをする師匠が珍しく、いいネタに成りそうだと突っ込んで話を聞いてみたが

 

「昔、会ったことがあるけど、あの人はとんでもないな」

 

「目的の為ならどんな手段も厭わない。他人が不幸になろうが破滅しようがその隣で優雅にティータイムを楽しめる、鬼か妖怪の類よ」

 

と葉山と師匠がそれぞれ言う。

話を聞けば確かに怖いが、詰まりは何時もの師匠の事でもある。

血は争えないというか母の教育の賜物で強化外骨格を纏った師匠が誕生したらしいが、俺や葉山からしたらたまったもんじゃない。

 

「なんだ、いつもの師匠じゃないですか」

 

そう答えたら、立ち上がった師匠から親指を拳の中に入れた拳骨をコツンと貰った。

 

「何ですか、その可愛らしい拳は」

 

「淑女足るもの、のべつまくなしに鉄拳を振るっていたら婚期が遅れるからね。それでも敢えて振るわざるを得ない時は、この『おともだちパンチ』をふるうんだよ」

 

ほら、と見せてきた拳は招き猫の手のような恰好をしていて某教諭が振るう、硬い握り拳と腰の入った鉄拳とは比べ物にならないほどの可愛らしさをたたえていた。

 

「親指をひっそりと隠して、固く握ろうにも握れない。この親指こそが愛なんだよ」

 

「平塚先生にも見習ってほしいものですね」

 

「静ちゃんにも教えたんだけどね。まっすぐ行ってぶっ飛ばす。右ストレートでぶっ飛ばす。って聞かなかったんだ」

 

そのことを先生に言ったら、泣きながらラストブリッドを頂いたのは言うまでもないだろう。

 

 

彼等とのことを語るにおいて外すことのできない人物がもう1人いる。

 

それが、雪ノ下陽乃の妹である雪ノ下雪乃だ。

 

師匠譲りの才色兼備でありながら、品行方正であり、邪魔をする存在を真正面から叩き潰すという剛の人物である。

 

葉山とは一応幼馴染という関係で、ある事件をきっかけに俺たちとも行動を共にする機会が増えた。

 

その原因となった事件を、ここに記す。

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