貴方に好きと言いたくて【完結】   作:puc119

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エピローグ

 

 

 彼が倒した黒龍はその体を覆う朱色の甲殻などのことを踏まえ、黒龍ミラボレアスの亜種――紅龍であるとギルドから正式な発表がありました。

 しかしながら、紅龍のことが書いてある文献は少なく、書いてあったとしても断片的で不明瞭なことばかりだそうです。そのため、紅龍の生態や黒龍との関係は分からないままだとか。

 

 そんな紅龍と彼との戦いの様子を私も観測隊の方から聞きましたが……まるで地獄のようだったと言われました。彼と紅龍が戦っているあいだ、溶岩島のあらゆる場所からマグマが吹き出し、空からは謎の隕石のようなものが降り続けたらしいです。

 それは、3年前に彼らが倒したあの黒龍よりも酷い光景だったと。

 

 また、空から降り続ける攻撃のせいで、観測隊は近づくこともできず、彼がどんな戦いをしていたのかも分からなかったとも。

 

 その戦いの最後には爆発のようなものが起こり、火柱と噴煙の先――流れ出たマグマの中に動かなくなった紅龍の姿があった。けれども、そこに彼の姿はなかったそうです。

 

 私が観測隊の方から聞けたのはそれだけでした。

 

 

 そして、彼がその紅龍を倒したと言う情報が入って来てから3日。

 3年前のあの日と同じよう、その日の天気は雨でした。

 

 大老殿をさらに奥へと進んだ先にある丘の上。

 既に2つあるお墓の間へ、新しいお墓をひとつ。そこへ墓標として、持ち手の部分以外は原型が分からないまでに砕けてしまった大剣が突き刺されることに。

 

 ――誰かがあの伝説の古龍を討伐した。

 

 世間ではそんな噂が広まり、あの日からずっとお祭りのような状態が続いています。

 そのような中で彼の葬儀はひっそりと行われました。

 

 生前の彼の願いということで、彼が紅龍のクエストへ向かったことは公表されていません。この葬儀に参加しているのも、バルバレのギルドマスターや大長老。あの彼女やその兄である加工屋さんと私くらい。

 それは伝説の古龍を2度も倒したハンターの葬儀として、あまりにも小さく静かなもの。

 

「……泣かないのかい?」

 

 しとしとと雨の降る中あの彼女がそんな声をかけてくれました。

 

「はい、あの時の彼も泣きませんでしたし」

 

 どうしてなのかは自分でも分かりませんでしたが、その時涙は溢れてきませんでした。悲しいに決まっているし、あの彼へ文句のひとつでも言いたいところ。

 でも、例え私がどんな言葉を落とそうとも、もう彼に届くことはないって思うと、酷い虚無感に襲われる。

 

 伝説の黒龍を倒し、その亜種である紅龍をソロで倒してしまった彼ですら――奇跡は起こせなかった。

 

 ホント、ずるい人だ。

 

「……強いね、アンタは」

 

 そんなことは、ない……と思う。

 ずっとずっと私は弱いままなんです。そんな私でもどうにかこうやって此処へ立つことができているのは、きっと彼のおかげ。

 そして、そんな彼はもういない。

 だから、これからは自分の力だけで歩んでいかなきゃいけないんです。それができるのかは分からないけれど、止まっていることが間違っていることは分かる。

 

 あの彼のためとは言わない。

 私は私のために前へ進もうと思います。

 

「それじゃ、そろそろ帰るとするさね。帰ったら酒でも飲んで思いっきり騒いでやろう。アイツにはそれくらいが合っているんだしさ」

 

 笑いながらそんな言葉を落とした彼女の目は赤くなっていた。

 

「……そうですね。それにあの人のせいで悲しくなるのは負けた気がします。こんな日くらいは騒いであげましょう」

 

 それが空元気だってことは分かっていたけれど、あの人のためにできる一番のことはそんなことだと思うんです。

 全く、消えてまで迷惑をかけるとは……

 

 

 さようなら。

 私の大好きな人。

 

 

 

 

 

 

 

 彼の葬儀を終え、バルバレに戻ると其処では、今日もまたお祭りのような状態が続いていました。

 そこに悲し気な雰囲気なんてありません。沢山の料理やお酒の香りが溢れたバルバレは――泣きたくなるほどに愉し気な空気が流れています。

 

 愉し気に言葉を交わす人々の話題の中心は誰が紅龍を倒したのか、なんてこと。けれども、その答えは誰も知りません。

 それが彼の願っていたことだったから。

 

 彼と私の距離はアレだけ近かったというのに、本当に遠くへ行ってしまいました。

 物理的にも、精神的にも。

 

 そんなお祭り状態のバルバレ。けれども私はどうしても皆と騒ぐ気にはなれず、あの彼女とふたりで静かにお酒を飲むことに。

 

 そして、久しぶりに飲んだお酒は私の喉を焼きました。

 

 

「ホント、あの人は嘘ばっかですね……」

 

 

 もう溢れることはないと思っていた雫。

 そんなものがポタポタと落ち、地面を少しだけ湿らせた。

 

 

「お酒を飲んだって、全然忘れられないじゃないですか……」

 

 

 いくらお酒を飲んでも、思い出すのは彼のことばかり。

 刻み込まれた彼との思い出は、例えお酒の力を借りても消えてくれない。

 

 そんな私をあの彼女は優しく慰めてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 彼が消えてからもう、ひと月以上の時間が過ぎました。

 私のことを思ってか、ギルドマスターから長いお休みをもらったりもしましたが、それは断ることに。

 

 だから、また今日も私はギルドガールとして……受付嬢としてハンターさんたちの力になれるようクエストカウンターへ立ちます。

 

 彼のことは吹っ切れてなんていません。

 未練や後悔ばかりです。

 

 それでも、何かをしていないと押しつぶされそうだったんです。

 そんな私には受付嬢としての仕事くらいしか残っていませんでした。

 それに仕事をしている間だけは、この悲しさも少しは和らいでくれているんじゃないかなって思います。

 

 それがただの強がりだってことも分かっています。

 でも、どうすれば良いのかなんて私には分かりません。

 だから、私なりに一生懸命足掻いてみます。きっと私は彼のことを忘れることができない。でも、いつか……いつの日かきっと前へ進むことができるはずだから、一生懸命足掻いてみます。

 

 強がりでもいい。

 痩せ我慢でも構わない。

 

 それでも、これからは自分の力だけで私の物語を書き進めないといけないんです。

 

「はい、此方が今回のクエストの報酬となります」

「おう、ありがとな」

 

 お祭り状態だったバルバレも元通り。

 今日も今日とて沢山のハンターさんたちがクエストへ向かい、また帰ってきてくれます。

 

「はい、次の方どうぞ」

 

 クエストから無事に帰って来ることができ喜ぶハンターさん。

 これからクエストへ向かうために気合を入れるハンターさん。

 クエストの成功を祝って仲間とともにお酒を飲むハンターさんなどなど。

 

「クエストを受けたいんだが」

 

 それはいつも通りの光景。

 私の知っているバルバレの光景。

 

「はい、分かりました。どんなクエストをお探しですか?」

 

 ただひとつ。

 彼という存在を抜かせば。

 

 申し訳ありませんが、私が元通りになるのはもう少し時間がかかると思います。

 もしかしたら、元通りにはならないかもしれません。

 

 それでも、私なりに頑張ってみようと思います。

 それは、きっと彼が望んでいたことで――私にできる一番のことだと思うから。

 

 彼と私の物語は終わり、今度は私だけの物語を書き進めてみるとします。

 これからその物語に彼が登場することはありません。それでも、どうにか私は進んでみようと思います。

 

 

 よしっ。それじゃ、例え空元気だとしても、今日も元気にいってみましょうか。

 あの彼が私に見せてくれたよう、我武者羅に。直向きに。

 

 そして、このバルバレギルドへ所属する全てのハンターさんたちのため。

 

 

 

 

「君を攻略したいんだが、そんなクエストはあるかな?」

 

 

 

 

 ……え?

 

 そんなハンターさんの言葉を聞いた瞬間――騒がしかったはずの集会所の音が、止まった。

 

 慌てたようにその言葉をかけてきたハンターさんを確認。

 そこにはラギアクルスの防具一式に、背中へブラキディオスの大剣を担いだハンターさんがひとり。

 

 その姿は――

 

「あっ、いや……その、だからだな。ちょい待った。今のなしで」

 

 突然の出来事に混乱する私に対して、そのハンターさんは慌てた様子で言葉を落とした。

 

 グルグルと回る思考。

 何が起きているのか分かるのに、どうすれば良いのかが分からない。

 何かを言わなきゃいけない。けれども、言葉が、出てこない。

 

「まぁ、その……なんだ? か、帰ってまいりました」

 

 見間違いでもない。

 聞き間違えるわけがない。

 

 そこに……私の目の前に立っていたのは確かに――あの彼だった。

 

「それとだけど……」

 

 聞きたいことがたくさんある。

 言わなきゃいけないこともたくさんある。

 そうだというのに、やっぱり私の口からは言葉が出てきてはくれない。

 

 

 そして、何処か恥ずかしそうにしながら彼が――

 

 

 

「結婚しよっか」

 

 

 

 なんて言の葉を落とした。

 

 音の止まったこの集会所の中、彼の言葉はしっかりと私まで届いてくれた。

 

 

「……はい」

 

 

 そんな彼の言葉を聞き、私の口から漸く出てきてくれたのはたったのひと言でした。

 それでも、きっと私の想いはちゃんと彼まで届いてくれたんじゃないのかなって思います。

 

 無意識のうちに視界がぼやける。

 ああもう。最近は泣いてばかりだ。

 

 けれども、今ばかりはそれが悪いと感じませんでした。

 

 

 終わったと思った彼と私のあの物語。

 そんな物語がどうやら、もう少しだけ続いてくれるみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 流石に死んだと思った。

 つまり、ひと言で表せば運が良かったといったところだろう。まぁ、それは結果的にって話だが。

 

 

 溶岩島へ着き、件の黒龍と対面。

 3年前、アイツらと一緒に戦ったときのことが自然と頭の中へ浮かんだ。

 

 ……ただな、今回の黒龍ったら3年前の時とちょっと違うんだ。

 まず見た目だが、全然黒くない。むしろ赤い。まさにその名の通り紅龍といった感じだった。

 

 え? ちょっと待って。なにこれ、聞いてない。なんて思いつつも大剣を握り締め、斬りかかろうとしたら、空から隕石のようなものが降ってきた。もう笑うしかなかった。

 その他にも、テオみたいに爆発する粉塵を飛ばしてくるわ、前回の黒龍と比べてやたらと火を吐くわとよく生き残れたと自分でも思う。

 

 ただ、それは俺の勘でしかないが、今回の相手――その紅龍は3年前に戦ったあの黒龍よりも明らかに弱かった。

 

 確かに、アイツらと別れることになってから戦ってきたどのモンスターよりも、その紅龍は強かった。けれども、なんというか……負ける気がしなかったんだ。

 3年前の黒龍の甲殻は、まるで鋼の塊でも斬りつけているんじゃないかってくらいだったのに対し、今回の相手は其処までの硬さもない。

 相手の攻撃は激しく、一発でも喰らえばそれでアウト。それでも、コイツなら勝てるって思った。

 

 まぁ、そんな相手だってのに、最後の一撃で俺の大剣は砕けたが。そりゃあもう、まるでその紅龍を殺すためだけに存在していたんじゃないかってくらい綺麗に砕けた。

 

 んで、本当の地獄はそこから。

 最後の力だけなんだか知らんが、その紅龍を倒したのにも関わらず空からは大量の隕石が降ってきやがった。さらに運の悪いことに、噴火でもしたのか足元が爆発。

 せっかく伝説の古龍を倒したってのに、剥ぎ取りすらさせてもらえない。

 

 そして、降ってくる隕石や流れ出るマグマから逃げた俺が飛び込んだ先は、真っ暗な夜の海。

 

 

 これで死ぬんだろうなって思った。

 

 でも――これじゃあ死ねないよなって思ったんだ。

 

 だってさ、こんな終わり方じゃ納得できんだろ? 俺はプライドの欠片もないような人間だが、最期くらいはやっぱり納得して終わらせたかったんだ。

 

 だから、精一杯足掻いてみた。

 もう一度バルバレへ帰るため、とにかく生きるよう足掻いた。

 

 

 そこからのことははっきりと覚えていない。

 泳ぐのに邪魔な防具を脱ぎ捨て、大量に持ってきた、いにしえの秘薬と強走薬グレートを流し込んでから、ひたすら泳いだんだと思う。

 

 どれくらいの時間、俺が海を漂っていたのかは分からない。

 

 

 気がついたら、アイルーたちの乗る船の上だった。

 

 そして、はっきりとしない意識のままそのアイルーたちに連れて行かれた場所は、チコ村という聞いたこともない小さな村。

 その村は随分と特殊な村で、住んでいるのはチコ村の村長である竜人族の老婆ひとりと多くのアイルーたちだけだった。

 

 まぁ、別に誰がその村に住んでいようが構わないんだが……困ったことにそのチコ村には他の村や街へ繋がる陸路も海路もなかったんだ。

 俺がチコ村のことを知らなかったのも納得。

 

 それから一ヶ月ほど、随分のんびりとした生活を送った。アイルーたちと一緒に日がな一日釣りをしてみたり、チコ村の裏にある原生林へ薬草やキノコを採りに行ったりなどなど。

 有り難いことに仲良くなったアイルーたちが、船を作って送ってくれるとも言ってくれたが、その提案は断った。だって、遭難する気しかしなかったし。

 

 そんな生活を続けていた俺がバルバレへ帰ってくることができたのは、“我らの団”なんて名乗る旅団のおかげだった。

 その旅団は珍しい形の飛行船でチコ村を訪れ、また、その旅団の団長はお人好しって言葉が良く似合うダンディーな男性。俺がバルバレへ行きたいことを伝えると、渋ることなんて一切なく連れていってくれた。

 

 チコ村の住民にも我らの団にも感謝するばかり。いつの日かちゃんとその恩返しができれば良いと思う。

 

 

 

 

「んで、ようやっと帰ってくることができたってわけ」

 

 いつもの櫓の上で受付嬢に、この一ヶ月に起こった出来事を伝えた。

 

 火山が噴火したことや、海へ放り出されたことは確かに運が悪かったのかもしれん。けれども、こうして無事に帰ってくることができたんだ。それ以上に幸運なことはないだろうさ。

 

「つまり、ほとんどの時間はバカンスを楽しんでいたんですね」

 

 ……あれ?

 なんか冷たくない? 受付嬢の言葉からトゲのようなものを感じるのだが気のせいだろうか。表情もムスっとしている。かわいい。

 

 んで、此処は感動の再会をふたりで分かち合う場面だと俺は思います。しかし、そんな雰囲気が微塵も感じられない。どうしてこうなった。

 

 てか、さっき俺が結婚しようと言い、この受付嬢も確かにそれを受け入れてくれたはずなんだが、そのことはどうなったのだろうか。

 これでなかったことにされていたら、流石に泣くぞ。

 

 それにしてもしまったな。こんなことになるんなら、もうちょっと感動されるような物語にしておくべきだった。

 まぁ、そんな物語なぞ全く思いつかんが。

 

「とは言え、こうしてちゃんと戻って来てくれたのは確かなことですし、私からの文句はあまりありません」

 

 少しは文句があるらしい。

 いったいどんなことを言われるのやら……いや、俺だって悪かったと思っているわけだけどさ。

 

「それと」

 

 そして、ムスっとしていた表情から一変。

 俺の方を真っ直ぐと向き、本当に可愛らしく笑いながら――

 

 

「おかえりなさい」

 

 

 なんて言の葉を優しく優しく受付嬢が落としてくれた。

 

 これでもこの受付嬢と俺は長い付き合いなんだ。お互いがどんなことを思っているのかくらいは分かるはず。

 

 つまりは、まぁ、きっとそういうこと。

 

「ああ、ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 さて、それじゃあそろそろこの物語も終わりにするとしようか。

 別にこれで俺の物語が終わるってわけじゃないが、一区切りするには丁度良いのだし。

 

 

 俺が紅龍を倒し、無事バルバレへ戻って来て、結婚しようなんて言葉を多分、あの受付嬢は受け入れてくれた。

 それから、夢に見た結婚生活が……始まらなかった。おかしいね。

 

 まずアレだ。

 俺が一生懸命集めたモンスターの素材だったり、武器がほとんどなくなってしまった。あと、それなりに貯めていたお金もない。

 

 はいそうです。あのゴリラが原因です。

 

 俺がちょっといなかったのを良いことに、素材や武器を全て売り、そのお金も全部寄付したんだとさ。

 残ったのは、今も装備しているラギア防具とブラキの大剣。あと、こやし玉だけ。

 

 つまり、俺は一文無しって状態。

 そんなんだから、結局今もハンターを続けることになった。まぁ、とは言っても採取がメインで大型種などと戦うつもりはないが。

 流石にもうハンターは引退させてもらおう。姪っ子ちゃんだったり、あの後輩だったりと優秀なハンターはたくさんいるのだから。

 

 因みにだが、俺が集めた素材などを売って得られた大量の寄付金の一部は、あのチコ村へも送られるそうだ。思わぬ形となってしまったが、一応の恩返しはできたと思う。

 まぁ、今度は直接訪れる予定だが。受付嬢と新婚旅行もしないとだしな! その予定は未定だけど……

 

 

 んで、現在のバルバレギルドには大きな問題――というか、災害が起きている。

 

 はいそうです。あのゴリラが原因です。

 

 何を思いそんな考えにいたったのか知らんが、あのラージャンが婚活を始めた。大災害である。

 きっとバルバレにいる独身男性は、眠れぬ夜を過ごしていることだろう。

 そのうち、討伐隊が組まれると思うが……相手はあのラージャン。人間が勝てるとは思えない。

 

 

 とまぁ、そんなところだろうか。

 それ以外で何か変わったことは特にない。

 

 それにしても……

 

 

「一流のハンターになればモテるって聞いたんだがなぁ」

 

 

 いつもの櫓の上。俺の口からはそんな愚痴が零れた。

 

「……別にモテなくても良いのでは?」

 

 そして、俺の愚痴に対し、受付嬢がそんな言葉を落とした。

 

「んなわけあるか。男なら誰だって女の子にモテたいんだ」

 

 あの後輩みたいにちょっと特殊な奴もいるが、アレは例外。

 男なら誰だって夢見るはずだ。女の子にモテたいって。

 

 そもそも俺がハンターを続けてきたのも、女の子にモテたかったからだ。そのことだけはブレたことがない。

 

 

 

「でも、貴方には私がいるじゃないですか」

 

 

 

 ……うん?

 

 今、受付嬢さんはなんと?

 

「それ以上望むのは贅沢だと思いますよ」

 

 そして、そう言ってから受付嬢はやはり可愛らしく笑った。

 

「いや、じゃあせめてキスくらいしてくれても……」

「それとこれとはまた違う話ですので」

 

 いったい何が違うというのやら。

 

 

 けれども、そんな受付嬢の想いはきっと俺へ届いている。

 相変わらずこの受付嬢は冷たいし、辛辣な言葉や態度ばかり。

 

 

 厳しくて冷たい。辛辣で……誰よりも優しい。そんな君のことが俺は――

 

 

「ふふっ。バカで嘘つき。自分勝手で……誰よりも頼りになる。そんな貴方のことが私も――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一流のハンターになればモテるって聞いた。

 

 あの言葉が正しかったのかどうか俺には分からない。そもそも、俺が一流のハンターになれたのかも分からないしな。

 

 とは言え……別段、間違っているってわけでもないんだろう。

 少なくとも俺はそう思うんだ。

 

 さて、それじゃそんなところで、このバカなひとりの男のバカ話は終わりってことにしようか。

 

 

 







読了、お疲れ様でした
これでこの作品も完結となります

書き終えての感想だったり設定だったり言い訳なんかはいつも通り活動報告へ書かせていただきます

さて、この作品を読んでいただいた全ての方へ感謝を――


ありがとうございました


では、またいつかお会いしましょう


ああ、疲れたぁ……

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