書きたいと書けるは違う

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

その悪魔の言葉は毒だった。

しかし決して無視できない。

なぜなら、それは薬にもなるからだ。

決して起こらない、とは言えない、恐ろしい、けれどいくらでも有り得る可能性。

「成る程。確かにこの生け簀と養殖の技術が確立されれば、貴方の部族はとりあえずは安泰でしょう」

「他の部族が攻め込んでこなければ、ですがね」

「もし、また魚が穫れなくなった時、他の部族は争うでしょう。ですが、そこに貴方の部族が参加しなかったとしたら、他の部族はどう思うのでしょうね」

「魚が足りていると思うだけならまだいいでしょう。ですが、以前の戦争を覚えている世代なら、こう思うかもしれません」

「七部族が五部族に減るような事態をひきおこしたように、五部族が三部族に減るかもしれない。それくらいなら、四部族で一部族を減らした方が犠牲が少ない、と」

「ましてや、この部族だけ魚が豊富にあるとすれば、他の四部族が手を組むことに、何の問題があるでしょう。彼らは、貴方たちが魚を独占しているから、自分たちが飢えたのだと思うかもしれませんよ」

「事実など、どうでもいいのです。攻め込む理由さえできれば、後で『事実』が判明しようと、それは残念な結末でしかありません」

「誰にでも『間違い』はあります。それが先か後かなど、些末事でしかありません」

「当事者、特に不利益を被っていると考える存在にとってはね」

「自分が飢えているのに、隣で満腹になっている者がいて、仕方ないと諦められますか?自分だけでなく、家族が知り合いが部族全てが飢えて死にそうになっているのに?」

「そんなことが可能であったなら、そもそも以前の戦争など、起こるはずもないでしょう」

「貴方は言うかもしれない。養殖の技術を全ての部族に行き渡らせれば、そんなことは起きない、と」

「ですが、養殖の技術は貴方でも簡単に会得したものではない。他の部族がその技術を軌道に乗せるまで、何年かかるでしょう。ましてや、全ての部族が均等に魚を確保できるなど、どれほど同じ技術を持っていたとしても、不可能でしょう」

「本当にこのままで、『大丈夫』だと思いますか?」

「起こる前にこそ、対策は必要なのです。貴方にとっての対策は養殖でしょう。ですが、そこから引き起こされるかもしれない事態への対応が、万全である、と言えますか」

「飢え、目先の欲望に釣られやすくなった者に、飢えていない者がどのように映るか、考えていますか?」

「正しく、殺してでも奪うことに、躊躇うはずかない。それは以前の戦争が証明しているのではありませんか?」

「いや、むしろ餓死者がでる前に、この村を掌握してしまおうと考える者が出ないと言えますか?」


起こりうる恐ろしい未来予想図。

そして、それを否定できるだけの根拠を持たない自分。

本当にそんな事態に陥ったとき、自分に何ができるだろうか。

いや、できることがあるのだろうか。

少なくとも、今の自分には有効な手段は思いつかない。

どうすればいいのか。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ガゼフの話が終わらない。

プレイヤーの選べる種族に「リザードマン」がいたので、デミウルゴスも調べるかと思っていたけれど、わざわざ介入するほどかとも思えてきて、お蔵入り。


日時:2019年12月24日(火) 14:26

<< 未1000字 10月31日 小話・1000字未満 >>


返信

    現在:0文字 10~1000文字