生々しいまでに「生きている」登場人物たち
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
登場人物が「生きている」と感じられる小説と出会うことが、まれにある。
人はそれぞれ知能レベルが違う。好んで触れるメディアが違う。事情が違う。歩んできた人生が違う。よって物の見えかたも違えば語彙も違う。
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しかし小説は、作者が一人で書くものである。登場人物はすべて作者のコピーである。自然と彼らの知能レベルや語彙は作者に準拠してしまうため、皆が皆、同じものを見ると、同じ語彙で表現する。つまり、キャラが工場で量産された統一規格の工業製品のように画一化されてしまうのだ。
また、精巧に作り上げられた娯楽小説であればあるほど、登場人物の行動、言動すべてに意味を持たせようとする。そこには作者の作為がある。その作為は、せっかく登場させるのだからこの作品内という世界でなにかしらの役割を持たせて、キャラクターとして機能させてあげようという、作者なりの愛でもあったりする。
ところが現実では個々人にそういった「神様から与えられた役割」はない。人はただ今日という日を生きているだけである。小説というものが、完結というひとつのゴールに向かって登場人物らが一致協力してまっすぐに進んでいくのに対し、現実はひとりひとりがそれぞれの思惑や苦悩、希望、欲求がモザイクのように重なり合い、あちらこちらへ蛇行し、紆余曲折を経て、結局なにも変わらないのがふつうである。
本作で描かれる人間模様は、まさに登場人物たちによる巨大なモザイク画である。高校の同窓会で集った彼らの会話は混沌としていて、好き勝手に話しながらも、本人なりに相手への気遣いも見え隠れし、それでいて基本的になんの意味もない。なぜなら、久しぶりに再会した友人らと酒を酌み交わしながら交わす会話の内容に意味などあるはずがないからだ。
その無意味な会話をいざ自分で書いてみようとすると、これが極めてむずかしい。どうしてもぎこちなくなる。本作はその難行をさらりとやってのけている。だからこそ登場人物が「生きている」と実感させてくれる。同年代の、なんでも腹蔵なく本音をぶつけ合える仲間や彼女と、なんの打算もなければ生産的でもないバカ話ができる──それこそが人間の真の幸福ではなかったかと、主人公とともに少年時代の郷愁に胸をかきむしられてしまうのだ。
かつて子供だったあなた、大人にならざるをえなかったあなた、毎日の仕事に摩滅してしまったあなたへ送る、あたたかなエール。それが本作である。
▼読む際の注意事項など
8万文字超の読み切り短編である。徹頭徹尾、平易な言葉遣いで構成されているので、文字数から受けるイメージよりは読み進めやすいものの、読了するころには夜が明けていた、ということもありうるのでそこだけは注意が必要か。
▲短縮する
蚕豆かいこ 2025年05月18日(日) 06:44 ★ (Good:8/Bad:4)
まずは読もう。この作品には読み終わった先にしかないものがある。
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
高校時代の同級生達で同窓会を開いた翌日、参加したうちの8人がタイムリープしていた、という話。
始まりはなんの変哲もないタイムリープモノ。
しかし、この作品はここからが違う。
タイムリープしたからと言って、未来知識で無双するとかそういうことは全くない。
(16行省略されています)
ただ漫然と学校生活を繰り返すだけなのだ。
だからと言っていつまでもそうする訳には行かない。
殆どの一緒にタイムリープした同級生はもう元の人生に帰ってしまっている。
そんな中、主人公はどのような判断をするのか……。
普通だったらこれで終わるだろう。
だが、この作品はまだまだ続きがある。
これがこの作品の凄い所だ。
読者の期待を良い意味で裏切ってくれる。
この作品の結末は、ぜひこの作品を読んだ貴方自身の目で確かめて欲しい。
▼読む際の注意事項など
八万字以上もある一話完結型の短編なので読むのに少しだけ勇気がいる。
けれど、読み終わった後の読了感は何百万字もある壮大な物語を見た時にも勝る。
▲短縮する
ひぶうさぎ 2025年02月28日(金) 07:45 ★ (Good:23/Bad:2)