行別ここすき者数
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(0)「クラリン先生……なんですね」
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(0)和の瞳は、多恵を真っすぐに貫いている。
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(0)熱気が残る会場の廊下。
(0)顔さえ知らなかった師と弟子の邂逅は、人知れず行われていた。
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(0)「……仮にそうだとして、わざわざこんなところに何の用かな?」
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(0)「一つだけ……聞きたいことがあります」
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(0)和が乱れてしまった髪と呼吸を整えつつ、どうしても聞かなければならなかったことを問う。
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(0)和が憧れ、敬愛していた「クラリン」にしかできないはずの所業をやってのけた多恵。
(0)もうこの時点で、ネットからの情報も加味して、多恵がクラリンであるということは、和の中で確定事項だ。
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(0)なのにもかかわらず、今日の対局では、今まで一度も見せたことのないような打牌選択の数々。
(0)こんなことは失礼で、マナー違反であるとはわかっていても、和は理由を、聞かずにはいられなかった。
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(0)典型的な例がある。
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(0)「前半戦南3局。4巡目に打たれたリーチに対して、{58}のどちらかを切れば五面張の聴牌だったのに……先生は切らなかった。あれは親であるということと、{58}の放銃率を算出しても、確実に押し有利な場面だったはずです。結果的に放銃になったとしても、あの{8}は切るべきだったのではないのですか?」
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(0)多恵が、やえのリーチに対して五面張の聴牌を取らず、迂回する選択肢をとったシーン。
(0)多恵もこの時のことはよく覚えている。
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(0)少し顎に手を当ててから、多恵が、和に問う。
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(0)「……局収支を意識するために、切っていいか良くないかの基準となる放銃率のラインは?」
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(0)「……10%だと、クラリン先生はおっしゃっていました」
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(0)決して、放銃率が10%以上だと切ってはいけません、ということではない。
(0)麻雀はもっと多くの情報が絡み合うゲーム。放銃率を出したからと言って、何%以下はOKとかそういった判断はできない。
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(0)点差、状況、場況、親、自身の手、手組……。
(0)あらゆる要素を鑑みて、結果的に切っていいかどうかを判断する。麻雀とはその繰り返しなのだ。
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(0)「じゃあ、あの時切ろうとした{8}。無スジ2、8に分類されるわけだけど、無スジ2、8が放銃率10%になるのは、何本スジが通っている時?」
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(0)「……9本です」
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(0)「流石。よく勉強してるんだね」
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(0)漫が、真剣に2人の会話を聞き始める。
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(0)漫も多恵からデジタルの授業はたくさん聞いてきた。この3か月間、吸収できるものは全て吸収しようとしたのだから、漫にとっては当然の努力。
(0)しかし、この問いを多恵から急に投げかけられたとして、即答できる自信は無い。
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(1)(原村和……流石はインターミドルチャンピオン……やな)
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(0)漫も、和と直接の面識はない。
(0)噂で知っているだけ。だが、デジタルを軸に組み立てる打ち手だとは知っている。
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(0)「じゃあ、あの時切れていたスジの本数は覚えているかな?」
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(0)「……先生の目から{②}のノーチャンスが生まれていたのも考慮して、4本だったと思います」
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(0)「……正解。よく見てるね」
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(0)「では!!やはり切るべきだったのではないですか!」
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(0)和がまた一歩多恵の方へと歩みを寄せて力強く言い切る。
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(0)和の疑問も当然と言えば当然だった。
(0)多恵が本当に「クラリン」であるのならば、いつも動画で口酸っぱく言っていることがある。
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(0)『しっかり放銃しましょう。打つべき牌は打ちましょう。その局面を100回繰り返した時に、得をする選択を繰り返しましょう』
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(0)この言葉に、和はとても共感した。
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(0)ただランダムが偏った場面を切り取って、「これを切ればよかった」となることは良いことではない。
(0)長期的に見てプラスになる選択。それこそが麻雀の全てだと和は信じている。
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(0)だからこそ、あの時のあの選択が理解できない。
(0)あの局面は、100回繰り返せば90回は得する場面のはずだ。
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(0)鬼気迫る表情の和に対して、多恵はにっこりと笑みを浮かべた。
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(0)「……原村さん。原村さんは……麻雀、好き?」
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(0)「え?……それはもちろん……好きですけど……」
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(0)「そう。じゃあ、質問に答えるね。平面で見れば、あの牌は切るべきだったと思う。いつもやっているようなデジタルの世界なら、当然押し有利だった」
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(0)「……では、人読みですか?」
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(0)人読み。
(0)多恵が動画の中でも多恵が少し触れた内容。勝手知ったる仲の相手と卓を囲むとき、または、プロでリーグ戦等に挑み、戦う相手の特徴が分かっているとき。
(0)そういった時に平面の情報にプラスして、判断材料に組み込むべきもの。
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(0)和はそう理解している。
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(0)「……半分正解かな。あの時私は、やえと共に打ってきた何万局という半荘を振り返って、この牌は打てないと判断した」
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(0)「……しかし、それだけで判断するのは余りにも危険では……」
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(0)当然、和もその可能性は考慮した。
(0)多恵が、やえと旧知の仲であること。
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(0)実況解説の2人も散々触れていたし、それくらいは他人に興味を持たない和の耳にも入っている。
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(0)「じゃあ、もう半分の方。私はやえの『力』を信じたんだ。……原村さんは、この世界のプロの人たちを見て、どう思う?」
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(0)聞きなれない単語と共に、また、問いが投げかけられる。
(0)和は率直に思うことを口にした。
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(0)「……一時的なランダムの力を借りて、運の暴力を繰り返す麻雀が蔓延っているように見えます」
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(0)「ははは!辛辣だね……」
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(1)「だからこそ!私はあなたみたいな人がプロになるべきだと思った!本物のプロなんだと思った!だからこそ……今日の打牌が、わからなかった……!」
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(0)和が拳を握りしめる。
(0)この数年、和は「クラリン」のような存在を信じて、麻雀を打ってきた。
(0)なのに、その人物がいつもとは異なる打牌をしている。それが、不可解で仕方なかった。
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(0)そんな和に、多恵から驚くべき言葉が返ってくる。
(0)それはおそらく、和が一番聞きたくなかった言葉。
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(0)「あれらの和了りが、一時的なランダムではないとしたら?」
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(0)「……どういう、意味ですか?」
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(0)何を、言っているんだろうと思った。
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(0)「偶然に見えた和了は必然で、一時的な牌の偏りだと思いたいのに、とてもそうは思えないような豪運に、原村さんは出会ったことがないの?」
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(0)「……ッ!」
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(0)無いわけがない。
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(0)現に高校生になって初めて明確に「勝てない」と思った同級生は、まさにそういう打ち手だったから。
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(0)前々から気付いてはいた。しかし、理解はしたくなかった。
(0)それを理解してしまったら、自分の麻雀が終わってしまうような気がして。
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(0)いつかの解説で聞いたことがあった。
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(0)『デジタル知識なんて無くても勝てるようになっているのが、麻雀だ』
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(0)ふざけるな、と思った。
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(0)この人も、「デジタルでは限界がある」と、そう言うのかと、和は無性に苦しくなってきて。
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(0)「……じゃあ、デジタルには限界がある、『力』には勝てないと、先生もそうおっしゃるんですか?」
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(0)結局のところ、和はこれを聞きたかっただけなのかもしれない。
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(0)初めて出会えた、自分と同じ志を持った強い打ち手。
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(0)勝手ではあるのは重々承知だが、「クラリン」なら自分の麻雀の正しさを世に知らしめてくれるとさえ思って。
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(0)だからこそ、最近ネットで散見される「デジタルの限界」などというワードには、絶対に屈してほしくなかった。
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(0)悲壮な表情で問われた言葉に、多恵は笑って答える。
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(0)「いや?そんなものは無いよ」
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(0)「で、でも、デジタルでは計算しきれない『力』があると言うのなら、『力』がない人たちはどうすれば……!」
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(2)「『力』をも、デジタルに組み込んでみよう。いつの時代だって、そうやって麻雀戦略は日進月歩培われてきたんだから」
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(0)多恵も、和のようなことを言う人をたくさん見てきた。
(0)それは、動画の視聴者であり、かつての自分であり、この世界の多くの夢破れた雀士達。
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(0)少し閉じた目を、開ける。
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(0)だから、と多恵が、和を強く見つめ返す。
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(2)「その強大な『力』をも乗り越えられることを証明するために、姫松 は今年、インターハイ に来たんだ」
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(0)「……!」
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(0)和が、瞠目する。
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(0)それは、彼女がこちらに来て持った信念。根幹。
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(0)麻雀を愛し続けた彼女の願い。
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(0)この世界にいる、麻雀を愛 し て い た 人たちにも、また再び麻雀を愛してほしかったから。
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(1)「努力は無駄なんかじゃない。確かに、報われないこともある。けど。信じて努力してきたたくさんの人たちの過程を、否定することだけはしたくない」
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(0)和は、黙って多恵から紡がれる言葉を聞き続ける。
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(0)(ああ、この人はやっぱり……)
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(0)多恵が、踵を返した。
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(0)キラキラとした瞳で多恵を見ていた漫もそれに続く。
(0)去り際、多恵が和に声をかけた。
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(1)「原村さん、あなたの打牌、楽しみにしてるね。ウチも、負けないから」
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(0)廊下を曲がった多恵達の姿が、見えなくなる。
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(0)しばらくして、和も、自身の仲間が待つ控室へと振り返った。
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(1)(ありがとうございます。先生。あなたはやっぱり、私の先生です)
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(0)『さあ、次鋒戦の4選手が卓に着きました!次鋒戦、スタートです!』
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(0)「「「「よろしくお願いします」」」」
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(0)熱気も冷めやらぬなか。
(0)準決勝第二試合は、次鋒戦へと移る。
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(0)起家となった漫は、自身の上がってきた手牌を眺めた。
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(0)東1局 親 漫 ドラ{⑦}
(0)漫 配牌
(0){⑦⑨13678一三五八九西北}
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(0)ふう、と息を吐きだす漫。
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(0)(多恵先輩の作ってくれた点棒。これだけある。それに、さっき多恵先輩が言ってたこと)
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(0)先ほどの廊下での会話を、漫は思い出していた。
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(0)『その強大な『力』をも乗り越えられることを証明するために、姫松 は今年インターハイ に来たんだ』
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(1)私達、と言ってくれたこと。
(0)漫はとても嬉しかった。自分も、その誇り高い姫松の一員なんだ、と。
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(0)大会前にも言われていたことだが、再確認できた。
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(0)(この対局は、ウチだけのものやない。姫松の皆の想いを、背負ってるんや)
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(0)牌を、手に握る。
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(0)(絶対に、負けられへん!)
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(0)力強く、第一打を切る。
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(0)漫の瞳には、覚悟の炎が宿っている。
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(0)次鋒戦が、始まった。