行別ここすき者数
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履歴はこちら。
(0) 最後に普段より重い リュックを背負い、拘束ベルトをしっかりと嵌めていく。
(0) 上半身ほどあるとはいえぴったりフィット、これで準備は完了だ。
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(0) ……が、
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(0)「んー……微妙」
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(0) 手足を軽く捻り動かし調子を確かめるが、どうも落ち着かない。
(0) その原因は私の足を包み込む青いアレ、ジーンズのせいだ。
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(0) あの蛾の何より厄介なのは、手足に張り付く鋭い毛や鱗粉。
(0) 動きやすく足を守れるものということで選んだのだが、聞いていた話と違ってってとても硬い。
(0) ごわごわを通り越してごわってぃだ。
(0) なんだあの店員は、どうしてプロテインといい店員は嘘をつくのか。
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(0) 不満に合わせてカリバーをぶんぶん振り回し、数時間ぶりの『炎来』、その門へと足を運ぶ。
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(0) 時刻は既に夕方。
(0) あれだけいた人々も既に去った後のようで、辺りには人っ子一人いない。
(0) 子供も間違えて入ってしまえば危険だからだろう、昼間はなかった柵が突き立てられていた。
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(0) 濡れないようにだろう、シートの被せられた台から地図を一枚抜き取れば、そこには適当に描かれた円形の図。
(0) 門を中心として広がった円形の森、それが『炎来ダンジョン』の基本的な形らしい。
(0) それにしたってあまりに簡素過ぎてどうなんだ。まあ書くことが特にないほど、ただの広々とした森ということなのかもしれないが。
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(0) ぐにゃりと歪んだ門の先、昼間の様に明るい燃え盛る木々。
(0) 一応空は次第に暗くなっているのだが、こうも明かりが周りにあればそんなのは関係ない、ということなのだろう。
(0) 景色はまだ特に変化なし、ダンジョンの崩壊がこの先起こるかもしれないだなんて、この風景を見慣れた人間には思いもよらない……かもしれない。
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(0)「……よし」
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(0) パチパチと炎が爆ぜる音を背に、緊張からかピクピクと勝手に動く瞼をぎゅっと閉じ、胸の奥底に溜まった息を吐きだす。
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(0) 大丈夫だ、大丈夫。
(0) ダンジョン崩壊が起こる確証なんてないんだ、落ち着いてレベルを上げよう。
(0) あそこが崩壊するかも、なんて虚言は日々あちこちで飛び交っていて、今回のそれだって起こらない可能性の方が、起こる可能性よりも何倍も高い。
(0) 第一助けてくれた人が言った話とはいえ、証拠もないのに完全に信じるだなんて狂ってる。
(0) このレベル上げはハレー彗星の噂話を信じた人が、無駄にタイヤを買い込んだのと同じで、いつか笑い話としてネタになるかもしれないからやるだけ。
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(0) お腹の奥底にこびり付いた不気味な確信を覆い隠すように、自分の気持ちを軽くするように、いくつもの言い訳を積み重ねていく。
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(0) 暫しそうやって自己暗示をしていると、何か柔らかなものがこすれ合う音が鼓膜を叩いた。
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(0) ……来た。
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(0) 音のする方向へ首を傾け、こちらへゆらゆらと近寄ってくる蛾を睨みつける。
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(0)――――――――――――――――
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(0)種族 モスプロード
(0)名前 コットン
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(0)LV 1200
(0)HP 4323 MP 3021
(0)物攻 376 魔攻 4542
(0)耐久 377 俊敏 199
(0)知力 650 運 38
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(0)――――――――――――――――
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(0)「『ステップ』! 『ストライク』! 『ステップ』!」
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(0) 地面を蹴り飛ばし、スキルの導きに逆らって蛾へ飛び掛かる。
(0) 以前と違って積極的に私が攻撃へ向かったからだろう、ゆらりゆらりと、ゆっくり旋回してその場から立ち去ろうと行動を始めた。
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(0) やっぱり、遅い。
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(0) 思った通りの行動。
(0) そのままストライク走法でその身を抜き去り 、真正面へと立ちふさがる。
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(0) 確かにこいつの爆ぜる針は厄介だ。
(0) だが効果が発揮されるのには時間がかかるし、その前に行動を終えれば何の価値もない。
(0) 私の高い俊敏値と危険な走法の組み合わせは、同レベル帯では比肩する者がいないだろう。
(0) 最初こそ気を抜いていたが、魔攻に特化したこいつのステータスでは、いくら逃げたくとも逃げられまい。
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(0)「『巨大化』! ……っ! せやっ!」
(0) ドンッ!
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(0) 上昇して逃げるより素早く振るわれ、その身に届くほど長く伸びたカリバーが打ち据え、鈍い水音を響かせる。
(0) そのまま遠心力に身体を振り回され、二度、三度と激しく地面の草を飛び散らす。
(0) 翅は折れ曲がり、ヤシの葉じみた触角は千切れ、その柔らかな腹は大きく凹んで透明な体液をたらりとこぼしてた。
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(0)――――――――――――――――
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(0)種族 モスプロード
(0)名前 コットン
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(0)LV 1200
(0)HP 2034/4323 MP 3001/3021
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(0)――――――――――――――――
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(0) 初手さえ取ってしまえばなんてことはない、耐久の低さも相まって蠢くサンドバックだ。
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(0)「『ストライク』」
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(0) 叩き付けられた衝撃だろう、蛾の周りに舞っていた金色の粒子を吹き飛ばし、むやみに針が刺さらぬようゆっくりと近づく。
(0) それでもやはり残っているものが多少はあるようで、チクチクとささくれるような不快感が、顔やむき出しの掌へ纏わりついた。
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(0) この程度なら十分許容範囲だ。
(0) なんたって私には……
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(0)「『スカルクラッシュ』!」
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(0) 『活人剣』で、十分カバーできる。
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(0) 微かな手ごたえとどこか気の抜けるような音。
(0) 手や顔にあった刺激がゆっくりと消える。
(0) 脳天を叩き潰された蛾は微かに脚を振るえさせ、直後光となって風に流されていった。
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(0)『レベルが73上昇しました』
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(0)「よし!」
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(0) カッと熱くなり、全身から高揚感が沸き上がる。
(0) 危険こそあれど流石はDランクダンジョン、レベルの上がり幅もかつてないほど。
(0) これなら崩壊までに間に合うかも……
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(0) いや違う違う、崩壊なんて起こらないかもしれないんだ。
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(0) ごろりと転がったのは、蛾の毛と同じく赤橙色の魔石。
(0) どれほどの値段になるか気になるし、今から協会で確認したいところではあるが、今回はこれも貴重な武器になるかもしれないので、リュックの中へ放り込む。
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(0) ……もっと、レベル上げないと。