人理を照らす、開闢の星 (札切 龍哦)
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序章 虚ろな魂・至高の器 無銘の魂と黄金の輝き

導入部分となります


虚ろなる世界の外側では、そういうゲームが流行っています

世界を変えるには、世界の当事者になることが一番効率がいい


終わりとは、存外早くに訪れるものである。

 

 

そう、自分は今、死を迎えたのだ。

 

 

どんな死に方だったのかは、明確には覚えていない。

知覚できなかったのだ。あまりにも単調かつ、突然であったがゆえに。

 

取り立てて優れた能力はなく、取り立てて優れた人格でもない。

 

数多に溢れる『凡人』の謗りを受けるであろう、取るに足らない何者かだったからか。

 

それとも――或いは。

 

魂と呼べるものが、あまりにも代わり映えしない平凡な生活に、錆びきってしまったのか。

 

どこか、他人事のような感覚さえ覚える。

 

無価値、とは自分のためにあるような言葉なのだろうか。

 

――あぁ

 

口惜しい、と感じるのは何故だ。

 

 

生きたい? 違う、そんな執着はもう何もない。

 

家庭も持たず、ただ流されるまま生きていた。誰も自分を哀しむものはいまい。

 

 

悔しい、と感じるのは何故だ。

 

目指すものは何もなかった。憧れるものも何もなく、漠然と生きてきた。空虚と虚無が心を満たすのはそれが理由だ。

 

 

 

そうだ、目を閉じてしまおう。それがいい、それでいい。

 

 

目を、閉じれば……終わりなんだから。

 

 

――安らかな眠りが瞼を降ろす刹那。

 

 

ドクン、と何かが脈打つ。

 

 

同時に、寒風吹き荒ぶ胸に、何か、疼痛のような違和感が涌き出る。

 

 

――無念が、満ちるのは何故だ。

 

無念? 矛盾する、矛盾している。

 

何もしてこなかった。何も為しえてこなかった自分が、何を以て無念を定義するのか。

 

 

自らを包む死の安らぎに包まれながら、微かに残る思考を巡らせる。

 

何が無念だ? 何も成し遂げてはいないのに。

 

 

何もしてこなかった。熱を上げる趣味も何も、己には無かったから。

 

 

程なく、天啓、あるいは大悟の如く思い至る。

 

 

――何もできなかった。それが無念なのだ。

 

生きてきた、何かを積み上げることができなかった。

 

 

後に遺すようなものを、何も遺せなかった。

 

世界に、胸を張って誇れるような『痕跡』が……自分には何もなかったのだ。

 

 

――自分は消える。

 

何者でもないまま、己という存在は消え失せる。

 

 

その事実が、たまらなく悔しく感じるのだ。

 

 

あぁ、何てことだろう。

 

生命を手放してから、自分の意義を確立させるなんて、どこまで愚昧だったんだ、自分は。

 

 

 

――死ねない。

 

 

死にたくない、まだ死ねない。

 

 

 

虫のいい話だ。たった一つの生命を手放してようやく、自らの欲望を自覚するなんて。

 

 

そうだ。まだ、死ねない。

 

死ねない、死にたくない。こんな形で死にたくない。

 

この身は、何も成し遂げてはいない。

 

 

この魂は、何も燃やせてはいない。

 

 

燻っていた炉心に、火が灯る。

 

そうだ、まだ死ねない。

 

 

せめて――消え去る前に――せめて……

 

 

何かを成し遂げなければ、生きていた甲斐がないじゃないか……!

 

 

 

――――――

 

 

 

「呆れた自我の希薄さだ。よりにもよって死んでから自己を確立させるとは」

 

 

――!?

 

 

響く声に目を見開く。姿は見えない。何処からか、声だけが響く。

 

 

「そのまま朽ちていればまた無益な苦悩を抱える必要はなかったというのに。人というのはなんとも思い通りには行かない種だな」

 

 

尊大な物言い。まるで、全てを俯瞰し見下ろすような高みにいるような。

 

 

「――誰、だ」

 

「ん? あぁ……別に誰でもないさ」

 

 

誰でもない? こんな圧倒的な存在感を醸し出す声の持ち主が、か?

 

謙遜か、はたまた自嘲か。響く声は言葉を紡ぐ。

 

 

「私は……なんというかな。君のような魂を弄ぶろくでなしだ」

 

「……なんだ、それ」

 

 

「言葉通りの意味さ。私は基本、娯楽に飢えている、傍迷惑な存在。それだけだ」

 

 

 

紡ぐ言葉には、熱がない。尊大に響くが、事務的な放送の如く抑揚がない。

 

 

「まぁ、私のことはいい。問題は君だ。君の末期の慟哭が、私を引き寄せたという訳」

 

 

「自分が、だと?」

 

 

「あぁ、その無念と慟哭が、退屈に微睡む私を呼び寄せ、叩き起こしてくれたんだよ。厄介なことにね」

 

 

……いささか恥じ入る。熱い咆哮でも敬虔な信仰でもなく、そんな後ろ暗い感情で呼び寄せたという事実に、顔も見えぬ何者かに申し訳なく思ってしまった。

 

 

「すまない」

 

 

「気にしないでくれ。その手の悩みは一人を除いてつきものだ。むしろ、遅すぎたようだがね」

 

「申し訳ない」

 

「構わないさ。……で、本題だ――君という存在は死を迎え、肉体と精神は滅びを迎えた。魂もいずれ消えるだろう」

 

 

「本来なら止める理由も義理もないが……死の淵でようやく自我に目覚める無垢な魂など、あまりにも稀少なものをみすみす散らせるのも惜しく感じる」

 

 

無垢、無垢なのか? むしろ無念と泣き言を紡ぐ寂れた蓄音機程度ではないのだろうか。

 

 

「そこでだ。こうして言葉を交わした縁に基づき、君を『異世界転生』の憂き目に遭わせてやろうと思う」

 

 

……は?

 

「自分ではない何者かに転生し、第二の人生を歩む物語をこう呼ぶらしい」

 

らしい、とはなんだ。あまりにも適当かつぞんざいにすぎる。

 

 

先程からなんなんだこの声は。あまりにも無気力かつ奔放で胡散臭いことこの上ないぞ!

 

「そういうな。巷で流行らしいんだ。私の知り合いも熱中していてな。『俺の送り込んだ人間は一騎当千のヒーローになった』だの『私の考えた最強のイケメンは一国の王子になった』だの、大流行なんだぞ?」

 

どういう事だ!? この声は何を言っているんだ!?

 

 

 

「『人間どもの身の丈に合わぬ力を与えて異世界に放り込み、右往左往している姿を見るのが醍醐味』だそうだ。悪趣味というかなんというか。不法投棄と何が違うのか私には区別がつかん」

 

この物言いは当事者のものではない。更に上から、万物を玩弄する超越者がごとき発言だ。

 

それと知り合いということは……今響くこの声は……。

 

 

「まぁ、やってもいないのに解らんと決めつけるのはよくないな。何事も挑戦、知ろうとしないことは解らんとも言うしな」

 

 

「という訳で。今からお前を私の異世界転生玩具として使わせてもらう」

 

 

何だと!? ちょっと待て、お前は何を言っている……!?

 

 

理解が追い付かない。異世界転生? 玩具? なんだ、どういう事なんだ!?

 

「名前は……いらんな。精神は稀薄だが取るとまずい。ううん、ここまで自己が薄いと異能を持たせても何もできまいなぁ。ふむ……ならばこうしよう」

 

言葉は紡ぐ。

 

「■■■■■■。君は英雄となり、世界を救え」

 

 

――何、だと?

 

英雄? 英雄といったのか? 今?

 

 

「数多の世界に、『焼却され燃え尽きようとする世界』がひとつある。そこに招かれた英雄として、世界を救う手助けをしてもらおうかな」

 

「だが、君はあまりにも頼りない。存在の話だ。君個人を守護者に売り飛ばして使役させるのもいいが、なんかすぐ死にそう」

 

物凄く失礼なことと、恐ろしく不穏な言葉を紡ぐ謎の声。

 

 

「君には自己がない。現代の消費文明がそうさせたのか?あまりにも味気ない魂だ。ちょっとやそっとじゃ活躍は見込めないだろうな」

 

 

「――よし。君の転生先が決まったよ。ある意味、君の対極。個性と自我の頂点というべき存在だ」

 

瞬間、世界が流転する。凄まじい勢いで意識が流され、あらゆる情報が流れ星の如く駆け抜けていく。

 

 

「君は人理継続保障機関『カルデア』と呼ばれる施設に英雄として招かれる。人理焼却と呼ばれる偉業を果たされ、未来がない世界にね」

 

 

「そこにいる人類最後のマスター、藤丸立香と呼ばれる人間に使役されるサーヴァントとして、世界を救う刃となるんだ」

 

 

世界を、救う?

 

――できるのか? そんなことが? そんな夢物語が? 可能なのか? そんな、偉業が?

 

 

「生半可な力では君を送る意味がない。とびきりの特権を与えなければ、『いてもいなくてもいい』異物になる。そんなものはただのゴミだ」

 

 

「だから、君は英雄の中の英雄――英雄王とまで呼ばれる英雄として転生してもらうよ。君の魂を磨き上げるには丁度いい器だ。『神に造られた』という因果がある以上、サーヴァントとして形を持たせるのは容易い。……朋友の方はもっと楽なんだが、如何せん伸びしろが全くないのは問題だ」

 

 

「待て――そんな事が――!」

 

 

「君は今から、君であること以外の全てを棄てる」

 

 

意識が、薄れる。

 

 

「君がどうなるか、世界がどうなるかは君の頑張りにかかっている」

 

 

声が、遠く。

 

 

「精々頑張りたまえ。■■■■■■。いいや」

 

 

 

ゆっくりと、意識が沈んでいく――

 

 

「『英雄王・ギルガメッシュ』……」

 

 

 

――――

 

 

蒼に満たされる空間、白い稲光に目を閉じる。

 

 

やがて光は収まり、そこには一人の男が立っていた。

 

 

黄金のフルプレートアーマーに身を包み、逆立つ金色の髪。そして、冷然と総てを見下ろす真紅の瞳。

 

「あ、なたは……」

 

 

あまりの威容、あまりの威圧に立っていることが精一杯だった。

 

けれど、震える喉から懸命に声を絞り出す。

 

 

彼こそは、この人類史を救う旅を助ける無比なる刃。

 

剣となり、盾となる戦闘の代行者。

 

 

人類史に刻まれし。英霊の写し身。

 

 

その名を――

 

 

「や、我が知りたい」

 




立香の性別どうしよう


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観測――愉悦部員、部員ネット

部員ネット、愉悦部員の説明です



説明しておけば、ここを読んでくださいと言えますからな


・・・ん?

 

 

 

あぁ、なんだ。君も新しくこの物語を眺めに来たのかい?

 

 

 

そう、君だよ、君。高い次元にいながら、観測することしかできない『傍観者』の君さ

 

 

まずはお礼申し上げよう。この無色透明な物語へようこそ。心から君を歓迎しよう

 

 

原作は知っているかな?『fate』という作品の派生、最早一大ブランドとされるソーシャルゲーム、グランドオーダーと呼ばれる世界観を下にこの物語は織り成される

 

ある一つの存在により焼き払われ、滅亡した人類たち。狂いし歴史、七つの特異点。それを突破し、未来を取り戻す物語――

 

 

この物語は、そんな舞台に『無垢なる魂』を『英雄王』の器に放り込んだ事から始まる転生もの、憑依ものと言う奴だ。うん、中々にありふれた題材だと我ながら思うね

 

 

だけどまぁ、ありふれた。ということは、皆に愛されているジャンルという事でもある。何事もモノの見方、言い方で印象なんていくらでも変わるものさ

 

無銘なる魂、黄金なる英雄王が旅路の果てに何を見出だすのか・・・まぁ、暇潰しくらいにはなると保証しよう

 

『またよくある転生ものかよ』『何番煎じだよこのネタ』と、悪態混じりに読む君の手が止まらないことを祈っておくよ。まぁ、最新話までは長い長い旅路だが、一度はじまったらあっという間なんじゃないかな?

 

 

・・・さて、こうしてわざわざ都合よく現世で生命を手放す君達に力を与える側の存在が口を回すのは他でもない『この物語における、君達の立ち位置』だ

 

 

今更言うまでもないだろうけど、言葉にしておき、説明しておこう。単純に説明責任を果たしておかないと混乱するだろうからね。納得するかしないかは私の知ったことじゃない。義務を果たすだけだからね

 

 

結論から言うと、この物語においてのみ、君達は『傍観者』じゃない。物語に『波』を起こせる『当事者』となる権利を獲得する

 

いわゆる、読者参加型、という奴だね。君達の存在は『君達のいる世界』ごと『認識』され、この旅路に登録される事となる

 

何事も認識から始まるからね。いたとわかるからこそそこにいるし、いなかったらそれは無価値なものに他ならない。神様の在り方がそんな感じだ

 

まぁそんな訳で、君達の存在はこの物語を小さく動かすことができる『端役』としての役割を持つわけさ

 

 

分かりやすく例えると・・・ヒーローショーで『ヒーローが負けそう!皆!応援して!』と司会の御姉さんに言われて声を張り上げる少年

 

プリキュアにエールとパワーを送る『がんばえー!プリキュアがんばえー!』と叫ぶ少女

 

 

そういった存在に、君達はなるんだ。では、これを

 

 

『入部届』

 

大切に持っているといい。今はまだ何の変哲もない入部届だし、何の意味もないものだが・・・これは重大な意味を持つものになる

 

いずれ、あの不思議な英雄王は設立するだろう。『部活動』と称して、人類の集合無意識をサーバーに、人々の魂と精神を回線に、肉体をPC代わりにした『電脳』の最新の宝具

 

 

そう――『部員ネット』をね。この入部届は、その回線に今、そこにいる君の存在を繋げるものだ

 

要らないのなら、それは此方で預かろう、参加するも、しないも君の自由だからね

 

 

・・・部員ネットについて詳しく教えろ?・・・まぁ、特異にも程があるからね。かいつまむとしようか

 

 

部員ネットとは英雄王の設立した『愉悦部』を、異世界ネットワークにて拡張、広大化し再現したものだ

 

話を聞いて察したかもしれないが・・・世界はそれはもう大変な事になっていてね。カルデアにいる人員じゃどうしても手が足りないと王は気付くのさ

 

そして王は簡単な結論に思い至る。『この世界が滅びたならば、別の世界を観測し物資や人員を確保するまでよ』とね

 

荒唐無稽にも程があるが、彼はそれが出来るし、思考を認識することができた。だからこそ、彼は使ったわけさ

 

『異世界間を繋ぐ交易ネットワーク』として『愉悦部』と称する異世界観測端末を、彼はこれから利用するために使った、と言うわけさ

 

王の千里眼はその気になれば異世界をも見通せる。彼だからこそできた荒業だね。此処にないものは、ある所から取り寄せる。実に効率的だ

 

 

だが、千里眼は便利だが万能じゃない。『無数にある世界から、自分に力を貸す世界』だけを都合よく見ることは難しいのさ。砂漠に埋もれた砂まみれのダイヤを見つけるのは難しいだろ?それと同じさ

 

そんなわけで『自分に力を貸す意思を持った世界と縁を繋ぐ』為に、英雄王はこのネットワークに『部』と名付けた

 

この旅に参列するもの、我に続くものは来るがいい、と言った名目でね

 

そうすることで、この物語を『視て』好ましく思った者を『基点』とすることで、カルデアと『その者』の世界と縁を結ぶ

 

『異世界とカルデアを繋ぐ要石』それこそがこの物語における君達の役割

 

そう――王を賛美し、その存在を以て王の旅路を助ける存在

 

それこそが『愉悦部員』。その集まりが『部員ネット』というわけさ。大まかな内容はこんなところかな?

 

まぁそう難しく考えなくてもいい。王には賛美する民草、進言する部下が必要だろう?それを彼は募集すると言うだけの話さ。物語が進んだあとにね

 

何故今更こんな話をするのか、と愛読している皆には思われるかもしれない

 

寧ろ、『今だから話す』のさ。『物語にて語られる事』は、『物語の内の現象』に当てはめられる

 

内輪の話から、物語の要素に昇華するにはどうしても、説明と理解が必要だからね。要するに、これはそういう物語なのさ

 

まとめると、今そこにいる君は、そこにいるだけで王の旅路の助けになる

 

観測者でありながら、物語の端役となる不思議な『有り得ざる登場人物』それが今、そこにいる君なのさ

 

何をするでもいいし、何をしないでもいい

 

無責任、些細かつ、大きな揺らぎになるかもしれない存在が『部員』とされる存在だ

 

これはある意味でスケールの大きい話だ

 

『一つの世界を救うため』に『無数の世界』の力を借りる大仕事になるわけだからね

 

ピンと来ないかい?それはそうだ。おそらく誰もやったことが無いだろうからね

 

この試みが『誰もが思い付かなかった、やれなかった』偉業となるか『先人達が思い付いたけどあえてやらなかった』愚行となるか

 

まぁ、ゆるく楽しんでくれ。どう転ぼうと、それは恐らく『誰も見たことのない結末』に転ぶだろうからね

 

私?私は・・・そうだな・・・

 

『人でなし』とでも名乗っておくよ。全てを出来る力を持っておきながら、なにもしない愚者さ

 

『倦怠となった全能』とでも認識してくれれば間違ってはいない。――まぁ忘れてくれ。私はなにもしないし、なにもやらない。ただ、あの魂を送り込んだだけの存在だ

 

――ふむ。送り込んだだけでそのままというのもどうかと思うな、よし解った

 

かの魂には、もう一つ特典をあげよう。『諦める自由』だ

 

『辛いのなら、止めてもいい』。この言葉をかの魂が受諾した時、物語が終わるように私がしてあげよう

 

リタイア、電源ボタンだ。送り出した者の責任として、しっかりと止めをさしてあげよう

 

そして、この役割を誰に与えよう・・・?――そうだ、君がいい。比較、災厄の獣とかいう君

 

 

(・・・なんでボクなんだよ。休ませろよ)

 

まぁそう言わないでくれ。グランドオーダーお疲れ様。自らの総てを使った救済、お見事だった

 

(二周目やれっていうのか?嫌だよ、何が悲しくてまたビーストにならなきゃいけないんだ)

 

まぁまぁ、君は『一度経験した』からこそ、傍観者に相応しいんだ。君が適任なんだよ

 

(・・・)

 

もしかしたら、『君が生き残り世界を謳歌する結末』が得られるかもしれないよ?

 

(・・・何を根拠に)

 

かの魂は無垢だ。君の『比較』の理は通じない

 

もしかしたら・・・君を『単独で倒してしまう』かもしれないよ?

 

(・・・・・・バカみたいな理屈だね)

 

そうだとも。だが、バカみたいな理屈は、時にバカみたいな奇跡を呼ぶかもしれない

 

(・・・)

 

――君だって一度は夢見たんじゃないか?『善き人々と笑い合う未来がほしい』とね

 

 

(・・・・・・ボクは獣だ。いいか、倒される存在だ。そんなボクが都合よく・・・)

 

無理だろうね。だが・・・

 

『それはその世界の話だろ』?

 

(――・・・)

 

この物語は今から始まる

 

だからこそ、君も当事者となって何かをすれば・・・何かが変わるかもだ

 

 

(・・・――はぁ。解った、解ったよ。あの魂を見守り、ささやけばいいんだろ。『辛いなら止めてもいい』ってさ)

 

そうだ。君が破滅の引き金になるか、奇跡の切っ掛けになるか・・・期待させてもらうよ

 

(フン、そんな都合よくいくもんか。アレだってそのうち下らないものになるに決まってる。授かった力で俺ツエーなんて飽きるほど見た。・・・でも、もしそうならなかったら・・・ボクは)

 

・・・

 

(ボクは・・・一人くらい、『親友』を作ってみるのも、いいかもしれないな)

 

――行ってらっしゃい。どうか、よき旅路を

 

 

・・・長々とすまなかったね。話は終わりだ

 

 

君達の存在がどうなるか、興味は少なからず湧いていたりしているのもある。さっきとは所感が違うが、まぁ慣れてくれ

 

 

さて、そろそろ幕が上がる。最古にして最新の叙事詩が始まる

 

どうか、長い付き合いになることを祈っているよ

 

 

『愉悦部員』君――




(――・・・)


――どうしたの?フォウ?


(いいや、なんでもないよ。・・・ねぇ)

――なぁに?

(・・・これからも、よろしくね。⬛⬛)

――もちろん。フォウ――


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紅蓮の邂逅

女の子にしました。ぐだ子可愛いし


耳を疑う。聞き間違いでもなければ、戯れ事を口にしているようにも思えない。

 

 

人理を観測し、保障する機関……カルデアと言ったか。そこに原因不明の爆発が起き、施設が燃え落ち、偶然にも生き延びレイシフトとやらを果たしたマスターと、死の間際で謎の英霊と融合を果たし、デミ・サーヴァントと呼ばれる存在となってマスターとこの焼け落ちる街で戦っていた、と

 

「凄いじゃないか藤丸君!初めての召喚でかの英雄王を引き当てるなんて!いいぞぅ!戦力的にはこれ以上の札はない!」

 

姿は見えないが声はする。随分と頼りなく軽薄な印象を与えるが、彼が参謀の立場なのだろうか。

 

つまり……この二人の少女達に……全人類の命運がかかっている、と。

 

 

「あ、あの」

 

渡された情報を頭で反芻していると、紫色の鎧に身を包んだ、儚げな印象の少女が口を開く。

 

 

「先輩の召喚に応じていただき、ありがとうございます。私は、マシュ・キリエライトと言います。とある英霊と融合を果たした、デミ・サーヴァント。先輩と契約したサーヴァントの一人です」

 

 

「――――」

 

 

「その、私達はこの特異点の調査を行い、レイシフトにてカルデアへの帰還を計画しています。ですが、ここには既に多数のエネミーが巡回していて、戦闘経験が皆無な私達では、まだまだ踏破が困難と予測されます」

 

紫色の少女が言葉を紡ぐ。細くも芯の通った、耳に心地好い声であると思える。

 

その細腕に見合わぬ、大きな盾。召喚時に与えられた知識によれば、サーヴァントはクラスとかいう枠組みに押し込まれ一側面を顕現させる、らしい。

 

彼女のクラスはなんなのだろう。そもそもの話ではあるのだが、この英雄王ギルガメッシュという英雄のクラスもなんなのだろうか?

 

それは知識としては与えられない。自分がどんなクラスでどんな戦い方を得意としますか?など尋ねる英雄はいるまい。痴呆を患うサーヴァントなど願い下げだ。

 

……だが、盾と思わしき得物を見ていると、違和感を覚える。

 

それは、盾なのか?どうもイメージに結び付かない。

 

盾というよりかは、下に敷いて、晩餐を囲う時に用いる――

 

「不敬を承知でお願……い、いえ。進言します。どうか先輩と私に、力を貸していただけませんか?」

 

真っ直ぐな要請。水面下の企みなど微塵も感じさせない誠実な物言い。

 

……助けになれるのなら、それに越したことはない。むしろそのために自分はここにいる。

 

あのとき叫んだ慟哭……何かを為せずに死にたくない、と言った自分が、こうしてここにいる。

 

「良かろう」

 

そんな言葉しか言えなかったが、意思は余さず伝わったようだ。二人の少女の表情が明るくなる。

 

「今更そのような確認は要らぬ。力を貸さずに召喚に応じるはずもなかろうが」

 

「えっ!傲岸不遜な王様が二つ返事なんてどんな気紛れだい!?君は本当にあの英雄王かな!?」

 

「そんなモノは貴様らの眼で査定するのだな。そら、出立するぞ。ここにいて為すべきことは為したであろうが」

 

 

「為すべき、こと?」

 

 

「この我を召喚したことだ。貴様らにとって我が要か不要かは貴様らが決めるがいい。そこに在る令呪で、サーヴァントの始末など如何様にできよう」

 

 

「――召喚に不備があったのか?いや、そんなはずは……なんだこの慎み深い英雄王は!?怖いぞ!なんか怖い!」

 

「ドクターは黙っていてください。……あの、それでは……よろしくお願いします、英雄王」

 

「うむ、励めよ」

 

緊張に張り詰めていたマシュ・キリエライトの雰囲気が弛む。何故だか解らないが、首を飛ばされるのを覚悟していたかのような腹の決めようだ。

 

「なーんだ。心配して損した!意外とフレンドリーな人なんだね英雄王って!」

 

先程までうずくまっていた少女が破顔する。マシュとは対照的に、快活そうな雰囲気の少女だ。

 

 

「私は藤丸リッカ!なんだかなし崩し的にマスターになった者です!よろしく!ギル!」

 

「な――」

「ばっ――」

 

響く声と、マシュが絶句する。一々リアクションが大きい連中だ。

 

「うむ。マスターの大役、努めて果たすがよい」

 

「い、いいのかい!?」

 

「何がだ」

 

「君の事をその、愛称で呼ぶなんてことを赦すのかな君は!不敬だ、とか怒り出さないのかい!?」

 

「呼び名なぞ何でも良かろう。その程度で何を取り乱す」

 

どうも過剰に恐れられているような気がする。暴君でもあるまいし呼び名くらい好きにすればいい。

 

「あ、あの……英雄王がよろしいなら、よろしいのですが……」

 

「フレンドリー!私最高のサーヴァント引いちゃったかも!よーしマシュ!ギル!私達の旅は、これからだ!」

 

「なんだか終わりそうです先輩!」 

 

快活に叫ぶリッカ。元気なのはいいことだ。もっと言えば活力に溢れているのは好ましい。

 

 

さて、自分はどれほど彼女達の期待に応えられるだろうか……少なくとも、初戦で敗退するなどという無様は晒すことのないようにしなくては。

 

それに、カルデアとやらには英雄王の書物くらいはあるだろう。せめて、器となった英雄の詳細は知っておかねばなるまい。

 

 

「おい、そこの声音」

 

「あ、あぁ僕の事かい?僕はロマニ・アーキマン。カルデアの医療スタッフなんだけど……」

 

「帰ったら、ギルガメッシュ……我にまつわる資料を閲覧したい。集めておい……集めておけ」

 

「英雄王の書物をかい?構わないけど……あぁ、藤丸君に詳しく君を知ってもらうためかな?随分と面倒見がいい英雄を」

「我が読む」

 

「えぇ……?」

 

 




寛容さと人当たりのステータスに+++がかかっています

きれいな英雄王はお好きですか?


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初戦

コメント・感想ありがとうございます!


初投稿なのですが、嬉しいものですね!やる気が沸いてきます!


二人の足取りに合わせながら、焼け落ちた街を歩く。

 

 

ここは、フユキとかいう日本の街らしい。絶えず燃えている原因は不明、何らかの外的要因かどうかすらも不明瞭なようだ。

 

「ここが冬木かー。なんだかファスト風土化してるなー」

 

「先輩?その、気負わないのは先輩の人柄だと短期間で掴めるほどですが、周辺の警戒はあまり怠らないほうが…」

 

「平気平気!死んでるならもう既に死んじゃっているはずだし!私が生きてここにいるということこそが答え!」

 

「そう!私はスーパーヒーロー!世界に愛されたウルトラマスターなんだよ!多分!」

 

「根拠のない自信だなぁ……いや、悲観的になられるよりかはいいんだけどね?君はどう思う?英雄王さま?」

 

「さてな。平時ならばなんとでも宣えよう。人の本質とは、窮地に晒されてこそつまびらかにされるものよ」

 

「ギルは私がヘタレると?」

 

「それは此より計れよう。そら、アレは貴様らの知己であろう」

 

 

くい、と顎をやる先には

 

「所長!?」

 

骸骨の兵士に、必死に指向性の呪いを放ち抵抗する女性の姿があった。まだ生にすがり付いているところを見ると、魂は死んでいないのだろう。

 

 

――一瞥で看破してしまう。アレを助けるのは、より深い絶望をアレに与えてしまうのだと。

 

この器の能力か?一瞥するだけで、一目見るだけでソレがなんなのかを理解してしまう。

 

「あ、やっほー所長!元気ー!?」

 

「っ!?あなたたちどうしてここに!?生きていたの!?」

 

「つもる話は後!所長を助けよう!マシュ!所長を確保!」

 

「はい、先輩!」

 

助けるのは無意味だ、と答えを導き出してしまう自分がいる。

 

アレに還る肉体はない。恐らく残留思念がここに飛ばされてきた、霊の類いだろう。

 

――アレは、もう死んでいるのだ。

 

「ギル?ギルってば!」

 

呼び掛けられ、我に返る。

 

「なんだ、騒々しい」

 

「いよいよ金ぴかパワーを見せつけるときだよ!英雄王の!格好いいとこ見てみたい!」

 

「――――」

 

……無駄だ、と切り捨てることは容易い。

 

無理だ、と諦めることは容易い。

 

けれど、それを繰り返しては得るものは何もない。

 

益を求めるだけならばそこに意思はいらない。

 

効率を求めるだけならば、そこに感情はいらない。

 

無駄だと切り捨てるたびに、価値あるものも捨てていくことを、前世でよく知っている。

 

 

それに、自らの運命を知らないとはいえアレはまだ足掻いている。

 

まだ、自分の価値を定めていない。かつての自分と違ってだ。

 

ならば――見捨ててしまうのは、些か筋が通らない。

 

終わりは、自分の意志で定めるべきだ。生命の火が燻っているのなら、燃え尽きるまで。

 

「――ふん。持ち上げおだてても何も出んぞ?」

 

前世の無価値な自分ならともかく。

 

今魂を受け入れている器は、紛れもない英雄のものだ、ならば――

 

「下がっていろ、マスター」

 

自分も、弱きを助け強きを挫いてみるとしよう。

 

物語の、英雄のように――!

 

「魔力を回せ。お前の剣として振る舞うとしよう」

 

決意を固めた刹那、頭に戦闘のための情報が雪崩れ込む。

 

 

サーヴァント、ギルガメッシュ。クラスはアーチャー。宝具は……王の財宝。人類の知恵の原典を納めた宝の蔵。

 

息を呑む。なんだこの出鱈目な能力は。人類が生み出すものであらば遥か未来のものでさえ使用可能?

 

更に情報が流れ込む。天の鎖、神すら縛る至高の鎖。

 

エルキドゥ――そう読み上げた瞬間、器であるこの身体が僅かに震えた気がした。

 

思い至る、此はなによりも大事な物である。無駄撃ちは決して許されない、万感の思いが詰まったものであると。

 

そして――乖離剣・エア。

 

真名解放により、世界を切り裂く剣……

 

呆れ果てる。なんだこの規格外の英雄は。英雄王とは英雄である王だと思っていたが、とんだ思い違いだ。

 

ギルガメッシュとは、英雄達の王だ。あらゆる武具の原典を納めているのなら、必然的に英雄達の弱点足りうる武具を使用できる。加えて、世界を切り裂く力を持つなど、あまりにも途方もない力を、この器は持っていた。

 

 

自分ほど稀薄な存在でなくば、まさに制御不能の存在だろう。同時に、気を引き締めた。

 

 

慢心は許されない。これだけの力を、凡人の感性が振るうとなれば、容易に世界を滅ぼすだろう。

 

 

なるほど、そういうことか。あの声の主はそういった意味で転生先をこの英雄に定めたのだ。

 

あらゆる決断を、あらゆる裁定を己に課すこと。かつてのように流されていては、待っているのは破滅であること。

 

揺るぎなき自我をもって、この器を乗りこなさなくばこの世界に未来はない。

 

――気を引き締める。

 

新たに授かった第二の生で、なんとしても何かを為すために。

 

胸を張れる『痕跡』を、魂に刻み込むために。

 

 

さぁ、力を貸してくれ。英雄王。

 

貴方の強大な力を以て。

 

 

――死にもの狂いで謳って見せよう!

 

 

大地を蹴り、一息に跳躍する。骸骨の兵士の群れに一直線に飛び込んでいく。

 

 

「まずは肩慣らしだ。砥石代わりに砕いてくれる!」

 

骸骨が反応するより先に、握った拳で骸骨の頭蓋を砕く。

 

切りかかる別の骸骨の斬撃を、手甲で受けとめ、返す手刀でもぎ取る。

 

 

なるほど、サーヴァントは力が凄まじいな。確かに人間とは比べ物にならない。

 

恐怖する感情がない骸骨は、仲間がやられたところで怯みはしない。

 

カタカタと音を立てながら迫り、切り裂かんとしてくる。

 

 

「ふんっ!」

 

手近にあった骸骨の身体を掴み、群れに投げ込む。虚を突かれ、進撃が一瞬停止する。

 

 

身体能力に問題はない。ならば、宝具はどうか。

 

 

スッ、と手をかざすと、空中に波紋が現れそこからきらびやかな剣が現れる。その剣を掴み、無造作に振るう。

 

「はっ!」

 

軽く振るった剣先から、熱量の伴ったビームが放たれ、一直線に軌跡にいた骸骨どもをまとめて薙ぎ払った。

 

 

「す、凄い……これが、マスターを得たサーヴァントの力…?」

 

「あれが、英雄王の実力……」

 

 

「……」

「凄いじゃないかあの王様!原典どおりの怪力ぶりだよ!武具も出せる万能ぶり!評価に違わぬ凄まじい英霊だ!」

 

「……勝ったよロマン」

 

「え?」

 

「この戦い、私達の勝利だ……!」

 

「藤丸君!?」

 

 

――無事に骸骨を無力化した。

 

……だが、何かひっかかる。無性に違和感がある。

 

 

「……何かが、違うのか?今の我の戦い方は……?」

 

 

この違和感、どうやらこの英雄の真価を引き出せたとは到底言えないらしい。

 

 

……この底知れない英雄の真価なぞ、無銘の魂の自分に引き出せるのだろうか……?

 




ガトリングしないギル・・・それはギルと言えるのだろうか?


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思案

ギルガトリング以外の戦い方を模索する話です。王は如何にして近接戦闘の拙さをカバーするのか


「た、助けてくれたことには感謝します。藤丸、マシュ。そして、英雄王ギルガメッシュ……で、いいのよね」

 

 

「……我に礼を尽くすなら、己の職務を果たせ。その功績のみを我への返礼とする」

 

「わ、解り、ました」

 

「プークスクス。見てよマシュ、偉そうな所長がギルにへーこらしてるw」

 

「き、聞こえますよ先輩」

 

「というか貴方!そう貴方よ藤丸立香!何故あなたがマスターとなってここにいるわけ!?レイシフトしてきたのは解るけど!何故マシュがサーヴァントになっているの!?説明してちょうだい!!」

 

「ダメです」

 

「ダメぇ!?」

 

「藤丸君、所長で遊ばないでほしい。彼女はほら、気難しくて対人関係が苦手だから……」

 

「どういう意味!?私の交友関係なんて関係ないでしょう!?あぁ、もう嫌!なんで私は一人なの!?レフ!レフは何処なのよ!?」

 

「まぁまぁ所長、カッカしてたら美人が台無しですよ?ガム食べます?……あ、すみません私ので最後でした」

 

「~~~~なんであんたはそんなに能天気なのよ!?バカにしてるのっ!?」

 

立香が笑い、オルガマリーが怒り、マシュが慌てる。

 

「こんな状況でなければ、年の近いいい友人達の交友だなぁと微笑ましい気持ちになれるんだけどねぇ」

 

「仕方あるまい。戦士の心構えなぞ、あの小娘達に望むは酷であろうよ。死地にあれば自ずと死生の勘は磨かれようさ」

 

 

「……君は随分と寛容だね。随分と機嫌がいいのか、はたまた彼女に何かを見出だしているのか?」

 

「見出だす、か。そうさな」

 

 

見所、という点ではマスターを名乗る少女、藤丸立香は充分に見所があるといっていい。

 

 

死地にありながら笑い、見えぬ未来を見据え、横たわる絶望を踏み越えんとするその気概。

 

安寧を享受していた自分とは正反対のその精神の頑強さ、図太さには素直に脱帽だ。まぁ褒めると図に乗るので口には出さないことにしているが。

 

それに、傍らに寄り添う少女、マシュもまた、見所は存分にあるといっていい。

 

彼女は常に自分を奮い立たせている。挫けそうな心を、身体を。勇気を以て戦いに赴かせている。

 

心に巣食う恐怖を認め、たどたどしくも前に進まんと足掻いている。

 

現状においては肉体の強さなど些末なこと、困難に立ち向かう心こそが未来を切り開く道標となることを確かに知覚しているのだ。それに気付いているかは怪しいが。

 

「少なくとも、雛鳥の面倒を見るのも悪くはない。至らぬ契約者を守り立てるのも、仕事の内だ」

 

 

「……正直、君みたいな強大なサーヴァントを彼女が制御できるのかどうか気が気でなかったけれど。杞憂だったみたいだね」

 

ロマンの声が柔らかくなるのを感じる。どうやらこちらの警戒の度合いを下げ、少しは信頼を寄せたようだ。

 

 

「今の君に暴君の気質は感じられない。これは千年に一度あるかないかの幸運だ。その幸運が、少しでも長く続くことを願うよ」

 

「フン。……貴様も倒れる事は許さんぞ、医師。あのような小娘どもを前線に立たせるのだ。年長の貴様は相応の労働と献身で奴等に対価を払え。怠慢は許さん。油断と慢心は容認するがな」

 

念のため、釘を刺しておく。…どうもこの軽薄な男は今一信用ならない。なんというか、何処と無く発言に熱が見られない気がするのだ。

 

 

「痛いところを突いてくるなぁ、この王様は。もちろんだとも。僕の使命、というかやるべきことはきっちりとやるつもりさ。それが僕なりの戦いだからね」

 

……… だが、同時に揺らがぬ誠実さも伝わってくる。信用はできないが、信頼はできる。真意は計れないが背中を預けるには問題ない、といったところが落とし所だろうか。

 

「励めよ……」

 

 

となると。問題となるのはサーヴァントである自分の方だ。

 

 

先程の戦闘、どうにもまとわりつく違和感を払拭することがついぞ叶わなかった。なんというか、致命的に戦い方を勘違いしているような感覚が離れなかった。

 

 

「…医師。我のクラスはアーチャーであったな」

 

「うん?そうだね。今の君の霊基はアーチャーとして登録されている。それがどうかしたかい?」

 

「アーチャーとは弓を使うクラスであったな」

 

「う、うん。だからアーチャーなんだよ?」

 

「そうか。……弓、か」

 

弓、弓か。確かにあのとき、自分は弓を取らず肉弾戦と適当な剣を振り抜き雑魚を一掃した。

 

 

違和感はこれか?アーチャーなのに弓を使わなかった。帰結する結論と言えばこれがしっくり来る。

 

何しろ前世は少なくとも戦場に立つことなぞなかった凡人だ。戦の心得などあろうはずもない。

 

「よし、次はこの手に弓をつがえて戦いに赴くとしよう。アーチャーとはそういうものであろうからな」

 

「……縛りプレイだなんて余裕だね、英雄王様は。それもまた暇潰しかな?」

 

「たわけ。思慮の結果だ。何事もチャレンジ精神の心構えこそが肝要だぞ」

 

「ポジティブな英雄王だなぁ!?」

 

一々反応が大袈裟な奴だ。

 

……そうとも。研鑽を怠っては意味がない。

 

この自分は、英雄王ギルガメッシュの器に注がれた無味乾燥の魂なのだから、せめて器に相応しい程の格を目指さなくては。

 

 

「おーい!ギルー!そろそろ出発するよー!」

 

気付けば歓談も一段落ついたようだ。離れた場所で立香が手を振っている。

 

「ほら、お呼びみたいだよ。王様?」

 

「快活な娘よな。どれ、腰を上げるか……」

 

 

―――刹那

 

 

「!!」

 

突き抜けるような殺意を感じ取るのと

 

 

「立香!!伏せろ!!」

 

「ぇ……」

 

「――先輩ッ!」

ギルガメッシュが声を荒げ、立香に向けて凄まじい勢いで弓矢が放たれるのは同時だった。




弓を使うアーチャーなんて邪道なんだよなぁ(呆れ)


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真贋

技量で勝る同業者がいたらどうしますか?


金にあかせた最強装備を用意しましょう


「――先輩!所長!私の後ろに!決して離れないでください!」

 

「敵襲だ!所長!私を護って!」

「何言ってるのよ!サーヴァントに身を護らせなさい!」

 

絶え間なくミサイルのような矢が降り注ぐ。すんでのところでマシュが戦闘態勢に入り巨大な盾でオルガマリーと立香を覆い直撃を防いだのだ

 

「フン、いい反応だ。肝が冷えたわ…医師!」

 

「解ってる!サーヴァントの反応を探索中だ!見たところ僕達を狙っているのはアーチャーだろうけどね!」

 

弓兵か。思案していたところに当て付けのように現れてくれる

 

 

矢の量と勢いは次第に増していく。とどまることを知らない暴風雨がごとき波涛となって盾を打ち据える

 

「くっ、うぅっ…!」

 

デミサーヴァントとはいえ娘の細腕でよくぞ凌ぐものだ。護りし者としての技量は紛れもなく一流らしい

 

「英雄王…!マスターと所長は私が護ります…!どうか、反撃を…!」

 

途切れ途切れにこちらに言葉を飛ばす。マスターの心配は無用だろう。易々と彼女の芯は折れはすまい

 

「よく言った。そこな二人は、貴様に任せよう」

 

「いいぞマシュ!やっちゃえギルー!」

「危ないから身を乗り出さない!もう!」

 

 

とはいえ、あまり時間はかけられまい。盾の強度は城塞が如くだが、肉の身はその限りでは無いだろう。このまま狼藉を許していては押し込まれる

 

 

剣を波紋から抜き取る。撃ち放たれる弓矢の方向、勢い、強度、頻度から狙撃を行うポイントを頭の中で計算し、弾き出す

 

「我の眼から逃れようなぞ片腹痛いわ、うつけがッ!」

 

 

剣から光量の束を放つ。無数の熱量を持つビーム足るそれは、矢を蒸発させながら一直線に彼方へと迅る

 

やがて、着弾。ビームは数百メートル離れた廃ビルの一角に着弾し派手に爆散し倒壊していく

 

「やった!?」

 

「気を抜くな。高台を壊した程度で死ぬはずもあるまい」

 

「見えたぞ!サーヴァント反応だ!…ってあれ!?もう位置を割り出していたのかい!?」

 

「怠慢は許さんと言ったばかりであろうが!阿呆か貴様は!」

 

「君より早くとは言われてないだろう!?」

 

 

「――ほう、随分と珍しい顔がいるな」

 

声が響く。同時に黒いモヤのようなオーラを纏った、ただならぬ雰囲気の男性が正面に相対する

 

 

「あれは…!?」

 

「シャドウ・サーヴァントだ!恐らく、この冬木にて召喚された本来のサーヴァント…!」

 

ボロボロになった赤い外套、浅黒い肌、白い頭髪

 

英雄と呼ぶには一見みすぼらしささえ感じられるその姿、だが纏う殺気と溢れる力は誤魔化しようがない

 

「まさかこんな形でまみえるとはな、英雄王ギルガメッシュ。いつから君は、少女達の子守りなどを始めたのかね?」

 

「いつの間にかだ。貴様は随分と侘しい格好だな、シャドウサーヴァントとやら」

 

「…どうやら貴様の眼中に私はいないようだ。いつもの如く、贋作者と罵る事もしないとは」

 

…どうやら、この器とかのシャドウサーヴァントとは何かしら因縁を持っているらしい。向こうはこちらを知っているようだ

 

器の記憶を呼び起こす。――あれはフェイカー。見た武器をそのまま投影し、使役する贋作者という認識らしい

 

成る程、この器が気に入らないのも頷ける。唯一至高の財宝達を我が物顔でコピーし使い倒す狼藉者に好ましい感情を懐くはずがないだろう

 

「浮浪者まがいの装いに、通り魔紛いの襲撃…我の知己にそんな生き恥を晒す者はおらんわ、たわけが」

 

「随分と物言いに余裕がないな、英雄王。いつもの油断と慢心はどこに置いてきたのかね」

 

「さて、な。我も気分というものがある。我がその時どう振る舞おうとも贋作者たる貴様に関わりはあるまい」

 

「ごもっともだ。では、私は私の仕事をさせてもらう――!」

 

瞬間、アーチャーが天高く飛び上がり弓を構える。また矢の雨霰を放つ腹積もりなのだろう

 

「距離を取るとは小賢しい…弓兵ならば泰然と構えぬか。だから貴様は贋作者なのだ!」

 

「生憎貴様の矜持に付き合うつもりはないのでな!」

 

刹那、膨大な数の矢が振り落とされ、立香達をめったやたらに打ち据える

 

その一本一本が必殺の一撃。受け止めるマシュに決して易しくはない衝撃を叩きつけていく

 

「ぐぅうぅう…っ!」

 

マシュの苦悶の声が響き渡る。よく護ってはいるものの限界は遠くない未来に訪れよう

 

いかんな、いつまでも防戦一方では先に音をあげるのはこちらだ

 

しかしどう攻めたものか…奴を黙らせる一撃必倒の一撃、ないわけがないのだろうが、下手に奥の手を開帳するのもこれからの長い戦いに不利に働くやもしれぬ

 

「ギルー!」

 

思案していると、盾の後ろに隠れていた立香が声をあげる

 

 

「ちょっと藤丸!危ないわ!何を考えているの!?」

 

「ギル!同じアーチャーだよ!?」

 

「遅れをとっていいの!?」

 

――彼女の発破が耳を叩く

 

「眼には眼、歯には歯!弓には弓で応戦だよ!」

 

…ちょうど、先刻思案していた戦法を思い出す

 

――アーチャーらしく、弓矢をつがえて戦うとしよう

 

「――ハッ、ハンムラビめが定めた法を我に説くか、小癪な娘よ!」

 

「大丈夫!絶対負けないよ!英雄王なんでしょ!?」

 

「私は信じてるよ!だってマシュもギルも、私のサーヴァントだから!」

 

 

「先輩――」

 

 

信じている、信じているときたか

 

こちらは未だ己の戦法を確立していない半端者、出逢ってまもない関係にも関わらず信じていると

 

――眩しい、と一瞬思った

 

なんて輝かしいのだろう。窮地にありながら誰かを信じる。相棒に生死を託すことを恐れない

 

それが死の定めに続くものだとしても、彼女は笑って受け入れるのだろう。信頼を託すとはそういう事だ

 

――なるほど、ここは転生先に相応しい

 

「――その物言い、撤回は許さんぞ?」

 

この期待に応えてやりたい、と素直に思う

 

そうだ、サーヴァントとして何かを為す。何かを為したいと願った自らの願いを果たす

 

いつか、世界を救う少女の旅立ちを、こんなところで止まらせはしない

 

 

それが自分の――

 

無銘の魂に刻んだ意義だ――!

 

金色の波紋に手を伸ばす。決意を以て、財宝を掴む

 

 

「――なんだ、それは」

 

 

それは黄金に光輝く弓矢、のような形を成したもの

 

弓身は弓の体を為してはいるが、そこには張られた弦がない。つがえる矢も見当たらない

 

代わりに、絶えず弓身の廻りをいくつかの宝石が浮遊し、回転している奇怪な様相だ

 

「弓矢以外の何者でもあるまい、たわけめ」

 

左手に構えたそれを真っ直ぐにアーチャーに向ける。同時に浮遊していた宝石が弾け、辺り一帯に破片として弾け飛ぶ

 

「これは遥か未来に人類が造る光の弓。弦は無く、矢は無く、だが過たず敵を穿つ至高の逸品よ」

 

「光の弓矢…!?まさかそんなオーパーツみたいなものも持っていたのか!?あの王様は!」

 

「わぁ…綺麗…」

 

 

(この結晶、光の弓矢…まさか――!)

 

「さぁ、その身を以て真贋の違いを知るがいい。慢心はせぬ、油断も捨て置く。この一射にて貴様の霊核を穿とう」

 

「くっ――!!」

 

絶対的な危機を悟ったか、アーチャーの姿が霧散する。だが、自らに刃を向けた無礼者をみすみす逃がしてやるほど寛大ではない

 

「何処へ失せようと逃がさん!この一撃、光の速さを超克せねば回避は無意味と知れ!」

 

光の弓矢に莫大な光量のエネルギーが充填される。同時に眼を潰さんばかりの眩い輝きを宝石が照り返し、辺りを朝焼けの如く照らし尽くす

 

 

「先輩!眼を閉じてください!」

 

「くっ――!!」

 

 

「いざ受けよ――これが真作の偉容と言うものだ!」

 

臨界寸前まで溜め込まれた光の矢が放たれる。ギルガメッシュの眼にて完全に位置を割り出されていたアーチャーの存在する空間めがけ光条が莫大なエネルギーとして空を駆ける

 

射線を阻む障害物を飲み込み、蹴散らし、また宝石の乱反射にて自在に射線を確保する至高の一撃

 

その威光、逃れる術はなく

 

 

(――まさか、慢心の欠片すら感じられない英雄王と出くわすことになろうとは。私もよくよく、運のない――)

 

自嘲に思考を巡らせた刹那、アーチャーの存在は光の中へと過たず消え去った




シャイニングレーザー。相手は死ぬ

道具があるなら、躊躇わず手に取れば万事OK

この際油断と慢心は抜きだ!


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報償

誉めて伸ばし、キチッと叱り、部下を伸ばす

王として当然の心構え


どうやら、この炎上した冬木に蔓延るシャドウサーヴァントはあのアーチャーだけではないらしい。

 

そも、サーヴァント同士を戦わせる聖杯戦争・・・とやらは、七騎の英霊達を集め行われる殺し合いというのがオーソドックスな形だとロマンは言う

 

ならば、残りのクラス…セイバー、ランサー、キャスター、ライダー、アサシン、バーサーカーがまだこちらを狙っている可能性があるということか

 

 

「医師。マシュの様子はどうだ」

 

『大丈夫だよ。直撃は避け、防ぎきっている。マスターも所長も、傷ひとつない』

 

「盾の役割は果たした、か。女だてらにやるではないか」

 

本当に、大したものだ。己の身体一つで、護りたいものを護る

 

その初志を貫く事の、なんと難しいことか。藤丸には、素敵なサーヴァントがついている。

 

「よし」

 

 

その貢献に、自分も見合う戦果をあげねばなるまい

 

『ど、どうしたんだい王様』

 

「マシュには引き続きマスターの護衛を任せよ。我は仕事の続きだ」

 

『仕事?君は王様が仕事じゃないのかい?』

 

「たわけ、今の我はサーヴァント。マスターの障害になる存在を一掃する事に決まっていよう」

 

『えぇ!?まさか、一人で行くつもりかい!?』

 

「…?」

 

『いやいや!その「当然だが?」みたいな顔は止めてくれ!何処にどんな脅威が残っているか解らないんだぞ!万が一君が消滅するような事になったら、こちらの戦力はがた落ちだ!』

 

彼の言うことはごもっともだ。未知の魔境、炎上する特異点。如何なる罠が待ち受けているかは全く以て未知数だ

 

 

「たわけめ。我が路傍の石に命を取られると思うか。ここで座して待ち脅威が訪れるのを待つか、自ら脅威を取り除き一刻も早く態勢を整えるか。賢明な策はどちらだ?」

 

『それは…』

 

「それに、人類最後のマスターを失うか、たかがサーヴァント一騎不慮に失うか。これより先の行脚で重大な損失になるかは考えるまでもあるまい」

 

『…それは確かにそうかもしれない。けれど…』

 

未だ言い淀むロマン。どうやら本当に性根が甘い…いや。優しい人なんだろう

 

「案ずるな。我には単独行動のスキルがある。マスターの負担になるような真似はせんよ。王の言葉だ。信じるがよい」

 

『王の言葉、ときたかぁ。…よし、解った。変に食い下がって君の機嫌を損ねたらそれこそおしまいだ。残るシャドウサーヴァントの殲滅、引き受けてくれるかい?』

 

「無論だ、たまには汗水垂らす下々の感覚を味わうのも悪くない」

 

これより先、自分に敗北は許されない。少しでも経験を積み、マスターを護りきれるようにならなくては

 

 

「…うむ。功労には報償がいるな」

 

ふと呟き、出立の前に身体を休めているマシュに声をかける

 

 

「マシュ」

 

「あっ、英雄王!すみません、こんな気の抜けた姿を…」

 

「敵もいないのに気を張る必要もあるまい。真面目な奴よ」

 

「は、はい…すみません」

 

どうも彼女は、自己が消極的なようだ。自分がマスターを護った!どうだ金ぴか!ぐらい言ってもバチが当たるわけでもあるまい

 

「先の戦い、よくマスターを護った。手柄だぞ、誉めてつかわす」

 

「えっ――あ、いえそんな!英雄王に称賛されるなんて!お、畏れ多い、です」

 

 

「奥ゆかしさは島国の美徳、であったか?確かに我の強い女ほど鬱陶しいモノはない。女神とか本当によくない、うむ」

 

…今のはギルガメッシュの所感なのだろうか、女神という単語に関して、沸き立つような殺意が燻ったような気がした

 

「だが、お前の成したことは紛れもない功績だ。王たるもの、正しき働きには報いねばならん」

 

そうだ、こんな年頃の少女は、本当なら戦場に立つべきではない

 

もっと、違う生き方…せめて、美味しいもの食べたりするくらい良いはずだ

 

 

黄金の波紋に手を伸ばし、手のひら大の物質を掴みとり、マシュに差し出す

 

「飴をやろう。舐めると甘いぞ?」

 

「あっ、飴?ですか…?」

 

「マスターと、あの勤勉な小娘にも分けてやれ。我は今から運動に行く」

 

「運動…!?で、でしたらマスターと私も!」

 

「たわけ。シャドウサーヴァント一体に翻弄されていた貴様に何ができる」

 

「っ…」

 

「今はまだ、生命を擲つ時ではない。貴様には貴様の正念場が必ず訪れよう。意思と気迫は、そこまでとっておけ」

 

「…はい」

 

見るからに肩を落とし、うなだれるマシュ

 

今はこれでいい。考える時間、自分を見つめる時間が作れるならそうすべきだ

 

思春期というのは、そういうものだから。こんな異常事態でも、その当たり前の生き方を忘れないでほしい

 

 

「では行ってくる。王の帰還を楽しみに待っておけ」

 

 

「え、英雄王!」

 

「ん?」

 

出立に行く刹那、マシュに呼び止められる

 

「あ…」

 

「ありがとうございます。この飴…味わって食べます…!」

 

「大袈裟だ、たわけ」

 

フッ、と零れる笑みを隠すことなく、ギルガメッシュは飛び立って行った

 

 

「…本当に、ありがとうございます。英雄王」

 

辛辣ながらも、確かに身を案じるその言葉と行動に、マシュの心に、温かい感覚が沸き立っていた




至高の飴ってどんな味がするんだろう。なんでもうまいしか言えない自分にはとんと解らぬ


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駆逐

日間ランキングイン、だと・・・!?


こんな思い付きの物語に評価をくださったみなさん、本当にありがとうございます!あれ?これ自分の執筆してるやつだよな?とか目の当たりにしてたまげました

評価していただいた期待に報いることができるかは解りませんが、頑張らせていただきます!

本当にありがとうございました!


戦闘、と言っても難しく思案する必要はそうない

 

要は二人の思考する空間があり、いかに相手の嫌がることをやり、いかに自分のやりたいことを押し付け、いかに敵を無力化するかが一つのサイクルだ

 

要するに…戦闘とは。より我の強い者が勝利と栄光を掴むのだ。簡単な話である

 

 

そして。我を通すという点で、この英雄王という存在に並び立つものはないと断言できた

 

無限の財がある

 

無限の可能性がある

 

何より、それを選びとる知恵がある

 

これを揃えている時点で。足下を掬われるとすれば油断、慢心以外にありえるはずもないのだ

 

 

そして、此処にあるギルガメッシュには、特異な事情でそれがほぼない

 

絶対的な強者でありながら、等身大の思考と感性

 

それの両立が叶う時点で、もはや並大抵の存在に遅れは取ろうはずもなかったのである

 

 

「貴様――あの人間達のサーヴァントか」

 

「そうなるな。この装いが浮浪者に見える筈もなかろう」

 

目の前に立つは、――得物からして、槍兵のサーヴァントであることが読み取れる

 

靄こそかかってはいるものの、背負った無数の武器、僧のような出で立ちのランサー

 

…日本の出身だろうか。真名は読み取れない

 

どうやら、影のサーヴァントの私情はどうでもいいということか。どうせ消える塵芥に、注視する必要はないと器は言っている

 

ただ、器に宿る魂に油断はない。こちらが負ければ二度はない。常に背水の陣なのだから

 

「一人で徘徊するとは阿呆の極み。貴様を貫き、首級を貴様の主に晒してくれよう」

 

「好きにするがいい。英雄の本分から逸脱した塵芥に出来るのならな」

 

…改めて気づいたのだが。どうも思ったことを口にすると、その言葉が尊大に変換され口をついて出てしまう

 

この器の矜持であるのだろう。常に傲岸不遜、常に他者を見下ろす王であれ、と

 

…別にこの英雄王の器を支配したいわけではない。望むのは、この器で魂を磨くこと

 

英雄の視点でものを見て、英雄の観点で事をなす

 

そして、懸命に生きる命を守護し、未来を護る

 

いつか、あの少女達が平和な未来へたどり着くために

 

 

そのときにきっと、自分は何かを為したと言えるのかもしれない。そう信じて

 

 

転生した自分に、出来ることを

 

「では、塵掃除といこう。何、すぐに終わるだろうよ」

 

 

黄金の波紋から、ビームを放つものとは別の剣を抜き取る

 

「吼えたな、黄金のサーヴァント。いざ――その生命貰い受ける!」

 

ランサーが構え、一直線にその身を槍として突進を果たす

 

確かにあった距離が零となり、そこに介在するは必殺の間合い

 

「ぬぅうん!!」

 

剛力と発破にて繰り出された一撃が、違わず自らの首に迫る

 

――が、その起こりを。立ち合いを。総て赤い眼は見通していた

 

 

僅かに首を動かし、一撃を避け、乱雑に剣を振るいランサーをつき放つ

 

 

「ぬっ――!」

 

驚愕の表情が見てとれる。当然だろう

 

渾身の一突きを、僅かな身動きでいなされたのだから

 

「どうした。この首、未だ繋がっているが?」

 

「面妖な身体捌きを使うモノよ…ならば連打にて打ち据えるまで」

 

「ハッ、貴様に次などもうありはせん」

 

 

――鮮血。そして、両断

 

 

「――――!!!?」

 

何故、と思考を巡らせる刹那すら遅い

 

 

ランサーの霊核は、すでに断ち落とされていたのだ

 

「あぁ、不可思議な顔持ちであるな?憐れゆえ説明してやろう。この剣はな、『一度振るえば、何か一つを斬った』という因果を確定させる代物よ。防ごうがかわそうが意味を成さぬ。『斬った』のだから『斬れた』という結果がついてくる」

 

 

「それで――拙僧の霊核を…」

 

 

「そういう事だ。肉達磨と汗を流すなどと暑苦しい真似は御免だからな。剣を選び、抜き取るのも一苦労よ」

 

「その労力に比べれば、微風がごとき一撃なんぞ…かわすのは容易かろう?」

 

「――無念…!」

 

霊核が完全に砕かれ、シャドウランサーは霧散した。呪詛も念仏も間に合わぬ刹那であったが故、あっけない最期ではあったが

 

「…ランサーで我に並ぶ者など、アレしかおるまいよ」

 

その言葉は、誰ともなく呟かれたモノであったが、一抹の寂寥を含むものでもあった

 

 

さて、目立つランサーは無事に下せた。次は――

 

「よし、御しやすいアレにするか」

 

――――

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛――――!!!!」

 

 

「吼えるわ吼えるわ犬畜生が!バーサーカーはそうでなくてはならんな!」

 

 

暴風のような威圧と破壊を以てバーサーカーが荒れ狂う

 

次の獲物に定めたのはバーサーカー。理性を手放した狂戦士

 

筋骨隆々、長身豪腕の巌のごとき偉容。この器の背丈をも上回る体躯を持つはちきれん威圧の化身

 

うん。マスターを連れてこなくて良かったと思う。普通の感性持ちなら気絶しているだろう。その迫力に身がすくむ思いだ

 

幸いな事に、この器は欠片も物怖じしていないらしい。あきれた自信と自我だ。肉体がそうなら、自分も気圧されている場合ではない

 

「――――⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

 

振るわれる無双の一撃。強烈無比な破壊が地面を薄氷が如く木っ端微塵に吹き飛ばす

 

 

飛び退きが遅れていたら挽き肉であっただろう。サーヴァントの身体能力に助けられたな。

 

「さて、どう始末したものか」

 

 

そう口にしては見たが、案外と手段はすぐに思い付いた

 

バーサーカーは力とタフネスを売りにしているタイプだ。一目で解る。そこに理性というリミッターを解除しているのだからその暴威、推して知るべしだ

 

だが、逆に言えば理性を手放している以上、細やかな策謀に気を配らせる繊細さは消え失せているという事

 

なら、問題ない。頭脳となるマスターがいればいざ知らず、ただ暴れるだけの猛獣なぞ簡単に絡め取れる

 

黄金の波紋に手を伸ばし、黄金の杖を手に掴む

 

 

「うむ、これでよかろう」

 

 

効果を確かめ、あえてその身をバーサーカーの前にさらす

 

 

「そら、我はここだぞ筋肉達磨!その繊維の詰まった肉で我を砕けるならやってみるがいい!」

 

声を張り上げ挑発する。こちらに向き直るのと大地を砕き最接近を果たすのは同時だった

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛――!!!!!」

 

最上段に武器が振るわれ、刹那の先に死が横たわる

 

「――馬鹿め、死地に踏み込んだのは貴様の方だ!」

 

杖で大地を軽く打つ

 

それを合図に、バーサーカーを無数の手が捕らえ、天に捧げる供物が如く掲げられる

 

 

「⬛⬛⬛⬛!!?」

 

同時に辺りに『祭壇』が設けられ、迫り上がる

 

シャドウサーヴァントを贄に捧げるような体裁を成し、そして

 

「!!!???」

 

腕を、頭を、足を、身体を。無数の手が喰らうように蠢き、削り取っていく

 

「此は人身御供の原典、名もなき神々に捧げられし祭壇の宝具。捕らえた存在を贄と定め、その存在を貪り喰らう」

 

圧倒的だったその存在がみるみる喪われていく。喰われ、削られ、かじられ、貪られ。その痕跡を失っていく

 

「貴様はさぞ良い贄であろうな。一粒で二度ならぬ十二度美味しいなぞお得にも程があろう!」

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛、⬛⬛⬛⬛――」

 

 

やがて霊核を貪られ、完全に消失をはたすバーサーカー。僅かな残り香も、贄として意地汚く啜られた

 

「せめて次は頭となるマスターでも見繕うのだな。犬畜生が知恵ある者に勝つのは難しかろうよ」

 

ふぅ、と息を吐き、杖を蔵に回収する

 

 

さて、バーサーカーとランサーは無事無力化した。次こそが本命だ

 

 

アサシン――この存在を容認していては、おちおち歓談もできまい。少なくとも、一秒先にマスターの首が落ちているなどあっけない終わりは断じて赦すわけにはいかない

 

「さて、どうしたものか…」

 

「アサシンなら消えたぜ。俺が始末した」

 

 

背後から飛ぶ声に振り返る

 

 

「貴様は――」

 

 

「よう、いつかぶりだな。金ぴか野郎」

 

 

そこにいたのは、フードをかぶり、杖を構える蒼髪の男

 

「――なるほど、貴様がキャスターか。猟犬」

 

この器の、よく知る相手らしい

 




道具を説明しながら戦うその姿はまさにギルエモン

重ね重ね、これからもどうぞお願いいたします!


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衝撃

一人でも面白いと言ってくださる人がいる

評価してくださる人がいる

それだけで、きっとこれからも歩いていける

大丈夫だよ読者の皆さま方

オレも、これから頑張っていくから


「貴様は――」

 

「よう、久し振りだな。金ぴか野郎」

 

 

器の記憶が呼び起こされる

 

目の前にいる英霊の真名は、『クー・フーリン』

 

アイルランドの光の御子。ゲイ・ボルクを駆り、様々な逸話を打ち立てたケルト神話の大英雄

 

――かつて此処ではない何処か、別の次元の聖杯戦争にて、この英雄としのぎを削ったと、この器に、というより座の英霊本体に記録されている

 

 

サーヴァントとは、英霊の座に顕在している英霊の魂の側面を切り取り、クラスに則った一側面として召喚されるもの。いわば英霊の影法師だ

 

別の次元で役目を終え、また別の次元で召喚されたとしても。それは『限りなく同一人物に近い別人』か『限りなく別人に近い同一人物』でしかない

 

召喚時に重ねた経験は座に『記録』として還元され、新たに召喚された際にはそれを閲覧する、というのが真実だ

 

例えるなら、自分が主役の映画、小説を読んだような感覚だ。親近感を覚えはしても当事者では決してない

 

だから、顔馴染み。というのはおかしくないが、今この場で殺し合いの続きを…ということにはなりえない、はずだ

 

 

「――フ」

 

しかし、どういうわけだ?目の前にいるケルトの大英雄を目の当たりにしていると全身が震え、堪えきれぬ感情が沸き出してくる

 

どういうわけだ…?そう感じる間もなく、堪えきれず口火を切ってしまう

 

 

「フ――ハハハハハハ!!なんだその格好は!なんの冗談だ猟犬!自慢の槍はどうした!そんな木の杖で何を穿とうというのだ!?」

 

「あー、あんだろ。クラス適正ってヤツだ。今回はキャスターとして召喚されたってだけだ」

 

「待て、控えるがよい腹がよじれる!貴様の隠し芸も大層なものよな!まさか字の読み書きの巧さの一芸でキャスターにすらなれようとは!これは失敗した、あの時に芸でも仕込んでやれば良かったわ!無駄に器用とは知っていたがよもやここまでとはな!フハハハハハハハハハ!!!」

 

腹がよじれんばかりに大笑し、堪えきれず膝を叩きまくるギルガメッシュ

 

「チッ、相変わらずいけすかねぇ野郎だぜ。テメェも覚悟しとけよ。いつか割に合わねぇ格好で割に合わねぇクラスに呼び込まれるだろうさ」

 

 

「馬鹿め!まかり間違っても魔術師の真似事などせぬわ!ウルクの危機の折り、民どもと結集せねばならん事態にも陥らん限りはなぁ!ハーッハハハハハハハハ!!」

 

 

…英雄王ギルガメッシュは笑い上戸なようだ。落ち着くまで、自分の出る幕は無いようだ

 

 

 

 

 

「手を組む、だと?」

 

ようやく落ち着いて会話を再開する場面で、キャスターが突拍子もなく口火を切るのに、思わず聞き返す

 

「まかり間違ってもテメェとじゃねぇぞ。テメェの主、マスターとだ」

 

言うに、このキャスターはこの特異点に召喚された英雄で、なぜかキャスターだけは侵されず、おかしくならずに済んだらしい

 

そしてこの特異点を元に戻すべく、シャドウサーヴァント達と戦い、孤軍奮闘していたようだ

 

「おかしくなっちまったサーヴァントを介錯してやろうとあちらこちら飛び回ってよ。やっとこさアサシンを仕留めたと思えば、ランサーとアーチャー、バーサーカーを潰していく奇妙な魔力を関知してな。誰かと思えば会いたくもねぇ顔見知りじゃねぇか。ついてねぇ」

 

「マメな事よな。流石は犬よ」

 

「抜かせ、テメェこそなんの気まぐれだ?しらみ潰しにサーヴァントを蹴散らすなんざ。どんだけ暇潰しに飢えてんだ」

 

「暇潰し、か。まぁ貴様にはそう見えような」

 

「あん?」

 

「――なんでもない、忘れよ」

 

「おう。しかし、テメェもまさか節約を覚えるとはな。毛の先程見直したぜ」

 

「節約?」

 

「あん?テメェの十八番のこったよ。いつもは宝具をめったやたらに投げ撃ちまくるじゃねぇか。だからアーチャーなんだろうがテメェは」

 

 

……

 

…………

 

……………………

 

 

「それがアーチャーの所以だとぉ――――!!?」

 

 

今まで振る舞ってきた中で最大級の衝撃だ。

 

アーチャーってそういう?そういうものなのか?財から剣を撃てば、というか撃てばアーチャーなのか?それでいいのか?アーチャーとはなんだ?アーチャーとは…アーチャーとは…

 

 

「何を今さら驚いてんだ。腕組んで宝具撃ってんのがテメェの黄金パターンだろうがよ」

 

 

「そうだったか…そうであったのか…」

 

 

「…頭でも打ったか?召喚に不備でもあったか?よく生きてられたな、マスターは」

 

がっくりと肩を落とす。的確に道具を選び戦っていた自分はなんだったのか

 

英雄王、戦い方が雑だったのか…知らなかった…

 

「…礼を言うぞ、犬」

 

「は?…は?」

 

「お陰で一つ思い出せた。賢者の真似事は伊達ではないな、流石だ」

 

「――――――おい、なんだお前。マジにギルガメッシュか?礼とか」

 

今度はキャスターが硬直する番だ。あまりに予想外の物言いに絶句する

 

英雄王が誰かに礼などと…そんな事がありえるのかと言わんばかりに開口している

 

「うむ、英雄王といえば我だろうが。贋作など許せるはずもない」

 

――かといって、真作の英雄王かと問われれば微妙な所ではあるのだが…転生した以上は紛れもない英雄王であろう。そう自分を定義する

 

「――よし。貴様の博識ぶりを認め、同盟の案、乗ってやろうではないか。有りがたく思え」

 

「まだ事の仔細聞いてねぇだろうが…まぁいいや、詳しいことはテメェのマスターに話す」

 

「よい、特に許す。ふっ、驚くであろうな。とんだ拾い物だ!」

 

器の機嫌が良いのか、こっちも楽しい気分になってくる

 

やれやれと肩をすくめるキャスターに、クックッと肩を震わすギルガメッシュ

 

…皆は、少しは休めただろうか。そんな事を思いながら、皆と合流するために歩き出した




無銘の魂、カルチャーショック

この衝撃は文字通り魂に刻まれたであろう


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決意

日間ランキング二位とかなんぞこれぇ!?

本当に、本当にありがとうございます‼それしか言えません!


全力で、全力で頑張ります‼ありがとうございます‼


意気揚々と藤丸達の所に戻ると、心配を前面に出したマスターに迎えられた

 

「大丈夫だった!?ギル!死んでない!?生きてる!?」

 

 

「無論だ。我を誰と心得る」

 

「AUO!」

 

「然り」

 

「イントネーションがバカにしてねぇか。まぁなんでもいいんだがよ」

 

 

「英雄王、そちらの方は?」

 

 

オルガマリーが尋ねる。・・・気のせいか、先程までとはうってかわって、精悍さを湛えた別人のような雰囲気だ

 

「マスター、何があった」

 

「それがね、ギルからもらった飴を舐めてたら気持ちが落ち着いたんだって。そしたら、いないレフを頼るより、今いるあなたたちのサポートを優先するんだって」

 

「――ほう。飴が幼子をあやしたか。ようやく本領を発揮するわけだな、あの娘が」

 

 

「立香、これは貴方の問題でもあるのよ。真面目に聞きなさい」

 

「はーい」

 

「・・・なんだ、改まって」

 

「英雄王、そして見知らぬキャスターのサーヴァント。英雄王が同行を許しているのなら、それは友好の証とお見受けます」

 

「――デミ・サーヴァントの、マシュの宝具についてです」

 

 

――――

 

聞いた話では、マシュは未だに宝具の使用が叶わないらしい

 

融合したサーヴァントの真名もどのような英霊であるのかすらもわからない状態で今まで戦ってきたのだという

 

 

――今こうしている自分と同等、いやそれ以上に難儀な状態で戦っていたのか、マシュは。それで弱音の一つもあげなかったとは、ほとほと見上げた根性だ

 

「貴様は嫁の貰い手に難儀しような、マシュ」

 

「えっ、えぇっ!?」

 

「あぁ、まったくだ。こいつぁ中々以上に骨がある嬢ちゃんだぜ」

 

マシュが顔を赤らめる。やはり、この年齢では婚約など遠い話か

 

・・・前世にてついぞ縁のない話ではあったな。・・・願わくば、彼女たちはいい人を見つけてほしい

 

「事は重大です。マシュが英雄として戦う以上、宝具が使えないなんて、半身不随のようなものです」

 

「すみません・・・英雄王とは比べるべくもないとはいえ、私はダメなサーヴァントです・・・」

 

「ああ、可哀想なマシュ!私が抱き締めてあげる!」

 

「だめです先輩!公衆の前ではダメです!」

 

「真面目に聞きなさいよ・・・」

 

 

少し見ない間に、随分と距離が縮まったようだ。まるで姉妹のようだ。顔には出さないが、好ましく思う

 

 

『そうかなぁ?宝具はそう簡単に使いこなせないものだと思うよ?一朝一夕で使いこなされたら英雄も形無しというか』

 

「言われてんぞ金ぴか」

 

「財には呼ぶ銘が無いだけだ、たわけ」

 

 

からかうようにキャスターが投げ掛けてくる。そうか、宝具には真名が必要で、それを知らなければ開放は叶わないのか

 

となると、このギルガメッシュの宝具、『王の財宝』は常に真価を発揮しているということか。・・・凄まじく便利だな。王という生き物は

 

「この命題、サーヴァント二人はどう思いますか?」

 

「・・・」

 

ちらり、とキャスターを見やる。この器はともかく、自分はこの世界の事なぞまるで知らない。力添えは叶わないだろう

 

「あ?あー・・・戦えてんなら使えてんだろ。英雄と宝具は同じもんなんだからよ」

 

「それが出来なきゃ、あれだ。詰まってんだよ魔力とか。大声を発する練習をしてないってだけだ」

 

「大声!任せてマシュ!私が声を出させてあげる!」

「あっ!待ってください先輩!ダメです!オフィシャルじゃダメです!」

 

くんずほぐれつを始める二人、距離が縮まるのはいいが、緊張感に欠けるのはどうなのか?

 

 

「そういう事なら・・・いいぜ、構えな」

 

「・・・えっ?」

 

「呆けてんなよ。宝具を使いたいんだろ?なら手っ取り早く戦うのが一番だ」

 

空気が変わる。纏う雰囲気が臨戦となる

 

「俺は本気でマスターを殺す。だからマシュも本気で来い。手荒だが、詰まった魔力を吐き出させてやるよ」

 

「そんな・・・!」

 

「そう来たか、フードキャスター!いいだろう、マシュに私の命を懸ける!」

 

「先輩っ!?あ、あの・・・英雄王からも、何か・・・!」

 

「――」

 

・・・マシュは、藤丸立香に不可欠な存在だ

 

立香と契約しているメインサーヴァントはマシュ・キリエライトのみだ。自分はカルデアの召喚式を通して契約した『サブ・サーヴァント』いわば喚ばれて力を貸している顧客にすぎないのだ

 

これから先、長い間マシュと戦い抜くのだろう。困難に立ち向かうのだろう

 

この器の力で困難を蹴散らすのは簡単だろう。そうできる信頼も確信もある

 

だが、それは困難と同時に、マシュと立香の成長すらも消し飛ばしてしまうだろう

 

絶対者が干渉するというのはそういう事だ

 

 

――だから

 

だからこそ、今はこうして見守る事こそが

 

―見て、定める事こそが――

 

ぐらり、と、視界が明滅する

 

――今、大切な事に触れたような――

 

 

「――」

 

「え、英雄王?」

 

 

「――為すべきことをなせ、マシュ」

 

「えっ?」

 

「これは、お前の乗り越えるべき壁だ」

 

ポン、と頭に手を置く

 

 

「自信を持て」

 

 

「お前は、無価値ではない」

 

 

「――!」

 

迷いに揺らいでいた瞳に、決意が宿る

 

「――先輩」

 

「うん!」

 

「英雄王・・・私、やります」

 

 

「宝具を・・・ものにして見せます!」




マシュと、もう一人に覚醒フラグが立ちました


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展開

マシュの宝具開帳です。懐かしいな、ロード・カルデアス


「アンサズ!そぉら焼き尽くすぜ!」

 

呪文を唱え、ルーン文字を書き起こし、放たれる灼熱の火炎

 

確かな力を持つ、熱波の嵐

 

 

一撃一撃がマシュの盾を凄まじく打ち据え、熱量がマシュの肌をジリジリと焼いてゆく

 

 

「くうっ、ぅう・・・ぐっ・・・!」

 

 

「・・・」

 

 

「・・・大丈夫かしら、マシュ」

 

 

心配を声音に上げ、オルガマリーが呟く。先程の狼狽えようとはうってかわって、しっかりと目の前の出来事を見据えた故の感想だ

 

 

「あのサーヴァント・・・本気よ。本気でマシュと立香のことを・・・!」

 

「で、あろうな。生命のやり取りで、あの犬は戯れ事を口にすまいよ」

 

「だったら、止めた方が・・・!」

 

「ここで果てるなら、それも良かろう。これより先の苦難を見ずに死ぬのならそれはそれで幸福だろうさ」

 

人理焼却。⬛⬛⬛⬛に巣食った、⬛⬛⬛⬛⬛の暗躍、特異点を巡る七つの旅

 

転生の折、謎の声が言っていた単語だ。転生した自分には意味の解らない言葉だが。一筋縄にはいかない岐路を世界は、彼女たちは辿る

 

――道半ばで無念に折れるのと、何も知らず世界から退場するのはどちらが幸せなのだろう

 

道を選ぶことすらしなかった自分には、そんな選択肢すらなかったから。そんな事は解らない

 

折れるのは簡単だ。屈するのも簡単だ

 

目を閉じるのは、終わりを受け入れるのは簡単だ

 

「――だが」

 

だが、その先を知っている自分は答えを知っている

 

 

無念は、後から湧いてくる。死んで楽になるなど嘘っぱちだ

 

死んだ後に安らぎはない

 

漠然とした死に安息はない

 

無味乾燥の魂には、何も残らない

 

 

それを見てきたのだ。そして自分はここにいる

 

・・・彼女たちにはそうなってほしくない

 

「奴等の魂は未だ輝きを喪ってはおらぬ。懸命に、がむしゃらに。ただひたすらに生にしがみついている」

 

「・・・!」

 

そうだ、マシュ、マスター。君達には未来がある、

 

輝かんばかりの明日があり、選び取れる未来がある。それを彼女たちはまだ知らない

 

 

知らない。横たわる絶望をまだ知らない

 

 

知らないから、勇気をもって歩いていける

 

解らないから、一生懸命に生きている

 

今もこうして、自分と向き合い、生命を懸けて戦っている

 

 

――見応えが、ある。かつてなかった輝きが彼女たちに確かにある

 

 

「そういった『見応えに満ちた』者たちは、時に天命すら覆す」

 

「英雄王・・・」

 

「そら、見ているだけか?小娘」

 

「?」

 

そうだ、君もまた当事者なんだ

 

「あれらは貴様の友であろうが。窮地におかれた友に、激励の一つもかけてやれ」

 

「私、私は・・・だって・・・」

 

「・・・まったく。貴様も自分に自信が持てぬ質か、手間のかかる」

 

仕方ないだろうとは思う。むしろ泣き出して、迷ってヒステリーを起こすのは当たり前だ

 

こんな小さな肩に、あらゆるモノを背負っていたとあらば。むしろ潰されず立っていることこそが偉業だろう

 

「――我が認める。オルガマリー・アニムスフィア」

 

「えっ――」

 

「貴様の働き、充分に大儀である。これから先、その在り方を損なわぬように励め」

 

「――――っ、――――!!」

 

 

なんともなし、他愛のない、ただの労い、何気無い言の葉

 

しかし、苦悩に板挟みにされ、哀しみに押し潰され、絶望に屈服していたオルガマリーの心の絶望を溶かすには充分すぎる言葉だった

 

 

「――えぇ、解ったわ!解ったわよ!声をかけるくらい――!」

 

「はじめてできた『友達』にくらい!いくらでもかけてやるわよ!!」

 

 

 

 

 

「どうやら見込み違いだったみたいだな、嬢ちゃん」

 

 

「くっ、うぅう・・・!」

 

 

「マスター、サーヴァントと心中するかい?離れりゃ一命は取り止めるかもな」

 

 

「先輩――逃げ・・・」

「大丈夫」

 

すっ。とマシュの手を握り、傍に立つ

 

「死ぬときは一緒。サーヴァントに戦わせてるんだもん。これくらいやらなきゃ。マスターだって」

 

「先輩・・・」

 

「私は戦えないけど」

 

「傍には、立っていられるから!」

 

「――!」

 

 

「そうかい。意気やよし、後腐れなく焼いてやるぜ――!」

 

爆発的に魔力が高まる。来る――キャスターの奥の手。宝具が来る!

 

「――私は、私は」

 

 

 

「何やってるのよ!!マシュ!!立香!!」

 

 

我に帰る。すると、オルガマリーがあらん限りの声を上げ、叫んでいるのが目に入る

 

 

「所長・・・!?」

 

 

「こんなところで、こんなところで死ぬなんて許さないわ!何のためにここまで来たの!何のためにあなたたちは戦うことを選んだのよ!」

 

 

「こんなところで、こんな馬鹿みたいな場所で死ぬためじゃないでしょう!?」

 

「――!」

 

「私、初めて同じくらいの年の子と、話し込んだのよ!初めて楽しい話ができたの!」

 

「初めて――友達が出来たのよ!!マシュ!」

 

「!」

 

オルガマリーの発破は続く。思いの丈を叩きつける

 

 

「立香も!せっかく拾った命を捨てるような真似は許さないわ!貴方はマスターよ!?私がなりたくてもなれない才能、力をもった凄いやつなのよ!」

 

 

「いっぱい話したいこと、まだあるの!やらなくちゃいけないこと、いっぱいあるの!!だから、だから!」

 

 

「こんなところで、立ち止まってる場合じゃないでしょ――――――!!!」

 

 

「――!」

 

マシュの瞳に決意が宿る

 

「マシュ!」

 

立香の声に覇気が灯る

 

 

「やろう!友達にあそこまで言わせたんだもん!やってみせなきゃ女が廃る!!」

 

「はい!必ず、皆を護ってみせます!!」

 

盾を構え直す

 

 

ここからでもわかるくらいに熱を感じる。護る決意を固めた雪花は

 

 

今、人理を守護せし盾が如く――!

 

 

「倒壊せしは『灼き尽くす炎の檻』!オラ、善悪問わず塵に返りな――!!」

 

藁で編まれ、贄を求める巨人の豪腕が今、振るわれる

 

 

盾に拳を叩き付けた刹那凄まじい衝撃と暴風が辺りを制圧し荒れ狂う

 

「く、ぅううぅううぅう――――!!!」

「マシュ!!貴方は一人じゃない!私がいる!!」

 

「うぅううぅううぅう!!」

 

勢いが増す、いよいよ押し潰さんと巨人が力を全開にする

 

踏みしめる大地が軋む

 

 

受け止める盾が輝く

 

 

そして――

 

 

人理の礎となりし城塞が、此処に姿を顕す!

 

 

「マシュ――――――っ!!!!!」

 

 

「うぅううぅう――ぁああぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――使ってしまった財宝は、惜しくはないのかい?

 

 

 

声が、響く

 

 

――何、使うべき相手であれば・・・くれてやるのも悪くはない――――

 

 

 

これは、誰の記憶なのだろうか――――




ようやくマシュの本領発揮


ギルガメッシュに友を語らせるなんて、こんな皮肉はありませんよねぇ・・・


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決断

たくさんの感想、一言。本当にありがとうございます
嬉しくとも、慢心と油断が許されるのは英雄王のみ
けして天狗にならず。身の程をわきまえつつ頑張りたいと思います!


「ヒュウ、まさか一命を取り止めるくらいはやると思ったが、マスター共々無事とはな。褒めてやれよマスター。ソイツは紛れもない一級品の英霊だ」

 

 

太鼓判を押し、朗らかに笑うキャスター

 

 

見事だ、と、素直に思えた

 

力を合わせ、困難を撃ち破る。それは物語や童話の中のお伽噺だとかつて諦めていた

 

そんなものはとうに価値を失った世界で生きてきたし、友情や努力は、打算と策謀で踏みにじられるものだと目の当たりにもしてきた

 

それが今、目の前で否定された。確かに残るものがそこにあり、確かに成し遂げた事がここにある

 

――とても、胸のすくような結果に。思わず笑みが零れてしまう

 

 

「そら、声をかけてやれ。お前の友はようやく雛行きを始めたぞ」

 

トン、と肩を押すが早いか、オルガマリーはダッシュで彼女達に駆け寄っていく

 

 

「大丈夫!?立香!マシュ!」

 

「もちろん!私はこの通り、元気に生きています!マシュのお陰で、ね」

 

「はい・・・ありがとうございます。所長・・・所長の呼び掛けと、先輩の力添えのお陰で・・・宝具を発動できました・・・」

 

「いいのよ、そんなの・・・!良かった・・・無事で、本当に・・・!」

 

 

 

「ガッツのある嬢ちゃんたちだ。もちっと歳食ってたら口説いてたんだがな」

 

「ほう?獣の割には道理を弁えているのだな。狗にしては上出来だ」

 

「一々憎まれ口を叩きやがるなテメェは。固唾を呑んで見守りやがって。妙に熱をあげてるテメェに言われたくねぇ」

 

「熱もあげよう。我を呼びつけ使役するマスターだ。半端な仕事を許す気は無いのだからな。まぁ、真名の開放は至らなかった辺り、花丸はやれんがな」

 

「花丸、ねぇ。テメェは100か0かしか許さねぇ質じゃねぇの?」

 

「まだ裁定には早すぎる故な。ようやく筆を持ち始めた者に完璧を求めるのは酷であろう?」

 

そうだ、完璧でなくてもいい。少しずつだっていい

 

 

立ち止まらず、手を抜かず。日々を揺るぎなく進んでいってほしい

 

こんな極限の状況にだって、いや、だからこそ

 

本当に価値のあるものは輝くのだから

 

・・・自分も気を引き締める

 

この器を頼る以上、己の戦闘スタイルも、いつまでもふわふわしていてはいられない

 

サーヴァントたる英雄王に次はあっても、そこに宿る魂に次がある保証はない

 

次の戦いが正念場になるであろう予感を感じながら、改めて気を引き締めた

 

『やっぱり、同年代の存在がいると違うみたいだね。いいなぁ、あぁいうの』

 

「医師。声が聞こえぬと思えば何をしていた」

 

『働いてたんだよぅ!いよいよこのファーストオーダーも終わりが近い。特異点の原因を突き止めたんだ!』

 

「あ?原因?それなら俺が知ってるぜ」

 

『嘘!?じゃあ僕は後追いでマシュの成長を見逃したって言うのかい!?』

 

「たわけが。子の成長から眼を離すとは親を名乗るものとして言語道断。後で誅罰ものだ」

 

『そんなぁ!うぅ、慣れない見栄は張るもんじゃないなぁ・・・』

 

 

~ 

 

ロマンの特定、キャスターの案内により、この特異点を発生させた原因、に続く地下の洞窟を一行は進んでいた

 

器の眼の見立てでは、これはフユキにて根源を目指したどこぞの名家三つが寄り合わさって広げていった工房、のようなモノらしい

 

理解が及ぶのはここが手作りの洞窟という点だけで、その名家が何を目指していたかは解らない

 

或いは、この器の興味が湧かない出来事故に見る価値すらないということなのか

 

「少し休憩を挟みましょう。急激に普段使わない回路を励起させたせいか、立香のバイタルがいつもより落ちているわ」

 

「おう、よく見てるな嬢ちゃん。次でいよいよ大詰めだ。万全を期すに越したことはねぇ」

 

『随分と気配りがうまくなりましたね所長!いやぁ、ぼっちを抜け出して精神的に余裕ができたのはいいことだ!』

 

「今度余計な口を挟んだら給与をカットするわよロマン」

 

『横暴だ!』

 

「わーい、休みだ~。きゅう」

「よろしいですか、英雄王・・・?」

 

「決戦で倒れられても面倒だ。構わんぞ」

 

万全を期すのは決して悪いことではない

 

――そして、いよいよ定められた別れが近付いている

 

「・・・」

 

結論から言えば、オルガマリーはこの特異点からは出られない

 

器の見立てでは、とうに肉体は滅んでいるのだ。ここに至ることができたのは精神の残り香、残留思念といったところだろう

 

――立香とマシュは、出会ったばかりの友を喪うことになる、と言うことだ

 

「・・・どうしたの?ギル。所長を見つめて」

 

「いや――」

 

仕方のない、という言葉しか送れないのかもしれない

 

尽くす手もなく、彼女の生命の灯は消えてしまっているのだから

 

・・・自分は甘いのかもしれない

 

別れが避けられないのなら、初めから助けるべきではなかったのかもしれない

 

結果的に、死が待っているのなら。せめて自分が介錯をしてやったほうがよかったのかもしれない

 

・・・だけど、そこに意志があり、精神があれば。なんであれ生きていることには代わりが無いはずだ。

 

そうでなければ、魂だけしかない自分など、とうに生きているとはいえないのだから。サーヴァントになっている身でまともな生命とはいえないが

 

「いや、何。急に我の秘蔵の菓子を振る舞うのも悪くはないと思ってな」

 

過ぎたことを言うのは栓なきことだ。助けないほうが良かったなど、傲慢にすぎる

 

一度拾った命なら、細やかな奇跡に懸けてみよう

 

自分という不確定な存在を許容しているのだから、多少の掟破りは今更だろう

 

「ほんと!?わぁい!飴!」

 

「先輩、良かったですね」

 

「全く、これじゃあ餌付けじゃない・・・」

 

「ま、いいんじゃねえか?コイツが気前よく何かを渡すのは珍しいんだぜ。本当はな」

 

『それは同感。僕にも何か賞与はないのかな王様』

 

「そうさな。貴様の贔屓にしているネットアイドルとやらのスキャンダル画像でもくれてやるか」

 

『止めてくれ!僕にアイドルの暗部を見せないでくれ!』

 

「偶像崇拝とはまた業の深い・・・そんなだから貴様は行き遅れるのだ」

 

『辛辣にもほどがあるだろう!というかなんで君がマギ☆マリを知っているのかなぁ!?』

 

 

「英雄王、どうしました?皆は先に行っちゃったけれど・・・」

 

オルガマリーを呼び止める

 

「・・・何、先程の判断は見事であった。マスターの不調にいち早く気付いた機知、誉めて遣わす」

 

「――――!」 

 

反応を見て確信する

 

彼女は、誉められなれていない。むしろ、周りには敵しかいなかったのだろう

 

高い立場には、やっかみが湧くのだろう。双肩が震えていた 

 

――これは、賭けだ。自分という不確定な存在を担保にした賭け

 

規格外の英雄である英雄王故の反則。それを見越した故の

 

否。英雄王のみが、なし得る反則を。今ここで為す

 

「そら、取っておけ」

 

黄金の波紋に手を伸ばし、つかんだソレを投げて寄越す

 

「あいた!・・・何、これ」

 

「使い道のない容器だ、お前にくれてやろう。好きに使え、特に許す」

 

渡したのは、マグカップ大の黄金の杯だ

 

「は、はぁ・・・ありがとう、ございます」

 

 

――ここから先は、神のみぞ知る

 

否、神に祈りは捧げない。この器で神を頼りにするのは、最悪の禁忌な気がした

 

後は、オルガマリーに『ソレ』が応えるかどうかである




ようやく初期特異点も大詰めです

数奇な英雄王の介入で何が変わることがあるのか、ちょっとでも期待していただけると嬉しいです


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対峙

日間ランキング一位とか夢でも見ているんでしょうか・・・
新規なる期待も多分にあるとはいえ、身に余る評価を戴き、もはや言葉がありません

本当に、ありがとうございます!「あぁ、あんなのあったなぁ」くらいには皆様の心に残るような作品を、これからも目指していきます!


「これが聖杯・・・超抜級の魔術炉心じゃない・・・なんだってこんなのが島国にあるのよ・・・」

 

 

『資料によれば、それは400年ほど前にアインツベルン家が手掛けた大聖杯と呼ばれるもののようです』

 

 

「はぇー、すっごい」

「これが、聖杯・・・」

 

 

この空間に対する所感をそれぞれが述べる中、自分は――いや、器たるギルガメッシュの視線は一点に注がれていた

 

「お話はそこまでだ。来たぜ。アレが原因を護る最後の刺客ってヤツだ」

 

 

 

 

 

「――――」

 

 

死人のような肌色、重苦しい漆黒の鎧。輝く金髪

 

そして、澱んだ黄色の瞳。暗黒を湛えた剣。

 

 

「・・・・・・」

 

 

圧倒的なオーラを放つ前方の騎士を見ていると、内側から言い様のない苛立ちと不快感が込み上げてくる

 

この感情は、なんだ?意識するまでもなく、器が独りでに言葉を紡ぐ

 

「――なんだその姿は。我が少し見ぬ内にまたも雑念に囚われおって」

 

「――貴様がいるとは驚きだな、英雄王」

 

少し驚く。かの黒い剣士と英雄王は知己なのか?少なくとも、英雄であるならば英雄王を知らぬものなどいないとは思うのだが・・・

 

 

「なぬ!?テメェ、喋れたのか!?今まで黙ってやがったのか!?」

 

「何をしても見られている故な、案山子に徹していた。――だが」

 

マシュを見やる

 

「!」

 

「面白い宝具を持っているな、娘」

 

「えっ、わ、私ですか?」

 

「嬢ちゃん、油断すんなよ。そいつはかの誉れ高き騎士王、アーサー・ペンドラゴン。携えるのは選定の剣の二振り目。世界一有名と言っても過言じゃねぇ至高の剣・・・」

 

『エクスカリバー!星の内海により鍛え上げられた究極の宝剣か!』

 

ロマンが感嘆を露にする

 

アーサー・ペンドラゴン・・・あまり馴染みの無い響きだ。確か、アーサーとは王、男性だった筈だ

 

と言うより、目がおかしくなっていなければ、彼、いや彼女は・・・

 

 

「女性、だったんですね・・・」

「男装女子とかブリテン未来に生きてるな~」

 

それだ。少なくとも、アーサー・ペンドラゴンは歴史において女性だった、なんて説は聞いたことがない

 

『女性だと王にはなれなかったんだろう。お家柄、男性として振る舞うしかなかったんじゃない?』

 

「暢気なこと言ってないで!マシュを、あの騎士王は狙ってるのよ!」

 

 

「面白い、実に面白いぞ。――英雄王、貴様の不愉快な面は後回しだ」

 

軽く吐き捨て、マシュに相対し、黒き剣を下段に構える

 

「構えよ、小娘。その護りが真なるものか、我が剣が確かめてやろう――!!」

 

 

――ますます不快感が募っていく。なんだ?この苛立ちは、この感覚は

 

まるで――焦がれていた尊いものに、汚物をぶちまけられたような、殺意に近い感覚

 

「我は後回しとはよくぞほざいた。――マシュ!」

 

「は、はい!」

 

「アレは貴様を所望のようだ。丹田に力を入れよ。汚濁にまみれているが紛れもない星の輝きだ」

 

 

「盾から手を離せば、たちまち消え失せるぞ。後ろのマスターごとな」

 

「――!」

 

器が制御不能の不調な以上、マシュにマスターの護りを託すしかない

 

短い交流ではあるものの、マシュが如何に自分の力を発揮できるような檄を飛ばせるかは感覚で掴めた

 

 

自分が死ぬことではなく、自分の大切な人が傷付くことを恐れ、奮起する

 

マシュは、そんな心優しい、ただの女の子なのだ。

むしろ、英雄王という極大の特権を与えられている自分より遥かに立派で、強い女の子だ

 

 

――頼む、マシュ。絶対に死なないでくれ

 

 

「――解りました!マスターは私が護ります!」

 

「無茶よ!まだ真名も解らない宝具で!相手はエクスカリバー!最強の聖剣なのよ!?」

 

「何言ってるの、所長」

 

「え・・・!?」

 

マスター、藤丸立香が快活に笑う

 

「私のマシュは、最強の盾なんだよ!」

 

「あなた・・・!」

 

「やろうマシュ!貴女の力を!」

 

「はい!――所長が下さった、私の宝具の名前――!」

 

 

 

 

「――卑王鉄槌。極光は反転する――光を呑め!」

纏う魔力が剣に集まり、莫大な暗黒の束が光を為す

 

其は、闇に堕ちた星の聖剣。あらゆる輝きを飲み干し喰らい尽くす邪竜がごとき怒濤なる暴虐の極み

 

 

 

「――宝具、展開します!!」

 

其は、人理を見守る礎。人が為し、人が紡ぐ歴史を見守る天文台の、銘を冠す不壊の壁

 

 

 

 

約束された(エクスカリバー)――――勝利の剣(モルガン)――――!!!」

 

放たれる。竜が吐き出す吐息を遥かに上回る絶望と破滅の津波

 

莫大な魔力を放出し、生み出し束ね勢いを増す。凄まじい勢いは微塵も衰えず外敵を滅する鉄槌となりて審判を下す

 

「仮想宝具・疑似展開(ロード)/人理の礎(カルデアス)――――!!!」

 

築かれる。人理を見守り、人理を観測する天文台の名を冠す儚くも無窮なりし不動の城壁

 

想いを力に、願いが不動に。背中にある確かなものを護るため聳え立つ雪花の壁

 

 

矛盾の逸話、ここに再演。黒き暴威と白き雪花が空間のあらゆる物体を震わせ揺るがせ、蹴散らさんと猛り狂う

 

「神様――!」

 

「神などに祈るな、たわけ」

 

「!」

 

「虚ろに消えた者に何を為せよう。貴様が祈るは――友の健在のみだ」 

 

そうだ、何かにすがって眼を閉じないでくれ

 

しかと見るんだ。あの柔らかくも決して砕けぬ決意を

 

それに応える――あの円卓を

 

「くっ、ぅうぅう!あぁあ――!!」

「大丈夫!私がいる!皆がいる!マシュは一人じゃない!」

 

「――消えろ――!」

 

一段と破滅の光が勢いを増す。いよいよ以てその腹に獲物を呑み込まんとする竜の雄叫びだ

 

「護られてばかりじゃない!私は――マシュの――!」

はっ、とマシュがマスターを見やる

 

「――――」

 

「立香ぁっ!!」

 

「ギルの――マスターだぁあぁあぁあっ!!!!」

 

右手の甲に刻まれた赤い紋様が輝き、一画が消え失せる

 

同時に、マシュの全身に力が沸き上がり、盾はより力と硬さを磨きあげる――!

 

 

「ぉおおぉおぉおぉおぉおぉお――――ッ!!!!!」

 

 

―――――――

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――加減など微塵もしたつもりは無いのだがな。全く呆れた堅牢さだ」

 

 

此度は、盾が勝った。エクスカリバーの光をすべて受け止め、それでもマシュは、マスターは生きている

 

 

『やったぞ!マシュがやった!藤丸君がやったんだ!あの聖剣を受け止めるなんて!やっぱりマシュは一流の英霊にひけをとらない!』

 

「褒める箇所が違うわ。たわけ」

 

 

『えっ?』

 

そうだ。褒める箇所はそこじゃない

 

英雄とか、宝具とか。そんなのはどうでもいい

 

 

ただ、その心の在り方に、惜しみの無い称賛を

 

彼女達こそ、肩を並べて歩くに相応しい者達だ

 

 

「――さて、盾の硬さはよく掴んだ。次は此方だな――英雄王」

 

黄色の瞳が、こちらに向けられる

 

 

――望むところだ。あれだけの意地を、気合いを見せられて黙ってはいられない

 

 

――ここで、自らを定める

 

「手を出すなよ、狗」

 

「――ハッ、誰が出すかよ」

 

 

無銘の魂に裁定が下る。ここが転生した自分の、最初の正念場だ

 

 

「我を添え物と扱うその無礼、マシュめの奮闘に免じて許す」

 

さぁ――行くぞ、万夫不当の英雄王

 

「――我の舞台の幕開けといこうではないか――!!」

 

武器の貯蔵は――充分だ――!!




マシュ、お疲れ様


次の戦いは無銘を定める裁定の決戦です

どうか、生暖かく御覧ください


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気迫

ちょっと長くなってしまいました、申し訳無い・・・

マスターにとって、ギルガメッシュのイメージが酷いことに

本当はそんな気のいいあんちゃんじゃ無いのよ・・・


ゆっくりと黄金の波紋から、一本の剣を引き抜く

 

 

何故か、かの騎士王・・・セイバーと呼ぶとして。かの王に対する膨大な詳細が、この器に記録されていた

 

そして、かつての記録と知識を読み取り、得ることで、器がかのサーヴァントに抱く感情がゆっくりと見えてきた

 

 

竜の心臓を得ているセイバーは、必然的に竜属性を殺す武器に弱い

 

この洞察を頼りに、引き抜くは竜殺しの原典となる剣、いつかの次元で『アレ』とは違うセイバーと切り結んだ際に使用したらしい

 

功績があるのなら有り難く使わせてもらおう。弱点を知ったなら徹底的に突く。名前すら無い無銘の自分に、余裕と油断は無縁であらねばならない

 

――真名を解放していないセイバーの剣はこの鎧を砕く事はない、ともある

 

――これはあまり充てにしない方がいいだろう。見据えてみたところ、一撃一撃、体捌きに至るまで膨大な魔力を噴出して万事を遂行している

 

フルアーマーであるからロケットの追突なぞ意に介さぬなどと豪語するほど、無銘に王の気風は染み付いてはいないのである

 

――鞘の無いエクスカリバーなど取るに足らぬ。とある

 

鞘・・・?エクスカリバーの鞘の事か?

 

困惑がもたげる。鞘が刃より強いなどと言う事があるのだろうか。抜き放った刃の収め以外に用途が存在すると?

 

もう少し詳しく知ろうと思ったが、頑として事の顛末が器に記されていなかった。何故だ・・・

 

目の前の黒き騎士王を見やる。――鞘らしき物体はどこにも見られない。この器の王が危惧する事態に陥ることは無さそうだ。胸を撫で下ろす

 

 

――手に入らぬからこそ、美しいモノもある――

 

 

・・・?

 

どういう事だ?森羅万象、古今東西あらゆる財宝を手に入れ、蔵に収めた王に手に入らないモノがあったというのか?本当に?

 

 

――それがこの不快感の正体なのか。それがこの苛立ちの原因なのか

 

――まさかとは思うが、英雄王は、あの騎士王に・・・

 

・・・一瞬だけ浮かんだ考えを打ち消す

 

心を暴くような下衆な真似は無しだ。戦闘情報ならいざ知らず。かつて抱いた感傷を掘り返すなど、紛れもなく不敬な狼藉だ

 

――繰り返す。自分はこの器を支配したいわけでも弄びたいわけでもない

 

どんな顛末があろうとも、この器には紛れもない経験があり、偉容があり、矜持がある

 

英雄王ギルガメッシュという存在に払う敬意と、未だ自分を弾き出さない度量に。無銘たる魂の自分はせめてもの感謝を忘れてはならないのだ

 

他人の褌を見せびらかす、恥さらしな真似はしないよう自分を律していかなくては

 

 

「随分と熟慮しているな。あの頭の悪い児戯のような戦法に飽きが来たのか?」

 

冷厳な声音がこちらを射竦める。心胆弱き者ならそれだけで狂死に追い込めよう迫力だ

 

 

「なに、貴様に相応しい血化粧の方法を考えていたまでの事。貴様から出でた鮮血、死人か蝋のごときその白肌にはさぞ映えようさ」

 

あくまで泰然とした物怖じしない物言い。決して揺らがぬ価値観と言うのは感服するが、それは決して好機や勝機を呼び込むことはない

 

 

むしろ――

 

「・・・安い挑発、乗ってやろう。吐いた唾は飲み込めぬと知れ、金色――!!」

 

当然、耳にした存在は激怒しよう。生来に染み付いた王道とその生き様に、敬服と呆れが同時に去来する

 

 

放たれたジェット機の如くに飛来する魔力の固まり。知覚すらできず並みの英雄なら叩き斬られ絶命するだろう

 

 

――舐めるな、黒色

 

 

「ぬっ!」

 

知覚より早く経験で腕が動き莫大な斬撃をすんでの所で受け止める

 

受け止めた剣から伝わる衝撃は間近で爆撃を受けるが如くだが――生命を脅かすには至っていない

 

出鱈目さや存在の規格外において

 

 

この王ほどの存在を未だ二つと知らない――!

 

「ほぅ・・・軟弱な細腕で我が一刀を小癪にも防ぐか」

「蝿が止まるわ。力にのみ振り回される野蛮な太刀筋なんぞ、見るのも汚らわしいぞセイバー!」

 

反応できねば致命となっていたのは事実だが。露と感じさせぬ器の言葉に気持ちを奮い立たせる

 

 

「・・・ククッ、楽しみだ」

 

ゴオゥ、とエンジンが始動するような音を皮切りに

 

「その虚勢が剥がれ落ち、いつもの憤慨を顕す貴様がな――!」

 

爆速にして凶悪な噴射と共に、猛烈な聖剣の乱打がギルガメッシュに襲い掛かる――! 

 

「ぬ、おぉおぉおぉおぉお!!」

 

無数の剣戟が火花を散らす。一合、二合、三合――刹那の瞬きに無数に交わされる致死の連戟

 

斬り結び損ねれば鮮血の大輪が咲く死亡遊戯の渦中にて、金と黒がぶつかりあう

 

その勢いは暴風となりて辺りを席巻し、大地軋み天を震わす大鳴動を巻き起こす

 

『凄いな、拮抗しているぞ!なんて器用な王様なんだ!慢心しないでやれば出来るじゃないか!』

 

ロマンが感嘆の声を上げる。何故か、英雄王には特別くだけた物言いを崩さない

 

「凄いです先輩!英雄王はアーチャーでありながらセイバーのアーサー王と斬り結べていますよ!」

 

 

「うん・・・!なんでも出来るんだね・・・!ギルって!」

 

マシュと立香も、目の前に繰り広げられる凄まじい光景に興奮を隠すことなく気概を昂らせる

 

 

「お願い、勝って――!」

 

オルガマリーも固唾を飲んで見守る中、冷静に事を見守る戦士が一騎

 

「――準備しな、嬢ちゃん」

 

「え?」

 

突如口を開くクー・フーリンに、立香がすっとんきょうに言い返す

 

「あの、準備、とは・・・」

 

「決まってんだろ。次戦のだよ」

 

 

「――負けるぜ、あの金ぴか」

 

「――え」

 

 

――無銘の失策、というのは語弊があるのかも知れない

 

肉体の戦法に未だ馴染まなかった、という物言いも確かにある

 

しかし、戦法を慣らす為に選んだ相手が、あまりにも近接に特化し過ぎていたのだ

 

 

 

「え、英雄王が負けるってどういうこと!?」

 

あまりに残酷な宣言に立香が聞き返す

 

「言葉通りだ。奴は弓兵、セイバーは剣士。アドバンテージの距離を一発でゼロにされちまった」

 

 

「でも、ああやって捌けてるじゃん!」

 

 

言う通り、まだ致命的な一撃を食らってはいない

 

――だが。あまりのセイバーの猛威に、ギルガメッシュは有効打を繰り出す暇すらないように見える

 

「捌けちゃいるがそれだけだ。宝具の解放も擲ちも、あの距離じゃあ間に合わねぇ。それにヤツは近接戦なんぞ滅多にやらねぇんだとよ。まあ無理もねぇわな。撃ってりゃ事足りるんだからよ」

 

キャスターが淡々と紡ぐ。歴戦の戦士の勘に基づいた、冷徹なまでの俯瞰による戦況分析を

 

「じり貧ってヤツだ。いずれ圧し切られる。あんだけ近けりゃ、アイツの十八番も、他の武器にも持ち換える暇も与えちゃくれねぇだろうさ。そういうヤツだ、今のセイバーって奴は」

 

 

「いずれ、首が飛ぶぜ。金ぴかのな」

 

 

「そ、んな――」

 

まるで、意味が解らない異界の言語を目の当たりにしたように、耳と心が理解を拒絶する

 

負ける?ギルが?

 

 

あの、偉そうだけど優しくて、おっかないけど心配してくれる英雄王が、負ける――?

 

 

負けたらどうなる?当然、消え去るだろう。生かして帰すほど慈悲の望める相手ではない

 

彼との出逢い、邂逅が脳裏に浮かぶ

 

 

――あなたは・・・

 

――や、我が知りたい

 

 

 

「・・・ギル・・・」

 

マシュ以外で、初めて召喚できたサーヴァント。召喚の時に冗談を飛ばして、私の緊張を解してくれたお茶目な王様

 

 

初めて見た時は凄く怖かったけど、右も左も解らない自分とマシュを護ってくれた。危ないからって、一人でサーヴァントを倒してくれた王様

 

どんなにみっともなくても、見捨てずに付き合ってくれた、怖くて優しい王様

 

 

消える?もう会えなくなる?本当に?もう二度と?

 

 

また召喚できる?それは本当に『今ここにいるギル』なのか?全くの別人じゃないのか?

 

 

嫌だ、そんなの嫌だ 

 

「・・・そんなの」

 

私は、英雄王ギルガメッシュが好きなんじゃない。サーヴァントとか、そんなの、全部どうだっていい

 

「そんなの・・・」

 

私の召喚に応えてくれた

 

 

マシュを励ましてくれた

 

所長を褒めてくれた

 

 

皆が仲良くできるようにって、飴をくれた

 

今ここにいる、私のギルが好きなんだ

 

 

召喚できるからなんだ

 

また新しく呼べるからなんだ

 

そんなの――私が肩を並べたいギルじゃない・・・!

 

 

『ここで一緒に戦ったギル』が、私には必要なんだ!

 

「ああっ!」

 

悲鳴のような声をマシュが上げる

 

 

――そこにあったのは、甲高い剣戟の音を最後に

 

「――あ」

ギルの手にしていた宝具が砕け

 

「ぁ――」

 

返すセイバーの一撃が、ギルガメッシュを切り裂いた瞬間だった

 

「――ギル――――――ッ!!!」

 

――

 

 

慢心ではなく、思い上がっていた

 

戦いで自らを査定すればいいと。戦法は次で確立すればいいと

 

 

――甘い見通しだ。人間ならではの甘い考えだ

 

 

上半身は繋がってはいる。だが、上半身の鎧は粉々に砕かれ、逆立つ髪は衝撃でしなだれている

 

 

「慢心していたのか否か理解は及ばなかったが、愚かとだけは言っておこう。剣の児戯などでこのブリテンの赤き竜に張り合おうとしたのが貴様の落ち度だ」

 

 

冷徹な声が響く

 

 

「――チ、おのれ・・・我ながら惑ったモノよな。遊びが過ぎたわ」

 

「殊勝な懺悔だ。いささかもの足りぬが、末期の言葉はそれで良いのだな」

 

・・・本当に感心する

 

呪詛でもなく、強がりを。不徳も不手際も自分が背負う、とは・・・

 

今回の判断を誤ったのは自分だ

 

剣を取った時点で負けていた。踏み込まれた時点で負けていた

 

剣戟に持ち込まれた時点で――負けていた

 

 

自分のどこかに鈍さがあった。敗因はそれだ

 

器はむしろ、よくやってくれた。あれだけの剣をよくぞ捌いてくれた

 

だが――その先の勝機を、自分が掴めなかった。それだけの話だ

 

 

「では、首を断ってやろう。迷うな――英雄王」

 

 

「――・・・」

 

――諦めるのか?ここで?

 

 

魂が揺らぐ

 

終わるのか?ここで?

 

 

魂が揺らぐ

 

 

消えるのか?ここで・・・?

 

 

魂が――

 

 

「――いや」

 

 

「――ここからが、我の本気よ!」

 

 

魂が――燃え上がる

 

 

「・・・ッ!?」

 

セイバーが右手に違和感を感じたのは、剣が振り下ろされる瞬間だった

 

「これは――!」

 

 

「フッ、これこそ我の秘中の秘!何かの間違いで絶体絶命になった際に最終的に我に勝機をもたらす至高の財宝!」

 

鎖、――そう鎖だ。

 

右手にがんじがらめに巻き付けられた銀色の鎖、英雄王ギルガメッシュが最後の頼みにする最終兵器―― 

 

 

「世話になるな!『天の鎖』よ――!!」

 

 

瞬時に剣を抜き取る。魔剣、竜殺しの原典を再び取り出す

 

「ぐっ――!!」

 

 

その一瞬の停止こそが仇となった。鎧を貫き、魔力を穿ち。セイバーの身体に深々と剣が突き刺さる

 

「フハハハハバカめ!我が素直に敗北を認めると思うか!王とは誰よりも図太くあらねばならん!過労死で死ぬなど論外よ!想像したくもない!」

 

「貴、様――!」 

 

「長々と講釈を垂れていたのが仇となったなセイバーよ!獲物の前で舌なめずりとは愚昧極まる!!砕けた我が鎧は惜しいが我の玉体さえ残っていれば些末な事だ――さぁ、返礼だ!」

 

黄金の波紋が空中に波打つ。その数、五門。

 

「存分に――味わうがよい!!これが真の弓兵と言うものだ!!」

 

弾丸のように設置された刀剣に宝槍が音速で放たれ、続けてセイバーの四肢に次々と突き刺さる

 

「っつ――!!」

 

 

四肢を害されようと息があるのは流石竜を名乗るだけある。鎖を押し退け、一瞬で距離を離す

 

――斬られたからなんだというのか

 

こんなもの、あのとき味わった無力感に味わえばなんてことはない

 

傷を負ったからなんだと言うのか

 

 

こんなもの、あのとき味わった空虚に比べたらどうってことはない

 

 

そうとも。この魂はやっと歩き始めたばかりなんだ

 

 

為すべきことを為すために

 

 

自らの生きた意味を残すために

 

 

第一、こんな傷を一々気にしていたら――

 

 

「さぁ、――しかと見よ!これこそ弓兵の極致!アーチャーたる我にのみ許された無二の射撃!」

 

 

――怖くても、不安でも歯を食い縛って頑張るマシュに

 

――自分の運命から目を背けずにいるマスターに

 

 

「貴様に我が至高の財、その一端を見せてやろう!」

 

黄金の波紋が波打つ。十、二十、三十、五十――総勢百門の波紋が

 

 

セイバーを『全方位に取り囲む』様に配置される

 

 

何より――

 

この器に宿った自分自身に――英雄王ギルガメッシュに!

 

「『王の(ゲートオブ)――――財宝(バビロン)』!!!」

 

 

申し訳が立たないのだから――――!!!

 

 

「――!!!」

 

 

無数の剣が、斧が、槍が、戟が。ありとあらゆる武具がセイバーに降り注いでいく

 

何をどれだけ吐き出そうとも決して尽きぬ至高の弾丸。あまりに無慈悲な絨毯爆撃

 

更に今回は――その総てが竜殺しの武器と厳選したラインナップだ

 

先程の失敗を省み、僅かな手心も与えぬよう、器が高らかに吠えている際に武器を必死に選別していたのだ

 

そう、英雄王の射撃が雑ならば、装填する弾を此方が選別すればいい

 

 

乱雑に放たれる無数の弾丸が敵に合わせたどれも致死に至る必殺ならば――それは質と量を合わせた至高の射撃に昇華する

 

王の慢心と無銘の用心を兼ね備えた無尽必殺射撃

 

ここに――宝具『王の財宝』は開帳を成したのであった

 

 

――やがて、霊核が砕け散るのを魔力の霧散で感じ取りながら砲撃を中断する

 

 

身体中をくまなく武器に突き刺されながらも、仁王立ちにてこちらを睨むその姿は不沈艦が如くだが

 

 

――静かに口を開く

 

 

「・・・無駄な武器の投擲なら弾き返してやったものを、竜を殺す武器を総動員されては是非もない」

 

「貴様へのせめてもの手向けと思え。――雑念さえ纏わなければ、その斬撃で仕留められたものを」

 

「――貴方にもいずれ解る。英雄王」

 

 

「聖杯を巡る旅――グランドオーダーは始まったばかりと言うことを」

 

「――」

 

何を、と訊ねる前に、黒き騎士の王は消滅した

 

 

・・・強かった。彼――いや、彼女もまた、自分の魂を鍛え上げる強き英雄だった

 

その魂に感謝を。願わくば、また別の形で見えることが叶わんことを――




長くなってすみません!

おっ!(エルキ)友ゥ――!


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倒壊

この回の為に所長がカルデアス入浴するマテリアル5回は見た


「良かった、ギル・・・本当に良かった・・・!」

 

無事、とは言えないものの。なんとかセイバーを下し、皆と勝利の余韻を分かち合う 

 

 

「なんだその顔は。もしや本当に我が土を舐めると思っていたのか?」

 

「思ってないけど・・・なかったけど!」

 

「なら涙なぞ流すな。そら、手拭きを貸してやろう。顔が崩れているぞ」

 

 

「うん、ちーん」

 

波紋に手を伸ばし取り出した絹のハンカチが、涙と鼻水でびちゃびちゃになる

 

「・・・そうではないわ、バカめ・・・」

 

「はい、ありがとう・・・」

 

「・・・いや、気が変わった。くれてやる」

 

「いいの?」

 

せめて、洗ってから返せとだけ伝え、頭を撫でる

 

「・・・すまんな。心配をかけた」

 

 

「うん、こっちこそ。取り乱してゴメン。マスターとして、しっかりしなきゃね」

 

「あーあ、やっぱ慣れねぇな。てめえが素直に詫び入れるなんざ。俺としちゃぁコイツが一番の特異点ってヤツだ」

 

「何を言うか、家臣に健在を伝えるのは王の・・・む?」

 

ふと見ると、キャスターの足の先から霊基がほどけ、粒子へと還元されている事に気付く

 

「・・・流れ弾に当たったか?まさかキャスターなのに死んだのか?」

 

「死んでねぇよ!――ここでの俺の役目が終わったってんで、座に戻されんだよ」

 

役目が終わった――それはつまり。この特異点を攻略し、消滅させたと言う事

 

特異点が消失すれば、更に言えば特異点を作り上げていた原因に招かれていた英霊は現世との繋がりを失い、現世より退場する

 

勝者として、聖杯に顕現を願わぬ限り、サーヴァントという名の影法師の、根なし草の運命だ

 

「・・・負けてないのに、消えちゃうんだ・・・」

 

『残念だけど、それがサーヴァントとしての限界だ。聖杯に招かれた英霊は、聖杯を回収すれば消滅する』

 

「根なし草の悲哀よな。まぁ、犬にふさわしい誘導と案内ではあったな」

 

「おう、ま。後はあんたらの仕事だ。精々上手くやってくれ」

 

『マシュ、何か一言は言っておいた方がいいんじゃないかい?ほら、御世話になったんだろう?』

 

「貴様のいない間にな。猛省せよ」 

 

『悪かったってば!』

 

「あ、あの・・・ありがとうございました。クー・フーリンさん!」

 

「頑張んな、嬢ちゃん。戦ってりゃ、また巡り合わせがよけりゃ、肩を並べて戦えるだろうさ」

 

「それと、そこにいる金ぴか」

 

「なんだ。ようやく数々の無礼を懺悔する気になったか」

 

・・・この器、クー・フーリンという英霊を大層気に入っているようだ

 

からかい甲斐のある悪友、といった印象を、無銘の自分は受けるのだが、どうなのだろうか

 

「ちげぇよ。・・・あー、なんだ」

 

ポリポリと頭をかき、ばつの悪そうに言い澱む

 

「退去が近いぞ、さっさと申せ」

 

「わーったよ。・・・頼んだぜ、嬢ちゃん達の事」

 

・・・最後に言い残す言葉は、世話焼きの兄貴分としての印象を完全に残し、

 

「まぁ、どんな顛末になるか。最後まで付き合うさ。安心して失せるがよい」

 

「――けっ、最後まで可愛いげのねぇヤツだ」

 

その言葉と、僅かな粒子の残り香を漂わせ

 

導く者、キャスター。クー・フーリンは、英霊の座へと還っていった

 

 

「ではな、忠犬。次は槍を構えてくるがいい」

 

 

(・・・貴方の教え、無駄にはしません。ありがとうございました)

 

 

「・・・さて。ファーストオーダーとやらはこれで完了であろう。行くぞ」

 

『待った待った!そこに聖杯、特異点の原因がある筈だ。回収してくれるかい?』

 

「聖杯・・・」

 

「・・・グランドオーダー・・・あのサーヴァントが、何故その単語を・・・」

 

見ると、オルガマリーが腕を組み、何やら考え事をしている

 

一応、彼女が探索隊のリーダーのようなものだ。指示を仰ごう

 

「小娘。一行の旗持ちは貴様だろうが。呆けていないで務めを果たせ」

 

 

「えっ?あ、はい・・・皆、お疲れさま。不明な点はありますが、これにてファーストオーダーは終了とします。聖杯を回収して、カルデアに帰還しましょう」

 

「はーい!」

 

「疲れた・・・我は帰るぞ」

 

 

――その時。高台の奥から、声が響き渡った

 

「まさかここまでやるとはね。計画の想定外。そして私の忍耐の許容外だよ」

 

 

「?」

 

――全身に警戒体勢を敷くべきと電流が走る

 

「マシュ、マスターとオルガマリーを庇え」

 

 

「え、えっ・・・!?」

 

――どうやら出てくるモノは、まともな人ではないらしい

 

 

「れ、レフ・・・!?」

 

 

「――やぁ、オルガ。まさか君がここにいるとはね」

 

「あ、毛虫みたいな毛の人・・・!」

 

「二人とも、私の傍から離れないでください・・・!あのレフ教授は、私達の知る教授じゃありません・・・!」

 

――マシュの見解は正しい

 

アレは外面こそ取り繕ってはいるものの、本質は人間とはあまりにかけ離れた肉の塊、おぞましき柱であることを器は見抜く

 

 

そうか、あれが⬛⬛⬛⬛に巣くった⬛⬛⬛。⬛⬛⬛⬛が使役する⬛⬛⬛の⬛⬛⬛なのか

 

ノイズが激しく、読み取れなかったが。どうやら器はあの正体を看破したらしい

 

・・・何故か、無銘の魂には開示されない。これは、何かの阻害を受けているのだろうか?

 

問題は・・・アレを見ていると

 

――無性に、沸き上がる感情がある

 

苛立ちとは違う。不快感とも違う

 

これは――怒り、なのだろうか

 

 

「48人目のマスター。素養のない少女として見逃してしまったのは私のミスだ」

 

『ちょっと待って!レフ教授だって!?レフ教授がそこにいるのかい!?』

 

「その声はロマニか。医務室に来いと行ったのに、その様子では従わなかった様だね――全く――」

 

その時だった。端整に取り繕っていた外面が剥がれ、醜悪な本性を露にし呪詛を吐き出し始める

 

「どいつもこいつも統率の取れていないクズばかり。こうも勝手に動かれると吐き気が止まらないな」

 

「貴様の存在程ではあるまい。『フラウロス』とやら」

 

「――ほう。これはこれは英雄王ギルガメッシュ。君のような英霊が何故そんなクズ共の肩を持つのかな?」

 

「――雑種が。我の赦し無くして誰に問いを投げ掛けている」

 

――ここまで器が怒りを露にするのは初めての事だった。

 

それほどまでに英雄王を激させる存在とは、あの紳士は何者なのだ

 

「サーヴァントの分際で背伸びした物言いだな。まるで英雄本人気取りか、滑稽だな」

 

「何、道化の質では貴様には及ばんよ。貴様が見逃したと取り繕うそのマスターに、特異点一つを潰されたのだ。貴様の失態は王とやらにどう詫びる?」

 

「――――」

 

「レフ・・・」

 

 

「・・・ん?――やあ、オルガ。君も生きていたんだね」

 

「レフ、なのね。やっぱり」

 

――そうか。ヤツは気づいている

 

いや。違う。オルガマリーが肉体を喪ったのはヤツの差し金だ

 

カルデアに、爆発事故が起こったという。レイシフト室にいた所長、47人もろとも半死半生の憂き目に遭ったとか

 

「どうして、ここにいるの、レフ。いいえ、今まで何処にいたの・・・?」

 

 

「――あぁ、オルガ。心配をかけて悪かったね、随分と怖い思いをさせてしまった。さぁ、おいで。いつものように、私が君を助けてあげよう」

 

「その前に答えて!あなたはレフなの!?本当にあのレフなの!?」

 

「もちろんだとも。私は」

 

「じゃあなんで!なんで『ゴミを見るような目』で私を見るの!?」

 

「決まっているじゃないか。君は正しくゴミだからだよ」

 

 

「――え」

 

 

「見せてあげよう。君が渇望していたカルデアスの惨状を」

 

 

言葉と共に空間が裂け、空間の向こう、先にカルデアスが目の当たりになる

 

――その中心部は、燃え盛るような紅蓮に染まっていた

 

「あれ、が・・・カルデアス?嘘でしょう?なんで、真っ赤なの?」

 

あれが、人理を観測する天文台、カルデアス・・・

 

オルガマリーの憔悴からして、相当の異常事態が起きているのは読み取れる

 

「人類の存続の証したる青色は一片も無く、焼却が成された紅蓮のみ。貴様ら人間は塵くずのように焼け落ち、滅び去ったのさ」

 

――その言葉で

 

 

言葉だけで理解する

 

人理焼却――歴史の終わり。焼け落ちた未来、人類の滅亡

 

 

それは防げるものではなく、既に為された事

 

――もう、人類は滅びているのか

 

 

奴に、奴等に

 

 

人類は滅ぼされていたというのか――!

 

 

「残念だったね、アニムスフィアの末裔よ。これが貴様らの所業の末路だ」

 

 

「カルデアス、カルデアスが・・・そんな、私の、カルデアスが・・・」

 

 

「君の、ではないよ。全く――最後まで君は手間のかかる存在だったな」

 

刹那

 

 

「所長ッ!?」

 

 

「あ――うそ、私。カルデアスに、引き寄せられ・・・!?」 

 

「そこまでカルデアスに執心なら、是非全身で体験してみたまえ。君が初めて、カルデアスに触れた人間となるんだ」

 

 

「ちょ、ちょっと待って!カルデアスよ!多重に重なった空間なのよ!?」

 

「あぁ、ブラックホールと何も変わらない。いや、太陽か。残った君の残留思念も分子レベルで分解してくれるだろうさ」 

 

「ざ、残留思念・・・?」

 

 

「どういう事!?」

 

「オルガはもう死んでいるのさ、当然だ。爆薬は彼女の足元に仕掛けていたからね。それが御丁寧にシバが残留思念を拾い上げてしまった。君に帰る場所なんて無い。肉体は滅んでいるのだから、カルデアに帰還できる筈も無いのさ」 

 

「い、いや・・・!いやいやいや!うそ、嘘でしょ!助けて!マシュ!立香!助けて!!」

 

 

「所長!!」

「今行きます、所長――!」

 

 

「たわけ!もろとも死ぬ気か!」

 

「だって、所長がっ!!」

 

 

「今は、今は嫌!!死にたくない!もっともっと生きていたい‼」

 

「だって、やっと褒めてもらったの!大儀であるって褒めてもらったの!初めて褒めてもらったのよ!?」

 

「――」

 

やはり、か。彼女はやはり 

 

『理解者』を欲していたんだ・・・

 

「やっと、やっと認めてもらえたのに!頑張って、認めてもらえることが嬉しいってやっと解ったのに!」

 

吸引が、続く

 

 

「友達だって出来た!立香も、マシュも!私を対等に扱ってくれた!くだらなくても、一生懸命話を合わせてくれた!」

 

「私――マシュに謝ってない!立香に任せきりでなにも返せてない!やりたいこと、やらなくちゃいけないこと、たくさんあるのに!できたのに!」

 

「所長――!」

「いや、いや・・・!所長ぉっ!!」

 

「やっと生きようと思えたのに!やっと自分なりに頑張ろうと思えたのに!こんな終わりかたなんて嫌ぁ!」

 

 

「末期の叫びとしては上質だ。では、次元の狭間に分解されたまえ」

 

 

「嫌ぁあぁあぁあ!!このまま――何もしないで――」

 

 

「無念が残るならば足掻け!」

 

 

絶望の重圧を、黄金の王が切り裂く

 

「ぎ、ギルガメッシュ・・・!」

 

 

「生き汚さが貴様ら人間の美徳であろうが!懺悔でも、呪詛でもなく、ただ『願え』!」

 

そうだ!それを救う器はもう、手にしているのだから!

 

「所長!」

 

「所長っ!行かないでっ!」

 

「マシュ、立香・・・!」

 

 

「私達――友達になったじゃないですか!!」

 

「そうだよ!また、一緒に・・・!アメを食べようよ!」 

 

 

「なにをしている!もっと魂から絞り出せ!」

 

 

「貴様の裁定の時は――今ではなかろう!」

 

 

 

「っ――!わ、私!」

 

全身全霊をかけて、オルガマリーが死の運命に抗い叫ぶ

 

「友達を残して――死にたくないぃいぃい!!!」

 

 

「――それでよい。上出来だ」

 

瞬間、レフの顔が疑問に歪んでゆく

 

「・・・この反応は・・・、馬鹿な」

 

 

瞬間、オルガマリーの身体をすっぽりと黄金の輝きが包み込む

 

 

「――フッ」

 

「馬鹿な・・・聖杯・・・!?何故それをオルガマリーが所持している・・・!?」

 

ぎろり。と視線がこちらに向けられる。

 

目論みが外れた憤慨と苛立ちの凝視を、さらりと流し煽りを入れる

 

「さてな、どこぞで拾ったのではないか?」

 

そのまま黄金の輝きは光を増して行き、カルデアスの死の吸引をついに振り切る

 

そのまま、マシュとマスターを包み込む。完全安全領域を展開させ、カルデアに帰還させる準備を完遂させる

 

 

「医師、カルデアに帰還するぞ」

 

『い、いいのかい!?』

 

「カルデアに起きた異変。それだけで何が起きたかは悟れよう。解らなければ我が補足する」

 

「ここに、最早見るべきモノはあるまい。下らん出し物も御破算と相成ったようであるしな」

 

フン、と、鼻を鳴らす。

――今回ばかりは、器の尊大さに全力でガッツポーズを決めてやりたい気分だった

 

「英雄王――貴様・・・貴様ァ・・・!!」

 

 

転移が、始まる。

 

マシュと、立香と

 

・・・死の運命から逃れた娘を連れて

 

 

「ではな、道化。精々次は見世物を吟味しておけ」

 

「――尤も。その時は我の赦し無くして視界に入った無礼」

 

「生命を以て贖ってもらうがな・・・!!」

 

 

視界が。暗転する

 

 

二人の少女と

 

 

二つの。反則を抱えて――天文台へと帰還して行く

 

 

――どうやら・・・賭けは、こちらの勝ちらしい

 

 




自分を黒幕と思っている節穴、フラウロス


兄貴と二人で節穴コンビ?


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比較

――起きろ、起きないか

 

 

 

声がする

 

 

――はやく起きてくれないか。ボクははやく向こうに行きたいんだ

 

 

顔を叩く衝撃と、声が響く

 

 

「ん、むぅ・・・?」

 

 

眼を開けると、そこは青い天井

 

身を起こす。横たえた身体はベッドに投げ出され、タオルをかけられている

 

「ここは・・・」

 

――確か、自分は特異点から生還し、それから霊基を修復するために眠っていた・・・ということになるのか

 

 

・・・ファーストオーダーは無事完遂したらしいな。自分がここにいるとなると

 

安堵する。力みが加わった身体をゆっくりとリラックスさせ、息を吐く

 

 

無事に、マスター達をカルデアに帰還させる事が叶ったようで何よりだ

 

・・・人理焼却

 

⬛⬛⬛⬛⬛により引き起こされた、人類の⬛⬛⬛⬛⬛⬛事業。何もが無し得なかった、⬛の克服

 

 

――聞き及ぶのと、実際に体験するのは当たり前だが衝撃が違う

 

 

もう、人類は滅びたなどと・・・与太話にしては最悪の戯れ事だ

 

恐らく、いや確実にマスター達は、困難に立ち向かう道を選ぶだろう

 

道がそれしか無い以上、強制と言っても過言では無いが、やってもらわねば人類は終わるのだ

 

 

「――大人とは、肝心なところでは無力よな」

 

 

呟く。自分の人生のみで手一杯なのが大人と言うつまらん生き物だと器は言う

 

 

――否定はしない。常識が狭まれば狭まるほど可能性は閉じていくものだ

 

 

夢見た明日を、輝く未来を、現実という錆で汚していくのが人の生だ

 

・・・自分は、その自分すら何も無かったわけだが・・・

 

 

(おい、いつまでボクを放っておくんだ)

 

!?

 

頭に、いや心に声が響く。

 

誰だ・・・!?何者だ!?

 

(落ち着いて前を見てほしいな。可愛らしいボクがいるだろう?)

 

言われるがまま。前をみやる

 

 

するとそこには、白い毛皮をふんだんに蓄え、角のようなものを生やした見目麗しい獣が一つ、ちょこんと座っていた

 

(やぁ、無銘の英雄王。キミの奮闘は見ていたよ)

 

 

――!?

 

(そう身構えないで。誰にも言うつもりはないし、ボクはキミの邪魔をするつもりはない)

 

声は静かに、確かに心に沈みこむような重さを持つ

 

(先に言っておくと、ボクはオマエは大嫌いだ)

 

――オマエ?

 

(そう、金ぴかで偉そうで傲慢な千里眼持ち。とくに千里眼というのが良くない。それだけでボクは変じてしまいそうになったりする)

 

(本当なら。一緒になんていたくはないけれど・・・キミは別だ)

 

キミ?

 

(キミだよ。無銘の魂。ギルガメッシュに転生した無銘の魂のことだ)

 

――まさか

 

解っているのか、見抜いたのか・・・!?自分の正体を!?

 

英雄王に宿る、自分の在り方を、この綺麗な獣が?

 

(ボクはオマエは大嫌いだけど、同時にキミには興味を抱いたんだ。混乱するかい?慣れてくれ)

 

(キミは、一つの奇跡を選んだ。そして、成し遂げた)

 

・・・奇跡?

 

(オルガマリーとかいうヒステリー持ちさ。キミは彼女を気にかけ、あろうことか聖杯を与え、オルガマリーの残留意識を元に彼女を再構成させたんだ)

 

(規模は小さかったから、彼女の肉体の編成が限界だったみたいだけど)

 

(キミは確かに、一人の生命を救ったんだ)

 

――・・・そう、か

 

救うことが、できたのか?しかしそれは、ギルガメッシュの財があったからで・・・

 

(財は独りでに誰かを助けない。手に取る誰かがいて、初めて価値を発揮するのさ)

 

(キミは確かに、オマエの財から聖杯を選びあのオルガマリーに与えた)

 

(なぜ、そんなことをしたんだい?)

 

――生命を救いたいと思うのはいけないことか?

 

(既に死んでいたのに、見棄てることだってできたはずだ)

 

――彼女は、まだ生きていた

 

(肉体がないのに?)

 

――知らないとはいえ、それは確かに生きようとしていた

 

そして、マシュと立香と交流を深めた

 

 

これからも、きっと彼女たちに必要になるモノを築いていたから、助けたいと思ったんだ

 

(奇跡を使ってもかい?)

 

そうだ

 

(――そうか)

 

ヒョコッと、獣が立ち上がる

 

(それでは、まずはお祝いだ)

 

お祝い?なんの事だ

 

(もちろん、キミの魂にさ)

 

(おめでとう、無銘の魂。キミは確かに、キミがいなければできないことを成し遂げた)

 

――・・・

 

(キミの魂がなければ、誰も彼女を助けられなかっただろう)

 

(キミは確かに、この世界に痕跡を残したのさ)

 

――・・・

 

残した、この世界に。自分が、成し遂げた

 

本当か?本当に?

 

(オルガマリーは聖杯により、食事も、睡眠も、排泄も不要な身体を手に入れた。キミに救ってもらった生命は無駄にはしないと意気込んでいる)

 

(キミのお手柄だ。それを知覚しているのはボクだけだけど、確かにボクは知覚している)

 

――そうか、オルガマリーは助かったのか

 

オルガマリー。誰かに誉められたかった、誰かに認めて欲しかったという、細やかな願いを湛えた少女

 

どんな形であれ、無慈悲と思惑に翻弄され死に逝くなどという未来を覆せたのは、なんとも嬉しかった

 

――わざわざ祝辞を述べに来たのか?

 

 

(それもあるが、これが主題だ)

 

 

(もう、止めてもいいんだよ?)

 

――何?

 

(これから先、苦しいことがたくさんある。辛いことがたくさんある)

 

(キミの何かを成し遂げたいという願いは果たされた。キミの魂は確実に世界を変えた)

 

(でも、これから先、まだまだ苦しいことが山盛りだ。)

 

(・・・どうだい?苦しいのなら、止めていいんだよ?)

 

――止める、とはなんなのだろう

 

この器から離れる事か?あとは皆に任せる事か?

 

――頭を振って否定する

 

バカを言うな、まだ何も成し遂げてはいない

 

 

世界は滅んでいる。人類は滅んでいる

 

マスター、マシュも、皆がこれから苦悩する筈だ

 

それなのに。どうして自分だけ、何を止められるというのか?

 

(まだ、抗うんだね?)

 

勿論だ 

 

自分は、何もまだ成し遂げてはいない

 

 

(解った。じゃあまだキミの物語は続く)

 

(頑張ってほしい。ボクはキミに興味がある。この世界の、異なるキミに)

 

・・・キミは何者なんだ

 

 

(ボクはフォウ。誰かと誰かを比べるのが好きな獣さ)

 

(ボクはこうして、キミを訪ねに来る)

 

(忘れないでくれ。苦しいのなら、止めていいんだよ。という言葉を)

 

 

――声が、遠ざかる

 

 

 

今のは・・・何だったのだろう・・・?



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平穏

ダヴィンチちゃん登場!


その便利キャラを生かして存分にご都合を起こしてくれ!

オルガマリーはダヴィンチちゃんに(無理やり)弟子にされました


身体を起こすと同時に、通信が届く

 

 

『お目覚めかい?王様』 

 

ロマニ・アーキマン。ロマンが、笑顔で尋ねてくる

 

「快眠、とは言えんがな・・・王が身を預ける寝台には程遠い・・・」

 

器はお気に召さなかったらしい。ゆっくりと起き上がる

 

『あはは、それはそうとも。カルデアにVIP待遇のルームは残念ながら備わっていないからね』

 

「優遇以前の問題だ。仮にも世界の救済に立ち向かう連中、疲労も並大抵ではなかろう。このような安宿でよくぞ激務に耐えるものだな・・・」

 

そうだ。カルデアにいる職員達は言うなれば最後の人類だ

 

一人でも倒れてしまえば、それだけでカルデアの効率に大幅な支障が出てしまうだろう

 

贅沢を尽くせとは言わないが、水準以上の質は保てと設計者に一言物申したい

 

ノウハウを培った社員に勝る財産は無いのだから、重要な仕事であればあるほど、生活環境には気を配るべきだ

 

「ウルクの掘っ立て小屋より劣るとは恐れ入った・・・羊の方がよき睡眠を取っていような」

 

『し、仕方ないんじゃないかなぁ・・・カルデアに灯を入れるのにも資金かつかつだったみたいだし、そもそも魔術師に他人を思いやるとか無理じゃない?』

 

「ウルクに帰ってよいか?ジグラットが恋しい」

 

ウルク・・・そんなにいいところなのか?

 

器がこんなにも言うのだ。いつか自分も行ってみたい

 

どこら辺だったか?イラクの方面だったか?

 

『待って!解ったなんとか改善するようマリーに伝えるから!』

 

「シドゥリめに扇いで欲しいものだな。いや、働けと煽られるか?・・・はぁ、だが小言はよくないな、うむ」

 

一人呟く器をスルーし、マリーに関して尋ねてみる

 

「マリーめはどうなっている?消滅などしておるまいな」

 

『あぁ、大丈夫だよ。それどころか絶好調・・・いや、不謹慎だったかな』

 

「?」

 

『まぁ、当事者が納得しているならいいのかな?そうだそうだマリーだ、マリーは今、立香君を起こしにいってる。』

 

「マスターが目を覚ましたか」

 

ならば。寝ている場合じゃない

 

『ブリーフィングを行うから、彼女達を連れて来てくれるかい?これからの進退を決める大事なブリーフィングだからね。全員で来てほしい』

 

「全員?・・・マシュもマスターもいるのだろう?集まればいいであろうが」

 

『何を言ってるんだい、キミだって一員じゃないか』

 

「――」

 

『キミのスタンスは知っているけど。こうしてサーヴァントとしているキミは当事者だ。少しくらい距離を縮めたらどうかな』

 

 

当事者・・・そうか

 

もう、眺めているだけの存在じゃないんだな、と今更ながら再認識する

 

「・・・そうさな。郷に入らばという格言もあることだ。そう振る舞うとしよう」

 

『あはは、慣れないなぁ聞き分けのいい王様って』

 

「ほざけ。では、王の出立と行くか」

 

 

 

こんこん、とマスターの部屋の扉をノックする

 

「英雄の中の英雄王、ギルガメッシュが訪ねてきてやったぞ。もてなすがよい」

 

「すっごい偉そう!どうぞー!」

 

自動ドアが開くと、そこには四人の女性が食卓を囲っていた

 

「おはよーギル!」

 

「お疲れさまです、英雄王」

 

「おはようございます!」

 

「元気なマリーの挨拶で元気でた?」

 

「特に」

 

「フラれたね」

 

「そんなんじゃないわよ!」

 

「ようこそ英雄王!カルデアの楽園、女の園へ!」

 

大仰な物言いの、紛れもない絶世の美女が声を上げる

 

「・・・万能の人か」

 

「おぉう、一目で見抜くとは恐れ入った!話を聞くまで半信半疑だったけど、その慧眼、その洞察!キミは本当に英雄王その人だ!」

 

器の見通しに目を見張る

 

万能の人と言えば・・・

 

「そう。私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ!人類史に燦然と輝くダヴィンチその人さ!」

 

・・・ダヴィンチといえば、世界一人を惹き付ける絵画、モナリザの作者か?

 

「まさか女性だったなんて、驚きです」

 

「女性、という訳でもないわよこの変人は」

 

「なんだよマリー、冷たいなぁ。私の弟子になったんだから仲良くしようよぅ」

 

「英雄王、こちらはレオナルド・ダ・ヴィンチ。通称ダ・ヴィンチちゃんと呼ばれていて、カルデアが召喚に成功した英霊の2号です」

 

「そして!このマリーの師匠というわけさ!」

 

弟子入りしたのか。万能の天才と言われるダ・ヴィンチに?

 

「大きく出たな。どんな心持ちだ?」

 

「・・・聖杯と一体化した以上、もう誰かに甘えている場合ではありません。自分は自分として、生きていかなくてはいけませんし、魔術協会をはじめとしたものたちに、ほぼ確実に追われるでしょうから」

 

「・・・」

 

「あ・・・誤解を招かないように伝えておきますと!助けて頂いた事、大変に感謝しております」

 

「私も驚いたよ。聖杯で再構成された肉体には、食事も睡眠も・・・コホン」

 

「?」

 

「・・・その、えっと」

 

「うんちもしないんだって。アイドルかな?」

 

「立香ァ!」

 

「先輩!不潔ですよ!?」

 

「あはははは!まぁそういう事らしいんだよ。聖杯がオルガマリーの願い『生きたい』を今も叶えていると言ったところだろうかな?」

 

「ハハハハハハハハハ!!」

 

横っ面を殴られたような衝撃に大笑する

 

「そうかそうか!聖杯はしかと応えたようだな!まさかそこまで気を利かすとは思わなかったがな!転がっていた容器にも使い途はあるとは、余り物も使い様か!」

 

「余り物・・・驚いた。キミはまだまだ聖杯を貯蔵しているのかい?」

 

「当然だ。聖杯の原典も我は所有している。人間を再構成する奇跡を起こす程度のものなぞ、幾らでも生み出せようさ」

 

「・・・キミの過ごしてきた世界は本当の魔境なんだねぇ」

 

「凄かろう?」

 

・・・あの奇跡を起こした聖杯は余り物で、さらに大元となる聖杯も所持、と

 

そろそろ驚愕も品切れてきた。この英雄がそう言うならそうなのだろうと、受け入れるしかない

 

「まぁ渡した聖杯は小さめの不出来なものであったが・・・起こした奇跡には相違無かろう。だから我を涙目で睨むな、笑って流せ」

 

 

「・・・わ、解ってます。余り物だろうと聖杯は聖杯!私は止まらず未来にいきます!」

 

「ポジティブ、素敵です所長!」

 

「希望の華が咲きそう!」

 

「彼女の身柄は当分こちらが面倒を見るよ。睡眠も食事もいらない弟子なんて最高だ!第2の私を作れるかどうか試してみたくなるね!あぁ、この美しい私はただ一人だけどね」

 

「そういえば、何故貴様はモナリザと同じ顔をしている?よもやアレは自画像だったのか?」

 

「英雄王、ダヴィンチちゃんはモナリザを愛するあまり、自分がモナリザになる事を選んだのです」

 

「――は?」

 

天才とアレはなんとやらというが・・・創作になりたいとはまともな頭では考え付かないだろう

 

この異常さは間違いなく天才だろう。凡人が言うんだから間違いない

 

「理解を得られない孤高さ、お互い苦労するねぇギルくん?」

 

「高みにいる者の性よな。まぁ、我ほどではないが。・・・それより」

 

「フォウ!」

 

脇から飛び出る、フォウと呼ばれる美しき獣

 

 

「ぁ、はい。皆さん。ブリーフィングが始まるみたいです」

 

「え~。まだねてたーい」

 

「怠惰を貪るか。ならその手足はいるまい。飾りにしてやろう」

 

「皆!40秒で支度しな!」

 

「そうだよ~。こわーい英雄王に怒られちゃうからね!そらブリーフィングルームに行った行った!」

 

 

「私は先に行きます。準備もあるし、ロマニをフォローしなきゃ」

 

あわただしく動き出す中、オルガマリーがこちらを見やる

 

 

「・・・本当に、ありがとうございました。救ってもらった命、すべてカルデアに捧げます」

 

「うむ、励め。貴様の奮闘に、人類の未来があると心得よ」

 

「はい!」

 

 

少女は走り出す。自分の命運と覚悟を定めた決意が、全身から垣間見えた

 

・・・自分はサーヴァント。キャスターのようにいずれ消え去る定め 

 

なら、彼女にその『先』を託してみよう

 

 

あり得ざる可能性、覆した奇跡のままに

 

 

マスターとマシュが掴んだ未来を、共に臨むことができますように、と

 

「デュクシ!」

 

「ぬっ」

 

フォウに、頭を小突かれた

 

「(ブリーフィングルームに行こうよ。そろそろロマンが泣き出すかも)フォウ、キュー」

 

「・・・よし。もう少し時間を潰すか」

 

「私には支度しろって言ったくせに!」

 

「我は良いのだ」

 

フン、と鼻をならす器

 

これに付き合わされる周りは大変だ、と・・・少し、おかしな気分になったのは内緒だ

 

 

・・・なんだか、久しぶりに笑った気がする

 

 




聖杯「女の子はうんちしない」


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人理を巡る、開闢の星

「はーい。点呼とるよー!元気よく返事してねー!」

 

 

「藤丸立香くーん!」

 

「はーい!」

 

「マシュ・キリエライトちゃん!」

 

 

「は、はい!」

 

「オルガマリー・アニムスフィアちゃん!」

 

「はいはい・・・」

 

「ギルくーん!」

 

「うむ」

 

「そして私!さぁブリーフィングを始めよう!」

 

「・・・あのさぁレオナルド。緊張感皆無にするの止めようよ」

 

 

ロマンが呆れながら呟く。レクリエーションみたいなノリのブリーフィングルームに喝を入れる

 

 

「女子が集まればかしましいって言うだろ?窮地にもユーモアは忘れちゃダメだぜ?」

 

「今から凄い大事な話をするんだぞぅ!?できれば気を緩めないでもらいたいんだけどね!?英雄王からも何か言ってやってくれないか!」

 

「理不尽は王と天才の特権。凡百な民草はそれに付き合うのが務めよ」

 

「くそっ!まともなのは僕だけか・・・!」

 

本当に弛んでいるなら自分が一喝する。緊張をほぐす天才の心遣いだとしておこう

 

 

「ロマニ、私が説明するわ」

 

オルガマリーが歩み寄る

 

「所長として、まずはお礼を言います。マスター立香、マシュ。そして英雄王ギルガメッシュ。あなたたちの尽力で、冬木の特異点は消滅しました。本当に、お疲れさま」

 

 

「皆頑張ったからだよ!ね?マシュ、ギル?」

 

「はい、先輩!」

 

「うむ。して、事態は好転したのか?何か不明瞭な点はあるか?」

 

 

「つい先ほど、私とレオナルドでシバを復旧させ、ロマニに観測を頼みました。どう?」

 

「はい、こちらを」

 

 

浮かび上がるカルデアス。変わらず紅蓮に燃えた球体のままだ

 

 

「わぁ真っ赤っか」

 

 

「2017年以降の未来は変わらず焼け落ちたまま、か。星は余さず焼かれ、踏みとどまれたのはこの天文台のみ、外界は冥府も同じ・・・」

 

「うん。カルデアは宇宙に浮かぶコロニーだと思ってくれ。一歩踏み出せばそこは死の世界だ。外界に繋がるものは何も無い。すべて死に絶えている」

 

「ロマンチック・・・でもないなー。どこにもいけないし」

 

図太いのか心胆が太いのか。動じた様子はない

 

・・・大したマスターだ。死地を潜り抜けただけはある

 

「それで?よもや現状確認だけで脚を運ばせたのではあるまい。打開の策を申せ策を」

 

「せっかちだなぁ、余裕は大事だよ?」

 

「拙速を尊べ、阿呆」

 

「打開策!あるの、ロマン!?」

 

「もちろん!これを見てくれ」

 

紅蓮のカルデアスが、青色を映す

 

その地球は、歪んでいた。七つの点を浮かび上がらせ、滅茶苦茶に光り輝いている

 

 

・・・あれらは人類史のターニングポイントのようなモノらしい

 

革新的な発明

 

画期的な興国

 

決定的な訣別。 

 

人類が人類足るがゆえに必要な事柄。人類史の土台となった七つの輝き

 

それらに立ち向かい、歪みを修正する

 

「特異点には聖杯がある。時間移動、空間転移には聖杯が無いととてもとても無理なんだ」

 

「聖杯こそが特異点の中核。いくら特異点を直しても聖杯が残っていたら、またやり直しになってしまう。回収・・・ダメなら破壊をしなきゃクリアにはならないということ」

 

「じゃあつまり、特異点にいって聖杯持って帰るのを繰り返すんだね。簡単そう!」

 

「そう楽観はできない。特異点とはいえ、紛れもなくそれは人類史」

 

「僕たちは立ち向かわなくてはならない。人類史に弓引く冒涜を、人類史を救うために」

 

人類史に、か

 

歴史の偉人が積み上げ、歴史の英雄が切り開き、築き上げてきた一枚の紋様

 

 

それを直すために、一から織物を編み直していく。少しずつでも、確実に

 

「・・・」

 

「・・・こうなってしまった以上、私はあなたにこう問わなくてはならないわ。卑怯だと、小賢しいといった罵倒は全て私が受けます」

 

オルガマリーに少し前までの困惑はない。毅然と立香を見据えるその姿は、人の上に立つ風格を纏い始めていた

 

 

――これだから、人間は面白い。叩けば響くとはこの事よ

 

器の感慨に同意しながら、顛末を見守る

 

 

「マスター番号48。人類最後のマスター藤丸立香。貴女は、この人類最大の試練に向き合う覚悟はある?」

 

「カルデアの手足となり、眼となり、刃となり盾となり、狂い果てたこの歴史に立ち向かう意志はある?」

 

「曖昧な言葉は認めません。是か非か。はっきりとこの場で口にしなさい」

 

 

「貴方に――決意はあるかしら?」

 

「もちろん!私達で世界を救おうよ!」

 

 

――向こう見ずか、はたまた本物の豪胆か

 

「クッ、ハハハハハハハハハ!即答とはな!医師よ、どうやらこやつが残ったのは思わぬ活路かも知れぬぞ?」

 

・・・それでこそだ。愉快に笑う器に、魂がまた意志を固める

 

「・・・ごめんなさい、立香。こんな重荷をあなたに・・・」

 

「違いますよ、オルガ所長」

 

「そういう時は、ありがとう!だよ?ね。ギル!」

 

そうだとも。友人の間に、過度な敬いは不要なのだから

 

「親しき仲にも礼儀あり、という言葉を忘れるなよ。貴様は馴れ馴れしすぎるきらいがある」

 

「身体でぶつかれば仲良くなれるんだよ!ね、マシュ!」 

 

「そ、そうなのですか・・・?解りました!でしたらこのマシュ・キリエライト!全力でぶつかります!」

 

「死ぬぅ!」

 

「真面目に聞きなさい!・・・聞いたわね!ロマニ!」

 

「はい!今の言葉で僕達の運命は決まった!これより我等はオルガマリー所長の決定の元、原初にして最終のオーダーを実行する!」

 

カルデアが沸き立つ。頼りなく破滅に浮いていた木の板は、今確かに漕ぎ出す船へと変わる

 

「人理修復を行う果てない旅、『グランドオーダー』!カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアの下に決行を裁定します!」

 

 

背筋を伸ばし、前を見据え。今一人の少女が独り立ちを始めたのだ

 

自分の意思で。自分の願いのままに。自らを動かす『生きたい』という願いのままに

 

「総員、自らの使命を全うしなさい!過失と損失の責任は全て私が取ります!!私達の頑張りが、奮闘が!私達自身の未来に繋がるわ!泣き言は、ちょっとだけなら許容します!皆で掴み取るわよ!私達の未来を!!」

   

「皆――進み続けるわよ!私達の明日に!」

 

 「「「了解!!!」」」

 

力強く返答を返す一同

 

自分も、この無銘の英雄王もその一員とロマニは言った

 

 

・・・自分になにができるか、未だに断言できる訳じゃない

 

でも、少しずつでも。自分の意志で、何かを成し遂げる事を選び、見て、決めてみよう

 

 

あらゆる物事を見て、決めて、処断し裁定する

 

この、至高にして黄金の器――

 

英雄王ギルガメッシュに、恥じない練磨と邁進を

 

己という異物を未だ拒絶せず、見守ってくれている度量に、敬意と感謝を

 

いつかこの器をお返しする折に――

 

 

胸を張って、自分が何者かを高らかに告げられるように。日々を生きていこう

 

 

 

――万物を照らす。あの星に

 

ほんの少しでも、近付けますように――

 

 

 

――――僕はいつでも見ているよ。君の傍らでね――

 

 

 

ふと

 

 

 

――しっかりね。無銘の魂よ――

 

 

 

器でも、魂でもない何者かの声が。胸を打った

   

――そんな懐かしい声が

 

 

 

 

 

 

――聞こえた気がした

 




これにて、無銘の英雄王の魂のファーストオーダーは完結です。いよいよ本番、グランドオーダーに移ります

無銘の英雄王、いかがでしたでしょうか?なんと!このギルガメッシュ、雑種と呼んだ回数が片手で足ります!基本名前か愛称なのです!フレンドリー!

序章とはいえ。暖かいコメントをくださった皆様のお陰で、きりのよいところまで描ききれました! 

無銘の魂を受け入れてくださった皆様に感謝を。善き人々はカルデアの外にもたくさんいます!

特異点ごとにマテリアルを見返してから執筆しようと思いますので、更新遅れちゃうかもしれません、ごめんなさい

でも、一人でも待っててくださる方がいるのなら、拙くても頑張りたいと思います‼

目指せバビロニア!救えウルク!雪崩れ込め、怒濤の採集決戦!!! 

今はひとまず、これにて!ありがとうございました!!


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幕間 愉快なえーゆーおー 勉学

ファーストオーダーは完結したが、短編をあげないとは言ってない


メンテでさぁ・・・マテリアルを読み返せない・・・


「医師、指示した書物は用意しているな」

 

とある日に、頼んでいた物をロマンから受け取りに行く

 

冬木の時に頼んでいた、ギルガメッシュの資料を、編纂しておいてもらったのだ

 

「ちゃんと用意してあるとも。ギルガメッシュの叙事詩『ギルガメシュ叙事詩』。ライブラリにしっかり残っていたからね」

 

「でかした医師。ロマンの名は伊達ではないな」

 

「僕にも飴をくれるかい?」

 

「いや、マギ☆マリとやらの実写ブロマイドをやろうと」

 

「いらないよそんなの!?御褒美に致死の刃を仕込むのは止めてくれ!」

 

「ははは、サブカルチャーとやらに傾倒するのは勝手だが、公然としていると肩身が狭くなるぞ。自分が世間に如何な眼で観られているか自覚するのだな」

 

「ほっといてくれ!AUOジョークとか平気で飛ばす君には言われたくないやい!」

 

「我は人の目は気にするぞ?赦しなく見たら処断的な意味で」

 

「即死フラグを振り撒くのは一般市民に迷惑だからね!?」

 

 

「ははは。ではな。礼を言うぞ」

 

 

 

部屋を出る。書物を抱え足取りは軽めだ

 

 

なんだか妙にこの器はロマンに気安い。向こうもなんだかいい意味で遠慮がない。まるで同じ職場の同僚みたいだ。気のおけない、というか

 

 

確かにロマンは優しい。柔和な、ゆるふわっとした感じに敵意を湧かせる者は初対面ではいないだろう

 

しかし、どうもどこかで『理由は解らないがこいつが悪い』と告げる部分がある。

 

何が悪いのだろうか?未だ、自分には解らない

 

 

・・・まぁ。ロマンに対してはそのうち話すだろう。カルデアに戻ってからのロマンの奮闘を見てから、あの頑張りを否定するのは無礼に当たる

 

 

 

それよりも主題はこちらだ。器――英雄王ギルガメッシュ。その活躍を綴った英雄譚

 

 

名を『ギルガメシュ叙事詩』。世界最古の英雄譚として高い評価を受けており、あらゆる英雄譚の原典であるとか

 

 

自分自身も原典なのかこの王は。どれだけ起源に拘るのか。あらゆるモノは我のものとするその物言いに感嘆する

 

 

――誇張でもなんでもない。それは『事実』なのだ

 

 

 

しかしながら。そこに宿る自分は英雄王の殆どを知らない。知っているのはサーヴァントとしての規格外さ、戦法くらいだ(財を擲つなんて思いもよらなかったが)

 

 

 

――知らない事は罪ではない。無知に甘んじる事が罪なのだ

 

 

そんな器の導に倣い、自分なりにこの英雄を知ることにした。

 

 

英雄王とはある意味一蓮托生だ。自分の不手際で、英雄王の戦歴に泥を塗るのはあまりに忍びない

 

 

尤も、この英雄王が負ける事など普通は考えられないが・・・むしろ何をすれば遅れをとってしまうのか?

 

 

それに、さんざん自分に敬意を払うと抜かしておいてエピソードの一つも諳んじられないなど虚言もいいところだろう。畏敬には中身が伴わなくてはならないのである

 

 

そして、単純に知りたい。無味乾燥とは無縁のこの英雄が、どんな人生を歩んだのかと

 

 

せっかくなので図書室の広い空間で読もうと足を運ぶ。流れるように器は中央の大きい広間のテーブルを選択した

 

 

足を机に投げ出し組んで、片手で叙事詩を開く。分厚いのに器用だなこの器。というか姿勢が悪すぎる。行儀が悪い。これが楽な姿勢だと器が知覚しているので、渋々従う。申し訳ない、カルデアの皆

 

 

ともあれ、紐解くとしよう。この英雄王の人生とは如何なものなのだろうか・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

眠い

 

 

 

 

いや。とても眠い。めっちゃ眠い。クッソ眠いのだ

 

 

鉛のように瞼が重い。指を動かすのも億劫だ。読み進めるほど欠伸が止まらない。今すぐこの本をアイマスクか枕にして寝てしまいたい程だ

 

どうした英雄王!?怠慢は許さんとロマンに言ったばかりじゃないか!自分の物語じゃないか!自慢げにするところではないのか!?

 

 

 

自分の所感を言わせてもらうと、すぐに続きを読みたい。ページをめくる手が止まらない。物語に退屈な場所が何処にもないのだ。

 

神と人の間に生まれた最高の王。身体の半分、いや女神の胎に宿ったことからほぼ全てに神を宿す無敵の王

 

 

蝶よ花よと民に愛され。また民を愛した至高の王

 

 

しかし成人してからは暴君へと姿を変え、民が音を上げる圧制、無慈悲な処断。ウルクに住む夫婦の処女を全て先に散らすという嵐のごとき振舞い

 

 

困り果てた神々は泥をこねて人形を作る

 

神々の最高傑作、エルキドゥ。野を駆け回る理性無き獣であったそれは、神聖娼婦との六日七晩の語らいにより、知恵と人形を得てギルガメッシュに並ぶ力を得た至高の兵器

 

慢心と驕りの頂点にあったギルガメッシュと相対するエルキドゥ。ウルクを軋ませ嵐と見紛う連日連夜の戦いの後、二人はお互いを認め合う至高の友となる

 

 

連綿と描かれる場面。心踊らせる冒険。フンババと呼ばれる森の魔物との対決。

 

  

読みたい。もっともっと読み進めたい。

 

だが――魂に反して肉体が凄まじく退屈を感じているのだ。倦怠を感じているのだ。めっちゃ瞼が重い。気を抜けば意識が飛んで行きそうだ

 

 

「くぁ――・・・かの作家が手掛けていれば少しは読み応えがあるものを・・・」

 

つまらなさそうに欠伸を飛ばす英雄王。今にも眠りこけそうだ

 

 

待て、待ってくれ英雄王!まだ読みたい!もっともっと読みたいんだ貴方の物語を!後で昼寝するから!もう少し耐えてほしい!

 

 

「・・・一眠りするか。我は寝る。誰ぞ用があらば起こすがよい・・・」

 

 

――もしかして

 

 

思い至る。この退屈さ、感じる面倒さ

 

 

――ひょっとして、自分の物語なんぞ読み飽きたと思っている・・・?

 

その答えに至るのと。真紅の瞳に瞼が降りるのは同時だった。

 

 

嗚呼――もっと読みたかったのに・・・!

 

 

 

 

――――神々は、何も人間どもに肩入れして我を造ったのではない。神々は、いずれ神の陣営に戻る人の支配者を欲しがった

 

 

それは地上に穿たれた、『楔』。人と神の両方の視点を持ちながら、最終的に神々の陣営に付く絶対者として我は神々に造られたのだ

 

 

――声がする。誰にともなく話しているかのような語り口

 

――神々は、言うなればただそこに在るだけのモノだ。力は強くともそれはただの現象。自然が神となったのだからな。当然であろうが

 

 

それに対して人間どもの生存力は並外れていた。莫大な力を持つ超抜種こそいないがとにかく数が多い

 

生存力とは、自分達の住みやすいように環境を整える力の事だ。人間どもは数が多く、そしてそこには数だけ個性があった

 

如何に全能を発揮する神であろうが、矮小な人間であろうが、形取る人格、導きだす結論はそう大差がない

 

解るか?敵と感じたなら排除する。喜びを感じたなら高揚する。そら、違いはなかろう?神々が恐れたのはそういう事だ

 

 

神々は、人間の可能性を恐れたのだ。このまま人間が台頭すれば神は不要になる

 

故に――我を造ったのだ。・・・が、奴等が我を造れたのは肉体のみ。そこに生まれた魂は我の定めた我の魂のみ

 

 

――だから。言葉は紡ぐ

 

神々の意向なんぞ知ったことか。我は我の感じるままに生き、神と人を訣別させる切っ掛けを作った

 

神には従う。敬いもする。だが滅びよ

 

我を産み出した時点で、貴様らは自ら世界の席を喪ったのだ

 

――この王は楔として産み出された

 

 

産み出した者の誤算であったのは、その魂の自我が強すぎた

 

 

結局の所――ギルガメッシュは、神々の時代に止めを刺す『槍の穂先』となったのだ―― 

 

 

 

――これは、英雄王の生誕の経緯、なのだろうか

 

これは、誰に語ったものなのだろう・・・?

 

「・・・英雄王?英雄王?」 

 

声に瞼を開く。今のは――夢か?

 

 

「む・・・マシュか。我はどれほど眠っていた?」

 

「一時間ほどです。オルガマリー所長が開発した、魔術礼装を試したいとマスターがシミュレーションルームに呼んでいますよ」 

 

「くぁ――うむ。慣れない読書なぞすべきではないな」

 

 

「ご自分の英雄譚を、読んでいらっしゃったのですか?」

 

「あぁ。――マシュ。これをマスターと読むがいい」

 

 

「あ、ギルガメシュ叙事詩・・・これを?」

 

 

「退屈はさせん。我以外はな。――気紛れで読み解いてみたが。当事者にはなんの面白味もないな・・・」

 

 

欠伸を噛み殺しながら図書室を出るギルガメッシュ

 

「・・・英雄王・・・本を読むんですね・・・」

 

ちょっぴり、親近感が湧くマシュであった




――AUOキャストオフが記載していないとか愚書にも程があろう。焚書ものだ、たわけ


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改築

はいはい緊急メンテ緊急メンテ 


しゃーない


もう一本、メンテの暇潰しにどーぞ


苛立っていた

 

 

 

憤っていた

 

 

「――――」

 

 

これ以上ないほど憤慨していた

 

 

器たる英雄王ギルガメッシュが、マイルームにてこれ以上ないほどイラついていたのだ。かきむしるようなもどかしさが伝わり非常に気持ち悪い

 

 

あのレフを名乗る何者かを見たときなど比較にならない怒りだ。憤怒が力を為せば一人や二人殺める事ができそうだ

 

 

 

そして――

 

 

「・・・――――!!!」

 

 

ブチり、と英雄王の堪忍袋がぶった切れた

 

 

 

「――なんだこの水桶はァ――!!!!」

 

 

英雄王の天雷を思わせる雄叫びが、完全防音のマイルームに響き渡った

 

――

 

「オルガマリー貴様ァ!!」

 

 

「ひっ、英雄王なにご――ひぃいぃい!!?」

 

 

怒号をあげてギルガメッシュが憤怒のままに、カルデアのライフラインをメンテナンスしていたオルガマリーを怒鳴り付ける

 

 

あまりの威圧と剣幕に二度ほど失神したオルガマリーが、顔を真っ赤にして断末魔をあげる

 

「いい加減海より深い我の忍耐にも限度があるぞ!この我の怒りを買うとはよい度胸だ!」

 

 

「ご免なさいごめんなさいゴメンナサイごめんなさいごめんなさいでもでもでも前前前前えぇ!!」

 

 

・・・あ、と無銘が天恵にいたる

 

 

器の怒りのままに出てきてしまったが

 

 

――水浴びしたままの一糸まとわぬ姿で出てきてしまった。全裸だ自分

 

オルガマリーはまた気絶したのだった

 

 

 

「フー・・・・・・――――」

 

 

深呼吸をし腰を下ろして怒りを静める

 

「我としたことが我を忘れるとは。すまぬなマリー。笑顔で流せ」

 

ガタガタと顔面蒼白になって震えてるオルガマリーに声をかける。カルデアスに引き寄せられる時より顔に絶望を浮かべるとかどれだけ怖かったのだろう

 

「レフ、レフ助けて・・・殺される、殺されるわ私・・・」

 

「ふっ。やはり我の裸体は凡俗にはあまりに刺激的すぎてもはや毒か。我が肉体の黄金律が怖い。ははは」

 

 

何にここまで器が怒り狂っていたかというと

 

 

ずばり、マイルームへの不満だ。あまりの質素たる有り様に英雄王の海より深い忍耐は5秒でギブアップしたのだ 

 

 

「身体を包み込むことのない質素な布切れ。頭蓋を弾く無礼な枕!味気ないシミまみれの壁!それはよい!良くはないが些末だ!」 

 

「許せぬのは――水浴びの間取りだ!あの家畜小屋にも劣る個室で何を清めるというのだ!全く赦しがたい・・・!汚物に至宝を抜けとほざいた優雅並に赦しがたい!!」

 

吐き捨てる器。自分はそこそこ快適だったのだが・・・まぁ、皆はどうかは解らないが

 

「だ、だってだって・・・!カルデアは、レジャー施設じゃないんですもの・・・!資金はほぼカルデアスとシバに費やしたって話だし・・・」

 

「雑種が・・・高尚な天文台と観測機に費やした程度で尽きる財で見栄を張るなと言うのだ!」

 

「施設は運用する人員あってのもの!人員のメンタルケアを怠る頭が率いる組織に大成ないものと知れ!」

 

「はっ、はぃい!!」

 

いつになく荒れている器に、というか絡まれるオルガマリーに同情する

 

年齢的にカルデアの設計はオルガマリーの父か祖父の所業であると思うのだが・・・

 

凡人の眼から見ても、確かにここの設備は味気無いと思う。寝らればいい、休めればいいといった最低限のものばかりだ。コストダウンの苦悩が見てとれる

 

 

・・・平時であれば別に誰も構わないのだが。今はカルデアの職員一人一人に人類の未来がかかっている

 

 

激務で栄養ドリンクチャンポン二撤三撤当たり前なんて漫画家みたいな真似をしていたら、遠からず過労死する人が出るだろう

 

ハイパフォーマンスの秘訣は質のいい休息から

 

なんとかしてあげたいと、素直に思う

 

 

――いや

 

なんとかしよう。どうせカルデアの外は地獄なんだ

 

 

人理焼却が終わるその日まで――ここに『楽園』を立てても問題はあるまい

 

 

「オルガマリー。我にカルデアの見取りを寄越せ」

 

「えっ、見取り・・・?な、何をする気、ですか・・・?」

 

「我はかつて城塞都市をデザインしウルクを歴史に残した建築王・・・!」

 

 

「その才気溢れる手腕を見せてくれるわ!」

 

 

――

 

その日から、カルデアの衣食住を徹底的に改善、ギルガメッシュが改修を受け持つことになった

 

 

まずカルデア職員名簿に目を通し数を把握

 

 

アンケート用紙を配り速やかに趣味嗜好要望を把握し対応した原典を財から出す

 

配給されている一人一人の支給品を徹底的に改善、粗末な材質のモノは全て財から最高級のモノに取り替える

 

布団は羽毛に、枕は低反発に。部屋はカーペットを敷き天井壁は一人一人の要望に逢わせて張り替える、

 

個室の大きさはどうしようもなかったので、別空間に繋がる入り口を用意する。シャワー室は軒並みバスルームへと改築した。ちなみにシャワーの形はウルクの狛犬、ラマッスを象っている

 

ライブラリから直接データを引き出せるオーディオ、TVも完備。就寝する際には自動で安眠ミュージックを流すように設定した

 

ハンモック、布団、ベッドの選択は事前報告。対応した財を取りだし設置する

 

 

食生活も改善だ。まず厨房にある機材を全取っ替え。きらびやかに輝く最古の道具一式に変える

 

ドリンクバー、スープバーを完備させ、願うだけで料理ができるテーブルクロスを敷き詰め。和洋中に完全対応した食堂を作り上げる

 

一人一人の体調に合わせた献立メニューを出力する機材も設置。不足しがちな栄養を重点的にとるよう促す資料も部屋に配布。従わなければ連日青汁の刑だ

 

甘味はロマンが日本に来たときに食べたという情報に任せ監修を任せる。きっとロマンなら的確にいい感じのスイーツを用意してくれるだろう

 

「君の負担でスイーツ食べ放題!やったぞ!頭に栄養が沢山巡る!」

 

「働きを見せねば処断だがな。これは貴様らの旅の先行投資と心得よ!」

 

「やるやる!わぁい、他の皆も大喜びだ!君がこんなに気前がいいなんて!」

 

「我は万事に妥協しない王だ!森羅万象何事も!我が満足できねば無価値と知れ!」

 

「さぁ――ついてこれるか――!!」

 

・・・別に間違った事はやってないので止めないことにする

 

カルデアの皆はここから出られないのだから、・・・ここで戦い続けるのだから。

 

堕落しない程度の娯楽は、赦されるべきだろう

 

 

――このあともカルデアは英雄王怒りの大改装が続き、度外視されていた職員の負担を一切鏖殺する至高のリゾート施設へと姿を変えていった

 

 

完成したカルデアの様相に職員たちは涙を流さんばかりに歓喜の声を上げ

 

 

「こんな贅沢していいのだろうか」

 

「俺はカルデアに永住する」

 

「絶対人理救う」

 

 

「ギルガメッシュ王、万歳!」

 

 

といった声で、極寒の山頂を埋め尽くしたという――

 

ちなみにこのカルデアリゾートを利用するには契約書にサインを書かねばならない

 

内容は――『人理修復を完遂すること』ただ一つのみであったとさ

 

 

その日からカルデアの事務効率は10倍を上回る右肩上がりの大暴騰

 

自主的に休日返上職務に立候補する、オルガマリーが立てたシフトを完璧に護る統率された集団が出来上がったのだった

 

 

そしてそれらの負担はギルガメッシュが全額負担。管理と調整はラピスラズリを叩きつけ雇ったダ・ヴィンチちゃんに丸投げした

 

 

 

――後に、どんなリゾートホテルも看板を下ろす至高のレジャー天文台カルデアと呼ばれる施設の爆誕である

 

 

 

 

 

「ふはは!やはり水浴びとはこうでなくてはな!わくわくざぶーんには及ばぬがまあ良かろう!我の黄金律に、不可能は無いということだな!ふはははは!」

 

 

 

上機嫌で自分専用の異空間大浴場に浸かるギルガメッシュ

 

 

「よし!事がすめばカルデアも我が財に加えてやるとしよう!」

 

 

オルガマリーが完全にひきつった笑みを浮かべ、ダ・ヴィンチちゃんが笑いをこらえる姿を思い浮かべる

 

美味しいご飯を食べるマスターとマシュ、甘味を頬張るロマン

 

 

「我は至高の贅沢王!我に不可能という言葉は無いと知れ!ふははははは!ハハハハハハ!ハーッハハハハハハハ!!」

 

 

高らかに笑う英雄王。

 

 

――機嫌がなおったようなので、よかったよかった




カルデアよいとこ いちどはおいで


交通費自己負担 生命保証なし


粘り強く人理を救う意志のある方大歓迎


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勤勉

英雄王の大改装が大好評でとても嬉しいです!ウルクの民羨ましい!カリスマ溢れる王の下で働きたい!

嘘みたいだろ?オルレアンにすら行っってないんだぜ?やっぱりギルガメッシュ王は最高だぜ!


アラヤ「こちらの仕事もやりがいあるよ!人員募集中!」


「ここを第二のウルクとする!」

 

英雄王の宣言を聞いたときには流石に卒倒しそうになった。せめて、せめて今くらいはアニムスフィアの名を冠していてほしいと

 

 

・・・もう、自分がアニムスフィアかどうかは解らないのだが

 

 

カルデアが大改装を施され、貴族や名家でさえ羨む究極のレジャー天文台と生まれ変わったのはつい最近だ

 

あまりにもあっという間に、あまりにも強引かつ大胆に

 

あの英雄王は、不可能を可能にしてしまった。聞けば、このカルデアを動かす際にはとんでもない裏技を使ったとか、人には言えない手段を使って資金を工面したという話を聞いていたのに

 

あの英雄王はあっさりと、常識を飛び越えてしまったのだ

 

・・・そして、常識の外と言えば、私自身もそうである

 

 

聖杯と合体、融合した私。

 

死んでいた私を、英雄王が救ってくれた

 

・・・初めて褒めてくれた王、偉そうなのに、言葉には優しさと思いやりが含まれた王

 

私は彼に、生命を救われた

 

 

その恩義に、報いたいと思う

 

だから、責任から逃げてはいけない

 

レイシフトはできなくても、やれることは沢山ある

 

私は、カルデア所長。オルガマリー・アニムスフィアなのだから

 

 

 

「・・・今日の講義は終了ね。立香、マシュ。お疲れさま」

 

「お疲れさまでした。先輩、大丈夫ですか?」

 

「うう、なんとか・・・」

 

時計塔の講義室すら上回る規模の勉強室で、三人はマスターとサーヴァントのレクチャーをオルガマリーから受けていた

 

勉強会である。先生はオルガマリー、生徒はマシュと、マスター立香だ

 

「初歩で伸びていたら後が辛いわよ。自由時間に復習しておくように。テストに出すわよ」

 

「テストぉ!?そんなー、ここまできてテストやるのぉ?」

 

「当たり前じゃない。反復しないで覚えられる頭じゃないでしょう?」

 

「酷い!成績は確かにそんなにだけどさぁ・・・うぅ、ゲームセンターで遊びたいなぁ・・・」

 

「頑張りましょう、先輩。私もフォローしますから、終わったら温泉で一息入れましょう」

 

「マシュがいうなら・・・所長、簡単にしてね?」

 

「赤点をとったら、ゲームセンターの出入りは禁止するわよ」

 

「ひどーい!」

 

「・・・む。呼び出し。マシュ、立香を頼むわね」

 

「はい、お気をつけて」

 

「いってらっしゃーい・・・宿題やだー・・・」

 

 

管制室からの呼び出しに応え、講義を終え管制室に向かう

 

立香の知識のフォローは大事だ。彼女に何かあった時には世界が終わる未来が確定する時なのだから

 

知識は邪魔にならない武器だ。自分を護るために繋がると、少しでも解ってほしい

 

(やる気があるのか無いのか掴みづらいけれど・・・取り組みの意思があるだけマシか)

 

 

「シバの観測とカルデアスのメンテナンスは私がやるわ。ロマニ、あなたはシミュレーションの調整をお願い」

 

「いやいや、所長に負担はかけられませんよ。これくらいなら僕一人でできますとも!」

 

「マギ☆マリ、更新されてるわよ」

 

「ううっ!」

 

カルデアスとシバ、カルデアの心臓とも言える最重要機関。そのメンテナンスは自分の手で行いたい

 

「ロマニ、あなたは一時間の休憩を。後は私がやっておくわ」

 

「え、ですが・・・」

 

「いいから休む!何かあったら呼ぶから、自分を大切にしなさい!顔にスイーツ食べたいって書いてあるじゃないの!」

 

「何だって!?くそぅ、なんでばれるのかなぁ!?」

 

怖いなこの職場!とごねるロマンを追い出し、コンソールパネルを片手で常人の三倍以上の速さで打ち込んでいく

 

「レイシフト、観測共に異常なし・・・存在証明問題なし、と・・・」

 

空いた右手でシミュレーションの調整を行う。難易度設定、シャドウサーヴァント、エネミーのデータをインプットする

 

「スパルタモード、ウルクモード・・・?どっちがどう違うのよこれ?」

 

「なんでも、神の嫌がらせに屈しない兵士の強さ、みたいですよ?ギルガメッシュ様がいってました」

 

「ウルトラハードってことかしら。あの王様はマメね・・・シミュレーションも弄るなんて」

 

「ギルガメッシュ王は最高だぜ!カルデアを一日で天国に変えちまった!」

 

「あぁ、あの飯を食べたとき俺泣いちまったよ、旨すぎて」

 

「身体が沈むくらいベッドもフカフカでよ、あんなに熟睡したのは生まれて初めてだったよ・・・!」

 

「俺はカルデアに骨を埋める!家族も呼んじゃダメかなぁ・・・」

 

口々に喜びの声をあげる職員たち

 

・・・自分のことばかりの時は気付かなかったけど、彼等も生命を懸けて戦っていたのね。それを省みないなんて。確かにいけない事だったわ

 

「あなたたち、手が止まっているわ。やることをやらない人にあの王様は厳しいわよ?」

 

「ヤバいヤバい!」

 

「あぁ、油断慢心は許しても怠惰は許さないがモットーだしなギルガメッシュ王」

 

「死ぬのは怖くないが、ギルガメッシュ王に見捨てられるのだけは嫌だ!」

 

「その意気よ。・・・む」

 

「ダ・ヴィンチちゃんから呼び出しですか?行ってきてくださいよ。後は私達が」

 

「いいの?」

 

「もちろん。私達だって足手まといじゃありませんよ」

 

「所長ばっかりいいカッコはさせませんぜ!」

 

「さ、行ってきてください。気を付けて、オルガマリー所長」

 

 

「・・・ありがとう、頼むわね」

 

 

お言葉に甘えて、管制室を後にする

 

 

 

 

「お待たせー!頼まれてた魔術礼装、戦闘服に制服、アトラス院の礼装のロールアウトが終わったよん」

 

工房に足を運び、礼装を受け取る

 

立香に使ってもらう魔術礼装の管理をダ・ヴィンチちゃんに頼んでおいたのだ。アニムスフィアの伝手を使い仕入れておいた秘蔵の品だ

 

「ありがとう、師匠」

 

「気にしないでくれ、可愛い教え子の為だとも!サイズは彼女に合わせておいたから安心したまえ」

 

「使いこなせるかしら・・・彼女」

 

「神のみぞ、ってやつだね。まぁ経験を積めば大丈夫さ!それよりも・・・さぁ始めよう!万能の人たる私とのマンツーマン授業だ!」

 

「わ、分かったわ。もうそんな時間?」

 

驚くオルガマリー。どうも、この身体になってから感覚がおかしい。最後に寝たのはいつだっけ?食事も睡眠も不要になったからだろうか時差ぼけの感覚に近いかもしれない

 

「いけないなぁ弟子。不要だからって生命活動を蔑ろにしちゃダメだよ?まず精神から疲弊してしまう。精神とは肉体と魂を繋ぐ大事な糸、切れたら人間は自分を定義できない」

 

「プラネタリウムルームでも行ってきなさい。授業はまた今度にしよう?君は働きづめだしさ。幸い息抜き娯楽、そのすべてがカルデアにはあるのだからね!」

 

「ロマニほどじゃないわよ・・・でも、ありがとう」

 

「細やかな作業と同じさ。心の機微を読み取るのはね。チャオー☆」

 

オルガマリーは礼を言って、工房を後にした

 

 

「うむ、ウルクほどではないがよい彩りだ。やはり神代の輝きを再現できぬのがおしい。ジグラットから眺める星はよきものだった・・・」

 

プラネタリウムには先客がいた。

 

私の運命を変えた王、このカルデアの最強戦力

 

英雄王ギルガメッシュ・・・私に聖杯を与えてくれた、命を救ってくれた王

 

「む?なんだマリーではないか。貴様も星読みか?いい趣味だな、乙女というにはちと合わんが」

 

「よ、余計なお世話です!・・・あの、お邪魔でしたら」

 

「構わん、許す。貴様も知れ、ウルクの星空をな。後は臨場感だな。VR、試すか・・・」

 

「は、はい」

 

宝具により再現された、満天の星の海。手を伸ばせば届きそうな星天の輝き

 

 

「・・・綺麗・・・」

 

「であろう、であろう。貴様も知りおけ、ウルクとはありとあらゆる面で優れた無敵の城塞都市!我が良きものと定めた至高の都市だ!民も、空も、大地も、星も。我が認めし至純の財宝よ!」

 

ふはは、と高らかに笑う英雄王

 

 

・・・羨ましい。とちょっとだけ感じる

 

 

こんな風に生きられたらどんなにいいだろう。自信たっぷりに生きられたら・・・

 

弱気になる自分を振り払う。

 

そうじゃない。生き方は自分で決めるのだ

 

死にたくないと願った。生きたいと願った

 

この王に、命を救われた。

 

だから、ちゃんと立たないと。自分の足で

 

星には届かなくても。一生懸命歩いていこう。

 

――少しでも、誰かに誉められるように

 

 

「なんだ?熱っぽく見つめおって。あれか?我の黄金律に参ったか?」

 

「違います!ただ金ぴかでまぶしいだけです!」 

 

「ふはは!当然だ!我はこの星なぞ比較にすらならんほど輝いているからな!やらんぞ?星を、『ほし』いと願ってもな!ははははは!AUOジョークだそら笑え!笑う門には福来るというのはマスターの国の格言であろう?わはははは!」

 

「あ、あはははは・・・」

 

 

・・・ジョークセンスは、神様でも与えられなかったらしい

 

 

 

 

「ん。よし」

 

 

存分に息は抜いた。リフレッシュは完了だ。また激務が始まるが、別にあわてふためく事はない

 

自分は、一人じゃないから。やれる精一杯をやっていこう

 

・・・これからは、なるべく自然体で振る舞おう。

 

それくらい、きっと許してくれるだろう

 

幸い、皆・・・いい人達だから

 

「フォウ!(やっとマシな顔になったね)」

 

「あら?あなた・・・マシュのペットじゃない。私の前には出てこなかったのに」

 

「フォーウ!(君の前に出てももう大丈夫みたいだからね。挨拶さ)」

 

「何よ、迷子?仕方無いわね。おいで?」

 

「キャーウ、フォウ、フォウ!(所長に可愛さアピールをしておくのも悪くないかな。リゾートカルデアのマスコットとして名を馳せてやろう!)」

 

「ふふっ、もふもふね、貴方。名前はなんていうのかしら」

 

 

――願わくば

 

 

星の獣が、目を覚ます事のないような善き場所でありますように

 




カジノ、ゲームセンター、レクリエーションルーム、温泉、バッティングセンター、プラネタリウム。図書館、博物館、漫画喫茶


全て完備してあるカルデアはここだけ!君も人理を救うついでにリフレッシュしよう!


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召喚

やぁ、ハーメルンの皆、レムレムしてるかな?


僕はキャスター。うん、楽園のキャスターと言って真名は伏せておこう。親の声より聞いた声だろうからね。王の話はまた今度

故あって僕は暇潰しというグランドオーダーを果たすためネットブログをやっている

そう、マギ☆マリ。僕は素敵なネットアイドル、ネカマは禁句だよ?

こうやって外界に触れるのはいい刺激になる。まぁ僕はグランドキャスター候補である眼があるんだけどそこはそれ、察してほしい

そういえば、僕が美しいものを見ておいでといって突き落とした獣、キャスパリーグは元気かな?

おぞましい獣になっていないかな?そうなっていたら御愁傷様。人間の皆様、本当に申し訳ない

おや、マギ☆マリに新しい書き込み?嬉しいな。書き手は感想をいただける事より嬉しいものはないんだ。読者の皆様ありがとう、本当にね

さて、目を通そうかな、どれどれ

『ほんとのあいはここにある』

画像もあるぞ?

『マスターとマシュとオルガマリーと戯れダブルピースしてるフォウくん』


・・・・・・・・・

『オマエまだそんな楽園(笑)にひきこもってるの?(笑)』


キャスパリーーーーーグッ!!


あるものは運動を楽しみ

 

 

「マシュ、いくよー!必殺サーブ!」

 

「はい!宝具、展開します!」

 

 

あるものは甘味を味わい

 

「いやぁ、幸せだなぁ。嬉しいなぁ、こんなの誰だって訣別するよ・・・未練なんてないもん・・・」

 

あるものは発明に勤しむ

 

 

「そうだ!一括スイッチにしてみよう!管理がますます楽だ!」

 

 

あるものはブログで煽る

 

「プキュー、クスクス(マーリンざまぁwww)」

 

 

悠々自適の生活を送る山頂の楽園、カルデア

 

 

 

だが、その平穏は号令によって切り裂かれる

 

 

 

「――――我が声を聴け!全職員!!集合ッ!!!」

 

 

 

 

王の号令によって召集されたカルデア全メンバー

 

 

自分もうつらうつらしていたところを器にたたき起こされ今に至る

 

 

「呼んだ?ギル。あ、マリーもいる」

 

「召集をかけたのはギルだけど、用があるのは私よ」

 

「どぅひまふぃふぁ?」

 

「呑み込んでから話さぬかドルオタ」

 

「ひどうぃ!」

 

「何かのミッションでしょうか、所長?」

 

「立香にとっての大事な話よ」

 

 

改まり向き直るオルガマリー

 

「これより、英霊召喚を行います!」

 

 

 

――どうやらカルデアの投資と戦闘をこなすギルガメッシュの負担を減らすと同時に、カルデアの戦力の増強を図るため、更に英雄を召喚する儀式を行うらしい

 

「我は構わんと言ったのだがな。ははは、こやつが涙目で、『貴方がいなくなったらカルデアが沈没するの!』と言われては断れまい。可愛いやつめ、だが我とのフラグは立たんぞ?」

 

「ちーがーいーまーす!!」

 

どうやら器のオルガマリーへの認識もまた『我の財』らしい。まぁ自分の聖杯をあげたのだから無理からぬ話か。完全におちょくる歳の離れた兄ちゃんだが、どちらも不快に思ってはいないようだから止めない。アットホームなのは良いことだ

 

「これから召喚するサーヴァントは基本的にカルデアにて待機してもらい、戦闘時に必要に応じて呼び出します。まだまだ未熟な立香は、ギルガメッシュとマシュの指示に専念して。手助けとしてサーヴァントを呼び出しなさい」

 

「フッ、我もメインサーヴァントに昇格か?難易度=チートは伊達ではないぞ?」

 

愉快に笑う英雄王。自分はこの自信に中身を持たせるのが仕事だ。頑張らなくては

 

「どういうわけかギルガメッシュだけは常に使役できるんだよねぇ。霊基が特別強靭だからかな?」

 

 

――もしかしたら、自分の存在のせいかもしれない。当事者たれ、と言われているのか。作用しているのかは分からない

 

分からないことだらけだから足掻けということなのか。何にせよ、マシュとマスターといられるのは嬉しい

 

「我に不可能なぞ無い」

 

がっしりと腕を組むギルガメッシュ。この器、頼もしい

 

「凄い説得力です、先輩」

 

「うぅん・・・怖いなぁ、私なんかに力かしてくれる人がいるのかな」

 

「どうした、しおらしいな」

 

「うん、現状把握できたら、今更不安になって・・・」

 

・・・大丈夫だ。きっと君の道を手助けしてくれる英雄がくる

 

こんな頼りない魂だって、君を助けたいんだから

 

「案ずるな、前を向け。我のマスターたるもの、天を睨まぬか」

 

「でも・・・」

 

「頼りにされて機嫌を損ねる者はいまい。万が一には我とマシュがいる。気楽に凡英霊を使ってやれ」

 

ポン、と頭を撫でる

 

「やる前から諦めるな。不敬になるぞ」

 

「・・・解った、やってみる」

 

「それでよい。――あぁ、メソポタミアの連中は如何なる理由があろうと呼ぶな、殺す」

 

「ヒェッ」 

 

 

「ではまず、召喚の触媒を私が用意するわ」

 

 

「え?どうやるの?」

 

「私の――聖杯を使うのよ」

 

オルガマリーが目を閉じると、胸から形を成した聖杯が現れたのだ

 

マグカップから、グラスほどの形に変わっている。黄金からオレンジ色と白のカラーに変化している

 

まるで、オルガマリーの魂の具現のようだった。そこから汲み上げられた何かを手に取る

 

「師匠に教わったの。君の生きたいという願いは解釈によっては呼び水になるっていうこと」

 

「私の聖杯に、縁を注いで形をなす。助けてほしいという願いのもと、人理を救う手助けをなす英雄を呼ぶ」

 

 

「形を為す、縁の符・・・呼符といったところかしら」

 

 

「凄いぞマリー!もう聖杯の使い方を定めたんだ!」

 

「才も回路も一流なのだ、当然よな。下らぬしがらみが無くなれば魂の本質が顕れるのは自明の理よ」

 

オルガマリーは考えていたのだ、自分なりの貢献の力を、その、方法

 

 

「フォウ!(星4確定チケットかぁ~。流石聖杯。マスター垂涎ものだね)」

 

「連発はするな、疲労が溜まるぞ」

 

 

「っ、はぁ・・・はぁ・・・これを使って、貴方が呼び出すのよ」

 

生まれた符を立香に手渡す

 

「あなたを助ける、あなたの英雄を。・・・期待しているわ、立香」

 

「・・・はい!」

 

 

 

「サモンプログラム、スタート。英雄召喚、開始します」

 

 

マシュの宝具を置いて、召喚が始まる

 

 

――こちらとしても楽しみだ。かつてのキャスター、クー・フーリンのような、本物の英雄と、会話をすることができるのは、きっといい刺激になると思う

 

あのとき、夢で語ってくれた英雄王のように、生の声を聞く機会はあるに越したことはない

 

 

「よいか、少女騎士だ、少女騎士をなんとしても呼び出すのだぞマスター」

 

「アーサー?」

 

「そうだ。頼むぞ神よ・・・!描く方の神よ!」

 

何を神に祈ってるのか!?神に滅べと言ったのに、滅ぼしたのに!?

 

「我には特別に信じている神がいる。紡ぐ神と描く神だ。特に描く神はよい、最高だ。増やしすぎな気がするがな。紡ぐ方は腕は確かだが虚言癖がな・・・」

 

「霊基固定!召喚します!」

 

 

光が走り、満たされ、やがて収まる

 

 

「どうだ!金髪か!剣士か!?」

 

 

現れたのは――

 

 

「我が名はタマモナインの一画、タマモキャット!よろしくナ、御主人」

 

「アルコではないか!!!!!」

 

だぁんと机を叩くギルガメッシュ、ビクッとするオルガマリー

 

「働け描く神!!」

 

「ま、まぁまぁ。始まったばかりだし・・・」

 

 

「オマエが御主人か?では首輪をもて、ネコ缶を所望するぞ」

 

「・・・か」

 

 

「蚊?」

 

「かわいぃいいぃい!!!」

 

「おぅ、キャットは主人に好印象か。嬉しいぞ、籍を入れるか?ん?」

 

「おめでとうございます先輩!」

 

「・・・クラスはなんだ」

 

「バーサーカーだね」

 

確かに可愛い。本物かな、あの尻尾。もふらせてもらいたいなぁ

 

あとで要望を聞かなくちゃ。サバ缶かな

 

「次!セイバー、セイバーだぞ!」

 

「フォウ(避けられてるんじゃない?)」 

 

「霊基パターン!セイバー!」

 

「勝ったぞ!勝ったぞロマン!!」

 

「座って座って!」

 

光が収まる。現れたのは

 

「どもどもー!新撰組のセイバー!新撰組のセイバーでーす!病弱でぇ、脚が速いといえばそう!謎の」

 

「沖田総司、新撰組一番隊隊長ね」

 

「こふっ!?やだーぐだぐだいべまで真名隠すんじゃないんですかー!?」

 

「TAKEUCHIィ!!」

 

ガァアン!と机を砕くギルガメッシュ

 

沖田総司?新撰組に女性なんかいたっけ?

 

「ドル箱ヒロインを描き分けられぬとは腕が鈍ったか!なぜラーメンを所望する客にソバを出す!似て非なるわたわけ!!チェンジだ!!」

 

「酷い言い様です!うわーん!」

 

「可愛い!採用!」

 

「次いこう!次!」

 

――

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛――!!!」

 

「サーヴァント、ヘラクレスね。ギリシャの大英雄よ!凄いわ!」

 

「肉達磨など呼んでないのだが・・・」

 

 

「これ大丈夫?立香くん大丈夫?」

 

「逞しい・・・採用!」

 

「次!ラストだ!」

 

ギルガメッシュが拳を握る

 

「今度こそ、今度こそだぞ・・・手に入らなくても美しいものはあるがそれはそれとしてだ・・・!」

 

「来ます!」

 

光が起こり、やがて集束する

 

「セイバー――――!!!」

 

「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した」

 

 

「・・・」

「・・・」

 

器が言葉を失っている。代わりに話そう

 

「こんにちは」

「ご丁寧に」

 

 

「マッチョ!採用!」

 

召喚は終了した。そうそうたる面々だ

 

 

「ここは楽園か!?エデンか竜宮城か、ラピュタはここにあったのか!?」

 

「最高の施設じゃないですか!ヤッター!!ずっといていいんですか!ヤッター!!」

 

「⬛⬛⬛⬛・・・」

 

「・・・信じられん・・・何かの間違いではないのか?英雄王が、協力的だと・・・!?いかな呪いをかけた!?だまされていないか!?」

 

「死ね贋作者」

 

あのとき戦ったアーチャーか。腕前は知っている。筋力も凄そうだ・・・筋力Bはありそう

 

「戦力は整ったわね!じゃあいよいよ」

 

 

「まだ終わってはおらぬわ・・・!」

 

忌々しげに呟き、波紋に手を突っ込む

 

そこには虹色に輝く符が・・・あっ

 

 

「呼んで来ぬなら引きずるまで!我の秘宝『星5確定チケット』!これを使う!!」

 

「フォウ!ファー!!(FGOプレイヤーを敵に回すぞ!)」

 

「待って!そんなに出しても育成が!」

 

「黙れ黙れ!!我が満足せねば、目当てが出ねば爆死なのだ!!――こい!セイバァー!!」

 

 

召喚サークルに虹色の符を叩き付ける。召喚が開始される

 

・・・本気で悔しがってるし、好きにしてもらう。夢はことごとく醒めて消えるが道理と知って散ってもらおう

 

「私があんなに頑張って作ったのにー!?」

 

ごめん、マリー。代わりに謝る

 

「セイバー!!テイクアウトはお前だァ!!」

 

 

虹色の光が起こり、収まる

 

 

「サーヴァント・ルーラー!お逢いできて、本当によかった!」

 

 

「――――――――」

 

――――英雄王

 

――見果てぬ夢の結末を知るがいい・・・これは、貴方が示した理だ

 

 

無銘の宣告。カルデアにて、英雄王は遂に、膝を屈した――

 

 

 

 

所望するもの

 

 

 

ジャンヌ 藁のベッドと礼拝堂

 

エミヤ 第二厨房(テーブルクロスと差別化お袋の味を知りたい方に向ける手作り料亭)

 

沖田 出番!

 

タマモキャット 野性

 

・・・野性?

 

 

 

迅速に叶えられる個室と要望

 

器は――ちょっと泣いていた




次回

「AUO!クラスチェンジ!!出でよ『怠惰を極めし王の鉄馬』――!」


「ジャンヌ!旗と盾で護られた鉄馬がこの城に!」


「はァ!?」


「凄いわ!素敵ね!ヴィマーナというの?思いきり歌っていいのね?」


「サーヴァントは全て把握しているわ。勉強したもの」


「自重してくれ王さま――!!?」


「来い、数多の竜よ。お前たちの宿敵――ジークフリートはここにいる」

「神よお救いください神よお救いください神よお救いください神よお救いください神よお救いください神よお救いください神よお救いください」

「ジャンヌさん気を確かに!!」

「ギールーーーー!!!」

「何故我がライダーなのかだと!決まっていよう!」

「我が最も――玉座に乗った王だからだ――!!!」


――願いが、ある。大切なものがある

英雄も、それは誰にでも

自分には――あるのだろうか。生まれるのだろうか


大切なものが――



第一研鑽、竜吼えるオルレアン

近日、投稿。ご期待ください



「ねぇねぇ!皆で写真とろうよ!」

「我がセンターだ!」









a、a・・・・・・

――――Aaaaaaaa――――


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第一研鑽終了 竜吼えるオルレアン 邪竜討伐 号令

お待たせしました、フランス編になります

長い、長い旅になりますが、飽きが来るまでおつきあいください!


――夢を見た

 

 

燃える都市、暗き空。焼け落ちる家屋

 

 

踏みにじられる生命、天を覆うおぞましきカタチ

 

 

未来はない、明日はない、発展はない、希望はない、進歩はない。

 

 

 

悪夢を見た、悪夢を見た、悪夢を見た。

 

 

いずれ訪れる――破滅を見た

 

あなたたちに未来はいらない

 

 

あなたたちに発展はいらない

 

 

あなたたちに希望はいらない

 

 

ただ、母の元へ、私のもとへ

 

 

 

愛している 愛している あなたたちを愛している

 

 

だから――

 

 

あるのは――――回帰の願いのみ

 

 

 

――いかないで、いかないで

 

 

⬛は謳う。破滅を謳う

 

 

 

――わたしをおいていかないで

 

 

破滅が迫る。回帰が迫る

 

 

 

もういちど もういちど

 

 

――滅ぼすべき、悪が、眼前に迫る

 

天を巡る、あたらしいカタチ

 

 

 

あざわらうせせらわらう、けたけたと価値在るものを踏みにじる

 

 

タノシイ、タノシイ、タノシイ

 

 

オモシロイ、オモシロイ、オモシロイ

 

アハハ、アハハ アハハ

 

 

 

キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

 

 

タノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイ!!

 

 

オシエテ、オシエテ

 

 

ナニガイヤナノ 

 

 

ナニガ イヤナノ?

 

 

キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

 

 

 

わたしに かえって いとしいこたち

 

謳う、謳う。母を名乗る何かが迫る

 

――⬛⬛が、滅ぼす悪が

 

 

 

Aaaaaaaa――――

 

 

――大地の、生命に。摂理を突き立てる

 

 

 

――築いた都市は、未来の礎は

 

 

そこに、終焉を迎えたのだ

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「起きて、起きてください。英雄王」

 

 

 

響く声に眼を開く

 

 

「おぉ、セイバーか・・・きたのだな、ついに我のもとに・・・」

 

 

 

「私はジャンヌです!起床時間ですよ、ブリーフィングです!しっかり起きましょう!」

 

「――チ。夢から覚めてみればセイバーもどきか。二度寝するしかあるまい。我が爆死など・・・」

 

 

「セイバーはカルデアにはオキタさんしかいません!起きましょう!」

 

 

「えぇい・・・喧しい田舎娘よ。くぁ――」

 

 

身体を起こす

 

 

――今、あまりにも。おぞましい悪夢を見たような。そんな気がした

 

 

内容は、なんだったのだ?・・・思い出せない

 

――いまはまだ、知るべきではないと。器が告げている気がした

 

 

「いよいよグランドオーダーが始まるようです!ブリーフィングルームにいきましょう!」

 

「喧しい。何故我を起こす。そんな役目をつけた覚えはないぞ」

 

「あなたは私を召喚したサーヴァント。契約は立香に譲られましたが事実は変わりませんから!さぁ、今日も頑張りましょう!」

 

「――農家の娘の朝は早い、か」

 

もやを振り払う。行かなくては

 

 

始まる。自分の旅が

 

 

始まる、未来への挑戦が

 

人理の旅が、始まる

 

「私、ジャンヌ・ダルク!英雄王の目覚まし係に立候補いたします!頑張りましょう!」

 

「却下だ」

 

「そう言わず!」

 

 

「却下だ」

 

 

「そう言わず!」

 

 

「・・・好きにするがいい・・・」

 

「はい!」

 

呆れる器。頑固な子だな・・・

 

 

 

「ご主人、しっかりな。肉球を所望ならアタシを呼べ」

 

「霊脈を見付けたらすぐに伝えたまえ、弁当を用意しておいた。しっかりな」

 

「助太刀が可能なら、すぐに参りますからね!せんべいかじって待ってますとも!」

 

「ありがとう、皆」

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛」

 

「補給物資はこっちです、ヘラクレスさん!」

 

「ありがとう、助かります!」

 

管制室は慌ただしく働く皆がごったがえしていた。

 

「みなさん、英雄王をお連れしました!」

 

 

見えたギルガメッシュに、職員一同が背筋を伸ばし、敬礼する

 

 

「「「「「おはようございます!ギルガメッシュ王!!」」」」」

 

 

「労働、大儀である」

 

 

「おはようございます、英雄王。レイシフトの準備は終わっています。後は、出立の号令を」

 

「管制は任せてくれ!甘味と睡眠はバッチリ、最高のコンディションだ!」

 

「方針のナビはロマン、サーヴァントの真名は私が看破します。あなたたちは、聖杯の確保、異変の調査を御願いしますね」

 

 

「はい、ミッション、かならず遂行します!」

 

気合いと覇気がみなぎりきっていた。総員のオーラがすさまじいことを感じ取る

 

「よい気合いだ」

 

これなら心配ない。帰る場所は大丈夫だ

 

 

「グランドオーダーのはじめの一歩だ!いいかい皆!僕達はやれる!必ずミッションを遂行する!その為の僕達だ!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「藤丸、しっかりね!」

 

 

「信じてるからな!」

 

 

「やれる!君は一人じゃない!」

 

 

「はい!」

 

 

「総員、配置について!ギル、お声を!」

 

 

発破をかけられる

 

 

――皆の視線が向けられる。英雄王に、自分に

 

 

その重圧を、不敵に笑い返す

 

 

 

「よし――総員!これより始まるは果てなき旅!貴様ら自身の明日を取り戻す、我等が歩む足跡である!」

 

檄が飛ぶ。声を受けるたび総員の顔が引き締まる

 

 

 

「貴様らに退路はなく、逃げ場もなく、安寧はない!だが――『勝ち取るべき未来』がある!!」 

 

 

英雄王の号令が、高らかに響き渡る

 

 

「現在とは絶えず回るもの!未来とは付け加えるべき織物!」

 

「そして我は――永劫不滅の英雄王!!この我がいる限り、物事に決まりはない!」

 

「当たり前の結末など、我等が消し飛ばす!!」 

 

拳を振り払う――

 

 

魂をかけた怒号が飛ぶ

 

「総員!その身命をこの旅に捧げよ!」

 

「我等が織り上げた歴史を――あるべき姿に戻すために!!!」

 

 

 

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

 

「コフィン起動、観測開始!」

 

「アンサモンプログラム!スタート!!」

 

 

「藤丸立香、行きます!」

「マシュ・キリエライト。マスターのサーヴァントとして務めを果たします!」

 

 

「ほら、ギル。君もだよ」

 

 

「うむ」

 

身体を霊体化させ、レイシフトに備える

 

 

「立香くんたちを頼むね、英雄王」

 

「貴様もな。やるべき事を為せよ」

 

 

「――オルガマリー・アニムスフィア!これより総員の指揮をとる!」

 

 

「――レイシフト!スタート!!」

 

 

――視線が細まる。ふわりと浮く感覚、吹き飛ばされる感覚

 

 

「三人とも、ご武運を!あなた方に、主の御加護を!」

 

「目標、1431年・・・フランス!!」

 

 

 

 

――そして、

 

 

人類の命運をかけた旅が、今――始まるのだ

 

 

 

――自分を待つものはなんなのだろうか

 

 

この旅で――それを掴む

 

――誇れる何かを、

 

 

・・・必ず、掴んでみせる




ペース落ちちゃうかもしれませんが、お楽しみください!


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爆走

眠れない方に


眼を開くと

 

 

そこには、広がる空と大地と

 

 

どこまでも臨める、広大な世界があった

 

 

 

「――」

 

 

圧倒される。肌をくすぐる風、土の匂い。突き抜ける青空

 

 

無限に拡がるかのような錯覚に、眼を細める

 

 

ここが、フランス・・・

 

 

「マシュ、ギル。いる?」

 

マスターも動き出した。キョロキョロと落ち着きなく回りを見ている

 

「大丈夫です、先輩。英雄王もここに」

 

「神気が薄いが、中々の眺めよ。ウルクを思い起こさせる星の景色よな。まだ無駄が少ない時代か・・・」

 

「レイシフト・・・凄い!ここから、私達の旅が始まるんだね!」

「頑張りましょう、先輩!」

 

「フォウ!(ボクもきた!)」

 

「フォウさん!?」

 

面食らうマシュ。あの綺麗なフォウが何故ここに・・・?

 

「フォウ、ファウ(ボクは本を出そうと思うんだ。カルデア大冒険日記。その為のネタ集めを現地にてしようと思ってね。ついてきた)」

 

「大丈夫なの、ロマン?」

 

『んー、問題ないはずさ。いつの間にかいたりいなかったりするのは得意技っぽいし』

 

『今更回収するのは難しいわ。マシュ、フォウを御願いね』

 

 

「解りました、マリー所長。フォウ君はこちらで」

 

「マシュ!ギル!あれを見て!」

 

 

立香が空を指差し声を上げる

 

 

――空には、巨大な光帯らしき物体が走っていた。輝くそれは、爆大な熱量を持つことが見てとれる

 

『光帯・・・ロマニ、1431年にそんなものがあった記録は?』

『勿論、ありません。あれは衛星軌道上に設置された何かの魔術行使だと予測されます』

 

『――目算で北米大陸とちょっと、か。調査班に資料を渡して、解読を進めて』

 

「なんだろ、アレ。ギルは何かわかる?」

 

「さて、な。言えることは。アレを上回る熱量は地上にあるまい」

 

「まさか・・・」

 

「仮定を、地上とするならば、な」

 

器はいつものごとく気付いているようだが、いつものごとくこちらに全貌は解らない

 

・・・アレはこの歴史には無いという、ならば。今はとりあえず放っておくしかない

 

「無駄な思考に囚われるな。足を動かせ、足を」

 

「――あぁ、先に言っておこう」

 

器が口を開く、なんだろうか

 

「我は確かにサーヴァントであり、貴様らを盛り立てる立場ではある、が。我は貴様らの旅路まで理路整然としたものにしてやるつもりはない。試練や苦難を、我の力で力づくで解決しようなどとは愚にも思うな」

 

「・・・!」

 

「油断も慢心も此度の我は棄ててはいる。が、それを発揮するのは貴様らが特異点攻略の岐路に立ったときのみだ。聖杯を見つけ、手を尽くし、帰還の目処が立ったときのみ我の全霊を開帳する」

 

「苦難を厭うな。漫然と時を過ごすな。我のことは土壇場でしか動かぬ戦艦のようなものと心得よ」

 

「我は貴様らの奮闘を査定する。口には出さんが、我が貴様らの旅路をつまらぬものと見定めた場合、我を失望させた報いとしてその首を貰う」

 

 

――器はこういっているのだ

 

『自分で考え、自分で行動するのを忘れるな。我という存在に頼るあまり困難から逃げ続ければ許さぬ』と

 

それは、全力を出せば何者も必要としない王の、戒めでもあった

 

「英雄王・・・」

 

『大丈夫よ、立香、マシュ』

 

オルガマリーが声をかける

 

『あなたたちならやれるわ。もともと英雄王なんて、いないのが当たり前なのだもの。幸運とはいえ、必須な訳じゃない』

 

『サーヴァントだけでは未来は変わらない。そこにいるあなたたちしか、未来を変えられないのは今更よ』

 

『大丈夫。私達もサポートする。英雄王に任せきりなんて無様はさせないわ』

 

 

『だから、頑張りましょう。あなたたちは私達の代表なのだから』

 

「・・・と、所長は言っているが?」

 

くく、と笑う

 

もったいぶって脅しているが、要するに『油断や慢心はするな』という注意だ

 

さくっと言えばいいものを、どうしても尊大になる英雄王に、ちょっとだけ微笑ましくなる

 

大丈夫、もしそうなりそうになったら自分が止める

 

護ってみせるとも。未来ある二人を

 

 

たとえ、英雄王からでもだ

 

 

「・・・解った。旅でいろんな事を感じて、いろんな事を考えろって事だね」

 

「はい、先輩も私も、全力を尽くします」

 

「――それでよい。我は貴様らに期待している」

 

ポン、と頭に手をおく

 

「我の臣下たるもの、飽きさせぬよう励め。よいな、マシュ、マスター」

 

 

「「はい!」」

 

力強くうなずく二人。うん、かわいい

 

「よい返事だ!では、ツーリングの開幕といこう!」

 

ニヤリと笑い黄金の物体を取り出す

 

 

黄金のボディ、みがきあげられた装甲、サイドカーを完備したそれは

 

派手な――バイクであった

 

『バイク!?なにする気だい!?』

 

「こんなだだっ広い空間を歩行でいけるか!ヴィマーナは温存しておくとして、我がかつて行われた市街レースにて乗りこなした至高の鉄馬!」

 

 

「名を、『栄華極めし王の鉄馬』よ!」

 

「バイク・・・!?」

 

「サイドカーもある!三人乗り!?」

 

「マシュはサイドカー、マスターは我の背に座れ!貴様らに我の極まりしドラテクを見せてやろう!」

 

『早くも甘やかしてどうする!大層な高説はどうした英雄王!』

 

「あまやかしではない!我が乗りたいから乗るのだ!さぁ早く乗り込め!風になるぞぅ!」

 

「マシュ、乗ろ乗ろ!」

「は、はい!」

 

二人を乗せ、エンジンに火を入れる

 

 

――そういえば、カルデアにサーキット作って乗り回したなぁ。これ

 

「フォウッ!(いにしゃるG・・・古いかなこのネタ)」

 

「マスター、マシュ!振り落とされるなよ?死ぬからな!」

 

「うぇえ!?」 

 

「は、はい!フォウさんは私が!」

 

 

「掴まったな!では行くぞ――英雄王!クラスチェンジ!」 

 

アクセルを回すと同時に、フルパワーで解放された大型マシンが唸りをあげエーテルをフル噴射し、瞬時に110㎞をマークし爆走を開始する

 

重苦しい鎧から、どこから見繕ったのかライダースーツを着込み完全なバイカーとして生まれ変わっている

 

「わ――――――――!!!!」

 

「は、速いです!凄く速いです英雄王――!!」

 

「ファ――――――!!!(スピードの向こう側へー!)」

 

ぐぃんぐぃんと加速し速度をあげ、200㎞をマークし爆走を続けるギルギルマシン

 

「一先ず現地の民草が見えるまで飛ばすぞ!我のライディングテクを甘く見るな!」

 

『英雄王貴様!カルデアに姿が見えんと思えばこんなことに精を出していたのか!』

 

(かち)などやっていられるか!行軍とは速さが全てだ!時は金なり、だと?逆だたわけ!金は時を買うものだ!!」

 

「ギ――――ル――――!!」

 

「はーやーいーでーすー!!」

 

 

『うそだろ!?本当にライダーにクラスが変わってる!そんな無茶が許されるのか!?』

 

『許すしかないわよ。英雄王だもの』

 

『所長が王様に毒された――!!くそぅ!へたれな所長になんてことを!』

 

 

「ふははそれでこそだ!我がいる限り、平穏と退屈など無縁と知れ!」

 

――当たる風がきもちいい。雲が遥か後ろに飛びさっていくのが痛快だ

 

何も遮るものの無いバイクツーリングは、突き抜ける清涼感を無銘に与えてくれた

 

 

『ライダーになれるほどのライディングテクニック!貴様カルデアに来て何にはまっていた!?』

 

「なにもかもだ!!フハハハハハハ――!!」

 

 

上機嫌な器が駆る黄金のマシンは、声高らかにフランスの地を爆走していった――

 

 

バイクツーリング、癖になりそうだ・・・




無銘が速くも順応し始めてきました


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戯言

英雄王のジョークが冴え渡る!


拝聴せよ!これが王の言霊である!!


『もう少し先に、現地の兵と見受けられる反応がある。接触してみるかい?』

 

 

「うむ、如何にするマスター?我としては現地にて人と話すのは旅の醍醐味故、オススメだぞ?」

 

『分かった。――じゃあ』

 

 

こほん、とロマンが咳払う

 

 

『スピード落としてあげて!頼むから!!二人とも喋れてないから!』

 

死んじゃうから!と涙目になるロマンの嘆願

 

「むぅ。これからだというのに・・・仕方あるまい、小石を撥ね飛ばすのも後味が悪いしな」

 

 

アクセルを緩め、パラを展開し速度を緩めていく

 

 

やがて停止し、二人を下ろす

 

 

未だに胸が高鳴る。バイクはこんなに素敵な乗り物であったのか・・・ギルギルマシン、大切にしよう

 

「堪能したか?これが我の、王の行軍というものだ。光栄に思えよ」

 

「は、はい――凄かったです!身体中を痛いくらい風が打ち付けて・・・気持ちよかったです!」

 

「お尻が割れた・・・」

 

『大丈夫、もともとよ立香』

 

「そうじゃなくて!」

 

「ふははは、移動は基本これで行くぞ?我は愉快な王!よし、現地の民と接触してみよ」

 

「だ、大丈夫かな?」

 

フランス語など習ってはいないだろう事をマスターは心配しているのだろう。もちろん自分は話せない。どこの国にいたのか、それすらも不明瞭なのだから役にはたてない

 

 

『ごめんなさい、帰ってきたら勉強ね』

 

「そんなぁ!」

 

 

「何、言語の壁に阻まれるのもまた旅の醍醐味よ。心配はあるまい。異種でもないのだ、疎通はできよう。表情で、手振りで、魂で物事を伝えよ。それが交流というヤツだ」

 

魂で、物事を・・・

 

英雄王の言葉は揺るぎない自我がある。けして、旅人はマシュとマスターだけではないのだ

 

「円滑な人付き合いに、コミュ力は必須と知れ。あぁ言っておくが我に友は一人しかおらん。何せ自分をけして曲げぬ。我を曲げねば友は作れぬからな。ははは」

 

『苦労しただろうなぁ唯一の友』

 

「・・・解りました、先輩。ここは私に任せてください」

 

「マシュ?」

 

「マシュ・キリエライト!カルデアの交流大使に立候補します!」

 

『よい気合いだ。言葉には力がある。基本、踏みにじられる哀しい葉っぱでもあるのだナ。ショッギョムッジョ。キャットは哀しい』

 

『喋って動きが止まる馬鹿は斬りやすいですからね。ともあれがんばですよ!』

 

「はい!」

 

「よし行け親善大使よ、間違っても私は悪くないなどと少し前のマリーのような駄々はこねるなよ?」

 

『ギル!』

 

「ははは、笑顔で流せ、粋なユーモアだ」

 

 

もうすっかり打ち解けている。弾む会話が心地よい

 

 

「では行きます!」

 

 

肩をいからせ兵士に迫るマシュ。お手並み拝見だ、頑張れマシュ

 

「大丈夫かな・・・?」

 

 

 

「・・・・・・」

 

「ヘーイ」

 

「!?」

 

 

「エクスキューズミー。私達は怪しいものではありません。私達の話をしましょう。天文台の端からあなたたちに――」

 

「変な奴等がいるぞ――!!!」

 

 

結論から言わせて貰うと、あっさり囲まれてしまった

 

「申し訳ありません!失敗しました!」

 

「マシュのばかぁー!」

 

「そこは、ハロー?ナイストゥーミートゥ?であろうが未熟者め・・・」

 

『フランス!ここフランスだから!』

 

兵士は怯えながらも迎撃の体勢をとっている。どうも何かと戦ったような疲弊ぶりだ

 

「ドクター!何かこの場を収める手段はありますか!?コミュニケーションの妙を教授ください!」

 

『知るもんか!ぼっちだからね!小粋なジョークでも話してみよう!この帽子はドイツんだ!みたいな!』

 

『ロマニ、黙って』

 

『ごめんなさい所長!』

 

「さて、殺気だっているがどうする?塵に還すか?」

 

サーヴァントではない現地人、皆殺しにするのは容易いだろうが・・・

 

――自分は、なるべく殺生はしたくない。生きている人間を手にかける覚悟もできてはいないのもあるが・・・

 

生命が持つ、輝きのようなものを・・・安易に摘み取るのは、『惜しい』気がするのだ

 

 

『特異点は切り離された世界、殺めてもパラドックスはおきないだろうけど・・・』

 

『マシュ、立香。無力化を最優先にしなさい。あなたたちが背負うのは人理の行方だけでいい、無用な重荷はいらないわ』

 

 

「所長・・・」

 

『戦闘が避けられないなら、峰打ちで。無茶な注文だけど、少なくとも手が血で染まることはないはずよ』

 

『聞いたかい英雄王!殺しちゃダメだからね!』

 

「解っている。――よい選択だ」

 

旅路の色が決まる。何故だかそんな予感がした

 

 

この選択は、尊いものだと・・・感じ入るものが胸にあった

 

 

「――ならば、この場は我が収めよう」

 

「ギル?」

 

 

ざっ、と一歩踏み出す

 

・・・嫌な予感がする。なんだかしょうもない予感が

 

 

「我に刃を向ける無礼、特に許す。我は通りすがりの英雄王、大抵の無礼は水に流そう」

 

兵士に語りかける

 

「言葉など通じずとも伝わる衝撃がある。しかと聴け、王の言葉に耳を傾けよ!」

 

 

「ゴクリ・・・」

「先輩、後ろに」

 

――王が話をするとしよう

 

「――どこぞの国の出身の暗殺者が英雄になった。山の翁とかいう侘しい教団の頭領がアサシンの代表となった」

 

「ハサンといったか。小賢しい暗殺を繰り返すネズミではあったがそれなりに賢しかった。その小手先で名を上げはしたが奴等にはどうしても苦手なものがあった」

 

 

アサシンの苦手なもの・・・?凄いぞ、そんなものがあるのか・・・!

 

 

『苦手なもの・・・?』

 

うむ、と頷き王が続ける

 

 

「それは――財政管理だ。刈ろうが刈ろうが財政は火の車。あまりのその粗末な手腕にあっさりと山の翁の家計は破産と相成った――」

 

グッ、と辺りを見下ろす、渾身の表情で

 

「――ハサンだけに、破産」 

 

 

『・・・・・・・・・』

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

――恥ずかしい

 

顔から火が出そうだ。見るな、見ないでくれ

 

そんな、可哀想なものを見るような目で、自分を見ないでください――!!

 

 

「はははははは!ハサンだけに破産だ!解るか?ハサンに破産をかけた至高のジョークだ!ハサンとは最も不遇なサーヴァントの称号、せめて笑い者にしてやるのが供養というものだ!はははははは!」

 

 

「・・・帰ろうぜ」

 

「ああ、戦いってむなしいな・・・」

 

兵士が武器を納め、すごすごと引き返していく

 

 

「・・・無力化に、成功しました」

 

「うん、一応追いかけようか・・なにか分かるかもだし・・・」

 

『そうしてちょうだい・・・』

 

『神は残酷だなぁ・・・』

 

 

皆、テンションが駄々下がりしている。兵士も行ってしまった

 

「フッ、ジョークにおいても我は無敵!我の欠点の無さがこわい!ハサン、だけに破産・・・!フハハハハハハ!」

 

――ジョークをいいかけたら、死ぬ気でとめてみようかと。無銘は決意を新たにしたのだった




?「山の翁が最不遇――よくぞ宣った」


「首を出せ」


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聖女

軽い気持ちでじぃじに喧嘩を売ってしまいました

お許しください!お許しください!


「――なんだここは。廃棄された小屋か?」

 

 

 

兵士を追った先で辿り着いた、攻められほぼ廃墟にされた砦だったものを見て、器が所感をこぼす

 

 

爪でえぐられたような、炎で焼かれたような、牙でかじられたような凄惨極まる有り様に、魂は言葉を失った

 

 

「アレであろう?三匹の家畜が狼から身を護るために作ったみすぼらしい納屋の再現か?」

 

 

 

『砦、だと思うよ?まともなのは外壁くらいで、中身はひどい有り様だけど』

 

 

『負傷兵ばかりじゃない・・・立香、そこに兵士がもどってきたのね?』

 

「間違いないよ。話を聞いてみるね」

 

「良いか、ボンジュールだぞ。ボンジュール」

 

フランスに則った挨拶を繰り返す。立香は頷き、兵士に歩み寄る

 

 

「・・・敵ではないのか・・・?」

 

「はい、教えてください。ここで何があったのですか?」

 

 

「・・・甦ったんだ」

 

「甦った?」

 

「あぁ、聖女、ジャンヌ・ダルクが甦ったんだよ」

 

「竜の魔女として――悪魔と契約して!」

 

『えっ!?』

 

「・・・田舎娘が、悪魔と契約しただと?」

 

 

『本当なのですか!?』

 

驚きの声を、カルデアのジャンヌがあげることになったのは無理からぬ話か

 

――

 

襲い掛かってきたガイコツを、マシュとマスターの練習にあてがわせ、バイクに寄りかかり、ジャンヌのプロフィールを確かめる

 

『こちらが私のマテリアルです、英雄王』

 

「うむ」

 

――ジャンヌ・ダルク。田舎の娘でありながら、その敬虔な魂に神の声を授かり、オルレアンを救うため旗を持ち、フランスに救世主として立ち上がった世界に名を知らしめた旗の聖女

 

その勇猛果敢な奮戦と、与えられた啓示により。僅か一年という速さでオルレアンを解放した奇蹟を起こせし乙女

 

 

しかし―ジャンヌの尊厳は、敵国に捕らわれ、ありとあらゆる手段を以て貶められた

 

 

賠償金惜しさに味方から裏切られ

 

「私は神の声を聞いていない」その声を引き出す為に、ありとあらゆる冒涜と凌辱が行われた

 

 

精神的にも貶され

 

肉体的にも凌辱され

 

 

その最期は、土に還る事すら赦されず。火炙りに処され――その尊厳が取り戻されるのは、それから400年後だという

 

「――貴様、よくぞルーラーなどになったな」

 

 

今の言葉は、自分の主観だ・・・口をついてでた言葉だ

 

信じられない。こんな報われない人生があるだろうか。護ったものに裏切られ、敵に売り渡され、無念のうちに火に焼かれ

 

 

真っ当な人間なら―――世を憎み、怨み、憎悪の果てに至るのが普通なのでは?

 

「いや、むしろよく英霊になれたものよ。その仕打ちを鑑みれば、怨霊か・・・よくて復讐者が妥当ではないか、田舎娘」

 

 

『復讐者?何故です?』

 

尋ねれば不思議そうにジャンヌは返す

 

『復讐者は、誰かを憎むクラスです。私は、誰も恨んでいませんよ?』

 

「――――真か」

 

『はい!』

 

 

――同じ、人間か?

 

いや、同じ人間・・・だったのか?この少女は

 

 

これだけのことをされて、なにも恨んでいない・・・?

 

――背筋の寒さをごまかすように。マテリアルを折り畳む

 

「そうか――頑丈なのだな貴様は。後で飴をやろう」

 

『ありがとうございます!』

 

「・・・となると、魔女として復活したと宣う田舎娘は何者だ?偽物だとして、民を騙せるものか?」

 

『分かりません!』

 

「少しは頭を使え・・・」

 

どうやら、マスターの人柄に寄せられたか快活さが増している気がする

 

呆れていると、戦闘を終わらせたマシュとマスターが帰還する

 

 

「ただいまー!」

 

「む、戻ったか。どうだ?勘は掴めたか?」

 

「はい、盾、峰打ちの極意・・・見えた気がします」

 

「ガイコツに峰打ちも変な感じだけどね。何を話してたの?」

 

『世間話ですよ、マスター』

 

「へー・・・」

 

「あんたたち、よくやるなぁ・・・」

唖然とする兵士をからかうように声かける

 

「なんだ貴様ら、娘二人に楽に下せる輩に手間取っていたか?」

 

――違和感がある。ガイコツや獣にこんな凄まじい破壊がおこなえるのか・・・?

 

 

「いや、アレくらいなら俺達でも相手できる・・・もっとヤバいヤツは別にいるんだ」

 

「ヤバい、ヤツとは・・・?」

 

――その答えは、空から響く咆哮にて思い至る

 

ギャアアァアァアァアァ!!!

 

耳をつんざく咆哮。震える空気、降りかかる殺気

 

 

「!!来たぞ!アレだ!アレがフランスを滅茶苦茶にしたドラゴンだ!」

 

『ドラゴンだって!?』

 

『ロマニ、映像を回して!――これは、ワイバーン!?』

 

「――竜の幼生、か。なるほど、斥候としては申し分ない」

 

ワイバーン。ドラゴン程ではないが、強靭な肉体と牙と爪は確かに、一般兵には手に追えないだろう

 

「マシュ!ギル!戦闘準備!」

 

『えぇ、それでいいわ!紛れもなく敵性エネミー!1431年のフランスにいるはずのない存在だもの!』

 

「了解しました、マスター!英雄王、よろしいですか!」

 

「戦闘などにはならん」

 

クイ、と指を動かす

 

 

「――――!!!??」

 

音速を超える速さで撃ち放たれた財宝が、ワイバーンの頭蓋を粉砕する

 

「マシュとマスターの休息の邪魔だ、駄竜め」

 

帰ってきたばかりのマシュたちを、休ませてあげたい

 

――こちらも、戦闘に慣れなくては。

 

二人を後ろに下げる

 

「ギル・・・」

 

「しばし休め。露払いは我がやろう」

 

 

『ワイバーン!来るぞ!数は15体!』

 

ロマンに捕捉を任せ、相対する

 

「さて、肩慣らしといくか。魔力を回せ、少しでよい」

 

敵は竜、セイバーに使った宝具で問題ないだろう

 

 

王の財宝の精度をあげるために、狙い撃つとしよう

 

まず三つ

 

「そら」

 

三本の指を動かし、軌道を確認して放つ

 

 

避ける間も無く直撃し、ワイバーンは墜落し絶命する

 

 

――次、六体

 

顎を動かし、追尾をかけた宝具を射出し撃ち放つ

 

 

逃げ切れず羽根を穿たれ、頭蓋を砕かれ、腹を裂かれ墜ちていくワイバーン。

 

『対空すごいな!ワイバーンがカトンボみたいに墜ちていくぞ!?』

 

「つまらん。遊び相手にもならんな。――よし、いいことを思い付いたぞ」

 

残る四体を迅速に殺害し、あえて一体を残す

 

「ギャアアァアァアァアァ!」

 

破れかぶれになったのか、一直線に飛来してくるワイバーン

 

「危ない!ギル!!」

 

「今援護に――!!」

 

「無用だ」

 

 

その牙が、爪が器を傷つけることはなかった

 

寸前に――目と鼻の先に迫るワイバーンを。余すことなく串刺しにしたからだ

 

「知能も足らぬ駄竜めが、せめて散り際にて華を持たせてやろうとしたのだが――」

 

飛び散る鮮血、うなだれるワイバーン

 

 

「所詮は犬畜生。戦うための雑魚であったか」

 

 

――ヒヤヒヤした。近距離に潜り込まれた際の対処を試してみたが胆を冷やした。大丈夫という信頼はあるが、怖いものは怖い

 

 

『戦闘終了!やるねぇ英雄王!』

 

「当然だ。――おい」

 

「は、はい!?」

兵士に声をかける

 

「なるべく形を保って仕留めた。――野戦の備えがあるか?」

 

「え・・・?火ってことか?」

 

「焼いて食え。暫くは保とう。精力をつけて回復しろ」

 

「い、いいのか!?」

 

「我に二言はない」

 

「ギル・・・!」

 

『気前がいいなぁ、本当に!』

 

フッ、と笑う器

 

 

どうせ襲ってきたんだ、侵略の対価は身体で払ってもらう

 

――少しは負傷兵の糧になればいいんだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

「気を付けていけよー!旅の方ー!」

 

兵士たちに見送られ、砦を後にする

 

 

「いっぱいお礼を言われたね、マシュ」

 

「まさか、薬まで渡すなんて・・・貴方の財は、本当に底無しなのですね・・・」

 

『エリクサーだろう?かなり高価だがいいのかい?』

 

 

「構わぬ、どうせエンディングまで腐らせる長物だ。活力を持たせればそれなりに対抗できよう」

 

「フォウ、フォウ(ラストエリクサーかぁ・・・)」

 

 

「さて、休憩は終わりだ。鉄馬に乗れ、拠点を探すぞ」

 

「わーい!ツーリングだー!」

 

『もう少しで霊脈がつかめるわ。それまで周辺の警戒を・・・』

 

 

「よし、風になるとするか」

 

進行を決意した一行に

 

 

「お待ちください!」

 

立ちはだかる者がいた

 

「・・・え!?」

 

「嘘・・・!?」

 

「――――カルデアから迷い出たか?」

 

そこにいたのは・・・

 

 

「お願いがあります!私に・・・力を貸してください!」

 

――旗の聖女、ジャンヌ・ダルクその人だった




神エイムであれば、多数展開する必要すらない


的確に急所を狙う王の財宝という暴力


ジャンヌ「何事もポジティブ!ありがとうの精神!さぁ皆さん、神と運営を称えましょう!」


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対話

ジャンヌ「行きます!どうか主のご加護を!」

ジャンヌ「大丈夫!痛いと思わなければいたくありません!」


「我が同胞を、護りたまえ!」

「私が戦闘で頑張ります!大丈夫!私は大丈夫ですから!」



ジャンぬ「うるさーい!!!なんで二人いるのよ!!」


「わ、わ、わわわぁ――――!!」

 

200㎞/hをマークし、霊脈を感知した地点まで『栄華極めし王の鉄馬』が爆走する

 

新たにサイドカーを追加し、ジャンヌ・ダルクを乗せる。総勢四人の大所帯だがバイクは宝具、なんの問題もない

 

「なんだ貴様の情けない声は!召喚の折に知識はあらかた受け取っていよう!バイクごときに何を驚く!それでも裁定者のクラスか!」

 

 

「わ、私は諸事情でサーヴァントとしての自覚があまり――!」

 

「喋るな!舌を噛むぞ!!」

 

「話し掛けてきたのはそちらでは――!?早馬だってこんな速度では――!!」

 

 

「ジャンヌさん、お気を確かに!」

 

「慣れだよ慣れ!慣れればなんとかなる!」

 

 

「貴女方は強い方たちなのですね――!!私は、意識が、飛びそう、で――!」 

 

「意識を保て、眠りに落ちるな!ここで眠るなら振り落とされるのみだぞ――!」

 

「そんなぁ――――!!!」

 

 

一直線に、平野を駆け抜けていくギルギルマシン

 

聖女の叫びすらも、マシンは置き去りにしていく

 

 

「そういえばそうであった!医師!」

 

『なんだい!というか観測が物凄く大変なんだけど!加減してくれないかな!?』

 

「霊脈に着き次第、何故ここが特異点なのかこやつらにきっちりと教えておけ!それと、補給物資の準備もな!」

 

 

『その言い方、何かやることがあるのかい!?』

 

 

「些末事だ!我は席をはずすからな!」

 

そうだ、何故だか解らないが。やらなければいけないといった思いがある

 

とある『下準備』と、器は考えているのだが――

 

『その速度なら10分もしないわ!ギル、気を付けて!』

 

「当然だ!ライダーたる所以を侮るな――!」

 

『ところで今更だけど、なんで君はライダーの適性を持ってるのかな!?』

 

「愚問を投げるな!我が何故ライダーたるかだと!?決まっていよう!」

 

 

アクセルを、フルスロットルで展開する。いよいよ最高速に達する黄金の鉄馬

 

 

「我が最も――玉座に乗った王だからだ――――!!!」

 

『なんだそれ――――!!?』

 

 

なるほど、玉座に座ることをライダーに見立てたのか。玉座に乗るライダー・・・

 

なるほど、ならこの器が、ライダーになれない筈はないな――

 

沈む夕陽より速く、ギルギルマシンは爆走し、そのまま森へ

 

 

搭載されていた自衛兵器で霊脈に群がるエネミーを一掃し、無事レイラインを確保したのであったとさ

 

 

 

 

意識混濁していたジャンヌの頬を軽く叩き起こし、マシュとマスターにこれからどうするかを話し合わせるよう指示をだし、召喚サークルを確立させた

 

これでカルデアのサーヴァントと補給物資が届くようになり、少しは安心できる環境、拠点を確立させた

 

 

支給された物資は最高級のもの。寝袋、携帯式シャワールーム、エミヤが出向き手料理を振る舞うなどの待遇だ

 

・・・目を白黒させるジャンヌが可愛かったと思ったのは、内緒にしておく

 

 

さて自分はと言うと、皆から離れた場所にて、いい感じの『地脈』を探していた

 

「ふむ・・・この辺りが適当、か」

 

 

『何をしてるんだい?エミヤ君の作った料理はいらないのかな?』

 

「我の分はマスターとマシュに回せ。少しでも身を休ませよ。先は長いぞ」

 

 

黄金の波紋に手を伸ばし、とある容器を手に取る

 

 

『――ってそれ聖杯じゃないか!?』

 

「喧しい。耳元で騒ぐな。案ずるな『まだ』これは起動せぬ」

 

その杯を、地面に叩き込む

 

 

『ちょ、なにしてるんだい本当に』

 

「これは『受容器』だ。聖杯が産み出した特異点を吸い上げるためのな」

 

『吸い上げるため・・・?』

 

「あぁ、特異点を修正した暁には、この場所は消え去るであろう。喩えるならば、中身が溢れるのだ」

 

消え去る特異点、それは総て無かったことになるのだろうか

 

――否、必ず残るものはある。それを手にいれる

 

 

自分の器と魂が『備えよ』と告げるのだ。――何かに、致命的な何かに対して

 

 

何かは――まだ、見えないが

 

 

 

「それを、この器で総て受け止めるのだ。特異点を構築していた総てを魔力に変換してな」

 

 

つまり、こぼれ落ちるリソースを受け止める受け皿を設置したのだ。

 

 

「成功すれば、極大の魔術炉心が出来上がる。中身を並々と注がれた聖杯が出来上がるのだ。満たされた、我の全力を賄える『貯蓄』を作り出す」

 

 

 

――それは、誰に向けて放たれる故のものなのか

 

『君、溜め込むとかできたのか!』

 

自分も驚きだ。英雄王はやりくり上手なのか・・・

 

 

「当然だ。解放は貯蓄あってのもの。出費は惜しまぬが、我は基本溜め込む男と知れ」

 

 

『へぇ・・・君とあってから、僕は驚いてばかりだ』

 

「であろう。凡俗に王の真意は見抜けまい。我はこの世で最も気ままな王だ!」

 

『いちいち否定するのもあれだし、素直に受け取っておくよ。気ままな王様、少し休んだらどうだい?働き詰めじゃないかな?』

 

ロマンの優しさが染みる。いい人だな、わざわざ連絡してくれるなんて

 

 

「何、貴様らはよくやっている。ならば我も責務を果たすまで。――職員に仮眠をとらせよ。貴様もだ。過労は残すな、遺恨になるぞ」

 

『大丈夫さ。さっきまで居眠りしてたから!』

 

「よし、深夜の整備は貴様がやれ」

 

『即決!?深夜手当ては出るかな・・・?』

 

「マリーに直談判するのだな」

 

『出なさそうだチクショウ!いいよ!こしあんつぶあんがあれば僕は幸せだからね!』

 

「細やかな幸せよな」

 

――気楽な掛け合いが、耳に心地いい

 

 

――夜が、更けっていった

 

――

 

 

 

――皆が寝静まる夜、どうしても尋ねたい事があった

 

 

「――田舎娘」

 

ジャンヌを呼び出す

 

 

『はい、こんばんは。夜更かしですか?英雄王』

 

「あぁ、寝る前に一つ問うておきたい事がある」

 

――すまない、英雄王、個人的な用に付き合わせてしまい

 

 

それでも、聞きたいことがあったのだ。どうしても

 

 

「――何故」

 

 

『?』

 

「何故貴様は、何も恨まなかったのだ?」

 

どうしても聞きたかった

 

裏切られた、蔑まれた、見捨てられた

 

貶された、辱しめられた、火にかけられた

 

 

かつての味方に、護りたいと願ったものに見捨てられ、それでも祈りを離さなかった

 

何がそうさせた?何が君を突き動かした?

 

 

――特異点のジャンヌは、彼女達のジャンヌだ。自分が邪魔してはいけない

 

だから――カルデアのジャンヌに問う

 

「答えよ」

 

『なんだ、そんな事ですか』

 

こほん、と咳払いして

 

『私が選び、私が望んだ人生だからです』

 

 

「――――」

 

――――

 

『始まりは啓示でしたが、そこから先は破滅も含めて私が選んだ道、私が望んだ結末』

 

『誰かを救うために旗を持ち、誰かを救うために戦った』

 

『終わりが、綺麗でないとしても。私はそれで良かった』

 

『護りたかったフランスが。遥か未来に繋がったのだから』

 

――フランスを護るために立ち上がった

 

そのフランスが、最新の未来にまで名を残した

 

 

だからいいと、ジャンヌは言う。護りたいものを、未来へと繋げることができたのだから、と

 

――例え、それが――自らの屍の果ての結果だとしても

 

「――――呆れた頑強ぶりよ。貴様は城塞か何かか」

 

『そうですか?貴方もきっと、できますよ?』

 

「――?」

 

『見つけてください。貴方の護りたいものを』

 

『――貴方の総てをかけて、護りたいものを』

 

――・・・・・・・・・

 

「はっ、我に下らん問いを投げるな田舎娘。・・・いや、ジャンヌといったか」

 

『ジャンヌ・ダルクです!ジャンヌ・ダルク!』

 

「喧しい!話は終わりだ、寝ろ!」

 

「召喚サークルは設置した、貴様は手軽に使える絶対防御として酷使する故覚悟しておけ!」

 

『望むところです!お休みなさい!』

 

ブツリ、と通信が切れる

 

 

「全く。喧しい娘よ・・・育ちが知れるわ」

 

「――さて、寝るか」

 

 

・・・最後の言葉は

 

 

――魂に、告げられたような気がした



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豪華

王の遊楽が、とある因果を紡ぎました


『英雄王!朝ですよ!出立のお時間です!さぁ頑張りましょう!』

 

 

「ンン――」

 

快活な声に瞼を開ける。辺りにはうっすらと朝の日差しが木々の間から差し込んでいた

 

 

「今は何時だ、ジャンヌ」

 

『はい、六時半ですね!皆さん起きて、慌ただしく仕事を始めていますよ』

 

快活な声、ジャンヌだ。本当に目覚ましをしてくれるとは

 

 

「・・・そうか。凡俗はこのような早朝からもあくせく働かなければたち行かんのだな。マメな事よ」

 

ハンモックより身体を起こす。そのまま黄金の波紋に回収し、歯ブラシセットで歯を磨く

 

 

「・・・よもや貴様、本当に我を毎日叩き起こす気か?」

 

『そのつもりですが?「助かるよ!寝起きなんてデリケートな時間を対応するなんてとんでもない!殺されたくないから是非お願いする!」とロマンさんに頼まれましたから!』

 

「あの甘味医師め・・・面倒事をルーラーめに押し付けるとは」

 

気持ちは解る。自分だって寝起きの悪さで起こしにいったら処断なんて考えたくもない

 

そもそも王の眠りを外的要因で妨げる、なんて考えもつかないだろうけれど・・・本来の英雄王なら、どうなるかは予想は何となくつくのが恐い

 

「はぁ・・・まぁこれも集団生活の宿業か。修学旅行でテンションの高いバカどもに叩き起こされるのが御約束であろうからな・・・」

 

『ルーラー?真名で呼んではくれないのですか?』

 

「は?」

 

聞き直す。

 

――そういえば、昨日はうっかりジャンヌと呼んでしまったのを思い出す

 

『良いのですよ?田舎の小娘、よりジャンヌのほうがいざというとき呼びやすいでしょう?』

 

「うつけか貴様。真名で呼ぶなぞなんのメリットがある。いざというときとはなんだ」

 

『田舎の小娘、は八文字、ジャンヌは四文字!半分も短縮されますね!私が入り用になった際には手軽に呼びやすくなるはずです!旗を振ってほしい時とかに!』

 

「貴様のマスターは立香であろうが。第一我にそんな気安い振る舞いは――」

 

『嫌ですか?』

 

――ぐ。と言いよどむ。言葉飾りを気にせず本質を突かれると非常にやりづらい

 

閉口してしまう器。かわりに話す事にする

 

「・・・まぁ、田舎の小娘、とよんであちら側とこちら側を混乱させるのも上手くはない。戦場にて漫才を繰り広げるのは致命的な隙になるやも知れぬしな。まぁ今の我は隙など潰しにいくが」

 

 

「・・・よし、共に歩く向こうをルーラー、甲斐甲斐しい貴様をジャンヌと分ける。カルデアに召喚されし英霊だ。この際高らかに真名を謳うがよい」

 

うん、こちらとしてもジャンヌが呼びやすい。田舎の小娘、なんて早口だと噛みそうだ

 

――話を聞いてくれたお礼もかねて、向こうが不快で無いならいいだろう

 

 

『はい、英雄王!宜しくお願いいたします!頑張りましょうね!』

 

ブツリ、と通信が切れる

 

「・・・叩き起こしたらすぐに下がる、か・・・農家の娘は忙しないのだな。我的にはどうでもよいが」

 

 

 

「ギル、おはよう!」

 

「うむ。よく眠れたか?疲労を残してはおるまいな?」

 

二人に声をかける。目を合わせて笑う二人

 

「うん!持ち運びカプセルルームのベッドでぐっすり!」

 

「なんだか変な感じです。地面の上で寝るものと思っていたのですが」

 

「地べたに臥伏など大した休息にはならぬ。我がいる以上、みすぼらしい真似は許さん」

 

二人とも顔に疲労は見られない。しっかりと眠れたようだ。良かった

 

 

「これぞホワイトキング、部下を思いやる理想のキングなのだナ。ゴールドなのにホワイトとはこれ如何に?ホレ、フレンチなトーストだ」

 

キャットに焼きたてのフレンチを出される。香ばしくいい匂いが鼻をつく

 

「・・・貴様が作ったと?」

 

「然り、夜のドンファン、朝のキャット。おはようからお休みまであなたの胃袋をがっしり仕留めるがモットーなのだな。食えゴージャス」

 

「・・・ゴージャス?」

 

器がその単語に、ピクリと反応する

 

 

「うむ、豪華絢爛、カルデアを背負ってたつフラッシュなキングに与えられるレアクラスなのだ。気に召したか?ブルジョワがよいか?」

 

 

「・・・ゴージャス、ゴージャスか・・・フハハ、よい響きだ!よいぞ、特別にそのパン、口に運んでやろう!」

 

上機嫌になる器。気に入ったのだろうか、ゴージャス

 

 

「本当に美味しいよ!」

 

「はい、キャットさん意外な一面です!」

 

「キャットさん、すみませんがおかわりを・・・」

 

口々に褒める三人

 

この猫、・・・女子力が高いのか

 

 

「ふっ、思い上がったな珍獣。下賤の連中に好評を得たからといって王に通じるとは思わぬこと――」

 

パクり、と一口食べてみた

 

 

――

 

 

「どうだ?ウマイか?それともウマイか?」

 

「・・・やるではないか・・・珍獣」

 

「ニャハハ、褒めるな照れる。昨日料理を拒否されたと赤マントが凹んでいたからな。ゴールドの料理は合作である」

 

「贋作にしては上出来だ。及第点をやろう。・・・なるほど、どうせなら世話を任せるような英霊どもを呼び寄せよとは思ったが・・・見た目では測れぬものよ」

 

サーヴァントは食事が必要ないとはいうが、自分はまだ食事を切り捨てるほど慣れてはいない、ありがたく、いただこう

 

「よし。珍獣、貴様にはウルクの味付けを伝授してやろう。足らぬ頭で記憶せよ」

 

「うむ、キャットは博識である。一日も保てぬ記憶野に詰め込むぞ」

 

 

「・・・そこはバーサーカーなのだな」

 

 

 

三人で方針を話し合い、まずは情報収集をすることを決めたらしい。

 

『オルレアンにいきなりの突撃はよくないわ。あちらの戦力が把握できていないし、聖杯を誰が所持しているかも解らない。ルーラーの真名看破と探知も機能していないみたいだし』

 

オルガマリーが概要を説明する

 

『ジャンヌが処刑されて間もない時期だから、そちらのジャンヌはサーヴァントとしての自覚が薄いらしい。新人のような感覚なんだってさ』

 

「なるほど、合点がいった。サーヴァントにあるまじき狼狽えようはそれか」

 

 

聞けば、聖杯戦争を経ずに誰かに聖杯が渡る、『勝者を決していないのに聖杯が誰かの手にある』というバグを修正するため、いくつかのサーヴァントがカウンターで召喚されているらしい

 

「すみません、英雄王。貴方のお力がありながら遠回りな作戦を立てることをお許しください」

 

「慎重な運びだ。それでよい。身の程に合った選択は恥ではない。急がば回れというやつよ」

 

 

――そこで、まずは情報収集に専念するらしい。近場の町、ラ・シャリテに向かう方針のようだ

 

 

「幸い土地勘は失われていません。あの鉄馬ならば、迅速な進軍が可能です。どうか英雄王、その威光を今一度私達に与えてくださいますか?」

 

嘆願するジャンヌ。サーヴァントとしての仕組みは頭にいれたつもりだが・・・こちらのジャンヌは、落ち着いた気品を強く感じる

 

「やはり人を変えるは環境か・・・」

 

「はい?」

 

「独り言だ、忘れよ。マスターもマシュもよいな?」

 

「うん!」

「もちろんです。楽に逃げるな、が私達のモットーですから。地道なことを積み上げていきましょう」

 

『こちらにも異論はないわ』

『ギルギルマシンがあれば20分でつける距離だ。すぐに出発しよう!』

 

 

「よし、それでは出立だ!寝惚けた頭を叩き起こす最高の疾走を、このゴージャスな王が見せてやろう!」

 

 

――気に入ったのか、ゴージャス?

 

 

――

 

 

「フハハ、今日も我の愛馬は快調なようだな!流石は我、整備メンテも一流よ!」

 

「主よ、どうか我等の疾走をお護りください。唸りをあげて爆走する我等が道行きを見守りください。事故なき様に、無事に目的を果たせるように――我等を御護りください」

 

 

両手を合わせて祈りをささげるジャンヌ

 

「フォウ!(もう対応したのか!さすがルーラーだ、身体はあんなに柔らかいのに)」

 

『フォウ君、今よこしまな事を考えなかった?』

 

「フォウ!キュルル(特に張り出た胸は柔らかかった。マシュに勝るとも劣らない柔らかさ、大きさだったよ。マシュがマシュマロのような沈みこむ柔らかさだとすれば、ジャンヌは張りのある餅だね。立香はしなやかさに秀でているからノーカンとして、皆思っているはずだよ?そんな異性を惹き付ける素敵なボディで裁定者は無理があるって――)」

 

「何を言ってるのですかフォウさん!?」

 

 

「フハハハハハ!そら見えてきたぞ!小さい町だが、存分に情報を集めるがよい!我は手伝わんがな!ゴージャスに待つとしよう!」

 

――やっぱり気に入ったのか、ゴージャス

 

 

――これは、もしもの話だが

 

 

あと少し遅ければ、ラ・シャリテは無事ではすまなかった

 

あと少し行軍が遅ければ、ラ・シャリテは火に焼かれていた

 

 

――王の行軍が、図らずとも

 

1つの町の存続を、繋いだのである




「ボクはおっぱいには一家言あるよ?おっぱいソムリエと呼んでもいいよ?(フォウ!フォウ!キュー!)」


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定義

感想がフォウくんで埋め尽くされてるの本当笑う


聖杯くん、フォウくん。美しいものはここにあるよ

雨で憂鬱、そんな貴方に僅かでも楽しい時間を

提供はギルガメッシュファンがお送りいたします


「ふぅ・・・」

 

 

ラ・シャリテに到着し、バイクを入り口に停車させる

 

 

「我はここで待つ。精々有益な情報を集めよ。脚で稼げ。よいな」

 

 

「「はい!」」

 

「私もここで待ちます。・・・その、今の私は、混乱を招きますから」

 

「分かった!待ってて!」

 

「マスターの警護はお任せください、英雄王」

 

「うむ、では行け。何かあったら我を呼べ」

 

 

マシュの手を引き、街にかけてゆくマスター

 

 

それはさながら、姉妹のようで・・・ほほえましく感じた

 

 

「フ、人の存続を懸けた戦いと言えど、愉悦を忘れてはならぬからな。笑顔は大事よ」

 

フゥ、と気を抜き、空を見上げる

 

 

 

高い空――白い雲。見渡すには幾星霜かかる果てしない蒼穹

 

――心地よい

 

 

土の匂い。踏みしめる感触。感じる強固さ

 

 

――懐かしい

 

 

どこまでも広がる世界。自ら踏みしめ、眺める景色

 

 

バイクにもたれ掛かり、目を細める

 

 

「見飽きた風景とはいえ、多少は見映えが違うものよな」

 

 

――――世界を全身で感じることが心地いい

 

 

髪を撫でる風、藁の匂い、町の喧騒

 

 

獣の鳴き声、鳥のさえずり、川のせせらぎ、森のざわめき

 

 

――その総てが、自分の魂に。得難い経験となって蓄積されていく

 

 

手を伸ばせば掴めそうなそれを、静かに噛み締める

 

 

――転生したうち、初めてみた景色は焼け落ちた町。右も左も解らぬ旅路の始まりだったが

 

 

こんな景色が見れたなら――転生も、悪くないと思える

 

 

「――旅人なのですね、貴方も」

 

 

隣にいたジャンヌの言葉に、器は振り向くことなく耳を傾ける

 

「貴方は、英雄王。なのに、どうしてでしょう――その在り方がどこか、初々しく思えます」

 

「我が初々しいだと――そうさな」

 

よりふかくもたれ掛かり、財宝から酒を取り出す

 

 

「まさか、我が子守りをするなど思いもよらなんだ・・・クク、随分と手間のかかる連中だが」

 

「子守り、ですか?」

 

 

「そうだ。――我は人類を見定めるものだ」

 

 

グイ、と酒を呷る

 

 

その味は、苦く、甘く。蕩けるような芳醇な香りを以て魂を揺らす

 

「この星を守護するのが我の役目。故に我は観測者に徹し、手を出すつもりはなかったのだが――」

 

 

飲むか?とジャンヌに尋ねるが、丁重に辞退するジャンヌ

 

「我の守護の形は安寧ではない。人間どもを吹き飛ばし諫める嵐の如くだ。人間どもは、試練なくば価値を示さぬ生き物、発破をかけねば動かぬ怠け者だ」

 

「呆れ果てるばかりよな。2000年の時を経てなお、怠惰を極めし人間どもは価値を示せずにいる。――裁定の時は未だ訪れぬのだ」

 

 

グラスを揺らし、空を仰ぐ

 

 

「価値は示さず、しかし価値のあるものを産み出す者共、その道筋を、紡がれる織物を眺めるのが我の愉しみである」

 

――その言葉は、何者に語る言葉か

 

 

「――が、それら総てを横合いから焼き払った者がいる」

 

グラスを持つ手に、力が入る

 

 

「人理焼却・・・奴等から聞いていよう。とある雑種によって、人は諸とも焼き払われたのだ」

 

「・・・はい。人類は、カルデアにいる人員だけだと」

 

 

「あぁ。――我は気に食わぬ」

 

 

ビシリ、と、グラスを握る手に力が入る

 

 

「我は人間がどのような結末に至ろうがどうでもよい。繁栄を貪るもよし。滅びるのもそれはそれでよい」

 

「だが――――『滅ぼされる』事だけは認めぬ。地上にある総てのものを、我以外の者が裁量するのは断じて認めぬ」

 

「どのようなものであろうと、人類を滅ぼす根底にあるものが『愛』であろうとだ」

 

――愛

 

愛が、人間を滅ぼす?

 

 

「そう、人類に仇なすものは悪意ではない。憎しみなどに害されるは精々一人のみだ」

 

 

「人類を滅ぼすもの――それは『人類をよりよくしよう』というものに他ならぬのだ」

 

 

――愛

 

 

愛・・・前世には無かった、求めなかった感情

 

 

誰かを想う気持ちが、世界を滅ぼす・・・?

 

 

「――・・・・・・」

 

「意味が解らぬ、といった顔だな。それでよい。我の観るものなど、誰にも解らぬさ」

 

ははは、と笑う英雄王。その眼は、遥か遠くを見通すかのように細められる

 

 

「事実として、我は我の庭を荒らす狼藉ものを罰するために奴等に力を貸している。というわけだ。簡単な話よな」

 

飲み干し。カランと器を投げ捨てる

 

「幸い――カルデアの連中は紛れもなく『良いもの』であった。レフとかいう雑種めが、我の間引きの手間を省いたのでな」

 

「――世界を救う大役に、我に支配されるに足る資格を持つもの――地獄を生き延びた者共を害する『雑種』はいらぬ。その点で言えば、カルデアの者たちは見処があり、無き者は一掃された。それだけの話よ」

 

 

「・・・あなたは、マスターやマシュ、カルデアの皆様を好ましく思っているのですね」

 

 

「まだまだひよっこだがな。我があれこれ見てやるのは『何故か機嫌がいい』からだ」

 

 

器は笑う。こんな機会は二度とない、とも

 

 

「足掻く姿は見応えがある。それが人理を巡る旅であろうと、己を磨く旅であろうとな」

 

「我は自らの愉しみには出資を惜しまぬ性質でな。我を愉しませるかぎり、投資、出費は惜しまぬさ」

 

愉快そうに、バイクに寝転がるギルガメッシュ

 

 

――なんとなく、理解する

 

 

人間を見守り、人間を見定め、時には自らが守護する

 

その果てに、輝かしい未来があると信じて

 

 

――この王は

 

傲岸不遜なこの王は

 

人間を、愛しているのだ。すっごくわかりにくいけど

 

――魂が、またこの器に教えられた気がした

 

 

「自らの愉しみのために、人間を救う――確かに貴方は、遥か高みにいるのですね」

 

「幻滅したか?貴様らの原典たる我が人でなしと気付き」

 

「いいえ――素直じゃないな、と」

 

「・・・やはり田舎娘には難しい話題であったか。恋愛もせず旗を振り筋力Bに至った女など」

 

「なっ――!」

 

顔を真っ赤にするジャンヌ

 

 

――独り言というが

 

 

器は、教えてくれた気がするのだ

 

魂の、己の在り方を

 

 

――まずは、自分を定めよ

 

 

総てはそれからだ――

 

そう、言われた気がした

 

 

「そら、暇潰しは終わりだ」

 

クイ、と顎をさす器

 

 

「招かれざる客が来たようだぞ?」

 

「――あれは!」

 

 

空を埋め尽くすワイバーン

 

 

先頭を飛翔する五つの陰

 

 

 

中心には――黒き、聖女がたたずんでいた

 



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ゴージャス

「――責務を果たすために、軍を率いてきてみれば・・・ク、フフッ、フフフ」

 

 

町の広場にて、サーヴァントらしき者たちが降り立つ。上空には無数のワイバーン。先の砦とは比べ物にならぬ量だ。

 

 

「何事だ」

 

 

『あぁよかった!間に合った王様!サーヴァントだ!五騎もいる!どうしよう!?』

 

『マシュ、立香を護って!一瞬でも気を抜いてはダメよ!』

 

「はい・・・!」

 

 

「――――」

 

 

白き聖女、黒き聖女が相対する。

 

 

まるで鏡写しだ。湛える表情はまるで異なるが

 

 

挫けぬ光を灯す白

 

けして消えぬ憎悪を灯す黒

 

 

竜を描く旗

 

神を称える旗

 

その総てが――コインの裏表のようで。

 

 

「ッ――あはははははは!なんてこと!誰か、誰か私に水をかけて!ヤバいの、死んでしまうわ!私!」

 

 

「・・・」

 

「だって、だって滑稽なのだもの!何、アレ?ネズミ?ミミズ?ムシケラ?あはははははは!あまりにもちっぽけで笑っちゃう!」

 

 

けらけらと笑い続ける黒き聖女。その声音は間違いなく、先程聞いていたジャンヌのものだ

 

――だが

 

 

「ッ、く。フハハハハハハハハハハ!!!」

 

嘲笑の笑いを、高らかな笑いがかきけす。

 

 

「――なんですか、そこのサーヴァント。黙りなさい。耳障りな笑いを止めなさい」

 

 

鬱陶しげに呟く黒い聖女に構わず、笑い続ける器

 

「これが笑わずにいられるかたわけ!傑作だ!これが竜の魔女だと!?数多の同伴者に連れられる童にしか見れぬわ!待て、失せよ!死ぬ!笑い死ぬ!ハハハハハ!ハハハハハ!!」

 

 

「ぎ、ギルストップ!」

「どうどうです!」

 

突如として笑いだした器――どうやら、絵面が受けたらしい。裁定者のツボは解らない。

 

 

「――そう。アンタだったのね。ジルが言ってた、鉄馬で走る目障りな金色って言うのは」

 

「なんだ、保護者もいるのか。父親はどうした?赤っ恥をかかされて泣きつく胸板が見当たらぬが?」

 

「クス・・・」

 

「フッ」 

 

鉄のドレスを纏うサーヴァントと、豪奢なサーヴァントが笑みを溢す。

 

 

「何が可笑しい――!!」

 

「ごめんなさい、あまりにもあちらが愉快そうだから」

 

「うむ、言動にて失した。許せ」

 

「チ――。まぁいいです。もともと、貴方達をおびき寄せるつもりでしたから」

 

 

「私達を――?」

 

 

「――貴方は何者ですか。竜の魔女・・・」

「ハァ?――この期に及んでまだそんな問いを投げるの?私に?私はジャンヌダルク。旗の聖女――」 

 

「貴方は聖女ではない!私がそうではないように!」

 

 

(マスター、召喚の準備をしておけ。マシュは防衛だ)

 

(ギル・・・!)

 

(貴様らの命題は、生き残ることだ。今は生存に総てを尽くせ・・・マリー)

 

『解っています。あのサーヴァント達の情報が、もう少しあれば・・・』 

 

(よい、旗持ちが時間を稼ごう)

 

 

 

「えぇ――私は聖女ではない。ジャンヌダルクでありながら、奇跡を信じはしない」

 

 

黒き旗を高らかに掲げる、黒きジャンヌ。

 

 

「私は魔女――竜の魔女!ワイバーンを、ドラゴンを、サーヴァントを駆り、このフランスを焦土へと変える魔女――!!」            

 

「竜の、魔女・・・!」

 

 

「あなたはジャンヌなの!?違うの!?どっちなの!?」

 

 

「あら――貴方がマスターね?この残りカスの聖女、そしてデミ・サーヴァント――そこの目障りな金色の」

 

 

「答えて!」

 

「吐き気がするほど愚かですね。手を上げて指されるのは学校だけですよ?」

 

「貴様は学校なんぞ通っていまい」

 

 

「――あぁ、目障り、耳障り。本当に胸糞の悪いサーヴァント!何よ、ギルギルマシンとか、ふざけてるの!?ワイバーンとタメを張れる速さとか、なに!?どんなデタラメ!?バカじゃないの!?」

 

「吼えるな吼えるな。手を上げて指差されるのは学校だけなのであろう?」

 

「我と語らいたければ請え、頭を垂れよ。その無礼にて頸刑に処してやろう」

 

器の挑発が続く。ジャンヌを名乗る魔女の顔が憤怒に染まっていく

 

 

――大分なれた。次の展開に備える

 

 

「あぁ――すまぬな。読み書きもできぬ無学の娘よ。復讐の魔女ごっこなどを楽しんでいた時分に我は空気を読んでおらなかったな」

 

――空を飛ぶ、飛竜の数を計算する

 

「――――」

 

「その紋様は手製か?よほど丁寧に教え込まれたと見える。アレか?机にかじりついて懸命にデザインしていたか?率直に言わせてもらえば無いな、微塵もない。救世の旗などに並ぶべくもない見るも惨めな愚連隊の旗よ。センスがない者の横好き程、見るに堪えんものはない」

 

 

(うわぁ・・・酷い煽りだ・・・愉悦の笑みだ・・・)

 

(先輩、あちらのジャンヌさん、肩が震えだしました・・・)

 

(怒ってる――怒ってるよ・・・!)

 

「――――黙って聴いていれば・・・好き放題宣いますね――サーヴァントの分際で――!!」

 

「そのサーヴァントの言葉にて激す貴様はなんだ?道化か?農民から、聖女から道化にクラスチェンジか?――あぁ」

 

見下ろすように。最後のだめ押しを見舞う。

 

 

「『救世から逃げ出した』その様が、その姿か?ようやく、救うより滅ぼす方が楽と知ったか?ハハハハハ!よし、上出来だ!白い方よりマシになったな!飴をやろうかそらやるぞ?あぁ、貴様は贅沢とは無縁であったなぁ!侘しい娘よ!言うに事欠いて蜥蜴の魔女――とはなァ!!」

 

ブチり、と。

 

 

何かが切れる音がした。

 

「――良いでしょう――気が変わりました!」

 

 

バッと旗を掲げる。

 

「そのウザったい口――この町もろとも焼き払ってくれる――――!!!」

 

「いけません!まだ町には人が――!!」

 

 

「焼き尽くせ、ワイバーン!!食らい尽くせ!!あらゆる生命を!!殺せ――――価値ある総てを!!」

 

 

振り下ろされる号令――だが

 

 

――もう、遅い。

 

 

「――!?」

 

 

 

空中に待機していたワイバーンは、その本領を発揮する前に『総てが』撃ち落とされたのだ

 

 

『ギル――!!』

 

「うつけが。我が何故、何の益にもならぬ言葉を交わしたと思う」

 

 

そうだ。時間を稼いでいたのは、空中のワイバーン『総て』に狙いを定めるためだ

 

数秒、隙ができるが―――彼女が実直で律儀な性格で助かった。

 

悠々と竜殺しの原典を選定し、一息に一斉発射

 

砦の時とは違い、血や肉が飛び散っては困るので速度を重視し、当たった場所を『削り取る』宝具をチョイスした。

 

肉を削り取る音速の宝具など、財の中にはいくらでもある。

 

 

――民達を殺させはしない

 

フランスを滅ぼさせはしない

 

そこに生きる人たちもまた・・・人間なのだから。

 

 

「――!!」

 

 

「そら、雑兵は一掃したぞ。将を出さねば貴様の首を飛ばすぞ?」

 

 

「――――金ぴかァ――――――!!!!」

 

 

怒りのままに旗を振り下ろす魔女。どうやら本番らしい

 

 

「バーサーク・ランサー!!バーサーク・アサシンカーミラ!!バーサーク・ライダー!バーサーク・セイバー!!」

 

「殺せ――奴等を八つ裂きにしなさい――!!」

 

 

殺気立つ相手陣営

 

始まる。サーヴァント戦だ。

 

 

「田舎娘。マシュ。マスターを護れ。貴様らは盾だ、務めを果たせ」

 

「は、はい!」

「解りました!」

 

 

「マリーの苦労が水の泡とはな。よい自爆芸よ」

 

黄金の波紋から、白銀のハルバードを取り出す

 

 

「さぁ――凡英霊ども。来るがよい。クラス・ゴージャスのサーヴァント――英雄王・ギルガメッシュ」

 

気を引き締める。

 

 

「興の乗った王の偉容、存分に見せてやろう――!!」



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奮闘

戦闘はどうしても長引きます、スミマセン


バーサーク・・・狂化を付加し、凶暴の化身となったサーヴァント達が襲い来る

 

「マリー、サーヴァントの真名を探れ。適当に時間を稼いでやる」

 

『解りました。ご武運を!全力を尽くします!』

 

 

槍、剣、波動。そして奇蹟

 

 

極まり、至高の域にまで昇華された無双の技が、全て自分に向けられる

 

 

ハルバードで剣をいなす

 

 

『そのサーヴァントの真名はまだ、情報が足りません・・・!』

 

「そうか。こちらで対応する。検索を続けよ、白百合がごとき騎士という点で検索を絞れ」

 

間合いを離し、剣先を放す

 

絶え間なく襲い来る槍、変化する身体が、無数の杭が器を贄と襲い来る

 

「血を求める――!!」

 

「血生臭い事よな」

 

ハルバードを薙ぎ払い、無造作に無力化する

 

『ヴラド三世――ワラキアの地方領主。凄絶な貴族への粛清と敵国に課した串刺しの逸話をもち、『吸血鬼』のモデルとされた、『悪魔』です』

 

「怪物か。取るに足らん、その手の武具はありあまっている。対処は容易い」

 

槍とハルバード、火花を散らしぶつかり合う

 

「ほう――我が委細を語るか、我を怪物と罵るか」

 

「事実であろう、血に狂った吸血鬼のモデルよ」

 

「――貴様」

 

視界外から襲い来る加虐の弾をハルバードを反転させ振り回し、総てを撃ち落とす 

 

「貴方のような存在は御呼びではなくてよ。私の潤いの邪魔をしないでくださる?」

 

 

『吸血鬼、カーミラ。真名をエリザベート・バートリー。ハンガリーにて数多の少女を拷問の果てに殺害し血を欲した、血の伯爵婦人』

 

「女の生き血を啜る殺人鬼――成る程、血に酔った者まで英霊扱いとはな。粗製乱造にも程がある」

 

ハルバードで斬りかかる。所持している棺桶に阻まれはしたが。力は大して強くは無いようだ

 

「――野蛮ね――!」

 

「女は男に組伏せられるが摂理、つまらぬ意地を張るとは下らぬ女よ」

 

「何ですって――!」

 

背中に飛来する光弾を、防弾の原典の壁で跳ね返す

 

「・・・――」

 

「十字の杖――聖人の類いか。キリスト教の関係者であろうよ。奴等が崇めし者に杖を賜った者など一人しかおるまい」

 

『聖マルタ――』

 

「滑稽よな。聖人が魔女に顎で使われようとは。貴様の信奉する神も――あぁ、貴様らの神は弾圧がお家芸であったな」

 

「――ッチ。何ですって――?」

 

全員をまとめて薙ぎ払い、一息に吹き飛ばす

 

 

「圧しきれぬとは――英雄王の名は伊達ではないか」

 

「苛立たしい、本当に苛立たしいわ。その眼、吐き気がする――まるで蛇のよう。目障りだわ・・・!」

 

 

「――」

 

「・・・っち・・・」

 

 

「――情報の開示はこんなものか。手柄だぞ、マリー」

 

 

『いえ、全員の全貌は、独力ではわかりませんでした・・・』

 

いや、充分だ。ありがとう、マリー

 

 

これだけの情報――敵の真名をセイバー以外は掴んだ

 

 

――様子見は終わりだ

 

まだ、仕留める気は無い。あくまで決戦はこちらの全力を束ねてからだ

 

 

ただ――街を護るための戦いだ

 

 

――始めるとしよう

 

 

「我の流儀は知っているか」

 

『え?』

 

 

「言っていなかったな――戦闘は効率よく。消費は後腐れなくだ」

 

 

波紋を展開する

 

 

「さぁ――次はこちらの番だ――!」

 

 

 

「おぉおぉおぉお!!!」

 

 

憎悪と憤怒を形にした乱打が、盾を打ち据える

 

 

「くうぅうぅ!!」

 

「マシュ!」

 

一撃が苛烈で、重い。一歩一歩と後ずさる。盾の向こうが業火に猛る

 

一歩でも避ければ、背中のマスターが焼き尽くされてしまう――!!

 

「死ね、死ね、死ね死ね死ねェ!!」

 

狂乱のままに叩き付けられる旗。吐き出される憤怒

 

「殺す、殺す!あの金ぴか――!殺してやる‼まずはマスターから、焼き尽くしてやる――!!!」

 

「マシュっ!」

 

「大、丈夫です――!マスターは、私が――!」

 

「はぁあぁあ!!」

 

「――!!」

 

マシュの盾から飛び出し、振るわれる聖なる旗

 

 

輝き潰えぬ証の旗――白きジャンヌが憎悪を阻む

 

 

「づぅぅうぅうぅう!!」

「あぁあぁあぁあぁ!!」

 

 

つばぜり合う旗と旗。白と黒、聖女と魔女――

 

「邪魔をするな!!オマエなんてどうでもいい――!!」

「マスターは、やらせない――!!」

 

「やぁあぁあ!!!」

 

転機を見付けたマシュが突撃し、黒ジャンヌを突き飛ばす

 

「邪魔だぁあぁあぁあ!!!」

 

吹き放たれる紅蓮の業火。辺り一帯を焼き尽くす魂の具象足る炎がマシュとジャンヌを包み込む――!

 

「焼かれろ、燃えろ――塵になれッ!!」

 

「マスター!!」

 

 

「――令呪よ!マシュとジャンヌを守って――!!」

 

マスターの右手が、赤く輝き光る

 

 

「死ねェエェエ――ッ!!!!」

 

 

 

「――ジャンヌさん!!」

「はい!なんとしても!!」

 

楯と旗、霊基を強化されマスターの前に立ち、暗黒の爆炎を遮り、主を守護する

 

 

「はぁあぁあぁあ――!!」

「やぁあぁあぁあぁあ!!」

 

「無駄なことを――!!無駄な足掻きを――!!」

 

 

炎が――更に勢いを増していく。いよいよ以て破滅をもたらさんとする鏖殺の凶炎――!

 

 

「「――――!!」」 

 

 

――やられる――!!!

 

 

「――来て!!『ジャンヌ・ダルク』!!」

 

空間が青く光り、魔術回路がカルデアに接続される

 

 

顕れるのは――

 

 

「招集を此処に承りました!カルデア所属・ジャンヌ・ダルク!」

 

 

「二人を助けて――!!」

 

「はい――!我が旗よ、我が同胞を護りたまえ――!」

 

 

焔に飛び込み、高らかに旗を掲げる

 

 

 

「『我が神は此処にありて――』!!」

 

旗が光輝く

 

 

此処に奇跡を

 

 

此処にありし同胞を、あらゆる障害から庇護せし旗の輝きを

 

「――馬鹿な――!!?」

 

――かつて前線にて兵を鼓舞し、士気を高め、武具に祝福を与えた偽りなき奇蹟

 

その逸話の具現――築かれし安全圏――!

 

「マシュ!――ジャンヌ――!!」

 

「「「はぁああぁああぁあ――――!!!!」」」

 

二つの旗と、一つの盾がマスターだけでなく

 

――街そのものも守護せしめる――!

 

 

――

 

敵が己より多ければ如何にする?

 

「ぬ、ぅう――!!」

 

敵を上回る財を用意すればよい

 

 

己より強い者がいれば如何にする?

 

「くぅっ・・・!!」

 

相手が苦手とする財を用意すればよい

 

 

己が技量が劣るなら如何にする?

 

「くっ!」

「この・・・!」

 

――多寡を覆す用心と、圧倒的な質量で押し潰せばよい――!

 

 

ギルガメッシュが攻勢に移った途端に、四騎のサーヴァントは反撃すら許されぬまま防戦一方を余儀無くされていた

 

己を捕捉した波紋から無数の『致死の武器』が飛来してくる。一撃当たれば霊基を砕かれる最悪の相性の武具達が

 

洗礼されし聖なる剣が

 

騎士を葬る刎頸の鎌が

 

邪悪を裁く至聖の槍が

 

神を冒涜する呪詛の弓が

 

――過たず飛来する。一撃もその身に被弾は許されない。当たるときが絶命の刻。霊核を砕かれ、現世より退出する時だ

 

一撃たりとも被弾は許されぬ死の雨が、バーサークサーヴァントを襲い続ける

 

「どうした?たかだか一人十の宝具も開帳しておらんぞ?上手くかわさぬか」

 

 

こちらも攻撃を緩めない。対応に追われる隙を見逃しはしない

 

「こちらは何もせぬとでも思ったか――!!」

 

 

ハルバードを縦横無尽に振り回し、徹底的にランサーとアサシンを切り裂いて行く

 

距離を放つセイバーとライダーには砲門を向け、近付けぬよう徹底的に牽制する

 

連携を寸断された敵など烏合の衆だ。恐れるに足りない

 

――ならば、念入りに戦闘不能に追い込むのみだ

 

 

ランサーの右手を吹き飛ばす

 

 

「ぐぬっ――!!」

 

アサシンの仮面が砕かれる

 

「っち――!!」

 

 

セイバーとライダーは回避に手一杯だ

 

 

「「――!!」」

 

多対一など、最早なんのハンデですらない

 

 

「ふはははは――!!蹂躙するとはこういう事よ!!」

――――容赦はしない。なんとしても退いてもらう

 

――この戦場は、最早完全にギルガメッシュが支配していた――

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・はぁ・・・!」

「っ・・・!」

 

肩で息をするマシュとジャンヌ

 

「大丈夫!?」

 

マスターは、無事だった。令呪を使用し、限界まで守護を高まらせたのが功を奏した

 

「――お疲れさまでした、皆さん!」

 

 

カルデアに帰還するジャンヌ

 

ちらり、と、ギルガメッシュを見やりながら

 

「彼も、大丈夫なようですね」

 

微笑んで、消滅していった

 

「・・・まさかもう一人召喚できたなんて・・・全く。全く以て不愉快です」

 

ガン、と旗を突き立て吐き捨てる黒き魔女

 

「・・・興が削がれました。こんな街――どうでもいいわ」

 

ワイバーンを呼び出し、跳躍し騎乗する

 

「――あなたたちの惨めな健闘に、嘲笑を。よく頑張りました。あの金ぴかだけのようですね、厄介なのは」

 

 

大空へと飛翔するワイバーン

 

 

「――さようなら・・・・虚仮にしてくれた礼は、必ず返してやる――!!」

 

 

そのまま、姿が見えなくなるまで・・・時間はかからなかった

 

 

――

 

「あちらも終わったようだな」

 

 

霊基をズタズタにした頃合いに、魔女ジャンヌの撤退を感じとる

 

「そら、敗走だぞ、尻尾を巻いて逃げるがよい。それとも――ここで無駄に死ぬか?」

 

 

「――情けをかけるか、下郎・・・!」

 

「無様に遁走せよ。そして小娘に伝えるのだな」

 

「『貴様の育ての親』に慰めてもらえ、とな」

 

「――この屈辱・・・忘れぬぞ・・・!」

 

「赦さないわ・・・必ず、貴方のマスターを糧にしてあげるから――」

 

次々と霊体化にて消えていくサーヴァント

 

・・・無事に、戦闘を完遂したようだ

 

 

『いやぁ!信じられない!本当に4騎に退かないなんて!』

 

『お疲れさまでした、英雄王・・・本当に』

 

「肩慣らしだ、案ずるな。・・・それよりも」

 

 

「おーい!ギルー!」

「英雄王ー!」

 

 

「――褒めるなら、奴等を褒めてやるがいい」

 

 

――初戦は、無事に乗りきった

 

胸に、安堵と――僅かな高揚があった

 

 

 

 

 

「――素敵、素敵!なんて素敵なのでしょう!まるでおとぎ話の勇者のよう!」

「一人滅茶苦茶なやつがいるなぁ・・・本当に会うのかい?」

 

「もちろん!お話ししたいわ!仲良くしたいわ!」

 

「だって――私の宝を、護ってくれたのだもの!」



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歯噛

ジル・ド・レェ・メンタル・ケア


「ジル――!!」

 

 

オルレアンの居城、帰還を果たしたジャンヌは声を張り上げジルを呼び出す

 

 

「はっ!ジル・ド・レェめはここに」

 

 

「苛立つわ、腹が立つ!腸が煮えくり返って焼けただれてしまいそう!!なんとかしなさいジル!私のこの昂りをなんとかして!!」

 

 

猛り狂うジャンヌ。それを見てジルの巨大な眼は涙を浮かべる

 

 

「なんと痛ましい姿――過多極まる華美の黄金を目の当たりにして黒き崇高な輝きを汚されてしまうとは――」

 

「あの金ぴか、あの金ぴか、あの金ぴか――!!よくも、よくも私の掲げた旗を馬鹿にしたわね――!」

 

 

「渾身の自負があったあの竜の旗を・・・!!私が記したあの象徴をよくも――!!」

 

 

辺り一帯に炎が舞い上がる。ジャンヌを被う火炎はうねりとなって肥大する

 

「贅沢したことがない――救世から逃げた――白い方より偉いですって――!!」

 

「ジャンヌ、どうかお気を静められよ・・・」

 

「るッさい!!」

「ホアッ!?」

ドガ、と腹に蹴りを食らわせるジャンヌ。もんどりうって倒れるジル

 

 

「おぉ・・・憎悪と屈辱にまみれた悲痛なる一撃・・・このジル・ド・レェ・・・魂に刻みました・・・」

 

「気持ちの悪いことを言わないで!!あぁ、もう・・・もう!!」

 

ツカツカと部屋を一周しながら叫び回る

 

「私は負けてない!!私は逃げてない!!私は贅沢なんか必要ない!!私は、私は、私は――!!」

 

 

「あぁ、ジャンヌ」

 

 

起き上がり、ジルはそっと肩に手を置き、幼児に諭すように語りかける

 

「よろしいのです。心ない罵倒は柳のように流すことが重要なのです。真に受けていては如何な魂も砕けましょう。嵐の際、折れずに済むのは大木ではなくオジギソウなのです」

 

「でも、それじゃ私の気が収まらない――!!」

 

「良いのです、ジャンヌ。怒りを忘れることも鎮める必要もない」

 

「ゆっくりと噛み締め、臓腑に行き渡らせるのです。受けた屈辱は薪となり、与えられた罵倒は憤怒となりて貴方の輝きを称えましょう。よろしいか、ジャンヌ。貴方は竜の魔女・・・万物を憎み、滅ぼす事を赦されたもうた存在。思うがままに振る舞われるがよろしい。あなたが受けた理不尽はうたかたの夢。深呼吸をなさい。さぁ、一、二、三・・・」

 

 

「・・・・・・そうね」

 

 

言われた通りに、落ち着きを取り戻すジャンヌ

 

 

「私は誰とも会わなかった。鬱陶しい金ぴかも、増えた私もすべて夢。ですね、ジル」

 

「左様にてございます。さぁ、今宵もつかれましたでしょう。寝室にて御休みあれ。このジルはいつでも御側におりますれば」

 

「・・・・・・・・・・・・解ったわ、眠る。お休み、ジル」 

 

 

「良き、夢を。ジャンヌ――」

 

 

 

「あら、眠っちゃったかしら、魔女様は」

 

バーサーク・ライダーが現れたのは、それから数分の事だった

 

 

「ジャンヌは煽られ真っ赤になったお顔と魂を静めにセイラムへと旅立ちました。して、何か用命ですかな?」

 

「あぁ――伝言があったのと進言」

 

「ほう?」

 

「『育ての親に慰めてもらえ』ですって」

 

 

「――、――」

 

ジルが固まる。ピタリ、とあらゆる動きが停止する

 

 

「・・・何よ、どうしたの?」

 

「・・・いえ、何も。些末な事です。言葉は確かに伝えましょう」 

 

「して、進言とは?」

 

 

「あぁ。――あいつらの追撃は、私にやらせてくれるかしら」

 

「なんと。かのマスター達を貴方が仕留めると?」

 

「バーサーク・ランサーとバーサーク・アサシンは霊基を存続できるギリギリまで痛め付けられたわ。復帰には時間がかかると思う」

 

「それに――目障りでしょう?あいつら。特にあの、趣味の悪い金色は」

 

 

「――それは確かに」

 

ギョロり、と、深淵に覗かれし瞳がライダーを見据える

 

「ジャンヌのメンタルは見る影もなくご傷心。今の我等に軽快に動ける方はあなたとセイバーだけ・・・ワイバーンも補充しなくてはなりません」

 

「――やってもらえますかな?バーサーク・ライダー殿」

 

「・・・任せてちょうだい」 

 

「必ず・・・言わなきゃいけないことがあるものね」

 

 

 

 

「まぁ!なんてこと!こんなに空が広くって、お月様がこんなに近くにあるなんて!本当に絵本の世界に入り込んだみたい!」

 

謎の少女、マリーと名乗る少女と男性二人が同行を申し出てきたのが少し前

 

 

 

「嵐のような王様に、オルレアンの奇跡、ジャンヌ・ダルク!それに小さく素敵なおふたかた!私の話を聞いてはもらえませんか?」

 

「む、知己か?」

 

「はじめまして、私はマリー!あなたたちとたくさんお話ししたいと思いましたの!つもるお話は、あなた方の秘密の場所で行いたいの。私のわがままを聞いてくださらないかしら?」

 

「僕はアマデウス。とりあえず僕らは君達の敵じゃあない。怪しい身分だがそれだけは断言しよう。こっちはクズ、あっちは褒め殺しが上手な人たらしなんだけどね」

 

「ひどいわアマデウス!人たらしなんて言い方、私は皆が大好きなだけなのに!」

 

 

「また珍妙な輩が出てきたぞマスター。貴様に判断は一任する。つれていくか?」

 

「敵じゃないなら、いいと思う!」 

 

「決まりだな」

 

「ありがとう!どこかアマデウスな感じがする嵐の王様!私、あなたのファンになってしまいましたの!ご一緒できて嬉しいわ!」

 

「我のカリスマが怖いな。我には后がいるのだがな。ははは!よし!善はいそげだ、出立するぞ!」

 

――無銘知ってる。それはイマジナリなんとかって言うんだって事を

 

 

 

 

「いい加減所帯が増えてきて鉄馬も定員超過ゆえな。真の力は封印しつつ、我のもう一つの脚を見せてやろう!」

 

 

空中――ワイバーンのいない領空を飛来する、近未来のデザイン意匠を為す黄金の船

 

 

「鉄馬の改造が間に合わぬ故、顔見せだけしてやろう。しかと見よ!これこそがゴージャスのクラスたる黄金の船――ヴィマーナである!」

 

ヴィマーナ。思考の速さで駆け抜け、エーテルを噴射し空を自在に駆けるという船のようだ

 

ギルギルマシンでギル、マシュ、ジャンヌ、そして謎の二人を乗せることは流石に無理だったので、代わりに出した船がこれのようだ

 

「ヴィマーナ――なんて素敵なお名前かしら!でも・・・ねぇねぇ英雄王様、まさか・・・もっともっと素敵なものをお持ちなの?このきらきらしたお舟も、まさか貴方の宝石箱の中身ほんの少しでしかないのかしら?」

 

「無論だ!我の財に限界はない!」

 

 

「まぁ・・・!私、もっともっと貴方の宝物を見てみたいわ!」

 

「マリー、止めたまえ。この方は限界のないアレなやつだから」

 

「アレなんて失礼ではなくて?アマデウス?きちんと、王様と呼んで差し上げなくては無礼でしてよ?」

 

「よい、特に許す!貴様の声は耳に心地よいからな!」

 

「お、僕も王様に認められたかな?やっぱり持ってるヤツはもってるんだなぁ」

 

「飛んでるー!」

「はい、先輩!地上が遠いです!」

 

 

「あなたたちは・・・」

 

「つもる話は、降りてからしましょう?」

 

「仲良くできるとうれしいわ!ジャンヌ・ダルク!」

 

 

「では行くぞ!マスター!黒光りする戦闘機はいないか!いないな!?では、発進!」 

 

 

――遥かな夜空を、賑やかな船が走っていった




イラつきには深呼吸。貴方にセイラムの安らぎあれ


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歓談

箸休めです。気楽にお読みください


――霊脈を設置した地点にて、ヴィマーナを着陸させる

 

「フォウ!(足元にお気をつけて、王妃さま)」

 

「ありがとう、素敵なお方。ふふっ、綺麗な毛並みね?あなた!」

 

マリーと呼ばれる方は、所作がひとつひとつ可憐で、気品に溢れている。やんごとなき身分な方なのは見てとれた

 

「どこの英霊かは見えたが・・・ややこしくなるな、マリー」

 

『お、オルガという方で呼んでくれればいいわ』

 

「うむ、白き華にカルデアの希望の華――彩り深くなってきたな、我の旅路も」

 

『希望の華―』

 

「間違いではあるまい。カルデアを細身で支える女、大なり小なりに貴様を励みにしている者達がいる。希望の天文台にて衆目を集め輝く在り方――紛れもなく華であろう?ま、我の好みとはちと外れるがな」

 

 

希望の華・・・うん。自分もぴったりだと思う。けして散ることのない華、所長とカルデアに相応しい

 

 

『あ、ありがとうございます・・・』

 

 

声音に嫌悪は見られない。どうやら気に入ってくれたみたいだ

 

「ま、我には迎えを待つ后がいる。うつつを抜かすわけにはいくまい。ははは」

 

――最後の言葉がなければ、素敵な話だったのになぁ

 

これは、召喚に挑むのも遠くはなさそうだ

 

 

「あるいは英雄である方のマリーとそうではないマリーでよいか?」

 

『め、面倒ですのでオルガでお願いします』

 

「・・・散るなよ?」

 

『散りません!』

 

 

 

「では、改めまして――私はサーヴァント、真名はマリー・アントワネット。マスターのいないふらふらサーヴァントです。どんな人間かは、あなた方の目と耳でしっかり吟味していただければ幸いです」

 

「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。僕も右に同じ。召喚された自覚も、自分が英雄である自覚も薄い。そりゃあ学校の音楽室に肖像画があるのが当たり前くらいな偉大な人だとは思うが、それでも数多いる芸術家の一人にすぎないというのに」

 

『マリー・アントワネットにモーツァルト・・・!凄い!!フランスに咲いた可憐な華、栄光と悲運に彩られた王家の象徴と世界有数の天才作家にして演奏家!フランスにこの人ありと謳われる時代の象徴と会えるなんて!』

 

 

マリー・アントワネット。民を愛し、祝福と安寧を願った高貴なりし王妃

 

民を愛しながらも、時代の激動に翻弄され、革命の後ギロチンへと送られた悲運と悲劇の華

 

 

「あぁ、それなら我も知っているぞ。パンがなければおやつを食べればいいじゃない――は有名よな。全く同感だからな」

 

『当時の栄華と贅沢を極めた文化と人柄を表した名言と名高いよね!僕も好きさ!』

 

「ごめんなさい、それは私が言った言葉ではないの。どうしてもそんな覚えはなくて――」

 

『うそ!?』

「真かッ!?おのれ歴史家め!赤っ恥ではないか!」

 

「キュー、フォウ!(千里眼バカは放っておいて・・・マリー・アントワネットといえばバストサイズだね。見つかったドレスから計算したらなんと109センチもあったらしいんだ!凄いよね、その時代のマリーにも是非会いたかったな)」

 

――天真爛漫で、素敵な雰囲気だ。こういった快活な子は、一緒にいて楽しい

 

 

「音楽家ってキャスターなんだ?」

 

 

 

「僕は魔術を嗜んでいてね。ま、悪魔を信奉したわけではなくて、奏でる音に興味があっただけだけど」

 

『嘘でしょう・・・?そんな理由で悪魔と?』

 

 

「芸術家とはそんなものだ。己の才を満たすためにおおよそ考えられぬ事を為す」

 

『早い話が変人なんだね、知ってる』

 

「うーん!マリーとはうってかわった野郎共のこの歯に衣着せぬ物言い大好きだ!一曲プレゼントしよう、下痢がとまらなくなるヤツを!」

 

『止めてくれ!存在証明ができなくなったら大変だ!』 

 

「これだから技術に傾倒した連中は・・・どこぞの童話作家も反骨心に溢れていたな。フッ、語り終われば首をもっていけとは気骨に溢れていたな。話はそれなりだったか」

 

――下痢が止まらなくなる曲とは一体・・・聞いては見たいが、トイレにこもる英雄王に幻滅したくないのでリクエストはやめておく

 

「私はマシュ・キリエライト、デミ・サーヴァントです。マスターはこちら、藤丸立香です」

 

「マスター、藤丸立香です!チーッス!」

 

――物凄い砕けた挨拶をするマスター。フレンドリーだな・・・自分と器にはできない気安さだ

 

 

「まぁ!素敵な挨拶ねチーッス!シクヨロ!・・・うぅん、違うかしら?」

 

「もっと媚びよ」

 

 

「甘えるのね!アマデウス、チーッス!」

 

「チーッス!いいねマリー、最高だ!これからもそれで頼む!百年の恋も一気に醒めそうだ!」

 

「ギル、チーッス!」

 

「ははは、品格を下げるぞ。その挨拶は禁止だ」

 

「そんなー」

 

 

『マリー、いやオルガもこんなに素直なら苦労しなかっただろうなぁ』

 

『何か言った?』

 

『いや何も』

 

「そら、田舎娘も挨拶せぬか」

 

「・・・ジャンヌ・ダルクです。よろしくおねがいします」

 

どこか、ジャンヌの口調は暗い。どうしたのだろうか

 

「えぇ、聞き及んでいます。ジャンヌ・ダルク、オルレアンを救い戦った旗の聖女」

 

「私は、聖女ではありません。――己の道に積み上げられた犠牲を省みなかった、・・・恋も知らず、旗を振って筋力をつけただけの田舎娘です」

 

 

ちらり、とジャンヌがこちらを見やる

 

「――ん?何か我に言いたいことがあるのか?」

 

「なんでもありません!」

 

「何だ、煮えきらぬ女よ。即決と突撃が貴様の美徳であろう?途中停止などらしくもない。それだから魔女めに学で先を越されるのだ」

 

「もう、あなたと言う人は――!」

 

「ははは、貴様は弄り甲斐がある。よいオーディエンスだ」

 

「知りません!」

 

「ふふふ、仲良しなのね。・・・ねぇ、貴方が聖女でないのなら、私はあなたをジャンヌと呼んでいいかしら?」

 

「え?」

 

「あなたがただのジャンヌであるのなら、私もただのマリーとして振る舞いたいの!私のことも、マリーと呼んでくださらない?・・・あ、オルガマリーちゃん、紛らわしくてごめんなさいね?」

 

『いいえ、貴方は英雄、私達人間に気を使う必要はありません、マリーさん』

 

「マリーさんですって!」

 

『す、すみません!』

 

「いいえ、いいえ!マリーさん・・・!なんて素敵な響き!是非そう呼んでいただきたいわ!マリーは貴方、マリーさんは私!解りやすいと思わない?」

 

喜びを露に跳び跳ねるマリー。なるほど、これは確かに民の華たるのも納得だ

 

「君は人を褒める事しかしないな。悪い癖だ、人に勘違いされてばかりだろう?」

 

「む、解ってます!欠点を上げればよいのでしょう!?下ネタ好き!人間のクズ!一次元倒錯者!そんなに音楽が好きなら楽譜になったらどう!?」

 

「・・・うーん。君に言われると込み上げるものがあるなぁ」

 

『王妃!そのまま王様にも言ってやってください!』

 

「豪華、浪費家、人でなし!その紅い瞳に睨まれたら震え上がってしまいそう!あなた、友達が少ないのではなくて!?」

 

「ふははは!良いぞ、許す!事実であるからな!だがロマン貴様には後で話がある」

 

『ひぃ!?立香君、令呪は残っているかい!?止めてね!?』

 

「あははは」

 

『目が笑ってない――!!くそぅ、僕もここまでか!』

 

「さて、改めて我の名乗りに預かる栄誉をやろう!我の名は英雄王ギルガメッシュ!始まりにして絶対の王!クラスはゴージャスな至高の王よ!」

 

「まぁ、ゴージャス――!」

 

――初めての死線を潜り抜けた一行、その気の緩みもあるのか、弾み続ける会話

 

――真面目な話はおいておこう。辛いばかりが旅ではない

 

――人とふれあうのも、旅の醍醐味なのだから




辛いばかりが、旅ではないのです


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約束

酒が入ると大体許す


夜の森、皆が寝静まり静寂に満たされる空間

 

 

自分――英雄王は眠らず、周辺の警戒をかねて、ハンモックで横になっていた

 

今日は器に頼りきりだったので、少しでも休んでほしいという思いのもと、自分の思考を半分眠らせている。今は口が一人でに動いているのを、眺め、聞いているような所感だ

 

 

――自分は、愉しむことはあまりうまくないから、余計なことをしないようにしている

 

 

手持ちぶさたになった際の過ごし方など、無銘の自分には何も解らないのだから

 

「フッ、ウルクを駆け回った時を思い出すな。多少濁ってはいるがよい月よ」

 

所感を一人こぼす器

 

――自分も同感だ。戦いはそんなに好きではない。護るものを護るために、躊躇うつもりはないが、好き好んで敵を害したいとは思えない

 

 

そんなものより、こういった穏やかな時間を過ごす方がずっといい。夜風が頬を撫でる。素敵な余暇だ

 

 

「こういった月に合う酒があったはずだが・・・」

 

酒を取り出そうとする器

 

――呆れた頑丈さだ。あれほどの大立回りをしたというのに、まるで応えてはいないらしい

 

 

――酒の味は苦手だが、こうした穏やかな時間に飲むのは好きだ。

 

自然を感じながら飲んだ朝の一杯は・・・本当に美味しかった

 

「月見酒・・・我ながら粋よな。贅沢を言うなら注ぎ手が欲しいが、まあそれは言うまい」

 

 

――日頃の感謝からも、立候補したいのだが、残念ながら魂となった身では叶わない

 

できるのは、英雄王の邪魔をしないことであると思ったが・・・

 

「もし、ゴージャスな王様?よろしければ、私にお相手をさせてくださらない?」

 

華のような声がかけられる

 

「うふふ、マリーさんです!夜分に見かけたもので、つい」

 

「王妃か。どうした。厠か?」

 

「いいえ、先程までジャンヌやマスターとお話ししていたのだけど、皆眠ってしまっていたので。けれど、友達が増えた昂りがおさえきれなくて・・・」

 

「なるほど、身体の火照りを冷ます相手を探していたと。我を選ぶとは見所があるな」

 

いやらしい言い方だが、寂しげな器の相手をしてもらえるのは嬉しい

 

「許す。近うよれ」

 

「光栄ですわ、ゴージャス様!」

 

――酒盛りを楽しんでもらおう

 

 

 

「それでね、砦の皆様が言っていたの。金色の旅人に助けてもらったって!薬を分けてもらい、竜を退けた王様一行。そんな素敵な方がいるのなら、会いたいと思うのが普通でしょう?アマデウスを引き回して探しに探したの!」

 

「なるほど、我等の同行を望んだのはそれか。我は思うままに振る舞っただけ、それがたまたま民の助けになっただけの話よ」

 

朗らかに笑うマリー、自慢げに笑うギル。心地よい、穏やかな空間

 

「素敵な時間ね!永遠に続いてほしいとまで願うわ!豪気な王様と一緒だなんて、王妃になってみるものね!・・・ジャンヌにも、同じことを言ったのだけれど、ふふふ。私は幸せね!死んだあともこうして、かけがえのない時間が増えていくの!それって幸せな事じゃないかしら!」

 

「所詮は夢ではあるがな。愉しみとしては、当事者になるのもたまにはよい。我は基本、暇潰しだからな」

 

「そうなの?・・・ね、次は私の番ですわね?」

 

「何?」

 

「ね、ゴージャス様。私は貴方の話を聞きたいわ。マスターとマシュが、貴方の話を目を輝かせて聞かせてくれたの。あなたの活躍を」 

 

――安心する。マシュとマスターの中で、嫌われてはいないみたいだ。器、ギルガメッシュは 

 

「我に語り部になれと申すか、まこと身の程知らずな娘よ」

 

「お嫌かしら?」

 

「――フン。酒も回った、口を滑らすのも一興か」 

 

「しかと聞け、王の言葉をな」

「はい!」

――

 

それから、色々な事を話した

 

召喚されたこと

 

サーヴァントと戦った事

 

死にそうになったこと

 

カルデアの事、マスターの事、マシュの事。ロマンやオルガマリーの事・・・

 

 

短い時間に、たくさんの事を過ごしたようだ。色々な思い出が浮かんでくる

 

 

「――そしてカルデアは、第二のウルクとなったわけだ」

「まぁ・・・!そんなに素敵な場所なのね!人も設備も、輝くばかりの場所、カルデア・・・!」

 

「当然だ、我が監修したのだからな!今や彼処より豪奢な建造物はあり得まい。ゴージャスな我のゴージャスな根城だ!」

 

 

ふははは!と笑う器。始まりは不満爆発な事を思いだし、笑ってしまう

 

――思うがままに振る舞うことで、辺りを振り回し幸せにする。それが、この愉快な王様だ

 

「えぇ、とっても素敵!・・・行けるかしら?」

 

「む?」

 

「私も、カルデアに行けるかしら?行ってみたいわ!どうしても!」

 

 

――どうなのだろうか。英霊ならば、きっと召喚に応じれば・・・

 

 

「それは貴様次第よ。まずはこの特異点を乗りきるのだな。カルデアは我に並ぶ一流の英霊しか招かん。贋作者は知らぬ、どうでもよい」

 

「できるかしら・・・?うぅん、キラキラ輝くのは負けない自負はあるけれど」

 

「連発はよせ、攻撃が通らぬ。・・・だが、まぁ」

 

カラン、とグラスをならす

 

「――我の夜伽の相手をした縁に招かれるやも知れぬな。そのときは胸を張り招集に応じ、参ずるがよい。我の名の下、カルデアに足を運ぶことを許す」

 

「――まぁ!ありがとう!王様!」

 

――柔らかいものが、頬に触れる

 

 

「――」

 

「――あ、ごめんなさい王様!私、つい癖でベーゼしてしまうの。無礼でした、ごめんなさい」

 

――その行為に、どんな思いが込められたのかは掴めないが

 

 

「――はははは!奔放な娘よ!我に接吻にて不意をうったか!一本取られたな!」

 

「お嫌でしたか・・・?」

 

「いや、酒の席だ、無礼講とする。マスターとマシュには黙っておけよ?我は後で『セイバーに行わせる108のシチュエーション』表に記載しておく」

 

「まぁ、貴方の后ね!いつか、私にも会わせてくださらない?」

 

「いいだろう。我の嫁の麗しさに腰を抜かすなよ?はははは!愉快な夜だ!酒がうまい!」

 

――絵にかいた餅と言うお言葉をご存知か。英雄王。空手形は地獄を見ますよ?

 

「えぇ!私、召喚されて本当に良かったわ!ゴージャス様と同じ英雄であること、誇りに思います!明日から私も、正義のために頑張ることを誓いますわ!」

 

「よい、励め!我は総てを許す!ゴージャスだからな!はははは!ハーッハハハハハ!」

 

 

――夜の闇に、王の笑いがいつまでも響いていた

 

 

――が、平穏な夜は終わりを告げる

 

 

「!」

 

「――敵襲か、サーヴァントもいるな」

 

「私、皆を起こしてきますわね!」

 

「迅速にな。――さて、仕事か」

 

――本当は、英雄王には休んでほしかった。あれほど立ち回ってまた戦いとは、忙しないにも程がある

 

――だけど、自分の使命から逃げるわけにはいかない

 

「どんな雑種かは知らぬが、適当に蹴散らすとするか」

 

 

――これは、自分の旅でもあるのだから




「我のセイバーへ求めるシチュエーションは108式あるぞ!一位は当然、単発引きからのその日、運命に出逢う、だ!」

――まずは引こう。話はそれからだ


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狂猛

「――こんばんは。寂しい夜ね」

 

長い紫髪、引き締まった肢体を露にする神聖な雰囲気を湛えた女性サーヴァントが、目の前に相対する

 

 

「――参ったな。囲まれてるぞ。くそっ、嫌だなぁ。害するために発せられる音って言うのは・・・甲高いトランペットみたいだ」

 

「解るのですか?アマデウスさん・・・?」

 

「そりゃあ解るさ。僕は音楽一本で英雄になった男だぜ?空気の波を読むなんて字面を読むが如しさ。マシュにリッカ、ジャンヌの寝息に生体音、寝返りの音や胸が衣服を擦る音、下着が股ぐらに食い込む音まで完全に僕の記憶野に蓄音済みさ!」

 

「なっ――!!」

 

赤面する三人

 

――凄いな。そんなことまで解るのか。これが音楽のみで英雄と呼ばれる所以――!

 

 

「フキュルルル!(なんて変態だ、許せない!キミ、後ろからコイツを串刺しにするんだ!)」

 

?ここはその絶技に感嘆するところでは無いのだろうか

 

「皆さんごめんなさい。監督役の私が謝ります――でも、我慢して?彼から音楽をとったら何も残らないのだもの!」

 

「ほう、では我と王妃の睦み言も盗み聞きしていたか?」 

 

「もちろん。本当ならあらんかぎりの下ネタ罵倒を叩き付けてやるところだが――」

 

「アマデウス!ゴージャス様はふしだらな事はしていないわ!」

 

「解ってるさ。何故か英雄王からは『汚い』匂いがしないからね。本当に他愛ない世間話だって知ってるしね」

 

「当然だ。身の清行はマナーであろう」

 

「マリーの相手は疲れたろう。話すばかりのヤツとは一緒にいてくたびれるものさ」

 

「もう!アマデウス!」

 

 

「――よい仲間たちね。私達とは大違い」

 

清らかに笑う、バーサーク・ライダー

 

・・・敵なのか?雰囲気があまりにも清澄すぎる気がする

 

「貴女は、何者ですか」

 

 

ジャンヌが問う。なにかを感じたのかもしれない

 

 

「私・・・さぁ、何者なのでしょうか。聖女であれと律してきた自己を狂わされ、壊れた聖女に顎で使われるなんて」

 

「――壊れた聖女・・・」

 

間違いなく黒きジャンヌ、竜の魔女を指しているのだろう

 

「フン。たかだか狂化にて自己を手放す時点でその程度の器。英雄ならば自己を壊す呪いは三倍まで耐えてこそであろうが」

 

「――いたわね、金ぴか。一つだけ言っておくわ」

 

「なんだ、懺悔か?」

 

「――アンタは私の信ずる神を弾圧がお家芸と宣った。・・・確かにそうね。信徒たちは主の言葉を、真っ直ぐ受け止められずに、そういった事を繰り返した」

 

「でもね――たとえ歴史がそうであったとしても、私達の神はけして血と鉄は求めない。弾劾されるとすれば、父の言葉を受け止められなかった私達よ」

 

毅然とした、祈りの言葉。狂猛の猛りにも犯されぬ、聖女の信仰

 

「だからね――覚えておきなさい。いくら神を拒絶しようが、けして人の心から信仰が無くなることはない」

 

「それで?貴様は民草を虐殺したその手で、父とやらの油と洗礼を受けるのか?」

 

「――返すことばもないわ。私はここで消えるつもりよ。業を抱えてね」

 

「待って!」

 

マスターが問いかける

 

「貴女、まだ自我を保ってる!狂わされても!そうでしょ!?だから話をしてくれた!」

 

「先輩・・・」

 

「話し合えるなら、解り合えないかな!?一緒に、魔女に立ち向かえないかな!?」

 

張り上げる叫び。マスターとして投げ掛ける

 

「――ありがとう。こんな私に改心を勧めてくれるなんて。素敵なマスターね」

 

「だから!」

 

「それは無理よ。私は狂化をかけられている。今もこうして衝動を押さえるのに割りと必死なの。気を張らなきゃ後ろから刺しかねないサーヴァントなんて、信用できないでしょう?」

 

「そんな・・・」

 

「・・・業腹であろうが、呑み込め。サーヴァントとはそういうものだ」

 

 

唇を噛む立香。――無念が伝わってくる

 

「だが――上出来だ」

 

「え?」 

 

「理解できぬ事と、理解しようとせぬ事は異なる。お前は今、こやつを理解しようとした」

 

「はい、先輩。まずは対話、大事です!」

 

そうだ。こんな単身でこちらに攻めいるのは違和感がある

 

――もしかして、彼女には自分達に伝えたい事があるのでは無いのだろうか

 

「では、一度した対話には責任をもて。王妃、音楽家。辺りを掃除するぞ」

 

「いいのかい?」

 

「我が介入すればどちらかが死なねば止まらぬ。我はこの場では邪魔者であろう。戦闘に長けぬ貴様らも見張らねばならぬからな」

 

「では、マスターは私が」

 

「任せる。無様は晒すなよ」

――無事に勝ってくれ、マシュ

 

 

「はい!」

 

「アマデウス、私の友達を信じましょう」

 

「解ったよ。友情、空虚だが確かに在るものを嗤うほど僕もくさっちゃいない」

 

「よし、我に続け!」

 

信じて、離れる

 

――死なないでくれ、マスター

 

 

 

 

「何でもお見通しか、金ぴか・・・」

 

「あなたは・・・」

 

 

「・・・一つ言っておきます。ジャンヌ・ダルクは竜の魔女。竜を殺す力なくば、あなたたちに勝利はない」

 

「私ごときを倒せねば、彼女の竜は倒せない――邪悪な竜にはね」

 

『邪悪な竜?――まさか、嘘でしょう?』

 

蒼白となったオルガマリーの呟きが漏れる

 

『知っているのですか、オルガ所長』

 

『いえ――有り得ないわ、――ニーベルンゲンの邪竜なんて、そんな・・・ギルがいたって、勝てるかどうか・・・!』

 

「貴女は・・・!」

 

「私ごとき乗り越えられねば、彼女に勝つなど不可能。――私の総てを以て、あなたを試します!」

 

バッ、と高らかに杖を掲げる

 

 

「私の屍を乗り越えられるか試します――!いでよ、『大鉄竜・タラスク』――!!」

 

 

地響きと共に、聖女の祈りに鉄竜が応え、現れる

 

巨大な甲羅、太い六本足、強靭な牙、爪・・・総てを兼ね備えた竜種

 

かつて都市を荒し尽くし、人々を侵害した巨大な竜――

 

「我が名、真名をマルタ。さぁ、清き聖女よ、構えなさい」

 

「聖マルタ――!貴女は、私が・・・!」

 

「私を越えねば、貴方の願いは叶わない――!」

 

十字架の杖と、聖なる旗

 

因果により別たれた、同じ想いを懐く者がぶつかりあう――!

 

 

「先輩!戦闘準備、完了です!」

「うん。――試すって言うなら。私達の全力を!」

 

右手を高々に掲げ、カルデアに回路を繋ぐ

 

 

「来て!!ヘラクレス――!!」

 

大地を砕き、無双の大英雄が顕現する

 

「――――⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛――――!!!!!!」

 

 

「くぅ、っ・・・!!」

 

『マシュ!ヘラクレスを使役できる時間はごくわずかよ!長引かせたら立香があぶないわ!』

『ヘラクレスを援護して短期決戦だ!いいね!!』

 

「はい!マシュ・キリエライト!行きます!」

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛――!!!!」

 

 

願いを掛けた戦いが、始まる――!!



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意地

「はっ――!」

 

十字架を掲げた瞬間、空間より爆発が襲いかかる

 

「くっ!!」

 

考えるより先に飛び退く、いた場所にほぼ最速に魔力が炸裂した

 

「せぇい!」

 

十字架を掲げる度に巻き起こる魔力の爆発と炸裂

 

 

「どうしました!逃げるばかりでは活路は拓けないわよ!」

 

それを側転、バック転、宙返りで回避し続けるジャンヌを叱咤するマルタ

 

(あの杖を通し、祈ることで、過程を超過した奇蹟を起こし攻撃する・・・まさに聖なる人の技・・・!)

 

自らに備わるスキル『啓示』をフル活用し、最適な身体運びにて回避し続けるジャンヌ

 

気を抜けば、奇蹟に身を焼かれる。

 

 

言われる通り、逃げた先に道はない

 

(ならば――!!)

 

「そこっ!!」

 

十字架の杖が更に輝き、暴虐の奇蹟が降りかかる

 

「たあっ!!」

 

旗を丸め槍に見立て、高跳びの要領で宙に舞う

 

炸裂の衝撃を受け、空中で加速し

 

「やぁあぁあぁあ!!」

 

捻りをいれて渾身の力で叩きつける――!!

 

「ぐっ!」

 

杖で防ぎ、つばぜりあう二人

 

「飛び込んでくるとはやるじゃない!旗で鍛えたのは伊達じゃないってわけね!」

「私は恋も知らず旗を振るいつづけた女――荒事など日常茶飯事ですから!」

 

「上等じゃない――私の方こそ」

 

旗が、押し返される

「――舐めんじゃないわよ!」

 

凄まじい力に、片膝をつくジャンヌ

 

(この力――まさか、狂化の力!?)

 

「てぇい!」

 

蹴り飛ばし、距離を放す

 

「さぁ、どんどんかかってらっしゃい!」

 

 

「言われずとも――!」

 

 

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛――!!」

 

猛り狂うヘラクレス。石斧を振るい、無双の豪撃がタラスクを嵐のごとく撃ち据える

 

強固な鎧のごとき甲羅に一撃一撃を叩き込まれる度、タラスクの表情が歪んでいく

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

 

 

「グォオォ!!」

 

距離を放す為に振るわれる巨大な蠍のごとき尻尾

 

「⬛⬛!」

 

「くぅうっ!!!」

 

ヘラクレスへの軌道をマシュが割り込み盾で防ぐ

 

「私が、カバーします!ヘラクレスさんは攻撃を――!」

 

「⬛⬛⬛⬛⬛――!!!!」

 

石斧を手放し、尻尾を両腕で抱え込む

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!!!」

 

力の限りを尽くし、タラスクの尻尾を掴み、ジャイアントスイングの要領で振り回す

 

「――――!!!」

 

「⬛⬛――!!!」

 

木々を薙ぎ倒し、へし折り

 

思いきり勢いをつけて地面に叩きつける

 

 

「!!!!!」

 

『うわぁ凄すぎる!英雄王とは違った意味で凄まじいぞヘラクレス!!ギリシャの大英雄は伊達じゃないな!』

 

『立香にカルデアのリソースを回して!バイタルが危険域にならないよう常に気を配るの!大至急よ急いで!』

 

「っ、はあっ、はあっ、はあっ!」

 

『立香、頑張りなさい!なんだかんだでモノを言うのは気合いよ!』

 

「わかっ、てる!私は、立ってることが戦いだから――!」

 

「!!」

 

叩きつけられたタラスクの身体から、灼熱の光が放たれる

 

「ヘラクレスさん!!――づぅうぅう!!!」

 

迫り来る熱線に割り込み、ヘラクレスを盾で護る

 

「⬛⬛⬛⬛!!」

 

石斧を掴み、盾の間からタラスクに『投げつける』

 

そのまま斧は右足に直撃し、ぐらりと体勢が崩れるタラスク

 

「⬛⬛!!」

「え――きゃあぁあ!!?」

 

近場にいたマシュを持ち上げ、思いきり投げつける

 

「――この位置なら!!」

 

身体をしっかりと伸ばし、タラスクの脳天めがけてシールドを叩きつける!

 

「やぁあぁあぁあ!!!」 

 

 

「はぁ、はあっ、はぁ・・・!」

 

「迷っておりますのね、未だ」

 

 

先程から何度も鍔迫り合いが続く。叩きつけるジャンヌ、それを捌くマルタ。展開は一進一退、ジャンヌは巧みなマルタにアドバンテージを取れずにいた

 

「どうしたのかしら?やはり力が出せないから?戸惑ってる?私が貴方と同じだから?」

 

「――」 

 

そうかもしれない。狂化にかけられたとはいえ、目の前にいるのは紛れもない聖なる人

 

同じ祈りを懐き、同じ誓いを立てたひと――頭でわかってはいても、どこか攻めきれぬ思いがあるのかもしれない

 

「優しさと思慮深さは美徳、けして失われぬ人間の輝き。貴方はそれを持っている――」

「・・・私は、ただ走り続けただけの田舎娘。竜を説き伏せたあなたとは比べるべくもない」

 

「慎みもあるのね、いいのが育ってる――でもね」

 

おもむろに

 

杖から、手を離す

 

「――舐めんじゃないわよこの旗持ちが――!!」

 

瞬時に間合いを詰められる

 

「!?」

 

――鉄拳、一閃

 

「あぁあぁっ!?」

渾身の右ストレートを旗で防いだ瞬間、凄まじい勢いで吹き飛ばされる

 

「ハッ、馬鹿にすんなっての!あの人より杖を賜ったこのマルタ!ずっと後に生まれたガキンチョに虚仮にされるほど柔じゃないわ!」

 

「く、う・・・!」

 

凄まじい豪力。凄まじい重さ

 

これが――竜を説き伏せしマルタの祈りの拳――!

 

「杖があってやりにくいってんなら、ハンデとして置いてやるわ。ライダーだから鈍りまくってるけど、今のあんたには充分よ」

 

グッ、とファイティングポーズをとる

 

「さぁ、――ボッコボコにしてやろうじゃない!」

 

――一瞬の踏み込みにて懐に潜り込まれる

 

「そらそらそらそらそらそらそらそらぁッ!!!」

 

ジャブ、フック、ワン、ツー――豪力雑多の拳の連打が激しくジャンヌを打ち付ける――!!

「くぅぅうぅ!!!」

 

 

――

 

 

「――!!」

 

タラスクが吼え猛り、突如として回転し出す

 

「!?」

 

「――⬛⬛⬛⬛!!」

 

マスターを庇うように、仁王立ちするヘラクレス

 

――来る!!

 

「マスター!――宝具!展開しますッ!!」

 

凄まじい勢いを保ち飛来する鉄甲竜タラスク

 

築かれし城壁、『仮想宝具展開・人理の礎』を張り、マスターとヘラクレスを守護せしめる――!

 

「ぁあぁあぁあぁあ――――!!!!」

 

「ぐぅう、ぁあぁあ!」

 

 

がくり、と膝をつく、立香

 

『立香!しっかりなさい!!』

 

『マシュも踏ん張ってる!今が勝負どころなんだ!』

 

「わかっ、てる!――ヘラクレス・・・!!」

 

「⬛⬛⬛⬛」

 

「力を、貸して・・・マシュを、助けて――!」

 

「――やっちゃえ!バーサーカー――っ!!」

 

 

『カルデアのリソースを確保!立香に魔力を回すのよ!!』

 

『来るぞ!ヘラクレスの宝具開帳だ!!』

 

「――――⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!!」

 

 

「くっ、ぅうっ!――ぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

 

雄叫びをあげ、タラスクの突進を押し止める

 

凄まじい質量ではあるものの、その護りに揺らぎは無く、マシュの身体に傷はつかない

 

――やがて根負けし、回転の勢いが弱まる

 

――そして

 

 

 

「何をウジウジしてんのよ!」

 

風を切る拳

 

「聖女なんでしょアンタは!!」

 

受け止める旗が軋む

 

「私は、聖女では――!」

 

「どっちでもいいわそんなもの!!」

 

左で放たれるボディーブロー

 

受け止める旗が折れんばかりにしなる

 

「肩書きとか能書きなんて、どうでもいい!大事なのはたった一つ!」

 

 

両拳の怒濤のラッシュ

 

旗が砕けんばかりに打ち付けられる

 

「――――大事なのは『救うか救えないか』だけでしょうが!!」

 

「!!」

 

「今もこうしている間に涙を流している人がいる!救いを求め嘆く人がいる!」

 

振りかぶる

 

「そんな人たちをほっといて――」

 

天高く突き上げられるアッパーカット

 

「うだうだ悩んでるんじゃないっての――!!」

 

旗が、天高く弾き飛ばされる

 

「――!!」

 

今もこうしている間に、涙を流している人がいる

 

「――私は」

 

救いを求め嘆く人がいる

 

 

「私は…」

 

何のためにこの身を捧げた?

 

何のために旗を振るった?

 

 

「私は――!!」

 

「終わりよ――!!」

 

――決まっている

 

踏みにじられる尊厳を、失われる平穏を

 

 

安寧を守護し、未来に繋ぐ為――!!

 

 

「――はぁあぁあぁ!!」

 

左腰に収められた剣を

 

 

――抜き放つ――!!

 

 

「――!!!」

 

――その剣は、ジャンヌ・ダルクの生涯の具現

 

解放すれば、一切を焼き払い、自らを天に還す剣

 

 

『紅蓮の聖女』――それを、マルタの胸に突き刺したのだ

 

 

「――そうでした。私はそんな人達を救いたいと願った。そして、今も」

「・・・」

 

 

「私が聖女かなど些細なこと、私が魔女か、などはどうでもいい」

 

柄を握る手に、力を込める

 

「私は救う、フランスを。たくさんの人を」

 

魂の迷いを、振りきるように

 

「戦わなければ前に進めぬならば、蹴散らすのみ――私は、血に塗れる事を恐れはしない――!」 

 

聖女は、高らかに謳い上げる――!

 

「・・・それで、いいのよ」 

 

だらり。と両手を下げるマルタ

 

「ガッツあるじゃない・・・ま、そうじゃなきゃ聖女なんて呼ばれないか」

 

「聖マルタ、貴方は――!」

 

抱き抱えるジャンヌ、マルタの消滅が始まる

 

「いいのよ、これで。――因果応報ってやつ。全く、聖女に虐殺なんてさせんなっての」

 

「貴方は・・・自分を律し続けて、最期まで――」

 

「まぁ、言い訳にもならないわ。バーサークしたのは事実だし。もう、私の出番は終わりみたいね」

 

「っ、う・・・!」

 

マルタを打つ、ジャンヌの涙

 

「・・・こら、泣かないの。涙なんて、打ち上げに取っときなさい」

 

「でも、でも・・・!」

 

「私は消えるけど、アンタは残る。聖女が残るんだから結果は一緒。――一つだけ、言っておくわ」

 

それこそが、マルタが此処に来た理由

 

 

「ジャンヌが使役する竜に、貴方たちは勝てない。あの金ぴかは別だけど、金ぴかが殺す前にあなたたちが殺される。それじゃ同じこと。竜殺しは、本当なら王の役目じゃない」

 

「旅人でもなく、聖女でもなく。古来から――竜を倒すのは竜殺しと決まっている」

 

「竜殺し・・・」

 

「リヨンに行きなさい。かつて、リヨンと呼ばれた町に、あなたたちの勝利を磐石にする切り札がある」

 

マルタの、退去が完遂する

 

 

「――ごめんね、タラスク」

 

「聖マルタ!」

 

「次があるなら――もっとマシな召喚をされたいわね・・・――」

 

 

穏やかさと激しさを兼ね備えた聖人、マルタ

 

此処に役目を終え、消滅と相成った――

 

 

 

「――――!!(姐さん――!!)」

 

 

その隙が、命取りとなった

 

頭をロックしヘラクレスがひねりあげる

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

 

叩きつけ、脆い腹を露出させひっくり返す

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛――――――!!!!」

 

始まる蹂躙。乱打、殴打、乱打、乱打、乱打、乱打、乱打――

 

――かつてヘラクレスが挑んだ試練には不死なるモノが数多く在った

 

手を焼かされる不死身、殺しても殺しても甦る怪物たち

 

そこに至ってヘラクレスは思案した

 

どうすればいい?

 

――そして、思い至る

 

死ぬまで殺せば良い。甦る度に、死をくれてやればいい

 

 

いつか、死に絶える日まで・・・殺して殺して殺して殺せば良い

 

その為の無双、その為の武練

 

――宝具の域まで昇華された、ヘラクレスの武芸の極致――!!

 

 

「『射殺す百頭』――!!!いっけぇえぇえ!!!」

 

猛り狂うヘラクレスの猛撃。飛び散る肉塊、弾け飛ぶ鱗

 

「⬛⬛⬛⬛⬛――!!!」

 

やがて、最期の一撃がタラスクの頭を粉砕する

 

 

核を砕かれ――タラスクはそのまま、主の後を追うこととなった

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛――!!!!!!」

 

 

「よかっ、た・・・」

 

 

立香は、そのまま意識を手放した――

 

「先輩!しっかりしてください!先輩!!」

 

 

 

 

 

 

 

「終わったようだな」

 

サーヴァントの消滅を確認する

 

――良かった。向こうは終わったらしい

 

「戻るぞ、こやつらにもう用はない」

 

「でもゴージャス様、まだまだ数が――!」

 

パチン、と指をならす

 

残っていた雑魚のすべてを、纏めて串刺しにし処理する

 

「行くぞ。――そこの音楽家をつれてこい」

 

「アマデウス?どうしたの?」

 

「――・・・僕の耳まで破壊するのは、止めてほしいな――」

 

「?ああ、あの雄叫びを聞いてしまったのね・・・でも、さっきの酷い発言の罰としましょう?ね?」

 

「くそう、バーサーカーはこれだから・・・」

 

「竜種を下すとは手柄だなマスターにマシュよ!ふはは、流石は我のマスター!労わなければなるまいな!」

 

――良かった、本当に

 

処理を終わらせ、マスターと合流するため、自分達はあるきだした




「私のファブニールは最強なのよ!」


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出立

ゆるめな回です

聖職者とは・・・まぁ聖書でも天使殴り殺してますし多少はね


「――眠りから覚めてみれば、まさかバーサーク・ライダーが自害するなんて。意志は強いものと思っていましたが。遅れをとるとは」

 

 

ジャンヌが呟く。ライダーの消滅を関知したゆえの所感であった

 

 

 

「理性と狂化がせめぎあい半端になってしまったのね、えぇ、きっとそう。自戒が強いのも考えものです。――とはいえ、彼女は全力で戦ったのでしょう。――あの金ぴか。油断なりませんね」

 

「おぉジャンヌ・・・あの黄金は忘れられたのでは?」

 

「忘れられるわけないでしょう!?今度こそ潰すわ!『彼』を連れていきます!新たに召喚されたサーヴァントも共に」

 

 

バサリと旗と、ファーを纏う

 

「バーサーク・アサシンにも連絡を、バーサーク・バー・・・えぇい面倒くさい!」

 

ガン、と靴をならすジャンヌ。どうやら煮えたぎる怒りは収まっていないようだ

 

「湖の騎士・ランスロット!処刑人、シャルル=アンリ・サンソン!」

 

黒い鎧に纏われし騎士と、ロングコートの出で立ちの青年

 

 

「――urrrrr・・・」

「ここに」

 

 

「ワイバーンを用意します、私に続きなさい。思うがままに狂乱し、皆殺しにするように」

 

 

「お任せを。王妃の首を落とす役目は、処刑人にこそ相応しい」

「特に、ランスロットには期待しています。――あの金ぴかを必ず、必ず必ず必ず必ず殺しなさい!」

 

「――――」

 

「ジャンヌ、どうぞ思うがままに振る舞われるがよろしい!貴方を裏切りしフランスに、世界に、神に!嘲りには報復を返し、怒りのままに焼き付くし滅ぼすのです!」

 

「えぇ、勿論よ。――ねぇ、ジル」

 

ぽつり、とジャンヌが呟く

 

 

「あちらとこちら、どちらが本物だと思う?」

 

「決まっていましょう。裏切りに憤怒を、蔑みに憎悪を、神の嘲りに弾劾を以て立ち上がられたあなた様こそがジャンヌ!ジャンヌ・ダルクに他ならない!」

 

熱弁するジル

 

「あなた様は当たり前の感情にて立ち上がり、当たり前の権利を行使しているのみ。滅ぼされたのだから、滅ぼす――そこに不純なものはありません。貴方こそが、正しきジャンヌ・ダルクなのです」

 

「――そうね。ジル。あなたはいつも私を助けてくれた」

 

「えぇ、ですから・・・」

 

「――『育ての親に慰めてもらえ』」

 

「―――」

 

 

硬直するジル、そして。ジャンヌ

 

まるで、フリーズを起こした機械のように

 

「・・・なにか私は、言いましたか?なんだかあの目障りな金ぴかが頭をよぎりましたが」

 

「――いいえ、いいえ。貴方を惑わせるような戯れ言は、何も」

 

「そう。――では、行ってきます」

 

 

「どうか、在るがままにあれ、ジャンヌよ・・・」

 

 

 

飛翔する竜の魔女・ジャンヌ・ダルク

 

 

「――気づいたと言うのか、英雄王よ・・・我が願いに、・・・ジャンヌ・ダルクの核心に――!」

 

ジルの絞り出すような声が、城の間に木霊していた

 

 

 

 

『ぐすっ、ううっ・・・ぐすっ・・・』

 

 

出立の朝、ヴィマーナのエーテル補充をしている時に、ジャンヌが連絡を入れてきた

 

「なんだ鬱陶しい。物乞いなら余所でやれ」

 

『聖マルタが・・・聖マルタが・・・』

 

マルタ――昨日のバーサーク・ライダーの事か

 

 

彼女の助言に従い、リヨンの町を目指す方針を固めた一行。竜殺しを探すのだ

 

 

「ヤツは忘れぬか。聖人ですらその責務を果たせるとは限らぬ。サーヴァントとはそういうモノだ」

 

『はい・・・ですが、哀しいです・・・そちらの私と拳で語り合ったならば、解り合えると踏んでいたのですが・・・現実は厳しいのですね、物語と違い・・・』

 

・・・物語?

 

「貴様、何を読んでいる」

 

『現代の小説と、漫画と呼ばれるものを少し!少年ジャンプ!ライトノベルですね!おかしいです・・・完全に和解できるとたかをくくっていたのですが・・・』

 

「――現代文化に手を出したか。ほどほどにしておけ。魂が腐るぞ」

 

『大丈夫です!自制には自信があります!・・・よし!こうなれば私が聖マルタの遺志を継ぎます!』

 

「ほう、聞いてやろうではないか。如何にしてあの豪腕を継ぐと言うのだ?」

 

『帰ってきたらボクシングジムを設立してくださいますか?筋力を活かして特訓します!目から鱗でした。祈りとは――拳だったのですね!』

 

――極めるつもりなのか、祈りを

 

「なるほど、そう来たか。まぁ魔が差したら考えてやるとしよう――あぁ、現代の聖職者は八極拳を嗜むのが通例のようだぞ?」

 

く、と堪えながら宣う器。そうだったのか・・・

 

『本当ですか!?召喚された際にそんな知識は・・・』

 

「我が言うのだから事実だろうさ。それと自らの忍耐の修行のために朝昼晩は毎日激辛の麻婆豆腐らしいぞ?」

 

『し、知りませんでした・・・流石は英雄王、博識ですね!早速エミヤさんに作ってもらいます!』

 

ブツン、と切れる通信

 

「これで暫くは喋れまい」

 

――現代の聖職者とは何者なんだろうか

 

 

「ギルー!皆ヴィマーナに乗ったよー!」

 

マスターの声が聞こえる。出発だ

 

 

「よし――反重力装置起動!玉座を起こせ!」

 

号令に従い、ヴィマーナが飛翔を開始する。翼を広げ、偉容を表す姿は黄金の大鷹の如しだ

 

「我等は情報収集の後にリヨンへと向かう!忘れ物はないな!よし、では行くぞ!空も我の庭の一部、踏破は容易きことと知れ――!!」

 

 

――聖マルタ。ジャンヌとしのぎを削った、拳の聖女

 

あなたの導きを胸に、自分達は進みます

 

 

どうか、次はもっと違う形で出会えますように

 

 

「英雄王」

 

出立の際、ジャンヌが声をかけてくる

 

「なんだ、どいつもこいつも似たような顔をしおって」 

 

「大した用ではありません。・・・私」

 

「ん?」

 

「機会があれば、恋をしてみたいと思います。私の存在に焼き付くような素敵な恋を」

 

ジャンヌの顔は晴れやかだ。マルタとの戦いで、迷いは消えたみたいだ

 

「もう――恋知らぬ旗持ちとは言わせませんからね!」

 

・・・気にしていたのか・・・申し訳無いことをした

 

「貴様のような城塞女に追従できる男がいるかは知らんがな。まずは字の読み書きから始めるがいい。ミミズの這った恋文では幻滅されるが関の山だぞ」

 

「わ、解っています!貴方のその罵倒の種類はなんなのですか!」

 

「愉悦を嗜むもの、的確に心を抉るべしだ!――話は終わりだ、行くぞ!離陸せよ、ヴィマーナ!」

 

――恋、か

 

うん。きっと見つかるはずだ。強靭とはいえジャンヌも女の子

 

その強い魂に寄り添える、素敵な人と巡りあってほしい

 

サーヴァントでも、きっとそれくらいは許される筈だと・・・自分は願っている




「ジャンプ、ライトノベル・・・現代文化、凄いです!」
「でしょう?沖田さん一おしですからねー。こと娯楽において日本の右に出るものなし、です!」

「沖田さん!もっともっと知りたいです、私!カルチャーを!」
「いいですとも!じゃあ次はアニメでも見ますかねぇ」


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感傷

一度打ったヤツが皆消し飛んだので二度目の執筆です

泣いてないからね!


マリーが街への情報収集のため出掛けている間、自分達はヴィマーナで待機している事にした

 

そんな中、オルガマリーが開発したという礼装を確かめる一同

 

 

『立香、これをあなたに渡すわ』

 

 

オルガマリーから転送された、宝石が埋め込まれた指環を嵌め込むマスター

 

 

「何これ?」

 

 

『私と師匠の共同で開発した、カルデア・フォームチェンジリングよ。嵌め込んである宝石に、魔術礼装が封じられているの』

 

 

薬指に嵌められた指輪に、ルビー、ラピスラズリ、エメラルドが埋め込まれている

 

『試してみて、立香』

 

「うん!」

 

言うと共に、立香の纏う制服が光に包まれ、身体をピッタリと吸い付く戦闘服へと瞬時に変化する

 

「ほう、中々の出来映えだな。・・・変身バンクは無いのか?」

 

『ジャンヌさんや沖田さんにも勧められていたのですが・・・その、却下で・・・』

 

何をしているんだ、ジャンヌと沖田

 

「身体に吸い付く生地の音、肉が触れ合う音。うぅん、いいねぇ。インスピレーションが冴え渡る!」

 

「アマデウスさん!」

 

なんだか女性陣は、必要以上にアマデウスの聴力を警戒している気がする。何か、理由があるのだろうか?

 

「そういう装着ものに、変身バンクは付き物であろうが・・・これは帰ったら講義を広めねばならんな」

 

「私、魔法少女か何かなの?」

 

「魔法少女などやめておけ、ろくなことにならんぞ」

 

『えー、いいじゃないか魔法少女!ヒーローに乗りきれない女の子を救う救世主だぞぅ!』

 

「やはりカルデアにサブカルを混ぜたのは貴様であったか・・・」

 

『い、いや僕の趣味じゃないよ!?娯楽の追求さ娯楽の追求!』

 

「ドクター、帰ったらお話が」

 

『うわぁマジトーンだ!所長フォローを!』

 

『魔術礼装は今着用している戦闘服、協会制服、アトラス院制服の3つ。アップデートを繰り返していけばストックは増えるわ。上手く使って』

 

「はい、所長!頑張ろうねマシュ!」

「はい、先輩!」

 

『完全に無視されてるー!?不味い、僕がこれじゃ道化だ!』

 

「それ以外のなんだと言うのだ」

 

『僕に味方はいないのかな――!?』

 

ロマン、皆は貴方の奮闘を知っている。それは解っている

 

いつもありがとう。・・・でも、公私の線引きはしようね。

 

 

「皆さーん!ヴィヴ・ラ・フラーンス!情報収集を終えたマリーが帰ってきましたよー!」

 

「フォーゥ!(王妃の帰還だ、頭が高い!)」

 

「よし、成果は天空にて聞くとしよう。マリーを回収!リヨンへと向かう!さぁヴィマーナよ、空を駆けよ!離陸開始!」

 

 

「フォウさん、しっかり捕まっていてね?」

「フォウ(王妃は私が御守りします)」

 

「ふふ、ありがとう!名前、シュヴァリエ・フォウになさらない?」

 

――ヴィマーナが、旅人を乗せ突き抜ける空を駆けていった

 

 

――――

 

 

「そうですか・・・リヨンは既に」

 

 

リヨンは、自分達がくるまえに滅んでしまったらしい

 

 

「かつてリヨンと・・・と言うのは、そういう事でしたか・・・」

 

――胸が痛い。自分が――自分達が間に合っていれば・・・出来たことはあったはずだ

 

「・・・」

 

「顔をあげよ、マスター」

 

「ギル・・・」

 

「我等に犠牲を省みる時間はない。ただ背負い、これ以上犠牲を出さぬよう邁進する事を心掛けるのだ、それが供養にもなろう」

 

「はい、その通りです。必ずや特異点の修復を成し遂げましょう」

 

――そうだ。下を向いてはいられない

 

きっちりと前を向かなければ、救える命を見落としてしまうのだから

 

 

「えぇ。でもそのリヨンには救世主がいらっしゃったらしいの!」

 

「救世主だって?」

 

 

――聞いた話によれば、長身で大剣を振るう男が骸骨や怪物を蹴散らしていたらしい

 

 

しばらく奮戦していたらしいのだが・・・多数のサーヴァントがリヨンに侵攻してきたらしい

 

 

多勢に無勢――追い詰められた男は、行方不明になってしまう

 

そして――リヨンは攻め込まれ、滅亡してしまったのだ

 

「十中八九。その男が竜殺しであろうな。街を護っていたという酔狂な真似はバーサーカーや反英雄にはできまい」

 

『うーん、サーヴァントに攻め込まれて無事なのかなぁ・・・?もしかして・・・』

 

悲観的にものを見るのは良くない

 

――命を懸けて情報を伝えてくれた聖マルタが、無益な情報を与える筈がない

 

 

なんとしても、竜殺しを味方に引き入れたい

 

「どのみち、赴かねば解りはすまい。廃墟漁りは趣味ではないが、どこぞの瓦礫に埋まっていようさ」

 

「どんな方かしら――きっと素敵な方ね!ゴージャス様や皆様と肩を並べる姿、きっとたまらないわ!」

 

「雄壮な曲が書けそうだね。もう全部君達がやってくれないかな?僕はここで曲作ってるからさ」

 

――確かに、音楽家を前線に戦わせるのはなんだか気が引ける気がする

 

 

「ほぅ、傍観か?構わぬが代わりに我の武勇を称えた曲を作れ。楽譜は90枚を使った長さでよいぞ。緻密で芳醇な、ゴージャスな譜面をだな」

 

「よーし頑張ろうかな!死んでもゴメンだそんな大楽曲!」

 

――ギルガメッシュを称えた曲、か・・・それは是非聞いてみたいな。きっと、すごい曲だろう

 

 

「ふふふ、特異点が終わりましたら、皆で歌を唄わない?皆で素敵な旅の締めくくりにしたいわ!」

 

「いいアイデアです!ね、英雄王!」

 

「フハハ、良かろう!その暁には健闘の褒美として、AUOキャストオフを拝謁する栄誉を与えよう!」

 

AUOキャストオフ――!?まだこの王にはかくし球があるというのか――!?

 

「な、なにそれ!見たい!」

 

「楽しみにしておけよ?我が織り成す至高の美をな!フハハハハハ!」

 

――笑顔の絶えない時間が過ぎていく

 

 

やがて見える、リヨンの残骸

 

 

――命を懸けて導いてくれたマルタさんの為にも・・・なんとしても、竜殺しを見付けなければ、

 

――財宝を使い、やってみたいこともあるのだ




沖田「・・・何ですかこれは」

「麻婆豆腐です!修行の為作ってみました!沖田さんも食べましょう!」

「何故――!?誰ですかそんなのを修行だと言った方は――!?」

「英雄王です!」

「ゴージャスのバカ――――!!あっ、止めてくださいそんな熱くて凄いの近付けないで私壊れちゃ・・・――ひゃあぁあぁあ――!!」


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泰然

ジャンヌ「主よ――この麻婆を委ねます――」


滅びし町、リヨン

 

 

その傍らにヴィマーナを下ろし全員が降り立つ

 

 

 

「ここが、リヨン」

 

 

かつてあった栄華は見る影なく、かつてあった賑わいはどこにもない

 

在るのは、ただ静寂と、死臭――

 

 

「・・・随分と食い散らかしたものよ」

 

胸が、痛い

 

喪われた命の中に、無価値なものはなかったはずだ

 

喪われた命の総てに、明日に素晴らしき事を成せる可能性があった筈だ

 

――自分より何倍も価値のあった、たくさんの生命が消え去ってしまった事に・・・けして小さくない痛みを感じずにはいられなかった

 

 

「そら、下を向いていても仕方あるまい。この犠牲に報いたければ励め。竜殺しが目当てであろう?」

 

――その通りだ

 

進もう。喪われた命の分まで、先へ

 

 

「うんっ。手分けして探そうよ!」

 

「解りましたわ、競争ね!では、私とアマデウスは西を行くわ」

 

「では、私達は東へ。二人ともお気をつけて」

 

 

「音楽家、王妃を精々護るのだな」

 

「解ってるさ。最初は二人旅だったしね。任せてくれ」

 

 

「さぁ、行きましょうか!」

 

 

 

「ロマン、ロマン!・・・あれ、おかしいなぁ」

 

見るとマスターが、何度もロマンと通話を試みている

 

「どうした、マスター」

 

「うん、なんだかロマンと通信が通じないんだ。どうしたんだろ」

 

「通信機の不調か・・・アレは悲観的ではあるが勤勉だ。職務放棄は有り得まい」

 

――オルガマリーとロマンの声が聞こえないナビは初めてだ。少しだけ不安がよぎる

 

「まぁ、今は対処に追われていよう。放っておけばいずれ打開しようさ。それよりも我等は我等の意義をはたさねばな」

 

「はい。先輩、瓦礫などにお気をつけくださいね」

 

「ありがと、ギル、マシュ」

 

「・・・ここは、かつて美しい都市であったはずなのに」

 

呻くようにジャンヌが呟く

 

・・・自らの見知る景色が焼け落ちる感覚は、想像もできない。ジャンヌの胸の思いが、理解できない自分が歯がゆい

 

「何故、竜の魔女は・・・」

 

「アレは貴様ではあるまいよ」

 

器が口を開く

 

「アレは決定的に違うことがある。貴様にあって、アレにないものがな」

 

「・・・私にあって、魔女にないもの・・・」

 

「然り。それがない以上、貴様の骨組みを使った贋作に過ぎん」

 

「それは・・・一体?」

 

「さて、な。――恐らくヤツは、藁の柔らかさを知るまいよ」

 

「藁の・・・?」

 

・・・器の物言いは、遠く、広い。真意を読み取るのは一苦労だ

 

ただ、一つだけ。核心をつかないと言うことは・・・自分でたどり着け、と言うことだろう

 

「ギルは謎かけ好きだよね」

 

「凡俗は精々、足らぬ脳を働かせるのだな。フハハ」

 

「・・・今は、ただ。ここの喪われた魂達の安らぎを祈りましょう」

 

両手を合わせ祈るジャンヌ

 

――だが、それを阻む声があった

 

「安らぎ、安らぎ。それはもう無く、よるべのない無念が疼くばかりのただ地獄」

 

 

歌うような響きの声音

 

「サーヴァント・・・!」

 

マシュとジャンヌがマスターを庇う

 

巨大な異形の爪、ぼろきれのような布

 

顔の半分を覆う仮面――奇妙な出で立ちの男性

 

「ほう、怨霊の類いか」

 

「我が真名、ファントム・ジ・オペラ・・・無念を詠い、悲哀を唄い、絶望を歌うサーヴァント・・・」

 

 

「陰気な歌よ、聞くに値せぬ。マスターとマシュの教育に悪い。――疾く失せよ。不敬であろう」

 

直ぐに財宝を選別する。オペラ・・・オペラ・・・オペラは、あの歌のオペラか?

 

弱点はなんだ?・・・魔性を祓う武器を選別してみよう

 

器の指が僅かに力む。波紋を展開する合図だ

 

 

「悲哀は失せぬ、怨嗟は潰えぬ、絶望は消えぬ。故に歌う、歌う、私は歌う。望みのままに。願いのままに」

 

そのまま、戦闘へ移る刹那

 

 

(マスター、マスター!)

 

(沖田さん?)

 

(はい、沖田さんです!そろそろ出番がほしいなーと思うのですが・・・どうでしょうか?ダメですか?)

 

(え、うーん・・・直ぐに全力出せる?)

 

(もちろんですとも!新撰組は常在戦場!屯所をでたら殺し合い、カルデア出たらぶったぎりですよ!) 

 

(解った、じゃあ私の合図で出てきて)

 

(はーい!沖田さんの剣さばき、ご覧ください!)

 

 

「マスター、準備を――」

 

 

――それは一瞬だった

 

「フォームチェンジ!『戦闘服』!」

 

指環を使い、一瞬でコスチュームを変更する

 

「先輩!?」

 

 

「――ガンド!」

 

そのまま指の先から、指向性の呪いを放つ

 

初歩の魔術と侮るなかれ、その力はマスター全てを賄う筈だったカルデアの魔力の決算

 

その莫大な放出は確実に、サーヴァントの自由を奪う――!

 

「がっ――!!」

 

「ほぅ・・・」

 

「来て、『沖田さん』!」

 

呼ぶが速いか、跳ぶが速いか

 

「――一歩音越え」

 

瞬時に間合いを詰める桜袴のセイバー

 

 

「二歩無間」

 

一瞬の、ワープのごとき歩方で、命の瀬戸際に辿り着く

 

「三歩絶刀――」

 

刀を抜き放ち――

 

「――『無明・三段突き』!」

 

――『全く同じタイミングの連突』を――胸に放つ!

 

 

「がはっ――――――!!!」

 

飛び散る鮮血、吹き出る血飛沫

 

胸を三度貫かれたオペラは、あっけなく倒れ伏した

 

 

「――戦場で唄なんて歌うバカで助かりました。斬ってくれと言ってるようなもんです」

 

チン、と刀を鞘にしまう

 

「てなわけで、いえーい!カルデアの沖田さん初勝利ー!見てくださいましたマスター!皆さーん!」

 

「貴様、アサシンであったか・・・見事な奇襲よ。島国のニンジャとやらは一回の奇襲はノーカンと聞いたが・・」

 

「うぇえ!?セイバーですよセイバー!今の突きを見ていただきましたよねぇ!?」

 

「いえ、その・・・あまりに意識の外過ぎて・・・」

 

「――すみません、見知らぬ方。見逃してしまいました・・・」

 

「ガーーーン!!カルデアセイバーの初仕事だったのにー!そんなー!」

 

「やはりカルデアには輝かしいセイバーがいる・・・聞こえているかセイバー。貴様だぞセイバー・・・」

――見事にすぎる瞬間移動、まったく同じ瞬間に放たれる三撃・・・

 

アサシンと器が言うのも納得だ。あんなもの、剣でもなんでもない。何か・・・もっと別の何かだ

 

沖田総司、新撰組最強剣士・・・

 

島国の日本は、こんなデタラメな人間がいたのか・・・

 

「お疲れさま、沖田さん。帰っていいよ」

 

「え!?もう終わりですか!?そんなー!不公平です!ジャンヌさんもヘラクレスさんもキャットさんも素敵な出番だったじゃないですかやだー!」

 

騒ぎながら、沖田は退出していった

 

 

「――絶命したのでしょうか・・・」

 

「確実に死んだと思うよ」

 

「どれ、背中を刺され無様に死んだ優雅の如く確かめてやろう」 

 

ゴン、と足先で頭を小突く

 

「存命か?まだ歌う気骨は残っているのか?怨霊」

 

 

「――来る」

 

「ん?」

 

「来る、来る――来る」

 

うわ言を呟く、オペラとやら

 

 

「何が来るのだ。主語をつけぬかたわけめ」

 

 

「魔女、魔女よ。聖女よりいでし魔女よ」

 

「――来る。邪悪がやって来る!」

 

 

「邪悪・・・?」

 

何を、と聞く前に

 

『ロマニ、復旧した!?聞こえる!?皆!』

 

「所長!」

 

『はい!皆!すぐそこから逃げてくれ!』

 

「泰然とせぬか。どうした?」

 

 

『来るのよ!来るの!』

 

『サーヴァントを上回る、超極大の生命反応――!!竜種が来るのよ!!』

 

――なるほど

 

「――慌てている理由はそれか」

 

「サーヴァントを上回る・・・!?そんなことがあるのですか!?」

 

『そうよ!竜種は幻想種の頂点!サーヴァントだって上回る大きさなの!』

 

『まずいわ――!ぶつかったらただではすまない!』

 

「あぁ、ここにいたのね!」

 

マリー達がやってくる。異変を察知し駆け付けたようだ

 

『皆、撤退してくれ!ギルガメッシュがいれば安心とも言い切れない!その王様防御が手薄だから、君達が先にやられてしまう!』

 

「手薄ではなく一任しているのだがな・・・さて、どうする?なんの成果もなく、骨折り損で逃げ帰るか?」

 

「それは――!」

 

「今逃げたら、いつここに来られるか解りません――!それに、打開策なく逃げ回っていたら、いずれ・・・」

 

――その通り。押し込まれるだろう。じり貧だ

 

「であろうよ。ヤツは貴様らを逃がしはしない。少しはマシな種を招いたのだ、気を入れているのは瞭然よ」

 

「じゃあ、どうしましょう・・・?」

 

――決まっている

 

ここでの答えなど、考えるまでもない

 

 

「――我が竜めを引き付けよう。貴様らは竜殺しを拾い上げてくるがいい」

 

「え!?」

 

「英雄王――!?」

 

『何を無茶なことを!竜種だぞ!?いくら君が規格外だからってそんな真似は!』

 

「たわけめ。貴様らは我の何を見てきた。本気で倒すならともかく、時間を稼ぐなぞ造作もないわ」

 

――そうだ。ここに来た時点で覚悟は決まっている

 

「竜殺しなど王の役目ではない。我の財を無駄に費やさねば沈まぬ竜の討伐など願い下げだ」

 

――竜殺しの宝具の選別は終わっている。その中には当然、防御の宝具もある

 

問題ない。時間は稼げる。自分なら――英雄王ギルガメッシュなら

 

「王には王の、料理人には料理人の、竜殺しには竜殺しの責務があるのだ。――行け」

 

だから、行ってくれ。ここは自分に任せてほしい

 

「竜の躾くらいはしておいてやる。目当ての宝、必ず手にせよ」

 

「ですが・・・」

 

「行こう!皆!」

 

『立香くん!?』

 

口火をきるマスター

 

「王様が言うんだもん、間違いないよ!私達は、私達のやることをやろう!・・・そうだよね、ギル?」

 

――目に涙を浮かべるマスター

 

・・・不安を圧し殺しているのが解る。死地に放る判断を下さねばならないことを

 

「ははは!それでよい。王の言葉だ、信じるがよい」

 

「――解りました。どうかご無事で、英雄王!」

 

「死なないでくださいね!」

 

「ゴージャス様!必ずまた・・・!」

 

『皆!その先に微弱なサーヴァント反応がある!そこにいる筈だ!』

 

 

「・・・無礼を詫びるよ。きみは大した王様だ」

 

「必ず戻るから――!」

 

走り去る一行

 

 

――これでいい

 

絶対の死地があるなら、自分が率先して立つ

 

皆を、みすみす死なせはしない。理不尽な死など認めない

 

必ず――皆を旅の終わりに導くために

 

 

自分が、何かを為すために・・・死の運命に立ち向かおう

 

 

「――わざわざ来てみれば。あなた一人ですか?」

 

凄まじく巨大な邪竜の上から語る魔女

 

 

「そうさな。我も散歩をするときもある」

 

「――なるほど。それはそれは――どこまでも嘗めてくれますね!このファヴニールを前にして勝てると!?」

 

「当然であろう」 

 

竜殺しの武具、総動員。砲門展開――350門

 

 

 

「我はゴージャス、ギルガメッシュ。――人類最古の英雄王。その程度の蜥蜴など見飽きておるわ」

 

――皆、ここは器と

 

「――試してみるか?我が財の真価を、その図体で余すことなくな――!!」

 

――無銘の自分が、引き受けた――!!

 

 

 



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勇姿

「あ、エミヤさん!よろしければ、一緒に汗を流しませんか?ボクシングの型から始めましょう!」

「・・・英霊になってからやりたいことが増えるとは・・・成長はしないはずなのだが・・・」


財を放つ

 

同時に、時間差に、設置して、精密に、時には無造作に

 

 

財を放つ

 

剣を、矢を、槍を、斧を、戟を、ビームを、弾を

 

 

 

財を放つ

 

 

翼に、胸に、身体に、首に、爪に、腕に

 

 

 

財を放つ

 

囲うように、正面から、背後から、頭上から、足下から

 

財を放つ

 

その総てが、邪竜必殺

 

 

遥か未来に英雄が手にする、幻想の原典

 

 

財を、放つ。

 

 

それら総てを――ファヴニールに叩き付ける――!!

 

 

「くっ!!何をしている!薙ぎ払え!ファヴニール!!」

 

巨大な腕が振るわれる

 

させない。軌道に合わせ槌で叩き落とす

 

尻尾が打ち据えんと振るわれる

 

無駄だ、鞭を使いはたき落とす

 

飛翔せんと羽ばたく

 

逃がすものか。槍で翼を貫く

 

ファヴニールがやろうとすることを、先んじて潰していく――!

 

 

「見上げた頑強さよ。竜殺しが特効ではなく、竜殺しの武具でなければまともに通らぬとはな。――流石に我も分が悪いか」

 

宝具を展開、更に宝門を増やす

 

「いくら撃とうが些末、決定打にはならぬか。――よし。宝具を増やす。サービスと言うやつだ。我の気前のよさに震えよ」

 

追加、50門。ファヴニールを取り囲うように放つ財宝

 

怒濤の絨毯爆撃がファヴニールを打ち据える。生命の大元には届かないが、弱らせることは出来るだろう

 

 

「嘘でしょう・・・!?あんたの宝は底無しなワケ――!?」

 

「あるとも。底は確かにある。人間どもがその可能性を吐き出し進化を止めた時が我の蔵の底を見せるときだ」

 

がっしりと腕を組み、応えるギルガメッシュ

 

「それが人の裁定の時よ。――まぁ、それはまだまだ先のようだがな」

 

「何よ、何よ・・・!ふざけないで!!なんでよ!」

 

ギリィ、と歯を噛み砕かんばかりに食い縛るジャンヌ

 

 

「なんで私が、ファヴニールが、こんな――ジルが言っていたのに!私は無敵だって!思うがままに振る舞えっていったのに!どうして――!!」

 

「一重に運用の拙さが要因だ。竜とは本来軍や都市を攻め入らせるもの。或いは財を守護させるもの――それ故その巨体と生命力が脅威となる」

 

剣を掴み、ジャンヌに投げつける

 

「小人がごとき存在を踏み潰せと言われても竜も困惑しような。――田舎娘に軍略のたしなみがあるものかと眼を見張ったが――我の目も霞がかかったか。泣きついて得た玩具を自慢気に見せびらかすだけとはな。失笑ものよ」

 

 

「っ!」

 

旗で剣を払うジャンヌ。顔面が赤いのか青いのか――解らなくなっていた

 

 

――まだ善悪は解らない。それを理解するには何もかもが足りない

 

それでも――散っていった生命を悼む心と想いは確かに残っていたみたいだ

 

 

今はそれでいい。今はそれが解ればいい

 

無念を抱いた魂を、絶望に拐われた魂を想う、それだけで今はいい

 

 

――万分の一でも思い知れ、竜の魔女

 

 

「あぁ――どれ程虚勢を張ろうが貴様は所詮、田舎娘―――」

 

 

お前が奪った者達の尊さを――

 

 

「ゴージャスな王たる我との間には――けして埋められぬ溝があったのだな!竜に頼るとは所詮雑種、いや。それを生かせぬとは最高の道化よなァ!!イシュタルよ見ているか!ヤツはさぞ貴様と話が合おうよ!負け惜しみに華を咲かせるがよい!フ――――ハハハハハハハハハッ!!」

 

お前達が奪った人達の価値を――!!

 

「――英雄王ぉおおぉお――――っ!!!」

 

怒髪天をつくジャンヌが剣を抜き放つ

 

 

「殺してやる!殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるうっ!!!」

 

「ハハハ、やってみよ。それが出来ぬから歯噛みしているのであろうが、脳筋めが」

 

「お前なんか、お前なんか!財宝がなければ何も出来ないくせに!財宝のおまけの癖に――!!」

 

「財を持たぬ負け犬どもの常套句よな。我には財を手にする資格があり、財の価値を見定める智恵があり、財を産み出す土壌がある」

 

――そうだ。それこそがギルガメッシュの力、ギルガメッシュの特権だ

 

価値あるものしか財にしない。一度たりとも贋作に惑わされぬ見識と叡智。産み出す者を正しく裁定を為す

 

その視点の凄まじさこそが――この英雄の力だ!

 

 

「それ故に我が称号は英雄王なのだ。――そら、見せ場をやろう。足らぬ脳を使い我を愉しませよ。一方的な蹂躙は観客が醒めよう」

 

あえて手を緩める。次の攻撃を捌く宝具を装填するためだ

 

 

「ファヴニール!!吐息を放て――焼き尽くせェ!!」

 

ファヴニールの口から火焔が漏れだし、熱量が膨張する

 

「ようやく本領を発揮させるか。拙い主だと苦労するな。蜥蜴よ。天の牡牛めと気が合おうな」

 

「放て――――!!」

 

放たれる極炎、直撃すれば魂も焼かれる凄まじき暴力、無双の吐息

 

 

――通させはしない。当然備えはある

 

パチリ、と指を鳴らす

 

 

――精緻にて豪奢な紋様をあしらわれた巨大な城壁が屹立し、ブレスを完全に遮断する

 

 

「――馬鹿な――!!ファヴニールのブレスが――!?」

 

「此は原初の母に捧げられし神器。天と地とに別たれた母の性質を擬似的に再現した宝具よ。これを破るには世界を切り分ける威力の武具が要る」

 

やがて防ぎきり、城壁を回収する

 

 

「微風がごとき鼻息なんぞ、我に通る道理もない。――命拾いしたな、田舎娘」

 

 

カウンターにて、喉に宝具を放り込む

 

「我が時間稼ぎなどというものに耽らなければ、竜を早くも失っていたぞ?」

 

 

「――馬鹿な、こんな――馬鹿な――」

言葉を失うジャンヌ

 

 

――解ってはいるが、ジャンヌと同じ顔、同じ声音で愕然としている姿を見るのは、少し・・・辛い

 

 

だが、竜の魔女の災難は終わらなかった

 

 

「――久しぶりだな、ファヴニール」

 

「――!!」

 

雄々しい声が響き渡る

 

「アレは――まさか――!」

 

「お待たせ、ギル!」

 

 

「よい、許す。宝を見つけたなら上々よ。ミミックだったなどという落ちでは無かったか」

 

 

竜殺しが――名乗りをあげる

 

「――蒼天の空に聞け!我が名はジークフリート!!蘇りし邪竜を葬りし者なり――!!!」

 

 

――此処に、マルタの祈りはカタチをなしたのだ――




「天使を殴り殺す、拳で海を割る――まずはそこを目指しましょう!!」


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すまない

「「せーの、バルス!」」

「天空の城、ラピュタ・・・いいです・・・いい・・・」

「台詞すべてが名言の男は伊達じゃないですね~」

「次はトトロを見ましょう!トトロ!」

「ジブリとは素朴な味わい・・・ゆる~く見ましょゆる~く」



「フォームチェンジ!『魔術制服』!スキル発動、霊子譲渡!」

 

 

フォームチェンジリングを発動し、魔術礼装に備わった効果にて、マスターがジークフリートに魔力を贈る

 

 

「すまない。手厚いサポート、感謝する」

 

 

マスターに、礼儀正しく頭を下げるジークフリート

 

 

「何を、そんな死に損ないのサーヴァントごときが・・・!兵士達!ファヴニールを護りなさい!」

 

 

亡骸が組み上がり、多数の兵士が出来上がる

 

 

――戦えるのか?見る限り体がボロボロだが・・・!

 

 

「――貴方が彼女達の言う英雄王とお見うけする。俺の名はジークフリート。ニーベルゲンの歌を原典とする神話の出自の英霊だ。貴方のマスターの嘆願に感銘を受け、この剣を預けるに至った」

 

チャキ、と音をたて、大剣を構える

 

 

「貴方の奮闘、偉容に添えるかは解らないが・・・全力を尽くす事を許してもらいたい」

 

――誠実な印象を抱かせる物腰・・・高潔な英霊であることは間違いないようだ

 

 

「我等に散々手を焼かせたのだ。貴様の手腕を示せ。それを判断材料としてやろう」

 

「――任せてくれ。故あって全力は出せないのだが・・・」

 

 

身の丈ほどの大剣を、八相に構える

 

「――渾身を、この力を求めた君達の為に振るわせてもらう――!!」

 

 

爆発的な推進、一瞬の刹那

 

 

「おおぉぉっ――――!!」

 

 

嵐のように激しく、津波のような怒濤の剣技が一瞬で雑兵を蹴散らし、吹き飛ばし、悉くを粉砕していく

 

 

「――――・・・・・・!」

 

「・・・ファヴニールが怯えている・・・?あのサーヴァント・・・まさか・・・!」

 

 

剣閃がきらめく度に粉々にちぎれとんで行く雑兵。瓦礫と残骸を撒き散らし吹き飛ばし、えぐり飛ばしていく超絶の技巧の剣

 

 

「ほう、竜殺しといった大層な肩書きに違わぬ腕よ。紛れもなくセイバークラスであろうな」

 

――凄い。これが、最優と呼ばれたセイバークラスの本懐

 

沖田の磨きあげられた太刀筋とはまるで違う、質実剛健と迫力を伴い、唸りをあげる無双の絶技――

 

「ファヴニール・・・まさか甦っていたとはな。まぁいい」

 

 

後ろに回り込もうとする兵士――が

 

 

「ぬんっ!!」

 

目にも止まらぬ速さで一瞬の内に身体を反転させ正面に相手を捉え、幹竹割りの要領で粉砕する

 

 

「やけに背中を気にしているな。アレか、触れられたくない呪いでも背負ったか?背中だけに、な」

 

 

「――フッ」

 

ジョークをニヒルに笑うジークフリート。

 

 

――いい人だ。なんとなく、今の反応でそう思えた

 

 

「詳しい事情は後で話したい。――英雄王の威光に随分と痛め付けられたな、ファヴニール」

 

 

「――――!!!」

 

 

因縁を思わせるジークフリートの言動。・・・やはり、というべきか。恐らく彼とファヴニールは、同じ神話の出身なのだろうか

 

「――貴様に同情はない。何時の世にも貴様が邪竜以外で顕れよう筈がない。――故に」

 

最後の雑兵を粉砕し、流れるように大剣を胸の前に構える

 

爆発的に高まる魔力――宝具が開帳される合図だ・・・!!

 

「――いつの世も、俺とお前は――死力を尽くして戦うのみだ――!!」

 

埋め込まれた玉石が、光かがやく。黄昏色の魔力が、辺り一体を満たしていく

 

『真エーテルの輝き・・・!凄いぞ!かつて失われた時代のエネルギーをあの剣は産み出せるのか!』

 

『マシュ!念のため立香を護りなさい!』

 

「はい!」

 

「――邪悪なる竜は失墜し――世界は今落陽に至る――!!」

 

「ッ!上昇なさい!ファヴニール!!」

 

 

「――撃ち落とす!!」

 

――軌道からファヴニールが逃れるのと、エネルギーが臨界に膨張するのは同時だった

 

「ふん」

 

泰然と眺める器――放たれる!

 

「――『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)――』

!!!」

 

黄昏色の練り上げられたエーテル、それを一気に剣から放ち、軌道上にある万物を呑み込んでいく

無双の放射が延びていく

 

 

「きゃあぁあぁあっ!」

「先輩!離れないでください!!」

 

『なんて威力なの――!!』

 

辺りを暴風が蹂躙していく。勢いを増し、力を増し、凄まじいまでの質量が全てを吹き飛ばす――!!

 

 

 

「・・・――すまない。外したようだ」

 

 

間一髪離脱に間に合ったファヴニール。忌々しげにみやる魔女ジャンヌ

 

 

「――竜殺し・・・そして、英雄王・・・!!」

 

 

「――ファヴニール、覚悟を決めるがいい。貴様が何処にいようとも、必ず俺が貴様の息の根を止める」

 

剣を高々と掲げる、竜殺しと謳われしセイバー

 

 

「竜を殺すことにおいて――俺に並び立つ者はない。――邪なる竜は、必ずや祓われると知れ――!!」

 

「だ、そうだ。精々蜥蜴の首を洗って待っておけ」

 

 

「――くっ・・・!!」

 

 

反転し、飛び去っていくファヴニール

 

・・・最大の脅威は、なんとか退けることができたらしい

 

 

「貴様の手練手管、確かに見届けた。――苦労を省みず手にいれるだけの価値はあったようだな」

 

「――・・・あぁ。話は聞いている。狂いながらも俺に希望を繋いでくれた聖なる女性がいたと」

 

――聖マルタだ。やはり、ジャンヌの心に、彼女は強く生きている

 

「貴方の、手を煩わせたのは・・・本当に、すまない・・・と・・・」

 

 

カラン、と剣を落とす

 

 

――どうしたのか・・・!?

 

「――呪いか。念入りな事よ」

 

器が、誰ともなく呟いた――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もう、なりふりかまってられないわ・・・!」

 

撤退しながら、ジャンヌが呻く

 

「こうなったら、やられる前にやらなくちゃ――!ランスロット!サンソン!」

 

 

「――」

「はい、追撃ですね」

 

 

 

「えぇそうよ!ファヴニールを・・・私を護りなさい!」

 

 

「――だそうだ。行こう、黒騎士」

 

「――――arrrrr!!!!」

 

 

「ようやく逢えるね――マリー・・・」

 

 

(ジル、ジル・・・教えて・・・私は、どうすればいいの・・・!?)




「待たせたナ、注文のパンと羊羮である」

「やったー!いただきまーす!」

「焼きたてのパンは、味わい深いですね・・・!」


「サブメンバーは呑気、常識なのだな。こんな状態で呼ばれた暁にはキャットは羞恥で死ぬ」


「食べ終わったら、またアニメ見ましょー!何見ます?」

「そうですね・・・グラップラー刃牙とか、気になりますね・・・」


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因果

「いやー、探れば探るほどアニメが出ますねぇ!もうこうなったらガンガン見ましょう!どんどん見ましょう!」

「はい!私、もっともっと文化に触れたいです!」

「いいですとも!どーしても暇になりますからねぇ~沖田さんたちはヤル気満々なんですよねぇつらいな~。沖田さんつらいな~」

「はい!心は常に臨戦です!」

「そうですとも!・・・ん?英雄王からメッセージですか?」

『帰還の折、貴様らの待機姿勢を査定する』

「――――」

『映像にて確認する故、弁明は聞かん、怠惰に過ごしていた場合・・・』

『王の裁きを下す』

「――――――――――」

「・・・どうしました?顔が真っ青、いや蒼白ですが・・・ 」


「えぇい・・・!身にかかった呪いかなにか知らんが、自ら動く事も叶わぬとは弱りすぎだ貴様!」

「すまない・・・手間をかけてすまない・・・」

 

 

『頑張れ英雄王!体格的に君しか肩を貸してあげられないんだ!』

「えぇい緊急時だ!仕方あるまい!しかし重いな貴様――!」

 

「すまない・・・鎧が重いのだ、すまない・・・」

 

 

ファヴニールは去ったものの、置き土産のつもりか、二体のサーヴァント反応がこちらを追撃してくるという情報を所長とロマンが関知してくれた

 

 

ジークフリートは魔力を使い果たし撃沈。先程は全身全霊を振り絞った為の力だったようだ。今はまともに歩けすらしないほど疲弊しきっていた

 

 

「代われ音楽家!我がこのようなむさ苦しい真似を何故せねばならぬ!」

 

「人が嫌がるものは他人に押し付けちゃだめだぜ?筋力的に君が適任なのさ」

「私が代わろうか?ギル!」

 

「たわけ!自分の身を案ぜぬか!貴様は貞節の観念が甘い!付き合いもしておらぬ男と密着などするな!馬鹿者!」

 

『お父さんみたいだぁ』

 

『馬鹿な事いってないで!ヴィマーナを着陸させているポイントはもうすぐよ!』

 

「追われるのも素敵ね?捕まってしまうのかしら――!」

 

「くっ、このような時の為の肉達磨であろうが――!」

 

「では英雄王、この旗持ちが――!」

 

 

「前を向け前を――!チィ、迫っている速度が速い!追い付かれるぞ!」

 

――どうしても怪我人を背負っていては離脱が遅れてしまう。それは解っているが・・・

 

「すまない・・・すまなくてすまない・・・」

「貴様そればかりよな!悪くもないのに謝罪するは逆に無礼と知れ!」

「すまない・・・」

「無限ループというやつか!語りをいれた我が愚かであったわ!」

 

――戦力になるかなんて関係ない。誰かの助けを必要としている者をみすてるわけにはいかないのだ

 

たとえそれが、英雄であろうと!しかし重い!

 

 

『前方に人影だ!フランス軍がいるぞ!』

 

 

「救援要請を送りますか!?」

 

「いいえ、私を見てしまえばあの人たちは・・・!」

 

 

「唾を吐いてくるだろうね!人間は汚い!見たいように見て聞きたいように聞く生き物だからな!故郷を滅ぼした魔女と同じ顔をしている奴に頼る筈がないと思うぞ!」

 

――人間とは、難しい生き物だと思う・・・

 

 

「よし!こうなったら・・・!」

 

『立香・・・!?』

 

 

「迎え撃とう!逃げたって無駄ならやっつけるしかない・・・!」

 

「――――ハッ、それはよい!我好みの采配だ!」

 

 

――やはり、それしかないようだ

 

 

ヴィマーナで逃げたとしても、脅威はどこまでも追ってくる――

 

 

ならば・・・いっそ。ここで迎え撃つより他はないのかもしれない・・・!

 

 

『サーヴァント、来るぞ!ワイバーンも大量だ!全く!どこからこんなに仕入れてくるんだ!聖杯って便利だな!』

『ワイバーンはフランス軍にも向かうわ!誰か戦力を回せる!?』

 

 

「私が行きます!私が何者であろうと、もう私は初志を違えない!聖マルタに誓って!」

 

 

「よし――では行け!仕損じるなよ!」

 

「そちらも!」

 

駆けていくジャンヌ。――無事で!

 

 

『サーヴァント!来るぞ!数はフランス軍に一騎!そちらに二騎!』

 

「えぇい――少しばかり席を外せ!竜殺し!」

 

「ぐ――!」

 

波紋を展開、回復カプセルにジークフリートを叩き込み一時的に異空間に放り込む!

 

「開け、我が蔵よ!露払いは我がやろう!」

 

竜殺しの財は装填済みだ。回収も出来ている!

 

「一掃せよ!『王の財宝』――――!!」

 

空中に犇めく無数のワイバーンを片っ端から撃墜していく

 

――だが、既にフランス軍の方に向かったワイバーンはジャンヌに任せるしかない。死角に行ってしまった――!

 

 

「いいぞぅ!空のトカゲさえ何とかなるならやりようはある!」

「ゴージャス様、貯蓄は大丈夫ですの!?」

 

 

「無論だ!尽きぬ財!それがゴージャスのクラスの最低条件よ!」

 

――しっかり回収もしている。問題ない。それ専用の宝具を駆使する――!

 

 

「――やぁ、マリー」

――対峙する。ロングコート、白髪の青年

 

冷えきった眼の、暗く、死臭を漂わせし男

 

「・・・まぁ・・・奇遇ね。気だるい職人さん?」

 

「・・・野郎」

 

「私は貴方を忘れたことは無いわ、ねえ?」

 

「僕もだよ。白雪のごとき、白いうなじの君・・・」

 

 

 

 

「Arrrrrr――!!!!」

 

視界の外から襲い来る一撃を、目と鼻の先にて防ぎ吹き飛ばす

 

 

空中で見事に体勢を建て直し、相対する

 

「――ほう・・・随分と目障りな顔がいるな」

 

黒いフルフェイスヘルム。赤く爛々と光る眼。武骨ながらも質実剛健な作りの騎士

 

 

「・・・貴様も呼び出されていたか――狂犬めが」

 

「――――――!!!」

 

――器が、目の前の騎士を睨み付ける

 

――何れかの世界で、因縁が器とあったようだ・・・!

 

「相も変わらず不躾な目で我を見やるものよな。――良かろう」

 

パチン、と宝具を展開する

 

 

「優雅めの無粋な横槍にて流れとなった誅罰、ここで果たすか――戌ッ!!」

 

――予感がする

 

 

あの相手は、危険だ・・・何故かは解らない

 

だが――感覚が告げている

 

一層、気を引き締めなくば・・・足下を掬われる相手だと、器が告げている――!




「どどどどどうしましょう!?どうしましょう!?王様に怒られ、いや・・・殺されるやもしれません!どうしましょう!」

「?正直に言えば良いのでは?」

「うわーんどうしましょうー!!王様に怒られるー!!」


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突破

「うわーん!やっぱりダメです!あの王様を私の浅知恵で欺けるわけないじゃないですかー!!」


「どんな罰も受ける覚悟は決めましたが、カルデアの退去だけは・・・マスターから離れる事だけは・・・!」

「――はっ!欺けないなら・・・!」


――目を擦る。魂をかけてあの黒騎士をみやる

 

 

 

――おかしい。『何も解らない』

 

 

器の眼でいくら見通しても、まともな情報が入ってこない――!隠蔽式の宝具を展開しているのか・・・!?

 

 

「騎士を名乗る割には姑息な輩よ・・・!よほど後ろ暗い過去があると見た!」

 

 

――だが、器が告げている

 

『無駄を放つな』と――。その意味を考えている時間はない

 

 

「Arrrr――――!!」

 

重機関車のような勢いと威力を以て黒い騎士が疾走する――こちらに距離を詰めてくる!

 

考えている時間はない。あの騎士は相当のやり手だ――!

 

 

無駄を放つな――放つことが出来ぬならば・・・!

 

 

「――はぁっ!!」

「!!」

 

自らのステータスを上げる『手甲』と『足甲』を装着し、格闘戦を展開する

 

 

「面食らった顔だな!我が原初の戦いを修めておらぬとでも思ったか!昔はヤツめと毎日覇を競ったものよ!」

 

――何が起こるのか解らない戦い、放つなという器の言葉・・・

 

いつもの射出では、分が悪い筈だ・・・!

 

「貴様の手垢で、我が財を汚させはせぬ!」

 

旋風脚にて黒騎士を突き離す

 

 

「英雄王!援護します!」

 

マシュが間に割り込む。助かる!ありがとうマシュ!

 

「気が利くな!よい嫁になろうな!貴様は!」

 

「Arrrrrrr――――!!!!」

 

 

――――信じがたいことが起こる。自分の目すら疑った

 

 

ランスロットは無造作に『木の枝』を拾い――

 

「ぅううぅう――!!!」

 

マシュの盾を、執拗な迄に打ち付けてきたのだ――!!

 

「マシュ!!」

 

「なんと手癖の悪い戌よ・・・!そこらの枝すら宝具にするとは!」

 

――読めた、そういう事か

 

あの騎士は、恐らく自らの宝具の効果で『つかみとった』ものを何でも制圧して宝具にしてしまうというわけか!なるほど、放てば取られ、敵に塩を贈ってしまうという仕組みだ・・!

 

『宝具を奪う・・・――恐らくそれは、敵の武器を奪い倒した逸話から来ている!そんな武勲を持つ騎士なんて一人くらいよ!』

 

オルガマリーが声をあげる

 

『ランスロット・・・!恐らく湖の騎士、ランスロットよ!そのサーヴァントの真名は!』

 

「なんで騎士がバーサーカーなの!?」

 

『ランスロットは痴情の縺れや狂乱の逸話をいくつも持っている!バーサーカーの資格もあるんだ!』

 

「でかしたスタッフ二人!だがマシュを省みぬか!」

 

 

「うぅぅあぁあぁあ!!」

 

乱雑どころか精緻な枝捌きを見せるランスロットに防戦一方なマシュ

 

――触れられて不味いのなら、爆発する宝具や毒を浸した宝具を選別するまでだ・・・!

 

――と、そのときだった

 

「!?」

 

「――そこっ!!」

 

突如蒼いスパークがおこり、辺りがフラッシュする

 

そこにいたのは――

 

 

「沖田さん!」

 

「はい、沖田さんですとも!このランチキは引き受けますから、状況の打開を――!!」

 

言いながら、ランスロットの攻撃を完璧な太刀捌きで完璧に凌いでいく沖田

 

――まさか、自分から飛び込んできたのか!?

 

「セイバー擬きではないか!貴様独断で駆け付けたのか!」

 

「はい!――やっぱり座して待つなど私にはできません!」

 

「――――!!」

 

「私は新撰組!掲げた誠の旗は、戦場にてはためかせます――!!」

 

言うが早いか飛び込む沖田。ランスロットと打ち合い、火花を散らしていく

 

 

 

「――――――arrrrrr!!!!!」

「はぁあぁあぁあ!!!」

 

 

新撰組随一の剣客、沖田総司の剣さばきは決してランスロットにひけをとらなかった

 

いや・・・瞬間移動を繰り返し翻弄し続けるそれは、真な剣とよべるかは解らないが・・・!

 

 

「マシュ、ギル!沖田さんの頑張りを無駄にしちゃダメだよね!」

 

マシュとマスターが傍に侍る。

 

 

――思い返す。記憶がよみがえる

 

 

『事が済んだら、カルデアも財に加えてやるとしよう――』

 

――そうか・・・!!その手があったか!

 

「マシュ!マスター!耳を貸せ!」

 

 

「え!?」

「何でしょうか!?」

 

「業腹だが――ヤツと我では相性が悪い!弾丸を放った先から掴まれるなど面倒極まる!」 

 

――この作戦には、二人の力が必要だ・・・!

 

「我に力を貸せ!なんとしてもあの頭蓋、砕いてやらねば収まらぬ――!!」

 

慢心や油断をしないということは、何も財を選ぶ事ばかりではない・・・!

 

「はい!もちろんです!」

「私に出来ることなら!」

 

『誰かを頼る』事だって、油断なき選択の一つだ!

 

「よい返事だ!長引かせると不利だ、手早く決めるぞ!」

 

 

 

「身体が軽い・・・!こんな気持ちで戦うなんてはじめて!」

 

瞬間移動を駆使し太刀筋を読ませず縦横無尽に剣を浴びせる沖田

 

縮地――特殊な歩法により、瞬間移動すら可能な足運びの極致たるスキル

 

それが沖田の剣技を摩訶不思議なものへと変えていたのだ

 

――汚名は武勲で返上する!怠けたぶん働いて見せる!

 

少しでも、彼女たちの助けになれば――!

 

攻めきれぬランスロット、行ける!

 

「もう何も――こふっ!?」

 

突如、沖田の動きが止まる

 

(こん、な時に――!)

 

デメリットスキル、病弱――後世の沖田総司のイメージ『沖田総司は病を患っていた』という印象の付加によるバッドステータス

 

それが今、最悪のかたちで発動してしまった・・・!

 

 

「Arrrr――――!!!!」

 

振り上げられるアームハンマー。――頭蓋を砕かれる――!

 

(――ここまでですか・・・!沖田総司、完っ――!!)

 

――フラグは折るものだ!

 

 

「やぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

 

マシュが猛る気合いと共にランスロットにぶち当たる!

 

「――!!」

 

「マシュさん!」

 

「――今です!!先輩!」

 

盾でランスロットを押さえつけるマシュの声に、立香が走る!

 

「うぉおぉおぉおぉお!!!女は度胸――――!!」

 

全力で走り、――マシュの肩を踏み台に跳ぶ!

 

 

「マスターっ!!?」

 

沖田が驚愕するのも無理はない。何をする気ですか!?

 

 

「チェンジ!『戦闘服――!』」

 

マシュとランスロットを飛び越えながら、ランスロットに狙いを定め礼装を変化させる!

 

「『ガンド』――!!!!」

 

空中で逆さまになりながら、ランスロットの背中に向けてガンドを放つ!

 

『Garrr――!!!!???』

 

直撃し、動きが完全に停止する――!

 

「沖田さん受け止めて――!」

 

 

「なんっ――はぁああっ!!」

 

気合いを振り絞り、縮地にてマスターを連れ離脱する

 

 

「今だよ!ギル――!!」

「今です!英雄王――!!」

 

 

――任せろ!!

 

 

「ハッ!思い上がったな狂犬!今や我の財は蔵だけにしまうものだけではない!」

 

 

満を持して開帳する財宝100門、その全てがダガーナイフ、短剣の類いだ

 

「人類の明日の為に奮闘する者達――それこそが、今の我の新たな財よ!!」

 

そうとも――マシュもマスターも――

 

 

自分の――宝物だ――!!!

 

 

「今こそ喰らえ――!!『王の財宝』――!!!」

 

 

無数の短剣とダガーが動けぬランスロットを徹底的に穿ち抜く――!!

 

「Arrrrrrr――――――――!!!!」

 

 

「油断も慢心もせねば、貴様に手を噛まれる道理はないわ、雑種が――!!」

 

 

地面が抉れるほどに放たれる無数の財

 

 

やがて――土煙が晴れる

 

 

「――――・・・アー・・・サー・・・」

 

 

末期の呟きを残し

 

 

ランスロットは消滅していった――

 

 

「ふははは!貴様の狼藉のツケ、確かに払ってもらったぞ!二度とその薄汚い面を見せるな!永遠にな!ふはははははは!!」

 

 

――高笑いする英雄王。そんなに嬉しかったのかな?

 

 

「マシュ、沖田さんもやったね!」

「はい!」

「・・・びっくりしましたよ!もう!」

 

 

――皆も無事だ

 

どうやら・・・異世界のリベンジを・・・無事、果たせたらしい

 

――少しは、自分も貢献できただろうか。そうだったら――嬉しいな



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変態

「正直に言ったら活躍を褒められました!ヤッター!ご飯に3食たくあんと青汁命じられました!やだー!一ヶ月トイレ掃除なんですか!俊足を生かして半日でやれ!?遅れたらたくあん山盛り!?そんなー!!食べ飽きたんですってばぁ!うわーん!!」

「私も手伝いますよ沖田さん!カルデア・文化の集いの輝かしい門出ですね!会員の証としてQuickTシャツをどうぞ!私はArtsTシャツを!」

「私を見捨てないでくれるんですかジャンヌさん・・・!ありがとうございます!私、やりますとも!カルデアにいられるなら、これくらい平気、へっちゃらです!」

「かくして見目麗しき便所掃除の集いが結成と相成った。豚に真珠ならぬ、厠に聖女?キャットはわからぬ」

「――ごめん、オレ―ー英雄王にどう接していいのか解らない――」

「力を合わせて敵を打ち破るジャスティスムーヴを見せられガラス細工は猫の前におかれたサカナのごとし。消滅という訳だな。キャットは丸くなるぞ」

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛(これが子供達の英雄か――)」


「またこうしてまみえる事ができた運命に感謝を。やはり貴女と僕は深い運命で結ばれている」

 

シャラリ、と研ぎ澄まされた刃を引き抜く処刑人

 

 

「だって、そうだろう?同じ人間を二度に渡って処刑する。二度も、死の旅路を見送れる」

 

 

にこやかに笑う青年。冷ややかな笑み

 

 

「――そんな星の下に生まれることができたのは、僕達だけだと思うんだ。ねえ?白百合の王妃よ――」

 

 

その目には、穏やかな――使命感が灯っていた

 

 

今一度、君の首を

 

今一度、君の旅路を

 

今一度――この刃にて安らぎを

 

 

「・・・生前だけでは飽きたらず、今回も彼女を処刑する気満々と来たか」

 

苦々しく、アマデウスが呟く

 

 

「どうやら本気でいかれてたみたいだな、 シャルル・アンリ・サンソン?」

 

 

 

――シャルル・アンリ・サンソン。処刑の残酷さを憂い、より苦しみのない処刑装置――ギロチンを発明した、代々なりし処刑一族

 

マリー・アントワネットの首をも――彼は手にかけたのだ

 

 

「――人間として最低品位の男に、僕と彼女の関係を語られるのは不愉快だな」

 

 

静かな怒りを燃やすサンソン。声音に力がこもる

 

 

「お前は人間を汚物と断じた。醜いものだと。僕は違う。人間は美しいものだ、尊いものだ」

 

ゆっくりと剣を掲げる

 

 

「だからこそ。処刑人は命に敬意を払う。敬意を以て、苦しみと共にその首を断つ」

 

「――人を愛せない人間のクズめ。そんなお前に、尊きその王妃に寄り添う資格はない――!」

 

「別にお前の許しなんかいらないね。頼まれたってマリーから離れてなんかやるもんか」

 

「・・・そうか。お前に耳以外の機能を期待しても無駄なようだね」

 

やれやれと首を振るうサンソン

 

 

「アマデウス、彼は――」

 

「悪質なストーカーに構うことはないさ、マリー。・・・大丈夫」

 

スッ、とマリーの前に立つ

 

 

「君を処刑させたりなんかしない。輝くべき君をね。――あぁ」

 

自嘲するように、笑うアマデウス

 

「――本当は。君が生きてる間に言ってあげたかったんだけどね――」

 

――自分が生きてさえいれば、君にあんな結末は迎えさせなかったのに

 

今の言葉には、狂おしい情愛が在った

 

 

「あの変態は僕に任せてくれ。変態とクズ、最低決戦といこう」

 

 

「アマデウス・・・今のは、貴方の・・・」

 

「大丈夫さ、マリア。後悔なんてしてない。今こうして話していられるだけでも儲けものさ」

 

 

「――不愉快だな。本当に――君がその人と話しているという事実こそが承服しがたい不愉快さだ――」

 

「お互い様さ。僕もお前が嫌いだしね。根暗変態イカレ首切りマニア」

 

 

「ー何だと・・・?」

 

 

「聞こえなかったのかい、⬛⬛⬛⬛野郎。耳にクソが詰まってるのかい?いや、すまないね。首切り野郎に審美を求めるべきじゃなかったね」

 

口火を切るアマデウス

 

「お前、相当気持ち悪いぜ。マリア以外の女性からは指を指されて言われるだろうさ『首切り童貞サンソン!股間のギロチンはいつエスポワールするの?まさかセルフギロチ』」

 

 

言い出す前に切りかかるサンソンを、指揮棒で受け止めるアマデウス

 

「黙れ――!!」

「黙って聞けよ童貞サンソン。知らないだろう?マリーの朝起きて放つ清水の音を。食べ物を咀嚼する音を。快活に靴を履く音を」

 

 

指揮棒を振り回し弾を放つ、音感の弾を

 

 

「昼に寝転び胸がつぶれる音を、夕陽に息を飲む音を、シャワーで口ずさむ鼻唄を、安らぎに立てる鼻息を」

 

 

切り払うサンソン。顔には明確な嫌悪感が沸く

 

 

「――僕のマリアを汚すな変態め――!!」

 

「これを汚れと言うからお前は童貞なんだ。これはマリーの刻む音、命の演奏だ。女に幻想を持つのは勝手だが、うんちをしない女の子はカルデアとやらの所長しかいないぜ?」

 

「黙れ――!!その口、首ごと断つ――!!」

 

振るわれる刃、振るわれる指揮棒

 

 

「貴様に僕と彼女の何がわかる!彼女は処刑の間際まで、気遣いと愛を忘れなかった――!彼女に靴を踏まれたのは僕の誇りだ――!あのうなじ、あの首筋を思いどれだけ僕が想いを馳せたことか――!!」

「これだから⬛⬛⬛野郎は――下らない勘違いでマリアを頭でひんむいてラモールエスポワール(意味深)していたんだろう?だって僕もやるからね!寝息を聞くたび頭がさえわたる!爽やか爽快になるのさ!」

 

「白装束を纏った彼女は白百合の具現だった――!美しい、素晴らしいとさえ思った!首を絶ち、転がった彼女と目があった!――微笑んだんだよ、彼女は、僕に!――最高の体験だった――!!」

 

「⬛⬛⬛の⬛⬛⬛野郎め!お前の趣味は最高に⬛⬛⬛⬛⬛な⬛⬛⬛⬛⬛だ!今すぐ座に帰ってズボンを下ろしてイマジナリマリアに⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛で⬛⬛⬛⬛⬛な事をして引きこもっていろ!!」

 

ぶつかり合い、つばぜりあう

「マリー、マリー、マリー、マリー!貴様はいらない、貴様はいらない!邪魔だ、目障りだ!」

「奇遇だな!僕も同感だ――この変態首切りマニアが!耳障りなんだお前の陶酔ポエムは!センスが欠片もない――!」

 

 

「アマデウス――!!!!!!!」

「僕の尻を舐めろ、サンソン――!!!!!」

 

 

――その時

 

 

「えーい!『百合の王冠に栄光あれ』――!」

 

フランス王権の紋章が入ったガラスの王馬が割り入り、二人をもろともに吹き飛ばした

 

 

「がはっ――!!!?」

「何故僕まで――!!」

 

 

タカラッ、タカラッと蹄を弾ませるガラスの馬 

 

 

「え?うふふ、だって当然でしょう?」

 

華やかに、王妃は笑った

 

 

「――私、とても恥ずかしかったんですもの!顔から火が出てしまいそう!マスター達が聞いていたらどうするの?私を怒らせたいのね?そうなのね?もう一度はねられなさる?二人とも?」

 

華やかに、王妃は笑った

 

「私を、怒らせたいのね?」

 

 

「・・・ああ、やっぱり君は―――」

「誤解だよ・・・僕は真面目に・・・」

 

がくり、と二人が倒れ伏した

 




「まずは、サンドバッグを粉砕するところから――えいっ!」


ベシッ

「フォームが違うのでしょうか・・・脇を閉めて、肩を丸めて・・・」


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鉄拳

「ハム、ハフハフ、ハフッ!」

「・・・本当に激辛で良かったのか?辛さは抑えられるが・・・」

「ハム、ハフハフ、ハフッ!」

「・・・そうか・・・」

「ハム、ハフハフ、ハフッ」


「逃げなさい!」

 

 

ワイバーンに襲われた兵士達を、旗で守り声を飛ばす

 

「あ、あんたは・・・!」

 

 

「ここは私が!逃げてください!はやく!」

 

 

兵士達に激を飛ばす。かつての生前のように

 

 

旗を振るい、ワイバーンを食い止めながら叫ぶ

 

 

「に、逃げるな!そいつは魔女、竜の魔女だ!」

 

心ない弾劾が飛ぶ

 

 

「討ち果たせ!故郷の仇をとれ!」

 

 

「くっ――!」

 

飛来する弓矢から身を守る。味方であったものたちの攻撃に、うめきをもらすジャンヌ

 

 

「・・・護っている存在に散々な言われようね、白い聖女」

 

 

血の池より振るわれる爪、すんでの所で身体をひねり逃れるジャンヌ

 

 

出でるは吸血鬼。カーミラが嘲りと共に姿を表す

 

 

「ワイバーン。やりなさい」

 

 

兵士達に向かわんとするワイバーン

 

 

させない。フランスを護る、フランスを救う

 

――拳の聖女の祈りの下に、今、ジャンヌは告げる

 

「――我が故郷を踏みにじりし邪悪なる竜よ!我が声を聞くがいい!」

 

 

旗を高らかに掲げ、竜に言霊を叩きつける

 

 

「我が名はジャンヌ!ジャンヌ・ダルク!フランスを救うため、旗を取った者!」

 

 

――――告げる。迷いを裁ち切った聖女が吼える

 

 

「主の願いは此処に、揺らがぬ願いは此処に!お前達の爪も牙も通さぬ誓いが此処にある!!」

 

 

飛来するワイバーンを、次々と仕留めていく。頭を穿ち、振り回し、蹴散らしていく

 

 

「――我は英雄王に『城塞』の名を賜ったもの!生半可な責め苦ではこの心身、けして崩せぬものと知るがいい――――!!!」

 

旗を持ちかえ、左腰の剣を抜き放ちワイバーンを切り裂いていく

 

 

「・・・なんで、ジャンヌが竜と戦ってるんだ?」

 

「知るかよ。精々共倒れしてくれりゃいい」

 

憎々しげに吐き捨てる兵士達。背中越しに困惑と憎しみを受け止める

 

 

「俺達の故郷を焼き払った魔女なんざ、くたばっちまえばいいんだ・・・!」

 

 

 

「たぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

 

剣を持ち、カーミラに斬りかかる

 

「雄叫びで耳を塞いでも、貴方の立場は変わらないわ。白い聖女」

 

持った鉄の杖で受け止め、カーミラは嘲る

 

 

「彼等が呑気に見物できているのは貴方がワイバーンを蹴散らしたからだというのに」

 

「・・・!」

 

「貴方はこんなにも足掻いているのに、もがいているのに――滑稽ね」

 

押し返される。威圧と共に

 

「あなたは今度こそ――救うべきフランスに敵と見定められているのですから!・・・ふふっ、今の気持ちを教えてくださらない?彼等を殺したい?それとも死にたい?」

 

膝をつくジャンヌ。重圧が、更に高まる――

 

「その旗を槍のように、突き立てたいのではなくて?ワイバーンではなく、彼等に――!」

 

「――理解されないのは慣れっこです!」

 

素早く剣をカーミラの足の甲に突き刺す

 

「っつ――!」

 

 

隙を見逃さず蹴り飛ばし体勢を逆転させる

 

「彼等は大丈夫。誰かを恨み、憎める気概があるならきっとこれからも生きていける。心はまだ死んでいない」

 

「――恨まれているのは、貴方でしてよ?」

 

「当然でしょう!だけど――私が恨まれたからという理由で、彼等を恨む理由にはならない」

 

旗ごしに拳を握る

 

 

「私はフランスを救う――!彼等もまた、私が救いたい者達です!彼等が私を憎むことで生きる活力となるならば、私は喜んでこの身体を捧げましょう!」

 

「――正気、貴方?」

 

呟くカーミラの声音にすら、困惑が浮かぶ

 

 

もう逃げない

 

もう迷わない

 

もう、救える命を前に迷いはしない

 

 

 

私はジャンヌ・ダルク

 

 

――祈りを胸に立ち上がった、一人の人間――!!

 

 

(そうですよね、聖マルタ――!!)

 

 

「そう――狂っているのは白も黒も一緒なわけね――!ワイバーン!」

 

更に追加されるワイバーン。不味い、手が足りない・・・!

 

 

――そのとき

 

 

「彼女を援護しろ!ワイバーンを撃て――!!」

 

放たれる大砲、炸裂する轟音

 

 

「何――!?」

 

「彼等は――!」

 

 

「ジャンヌであろうが無かろうが関係ねぇ!『あの旅人』の連れなら俺達が助けるのに十分だ!」

 

――彼等は、はじめて出会った砦にいた兵士達・・・!

 

「撃って撃って撃ちまくれ!命を救われた恩を返すんだ!ぼさっとすんな!」

 

「こっちは任せろ!旗の嬢ちゃん!!」

 

 

「――はい!」

 

増援はまだ途切れなかった

 

 

「砲兵隊!撃てぇえぇえ!!」

 

統率された兵士の砲撃、規律正しい攻撃が別方向からワイバーンを穿つ!

 

この声は――!!

 

 

「ジル・・・!!」

 

「手を休めるな!一人の娘を死地に立たせるな!ありったけの弾を使え!――放てぇ――!!」

 

 

爆音の連鎖、爆音の連鎖。ワイバーンが吹き飛ばされ数を減らして行く

 

 

「――今だ!!」

 

旗を地面に突き刺す

 

 

――聖マルタ、貴方の祈りを――!

 

 

拳を握りこみ、深く体勢を落とす

 

 

「――たぁあぁあぁあぁあ!!!」

 

「ち――」

 

拳を振りかぶり放つ――かつての聖女と同じ様に――!

 

「たぁあぁあ!!!」

 

眼前に設置されたアイアンメイデン――構わず振り抜く!

 

 

爆音、そして炸裂音――拳を受けたアイアンメイデンが粉々に粉砕される

 

――いい筋してんじゃない

 

そんなマルタの声が、聞こえた気がした

 

 

「何てバカ力・・・腐ってもルーラーというわけ――!!」

 

 

「田舎娘――――!!」

 

戦場を切り裂く異様が彼方から飛来する

 

 

輝く船、ギルガメッシュのヴィマーナだ!全員を乗せ、低空ギリギリで飛行する――

 

 

ジャンヌを迎えるために――!!

 

 

「英雄王!!」

 

 

「撤退するぞ――!!」

 

――手を伸ばす――届け――!!

 

「――っっ!!」

呼応して手を伸ばすジャンヌ

 

 

「随分と荒事になれたものよ!船に乗り込む者としては落第だが貴様であれば別に構うまい!」

 

「じょ、女性扱いされないのは心外です!人を貨物みたいに!」

 

「その胸にぶら下げたものを貨物と言わずなんと言う!」

 

「え、英雄王あなたは――!!」

 

王の軽口は留まることを知らない。だが今は――!

 

「ふはは、これで荷物は拾った!収穫は上々、帰還といくか!――ヴィマーナ!上昇せよ!!」

 

――果たして、器たるギルガメッシュとジャンヌの手ががっしりと繋がる

 

そのまま急加速、急上昇。万物を即座に振り切り、ヴィマーナは空へと消えた・・・

 

 

 

「・・・ここまでね。アイアンメイデンを壊すなんて・・・野蛮にも程があるのではなくて?」

 

 

フッ、と消えるカーミラ

 

 

「気を付けていけよ――!!旅のお方――!!」

 

「助けてくれて、ありがとうな――!!」

 

 

「元帥・・・」

 

「――解らぬ。彼女がジャンヌなのか・・・シャルル七世を討ったのがジャンヌなのか。悪質な偽物なのか」

 

「彼等からも話を聞け。――黄金の船を駆り、戦う彼等は何者なのかを」

 

 

――黄金のエーテルの残滓が、空の彼方まで尾を引いていた――




「ハム、ハフハフ、ハフッ」



「――ご馳走さまでした!(ガクッ)」


「おぉじゃんぬ、しんでしまうとはなさけない」


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墓穴

「出番ですか?えっと、旗は何処に・・・」


ヴィマーナを停滞させし天空。ジークフリートをカプセルから引き出し、その身を癒す手段を一通り試していた

 

 

 

『立香、アトラス院の服を使用しなさい。イシスの雨と言う解呪のスキルがあるはずよ』

 

オルガマリーがマスターに指示を出す

 

 

「はーい!フォームチェンジ、アトラス!」

 

掛け声とともに姿が変わる。魔術制服とはまた違う独自のデザインの制服だ

 

 

「ついでだ、カルデアのジャンヌも呼び出せ。あれはネジが緩んではいるが、遊ばせておくよりかはマシであろうよ」

 

「カルデアの私、ですか・・・不思議な感じです。ちゃんと元気にやっていますか?」

 

「言った筈だ。ネジが緩んでいるとな。・・・まぁ百聞は一見にしかずだ、呼んでやれマスター」

 

――所感だが、カルデアのジャンヌは朗らかで快活な印象を、こちらのジャンヌは落ち着いた印象を受ける

 

不思議なものだ。呼ばれる場所が違うだけで、こんなに変わるなんて。でも、どちらも可愛いのは変わらないと思う

 

 

「サーヴァントならではなのね、そういうの!素敵です!私も、私とお話ししてみたいわ!」

 

「僕もあったりするのかな。・・・うん、くずっぷりに辟易しそうだなぁ」

 

「よーし!『ジャンヌ・ダルク』!」

 

右手を光らせ、カルデアに接続する

 

 

「――こんにちは!カルデアジャンヌ・ダルクです!皆さんお元気ですか?はい!」

 

「貴方が、カルデアの私・・・」

 

相対するジャンヌとジャンヌ

 

 

・・・同じ顔だ、いや、当たり前か

 

 

「我も呪いに関わる宝具をいくつか見繕おう。解呪させ万全にさせねば真価を発揮できまい」

 

「すまない・・・いや、悪くはないのに謝っては無礼であったな。すまない」

「あれか?貴様の魂の起源は『謝罪』か?」

 

 

解呪に二人の聖女とマスターが奮闘する最中、ジークフリートの召喚された身の上話を聞かせてもらった

 

召喚された時期が早く、またマスターもいないジークフリートは暫く放浪を続け、そして襲われていた街を見かけ助勢をしたらしい

 

バルムンクを振るえれば問題ない、とは言うもののサーヴァント複数に追われては厳しくなり、しかし敵のサーヴァントに匿われあそこで途方にくれていたようだ

 

「俺を庇ってくれたサーヴァントは、君・・・君達に?雰囲気が似ていたな」

 

「聖マルタ・・・!」

「さすが私たちの魂の先輩です!彼女も竜を扱う以上、魂がこう、グッと惹かれあったんですね!まさに運命(フェイト)!」

 

 

「竜・・・竜?あれがか・・・あれは亀・・・亀?いや、亀竜・・・いや、そういうのもありか・・・」

 

――本当に。マルタさんはこの旅の正しい道に導いてくれたのだ

 

そして、ジークフリート。当たり前のように危機に対して剣を取り、当たり前のように弱きものの楯となりし英雄

 

頼まれずとも、万全でなくとも――誰かの守護たらんとしたその生きざまに、魂が熱く震えるような感覚を覚える

 

――自分も、そう生きてみたいと願う。解らないなりに、悪か善かを選ぶのならば

 

――自分は、善である側を選びたい。自分の決めた矜持と責務に殉ずる、この王のように

 

――きっと、善なる視点で見るものだったからこそ――世界はあんなにも綺麗だったのだろうから

 

 

「――どうした?英雄王」

 

「いや。――酔狂よな、竜殺し」

 

 

「すまない」

「謝るなと言うに。腰の低い男よ」

 

 

「――大体の解呪は終わりました!」

 

元気よくカルデアのジャンヌが声をあげる

 

「報告します!9割の呪いは解けましたが、霊基にかけられた竜殺しの機能にかかった呪いはあと一人聖人が必要です!」

 

「貴様と貴様・・・えぇい、ジャンヌと田舎娘、マスターでも解くに至らぬとはな。念入りに祟ったものよ」

 

『必要とされているのは洗礼詠唱ね。あと一人、どうしてもサーヴァントが必要ね』

 

「そう都合よく聖人が転がっているものか?そこのセイバー擬きでもあるまいに」

 

「もう、英雄王!」

「そうですか?聖人は一人いたら30人はいると思いますが?」

 

「そろそろ描く神の暴走を止めねばならんな。――いや、セイバーが増えるのは良きことだが」

――聖人を増やす神は、いい神だと思うのだが

 

「ふふ、カルデアのジャンヌさん?あなたとのお話は、カルデアに行ったときにとっておくわね?貴方、とても幸せそうな顔をしていらっしゃるもの!」

 

「はい!私は幸せです!」

 

にっこりと笑うジャンヌ

 

「よし、用はすんだな?下がってよいぞ」

 

 

「はい!・・・英雄王!」

 

「なんだ、報告か?」

 

「・・・貴方が無事に帰ってきたら、食べてほしいものがあります・・・!一生懸命作りますから、是非食べてくださいね!」

 

ジャンヌの手料理か。・・・・楽しみだ。どんな味がするんだろう?

 

「ほう?田舎娘なりに気が利くではないか。良かろう、特に許す。王の名にかけ、完食してやろうでないか」

 

尊大に語る王

 

「嬉しいです!では皆さん、幸運を!私も頑張ってください!」

「はい。あなたも、御体に気を付けて・・・」

 

カルデアに帰還するジャンヌ

 

「ふっ、素朴な田舎料理もたまには良かろう。パンとスープ。金箔が欲しいところだがな」

 

 

・・・ふと足下を見ると、フォウがこちらを見上げていた

 

「む、どうした珍獣」

 

「フォウ(ご愁傷さま。オマエのせいで、キミは墓穴を掘ったんだ)」

 

その瞳には、憐れみと・・・同情が浮かんでいた




「よーし作りますよー!」


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恋愛

「――チ。短期間に強引な運用を連発したツケか。エーテル自動生成装置のエーテル錬成が消費に追い付いておらぬ。――一度下ろして休ませねばならんか。鉄馬も今はオーバーホール・・・仕方あるまい。余裕があるうちに調整しておくか・・・」

 

 

器の見立てでは、ヴィマーナもギルギルマシンも休ませねばならないらしい。・・・無理もないか。発進と停止とあれほど酷使し、舗装されていない道を爆走していたのだから

 

――なら、その旨を伝えねばなるまい

 

「面倒な事よな――まぁ仕方あるまい。一時の辛抱よ――聞け!一行よ!」

 

 

声を張り上げる

 

「ヴィマーナと鉄馬はこれより調整に入る!面倒だが少しの間徒歩に甘んじる事になる!文句を言うな、我もつらい!だが好都合だ、侵略され狭まった矮小なフランスの町のいずれかに聖人がいよう!西側と東側、手分けをして探すぞ!」

 

 

「はいはい!チーム分けは籤引きがいいわ!ゴージャス様、幸運に自信はおありでして?」

 

 

「ハッ、侮るな王妃よ!我はコレクター!無類の幸運と勝負運には自信がある!だが物欲感知器は赦さん!」

 

セイバーの事、気にしているんだな・・・

 

 

「よい!籤引きといこうではないか!音楽家、籤引きを作れ!」

 

「君達が引きたいだけだよねそれ・・・はいはい、作りますよ」

 

 

「久しぶりの徒歩ですね、先輩」

 

「バイクも歩きも好きだよー」

 

 

「よし・・・!ヴィマーナ、着陸するぞ!」

 

 

王命を受け、ヴィマーナはゆっくりと高度を下げていった

 

 

 

「私が、マリーとですか」

 

「ゴージャス様、アマデウスをお願いいたします。誤解されやすいから」

 

 

出発の準備を整える一行。ヴィマーナは、蔵へと回収した。修理は自動で行うらしい

 

「うむ。せいぜい王妃を護れ、田舎娘。くれぐれも猛進は控えろよ?」

 

「解っています!もう、貴方は一言多くさえなければ接しやすいのに・・・!」

 

「ははは、いじられがいがあると誇るがいい。なぁオルガマリー?」

 

『わ、私はいじられやすくなどは・・・!』

『解る!』

『ロマニ!』

 

 

くじの結果は、ギルガメッシュ、マスター、マシュ、アマデウス、ジークフリート。あちらがマリー、ジャンヌだ

 

「偏りすぎじゃないかとは思うが、くじは運命。変えたら余計まずそうだ。・・・気を付けてくれよ、二人とも」

 

「何、身体も頭も堅い輩が向こうにいる。こちらも護りは一人前がいる。問題はあるまい。未だ不調な竜殺しが懸念と言えば懸念か」

 

「すまな・・・申し訳ない。すまない」

 

「レパートリーを増やすな。一芸を磨け」

 

「すまない・・・」

 

口を開けば謝るジークフリート。・・・古今無双の竜殺しなのだから、もっと自信に溢れてもいいと思うのだが

 

 

「それと、マリー・・・」

 

「ん?」

 

「・・・いや、お腹がすいたからって、洋菓子屋によったりしないでくれよ?」

 

「あはは!マリーならやりそう!」

 

――今のアマデウスの言動には、一抹の不安が読み取れた。・・・心配しているのだ

 

「うふふ、いじわるなマスターさん。でもビックリしちゃった!私、またプロポーズされるのかと思ったわ!」

 

・・・なんだって?

 

「ほう・・・?」

 

「プロ」「ポー」「ズ?」

 

「待て、何で今その話が出てくるんだ!?」

 

「面白そうな話ではないか。聞かせよ、誰が、誰にプロポーズしたのだ?」

 

アマデウスをみやりながらわざとらしく聞き返す。・・・たしかに自分も気にはなるが

 

『結構有名な話だよ?』

『えぇ、ミスター・アマデウスは六歳の時、七歳のマリーにプロポーズしたという話が残っているわ』

 

「成る程成る程・・・ふはは、なんともロマンチックではないか。我も見習わなくてはな」

 

 

「へー!クズも恋愛なんてしたんだ!」

「先輩辛辣です!」

 

「悪夢だ・・・後世にまで伝わっているなんて・・・」

 

がっくりと肩を落とすアマデウス

 

「まぁ気に病むな。英雄になった以上黒歴史との対峙はそう珍しくもあるまい。なぁ贋作者」

 

『何故そこで私に振るのかね』

 

「貴様ほど黒歴史に向き合った英雄はいまい?自分殺しまで為そうとした生き恥を抱えた哀れな男よ」

 

『――否定はしないがね』

 

やけに辛辣だ。やはり性質的に相容れないのか・・・

 

「うふふ、転んだアマデウスに私が手を差し出したら、目をキラキラさせてこう言ったの!『ありがとう、素敵なお方。僕はアマデウスと言います。美しいお方、あなたに結婚の約束がないのなら、僕が最初でよろしいですか?』って!」

 

「一語一句覚えているだって――!?まさか広めたのも君か!?」

 

「えぇ!王宮中に広めたわ!嬉しかったんですもの!」

 

「君のせいか!君のせいだったのか!断ったって言うのになんて魔性の女だ!」

 

「ほう・・・長い口上だが悪くない。『セイバーを口説き落とす108のワード』に追加しておくか」

 

メモを取りだし記載する。ワード編もあるのか、それ

 

「嬉しくなると、つい言いたくなっちゃうよね!わかる!」

 

『うっかり機密を独り言で呟いたりした事もあったわね・・・レフがフォローしてくれた・・・くれたのよ・・・』

 

『所長、未来にいきましょう』

 

「えぇ、だって決められなかったんですもの!結婚相手は、自分では決められなかったんですもの」

 

珍しく寂しげに、マリーが呟く

 

「私では、決められなかった。だって私は、恋に夢中だったんですもの。――断ってよかったの。だから貴方は皆に愛される音楽家になって、私は愚かな王妃としてああなった」

 

「だから、良かったの。私は恋に夢中だったんですもの――私はフランスという国に恋していた。国を恋していたばかりに、民を愛さなかった。――だから私は、ああなったのよ」

 

国に恋していたから、愛さなかった。民を愛さなかったから、自分は処刑台に送られたと

 

「マリー・・・」

 

「そうではあるまい」

 

だが、器はきっぱりとそれを否定した

 

「自らが思うままに振る舞うものを王という。民は王の為に生きるが、王は自らの愉しみの為に生きる。――どんな結末であれ、貴様を廻り国が動いたなら答えは明白であろう」

 

腕を組み、鼻をならす英雄王

 

「王様の言う通りだ。・・・・・・バカだ、君は」

 

「うむ、馬鹿よな」

 

マリーが顔を赤くする

 

「酷いわ、二人とも!・・・バカなの、私?」

 

 

「あぁ、勘違いもはなはだしい。―君がフランスに恋した、だぁ?」

 

「事実は真逆。――貴様と言う存在に、フランスという国が惹かれていたのだろうさ」

 

――マリーがフランスに恋したのではなく、フランスがマリーに恋していた・・・

 

「――――そっか。そうなのね・・・。あら?じゃあ私は・・・愛した国に殺されたの?」

 

「然り。愛と憎しみは近しいものだ。恋も愛も、己の人生を担保にした意中の相手との利権の奪い合いを指す。美しきものから生まれる美しきもの等に価値はない。愛だろうと恋であろうと、それは憎しみと共に回る織物であらねばならぬ。醜い憎しみを乗り越え生まれるからこそ、恋と愛は何よりも尊いのだ。故に、愛と憎しみは切り離せぬのだ」

 

「よくわかってるな王さまは。そうとも、君は愛されたから憎まれた。それだけの話さ」

 

二人は語る、愛と憎しみの在り方を

 

「だからこそ尊いのだろうよ、貴様の輝きは。何故だか解るか?――それは、国を愛した恋から生まれ、国の憎しみを越えた愛であるからだ」

 

「――愛されたから、憎まれる・・・愛は、憎しみと共に回る織物・・・」

 

二人の言葉を受け止める

 

――綺麗なものから生まれる綺麗なものに価値はない。愛と憎しみは表裏一体・・・

 

・・・そうだったのか・・・愛と憎しみは、そんなに近い感情なのか

 

――ならば、世界を滅ぼす悪、というのは・・・

 

 

「――ふふ、二人とも!ありがとう!私、わかった気がします!」

 

朗らかに笑うマリー

 

「理解できたか?田舎娘。王の貴重な恋愛アドバイスだぞ?貴様に理解できたか?」

 

「知りません!」

 

「拗ねるな拗ねるな。オルガマリーと似ているな、そういう所は」

 

『えっ!?』

 

確かに・・・

 

「ふふっ、ありがとう!ゴージャス様、アマデウス!――ねぇ」

 

「ん?」

 

「帰ってきたら、久しぶりに貴方のピアノが聞きたいわ!ゴージャス様にも!いいかしら?」

 

「――君が無事ならね、マリア」

 

――直感する

 

「えぇ!じゃあ、そろそろいきましょうか、ジャンヌ!」

「えぇ・・・!」

 

――これは、別れだ

 

「――・・・」

 

「ゴージャス様、行って参ります!ふふ、楽しみね?」

「・・・あぁ、仕損じるなよ」

 

――もう、マリーとは会えなくなる

 

――そう、魂が・・・感じ取っていた



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予兆

「そろそろか」
――何がですか?


「ぉおぉおぉおぉおぉお!!!」

「ふん。見飽きた面よ」

 

 

雄叫びをあげワイバーンを叩き伏せるジークフリートと、指しか動かすことなくワイバーンを撃ち落としていくギルガメッシュ

 

 

「すまないが、彼らはいま素晴らしい話をしているのだ――無粋な真似は止めてもらおう!」

「フッ、貴様らの不運は――上機嫌な我がこの地に降り立った事よ!」

 

背中合わせに、宝具を展開する

 

 

「放て!『王の財宝』――!!」

「撃ち落とす!『幻想大剣・天魔失墜』――!!」

 

 

黄昏の波動に、無限に放たれる竜殺しの財

 

 

竜殺しの原典を持つギルガメッシュ、竜殺しの逸話を掲げるジークフリート

 

――もはや、この二人を止められるものはファヴニールしかいないだろう

 

 

「背中を任せてすまない――何故だか解らないが、貴方になら任せられるという確信がある」

 

「当然だ。我が背中から斬るなど姑息な真似をするものか」

 

 

「そうだな。――心から安心する。英雄王たる貴方が味方であったことに」

 

――それは自分も同感だ

 

この器が、英雄王が。此方を守護してくれるという事実が、とても頼もしく誇らしい

 

「であろうな。我は基本、諦めを知らぬ人間に倒される側であるからな。それがなんの因果か、今では人理を救う者達を治めている。――ふはは、愉快だ!笑いのひとつも起こるというものよな!」

「そうなのか?――フッ、そうだな」

 

 

高らかに笑う器、ニヒルに笑うジークフリート

 

正反対ながら、その光景は、神話の尊さを放っていた

 

 

「いまの状態でも、雑魚散らしはできるようだ。――む。向こうも終わったようだな」

 

 

見ると、マシュとマスターが手を振っている

 

「よし、戻るとするか。――全く、徒歩とは面倒なものよ・・・」

 

やれやれと肩をすくめる。――仕方無いのだ、ここは赤貧に甘んじる期間だと思おう。英雄王

 

「よければ、俺が背負おう。貴方には返しきれぬ恩がある」

「――何を言い出す!?いらぬわたわけ!確かに我は真の英雄、美しければ男も女もオールオッケーではあるが、あくまで美しければの話よ!貴様が我を背負うだと!?絵面を想像してみよ!マスターとマシュの性癖が歪んでしまったらどうする!そんなおぞましき園はいらぬわ!」

 

申し出るジークフリートを突っぱねる器

    

「すまない。・・・どのみち俺は、背中は隠せぬのだが」

 

お言葉に甘えればいいのに・・・王とは気難しいものだ

 

「まったく・・・竜殺し、いやさジークフリートと言ったな」

 

真名で呼ぶ。――器は彼を認めたらしい

 

「ファヴニール、あの邪竜めの躾は貴様にかかっている。――しくじるなよ」

 

「――あぁ。俺は竜殺し。俺ごときに誇れるものはこれしかないが――これだけは、例え貴方にだろうと負けはしない」

 

まっすぐ見つめてくるジークフリート

 

「よくぞ吼えた。卑屈かと思えば頑固ではないか――フッ、我も狂犬めとの戦いにて新たな戦い方に目覚めた故な」

 

うん。器も認めた以上――自分の考えている事は果たせそうだ。波紋に手を伸ばす

 

「これを預ける。ファヴニールとの決戦の際に使え」

 

手渡したのは――掌大の小さな鍵だった

 

「これは?」

 

「我の蔵の合鍵だ。古今東西の竜殺しの武具が貯蔵されている場所に繋がっている。貴様なら使いこなせよう。せいぜい上手く使え」

 

――器が記憶するには、この合鍵は作らせたのはいいものの、そもそも英雄王の蔵に狼藉を働く者など存在するはずもなく、そのまま捨て置いた物らしい

 

――この英雄を呼ぶための触媒としてならば、総てを擲ち手に入れたがる秘宝であるのだが・・・この器にとっては『不要なもの』らしい

 

「――いいのか?こんな大切なものを」

 

「構わぬ。我は誰かに『頼る』事も覚えた。今の我はいつもの我とは愚にもつかぬ程機嫌がよい。この召喚の間は、出費は惜しまぬさ」

 

そうだ。ファヴニールの相手は、ジークフリートさんしかいない。自分達の敵は、特異点をうみだせし者だ。自分達の旅は、そこがゴールではない

 

英雄王の言葉を借りるなら・・・『露払いをお願いします』だ。・・・あれ、もうちょっと偉そうだったっけ?ううん、難しい

 

「――心から感謝する。俺の技、貴方の財。総てを使ってあの邪竜を貫こう」

 

「我の期待を裏切るなよ?」

 

「任せてくれ」

 

笑い合う二人。――これで、あとは呪いを解くだけだ

 

 

「ギールー!はーやーくー!」

「ジークフリートさーん!」

 

「行こう、英雄王。――辛ければ」

「くどい!それは要らぬ!」

 

「すまない」

 

軽い掛け合いをしながら、自分達はマスターに合流した

 

 

 

 

『アントワネット王妃とジャンヌは町へとついたみたい。無事に行けたみたいね』

 

『健脚だなあの二人!こっちより速いのか!』

 

「あの田舎娘め、しっかりと歩幅を合わせたのであろうな?」

 

『合わせましたよ!』

 

「ぬ――!」

 

不意を突かれ、面食らう器

 

『あぁごめん、ジャンヌから連絡入ってた』

 

「先に言えたわけ!」

 

「すまない。代わりに謝罪しよう」

 

「言いたいだけか貴様!・・・で、なんだ」

 

何か、自分に用だろうか?

 

『はい、英雄王。――解りました』

 

告げるジャンヌ

 

『マリーとの対話で確信に至りました。――やはり、あの魔女は私ではない。あの竜の魔女は、育ての親も、藁の柔らかさも知らないでしょう』

 

簡潔な言葉。自分には解らない言葉だが、器はニヤリと笑う

 

「――気付いたか」

 

「どゆこと?」

「解りません・・・英雄王の言葉は難解です・・・」

「王様なんて意味不明なものだよ。見ているものが違うからね」

 

「その確信は決戦にて突きつけてやれ。さぞかし揺らぐだろうよ。――その様を見るのはさぞ愉しかろうな」

 

『はい。必ず。・・・ですが、英雄王。申し上げますが、人の足掻きを見て楽しむのはよい趣味ではないかと』

 

「仕方あるまい。我は愉悦部部長なのだ、ワインを片手にニヤニヤしないだけ恩情と思え」

 

『もう!貴方は本当に、あぁ言えばこういって・・・!』

「ははは。電波障害かー仕方あるまい切るぞー」

 

『あ、英雄王!ちょっ――』

 

棒読み演技で通信を切る。本当にジャンヌをいじるのが好きだなぁ・・・ごめんね、ジャンヌ

 

 

「よし、五月蝿い田舎娘を払ったことだし、行くとするか!刃物の町とやらは目と鼻の先よ!」

 

「おー!」

 

『サーヴァント反応は二体ある。コンタクトを取ってみてくれ』

『・・・まって、この反応・・・!サーヴァント二人が戦っているわ!』 

 

 

同時に、見える町から火が吹き上がる

 

「なんだろ、あの焔・・・」

 

「――あの生娘も来ていたとはな。フッ、からかいがいがありそうではないか!さぁ行くぞ!ジークフリート!マスターを背負え!」

 

「解った。・・・よければ、使ってくれ、いや背負うのは無理か、お姫様だっこで・・・」

 

「わぁい!」

 

「え、英雄王!先輩のおんぶは私でも!」 

 

「じゃんけんだ、じゃんけんで決めよ!」

 

「嫌な予感がする・・・すごく嫌な予感がする・・・!あぁ女神よ、救いの手をさしのべてくれ!碌でもない予感に今から震えが止まらない・・・!」

 

――先程から、器がこれ以上ないほどワクワクしている

 

――何が、町にいるのだろうか?




「ロマン、できるだけモニターを増やして。映像を正面に。町にいるサーヴァントを映像で解析するわ」
「了解。・・・なんだかさっきからニヤニヤしてるギルガメッシュが気になるなぁ」

「楽しくなってきたな――!」
――だから、何がですか?


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一糸纏わぬ、開闢の星

「最終回になるかもしれない。覚悟して読んでほしい(フォウ)」


「この、この!このこのこのこの!目障りなのよあんた――――!!」

「ふふ、目障りなのはどちらでしょう?貴方のような雑竜が――真の竜たる私に勝てるとお思いで?」

 

火花を散らす槍、火焔。

 

交わされる罵倒、挑発。

 

放たれる罵声と罵声。

 

「うぅう――――――っ!カーミラの前にあんたを潰してやるわこの変態ストーカー!!」

 

「ストーカーではありません『完璧なまでに洗練されし傍らに寄り立つ後方警備』です。理解できますか?傾倒趣味の拷問フェチ」

 

 

「フェチってなによ!フェチって!アタシのは凄いんだから!」

 

「すごいとはどういう・・・そういう?あぁ・・・貴方はあれですね、アレをアレしてナニしていたんでしょう・・・?」

 

「あああああアレってナニよ!?ナニってナニよ!?決めた!もう決めた!アンタは串刺しにしてブッ刺してホルマリン付けにしてやるわ!」

「やってみなさいな、小娘――化生の火焔が、貴方を返り討ちに焼き滅ぼしましょう・・・!」

 

 

耳を塞ぎたくなる金切り声。おぞましき地獄の喧騒。

 

 

「潰す潰す潰す潰す潰す!アタシがナンバーワンなんだからぁ!!」

 

「シャアァアァアァアァア!!!」

 

 

コケティッシュな服装の少女と、着物に身を包んだ少女が――人が織り成す営みの最中で地獄のハーモニーを巻き起こしていた――!!

 

 

「み、耳が!耳が腐る!いやそぎおとされる!なんだこれ、工事現場やバカなロッカーかぶれが何倍もましな有り様だ!止めてくれ、音という音の冒涜は止めてくれ!ファヴニールの咆哮がマリアの囁きにさえ思える!なんて酷いクズどもなんだ!あぁいや禁止だった!」

 

『その二人がサーヴァント・・・なのよね?私間違ってないわよね?ね?』

『自信をもってください!』

 

「相も変わらず雷鳴のごときデスボイスよ・・・臍の緒を断たんばかりの暴虐ぷり、反省し少しはマシになったかと思えばこの様か。ふははは」

 

「アレが聖人?」

 

「バカ言わないでくれ!それこそ僕の怒りの日だ!アレが聖人なら世界の宗教はひっくり返る!無信心者が世界を埋め尽くすぞ!」

 

 

『ともかくコンタクトを取ってくれ!もう耳が痛い!証明がなければ今すぐ部屋に帰りたい!』

『立香!あなたは平気なの!?』

 

「所長の断末魔に比べたら全然?」

『もう!何言ってるのよ!』

 

 

「そらマシュ、親善大使に立候補していたな?取り敢えず声をかけてみよ。奴等に一欠片でも知能があれば通じよう。まぁあるのかは知らんが」

 

さらっと酷い役目を押し付ける器。

 

 

・・・なんというか、こう・・・胸をかきむしりたくなる感覚になるのは理解できるが・・・これは何かの魔術なのだろうか。そして未だに何故器は上機嫌なのだろうか?

 

「ここで私ですか――!?わ、分かりました!ベストを尽くします!」

 

意を決して歩み寄るマシュ。

 

 

「僕も仲裁ぐらいはしてやろう!ストップ!ストーップ!そこまでだこれ以上は見過ごせない!音という音の冒涜は止めるんだ!」

「私達の話を聞いてください!どうか落ち着いて――!」

 

「あん!?」

「はい?」

 

ひとまずいさかいを沈め、此方を認識する二人。

 

「何よあんたら。アタシたちに用はないんだけど?引っ込んでくれる!?そこのヘビ女と決着つけなきゃいけないのだけど!」

「言ってくれますね。ヤーノシュヤモリの分散で」

 

「何よ、アオダイショウ!」

「エリマキトカゲ!」

「ヒャッポダ!」

「メキシコドクトカゲ!」

 

「あんですってぇ~~~~!?」

「言い出したのはそちらでしょう――!?」

 

再び始まるデスメタル・ハーモニー。アマデウスは目に涙すら浮かばせ耳を塞いでいる。

 

 

「ぐぐぐぐ・・・耳が腐る・・・死ぬ、魂が死ぬ・・・!」

 

『スピーカーの音を下げて!脳がやられるわよ!ドラゴンの雄叫びだってこんなに酷くはないわ!』

 

『これはここで退治した方がいいんじゃないかな・・・』

 

「聖人は・・・おらぬようだな。チッ、骨折り損とは無為極まる。まぁ、面白い玩具は見付けたがな」

 

「白蛇女ァーーーーー!!!」

「赤トカゲ―――――!!」

 

「ごめん、吐きそう」

 

 

がくりと膝をつくアマデウス。しっかり!正気を手放さないでくれ!

 

「どうしよう、ギル?」

呆れたように指示を仰ぐマスター。

 

どうしようといわれても・・・あんな爆心地みたいなただ中に飛び込みたくはならないのだが・・・。

 

「我に助力を求めるのか?――ふっ」

 

――だが、器は違った

 

「良かろう。この下らぬいさかい、我が仲を裁してやろうではないか。・・・予定が些か早まったな」

 

「?」 

 

「こちらの話だ。オルガマリー、ロマニ、スタッフどもにマスターにマシュよ!」

 

 

――自信と確信に満ちた王の声音が張り上げられる

 

「今までの貴様らの働きに免じ――至高の芸術を目の当たりにすることを赦す!しかと見よ、そして戦け!貴様らが頼り頼みにする男が何者か――身を以て知るときだ!」

 

――本当に、一体何を――?

 

「貴様らはそこで――王の威光を拝むがよい!!」

 

王の威光――

 

 

そのとき――器に記録された記憶を眼が読み取った

 

――読み取って、しまった――!!

 

 

何処かの折、遥か彼方の底の記憶

 

 

「そうであろう?純潔の竜よ。今まで気付いてやれずすまなかったな」

 

「な、なに謝ってるのよ!私に謝られる覚えは――」

 

「我からのせめてもの詫びを受けとるがいい!では行くぞ!A・U・O!キャスト・オフ――――!!!!」

 

「ぶはーーーーーー!!!?」

 

 

――

 

 

 

――・・・・・・・・・・・・・・・・・・まずい

 

 

「久し振りだな、駄竜よ。そのような類友を作っていようとは驚きだ」

 

 

まずい・・・まずい・・・

 

「はぁ!?何を――ってげぇ!!アンタ、ゴージャスじゃない!」

 

「ふはは!然り!思えば貴様が名付けはじめであったな!」

 

まずい・・・!!

 

「そこのヘビ女も見知りおけ!我はクラス・ゴージャス!英雄王ギルガメッシュである!」

 

止めなきゃ、止めなきゃ――大変なことになる――!!

 

ファヴニールとか竜の魔女とか、特異点とか人理焼却とかそんなものはちっぽけだった!些末だった!

 

 

この王様こそが――人類をあだなす至高の美だったのだ――!! 

 

フルパワーで器を制止する!――ダメだ!止まらない!なんて愉悦パワーと自信だ!全身全霊をかけてもびくともしない!どれだけ自分に自信をもっているんだこの王はーー!?

 

 

「はぁ・・・その英雄王様が何の用でしょう?」

 

落ち着け、御乱心はなりませぬ英雄王!彼女らはまだ若い!心に傷が刻まれてしまう!霊基に刻まれるどころの話ではございませぬ!なりませぬぞ英雄王!!

 

「決まっていよう。貴様らの児戯のごとき争いをこの我自ら収めてやろうというのだ。我等は聖人を探す身の上で忙しい。貴様らと戯れている暇はないのでな」

 

ーこらえきれない愉悦の笑みが魂に流込んでくる――!!ダメダメいけません!マシュもマスターもいるのです!どうか、どうかお考え直しを――!!

 

「――うそ、待って。ウソ、ウソよね?まさかよねゴージャス?まさか、こんな真っ昼間に・・・ウソでしょう?」

 

「昼も夜もあるものか。我は王!太陽も月も等しく価値を定める万物の裁定者!」

 

逃げて――――!!マシュとマスターだけでも逃げて――――!!お願いだから逃げてくれ――!!

 

 

「何の話をしているのです?あなたたち、知り合いですか?」

 

「察しがいいな。――その、まさかよ」

 

――あっ、ダメみたいです

 

「撤収――――!!!!私座に帰る――――――!!!!」

 

「バカめ!もはや逃がさぬ!!我が織り成す至高の美――今一度その魂に焼き付けよ――!!!」

 

『――嫌な予感がする――!!総員ショック姿勢――!!最大級の災厄が来るぞ――!!!』

 

『えっ!?なに、なんなの!?』

 

「マスター!目を閉じてください!!はやく!」

「う、うん!」

 

「い――――――や――――――!!だれかたすけて――――!!!」

「な、なに、なんなのですか・・・?」

 

――王様め、本性を隠しきれないのか――!

 

 

「再びその目に焼き付けよ――!!行くぞ!ランクEX!対世界個人宝具――!!」

 

 

気を付けろ――

 

「――A・U・O――――!!!」

 

――最高最悪の宝具が来るぞ――――!!!

 

 

「キャスト・オフ――――!!!」

 

 

 

――身に纏っていた邪魔な衣服を弾き飛ばし

 

 

 

――一糸纏わぬ王の裸身が顕現する――!!!

 

 

「子ブタ――――――!!!!」

「あ、あぁ――安珍様――――!!!」

『レフーーーー!!!』

 

 

「うぉぼろえあぁあぁ!!」

 

『アマデウスが吐いたーーー!!』

 

 

「ヘンタイ!ヘンタイ!ヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイ――――!!なんでここでも脱ぐのよアナタ――――!!」

 

「我が脱ぎたいからだ!!」

 

「はしたないはしたないはしたないはしたない!!殿方としての慎みはないのですか――!!」

 

「我に男として恥ずかしい箇所なぞない!!」

 

光を増す、股間の王律鍵――!発光を増していく、天命の粘土板(意味深)――――!!

 

 

『レフ!!レフ助けてぇ!!殺される!殺されるの私!ストーリーキングに殺されるの――――!!!』

 

「なになに?何が起きてるの?」

「ダメです先輩!見てはダメです!!」

 

『勘違いしてた!!この王様はアレと紙一重の人種!紛れもないバカだったんだ――――!!!』 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなんでもしますもう血は吸いませんいいこになりますから助けてお父様―――――!!!」

 

「あんちんさまあんちんさま!清姫です!私を迎えに来てくださいましたのね!ともに鐘に入りましょう!えぇ、永遠に!ずっとずっと一緒です!あんちんさま――――!!」

 

『私は止まらないから・・・!あなたたちが止まらない限り、その先に私はいるわ!だからね・・・――止まるんじゃないわよ――・・・』

『所長――――!!!!』

 

「・・・マリア・・・僕のピアノ・・・」

 

 

「みーせーてー!」

「だーめーでーすー!!」

 

 

「フハハハハハハハハハ!!これぞ我が裸身!最高水準のダイヤに勝る唯一至高の芸術よ!賛美せよ!賛美せよ――!!フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

――遠い場所で・・・喧騒が聞こえる

 

 

――ごめんなさい、皆・・・

 

 

こういった王様だと思って――諦めてください――




「あれは――主の輝き――!」

「もっと、もっと近くで見せてください!!あそこに奇跡はあります!あの輝きこそが――!!」


「なんですか~?沖田さんは厠掃除でいそがぶっふおぁ!?」

「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。――オレも、これから頑張っていくから」

「ふぇいとと はーめるんの ほうそくが みだれる」

「⬛⬛⬛⬛⬛(ヤツもはいていない、か)」




マーリン「ぐわぁあぁああぁあ!!直視してしまったあぁああぁああぁあ!!千里眼なんて使わなければ良かったぁ――!!!」


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覚悟

「ハーメルンの皆、息災だろうか。ジークフリートだ。・・・まずは謝罪を。すまない・・・カプセルで寝ていて本当にすまない」


「フォウ(ぼくはたまたまマシュの胸に隠れていて事なきを得たよ。うん、たまたまね。他意はないよアイツの裸体はどうかだって?愚問だよ。話にならない。見せつけてくる美しさなんて願い下げ、そこにある言わずとも主張するたわわな美しさこそ、ボクが求める美しさだからね。とりあえず、清姫は破格のボディだ。あの齢でアレはとても、とてもビューティフルだね。気絶していたから仕方無くこっそり胸に潜ってみたけど・・・うん。察してほしい。ロリコンの気持ちが解る気がしたなぁ。ボクとしては、もう少し背があった方が抱かれやすくていいんだけどね。いや、当時を鑑みればかなり長身なんだけどさ)」

「先程は最終回とはいったが・・・まだまだ物語は続くんだ・・・紛らわしくてすまない・・・楽しみにしてくださる方には、本当に感謝している。ありがとう、すまない」

「フォウ!プキュークスクス(マーリンも悶絶してるみたいだし、僕にはメリットしか無かったよ。皆で言おう、マーリンざまぁwww)」

「これから先も、英雄王の旅路をよろしく頼む。――すまない。では、本編だ」

「フォウ!(これからもよろしくね。マスコットからのお願いだよ♪)」




「おのれ英雄王!散々ジャンヌを惑わせるとは!散会した今こそ好機!まずは貴様を監視して」


キャスト・オフ!!

「ファ――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「・・・間違いない、この輝きこそが(ry――私は、一体・・・」


「ちぇー、結局私は見れなかったなぁ」

 

なんとか致命傷で済んだ皆を介抱しながら、残念そうに立香が拗ねる

 

 

「マシュが見せてくれないんだもん」

 

「ふっ、そういうな。初なヤツゆえ、お前の守護を第一にしたのだろうよ」

 

・・・ありがとう、マシュ。君は最高のシールダーだ

 

「あの、はい・・・・・・次の機会は、人理を救った後、ということで・・・」

 

「溜めるな?まぁ我としては令呪を使われたら脱がざるを得んのだが・・・」

 

「ホント?今使っていい?」

 

「ダメです!だーめーでーすー!」

 

「フッ、身持ちの固い娘よ。――どうしてもと言うなら、マイルームにて、な」

 

「はーい!ほら、皆起きて」

 

「ゴージャス・・・ゴージャス・・・」

「あんちんさま・・・あんちんさま・・・」

「マリー・・・マリー・・・」

 

『レフ・・・レフ・・・』

 

『これは酷い・・・大惨事じゃないか・・・』

 

「・・・武器を振るわずとも、人を破壊することは叶うのですね・・・」

 

――死屍累々の現状を見て、決意する。もう一度キャストオフするまでに、なんとしても自分を鍛えなくちゃいけない

 

 

なんとしても・・・カルデアと、皆の心は護れるようにならなくては・・・ううっ、まだ黄金の愉悦がまとわりついてるようなきがする・・・

 

「マスターとマシュは引き続き介抱を続けよ。カプセルの常連になっているジークフリートは我が受け持つ。――さて、田舎娘に連絡を取るとするか」

 

「はいっ、連絡機」

 

 

マスターから放られる機械を受けとる

 

「聞こえるか?首尾はどうだ?」 

 

 

すぐにジャンヌと連絡がつながる。――心配と不安が入り交じった声音だ

 

『あの、何をなさったのです?音声しか拾えませんでしたが・・・』

 

――ジャンヌとマリーが別行動で本当に良かったと思う

 

「何、口喧しい駄竜二人に真なる美を教授してやったのだ。――まあ、格の違いを思い知り、精神が参ってしまった訳だが、な。ふはははは」

 

『・・・?こちらは無事、聖人、ゲオルギウスとコンタクトを取れました。きっとジークフリートの呪いを解除できます』

 

やはりそちらにいたか。安心する。自分達の犠牲は、無駄じゃなかった

 

『ご苦労であった。――マリーは無事だな』

 

気になり、尋ねる

 

ーあの予感、あの予見が・・・外れてくれればいいのだが

 

『はい。大丈夫ですよ。・・・マリーが、何か?』

 

「いや。――我達もすぐに合流する。無理をするなよ」

 

『あら、ゴージャス様!心配してくださるのね?』

 

華やかな声。マリーは無事のようだ

 

「うむ。貴様の命の使いどころ、間違えるなよ」

 

 

『はい!――ゴージャス様』

 

「うん?」

 

『また――逢いましょうね。必ず、必ず。もっともっと、貴方とお話ししたいもの』

 

 

・・・マリー?

 

「・・・貴様・・・」

 

『ふふっ、またベーゼをしたら、あなたは怒ってしまうかしら?――それじゃあ、またね。ヴィヴ・ラ・フランス!』

 

 

「待て、貴様なにを――」

 

言い終わる前に切れる通信

 

――無銘の自分でもわかる

 

先程の予感が、確信に変わる

 

彼女は――自分の想いに、殉ずるつもりだ――!

 

 

「――マスター、マシュ!ここは貴様らに任せるぞ!」

 

「え?ギル?」

「どうなさいました?英雄王!?」

 

「急用だ!少し外す!――早まるなよ、小娘――!」

 

――なんとしても、この予感を覆したい――!

 

 

――アマデウス、また、アナタのピアノが聞きたいわ!――――

 

 

ーあの言葉には――狂おしいほどの願いが詰まっていたんだ

 

 

一抹の寂しさと・・・彼女の決意と、覚悟

 

 

他愛ない言葉に込められた、万感の想いを――細やかな、仲間の願いを、少しだけでも、感じ取れた・・・!――

 

「チィ、ヴィマーナもマシンも未だ起動できぬか・・・!悪事には悪事が重なるものよ!――仕方あるまい――!」

 

ーー救いたい・・・!一緒に戦った、仲間を・・・!

 

 

終わりはある。終わりはあるのだろう。サーヴァントなら、依るべのない者は退去となるのだろう

 

 

「何をする気かはしらんがな・・・!我の赦し無くして失せるのは赦さぬぞ!」

 

 

――別れが避けられないのなら、いや避けられないからこそ・・・その別れは、笑顔と共にあってほしいから―――!!

 

 

 

 

 

 

「来ます!この感覚は、竜の魔女・・・!」

 

西側の町にいるジャンヌメンバーの下に、大量に飛来するワイバーン

 

「はやく撤退しましょう!私達だけでは、耐えることはできても、退けることはできない・・・!」

 

声をあげるジャンヌ。――だが、ゲオルギウス、聖ジョージは首を振った

 

 

「まだ、市民たちの避難が終わっておりません。私は市長に守護を任されました。それを棄てて逃げたとあらば、私は聖人でありたいという自分の願いすら果たせない」

 

「――それは・・・」

 

「ふふふ、ゲオルギウスさんは心も体も堅いのね」

 

マリーが笑う。華のように

 

「――ねぇ、その守護の役割、私に任せてくださらない?」

 

「マリー・・・?」

 

「・・・ジャンヌ。私はきっと、このために召喚されたの。敵を倒すでもなく、命を奪う為でもなく。生命を護り、救うために」

 

このフランスでできた『友達』の手を取り、可憐に微笑む

 

「私はマリー・アントワネット。今こそ私は、私の命を、正しき事に使います」

 

「・・・待って、待って。マリー・・・!」

 

揺らがぬ決意と、覚悟を湛え

 

「アマデウスと・・・ゴージャス様に伝えておいて。ピアノ、やっぱり聞けなくて。――皆で唄う約束も・・・護れなくて、ごめんなさいって」

 

マリーは、白百合のように微笑んだ

 

 

「とっても、とっても――楽しかったって――伝えておいてね?」




「竜殺しも、英雄王もいない方を潰す!これよ、これが最高に頭のいい作戦だわ!」




「バイタルが弱っている職員がいる!英雄王め、味方への被害すら残すとは――!」

「アタシが人工呼吸、ヘラクレスが心臓マッサージで生命を繋ぐのだナ。人手不足ゆえ致し方なし。副作用で骨が逝ったらそれはつまりジエンド、介錯である」

「わぁ・・・大きい・・・彗星ですかね・・・?違う、違うな・・・彗星はもっと、バァーッてなりますもんね・・・」

「気付け用の麻婆豆腐をもちました!味見はまだですが・・・きっと皆の生命を繋いでくれます!」

「よし、ナガシこめ。鼻からな」

「待て!そんな劇物を薬に使うな――!!」


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光速

――ありがとう。皆大好き。ヴィヴ・ラ・フランス!


「来たのね、サンソン」

 

 

 

「――あぁ、来たとも、マリー」

 

 

 

対峙する、王妃と処刑人。かつての奪われたものと奪うものが、時を越えて対峙する

 

 

「処刑には資格がある。する方も、される方もだ。君を処刑できるのは僕だけだ。君も実感しているだろう?マリー」

 

 

しゃらり。と剣を抜く。罪人を断ち、また救うその刃をマリーに抜き放つ

 

 

「――貴方は私を、ただ殺すためだけに・・・竜の魔女についたのね?」

 

 

「そうとも。僕は君を待っていた。君が来ることを信じて待っていた。もっと巧くなるように。もっともっと上手くなるように。フランスの者たちを殺して殺して殺して殺し続けた」

 

にっこりと笑うサンソン。手に持つ刃は血にまみれ、赤く艶やかにきらめいている

 

 

「僕は処刑人として総てを教えられてきた。心構えだけじゃない。その総てを。――そしてその先を目指したんだ」

 

ゆっくりと構え、狙いを定める処刑人

 

「その極致――快楽だ。首を落とされる瞬間、まさに『死ぬほど気持ちいい』。僕はそれを、それだけを目指したんだよ、マリー」

 

うっとりと、陶酔しながら彼はいう

 

「――どうしても、聞きたかったんだよ。マリー」

 

ゆっくりと、サンソンは告げる

 

「僕の刃はどうだった?――君は、絶頂してくれたかい?」

 

「それは答えられないわ。サンソン。言うことではないし、言いたくないことだもの。倒錯主義者はもういるから・・・二人と私は迎えられない」

 

毅然と応えるマリー。華やかに、死臭を晴らす華のように

 

「うん、知ってる。だから、次はもっと上手くやるよ。練習したんだ。たくさん首を落としたんだ。君にもっともっと素敵な時間をあげたくて。殺して、殺して、殺して、殺して、殺して・・・」

 

あくまでも、君のために。サンソンの言葉はそういうものであった

 

「――僕に機会をおくれ、マリー。次は、次はもっと上手くやって見せるから」

 

「――えぇ、どうぞ。サンソン」

 

――首を縦に振るマリー。そっと首筋を見せる

 

 

「貴方が本当に『上手くなった』なら――私の首を落とせる筈よ。さぁ――試してみて。アナタがフランスで積み重ねたものが、どんなものなのか。――それが、正しいものであったのか」

 

恐怖も畏怖も感じさせない声音で、サンソンに言葉を投げ掛けるマリー

 

 

サンソンの身体が、震えていた

 

 

「――ありがとう。ありがとう、マリー。やっぱり君は素敵だ」

 

ゆっくりと刃を振り上げる

 

 

「任せてほしい――必ず君を」

 

駆ける。その刃を――

 

「――気持ちよくしてあげるよ――」

 

首に――落とす――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ば、かな・・・そんな――」

 

刃は、届いていなかった

 

振り下ろされた刃を、『王紋を戴いた硝子』が、しっかりと阻んでいたのだ

 

 

「ね?――貴方の刃では、私に届かなかったでしょう?」

 

ピシリ、とサンソンの刃にヒビがはいる。ヒビは瞬く間に広がり、こなごなに砕け散る

 

 

それは、サンソンの心をも表しているようで――

 

 

「う、そだ。こんな、こんな筈は・・・!」

 

動揺、いや、狼狽するサンソン。誇りと共に、紛れもなく・・・心も、砕けたのだ

 

「残念ね、サンソン。はじめてあったときに言ってあげれば良かった。貴方と私の関係は、終わっているって」

 

マリーが、告げる。別れを、告げる

 

「貴方は沢山の人を殺した。殺人者という刃を磨きあげてきた」

 

悲しげに、詠うように

 

「でも、殺人をうまくすればするほど・・・罪人を救うという、貴方の刃は錆びていく。竜の魔女についた時点で、貴方は私の知っているサンソンではなくなっていたのね」

 

がくり、と膝をつくサンソン

 

「嘘だ、僕は・・・もっともっと上手くなって!もっともっと君を気持ちよくさせてあげられたらと!それだけを考えていたのに!」

 

胸をかきむしるような独白が、響き渡る

 

「もう一度、君を絶頂させてあげられたら――!僕は、君に、許してもらえると思ったのに――!」

 

「――もう、憐れで可愛い人なんだから」

 

そっ、と。手を取り、サンソンを見つめ返す

 

「――貴方が私に赦される事なんて。何もないっていうのにね――?」

 

「あ、ぁ・・・あ・・・マリー・・・――」

 

スッ、と。サンソンのカタチが消え去っていった。支えを喪った柱のように。蜃気楼のように

 

「さよなら、サンソン。――また、どこかで」

 

 

 

地響きをあげ、邪竜が街を踏み鳴らす

 

そこに乗りしは。竜の魔女

 

「こんばんは、竜の魔女。遅いご到着なのね?」

 

「・・・サンソンも消えましたか。期待していたものから消えていくのは皮肉なものね」

 

「えぇ、本当に。意外と残るのは、貴方の嫌いな吸血鬼なのかも知れないわね?」

 

 

火を纏う魔女、華を掲げる王妃が睨みあう

 

「私は逃げたのですか。下らない、情けない」

 

「いいえ、彼女は希望をもっていったの。貴方を倒す最後のピースを、貴方を討ち果たす最後の詰めを」

 

「・・・下らないというならあなたもよ、王妃。バカじゃないの?何故そんなにも民を守るの?使命感に酔いたいからですか?」

 

極炎の嘲りを放つ魔女

 

「貴方を裏切った国を・・・!貴方を嘲笑い、蔑み、ギロチンへ送ったこの民たちを!この国を!!護って何になるというのです!!」

 

吐き出す憤怒に、誇りをもって相対する

 

「あぁ、幻滅です。魔女というのはそんなことも解らないの?」

 

「何――?」

 

「確かに私は処刑されたわ。嘲りもあった。嘲笑もあったでしょう。――でも、だからと言って『殺し返す理由』にはならない」

 

「――」

 

「王妃は民が王妃と呼ばねば成り立たない。王妃は民を無くして王妃とは呼ばれない」

 

「民が望まぬならば――望まずとも退場する。それが、王妃というものです」

 

王妃は紡ぐ。その愛を。憎しみを越えるその愛を

 

 

「いつだって『フランス万歳』!星は輝き、光を与え、皆を輝かせればそれでよい!――私の処刑は――未来の笑顔に繋がったと信じている!」

 

(愛はけして、憎しみには負けない――ですわよね、ゴージャス様――)

 

 

「・・・・・・なによ、それ」

 

「私もあなたが解りませんわ。その物言いで確信しました。あなたはジャンヌではない。――本当の貴方は、いったい何者なの?」

 

「――だまれっ!!」

 

ファヴニールが、炎を吐く。

 

 

(――さようなら。アマデウス。さようなら、ジャンヌ。さようなら――ギルガメッシュ様)

 

思い浮かぶ、初恋の人。

 

思い浮かぶ、無二の友

 

思い浮かぶ――高らかに笑う、愉快ながらも輝く王

 

(これが、マリー・アントワネットの生き方だから――!)

 

――宝具を解放する。己を楯にして、民を守るために

 

 

「宝具解放!『愛すべき』――!」

 

だが、それは叶わなかった

 

 

「――たわけ!命の使いどころを見誤るなと、我は確かに伝えたはずだ――!」

 

 

「えっ――!?」

「ひっ・・・!?」

 

――華の散り様に、待ったをかける!

 

 

「我に不敬を働くつもりか!マリー・アントワネット――!」

 

「ゴージャス様――!?」

 

マリーを抱き抱え、素早く宝具を展開しファヴニールを撃ち据える

 

 

「ジークフリート!出番だぞ!職務を果たせ!」

「任せてくれ――!」

 

カプセルから飛びかかり、ファヴニールに切り込むジークフリート

 

「な、何故、何故あんたたちがここに!?離れた街にいて、脚もなかったはずでは――!」

 

「ハッ、我の脚が、バイクやヴィマーナなだけなわけが無かろうが小娘!我が財には、それらを上回る財などいくらでもある!ヴィマーナやバイクが使えぬならば、それを上回る財を用意するだけのこと!」

 

そう、マリーを助けるために、軽く――『光の速さ』で飛来したのだ

 

「かつての召喚の折、我は月の底にて次元の果てに飛ばされたことがあってな!帰還するために見繕った遥か最新の光の船を使用したまでよ!我は最古を好むが、最新にも理解があるのでな!」

 

選別には苦労した。何せ最先端の宝具だ、文明見識が大変だったから

 

――だが、かつて器が言っていた。時は、金で買えと。拙速を尊べと

 

――マリーは、助けたかった。どうしても。

 

だって、彼女には彼女を愛する人がいるから。アマデウスという、彼女を愛する人が

 

気持ちが繋がっているのなら、最後まで一緒にいてほしい。悲しい別離なんて好まない。そんなもの、願い下げだ

 

犠牲の上に成り立つ勝利なんて、当たり前な結末は――自分と器が打ち砕いて見せると誓ったのだから!

 

「ゴージャス様・・・どうして・・・」

 

「――貴様は我の夜枷の相手を申し出た、気概溢れる女よ。こんな路傍で散らすには惜しい華だ」

 

「――!」

 

――うん。それもある

 

マリーは、自分を恐れずに、朗らかに接してくれた

 

器たる英雄王に敬意を払い、振る舞ってくれた

 

そんな在り方が、自分は好きだと感じたのだ。――消えてほしくないと、自分が思ったからだ

 

「貴様の願いは民草の守護であろう。ならばこのような町で果てるのではなく、特異点の修復を完遂せよ。それまで死ぬことは赦さん」

 

――そう。見つけたのだ。自分の願いを

 

皆で歌を詠うこと。アマデウスのピアノを聞くこと

 

特異点を――出逢った皆で修復する事だ!

 

「――歌の一つでも歌ってやれ。詳しくは言わんが、あの音楽家は今、大層傷心気味でな。貴様の声が聞きたかろうよ」

 

 

――果たしてほしい

 

――二人だけの、尊い約束を。そのために自分は、光を越えてここまできたのだから

 

 

「――はい!ゴージャス様――!!」

 

 

「・・・さて、ファヴニール。俺と決着をつけるか?」

 

 

「に、逃げなさいファヴニール!今は逃げるの、逃げるのよ!」

 

「骨がなくなったな、田舎娘。いつもの威勢はどうした?品切か?」

 

「うるさい、うるさい!必ず――必ずお前たちを倒す――!」

 

ファヴニールが飛び去る

 

「ありがとう・・・!素敵な素敵な王様!」

 

「ふはは、賛美せよ、特に許す!我に不可能はない!光を抜き去るなど容易き事よ!ははははは!」

 

「――フッ。これで、役者は揃ったな」

 

――無銘の選択は確かに

 

細やかな約束と護り、かつてのすれ違いを是正したのだ




「うんうん。やっぱり笑顔で終わる結末が一番だね!さて、マギ☆マリは・・・」

「「「「「「「マーリンざまぁwwwww」」」」」」」
「――大炎上してるじゃないか・・・!」


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決起

「くそぅ、ざまぁの書き込みがとまらない!なんてことだ、まさか僕が炎上沙汰を起こすなんて!」

『引きこもりの根暗グランドキャスターチーッスww(マリーに抱かれたフォウくん)』

「この書き込みはキャスパリーグだな!アイツいつも抱かれてるなくそぅ!鎮火が間に合わない、アカウントを複数用意したやり方、間違いない!」

「――こうなったら僕も当事者になるかな!柄じゃないけど、僕がいれば他のキャスターは二軍落ちだろうし!早速カタチを与えて――」

「ならぬ」

「僕のパソコンが火を吹いた――――!!!リアル炎上じゃないか――!!」


???


「観測所、報告しろ。観測所フォルネウス。九柱からの連絡がない、何事か」

「――あれが」

「何?」

「人類の輝き――理解できぬ、理解できぬ。理解できぬ。全裸、キャストオフ、AUO――統括局、観測所は抱いた疑問に向き合い、暫く観測を休止する――」

「――――何を見たフォルネウス!ムシケラの足掻きに、何を見たというのだフォルネウス!フォルネウス!!」

「メリィアメン――ウセルマトラー――あれが、地上の輝き――おぉ、おぉ・・・ラーー・・・」

「アモン・・・!?」


「マリー!あぁ、マリー!」

 

 

合流した矢先、ジャンヌがマリーを抱き締める

 

 

「きゅうっ・・・じゃ、ジャンヌ。熱烈な抱擁だけど、私が潰れてしまうわ」

 

 

「あ、あぁ!すみません!嬉しくて、つい」

 

「自重せよ。自らの剛力を自覚するのだな。アレだ、ベアーハッグ、鯖折りというやつだな今のは。クラスはレスラーか?神風旗持ちレスラーであろう?覆面はどうした?」

 

「もう!いい加減筋力をネタにするのは止めてください!」

 

「事実であろうからな、ははは」

――顔を真っ赤にするジャンヌ。今なら解る。何をいっても言い返してくれるから、楽しんでいるのだ。この器は

 

「あのね、聞いてくれる?私は何故助かったのか!それは英雄王が・・・んむっ」

 

言う前に、口を塞ぐ

 

(言わずともよい。貴様は貴様で助かっただけのこと)

(でも・・・)

(貴様を我の威光の出汁にする気はない。――泰然と振る舞えばそれでよい)

 

 

――うん。別に誰かに見せびらかしたくてマリーを助けた訳じゃない

 

マリーの輝きを失いたくなかっただけ。――これは、それだけの話なのだから

 

「マリー?」

 

「――ううん。何でもないの。素敵な素敵な王様が、奇蹟を起こした、それだけの話。ね?ギルガメッシュ様?」

 

「左様。企業秘密ではある故、田舎娘には教えてはやらんがな、ふはははは!であろう、マリー?」

「はい、ギルガメッシュ様!」

 

「また田舎娘と・・・!何故私はジャンヌと呼ばないのですか!」

 

「紛らわしいからだ!」

 

「そんな!?」

 

「うふふっ。やっぱり生きているって不思議ね!」

 

花が咲く、他愛ない会話

 

――こんな時間こそ、この旅で自分が価値を定めたものだ。そう、おもう

 

 

「さて、マスターたちと合流するか。そろそろヴィマーナのエーテルも貯蓄されよう。さっさとジークフリートを治さねばな」

 

「あぁ。ーーそれと、これを渡しておく」

 

手渡されたのは、――鱗と、牙か?

 

「ファヴニールの一部だ。触媒に使えば、縁のある英雄を呼び出せるはず。マスターと使ってくれ」

 

「触媒か。――遠回しな売り込みよな。ジークフリート。貴様をカルデアに招けとの達しかこれは?」

 

「想像に任せる」

 

ニヒルに笑うジークフリート。・・・その顔に、卑屈は見られなかった

 

 

「よし、では行くか。あぁ身構えるな、瞬きのうちに辿り着こうさ。光の速さであるからな!――行くぞ!」

 

文字通り瞬きのうちに――マスター達のもとへと舞い戻った

 

 

 

「アマデウス!」

 

「――あぁ、お帰りマリア。大丈夫だったかい?」

 

「もちろん!私はフランスが恋した女、マリー・アントワネットよ?竜の魔女なんてへっちゃら!」

 

「それは良かった――ならたのむ!早急になにか歌ってくれ!耳と心を癒すやつ!曲なら即興で作るから!」

 

懇願するアマデウス。余程耐えかねない地獄だったのだろう

 

「今日は最悪の一日だ・・・!耳を抉られ視覚を潰された!僕の怒りの日は今日だったのかもしれない!」

「視覚の暴力?ギルガメッシュ様、何を?」

 

「それはもう少ししたら教えてやろう。――フッ、凄いぞ?」

 

「止めてくれこの――!・・・あぁ、なんとなく解る。僕は君を罵倒はできないな」

 

「身の程を知るとは賢しくなったな、アマデウス」

 

「――なんだか君には、感謝しなくちゃいけない気がしてね」

 

マリーとジャンヌは助かって良かった・・・気を引き締めなければ。キャストオフはNGです、味方にしか作用しない殲滅とかひどい

 

「ゴージャス!あんた今までどこに――なによその女」

 

「あぁ、旅の連れだ。貴様らの遥か高みにいるアイドルだぞ?」

 

「私は別にアイドルではありません。ね、安珍さま?」

 

「う、うん?私はリッカなんだけどね?」

「はい、安珍様」

 

ぴっとりと着物の服の女性に寄り添われるマスター。安珍?

 

「フォウ!(頭のおかしいバーサーカーだ、気にしないでいい。頭がどうなっていようと、身体の美しさは変わらないからね)」

 

「良くないモノに憑かれたな貴様。蛇には用心しろよ?――置き引きとかに、な」

 

――若干苦々しげに呟く器。蛇、嫌いなのか?まだ叙事詩を全部見てないが・・・

 

 

「どちらも可愛くて素敵ね!私はマリー!よろしくされたいわ!ねぇ、その角はカチューシャかしら?」

「自前よ、自前!なんか気にくわないわね、アイドル的にあんたは滅茶苦茶キラキラしてて!」

 

「輝くのは好きよ?キラキラキラキラ、輝くの!」

 

「EXアタックしか通らぬとは悪夢よな――田舎娘、首尾はどうだ」

 

ジークフリートの呪を解く首尾を尋ねる

 

「大丈夫です。呪いは完全に断たれました」

 

「すまない。手間をかけさせた――いや、ありがとう。が正しいか」

 

「良かったね!ジークフリート!」

 

「あぁ、今度こそ全力で戦える。――期待してくれ」

 

みなぎる覇気が比べ物にならない。これが、ジークフリート本来の力・・・!

 

『ようやく戦力が整ったんじゃないのかな、英雄王?』

 

「うむ――そろそろ代わり映えのない蜥蜴の処理にも飽いていた所よ」

 

――では

 

「向かうのですね、邪悪の根源を絶つために。オルレアンに」

 

「マスター。貴様が決めよ。進むか、逃げるか。それは貴様らの選択だ」

 

視線を見つめ返す立香。――その瞳に、頼り無さはほとんど見られなかった

 

 

「――うん!行こう!オルレアンへ!」

 

 

人類最後のマスターが決めし裁定

 

 

――此処に、特異点を巡る戦いが定められたのだ

 

 

 

『決戦ね。スタッフは今から自由時間、明日まで休息を取りなさい!決行は明日ということになるわ。仕事は私がやっておく!疲れを取ることがあなたたちの責務と知りなさい!ロマニ、貴方もよ』

『僕は大丈夫です!饅頭と甘味があれば問題ありません!所長をサポートいたしますとも!・・・マギ☆マリ、炎上してるし・・・』

 

 

「マリー、大丈夫ですか?」

 

「ウィ、もちろんよジャンヌ。奇蹟を以て拾っていただいたこの生命、必ず役立ててみせるわ。力を貸してね?私の友達!」

 

「もちろん!」

 

「やろうね、マシュ!ギル!」

 

「はい、先輩!」

 

 

「この漫遊も終わりが見えてきたか・・・名残惜しくはあるが、まぁ感傷は捨て置こう」

 

みなぎる決意。――まずは、みんなを休めなくては

 

「これよりヴィマーナを出し、拠点へと向かう!このフランスとの訣別は近い。各々やり残しのないように時を過ごせ!我等の決戦は明日――死力を尽くして向き合う戦いと心得よ!――ヴィマーナ、抜錨!!」

 

 

皆を乗せ、黄金の船が舞う

 

 

「わー!!何よこの船!ゴージャスあんた何でもありな訳!?」

「今更だ駄竜!!我の威光を見足りぬか?ならば見せてやろう!令呪をもてマスター!キャストオフを再来させてやる!」

 

「はーい、見れなかったしね私!」

 

 

「「「「「『『止めてくださいお願いします!!』』」」」」」

「すまない・・・」

 

みんなの心がひとつになる

 

 

さぁ――決戦前夜だ!




「なんとか事なきを得ましたね・・・麻婆は偉大です・・・」
「・・・(パク)」

「エミヤさん?」

「ぐっふ――――!!」

「エミヤさん!?」

「――いいかねジャンヌ・・・これは皆に振る舞ってはいけない。これを食えるのは英雄王だけだ」

「は、はい」

「料理のいろはなら私が教えよう。――英雄王だけにしておけ。この味を振る舞うのはな」

「解りました!お願いします、先生!」


「⬛⬛⬛⬛⬛⬛!(マッサージ程度指ひとつで済ませよう)」


「ごふっ!!?」

「うむ、沖田を実験台にして正解であった。指先だけでよいとはエネであるな。では、人口呼吸の時間である」

「んむ――――――!!!!?」

「⬛⬛⬛⬛⬛(――ギリシャの女神たちもよくやっていたな・・・)」


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孤高

「フォウ!(そろそろ決戦が近い。どうやらここで君達と語り合うのは後になりそうだ)」


「(彼等の旅路がどうなるのか、どんな結末になるか、どうか見守ってほしい)」


「(ここまで共に歩んできてくれたハーメルンの皆様に深い感謝を。マーリンざまぁという精神と死すべしという美しき殺意を、どうか忘れないでほしい)」

「(それでは、また。オルレアンが終わったら、また会おう。ボクは女性の皆に包まれて眠るとしよう。――皆も、ボクくらい美しくなって、美しいたわわに出逢えますように――)」


「――ワイバーンが集まっているな。奴等も我等の決戦の雰囲気を察したと見える」

 

 

深夜、拠点にてワイングラスを揺らしながら、オルレアンの城を見やるギルガメッシュ

 

 

――今は、自分の魂を半分眠らせ制御を手放し、器のままに任せている。明日は決戦なのだから、万全の態勢を整えるに越したことはない。

 

 

英雄王には、思うままに振る舞い休んでいてもらいたいのだ。せめてもの、感謝として

 

 

「フン、精々退屈させるなよ?窮鼠猫を噛む、という諺を知っているかは知らぬがな。いや、知らぬか。無学な田舎娘ごときには知るよしもないか、ふはは」

 

愉快そうに笑う器。本当に、舌戦をさせたら天下一品だ。自分はとても思い付かないレパートリーに感嘆する

 

 

――そんな穏やかな時間に、聞きなれた声がひとつ

 

「ご機嫌ですね英雄王。お時間、よろしいですか?」

 

ジャンヌの透き通った声に、面倒そうに振り返る

 

「なんだ田舎娘、夜更かしか?感心せぬぞ。祈りを済ませ疾く床につくがいい」

 

「それは解っています。・・・ですが、どうしても今話したくて」

 

ジャンヌの、話?

 

「・・・マリーの次は貴様が夜枷の相手か。藁臭い貧相な娘だが、まぁいないかはマシ、か」

 

「はいはい、私はどうせ無学ですよーだ。ふんっ」

 

ぷいっとむくれながら近場に座るジャンヌ

 

「なんだ、自覚したのかつまらぬ。玩具としての期限切れは近いようだな」

 

「反応するとあなたが喜んでしまうと気付きましたから」

 

「ハッ、よくぞ気付いた。爪の先程賢くなったな。その媚薬臭い肉付きのだらしない身体の脂肪がようやく頭に回ったようだな」

 

「――も、もう・・・――!ギルガメッシュ、貴方は・・・!」

 

「我を出し抜こうなぞ2600年早い。神代に生まれ変わって出直すのだな」

 

ははは、とグラスを煽り酒を飲む。――この味は、ちょっと苦手だ。でもくらくらする感じは心地いい

 

「・・・あなたたちと出逢ったのが、もう昔のようです。色々なことがありましたね・・・」

 

「我としては物足りぬがな。まぁ、始めとしては及第点よ。小娘が率いる相手など雑魚も良いところだ。奴等に、我を敵に回す資格は無かったな」

 

「・・・物言いは辛辣ですが、貴方のその自信に溢れた言動は、確かに私たちに力を与えてくれていました」

 

にっこりと、胸に手を当ててジャンヌが微笑む

 

「ありがとう、英雄王ギルガメッシュ。貴方と肩を並べて戦えたことは、私の誇りです」

 

――その煌めくような眩しい笑顔は、きっと忘れることはないだろう。ずっと

 

たとえ、このジャンヌが消えたとしてもだ

 

「学はないが礼節は身に付けていたか。弾圧と圧政が取り柄とばかり思ってはいたが、貴様らの主とやらはそれなりに教養はあったようだな」

 

 

「はい。主は、いつも我等を見守ってくれています」

 

「フン。精々怠惰な主とやらのご機嫌をとるのだな。己を崇めねば罰を下す狭量な神など、我は願い下げだ」

 

「――貴方が信じているのは、己のみですものね」

 

「当然だ。我はそういう生き様を選んだのだからな」

 

ごくり、と、ワインを飲み干す

 

「・・・私達は、勝てますでしょうか」

 

ぽつり、とジャンヌが呟く

 

「なんだ、脳筋の癖に今更自分の進路に悩むのか?遅かろうがバカめ」

 

「そ、そうではありません。・・・この戦いには、人類の未来がかかっている」

 

人理を巡る戦い。特異点の修復

 

負ければ人類は滅亡が確定する。破滅と共に、歴史は燃え尽きる

 

「生前でも、人類の未来をかけた戦いなど未経験です。・・・怖い、のかもしれません」

 

ぎゅっ、と拳を握るジャンヌ

 

・・・城塞だなんて言われていても、確かな心はそこにあるのだ。頑強だから、気付きにくい、理解されないだけで

 

「私は――勝てますでしょうか」

 

「知らぬ」

 

バッサリと切り捨てる器

 

「明日に判る事に何を悩む。骨の髄まで馬鹿な女よな、旗持ち」

 

「なっ!」

 

英雄王は笑う。愉快そうに、酷薄に笑みを浮かべる

 

「全ては明日、裁定が下ろう。貴様らが歩み、積み重ねが正しければ勝ち、足らねば負ける。それだけの事だ。気楽に戦え、負けても高々人間が滅びるのみだ」

 

「そんな、簡単には」

 

「簡単だとも。滅びを厭うならば抗え、そして勝て。それだけの話よ――うむ」

 

ごくり、と酒を更に煽る

 

「であればこう考えよ。明日の戦いには我等だけではない。全人類の命がかかっていると」

 

王は語る

 

「そうなれば気は楽だぞ?我等が敗北した瞬間、我等の生命だけではなく、全人類の生命が消え去るのだ」

 

――その矜持を、その在り方を

 

「悩むことはない。この世総ての命に対して、総ての悪になればよいのだ。この世の総てを背負うということは、自らのみで世界と相対する事」

 

グラスをジャンヌに向ける。中身の酒が地面を打つ

 

「――負けた瞬間、総ての命は露と消える。お前の敗北の責を裁くのは――お前のみだ」

 

それが――誰にも責められぬ高みに立つ、王の視点なのだと、魂に刻まれた気がした

 

「・・・あなたは、総てを背負っているのですね」

 

「当然だ。よいかルーラー。英雄とは、自らの視界総てに有るモノを背負うもの」

 

 

「――この世の総てなど。とうの昔に背負っている」

 

 

――魂に、震えが走る

 

この王の偉大さに、気高さに・・・心から感服したのだ

 

――今は、本当に嬉しく思う

 

これほど偉大な王に、転生できた事に。これほど偉大な王の見る世界を、臨める事に

 

いつのまにか、心から、感謝を顕していた

 

「・・・私は、そんな高みには上れませんね」

 

 

「であろうな。貴様には旗持ちなどという、多くに問われる低さがお似合いだ」

 

ふははは、と笑う器

 

――世界を背負う、ということは。己のみで世界と相対すること。それは、自分で総てを決めるということ

 

――王の言葉を魂に刻む。

 

ならば。後悔はすまい。自分の選択を、決断を。思うままに感じ、思うままに見て、思うままに決めよう

 

 

その生き方が――いつか。自分の『銘』になると信じて。

 

――王の矜持が、無銘なる魂をまた一つ、磨きあげた

 

「そら、夜も更けた。さっさと寝るがいい。過労で倒れたなどという下らん言い訳は聞かんぞ。それが許されるのはカルデアの連中のみだ」

 

「・・・はい。ありがとうございます。私は――けして、後悔しません」

 

「それでよい。凡俗は凡俗らしく励め。――あぁ、それなら餞別をくれてやろう」

 

スッ、とジャンヌを指差す

 

「せめて衣服は整えるのだな。我の旗持ちを名乗るならばな」

 

「ぁ――っ?」

 

ジャンヌの衣服が変わっていく

 

紫から白の服に、纏めていた髪はほどかれ、なすがままに

 

純白の聖女が、そこに顕れていた

 

「この姿は――」

 

「貴様はルーラーであったな。そら、奪われたものを補填してやろう」

 

ピッ、と指を指す

 

「あぅっ――!背に、何か・・・――これは――!」

 

ジャンヌが驚きの声をあげる

 

「『令呪』――!英雄王、なぜ貴方が――!」

 

「貴様な、我を何様だと心得るのだ」

 

フン、と鼻をならす

 

「我はゴージャス、英雄王。令呪の一つや二つや八つ、ストックがあって当然であろう」

 

「――貴方が敵でなくて・・・心底よかったと思います」

 

「味方でも本来ならばこのような真似はせん。此度の我は特例中の特例だ。――どこからか、邪念の無い敬意と尊敬を感じるのでな」

 

ふはは、と笑う英雄王

 

――敵わないな。この王様には

 

「奪われたものだ。補填するに不備はなかろう。――励めよルーラー。明日の進退は、貴様次第だぞ」

 

「――はい。ありがとうございます、英雄王。・・・どうぞ、御休みください」

 

 

「ではな。・・・さて、我も寝るか・・・」

 

――微睡みに眼を閉じる英雄王

 

――自分も、この器に恥じない決断を下していこうと

 

意識を手放すまで――反芻し続けた



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開幕

「AUO・・・キャストオフ・・・全裸・・・輝き・・・思考する、思考する。思考する。意味はありや。意義はありや。観測所は思案する、思考する」



「――――我、思い至れり。行動の意味、行動の意義を得たり」


「定義する――つまり」



「『全裸はとても、気持ちがいい』」




「メリィアメン・・・脱衣、全裸――総ての痕跡を、私は捉える。我が眼は、総てを知る、光を見る。数多の光を私は覗覚する。――キャストオフ、キャストオフ、――キャスト、オフ――」


「――――ネフェル・・・イルカ・・・――ギルガメッシュ――!(美しきものはギルガメッシュの意)」



「統括局。観測所、覗覚星に揺らぎが見られる。対処を」

「ギャハハハハハ!私にどうしろと言うのだ!!眼をくりぬいて新たに付け替えろ!」


『英雄王!起きてください英雄王!朝です!決戦の朝ですよ!起きてください!目覚めの時間ですよ!起きてください!えーゆーおー!おーきーてーくーだーさーいー!えーゆーおー!』

 

 

 

「やかましい!!」

 

 

跳ね起きる。ジャンヌか。そういえば目覚まし係に立候補してたっけ

 

 

「せめてボキャブラリーを増やさぬか!オウムか貴様!」

 

 

『おはようございます英雄王!皆さんが貴方を待っていますよ!』

 

「人の話を聞かぬかたわけ!」

 

『きっちり歯を磨いて顔をあらってくださいね!では!』

 

ぶつりと切れる通信。――改めて、ギャップがすごい

 

「・・・あれはバーサーカーであったか・・・ルーラーとかクラス詐称であろう?」

 

 

『残念ながらルーラーなんだよね!おはよう英雄王!僕はばっちり快眠&食事をとって万全さ!』

 

ハキハキとしているロマン。どうやら絶好調らしい。何よりだ

 

『マギ☆マリはウォッチングに今徹しているからね!早寝早起きさ!甘味もたっぷり!肥りそうだ!』

『うるさいわよロマニ・・・おはようございます、ギル。皆と合流してくださいますか?』

 

断る理由もない。最後の会合に向かう

 

「うむ。貴様も寝たか?オルガマリー」

 

『はい。大丈夫です。最後まで皆をサポートしたいと思います』

 

頼もしい返事が返ってくる。うん。大丈夫だ、支援に負担はない

 

「よし、では起床といくか。次はカルデアの部屋に身を預けたいものだ」

 

――さぁ、決戦だ!

 

 

「――この中で軍を率いて戦った事があるのは、俺と英雄王か」

 

「構わぬ。戦術は貴様が取れ」

 

「すまない。――まぁ俺も、国を落とした絢爛な経歴があるわけではないが」

 

ジークフリートが作戦を立案する

 

――敵は此方より遥かに多い。だが、敵のほとんどは此方より弱い。この場合、とれる作戦は二つ

 

 

背後から奇襲する電撃戦。しかしこちらの位置がばれている以上、それは叶わない

 

 

ならばやることは一つ

 

「「正面突破!」」

 

清姫、エリザベートが口を揃える

 

一丸となり、障害を蹴散らし大将を仕留める、その方針で固まることとなった。

 

 

「ファヴニールの対処は俺とマスターが行おう。皆は雑魚やサーヴァントから、俺たちを護ってほしい」

 

「おおよそ雑竜どもの司令塔はアレであろう。討ち果たせるか否かがこの戦争の要点であろうな」

 

「素敵ね、脇目も振らず駆け抜けるなんて!フランスを護る勇者たちだもの、華やかにいきたいわね!賛成します!」

 

「じゃあ僕はマリーの目付け役を。――もう二度と目を離すもんか」

 

――うん。頼む、アマデウス。必ず、皆で歌を歌おう

 

「必ず生きて帰りましょうね、アマデウス。――下ネタはダメよ?」

 

「ねぇ子ジカ。私はぶちのめしたいやつがいるんだけど、アタシはそいつに集中していい?」

 

エリザベートが手を挙げる。集中したい相手・・・?・・・そういえば、あのカーミラと名乗る吸血鬼の真名は・・・

 

 

「いいよいいよ。やっちゃって!エリちゃん!」

「ありがと!話が解るわね、子ジカ!」

 

――なるほど、自分自身と、乗り越えなければならないものがあるというわけか

 

「しくじるなよ、エリザベート。せめて諸ともに散って貢献せよ」

 

「散らないわよゴージャス!アタシ、何度出たって恥ずかしくないんだから!」

 

「ははは、貴様はその内ロボにもなろうよ。守護神的なアレで」

 

「わたくしは、マスターを護りますわ。火を吹いて近寄る無礼者をごぅごぅと」

「お願いね、きよひー!」

 

「はい、安珍さま・・・」

 

・・・清姫と名乗るサーヴァント・・・本当にマスターを見ているのか・・・?

 

「うむ、危なくなったら鐘に入るがよい」

 

「では、私は皆の守護を。お任せいただきたい」

 

「私も、全力を尽くします」

 

マシュとゲオルギウスがパーティーのガードを申し出る

 

 

「マスターの守勢は任せるぞ、マシュ」

 

「はい!」

 

ジャンヌが歩み寄る

 

「私は、竜の魔女を討ち果たします。お任せください。この胸の疑問を、問い質さなくては」

 

白き聖女に、迷いは見られない。とても、スッキリとした顔つきだ

 

「ジャンヌ、その衣装とっても素敵よ!」

 

「マリア、今は茶々をいれないように」

 

「むぅ。だって本当なんですもの!黒い魔女に逢うのにピッタリだわ!」

 

「馬子にも衣装というやつよな。――思うがままの疑問をぶつけるがよい。それが活路になろうさ」

 

「はい。――英雄王はいかがなさいますか?」

 

「そうさな。いい加減頭上を飛び回るハエどもに辟易していたところだ。ヴィマーナを使い一掃してやるとするか」

 

皆が万全に戦えるサポートを申し出る。横やりは入れさせない。自分が総て一掃しよう

 

「あぁ、大将首は我が貰うぞ。貴様らの露払いと同時に、貴様らは王手をかけよ。詰みは我がしてやる」

 

「――解りました。皆もそれでいいですね?」

 

異論を唱える者はいない。――後は、進むのみだ

 

『スタッフ一同、八時間の睡眠と完璧な食事で万全さ!サポートは任せてくれ!』

『感知は任せて。貴方たちは立ち止まらず、前へ向かって進みなさい。これは所長命令よ』

 

「うん!よし――じゃあ皆!」

 

 

高々に右手を掲げる、最後のマスター立香

 

「私達の頑張りで、フランスを救うよ!大丈夫!私達ならやれる!――必ず勝とう!」

 

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

「ルーラー、ジャンヌ・ダルクの名の下に!救世の勇者達に力と祝福を授けます!令呪の形を取りて、皆に願いと希望を!」

 

純白の聖女が令呪をサーヴァント達に使用する。皆の霊基が力と強度を増し、大量の魔力を確保する

 

「ではな。我は先に行くぞ」

 

身体にみなぎる力を感じながら、ヴィマーナを召喚する。――これなら、丸一日使役しても大丈夫そうだ

 

「気を付けてね、ギル!」

「必ず、また」

 

「――励むがよい。次に見える際は、決着の時だ」

 

ヴィマーナに乗り込み、玉座に腰を下ろす

 

「英雄王!どうかお気をつけて!」

「ギルガメッシュ様!私を助けてくださったのだもの!貴方も必ず無事でいてくださいね!」

 

「――ファヴニールは任せてくれ」

 

「うむ。任せた」

 

離陸するヴィマーナ。放たれるエーテル。騎手をオルレアンの城に向け

 

 

「――ヴィマーナ!抜錨!」

 

 

仲間達に地上を任せ。王は天空へと舞い上がるのであった――

 

 

 

 

 

天空。前方に見えるは無数雑多のワイバーン

 

 

「そういえば、初めて手を下したのは貴様らであったな。なつかしいものだ」

 

――あのときはひやひやしていたが、もう悩む事はない

 

ただ、全力で――倒すのみだ!

 

「王の舞う天に、貴様らのような雑種は要らぬ――さぁ」

 

竜殺し、原典選別。装填完了――。開門――その砲門数――――500門!

 

 

まずは、眼前を一掃する――!

 

「死にもの狂いで謳え、雑竜――――!!」

 

 

これが、開戦の狼煙だ――!!




「召喚に備えろ!万全の体勢で待機だ!」


「シッ、シッ!祈りの準備は万全です!シッシッ!シッ!」

「うわーん!羽織も旗もどっかに行っちゃいましたー!ここが誠の立てどきじゃないですかやだー!!」

「⬛⬛⬛⬛⬛(私は最後の手段だろうな。寝るか)」

「キャットは後方待機を所望する。パーティーの準備があるゆえナ。沖田、羽織を探すカ?」

「うわあぁあんお願いいたしますー!羽織ー!旗ー!」


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野生

「あれでもない、これでもない、それでもない・・・!ウワーン!これじゃまた役立たずになっちゃいますよ―!せめて羽織だけでもー!」

「失敬、ダ・ヴィ男から種火を戴いてきた」

「何故に!?」

「霊基をいじれば姿がかわるは自明の理。自然の摂理には反するがキャットは知らぬ」


「沖田に、種付けを行う」

「たねっ――ちょ、えっ!?」

「種付けを おこなう。観念するとよいぞ」

「んなぁ――!?ちょっまっ、んぁあ――!!」


「殺す、殺してやるー!誰も彼も!この弓矢にて死ぬがいい――!」

 

 

狂気と暴虐を振り撒き、進軍中の一行に襲い掛かるはバーサーク・アーチャー。七騎のバーサーク・サーヴァントの一騎だ

 

 

 

「強制的に狂化されている――!」

 

 

「どうやら彼女は、竜の魔女に従うタイプでは無かったのでしょう。狂わせることで、従わせた」

 

 

「酷いよ・・・!サーヴァントだって意志があって、ちゃんと生きてるのに!」

 

 

「ぉおぉおぉおぉおぉお!!」

 

猛烈な速さと勢いで、雨霰と矢が放たれる。細腕から放たれたとは思えぬ剛矢が一行を撃ち据える!

 

 

「ぐっ、くぅううう!」

 

「私が前に出ましょう。守護騎士の名に懸けて!」

 

 

臆す事なく矢面に立ち、力を屠る祝福の剣、アスカロンにて脅威を無力化する

 

 

「邪魔をするなぁあっ!!」

 

猛烈なダッシュで一帯を蹂躙するかの如く走り回る。ダッシュしながら円を描き、中心に獲物を捉え撃ち据える

 

「マスターを囲いましょう!全方位に!」

 

旗を、剣を盾を、総てを使いマスターを守護する

 

 

「激しいけど、哀しいわ。本当ならもっと素敵な矢を放てるはずじゃないかしら、あの麗しの方・・・」

 

「狂い果てたならあんなものだよ!理性を手放してしまったものは畜生と言うんだ残念なことにね!」

 

 

「果てるがいい――――!!」

 

引き絞られた渾身の一射が放たれる――!

 

「――来て、『タマモキャット』!」

 

右手を輝かせ、カルデアに接続する

 

「――おうさ、呼んだか御主人?」

「ぐあぁ・・・――っ・・・!!」

 

何時のまに接近したのやら、アタランテの右腕をひねりあげた体勢でタマモキャットが召喚に応じる

 

 

「まあ!可愛らしい!」

 

「嘘だろマリア、あれはなんか・・・化け猫だよ多分・・・」

 

「は、なせ・・・!!貴様ァ・・・!!」

「コヤツもケモノ、アタシもケモノ。御主人はあてつけと癒しを求めてアタシをよんだ、アンダスタンドなのか?どうだ?ん?」

 

「やっちゃって!タマモキャット!ケモノのプライドをかけて!」

 

「誇りと来たか。腹はふくれぬが御主人の笑顔で胸は満たされるゆえ、アタシはやるぞ?端的に皆殺しなのだな」

 

「がぁっ!!」

 

力を振るってタマモキャットを弾き飛ばす

 

 

「おぉ、ナイス怪力である」

 

「ふざけた輩め!死にはてろ!!」

 

 

『読めたわ!耳を持ち、俊足で、弓を使う!そのサーヴァントはアタランテ!麗しのアタランテと呼ばれたギリシャの弓使いよ!』

 

アタランテ――カリュドンの猪に真っ先に弓矢をはなてし、駿足と麗しの美貌を持つ、アルテミスを信仰せしギリシャの弓の名手

 

 

「なんと、ギリシャ弓であったのか。ますます惜しい、磨かずとも光る逸材を使い潰されるとは。哀しい。キャットは哀しい」

 

「ぜぇい!!」

「おっと」

 

放たれたと弓矢を正確に払い打ち落とす。完璧に間合いと距離、軌道を読みきった対応

 

 

「貴様、ふざけた格好を――!」

 

「ふざけたなど。存在自体がふざけているアタシには罵倒にはならぬ、ニャハハ」

 

 

一瞬で、距離を詰めるタマモキャット

 

「何――!?」

 

 

「理性を手放したバーサーカーなぞ敵ではない。アタシは理性がないバーサーカー故な」

 

目にもとまらぬ早さで右腕をつかみ、瞬間へし砕く

 

 

ベギリ、と嫌な音が響き渡る

 

「ぐぁぁあぁあっ――――!!!?」

 

 

「片手潰せば弓矢撃てぬ。摂理にして常識なのだナ。どうだ、痛いか、辛いか?」

 

「こ、の程度――!」

 

再び走り始めるアタランテ。しかしタマモキャットは慌てず、動じない

 

 

「何故かだと?フフ、解らぬか御主人」

 

「な、なんで?」

 

瞬時にアタランテに追い縋り、並走するタマモキャット

 

「何――!?」 

 

「同じ敏捷Aであるからだゾ。別に別段あわてない。キャットはただ獲物を狩るのみ」

 

脚を払い、派手に転ばせる

 

 

「ぐうぅっ!!」

 

脚をむんずと掴み、軽々と持ち上げる

 

「では、肉ほぐしの時間である」

 

脚を掴みあげたまま持ち上げたアタランテをひたすら地面に叩きつける

 

「ぐぁぁあぁあっ、がぁあぁあっ!!」

 

 

「むぅ、まだ息があるとは?なかなかにしぶとくキャットは凹む。楽になると楽でいいぞ」

 

 

「まだ。まだ――!」

 

 

「仕方あるまい。理解できぬなら身体に教えるしかないな、争いは哀しいが御主人のためだ」

 

 

「――玉藻地獄をお見せしよう」

 

グルグルと無造作に振り回し、思いきり大木に向けてなげつける

 

「ぐふっ――!!」

 

 

「先輩!その、止めなくて良いのでしょうか!?」

 

「大丈夫!キャットは忠義にあついバーサーカー!きっと解ってるよ!」

 

 

「では、お別れの時間である。――宝具開放」

 

「――!!!」

 

 

「――『燦々日光午睡宮酒池肉林』――アタシの野生、野に帰るキャットの叫びをきくがよい――!!」

 

 

「何――――!?」

 

 

――キャットの凄まじい野生のパワーが炸裂する

 

どう炸裂したかというと、凄く、まぁ、凄く

 

 

 

――――巨大な猫っぽい何かが現れてアタランテを蹂躙し、あっという間に消滅させたのだ――

 

 

 

「さらば、ケモミミ属性よ。オマエもまたキャラかぶりの友(友とはいってない)なのだな。恐らく一番頭の悪い戦闘シーンであっただろう。キャットは空気を読まぬものであるからな、ニャハハ」

 

 

『・・・サーヴァント、消滅を、確認したわ』

 

脱力しているオルガマリー

 

「よーしよし!キャットおいでー!なでなでしたげる!」

 

「ニンジンも欲しいぞ、御主人」

 

 

『ま、まぁ倒せたんだし結果オーライだ!さぁ次にいこう!』

 

「・・・世界には色んな英雄がいるのですね・・・」

 

キャットと戯れ続けるマスターとキャットを見て、呆然とゲオルギウスが呟いた・・・

 

 

 

「でははやく終わらせてくるのだ、御主人。アタシはお前の帰還をまちパーティーにせねばならぬからな」

 

「うん!待っててね!」

 

「・・・とりあえず、進みましょうか・・・」

 

どことなく、脱力した一同であった・・・




「シリアス、シリアル?閑話休題、キャットを楽しめ。待たせたな沖田、種付けである」

「いやーありましたありましたねー!どこだかわからないけどあるんですよねー!はい!」

「気にするな、まだまだ種火はあるのである」

「私は普通の趣味なんですよーー!!」


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絢爛

「統括局。アモンとフォルネウスの教育が完了した。無用な機能を切り離し、新たに観測と覗覚醒を再開させる」


「そうか。此は貴様の失態だぞフラウロス」

「・・・私の?」

「惚けるな節穴め!特異点を一つ是正され、小娘一人害せず、たかだかサーヴァントを始末し損ねたのがこのザマよ!名前を節穴眼フラウロスに改名するか?どうだ!?」


「――・・・面目次第もない。次の機会に必ず」

「責務を果たせ。我等の仕事の完遂はまだ遥か先にある。イレギュラーが出すぎた真似をするなら処理しろ」

「了解した・・・」

「頼んだぞ?『節穴』フラウロス?ハ、ハハ、ギャハハハハハハ!!」


「こんにちは、私の残りカス。その姿はなにかしら?精一杯着飾ったのね?」

 

 

嘲笑う黒。神にあだなし、竜を描く黒の旗

 

 

「この姿は英雄王に諭され、祈りの末にたどり着いた私の最後の姿。――それに私は貴女ではないし、貴方は私ではない」

 

清らかな白。神を称え、威光を掲げる白の旗

 

 

オルレアンの平原にて、二人のジャンヌが対峙する――

 

「何を言っているのかしら。貴女は私、ジャンヌでしょう?」

 

「今は何をいっても貴女には届かないでしょう。貴女に尽くすべきは言葉ではない。鋼のごとき――祈りです」

 

バシッ!と音を立て拳を左手のひらに叩きつける

 

「まずは、貴女の顔に祈りを叩き付けてから話をさせてもらいます――!!」

 

その姿、城塞と鋼が如く。けして砕けず穢れぬ純白の聖処女の威光がまぎれもなく顕れていた

 

 

「黙れ!我が旗を、我が憤怒を見るがいい!」

 

怒りの炎を吹き出して、黒き魔女が吼え猛る

 

 

「我が憤怒は故郷を焼き、我が憎しみは故郷を覆い尽くした!我が怒りは牙となり、我が哀しみは爪となり、我が絶望は竜となりてフランスを覆い尽くした!!」

 

高らかに、おぞましき旗をかかげる

 

「喝采を!我等が憎悪に喝采を!!我が総てはフランスを喰らいつくし、やがて互いの身を食い合う!我が憎悪は遥か果て、遥か未来をも喰らうだろう――!」 

 

地獄の業火を吐き立てる、竜の魔女なりし黒き魔女、ジャンヌ・ダルク

 

 

「それこそが、真なりし百年戦争――!邪竜百年戦争だ!!」

 

呼応し、吼え猛るファヴニール。総てを憎む怨嗟の叫び

 

しかし、白百合の華のごとき輝きが其を受け止める

 

「いいえ、ジャンヌ・ダルク、竜の魔女。貴女の望む世界も戦争も、この泡沫の夢も間もなく終わりを告げるでしょう」

 

「――マリー・アントワネット」

 

 

「何故なら、ここには彼女がいる。打ちのめされ、這いつくばってあがきもがく理不尽の反抗者たる人間を愛した旗の聖女が。その旗の下に集いし勇者達が。――そんなジャンヌが大好きな、フランスに恋された女がいる」

 

「マリー・・・!」

 

ジャンヌにウィンクを返す。邪悪な化身をまっすぐにらみ返す

 

「フン、仲良しこよしの友情ごっこ?下らない。本当に下らないわ。ばかみたい!そんなもの、消えてしまえば無くなる癖に!」

 

 

「――哀しいわ、竜の魔女。貴方が言葉を語れば語るほど、貴女はジャンヌから遠ざかっていく。貴女がジャンヌ・ダルクであるのなら、決して忘れられぬ想いであるはずなのに――」

 

「黙れ!!あのふざけた金ぴかを切り離すために、総てのワイバーンを捨て石にした!貴様の生命を庇護する者はもういない!今度こそ焼かれるがいい――!!」

 

「いいえ、私は焼かれないわ。――貴女は勘違いしている。フランスの為に立ち上がった者は、聖女だけではなくてよ?」

 

 

「何――」

 

 

突如、砲撃がファヴニールを撃ち据える。ありったけの弾と言う弾が叩き込まれていく

 

「あれは――!」

 

「総員!撃って撃って撃ちまくれ!ここがフランスを護れるかの瀬戸際だ!!」

 

前線に立つ、純白の鎧を纏う大元帥。ジル・ド・レェが吼え猛る

 

 

「生命があればここで捨てよ!惑うな、迷うな、恐れるな!――そう、我等には聖女が――王妃がついている――!!」

 

沸き上がる歓声、突き上がる怒号。フランスを守護せし軍の雄叫び

 

 

「何も恐れることはない!フランスを覆う竜など恐れるに足らぬ!――総員構え!!」

 

 

再び放たれる、意地と誇りの大掃射――!!

 

「前を向け!恐れるな!聖なる旗に集いて吼えよ――!!撃てェエェエ――っ!!!」

 

気迫の大砲撃が、ファヴニールを撃ち据える――!

 

「見えるかしら、ジャンヌ?あなたの奮闘は、けして無駄ではなかったの!貴女の生きざまが、皆を動かしたのよ――!」

 

「はい――はい・・・!」

 

涙を浮かべるジャンヌ

 

 

『――私が選び、私が選んだ人生だから。誰かを救うために旗を持ち、誰かを救うために戦った。終わりが綺麗でないとしても、私はそれでよかった』

 

 

「――ふざけないで!!私を見捨てたくせに!私を裏切ったくせに!!私を売り飛ばした癖に!!」

 

『護りたかった、フランスが――遥か未来に繋がったのだから――』

 

――別のジャンヌ・ダルクが言葉にした、信仰への殉教

 

その人生は、けして――間違いでは無かったのだ――!

 

「ファヴニール!奴等を殺せ!焼き尽くせェ!!」

 

 

使命を受け、爆炎をフランス軍に放つファヴニール

 

 

――だが

 

「いや、すまないが――貴様の相手は彼等ではない」

 

フランス軍とファヴニールの間に割って立ち、仁王立ちのその身体一つで炎を阻む影が一つ――

 

 

「あれは・・・」

 

無傷の肉体。不滅の精神

 

 

――古今無双の竜殺し

 

「これで三度、いやもはや数は無用だ。互いが生きている限り、俺とお前は戦う運命だ」

 

――ニーベルンゲンの勇者が此処にある――!

 

 

「ファヴニール!聞け!!俺は此処にいる!ジークフリートは此処にいるぞ!!」

 

高らかにバルムンクを抜き放ち、切っ先を突きつける!

 

 

「必ず貴様を黄昏に叩き込む!我が正義、我が生涯!我が信念に誓って――!!」

 

「ジーク、フリート・・・!」

 

「再び土に還るがいい、邪竜!人が生き、人が織り成す営みに、貴様の存在は無用なり――!!」

 

「ファヴニール!下がりなさい!セイバー!ランサー!アサシン!」

 

 

ファヴニールを庇うように、三体のサーヴァントが現れる

 

 

「――ごきげんよう、王妃。こんな形で巡り会うなんて、数奇な運命もあったものです」

 

「――本当ね、シュヴァリエ・デオン?随分とお顔が怖くなってしまって・・・」

 

「――死すことは恥ではない。敗北こそが恥である。どれ程浅ましくとも、余はこの無様な肉体で無敵を謳おう。余にはそれしか残されていないのだから」

 

「バーサーク・ランサー・・・!」 

 

「ゥウゥウ、ァアァア・・・マリー、マリー・・・!」

 

「げ。あの変態もいるのか。マリー、君ヤツに絶縁状でもたたきつけたのかい?」 

 

苦笑いしながらアマデウスが訪ねると、不思議そうにマリーが首をかしげる

 

「?私は思ったこと、感じたことを伝えただけよ?」

 

「あー、なるほどね。よっぽど質が悪い!やっぱり君は魔性の女だ!」

 

 

「――皆様、ここは私に任せてくださる?」

 

 

「フォウ!?(王妃!?)」

 

「あぁ、犠牲になりたいのではありません――ただ、見せてあげたいの!私も、私自身の輝きを皆に!サーヴァントが三騎も集まってくださったのだから、私もそれにお応えしたいわ!」

 

「無茶です!いくら貴女でも、そんな――!」

 

「あーむりむり。好きにさせてあげよう。彼女の名前、知ってるだろ?」

 

「マリー!」

 

「えぇ!私はマリー!マリー・アントワネット!」

 

星のように、華のようにマリーは輝く――!

 

 

「このフランスで一番――ワガママな王妃なのだもの――!!」




「盛り上がってきたぞぅ!スペアのパソコンを買ってきた!正確にはサーヴァントユニヴァースのアマゾネス通販で取り寄せたんだけどね!ウルク製品も悪くはないんだけどワンオフ過ぎてちょっとね・・・まぁいいや!早速ウォッチングしなきゃ!」

「フォウ!デュクシ!(ビーストジャミング、っと)」

「電波障害――!!おのれキャスパリーーーーグッッッ!!!」


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煌輝

「なんで沖田だけ出演なのじゃ!?作者惑ったか!?さては光秀に袖の下を貰ったな!?はやくワシを出せ!感想欄のサルめは本能寺のアーチャーを求めておる!!」


「そう!!本能寺のアーチャーこと、そうワシじゃ!!聞けばカルデアいじり放題な世界線らしいんじゃろ!マインクラフトしほうだいとかなにそれ有能!決めた!わし、カルデアに本能寺作る!!山頂にて燃え盛る寺とかわし粋すぎィ!」



「うるせぇな・・・アイツがいる場所か。いつか冷やかしにいってやるか――まさか、腑抜けちゃいねぇだろうな・・・」 



「――――!!(ゾワッ」

「どうした、沖田?天恵か?」


「い、いえ・・・なんだか、凄まじい悪寒が・・・」




「慢心、本気を出した英雄王・・・」

「まぁ、どうでもいいことだろうな。統括局たる私には関係あるまい」




狂いし華やかな剣技が王妃を襲う

 

 

 

――届かない。輝きに阻まれる

 

 

血にまみれた杭が王妃に迫る

 

 

――届かない。輝きが道を遮る

 

 

暗く澱んだ刃が王妃を狙う

 

――届かない。輝きが剣筋を断ち切る

 

 

 

「キラキラキラキラ、輝くの――!」

 

 

驚愕に眼を見開く三騎のサーヴァント

 

「・・・すごぉい・・・」

「はい、本当に・・・ただ軽やかに、振る舞っているようにしか見えなくても・・・確かに敵を寄せ付けていません・・・!」

 

 

 

輝ける、華やかなりし王妃

 

 

その煌めきを、三騎のサーヴァントの力を以てしても、阻むことができないでいたのだ――!!

 

 

「マリー・・・!」

「チッ、何をしているのですかサーヴァントたちは!あんな小娘ごときに手間取って――!」

 

つばぜりあいぶつかり合う二人のジャンヌ。黒き魔女が苛立ちを表す

 

 

「マリーは小娘ではない!陰謀渦巻く王宮に咲き、一分も穢れることなく在り続けた、誰よりも輝かしくある一人の王妃!」

「こいつも――!なによ、この力・・・!」

「私の中には、聖マルタの祈りが生きている!その祈りが、皆の願いが――あなたを穿つっ!!」

 

振りかぶり、拳を魔女の旗の支柱に思いきり叩きつける!

 

「くぅうぅっ!!霊基も弄られている・・・!本来の力を取り戻したというの!?こいつは・・・!!」

 

「たぁあぁあぁあ!」

「ッッ、舐めるな――!!!」

 

 

二つの旗が、己の存在を懸けてぶつかり合う――!!

 

 

「どうしたの?デオン!あなたはもっともっと素敵でしょう?」

 

「王妃――!」

 

軽やかな足取りで顎をなでる

 

 

「豪奢な貴方も!さぞ素敵な領主様なのね!」

 

迫り来る杭を避けながら、手を差し出す

 

「一緒に踊ってくださらない?おじさま?」

 

「ぬっ――!!」

 

振るわれる槍を、ひらりとかわす

 

「まぁっ、ワイルドなのね!」

 

 

「マリー・・・!マリーマリーマリー!!」

 

「サンソン、あなたは本当に真面目なんだから!下を向かず、前を向いてみれば素敵な世界が広がっているわ!」

 

振るわれる刃を意に介せず、顔を近くに寄せる

 

「マリー・・・――あぁ、マリア――!」

 

サンソンが輝き、本来の姿を取り戻す

 

「おーい!サンソンをやる気にさせちゃダメじゃないか!」

 

「ごめんなさいね、アマデウス。でも、辛そうだったのだもの。声をかけたかったのだもの!」

 

軽やかに、散歩をする少女のように、ふわりふわりと舞う華のように

 

マリーはただ、『振る舞う』だけで戦っているのだ!

 

『あれが・・・王妃たるサーヴァントの極致・・・!』

 

『凄いぞ!まったく攻撃が当たってない!なんて自由で、輝かしい王妃様なんだ!』

 

「フォウ・・・(きれいだ・・・)」

 

「見とれるのも無理はない。そもそもマリーは戦っているという認識すらないだろう」

 

アマデウスが呆れながら、それでも誇らしげに告げる

 

「あれはただ、皆に見せつけているだけなんだ。自分の輝きを。自分の思うままに振る舞っている。」

 

「『見て、私はこんなに輝いているの!私を、あなたに解ってほしいの』ってわけさ。――まったく。どこまでもワガママな女だよ、彼女は」

 

「嬉しそうだね、アマデウス!」

 

「うん?そりゃあ嬉しいとも!だってアレが、僕が焦がれたただ一人の女だからね。惚れた弱味ならぬ、惚れた冥利に尽きるってやつさ!」

 

 

(――それでいい、それでいいんだマリア。君は輝け、キミの願うままに。それが――僕の焦がれたマリアなんだから)

 

眼を細め、目映さに眼を細めるアマデウス

 

 

「さぁ、見とれてる場合じゃない!ワガママな彼女のケツ持ちは僕達の仕事だ!フォローしよう!」

 

「はい!」

 

 

 

「これほどとは――!皮肉なものだ、刃を向けてますます貴女の偉大さを理解してしまうなんて!」

 

「気品と礼節――ふむ、こんな形でなくば、手慰みの一つでも贈ったものを」

 

「あぁ、やっぱり君は美しい・・・!!」

 

 

 

「何をしている!サーヴァント共!!」

 

魔女が激を飛ばす

 

「ルーラーの名において我が傀儡に命ずる――!」

 

特殊な波動を感じる。ルーラーの機能行使、令呪の発動だ!

 

「ッ!ルーラーの名の下に、我が朋友に祝福を授けます!」

 

対応するように令呪を発動させるジャンヌ

 

 

――僅かに、魔女ジャンヌの方が早い――!!

 

 

「無駄よ!いくらあんたの目障りな輝きと言えど、宝具の連続には耐えられない!」

 

「まぁ、それは怖いわ!」

 

「死ね――フランスの地に消えろ、王妃――!!」

 

 

「――なんども言っていますわ、魔女。戦っているのは、私だけではないって・・・!」

 

 

「マシュ!ダッシュ!」

 

「やぁあぁあぁあ!!」

 

突如、マシュに抱えられジャンヌに猛突進するマスター

 

「なっ――!!?」

 

「おっと動くなよ?宝具『死神のための葬送曲』!」

 

伝説に曰く、死神に依頼されたと言われた葬送曲の逸話にて象られた魔曲が今、振るわれる――!

 

 

「があっ――!!」

 

「ぐぬ・・・重圧か――!!」

 

「くっ――アマデウスめ・・・!死を、音楽だなんて娯楽に貶めて――!」

 

その凄まじい重圧と低音が、サーヴァントの自由を奪う――!!

 

「アマデウス!」

 

「今だマリー!あぁ、これは約束はノーカンで頼む!」

 

 

「もちろん!私達にレクイエムなんて似合わないわ!――咲き誇るのよ、躍り続けるの――!」

 

 

「させるものか――!!」

 

炎を吹き散らすジャンヌ!

 

「させません!!」

 

盾でマリーを護るマシュ!

 

 

「先輩っ!!」

 

盾から飛び出す、最後のマスター―!!

 

『行きなさい!!リッカ――!!』

 

「戦闘服チェンジ――!くらえ魔女!」

 

 

指さし、呪いを放つ――!!

 

「『ガンド』――!!」

 

莫大な衝撃が、魔女を貫く!

 

「あぁあぁああぁあ――!!??」

 

 

「今こそ――!!」

 

拳を、強く強く握りこむ!

 

「これが――――」

「!」

 

「――聖マルタの祈りです――!!!」

 

動きのとれなくなったジャンヌをめがけ――渾身の拳を頬にぶち当てる――!!

 

「がっはぁぁあぁあっ――――!!!!!」

 

 

 

「行きますわよ――『百合の王冠に栄光あれ』――!!」

 

ガラスで象られた白馬が、王妃を乗せ――バーサーク・サーヴァントを撥ね飛ばし蹴散らす――!!

 

 

「――ありがとう。王妃――罪深き非礼・・・お許しください――」

 

「――再び敗れる、か・・・――やはり、悪魔は果たされるが定め、よ――」

 

「――――正義は、君達にあったんだね・・・さよなら、マリー・・・――」

 

 

――霊核を踏み潰され、撥ね飛ばされ、蹴散らされるサーヴァント達

 

 

「人類最後のマスターよ――次があらば、今度こそ余を召喚するがよい――護国の槍は、さぞ貴様の手に映えるだろうよ――」

 

 

思い思いの言葉を遺し――彼等は、消滅していった――

 

 

「あばよ、サンソン。次に会うときがあったら、頭を冷やしてくるんだな。ストーカーは報われないぜ?」 

 

「・・・あの人・・・」

 

 

「ジャンヌー!」

 

「マリー!」

 

ガラスの王馬が、ジャンヌの傍らにマリーを下ろす

 

「やっと一発!やったわね!」

「はい!聖マルタの祈りは、確かに届いたのです!」

 

パァン、とハイタッチする二人

 

――此処に、マルタの無念は晴らされたのだ

 

「ぐっ、ぅ・・・――い、痛い、――痛いじゃない・・・こんな、こんなの――!」

 

 

「――エリちゃん!エリちゃん大丈夫かな!?ジークフリートも!」

 

「はい!まだ終わっていません!気を引き締めて――!」




――ッしゃぁ!いいストレートだったわ!!見処あるじゃない!あんたも頑張んなさい!



「聖マルタ・・・!?今、啓示が・・・!」


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贖罪

「人理、保証リゾート、カルデア・・・?人理を救うという契約のもと、万象の悦楽を提供する物なり・・・――ファラオ・オジマンディアス、これは・・・!」

「ハッ、大言壮語を掲げる有象無象もいたものだ。この!太陽の化身!万物万象を統べる絶対たるファラオたるオジマンディアスを差し置いて万象を騙るものがいるとはな!」

「ははっ、ファラオ・オジマンディアス!あなた様こそが万物の支配者!真なるファラオ!如何いたしますか?不敬ものを罰されに?」

「いや――万物の悦楽、その言葉が些か余の興味を引いた!真意を確かめに行くぞニトクリス!その言葉の真偽を!ラーの輝き!!ウジャトの眼が見定めようぞ!!ついてこい、ニトクリス!」

「ははっ!ニトクリスめはお側に!」


――――整理券にて待機――――――

「なんと――――――!?」
「・・・うむ、考えて見れば当然ではあるな。よし!ニトクリス!待つぞ!」

「は、はい!」
「うむ、待つもよし!具体的には6つめの特異点までか?それとも速まるか?フ、フハッ!フハハハハハハハハハハハ!!」



「このっ、このっこのっこのっ!!」

 

「チッ、鬱陶しいですわね・・・この、『私』!」

 

 

 

火花を散らす槍と杖。冷たい鉄のドレス、鉄の杖を構える婦人

 

 

コケティッシュな衣装に身を包んだ、竜の角を生やし、尻尾を振るう赤髪の少女

 

 

「先輩!」

 

「エリちゃん――!」

 

お互いがお互いを睨み、憎み、意地をかけた戦いが繰り広げられられる場所に、マシュとリッカが、参じるのだった

 

 

「それは私の台詞よ!なんで、なんであんたがサーヴァントに・・・!!」

 

尻尾を大きく振るう

 

「ハッ、あなたがそれを言うの?――愚かしい!」

 

それを、ハイヒールで思いきり踏みつけ縫い止める。飛び散る鮮血

 

「ぐぁあぁうっ!!」

 

「私はカーミラ、誰もが怖れる吸血婦人。私は反英霊として恐怖を喰らった存在」

 

爪を伸ばし、エリザベートを切り刻む

 

「貴方を逃がさぬ罪の具現――決して変えられぬ、エリザベート・バートリーという存在の末路――!!」

 

「――はぁあぁぁあ!!」

 

槍を振り回し、力づくでカーミラを突き放す

 

「そんな私を、過去である証のあなたが否定しようだなんて・・・筋が通らない、可笑しい話ではなくて?」

 

突きつけられ、悔しそうに唇を噛むエリザベート

 

「・・・解ってる。あんたは私。変わり果てた私の結晶。けして眼をそらしちゃいけない、向き合わなきゃいけないアタシの罪――」

 

――カーミラ。真名をエリザベート・バートリー。永遠の美という妄執に取り付かれ、娘という娘、少女という少女の血を求め、あらゆる拷問の果てに殺した『血の伯爵婦人』――

 

 

その末路は、ただ一人の少女を取り逃がし悪行が白日の下に曝され、監禁されそのまま果てたとされる

 

 

唾棄されるべき怪物。倒されるべき反英雄

 

――少女の行き着く果て。終わりのなき可虐と罪禍の終着駅

 

眼をそらすことは許されぬ、生ける人生の弾劾の結晶

 

 

手にした槍が震える。体の震えが伝播する

 

 

「あんたを否定するのは、私の全て、私のかつてを否定するも同じことでしょう――」

 

――震えを、振り払う。前を向く

 

自らの過去に、怪物に槍を突きつける

 

「でも!だからといって自分の不始末を放ってはおけない!――これがどんなに醜い自己欺瞞だとしても――アタシは叫ぶわ!」

 

吠える。自らの罪に、克己と意地を

 

叫ぶ。決して譲らぬ、プライドを――!

 

 

「アタシは――あんたにはなりたくないって!!」

 

「どこまでも馬鹿な娘・・・頭が痛いわ。不愉快だわ――死になさい!」

 

空から飛来するアイアンメイデン、迫り来るかつての拷問器具

 

「――子ジカ!!」

 

槍を振り回し、薙ぎ払い、距離を放ちマスターに寄りそう

 

「力を貸して!私がたまーに夢見るあの子リスにはグレードが落ちるけど、アンタ、ガッツはもう超がつくぐらい一流だし!」

 

手を差し出す、マスターに、その手を

 

「私におもいきり歌わせて!アタシのわがままを貫かせる力をちょうだい!」

 

「――もちろん!なんたって私は、ギルとマシュのマスターだからね!」

 

リッカの姿が変わり、アトラス院独特のデザインの制服に姿が替わる

 

「スキル発動!『イシスの雨』!」

 

総てを癒す、恵みの雨が、エリザベートのデメリットスキルを一時的に打ちはらう!

 

「――ありがと。頭が、スッキリしたわ」

 

雰囲気が変わるエリザベート。落ち着いた、知的な風格を漂わせる

 

 

「頭痛がなくなったわ。――これなら、全力でやれそう!」

 

一息のうちにカーミラに飛び掛かる。振り回し、切り裂き、薙ぎ払い、打ち払うエリザベート必殺の戦術メドレー!

 

「急に、動きが・・・!こいつ!」

 

「アタシ、状況判断は的確なのよ?頭痛が収まったなら、アンタなんて敵じゃないから・・・!」

 

槍を離し、尻尾で、爪で、頭突きでお尻で、自らの未来をうちのめす!

 

「調子にのって!」

 

背後から、猛烈な勢いでアイアンメイデンが叩きつけられる!

 

「あぅっ――!!」

 

「総ては幻想の内――けれど少女はこの箱に――!」

 

「解ってるわ。そーゆう手口だっていうのはね」

 

 

素早く槍をつっかえ棒にして、アイアンメイデンの開閉を阻む!

 

「チッ、互いの手はお見通しというわけね――!」

 

「もちろん。だからこその私でしょ?」

 

「――では。見せてあげるわ・・・あなたが積み上げてきた罪の果てを――!!」

 

 

カーミラの足元から血が沸き立ち、おぞましく婦人を彩り、輝きを増していく――!

 

「来るわね。子ジカ、見ていて。――これが私の、フィニッシュナンバー・・・!」

 

「オッケー!ADとして見ててあげる!」

「先輩!?」

 

「AD――ふふ、マネージャーを挙げないのが奥ゆかしいわねっ」

 

 

「――血よ、血よ、血よ・・・!永遠の美、久遠の宴!――老醜は時の果てに――!!」

 

放たれる呪詛。強迫観念にすら通ずる、吸血婦人の矜持――!

 

「今回は特別に、貴方に向けて歌ってあげる。哀れな私に、愚かな私の罪の結晶に――!」

 

 

槍を突き立て、先端に立つエリザベート。その背中から、アンプに改造された巨大な城が顕れる――!

 

 

『あれはチェイテ城!ハンガリーにてエリザベートが居城にしたとされる彼女の住処だ!』

『――なんで、アンプなの?』

 

感嘆するロマン、困惑するオルガマリー

 

「ノリよ。――さぁいくわ。私の十八番、フィニッシュナンバー!」

 

おもいきり、息を吸い込むエリザベート――練り上げられ、異界化された肺から放たれるドラゴンブレス――!!

 

「『幻想の鉄処女』――!!」

 

巨大なアイアンメイデンが、エリザベートを取り込まんと迫る――!!

 

「――『鮮血魔嬢』!!LAAAAAAAAA――――ッ!!!」

 

――もはや衝撃波、超音波、破壊の嵐、拷問の大波濤

 

 

カタチをなした莫大な音量のブレスが改造アンプチェイテにより増幅され、反響され――

 

『ぐっわぁあぁあぁ!!耳がぁあぁあ!上手い下手じゃなくて単純に音量がぁあぁ!!』

 

『宝具って皆こうなのー!?』

 

 

「宝具、展開します――!!」

 

「これが、アイドル――!」

 

――辺り一体を吹き飛ばす――!!

 

 

 

 

「――ごっふ!!」

 

血を吐き倒れるアマデウス

 

「まあっ、どうしたのアマデウス!?」

 

 

 

 

 

 

「――む・・・このデスボイスは。本領を発揮したか、エリザベート」

 

 

遥か天空のヴィマーナ。耳に届く雷鳴がごとき声

 

 

「――如何なる理由かは知らぬが、少しは聞けるではないか。爪の先程腕前をあげたと見える。まぁ黄金Pとしては落第もいいところだが」

 

――こんな空にまで届く声って・・・音響兵器か何かなのか・・・?大地の形が解るくらい離れてるのだが・・・

 

「いつかカルデアに、アイドルをプロデュースしてやるのも悪くはないかもしれんな。最低でも我のレッスンの栄に預かるには、マリー並のカリスマかオルガマリー並の勤勉さがなければ認めんがな!ふははははは!」

――アイドル?マギ☆マリみたいなやつか?というかプロデュースまでやってたんだこの王様・・・

 

ワイバーンを蹴散らしながら、王は高らかに笑うのであった――

 

 

 

 

 

「――未来が過去を否定するのではなく、過去が未来を否定するだなんて・・・」

 

――破滅のライブに曝され、消滅が始まるカーミラが自嘲する

 

 

「――なんて愚か、なんて無様――でも、だからこそ・・・」

 

――最期に浮かべる表情は

 

「こんなにも、眩しいのね――」

 

――笑顔であったのだ

 

 

「さよなら、変えられない未来の私。・・・私は、歌い続けるわ。それが、私の決めた生き方だから」

 

寂しげに、呟くエリザベート

 

「・・・よーし!スッキリしたわ!ありがと、子ジカ!」

 

「うん!お疲れさま、エリちゃん!」

 

――将は、ほぼ総てが討ち取られ

 

 

残すは――中核を残すのみ――!




「どこもかしこも、自分との争いが好きなものだ・・・ろくなものではないのに、な」

「ハム、ハフハフッ、ハフッ」

「あぁ、解っている。・・・難儀なものだ、英雄というのはな」

「ハム、ハフハフッ、ハフ」


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竜殺

すまない、丸々一話使って本当にすまない・・・次の話で英雄王が現れる。暇潰しに読んでくれ・・・本当にすまない・・・


「数多の障害、数多の運命を超えてここまで来た。――よくやるな。マスター」

 

 

 

相対せしは邪竜・ファヴニール。身の丈の何十倍も大きい、生ける邪竜

 

 

「うん。こいつさえやっつければ、勝ちは見える!」

 

 

「その通りだ。――改めて思うのだが」

 

 

気迫をたぎらせるジークフリート

 

「実のところ、――どうやって勝てたのか、まるで覚えていない」

 

「ちょ!?今になって不吉なことを言わないでください!」

 

『――仕方無いわ。ジークフリートの出典、ニーベルンゲンの歌で、確かにジークフリートは邪竜、ファヴニールを討ち果たした。それは紛れもない事実、紛れもない伝承』

 

「所長・・・」

 

『けれど、その戦いの詳細はまったくといっていいほどない。ジークフリートが、ファヴニールを討ち果たし不死身になった、という事実だけが記されているの。つまり、誰もその顛末を見ていない』

 

『どちらかと言えば、ジークフリートというよりその妻クリームヒルトの活躍の方がメインだからね、ニーベルンゲンの歌。夫を殺されたクリームヒルトの哀しみと絶望はそりゃあもう物凄くて・・・おっと』

 

「・・・」

 

沈黙するジークフリート。マシュがドクターに抗議の目線をおくる

 

 

『あ、ご、ごめんよ』

 

「気にしないでくれ。すべて事実だ・・・だが、今は違う」

 

ゆっくりとファヴニールに向き直る。呪いを吐き、火炎を吐き、絶望を撒く幻想種の頂点

 

「――今の俺には主命があり、意地があり、願いがあり、矜持があり、誇りがある。――マスターを頼む、マシュ。そして、見ていてくれ、マスター」

 

バルムンクを引き抜き――ファヴニールに抜き放ち、突き付ける

 

 

「俺は再び、あの邪竜を討ち果たす。――すまないが、どうか見ていてほしい。その眼で、その全てで――竜殺しを成し遂げるこの身を」

 

 

狙うは、生涯の宿敵――遥かなる神話の再来を此処に

 

「うん!私は逃げない。傍にいるから!」

 

「すまない、ありがとう。――さぁ、始めるぞファヴニール」

 

 

「グォアァアァアァアァアァア――――!!!!」

 

吠え狂う邪竜、ファヴニール

 

 

「――俺と貴様の運命を――!!」

 

 

呼吸を整え、魔力を爆発させ。猛然とファヴニールに斬りこむ――!

 

 

「ぉおおぉおぉおおぉおっ――――――――!!!!」

「ガアァアァアァアァア!!」

 

 

振るわれるバルムンク。斬る、裂く、穿つ、突く、払う、弾く、叩く、受け流す、切り刻む

 

猛り狂うファヴニール。薙ぐ、払う、叩く、振るう、蹴散らす、叩き潰す、振り払う、皆殺す

 

 

その総てが一撃必殺

 

その総てが乾坤一擲

 

互いの存在総てが――全身全霊にて宿敵を殺めんと総動員される――!!

 

 

「くぅっ!先輩!私の後ろに――!」

 

「これが、竜との戦い――!」

 

爪を叩きつけられる。爪を切り飛ばす

 

身体に深く斬り込む。鱗が消し飛ぶ

 

ブレスを吐き出される。バルムンクで受け止める

 

掌で叩き潰される。腕の先をバルムンクでたたっきる

 

ジークフリートが猛る、ファヴニールが吠える

 

ファヴニールが吠える。ジークフリートが猛る

 

 

「ファヴニールッ――――!!!」

「ガアァアァアァアァアァアァアァアァア!!!」

 

 

その光景――ニーベルンゲンの歌の再来なり――!!

 

 

「これが、大英雄ジークフリート・・・!」

 

 

――

 

口をついて出るのを止められなかった

 

すまないと

 

謝らずにはいられなかった

 

すまないと

 

 

生前の自分は、何も己の願いを持たなかった

 

ファヴニールを倒し、不死身となった身体にて、戦闘はただの作業になった

 

あらゆる攻撃が通じず、無造作に敵を葬るだけの毎日

 

ラインの黄金を手にしながらさしたる使い途も思い浮かばず、使わぬまま生を終えた

 

 

無敵の身体と財宝を手にしておきながら――自分がしたことは、周りの誰かを不幸にしただけだった

 

求められればそれに応じた。悪であれ求められれば加担し、善であれ乞われなければ見殺しにした

 

――求められなければ、手を差し出すことすらしなかった

 

自分の死すら求められても、それは変わらなかった

 

友に背中を預け、刃を突き立てられ、生命を落とした

 

――ようやく解ったのだ、空虚さの意味を、その源泉を

 

自らは何を望んでいるか解らない、夢も希望もなく、未来を思い描くこともできない。そんな空虚があったのだ

 

だから、こんな空虚な自分が死んでも、何一つ良いことにはならなかった

 

友には望まぬ不義を着せ

 

妻には哀しみと絶望を送り復讐に身を投じさせた

 

――大切な存在にすら、破滅を結果的に捧げてしまったのだ

 

絶対応報、流した血の数だけ血を流させる

 

――結局、自分のしたことは。あらゆるものを不幸にしただけだった

 

何が英雄か

 

何が竜殺しか

 

――だから、呟かずにはいられないのだ。すまない、と

 

 

――だが

 

 

 

 

「うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお――――!!!」

 

均衡が崩れる

 

 

少しずつ、確実に。ジークフリートの気迫がファヴニールを呑み込んでいく――!

 

 

「ガァァアァアッ・・・!?」

 

「――生憎だが、今の俺にはかつてなかった全てがある――!」

 

 

そうだ

 

フランスを救う

 

仲間たちを護る

 

散っていった命に報いる

 

己の為――この邪竜を討ち果たす!

 

 

「俺は貴様を殺す、必ず殺す!例えそれしか誇れずとも、それだけ誇るものがあればそれでいい!」

 

ファヴニール渾身のブレスがジークフリートを襲う。だが、その不死身の肉体に致命傷にはなり得ない

 

 

「俺は英雄、ジークフリート!人として生まれ、英雄として死した我が生涯に――微塵の禍根と後悔はない――!!!」

 

 

背中に立つ――

 

 

――私の仲間がピンチなの!貴方の力が必要なんです!

 

――だからお願い――助けてください!!

 

 

初めて顔を合わせ、涙を流して自分を求めた――

 

 

「貴様らに――千年もの繁栄は訪れない!此処が、今日が!――貴様ら邪竜の黄昏の刻だ――!!」

 

あのマスターの願いに、応える為に――!!

 

 

「今こそ借り受けるぞ、英雄王!ここで決める!」

 

託された鍵に魔力を込める

 

「ガァァアァアッ!!?」

 

 

無数の竜殺しの原典がファヴニールを徹底的に打ち据える――!

 

「――邪悪なる竜は失墜し」

 

詠唱が始まる。貯蔵されたエーテルが解放され、莫大な黄昏が放たれる――!

 

「世界は今、落陽に至る――!」

 

無限の財に阻まれ、阻むことすらできないファヴニール

 

――決着は今、この刻に

 

「撃ち落とす!!――邪竜ファヴニール、これが貴様の結末だ――!!」

 

上段に構え――――

 

「――『幻想大剣・天魔失墜』――――!!!!!」

 

 

黄昏を、叩き放つ――!!!

 

 

――――死の間際、浮かんだ想いを確かめる

 

 

誰に認められなくてもいい

 

「やった、やりました!!」

「やったぁ!流石ジークフリート!!」

 

誰に称賛されなくても構わない

 

『ファヴニールを、一人で・・・』

『凄いぞ!これが歴史最強のドラゴンスレイヤーの力――!!』

 

ただ自分が信じるものの側に立って生きていきたい

 

「俺の力だけではない。幾度も英雄王の威光に曝され、貴様は大いに弱っていた」

 

そう――胸に抱いた、最期の願いは・・・

 

 

「そんな状態で、俺と出逢ったのが運の尽きだ。――地獄の手土産にするがいい、ファヴニール」

 

 

「――我が名はジークフリート。如何なる英雄も誰一人並ぶものなき、最強の竜殺しであると」

 

――正義の、味方になることだったのだ――

 

 




「⬛⬛⬛⬛⬛・・・(懐かしい・・・あれほどの怪異、私も12、3体葬ったものだ)」

「⬛⬛⬛⬛⬛・・・?(・・・多くね?)」


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追走

別世界・立川


「・・・ソーシャルゲームって人類が産み出したもっとも罪深い発明なんじゃないかな・・・」

「また丘を登りきるような顔して・・・ジャンヌちゃんまた爆死したの?」

「父さんに『ジャンヌめっちゃかわいい』って勧められてみたら本当にかわいくてさ・・・私いつ迎えられるんだろ・・・」

「セコムはやめてね、FGO終わっちゃうから・・・構えないで!」


「ほう、ジークフリートめが仕事を果たしたか。ワイバーンどもが混乱しておるわ」

 

明らかに精彩をかきパニックをみせるワイバーン達、ざっと数千は落としてきたが、終りの時は近いようだ

 

「隙を見せたな?――抉り落とすわ!」

 

更に展開し放つ財の弾丸。文字通り削りおとされ吹き飛ばされ霧散するワイバーンたち

 

 

――ならばそろそろ、決着をつけにいく頃合いだろう

 

「どれ、奴等めを迎えにいくとするか。これだけ減り、指揮系統も喪ったとあればもはや捨て置いても問題はあるまい――いや」

 

ぱちんと指をならし、残ったワイバーンを皆殺しにする

 

「念には念を入れておくとするか。――さて、ヴィマーナよ。地に降りよ。勤勉な奴等を迎えにいくぞ!」

 

王の号令に従い、地上に向けヴィマーナが下降していった・・・

 

 

「おかえりなさい、ギルガメッシュ様!」

 

華やかに笑うマリー。皆、無事のようだ

 

 

「務めは果たしたようだな。それでこそ我と肩を並べる兵どもよ」

 

誰も欠けていなくて、本当に良かった――

 

「英雄王、魔女ジャンヌはジルに連れられ撤退しました。すぐに追撃しようと思います!」

 

「うむ、予想通りの答えよ。随分と己を取り戻したらしい」

 

「もちろん私達も行くよ、ジャンヌ!」

「はい!必ずミッションを完遂しましょう!」

 

マスターとマシュの気合いも充分だ

 

「はいはいはい!私もついていくわ。小ジカはアタシが守ったげる!」

「私はついていかないはずがありません。ますたぁですものね?ふふふ」

 

「いいよね、ジャンヌ?」

 

「はい!――英雄王」

 

「ん?」

 

「貴方も、どうか。私達の旅の締めくくりを、貴方の眼で裁定なさってください。私達の――総大将として!」

 

――頷く皆。――あぁ、もちろんだ!

 

「ハッ、言うな小娘!だが良かろう、当然の帰結だ!だが間違えるな!我は総大将ではない、ゴー☆ジャスな王だ!」

 

より一層上機嫌になる器。そこは大事なんですね

 

「この旅の締めくくりと言うならば、使うべき脚はあれしかあるまい!」

 

「アレ!?もしかしてアレ!?」

 

「そのアレだ!――いでよ!『栄華極めし王の鉄馬』――!!」

 

黄金の波紋から、輝く黄金のバイクが現れる。――うん、最初も、これだったしね

 

「マスターは我の後ろ、マシュとジャンヌと蛇はサイドカーだ!最後のウイニングランを決め込むとするか!」

 

「ちょっとゴージャス!アタシの席がないじゃない!」

 

「・・・あ」

 

「あって何よ――!!」

 

そもそもそんな大人数で大丈夫なのか、バイクって

 

「ッチ、仕方あるまい。急場凌ぎではあるが貴様には特別な席をやろう」

 

「特別!?VIPってこと!?」

 

パチン、と指をならす。エリザベートの足にローラースケートが、お腹にバイクに繋がるひもがつけられる

 

「へ?へ?なにこれ、VIP?え?」

 

「貴様はアイドル、バラエティーアイドルであろう?この程度の無茶ぶりは楽にこなせるはずだ」

 

「え、ちょ・・・デジマ?本気で言ってる?ウソよね?」

 

「気を付けて、ジャンヌ。ここまで来て、死に別れなんてウソよ?」

「はい、もちろん!待っていて、マリー!」

 

「マスター、マシュ。ギルガメッシュ。気を付けてくれ」

 

「うん!」

「はい!」

 

「無論だ。各員はヴィマーナにて待機せよ!総てが終わったあとの宴を行えるようにな!」

 

エンジンに火を入れる

 

『ジャンヌの反応はこの先の城だ!ギルギルマシンなら追い付ける!』

『チャンスは今しかないわ!振り返らず走りなさい!』

 

エーテルが粒子となって排出される

 

 

「よし、では往くぞ!――駆けよ、『栄華極めし王の鉄馬』――!!」

 

アクセルを、フルスロットルで決め込む――!!

 

 

「来た――――!!私ツーリング大好き――!!」

「先輩、気を付けて――!」

 

「ジャンヌ、ジル――決着をつけます!」

「あぁ、あんちんさま・・・もうすぐお別れなのですか・・・?」

 

150キロをオーバーし、唸りをあげるギルギルマシン!

 

「ぶわ――――――――――!!!!!やめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめて挽き肉になっちゃう転んだらドラゴンミンチになっちゃう――――――!!!」

 

「姿勢をただせ!脚を曲げるな!屈したならそれが貴様の最後よ!」

 

「ゴージャス――――――!!!あんたマジで覚えてなさいよ――――――――!!!!」

 

「覚えておくとも!貴様の無様さをな!フハハハハハハハハ!!!」

 

決意と悲鳴と歓喜を湛え、ギルギルマシンは最後の決戦へと疾けていった――!

 

 

「気を付けてね――!必ず皆で、歌を歌いましょうー!ヴィヴ・ラ・フラーンス!」

 

「さて、じゃあ僕も曲でも作ろうかな!」

 

 

「――武運を祈りましょう」

「あぁ、そうだな」

 

 

 

 

 

「ジル、ジル!どうしよう、どうしましょう・・・!?ファヴニールもやられ、ワイバーンも残っていない・・・!サーヴァントも!私達、もう・・・!」

 

動揺と狼狽を隠そうともしないジャンヌ。完全にすがるものを無くした娘そのものだ

 

 

「あぁ、くる、来る・・・!金ぴかのあいつが来る・・・!勝てないわ、私・・・!ファヴニールがいても勝てなかった、全力でも勝てなかったのよ!?私、私・・・」

 

「どうか落ち着かれよ、ジャンヌ。あなたには、このジル・ド・レェが傍におりますれば」

 

そっ、と頬を撫でる

 

「あなたがいる限り、必ずや勝利は我等に。貴女は竜の魔女。我等を鼓舞していただければそれでよいのです、さ・・・玉座にてお待ちください。ここは、このジルめが」

 

諭すようにささやくジル。ーやがて、平静を取り戻すジャンヌ

 

「・・・解ったわ。お願いね、ジル」

 

「お任せを、ジャンヌ」

 

「・・・信じてるから」

 

 

ふらふらと部屋に戻るジャンヌ

 

 

「――ジャンヌはやらせはせぬ。断じて赦さぬぞ!」

 

深淵を覗かれし瞳が燃え猛る

 

「たとえ英雄王、貴様でもだ――!!」

 

 

――

 

「よい箇所に崖があったな!ちょうどいい、跳ぶぞ!城に突っ込む!!」

 

「ヤッフー!!かちこみじゃ――!!」

 

「マシュさん!」

「はい!宝具、展開します――!」

 

「野蛮ですのね、まったく・・・」

 

 

「い――や――――――!!!し――――ぬ――――る――――!!」

 

「往くぞ!!ギルギルジャンプ――!!」

 

車体が宙を舞い、そのまま一直線に城に突っ込む

 

 

そして――爆音と轟音を轟かせ、城の一部をぶち抜いてダイナミック☆入城をぶちかましたのだ――!

 

――フランスを巡る旅の終わりは、すぐそこだ・・・!




「くっころよ・・・くっころされるんだわ私・・・あの金ぴかに身も心もくっころされてしまうんだわ・・・!あぁ、誰か私を護って!ファヴニール、ジル・・・!」


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核心

ジル「聖なるジャンヌ!さぁ、ラスボスたる私と語り合いましょうぞ!」


「フハハハハハハハハ!!欠伸が出るわ!このような蛆虫風情で我の疾走を阻めると思うな――!!」

 

城内に入ってからも自分達の疾走は続く。敷き詰められたヒトデのような魔をマシンが蹴散らし、踏み潰し、吹き飛ばし蹂躙していく――!!

 

 

最短に、真っ直ぐに、一直線に――!沖田さんがいつぞや言ってた(ような気がする)矜持のままに長い廊下を爆走し、邁進し、疾走する――!

 

「征服王めの御株を奪う日が来ようとはな!まさに蹂躙!制覇してなお踏みにじり、征服してなお君臨する!よい王道ではないか!フハハハハハハハハ!!」

――体勢を整える前に片を付ける!これ以上、フランスを狂わせはしない――!

 

「ルーラー!道はこちらであっているな!?」

 

「はい!竜の魔女を感じます!このまま突撃しましょう!」

 

「いけー!ギルギルマシン!スーパーランだー!!」

 

『立香君ぐれないでね!お願いだから!』

 

『盗んでないし大丈夫よ!』

 

『何がです!?』

 

「よし、階段まで疾走するぞ!遥かなる君臨制覇――唸れギルギルマシン――!!!」

 

 

「わぶっ!!わぶぶぶぶっ!飛んできてる飛んできてる!飛沫とか血飛沫とか肉片とか色々飛んできてるー!!わぶぶぶぶぶぶぶ!!」

 

エリザベートが悲鳴をあげる。VIP席に魔力障壁はないのだ――!

「笑顔で耐えよ!!アイドルであろう!辛くても笑顔を振り撒き、不潔なファンであろうと笑顔でサインをくれてやるのが偶像の役目よ!例え腹の底で、込み上げる吐き気が燻っていようともな――!!」

 

『リアルアイドルはこれだから!その点マギ☆マリはバーチャルアイドルだから最高さ!』

 

「フォウ(それはどうかな?)」

 

「アイドルって厳しいのね!知らなかったわ――!!」

 

汚物にまみれながら、アイドルは輝いていたのであった

 

 

「階段です!ここからは走りましょう!」

 

「うむ!大義であったギルギルマシン!カルデアにてハイオクエーテルを存分に注入してやるぞ!さぁ降りよものども!」

 

「どわ――――!!急停止しないでゴージャス――――!!!!」

 

紐をブッチぎりぶっ飛んでいくエリザベート。すまないエリザベート!拙速を尊んで本当にすまない!

 

「では――往くぞ!」

 

 

 

 

「訪れたようですな・・・では、この不肖ジル・ド・レェめが歓待にあがりましょうぞ、ジャンヌ・・・!」

 

 

 

 

 

「この先であっていような!」

 

「はい!この先に魔女ジャンヌが!」

 

長い廊下を走りながらジャンヌに確認をとる。全力疾走で走る一同

 

「はぁ、はぁ、なんなのよ・・・!バラエティーアイドルってこんなに大変なわけ!?」

 

「出川さんとか凄かったんだなぁ・・・」

 

「誰ですかそれは・・・!?」

 

「知らない?お茶の間で一番ガッツがある人」

 

『無駄話は後だ!前方にサーヴァント反応!』

 

「あれは――!」

 

そこにいたのは、禍々しいローブに身を包んだ大男――右手に人皮にて編まれたおぞましき本を持つ、異様な風貌の男

 

――理解する。あれはジャンヌの補佐官、あるいは副将だ・・・!ならば・・・!

 

 

「――お待ちしておりましたぞ、ジャンヌとその一――」

 

言葉を紡ぐ、いや紡ごうとしたジル。――だが

 

 

「ルーラー!!」

 

「はい!――――退きなさい、ジル――!!」

 

ジャンヌが大股でジャンプし――

 

「ファっ――!!?」

 

「今は、貴方は後です――!!」

 

ジルの深淵に覗かれし瞳めがけ――渾身の目潰しを放つ――!!

 

 

「ファ――――――――!!!!??」

 

そのまま、指を目に突っ込み、思いきり祈りを振るいのける――!!

 

もんどりうち、きりもみをしながら吹き飛んでいく哀れなジル・ド・レェ――!!

 

 

「エリザベートさん、清姫さん!ジルの足止めを!私達は魔女を!」 

 

「わ、解りましたわ・・・」

「うん、任せて・・・」

 

「・・・?」

 

あからさまに困惑している二人、・・・いや、無理も無い。背筋も凍る残虐殺法だったのだから・・・

 

 

「――我が焚き付けておいて何だが・・・貴様はこれほどまで無慈悲な娘であったか・・・」

 

「???」

 

「いや、忘れよ。そら、ここにやつめがいるのだろう?」

 

「はい!今、総ての疑問に答えを――!」

 

閉じられていた扉に、手をかける――!

 

 

 

 

「魔女ジャンヌ!!」

 

 

「――来たのね、私」

 

 

もう幾度か。白いジャンヌと黒いジャンヌが相対する

 

 

「ジルは・・・」

 

「捩じ伏せました。今は、アナタに対する疑問を優先したかったから」

 

「――今更、問い掛けなど」

 

ちらり、とジャンヌが此方をみやる

 

「――構わん。貴様が感じたことを、貴様の口で伝えてやれ。――別れを告げるように」

 

「・・・はい」

 

頷き、魔女ジャンヌをみやる

 

「――貴方は、『自らの育ての親』を覚えていますか?」

 

「――――え?」

 

豆鉄砲を食らったように、完全に硬直する魔女ジャンヌ

 

 

「簡単な問いです。更に言えば――貴女は、藁の柔らかさを覚えていますか?」

 

「なに、を――いっ、て・・・――」

 

硬直する、魔女ジャンヌ。口を開くが答えは帰ってこない

 

「アナタに伝えるべき事を伝えよとマリーが。今の疑問は、英雄王が発した言葉です」

 

 

「アナタが私であるなら、忘れられるはずがないのです。どれほど戦場の記憶が強くても、私にとっては田舎娘としての記憶の方が遥かに多い。――だからこそ、貴女は裏切りに絶望し、憎悪し、立ち上がったはず」 

 

「私、私は――」

 

――そうか。そういうことか

 

あのジャンヌには記憶が無い。魂と人格を形作る記憶が無いにも関わらず、魔女として振る舞っていたその矛盾

 

――この世の総ては、先達者の手により造られるもの。自然発生するのは魂のみ――

 

器から声が響く。――記憶の無い魔女。それはつまり・・・

 

「精巧に造られてはいたがな。最後の一押しの再現は叶わなかったらしい。『その時期は、共に過ごしてはいなかった』のだからな」

 

 

――あのジャンヌは・・・『何者かに作られたジャンヌ』なのか――!

 

 

「――だまれっ!記憶がなくとも、私がジャンヌであることに変わりはない!」

 

旗を振るい、憤怒をあげるジャンヌ

 

「えぇ。貴女は貴女です。――ですが私は怒りでなく、哀れみをもって貴方を倒す!」 

 

「ほざくな――!信仰と憤怒、希望と絶望――どちらが勝るか、ここで決める!!」

 

 

「助力はいるか?ルーラー」 

 

「ありがとう、ですが、無用です――私の決着は、私の手で!」

 

 

 

「後悔するがいい――!!『吼え立てよ』――」

「『我が神は――』」

 

 

ジャンヌとジャンヌが――火蓋を切る――!!

 

 

「『我が憤怒』――!!」

「『ここに在りて――』!!」

 

魔女と聖女、決着の刻だ――!




「ジャンヌ・・・嗚呼、いつもの私に行うあの諫撃――あなたは紛れもなく・・・ジャンヌ・・・」

「大丈夫、こいつ・・・?」
「さぁ・・・」


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ハレルヤ

――主の御技を、此処に――!


「あっははははははははははっ!!燃えろ、燃えろ、燃えたぎれ――!!」

 

 

突きつける剣。憤怒を形にした剣がジャンヌに無数に飛来する

 

 

 

「焼けろ、朽ちろ、溶け落ちろ!これは私を焼いた火だ。これは私の憤慨だ――!!」

 

 

吹き付ける炎、魂を焼く憤怒と絶望の業火が聖女を包み込む――!

 

「懐かしいのではないかしら、私!覚えがあるでしょう!?この熱さ、この息苦しさ、この無念さを――!!」

 

踏み込み、ジャンヌを切り裂く弾劾の刃

 

 

魔女は叩きつける。絶望の叫びを

 

「この炎はフランスの欺瞞だ!」

 

ジャンヌは踏みつけ高らかに謳う

 

 

「この刃は民どもの嘲笑だ!」

 

ジャンヌは切りつけ、怒りを燃やす――!!

 

「この怒りは――尽きぬ復讐の誓願だ――!!」

 

 

叩きつけ、叩きつけ、叩きつけ

 

焼き払う、焼き払う、焼き払う――!

 

 

魂を薪に、心をくべて魔女は叫ぶ

 

 

この世の総てに、絶望を

 

欺瞞の総てに、弾劾を

 

あまねく総てに――憎悪の業火を――――!!!

 

 

「っ――!!」

 

「燃えろ、燃えろ、燃えてしまえ――!!白き私より更に白く!何も残らぬ灰になるまで――!!」

 

竜の魔女は、吼え猛る――!!

 

 

 

 

「――聞くに堪えん喚きぶりよ。余程アレの鋳造者の趣味嗜好が反映されているようだな」

――聴いているだけで、魂が焼けただれるようだ。あの魔女の、魂の叫びが、こちらの魂を焼き焦がしていく錯覚を覚える

 

「ジャンヌ・・・」

 

「――まぁ、無理もなかろうよ。あの小娘が迎えた末路は、端から見ればそれほどまでに凄絶だという話であろうな」

 

――あらゆる拷問、あらゆる凌辱

 

――かつての自分も、背筋が寒くなった時もあった

 

 

「私は許さない。私を売ったフランスを!私は許さない!私を焼いた司祭どもを!私は許さない!!私を助けなかったこの世界総てを――!!」

 

浮遊せし剣が、ジャンヌに飛来する!突き刺さる度に炎が吹き上がり、ジャンヌを焼き払う――!

 

 

「っづ――!!」

 

 

 

前に転がり、逃れようとするジャンヌを、魔女ジャンヌが蹴り飛ばす

 

「っあっ!!」

 

 

「逃がさないってんのよ!!」

 

振り下ろされる魔女ジャンヌの刃

 

 

呼応してジャンヌも自らも『紅蓮の聖女』を抜き放つ!そして、受け止める!

 

「当て付けのつもりかしら!その銘――!!皮肉ったらありゃしない!」

「っあぁあぁあ!!!」

 

「――紅蓮の炎で、私に張り合おうなどと烏滸がましい――!!」

 

背後、左右からも業火の剣が生成され――

 

 

「貫け――!!」

 

一息にジャンヌに突き立てられる――!!

 

 

「ぐぅうぅうぅうっ!!」

 

飛び散る鮮血、染められる純白

 

 

聖女に、黒き炎が迫る――!!

 

 

 

「やりおるわ。贋作の分際で。――元にした真作の威光にすがるにしても、余程念入りに打ち直したか」

 

 

「ジャンヌさん――!!」

 

「だ、大丈夫かな・・・!?私達、見てるままで・・・!」

 

 

「良かろうさ。ヤツが決めた戦いだ」

 

断言する器

 

 

「でも・・・!」

 

――マスターの気持ちもよく解る。明らかにジャンヌが劣勢だ。いくつも身体を貫かれている。心配する気持ちも痛いほど解る

 

 

――だが、揺らがぬ確信がある

 

「全く――仕方あるまい。同じ存在として、何か言ってやれ、『ジャンヌ』」

 

器がくい、と顎を指す

 

『はい!』

 

「わっ!」

「ジャンヌさん!?」

 

通信が繋がり、声を上げるジャンヌ

 

 

『大丈夫です!私が、私であるのなら絶対に負けません!私を、信じてあげてください!』

 

「ジャンヌ・・・」

 

「クク、言うではないか。根拠が聞きたいものだが?」

 

意地悪く笑う器

 

――流石に、これくらいは自分にもなんとなく解る

 

『根拠は明白です!『そちらの私には、私を信じるあなたたちがいる』のですから!私は旗を持ち、皆を鼓舞した女!』

 

ジャンヌは謳う。それが当然の真理だと言うように

 

 

『私の背中を見て奮起する方がいるかぎり、けして私は膝を屈しません!――それが』

 

 

「はぁああぁああ!!」

 

 

旗を振り払い、魔女の炎をジャンヌは振り払う――!!

 

『――剣の代わりに旗を取り、戦場に参ずる事を決めた――ジャンヌ・ダルクの生き方だから!』

 

「――だ、そうだ。やつめは旗持ち、率いるものがいる限り折れはすまいよ」

 

 

――そうだ。彼女は聖女、ジャンヌ・ダルク。フランスを救うため、自らの総てを捧げ戦った聖女

 

 

「たぁぁあぁあぁあぁあぁ!!!」

 

旗を振り回し、炎を断ち切り凪ぎ払う!

 

「ちぃ――!!」

 

――彼女がフランスの為に戦う限り

 

降り放たれる無数の刃

 

「おぉおおお!!!」

 

「やぁあぁあぁあ!!!」

 

旗を丸め、槍のように振り払う!

 

――旗の下に集う同胞がいるかぎり

 

 

「ぜぇええやぁあぁあぁあ!!!」

 

旗を地面に突き刺し、勢いをつけて魔女ジャンヌに叩きつける!

 

「ぐぅうぅうぅう!!」

 

――彼女が、彼女であるかぎり

 

「――たぁあぁっ!!」

「がっはっ――!!?」

 

つばぜりあい、刹那の交差で頭突きをかまし、魔女ジャンヌをぐらつかせる――!

 

 

「ぜぇえぇえぇい!!」

「ッ、負けるものか――!負けるものか――!!」

 

――例え、相手が自分自身だろうと!

 

「お前なんかに!私なんかに!お前なんかに――!!」

 

炎を吹き放つ――

 

そこに突っ込み、からだごと突っ切る!!

 

「奇遇ですね――」

 

旗を、――叩きつける!!

 

「私もです――!!」

 

――けして、退きはしないだろう!

 

「ジャンヌ――ダルクゥウゥウッ!!」

「さぁ――覚悟なさいッ!!」

 

 

――それが、ジャンヌ・ダルクという英雄なのだから――!!

 

 

『それに――彼女は、一人じゃありません!』

 

「一人じゃない・・・!?」

 

 

『頼もしい、先輩がついてます!』

 

 

 

――

 

 

――しっかり前を見るのよ。ちょっとの傷なんて無視しなさい

 

(はい!)

 

 

「ぜぇえぇえぇい!!」

 

放たれる炎を、身体を丸めて掠めさせる

 

――当たる場所は最低限に!

 

(はいっ!)

 

 

降りかかる刃を、冷静に見据え回避していく

 

「何っ――!?」

 

――そのまま踏み込む!脇は締めて、視線はまっすぐ!

 

(はい!!)

 

肺すら焼く獄炎を、掻き分け、腕で流し、少しずつ、少しずつ前進していくーー!

 

 

「な、何よこいつ・・・!なんで、なんで止まらないのよ!」

 

炎を放つ、放つ、放つ、放つ

 

――へっちゃらよ、こんな小火。私のタラスクを思い出しなさい!

 

(もちろんです――聖マルタ!)

 

――ジャンヌの所持するスキル『啓示』。そのスキルが今最大限発揮されている!

 

 

「はあぁぁあぁ!!」

 

一息に――距離を詰めていく!

 

「この感覚――!お前は何者かの力を借りている――!?」

 

――いいわ、その調子。あんたなら、あんたならできるわ!

 

 

(はい――!ありがとうございます!)

 

強く、強く、拳を握る

 

――啓示を与える、声のままに

 

――聖マルタの祈りのままに――!

 

「あなたもジャンヌ・ダルクならば、解るでしょう!」

 

――だってあんたは、私の後輩・・・

 

「私に力を貸してくださる、この声の主が――!!」

 

「声の、主――!?」

 

 

「はぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ――――――!!!!」

 

猛進、邁進――一直線に魔女へ向かう!

 

 

炎を振り切り

 

絶望を振り切り

 

――復讐に堕ちし自分に目掛け――!!

 

 

「ッッ!!『吼え立てよ』――!!」

「遅い――!!」

 

 

ジャンヌは一息に、必殺の間合いへ――

 

――アタシの祈りを受け継いだんだから!

 

拳を握る――強く、強く、強く!!

 

――ぶちかましなさいっ!!ジャンヌ・ダルク!!

 

 

「てぇええやぁあぁぁあぁあ!!!」

「ッッッ――!!?」

 

 

 

――そして、放つ――!!

 

 

「――――『ハレルヤ』――――!!!」

 

 

渾身の、全身全霊の祈りを――!!

 

 

 

「がぁあ――――ぁあぁあぁあっ――――!!!??」

 

 

顔面に、渾身の祈りを受け――

 

「――せぇえぃっ!!」

 

振り抜くと同時に、魔女ジャンヌが吹き飛ばされる!!

 

「がは――っ!!」

 

 

玉座に叩きつけられ、沈黙する魔女、ジャンヌ

 

 

 

――まだまだフォームが甘いけど、悪くなかったわ

 

 

啓示の声が、遠ざかっていく

 

――今の感触、忘れんじゃないわよ。ジャンヌ

 

 

――祈りの聖女が、再び時の果てに消えてゆく

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

 

「・・・な、によ・・・今の、・・・今の・・・」

 

 

「――今、貴女を穿ったのは・・・私の力ではありません。――あなたが呼び出し、あなたが狂わせた――祈りの聖女」

 

「――聖女・・・バーサーク・・・ライダー・・・?」

 

「えぇ。聖マルタの・・・祈りです」

 

 

「・・・何よ・・・意味、解んない・・・――炎の中でも・・・突っ込んでくるとか・・・」

 

――英霊は、けして成長はしない

 

 

――ただ、その魂に、何かを受け継ぐことはできる

 

「――貴方に感謝を、聖マルタ」

 

――ジャンヌ・ダルクは、確かに

 

 

――聖マルタの祈りを、受け継いだのだ――




ハレルヤ(祈りを届ける聖なる言葉)


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乖離

――ウォーミングアップ、というやつよ


「おお、ジャンヌ!なんとお痛ましいお姿に・・・!!」

 

 

 

扉を蹴破り、涙を流さんばかりに魔女に駆け寄るジル

 

 

「チッ、駄竜コンビめ。足止めをしくじるとは笑えん成果よ」

 

 

「聞こえてるわよゴージャス!なんか物凄い勢いで逃げたんだってば!」

 

「それはもう、脱兎の如く。終わりましたのね?」

 

 

 

「はい・・・なんとか」

 

 

よろけるジャンヌを、マスターとマシュが支える

・・・良かった。どんな結果であれ、彼女が無事で・・・

 

 

「ありがとう、二人とも・・・」

 

――本当に、お疲れさま・・・

 

「あちらもこちらも満身創痍ではないか。見世物としては上々であったがな。やはり贋作は真作には届かぬか」

 

 

 

「英雄王――!!」

 

睨み付けるジルを鼻で笑い、さらりとながす

 

「激するは肯定の証だぞ?やせ我慢する気概を見せぬか」

 

 

「・・・ジル」

 

「ジャンヌ!?」

 

ゆっくりと口を開くジャンヌ

 

 

 

 

「ごめんなさい、ジル・・・負けてしまって」

 

「・・・何を仰せか。貴女は本当に、貴女は本当によく健闘なされました・・・私の魂に誓って・・・!」

 

「でも・・・わたし」

 

「よろしいのです。よろしいのです、ジャンヌ。あとはこのジルめに、お任せを」

 

「・・・ジル・・・そうね・・・」

 

「眠られるがよろしい・・・目が覚めたなら、総てが終わっていましょうぞ。だから、少しだけ・・・」

 

「・・・うん。ありがとう、ジル・・・やっぱり、貴方はいつでも、私の味方・・・」

 

 

「一つ、貴様に助言をくれてやろう」

 

口を開く器。――うん。彼女に、もしも。次があるのなら・・・

 

「英雄王・・・!?」

 

「此度の敗因は唯一つ『器』の選別の過ちよ。貴様の無念、貴様の憎悪は――『調停者』などとは最もかけ離れたものだ。だから貴様は遅れをとったのだ」

 

「――なら・・・」

 

次が、あるのなら・・・

 

「座に貴様は存在せぬ。だが、もし次の機会があるならば。――その時は『復讐者』として喚ばれるが良かろうさ」

 

復讐者。総てを憎む、アヴェンジャーのクラス

 

 

――きっと、ジャンヌでなくともジャンヌである彼女に、相応しいクラスだろう

 

 

作ったものは、もう無かったことには出来ないから。せめてそれは、ありのままに

 

 

 

「・・・フッ、フフフ、アハハハハハハ・・・!」

 

けらけらと笑いだすジャンヌ

 

「えぇ、解ったわ。ありがとう、目障りな金ぴか」

 

その魂は、また

 

「次があるなら・・・いや、次のチャンスを掴んだら。私はアヴェンジャーとして貴方達の前にたつ」

 

黒き炎が、燃え上がる・・・!

 

「覚悟なさい、ジャンヌ。――その前に金ぴか」

 

 

「私を散々虚仮にしてくれたお礼に――真っ先に首をかききってやるから――!!!」

 

 

憎悪の誓いを残し

 

 

魔女ジャンヌは、消滅していった

 

「フン、王は逃げぬ。くだらぬ小火で我を焼けるか試してみるがいい。我のカルデアの歓待で正気を保っていられるのならば、な」

 

 

「・・・いつか、彼女も召喚できたらいいな」

 

ぽつり、とマスターが呟く

 

「あのジャンヌも、スゴく・・・カッコよかったから」

「・・・そうですね、先輩」

 

・・・そして

 

 

「――ようやく目当ての宝と御目見えか。待ちわびたぞ。それなりに愉しかったがな」

 

 

表れるは、聖杯・・・!

 

 

「・・・」

 

「大方の予想通りであったな。あのジャンヌは貴様が産み出していた。種明かしの時間だぞ、道化」

 

「勘の鋭いお方だ・・・」

 

 

「どゆこと?ねぇね、どゆこと?」

「お黙りなさい」

 

「ジル・・・貴方は・・・」

 

ゆっくりと立ち上がるジル。その目には、炎が揺らめいていた

 

「・・・私は聖杯に、『貴女』の復活を願ったのです。本当に、心から、そう願ったのですよ!」

 

――大切な人を、ただ蘇らせたかった。例え、何を犠牲にしても

 

「だがしかし、聖杯は我が願いを叶えなかった――!!万能の願望機でありながら、それだけは叶えられないと――!!」

 

――奪われたものは、それほど大きかった

 

「私の願いなど貴女しかない!ならば作る!私の願望の下!ジャンヌ・ダルクを作り上げる!!竜の魔女、復讐の魔女たるジャンヌを!!」

 

――それは、彼女への・・・『愛』なのだろう

 

奪われた『愛』を取り戻すために。彼はここまでの事業を成し遂げた・・・

 

 

「だ、そうだ。貴様が抱かなかった無念と怒り、憎悪はヤツがしっかりと抱えていたようだな?」

 

「・・・はい。そのようですね。・・・ですがジル」

 

ゆっくりと、顔をあげジャンヌが告げる

 

「例え、私を蘇らせる事ができたとしても・・・私はけして『竜の魔女』にはなりませんでしたよ」

 

 

「・・・うん。私も今ならわかるよ」

「はい、先輩。ジャンヌさんは、きっとフランスを赦したでしょう」

 

顔を見合い、頷く

 

 

「だって、フランスには・・・ジル。あなたや皆さんがいるのだから」

 

――ジャンヌが恨めるはずがないのだ

 

だって、総てを懸けて――愛するフランスを護り駆け抜けたのだから。

 

「・・・お優しい。本当にお優しい言葉です、ジャンヌ」

 

涙を流す、ジル。――だが

 

「――その優しさゆえ、一つ思い落としておりますぞ」

 

涙が――血の涙へと変わる

 

「貴女が憎まずとも・・・――私は憎んだのだ!!貴女を裏切ったフランスを!輝きを貶めた凡俗を――!!けして赦さぬ!人とて、国とて、王とて、神とて――!!」

 

右手に持つ、本に、手を叩きつける

 

「邪魔をするなら貴女とて!!――我が道を阻むな!ジャンヌ・ダルクゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

瞬間、城全体が鳴動し、辺り一帯から無数の魔物が、ジル目掛けて殺到する

 

 

「ぶわ――――!!なによこんなにまだいたの――!?」

 

 

それらは食い合い、増殖し、絡み合い、膨脹し

 

 

巨大に膨れ上がり、終には――

 

 

 

 

 

「まぁ!あれを見て、皆!」

 

「なんだありゃ・・・グロテスクにも程がある!エリザベートの歌を視覚化したらあぁなるのかな!?」

 

 

遠くにいるマリー達にも視覚に足る、天にも届かんばかりの超巨大の魔へと変生したのだ――!!

 

 

 

 

『主よ!我等を嘲りし傲岸なりし主よ!我が身が貴方を呪いし姿が此だ!貴方を憎みし姿が此だ!私は貴方を冒涜し、汚し尽くし、凌辱しつくして見せようぞ!かつて貴方が、私の輝きにそうしたように――!!アハハハハハハ!!ヒャハハハハハハハハハハ!!!』

 

天に届かん魔物の偉容。天に響かん闇の哄笑

 

 

「・・・だそうだが?周りを省みなかった故の貴様の生き方のツケをヤツに払わせた田舎娘に、言いたいことはないのか?」

 

「・・・そうですね、ジル。貴方が総てを恨むのは、これ以上ない道理だ。ならば――」

 

踏み出す一歩が揺らぐ

 

「ぐっ!」

 

「満身創痍といったであろうが。優雅の欠片もない泥臭い戦いを見せおって――だが、見事であった」

 

――あぁ、本当に。とても・・・見事だった

 

 

「――ヤツめに言いたいことはまだあるのであろう?――ならば、あの汚物めの掃除は我がやってやろう」

――ここからは、自分の番だ

 

 

 

「ギル!?」「英雄王!?」

 

「フッ。そう不思議そうな顔をするな。大将首は我がいただくと言った。貴様らは王手をかけよ、詰みは我がしてやる、とな。――マスター」

 

 

「へっ?」

 

「――此度の遠征、見事であった。初歩にしては上出来だ。マシュも、よく護った」

 

「・・・あ、ありがとうございます!」

 

 

「後は、我に任せよ。――ジャンヌ」

 

カルデアにて、ジャンヌを呼び出す

 

 

「はい!英雄王!」

 

「興が乗った故、少し本腰を入れる。――後ろを護れ。巻き込まれぬように。よいな」

 

 

「解りました!――『我が神はここにありて』――!!」

 

旗を展開し、マスター達を守護するジャンヌ

 

「英雄、王・・・?」

 

「貴様らもよく見ておくがいい。王の威光。真なる王がもたらす絶対真理の一撃と言うものをな。――言うまでもないが」

 

ゆっくりと、蠢く海魔に向き直る

 

「貴様らにだけ、特別にだぞ――?」

 

 

――財は、選ばない

 

選ぶ必要はない。この旅の裁定に、自分の意志は必要ない

 

 

ただ、思い返す

 

マスターの度胸を。マシュの堅さを。ロマンの気楽さを。オルガマリーの誠実さを。ジャンヌの真っ直ぐさを。マリーの華やかさを。アマデウスの哲学を。ジークフリートの偉容を。ゲオルギウスの洗礼を。清姫の狂気を。エリザベートの愉快さを

 

そして――愛するもののために、世界を狂わせた目の前の男の価値を。――己の魂総てを懸けて、それに報いる事ができる宝具を、掴みとる――!!

 

「――舞台としては三流だが。文句を言わず付き合うがいい」

 

――手にしたのは、黄金の柄と装飾を誇る剣

 

――否、それは剣に非ず

 

 

「これから先、長い旅路になるのだ。ここらで肩慣らししておくのも悪くはなかろう?」

 

――かつて星が原初の地獄であった姿の頃。星を砕き、回し、星を星たらしめた原初の力の具現

 

 

刀身に当たる部分には三つの円筒。ゆっくりと回転し、暴風を圧縮し、せめぎあわせ、回転を速め、荒れ狂い高まっていく

 

「本気を出すまでもない汚物ゆえ、未だ貴様の真価は伏せよう。――鈍ったその身を震わせるだけで今はよい」

 

――天地を切り裂き、世界を切り裂いた唯一にして絶対なる――王のみが持てし至高の剣――!

 

『英雄王ぉおおぉお!!!!』

 

押し潰さんと迫り来る肉塊――

 

――その剣の名、正しくは『無銘』――王が呼称し、名を冠させし原初の刃――!!

 

 

 

――英雄王・・・我が魂の総てを懸けて。

 

彼等の価値を認めます――その健闘に報いるための――

 

「それだけで、今は事足りよう――!!唸りをあげよ、『乖離剣』!」

 

高らかに、暴風荒れ狂う『無銘』の刃を掲げ――

 

――空前絶後の一撃を――!!

 

 

「一掃せよ――――『エア』――――!!!!」

 

 

 

放たれる、臨界寸前の暴風。星を砕かん暴力と圧力が、有象無象万物一切を砕き散らし吹き飛ばし荒れ狂い総てを呑み込んでいく――――!!!

 

 

「くぅうぅうぅうぅうぅうぅう!!」

「ジャンヌさん!!」

 

「令呪を、全部マシュとジャンヌに!全力ガード!!!」

 

「はい――!!宝具、展開します――!!」

 

マシュとジャンヌすらも消し飛ばさんと荒れ狂う、せめぎあう暴風の宴――!!

 

 

『か――ァアァアァアァアァアァアァアァ――!!!!!!!!????????』

 

 

回避することも、防ぐこともできぬ哀れな怪物を、エアが巻き起こせし暴風が瞬時に飲み喰らう

 

 

その威力は、塵一辺の存在すら許さず。そして、辺りに形どる存在を認めず

 

 

「嘘!?城が――!?」

 

 

――監獄たる城を――木っ端微塵に消し飛ばしたのだ――!!!

 

 

荒れ狂い、猛り狂う真紅の嵐が巻き起こり――やがて、収まる

 

 

「――真価を興さぬ至宝ではこんなものか」

 

 

カチャリ、と剣を下ろす英雄王

 

「ま、絶妙な力加減になったのは幸いであったな。まさか我にこんな細やかな気配りができようとはな――ふはははははは!!」

 

――そこには、更地となった城の跡地と

 

 

「う、ぐっ・・・ぐぬ・・・」

 

ボロ雑巾のように、倒れ伏す、ジルの姿が在り

 

 

陽に照らされ黄金の輝きを放つ、英雄王の、姿が在った――




「グッ、とウォーミングアップしただけで城が消し飛んだ」


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合唱

エピローグとなります。最後まで、お付き合いください!


「ここまでお疲れさま。まだ続くよ。メインイベントが残ってるからね(フォウ)!」


倒れ伏すジルに、歩み寄る

 

 

 

「・・・こんな、理不尽が・・・聖杯を、以てしても、こんな、馬鹿な・・・」

 

うわごとのように呟くジル

 

「ハッ、たわけめ。だから貴様は道化なのだ。聖杯一つで、我に太刀打ちが出来るなど思い上がりも甚だしい」

 

転がる聖杯を、拾い上げる

 

 

「こんなモノ、我にとっては酒を飲む道具でしかない。・・・決まって血生臭くなるのが欠点だが」

 

それを阻む余力は、もうジルにはない

 

「そら、マスター。これは貴様のモノだ。蓄えておけ」

 

無造作に、放り投げる

 

「あわわっ!」

 

『それは聖杯で間違いないわ。――オーダー、コンプリートね』

 

 

『やった!やったぞ!立香君達がやってくれたんだ!』

 

『・・・本当に、お疲れさま。マシュ、リッカ』

 

「そっちもね、マリー、ロマン!」

「ミッション、完了です!」

 

 

「・・・まだ、だ」

 

這いつくばり、血塗れになりながら、ジルは立ち上がらんとする

 

「まだ・・・私の背徳は・・・まだだ・・・!」

 

「――呆れたしぶとさよ。加減が過ぎたか。全く、慣れぬことはほとほとするものではないな」

 

はぁ、と溜め息をつく器

 

――それだけの、覚悟が。彼にはあるのだろう

 

自分は、その想いを。ただの悪とは断じれなかった

 

「――ルーラー、ジャンヌ。介錯してやれ。これは貴様らの不始末であろうが」

 

クイ、とジルをさす

 

 

「いい加減暇を与えてやれ。貴様らの副官であろう。――もうすぐ消え去るわけだがな。手短に、昔話に華でも咲かせてやれ」

 

 

「英雄王・・・」

「解りました!」

 

二人のジャンヌが、聖なる怪物に駆け寄る

 

「私は――」

「もういい、もういいのです。ジル」

 

そっと、両手をとる二人のジャンヌ

 

「貴方はもう、十分すぎるほどやってくれた。もう、休んでいいのです」

 

「ジャンヌ・・・」

 

「こんな小娘を信じて、この町の解放まで。――ありがとう、ジル。貴方がいてくれたから、私は最後まで、無念を抱くことなく走り続けることができた」

安らかに、語り聞かせるようにジャンヌは、ジルを労る

 

「また、どこかで。――貴方は、私の大切な同胞なのだから」

 

「ジャンヌ・・・おぉ、ジャンヌ・・・――」

 

「大丈夫ですよ、ジル!」

 

朗らかに、ジャンヌが告げる

 

「貴方を一人にはしません!もし貴方が、地獄に逝くとするなら――」

 

ぐっ、と。掌を握る

 

「その時は、私も一緒ですから!」

 

にっこりと、朗らかにジャンヌは笑った

 

「――いいえ、いいえ、ジャンヌ・・・」

 

二人のジャンヌの手を、確かに握り返す

 

「地獄になど、貴方を招かせるものか――貴方は、どうか主の御元に――地獄に堕ちるのは、私だけで――」

 

溢れんばかりの涙に、笑みを浮かべ・・・聖なる怪物、ジル・ド・レェは消えていった

 

「――さようなら、ジル」

 

「えぇ、またどこかで・・・必ず!」

 

 

 

「みなさーん!!」

 

 

声がする方に振り返ると、ヴィマーナがすぐそばに滞空していた

 

 

「退去が始まっておりますわー!約束、急いで果たさないとー!」

 

「フン、修正させたら即時退去とは余裕の無いことよ。者共乗り込め!最後の仕上げを決めるぞ!」

 

「うん!マシュ、ジャンヌ!」

 

「はいっ!」

「解りました!」

 

 

「ジャンヌ!貴女はやはりジャンヌでしたか!」

 

男の声、白き姿の、元帥ジルだ

 

「ジル・・・!まずいですね、今は・・・」

 

「私にお任せを!」

 

カルデアのジャンヌが告げる

 

「約束を果たしてください!私はカルデアに戻るだけですから!」

 

「――たのみます!」

 

 

「フォウフォウ!(はやくはやく!運転も楽じゃないんだから!)」

 

「乗り込めー!」

 

「よし、凱旋といくか!ヴィマーナ、浮上!」

 

カルデアの、ジャンヌを残して。ヴィマーナは上昇していった――

 

 

 

「ジャンヌ・・・!生きておられたのですね!貴女さえいてくれれば、私は・・・!」

 

「いいえ、ジル。私は死んでいます。ここは、泡沫の夢、間違ったフランス。私は滅び、貴方は狂う。それは、決まった歴史です」

 

「・・・やはり、貴方は、死しても・・・いや、死してなお・・・!」

 

「良いのです、ジル。――私が選び、私が選んだ生き方なのだから。――あなたが涙を流す理由は、何処にもないのです」

「おぉ、おぉ――赦してほしい、赦してほしい!ジャンヌ!」

 

「ジル・・・」

 

「私は貴女を裏切った!フランスは貴女の総てを裏切った!貴女を祭り上げておきながら、貴女の総てを切り捨てた――!!赦してくれ、赦してくれ――ジャンヌ・・・!おお、おおおおおおおお・・・!!!」

 

「良いのです、良いのです。ジル。総ては未来に、明日に繋がった。――それだけで、良いのです」

 

「ジャンヌ、ジャンヌ・・・!おおおおおおおお――――!!」

「去りましょう。笑顔で。せめて、笑顔で――」

 

 

慟哭する元帥を・・・聖女は、暖かく迎え入れた――

 

 

 

「――もう、全てが終わってしまうのね。名残惜しくて、死んでしまいそうよ」

 

マリーが、寂しそうに呟く

 

「修正された特異点の出来事は、無かったことになる。この数奇な共闘も、夢と消えてしまう」

 

「そんな――」

 

「そう言うものだ。出逢いと別れ、これはけして切り離せぬ。どんな存在であろうとも、だ」

 

――そうだ。必ず、別れはくる

 

だからこそ、出逢った時間が尊いんだと、自分は思う

 

「何を塞ぎこんでいる。顔をあげぬか」

 

「えっ?」

 

「たわけめ。『別れは避けられぬ』が、『別れを笑顔で迎える事はできる』という事であろうが。簡単な理屈だ」

 

そうだ。尊い時間は、最期まで。

 

笑顔で迎えて――また逢おう。必ず、生きていればチャンスは来るんだから

 

だって――死んだ自分にだって、チャンスがあったんだから、間違いない

 

「――よぉし思い付いた!」

 

マスターが声をあげる

 

「写真とろう写真!皆で!」

 

「いい案です!先輩!」

 

――それはいい。ナイスアイデアだ。それなら、記録がずっと残る。確かな記録が

 

「お願いギルえもん!道具だしてー!」

 

「ははは、仕方あるまいなぁこの雑種君はぁ。良かろう!カメラの原典くらい余裕よ!」

 

「まぁ!記録が残るのね!?何て素敵!ジャンヌ、アマデウス!やったわ!」

 

「うん。そんな奇跡もあるなんて、生きてみるもんだ・・・!」

 

「ちょっと!当然アタシがセンターよね!?」

 

「阿呆か貴様は!ゴージャスたる我がセンターに決まっていようが!」

 

「あんですってー!?」

 

「うるさいですね。私はマスターの傍に、こう、ぴっとりと」

 

「では、カメラは僭越ながらこの聖ジョージが」

 

「すまない、俺は端でいい・・・あまり役には立てなかったからな。本当にすまない」

 

「またそれか貴様!そういえば合鍵を返せ!」

 

「ジャンヌ、一緒にね?こう、指を絡ませて、顔を近づけて・・・」

「ま、ま、マリー・・・!」

 

「ヒュウ!密着密着!いいぞぅ!最高だ!」

 

「フォウ!(誰の美しさに抱かれよう?選り取りみどりだ!)」

 

「アタシよ!」

「我だ!」

「アタシ!!」

「我だ!!貴様はどさ回りにでも行け、バラドルめが!」

「アーイードールー!アタシはポップでキュートなアイドルだから!」

――仲いいな、この二人・・・

 

「喧嘩しなーい!ほらマシュ寄って寄って!」

「は、はい!」

『ちゃんと、笑顔よ?』

『いいなぁ!僕も写りたかった!』

 

「貴様にはマギ☆マリがいよう(笑)」

 

『またそうやって馬鹿にする!』

 

「まぁまぁ。何枚でも取りましょう。――さぁ、はい」

 

 

「我がセンターだ!!!」

「あっ抜け駆けとかゴージャスあんた――!!」

 

 

「「「「「「チーズ!」」」」」」

 

 

 

――消えぬ記憶。消えぬ記録。

 

 

時に消えても、確かな絆は、いつまでも此処に――

 

 

「写真は撮ったわ!あとは歌ね!アマデウス!」

 

「ほら、出してくれよピアノ、あるだろ?王様」

 

「無論あるが態度が気に食わん!はっ倒すぞ貴様!」

 

「無礼講無礼講。――さて、じゃあ。約束を果たそうか、マリア」

「えぇ!――今度はしっかり、巡り会えたわね!みんな大好きよ!ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

「ヴィヴ・ラ・ウルク!ふはは、よい響きだ悪くない!カルデア職員の合言葉にするか!」

 

「ヴィヴ・ラ・ウルク!」

「先輩!?」

「すまない・・・歌は得意ではないんだ、すまない・・・」

「ニーベルンゲンの歌とかモロであろうが!」

「それは神話の名前なんだすまない」

 

「謝るなと言うに!音楽家!リクエストしてやろう!これを弾け!」

 

「なんだいこれ?」

 

「我お気に入りの、カーニバルなファンタズムのエンディングテーマだ!歌詞の前向きさが実にいい!旅の締め括りにぴったりだ!」

 

「アタシがボーカル!?」

「キャストオフするぞ駄竜!!マスター!令呪だ!」

「おっけい!!」

「い――――――や――――!!幽閉と同じくらいいや――!!」

 

「ハッ!美を探求するものとして格の違いをしれ小娘!さぁ貴様ら、我は美声においても頂点に立つということを教えてやろう――!」

 

「歌、ですか・・・あまり歌は・・・」

「楽しく、キラキラ歌いましょう?歌はそうなの、それでいいの!」

「・・・はい!」 

 

『時間もない!フルコーラスで歌うには今すぐ歌わなきゃダメだ!』

 

「では、指揮は私が」

 

 

「じゃあ行くよ!聞け!天才の腕を!」

 

 

「はい、せーの!」

 

 

「ぼぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ!!!!!」

「おのれこの駄竜が――――――――!!!!!!」

 

――あぁ

 

 

――こんな素敵な別れで、本当に良かった――

 

 

華やかで、賑やかで、楽しい時間は過ぎて行く

 

 

――そして、歴史は正しい姿へと・・・――




カルデアに帰還だ!


愉悦部員の皆!ワインは持ったな!!


往くぞぉ!!


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終幕――混沌の麻婆――

「最終回になるかもしれない。覚悟して読んでほしい(フォウ)」


光が収まり、目を開けてみると、そこは見慣れたカルデアの管制室が広がっていた

 

 

無事に戻ってこれたらしい。ふと右手に何かが握られていることに気付く。なにかと思い見てみれば、それは、拠点に埋め込んだ聖杯であった

 

 

白と黒、二人の聖女が向かい合うデザインが象られた、中身が存分に満たされた聖杯が、今手にある

 

 

「余さず汲み取ったか。よしよし、使い途はいずれ来ようさ。それまで保管しておくか」

 

――そんな予感を思いながら、そっと黄金の波紋にしまいこむ

 

 

「リッカ!マシュ!」 

 

見ればオルガマリーが、マスターとマシュに駆け寄り二人を抱き締めていた

 

「良かった・・・本当に良かった・・・!よく、無事で・・・!」

 

「帰ってくるって約束でしょ?私達が友達を裏切るわけないじゃん。ね、マシュ?」

「はい、ただいまです。所長!」

 

「うん、うん・・・!」

 

 

・・・心配だったんだろうな。よっぽど。うん、良かった

 

迎えるなら、笑顔で。涙や悲しみは、これから先、自分が出来る限り蹴散らしていこう

 

 

それが・・・転生した、自分と器の役割だと思うから

 

「はーいお邪魔ー。ロマン、これが歴史の証明書だよ。お帰りゴージャスキング!やりたい放題だったね!」

 

ダ・ヴィンチちゃんが現れる

 

「フッ、王の旅というのはそう言うものだ。思うがままに我は振る舞い、その足跡が路となる。それだけの話よ」

 

「・・・よぉし!フランスは無事に元の歴史に戻っている!やったぞ!たった一つだが、僕たちは確かに――歴史をあるべき姿に戻したんだ!」

 

大歓声に、沸き上がるカルデア

 

「やったぜ!俺達はやったんだ!」

 

「当たり前だ!ギルガメッシュ王に目をかけられてる俺達だぞ?」

 

「むしろ、出来て当然だな!うまい飯、最高のベッド、無限の娯楽があんだから、これで働けなきゃ無能だぜ!」

 

「よく頑張ったね、マシュも、リッカも・・・本当に、こんな小さいのに・・・」

 

「サーヴァントの皆もカッコ良かったぜ!こんな頼もしい人達を使い魔扱いとか、やっぱ魔術師はダメだな!」

 

「キャストオフ・・・うっ頭が」

 

 

「「「「「「「ギルガメッシュ王、万歳!!!!」」」」」」」

 

 

「フッ、随分と舞い上がったものよ」

――無理もない。これはそれだけの冒険、それだけの偉業なんだ

 

 

歴史を元に戻す、果てない旅

 

その一歩は・・・紛れもない、大躍進だったのだ

 

そして、一歩が上手くいったのなら、きっとその先も上手くいく

 

だって、総ては、一歩一歩の積み重ねなんだから

 

 

「皆、静かに!・・・ギル」

 

「うん?」

 

オルガマリーが口を開く

 

「――どうか、オルレアン修正作戦の終了の号令を。私を含め、皆は貴方の期待に報いるために、頑張ってきたのですから」

 

まっすぐ見つめてくる、オルガマリー

 

「――フッ、良かろう。労働には労いが無くてはならぬしな――聞け!カルデアに集いし精鋭どもよ!」

 

器のカリスマに任せ、激を送る。共に戦った、仲間たちに

 

 

「此度の貴様らの奮闘、大儀である!この奮闘により、一つの狂いし歴史が元の姿を取り戻した!――誇るがいい!此は紛れもなく、貴様らが足掻き、掴みとった成果である!」

 

 

「この結果がもたらすものは、歴史の是正だけではなく、貴様らが狂いし歴史に歯向かう力を持った人間であるという事の証左である!」

 

「貴様らの価値を、我が認める!――言葉にしよう!貴様らの内に只の一人も雑種はおらぬ!」

 

思うままに、言葉を紡ぐ

 

「貴様ら総てが――我と共に戦うに相応しき、人理を救う勇者たちである!此度の活躍、見事であった!!」

 

 

「「「「「「うぉおおぉお――――――!!」」」」」」

 

沸き立つ大歓声。英雄王の称賛と証明が、カルデアスタッフ達の心を沸き立たせる

 

「その労に報い、貴様らには3日の休暇を与える!最低限のメンテナンス以外の労働は禁止する!思うがままに、このカルデアで羽根を伸ばし、英気を養え!この施設の充実は、その為に誂えたモノであるゆえな!」

 

「休み、魂を癒し、再び訪れる戦いに備えよ!貴様らの一人でも欠ければ、このカルデアはたち行かぬと知るがいい!努、自らが最後の人類であるという自覚を損なうな!我の赦し無くして、死ぬことは赦さん!貴様らは総て、我の財(モノ)なのだからな!!――以上!解散ッ!!」

 

「「「「「「「ギルガメッシュ王!万歳!ギルガメッシュ王!万歳!ギルガメッシュ王!万歳――!!」」」」」」」

 

――うん。まだまだ感謝を言い尽くした感じはしないけど・・・自分の言いたい事は、大体器がいってくれた

 

ありがとう、カルデアの善き人達。そして――英雄王ギルガメッシュ

 

――貴方の至宝に手を伸ばした栄誉、けして忘れません。貴方の偉大さに、敬意と感謝を。――偉大なりし、最古の王よ

 

 

「貴様らは我の財・・・どうやら貴方は、本当に私の知りうる英雄王ではないようだ」

 

歩み寄る赤いアーチャー。エミヤだ

 

「なんだ贋作者。ついぞ出番がなかったな。申し開きか?懺悔でもするか?」

 

「いや、私はそう強い英霊ではない。貴方が前線に立つ以上、私は裏方に徹するさ」

 

「ようやく身の程をわきまえたか。贋作者は贋作者らしく、お握りでも拵えておけ」

 

――この人も、また一緒に戦えたらいいな。きっと頼もしいだろう

 

「返す言葉もない――ところで」

 

――悪寒が、背筋を走る

 

「かつてジャンヌが言った事を覚えているかね、英雄王」

 

――フォウが言った言葉を思い出す

 

オマエのせいで、キミは墓穴を掘ったんだ――

 

「ん?そう言えば言っていたな。手作りの料理で王を歓待すると」

 

――エミヤが、ニヤリと笑った

 

「二言はあるまいな英雄王。――では、食べてもらうとしよう。ジャンヌ!」

 

 

「はーい!」

 

笑顔で現れるジャンヌ。

 

 

――その手には、地獄が顕れていた

 

「ぬ――――――、な――――――――」

 

「良かった!無事に帰ってきてくださって!本当に・・・!」

 

「――ジャン、ヌ。なんだ・・・そのおぞましき、地獄がごとき威容のアレは・・・――」

 

――今までで一番動揺、いや、狼狽する器

 

――あぁ、そういう・・・なるほど、そういう事か、墓穴って・・・

 

 

「はい!私が修業の一環で作り、英雄王の為にこしらえた、『ダンテ・ヘル・麻婆・ルチフェロなりしサタン風味』です!」

 

立ち上る湯気で世界が歪んでいる。地獄の叫びが届くようだ

 

「私が英雄王の為に、一生懸命作った自信作です!――食べて、くださいますか――?」

 

「く「食うかなどとは言わせんぞ英雄王!!貴方は言ったはずだ!『王の名にかけ、完食してやろうではないか』とな!!」

 

「ぐ、ぬ――――!!記憶に無いわ――!!」

あのときか・・・墓穴ってそういう事か・・・

 

「モニター班!音声を回せ!!」

 

『ほう?田舎娘なりに気が利くでは無いか。良かろう、特に許す。王の名にかけ、完食してやろうではないか』

 

確かに流れる器の・・・いや、自分の声

 

「言質は取っている!貴方の王の誇りにかけ、逃げることは玉座から陥落する事としれ!!」

 

「あ・・・――ア――――――――――チャ――――――――――!!!!」

 

器の絶叫が響き渡る

 

――諦めよう。ここが、自分達の終着点だったんだ

 

「席につけ!ナプキンを取れ!完食してもらおうか――カルデア全職員の前でな!!」

 

「お、のれ――おのれ、おのれ――!!おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ――――!!!!」

 

壊れたテープレコーダーみたいに繰り返す英雄王。どれだけ嫌なんだ・・・

 

・・・まぁ、罰だと思おう。ジャンヌを散々馬鹿にしてたし、麻婆を教えたのも自分だし

 

――なんだかアレ、薄味魂の自分からしてみたら美味しそうだ

 

 

「天の鎖よ!!頑張って我を助け――!」

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛(ダメです)」

 

「何ィイィイィイィイ肉だるまお前もか!!それより何よりどういう事だ!あんな目にするのも憚られる汚物を――完食せねばならんと覚悟を決めている我がいる――!!」

ジャンヌが作ってくれた料理だ。どんなモノであれ、無下にするという選択肢はない

 

「何故かまるごしワカメも使う気がおきん――!!どういう事だ我!口にする前から狂っているのか!!ランサー!ランサーは何処か!食え!我の代わりに食ってしね!自害は貴様の芸当であろうが――!!」

 

「クー・フーリンは未召喚だ。慢心したな英雄王。

身から出た錆、軽はずみな発言の責任を取るがいい」

 

「貴様出番が無いと思えば――我を仕留める算段を立てていたな――!!獅子身中の虫とは貴様であったか――!!!」

 

「なんとでも言うがいい。――さぁ、覚悟を決めろ、英雄王」

「はい、どうぞ!お疲れさまでした!――英雄王」

「ジャンヌ――」

 

「・・・とっても、格好良かったです!えへへ・・・」

 

――食べなきゃ

 

「可愛さで誤魔化そうなど――!!待て、止めろ我!何故スプーンを取る!!落ち着け、早まるな我!まだ第一特異点だぞ!?まだバビロニアどころか小便王にすら逢っておらぬ!!我が至宝の真価も発揮しておら――!!」

 

わぁ ぐつぐつ して おいし そう

 

「むぐっ、ぐあっ――!!熱気で肌が爛れるようだ――!!待て、よせ、踏みとどまれ我――!!おのれ、このような――!!よもや、そこま――――!!!」

 

 

――死ぬときは一緒です、貴方と自分は一蓮托生

 

感謝を込めて――頂きます!!

 

「止めろぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおのれぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ――――――――!!!!!!」

 

――ハムッ

 

「ガ――――――!!!!!!????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憎しみで、人類は滅びない

 

 

いつの日か、憎しみは必ず癒えるからだ

 

 

 

――もし。人類が滅ぼす悪があるとするならば

 

 

――その根底にあるものは

 

 

 

――愛、なのだろう




これにて、オルレアン編は終了になります!


読んでくださった方、コメントをくださった方、お気に入りにしてくださった方、誤字を直していただいた方、激励してくださった方

本当に本当に、ありがとうございます!最初は、一件だけでもお気に入りにしてもらえればいいかなぁとか考えていました!

それが今では、日間ランキング一位を獲得し、300件近くの評価を頂き、1000件近くのコメントをいただくという、大反響をいただける事態に――夢のようです・・・!


投稿する度に書き込まれるコメントを見るのが嬉しくて嬉しくて、はやく皆さんの反応をみたい!と気がついたら打っていました!

自分にとって、この作品は奇跡のようなもの。その奇跡を起こしてくださったのは、ハーメルンの皆さま方です!

書くためにマテリアルを読み返し、また書いて、マテリアルを読み返す・・・その繰り返しで、ますます自分もfateが大好きになっていく素敵なループに入れました!

重ね重ね、ありがとうございます!今からセプテム見返しますので、しばらく幕間を投稿すると思います!

召喚サーヴァントも、ほわほわ考えています!意見をくださったサーヴァントは、遅くなれど優先して出したいなぁとかんがえていますので、ワインを飲んでお待ちください!

重ね重ね、感謝を!ありがとう、ハーメルンの善き人達!

ギルガメッシュ王、万歳!ウルクに永遠の栄えあれ――!!


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幕間 大召喚!!出でよ!セイバーッ!! 召喚三部作・復讐者編――Zeroから始める復讐者生活

お待たせしました、召喚編です

絶対長くなるので、三騎士、四騎士、今回と分けます


すまない、もう少しだけ付き合ってくれ。本当にすまない


山頂の楽園、カルデア

 

 

 

「ひゃっほー!マシュ!ダブルドリフトー!」

「はい!峠を攻めます!私にも騎乗スキルはありますから!」

 

 

思い思いの休暇を送る、カルデアの勇者たち

 

「新しい礼装は何がいいかしら師匠。スーツ?」

 

「そうだねぇ。水着とか!」

 

 

「こしあん、つぶあん。パフェもいいなぁ・・・」

 

 

「キュー(ちっ。パスワード設定したなあいつめ。まあいいや、ビーストハッキングっと・・・どうせ王の話だろうし)」

 

 

「沖田さん!アニメ見ましょうアニメ!」

「いいですとも!」

 

 

「いつか私は、あのテーブルクロスを無価値にして見せる!」

「ファイトだな、赤マント」

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛・・・(風呂はいい・・・)」

 

 

――だが、その安らぎは

 

 

 

「――我が声を聴け!!全職員!集合!!」

 

再び、王の号令にて切り裂かれる――!!

 

 

――

 

「遅いぞ貴様ら!遅刻はせずとも五分前に参ぜぬか!」

 

腕を組み吼える器、ギルガメッシュ

 

 

「生きていたのかい英雄王!?」

 

「勝手に殺すなたわけ!当然であろうが!」

 

 

「大丈夫だったの!?」

 

「大丈夫なわけなかろう!ミルクに薬草を煎じて飲み胃を整えた!しばらく味覚を失うが構わん!些末だ!」

――丸一日死にかけてはいた。腹を下すとかそんなレベルじゃないくらいの地獄を体験した

 

 

でも、ジャンヌが幸せそうだったから、魂を軋ませるような衝撃にも耐えたかいがあった

 

 

「それを掘り返すな!我は未来に生きる!忘れよ!――貴様らを呼び出した理由は察していよう!」

 

「もしかして!」

 

「カルデア二回目の!」

 

 

「そう――我の嫁の召喚の時間よ!!奮起せよ!これが本番だ――!!」

 

 

――器の願いはともかく。これから先激化していく戦い、自分達だけでは多分、手が足りなくなるだろう

 

ギルガメッシュは無敵ではあるが、あらゆる場所の敵を蹴散らすにはそれなりの準備がいる。――自分がミスをしない自信はない。そのフォローができる仲間がほしいのだ、もっと

 

 

「やっふー!ガチャだガチャだー!」

 

「此度は戦力の増強も兼ねて、大量に招集をかける!下手なセイバー数引けば当たる!どうせキャスター以外のクラスは制覇していよう!」

 

――セイバーなの?セイバーじゃないの?

 

――カルデアにいるときは、自分は基本意識を眠らせている。自分がしたいことがあるとき以外は彼に任せているのだ

 

「一にセイバー、二にセイバーだ!では行くぞ!」

 

「はい!ギル!進言を!」

 

手を挙げるオルガマリー

 

「許す!もうしてみよ!」

 

「戦力の増強というなら・・・全クラスを最低三人は召喚してみてはいかがでしょう?それだけいれば、大分違う筈です!」

 

「――全クラス、か」

 

ふむ、と悩む器

 

――そういえば、器は言っていた。あのジャンヌは復讐者であるべきだと

 

「確かに。バーサーカーばかりだったりすると色々ね」

 

「我はゴージャスというエクストラクラスだから置いておくとして。・・・ライダー、アサシン、ランサー、キャスターか。おらぬのは」

 

「はい。私の聖杯で、クラスごとに器を持たせます。具体的には、クラスごと召喚を可能にするわ」

 

「マリーすごい!」

「マスター適正以外は、それなりに役立つのよ。私」

 

「もうすっかりサマナーだね、所長」

 

「――なるほどな、そうかそうか」

 

ニヤリ、と酷薄に笑う器

 

・・・よくないことを考えていらっしゃるなこれは

 

 

「よし!その進言聞き届けよう!全クラスの英雄どもを召喚する!」

 

「解りました。では呼符を・・・」

 

「いや、此はいらん」

 

 

「・・・え?」 

 

「残りカスを拾うだけだ。儀式はいらぬ。――いでよ!」

 

 

パチン、と指をならす

 

 

「しょ、召喚開始!――これは!」 

 

 

「どうしたんだい!?」

 

「れ、霊基パターン、エクストラ――!」

 

 

「エクストラだって!?」

 

 

――なんだって・・・!?

 

 

「く、クラス・・・アヴェンジャーです!!」

 

 

光が走り、やがて収まる

 

 

そこにいたのは・・・

 

 

 

「――え、あれ・・・は?」

 

「ジャンヌ――!?」

 

黒き衣装、黒き旗。黒き姿

 

 

先ほど戦っていた――魔女ジャンヌがそこにいたのだ・・・!

 

 

「フッ、やはり消えてはいなかったか。ジャンヌだけあってしぶとい女よ」

 

「なん、で。私・・・煉獄にいたはず――あんた!金ぴか――!!」

 

燃えたぎる・・・というには足りない殺意を向けてくるジャンヌ

 

「なんで、私に何をしたの!?」

 

「召喚したに決まっていよう。現実を直視せよ」

 

「有り得ない!そもそも霊基が足りないし!」

 

「あぁ、それは我が機転を利かせた。雑種どもの『これほど理不尽な目にあったジャンヌなら、復讐する筈』という思考に貴様を寄生させたのだ」

 

「――ッッッ・・・そ、んなことが・・・」

 

――まずは、安堵が先に出た

 

やっぱり・・・あのジャンヌは、ゼロにはなっていなかったんだ・・・

 

「一度生まれたものを消すことはできぬ。どんな贋作であろうともな。まぁ今の貴様はサーヴァント未満の雑魚だが。まだ霊基を磨けておらぬのだろう?」

 

「ッ・・・」

 

「・・・そうなの?ジャンヌ」

 

悔しそうに歯噛みする魔女ジャンヌ

 

「・・・そうよ。私には、まだなにもかも足りない。召喚される確率なんて、ほぼ――」

 

「ゼロでないなら十分だ。我はコレクター。拾い上げるなど呼吸のようにこなす」

 

「・・・笑い者にしたいっていうの!?私を、雑魚の私を見て!!」

 

猛るジャンヌを、さらりとながす

 

「いや?単に我の家臣が『全クラス揃えよ』と進言したのでな。先んじて揃えたまでよ。アヴェンジャーをな」

 

「な、にを!そんなふざけた理由で――!大体、私を求めるヤツなんてどこに――!」

 

「いるではないか。そこに」

 

くい、と指差す

 

「・・・アンタ・・・」

 

「ジャンヌ!黒ジャンヌ!」

 

笑顔で駆け寄る、最後のマスター

――

 

――いつか、あのジャンヌも召喚したいな

 

――カッコよかったし

 

 

――

 

「貴様は既に、求められていたのだ。気付かなかったのは無理もないがな。縁があれば、喚ぶのは容易い」

 

「――アンタが、そんな・・・他愛ない一言で。私を――」

 

「会えて嬉しい!よろしくね、ジャンヌ!」

 

握手し、手を握るマスター

 

 

「貴様の霊基を上げる行い、マスターに免じ我が面倒を見てやろう。貴様には、シミュレーターのモニターを命ずる」

 

王が、裁定を下す

 

「人理修復までに、自己を確立させよ。そして、マスターの役に立て。その責を以て、我に刃向かった無礼を赦す」

 

 

「・・・私を、求めたの・・・アンタが、本当に」

 

呆然と、呟く

 

「うん!」

 

「――っ!」

 

目を伏せうつむくジャンヌ

 

「・・・何よ、それ――このお人好しどもが・・・――!」

 

「――誇るがいい。貴様が我がカルデア初のアヴェンジャーだ。貴様の復讐は、此れより始まるのだ。ジャンヌ・ダルク」

 

「――・・・・・・ッ――――」

 

肩を震わせる、魔女ジャンヌ

 

 

「ジャンヌの別側面だから・・・ジャンヌ・オルタ!ジャンヌオルタだね!」

 

「・・・私にも異存はないわ。反英雄だって、英雄よ」

 

「はい、彼女は頼もしいです!」

 

「――よろしくね、ジャンヌオルタ!」

 

 

「なによ――なによ・・・!!!」

 

 

逃げるように、管制室から走り去るジャンヌオルタ

 

 

 

「どうした?首をかききるのではなかったか?我は此処だぞ?ん?アヴェンジャー」

 

「るっさい!!今にみてなさいよ!私は自分を鍛えて、鍛えて、最強になる!」

 

「そしたら――必ずあんたを焼き殺してやるから――!!首を洗って待ってなてか何よここすごい豪勢じゃない――!!??」

 

 

慌ただしくジャンヌは退場していった

 

・・・きっと頼もしい戦力になるだろう。彼女は、これからなんだから

 

――産まれた『魂』を磨く、か。・・・応援してあげなくちゃ、嘘だ

 

 

「行っちゃった・・・」

 

 

「まぁ、我的にはあんなものどうでもよい。おまけ以上の価値を持たん。兵士に負ける雑魚であろうから精々強化してやるのだな」

 

ぎらりと、王が気を引き締める

 

 

「では、前哨戦といくか!まずは――四騎士からよ!」

 

 

召喚が、始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私から産み落とされた私!私から産み落とされた私ではないですか!!あぁなんてこと!コウノトリが運んでくださったんですね!私はジャンヌ!ジャンヌ・ダルク!アニメと祈りが大好きな麻婆娘です!貴女の名前は!?クラスはなんと!?よろしければ私と沖田さんとジブリをみませんか!?ぜひぜひ文化の集いに!さぁ――!!」

「来んな――――――!!!!!」

 

 

瓜二つのジャンヌが、カルデアを駆け回っていた・・・

 




黒き廃棄物の王「fateさんさぁ・・・こっちにひっどい体つきのジャンヌがいるんだけど・・・」


「交換しない?」
 


ゴージャス 1


セイバー 1

アーチャー 1

ランサー Zero

ライダー Zero

キャスター Zero

アサシン Zero

バーサーカー 2

シールダー 1

ルーラー 1

あべんじゃぁ 1

「なによこのふわっとした感じぃ!ブッ燃やすわよ作者ァ!!」


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召喚――四騎士編・バーサーカーの巻

クラスごとに一つ一つ区切ることにしました。ごめんね!


――カルデアの戦力を拡張し

 

 

 

――器の后(片方了承無し)を迎える

 

 

運命の召喚が始まった――!

 

 

 

 

「改めまして、清姫と申します。ますたぁ。よろしくお願いいたしますね・・・?」

 

 

着物と扇子、角を生やした高貴な雰囲気のバーサーカーが現れる

 

 

「きよひー!きよひーだ!」

 

「またその蛇女か。戦力に期待などはしておらぬが、下限にも限度があろう」

 

「まぁ、手厳しい。確かに私は蝶よ華よと育てられた身ではありますが、宝具のランクは貴方と互角ですわよ・・・?」

 

――本当か!?英雄王と互角!?

 

「ほう・・・良かろう。その言葉を信じ、カルデアに参ずることを許してやろうではないか。精々マスターに張り付けよ」

 

「うふふ、望むところですわ。信じる、という点に関して、私の右に出るものはありません・・・」

 

 

「よろしくきよひー!」

 

「はい、あんちんさま」

 

「・・・やはり蛇は邪道よな。蛇だけに。ふはは!」

 

「はい?」

 

――極東の島国、日本。いったいどんな魔境だったんだ・・・

 

 

「次だ!!」

 

気を取り直し、召喚サークルを起動させる

 

 

「バーサーカーはあまりお勧めしないんだよなぁ。強いんだけど魔力食べるし、言うこと聞かないし・・・ぶっちゃけヘラクレスがいるならそれで・・・」

 

「念には念、さ。気持ちのいいバーサーカーだっているかもだろ?」

 

ロマンの意見を補足するダ・ヴィンチちゃん

 

「それは、バーサーカーなのでしょうか?」

 

「知らぬ。そら、出るぞ」

 

 

光が収まり、現れしは

 

 

「――よう!俺は坂田金時!これから世話ンなるぜ。俺っちの事はゴールデンと呼んでくれ!」

 

筋骨隆々、みなぎる覇気と筋力を感じさせる巨漢の快男児が現れた・・・坂田金時?また日本の英雄!?

 

「ほう。ゴールデン・・・中々よい名を名乗るものよな」

 

「――ッッッ!!」

 

器を見た瞬間、硬直する坂田・・・ゴールデン

 

「ん?なんだ?我に何か言いたいことがあるのか?」

 

「――クール」

 

「なに?」

 

「・・・超絶クールじゃんよ・・・きらびやかに輝くゴールデンの中のゴールデン・・・!!」

 

「はい?」

感激に身を震わせている様子のゴールデン・・・がっと頭を下げる

 

「アンタこそ真のゴールデンキング!後生だ、サインをくれ!背中んトコにイカした感じでゴールデンなサインを!」

 

・・・え?日本の英雄だよねこの人。何だか横文字が多くないか?

 

「なんだ、話のわかるバーサーカーもいるではないか。我の威光を瞬時に見抜くとはな。やはり我は偉大だなふはは。マジックでよいな?」

 

かきかきと、『ギルガメッシュ』と書き込んでいく。地でいいんだ。満足げに頷くゴールデン

 

「Thank You!さて、俺っちのマスターは」

 

「私!」

 

「――・・・なんだよ」

 

プイッと顔をそらすゴールデン

 

「よ、よろしくな・・・おぅ」

「?どうしたの?」

「な、なんでもねぇ!ちかいっつの!」

 

「?」

 

「ははは、初々しくてよいではないか。小学校低学年か?精々仲良くやるがいい」

 

――日本とは・・・

 

「次だ!バーサーカーはこれで締めだな!」

 

「はい!サモンプログラム、スタート!」

 

光が放たれ、やがて収束する

 

「二連続で日本の英雄かぁ。次もかな?」

 

「――日本の事情はよく知らぬしどうでもよいが、バーサーカー多すぎではないか?」

頭おかしい人が多いってことなのか・・・?

 

「あはは、お国柄かな?――来るぞ!」

 

そこに現れたのは――

 

「新撰組副長、土方歳三だ。クラス?そんな事はどうでもいい。俺がある限り・・・ここが、新撰組だ」

 

洋風の戦闘服に身を包んだ、長身の剣士が立っていた

 

「また日本か・・・狂いすぎであろうが・・・」

 

「ワッザ!?ヒジカタ=サン!?」

 

驚くマスター。ゆっくりとみやる、土方と名乗る男

 

「お前がマスターか。・・・精々気張れ。諦めるな」

「は、はい!」

 

「新撰組・・・そういえば、貴様の知己がいたな。セイバー擬きの次はバーサーカー擬きか」

 

「・・・アンタは?」

 

 

「我はゴージャス、ギルガメッシュ。このカルデアを治めし王の中の王よ」

 

「そうか。――世話ンなる」

 

挨拶を返してくれた。・・・あれ?皆喋れるぞ?ヘラクレスさんも喋れたりするのかな本当は

 

「うむ、励めよ」

 

「あぁ、で、知己ってのは・・・」

 

口を開く前に、明るく騒がしい声が響き渡る

「どもー!ガチャってますか―!?課金は食事と同じ!ガンガン課金しましょー!それより見てください!ジャンヌさんと作ったくまの○ーさんのお面です!似合ってますか?似合ってますか!?物真似いきまーす!はぁいぼぉく○ーさん。はぁちみぃつたぁべた――」

 

「何してんだてめぇ・・・」

 

「――――はい・・・?ひ、土方、さん・・・?」

 

凍り付く空気、震えだす沖田

 

「知己ってのはてめぇだったか。随分楽しそうじゃねぇか。沖田」

 

「あ、わわわ。あわわわわわわわわわ」

 

「――まさか、腑抜けちゃいねぇよな・・・!?」

 

すらりと刀を抜く土方――ちょ!?

 

「何がプーさんだ舐めてんのか!!局中法度第一!復唱しろ沖田ァ!!」

 

「はいっっっ!!しし、『士道ニ背キ間敷事』!!」

 

「テメェのその様は不覚悟って事でいいな!!介錯してやる!――腹切れ沖田ァァ!!!」

 

鬼の気迫と、脱兎のごとく逃げだす沖田

 

「ままままま待ってください!!自由時間だから赦されているんですよぉ!!」

 

「言い訳は腹切ってから聞いてやる!!神妙にしやがれ!テメェ待ちやがれこの野郎――!!」

 

「ひぇええぇええぇえたすけてくださぁあぁあい!!沖田さんだけ扱い酷くないですかやだぁあぁあ!!」

 

「うぅううぅうぉおぉおおあぁあぁあぁあ!!!」

 

扉を蹴破らんばかりに、二人は退場していった・・・

 

 

「・・・」

 

「ギル・・・」

 

――なにも言うことはない

 

「・・・まぁ、バーサーカーにセイバーは期待しておらぬ。前向きに考えよ。意思疏通ができるバーサーカーでよかったではないか」

 

「そ、そうかなぁ・・・」

 

「手綱を握るはマスターたる貴様の仕事よ。我は知らぬ」

 

「次は・・・そうさな、アサシンにするか」

 

――とりあえず、賑やかにはなりそうだ




「⬛⬛⬛⬛⬛(最近のバーサーカー未来に生きてるな・・・)」


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召喚――四騎士編・アサシンの巻

「列を崩すな。横入りをするな」


「割り込みする英霊に鐘の音は降り注ぐ。そこの黒髭――首を出せ」


「アサシン・・・暗殺者なぞをカルデアに招くのは気乗りはせんが、まぁ仕方あるまい。選り好みはこの際脇におく。馬鹿と破産は使いようと言うしな。懐刀代わりに精々使ってやれ」

 

 

アサシン・・・影に潜み、瞬きの内に生命を断つ暗殺者のクラス

 

 

器はこういうが、敵の暗殺者の狙いを先読みし、阻めるのはけして小さくないアドバンテージになる。決して無視できないクラスであるのだ。王は大体暗殺で死ぬし

 

「うん!よーし、可愛いアサシンがいいなぁ!」

 

「先輩・・・それは矛盾しているのでは?」

 

 

「我的に一番どうでもよいクラスだ。巻きで行け巻きで」

 

途端にやる気をなくす器。本当に気分屋だなぁ

 

「アサシンのセイバーなどいるはずが無かろう常識的に考えて・・・」

 

 

 

「よーし!召喚開始!」

 

 

サークルが光を放ち、回転を開始する

 

「さっさと済ませよ、我の本気はセイバーでだす」

 

「まぁまぁ、前哨戦だと思ってさ?ね?」

 

「・・・来るわよ!」

 

現れたのは――

 

「アサシン・ジャック・ザ・リッパー。よろしく、おかあさん」

 

ぼろ布を纏った、無垢なる少女であった

 

「――産まれ落ちる事の無かった怨霊か」

 

「ほわぁあぁあぁあ!!かわい――!!」

 

駆け寄り、抱きしめ頬擦りをするマスター

 

・・・ジャック・ザ・リッパー。確か・・・ロンドンの殺人鬼、だったか

 

 

「・・・幼女じゃない・・・」

 

「私がおかあさんになるんだね!よろしくね!ジャックちゃん!」

 

「うん。おかあさんについていく」

 

「ほわぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

「先輩落ち着いてください!落ち着いて!」

 

「守護らねば――守護らねばならぬ・・・」

 

マスターが正座にてジャックを抱き抱える

 

「――精々胎に潜り込まれぬよう注意するのだな、マスター」

 

「へ?」

 

―――可愛く見えても、あれは怨霊の類

 

手放しに信頼しては危険だと、なんとなく感じ取れた

 

 

「次だ次。そら回せ。回転数が全てだ」

 

「よーし!見ててジャックちゃん!えーい!」

 

「えーい」

 

回転サークルを回し、英雄を召喚する

 

「次はどんな亡霊が迷い出るものか・・・」

 

「アサシン=怨霊ってわけじゃないからね!?」

 

光が収まり二体目のサーヴァントが、姿を現す

 

 

「サーヴァント・アサシン。影より貴殿の声を聞き届けた」

 

白い仮面、漆黒の外套。アサシンらしいアサシンが影より出でる

 

「ザ・アサシン!凄い、どこから見てもアサシンだ!」

 

「その仮面は、山の翁のアサシンね」

 

「左様。わが悲願の為にも、貴方達に助力を・・・むっ!?」

 

アサシンがこちらを見定めた瞬間、凄まじい警戒を向けてくる

 

「黄金のサーヴァント・・・!?」

 

「なんだ、影に潜む砂虫風情でも我は知っているか。くれぐれも今の我以外の我に目線を送るなよ、処断するぞ」

 

「ど、どうしたの?」

 

「魔術師どの!あやつは良くない!すぐに裏切る不埒ものゆえ、すぐに契約を切るべきですぞ!」

 

「的を射てはいるな。だが間違えるな砂虫。我は道を違えた者を切り捨てはしても、共に歩むと誓った者の背を斬った事はない」

 

睨み付けられる視線を、さらりと流す器

 

「裏切る、と言うことは、共に歩む者の背中を切りつける行為を言う。言葉は正確に使うのだな、ハサンよ」

 

「・・・ぬぅ。何故か今の貴様からは、不穏な気を感じぬ・・・もしや、本当に・・・?」

 

「大丈夫だよ、ハサン先生!このギルは凄く機嫌がいいから!」

 

慌ててフォローするマスター

 

そうとも。ここは自分と器が居を構え、改築した居城。裏切る相手などいるものか

 

「気になるならば適当に散策するがよい。そして我の威光を見よ。貴様が隠れるような辛気臭い部屋はないと思いしれ」

 

「・・・ぬぅ・・・承った」

 

渋々ながら納得し、影へと消えるハサン

 

 

「――あんな虫けらまで使役せねばならぬのがつらいところよな。まぁ、裁量はマスター。貴様の仕事よ」

 

「がんばろうね、おかあさん」

 

「もちろん!よーし最後だー!」

 

 

「二体とも、悪属性ね・・・大丈夫かしら」

 

「善属性だけではいつか詰むやもしれぬしな。まあ見世物として飼ってやろうともさ。さぁ最後だ」

 

 

召喚のサークルが回転を始める

 

 

「わくわく、わくわく!」

 

「確かにこの瞬間はドキドキするよね、解るよ」

 

「わくわくするの?むね?たしかめていい?」

 

「へ?」

 

 

「さて、鬼が出るか、蛇が出るか・・・」

 

やがて、光が収まり・・・

 

 

「失礼する。召喚の箸休めに、軽食を持ってきた」

 

エミヤがお弁当をもち入室する。同時に――

 

「――また汚れ仕事か」

 

黒い鎧。赤いフード。右手にナイフを握った、詳細が掴めぬ男が立っていた

 

 

「・・・む?」

 

「まぁいい。いつもの事さ――君がマスターかい?」

 

すっ、とマスターに歩み寄る

 

「は、は、はい!」

 

「先に言っておく。僕は君達の事情なんて知らないし、知ったことじゃない。ただ、サーヴァントとしての務めを果たす」

 

冷たい、冷然とした態度、含まれる拒絶

 

「――それでいいんだ」

 

「あ、はい・・・よろしく・・・お願いします」

 

「――それじゃあ、用があれば使ってくれ」

 

「待て」

 

赤い暗殺者を、エミヤが呼び止める

 

「――貴様は」

 

「・・・」

 

「――いや、いい。よろしく頼む」

 

「あぁ」

 

それだけを交わして、二人はすれ違う

 

「ど、どうしたのです?エミヤ先輩?」

 

「・・・いや。何も」

 

複雑そうな表情を浮かべるエミヤを、器が冷やかす

 

「同郷の郷愁か?哀れなモノよな、抑止の使い走りというのは」

――抑止の、使い走り?

 

「・・・余計な詮索は無用だ。彼も私も、仕事は果たす」

 

「それはそうであろうよ。我のカルデアに無能は要らん。精々訪ね、泣き言に華を咲かせるがよい」

 

 

「・・・謎の」

 

「リッカ?」

 

 

「謎のフードマン・・・カッコいい・・・!!」

 

――マスターは幸い、彼を気に入ったらしい

 

よかった。マスターの印象が悪くなければ、きっとそのうち打ち解けられるはずだ

 

「おかあさん。いろいろみてきていい?」

 

「いいよいいよ!行っておいで!後でね!」

 

「うん。みつけてね」

 

ふわり、とジャックが姿を消す 

 

「・・・気配遮断持ち相手に安請け合いをしたものよな。精々さ迷うがいい」

 

「・・・あ!!」

 

「さて、――興が乗らぬクラスも終わったか。次は・・・キャスターにでもするか」

 

 

欠伸を噛み殺し、召喚は次のクラスへと移る・・・

 

 

「その前に、ご飯を食べましょう?」

 

「そだね、お腹減った!おにぎりはここに・・・あれ?」

 

「いただきます(もぐもぐ)」

 

「かわいいぃいいいいい!!」

 

 

――前哨戦は続くのだった




「抽選に外れたか・・・致し方無し」


「何れ、晩鐘はかの地を指し示そう。今は、唯闇に潜むのみ」


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召喚――四騎士編・キャスターの巻

「キャスター編かぁ。私も召喚されたかったなぁ・・・あぁ、ヌルゲーになっちゃうからダメかぁ。Twitterトレンド一位取得者はやっぱり格がちが」

「フォウ(ビーストウィルスっと)」

「もう勘弁してくれないかなキャスパリーグ!?」


「さて、次はキャスターか」

 

 

管制室に設けられた玉座にてふんぞり返りながら、器たるギルガメッシュが向き直る

 

 

「キャスターはいいぞぅ!綿密に練られた魔術と技術を駆使して、対魔力なんてインチキの連中を蹴散らしていくテクニカルなクラスだ!敵を術中にはめてぼっこぼこにしていく、すっごく上級者向け!僕の大好きな花形クラス!キャスター最高!」

 

珍しく鼻息荒く、説明を行うロマン

 

 

「随分とキャスターを持ち上げるんだね、ロマン」

 

「もちろん!僕はキャスターが好きなんだ!極まれば工房から一歩も動かず敵を殲滅させるのも不可能じゃないからね!まさにロマンに溢れたクラス!僕が好きなのも当然だろう!」

 

 

「私もそれは賛成だ。キャスターとは、可能性に溢れたクラスだと自負しているとも!愛弟子は何のクラスが好きかな?」

 

「私?・・・私は、アーチャー、かしら」

 

「私はシールダー!マシュが好き!」

 

「先輩・・・」

 

「たわけ!ゴージャス一択であろう!」

 

――ゴージャスは、貴方以外なれないので・・・

 

 

「さて、ではロマンが推しているキャスターの英霊を招くとするか。小細工を好む賢しいクラス・・・さて、誰が来るのやら」

 

「よし、行くぞー!召喚だ!素敵なキャスターが来ますように!かもん!サモンプログラム!」

 

 

ぱちんと指をならし、召喚サークルを展開する

 

 

光が巻き起こり、閃光が部屋を満たす

 

 

「さぁ来てくれ!賢く知的で素敵な英雄!キャスターの素敵なサーヴァント!」

 

 

現れたのは――

 

「やぁ!自己紹介はいいと思うけど、改めて!僕はアマデウス!ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトさ!」

 

「――ッン~!」

 

微妙に違う・・・!と言いたげに唇を噛むロマン

 

「――随分と早い再会であったな、音楽家」

 

――これは、戦力に関係ない喜びだ――!

 

 

「くずだ――!クズデウスだ――!」

 

「あぁ、――アマデウスさん――!」

 

 

「あははは、目を潤ませちゃってまぁ!だが、僕も嬉しい!君達との再会は、何にも勝る音楽だとも!例え、僕が別の僕だとしてもね!あの旅路は――最高の行進曲だったとも!」

 

「ふははははははは!!貴様のカルデアでの役目など語るまでもあるまい!!」

 

「もちろん!戦力としては期待しないでほしいのは解ってるよね?そう、僕の仕事は――君達の人生を、一歩上のステージへ導く音楽を捧げる事さ!」

 

 

――戦力だけで、サーヴァントの価値は語れない

 

彼は――それを教えに来てくれたのだ

 

 

「よし!幸先がよい!回せ回せ!戦いとは勢いとノリがいい方が勝つのだ!波に乗れ!マスター!」

 

「おー!!二枚目ドロー!キャスターカード!」

 

 

ノリノリで手を叩きつけるマスター。流れが来ている!かもしれない!

 

 

「可愛いサーヴァント、おーいで!」

 

「キャスターは可愛いサーヴァントがたくさんいる!このダ・ヴィンチちゃんが保証しよう!」

 

「キャスターのセイバー顔は、未だ居なかったな・・・そう言えば。実装せよ、描く神」

 

――キャスターのセイバーとは一体なんなのだろうか?セイバーという誇称?概念?

 

・・・というか、この王は・・・

 

 

「さぁ!!如何に!?」

 

現れたのは・・・

 

 

「あら、随分と可愛らしい魔術師なのね?私はメディア、コルキスの魔女。宜しくお願いするわ」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 

「・・・な、何よこの空気。何、なんなのかしら・・・!?何か言ってくださらない!?」

 

「・・・取って」

 

 

「え?」

 

「フード!取って!」

 

「ちょ、待ちなさい!取ろうとしないで!順序が、順序が、あるでしょう!?」

 

 

「よもや女狐が来るとはな。――名乗ってやろう。我はギルガメッシュ。英雄の中の、英雄王!クラスは・・・ゴージャスよ!!」

 

「知ってるわよ!貴方の事くらい!よくも後ろから串刺しにしてくれたわね!」

 

「ははは、笑って流せ。すまんな」

 

「謝ったって・・・!――え、うそ、あなた、今――謝っ、た――の?」

 

――愕然とするメディアと名乗る魔女。・・・本当に謝ったくらいで驚きすぎではないか・・・?

 

 

「――えと、あの・・・よ、宜しく、お願いするわ・・・ね?」

 

「うむ、励め」

 

 

「――夢、夢・・・?夢なの、これ?なんの冗談・・・?」

 

「カルデアの地理を把握しろ。そこにいては召喚の邪魔だ。――案内せよ!肉達磨!」

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛」

 

「きゃ――――!!?私に暑苦しい筋肉を押し付けないで――!?どうせなら金髪で小柄で、可愛い凛々しげな騎士に案内してもらいたいわ――!!」

 

「我がしてもらいたいわたわけ――――!!!!」

 

 

筋肉に連れられ、メディアはカルデアに連れられていった・・・

 

 

「・・・泣いてるの?ギル?」

 

「・・・――我を見るな」

 

――強く生きよう、きっといつか出逢えましょう

 

 

「ラストだ!我は未来に生きる!!回せ!!」

 

 

最後のノルマだ、最後はどんなサーヴァントが来るのだろう?

 

人だろうか?魔だろうか?はたまた、亡霊だろうか?

 

段々、こちらも楽しくなってきた・・・どんなサーヴァントが、どんな歴史がここに来るのだろう?

 

 

「よーし!ラスト!いけーっ!」

 

回転し、光を満たし、やがて収まる光の輪

 

「どうだ――どうだ?何かの間違いでセイバーが現れたりしないか?」

 

――現れたのは――

 

「こんにちは、素敵なあなた。夢みるように出会いましょう?」

 

 

「「「「「・・・・・・え?」」」」」

 

 

「・・・――なんと」

 

 

――本?




かつて、どこかの聖杯戦争


「貴方を勝たせればいいのだな?⬛⬛⬛⬛⬛⬛。では望みのままに。まずは霊脈を確保する。地脈を掌握し、聖杯と接続。各マスターの令呪を掌握し、サーヴァントを順に自害させる。必要ならば、魔術師達の魔術を全て支配下に修めよう。私はただ、貴方の望むままに振る舞うのみだ」

「⬛⬛⬛⬛・・・もうちょっとこう、手心と言うものを・・・」


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召喚――四騎士編・ライダーの巻

「ライダーの招集か!時は来た!往くぞ、ニトクリス!今こそ太陽の輝きがカルデアとやらに降臨せしときだ!」
「ははっ!ファラオ!ニトクリスめはお側に!」


「ほほう?この世すべての悦楽なんておおぼらを真面目に掲げるやつなんぞあやつしかおるまい!よぅし!ヤツが宝の在りかを示したなら、余は存分に我が王道にて征服するまで!」

「では!往くぞ!」
「往くとするか!」


「「・・・む?」」


「さて、次はライダーか。これが中々に骨のあるクラスでな。『乗る』という解釈が広義かつ曖昧な上に、多彩な宝具を駆るという制約が少ないクラスよ。全く。征服王めも太陽のも好き勝手やりおって・・・召喚が叶えば、我の負担は大いに減ろうな」

 

 

この器が『王』と呼ぶほどの存在がいるというのか・・・自分という異物がいない英雄王はまさに傲岸不遜、王とは自分ただ一人というスタンスをとりそうだが

 

 

「僕的には、王様は君だけでいいと思うけどなぁ。王様ってみーんな我が強くてめんどくさいし」

 

「ふむ。まぁ神の声を聞き代行を成していた王ならばともかく、自らの総てを以て民草を動かすのだから当然よな。無欲な王は飾り物にも劣る、とは誰の言葉だったか。いま思えば下らん問答よ。我か、それ以外かの話でしかないのだからな」

 

うんうんと頷く器。・・・自分は王様同士の会話なんて御免被りたい。気楽に話せる相手との他愛ない会話が一番だ

 

「――あぁ、一騎、誰を召喚するかは決めている。すまんが二騎でやりくりせよ」

 

 

「決めてるの?」

 

「誰かはお楽しみだ。そら回せ、ガチャの時間だ」 

 

召喚サークルを展開する。もう見慣れた、光の展開と収束

 

 

「さて、誰が来るか。外れの少ないクラスではあるが、どうだ?」

 

 

そこに現れたのは・・・

 

「物好きな方々ですね。生け贄がお望みですか?」

 

アイマスクに、ボンテージスーツを着用し、長い、紫の髪をたなびかせる長身の女性

 

「――ほう。旬を逃さぬといったところか。自らの銀幕の宣伝にでもやってきたか?」

 

「また貴方は訳のわからないことを。少しは同じ立場でものを見たらどうです」

 

「ハッ、聞けぬ相談よな。雑種どもの視点なぞ、あまりに低くどこを眺めているか解らぬからな」

 

「・・・意外ですね。貴方は見ることも聞くことも語ることも許すような方ではなかったはずですが」

 

「此度の我は特別気分がよくてな。貴様のような怪物とでも言の葉を交わすくらいは赦してやろうともさ」

 

「そうですか。・・・気まぐれなのですね、貴方は」

 

 

呆れたように首をふる

 

すると

 

「クールビューティー!クールビューティーだよあなた!」

 

「・・・はい?」

 

「すらりとして、とても綺麗!召喚されてくれてありがとう!私立香!リッカってよんで!」

 

握手を求める、マスターリッカ

 

 

「・・・」

 

ちらり、とオルガマリーをみやる

 

「?な、なに?」

 

「――いいえ。どうやら、ここは働き甲斐がありそうです」

 

再びリッカを見やり、握手に応じる

 

「宜しく、リッカ。貴女たちは私が助けてあげましょう・・・」

 

「ほんと!?わぁい!」

 

ぺろり、としたなめずりをしたのを、リッカは気付かなかったが・・・

 

 

「蛇に縁があるマスターよ。・・・切りたくなってきたな」

 

「えっ!!?」

 

「嘘だ、泣くな。さぁ実質ラストだ。ランダム召喚は如何に・・・?」

 

召喚サークルを発動させ、光を立ち上らせる

 

現れたのは・・・

 

「――私はマルタ、ただのマルタです」

 

 

「「「――――!!!」」」

 

一部スタッフに激震が走った

 

十字架をかかげた、完璧なひと

 

――それは確かに、自分達を導いてくれた・・・

 

 

「きっと、世界を――」

 

「「「「拳の聖女が降臨なされたぞ――――!!!」」」」

 

 

「ぶはっ――――!!!」

 

盛大に吹き出すマルタ

 

 

「は、ちょ、は!?なんで拳なんて知って・・・ンン、ご存じなのですか?」

 

「「「「「それが貴女の祈りだからです!」」」」」

 

「意味わかんないっての――!?」

 

 

「聖マルタの気配が!!――――あ、あぁ・・・――――」

 

ふらふらとマルタに歩みより、がっくりと膝まずくジャンヌ

 

「ちょ、ジャンヌ?ジャンヌよね貴女?一体どうし――」

 

「聖マルタ・・・――いえ、師匠――!」

 

胸に手を合わせ、マルタに祈りを捧げるジャンヌ

 

「お逢いしとう――ございました・・・――!!」

 

「え、ちょ、ま・・・えぇ・・・!?」

 

「ありがとう、聖マルタ!貴女の教えが、貴女の祈りが・・・フランスを救ったのです・・・!」

 

「や、ちょ、まって?あの、話が見えてこないんだけど・・・」

 

「貴女に出逢えたこの日に感謝を!さぁ皆さん!皆で聖マルタを称えましょう!皆さん、フランスの救世主を胴上げです!」

 

「「「「「はい!!!」」」」」

 

 

「ちょちょ、ま、はぁ――――!!?」

 

「「「「「囲め――――!!」」」」」

 

一瞬でかこまれ

 

「せーの!」

 

「「「「「「ハレルヤー!!主よ、ハレルヤー!!」」」」」」

 

高く、何度も胴上げされるマルタ

 

「ワケわかんないんだけど――――!!!?」

 

「称えましょう!称えましょう!フランスの救世主を称えましょう!ハレルヤー!ハレルヤー!」

 

「「「ハレルヤー!拳の聖女、ハレルヤー!」」」

 

「だからその拳のってやめろって――い、いえお止めになってか下ろしなさいよ――!!」

 

「ハレルヤー!」

 

「マシュ!私達も!」

「はい!先輩!」

 

メンバーたちも、一緒に胴上げをしに向かう

 

 

「――ふん。口喧しい聖女がまた増えおったわ。今回は征服王めも太陽のも参じなかったか」

 

呟き、玉座から立ち上がり召喚サークルに向かう

 

 

契約をマスターに写した上で、召喚サークルを起動する

 

 

放たれる、そして収束する光

 

そして、そこにいたのは

 

「――また逢えましたわね、ゴージャス様?貴重な機会を、私なんかに使ってよろしかったのかしら?」

 

「構わぬ。貴様は我の夜枷に名乗りを挙げた豪胆な女だ。遊ばせておくには惜しい故な」

 

 

――そこには

 

「ありがとう。素敵な王様。そんな貴方が大好きよ?」

 

――無銘が願い、無銘が救った運命が

 

「これから宜しくお願いしますわ?ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

確かな形として、結実していた




「私闘は禁ずる。座して天命を待て」 



「・・・フン」
「むぅ、先を越されちまったなぁ。仕方あるまい。まだちぃと待つとするか。あの金ぴかを冷やかしに行きたかったがなぁ・・・」


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召喚――三騎士編・ランサーの巻

「リゾートねぇ。ま、俺の出番はねぇかな?幸運ねぇしな」

「聴くがよい。召喚は汝の縁を指し示した」

「マジかよお前」

「人理の台、縁を結ぶか――通るがよい」

「マジかよお前」

「・・・そこに落ちていた、血塗れの整理券があった。当りと書かれているが、返却しよう」

「通るがよい」

「そうか」


「待たせたな者共!!いや待っていたのは我だが!本命ガチャ、三騎士である!」

 

 

バァンと立ち上がる器。まるでテンションが違う・・・どれだけ楽しみだったんだ・・・

 

 

「ギル、やる気だね!」

 

「無論だ!三騎士とはもっともセイバーが生息されるクラス!我のコレクター!三回召喚!これで全滅は有り得まい!爆死を期待する部員どもよ!精々ワインを腐らせよ!勝つぞマスター!この戦い我等の勝利だ!」

 

 

「もちろん!いぇーい!!」

 

――アーチャーにもセイバーっているの!?アーサー何者!?

 

 

「まぁ、無事を祈ってるよ・・・」

「来るかしら・・・あのときあった、冷たい騎士王が来たら私、平静でいられる自信がないわ・・・」

 

「ま、まぁ、貴重な戦力なのは間違いないですから!」

 

「銅鑼をならせ、開幕といこう!――さぁ、召喚せよ!」

 

声に呼応し、召喚サークルが放たれる。回転し、広がり、光が満たす

 

 

「ランサーとはどのようなクラスか、だと?とかく地味だ!華がない!それと槍が当たらぬ!以上だ!我の所感はそんなものよ!」

 

 

「あと、ものすごく恵まれないイメージが・・・聖杯戦争で招かれた際にはいつも自害してるって言うし・・・」

 

「ランサーが死ぬの!?」

「まるで人でなしです!」

 

「ふはははは!大体合っているぞ!――さぁこい!」

 

光が収まり、現れたのは

 

 

「サーヴァント!ランサー!!真名、レオニダス!!ここに見参ッ!!」

 

「筋肉、だとッ――!」

 

「スパルタの王、レオニダス一世!脳筋の国、スパルタ教育の語源となった国の王か!300人のスパルタ兵で何万ものペルシャ兵を食い止めたテルモピュライの戦いはあまりにも有名だ!」

 

 

――スパルタ教育・・・聞いたことがある。厳しい教育方針をそういうとか

 

「――ま、まぁ良いわ。守勢に長けた、という点では上々だ。マシュ!」

 

「は、はい!」

 

「こやつから守勢を学べ。必ず貴様の血肉になろうよ」

 

「――はい!宜しくお願いいたします!レオニダス王!」

 

「いやはや、ご丁寧に。こちらこそ、盾のよしみで宜しくお願いいたします」

 

「――時に貴方は英雄王とお見受けいたします!私レオニダスは、この頭脳を生かしこのカルデアの経理を担当すべきだと思うのですが、如何に!?」

 

「良かろう。その知識と頭脳を、存分に生かすがよい」

 

「ははっ!――あぁ、スパルタを誤解することなく、知識を評価してくださるとは。貴方はまこと、よき王だ」

 

「貴様らの脳筋と呼ばれる所以は結果のみだ。そこに至るまでの思考と試行錯誤は計算され抜かれたもの。でなければ貴様の偉業は有り得まい。劣勢と苦境を前に冴え渡るその頭脳、今のカルデアの状況に最適であろうよ」

 

「――惜しみ無い称賛、有り難く。期待には必ずや答えましょう!マスター!!宜しくお願いします」

 

「あいあむスパルタ!」

 

「先輩!?」

 

「次!次だ!回れサークル、エアの如く!」

 

 

ぱちんと指をならし、召喚サークルが回りだす

 

 

「いやぁ華やかになってきたなぁカルデアも!また建築とかするのかい?王様?」

 

「不満と不便の声が沸いたらな。我自らは概ね納得している。あとは外部の声だろうよ」

 

 

「また広がるの!?楽しみ!」

 

「マリーめは言ってくるであろうか・・・そら来るぞ!」

 

光が収まり、現れたのは――

 

「よう!サーヴァント・クー・フーリン、召喚に応「猟犬貴様――――――――!!!!」

 

「うぉっ――!?」

 

 

器が持っていた容器を力のかぎりクー・フーリンにむけて叩きつける

 

――何を!?乱心か英雄王!?

 

「何しやがるテメェ!!」

 

「どの面を!どの面を下げて今更姿を晒したのだ戌めが!!肝心な時に居留守を決め込みおって!!貴様が、貴様がおらぬせいで我がどのような責め苦を受けたと思うのだこの戌畜生が――!!」

 

「なんの話しだテメェ!!つかお前がここの元締めかよ!!」

 

「貴様さえ――貴様さえいてくれたのならば――我はあんな、あのような責め苦を(麻婆的な意味で)・・・――この世総ての辛味(ルチフェロなりしサタン風味的な意味で)を味わうこともなかったのだ――!!」

 

「・・・お、おう・・・なんつーか、その。・・・悪かったわ・・・」

 

涙を流しているのは、残った辛味ゆえだと思いたい

 

「その謝罪、忘れるなよ!!貴様の器用さは知っている!存分に我等の役に立て!よいな、貴様はカルデアから離れるのは許さん!最後の最期まで残れ!よいな!よいな!?」

 

「――お前さんが俺に期待とはね。見ない間に随分と雰囲気が柔らかくなったじゃねぇか」

 

 

「当然だ!貴様には期待している!!(身代わり的な意味で)」

「任せとけ!赤枝の騎士に恥じねぇ活躍を見せてやるよ!(戦力的な意味で)」

 

 

――なんだか、致命的にすれ違っているような気がするのは気のせいだろうか・・・

 

 

「青タイツニキ!青タイツニキだ!ランサーはタイツなんだね!」

 

「それが貴様のマスターだ。挨拶くらいはしておけ」

 

「ん、おう!宜しくな嬢ちゃん!ほいっと」

 

「うひゃ!?」

 

「んー、やっぱガキだな、ハハハハ!」

 

「せ、セクハラはダメですクー・フーリンさん!」

 

「悪い悪い、随分とご機嫌な事があったもんでよ!ま、ヨロシク頼むわ!」

 

「あ、あと贋作者もいるぞ」

 

「ウッソだろお前」

 

「次!ラストだ!精々愉しませよ!」

 

「レオニダスにクー・フーリン!こんな面子を越えてくるランサーなんてそういないさ!ウイニングランだね!大勝利だ!」

 

「たわけ!我の本命は未だ影すら見せておらぬわ!」

 

――ランサーでセイバーを期待するという王の思考に、ネームレススピリットは理解が追い付きませんぞ王よ・・・

 

「誰が来るかな!誰が来るかな!?」

 

「さぁ現れよ!精々並英霊であろうがな!」

 

現れたのは――

 

「サーヴァント・ランサー。真名、カルナという。宜しく頼む」

 

暗中に輝けし黄金のような輝きを称えた、青年のランサーが顕現していた

 

「カルナだって――――!?押しも押されぬインド神話の大英雄だ!凄いぞ、もうランサーは完成しちゃったんじゃないかな!?」

 

「こんにちは!私、リッカです!」

 

「カルナだ。気を遣わなくていい――気軽に接してくれ」

 

「うん!」

 

「よもや別の太陽を目の当たりにするとはな。施しの英雄よ。相も変わらず貧相よな」

 

「英雄王――――そうか。今の貴方は、仕えるに値するようだ」

 

まっすぐ向けられる視線。――この英雄には、あらゆる欺瞞や虚飾が通じない――そんな確信があった

 

「無論だ、励めよカルナ。喋る肉塊に教授された言を努忘れるな」

 

「あぁ。俺に貴方の庇護は無用だが――俺は貴方を信頼しよう。そして、このマスターたちもだ」

 

「それでよい。――ランサーの首尾は上々だ!次に往くぞ!次はアーチャーだ!!」

 

 

「アーチャー・・・か」

 

 

「どうしたの?マリー」

 

「ううん。――私には、思い入れのあるクラスだから」

 

そういって笑うオルガマリーの視線は

 

「・・・今は、ゴージャスだけれどね」

 

英雄王に、向けられていた

 

 




「儂の出番は――まだ先か。いいなーバカ弟子いいなー」


「座して待て、年長者の務めなり」

「ぐぬ――――!!む、無遠慮な物言いを――!」


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召喚――三騎士編・アーチャーの巻

「げ・・・当たっちまったよ。運試しに引いたらあたっちまいましたよ・・・あー英雄だらけの場所とか考えたくもねー。リゾートに興味はあっけどやめやめ!知らんぷり決めてマントで隠れてやりすご――」

「働け」

「マントが――!!はいはい解りました行きます行きます!」

「当たりだ!通してくれ!私は子供を守る!」

「通るがよい」

「当たったんだ。じいさん、悪いがいいかい?」

「通るがよい」

「あぁ・・・いきたくねぇ・・・」

「働け」

「解りました!解りましたよ!」


「アーチャー!そのクラスの偉容などもはや語るまでもあるまい!最も強く、最も気高く、最も輝く最高のクラス!それこそがアーチャー!我が名乗っていたクラスだ!」

 

 

熱弁する英雄王。――アーチャーか、懐かしいな。英雄王がアーチャーたる所以に大変な衝撃を受けたのを覚えている。財をやたらめったら投げまくるからアーチャーとは、なんともアバウトな取り決めもあったものだ

 

「よーくしってる!でも今のギルはゴージャスだよね?」

 

「そうとも。ゴージャスになるにはまずアーチャーにならねばならん!アーチャーになれるもののみがゴージャスとなる資格を得る!つまり我しかゴージャスになれんということだ!世界は不平等よな!ふはは!」

 

「ゴージャス・・・本当にクラスに登録とかされるのかなぁ?永久欠番になりそう・・・」

 

「流石ゴージャス!カッコいい!」

 

「であろう、であろう!どうしたマリー、熱のこもった目で見つめおって!」

 

「いえ。アーチャー、好きですから」

 

「だろうな!ふはは!では往くぞ!召喚の時間だ!」

 

召喚サークルを回し、光が満たされる

 

 

――さて、どんなアーチャー(弓矢ではない)が出たものか。確信した。弓矢を使うアーチャーは邪道なのだと

 

「強いアーチャーはギルがいたし、ゴージャスだし・・・素朴なアーチャーとかみたいなぁ」

 

呟くと同時に、光が収まる

 

現れたのは

 

「へいへい、呼ばれたからには働きますよっと」

 

緑色のマントで身を隠した青年のアーチャーだった

 

「緑アーチャー!緑茶!?」

 

「緑茶はねーでしょ緑茶は・・・ロビン・フッド。以後お見知りおきを。しがないアーチャーですが今後とも・・・って、げ!」

 

驚愕に目を見張るロビン・フッド。・・・ロビン・フッド。確か、弾圧に立ち上がった義賊、だったか

 

「なんだ、ネズミではないか。このカルデアにとうとうネズミが迷いこむとは。全く・・・貴様のような品格を落としかねんネズミをアーチャーと呼ぶのは大いに憚られるが・・・」

やれやれ、と頬に手をつく器

 

「オタク、マジで王様やってたのかよ・・・面白半分で召喚に応じるんじゃなかったぜまったく・・・」

 

「まぁ良かろう。特に許す。減らず口も健在で何よりだ。ここは貴様が粋がる環境も虚勢を張る必要もない。腹の奥底に抱えた願いの下、皐月の王として陳腐な弓を振るうがいい」

 

「――努力はさせてもらいますよっと。そんじゃ、なに?噂のリゾートっての、確かめさせてもらっていいかい?」

 

「好きにしろ。召喚は続く、疾く消えるが良かろう」

 

「よろしくね!正義の義賊さん!私がマスターになっちゃうけど!」

「へいへい、よろしくよろしく。んじゃまた、後でな」

 

ふらふらと手をあげ、ロビン・フッドは立ち去っていった

 

「暗雲立ち込めてきたな・・・アレか。我に釣り合いを取らせる為のガチャの抑止力か?」

 

「単純に引きがアレだっただけじゃない?」

 

「まぁいい。ネズミ取りを後で設置せねば。次だ!招け!」

 

 

英雄の召喚は続く。光が満たされ、弾け、スパークし、やがて収まる

 

 

「今度はそれなりに品格のある者に出会いたいものだな。いや、我に比べたら有象無象だが。せめてみなりが整っていなくては話しにならん。最低限のマナーであろう」

 

「君の審美眼に叶うのって本当に限られるんじゃないかな。高嶺の華しか見ないタイプ?」

 

「当然だ。野に咲く華は幼少の我が好もうがな」

 

現れたのは――

 

 

「汝がマスターか?宜しく頼む」

 

緑色の衣装、生えた耳、弓を握る麗しのアーチャーが現れた

 

「ほう。同じ緑でもこうも違うか。流石は美の追求には一家言あるギリシャ。それなりに見れるではないか」

 

「あ!キャットにボコられた人!」

 

「何を――く!頭が・・・!獣、犬とか猫とか・・・グッモーニン・・・ああっ!」

 

「大丈夫!?」

 

 

「体調が優れぬようだ。キャットに看させよ」

 

「呼んだかゴージャス」

 

「なっ!まて、よせ!その獣を私に近づけるな!」

 

「おぉ、麗しのアタランテ、肩を並べるキャットはうれしい。往くぞ、キャットとマントのおもてなしが食堂で始まっているのだナ」

 

「連れていけ」

 

「止めろぉおおぉ――!!」

 

ずるずると、ケモノにアタランテは連れられていった

 

「アタランテさーん・・・」

 

「子守りが趣味であったな。本と怨霊の目附をさせておくか。――可もなく不可もなく、だな。ラストだ」

 

パチン、と指をならす。呼応して、召喚サークルが回される

 

「せめてあと一人は格の保ったアーチャーを見たいものよな・・・」

 

呆れながら頬杖をつく器

 

・・・おもうのだが、並の英雄、とは矛盾してないだろうか。英雄になったなら、等しく素晴らしい筈では・・・?英雄の基準とは難しい

 

「私は、どんなアーチャーでも好きよ」

 

「マリー寛容!」

 

「もう、常識とかは忘れることにしたわ」

 

光が満たされる、やがて収まる

 

現れたのは

 

「東方の大英雄、アーラシュとは俺の事だ!ま、よろしくな」

 

赤い弓、浅黒い肌をした快活な、アーラシュと名乗る男だった

 

「あんたが英雄王かい?三流サーヴァントで申し訳無いが、戦列に加えさせてくれや」

 

「構わぬ、許すぞ勇者。だが貴様の宝具は禁ずる。霊基の確保が叶うまではな」

 

 

――宝具を禁ずる?それでどうやって勝敗を決するというのか?

 

アーラシュ・・・聞いたことない名前だ・・・

 

「あいよ。気を遣わせちまって悪いな。さて、俺のマスターは・・・」

 

「は、はい!」

 

「そう身構えなさんな。俺はお前についてくぜ。お前の魂が気に入った。俺がきっちり護ってやるよ」

 

「――カッコいい・・・よく知らないけど・・・」

 

「リッカ!」

 

「はは、まぁ無理もねぇさ。ゆっくり調べてくれ」

 

「――アーラシュ・カマンガー・・・スゴい、スゴい人が来たなぁ・・・!」

 

「じゃ、俺もカルデア回ってくるわ。用があったら呼んでくれ。またな、王様と一行さん」

 

ニカッと笑いながら部屋をあとにしていくアーラシュなのであった

 

「――英雄王」

 

オルガマリーが顔をあげる

 

「うむ――舞台は整った!」

 

玉座から勢いよく立ち上がる

 

「セイバーの召喚を懸けた戦い――此を決戦という!!」

 

英雄王の覚悟が場を震わす

 

「力を貸せ、マリー!お前の呼符も動員する!」

 

「解りました!お使いください!」

 

黄金の波紋に手を伸ばし、虹色の符を二枚取り出す

 

「では往くぞ――召喚最終戦!クラスセイバー!開催をここに宣言する!!」

 

――王の嫁(了承なし)を迎える戦いが、火蓋をきる――!




「ワシは!?第六天魔王がいないとかカルデアマジか!?うっそじゃろお前うっそじゃろ!?え?イベント配布だから無理?こんなペースでいつぐだぐだイベントまでこぎ着けるつもりじゃうつけめ――――!!!」

「『イシュタルは未来永劫参入を禁ずる』・・・あの金ぴか――――!!いつか絶対行ってやるんだからね――!!」


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召喚――天に在りても地に在りても届かぬモノ――

エミヤかグランドバトルながしてご覧ください


「セイバー・・・このクラスに対して、最早多くは語るまい」

 

 

ゆっくりと、召喚サークルに歩み寄るギルガメッシュ

 

――うん。耳にたこができる程聞いた。この器の想いを

 

「我の戦いは、このために――余計な前フリは抜きでいく。マリー!」

 

 

マリーが聖杯にて、高純度の呼符を産み出す

 

「お捧げいたします、ギル・・・!武運を!」

 

「うむ――往くぞ!!マスター!まずは触媒だ、アレを呼び出せ!!」

 

「へいっ!!」

 

取り出したるはファヴニールの牙と鱗。触媒となりし素材を召喚サークルに設置する!

 

 

「解りきった結果よ!さぁ応えよ――!」

 

召喚サークルが回転し、収まる。

 

現れたのは――

 

「――待たせたな、英雄王」

 

黒き、鎧と剣を掲げし古今無双の竜殺し――

 

「――推参、大儀である」

 

大英雄、ジークフリートが降臨した――

 

「すごいな触媒!やったぞ、セイバー最強クラスをもうゲットだ!」

 

「わーい!ジークフリートー!またよろしくね!」

 

「此方こそ。竜なら任せてくれ。――まだ、戦いは続くらしいな」 

 

「あぁ。挨拶は後だ。退け」

 

「――武運を」

 

それだけ告げて、ジークフリートは退室していった

 

 

「セイバー・・・――我が想いに応えよ!」

 

オルガマリーの呼符を、念じて叩き付ける

 

「アーサー!アーサー!」

 

「今までにない気迫です――!」

 

「最早怖い!何が彼を駆り立てるんだ!?」

 

召喚サークルが回転し、光を放つ

 

 

「――届かぬ理想(ほし)を目指し、足掻く姿こそ、地上における唯一の星である」

 

やがて、光が収まる

 

「星とは天にあっても地にあっても届かぬもの」

 

現れたのは――

 

 

「セイバーよ・・・――だから貴様は、美しいのだ――」

 

 

「イカしたポエムしてんじゃーん!はいはーい!サーヴァント・セイバー!召喚されて超参上!みたいなー?☆」

 

「ぬわぁあぁああぁあ!!!」

 

狐耳をはやし、垢抜けた感じの快活なセイバー

がピースを送る

 

 

 

片ひざをくっする英雄王

 

――まだだ、まだ終わった訳じゃない!貴方の情熱はきっと届く!多分!

 

 

「狐とはッ――我のカルデアをなんと心得るッ――!!」

 

 

「かわいいいぃいぃい!!」

 

セイバーに抱きつくリッカ

 

「お?なになに?強くて可愛い私を呼べてマジ感激しちゃってるカンジ?」

 

「マジ大感激!よろしく!私はリッカ!JK!セイバー!」

 

「あははっ、そのノリさいこー!おっけ、じゃあアタシとマスターはギャル友ってことで!そこのなすびとオレンジも、アタシのマブダチ!おっけー?」

 

「は、はい!」

「狐耳、日本、剣、女性――鈴鹿御前ね」

 

「・・・へー、賢いじゃん、インテリ系はもてるっしょ!ネイルとかデコとかバリ面倒みたげるからメイクアップしかないっしょ!」

 

「みたいなー!」

「ど、どこの言語でしょうか?」

 

「うわぁ、このテンプレートな感じ、逆に目新しいな・・・」

 

女子バナに花を咲かせる皆を、器が一喝する

 

「えぇい、宇宙言語は余所でやらぬか!我はまだ負けておらぬ!!さっさとカルデアの地理を掴め!」

 

「とと、名前教えて?」

 

「マシュ・キリエライトと申します」

 

「オルガマリー・アニムスフィアよ」

 

「リッカにマシュマシュ、おるまりね。おっけー!アタシはスズカでよろ!じゃ、後でパリピな女子ばなっしょ!ばいばーい!ノシ」

 

朗らかに去っていくセイバー

 

――英霊?ギャルじゃなくて?

 

「星4はラストか・・・これであわよくば――!」

 

呼符を使い、サークルが回る

 

「奇跡よ起きよ!我に微笑め――!!」

 

やがて収まり

 

現れたのは――

 

「私はシュヴァリエ・デオン。フランス王妃と君とを守る白百合の騎士!」

 

華やかさと儚さを湛えた、麗しきセイバーであった

 

 

「――――ッぐ、ぉ――のれ――・・・!!」

 

案ずるな、致命傷だ。たたらをふんでよろける器

 

「綺麗なセイバーだ――!!」

 

「やぁ。君がマスターだね。運命のもと、君に刃を委ねよう。こちらの方は・・・」

 

「あぁ、気にしないで!センサーが、ね」

 

「?」

 

「案内します、さあ、こっちへ!」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「――――・・・・・・・・・」

 

「え、英雄王・・・」

 

沈黙する器を、泣きそうな顔で見つめるオルガマリー

 

そっと、頭に手をおき撫でてやる

 

 

「――そのような顔をするな・・・お前に、何一つ責はない」

 

「ですが・・・」

 

「ガチャとは自業自得、喜びも虚しさも己が宿痾よ。――よく英霊を呼び寄せた。大儀だぞ」

 

「ギル・・・!」

 

――この決戦はガチャである。別にしにかけていてもシリアスでは、ない

 

「後は、我の仕事よ!切り札をきる!――星5確定チケット!今こそ発動せよ――!!」

 

虹色の呼符を叩き付ける。虹色の光が巻き起こり、部屋を満たす

 

「一の刃よ――!!我が本懐に――」

 

今、光が――

 

「――星に、我が手を届かせよ――!!」

 

収まり、現れしは――!!

 

 

「――そなたの嫁への想い、確かに受け取った!ならば相応しき装いを纏うは皇帝の流儀!」

 

花嫁衣装を纏った、純白のセイバー――

 

 

「名を、嫁セイバー!あるいはネロ・ブライドと呼ぶがよい――!」

 

「可愛いいいいい!!」

 

マスターがネロ・ブライドにタックルする

 

「あっ、こら情熱的だが無礼ではないか~!余への求愛は優しくだぞ、優しく!」

 

「かわいいいいいいい!!!」

 

「ネロって、あのネロかい・・・!?マジで!?」

 

「うむ!そのネロだ!しかし麗しき者がこんなに・・・!感謝するぞ英雄王!よくぞ余を招き寄せた!」

 

「――まだだ――」

 

「む?」

 

 

――王は言った

 

「まだ我の戦いは――」

 

――ガチャとは

 

「終わっておらぬわ――!!」

 

――目当てが出ねば、爆死であると――!!

 

虹色の呼符を、叩き付ける――!!

 

「よ、余では不満だと申すのか――!?余を呼び出しておいて――!?」

 

「不満ではない!狙いが貴様ではないだけだ――!!」 

 

吠える英雄王――やがて光が満たされる――!

 

 

「あえて、あえて口にしよう!――セイバァアァアァア!!貴様が好きだァアァア!!」

 

 

絶叫する英雄王

 

――狂おしいまでの叫びで、こちらも涙が込み上げてくる――!

 

 

「お前が――欲しい――!!!!!」

 

 

――光が…やがて――

 

――そして!

 

 

「貴方のセイバーへの想い、確かに聞き届けました!」

 

「!!!」

 

光の中から声が響く

 

「その召喚に応じ、姿を表しましょう!」

 

明るい、朗らかな声が――!

 

「その声――その声!ようやく、ようやく来たのだな――我の――!」

 

「えぇ!私こそ唯一最強のセイバー!あらゆるセイバーを過去にし、増えすぎたセイバーを殲滅するセイバーの中のセイバー!」

 

光が収まる――

 

待ちわびた、騎