死ぬ気で楽して勝ってやる (聪明猴子)
しおりを挟む

死ぬ気で楽して勝ってやる

!注意!

この作品は、デバイスや他色々を死ぬ気で開発してDSAAで楽に勝つ主人公と、鮮烈な少女達の交流を綴った話です。
シリアスも少しありますが基本日常ギャグに含まれると思います。

次にあらすじにあります通り、主人公は魔導師ランクは低いですが天才です。
なのでAMFとか魔力炉を再現、使用しております。
「は?魔力炉再現とか舐め過ぎ」と思われる人は読まない方が良いでしょう。

第三に結構主人公が外道です。
マッドサイエンティストです。
外道系主人公が嫌な人はブラウザバックお願い申し上げます。

最後に低評価下さるのなら、どこがどう不快で面白くないのかコメントして下さい。
でないと直しようがありません。
※ただの誹謗中傷なら無言低評価でも構いません。

感想、評価お待ちしております。



「ねえコロナ、あの人が誰か知ってる?」

 

「私は知らない」

 

「リオは?」

 

「なんか見たことあるような、ないような」

 

「何してるのかな?」

 

「昨日からジムに来てるのに、体も動かさないでずーっと見てるだけなんだよね」

 

「もしかしてストーカーとか?」

 

「それはないと思うんだぁ」

 

「何でヴィヴィオはそう思うの?」

 

「う~ん、勘かな!?」

 

「なんじゃそりゃ~」

 

「おい、そろそろ休憩終わりだぞ。何してんだ?」

 

「ノーヴェはあの人知らない?」

 

「あん?…アイツはエレク・クレイヴェルじゃねぇか!?何でこんな所に!?」

 

「エレク・クレイヴェル?」

 

「エレク・クレイヴェル、エレク・クレイヴェル………あっ、それって最低王者(ワーストキング)の!?」

 

最低王者(ワーストキング)?」

 

「えっ!?知らないの?最低王者(ワーストキング)だよ。あのDSAAの男子部門の方で優勝してる」

 

「う~ん、知らないや。そんなに強い人なの?」

 

「いや、雑魚だよ雑魚。魔導師ランクもCが精々の雑魚」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ご紹介に預かりましたエレク・クレイヴェルですよ」

 

「ええええぇ!?何で!?」

 

「そんなワーストキング、ワーストキング叫んでたら聞こえるわ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「まあ良いよ、嘘じゃねぇしな」

 

「失礼かもしれないんですが、それでどうやって優勝したんですか?」

 

「あぁ、ん~となぁ、映像あるけど見るか?」

 

「見ます」

 

そう言ったヴィヴィオの前に端末を投げ渡す。

 

「そっちのコーチさんもどうですか?」

 

「いや、あたしは知ってるし良いよ」

 

端末が決勝戦らしき映像を移す。

 

らしきというのは、決勝戦だというのにブーイングの嵐なのだ。

 

歓声かと聞き間違えるかのようなブーイング。

 

そんなステージの上で不敵に笑うエレク。

 

異常なのは、観客だけではない。

 

エレクのデバイス、それがまるで砲台のようにデカイ。

 

デバイスと言うには余りに巨大な砲身を携えた自律浮遊する機構。

 

エレクの肩の上でぴたりと静止している。

 

『卑怯者が‼』

 

決勝戦の相手と思しき大剣使いの選手が吠える。

 

『はぁ?卑怯?DSAAの公式ルールには重量制限なんかないこと知らねぇの?俺のデバイスが例え全長8メートル、総重量420キロ、内部に自動的に照準、攻撃してくれるプログラムが存在し、ほぼ全てのエネルギーを内部のバッテリーで賄えようが、これは俺のデバイスなんだよ。 ちゃんとルール読めよ間抜け。ルールに抵触してないってことは使っても反則にはならねぇってことなんだぜ。そして、そんなお前に親切心で言ってやる。このデバイスは単体でもAAAランク相当の魔導師葬れる優秀なヤツなんだわ。だから降参した方が身の為だぜ』

 

そう言うが早いか、砲身が光を放つ。

 

『吹き飛べ怠け者』

 

そして明らかにチャージ時間と威力の釣り合いが取れていない砲撃がリングを飲み込む。

 

一瞬で決着が着いた。

 

試合時間会話を含め僅か十秒。

 

試合はエレクの圧倒的勝利で幕を閉じた。

 

「「えぇ~!?」」

 

「そっ。デバイスの性能でのごり押し」

 

「えっ!?ちょっとこれ良いんですか!?」

 

「勿論。俺はルールには抵触してない」

 

「DSAAの公式ルールに、デバイスの重量制限と魔力以外のエネルギーを使用するデバイスの禁止を規定する項目が追加されたけどな」

 

「だから今やると出場できない」

 

「ええ~」

 

「その時さえ良ければ良いんだよ」

 

その後も動画は続く。

 

映像は、前よりは小さいが重量制限ギリギリでやはり通常よりも大きめの砲台型デバイスを持ち対戦相手を蹴散らすエレクを映し出す。

 

前回同様、とてもじゃないがCランクの魔導師の魔法とは思えない砲撃魔法をまるで雨のように撃ち出している。

 

「えっ?エレクさんってCランク相当なんですよね」

 

「ふふっ、見てな」

 

そんな疑問に答えるかのように、画面の中で前年度ボコられていた大剣使いの選手が叫ぶ。

 

『がっ、今度は何のインチキだ!?クレイヴェル‼』

 

なんとかプロテクションを張り耐えているが、叫ぶのも辛いようで、長くは持ちそうもない。

 

『何のことだぁ!?』

 

『決まってんだろ‼おめぇがこんな馬鹿魔力放出できる筈ねぇだろ!!』

 

『はははは、それじゃあ種明かしの時間だ。こんな馬鹿魔力俺にある筈ねぇってツッコミ大正解だ。じゃあ何で使えるかって?ないなら引っ張ってくれば良い。そう、魔力炉だ。かの大魔導師プレシア ・テスタロッサの作った魔力炉ヒュードラを改良、小型化したものだ。出力は本家に大分劣るが、DSAAで使うんなら十分だ』

 

『嘘だろぉおぉおおおおぉ』

 

遂に圧倒的魔力のごり押しに耐えきれず大剣の選手が吹き飛ぶ。

 

DSAAの公式ルールに、 魔力供給を行う機器を禁止する項目が追加された瞬間だった。

 

「「…………」」

 

「ヴィヴィオ!?コロナ!?」

 

「ままま、まま魔力ろぉ!?」

 

「そっ」

 

「て、天才ですか!?」

 

「俺が天才ってのは肯定するが、あれはそんな大した物じゃねぇよ。あの魔力炉は二日位で自壊しちまうような失敗作だ。だからさっきみたいな試合とかで二、三戦して使い捨てるしか使い道がない。勿論俺の魔力炉では時の庭園や傀儡兵を動かしていたような出力は出せんしな。あれを継続的に運用するにはまだまだ時間が必要だよ」

 

「それでも十分すごいですけど」

 

「俺的にはこの次の回の方が傑作だと思うぞ」

 

ヴィヴィオとコロナはその言葉に驚き、リオとノーヴェは思い出して苦笑している。

 

そして 明らかに怪しい立方体のデバイスを持つエレクと大剣の選手が三度向かい合う。

 

彼だって相当の実力者だろうに、雑魚キャラみたいに捻り潰されて可哀想だった。

 

『今回こそ勝たせて貰うぜ。お前が優勝することはねぇ‼しかし油断はしねぇ、全力で潰させて貰うぜ』

 

結果を知っているヴィヴィオ達には一層哀れに思える宣言だった。

 

『ウォオオオォオオォオオオオ』

 

雄叫びを挙げて大剣を振り回す。

 

そして遠心力を乗せて斜め上段から切りつける。

 

『スターダストインパクトォオオォ』

 

と大技らしき一撃は、エレクの持つ箱形のデバイスが壁に変形して防がれる。

 

『はっはっはっ、勝ったな』

 

恥ずかしくなるような勝利宣言であった。

 

『そのお前お得意のデバイス、そんな形じゃ攻撃なんてできないし、防御に特化しててもぶち抜けない程じゃない。恐らくあと三、四撃で壊れるな』

 

『おいおい、くっちゃべってていいのかぁ。油断しないんだろ』

 

『お前にトドメをさせるなんて快感だぜ~』

 

そう言って爆発した。

 

『そのガラス玉みてーな目開けてよく見てみな』

 

その言葉でカメラが大剣の選手を拡大すると、虫型の小さな機械が大量に群がっていた。

 

『その全長1mmにも満たねぇ虫型のロボットはなぁ、その全てがAIを搭載した自律行動型デバイス‼逃げ場はどこにもねぇよ‼数の暴力で死にな‼」

 

そして彼は爆発した。

 

さっきのが霞むくらい見事な爆発だった。

 

二個以上のデバイス使用及び、三個以上に分裂する武器の形態を禁止する項目が追加された。

 

「なっ?」

 

「なっじゃないですよ。外道です‼あんな戦い方外道ですよぉ」

 

「ルールには抵触してない、コストがヤバイから普通では使えねぇけどな」

 

「ぐっ」

 

そうして最新の映像が流れる。

 

やはり大剣を構える選手と銃型のデバイスを持つエレク。

 

『俺はお前を倒すことでようやく前に進めるのだぁ‼覚悟しろ‼エレク・クレイヴェル』

 

『お前こそ前回同様無様な敗北を味わう覚悟はできているのか!?』

 

『ほざけっ』

 

大剣を構えようとして、失敗した。

 

『今度はどんなインチキ機械だ!?身体強化の魔法が使えねぇ』

 

『俺はお前の言うインチキ機械は使ってねぇ。じゃあ何をしたかって?教えてやるよ。俺のデバイスにはなぁ、四年前ミッドを騒がした狂気の天才ジェイル・スカリエッティの開発した魔法、AMFが組み込まれてる‼俺みてぇに第五世代デバイスを持っている奴じゃなけりゃ、魔法なんざ使えねぇよ‼』

 

『「「は?」」』

 

モニターの声と被る。

 

AMFとは、正式名称をAnti Magilink Fieldと言い、魔力結合、魔力効果発生を無効にするフィールド系の上位魔法。

 

AAAランク魔法防御で、フィールド内では攻撃魔法はもちろん飛行や防御、機動や移動に関する魔法も妨害される。

 

勿論DSAAで使われるような魔法ではない。

 

『そろそろいつものやっとくか。あばよ、吹き飛べ』

 

DSAAの公式ルールに、 AMFの使用を禁止する項目が追加された。

 

「「ええええぇええええぇ」」

 

「あたしも驚いたよ。まさかドクターの発明をDSAAで使うような奴がいるなんて」

 

「うむ、あれの再現には苦労した。デバイスの重量制限に収めることも、AMFの発明も、第五世代のデバイスの開発もしなきゃいけなかったし」

 

「それで何でこんな所にいるんだ?」

 

「そうだった。そこのオッドアイ少女よ魔法光調べさせて」

 

「無理です、嫌です、拒否します」

 

「頼む、金なら払うから」

 

エレク・クレイヴェルは天才である。




DSAAでAMFが使いたい人生だった
AMFってフィールド魔法なんですよね

需要があれば連載するかも


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無限の欲望

「ふふふ、ヴィヴィオ驚くかな」

 

高町なのはは仕事が早めに終わったので、サプライズで娘を迎えにジムに来ていた。

 

四年前から家族になった愛すべき可愛い娘だ。

 

「おい頼むよ、ヴィヴィオ」

 

「無理です、できません」

 

「いや、本当に頼むよ。一時間掛かんないからさぁ」

 

「そういう問題じゃ……」

 

「大丈夫、大丈夫。すぐ済むし、痛くないから。服着替えてちょっと体動かすだけだから」

 

「でも写真とか動画撮るんでしょ?」

 

「大丈夫だって。俺が使うだけだから。絶対にネットに流したりしないから」

 

「えぇ~」

 

「なっ?あっ、それじゃあバイト代三万で」

 

「…………」

 

「わかった、じゃあ時給五万でどう?」

 

「ディバインバスタァアアアアァァア」

 

だからこれも仕方のないことだった。

 

 

 

 

 

「なんてひどぃことぉ、あんまぁりだぁ」

 

「もう、なのはママ‼何でいきなりエレク先輩に魔法なんて撃ったの‼」

 

「ごめんなさい。勘違いでした」

 

ジムには自分のデバイスを抱えて泣きじゃくる少年と、幼女に怒られる大人の女性という謎の光景が繰り広げられていた。

 

哀れエレクは、自分の開発した不意討ち防止用の防御デバイスを貫通されて砲撃を食らったのだ。

 

AA+の魔法も楽々防ぐAMF搭載の自律防御兵装は哀れにもど真ん中をぶち抜かれて機能停止している。

 

断面からは煙が上がり、ひと目でスクラップになっていると分かる。

 

「あんまぁりだぁ、おれがなにをしたっていうんだぁあ」

 

その余りにも衝撃的過ぎる光景にリオもコロナも何て声をかけていいのかわからず、途方に暮れている。

 

「まさか、装備のテスターをしてくれってお願いがこんなことになるなんて……」

 

「ひでぇよぉ、これのかいはつにいくらかかったとおもってるんだよぉ」

 

そのあまりに酷い姿にコロナが見かねて声をかける。

 

「え、エレク先輩元気出して下さい」

 

「コロナはブランゼルが壊れても元気出せんのかよぉ」

 

面倒臭い先輩だった。

 

「テスターなら私がやってあげますから」

 

「リオはヴィヴィオより弱いじゃんかよぉ」

 

失礼な先輩だった。

 

「あの、ごめんね。ちょっと勘違いしちゃって」

 

「なんですかぁそれぇ、俺が犯罪者にでも見えるって言うんですかぁああぁあ」

 

嫌な子供だった。

 

「いいんですよ、どうせ『防御デバイスなのに壊れてるwwwww草生えるwwww』とか思ってるんでしょぉおおおぉお」

 

「そ、そんなことないよ。一瞬とはいえ私の砲撃を防いだんだから十分凄いよ」

 

「一瞬?一瞬?なんだよそれぇええぇ、おれがあれのかいはつにどれだけかけたとおもってんだよぉおおおぉおお」

 

声を荒げて慟哭する様は余りにも哀れで、否応なしに注目を集める。

 

これには流石のなのはも周りにはいないタイプの相手にオロオロとする。

 

加えて、相手は子供で完全にこちらに非があったこともややこしくさせる。

 

「ご、ごめんね。弁償した方が良いよね」

 

「あれは俺の自作だから弁償はできねぇんですよぉおおおぉぉお」

 

「ご、ごめんなさい。でも償えることがあったら言ってね。何でもするから」

 

「ん?今何でもするって言ったよね?」

 

「えっ?」

 

今まで泣いていたのが嘘だったかのように見事な変わり身だった。

 

彼は魔導師よりも忍者に向いているだろう。

 

「そうだなー何してもらおっかなぁー」

 

「えっ?えっ?」

 

「なのはさん強く生きろよ」

 

「えっ?何でノーヴェは手を合わせてんの!?えっちょっ」

 

「頑張って下さい。応援してます」

 

「コロナちゃん!?」

 

「さすがエースオブエース、自ら死地に飛び込むなんて」

 

「リオちゃん!?」

 

「そうだよなぁ~、あのエースオブエースに何でもしてもらえるんだもんなぁ~夢が広がるなぁ~」

 

「えっちょっと待ってぇええぇぇええ」

 

「頑張ってね、なのはママ」

 

「ちょっと待って、皆待って何で私これから死んじゃう感じなの!?」

 

「「「「だってエレク(先輩)だし」」」」

 

「大丈夫ですよ、そんなに変なことはしませんから」

 

「そ、そうだよね。ねっ?」

 

なのはは隣で四人が首をふって、「それはない」と断定しているのを努めて見ないようにする。

 

「はい。………だってなのはさんは管理局の誇る不屈のエースオブエースですから」

 

なのはには見ているこっちが楽しくなりそうなエレクのその笑顔が無性に恐しく見えた。

 

 

 

 

 

魔法少女テスト中………………………………………………

 

 

 

 

 

「ふぅ~、超有意義な時間だった。ディバインバスターも見れたし、あの伝説のACSドライブやスターライトブレイカーまで見られるなんて。今日は何て素晴らしい日なんだ」

 

瞳を輝かせ、先程とは打って変わって喜色満面のエレク。

 

まるでこの世界で自分が一番幸せであるかのように楽しげだ。

 

「ぜぇ……ぜぇ …キツい、キツ過ぎるのぉ」

 

あれから三時間。

 

なのはひたすら魔法を使っていた。

 

エレクの持つ機器を体に着けて魔法を撃つのだ。

 

魔力弾の限界生成数の計測から始まり、デバイスをひっきりなしに変えてディバインバスター等の砲撃を撃ちまくったのだ。

 

「うぅぅ汗だくだよ。まさか一日に三回もスターライトブレイカーを撃つはめになるなんて」

 

なのははここに来たことを悔いていた。

 

何故半休だからと言ってジムになんて来てしまったのか。

 

土曜日なのだから家に帰れば良かったのにと後悔が浮かぶ。

 

「さあなのはさん、これに着替えて」

 

「す、少し休ませて欲しいの」

 

「大丈夫です。だってなのはさんは不屈のエースオブエースですから」

 

「もう無理です」

 

「えっ? 何でもするって言いましたよね?」

 

「それは……」

 

「フォトンランサァアアアアァァア」

 

エレク君は雷に呑み込まれていった。

 

「大丈夫!?なのは、私が助けるから安心して」

 

そこに立つは友の為に立ち上がった執務官。

 

黒いバリアジャケットに黄金の光剣を構える凛々しい女性。

 

「ふぇ、フェイトちゃん……」

 

「うん。なのはは私が守るから」

 

「………夕飯までには帰って来てね。今は四時だから多分八時位になると思うけど」

 

「な、なのは!?」

 

「フェイトちゃんなら大丈夫。だって執務官だから」

 

「なのは!?」

 

「頑張ってね」

 

エレク君のデータベースにプラズマザンバーが追加された。

 

フェイトちゃんの体力は尽きた。




連載する気はありませんでしたが、尊敬する作者様に高評価いただき、書いた。

もしかしたら続くかも知れないけど余り期待はしないでね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

覇王と外道

今回のエレク君は、外道の先輩ジャギ様リスペクトです。


「私絶対に勝ちたい人がいるんです」

 

「ほう、言ってみろ」

 

「アインハルト・ストラトスさんって言うんですけど……その、一度負けてしまって…その時に趣味と遊びの範囲内なら充分強いって」

 

「そうじゃない」

 

「えっ!?」

 

「お前の思い出話なんざ興味ないわ‼ルールと場所と日時だよ」

 

「えっと…魔法はなしの格闘オンリーの一本勝負。五分間の試合で廃棄倉庫区画でやります。勝負は五日後です」

 

「ふむ。身体強化やバリアジャケットはありか?」

 

「アリです。確か大人モードもアリです」

 

「ふむふむ。ならばこれを持っていけぃ」

 

「何ですかこれ?」

 

「覇王絶対に殺すシリーズ四作目、戦闘用強化スーツだ」

 

「えっ!?覇王……殺…す…!?」

 

「ああ。これはあるクソ野郎をぶっ殺す為のシリーズ。それのプロトタイプだ」

 

「な、何で?」

 

「ああそれね。それ聞いちゃうかぁ。仕方ねぇな。何日か前に覇王とか名乗っちゃう中二病の女に会ってね。その時ハイディ・E・S・イングヴァルトとか言うクソ野郎に、ストリートファイト申し込まれてぶちのめされたんだよ。勿論俺は最低限の武装しか持ってなかったし、魔力炉も使わなかったんだけどな。でもムカついたから今はそいつを探してんだよ。次会ったらたっぷりお礼してやるぜ」

 

(ハイディ・E・S・イングヴァルト……アインハルトさんとは違うかな。ストリートファイトとかしそうにないし。覇王って言うから焦っちゃった)

 

「おいヴィヴィオ、聞いてんのか!?」

 

「あ、はい、聞いてます」

 

「それなら良いが」

 

「そっそれで、このスーツは何なんですか?」

 

「よくぞ聞いてくれた。これはAMF搭載の、身体強化もできない奴を科学力と重機の力で一方的にぶちのめすスーツだ」

 

「外道ぉ‼」

 

「貴様相談に乗ってやった優しい先輩に向かって外道だと!?」

 

「外道ですよ‼そんなの勝負にならないじゃないですか‼」

 

「戦闘機人ならば互角に戦えるぞ」

 

「それは狡いですよ‼」

 

「何故だ!?このスーツは 現在の市場には出回っていない優れモノだぞ‼バリアジャケットだと言い張れば良いじゃねぇか‼魔法だってAMF以外は使ってねぇぞ!!」

 

「AMFを使ってるじゃないですか」

 

「あれは防御魔法だからバリアジャケットの一部だ」

 

「とにかく卑怯です」

 

「ぐっ、じゃあAMFを切るが良い。それでも並の奴なら、粉砕、玉砕、大喝采できる性能だ」

 

「違います‼」

 

「何が?」

 

「だからスーツを使うこと自体が卑怯です」

 

「馬っ鹿‼ルールには抵触してねぇって」

 

「仲良くなりたくて試合するんです‼そんなの使ったら友達になれないじゃないですか‼」

 

「でも勝ちたいんだろう?」

 

「うっ」

 

「趣味でも遊びでもなく全力でいけよ。高町家の家訓はいつも全力全壊だろ」

 

「でもなんかそれは、水かけっこで消防車持ってくるようなものかと」

 

「大体なぁ、持てる全力で相手に当たらないと逆に失礼だろ」

 

「はっ‼」

 

天啓を得たかのようにはっとした顔をするヴィヴィオ。

 

「全力でぶつかることで心が通じ合うんだろうが‼」

 

「それは、その通りでした」

 

「わかったかヴィヴィオ、全力全壊だ」

 

「はい」

 

「これから格闘家殺しの必勝法とデバイスを授ける。これを使いこなせればお前の勝利は確定的に明らかだ‼」

 

「押忍」

 

 

 

 

 

「ヴィヴィオ遅いね」

 

「う~ん。遅れるような奴じゃないからもう少しで来ると思うんだけど……」

 

「すいません‼遅れましたか?」

 

「大丈夫だ。時間通り…だっ!?なっ!?何でエレクがいんだよ‼」

 

「ははは、呼ばれたのだよ」

 

「エレク先輩ヴィヴィオに変なこと吹き込んでませんよね」

 

「おいぃ‼コロナは俺を何だと思ってんだよ‼」

 

「次元思想犯」

 

「おめぇよぉ、あんまり先輩舐めてるとブランゼルを多機能フォークに改造するぞ」

 

「先輩煩いです。もう始まるんで静かにしてください」

 

「こいつっ‼」

 

アインハルトとヴィヴィオが向かい合う。

 

片や自らの努力と科学と重機の力を示す為、片や覇王流こそがベルカ最強だと示す為に。

 

「セイクリッド・ハート、セット・アップ」

 

「武装形態」

 

変身し構える。

 

「死に晒せぇええぇぇええ」

 

そして唐突に横合いから放たれた砲撃でアインハルトが海に落ちた。

 

「覇王絶対に殺すシリーズの出力リミッター解除。フルドライブ。魔力炉から魔力を流せ。全力で沈める」

 

その上、海に向かって追撃のアクセルシュートが飛ぶ。

 

そこにいたのはやはりというべきか、エレク・クレイヴェルだった。

 

黒い全身鎧に身を包み、2機の自動防衛砲台と3機の対魔導師用の盾が浮遊状態でエレクの周囲に滞空している。

 

戦争をしているかのようなフル装備だった。

 

「どうだぁ見たか‼要するに勝てばいいんだぁどんな手を使おうと」

 

「汚いなさすがエレクきたない」

 

唖然とする周囲と違いコロナだけが冷静にエレクを評価する。

 

「バカめ!なに使おうが勝ち残りゃあいいんだぁ!それがすべてだ!!」

 

「アインハルトさーーーん」

 

「いきなり何を!?」

 

アインハルトが海から上がる。

 

「馬鹿か貴様‼お前に殴られた痛みはそんなものではなかったわ」

 

「そんな!?貴方は……」

 

「傷が痛むたびにきさまへの憎悪を燃やしつのらせて生きてきたのだ!!!」

 

「凄いよやってることは只の不意討ちだったのにドラマのワンシーンみたいだ」

 

「それよりあれ誰!?」

 

「エレク先輩です。デバイス制作と汚い戦術にかけては次元世界一です」

 

「ヴィヴィオ!?」

 

このカオスな状況や、普段言わない様な暴言に周りの大人は付いていけない。

 

「死ねぇ‼」

 

浮遊する砲台から数多の魔力弾が発射される。

 

「旋衝破」

 

アインハルトはそれを掴んで投げ返すことで、直撃を防ぐ。

 

「時間が稼げりゃ十分だ‼ 百式・神雷‼」

 

魔力炉で生成した魔力を湯水の如く消費した広域魔法は痛みを感じさせる暇もなく、アインハルトの意識を刈り取った。

 

「魔力変換資質を再現したの!?」

 

「あれはヴィクトーリア・ダールグリュン選手の技だよ」

 

「すげえな」

 

「天才ね」

 

「勝った‼全システムのリミッター生成。機能停止」

 

鎧をパージしてエレクが出てくる。

 

「何でいきなり砲撃したの?」

 

「復讐」

 

エレクの乱入によって客観性を取り戻したヴィヴィオは無事アインハルトと友達になれた。

 

人の振り見て我が振り直せができるヴィヴィオはやはりいい子であった。

 

大人達のエレク君の評価が下がった。




シリアスも予定はあるんですが、書いても面白いか分からないんですよねぇ。

評価、感想をつけてくれた人は本当に励みになりました。ありがとうございました。

一応裏設定

覇王絶対に殺すシリーズ1
魔力炉ヒュードラ改

覇王絶対に殺すシリーズ2
魔力変換資質再現アーマー

覇王絶対に殺すシリーズ3
アーマー付属の子機(砲台タイプと多機能盾タイプ)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

実験場

「こんにちは高町なのはさん、フェイト・T・ハラオウンさん。エレク・クレイヴェルです。ヴィヴィオさんとはいつも仲良くさせてもらっています。本日は合宿に御同行させていただきありがとうございます。また、これはつまらない物ですが」

 

そう言ってミッドの高級お菓子を差し出すエレク。

 

うん。

 

端的に言ってキモい。

 

「ごめん、エレク君とは初対面じゃないよね。それとフェイトちゃんが震えてるから、計測用のデバイスはしまってもらっていいかな」

 

 

 

 

 

「おいエレクお前合宿行く気あるか?」「あります」というとっても思慮深い応答で誘いを受けたエレクは、ヴィヴィオの知り合いが住むという無人世界に向かっていた。

 

「楽しいな~楽しいなったら楽しいな~‼」

 

「エレク先輩大丈夫かな?頭が可笑しいのはいつも通りだけどテンション上がり過ぎて壊れちゃってるんだけど」

 

「そうだよね。合宿用に自分の船出してくれるなんて外道の先輩がする筈ないもんね」

 

そう現在なのは御一行はクレイヴェル家の所有する次元航行船に乗って無人世界カルナージを目指しているのだ。

 

しかもこの次元航行船は浴場やベッドルーム等の長期航行用の設備から、エレクお手製の武装まで。

 

あらゆる要素を詰め込まれた高級感溢れる大型船だった。

 

「それより私はエレク先輩がこんな次元航行船を持ってる方が驚きだよ」

 

「エレク先輩開発した製品の特許とか売って暮らしてるから実はお金持ちなんだよ。だから普段は次元航行船の中にラボを作ってそこで暮らしてるらしいよ。まあミッドにも幾つか住む所あるらしいけど」

 

「外道に才能に加えてお金まで与えて、神様は何考えてるんだか」

 

「リオそんなこと先輩に聞かれたらまたソルフェージュ改造されるよ」

 

「そっ、そうだった」

 

リオはソルフェージュを喋るコースターに改造された過去があるのだ。

 

その時はリオの必死の謝罪で元に戻してもらったが、それでもリオには多大なトラウマとなっていた。

 

因みにAI搭載の多機能コースターは他人からしたら爆笑モノであったが。

 

そのせいでエレクの評価は、プッツンしたら何するか分からないヤベー奴から、プッツンしなくても何するか分からないヤベー奴になったのだ。

 

「エレク先輩、ここジムがありましたよ」

 

「俺のだから知ってるよ。それよか覇王様は何でこんなとこいんの?」

 

「先程説明したじゃないですか。ヴィヴィオさんのお母様に誘っていただきましたって。それより覇王って呼ばないでください‼」

 

「前は『覇王を名乗らせていただきます』キリッとか言ってたじゃん」

 

「うぅ、それはぁ」

 

「ヤバイ、エレク先輩がアインハルト先輩を煽ってる。外道だ」

 

「どうしたんだよ覇王様ぁ。俺をぶちのめした時に高らかに名乗ってたじゃん」

 

「それは謝ったし、私を海に沈めたでしょう‼」

 

「それは不意討ちの分だろぉ。しかも『謝ったし』って誠意が足りないんじゃねぇの?」

 

「いい加減にしろい」「あまりアインハルト先輩を苛めないの」

 

コロナの喉潰しパンチと、ヴィヴィオの脳髄粉砕回し蹴りがエレクを沈めたのも宜なるかな。

 

この一件以来エレクは自分の船に乗る時も防御用デバイスを手放すことはなくなった。

 

 

 

 

 

「ここがカルナージか。実験場になりそうな良い世界だ」

 

「ヤバイ、先輩のマッド具合が加速してる」

 

「いや初めからあんな感じだったよ」

 

「そうだった」

 

といういつものやり取りを交えながら、アルピーノ宅へ向かう。

 

「紹介するね。こっちが友達のリオ・ウェズリーとコロナ・ティミル。こっちが先輩のアインハルトさん。そしてあそこでガリューの右手をロケットパンチにしようとしているのが、頭の可笑しいエレク先輩」

 

「おいヴィヴィオ、俺の紹介だけ悪口なんだが。そして俺はまだ改造しようとなんてしていない。こんにちは、ご紹介に預かったエレク・クレイヴェルだ」

 

「ルーテシア・アルピーノです」

 

「ルールーは凄いんだよ。一流の魔導師なのに、建築もデバイス作成もできるんだぁ」

 

「…ルールー……だと!?貴様俺のブログを炎上させることに命懸けてるルールーか!?」

 

「なっ……あなたもしかしてエレくん!?」

 

「ど、どうしたの!?」

 

「リオは知らないの!?エレク先輩はエレくんとかいうハンドルネームでデバイスのレビュー載っけたブログやってるんだよ」

 

「ええっ!?」

 

「だけどここ最近ルールーってブロガーにブログが炎上させられてるんだよ。デバイスにも詳しいから技師だと思ってたけどまさかヴィヴィオの友達だったなんて」

 

「それより何でコロナはそんなに詳しいのぉ!?」

 

「私も炎上祭には参加したし」

 

「コロナのキャラ崩壊が留まるところを知らない‼エレク先輩に会うまではまさしく健気って言葉が似合う女の子だったのに」

 

「まさかこんな所で会うなんて思いもしなかったぞルールー‼」

 

「私もよエレくん」

 

「何か険悪っぽいけど仲良さそうだ」

 

「大体あなたの作るデバイスは癖が強すぎるのよ‼確かに分野を限れば一流のモノばかりだけど、使い捨てと、持ち主を選ぶ物が多すぎるのよ」

 

「はっ‼皆が使える汎用性優れた量産品なんていらねぇんだよ。こちとらオンリーワン、ナンバーワンで売ってんだ。嫉妬してんじゃねぇよ」

 

「何が嫉妬よ‼私はコストの問題を言ってんのよ‼」

 

「ばーかっ‼金をケチって良いもの作れっかよ‼」

 

「良いものが作れないのはあなたの実力がないからじゃない?」

 

「はぁ!?俺はDSAAで優勝してるんですけどぉ。それより貴様が特に理由もないのに低評価つけるから、俺のレビューはボロくそだ。参考にならないなら見んじゃねーよ。そして低評価つけるならコメントいれろや‼」

 

「はぁ!?低評価つけられたくなかったら、ハードディスクの肥やしにでもしてろや。てか、元々あんたのブログはボロくそでした~」

 

「てめえ自分のブログがカスいからって人のを叩くんじゃねぇよ。貴様に文才と才能がねぇからてめえのブログはカスなんだよぉ」

 

「でもエレク先輩ブランゼルを作った奴は天才だって言ってたよね。俺はこんなに汎用性の高いのは作れないって」

 

「あ?」

 

「あらあら、な~んだ結局嫉妬してたのはあなたじゃない。うん、大人気なかったわね~。あなたが頼むのならラボを見学させてあげても良くってよぉ~」

 

「ルールーだって魔力変換資質再現アーマーの話を聞いたとき、『ありふれた物を優秀に作ることはできるけど、私には一から創造することはできない。それができるのが本当の天才だ』って言ってたじゃん」

 

「あ!」

 

「「…………………」」

 

「こんにちは、ルーテシア・アルピーノさんですよね。私はエレク・クレイヴェルです。本日はお招きいただき本当にありがとうございます」

 

「いえいえ、こちらもこんな遠い所までお越しいただきありがとうございます。自然しかないところではありますが、ゆっくりしていって下さいね」

 

「うわ、出会いからやり直しやがった」

 

「流石にこれは予想できなかった」

 

「御二人はもう仲良くなられたのですね」

 

「アインハルトさん、それは違うと思いますよ」

 

 

 

 

 

「こんちは~」

 

「うわ、前にいきなりアインハルトを海に突き落とした子供‼」

 

「スバル、あんたどんな覚え方してんのよ」

 

「だってあの時のインパクトが大き過ぎて」

 

「ちょっと待って下さい‼俺ってそんなイメージなんですか!?」

 

「「うん」」

 

「くそっ、仲良しかよ‼」

 

 

 

 

 

「エリオ・モンディアルです。今回はよろしくお願いします」

 

「キャロ・ル・ルシエって言います」

 

「こんちはー。エレク・クレイヴェルです。エリオって呼んで良い?」

 

「うん。僕もエレクと呼ばせてもらうね」

 

「私もキャロでいいです」

 

「突然だけど、デバイスのメンテ無料でやるから戦闘データくれない?」

 

というようにエレクは楽しく過ごした。




次回は模擬戦できたら良いな~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水遊び

ルーキーランキング8位に入りました。
日刊ランキング四十位に入りました。
お気に入りが百件越えました。

やったー‼

何かあんまり書く気なかったけど、読んでくれる人がいるのならとりあえず頑張る次第です。
暇な時にでも感想や評価貰えたら嬉しいです。


「ねぇねぇ、ガリューの専用デバイス作りたいから手伝ってくれない?エレくんいる内に設計図位完成させときたいんだ」

 

「ガリューのデバイスか……良いな‼じゃあ俺のラボ行こうぜ。確か人間以外の装備に関する資料があった筈だ。それと俺がミッド行っても連絡してくれれば、いつでも相談には乗るぜ 」

 

「えっ!本当!?じゃあアドレス交換しよう‼あっ、それと、前言ってたインテリジェントデバイスの調整とかやろっか?」

 

「助かるわ~。何か俺がやると何か声籠った感じになるんだよね」

 

「ふふ、エレくんでも苦手なことってあるのね」

 

「ルールーみたいに万能型天才じゃないからな」

 

「エレくんのデバイス技術には逆立ちしたって勝てないよ」

 

「「あははははは」」

 

「仲が良過ぎて気持ち悪い‼」

 

「エレク先輩はルーちゃんのこと嫌ってたんじゃないの!?」

 

「いつの話してんだよ。あの後俺達は意気投合して、今ではすっかりマブダチよ」

 

「そうそう、私と同年代で私と同じくらいデバイスに詳しい人っていなかったし。エレくんは私にはない視点を持ってるしね」

 

「そうそうルールーは俺も認める優秀なデバイス技師だしな。俺も俺と同年代でここまでできる奴はルールーしか知らねぇし。俺達より間抜けな技師は沢山いたけどな~」

 

「「ははははははは‼」」

 

「なんという……昨日の敵は今日の友を地でいってやがる」

 

「正直言ってキモい」

 

 

 

 

 

「おーい川遊びするぞ、お嬢も来るだろ?」

 

「うん」

 

「もうそんな時間か急がなくては」

 

「おいエレク、計測機材持ってどこ行く気だ?」

 

「?」

 

「おいコラ、何心底わかんねぇって顔してんだよ。お前も行くんだよ」

 

「でも俺は川遊びではしゃぐ歳じゃないし」

 

「イラッとくる台詞だな」

 

「それはノーヴェの器が小さいせいだと考察するが?」

 

「うっせぇ。いいから来い」

 

「先輩も遊びましょうよ~」

 

「黙れリオ。貴様の発言は認めない」

 

「辛辣ぅ‼」

 

「エレク先輩ゴライアスで叩いて壊しますよ?」

 

「そうですよ。これ以上抵抗するとディバインバスター撃ち込みます」

 

「お前等如きの魔法技能じゃ俺のAMFを抜けられんと思うが?」

 

「エレくん、うちの川広いから水上装備のテストもできるよ」

 

「今、試作機持ってくるから待ってろ」

 

 

 

 

 

「こっちが魔力駆動の三人乗り水上バイクでお値段たったの二百二十万。それなりのスピードが出て、駆動時間と燃費が良い。それでこっちが、水中駆動鎧でお値段は今のところ設定されてない。水中での魔法戦を想定して作った俺の自信作だ。 空気中の魔力を取り込むことで活動し、 水中でも普段と同じ……いやそれ以上の機動ができる機体だ」

 

「はぁ~、凄い。先輩って本当に天才なんだね」

 

「当然だ。それよりリオ乗ってみるか?」

 

「えっ!?良いんですか?」

 

「丁度テスターが欲しかったところだったからな。水中駆動鎧の方だぞ。水上バイクはルールーが使いたいって言ってたから」

 

「ひゃっほう」

 

「管理者権限、ゲスト認証リオ・ウェズリー」

 

「わわっ」

 

鎧が一度幾つもの部品に分解し、リオを中心に再び組み合わさる。

 

そしてリオを包み込み、先程と変わらぬ鎧姿に戻る。

 

「凄い。いつもより体が軽いし、中も快適で全然着てる感じがしない。うわ~凄い。遠くまで見れる」

 

「ふむふむ。内部カメラも問題なく稼働しているな。良い感じだな」

 

「おい大丈夫か?それってエレクの作ったやつなんだろ?」

 

「大丈夫。大丈夫」

 

リオはそのまま河に飛び込んで行く。

 

それを確認しつつエレクはゴムボートに乗りながら日向ぼっこを開始する。

 

「エレク先輩、エレク先輩。先輩は水切りってできますか?」

 

「覇王様よりはな」

 

「ちょっと見せていただけますか?」

 

「良いよ。ノーヴェお手本頼む」

 

「おい、良いのかよ」

 

「いいから、Hurry Up」

 

「あまり舐めてると殴るぞ」

 

と良いながらもお手本を見せてくれる。

 

いい人だ。

 

将来これで困ったことにならなければ良いが。

 

ノーヴェの水柱は十メートル以上上がり、雨となって降り注ぐ。

 

「ほら次はお前だ」

 

「これが俺の全力全壊」

 

そう言い放つといつものアーマー型バリアジャケットを纏い空に飛び上がる。

 

そして肩の部分が開き砲口を露出させる。

 

砲口は溢れんばかりの魔力を秘めて、光り輝く。

 

「やべぇ‼またエレクが馬鹿をする‼全員逃げろ‼」

 

その声でバイクに乗っていたルーテシア達三人も、水中で遊んでいたリオやアインハルトも速攻で川から離れる。

 

「マニューバS-S-A(シューティングスターアサルト)‼ストライクスターズ」

 

なのはの砲撃を再現した魔法が川に撃ち込まれる。

 

そして着弾と同時に川の水を巻き上げる。

 

そして先程とは比べ物にならない量の雨が滝のように降り注ぐ。

 

ヴィヴィオ達は間一髪川から上がっていた為、流されることはなかったが水上バイクが川原に向かって飛んでいき大破した。

 

「「「「「「あ‼」」」」」」

 

「俺の二百二十万!‼」

 

「馬鹿だ」

 

「自業自得」

 

「考えたら分かるのに」

 

「ざまぁみろ」

 

上から順にノーヴェ、ヴィヴィオ、リオ、コロナだ。

 

「なのはさんの魔法を再現するなんて流石エレくん‼」

 

「二十メートル以上上がりましたね」

 

そうして空から降りると、石の上に体育座りして黄昏れる。

 

リオはそれを見てそっと遊びを再開し、ヴィヴィオはその姿を見て見ぬ振りをしてリオに続き、コロナはその姿を写真に撮り、ルーテシアは水上バイクを見に行く。

 

ノーヴェとアインハルトだけがその場に取り残される。

 

「あいつ等逃げやがった‼」

 

「エレク先輩も遊びに誘いましょう。そうしたら気も紛れますし‼」

 

アインハルトが名案を思い付いたかのような顔で提案する。

 

「いや、やめた方が……」

 

「行ってきます」

 

「コイツら清々しい程人の話聞かない」

 

「エレク先輩遊びましょうよ‼」

 

「無理……メンタルが殺られた…。無理、マジデ無理」

 

「そんなことないですよ。こうやって遊べば」

 

そう言って水をかける。

 

「うオッ」

 

のを間一髪で避ける。

 

「あれれ~どうしたんですかぁ~!?」

 

「貴様はコロナ・ティミル‼」

 

「そういえば先輩川に来てから一度も水に漬かってませんけど………もしかして泳げないんですか?」

 

「は?全然違ぇけど?」

 

「そうですかwwwwww」

 

いきなりコロナがエレクを川に蹴り落とす。

 

ドボンという音を立てて落ちる。

 

上がってこない。

 

必死でもがき、6秒程で川原に転移する。

 

ぜぇぜぇと息を整えて立ち上がる。

 

「コロナ殺すわ」

 

「やってみろ‼」

 

「AMF全開、対魔導師用アーマーフルドライブ‼」

 

そして魔法と土塊が乱れ飛ぶ。

 

その戦いは、ルーテシアに依ってガリューと地雷王に止められるまで続いた。

 

余談だが、水中駆動鎧にはAMF対策がなされていなかったのでリオが鎧ごと沈んだが、無事ノーヴェに救助された。

 

ノーヴェが救助隊員じゃなかったら危険だった。

 

それを見てエレクは「やっぱりAMF対策は必須だな」と呟いた。

 

 

 

 

 

一日の終わりのバーベキュー。

 

「それで明日は大人達と模擬戦するんだよ」

 

今回のバーベキューの為だけにエレクが作成した全自動コンロに肉を投入しながらヴィヴィオがアインハルト達に説明する。

 

因みにこのコンロは合宿の場所を提供したアルピーノ一家の元に寄贈されている。

 

高性能でお値段なんと三万八千円相当。

 

「皆さんで戦うのですか?」

 

「はい。二組に分けたチームバトルで相手が全滅させるまでの勝負です」

 

「なのはさん達とか。しかも全滅。……それは楽しそうだな」

 

「大人チームは最大出力に制限がつきますが、それ以外は全力なんですよ‼」

 

「制限……」

 

それを聞き、エレクはおもむろに席を立ちズカズカとなのはに近づく。

 

「なのはさん、こっちのチームを俺、ヴィヴィオ、リオ、コロナ、アインハルト、ルーテシア、キャロ、エリオにするんで制限なしでやりませんか?」

 

「えっ、エレク!?」

 

「それは流石に無茶が過ぎると思うけど」

 

「勝つんで問題ないです」

 

「私達は数で勝ってるからって勝てる程甘くないよ」

 

「勿論です。それでも勝てるから言ってるんです」

 

「危ない方法は駄目だよ」

 

「ええ、Lifeポイント制で問題ないです」

 

「ガリューやフリード達召喚獣はなしだよ」

 

「わかってます」

 

「じゃあ良いよ」

 

「なのはっ!?」

 

「少なくとも楽しませてはくれるんだよね」

 

「ええ、代金は貴女達の敗北ですけどね」




次回ちょこっとシリアス‼


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エレク君の展覧会 前編

誤字報告いつもありがとうございます。
大変助かっております。
そしてお気に入りが400越えました。
ルーキーランキング四位に入りました。
いつも読んで下さりありがとうございます。

しかしランキングに乗ってから無言低評価が増えて悲しいです。
勿論高評価を入れて下さる方もいますが、結構傷付き易い方なので気にしてしまいます。
無言酷評が嫌なら引きこもっとけと思われるかもしれませんが、高評価を入れて下さる方を期待してそんなこともできない感じです。
低評価も仕様として存在するのでつけるのは良いと思うのですが、せめて一言「主人公が生理的に無理」とかコメントを入れて欲しいです。




「先輩勝ち目はあるんですか?」

 

「勿論だ」

 

「相手は私達より魔力も技術も経験も上ですよ」

 

「問題ない。いつものことだ」

 

「じゃあ最後にひとつだけ。何が必要ですか」

 

「良く言った。お前らの魔力、技術、経験を補える道具を揃える。お前等にも手伝ってもらうぞ」

 

 

 

 

 

エレクと外道な仲間達チーム

 

FA(フロントアタッカー) アインハルト・ストラトス

             高町ヴィヴィオ

Life3000

 

GW(ガードウィング) エリオ・モンディアル

            リオ・ウェズリー

Life2800

 

WB(ウィングバック) コロナ・ティミル

Life2500

 

CG(センターガード) エレク・クレイヴェル

Life2500

 

FB(フルバック)   キャロ・ル・ルシエ

            ルーテシア・アルピーノ

Life2200

 

 

 

 

 

なのはチーム

 

 

FA(フロントアタッカー) ノーヴェ・ナカジマ

             スバル・ナカジマ

Life3000

 

GW(ガードウィング) フェイト・T・ハラオウン

          ティアナ・ランスター

Life2800

 

CG(センターガード) 高町なのは

Life2500

 

 

 

 

 

翌朝エレク達は模擬戦会場である区画に移動した一同。

 

「今日は良い試合をしようね」

 

「ええ、なのはさんを退屈させはしませんよ」

 

「その前に質問なんだけど何でそっちのチームはヘリに乗ってるのかな?」

 

エレクと外道な仲間達チームは大型ヘリに乗っていた。

 

軍用の輸送機だ。

 

ヘリの中には模擬戦の機材とか入っているのだ。

 

そりゃあもう色々。

 

「そりゃあこれが俺の全力全開ですから‼」

 

「一応言っとくけど質量兵器は無しだよ」

 

「ええ‼わかってます‼お互い頑張りましょう‼」

 

そう言うと、バラバラという音を響かせてヘリが飛んでいく。

 

「なのはさん。ヴォルテールを許可した方が良かったんじゃないか?」

 

「私も今猛烈に後悔してる。せめて重量制限を設けるべきだった」

 

「どどど、どういうことぉ!?」

 

「…姉貴……死ぬ気で頑張るぞ…」

 

「フェイトさん!?なのはさん!?模擬戦ですよね‼」

 

「ティアナ今日は本当に全力じゃないと負けるからね」

 

 

 

 

 

「さあ始めようか、エレクくん」

 

アラームが試合開始を告げる。

 

それと同時に、あちらから膨大な魔力を有する杭状の物体が山なりに落ちてくる。

 

「撃つのが早過ぎる、魔法じゃない‼何かの発明品‼避けて‼」

 

なのはの号令と同時に散開する。

 

流石元機動六課とナンバーズの精鋭達。

 

危なげなく着地点から逃れるが。

 

着弾と同時に爆発する。

 

それが何本も撃ち込まれる。

 

「嘘っ!?なによこれ!?」

 

「アクセルシュート」

 

多くの魔力弾が杭を弾き着弾地点を大幅にずらす。

 

「危ないっ‼」

 

その隙を突いたかのように今度は廃墟区画をぶち抜いて砲撃が襲う。

 

「皆ここから離れて‼初期位置だとすぐやられる‼フェイトちゃんは狙撃主をお願い。他の皆も全員突撃‼時間をかければかける程こっちが不利になるから」

 

「わかった」

 

「おう‼」

 

「スバル、私と付いてきて。私はなのはさんみたいな防御力はないから」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「ひゃあ~‼凄いですねこの砲台」

 

《レールガンモジュールだ‼魔力反応を察知して追尾、爆発を行う杭を高速で撃ち出す兵器だ。半分以上質量兵器だが爆発は魔法だ。あと喋ってねぇでそこから離れろ。一人でフェイトさんに当たったらホームランじゃあ済まねぇぞ》

 

「はい‼」

 

《しっかりしろ。そのレールガンはお前らみたいな電気変換資質持ちじゃねぇと動かせねぇんだから》

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

「そう簡単にはやられてくれねぇか」

 

「あの人達化け物みたいに強いしね」

 

「わかってる。当然これで終わりなんかにはしねぇよ。ルールー、俺の転送魔法を手伝ってくれ。お前が一番ここを知ってるだろ?」

 

「当然よ‼任せなさい‼」

 

「全力で潰すぞ」

 

 

 

 

 

「あの子供どうなってんのよ。模擬戦にヘリコプター乗って来るし、いきなり砲撃撃つし」

 

「あはは、あれは驚いたよね」

 

「笑い事じゃないわよ。現役執務官が学生に負けるって相当ヤバイわよ」

 

「じゃあ頑張りますか‼とっわ!?おっとっ!?」

 

ウイングロードを駆け抜けるティアナとスバルを遠方からの精密射撃が襲う。

 

それを間一髪で回避すると、数十機のガジェットが彼女達の視界を埋め尽くさんと囲んでいる。

 

「AMFガジェット!?」

 

「そんなのアリィ!?」

 

「スバル来るっ」

 

ガジェットがコードを伸ばし攻め立てる。

 

射撃から弾幕に切り替えて撃ち出される攻撃が取れる選択肢を削っていく。

 

明らかに消耗、時間稼ぎを目的としたガジェットの使い潰し。

 

「わわっ、これ六課の訓練よりもキツいんだけど」

 

「私達だってあの時よりは強いんだから。やるわよスバル」

 

「頑張ろっか‼」

 

 

 

 

 

フェイトは順調に狙撃場所を割り出し、急行する。

 

途中ガジェットの出現に「ええ~、普通模擬戦でAMFガジェット出さないでしょ」と思ったが苦戦する程でもなかった。

 

「見つけたけど、狙撃主は……いないか」

 

高台に設置された砲台。

 

「罠?だけど放っては置けない」

 

フェイトが罠と推測しながらも高台に降り立った瞬間、馴染み深い結界が発動する。

 

「封鎖結界!?」

 

「フェイトママ、全力でいくからね」

 

「はい、ヴィヴィオさんのおかあさま。一槍お願いいたします」

 

「フェイトさんは強いから三人でいかせてもらいますね」

 

そこには娘とその友達に元部下。

 

拳と槍が鎌を持つフェイトに向けられていた。

 

 

 

 

 

「おかしい…本当に頭オカシイ。模擬戦でAMFガジェットとか馬鹿か‼糞が‼あれって全然雑魚キャラじゃねぇし。ドクターが馬鹿みたいに作るから知らなかったけど普通に強ぇし。あいつ二代目ドクターにでもなるつもりかよ……。しかもコイツら統率がとれてる……あっちには指揮ができるような奴はいないと思うんだが」

 

ノーヴェは、大量のガジェットに取り囲む様に旋回されながらも呟く。

 

ウイングロードを駆けながら探していたが全然相手が見つからない。

 

「どうなってんだぁ!?」

 

《AMFガジェットに随分苦戦しているご様子ですけど、大丈夫ですかぁ?》

 

「その声はエレク‼くっ‼こんなの余裕だ」

 

《それは良かった。じゃあ二名様追加でーす》

 

その言葉をトリガーにゴライアスが転送される。

 

「なっ二体!?……コロナか!?」

 

そう二体も現れたのだ。

 

《だいせいかーい‼そうだよ。コロナには前線に出ないでゴライアスの操作に全力を注いで貰ってんだ。 そうすればゴライアスの二体位簡単に操れる》

 

「そんな馬鹿な」

 

《そりゃあ視界は必要だが周りにはガジェットがいるしな。じゃあ頑張ってくださいね》

 

その音声を最後に通信が切れる。

 

「コイツ‼」

 

ノーヴェはマジギレしそうだった。

 

 

 

 

 

前日。

 

「いいか俺達に足りないものは多々あるが、その中でも一番必要なのは何だと思う?」

 

「魔力‼」

 

「リオ・ウェズリー君。君は落第だ」

 

「ええっ!?」

 

「指揮系統ですか?」

 

「そうエリオの言う通りだ。要は如何に自軍の戦力を運用するかだ。キャロとルールーあとはコロナ辺りは分かると思うが、兵力の運用ってのは指揮能力が直に反映される。しかし俺達はこの大人数に指揮なんて取ったことがないし、ルールーは他にやって欲しいことがある。まぁルールーも虫しかやってないしな」

 

「じゃあどうすれば良いの?」

 

「良い質問だキャロ。そうだな、アインハルト。お前はどうする?」

 

「各個撃破します」

 

「0点。アインハルトは知らんが、俺達じゃあの人達には二対一でも勝てん。コロナは?」

 

「諦める」

 

「最悪‼自分から勝負仕掛けて諦めるとか最低だから」

 

「私は先輩にだけは言われたくない」

 

「最後にヴィヴィオ」

 

「じゃあ勉強する?」

 

「30点。試合は明日だ。万能型天才のルールーでも無理だ。だから勉強は機械にさせる。指揮は俺のデバイスに任せろ。こいつには多人数での戦闘指揮を覚えさせる。だから明日はこいつに従え」

 

 

 

 

 

「どうよランスターの弾丸は……」

 

「やっと全滅したよ。本当に疲れた」

 

「まだよ。私達相手チームとまだ会ってさえいないんだから」

 

《大丈夫、大丈夫。ちゃんと連れてきたから‼》

 

「あ、あんたは!?」

 

「「頭のおかしい子供‼」」

 

《えっ!?……違いますよ。俺はコロナ・ティミルじゃなくてエレク・クレイヴェルです》

 

「知ってるわよ」

 

《えっ!?……えっ!?俺ってそういう認識なんですか!?俺は善良で天才な好青年ですよ‼》

 

「善良な好青年が模擬戦にガジェット連れてくるか‼」

 

《はぁ~。何かめっちゃテンション下がった。まあ戦力投入はするけど。お前達やっておしまい》

 

またもや投入されるガジェットの大群。

 

「うわ、先輩に言われると凄いムカつく」

 

「あはは、まさか私がガジェットと共闘することになるなんて」

 

長時間の戦闘で思考力を削る嫌らしい戦法。

 

それに加えて精鋭の投入と大量の使い捨ての駒。

 

火力支援と支援魔法を受けた近接格闘技選手。

 

「うわっ‼ガジェットとリオ、キャロはキツいよ~」

 

「本当に戦争みたいなんだけど」




先日友人に「これまでジャンル決めてないって言ってたけど、ラブ要素入る余地あんのかよ?」と言われましたが、この主人公にヒロインとかいりますかねぇ?

あと活動報告を、同じく匿名で出す方法ってありませんか?




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エレク君の展覧会 後編

やっぱりエレク君にラブコメは望んでないのかぁと思う今日この頃、外道コロナやルーテシアとのラブコメ見てみたくないですかねぇ?


そういえばティアナは19だからDSAA出れるんですよねぇ。
出たら面白いのになぁ。




「これは本当に辛いかも」

 

退路を塞ぐように存在するガジェットと、エリオ、ヴィヴィオ、アインハルトという鉄壁の編成がフェイトを追い詰める。

 

「紫電一閃!!」

 

「アクセルスマッシュ!」

 

ガジェットの攻撃で機動を封じ、三人で攻撃する。

 

「Life回復の為少し前線を離脱します。引き続き射撃支援は行います。アインハルトさん、エリオ頑張って‼」

 

「はい」

 

「了解」

 

「それは狡くない?」

 

《何を仰るフェイトさん。俺達はそこまで強くないんだから回復をデバイスにやらせるのは基本ですよ。逆にデバイスが自己判断でプロテクション張るのに回復魔法を使わない道理がありませんよねぇ》

 

エレク達は全員が回復魔法特化のデバイスを持ち、Lifeの回復をデバイスに行わせていた。

 

その為Life回復を行いながら戦闘を続行できるのだ。

 

汚い、さすがエレクきたない。

 

一対三の上にガジェットの支援射撃。

 

加えてノーモーションの自動回復‼

 

おまけに――

 

「何か魔法が使い辛いし、何かしてるよね?」

 

《ええ、AMFを使ってるんで遠距離攻撃はさせませんよっと。良いかお前ら、手数で攻めろよ。絶対にソニックフォームにさせんなよ。そしたらお前らの勝率が大幅に下がるって出てるから。フェイトさんに一人でもやられたらお前ら全滅確定だからな》

 

ガジェットを通してもエレクのドヤ顔が見える様だった。

 

「ごめんねフェイトママ……」

 

「くっ、攻め切れない‼」

 

《おい、無理に倒そうとしなくて良いんだぞ‼おい、分かってんのか‼》

 

「私の覇王流は最強なんだ‼」

 

《おい、やめろよ。マジで‼俺の言う事は聞かなくていいから、俺のデバイスの勝率計算と指揮は信じて‼身の程を知れって‼お前が勝てる相手じゃねぇから》

 

「覇王断空拳‼」

 

アインハルトが三対一の陣形を崩して強引に前に出る。

 

それを待ち構え、放たせる前にバルディッシュで切り伏せる。

 

そしてLifeが0になった瞬間、エレクの持たせていた回復特化のデバイスが自爆する。

 

「「「うわっ!?」」」

 

流石に予想外過ぎる攻撃にフェイトのLifeが大幅に削れる。

 

《よっしゃ‼当たった‼ヤバかった~‼それ避けられてたら俺達の勝率が30%位になるとこだったからなぁ。良かった良かった。……さて、では削り殺しておしまいお前達‼》

 

「「「外道!!!」」」

 

 

 

 

 

「さて、ではこちらもやりましょうか。なのはさん」

 

「う~ん、君が出てきたのは意外だったかな。てっきり皆を戦わせて高見の見物かと思っていたけど」

 

「俺もそうしたかったんですけどね。でもSランクオーバーの魔導師の相手なんて俺位しかいなんですよ」

 

「それが君のフル装備かな?」

 

「ええ。これが俺の装備できる全ての装備です。俺をS+ランクまで引き上げることができる魔力炉三基。AMF搭載の電動式駆動鎧に5機の自動防衛砲台と4機の対魔導師用の盾」

 

「随分大掛かりな装備だね。まるで戦争でもしてるみたいだよ」

 

「残念なことに俺は貴女達みたいに手段を選んで勝てる程強くありませんからね」

 

「そっか。じゃあ始めようか」

 

「全武装の出力リミッター解除‼魔力炉全力起動‼AMF稼働‼全武装フルバースト‼」

 

「アクセルシュート」

 

「ソニックシューター・アサルトシフト」

 

死角から抉る様に撃ち込まれた魔力弾を、加速することで避けながら、こちらも速さ重視の魔力弾を撃つ。

 

それをプロテクションで防がれる前提で、半ばタックルのようにぶつかりながら拳を叩き込む。

 

「シュペーア・ファウストッ!」

 

DSAAの女子部門優勝選手の使った打撃魔法はそのままプロテクションごとなのはを弾き飛ばす。

 

「プラズマランサー」

 

そしてすかさず射撃魔法で追撃する。

 

タイミングも速度威力共に一流の魔法だった。

 

だが届かない全ての雷撃が着弾できずに打ち落とされる。

 

「アクセルシューター アバランチシフト」

 

数えるのも馬鹿らしくなりそうな数の魔力弾が明確な圧力を持って空を制圧している。

 

多数のアクセルシューターが雪崩のような弾幕と化して放たれる。

 

「嘘だろ‼なのはさんこそチートじゃねぇかよ‼何で第五世代でもないのにAMF影響下でこんな魔法撃てんだよッ!ストレイトバスター‼」

 

子機から幾筋もの光線が放たれる。

 

エクセリオンバスターの応用系のひとつであるそれは、壁となって迫るアクセルシューターにぶつかり連鎖爆発を引き起こす。

 

空を爆発が満たし、視界を塞ぐ。

 

そして幻術で体を隠し回り込む。

 

エレクをしても完璧だと思える精度の幻術。

 

それをピンクの輪が空に縫い付ける様に拘束する。

 

「おいおい、嘘だろ‼マジで人間かよ」

 

既に設置されていたバインドはエレクを情け容赦無く固定する。

 

砲撃魔導師にバインドで拘束されたら後の展開はひとつ。

 

そして上空に収束するピンクの魔力光。

 

エースオブエース高町なのはの代名詞とも言える、正真正銘最強の魔法の一角。

 

「スターライトッ――」

 

 

 

 

 

「攻撃しても、攻撃しても切りがないよ~、しかもガジェットの動きが格段に良くなってるし」

 

「ここに来てルーテシア参戦って、本当に最悪じゃない」

 

囲い込み集中砲火を受けながらティアナは愚痴を溢す。

 

その間にも無数に弾丸が飛び込んで来て、それを撃ち落とすので手一杯でスバルの援護はできそうにない。

 

スバルだってリオとキャロの二人では簡単には突破できそうもない。

 

削っても削っても、すぐに手持ちの治癒特化のデバイスがLifeを回復させるのだ。

 

それは正に削り殺しと言うのに相応しい状況だった。

 

《そうねぇ~、こうやってガジェットをインゼクトで操ると昔を思い出すわねぇ~。四年前はこんなことに使うとは思いもしなかったけど》

 

「私もガジェットを援護して戦うなんて思わなかったよ~。私達FB同士だから共闘することも殆ど無かったし」

 

切羽詰まった戦場には場違いな、のほほんとした声が響く。

 

キャロがリオに支援魔法を掛けながら通信機越しにルーテシアと話しているのだ。

 

しかも何とか隙間を作ってキャロに魔力弾を撃っても、キャロの周りを浮游しながら旋回する盾が防御して届く気がしない。

 

「あの子供本当に何なのよ‼」

 

まさか学生がAMFガジェットの大群や兵器紛いの道具を大量に準備してくるとは夢にも思っていなかったのだから仕方がない。

 

「これは本当にヤバイわよ‼スバル時間稼いで収束砲撃で一発逆転するわ」

 

「分かった」

 

「頼んだ」

 

「任せて‼うぉおぉおおぉ!!」

 

そばにいたガジェットを投げつけ、盾してにリオに突撃する。

 

強引な一撃はリオの視界を防ぎ、そのままぶつかり爆発する。

 

《冷静に孤立したスバルを仕留めて‼》

 

「リボルバーキャノン」

 

そのままキャロの防御兵装に拳を叩きつける。

 

「させない‼」

 

横からリオの炎と雷が渾然一体となってスバルを襲う。

 

それを右手で受け止めながら叫ぶ。

 

「ティア!!」

 

「嘘‼……魔力収束ができない…」

 

 

 

 

 

「どうしました?なのはさん?」

 

AMFを全開にしてバインドを千切りながら問う。

 

「スターライトブレイカーが撃てない…」

 

「集める魔力自体がありませんから」

 

「やってくれたね……」

 

「Yes、エレク・クレイヴェル特製の魔力収束爆弾を幾つか設置させてもらいましたよ。収束は早く始めた方が有利‼そんなことなのはさんには言うまでもないことですよね。俺達が湯水の様に流してた魔力は全部そっちに流れていますよ‼」

 

「ガジェットの逐次投入はその為か」

 

「ええ、なのはさんへの必殺技対策です。収束砲は厄介ですからね。あとこれ以上やっても俺はなのはさんに勝てなさそうなのでこれを使わせてもらいますね」

 

「えっ?」

 

「収束爆弾は全部同時に爆発させれば、この位のフィールドの全域くらい余裕で覆えるんで。それでは皆さん仲良く俺の自爆に付き合ってもらいますね」

 

「ちょっ待っ――

 

「収束爆弾全弾Fire」

 

瞬間カルナージに光が満ちた。

 

 

 

 

 

「やっぱりなのはさんって天然ロストロギアとかじゃないですか!?」

 

「…失礼だね……私だって…もう……Lifeはギリギリなんだけど……」

 

咄嗟に張った防御魔法を解除してなのはが立ち上がる。

 

バリアジャケットはボロボロで魔力もカートリッジも禄に残ってはいない。

 

それでも高町なのはは立っていた。

 

爆発の直線状にエレクが居たとは言っても驚異的な防御力だった。

 

「いや本当化け物レベルですよ」

 

「言っとくけどエレク君のLifeは全損したんだから、もう動いたら駄目だよ」

 

「もう動けませんよ」

 

「何かを起動させるのも駄目だよ」

 

「もうしませんよ」

 

「絶対だよ?」

 

「ええ、もう命令も出しません」

 

「はぁ……これは私以外生き残りはいないんじゃないの?」

 

「コロナとルールーには安全地帯作ってるんで、それはないです」

 

「えっ!?私これからルーテシアとコロナちゃんと戦うの!?」

 

「いえいえ、それは多分ないかと」

 

「?」

 

「一応の保険はありましたから」

 

「…………エレク君あれは何?」

 

「傀儡兵ですね」

 

「……うん。…私にも傀儡兵の大群にしか見えない。どういうことかな?」

 

「魔力収束爆弾発動後に、小型20機と中型42機、大型2機の傀儡兵が自動転送される様にプログラミングしておきました」

 

「………エレク君は後で私とお話しよっか」

 

 

 

 

 

「ディバインバスタァアァァァアアアア」

 

 

 

 

 

「ヴィヴィオに聞いたんですけど、模擬戦って今日一日で三戦するんですよね。チーム変えたり作戦練って」

 

「エレク君は見学ね」

 

「Why?」

 

「見学ね」




模擬戦疲れた。

戦闘描写ムズいしキツい。

誤字があったらごめんね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

DSAAのルール

お気に入りが500件越えました‼
いつも読んで下さりありがとうございます‼
これからも応援して下さると嬉しいです!




「か、からだが動かない」

 

「私も全然、動けません」

 

「魔力を使いすぎたよ~」

 

「身体中が痛い」

 

「ふっ、惨めな奴等よ」

 

「「「先輩にだけは言われたくない!!」」」

 

「せっかく押してたのに」

 

「アインハルトさんは自爆させるし」

 

「「えっ!?」」

 

「あれ、言わなかった?リオもコロナも知らなかったんだ。あのエレク先輩が渡した回復魔法特化デバイスは使用者諸とも爆発させる隠し機能が付いてたんだよ」

 

「「うわぁ」」

 

「ははははは、お前らは馬鹿ばっかりだ。先ず、俺の魔力炉は二日位で自壊しちまうような失敗作だとは言ったよな。俺の魔力炉では時の庭園や傀儡兵を動かしていたような出力は出せんし、継続的に運用することもできないと。しかも今回はエースオブエース達との模擬戦だ。出し惜しみして勝てる相手じゃなかった。ガジェットやキャロの使ってた防御兵装あってこそ有利に戦えたが、それ無しじゃ瞬殺される。翻ってじゃああれらが何で動いてたかって全部魔力炉あってこそだ。俺の失敗魔力炉でそんな出力出してたら崩壊すんのは当然。じゃあどうするかって、短期決戦しかねぇだろ。因って俺達は魔力収束爆弾がなきゃ勝てなかった‼Q.E.D証明終了‼」

 

「長コメウザいし、キモい‼」

 

「おい貴様、ゴライアスに魔力収束爆弾埋め込んでノーヴェを爆殺したくせに何言ってるんだ?」

 

「……戦わないと生き残れないんだ」

 

「ほらぁ‼コロナがこんなに世間擦れしたのはエレク先輩のせいだぁ。先輩の外道性が感染したんだぁ‼」

 

「リオ………貴様動けないのに人を罵倒するとは考える力がないのか?貴様の頭は髪の毛の栽培地でしかないのかな?」

 

「はッ‼」

 

「バリアジャケットのデザイン、蛙のキグルミに固定しとくな」

 

「やめろぉぉおぉぉ‼」

 

 

 

 

 

「ハロー‼」

 

「うわっ、エレク」

 

「ティアナさん……『うわっ』て酷くないですか?」

 

「模擬戦にAMFガジェット持ってくる方が酷いと思うけど?」

 

「………ルールー探してるんですけど見ませんでした?」

 

「キッチンの方にアインハルトと行ったわよ」

 

「へーい、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

「何で本人には言わないの?」

 

「ス、スバルあんたいつからそこに!?」

 

「初めから~。でもティアナ、エレクのことすごい子って評価してたじゃん。何で本人には言わないの?」

 

「エレクは凡人とはとてもじゃないけど言えないけど………あれもひとつの魔力の無い奴なりの戦闘法なのよね…」

 

「あれは才能も努力もお金も必要な戦い方だもんねぇ~」

 

「ええ。魔法の才能をデバイスで補うって言う程簡単ではないもの。まぁ外道だけどね」

 

「うん。外道だけどね」

 

 

 

 

 

「オッス‼エリキャロ‼」

 

「おはよう、エレク」

 

「おはようございます」

 

「流石現役管理局員、あの模擬戦を翌日に持ち越さないのか」

 

「まぁ鍛えてるからね」

 

「そう言うエレクさんも平気そうですけど」

 

「服の下に簡易パワードスーツ着けてるから」

 

「あ、そうなんだ‼凄いね」

 

「ああ‼御用の際はエレク・クレイヴェルまで‼今なら被験体価格五十五万で販売中‼」

 

 

 

 

 

「おはようございます、なのはさん‼爽やかな朝ですね」

 

「うん、おはようエレク」

 

「昨日は有意義な日でしたね‼」

 

「うん……色々とね。傀儡兵出してきた時は本気で殺意が湧いたけどね‼」

 

「ははははは‼模擬戦の後のリアルファイトなんて笑えませんよ」

 

「冗談じゃないよ」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

「おっはよ~ございま~す」

 

「エレク……おはよう…」

 

「はい、男子DSAA優勝選手にしてデバイス工学の天才、お金持ちのエレク・クレイヴェルです」

 

「はぁ」

 

「何です?疲れた顔して?俺謹製のマッサージチェア使います?」

 

「まぁAMFガジェットや自動回復するヴィヴィオ達と戦うことになるとは思ってなかったから」

 

「普段できない貴重な体験でしたね!!」

 

「はぁ……」

 

さっきのものより一段深い溜息だった。

 

「そう言えばフェイトさんに見せてもらったプラズマランサー凄い強い射撃魔法でしたよ。本当に助かりました」

 

「それは良かったのかな?」

 

主にエレクに見せて。

 

「助かりましたけど?」

 

「………」

 

「じゃあ、ルールーを探してるので、これでっ」

 

「あっ、待って……君は…魔力炉…ヒュードラを作ったプレシア・テスタロッサをどう思う?」

 

「えっ!?魔力炉ヒュードラを作った世紀の大天才だと思いますけど」

 

「そうじゃなくて………次元犯罪を起こしたこととか…」

 

「う~ん、俺は次元犯罪云々を除けば、どんなに荒唐無稽で無理難題であったとしても、諦めずに探求を続けられる凄い科学者だと思います。だからそれに関しては、俺は尊敬しています」

 

「………」

 

「じゃあ俺はこれで」

 

「……あっ…あり」

 

「何です?」

 

「………エレク君、マッサージチェア貸してくれる?」

 

「じゃあロッジに設置しとくので、十五分後位に来てください」

 

「ありがとう」

 

「感想さえ聞かせてくれれば別にお礼を言われる様なことじゃありませんよっと」

 

「うん、それでもありがとう」

 

 

 

 

 

「Heyノーヴェ‼まだ疲れた顔してっけどどうした?」

 

「ぶち殺すぞ」

 

「いやいや、不機嫌過ぎるでしょ。確かに勘で察して『ゴライアスを盾に収束爆弾をやり過ごす』からの大爆発は超ウケたけどね」

 

「殺す」

 

 

 

 

 

「おはよ、ルールー」

 

「おはよう、エレくん。今丁度DSAAの話をしてたのよ」

 

「なんと‼ではではDSAA優勝選手のエレク・クレイヴェルに遠慮なく聞くが良い‼DSAA優勝選手のな‼」

 

「うん。昨日聞いたんだけどエレくんはDSAAの公式ルールなら一切合切、有象無象ぜーんぶ暗記してるから」

 

「ふむ、お前達ならセコンドとコーチ。最悪コーチは名前だけ貸してもらえりゃ良いが、セコンドは必要だ。まぁ無能なDSAAなスタッフで良いなら別だが。あとアインハルトはデバイス持ってねぇからそれも。安全のためにClass3以上のデバイスを所有して装備することってのがあるからな」

 

「まあエレくんは物騒なデバイス使ってたから安全面の配慮にはなってなかったけどね」

 

「大会規定には逆らえんからな‼」

 

「多分エレくんはデバイス無い方が安心安全。エレくんのえげつないデバイスは、クラッシュシュミレーター貫通して骨折とか打撲とか粉砕とかさせるし」

 

「大会規定には逆らえんからな!!」

 

「はぁ……」

 

「まあ安心しろ、安心しろよアインハルト。お前の奴は俺が完璧に完成させてやっから。男子のDSAAは冬だし、なにより真正古代(エンシェント)ベルカ式のデバイスなんて作れんの俺くらいだしな」

 

「あ~、それは――

 

「あのエレク先輩大変です!!」

 

「うるせぇぞヴィヴィオ‼今良いところだ‼黙っとけ‼」

 

それを無視して言う。

 

「男子のDSAAが今回からデバイスの一時提出を義務づけると‼」

 

「は?」

 

「え」

 

「ほらここ!」

 

そう言って端末機を差し出す。

 

「あちゃ~、男子だけ提出を義務づけるなんて完全にエレくん対策じゃない。これはキツいわ」

 

「そうなんです。ノーヴェが言うにはエレク先輩のせいで男子DSAAの競技人口が減ってるからだって」

 

エレクが幾らデバイスの開発、改良にトップクラスのDSAA選手を越える努力を行い、心血を注いでもそれは大多数の人にはわからない。

 

デバイスだけで勝ちをもぎ取るエレクはただひたすら汚く、狡く見える。

 

身体も魔法も鍛えず、優勝するエレクは一般の競技者からしたらヘイトの対象なのだ。

 

誰がグローブの性能で決まるボクシングを見たい、やりたいと思うのか。

 

だからこれはある意味当然のモノだった。

 

「エレク先輩どうするの?前に先輩の言ってた生体デバイスで二対一は使えないと思うんですけど……」

 

「諦めろって?」

 

「………」

 

「馬鹿か、この程度の問題で俺が諦めてたまるか!!俺は道具で技術も魔力も経験さえも補えるって教えてやるよ」




最後だけシリアス‼

作者は戦闘は諦めてもラブコメは書いてみたいなぁ‼
書いてみたいなぁ‼

と、いうことで
ifでもいいからちょこっと書いてみようと思うのです。

しかしお相手は誰がいいですかねぇ。

あと安心して下さいお相手が決まったらまた報告しますので‼


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作られた化け物

ヒロイン投票の活動報告が使いた過ぎて、匿名やめようかと思ったけど、もう一つの作品を更新してないので踏み留まりました。


「エレくんは?」

 

「何かDSAAに出資してる会社で、エレク先輩の特許卸してるところがあるから圧力掛けに電話してくるって」

 

「流石エレくん!ルールの撤回を求めて圧力かけるなんて普通できないよ」

 

「先輩は普通じゃないですから………ルールーはアインハルトさんと何話してたの?」

 

「ああ、エレくんがあんな感じになっちゃったからデバイスの用意をね」

 

「あぁ、なるほど」

 

「おい、何勝手なこと言ってんだ。アインハルトのデバイスは俺が作成するぞ‼真正古代(エンシェント)ベルカのデバイスはルールーでも作れんだろう」

 

電話を終えたのかエレクが部屋に入って来る。

 

「まあそれはそうなんだけど、私の人脈にはそれを専門にしてる様な真正古代(エンシェント)ベルカの大家族がいるのよ」

 

「は?そんなん聞いたことないぞ。ルールー詐欺られてねぇか?」

 

「八神家を知らない?」

 

「…八神家だと……!?」

 

「そうよ~」

 

「最後の夜天の主にして生体デバイスの権威‼多くのベルカ式デバイスを現代に復活させ、真正古代ベルカ式では並ぶ者無き実力者‼魔導師としても優秀で機動六課の部隊長も務めた八神はやてなのか!?」

 

「ええ」

 

その言葉が、終わるか終わらないかという時にエレクは席を立ち、背筋を伸ばし、頭を下げる。

 

「お願いしますルーテシア様‼八神はやてさんを俺に紹介して下さい‼」

 

「え~どうしよっかな~、詐欺られてるかもしれないしな~」

 

「さーせんした‼俺が間違えてました」

 

「うわ、変わり身早‼」

 

「はぁ!?俺は今ルールーと話してんだけどぉ。関係無いのに入ってくんなよ」

 

「……はやてさんとは私も知り合いですけど」

 

「チッ、幾ら欲しいんだよ。一万か?二万?」

 

「さ、最低だぁ‼」

 

「ゲコゲクォゲココォオォッォオオオ」

 

ドアを突き破り巨大な蛙が飛び込んでくる。

 

人間大の巨大なカエル。

 

両生類特有のみどりの皮膚は、ヌラヌラと水気を含んで光を反射する。

 

水掻きの付いた腕をブンブンと振り回し、人間より巨大な目玉をギョロギョロと動かしている。

 

「グワッゴワッゲゴォオォォオオ」

 

そしてロッジに響き渡るような声で鳴く。

 

それはまるで泣き叫んでいるかの様な悲しげな慟哭だった。

 

「うっ、うわぁルールーの新しいペット!?」

 

「奇妙な化け物‼」

 

「わ、私もこんなの知らないわよぉ」

 

ヴィヴィオが驚き後ろに倒れ込み、アインハルトが拳を構え、ガリューがルーテシアを後ろに下がらせる。

 

「ゲゴォゲコォゲゥゴワッグワッグワッ」

 

そしてこちらに一歩、一歩と踏み込んでくる。

 

ペタリ、ペタリと水掻きがロッジの床を叩く音がやけに大きく聞こえる。

 

その顔つきは無表情ながらも確かな意思を感じさせるもので、人間に根源的な恐怖を抱かせる。

 

「ゲグゴォゲゴォウ」

 

蛙が野太い声を響かせながらヴィヴィオに向かって腕を伸ばす。

 

「いやぁあぁああぁ」

 

それは恐怖したヴィヴィオにディバインバスターを撃たせた。

 

その砲撃は蛙の白いブヨブヨとした腹に当り、向こうの壁に叩き付ける。

 

そして盛大な魔力光をばら蒔きながら床に落ちリオに変身する。

 

「「「え!?」」」

 

 

 

 

 

「だ、か、ら!!バリアジャケットを纏ったら蛙になったの!!」

 

「ど、どういうこと」

 

「あれは俺の自信作だ」

 

「え?あれって先輩がやったんですか!?」

 

「そう‼そうだよ‼先輩がソルフェージュの設定を変更したのぉ」

 

「バリアジャケットのデザインを蛙のキグルミに固定したんだよ。デザインは勿論、質感や匂いも完璧に再現したんだぞ。それで一度変身したら勝手には解除できないようにしたんだ。一番苦労したのはあの蛙の鳴き声のボイスチェンジャーでこのプログラム組むのはすんげぇ大変だったわ」

 

「そんなことに才能使うな‼」

 

「やっぱり先輩は凄いですね。私にはとてもじゃないけどできません」

 

「アインハルトさん!?アレはやらなくていいことですよ‼」

 

「ルーテシアさんお願いします。このバリアジャケットのデザインを元に戻して下さい。お願いです。こんなのじゃDSAAに出られませんよぉ」

 

「それ作成した俺がマジでキモくて直視を躊躇う程だから効率的だとは思うぞ」

 

「やだよ‼何で女子小学生が蛙の格好で戦わなくちゃいけないのさぁ!!」

 

「でもそれ実はお前のいつものバリアジャケットより防御力高いよ」

 

「うぇ!?」

 

「リオ、ごめんね。私の技術じゃこのロック解除できない」

 

「……先輩、すみませんでした。ロックを解除してください」

 

「えぇ?でもほら俺って外道らしいし?」

 

『そういう所が外道なんだよ』という台詞をグッと飲み込みお願いする。

 

「お願いします。なにとぞ、なにとぞお願いします」

 

「エレク先輩……はやてさんを紹介するんでリオのバリアジャケット直して下さい」

 

「フッ、良い友達を持ったなリオ」

 

 

 

 

 

「そういえばDSAAの運営に圧力掛けるのは成功したの?」

 

「まぁ取り敢えずは経過待ちだ」

 

「まぁそうよね。ルール改訂してすぐに変更取り消しなんてできないわよねぇ」

 

「そ、だから今は現在のルールでも戦えるデバイスの開発に注力するわ」

 

「思ったんだけど、リオの奴で使った様なロックを掛けちゃ駄目なの?」

 

「俺の為にルールを改訂した位なんだぞ。ブラックボックスがある様な怪しいデバイスを認可はせんだろ」

 

「あぁ、そうよね」

 

「俺のデバイスは特に念入りに調べられるだろうしな」

 

「じゃあそれでもバレない様な偽装をしなきゃいけないわね」

 

「ああ、一応偽造データの作成はそれなりに時間掛ければできないことはないんだが、それでも相当痛い」

 

「まぁ諦める気はないんでしょ?」

 

「当然」

 

「じゃあ頑張んなさい。手伝い位ならやってあげるから」

 

「じゃあこのデバイス持ってなのはさんを不意打ちしてきて」

 

「死ね」




いつも感想ありがとうございます‼

皆さんの応援があるから続けられます。

評価もつけて頂けると飛び上がって喜びます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦う理由

お気に入りが700件越えた‼
うれしい‼
まだ十日も経ってないのに‼

お気に入りが700件越えたのを記念して、何か季節イベントいれたいけど三月で思い付くのが無い。

ところで皆さんセグウェイは知ってますか?
この話で出てくるので知らない人は画像検索でもしてくれるとイメージが掴みやすいです。




「ヴィヴィオ~迎えに来たぞ」

 

「おはようございます。ヴィヴィオさん」

 

エレクは昼下がりにアインハルトと共に高町家を訪問していた。

 

ピンポンを押され、玄関に出たヴィヴィオは一度ツッコミをいれたくなったが、我慢してひとつだけ尋ねる。

 

「……そのセグウェイは自作ですか?」

 

「ああ、空気中の魔力を吸収して動くから電池長持ちだ」

 

「…じゃあ行きましょうか」

 

「あ、ヴィヴィオの分もあるぞ」

 

 

 

 

 

エレク特製のセグウェイは他を圧倒する速度を叩き出し、予想より遥かに早い時間で三人を八神家へ届ける。

 

「ここか。監理局のお偉いさんが住んでいるのだから高級マンションのワンフロアとか、ドでかい屋敷にでも住んでいるのかと思っていたが案外普通だな」

 

「そうですね」

 

「お邪魔します。ヴィヴィオです」

 

「こんにちはアインハルト・ストラトスです」

 

「お邪魔します。エレク・クレイヴェルです。今日はお招きいただきありがとうございます。これはつまらない物ですが」

 

「あ、あれはミッドの有名なケーキ屋先着10名様だけに限定販売される超レアな一品‼買うには前日から並ぶべしとまで言われるエンデルのレアチーズケーキ‼」

 

「ヴィヴィオさん!?」

 

「凄い‼どうやって買ったの!?」

 

「バイトに徹夜で並ばせた」

 

「うわ、金持ちの発想‼」

 

「庶民にはできん芸当だ」

 

「すんごいうぜぇ」

 

「おもしろい子やね」

 

場所を八神家のリビングに移してデバイスの話をする。

 

「すげぇリインフォースⅡだぁ‼すげぇ‼マジで生きてる。可愛いし、柔らかいし全然デバイスに見えねぇ‼すげぇちょっと触って良い?髪は長くはならないよな?エネルギーはどうしてんの?これ自由意思があるんだよなぁ‼すげぇなぁ‼これすげぇわ‼マジではやてさんが作ったんだろ‼うわぁ生でみれるなんて感激だ‼」

 

「わわわ、可愛いって、あっ、駄目です‼触っちゃ駄目です‼」

 

「じゃあ写真‼写真撮らせて‼」

 

「あわわわわ」

 

「すごい‼すごい‼照れてる‼赤くなってる‼これが夜天の書の欠片と、はやてさんから分けられたリンカーコアによって生み出された最高位のデバイス‼可愛いだけじゃなくて有能なんて凄い‼やばい‼可愛い‼」

 

ドン引きする位リインフォースⅡを構い倒していた。

 

リインフォースは目を回してあわあわと慌てている。

 

「それぐらいにしとき。リインが困ってるし」

 

「はやてさん、リインフォースを俺に下さい」

 

「駄目!!リインが困ってるやろ‼それにリインに先越されるなんて私は認めへん」

 

「はやてさん!?」

 

そしてヴィヴィオが宥めること数分。

 

「すんごい幸せな時間だった」

 

「リインは渡さへんで」

 

「そろそろ本題に入りましょう。先程からアインハルトさんが置いてきぼりです」

 

「はぁ、そうやなぁ」

 

「じゃーん‼これです」

 

そう言って差し出したのは掌大の大きさの猫のぬいぐるみ。

 

にゃあと鳴いてふわりと浮かび上がる。

 

「これはっ!?」

 

「知ってるんですかエレク先輩!?」

 

「すげぇ‼真正古代のベルカ式デバイスのハイブリッド・インテリジェント型‼まさしく現代に蘇った古代のテクノロジー‼正真正銘の特別機」

 

「えへへ私とアギトとはやてちゃんの合作ですから」

 

「凄い‼超有能‼益々欲しい‼リインフォースやーい、管理局辞めてうちで働けよ~給料は今の二倍いや三倍出すからさぁ~頼むよ~」

 

「えへへ」

 

「スカウト禁止‼」

 

そしてアインハルトがデバイスのマスター認証をしたり、個体名称をアスティオンで登録したりしてすっかり日が暮れる。

 

「はやてさんありがとうございました」

 

「こんなに可愛らしい子をありがとうございます」

 

「リイン管理局を辞めたくなったら連絡くれよ~。いつでも良いからな~」

 

「辞めませんよっ‼」

 

「元気でな~」

 

「また来いよな」

 

 

 

 

 

「そういえば何でアギトは勧誘しなかったんですか?」

 

「アギト?」

 

「ほら、今日一緒にいた紅い髪の」

 

「ああ~」

 

「アギトも融合機ですよ」

 

「ふぁっ!?」

 

「たしかレプリカじゃない本物の古代ベルカ式融合騎だったかなぁ?」

 

「嘘だろ。………俺戻るわ」

 

「駄目です‼ほらアインハルトさんも先輩を止めるの手伝って~」

 

 

 

 

 

「あれはストライクアーツ?」

 

海辺の街道をセグウェイで爆走していると砂浜でストライクアーツの練習を行う少女を見つける。

 

オレンジ髪の活発そうな美少女が巻き藁に向かい、蹴りの練習をしている。

 

「おぉ、あいつは強いな。それこそ都市本戦レベルだな。だが俺が見たことねぇって事は本番はクソ雑魚か、今年が初出場ってとこか」

 

「都市本戦ですか」

 

「あん?まだノーヴェに言われた事気にしてんのかよ」

 

「だって…」

 

「そんなにショックか?」

 

「それはそうだよ。いっぱい練習したんだから」

 

「エレク先輩、本当に私達は都市本戦では戦えないレベルなのですか?私には何が足りないのですか?」

 

「さぁ?知らんわ。ノーヴェが言うんならそうなんじゃねぇか」

 

「………」

 

「あとお前達を都市本戦に参加させる事は、できないこともない」

 

「え?」

 

「お前達は嫌がるだろうが、お前達が望むのなら俺がデバイスを作ってやる。それこそ女子のDSAAにはデバイス提出がねぇからな」

 

「それはちょっと……」

 

「真面目な話だが、お前らが俺のデバイスを使いこなせれば今からでも都市本戦五位以内は確約しよう」

 

「五位……」

 

「お前達が拳での戦闘に拘るのなら防御と回復、補助を専門にするデバイスを作っても良い。お前達が世間体を気のするのなら俺みたいに派手な奴じゃなくても良い。俺の作成だとバレない範囲で改造してやる」

 

「そんなこと

 

話を遮り言い募る。

 

「できるし、やってやる。それでも都市本戦出場位は確約してやる。さあどうする?」

 

「どうって…」

 

「優先順位を考えろ。自分のルールを決めろ。俺はルールに違反しない限りどんな手でも使うと決めている。勝つ為に。優勝する為に。だから俺は最低王者だし、形勢が不利になっても参加する。お前らは何がしたくてDSAAに参加するんだ?」

 

「私は覇王流を最強だと証明する為に」

 

「だからそれはどうやったら叶うんだ?DSAAで優勝したらそれなりにはその風潮は高まるだろう。だけどアインハルト、お前はそれがやりたいのか?」

 

「それは……」

 

「勝つ努力をするのは良いが、それは道具でも補えるものなんだぞ。それを選べるのにしないのは何故だ?」

 

「……………………」

 

「………はぁ。まぁこんなことはどうでもいいか。なんとなくで腕試しで。そんな理由で参加する奴もいるんだ。お前らの人生だ。好きに生きろ」

 

そう言うとエレクは一人でさっさと帰る。

 

セグウェイに乗ったエレクは瞬く間に視界から消え失せ、夕日に照らされた二人の少女とセグウェイ二機だけが公道には残った。




作者はifでも良いからラブコメ書こうと思い、宣言したのにエレク君がフラグを片っ端から煮溶かして殺戮兵器を作るせいで思い付くとこまでいかない!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次元世界最強の十代

日刊ランキング11位に入りました。
お気に入りが1000件を越えました‼
読者の皆さんありがとうございます‼

あまりの急増にちょっとブルってる。


「ヤベェ、殺しちまったか?」

 

荒野に存在するはいつもの鎧兜のバリアジャケットを纏ったエレクと、深く大きいクレーターの上にヤムチャポーズで横たわる黒いジャージの不審者。

 

「どうすりゃいいんだよ」

 

エレクは独り頭を抱えた。

 

 

 

 

 

エレクは魔法の実験を行う為、恐らく無人と思われる荒野を訪れていたのだ。

 

言ってしまえば、バンバン砲撃を撃ってみようという試みだったのだ。

 

そこでプラズマザンバーとスターライトブレイカーを同時に撃ち、ダブルブレイカーを再現しようとしたのだ。

 

そしてそれを成してしまえるだけの技術をエレクが持っていたのだ。

 

その結果がこの惨状であった。

 

馬鹿でかいクレーターの上にヤムチャポーズで横たわる黒いジャージの不審者。

 

「何故こうなったし。これ非殺傷設定だよなぁ?」

 

魔力炉三基の出力は安定していた。

 

8機の自動防衛砲台を駆使して、スターライトブレイカーまで完璧に再現できていた。

 

こうなったのは。

 

「プラズマザンバーとスターライトブレイカーのタイミングがズレたのと威力が結構違ったからか?」

 

そうあろうことかエレクの再現したこの凶悪魔法は、ぶつかった瞬間にお互いの軌道をずらし、制御を外れ、このフード被った不審者を巻き込んで荒野に落ちたのだ。

 

「うわぁ………。これって上から落とすように撃つ魔法だったのか。横に向けて撃つと二つの魔法が悪い具合に高め合って暴走するとは……。これは飛行制限あるDSAAでは使えねぇなぁ」

 

デバイスのデータを確認しつつ今回の反省点を考える。

 

「…うぅん……」

 

「ヤベェ起きる‼賠償金位なら良いが、DSAAの出場取消とかは困るぞ‼」

 

 

 

 

「はっ!?ウチは何を!?」

 

背中におぶっている黒ジャージの不審者が起きた。

 

顔も隠してたし、別に気にもしなかったんから気付かなかったが声的に女らしい。

 

「起きたか?荒野で倒れてるから何事かと思ったぞ」

 

「倒れてた?ウチが?」

 

「ああ。まったく予想はつかないけど、何かあったんじゃないか?俺がたまたま通り掛かったから良かったものの……気を付けた方が良いぞ。お前にも心配する人の一人や二人いるだろ?」

 

「あっ、ありがとうな。あの助けてくれて…」

 

「へーき、へーき。問題ねぇよ」

 

「そ、それでもう歩けるから降ろしてくれると嬉しいんやけど」

 

それは駄目だ 。

 

今降ろして万一後ろのクレーターを見られたら、記憶が戻ってしまうかもしれん。

 

「駄目だ。倒れてた女の子に無茶させられねぇよ」

 

完璧だ。

 

降ろさない理由と心配してますオーラを同時に放つ話術。

 

加えてそれを即興で思い付くアドリブ力。

 

「お、女の子って」

 

「ん、声的にそうだろ?初めて見たときは驚いたぜ。荒野で倒れてる人がいたんだから」

 

嘘は言ってない。

 

殺しちまったかと焦ったのも、人がいたのに驚いたのも本当だ。

 

「ごめんなぁ……」

 

「良いよ。このくらいなんてことねぇし、困った時はお互い様だ」

 

そんな思ってもないことをヌケヌケと喋っていると、ぐーと音が鳴る。

 

腹の虫が鳴いた音だ。

 

俺ではない。

 

「まったく……女子が荒野で行き倒れたりするなよ。多分意識不明で倒れてたのもそれが原因だぞ」

 

「こここれは違うんよ。昨日から何も食べてないからちょっとお腹が鳴っただけで」

 

「ほら、もうミッドの都市部だから帰れよ。お前だって荒野に住んでるんじゃないだろ?」

 

「あっと、うん」

 

「うん。気を付けて帰れよ」

 

移動用のデバイスをセグウェイに変形させて上に乗る。

 

ちなみにこのデバイスは他にもスケボーや自転車、ローラースケートにも変形できる。

 

「じゃあな」

 

初めは殺しちまったかと焦ったが乗り切ったぜ。

 

「うん。ありがとうな‼……うっ、頭がガンガンする…こ、これはピンクと金の……」

 

急いで少女の元へ戻り肩を掴む。

 

「と思ったけどお腹を空かせた女の子を一人にはできない‼飯おごってやるから一緒に来い‼」

 

「ええぇ!?」

 

 

 

 

 

「ウチはジークリンデ・エレミア。見ず知らずの私を助けてご飯までおごってくれるなんて君は良い人やなぁ」

 

撃ちのめした不審者が次元世界最強の十代女子だった。

 

むしゃむしゃと山盛りポテトを食べる様子はとてもじゃないがチャンピオンには見えない。

 

でも間違いなくジークリンデ・エレミアはDSAA優勝者であり、目の前でハンバーグを注文しているコイツだった。

 

ふむ。

 

しかし被害者がジークリンデ・エレミアだとすればもうひとつ分かることがある。

 

やはりあのダブルブレイカーは少し難点があるが、威力は折り紙付きだった。

 

確か俺がこのジークリンデ・エレミアを調べた時には、 彼女は「黒のエレミア」の後継者であった筈だ。

 

「黒のエレミア」とは歴代エレミアたちの戦闘経験を受け継ぐ古代ベルカの戦闘技術。

 

戦闘経験を蓄積し、時間を経る毎に強くなる最強の戦闘教育。

 

そしてその機能のひとつに、命の危険を感じると反射行動として「エレミアの神髄」状態が発生するという物がある。

 

この状態に入ると殆ど無意識で敵対者を攻撃し、使用者も制御困難である。

 

しかしジークリンデがそれを発動した様子はないので……

 

「抵抗も許さず一撃で沈めたのか。やっぱり人に撃つ魔法じゃないな」

 

「何か言った?」

 

「いいや、よく食べるなと」

 

「あっ……すみません奢ってもらうのに」

 

「いや金には困ってないから別に良い」

 

「そや、君の名前教えてくれへん?」

 

「エレク・クレイヴェル。デバイス技師でDSAA選手だ」

 

「じゃあエレくんって呼ぶな」

 

「良いよ」

 

「それよりDSAA選手やったんか。ウチも女子のDSAAでは結構有名な方やと思うんやけど知ってる?」

 

「優勝選手より有名な選手なんていねぇと思うけど」

 

「あはは、そやな~」

 

「てかジークリンデこそ俺のこと知らねぇだろ」

 

「え!?有名な選手やったの!?ごめんなぁ~ウチ男子の方はあんまり詳しくなくて」

 

「いや普通に知らないって言えよ。詳しくないとか見栄張るな」

 

「うっ、そんなに有名な選手なんか?」

 

「俺は世界代表戦四連覇者だからな」

 

「ふぁっ!?」

 

「俺ら次元世界最強の十代男女だから」

 

「ふぁっ!?まままままじなん!?」

 

「冗談じゃねぇよ」

 

「ええ~超有名人やな~」

 

「いやお前もだから」

 

そんなこんなでちゃっかり連絡先まで交換した。

 

ジークリンデは俺の悪名を知らないみたいだ。

 

まぁ俺の名前も知らなかったみたいだから不自然ではないけれど。

 

砲撃が生んだ奇跡の出会いである。

 

「このお礼はいつか必ず」

 

「いらねぇって」

 

「いやそんなことできんて」

 

これでようやく帰れる。

 

まだやりたいこともあるし、戦力の補充もしないと。

 

ダブルブレイカーのせいで俺の自動防衛砲台も半分が壊れたしな。

 

エレミアの技術は見たかったけれど……

 

「待て、ジークリンデ礼を返せ」

 

「え?」

 

聞けばジークリンデは射撃戦、格闘打撃戦、密着状態(ゼロレンジ)での掴み技(グラップル)など全てに優れる総合選手であるらしい。

 

「このデバイス持って魔法使え。それでお礼は良い」

 

「え?そんなことでええの?」

 

後日ジークは地獄を見た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

DSAAへ向けて

お気に入りが1100件越えました。
いつも感謝しています。



「嫌だ‼絶対に嫌だ‼」

 

「何でですか!?先輩が私の特訓を見たいって言うから先方にも話を通したんですよ」

 

「そこがシェベルの所とは聞いてない」

 

天瞳流の道場前の階段で二人の男女が騒ぎ立てる。

 

「何でそんなに嫌がるんですか」

 

「おめぇには関係ねぇだろ」

 

「相手方にも話を通したんですから関係はあります‼嫌だと言うのなら理由を話して下さい‼」

 

「嫌だね。シェベルと会うと絶対に戦うことになるし、俺は行かない。帰るわ」

 

「ちょっとは自分の発言に責任を持って下さい‼」

 

「嫌だ‼大体何でこんな所で訓練してんだ。ここは只の古臭い道場だぞ。武器持ち相手にしてぇなら俺が相手になってやるよ」

 

「ほう、興味深い話をしているね」

 

「ミカヤさん!?何故ここに!?」

 

「ミカヤ・シェベル!?」

 

「天月・霞‼」

 

「ええっ!?」

 

《Round Shield》

 

いきなりの居合斬りをデバイスの発動したシールドで防ぐ。

 

「危ねぇ!!いきなり斬りかかるとかキチガイかよ」

 

「ふふふ、君に会えるとは思っていなかったよ」

 

「俺だって会うつもりなんかなかったわ」

 

「なななな何でミカヤさんが先輩に斬りかかるんですか!?」

 

「アインハルトちゃん‼コイツは天瞳流の技だけ奪って逃げたんだよ」

 

「人聞きの悪いこと言うなよ‼もう天瞳流の技は再現できるようになったから門下生辞めたってだけじゃねぇか」

 

「ほう。君は『まあそれなりに有意義でした。でもこれ以上は時間の無駄なんで今月で辞めます。月謝には色を付けとくのでそれで門下生の皆と美味しい物でも食べて下さい』ってメールを送ったことを忘れてるのかな?」

 

「ひっ‼先輩そんなこと言ったんですか!?」

 

「ああ。気遣いまでしてたのに何かそれからシェベルの奴襲い掛かってくんだよ」

 

「ほ、本気で言ってるんですか!?」

 

「?」

 

「ほらね、コイツは人の心が分からないんだよ」

 

「これはひどい」

 

「何が何だか分からんが、罵倒されてることだけは分かった」

 

「分からないまま膾斬りになりな」

 

「たかが都市本戦レベルのシェベルさんが言うじゃないか」

 

「来いよエレク!傀儡兵なんか捨ててかかって来い!!」

 

「ぶっ殺してやる!傀儡兵なんて必要ねぇ!ガジェットだっていらねぇ!てめぇなんて怖かねぇ!!ぶちのめしてやらぁ!!」

 

「それでもデバイスと魔力炉は使うんですね」

 

アインハルトの冷静なツッコミは熱くなった二人には焼け石に水だった。

 

「エレク・クレイヴェル‼私は貴様を殺すのを二千年余り待ったぞ‼今宵の晴嵐は血に飢えている」

 

「対魔法装甲鎧セット・アップ‼武装展開、大太刀‼てめぇの技で死になミカヤ・シェベル‼」

 

いつもの黒い鎧のバリアジャケット姿で、展開した大太刀を構える。

 

二メートル程の鎧兜が刀というには大き過ぎる刃物を持つ姿はあまりにも威圧的で圧倒される。

 

「先輩も居合斬りを使えるのですか!?」

 

「まあ見てな。伊達に三ヶ月も一万三千の月謝払って興味ない剣道道場に通ってはねぇんだよ」

 

「殺して(バラ)して並べて揃えて晒してやる」

 

「やってみろ!!但しその時にはお前は八つ裂きになってるだろうけどな」

 

「生身では刀も録に握れん癖によく言うよ‼」

 

「おめぇは大会で『剣術なら勝ってた』とでも言いながら負けるんだよぉ!!」

 

「天瞳流を愚弄するか!!」

 

「天瞳流はしてねぇよ。お前を馬鹿にしてんだよ‼」

 

「御二人とも辞めてくださいよ~」

 

「安心しろ、アインハルト‼コイツをぶった斬ったら俺が特訓には付き合ってやっから」

 

「大丈夫だよ、アインハルトちゃん‼このクズを斬り捨てたら今日の特訓をしようね」

 

瞬間同時に二人の刃が激突する。

 

そして一度後ろに退き、再び刀を構える。

 

「模倣水月」

 

エレクの再現された斬撃が、オリジナルと寸分違わぬ精度でミカヤを襲う。

 

「水月‼」

 

それに負けじとミカヤも同じ技で応戦する。

 

刃と刃が交錯し、幾筋もの剣先が身体に届く。

 

そうなると鎧型のバリアジャケットを形成しているエレクの方が断然有利だ。

 

ミカヤはバリアジャケットに殆ど魔力を回さず、只速さと鋭さを求めたが故にエレクの一撃が致命的になっていた。

 

「相変わらずその機動鎧は狡いだろ‼」

 

「どんな手をつかおうが…………最終的に…勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」

 

しかしその圧倒的優位性を保ちながらも倒せない。

 

倒し切れない。

 

圧倒的機動性とパワー、堅牢なる装甲を持ってしてもミカヤを倒すには至らない。

 

エレクの剣筋を読みきり、威力が乗り切る前に刀の軌道を逸らす。

 

まともに受けずに、逸らし、叩き、弾く。

 

「くそっ‼ちょこまかと逃げやがって」

 

「当たらないね。確かにその技のコピーは驚く程の精度だが、ここまで近接してしまえば技量の地力が出てくるのさ。現に君は逸らしや弾くなんて技とも言えない技術に負けているのだからね」

 

「ぐっ‼魔力変換資質再現‼Type-Rio」

 

その音声トリガーでエレクの機動鎧が炎雷に包まれる。

 

鎧を外部から守る様に炎を纏いエレクは呵呵大笑する。

 

「はははははははは!これでどぉだぁ!これでお前をこのままじっくりきっちりローストビーフにしてやんよ」

 

「ひ――

 

「卑怯者かな?どこがだ?対策してないお前が悪い」

 

「コイツ……」

 

「これで貴様のアドバンテージは無くなった。近接戦ではお前が焼け死ぬか感電死するしな」

 

「ぐぬぬ」

 

「死に晒せぇ!!」

 

その後の一方的な戦闘は最早いじめと呼ぶべきものだった。

 

 

 

 

 

「やっと倒れたな‼ふう、大変だったなアインハルト」

 

「辞めて下さい‼私を共犯にカウントしないで下さい」

 

「とりあえずシェベルの晴嵐に自爆機能でも付けとくか。ここぞという時の為にな」

 

「辞めましょうよ……」

 

「ん、そうか。確かにシェベルに付き合ってる暇は無いな」

 

「え!?」

 

「急ぐんだろ。行くぞ」

 

「えっ!?どこにですか!?」

 

「はぁ?ボケてんのか?シェベルをぶった斬ったら俺が特訓には付き合うって言っただろ」

 

「うえっ!?あれって本気だったんですか!?」

 

「俺が嘘なんて吐くかよ。俺は今まで一度も嘘を吐いたことがねぇのが自慢なんだぜ」

 

「はぁ……それでどこに行くんですか?」

 

「測定器もねぇし、近接武器も二、三種類しかねぇから………俺の家に行こう。あそこは実験場もジムもラボもあるから」

 

「へっ!?」

 

 

 

 

 

「ハリー選手が脅すからビックリして防犯ブザー鳴らす所でしたよ」

 

「うぉい‼洒落にならんから辞めろ‼オレを社会的に殺す気か!?」

 

「コロナ抑えて‼エレク先輩じゃないから抑えて‼」

 

「エレク!?エレクって言ったよな?それってもしかしてエレク・クレイヴェルのことか?」

 

「ええ。ハリー選手は知ってるんですか?」

 

「まあ一応クラスメイトだ。それでお前ら本当に大丈夫か?あいつに脅されてるとか強制されてるなら言えよ。俺が責任持ってあいつを止めてやるからな」

 

「先輩が嫌われ過ぎてて草生えるwww」

 

「コロナが壊れたこと以外は大丈夫だと思えたら良いです」

 

「全然大丈夫じゃねぇええぇええ」

 

「そういえば先程ハリー選手は社会的に死ぬって言ってましたけど、多分これ押したら物理的に死にますよ」

 

「え、何それ怖い……」

 

「あれ!?それもしかして――

 

「そうこれはエレク先輩の発明品のひとつ防犯ブザー1号‼またの名を袋叩きスイッチ‼これを押すと最寄りのエレク先輩のラボから傀儡兵15体とAMFガジェット三機が転送されてくる優れものです‼」

 

「もうそんなの防犯ブザーじゃねぇだろうが!!」




活動報告以外でアンケートの方法をとる方法を知っている方がいらっしゃいましたら教えて下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

セグウェイ時々ドロップキック!!

注意
14時間30分前にも更新しました‼
前話のミカヤさんとのお話を見ていない方は先にそちらをご覧いただくことを推奨します。



訂正
二刀流等のデバイス形態の選手はどうなるんだという質問に対しまして以下の
『二個以上のデバイス及び、分裂するデバイスの使用を禁止する項目が追加された』

『二個以上のデバイス使用及び、三個以上に分裂する武器の形態を禁止する項目が追加された』
に変更させていただきます。

御迷惑をお掛けして申し訳ありません。


昼少し前の街道をアインハルトとエレクがセグウェイに乗り爆進していた。

 

「速‼やっぱりいつ乗っても速いです‼」

 

「遅いよりは速い方が良いだろ‼………てかアインハルト前八神家に行った時より運転が巧くなってるし何回か勝手に乗ってただろ」

 

「うっ」

 

「更に言えば、普段使用してなきゃ移動用デバイスなんて普通携帯してないよなぁ」

 

「すみません、先日は先に私達を置いて帰ったからもういらないのかと……」

 

「そんな訳ねぇだろ!それだって材料費だけで一万二千するんだぞ‼てかヴィヴィオだろ!?そんなことお前に吹き込んだの」

 

「あっ!?」

 

「あいつも出会った当初はあんな遠慮もできない子じゃなかったのに……外道のコロナとか、直ぐにキレるノーヴェとかがいるから健全な成長に害を及ぼすんだ…………」

 

「えぇぇええぇ!!」

 

大胆な責任転嫁だった。

 

エレクのせいである。

 

加えてコロナが外道化したのも、ノーヴェがキレ易くなったのもエレクのせいである。

 

つまり絶対にエレクが悪い。

 

「アインハルトお前は自己をしっかり持たないといけないよ」

 

「エレク先輩程自己中に生きるのもどうかと思います」

 

「は?お前走って行くか?」

 

「と思ったけど先輩は自分をしっかり持っているからこそ素晴らしい物が作れるんですよね?」

 

「はっはっはっ、嬉しいことを言うじゃないか。それはお前にやるよ」

 

「………チョロイ」

 

「ん?」

 

「そういえば先輩のラボはどこにあるんですか?」

 

「あーもうすぐ着ぐぅおぉぉおお――

 

横合いからドロップキックをされ、プロテクションを張りながら横転する。

 

怪我はしていないみたいだが、ピンボールの様に吹っ飛んで行く。

 

「くそがぁ!!相手になったらぁ!!」

 

すぐさま飛び起き機動鎧を展開するエレク・クレイヴェル。

 

「こ、コロナ走行中のセグウェイにドロップキックかますとか頭可笑しいよ」

 

「だって声掛けても気付かないでしょ?」

 

「だからって走行中のセグウェイにドロップキックはキチガイの所業だよ」

 

「死ね、モブがぁああぁあ!!貴様の死を通じて人間的に成長してやる!!」

 

新たに展開した巨大な砲身を構え、叫ぶ。

 

「全武装の出力リミッター解除‼魔力炉全力起動‼全武装フルバースト‼全機能を魔力弾の生成及び射出に特化‼」

 

展開するのは目を覆いたくなる数の自律小型砲台。

 

その数22機。

 

「アクセルシューター アバランチシフト改」

 

雪崩と表現される数の魔力弾が降り注ぐ魔法は、山ごと落ちてきたという表現がピッタリの凶悪魔法に改変されていた。

 

それをそこにいた全員が死んだ目で見る。

 

そして気付く、明らかに攻撃対象がコロナだけではないと。

 

「ギガントナックル‼」

 

コロナのゴライアスの降り下ろした一撃が魔法を弾き、その倍はある数の魔力弾にそのまま飲み込まれる。

 

「ふふっ」

 

リオはハイライトの消えた瞳で自嘲気味に微笑み打ちのめされる。

 

「旋衝破では数が多過ぎる‼」

 

アインハルトが片っ端から魔力弾を投げ返すが、体力が尽きて大量の魔力弾をその身に受ける。

 

「ガンブレイズ・フルバーストォォオォオオオォ」

 

ハリーの大威力の炎熱砲撃が魔力弾を一掃するが、射線外からの魔力弾に意識を刈り取られる。

 

 

 

 

 

「それがこの惨状?」

 

「ああ、思いの外『アクセルシューター アバランチシフト改』が強かったんだな」

 

「馬鹿かな?」

 

「ヴィヴィオよりは頭良い」

 

 

 

 

 

その後二十分程で皆意識を取り戻す。

 

「リオ大丈夫?」

 

「あっうん。今は全然大丈夫‼それよりヴィヴィオも来てたんだね」

 

「うん。空が見覚えのあるピンクに染まってたから急いで様子を見に来たんだよ」

 

「うぐぐ、先輩にいじめられた……」

 

「うっせぇぞコロナ‼おめぇが横合いからドロップキックとかいうキチガイ染みた行動とるからだろうが」

 

「だからってあれは酷い‼」

 

「そうだ‼先輩何で私達まで巻き込むんですか!関係ないじゃないですか!」

 

「そうだ‼そうだ‼」

 

「コロナ……コロナのせいで私はボコられたんだから黙ってて…」

 

「お、怒ってます‼ヴィヴィオさん、リオさんがかつてない程怒ってます‼」

 

「あれはリオだって怒りますよ。それはそうとアインハルトさんは怒ってないんですか?」

 

「あんまりは。DSAAにもあのような魔法を使う選手がいるかもしれないでしょう。今自分の弱点を知れて良かったです」

 

「流石にDSAAにもエレク先輩の様な選手はいないと信じたいんですけど」

 

「そういえばリオやコロナはわかりましたけど、アインハルトさん達は何で一緒に居たんですか?模擬戦相手はどうしたんです?」

 

「あ~えっとエレク先輩がフルボッコに……」

 

「ちょっと待って何でそうなったの!?」

 

アインハルトが今までの経緯を説明すると、ヴィヴィオは未だにコロナと共にリオに詰られているエレクの下に行く。

 

「え、エレク先輩‼私も先輩のラボ着いて行って良いですか?」

 

「え、どういうこと?」

 

「私も気になる。着いて行って良いでしょ?」

 

「三名位の追加なら問題ない。じゃあ行くか」

 

リオだけが何がなんだか分からずわたわたとしている。

 

「良し‼じゃあ丁度ここに三つ移動用デバイスがあるからセット・アップして――」

 

「あ、私は自分のあるんで大丈夫です」

 

「そうか、じゃあ……自分の!?お前それ俺のだから‼お前が只借りパクしてるだけだから‼」

 

「逆に考えるんだ、あげちゃってもいいさと考えるんだ」

 

「おめぇが言うな」

 

「じゃあ先輩のラボに行きましょう‼」

 

「おいコラ‼ヴィヴィオてめぇ返せや‼」

 

 

 

 

 

「何でアイツら攻撃の巻き添えくらって普通に話してんだよ……普通じゃねーよ‼」

 

ハリーの驚愕した呟きは誰の耳にも入ることはなかった。




今回は所謂繋ぎ回でした。
エレク君のお宅訪問は次回‼







目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お宅訪問

一度事故って書き上げた文章を消してしまい、萎え萎えしておりました。
これからも頑張っていくので応援よろしくお願いします。

ランキングに挙がったのも、モチベ回復にはなりました。


回りを広大な自然に囲まれた巨大ビル。

 

二十階以上ありそうな高級マンションをぐるりと取り囲む塀の入り口。

 

そこにエレク君御一行は佇んでいた。

 

「わぁ~大きいですねぇ~」

 

「先輩がお金持ちなのは知ってたけどやっぱり大きいです」

 

「これ丸ごと先輩のラボなんですよね」

 

「あぁ、土地までな」

 

「聞かれてないことまで言わなくて良いですよ先輩」

 

「コロナ、貴様は目上の者に対する礼儀を身に付けろ」

 

「歳が上なだけでは目上の者とは言えないと思いますけど」

 

「上等だ教育してやろうか?あっ、まだ門の内側に入ろうとすんな」

 

その時門をペタペタと触っていたリオをエレクが止める。

 

「え?何でですか?」

 

「俺特製の警備ロボがわんさか集まって来るし、管理局にも連絡が行くから面倒臭い」

 

「ん~リオ入ってみて」

 

「入らないよ‼最近コロナ黒いよ」

 

そんな漫才の横でエレクが四人のゲスト登録を行う。

 

「管理者権限。ゲスト認証。高町ヴィヴィオ、リオ・ウェズリー、コロナ・ティミル、アインハルト・ストラトスを攻撃対象外認定。入館を許可」

 

《了解。タカマチ・ヴィヴィオ、リオ・ウェズリー、コロナ・ティミル、アインハルト・ストラトスを攻撃対象外認定。入館を許可。ゲスト権限の発行を完了しました。ようこそいらっしゃいました皆様。お帰りなさいませエレク様》

 

ガコンと三重の扉が開き、エレク達を迎え入れる。

 

「凄いね悪の組織みたい」

 

「エレク先輩はある意味独り悪の組織だと思うよ」

 

「これは凄いですね」

 

 

 

 

 

所変わってラボ内部。

至るところに怪しい機械や部品が散乱している。

 

「先輩あれって何ですか?」

 

「メカフリードMk-2。人間を遥かに超えた魔力量と既存の生命体ではできない駆動を行える魔導兵器だ。お前の魔力変換資質を再現しているから電撃、炎熱に特化した戦闘スタイルで、魔力収束機構も搭載。ミッドでも三時間程の待機状態で戦闘も行える魔導師ランクAA+相当のぶっ壊れ性能の兵器だ。まあ敵味方識別装置が正常に作動しないんだけどな」

 

「本当に壊れてる」

 

「意味無っ‼」

 

「一応俺とキャロだけは認識できるんだがな」

 

「さすキャロ!!」

 

「あの、あそこにある人型の機械は何ですか?」

 

そこにあるのは人間大の傀儡兵。

 

地獄の模擬戦で最後のだめ押しに使われた物に似ているが、その時の物よりも全体的にスリムで全長も二メートル程しかない。

 

スッキリした必要最低限の装甲と、脚部に付いたブースターから機動力を重視したことが見てとれる。

 

武装もなく、素手での戦闘を想定しているらしい。

 

しかも翠と白でアインハルトのバリアジャケットと同じ覇王カラーだ。

 

そんな理由からかアインハルトはウズウズと身体を揺らしている。

 

「あれか。あれは覇王サマ5号だ。俺がお前の戦闘技術の完全模倣を目指して作成した徒手空拳型の傀儡兵だ。機動力の関係から魔力収束機構は搭載できなかったが、素の身体能力が桁違いだからお前と同程度かそれ以上の戦闘能力を持ってる。つまりそれなりに強いけど機動力重視の機体な為継続戦闘力に欠ける」

 

「ははぁ、是非一度闘ってみたいですね」

 

「お前は武器持ちを想定した訓練をするんだろぉが。まぁ殺りたいなら後日来い。こいつも今伸び悩んでるからな」

 

「ええ。後日また訪問させて頂きます」

 

「せっ、先輩あれ!あれは何!?」

 

コロナが強引に割り込んで来て疑問をぶつける。

 

アインハルトを半ば突飛ばしたことにも気付いていない興奮っぷりだ。

 

コロナの指差す先には八メートル程の人型の機械。

掌にある魔法の射出口と重厚な装甲、肩に搭載された二基の砲台が特徴的だ。

 

先の傀儡兵とは対称的に機動力を捨て、装甲と遠距離砲撃に秀でた機体である。

 

真っ白な装甲に赤と青のストライプが映える、とても強そうな機械だ。

 

「これは俺がどこまで大きいデバイスを作れるのかというコンセプトで開発した、デバイス自律戦闘補助機器。強化外装‐NOHANA。中央に存在する機関部にインテリジェントデバイスのコアを接続することでデバイス単体での戦闘が行えるのだ。しかも魔力でも電力でも、はたまた原子力でもエネルギー源に変換できるからAMF下でも十分な戦力が期待できる」

 

「凄い‼天才‼巨大ロボだぁ‼」

 

「す、凄い‼コロナが素直に褒めてる」

 

「どうしました?ヴィヴィオさん」

 

「アインハルトさん…何か既視感が………」

 

「ははははは‼少し調節すればブランゼルでも動かせる筈だぁ‼」

 

「凄い‼凄い‼」

 

「……………先輩あの夜天の書にそっくりなあれは?」

 

ヴィヴィオがおずおずと腕を挙げて質問する。

その先には茶色い表紙に金の十字架があしらわれた本。

 

「前八神さんの家行った時にこっそり機材持ち込んで作った夜天の書のレプリカ」

 

「えええぇえぇえぇぇぇえ」

 

「いやあんな宝の山に持ってかない筈ないから」

 

「ど、どうなったんですか?」

 

「全然上手くいかなかった。魔法技術の収集、研究用の収集蓄積型の巨大ストレージとしてなら完璧。転生機能とデバイスによるマスター選定までは苦労はしたが再現できた。だけど管制人格や防衛プログラム、無限再生機能なんかは全然ダメ」

 

「いや。前三つだけでもロストロギア級なんですけど」

 

「はぁ~融合型デバイス完成させてぇ。DSAAで来年くらいに使う予定だったんだけどなぁ~。今の出来じゃ0.2%くらいの確率で融合事故起きるんだよなあ」

 

「融合事故?それに 0.2%って少ないような…… 」

 

「馬鹿かお前‼毎回デバイスをセットアップする度に0.2%のガチャ引いてたまるか!!大当たりでデバイスに使用者の肉体がのっとられたり、勝手に自律行動を行われるんだぞ」

 

「確かにそれは嫌ですねぇ。でも元々ロストロギアの生成なんて無理だと思うよ。失われた技術で作られた物がロストロギアなんだから」

 

「俺の夢のひとつに夜天の書を超えるデバイスの開発があるから却下」

 

「やっぱり先輩って頭がカッ飛んでますね」

 

 

 

 

 

ラボを抜けて実験室に移動する。

 

乱雑な開発室と比べ、シュミレータールームは何もない。

只々白い部屋だ。

 

「ほらアインハルト武器持ちとの模擬戦だ」

 

そこで待っていると、エレクが居合刀やハルバート、双剣、銃剣など多種多様な武器を持つ傀儡兵を連れてやって来る。

 

「これは?」

 

「近接特化の傀儡兵。完璧なのはこの居合の奴。絶対に本家より強い‼他の奴はまあまあだが無いよりはマシだ。このダールグリュンモデルなんかは本家よりも技が少ないが、魔力量と筋力では本家を超える耐久性を持ってる」

 

確かにハルバートを持つ傀儡兵は固そうでヴィヴィオ達では倒せそうもない。

 

「ほ~」

 

「じゃあ適当にやっとけ」

 

「うぇっ!?」

 

「データ収集の為に連れて来たんじゃないんですか!?」

 

「いやこの実験室にいれば機材が勝手にデータ採ってくれるから」

 

「でも私達あの傀儡兵の動かし方わからないよ」

 

「わかる必要はない」

 

「なっ何で?」

 

嫌な予感を感じながらも問う。

 

「ここの訓練プログラムが死なない程度に殺してくれるから」

 

「うわぁ~」

 

「じゃあな」

 

「待って‼ちょっと待って‼」

 

「スイッチオン!!」

 

《訓練プログラムを機動。対称、高町ヴィヴィオ、リオ・ウェズリー、コロナ・ティミル、アインハルト・ストラトスの四名。これより訓練を開始します》

 

「うわぁ~~~」

 

 

 

 

 

死屍累々。

 

そんな言葉が似合う実験室だった。

 

ボロボロになって倒れ伏す十代女子と、スクラップになった幾つかの傀儡兵。

 

皆仰向けになって肩で息をしている。

 

リオやコロナなんかは疲れ果てて気絶している。

 

「………………死ぬかと思いました」

 

「………エレク先輩は何してたの?」

 

「魔力制御の練習だよ」

 

「魔力制御?」

 

「そっ、魔力炉あっても魔力の射出はコツいるし」

 

「コツですか?」

 

「そ、俺みたいなゴミ魔力量じゃ練習なしでS+ランクの魔力使えるわけないでしょ。今まで自転車に乗ってた奴が自転車にブースター付けて速くなったからって、乗りこなせるかどうかは別なんだよ。普通は事故る。だから道具を使うのにも練習期間ってやつが必要なんだよ」

 

そこで一度言葉を切り、滅多に無い真面目な表情で続ける。

 

「だからこそ最後の通告だ。お前達は俺の作成したデバイスを使わないのか?ここが今間に合うギリギリのラインだ。デバイスをお前ら用に調整できる最終ラインだ」

 

「……………………」

 

「今からでも都市本戦五位以内は確約しよう。お前らはどうする?」

 

「……私は強くなりたいです。 大切な人を、好きな人を守れるように。 ……確かに先輩のデバイスを使った方が効率が良いし、簡単かもしれないです。だけど今回のDSAAでは自分の力を試したい‼どこまで行けるのか知りたい‼……………だから今回はエレク先輩のデバイスは使わないと決めました。本当にありがとうございます」

 

「構わねぇよ。………お前みたいに成長性のある奴なら身体が出来上がってからの方が俺の道具を使いこなせるし、強くなれるだろ。それでアインハルトお前はどうするんだ?」

 

「…私は………私は……」

 

「お前は何がしたい?何故闘う?」

 

「……私はベルカで覇王流が最強だと示したかった。………でもそんなことをできない事は分かっていました。私には分かりません。自分が何をしたいのか。何故闘っているのか。………だからこれがわかるまでは使いません。何となく、分からないけれど私の目指したモノではないと思うから」

 

「ふぅん。相変わらず訳わかんねぇ奴だな。お前は」

 

「はい」

 

「が、そこまで言ったんだ。無様な結果見せねぇように精々頑張れや」

 

「「はい」」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

DSAA開幕

インターミドル地区予選。

 

地区選考会を好成績で突破し、スーパーノービスからのスタートを切ったヴィヴィオ達ナカジマジム一同会場に来ていた。

 

「ついに来ました。スーパーノービスの会場‼」

 

「みんなでスーパーノービスに上がれるなんて夢みたいです」

 

「本当に久々にコロナが戻ってる‼健気だ‼エレク先輩が来てからは絶滅天然記念物扱いになっていた健気なコロナだ!!」

 

「それよりも気になっていたのですが………あれは何をやっているのでしょうか?」

 

そう言って指し示す先には明らかにお金で雇われたデータ収集班とそれに指示を出すエレクがいた。

 

「あぁ、あれには触れないようにしていたのに」

 

大会の運営に支障が出る訳ではないだろうのだろう。

 

ただエレクの存在する一角が皆個人で使用するようなものではない計測機材を持ってるだけで。

 

大体二十人くらいの人間がガチ目のカメラなんかを持っているだけで。

 

何となく十代の少女としては関わりたくない姿だった。

 

「完全にエレクだ」

 

ノーヴェは断言し、

 

「私もそう思う」

 

ヴィヴィオは同意し、

 

「それ以外にないよ」

 

リオは賛同し、

 

「エレク先輩常識ないから」

 

コロナが罵った。

 

天然記念物の健気コロナが絶滅した瞬間であった。

 

 

 

 

 

「うわっ、エレクじゃん何してんだよ」

 

「よお、ハリー学校外で会うのは初めてだな」

 

「オレは会いたくなかったけどな」

 

「健闘を期待してるぞ。お前の今までの努力と技術、技の限りを尽くしてくれたまえ」

 

「うわぁ、ここまでイラついて、魂胆が見え見えの応援初めてだ」

 

「ぶっちゃけ全力尽くしてくれたら勝敗なんて関係ないよね。悔いを残さないのが一番大切‼」

 

「良い台詞っぽいけど全然全然そんなことねぇな」

 

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を見つけたのかヴィクターが歩み寄る。

 

「ちょっと不良娘‼そんなとこで……えっ、エレク・クレイヴェル!?」

 

「やあやあ、シードなのにこんなところにいて良いのかなダールグリュン選手」

 

「貴方‼ジークに何をしたんですの!?」

 

「は?」

 

「前回会ったときも貴方の話ばかり!!エレくんにごはん奢ってもらった、エレくんにデバイスをもらったって。私だってそれぐらいやってあげるのに。何故貴方なんですか!?」

 

「なるなる。俺がダールグリュン選手より強いからじゃね?それかダールグリュン選手がエレミアより糞雑魚だからかねぇ?」

 

「デバイスを構えなさい。ぶちのめして差し上げます」

 

「ほう。高々都市本戦レベルのダールグリュン選手が次元世界最強の俺と戦えると?」

 

「辞めろ!!こんな所で喧嘩すんな!」

 

ハリーはヴィクターが喧嘩を売った瞬間に、本番を遥かに超えるスピードで後ろからヴィクターを羽交い締めにする。

 

「は?貴方には関係ないでしょう。怖いのなら会場の隅っこにでも蹲ってなさい」

 

流石にこの反応は想定外だったのかヴィクターも困惑している。

 

「馬鹿か!!お前らが外に出ろ!!いや後でお嬢様の家でやれ!!そうしろ!!それが良い!!それであわよくば地区予選前にリタイアしちまいな!!」

 

取り乱して大声で喚く。

 

「あ、貴方どうしたのよ。キャラ壊れてるわよ」

 

「黙れ。オレはあんな悪夢に捲き込まれないんだったらキャラなんて捨ててやる覚悟なんだよ!!空を覆い尽くす弾幕なんて無理ゲーなんだぞ!!」

 

そんな二人をチェーンバインドが縛り上げる。

 

「こーらー‼そこで何をしてるんですか‼都市本戦常連の上位選手がリング外で乱闘なん………て。……エレク・クレイヴェル選手?えっ?次元世界最強の?最低王者の?」

 

「やあ、エルス・タスミン選手。如何にも俺が次元世界最強の十代男子にしてデバイス工学の奇才エレク・クレイヴェルだ」

 

「えぇぇえええぇええぇえ!!」

 

その声を聞き付けたのか観客がざわざわと騒ぎ出す。

 

「ヤベェ‼騒ぎになる‼オレはこのキチガイと一緒にいるのを見られるのだけは死んでも嫌だ」

 

とハリーはチェーンバインドを引きちぎり一目散に

その場を去る。

 

「私もここは帰らせていただきます」

 

そしてその並々ならぬ情熱に危機感を覚えたのかヴィクターもそれに続く。

 

そしてデータ収集を中断して帰る訳もないエレクと、注目を集めたが仕事があるので帰るに帰れないエルス。

 

そしてそれを遠巻きに眺める観客が多数。

 

「じゃ、じゃあ私はこれで……」

 

「待てよ。エルス選手」

 

「えっ」

 

「俺に注目だけ集めて帰るなんて許されねぇぞ」

 

「うぇっ」

 

そして衆人環視の中気まずそうに試合を観るエルスと機材片手にノリノリでルールーを応援するエレク。

 

そしてそれを眺めて声を掛けるのを躊躇する次元世界最強の十代女子が残った。

 

 

 

 

 

「次はエリートクラスでの試合だな‼アインハルトとコロナは同門同士大いに潰し合えよ」

 

「やっぱり最低ですよねエレク先輩って」

 

「お前の次の対戦相手であるハリーのデータ欲しくないの?」

 

「うっ」

 

「弱点から戦闘スタイル。今までの癖や技。ハリーモデルの傀儡兵もいるんだけど」

 

「ううぅぅううぅうう」

 

エレクにプライドを棄てて助力を乞うべきか本気で悩むリオの横を抜けてアインハルトが前に出る。

 

「エレク先輩。私を鍛えてくれませんか?」

 

「ほう」

 

「なっ、本気ですか!?」

 

ヴィヴィオは本気で驚いたのか目を見開く。

 

「アインハルトさん生きるのに希望を持って‼」

 

「リオは後でガンフレイムでボコるわ」

 

リオは口を滑らせて誤爆する。

 

「これは本気です。エレク先輩のデバイスを使わないとは言いましたが、私は強くなることを諦めた訳ではありません」

 

「良いぜ。しっかりと完璧に、徒手空拳でマイストアーツを潰す方法を教えてやる」

 

「「なっ」」

 

驚き恐る恐る表情を確認するヴィヴィオとリオを尻目にコロナは更に爆弾を投げ込む。

 

「じゃあ私も覇王流の使い手をマイストアーツで完封する方法教えて下さい」

 

「「コロナ!?」」

 

「ふーん。面白い。が、俺はもうアインハルトを助けてやると言った後なんだが」

 

「言わなくても分かっているのに態々言わせるんですか?」

 

「はははっ、良いな。面白い」

 

「えっ?えっ?どういうこと?」

 

リオが混乱してキョロキョロと皆の顔を見回す。

 

「エレク先輩説明してください」

 

「ヴィヴィオさん。今までのことからも分かる通りエレク先輩はぶっちゃけデータ収集が出来ればそれで良いんですよ」

 

ヴィヴィオの問いに些か苦い顔のアインハルトが答える。

 

「そう。だからこそ俺はどちらにも肩入れしないで手伝える」

 

「それこそ先輩は純粋に私達を強くしてくれる。強ければ強くなる程エレク先輩にとっても得だから」

 

コロナも補足説明を入れる。

 

「Exactly‼その通りだ‼」

 

「なるほど。正直私達が勝っても負けてもどうでも良いと思っているエレク先輩だからこそできる手なんだね」

 

納得したのかヴィヴィオも頷いている。

 

「それにエレク先輩なら人手も問題ないしね」

 

「最低の人間性を持つ選手だからこそ最適なんだね」

 

「先輩私やリオも鍛えて下さい」

 

「良いだろう。早速今日から始めるぞ」

 

「いえ、ノーヴェに今日は休めって言われているし、一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいので私は自分のセグウェイで帰ります」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

インターミドル都市本選上位選手

アインハルトVSコロナは書いてみても面白くなかったので削りました。
楽しみにして下さった方がいたらすみません。
そういえば無限書庫編はシャンテいないけど何故ハブなんでしょうか。


「どんまいコロナ。これは地力の差だな」

 

「くそっ‼アインハルトさんがあそこで避けてればトラップが発動したのに」

 

「残念だったね」

 

「正直コロナさんが強過ぎてもう一度闘ったら勝てる自信がありません。しかも眼が据わってて凄い怖かったです」

 

エレクが煽りに煽り、散々に強化したアインハルトとコロナの闘いは寸でのところでアインハルトに軍配が上がっていた。

 

「畜生‼こんなに悔しいなら先輩のデバイスを使えば良かった‼アインハルトさんをフルボッコにすれば良かった‼」

 

「しっかりしてコロナ‼ここは人がいるから‼抑えて‼」

 

コロナ・ティミルVSアインハルト・ストラトス

 

アインハルト・ストラトスの勝利‼

 

 

 

 

 

「うーん。順当な結果だ。まさかハリーの奴が遠隔砲撃を修得していたのか。……… このエレクの目をもってしても見抜けぬとは!!天才のエレク一生の不覚!!」

 

「これはあれです。先輩のシュミレーターが悪いです。 あんな隠し玉があったなんて聞いてませんでした」

 

「はぁ?俺がハリー対策してやったから序盤有利に闘えたんだろ‼それを生かせず慢心したお前が悪い」

 

「知ってるんですよ‼そもそも先輩がハリー選手がこれまでの成長具合から遠隔砲撃を修得する可能性が高かったのに、面白いからって理由で嘘教えたの‼ヴィヴィオから『やはりハリーは遠隔砲撃を修得していたか……』って呟いていたって教えてくれたんですから‼」

 

「それは言わない約束じゃ……」

 

ヴィヴィオが慌てて口を塞ぐ。

 

「とりまヴィヴィオは断空拳ね」

 

「いやぁあぁああ」

 

拳を握るエレクを見て恐怖に戦くヴィヴィオ。

 

「まぁ。うん、あれだ。嘘ではないな。言わなかっただけだ」

 

「これで完璧にハリー選手に勝てるって言ってましたよね」

 

「敗北の責任を他人に押し付ける奴に未来はない」

 

「クズなのにすっげぇ良い台詞!!」

 

ヴィヴィオが台詞のチョイスに先程とは異なる意味で身を震わせた。

 

ハリー・トライベッカVSリオ・ウェズリー

 

ハリー・トライベッカの勝利‼

 

 

 

 

 

「言ったよなぁ‼相手はメンタルが貧弱なんだからそこを攻めろって。折角の作戦を無視しやがってよぉ」

 

「エレク先輩の作戦ってアレですよね?」

 

「分かってること聞くのは愚か者だ」

 

「エレク先輩もよくやりますよね。流石愚か者の代表格‼」

 

「ディバインバスター」

 

「コロナァァァアアァアア」

 

おもむろに隣のコロナに砲撃魔法を放つ。

 

些かの躊躇いもない行動だった。

 

「ブチのめす」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!

 

という感じである。

 

エレク君はギャングの様な観念をお持ちだった。

 

ヴィヴィオの魂の叫びが哀愁を誘う。

 

「いつも言ってるだろ、勝てばいい。どんな手を使おうとって」

 

「私も言ってますよね。私は勝ち方を選ぶって。汚い手は使わないって」

 

「汚い手?」

 

「何本気で困惑した様な顔してるんですか!!」

 

「俺の作戦のどこが気に入らんのだ」

 

「いくら勝ちたいからってミウラさんに剃刀レターや脅迫電話なんてありえません!!」

 

「そこまでいかんでも明確に敵意をぶつけるだけでも効果は抜群だぞ」

 

「そんなの格闘競技選手の闘いじゃありません!!」

 

「メンタルが弱い奴の弱点を突くのが何故いけない‼」

 

「もうやだぁ、この先輩」

 

ミウラ・リナルディVS高町ヴィヴィオ

 

ミウラ・リナルディの勝利‼

 

 

 

 

 

「やはりチャンピオンは強かった」

 

「そういう事淡々と言えるのはやっぱりエレク先輩のせいだよね~」

 

KOされたアインハルトがベットの上で上半身を持ち上げながら放った言葉にヴィヴィオが呑気に返す。

 

そんな返事こそエレクに会う以前のヴィヴィオには信じられない発言ではあるのだが。

 

エレクの被害を受けて鍛え上げられたメンタルは先日の敗北を引き摺る事を許さなかったのだ。

 

「おい、寝てねぇで立ち上がれ。速やかに」

 

選手用の保健室にエレクが飛び込む様に入室する。

 

後ろにもリオとコロナ、ノーヴェと続く。

 

「ちょっとエレク先輩‼配慮が足りませんよ‼」

 

「そうだ。アインハルトにだって事情があるんだぞ」

 

「八神はやてが俺達を呼んでんだ。ささっと支度しろ。チャンピオンも来てんだ」

 

リオとノーヴェの叱責を完全スルーして更に続ける。

 

「あっ、わかりました」

 

そんな暴挙にもまるで動じずアインハルトが返事をする。

 

「あるぇすんごい軽い」

 

「エレク先輩………」

 

「こ、これは喜んで良いのか………?」

 

後輩二人はエレクの影響力を強く感じ、コーチはアインハルトの勝敗を引き摺らない性格への変移を成長と呼んで良いのか迷っていた。

 

ジークリンデ・エレミアVSアインハルト・ストラトス

 

ジークリンデ・エレミアの勝利‼

 

 

 

 

 

ホテルの最上階と見える、夜景の綺麗なワンフロア。

 

そこにインターミドル都市本選の上位選手とチャンピオン二人、期待のルーキに元機動六課の部隊長であり現海上司令というそうそうたる面々が揃っていた。

 

「リインがいねぇじゃねぇかぁああああぁぁああ」

 

そしてそんな面々の中で悲しげに慟哭する少年。

 

「天瞳漣月」

 

そしてそんな彼の首を刈り取らんと斬撃を放つミカヤ。

 

《Circle Protection》

 

しかしそれを余裕綽々に半球形の防御魔法が弾き返す。

 

《Restrict Lock》《Photon Lancer》

 

そして刀を弾かれた体勢のまま空間に固定され、エレクの周囲に生成された四基のスフィアから、槍の形をした雷が即座に発射される。

 

勿論そんな反撃に対処できるわけもなく動けないミカヤに多数の魔力弾が着弾する。

 

「みっ、ミカヤさーん!!」

 

もうすっかり定着しつつあるヴィヴィオの叫びが高級感漂うフロアに響く。

 

「実験台御苦労様。しっかり作動して良かったね」

 

「いつもの如くエレク先輩は女性にも容赦ないなぁ」

 

「あれってどう破るのでしょうか。私の断空拳でもあれは………」

 

「そんなことよりこの海老美味しいね。リオも食べたら?」

 

「ミカヤちゃん哀れなり。エレクと関わったばっかりに………」

 

叫んだヴィヴィオや、ミカヤを助け起こしたノーヴェを含めナカジマジムの面々に混乱はない。

 

「やっぱりナカジマジムヤバいわ」

 

不良少女は距離を取る。

 

「……?……………………?」

 

「えっ?チャンピオン?えっ?」

 

抜剣少女はフリーズし、生徒会長は現実を認識できない。

 

「げっ、外道!女性にやる技ではありませんわ!!」

 

「何でミカヤさん飛び掛かったんや!?」

 

雷帝お嬢様は素直な感想を溢し、次元世界最強の十代女子は疑問を叫ぶ。

 

「ちょっとは話させてくれへんかなぁ」

 

そして元機動六課部隊長は肩を落として項垂れた。

 

 

 

 

 

都市本選の上位選手相手に喧嘩を叩き売りながら歩くエレクを自身のストレージデバイスを与えることで沈め、意識がないミカヤを医務室に運び何とか場を治める。

 

既に疲労困憊のはやてはなんとか全員にアインハルトやエレミアの因縁を説明する。

 

そして話が終わり、漸くエレクの異変に気付く。

 

思い返してみればアインハルトやジークが祖先の記憶を不完全ながらも継承しているという話が出た時から全くと言って良い程喋っていない。

 

不気味な程静かだ。

 

それに皆が気付いた瞬間、今までの驚きや憐敏が消える。

 

それを圧倒的に上回る悪寒が全員の思考を断ち切る。

 

「……………………………………………」

 

「エレク先輩。普段なら黙るのは大歓迎ですけどこの状況で黙るのはすんごく怖いんですけど………」

 

リオが恐る恐るエレクに声を掛ける。

 

それでも全く変わらない。

 

そして静寂が訪れ、エレクの呟きが聞こえてしまう。

 

「……記憶…経験……………転写………魔法……ベルカ……憑依………………………………………不老不死…」

 

考え事をしているのか焦点の定まらない目。

 

飛ばし飛ばしで全容は分からないが、聞こえる単語だけで今日初めて会った面々にも嫌な予感が襲い掛かる。

 

時々チラリとアインハルトやジークに眼を向けるのだがそれが人を見る目ではない。

 

「アウトです!!完全、完璧にアウトです!!」

 

ヴィヴィオがエレクの視界を遮る為に両手を広げて立ち塞がる。

 

そんな勇気ある行動を受けてゆっくりと視線の焦点が結ばれる。

 

「ひぃ!?」

 

そこにあったのは面倒臭さ。

 

何としても障害を排除するという確固たる意志。

 

「総員戦闘準備‼死ぬ気で止めて‼」

 

ヴィヴィオの号令にナカジマジムの全員がノータイムでセットアップと戦闘準備を済ませる。

 

《鎮圧用兵装一号から五号まで解放。鎮圧、捕獲行動を開始します》

 

「アインハルトさんには指一本触れさせんぞ!!」

 

「頑張りましょうヴィヴィオさん!!」

 

「リンチしてやる」

 

「エレク先輩と闘うのはやだなぁ」

 

「アインハルトとヴィヴィオは右、リオとコロナは左。あたしは正面から。タイミングは合わせろ」

 

そして高級感漂うホテルの最上階は他の上位選手を巻き込んで戦闘区域になり、後から合流したなのはフェイトに鎮圧されるまで続いた。

 

拳とバインド、閃光、爆炎、投げ、雷、傀儡兵やガジェットに至るまでありとあらゆる攻撃が飛び交いホテル最上階は無惨にもぶっ壊れた。

 

しかしホテルへの弁償はエレクが 三千万☆PON☆と払ったことで問題はなかった。

 

「………………………………………なに…………何これ……?」

 

それを覗いていた魔女っ娘を大いに混乱させたが。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無限書庫の救世主(前編)

お気に入りが減ってる。
多分DASS編をキングクリムゾンしたからだよなぁ。
と思う今日この頃。
仕方なかったんや。
作者には道具無しでオリジナル技とか作れんから。


無限書庫。

 

それは時空管理局本局内にある、あらゆる書籍やデータを収めた超巨大データベース。

 

そこを正しく運用すれば得られない情報など無いとまで言われる次元世界最大規模の書庫。

 

「まあヴィヴィオ達が無限書庫の司書資格を持っているのは良い。オレもまあ納得する。…………でも絶対に‼絶対にお前だけは駄目だろ‼」

 

「私も管理局の危機管理能力を疑います」

 

「あたしはいよいよ第二のドクターにならないか最近不安だ」

 

「エレク先輩、偽造は駄目ですよ」

 

ハリーの指摘に追従するように口々に騒ぎ出す。

 

それをどこ吹く風と受け流し、どや顔で司書資格を見せるエレク。

 

「はははは、これが今世紀最高クラスの天才の力よ‼」

 

「そうだった………こいつ普段はデバイス技能だけの馬鹿なのに勉強できるんだ……」

 

「学年首席だが?」

 

『何か質問ある?』みたいな声が聞こえそうなどや顔である。

 

「えっ、本当ですか!?」

 

「うん……」

 

ヴィヴィオの『そんな馬鹿な!!』みたいな顔を見てハリーが疲れた顔で頷く。

 

「同じ学校でもハリーとは違って俺は天才さぁ~」

 

「うぐぐ、中学退学になってる癖に……」

 

「馬鹿め‼俺はもう開発者として生計立ててるから学歴とか必要ねぇのさ」

 

ビシリと指を突き付けて見下す。

 

「ぬぐぐ」

 

「大丈夫です。ハリー選手の方がよっぽどモラルがありますから」

 

「すまねぇチビッ子。ナカジマジムはおかしい奴ばかりだと思っててごめんなぁ」

 

「ひどいです!!キチガイはエレク先輩だけです………あと最近コロナとか……」

 

段々と小さくなる声が多分に心当たりが存在することを示している。

 

「辞めろ‼ナカジマジムがキチガイを量産してるみたいな表現は慎め‼姉貴に顔向けできねぇ‼」

 

「そういえば何で退学になったんですか?」

 

アインハルトが純粋な疑問をぶつける。

 

「学校の警備システムや備品を改造しまくった」

 

「………………………………………」

 

皆何も言えなかったが、らしいなとは思った。

 

そのまま暫く沈黙が続くが、それを打ち切って最後に付け加える。

 

「最後にひとつだけ言いたいんですけど、ミカヤさんどうにかしてください……」

 

そこには晴嵐片手にいつでも抜刀できる姿勢でエレクを睨むミカヤ。

 

完全にいつもの上位選手の余裕がない。

 

ナカジマジムのメンバー以外はあまりの様子に声も出ない様子だ。

 

「いやぁ、あんな負け犬には何もできんよ。なぁミウラちゃん?」

 

「ええええええええええええ!?」

 

キラーパスを受けて本気で驚くミウラ。

 

完全にエレクの玩具扱いである。

 

「あまりミウラさんを虐めないで下さい」

 

「馬鹿を言え。ミウラが潰れて一番嬉しいのはお前だろ?」

 

「エレク先輩、あんまり酷いと聖王教会の全力で潰すよ」

 

「やってみろ」

 

そんな騒ぎから少し離れた場所で都市本選上位選手が語り合う。

 

「なぁオレらで今のうちにエレクを潰すのがDSAAの延いては世界の為なんじゃないか」

 

「ええ。あの手の輩は時間が経てば経つほど厄介ですし。今のうちに倒しておくのには賛成ですわ」

 

「勿論私と晴嵐も全力を尽くそう」

 

「ナチュラルに横でリンチの計画立てるの辞めてくれへん?」

 

「胃が痛い……折角チャンピオンのセコンドになれたのに……………」

 

 

 

 

 

「こんにちはー」

 

「こんにちは。いらっしゃい、ヴィヴィオちゃん。未整理区画の調査だよね? お友逹がいるってことだったけどそちらの…………救世主!?」

 

「ふぁっ!?」

 

「えっ!?」

 

いつもの様に受付に挨拶をしたらいきなり訳の分からない事を言われ困惑するヴィヴィオ。

 

そんなヴィヴィオに追い討ちをかけるかの如く受付の女性は続ける。

 

「本当にエレク技師だぁ‼無限書庫の救世主‼守り神‼本当に感激です!!」

 

「「「は?」」」

 

あまりにもエレクから縁遠い言葉が目の前で交わされ思考が凍りつく。

 

「あーもー!!ご迷惑じゃなければサイン下さい!!」

 

「ああ、全然大丈夫ですよ」

 

「嬉しいです‼あぁ本当に会えるなんて………」

 

「あっ、本当に救世主だ‼おっ、俺もサインお願いします‼」

 

「エレク技師‼お陰さまで本当に助かりました‼いくら感謝してもし足りないです‼」

 

「貴方のお陰で我々は救われました。無限書庫の司書で貴方に感謝していない者等いませんよ」

 

「本日はどういったご用件で?何かお手伝いできることがあれば仰って下さい。できる限りお力添えさせて頂きます」

 

その騒ぎを聞きつけ次々と職員が現れる。

 

そしてヴィヴィオ達はエレクに感謝する人達という普通では考えられない事柄を確認し、自分達の頭がおかしくなったのかと割と本気で考えていた。

 

しきりに眼を擦ったり、頬をつねったり、頭を振ったりと目の前の光景を否定する。

 

「あ、あのぉエレくんが何をしたのか教えてもらえます?」

 

「救世主ってどういう事でしょうか?」

 

その中でも比較的症状の軽かったジークとアインハルトが躊躇いがちに職員達に質問する。

 

「ん?エレク技師は無限書庫というブラック企業よりなお黒いとまで言われていた職場を一新して下さったのだ‼職場環境の改善‼私達が有給休暇、定時退社なんて言葉を実感できたのは救世主のお陰だよ‼」

 

「そうそう‼昔は高給料取りの死人、余裕の墓場なんて言われてたけど今では超エリート扱い‼俺らは今までの有給を使い倒して趣味も再開できてるよ‼ここに就職した時から趣味なんて続ける気力がなくなってたから本当に新鮮だよ‼」

 

「あぁ今では管理局でも一、二を争うホワイトカラーの職場‼倍率だって私らの時とは比べ物にならないんです‼」

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい。そのエレク技師ってこの先輩ですか?このエレク・クレイヴェル?」

 

漸くヴィヴィオが再起動したのか質問する。

 

余程彼等の話す人物像と目の前の外道が重ならないのだろう。

 

エレクを指差して確認する。

 

「ええ」

 

「同性同名とかじゃなくて?」

 

「はい」

 

「嘘だぁ!!エレク先輩は頭か性能がおかしい兵器は作れてもそんなことはしないよぉ‼」

 

「ばぁか‼お前が使ってるセグウェイを俺が作った事忘れてねぇか?あと管理局は金払いが良いから多少面倒でもやるんだよ」

 

「うぐぐぐ、確かにあれは最早生活用品。無い生活など考えられない」

 

「言っとくけどそれお前が借りパクしてんだからな!!お前にあげてないからな?」

 

「何?何を作ったの?」

 

「無視すんな」

 

「多分洗脳装置とかじゃないかな」

 

「ディバインバスターかプラズマスマッシャーどちらがお望みか選べ」

 

「外道‼遠慮も躊躇も常識もない‼」

 

「ソルフェージュ改造でも良いけど?」

 

「プラズマスマッシャーでお願いします」

 

「そうか、そうか」

 

「初めてだから優しくして下さい」

 

「安心しろ俺も初めてだ」

 

そんな騒ぎから少し離れた場所で都市本選上位選手が語り合う。

 

「やっぱり今ここで潰しません?これ以上の被害拡大を防ぐ為にも」

 

「ヴィクター!?ヴィクターちょっとおかしいで!!」

 

「私は今すぐにでもエレクの首を落としたいんだけど」

 

「ミカヤちゃん!?殺人は駄目だよ!!」

 

「おいエルス、お前のバインドならどれくらい時間稼げる?」

 

「ちょっ、暴力沙汰なんて私絶対嫌ですよ!!」

 

「………ししぉ帰りたいです」

 

司書達から見てもミウラちゃんはいたたまれなかった。

 

 

 

 

 

「わっ!う、浮いてる!」

 

無限書庫の職員を何とか切り抜け未整理区画に突入するエレク達一行。

 

無限書庫内部の無重力空間で全員がプカプカと浮かび上がる。

 

慣れていないのかインターミドル上位選手でも思うように動けずバランスを崩している。 

 

「大丈夫ですか?」

 

「すみませんっ」

 

「大丈夫です‼慣れてないと無重力空間はキツいですよね」

 

不安定に同じ場所をグルグル回るミウラをヴィヴィオちゃんが支え、引っ張っる。

 

「ここは広いから別々に探しましょう‼」

 

「さんせ~!!私はエレク先輩以外だったら誰でも良いよ」

 

「私も」

 

「オレもエレクとだけは嫌だ。絶対に碌でもないことになる」

 

ヴィヴィオの提案に一気に閑散としていた未整理区画が騒がしくなる。

 

「お前ら検索魔法とか使える?読書魔法でも良いけど」

 

そんな悪口をものともせずにエレクは問いかける。

 

「私達は使えます!!」

 

「あっ、私も使えます」

 

「ふむふむ。ヴィヴィオ達とエルス、俺しか使えねぇとなると………十一人だから三人組と二人組で四組にしよう」

 

「ええ、エレク先輩にしてはマトモな案です」

 

「問題は誰がエレク先輩と三人組ないしは二人組になるかですね」

 

「じゃあこうしよう。特に俺と組むことに反対しなかったアインハルトとジークリンデが

 

「させないよ!?」

 

「だがそれ以外ないだろ?」

 

「ぐっ」

 

「仕方がないだろ」

 

「くっ………私エレク先輩と周りたいな~ねぇ、ミウラさん?」

 

「えっ!?僕ですか!?」

 

周りは確信した。

 

これはエレクの影響だと。

 

この強引さはエレクのものだと。

 

次に哀れんだ。

 

ミウラの犠牲を。

 

そして感謝した。

 

エレクの野望を阻止しようと動いていることに。

 

エレクと周るなんていう貧乏くじをどちらも持って行ってくれることに。

 

「エレク先輩と周りたいよね? 」

 

「えと…」

 

「周りたいよね?」

 

「……う……………僕は…」

 

「ねっ?」

 

「…………はい」

 

「おいミウラ、別に無理しなくとも良いんだぞ?所詮ヴィヴィオはお前より格下。脅されることなんてないんだぞ?」

 

「違うよねミウラさん?ミウラさんは自分でエレク先輩と周るって決めたんだもんね?」

 

エレクは諭す様にゆっくりと、ヴィヴィオは動かない笑顔でミウラに話しかける。

 

「……………はい…自分で決めました……」

 

「はい、そういうことなので三人で探しましょう」




おまけ

「そういえばその手記はどうやって探すんだ?オレは古代ベルカ語とか分からないぞ」

「あら?不良娘、貴女分からないの?」

「あっ、それなら問題ねぇぞ」

「え?」

「ほらお前ら特製の翻訳AI入れたからコイツら持ってけ。ちゃんと人数分あるから。今時道具とか使えばあんなの猿でも読めるから」

「………………」

「寧ろそんな所で自慢するような奴は多分性格が悪いんだよ」

「絶対に先輩には言われたくない」

「ソルフェージュ?」

「すいません‼」

「あの、その、何だ?オレは古代ベルカ語が分かるのは凄いと思うぜ」

「…………………やっぱりエレク殺しません?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無限書庫の救世主(後編)

ちょいと遅くなりましたがいつもより長めです。


エレクのデバイスが明らかに普通より効果範囲が広い検索魔法をかけていく姿を横目に見ながらヴィヴィオ達は歩きながら話す。

 

「あぁ、何か結構暇ですねぇ」

 

「そうだなぁ、割りとマジで何で俺ここにいるんだろ。俺にとってエレミアの手記とか心底どうでもいいし」

 

「まぁエレク先輩は歴史とか興味ないですよねぇ」

 

「人物の歴史には興味ねぇな。学校の成績も煽る為にしか使わねぇし」

 

「凄い頭悪いですね」

 

なんていうどうでもいい雑談を広げながらエレクが魔改造した検索魔法を本棚に片っ端から掛けていく。

 

無限書庫の未整理区画は他の利用者や職員もいない。

 

エレクの検索魔法のお陰で順調に進んではいるのだが暇を持て余している。

 

時折見掛けるのは二足歩行でガションガションと歩き回る奇怪なロボットだけだ。

 

人間よりいくらか大きいというサイズのロボットである。

 

銀色のボディと細い腕はスマートな印象を受ける。

 

そんなロボとすれ違うこと三回目くらい。

 

道中ミウラが話に入れず独りぼっちであったことも加えて、ミウラの熱い視線に背中を押されてヴィヴィオがエレクに質問する。

 

「あれがエレク先輩の作った奴ですか?」

 

「……………ん、ああそう」

 

魔法を行使しながらもさして関心もなさそうに答える。

 

本当に興味がないのか操作しているデバイスから眼を離すこともしない。

 

「一応聞けなかったので聞きますけどあのロボットって何なんですか?」

 

「ん、あれは検索魔法を搭載してるお手伝いロボみたいな奴だ。あいつらは検索し、収集、整理した情報をリアルタイムで同型機と共有する。そして読み込んだ情報をメインサーバーで一括管理する事で無限書庫の『情報がどこにあるか分からない』とか『あったらしいけど失われた』とか『司書同士が情報を共用してない』なんて問題を解決したわけだ。まぁ、後はちょろっと無限書庫の警備をするくらいだな」

 

「なるほど、それは確かに凄いですね」

 

「まぁ基本は事務用品なんだがそれなりのスペックはあるからな。まあ管理局の一個大隊くらいなら防衛じゃなくて確保くらいできるんじゃねぇかな」

 

「何で事務用のお手伝いロボにそんな戦闘力付けたんですか?」

 

ミウラがオズオズと話に入る。

 

「ん~、ロボット司書の開発段階で警備システムも頼まれたからどうせなら一緒にしようと思ってな」

 

「エレク先輩。私それで今の話聞いてて思ったんですけど……………」

 

「何だ?」

 

「エレク先輩なら翻訳AI以外にも検索魔法を使えるデバイス持ってるんじゃないですか?」

 

「……………」

 

「えっ?どういうことですか?そんな嘘吐く理由ないじゃないですか」

 

「………何故そう思う?」

 

「その質問だけで半分以上答えてるとは思いますが答えましょう。エレク先輩は検索魔法搭載の司書ロボットを何機も作成しています。ですからエレク先輩にとって検索魔法の搭載なんて既に何度も行ったことでしかない………。そしたら何で態々翻訳AI入れたデバイスを人数分持って来てるのに検索魔法を搭載してないのか不思議に思いませんか?」

 

「……エレミアの手記は見つかった?」

 

か細い声が彼等に掛けられるが、ヒートアップしたエレク達は気付かない。

 

そのまま茶番は続く。

 

「ふう、なるほどな」

 

「ここから叩き出される答えはひとつ。先輩は初めからジークさんとアインハルトさんの記憶転写魔法を解析するつもりだったんですよ!!」

 

「な、なんだってぇ! 」

 

「…あの……聞いてる?……エレミアの手記は見つかったの?」

 

再度声を掛けられるが推理ごっこを楽しんでいる彼等には聞こえない。

 

「歴史にもアインハルトさんの過去にも興味のない先輩です。初めからエレミアの手記を探しになんて来ていなかったのですね?」

 

「そうだな。確かに俺はエレミアの手記とやらを探しに来たのではない。正解だよ。だが、それでどうする?それが分かったところで何をするんだ?高町ヴィヴィオ」

 

「渡してもらいます。エレク先輩の持ってる検索用デバイスを。例え拳を向ける事になろうとも………」

 

「お前が俺を?冗談だろ?」

 

「あの!!エレミアの手記は見つかった?」

 

魔女っ娘が頭上から声を掛ける。

 

三度目なので心持ち大きな声だ。

 

大きなとんがり帽子を被り、箒を持った魔女のコスプレをした少女。

 

周りにはプカプカと二匹の変わった使い魔が浮いている。

 

そんな魔女っ娘はあまり大きな声を出す習慣がないのか顔を真っ赤にしている。

 

「うるせぇな、今取り込み中なの見て分かるだろ?サインなら後にしてくれ」

 

「そうです。クライマックスです」

 

そんな様子をいっそ冷酷とも言える態度で切り捨てる二人。

 

涙目で肩を震わせる少女を見て、慌ててミラウが取りなすす。

 

「ちょっ、ちょっとは聞いてあげましょうよ」

 

「まあ良いだろう。チビッ子の発言を許す。何の要件だ?」

 

「…………魔女の誇りを傷つけたものは、未来永劫呪われよ」

 

「怒ったか正統派魔女?」

 

「知ってるんですか?」

 

「ファビア・クロゼルグ。博物館の展示品レベルの魔法を使う真正古代ベルカの正統派魔女(トゥルーウィッチ)だ」

 

「何でそんなに詳しいんですか?正直女子の情報を掴んでるのって相当キモチワルイですよ」

 

「ん、インターミドル関係だ」

 

「ああ、なるほど。でもファビア・クロゼルグ選手。私達は構いませんが、エレク先輩には手を出さない方が良いと思いますよ」

 

「それはできない。私は魔女だから。欲しいものがあるから魔法を使って手に入れる。エレク・クレイヴェル、タカマチ・ヴィヴィオ、ミウラ・リナルディ」

 

「一応忠告はしましたからね」

 

「真名認識・水晶体認証終了ー吸収(イタダキマス)

 

そうファビアが呟くと、浮いていた使い魔が巨大化しエレク達を飲み込む。

 

「絶招織炎虎咆」

 

そしてファビアの手に瓶詰めされたミウラが出現すると同時に、真横から掌底を叩き込まれる。

 

両手の手甲に炎を纏った魔力付与打撃。

 

そんな魔力が豊潤に込められた掌底が吸い込まれる様にファビアの腹部を打ち、本棚に叩き付ける。

 

そしてファビアの手から溢れ落ちた小瓶を掴み取り、そのまま下のヴィヴィオに投げ渡す。

 

「がはっ」

 

「正当防衛成立だ魔女っ娘」

 

そこには軽薄な笑みを浮かべるエレク。

 

悠々とバリアジャケットを展開し、手甲をハルバートに変形させる。

 

「なっ、何で!?」

 

「お前の使い魔が飲み込んだのは幻術だよ。フェイクシルエットって言ってな。現役執務官も使う幻覚魔法だ。来なよ雑魚、魔女の誇りを傷つけたものは未来永劫呪われるんだろ?」

 

「……許さない。貴方は本気で潰す。黒炎」

 

大量の魔力弾がエレクに殺到するが、それを全てピンク色の魔力弾が打ち落とす。

 

爆発が広いとは言え室内である無限書庫内部を満たし、視界を煙が覆う。

 

「なのはさんに比べりゃこんなの楽勝だな」

 

そんな中、堂々と空中に静止して軽口を叩く。

 

這え 穢れの地に(グラビティブレス)

 

強力な重力がエレクを襲い、そこに畳み掛ける様にファビアの使い魔が襲い掛かる。

 

「魔女の呪いから逃れる術はない」

 

「甘ぇよ」

 

瞬間、エレクがファビアの斜め上に転移する。

 

「覇王断空拳」

 

不意打ちで放たれた打ち下ろしの一撃が、ファビアを庇った使い魔ごと纏めて地面に叩き付ける。

 

「ぐっ」

 

それを見下し挑発する。

 

馬鹿にするように。

 

心底楽しそうに。

 

「来いよ、魔女っ娘。出し惜しみは無しだ。全力で来い」

 

「ッ、悪魔合身(デビルユナイト)

 

使い魔である三匹の悪魔とファビアが合体し、幼女が女性になる。

 

「古代ベルカの大人モードってところか」

 

「黒炎」

 

先程よりも多くの魔力弾が出現し、一斉に発射される。

 

「ゲヴェイア・クーゲル!!加速!!」

 

《Flash Move》

 

それを高密度弾の弾幕陣を前方に展開し、その弾幕を追うように飛行することで距離を詰める。

 

「箒星」

 

その進行を食い止める様にファビアの持つ箒型デバイスが加速して突撃する。

 

「ッ‼」

 

《Protection》

 

それをデバイスの自動防御で受け止めるがファビアがそれを阻止するべく更に追撃する。

 

失せよ光明(ブラックカーテン)

 

「警備システム発動」

 

クロが手をかざし唱えるのと被せる様にエレクが叫ぶ。

 

それだけの行動でファビアの魔法が発動しなくなる。

 

「くそッ」

 

勢いを衰えさせたファビアのデバイスを掴み取りながらエレクは悪態を吐く。

 

「黒炎‼黒炎‼何故!?何故使えないの!?」

 

「教えてやる覗き見趣味の魔女。ここ無限書庫の警備システムは俺が発案、構築した物だ」

 

「っそれが――」

 

「最後まで聞けよ魔女っ娘。この無限書庫は俺が侵入者を逃がさねぇように、職員が安全に無力化することに長けてるんだよ。簡単に教えてやる。今この無限書庫内部は高濃度AMFに覆われてる。魔法が上手く使えねぇだろ?さあ魔女サマ!ここでどの程度魔法を使えるか俺に教えてくれよ!!」

 

そう高らかに謳う。

 

「だから忠告したのに」

 

「敵ながらあれは可哀想ですね………」

 

「ん、そうでもないと思いますよ。エレク先輩出し惜しんで遊んでましたし。初めからAMFを使いませんでしたし、魔力炉は使ってたみたいですけど砲台も盾も使ってませんでしたから」

 

「えっ!?」

 

そんな絶望的状況でもファビアは何とか体勢を立て直そうとするがもう飛ぶのも辛そうだ。

 

「バインド」

 

そんなファビアをエレクはバインドで固定する。

 

「何で!?何で貴方は魔法が使えるの!?」

 

「そう言えば僕も知らないんですけど何で使えるんですか?」

 

「ええっと………」

 

「俺のは第五世代デバイスって言ってな『魔力無効状況でも魔力を魔法として使用でき、魔力有効状況下ではさらなる強化を得る』というコンセプトで設計されているだわ。だからここでは俺しか魔法は使えねぇ。まあ時代遅れの魔女っ娘は知らないと思うけどな」

 

「――らしいです」

 

「凄いですね‼」

 

「ええ、まあそれはそうかもしれません。管理局でもまだ実験段階で、実用化のレベルまで辿り着いたのは神の悪戯かエレク先輩だけだとか」

 

「んじゃ、ちょっと解析させてもらうぜファビア」

 

「えっ?」

 

「お前俺のテリトリーで暴れて管理局に引き渡すくらいで済む筈ねぇだろ」

 

「…………………嘘…」

 

「嘘なもんか先ずは手始めにお前のデバイスでも分解してみるか」

 

「や、止め…て………止めて…」

 

「嫌だ。元々俺はお前の言う所の魔女って奴の使う魔法を解析したくてたまらなかったし。あっ、そういやお前の使い魔も中々面白い。あれを解剖するのもありかもなぁ」

 

「止めて!!プチデビルズは私の友達なの!!それだけは………それだけは止めて…」

 

「吐け。お前のデバイスの製作者から来歴、メンテに何をしているのか、魔女の使う魔法、使い魔とどこで契約し何ができるのか、一切合財全て話せ」

 

「は、話せば…解剖しない………?」

 

「有意義ならな」

 

「話す、話すよ」

 

「早くはやてさんとか来ないかな………」

 

「諦めたら駄目ですミウラさん!!ナカジマジムではあの程度しょっちゅうです」

 

 

 

 

 

数時間後。

 

「やっと着いたぁ」

 

扉を些か乱暴に押し開けてルーテシアが飛び込んで来る。

 

一切傷らしきものは無いが相当疲弊しているのが見てとれる。

 

「遅いぞルールー。もう襲撃犯も確保したしエレミアの日記も読み終わったぞ」

 

「ごめん、ごめん。何か無限書庫内部に妙に強い結界が複数張られててさぁ。何とか潜り抜けたけど大変だったんだよ」

 

「ふぅん、じゃあこれ」

 

そう言ってバインドで何重にも縛られたファビアと使い魔の三匹を指し示す。

 

「エレくん…ここ無限書庫の警備システムを構築したのは誰かな?」

 

「うん?俺だな」

 

「エレくんがDSAAの選手で一番気になってたのは誰かな?」

 

「………ファビア・クロゼルグだな」

 

「もうひとつ、質問していいかな。その計測機材は何に使ったのかな?」

 

「……お前のような勘のいいガキは嫌いだよ」

 

「やりやがったな!魔女の魔法を解析する時間を稼ぐ為に自作の警備システムを使いやがったな!!」




初めのプロットでは無限書庫の司書ロボット40機程の物量作戦でした。哀れファビア。

ベルカの話はエレクが興味ないのでスキップです。

エレク君のデータベースに魔女の魔法が追加されたよー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次元の裂け目

すみません今話で少し更新をお休みさせていただきます。
というのもリア友にこの小説を見せたところ非常に厳しい批評をいただきました。
曰く、主人公視点がなく感情描写を怠っている。
淡々と進むので話に入り辛いなど。
またキャラを崩して一時の笑いを得てるだけで残るものがないと。
まあそれでメンタルがかなり揺らいでおります。
作者はあまり長くなく、手軽に一時でも笑えれば良いのスタンスだったのですがお世辞にも強いとは言えないメンタルだったのでお休みします。
気持ちが整うまでは他の小説を書いて練習しようと思っているので失踪はしません。
楽しみにしてくれる方がいるのには申し訳ないとは思いますが、少しお休みさせていただきます。

追記
皆さんがコメントを下さって嬉しいです。
でも結構長い期間休むと思っている方もいるみたいなので明言しておきます。
一ヶ月以内には次話を投稿しようとは思っています。
三ヶ月とか半年は休みません。
勘違いさせてしまったらすみません。
こういう言葉足らずの所も改善しておきます。


「ヤバい、マジでヤバい。デバイスを魔力炉を傀儡を結界を作らなくては。兵器だ。兵器が足りない。身を守る兵器が。盾を拠点を作らなくては」

 

そう言って兵器の種類を際限無く呟き続けるエレク。

 

何時もの尊大な態度は見る影もなく所持している武具防具、兵器の類いを全て展開している。

 

「どうしたんですか‼しっかりしてください‼エレク先輩らしくないですよ!!」

 

「混乱しているのはわかりますが、どうしたんですか?何が起きたのですか?」

 

1度もこの状態のエレクを見たことがなかったアインハルトと違いあっさりとこれを受け入れるヴィヴィオは問いを投げ掛ける。

 

それでも内心相当動揺している。

 

この異常な状況も相まって質の悪い危惧しか出てこないがそれでも勇気を持って問い掛ける。

 

「確かに何かしらの事件に巻き込まれたのはわかります。管理局も助けには来れないかもしれません。ですが幸いここは地球です。しかも海鳴ならママのお友達がミッドへの転送ポートを設置してる筈ですからそこまで行けば――

 

「違ぇ」

 

「え?」

 

台詞を打ち切ってまで言われた言葉は余りにも簡潔過ぎて二人共理解できない。

 

ヴィヴィオ達は黙って目線で先を促す。

 

「ここは地球でも現代の地球じゃねぇ。十四年前の海鳴だ」

 

「「は?」」

 

「仮に帰れてもそこは十四年前のミッドチルダだ。俺は一歳だしお前らは生まれてない」

 

先程の言葉を遥かに凌駕する発言が続けられる。

 

 

 

 

 

三十分前。

 

無限書庫の騒動から数日後。

 

前世の記憶に捕らわれ録に人生を楽しめなかったアインハルトの問題をヴィヴィオと決闘することで解決させようというエレク曰く野蛮な作戦をなした後日。

 

すっかり日常となっていたエレク邸での性能実験もとい模擬戦を終えての休憩中。

 

突如現れた空間の裂け目と三人を引く強い力。

 

そして亀裂に飛び込むように吸い込まれ、空に放り出されたのが十五分前。

 

「うわぁあああぁぁあああぁ」

 

「セット・アップ。武装展開、銃剣。AMF発生装置起動。収束機構起動。内蔵魔力炉全力起動。武装をロングレンジに特化。全武装の出力リミッター解除。フルバースト。救援要請。傀儡兵及びガジェット多重転送」

 

《救援要請失敗。傀儡兵及びガジェットの展開失敗。通信が取れません》

 

「チッ」

 

AMF搭載の電動式駆動鎧に大きめの銃剣。

 

5機の自動防衛砲台と4機の小型砲台、対魔導師用の盾という管理局も真っ青な武装を瞬時に展開して滑空する。

 

「落ちる!!落ちる!!落ちるぅうううぅぅうう!!」

 

「うわぁ」

 

二人は急いで背部に着けたジェットと両手足に展開した光の羽根で姿勢と方向を制御し優雅に落下スピードを調整しているエレクにしがみつく。

 

「邪魔だ‼どけ‼」

 

「ひどい!!」

 

「わ、私あんまり飛行魔法とか得意じゃなくて」

 

「私も!!今離されたら死ぬかも!!」

 

「ちっ、お前なのはさんの子どもじゃねーか」

 

「それでも得意不得意があるの!!」

 

「オプティックハイド、フェイク・シルエット」

 

エレクが魔法を発動させ自分と接触しているアインハルト、ヴィヴィオを透明にし見えなくする。

 

それに重ね、エレク達より少し上空に自分達と同じ幻影を発生させる。

 

「掴まれ。着陸する。落ちても自己責任だ」

 

そう言ってどこかのビルの屋上と思われる場所に降りて来たのが十四分くらい前。

 

「ふー、何だったんでしょうか」

 

「お前らは一刻も早く俺から離れろ」

 

「ひどい!!」

 

「いつもはそうだが今はそうじゃねぇ。いいか。恐らく相手は俺関係の犯罪者だ」

 

「犯罪者!?」

 

「ああ、最近なかったが前は一年に数回のペースで来てた。今考えたらお前ら聖王教会や管理局側の英雄が付いてたからだろーが。とにかく俺の技術目当てでの襲撃はある」

 

「でも先輩を置いては行けないよ」

 

「先輩が戦うのでしたら私も」

 

「馬鹿。無駄だ。相手は俺のラボの警備を抜けて来たことを考えればお前らなんぞ相手にならん。邪魔だ。しかもここは十中八九ミッドじゃねぇ。全然通信が繋がらねぇし管理世界ですらないかもしれねぇ。そしたらそれこそ相手は並のロストロギアすら越える力を持ってることになるぞ。さっさと逃げて管理局でもなのはさんでもいいから助けを呼んでこい」

 

「そんな………」

 

「……………んっ?ここって地球?しかも海鳴?」

 

「あん?知ってんのか?」

 

「ええ、ママの故郷です。私も来たことあるので間違ってはいないと思います」

 

「どこの管理外世界か?」

 

「ええっと確か第97管理外世界だったかと」

 

「ん、お手柄だ。それさえわかりゃここから近い管理世界に連絡して管理局なりを使える」

 

「これで大丈夫でしょうか……………」

 

「わからない。エレク先輩が私にお礼を言うくらいだから相当危険かも……」

 

「はぁ!?何を言って……は!?ちょっ、ちょっと待て………………嘘だろ………」

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

 

 

 

 

そして現在。

 

「もぉマジでヤバい。今の時代じゃ傀儡も、大規模魔力炉も、次元航行船も他のありとあらゆる発明品を転移できない。それどころか拠点も材料もないから新しい武装を開発することもできない。今使えんのはここにある兵力のみ。無理ゲーじゃねーか!!死ねマジで死ね!!」

 

「えっと………」

 

「本当にここは十四年前の世界なのですか……」

 

「馬っ鹿!!もう何度も確認したわ!!管理局にも無限書庫にも確認したわ!!システムが全部十四年前の水準だったわ!!あっ、無限書庫は俺が来る前と変わってなかったけど………とにかくヤベェ!!俺目的の誘拐はもう無いだろうがヤベェ!!」

 

「えっ、誘拐じゃないんですか?」

 

「どこの世界に十四年前にターゲットを転移させる誘拐犯がいるんだよ!?実行は十四年前の自分に任せるとかどんなロマンチストだ!?」

 

「なるほど。確かにそれはそうですね」

 

「今の武装でどのくらい戦えるんですか?」

 

「フルバーストで魔導師ランクS相当。でも三十五分しか持たない。普通に過ごせば一日つまり二十四時間で、八時間はAAA+相当で戦える筈だ」

 

「凄っ!!思ったより相当強い!!」

 

「馬鹿か‼これは限界だ‼これを使い切ったら収束機構だけで動かすことになるんだぞ‼」

 

「因みにそれだけだと魔導師ランクはどれくらいなんですか?」

 

「A+くらいだと思う」

 

「それでも充分凄い」

 

「そうだ‼こんなことしてる場合じゃねぇ。ここはもうどうなってもおかしくない世紀末の都市海鳴。ここには平穏なんてないんだからな」

 

「そ、そうなのですか」

 

「ああ、まさに次元世界の魔都。この世で最も危険な世界のひとつだ」

 

「嘘言わないで下さい!!なのはママの故郷なんですよ!!」

 

「PT事件、闇の書事件」

 

「うっ」

 

「トップクラスの魔導師が跳梁跋扈し、それを止める為に管理局の白い悪魔とまで呼ばれた天然ロストロギアとその仲間である死神執務官やベルカ遺物の夜天の主達が街を壊しながらドッカンバッタン大騒ぎするんだろ」

 

「ぐっ」

 

「いや寧ろなのはさんが魔法に目覚めた時からなのでそれが原因か?強力な武力を持つ人間はその人柄に関係なく問題を惹き付けるのさ」

 

「なのはママもエレク先輩にだけは言われたくないと思います」

 

「もう止めようぜ。この時代にはあれらの事件を解決したエースオブエースがいるんだからよぉ」

 

「そうですね一度移動しましょうか」

 

「あっ、私のデバイスそういえばジェットパックにもなるんでした」

 

ヴィヴィオが何時ものセグウェイに変形するデバイスをバックパック型のジェット機に変形させおぶる。

 

「おぉ、そんな機能があったとは」

 

「待てや‼今は非常事態だから使わせるがそれ俺のだからな!移動したらぜってぇ返せよ」

 

「待って下さい‼時空管理局嘱託魔導師、高町なのはです!少し聞きたいことがあるのでバリアジャケットを解除してください!」

 

「なのはさん?」

 

「なのはママ?」

 

「ヴィヴィオさんのお母様?」

 

「ん?私は高町なのはだけど?」

 

「はぁああぁあああぁああぁぁ!?何でよりによってこの人なの!?何で!?Why!?タイムパラドックスに喧嘩でも売ってんのかよ!!」

 

「えっ何で!?何でいきなりキレられてるの!?」




GOD編がアインハルトVSヴィヴィオの後で文化祭の前であることは立花フミさんの『アインハルトさんはちっちゃくないよ!』での考察を使わせて頂きました。作者がお勧めする面白い作品です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

若かりし空のエースオブエース

帰ってきました。
頑張って更新再開します。


失せよ光明(ブラックカーテン)、離脱!!」

 

《Fake Silhouette》

 

《Transporter》

 

エレクは逃げだした。

 

 

 

 

 

「うわぁああああ!!また、また空だぁあああ!!」

 

「大丈夫ですか、ヴィヴィオさん」

 

先程転移した上空に再び転移する。

 

アインハルトがヴィヴィオを掴んで、もう片方の腕で俺の自律砲台に手を掛けて何とか落下を阻止する。

 

「馬鹿か、俺のデバイス使え」

 

「あっ」

 

変形したジェットパックが直ぐに推進力を生み、何とか高度からの紐なしバンジーを防ぐアインハルト達。

 

「ふぅ、何とかなりましたね」

 

「あれはマジで肝が冷えた」

 

「未来が変わってしまいますからね」

 

「今度はあそこから少し離れたとこに降りんぞ。安全なとこに降りたらとりあえず行動方針決める」

 

 

 

 

 

――と思ったが先程とはバリアジャケットのカラーリングを変更したなのはさんが前にいた。

 

赤と紫色でいつもの色合いと真逆の印象を受ける。

 

「ヴィヴィオ、なのはさんに双子の姉妹はいるか?」

 

「いえ、いません……」

 

「それではあれは……………」

 

「大魔王からは逃げられない。なのはさんがユニゾンでもしたのかなぁ」

 

「なのはママのユニゾンとか………なにそれ怖い…」

 

「第二形態だろうか………自分で言ってて絶望感がすごいな……」

 

「貴方達は一体何を言って…」

 

なのはさん(仮)がこちらを警戒し、デバイスを向ける。

 

「何やってるんですか!?なのはママですよ!逃げましょう!」

 

「逃げられんのか?転移で魔力を消費し続けるのは痛過ぎるぞ」

 

「うぐ…」

 

「今ならヴィヴィオさんのお母様も九歳。私でも頑張れば勝てるのでは?」

 

「ばっか!!傀儡兵をゴミみたいに片付けたり、守護騎士とタイマンしたりするような奴にお前が勝てるか!!」

 

「むむむ、それは確かに……」

 

「まぁお前では無理でも俺なら倒せるとは思うんだよ」

 

「確かにエレク先輩だったら十四年前のヴィヴィオさんのお母様にも勝てそうですね」

 

「でもなのはさんは倒せてもそれをすると闇の書を消滅させられるメンバーが報復に来るんだよなぁ」

 

「た、確かに絶望的。なのはママが敵の時の恐ろしさは異常」

 

「どうするかなぁ?とりまアクセルシュートでも撃ってから考えるか?」

 

「いえいえ、それは明らかな敵対行動です。思考放棄というより即断即決と言うべき行いでしょう」

 

「もうやだなぁ。なのはママに敵としてエンカウントした時点で絶望的ですし。あぁ、もう降伏しましょうよぉ~」

 

「でもここで連れてかれるってのは一番避けたいとこなんだが……」

 

「じゃあ――

 

「あぁ、ぶちのめす。希望は前に進むんだ」

 

「それって本人の目の前で相談することじゃないと思うんですけど」

 

 

 

 

 

「ささっ始めましょうか。なのはさん」

 

「何か勘違いしてるようですが私は――

 

「ショートバスター」

 

六歳も下の少女に、相手より優れた質と数の兵装で容赦なく不意討ちで砲撃を叩きつける外道がいた。

 

微塵の容赦もない全力の潰し方だった。

 

しかしそんなものは相手にはあっさりと防がれる。

 

多少後方に弾かれたようだがプロテクションでしっかりと身を守っている。

 

「ちょっ――」

 

「フルバースト、追撃」

 

《Divine Buster》

 

それを確認するなり何事か言わんとしていた少女に更にピンクの暴威が襲い掛かる。

 

起動鎧内部の魔力炉が生成した膨大な魔力が浮遊する自律砲台の全てから砲撃として迸る。

 

五本のビームが空を駆け、少女の防御にぶつかり爆る。

 

追撃されることを予想して予め行われたカートリッジロードに、瞬時に通常より強化なプロテクション・パワードを張る技量。

 

受けきれないと見ればバリアを爆発させ、爆風で距離をとる。

 

正に超反応と呼ぶに値する天才的な対応だった。

 

今行える最善の対応。

 

誰もが感嘆する天才の所業だった。

 

それでも彼はそれに感心しながらも追撃の手を緩めない。

 

「拡散射撃」

 

《Sacred Cluster》

 

拡散した魔力弾が吹き飛ぶなのはを周囲の地形ごと抉りながら上から叩きつける。

 

一言発するだけで周囲の自律砲台からほぼノータイムで魔法が放たれる。

 

三十五分しか保たないと言っていたがそんなものが問題にならないくらいの圧倒的な蹂躙劇だった。

 

勿論同じSランク魔導師でもこのような魔法行使なんてできる筈がない。

 

リンカーコアによらない魔力供給と膨大な魔力に耐えうる出力兵装。

 

完全に魔力を操作して術式構築を其々行える優秀なデバイスがあってこそ行える多重魔法展開。

 

一人で数の暴力を成す息も吐かせぬ波状攻撃。

 

《高速接近反応三、魔導師と思われます。推定到達時間一分、一分三十、二分三十五》

 

「おっと、お早い対応で。敵対指定。迎撃を」

 

《Divine Buster Extension》

 

それだけ言うと周囲に浮かぶブラスタービット大型二機、小型一機が反転して夜空に魔方陣を描く。

 

そして一度明滅し、直後ピンクの閃光がが闇を切り裂き疾駆する。

 

片手間どころか、デバイスのみの魔法行使とは思えない超遠距離狙撃。

 

「ほら、お前らも加勢しろ。さっさと片付けるぞ」

 

「ひぇ~人の母親の幼女時代をフルボッコにしてる人の言葉とは思えないよ~」

 

「そんなことッ――

 

「ディザスターヒート」

 

《Protection》

 

「――ホラな。やっぱりこれじゃあやられん」

 

炎の濁流をプロテクションで防ぎながらも笑う。

 

「嘘……」

 

「物量でやられてくれんならお前の母親はエースとか呼ばれてねぇよ。てか今の魔法は初めて見たぞ。なのはさん隠してやがったな。未来でお話決定だ」

 

「……対話による説得は諦めました。実力行使でいかせてもらいます」

 

「やってみろ、貴女の戦術なんざ遠くの未来に解析し終わってんだよ」

 

「………あれ?」

 

「どうしましたヴィヴィオさん?」

 

「いえ、あっ、やっぱり……ちょ、ちょっと待って下さいエレク先輩!あれもしかしてなのはママじゃ――

 

「パイロシューター」

 

十五発もの燃え盛る誘導弾がエレクに殺到する。

 

人一人を容易に殺傷できる暴力が炎という形をもって夜空を照らし――

 

「潰せ」

 

《Sacred Cluster》

 

倍以上の数の魔力弾で圧殺される。

 

迎撃に使用し先程よりも弾幕が薄くはなっているがそれでも世紀のキチガイが仕上げた最高品質の兵装である。

 

エレクにシールドを張ることもさせられず、なのはさん(仮)は自身を侮るエレクの態度を崩せない。

 

しかもその魔法の破壊力は驚異的で、シールドの上からでも容赦なく衝撃を伝える。

 

こうなればいくら天才のなのはさん(仮)であっても防御しながらの砲撃はできないし、上から落とされるように撃ち込まれるのでにシールドを解いての回避も選べない。

 

抜剣・四天星煌(バッケン・シテンセイオウ)

 

幻覚魔法で作成した虚像と本体を入れ換えたエレクが後ろから蹴りつける。

 

砲撃を対処している際に行ったオプティックハイドとフェイク・シルエットの同時使用は、収束魔法のチャージという最大の弱点を完璧に消し去る。

 

エレクがばら蒔いた魔力の多くを威力に変えた魔力収束打撃はなのはさん(仮)の身体ををピンポン玉みたいにぶっ飛ばす。

 

大きくバウンドして、フェンスがなければ屋上から落下していたかもしれない。

 

「モード・リリース」

 

慎重にサーチャーを飛ばして意識の有無を確認していたエレクは漸くヴィヴィオとアインハルトの待つ上空に再度浮上する。

 

「結構魔力使ったが勝ったな」

 

「………エレク先輩…」

 

「何だ?」

 

「…………ええっと…あの…」

 

「?」

 

「ちょっと話したいことが………」

 

「あ?だから聞いてんじゃねーか。何だよ」

 

「…………ぶっちゃけさっきの人なのはママじゃないかも……」

 

「あ?…………………は?…えっ?」

 

「さっき先輩に話そうと思ったんだけどね。な、なのはママは魔力変換資質持ってなかった筈です」

 

「……………………………」

 

「しかも今考えたらなのはママがユニゾンしていたなんて聞いたことありません」

 

「…………………」

 

「更に言うとユニゾンしても髪型は変わらないと思います……」

 

「………」

 

「……………………あの……大丈夫ですか?」

 

「うん、ヴィヴィオ。ひとつ言いたいことがあるんだ」

 

「嫌です!絶対に嫌です!!」

 

「殺す!」

 

 

 

 

 

何とかセイクリッドハート内部の記録や、実験のテスター、聖王の鎧の情報等を提供することでエレクの制裁を退けたヴィヴィオはエレク達と共に今はなのはさん(偽)の倒れるビルに着陸していた。

 

「じゃあこいつは誰なんだよ」

 

「知らないです」

 

「じゃあとりあえずこのデバイスでも弄ってみるか」

 

「あぁなのはママのそっくりさんごめんなさい」

 

「ここに残るのも面倒だしデバイスにある俺らの記録を消したらデータコピーして移動するぞ」

 

「うん」

 

「でも近くで見れば見るほど先程会ったヴィヴィオさんのお母様に似ていますね」

 

「まぁ多分俺らの事件に無関係ではあるまい。とりあえずデータを解析してから考えればいいさ」

 

「そうですね…」

 

「んっと、終わったぞ。さぁ離れる――

 

《敵対反応交戦圏に浸入》

 

「時空管理局所属、フェイト・T・ハラオウンです。 この場にいる全員は速やかにデバイスを収めて下さい」

 

「見つけた!!さっきの鎧の人!ってシュテルちゃん!?」

 

「ちょっとなのちゃん!?今フェイトちゃんが――

 

それ以上は聞こえなかったし、聞きたくなかった。

 

未来のエースオブエース、最強クラスの執務官、機動六課部隊長がそこにいた。

 

大魔王からは逃げられない。




メンタルは何とか整えたから更新はなるべく早くする所存。でも次回も戦闘シーンありなので更新速度は期待しないでください。

これまでのお話をほんの少し追記しました。でも別に伏線とかの追加はないんで見なくても大丈夫です。

最近エレク書いてなかったからヴィヴィオとアインハルトがセグウェイで爆走する夢見た。
誰かイラスト化してくれないかなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

天才の真価

そろそろリンネちゃんでも出そうかなとアニメを見ていたらヴィヴィオの余りの可愛さに悶え死んだ。
おのれエレク・クレイヴィル!!


「マジかーマジかーなのはママが仲間を呼んで再登場かーここが地獄かー」

 

「ヴィ、ヴィヴィオさんしっかりしてください。気持ちはわかりますが気を強く持ってください」

 

「いやもう正直詰んでないか?」

 

「エレク先輩!?」

 

「知ってたか? AAAランク以上の魔導師は次元世界最大の組織である時空管理局でも5%にすら満たないんだぜ。つまりあいつら全員管理局の上位5%なんだぜ」

 

「ええっ!」

 

「更に付け加えるならAAAクラスが本気で戦うと街がひとつ消し飛びかねない。俺が限定的Sランクだって言ってもAAAランク二人とSランクは無理じゃねーかな。援軍が来ない保証もないし本当に詰んでるわ」

 

「諦めるんですかエレク先輩!」

 

「あぁ常識的に考えて無理だろ」

 

「そんな…………」

 

いつでも自信満々で、ウザくとも有事の際は頼りになる先輩の諦めを聞いて落ち込むアインハルト。

 

ヴィヴィオ?

 

現実逃避でクリスを弄ってる。

 

「そういう訳だ。俺達は投降する。こちらも事情があったんだ。お手柔らかに頼む。俺はエレク・クレイヴィル。デバイス技師でDSAA選手だ。それでこちらはアインハルト・ストラトス。最後にあそこでヌイグルミを弄ってるのが常に錯乱状態の高町ヴィヴィオ。お前の娘だ」

 

「えっ、それは――

 

「ディバインバスター全機発射」

 

《Divine Buster Extension》

 

「なっ何を――

 

「「知ってた!」」

 

ディバインバスターの掃射を見てヴィヴィオとアインハルトがなのは達に襲いかかる。

 

ディバインバスターの発射と同時にバリアジャケットを纏い、掃射が終わると同時に申し合わせていたかのような完璧なタイミングで追撃を加える。

 

「ソニックシューター・アサルトシフト」

 

虹色の魔力弾が高速で飛来する。

 

「アクセルシューター」

 

「旋衝破」

 

ヴィヴィオの魔力弾を相殺しようと放ったアクセルシュートを掴んで投げ返す。

 

「嘘ッ!?」

 

咄嗟に張ったプロテクションで投げ返された魔力弾とソニックシューターを防ぐ。

 

アインハルトがはやてに向かい拳を固める。

 

「覇王断空拳」

 

「くっ」

 

アインハルトの拳をフェイトが間一髪はやてとの間に滑り込むことで防ぐが――

 

「フォトンバースト、追尾弾」

 

《Shoot Barret Barret-F》

 

圧縮された魔力が爆発し、視界を防ぐのと同時に追尾弾を放つ。

 

それをひとつひとつ落としていくが何故か動き辛い。

 

中遠距離のなのはとはやてを近接特化のアインハルトと中近距離戦闘が行えるヴィヴィオが押し込む。

 

魔力量を戦闘経験と技量で何とか優位を保つ。

 

「なのはッ」

 

「対象転送、這え 穢れの地に(グラビティブレス)

 

《Transporter High》

 

魔女の魔法が起こした重力でエレク以外の全員が体勢を崩す。

 

腕を環状の魔法陣が囲み、体勢を崩していたアインハルトとヴィヴィオを自分の周りに避難させる。

 

「捕らえろ」

 

《強装結界》

 

それを合図に半径三十メートルを越える巨大結界が三人を囲む。

 

「スターライトブレイカーEX-FB」

 

全ての自動防衛砲台と小型砲台の前方に魔方陣が展開され、そこに魔力が収束し巨大な球体を形成する。

 

浮遊する盾が反動を相殺する為に機動鎧の背面に収納され、推進力を強化する。

 

そして先程の砲撃が雨霰と降り注ぐ光景が可愛く見えるような光が視界を満たす。

 

七方向から放たれた砲撃が『シグナムのファルケンかヴィータのギガント級じゃないと破れない』と言われた強装結界を紙のように貫通して交差する。

 

膨大な魔力が氾濫し、防御も越えて蹂躙する。

 

「ブレイクシュート」

 

そしてその掛け声で一際大きな魔力球が爆ぜ、前方に砲撃として三人に殺到する。

 

神々しくも本能的な畏怖を感じさせる強烈な光。

 

絶対に人間が放つような規模の魔法ではない。

 

死を超越し、美しいと思わせる程にその魔法は次元が違った。

 

「うわぁお、私よくあれでイキテタナー」

 

「ヴィヴィオさん!?目が、目が死んでますよ!!」

 

そしてそれが晴れると、バリアジャケットを解除し、完全に意識を失った三人が落下していく。

 

それを結界で何とか受け止めて、公園らしき場所に着陸する。

 

先程の過ちを繰り返さない為にもそれなりに移動し、幻術で姿を隠している。

 

「辛勝ってところか」

 

「やっぱり投降の意思なんてなかったんですね」

 

「不意討ちでペースを掴むことこそあの場での最善手」

 

「さすがエレク!私たちにできない事を平然とやってのけるッ!そこにドン引く!恨まれるゥ!」

 

「おいヴィヴィオお前アースラに転送するぞ」

 

「やめてください、死んでしまいます」

 

「てか仕方なかったとは言えこれで俺らも犯罪者だな。公務執行妨害だ」

 

「あぁごめんなさいママ」

 

「俺も十四年後だったら弁護士や技術提供なんかで公務執行妨害くらいなら無罪にはできるが………こちらとなると厳しいな」

 

「すいません。それなら何で御三方を拉致して来たのですか?追跡の手は厳しくなると思うんですけど」

 

「現状少しでも情報と新しい魔法が欲しい」

 

「…………………………」

 

「アインハルトさん無駄です。『そんなのいつものことだろうが』とか言ってもどうせエレク先輩はやめません。しかも現状の最大最強戦力ですし」

 

「いや俺は今現在ちょっと戦闘は無理だわ」

 

「えっ?」

 

「あの砲撃は馬鹿みたいな威力を誇る反面魔力負荷がヤバい。その魔力負荷は発射後にあの高町なのはが一定時間魔法が使用不可能になり、レイジングハートはメンテナンスが必要となるレベルって言えば分かるだろ。だから砲撃特化のブラスタービットも三機が半壊、二機も小破。小型に至っては射出口が完全にイカれて全滅だ」

 

「そんな……」

 

「だから今日は俺の魔導師ランクはC+相当。お前らのがよっぽど強いだろうな」

 

「楽勝だと思ってたけど」

 

「そんな訳あるか!!大規模魔法の行使が行われてて収束の魔力が充分にあったことと、まだなのはさん達の経験が少なかったからこそあれは成功したんだ。未知の魔法と不意討ちでペースを握らせずに短期決戦で捩じ伏せる。天才相手に真面目にバトってられるか。言っとくが今現在なのはさん達は九歳だぞ。更に言うならフェイトさん以外の二人はまだ魔法を知って一年も経ってない筈なんだぜ。DSAA優勝者の俺が負けられるかよ」

 

「不意討ちしてる時点で敗けみたいなもんだと思うんですけど」

 

「じゃあお前が戦うか?」

 

「無理です」

 

「それはそうとしてエレク先輩の戦線離脱はかなり厳しくありませんか?」

 

「時間移動してる時点でそんなのは元々だがな。まぁお前が思う程ではないと思うぜ」

 

「どういうことですか?」

 

解析を終えたのかなのはやフェイトをどこかに転移しながら器用にタブレットをこちらに投げ渡す。

 

そこにはなのはの偽者だけではなく、色が違うだけでフェイトとはやてにそっくりな人物がいる。

 

「それはあのなのはさんの色違いのデバイスに映ってたやつで、マテリアルって言う魔力情報生命体らしい。マテリアルはその三人だけじゃなくて似たような奴がそこら中にいるみてーだぜ 。映像では確認できなかったがヴォルケンリッターやユーノ司書長なんかの偽者もいるらしいな。最悪俺らのあるかもしれん」

 

「何と……」

 

「だけど意識は混濁してて、性能も大したことない奴が多いみたいだ。何であの三人のマテリアルだけあんなに意思らしきものがあるのかは知らねぇけどな。まぁとにかく今の俺らでも倒せるレベルっぽい」

 

話ながらも顔も上げず、淡々と夜天の書を解析していく。

 

「ふんふん、それで?」

 

「だから俺らはアースラ勢力から逃げながらこいつらを狩ろう。そんな広範囲に作用するロストロギアが俺達のに関係ないとは思えねぇし、何か手掛かりくらいにはなると思うんだよ」

 

「なるほど」

 

「まぁそんな訳だから無理はしねぇで狩れる奴を三人で安全に狩れば良いさ」

 

《魔力反応あり、推定魔導師ランクAAA。速やかに拠点を移動させることを推奨します》

 

「エレク先輩!」

 

「ちょっと待て。何かおかしい。何かがおかしいぞ」

 

「何を言ってるんですか今は移動を優先しましょうよ」

 

「待て!闇の書の解析が終わるまで待ってくれ!!」

 

「今はヴィヴィオさんの言う通りです」

 

「いや逃げるならお前らだけで逃げろ」

 

「どうしますか?」

 

「エレク先輩を置いてはいけません」

 

尚も解析を続けること十分弱。

 

「そこまでだ!僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウン。 君らには公務執行妨害の疑いがかかっている。 この場にいる全員は速やかにデバイスを収めてバリアジャケットを解除するように。詳しい事情を聴かせて貰うぞ」

 

「ヤバいぞ。思った以上にヤバい気配だ」

 

「本当ですよっ!こんなんだからクロノ伯父さんに会っちゃうんじゃないですか!!」

 

「おっ、おじさん?」

 

「そんなどうでもいいことじゃねぇよ」

 

「どっ、どうでもいい?」

 

「ほらよ」

 

片腕でアインハルトとヴィヴィオを抱き寄せもう片方の腕で気を失ったはやてをクロノに向かって投げつける。

 

「なっ、ちょ――

 

「転移」

 

 

 

 

 

「宣言通りクロノ伯父さんは難なく回避できてましたけど。じゃあ結局何がヤバかったんですか?」

 

「闇の書に偽装データの痕跡があった。何重にも上書きされたデータの下に何かがあった筈なんだ」

 

「えっ?つまりどういうことですか?」

 

「簡単に言うとロストロギアの中でも一級品の闇の書から何かが逃げた」

 

「えっ?」

 

「正真正銘世界の危機だ」

 

「嘘ッ!?」

 

「予定変更。一番怪しいあのなのはさん達のマテリアルを襲うぞ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

撃墜

すみません。
なのは達のキャラが違うとご指摘を受けまして修正版を掲載いたします。




「さぁ戦争を始めるか」

 

軍用自律デバイス、ガジェット、簡易魔力炉、傀儡兵、固定砲台、質量兵器を除いたあらゆる形態の武器を前にエレクが嗤う。

 

「これどうしたんですか!?」

 

「買った」

 

「えっ」

 

「現金で一括購入したのを改造した物だ」

 

「えっ!?」

 

「俺はそれなりにお金持ってるし。それ使ったり貴重品売ったりして買った。奥の手のブラスタービットの修理こそこの時代じゃできなかったがまぁ戦力にはなるだろ」

 

「すいません。ご飯まで用意してもらってるのに」

 

「いや全然いい。お前も知っての通り俺は戻れば金はあるからな。今お前らが戦えなくなる方が怖いし摂れる時に摂っとけ」

 

「そう、そう。人生助け合いですよ」

 

シュークリームを両手にヴィヴィオがアインハルトを諭す。

 

付け加えるならば一個八百円の高級品である。

 

「ヴィヴィオの夕食レーション決定な」

 

「ひどい!!」

 

「水は付けてやる」

 

「今助け合いの美しさを語ったばっかりなのに!?」

 

「助け合い?お前は俺の役に立ったか?」

 

「まだです。しかしこれは先行投資だと思いませんか?」

 

「じゃあ今日の襲撃ヴィヴィオは囮な」

 

「絶対嫌です。そしたら敵に寝返ってやる」

 

「不良債権だわこいつ」

 

「でも正直返り討ちになる可能性はありますよね?そしたらどうするんですか?」

 

「まぁそりゃゼロじゃあないが………まっ、大丈夫だろ。現時点では最大の戦力を揃えたんだ。最悪なのはさん達のマテリアルがオリジナルの二倍強くても撤退だけはできる戦力を確保してるしな」

 

「なるほど」

 

「さっ始めるか。科学の、機械の力見せてやるぜ」

 

 

 

 

 

「セット・アップ。武装展開、光剣。魔力変換資質再現。Type-Rio起動。対魔導師用装甲AMF起動。収束機構起動。内蔵魔力炉全力稼働。武装をミドルレンジに特化。全武装の出力リミッター解除。フルバースト」

 

ヴィヴィオ達が最も相手にしたくないと思っている見慣れた黒い機動鎧。

 

いつもと違うのは身に纏う炎と雷と両手足に常時起動させている高速機動魔法。

 

姿勢と方向の制御の為の黄金に輝く羽根が手には三枚、足には五枚も伸びている。

 

そして現れるは二メートルの鎧武者に相応しい 大きさを誇る高密度に圧縮された魔力刃の二刀 。

 

黄金の雷が剣の形を成したそれを両手に握りしめ、傀儡兵とガジェット、固定砲台に号令を下す。

 

「目標指定区域に侵入、弾幕展開、狙撃」

 

《Cross Fire Full Burst》

 

《Snip Shot》

 

「お前らは王のマテリアルを潰せ。それ以外は俺が相手をする。増援が来たら即座に離脱しろ。じゃ、行くか。転移」

 

「「転移」」

 

《Transporter》

 

固定砲台からの一斉射撃が飛行中のマテリアル三人を囲むように展開され軌道を阻む。

 

そして地上に配置された傀儡兵のシールド貫通に特化した狙撃が不意討ちで三人を襲う。

 

「なっ」

 

――が流石は英雄になる彼女達のマテリアル。

 

一発も当てられない。

 

シュテルと呼ばれていたマテリアルが隣の王とか呼ばれていたマテリアルを引き寄せ、助ける余裕すらある。

 

が、そんな三人を彼女達の少し上空に転移したエレクらが襲い掛かる。

 

「貴様はシュテルを倒した鎧武者!!」

 

「ボクが出るっ」

 

フェイトのマテリアルである青いツインテ少女がそれにも対応して即座に迎撃にくる。

 

ツインテ少女の持つ青い稲妻の剣が神速で振るわれる。

 

それは並みの魔導師ならば防御の上からでも断ち切れる威力を持ってエレクの装甲を叩く。

 

「光翼斬!!ってあれぇ!?」

 

しかしAMFを全開にした装甲とかち合った大剣が十全に威力を発揮できずに弾き返される。

 

そこを狙ってミカヤからパクった剣術に炎と雷を纏わせて切り掛かる。

 

「模倣天瞳漣月」

 

「わわっ!!」

 

青いツインテ少女が慌てて大剣を前方に掲げ防ぐがエレクの刀は光剣の刀身を易々と貫通し、ツインテ少女のバリアジャケットを掠める。

 

「なっ、何で!?」

 

「当たり前だ」

 

相手はフェイトのザンバーフォームを模しているようだがエレクはそのフェイトの十年後の切り札をほぼ完全再現している。

 

バルディッシュのフルドライブ。

 

ザンバーフォームの魔力を高密度に圧縮することで高い切断力を会得した片刃の長剣形態。

 

更に言えば第六世代でもないデバイスならばAMF下では魔力結合・魔力効果発生は阻害されるのだから当然だ。

 

「ブラストファイアー」

 

更に切り込もうとするが振りかぶった刀に炎の魔力弾がぶつかり、それを止められる。

 

「私が出ます。レヴィは王を――

 

「双龍円舞」

 

炎と雷を龍の形にして突撃させる。

 

「ッ、プロテクション」

 

プロテクションを張ると同時に刀を放棄して拳を握る。

 

「ガイスト・クヴァール」

 

ジークリンデの魔法を右手で放ち、プロテクションを消し飛ばすと左手で敵のボディに拳を捩じ込む。

 

「抜剣 槌牙(ついが)

 

咄嗟に間にデバイスを挟んで防御したようだがそれでも後方に殴り飛ばす。

 

「ファントムスマッシュ」

 

拡散して放たれた魔力弾を操作して抉るように撃ち込んだそれがーー

 

「ディバインバスター」

 

ピンクの砲撃に呑み込まれて消滅する。

 

それを確認するやマテリアルを仕留めることを諦める。

 

「退避」

 

《Transportーー

 

「させないよ」

 

その瞬間世界から隔絶されるような感覚と共に結界内に閉じ込められる。

 

「ちっ」

 

「あわわわわ‼なのはママだぁ‼」

 

「これはどうすれば……」

 

なのはがシュテルの隣に飛行してこちらと対面する。

 

「大丈夫、シュテルちゃん?」

 

「!?」

 

「ええ、ありがとうございます。ナノハ」

 

「待て‼待て‼何でなのはさんが自分のマテリアルと仲良さ気にしてんだよ!お前ら敵同士だっただろ!!」

 

「えっ、あの後友達になって……」

 

「コミュ力お化けがっ!!」

 

「いつものかぁ~」

 

エレクはアースラメンバーに漁夫の利狙いで襲われても逃げられるだけの戦力を確保はしていたが、なのは達がマテリアルと同盟を組んでいたのは致命的な誤算だった。

 

「全機突撃、時間を稼げ」

 

ガジェットを差し向けて時間を稼ごうとするが、その全てが撃ち落とされる。

 

「もう大丈夫だよレヴィ」

 

「ん、案外大丈夫そうやな。王様」

 

「あーへいとー」

 

「遅いぞ子鴉」

 

危うくガチで投降しようかと思う程の過剰戦力だった。

 

未来のエース級が六人である。

 

その全てが武装局員の上位5%以内である。

 

魔導師ランクAAAは伊達ではない。

 

とりあえずオプティックハイド、フェイク・シルエットを併用してこっそり逃げる。

 

一瞬ヴィヴィオとアインハルトのことが頭を過るが『まぁ、いいか』と考え直す。

 

面倒臭いがそれなら彼女達全員に勝てるだけの戦力を確保してから出直すしかないだろう。

 

「紫雷一閃」

 

と思った矢先に炎の剣がこちらに振るわれる。

 

自動防御のプロテクションで受け止めるがオプティックハイドが解ける。

 

「そこのお前。匂いでバレバレだ」

 

「今度は逃がさんぞ」

 

何時の間にかヴォルケンリッターの四人とクロノがいる。

 

「詰んだわ」

 

「あっ、貴様っ。我らに手を出して只で帰れると思うなよ。シュテル‼レヴィ‼」

 

「かしこまりました」

 

「うんっ」

 

「ちょっ、シュテルちゃん!?」

 

甲高い音を立ててカートリッジがロードされる。

 

「待て‼それは駄目だ‼こちらは投降する!!それを人間相手に使おうとするな!!」

 

「降参っ‼降参しますっ‼そんなものをエレク先輩以外に撃つなぁあああぁあ」

 

「凄い魔力ですね」

 

「アインハルトさんもそんな呑気なぁ!!」

 

「大丈夫です。なのは。非殺傷設定ですから」

 

「えっ、でも……」

 

「それに全力でぶつかることで心が通じ合う場合も存在します」

 

「それは……」

 

「集え、明星(あかぼし)全てを焼き消す炎となれ――

 

「砕け散れ――

 

「絶望に足掻け塵芥――

 

魔力がデバイスに集中している。

 

魔方陣が展開し、なのはさんの魔法に勝るとも劣らない力が集中する。

 

「ちょっ、根に持ち過ぎだろ」

 

「せめて‼せめてエレク先輩だけにぃいいぃぃいいい」

 

――ルシフェリオンブレイカー」

 

――雷刃滅殺!きょっこーーーざん!!」

 

――エクスカリバー」

 

その魔法は自動防御のプロテクションと前方に展開していた自動防護障壁を丁寧に一枚、一枚粉砕してエレク達に迫る。

 

「あぁ綺麗だなぁ」

 

その現実逃避はエレクの本心ではあった。

 

エレク達は落ちた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次元空間航行艦船『アースラ』

「未来から来たぁ!?」

 

二日間医務室でぐっすり昏睡したエレク達は現在リンディの私室で話を聞いていた。

 

「えぇ。ここから十四年後のミッドから転移して来ました。そしてそこの金髪オッドアイの奴がなのはさんとフェイトさんの子です。一応なのはさんの動画データくらいならありますよ。信じられねーでしょうけど」

 

「フェイトとなのはの子供っ!?」

 

「養子ですっ‼紛らわしい言葉を言わないでください!!クロノ伯父さん混乱してるでしょ!」

 

「…伯父………」

 

「信じましょう。こちらもそう言った旨の発言をしている少年を保護しているわ」

 

「なーるほどなー」

 

「でも出会い頭にディバインバスターは過激過ぎるわね」

 

「それは本当にすみません。でも言い訳させてもらうならタイムパラドックスで存在消滅の危険があったんで形振り構ってられなかったんです。あれもやむを得ずってことで勘弁してください」

 

「私達はエレク先輩に脅されたんです。許してください。ねっ、アインハルトさん?」

 

「えっ、えぇと…」

 

「ヴィヴィオ潰すぞ」

 

「はーはっはっは。どうやってぇ?機動鎧も傀儡兵もガジェットもない先輩などぜーんぜん怖くないですね!!」

 

エレクは安全策の一環で機動鎧と浮遊盾、自動防衛砲台、残ったガジェットの残骸なんかをアースラに接収されていたのだ。

 

だから今は常に持っているデバイス整備、改造用の専用デバイスしか持っていない。

 

勿論戦闘能力は殆どない。

 

「お前覚えてろよ」

 

「おっ?やりますか?私と戦っちゃいますか?」

 

「ヴィヴィオさんもうそれくらいに」

 

「それも聞きたいんだが君は本当に競技選手なのか?魔力炉や魔法を阻害する魔法など聞いたこともないのだが」

 

「一応エレク先輩は競技選手ですよ。デバイス技師も兼任していますが」

 

「既存のデバイスじゃ逆立ちしたって勝てないからな」

 

「それもだ。未来ではデバイスを持つだけで簡単にあのレベルに到達できるのか?魔導師ランクCの人間がデバイスを持つだけでSオーバーになれるなんてことになれば管理局の制度もかなり変わると思うんだが………」

 

「いえ未来でも今と然程変わりませんよ。危険性は高いですが今の時代にも魔力炉があるでしょう。でもだからって皆が皆プレシア・テスタロッサみたいになれる訳じゃねーのと一緒だと考えてもらえれば分かりやすいと思います。デバイス管理の腕もそうですけど魔力コントロールだって必要ですし。あと馬鹿高い維持費が掛かりますしね」

 

「はい。未来でもエレク先輩は相当特殊です」

 

「頭だって相当異常ですっ」

 

「お前生きて過去から帰れると思うなよ。ぶち殺すぞ聖王!!」

 

「丸腰でか?やってみろよぉ!!」

 

「ちょっ、抑えて。エレク先輩抑えて!ヴィヴィオさんも煽らないでください」

 

「でも考えても見てくださいよ。アインハルトさん。こんな状況じゃなきゃエレク先輩を煽るなんてできませんよ?今までの恨みを今こそ解き放つべきではないですか‼」

 

「それは……」

 

「おい!未来に帰った時のことを考えて発言した方が良いぞ」

 

「…そうか………」

 

エレク達の騒動を見て疲れたように頷くクロノ。

 

「それで聞きたいんですけど、これの原因わかりますか?」

 

「えぇ。ちょっと待ってね」

 

ディスプレイを宙に浮かべて三人に説明を始める。

 

「貴方達は時間移動の際に発生したタイムホール的なものに巻き込まれたのだと思います」

 

「タイムホールまでは此方も把握しています。俺達が聞きたいのは帰れるか否かと犯人。帰れるならばその方法を聞きたい」

 

「帰れると思います。でも少し待って――

 

その言葉が終わらない内にビーッビーッと警告音が部屋を満たす。

 

「なっ」

 

「どうしたの!?管制室に繋いで!」

 

「そ、それが艦長。繋がりません!」

 

「な、何で!?まだ『システムU-D』は起動していない筈じゃ」

 

「とにかく管制室に急ぐわよ」

 

話を中断して駆け足で向かうリンディにエレク達は続いた。

 

 

 

 

 

「あっ」

 

エレクの溢した言葉にヴィヴィオとアインハルトが目を向けると管制室の全てのディスプレイにポップな字体で『ELEC』の文字が浮かんでいる。

 

そのロゴにヴィヴィオとアインハルトは見覚えがあった。

 

最近生活必需品となり、よく使うセグウェイにプリントされてるマーク。

 

「うわっ」

 

「これって………」

 

「説明を!!」

 

「艦内のシステム全てが停止しております。アルカンシェルは勿論転移ポートも動かせません。今襲われたら戦闘行為はおろか逃げることもままなりません」

 

「そんな……何でそんなことに…」

 

船員達に聞こえないようにエレクが小さめの声でリンディに告げる。

 

「すみません。それ十中八九俺のウイルスです」

 

「ふぁっ!?ど、どういうこと!?」

 

「俺の機動鎧とか傀儡兵。まぁどれでもいいですけど解析しようとしましたよね?アクセスしましたよね?」

 

「えっ、それは……」

 

「責めてる訳じゃないです。だって俺らが怪しいのは客観的に見てわかりますから。当然の措置です。でもこういう職業柄企業スパイや襲撃者には馴染みがありまして、俺の手を加えたものはウイルスとかセキュリティソフトとか満載なんです。多分アースラの整備室や工房からウイルスが入って今やっと全権を掌握したって感じでしょうね」

 

「なななな、何でそんなことを」

 

「俺一応天才なんで」

 

「と、とにかく直せるんですね?」

 

「えぇ。ウイルスが全権を掌握して三十六時間経つと自動的に内部データを全次元世界に発信したり破損させたりしますけど、俺が管理者権限使えば一時間かからずに事態を収められます」

 

「お願いできるかしら」

 

全次元世界に発信、破損の部分で顔を青くしたリンディがエレクに迫る。

 

「えぇ。俺のデバイスさえ返してもらえれば今すぐにでも」

 

エレクはニッコリ笑った。

 

ヴィヴィオは脱兎の如く逃げ出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

栄える外道

遅くなってすまない


”聖王は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の技師を除かなければならぬと決意した。ヴィヴィオには機械工学がわからぬ。ヴィヴィオは、競技選手である。拳を振るい、友と楽しく暮して来た。けれども外道に関しては、人一倍に敏感であった。――中略――ヴィヴィオは激怒した。「イカれた奴だ。(私が)生きてはいけぬ」ヴィヴィオは善良ではあったが、調子の良い少女であった。友を省みることもせずに、一目散に管制室を飛び出して行った ”

 

 

 

 

 

アースラの管制室。

 

エレクが腕部に装着したデバイスでキーボードを弾く小気味良い音が響く。

 

エレクはモニターを一瞥もせずに作業を続けながらアインハルトに顔を向けて雑談を始める。

 

「ヴィヴィオの奴がどこにいるか分かる?」

 

「いえ、私にもわかりません」

 

「ふぅ~ん。マジで逃げ切るつもりなのかねぇ。あの聖王サマは」

 

「フラグ回収が早過ぎましたからねぇ。流石に現代、こちらでは未来ですか。未来に帰るまでは安全だと思っていたのでしょうが……」

 

くるくるとメモリーカードを手の中で器用に回しながら笑う。

 

「とりあえずルシフェリオンブレイカーとスターライトブレイカーの複合砲撃でも試してみるかなぁ~」

 

「えぇっ‼それはやり過ぎじゃ……」

 

「大丈夫。大丈夫。非殺傷だから」

 

「いや、魔力ダメージは入るんですよ?」

 

「ブラストカラミティとかも良いかもなぁ~」

 

ヴィヴィオが襲撃の前夜に買っていたジュースのペットボトルを片手で器用に開けながら傾ける。

 

「あっ、私にもください」

 

「エイミィさん、俺らの荷物ってどこにありますか?良ければアインハルトに教えてもらえますか?」

 

「えっと……」

 

「お、おいそんな適当で大丈夫なのか?」

 

流石にそんな態度に不安を感じたのか、クロノが躊躇いがちに口を挟む。

 

「大丈夫。大丈夫。これぐらい片手でもできるし」

 

「えぇ。人格はともかく技術だけならエレク先輩は次元世界の技士の中で五本指に入ると思います」

 

 

 

 

 

「っと。はい。終わりましたよー」

 

「……確かに凄いな。三十分掛かってないぞ」

 

「まあ管理者権限使って操作プログラムを撤去させるだけですからね」

 

「管理局に欲しいくらいだ」

 

「やめた方が良いと思いますよ?この人の優秀性は性格と反比例していますから。単純に組織に収まるような人じゃないんです。社会不適合者とも言いますけど」

 

「うっ、やはりそういう性格かぁ。薄々団体行動とか上下関係は無理だと思ってはいたが…………」

 

「まぁそうですね。誰かに頭下げて働くなんてごめんです。ユニゾンデバイスだけで組織された部署なら無給でも働きますけどね。いや寧ろお金を払って土下座します」

 

「残念だがそんな部署はない」

 

「本当に残念です。でも依託という形なら管理局に力を貸すことも吝かではありませんよ?」

 

「色々頼みたい気もするがストレスも溜まりそうなのでやめておくよ」

 

「う~ん、例えそれがシステムU-Dの干渉制御術式の開発でもですか?」

 

「何っ!?」

 

「自ら偽装プログラムを上書きすることで闇の書の管制人格にすら存在を知られなかった、永遠結晶エグザミアを中核とする、特定魔導力を無限に生み出し続ける無限連環機構システム。それが砕け得ぬ闇こと、システムU-Dですよね?」

 

「何故君がそんな事をっ!!」

 

「愚問ですね。俺らはそのシステムU-Dの制御プログラムである理のマテリアルを撃破しているんですよ?」

 

「まさかっ……」

 

「えぇ。彼女を解析しました」

 

「そんなことが出来るのか?」

 

「アースラの艦内システムを掌握した技術だけでは不安ですか?」

 

「ぐっ……」

 

「まぁまぁ、あれは事故ですからね。これからは共に戦う仲間同士協力していきましょう。俺の給料は無くて良いですし」

 

「そ、そうか。それは正直ありがたい。協力感謝する」

 

「ええ、次元世界の平和の為に頑張りましょう」

 

そう言いながら懐からメモ用紙を取り出し、さらさらと何事か書き込むとクロノに手渡す。

 

「エレク技師……これは何だ?」

 

「必要な器材及び、制作部品の見積書ですね」

 

「えーっと。合計額の桁が七つもあるんだがこれは間違えかな?」

 

「いえ、間違いはありません。必要経費です。時空管理局のエリート、本局部隊ならそれぐらいの予算申請余裕ですよね?次元世界の危機なんですからそれぐらい出しますよね?」

 

「………………」

 

「まあアースラに俺より優れた技師がいるのなら俺の協力は断っても良いですよ?依頼しなくても良いですよ?」

 

「…できるだけ早く用意しよう…………」

 

「共に頑張りましょうねっ?」

 

 

 

 

 

クロノが管制室が予算案と仕様書を交互に見比べて頭を抱えるのを尻目に、エレクとアインハルトは管制室を離れる。

 

「凄いですね。あんな時から気づいていたんですか?」

 

「ん?あぁ、馬鹿か?」

 

「えっ?何で誉めたのに馬鹿なんて言われるんですか!?」

 

「いやぁ、俺がマテリアルを襲撃した理由覚えてる?」

 

「えっと……闇の書改め夜天の書から流失したデータの探索及び解析ですよね?」

 

「うん。それがシステムU-D、砕け得ぬ闇だ。それで俺がなのはさんのマテリアルであるシュテル・ザ・デストラクターを襲撃したのはその前だぞ?」

 

「えっ?あ、じゃ、じゃあ何で砕け得ぬ闇の事を知ってるんですかっ!?」

 

そうアインハルトが驚きながらも疑問を投げると、エレクは取り返した待機モードのデバイスとメモリーカードをポケットから取り出してにやりと笑う。

 

「うわぁ~」

 

「うん。アースラ乗組員が経過途中の事件も詳細に記載する働き者で助かったよ」

 

「それバレたら本気で不味いですよね?」

 

「アインハルト、これは事故だ。ウイルス除去の過程でたまたま偶然発見したんだ。それをすこーし拝借しただけだ」

 

「完全に悪党の台詞じゃないですか」

 

「まっ、俺以外の奴がシステムU-Dの管理プログラムを作れるとは思えんのも事実だ。せめて仕事は誠実にこなすさ」

 

「また自分ルールで完結してますし……」

 

「おいおい、自分の身を守れるのは自分だけだぜ。しかもこの時期の管理局は色々と問題があるだろ?ジェイルスカリエッティとか最高評議会とか」

 

「それはそうですけど………」

 

「おっ、ちょうど良いや。アインハルトお前も見てけよ」

 

そう言うとエレクは訓練場の扉を開ける。

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

訓練施設の扉を開けるエレクを、アインハルトのアスティオンを通して確認したヴィヴィオは疑問の声をあげる。

 

ヴィヴィオだって、何もせずにただエレクから逃げたわけではない。

 

こっそりアインハルトとの通信を繋げて、エレクと相対するようなことになったらなのは達を巻き込んで逃げようと画策していたのである。

 

そして、リアルタイムでエレクの様子見をしていたからこそこの行動はヴィヴィオを混乱させた。

 

あの器の小さいことで有名な外道オブ外道のことである。

 

仕事が終わった後はそれこそソニックムーブを使ってでもあんな台詞で煽った自分を〆にくると思っていただけに、ヴィヴィオはこの不気味な行動に恐怖と疑惑を感じずにはいられなかった。

 

《みつけた》

 

ギシリと空気が軋みをあげる。

 

通信機越しに呟いた一言に呼吸が止まるくらい驚く。

 

嫌な予感にゆっくり振り替えると見慣れたサーチャーを視認して、背中を冷や汗が伝う。

 

「これは……?ワイドエリアサーチ…?」

 

《座標特定、距離算出》

 

エレクのデバイスが発する言葉が急激にヴィヴィオの脳に幾つかの悪夢を予感させる。

 

《聖王サマはこんな小細工で俺から逃げおおせるとか本気で思ってたのカナー?避けられるとか思ってたのカナー?》

 

完璧にヴィヴィオを、正確にはエレクを監視していたアスティオンを見て言う。

 

「エリアサーチ?ま、まさか…ずっと私を探してた?だ、だけどここは戦艦アースラ……なのはママ達がいるここを襲撃できる人間なんて………」

 

咄嗟に椅子から立ち上がり、付近に座っているなのは達を確認する。

 

ヴィヴィオが今いるのはアースラの食堂である。

 

それこそ未来の英雄達がいるここを容易には襲撃はできまいと自身に言い聞かせるが、

 

《管理者権限―connect、同期を完了》

 

《転送》

 

「転移?まさかそんな馬鹿げたことが………」

 

《Transporter》

 

エレクから強奪した、セグウェイにも変形する移動用デバイスが勝手に起動してヴィヴィオの足元に魔方陣を展開する。

 

「い、いやぁあああぁあぁあぁぁ」

 

そんな哀れみを誘う悲鳴がアースラの食堂に響いて、ヴィヴィオは処刑場に転送した。

 

 

 

 

 

「ようヴィヴィオ。宣言通りつ、ぶ、し、に、き、た、ぜ☆」

 

訓練施設の唯一の扉を封鎖するように佇む黒い機動鎧。

 

見るからに痛そうな電気を纏った戦斧を突きつけてヴィヴィオに語る。

 

「あは、あはははは。いやだぁエレク先輩。後輩の女の子にそんなこと言ってたら誤解されちゃいますよ?」

 

「言いたいことはそれだけかな?」

 

「いや、ちょっ、大切なことですよっ!!アースラの人に勘違いされちゃいますって!!」

 

「それが遺言でいいんだよな?」

 

「あ、アインハルトさんを解析するのを許可するので許してください」

 

「ヴィヴィオさんっ!?」

 

アインハルトが抗議の声をあげるがヴィヴィオには気にする余裕などない。

 

「うん?記憶継承技術は既に獲得済みだ」

 

「えっ!?」

 

「ま、マジですか?」

 

「痛みのショックで死ぬか、死にたくなるくらい痛め付けるか選ばせてやろう」

 

「くそっ、まさかエレク先輩が魔法に釣られないなんて!!しょうがないやってやる!ただやられるだけなんて真っ平ごめんだ!!」

 

そしてヴィヴィオとエレクのバトルの火蓋が切って落とされる。

 

「ソニック!」

 

ソニックシューターで牽制しつつ、エレクに突貫する。

 

狙うはエレクの背後‼

 

唯一の勝利条件‼

 

廊下に出れば魔法をぶっ放せないことを見込んだ聡明な策‼

 

「させるかっ!!九十一式『破軍斬滅』」

 

戦斧から雷撃を放出して力任せにぶん回す。

 

「セイクリッドディフェンダー」

 

ヴィヴィオは人並外れた判断力で即座に回避を諦めて奥の手を切る。

 

エレクの戦斧がぶつかる瞬間に、接触箇所に防御魔力を集中させ、同時に攻撃魔力で相手の攻撃を弾くヴィヴィオの最強防御。

 

相手の攻撃の軌道を読み取る優れた眼と、タイミングを読んで瞬時にプロテクションを展開する魔導技術が必要とされる奥の手。

 

読み違えれば、自分の装甲を自ら削ぎ落として大ダメージを受ける諸刃の刃。

 

しかし、この局面においてヴィヴィオはそれをほぼ完璧に成し遂げた。

 

エレクの機動鎧の基礎性能に身体強化を重ね掛けして振るわれた戦斧は雷を放出しながら、ヴィヴィオの展開したセイクリッドディフェンダーにぶつかり表面を滑るように受け流される。

 

エレクの支援ユニットが存在しない今、斧を受け流してできた隙をヴィヴィオは全力でついていく。

 

斧を振り抜いて姿勢を崩すエレクを横目に、ジェットステップで横を走り抜けて――

 

「その程度の手が見抜けないと思ったか?」

 

――目の前で刀を構える鎧武者を視認する。

 

「愚かな」

 

それを見たヴィヴィオは過去最高の速度でセイクリッドディフェンダーを展開するが、最高のタイミングまで待ち伏せをして放った高速の斬撃が防御の上からヴィヴィオを殴打して吹き飛ばす。

 

「ミカヤの模倣水月を防ぐか………なんちゃってとは言え聖王ということか」

 

予想外の事態にヴィヴィオは周囲を見渡して、地獄を見た。

 

前にも、後ろにも、右にも、左にも、地上にも、空中にもエレクがいる。

 

六人のエレクがそれぞれ武器を構え、包囲していた。

 

六重奏(セクステット)。シャンテ選手の魔法だ」

 

「そんな…最悪だ………」

 

ヴィヴィオが弱々しく呟く。

 

「悪夢です……」

 

アインハルトも呆然と同意する。

 

「泣け!喚け!そして死ぬがいい!」

 

エレクが叫ぶ。

 

「「「「「死ぬがいい!!!」」」」」

 

その叫びにエレクの合唱が続く。

 

「うわ、きもちわるい」

 

その発言に呼応するように、各々のエレクがラーニングした魔導の数々を繰り出しながら一斉に迫る。

 

部屋一杯にエレクの声が響いているのを聞きながらヴィヴィオはそっと意識を手放した。




常に煽って喧嘩を売るのがコロナ
いつもぽろっと溢して制裁されるのがリオ
強かだけどうっかりするのがヴィヴィオ
天然で神回避するのがアインハルト


分身はそれだけ思考リソースつまりマルチタスクを使うのでセクスブレイカーとかはできないよ~遠距離なら支援ユニットを使った方が強いよ~近距離地上戦なら外道強いよ~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アースラ交友会 前編

ヴィヴィオを〆た、ルンルン気分で廊下を歩く。

 

あぁ過去に来てから溜まっていたストレスが解消されていくのを実感できる。

 

魔法は好きだ。

 

魔法戦技はもっと好きだ。

 

久々に余裕をもって戦えた感じがする。

 

うん、とても晴れやかだ。

 

ヴィヴィオが成長しているのも良い。

 

自分だけの戦闘スタイルというものを構築しつつある。

 

とても将来が楽しみである。

 

そんなことを考えているともうひとつの楽しみに辿り着く。

 

「こんにちわ」

 

身だしなみを整えてお土産を構えると、ドアをノックする。

 

「はい、はい、今でますよー」

 

ピンク髪の女性が気怠げにドアを開ける。

 

「ええっ!?」

 

「キリエ・フローリアンさん、ですよね?時空間にポコポコ穴を開けて、人を勝手に過去にすっ跳ばしてくれやがったはた迷惑なヒューマノイド姉妹の妹さんですよね?借りを返しに来ました」

 

「え~っと、もしかしてわたしが巻き込んじゃったマッドサイエンティストの少年?そして鎧を着込んで槍を構えてるのは何でか教えて欲しいな~」

 

「いえいえ、貴方のせいで過去に跳ばされて砲撃を受けた可哀想な魔導工学者です。これは交渉を円滑に進める為のおしゃれです。少し身体検査を受けて貰いに来ました」

 

「おしゃれかー」

 

「おしゃれです」

 

「キリエ~何騒いで………怖っ!鎧武者がキリエを脅してるっ!」

 

「いやだなぁ、勘違いしないでくださいよ。俺は被害者としてお話しに来ただけですから」

 

「やっば、マジで不味い奴だわこれ」

 

「大丈夫、大丈夫。すこーし付き合って貰うだけですから」

 

「えっ、どういうことですか!?この人誰ですかっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

解析が終わる頃にはキリエさんもアミタさんも死んでいたので朝御飯をいただきに食堂に行く。

 

徹夜だがテンションはマックスである。

 

あわよくばあの名高きヴォルケンリッターと模擬戦でもしたいな~と考えながら覗くと、フェイトさんのマテリアルである青いツインテ少女がテーブルに突っ伏して項垂れている。

 

確か――

 

――レヴィとか言ったか?」

 

「そう!ボクはレヴィ・ザ・スラッシャー!!強くて凄くてカッコイイ雷刃の襲撃者とはボクのことだ!!……あれ?おにいさん誰?」

 

「俺か?俺は今日からここで働くことになったエレク・クレイヴィルだ」

 

「エレク?」

 

「エレクでも、エレくんでも外道でも好きなので呼んでいい」

 

「じゃあエレくんで!」

 

満面の笑みでレヴィが答える。

 

エレクの脳内算盤が嘗て無い速度で弾かれる。

 

「あー、それでレヴィは何でひとりなんだ?」

 

「えっと、王様とシュテル達は変な黒い鎧の奴と話し合いに行くって。で、それにフェイトやナノハ達も付いていっちゃったんだよ~」

 

どうやらレヴィはその変な黒い鎧の奴が俺だとは知らないらしい。

 

「何でレヴィは行かなかったんだ?」

 

「あんまり楽しくなさそうだし、お腹空いたから」

 

「ふむふむ。レヴィ、ここには偶然シュークリームがある。俺の反逆した下僕高町ヴィヴィオの買ってきたそれなりに高いやつだ。食べるかい?」

 

「食べる‼」

 

「食べろ、食べろ。あー、それでさー、えーと、レヴィのデバイス?見せて欲しいんだけど良いかな?」

 

「デバイスってバルニフィカスのこと?」

 

「そうそう、レヴィは強くてカッコイイって聞いたから見せてもらいたくてさ」

 

「ふふ~ん、まあボクは強くて凄くてカッコイイからね~」

 

「そうそう、俺はデバイス技師だからさ~強い人のデバイスを参考にしたいんだよ」

 

「えへへ~そうかな~」

 

思えば、俺の周りには怒れる馬鹿は多くいても、愛すべき馬鹿はいなかった。

 

「しょうがないな~」

 

「ありがとうレヴィ」

 

 

 

 

 

「おーい、エレくん。使うから、バルニフィカス返して~」

 

先程の会合から六時間後のことである。

 

そろそろ来るだろうとは思っていたので余裕を持って対応する。

 

「よぉ、レヴィ」

 

「どうだった?」

 

「うむ。最強たるレヴィにより相応しいデバイスに改造しておいた」

 

「えっ?」

 

六時間デバイスを預けただけで、知らない内に自分の相棒とも言えるデバイスを改造されて流石のレヴィも顔を曇らせる。

 

「そう心配するな。基本スペックを引き上げただけでそこまで大幅な改造はしてない。レヴィはフェイトさんと同じオールラウンダー型の魔導師だったから十四年後のフェイトさんを雛形に強化したんだ」

 

「えっ!?ホント?未来のオリジナルってこと?」

 

釣れた‼

 

確かな手応えに勝利を確信する。

 

「あぁ。フェイトさんはただ速くさらに速くを実践した魔導師だな。当たらなければノーダメージを地でいく、高速機動戦闘、一撃離脱戦法を得意としていた。正直あの紙装甲、超スピードはどういう経緯で生まれたのか小一時間問い詰めたいくらい珍しいタイプだったな」

 

「へぇ~オリジナルの未来か~」

 

そう一度感慨深げに呟くと少し真面目な顔になってエレクに向き合う。

 

「ねぇねぇ、ボクもオリジナルより強くなれるかな?」

 

その言葉が聞きたかったとエレクは胸中でガッツポーズをとる。

 

しかし流石は天才。

 

それをおくびにも出さずに返事をする。

 

「勿論だ。そして、その為の俺謹製の改造デバイスだ。レヴィが今より確実に強くなれるように改造しておいたぞ」

 

「ありがと~エレくん」

 

「電気変換資質の変換プロセスの簡略化、足回りの強化、魔力刃の結合強化なんかを重点的に強化しておいた。そして俺の改造を受け、見事バルニフィカスは第五世代デバイスの仲間入りを果たしました!!」

 

「わー!すごい!すごい!」

 

「ありがとう。そして、今ならなんとこれにAMF展開マントをお付けします。これなら多少の被弾はびくともしません!!」

 

「すごい!カッコイイ!」

 

 

 

 

 

「エレク先輩今までどこにいたんですか?」

 

夕食後にアースラの客室で今までの戦闘データを閲覧していると呆れた顔でアインハルトが訪れる。

 

「こーぼー」

 

「嘘ですよ。私がヴィヴィオさんのお母様方と行った時はいませんでしたし」

 

「オプティックハイドって知ってる?」

 

「うわっ」

 

「それよかヴィヴィオはどうしてる?復讐はいつでもWelcomeだぜ」

 

「昨日は昏睡、今日はふて寝です」

 

「つまらんな」

 

「何だかんだエレク先輩ってヴィヴィオさん大好きですよね?」

 

「勿論だ。あいつの才能と精神は素晴らしい。中、遠距離の才能を歪ませて近距離に拘るのはいっそ美しいとさえ思うよ」

 

「へー」

 

「無論俺はお前も大好きだぞ」

 

「………ありがとうございます。で、良いんですかね?」

 

「wikipediaにも載せられる天才の言葉だ。伏して感謝するが良い」

 

「ええっwikipediaに載ってるんですか!?すごい!!」

 

「あぁ、そうそう、敵討ちだって募集中だぜ」

 

思い出したようにエレクが付け加える。

 

「女子で最強になった時にお願いします」

 

アインハルトが笑顔で返す。

 

「そりゃ楽しみだ。頑張れよ」




今回は場繋ぎ回なのだ。あんま面白くないけどごめんね。


映画のキーヴィジュアル見たんですが、更にメカメカしくなってて楽しみです。
わりとマジでdetonation試聴後に続きを書こうか迷ってます。イリスは出ませんけど……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アースラ交遊会 後編

「あのぉ……」

 

「えっとぉ、エレクさんですよね?」

 

顔を上げると、俺が出会い頭にディバインバスターを撃ち込み、強装結界に閉じ込めて、スターライトブレイカーで撃墜したなのはさんとフェイトさんが立っていた。

 

即座に土下座した。

 

脚を揃えて、膝を地面に着いて頭を下げる。

 

それをデバイスを使わないで出せる最高速度で成していた。

 

エレク・クレイヴィル。

 

プライドを捨てられる男である。

 

「すいませんでした」

 

「ちょっ、やめてください」

 

「あの時は突然の時間遡行に混乱してたんです。俺が悪かったです。本当にすいませんでした。賠償金も払いますのでどうかバスターは勘弁してください」

 

「しないよっ!?」

 

「ザンバーも勘弁してください」

 

「そ、そんなことしませんっ!」

 

「では砲撃も斬撃も?」

 

「しませんよっ!!」

 

「それは良かった。で、用件は?」

 

「おぉう、切り替えが早い」

 

「とりあえず土下座のまま話すのはやめてください」

 

 

 

 

 

「まず確認なんですけど、黒い鎧の人がエレクさんなんですよね?」

 

「そうですね。カラーリングは5秒もあれば変えられますけど、確かに俺が黒い鎧の人です」

 

「多分エレクさんは知ってるんだろうけど高町なのはです」

 

「私はフェイト・T・ハラオウンです。好きに呼んでください」

 

「これはこれはご丁寧にどうも。俺がデバイスマイスターにしてDSAA競技選手のエレク・クレイヴィルです。好きなものは魔法で、嫌いなものは権威主義です」

 

「エレクさんは未来から来たんですよね?」

 

「そうですね。なのはさんやフェイトさんから見ればという注釈はありますが現在より十四年未来から来ましたね」

 

「アインハルトちゃんと一緒に?」

 

「正確にはヴィヴィオが一緒ですけどね」

 

「あのすっごい上手い子だね?私の魔法も殆ど見切られちゃったし」

 

「貴方の娘ですからね」

 

「「えっ?」」

 

「なのはさんの砲撃をあれだけ知ってるのはあいつを除けばフェイトさんくらいですかね~」

 

「「……………………………」」

 

「あっ、また冗談――

 

「動揺を誘ったのは事実ですけど嘘じゃないですよ」

 

「待って!?じゃあ本当になのはの子供なの?」

 

「うぅ~ん。二十三歳だからそんなにおかしくはないのかな~」

 

「待って!待って!ヴィヴィオってどうみても私達と同年代なんだよ!?それにエレクさんは十四年先から来たんだよ!?」

 

「因みにヴィヴィオは十歳です」

 

「四年後!?」

 

「流石!理系は強いですね!!」

 

「どういうこと!?」

 

「更に補足するならヴィヴィオはなのはさんとフェイトさんの子供ですよ」

 

「「!?」」

 

「えっ、待って!?私の未来はどうなってるの!?四年後に何があるの!?」

 

「なのはと私の子供!?女の子同士で子供ってできるの!?」

 

「「せ、せつめいしてください!!」」

 

 

 

「養子です」

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

「なのはさんがヴィヴィオを引き取りました」

 

「「……………………………………………」」

 

「どうしました?まだ用件を聞いてませんけど 」

 

「確かに言葉だけ見れば嘘じゃないし、私達が早とちりしただけなんだろうけど今の説明の順序的にわざとだよね?」

 

「少し、頭冷やそうか」

 

「あれれ?敬語が消えたぞ?」

 

「尊敬できない人に敬語はいらないの」

 

「付ける意味が消失したからね」

 

「あぁん?やんのか、コラ?大人だったら怖くて喧嘩なんかできねーが、九歳だったら二対一でも負けねぇぞ!」

 

「土下座してたのに!?」

 

 

 

 

 

昼食後の腹ごなしにかるぅく二人と模擬戦をしたエレクはその後アースラをぶらぶら散歩していた。

 

現在のアースラ未来のエースオブエースを筆頭に、才能の宝庫とも呼べる人材が多く存在する。

 

そんな若き天才達に触れ、話し、解析する時間はエレクにとって掛け替えのない宝物である。

 

そんなことを後輩に言えば『それならエレク先輩は宝物庫に忍び込んだ盗賊ですかね』くらいは言うだろうと容易に想像できるから言わないが、確実にエレクは時間遡行を一番楽しんでいた。

 

「貴方は夜天の主、八神はやてさん!こんばんは!模擬戦しましょう!」

 

「エレクさんやしたっけ?」

 

「はい。次元世界最強にして最狂の十代、エレク・クレイヴィルです!座右の銘は報復攻撃で、人は俺を『最低王者』とか『裁けないインチキ野郎』と呼びます!」

 

「は、はぁ」

 

「どうしました、はやてさん?魔法とデバイスのことだったら相談にのりますよ?」

 

「投降したフリして私らハメたからエレクさんってもっとヤバ、怖い人だとおもってまして……」

 

「それは誤解ですね。あれは状況がそうさせたのであって本意ではありませんって。そもそも俺は人格者で通ってるんですから」

 

「う~ん、さっきの紹介を思い返すとネタか冗談か判断に困るとこや………」

 

「そうそう、それではやてさんは何故ここに?魔法とデバイスの相談以外にもお金のこととか戦闘のこととかなら頼って良いんですよ?はやてさんのお願いきちゃあ、闇討ちまでなら協力しますよ」

 

「いりません。特にこれといって目的はないですし。なのはちゃんとお話でもしようかなぁ~くらいの気持ちでしたし。あと『さん』付けやめません?エレクさんの方が歳上ですし、恥ずかしいというかむず痒いです」

 

「英雄であるはやてさんを呼び捨てにはできません。熱心なファンに半殺しにされますから」

 

「えっ?」

 

「冗談です。雑魚が幾ら集まったところでこの俺に傷ひとつつけられませんから」

 

「そっちかい!!」

 

「歴史に名を残すレベルの天才なんで!」

 

「私が交戦することがないように祈っときますわ」

 

「そんなっ!俺の好感度は、はやてさんが管理局相手にクーデターを起こしたって裏でスポンサーになるぐらい高いのにっ!!」

 

「どんな想定や!!そして好感度高過ぎやろっ!私は未来でエレクさん相手に何したんやっ!」

 

「俺とはやてさんの間に個人的な関係はありません。二、三度顔合わせした程度です。デバイスの買収もできませんでしたし。だからこれは、デバイスマイスターとしての純粋なる尊敬です。あと付け加えるならこの時代で売った恩は利益率が高そうだったからです」

 

「ドライな関係や!ビジネスライクや!でも尊敬してるのは本当っぽいからとっても複雑!」

 

「『それはそれ、これはこれ』の精神ですね」

 

「自分で言うなや!」

 

「それではやてさん、模擬戦しません?」

 

「どこから『それで』が出てきたんか聞いても良いですか?あと模擬戦は遠慮させてください。エレクさんの相手になれるとも思えませんし。あ、模擬戦はシグナム辺りだったら喜んでやってくれると思いますよ」

 

「ふむ。それは楽しみですね。また後にでも誘ってみます。三時間のインターバル付きで、二人までなら不意討ち、闇討ち、敵討ちは大歓迎です」






登場人物が多すぎる………kんそうを…感想をくれ、ください…それなら頑張れますので………


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

葬られた歴史

その日は突然やって来た。

 

その日もエレクは相変わらずの外道思考で、優秀な使い魔姉妹で遊び、シグナムと模擬戦していた。

 

そんな時にクロノがエレクを含む多くの魔導師を呼び出した。

 

「よく来てくれた」

 

エレク達が呼び出された部屋の中でクロノが重々しく口を開く。

 

「ディアーチェとシュテルがやられた」

 

「「「えっ?」」」

 

何人かが思わず疑問の声を溢す。

 

彼女達は強かったのだから。

 

それこそなのは達と互角の実力を誇る彼女らがやられるような相手との戦闘。

 

そんな事態が始まってしまったのを否応なしに実感する。

 

「そんなっ!二人は大丈夫なのっ!?」

 

「今は医務室で診察中だ。シャマルに診てもらっているが、魔力ダメージこそ酷いが命の心配はないそうだ」

 

なのはの心配を余所に極めて冷静に言葉を返す。

 

「それでクレイヴィルの言っていたシステムU-Dの対抗策とやらはできているのか?」

 

昨日の模擬戦ですっかりエレクと仲良くなったシグナムが聞く。

 

「じゅーぶん!天才舐めんなよ!システムU-Dなんざサクッと直してやるからさぁ」

 

エレクが好戦的に嗤う。

 

「いや、相手はこいつだ」

 

クロノがモニターに写し出したのは8m程の人型兵器。

 

銀色の装甲が魔力光を反射して煌めく、どこか見覚えのあるようなフォルムの巨大兵器。

 

銀の装甲板に赤いい塗料でデカデカと描かれた『E』の文字。

 

「うわあぁあああぁあああぁあぁぁあああああ」

 

エレクが絶叫した。

 

それはもういきなり。

 

想像を絶する声量で。

 

それはエレクがむせる十何秒間続いた。

 

誰も何を言えなかった。

 

「いるのかよっ!俺のマテリアルぅううぅぅうう!黒歴史ぃいいぃぃいいい!」

 

「はい、かいさーんーありがとーございましたー」

 

「あ、私も戻ります」

 

皆が『やっぱりこいつかよ』と呆れた表情を晒す中でヴィヴィオとアインハルトは帰ろうとする。

 

「待て、待て、待ってくれ。気持ちはわかるが待ってくれ」

 

「そうは言いますけど相手はエレク先輩のマテリアルなんですよ?」

 

「私はエレク先輩程厄介で戦いたくない魔導師を知りません」

 

ヴィヴィオの言葉にアインハルトが続く。

 

「そうは言うがあれを放置するのも管理局としては避けたいところなんだ」

 

「でもクロノくん、シュテルちゃん達は例外にしても普通マテリアルはオリジナルより弱くなるんじゃないの?」

 

「それは――

 

「………なのはさん……俺の解析調査によると劣化するのはリンカーコアや経験、記憶という、人間の構成要素です。ヴィヴィオの聖王の鎧なんかはゆりかごがないので再現できなかったようですが、デバイスなんかは極めて高いレベルで複製されています…」

 

「うわ」

 

「つまり知識、材料、技術という俺の強みは丸々残っています」

 

会議室が静まり返る。

 

模擬戦闘だろうとエレクの戦いぶりを見た人間は誰もが思った。

 

「た、戦いたくない」

 

「あ~、正直僕もヴィヴィオと同意見なんだが、そうも言ってられなくてね。その、何だ?エレクなら勝てるのか?」

 

暗にエレク同士で決着を着けて欲しいと言っていた。

 

「勝てますね。あれの開発をしたのが二年前。二年もあれば知識の差は歴然です。改良型だろうが、量産型だろうが作れます」

 

「「「おぉ~」」」

 

部屋が喜びに湧いた。

 

「――ただ、お金も材料も時間もないので今現在は使えない手ですね。大規模魔力炉とまではいかなくてもビットがあればまだいけたんだが……」

 

空気が死んだ。

 

「俺をメンバーに入れないで、最低でも三人。欲を言えばバックアップで六人は欲しいところです」

 

「え~と。誰がそのメンバーか聞いても?」

 

「そうだな。まずトーマ、ザフィーラさん、シャマルさんは欲しい」

 

「うげぇ、俺っ!?」

 

「頼りにしてもらえるのは嬉しいがどういう選定基準だ?」

 

「えぇっと、ザフィーラさん、こいつ、Silver Craniumって言うんだが、こいつはAMW、Anti-Magilink Weaponだ」

 

「えっと……」

 

「魔導師との戦闘を想定して作った兵器だ。それだけわかれば良い」

 

「じゃあ勿論」

 

「AMFが標準装備されてる。AMFは、魔力結合を弱めて魔力行使を阻害するフィールド魔法だな。こいつの強みは俺と戦ったなのはさん、フェイトさん、シグナムさん辺りだったらわかると思います」

 

「ふむ。確かにあれは少し厄介だったな」

 

「うん。弾幕の中を突っ切って攻撃してくるのは反則だと思ったよ」

 

「攻撃や防御、移動ですら魔法を使う空戦魔導師には相性最悪と言って良いでしょう。だから、拘束に特化して、素手でも戦えるザフィーラさん。補助要員として回復、拘束、転移を高レベルで行使できるシャマルさん。最後に魔導師ですらないからAMFなんか効かないトーマが必要なんだ」

 

「後の二人は?」

 

「キリエさんとアミタさん。理由はトーマと同じ。役割は撹乱とフィニッシュ」

 

「「うえっ」」

 

「ごしゅーしょーさまです!」

 

「ヴィヴィオはメイン盾だ」

 

「それはおかしい!!」

 

 

 

 

 

「――はいはーいっ、作戦会議やるよー決戦機動兵器SilverCraniumの性能教えるよー」

 

「そのクレイヴィル?この空気は……」

 

「あはは、ちょっとこれは私も遠慮したいなー」

 

「無理よ。エレクが言った時点で私とお姉ちゃんはメンバー決定よ」

 

空気が死んでた。

 

処刑場の囚人みたいにテンションが低かった。

 

「………はいっ、コンセプトは超耐久、高火力。四機あれば戦艦、三百あれば地上本部の一時的制圧を可能とするスペックです。隠密、輸送に優れていますがそこは関係ないので省きます」

 

まぁエレクが空気を読むとか、フォローをすることなんてあり得ないので当然のことながら無視される。

 

「ふむ、高火力と言うがどの程度の威力なのだ?」

 

「ディバインバスター・エクステンションをショートバスターくらいのチャージで撃てます!」

 

「先輩っ!私じゃ盾にはならないと思います!」

 

「ヴィヴィオには自動回復、マルチディフェンサー展開用のデバイスを渡すので問題ないです」

 

「問題あるよっ!」

 

「他に質問はありますか?」

 

「はいっ!」

 

「アミタさん」

 

「動力は何ですか?」

 

「内部の収束機構と小型魔力炉です。内部に乗り込む形なのに機能停止と同時に自爆します」

 

「欠陥品じゃないですか」

 

「うん。確かに、色々と改善点が多かった。乗り込み式だから操作性も瞬間火力も悪くなかったんだけどね。俺も耐久試験中に爆発して危うく死にそうになったし」

 

「私達の時代にはないんですか?」

 

「うん。MK-4ならあるけど」

 

「四世代も続いてるし………」

 

「じゃあさぁ、武装はどんなのを搭載してるの?」

 

「良い質問ですね、キリエさん。腕部の火炎放射機に背面に搭載したブラスター。肩部にはミサイル発射筒もあったな」

 

「質量兵器だ!どうしてエレク先輩は捕まらないのかっ!管理局の怠慢だっ!」

 

「合法だ。ブラスターは砲撃魔法しか撃たないし、ミサイルの中身は圧縮魔力だ。火炎放射機も魔力変換資質の再現だからな」

 

「う~ん、性格に難はあってもエルトリアの復興に欲しい人材ね」

 

「あれ?でもアミタさんやキリエさんザフィーラならいざ知らず、普通の人間って焼かれたら死ぬよね?」

 

「うーし、いっちょ討伐に行きますか!」

 

「聞けよっ!」








目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最悪の敵

「死ねぇえぇえええぇええええ」

 

エレクが悲鳴のように殺意を叫びながら腕を振るう。

 

殲撃(ガイスト)っ!!」

 

純度100%の殺意を載せた一撃は、自動発動したプロテクションを紙のように引き千切り肩の装甲を抉る。

 

「もう、一発!!」

 

掛け声に呼応して現れた五人の分身が、更にもう一撃を叩き込もうと腕を伸ばすが、マテリアルは装甲を削られたながらも反転して分身を焼き尽くす。

 

「身の程を知らぬ黒歴史め!消え失せろ!」

 

プロテクションで炎の渦から身を守りながらも、自らのマテリアルを睨み付けるエレク。

 

《…………ふふふ、会いたかったぞ、俺!》

 

「俺は会いたくなかったぞ、俺!」

 

《……何故だ?この二年で何があった?》

 

「…………………大人になったらわかるさ。俺の要求はただひとつ。さっさと消えろ。お前も天才なら自分が俺の劣化コピーだってことくらい理解できてんだろ?生体データの欠片、記憶の残滓。消えることが確定している、生物でさえない存在だ。お前の夢は成し遂げられない。故にこの場から消えろ。せめて寿命尽きるまで大人しく過ごせ。襲撃とか、アインハルトみてぇな辻斬りとかすんな」

 

《それはできぬ相談だ。確かに俺は貴様、エレク・クレイヴィルのマテリアルだ!魔力で構成された、極めて不安定な生物とも呼べぬデータだ。しかしそれがどうしたというのだ?偽物だろうが劣化コピーだろうが俺はエレク・クレイヴィル!エレク・クレイヴィルが自分とは言え指図など受けるか?否!断じて否!俺は諦めない!世界を支配するのはこの俺だっ!!》

 

「あぁあぁぁああああ、その口を閉じろぉっ!!」

 

《俺自身が二人、世界を賭けて戦う!これ以上のゲームがあるか?》

 

「世界征服とかするかぁああぁあぁぁあ!!」

 

二年前のエレク・クレイヴィルを再現されたマテリアル。

 

彼の記憶は中等部二年生の時で止まっている。

 

そしてその時のエレクは、世間で言われるところの中二病そのものであった。

 

中二病とは思春期を迎えた頃に罹患することが多い恐ろしきべき病で、形成される自意識と夢見がちな幼児性が混ざり合いおかしな言動をとってしまうというものだ。

 

幾らエレクとは言え、精神は少し外道くらいの少年。

 

打倒管理局とか、世界征服とか考えちゃう年頃だった。

 

《覇道を諦めるとは、二年で堕落したかっ!エレク・クレイヴィル!管理局は正さねばならないっ!管理局が斃された時こそ、世界は再構築されるのだ!あるべき姿に!》

 

「今すぐ楽にしてやるから喋るな」

 

そうしてエレク・クレイヴィル十五年の人生で初めて、敵意100%の戦いが始まった。

 

片や二年も経てば恥ずかしくて身悶えするくらいの夢を叶える為に。

 

片や二年前の恥ずかしい過去をこれ以上人目に触れさせない為に。

 

くだらない理由で戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

《ミサイル発射ぁ》

 

肩部の発射筒が開き、圧縮した魔力を込めたミサイルがばら蒔かれる。

 

ミサイルは発射されると収納していたスラスターを展開し、機動を修正しながらエレクを狙うが――

 

「旋衝破」

 

――エレクは初めに飛来したミサイルを掴み取り、自分に迫るミサイル群に投げ返す。

 

誘爆したミサイル群が生み出した爆炎が、大気を揺らす。

 

「世w界w征w服wとかwww世w界wはw再w構w築wされるwww」

 

「しねぇ!」

 

わざとらしく指を指してエレクを嘲笑っていたヴィヴィオを抱えあげて、煙の中にぶん投げる。

 

《ディバインバスター》

 

「やっべぇ!セイクリッドディフェンダー!」

 

煙で発射まで軌道を隠していたディバインバスターをヴィヴィオガードで防いでいる内にエレクは転移を駆使して回り込む。

 

「覇王――断空拳っ!」

 

《蒼竜炎撃っ!!》

 

覇王の一撃と蒼い炎が激突し、火花を散らす。

 

二年前にルーフェンの辞書を見ながら着けたかっこいい技名がエレクの精神を殴り付ける。

 

脳内を、ノートに書き連ねた幾つもの黒歴史が巡る。

 

《ブラストマグナム!》

 

背面に搭載した砲台が拡散モードのレーザーでエレクを薙ぎ払う。

 

ブラスト(爆風)マグナム(弾薬)も関係ねぇっ!!」

 

高火力のレーザーがプロテクションの上から鎧を炙るが、『ブラストもマグナムも関係ねぇ』というヴィヴィオのツッコミの方がエレクには痛い。

 

六重奏(セクステット)

 

エレクの胸中を焦りが支配する。

 

直ちに、一刻も早く奴を退治しなければいけないと思うのだが無駄に強い。

 

中二病でもエレク・クレイヴィル。

 

この決戦機動兵器はエレクが中二病を拗らせ過ぎて欠陥品にこそなったが、機体性能はトップクラス。

 

SSランクの魔導師に匹敵する魔力を生成する魔力炉に、物理的にも魔法的にも堅牢な機体。

 

痛々しい技名を付けられてはいても、十分な火力を持つ武装。

 

火力からは考えられないほど発射間隔が短い火炎放射機に広範囲殲滅を可能とするミサイル。

 

いかなる敵も粉砕する凄まじい瞬間火力を誇るブラスターも搭載している。

 

『負ける時は死ぬ時だ!』という当時ハマっていたアニメの台詞に感化されて搭載した自爆機能以外は優秀な兵器だ。

 

だから攻め切れない。

 

六人の分身と味方の支援があっても倒し切れない。

 

シャマルとザフィーラの拘束は三十秒も経たずに引きちぎられるし、トーマの魔力分断能力も強力だが物理的に堅牢な装甲板を貫けない。

 

アミタ、キリエのギアーズ姉妹も火力が足りないし、ヴィヴィオはそもそもメイン盾で役割が違う。

 

唯一装甲板を破壊できるエレクが砲撃をぶっぱなそうとしてもブラスタービットがない状態では警戒しているマテリアルに出掛かりを潰される。

 

戦いは、明らかに消耗戦の体を成してしまっていた。

 

そして消耗戦で長引けば長引くほど――

 

――フェニックスフレイム》

 

鳥の形の炎が追尾機能を持って迫る。

 

――ヴォルカニックミサイル》

 

火山とか関係ないけど大質量のミサイルを多重展開して爆撃を行う。

 

――アルティメット・ドラゴニック・バースト》

 

やたら長い名前を付けられた極太レーザーがヴィヴィオ他、数名の腹筋を崩壊させる。

 

「あぁあああぁあぁぁああああぁああ」

 

――エレクの心は削れる。

 

この事件の不幸は、エレクが天才であったことだろう。

 

多感な中等部二年の時期に、管理局崩壊を成し得る可能性があった。

 

一般人であれば妄想やおふざけですんだところを、形に成し得るだけの力があった。

 

デバイス技術が、工学知識が、戦略情報が、莫大な財産があった。

 

あってしまった。

 

だからこその中二兵器!

 

己の黒歴史が飛んで、戦っている。

 

今の自分でも簡単に破壊できない性能で。

 

「消え去れぇ!失せろぉ!消えてくれぇ!」

 

エレクの心はかつてない程弱っていた。

 

自業自得である。

 

「エレク先輩www私でもアwルwテwィwメwッwトwドwラwゴwニwッwクwバwーwスwトw 何度も喰らったら死ぬんですけどwww」

 

「死ね。いや殺す。手始めに殺す。聞いた奴殺す。全員殺す」

 

「いやいやエレク君っ!?そんなことしてる場合じゃないよ!マテリアルが――

 

《銀の死骸、この現世を地獄の火で清めよ。この炎は怒りの一撃。崩壊は救済となり呪縛を悉く燃やし尽くすだろう――

 

「あぁあああぁああああぁぁぁあああぁあぁあぁ」

 

四時間かけて考えたオリジナル詠唱にギリギリで保っていたエレクの心が死んだ。

 

「いやっ、もう無理www死ぬwww笑い死ぬwww」

 

ついでに聖王の腹筋も死んだ。

 

――インフェルノ・オブ・ゲヘナ》

 

何度も言うが、中二病の時に作成された兵器とは言えエレク製。

 

無駄な技名が付いていようが、兵器としてはガチ仕様である。

 

痛々しい詠唱に意味は無くとも、詠唱にかかる時間は必要なのだ。

 

つまりマテリアルエレクであってもチャージを必要とする奥の手。

 

「これを使わせる前に仕留めたかった……………」

 

空に展開されるは、無数の魔法陣。

 

「転移魔法?」

 

転移陣から出現するは百を越える銀の弾頭。

 

「あぁー死ぬ気で守れよー追尾ミサイル三百本の一斉発射とかガチで死ぬかんなー」

 

「あぁっ、エレク先輩が一周回って冷静になってる!?」

 

《吹き飛べ俺っ!》

 

ミサイル群が加速する。

 

「総員、全力防御!ヴィヴィオ、ザフィーラさん、シャマルさんも頼む!」

 

「ちょっ、エレク先輩がそんなこと言うとかガチでヤバイやつじゃないですかー」

 

「エクセリオンシールド耐熱仕様!全力展開!」

 

「多重障壁展開! セイクリッドディフェンダー前方展開!」

 

「風の護盾っ!」

 

「ぬうっ」

 

新暦66年、世界は闇の炎に包まれた!

 

魔力は枯れ、装甲は裂け、全ての魔導師が死滅したかのように見えた。

 

だが、天才は死滅していなかった!

 

《やったか!?》

 

「アクセラレイター」

 

煙幕を突っ切って、急加速したキリエが斬りかかる。

 

《その程度で………》

 

「お姉ちゃんっ」

 

E.O.D.(エンド・オブ・ディスティニー)

 

斬撃を受けて動揺するマテリアルを囲うように、全方位から大量の魔力弾が放たれる。

 

「プロテクション」

 

「はぁああっ、ディバイドゼロ」

 

トーマの砲撃が装甲に張られたAMFをプロテクションごと引き裂く。

 

《くそっ、ヴォルカニック――

 

「ふんっ!」

 

ミサイルを放つより先に守護獣の拳が装甲を揺らす。

 

「鋼の軛!」

 

「戒めの鎖」

 

AMFの解けた装甲を白銀の杭と、クラールヴィントのワイヤーが縛り付ける。

 

「よしっ、彼方より来たれやどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」

 

エレクの魔法陣を中心に展開された7本の光の槍がマテリアルの装甲を貫く。

 

《なぁっ!?これはっ!?》

 

貫かれた装甲が美しい光沢を失い、ありふれた灰色の石へと変化する。

 

《なんだとっ!?この俺がしくじったというのか!?》

 

「AMFさえなくなればミストルティンが一撃必殺になんだよ。さあ速やかに自爆しろっ」

 

急速に機能を失う機体に、戦闘AIが自爆の判断を下す。

 

《ぐっ、俺が死んでも第二、第三の俺が………》

 

「世界征服とかしねぇよっ!?」

 

《うわらば》

 

エレク最悪の敵は速やかに爆発した。




アンチでも質問でもいいからかんそーくれー


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。