小説を書くこと自体初めてなので誤字や表現が違っていたりしますが、楽しんで読んでいただければ幸いです。
感想や誤字の報告などお待ちしております。
青く澄み切った空、遠くに聞こえる川のせせらぎや小鳥のさえずる声。自然が奏でる音の芸術が四方八方に響き渡る。いつまでも聞いていたいそんな気にさえなってしまう音に無情にも乱れが生じる。
小鳥たちが飛び立つ音。そして近くに迫ってくる獣の鳴き声。先程まで聞こえていた川の音でさえ聞こえなくなる程に近ずいて来ている。獣の鳴き声が近づくにつれて地面が激しく揺れ始める。幸いなことに周りを見渡しても海らしきものは見当たらないので津波による被害は心配しなくてもいいだろう。近くにあった草むらが揺れ大きな四足歩行の獣が姿を現す。
その姿は地球上には存在しないような形をしていた。百獣の王の髪をさらにモフモフにゴワゴワにしたような顔、大きな牙にゴリラのように太い手足、胴体からは有名なサラブレッドのような筋肉が見える。尻尾はまるで別の生き物のように蠢き一言でその姿を表現するなら《キメラ》が妥当であろう。
大きな獣の見つめる先には一人の男性が立っていた。
「またこの夢か...」
男性はつぶやくと同時に素早く腰に差していた剣を取り構える。
Gyaaa!!
男性の動きに反応しキメラが襲い掛かる。が、その瞬間キメラの首は体から離れ宙を舞っていた。見事に空中でトリプルアクセルを決めた頭は遠くの森の中へと姿を消し、先程キメラがたっていた場所には砂浜に打ち上げられた鯨のように横たわる胴体が醜態を晒していた。
「ま、昔やり込んだゲームの装備と敵で何回も戦ってりゃそーなるわな」
一目見ただけで分かるほど強そうな装備に身を包んだ男性は武器を仕舞い地面に座り込む。段々と意識が薄れていき、身体に気怠い感じが広がっていく。無気力が身体中を支配し、お祭りのあとのような虚無感が貪るように心の中を駆け巡る。そして視界が白く霞んでいき...
目が覚めると見慣れた部屋の中にあるベット上だった。水中から酸素を求めるかのように飛び起きる。身体に汗で湿った服が引っ付き嫌悪感を感じながら、時計を見ると午前3時過ぎを指していた。そんな時刻を無慈悲に指す時計を睨みながら、先程の夢で完全に目が覚めた体を如何にして明日(今日)のギリギリの時間まで眠りにつくかを考える。
(そう言えばこの間、テレビで自然の音を聞きながら寝ると良い。みたいな事言ってたな。試してみるか)
暗闇の中手探りでスマホとイヤホンを発掘し装備完了。適当に川の音を流しながら少し目を瞑り横になる。瞬く間に意識は深い眠りの中へと消えていくのであった。
特に考えてはいませんが週1ぐらいのペースで更新できたらなと思ってます。
何も考えずに書いているのでおかしな点や不明な部分もあるかと思いますが何卒よろしくお願い致します。
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日常
部屋に朝を告げる音が響き渡る。このまま二度寝したいが、休日ではないので学校に行かなくてはならない。別に学校なんて1日ぐらい休んでも問題は無いのだが、今日は確か放課後に友人と遊ぶ約束をしてた筈だ。
「めんどくせぇ...」
俺は気怠い体を引きずるようにしてベットから起き上がり、素早く登校する準備をする。ありがたい事に親が準備してくれていた朝食を食べ自宅を後にする。自宅から学校まではそこそこ距離があるので自転車をこいで登校だ。これが地味に面倒くさい...。
学校に着けば、教師たちの『出席日数が〜』の攻撃を受けてしまった...。遭遇する面識のある教師達は皆同じ事しか言わないので何か悪い宗教にでも学校が洗脳されたのかと心配になってしまう。そんなことを考えていると、教室の前の廊下から声が聞こえてきた。
「今日は蒼太ちゃんと学校に来たんだな〜」
「そりゃ今日は放課後店長の所行くんやろ?」
「おお、ちゃんと約束覚えてたんだな」
「面倒くさいけど約束したからな...」
話しかけてきたのは友人の1人で今日遊ぶ約束をしていた人の内の1人だ。朝からアニメやゲームの話で盛り上がり、放課後まで特に変わったこともなく2日ぶりの学校を満喫した。
放課後も特に何もなく友人達とカードショップでパックを購入したり、対戦したりして時を過ごした。そして自宅に帰ってくるも親はまだ仕事から帰ってきてないようだ。別にいつも通りの事なので特に何も思うでもなく冷蔵庫にある物をチンして美味しく頂いた。
面倒くさいし、今日学校に行ったから明日は休むか...。夕食と入浴を済ませ明日の予定を何のゲームをして時間を費やすか考える。別に学校で虐められている訳でもないし、親や学校、友人に不満がある訳でもない。何で学校に行かないのか自分自身でも分かってないと思う。ただ毎日がいつも通り普通に生きて過ごすだけ、何をするでもなく何かやりたいことも特にない。そんな日々に少し嫌な気分になってしまう。
もし自分が生まれてきた世界が、ゲームの世界みたいに剣や魔法を自由に使って生きる世界だったら、と想像して憧れては現実との差に落胆する。最近はそんな妄想もしなくなって夜遅くまでゲーム漬けの生活をしていたのだか、やはりそれだけでは物足りない。
だからこそ夢で見ることのあるファンタジーな世界が最初の所で目が覚めるのが悔やまれる。それでも1度だけでもあの夢の続きを見たい。そう願い今日こそはと眠りにつくのであった...。
まだ小説を書くことや、投稿や編集・修正など慣れないことばかりですが、楽しんで書いていけれたらなと思ってます。
次は明日か明後日に投稿予定です。
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目覚め
1人部屋の中にいた。他に何かするでもなく、ただゲームだけをしている。お腹が減ってきたら適当に食事を取りまたゲームの世界へと吸い込まれるように遊び始める。眠くなってきたら睡眠をとりまた起きては同じことを繰り返す。
日によっては学校に登校したり、放課後らしき時間帯に数少ない友人達が遊びに来たりもするが、基本部屋の中で1日ゲーム漬け。そんな日常に自分は何をしているのだろう?と思い自己嫌悪で吐きそうになる時も涙を流す時もある。だが、結局は同じような日々を繰り返す。
今日も自己嫌悪で生きるのが辛く、吐きそうなのに吐けない。そんな感じに襲われながら苦しんでいると、ふと意識が遠のいていく。
次に目が覚めた時には森の中にいた。比喩ではなく本物の森だ。太陽の光に照らされ、風に揺られ木々や葉っぱによる合唱が耳に聞こえてくる。全く身に覚えのない景色に戸惑いながらも、横になった状態から座りの姿勢へと変える。周りを見てみても全く訳が分からない。
「このジャージは昨日着て寝たやつだから夢じゃねぇよな…、ってかここ何処だ?」
昨日は自室のベッドに横になり寝たはずなのに、起きると森の中とかどんな状況だよ...。寝てる間に捨てられた...は、ないか。捨てるならもっと前にやっただろうし、イタズラって誰が何のためにやったのか分かんねぇし...一体どうなってんだ?と考えているとポケットの中の重みに気がつき手を入れてみる。
「お、スマホ入ってんじゃん!誰だか知らねーけど馬鹿だろ。まあ助かったけど」
とイタズラに失敗して歪ませているであろう見知らぬ誰かの顔を想像しながら、スマホを取り出し画面を開く。するとそこには圏外の2文字が。
「あ。......それはマジでナシだろ〜!!」
心の底からの叫びだった。飴と鞭ならぬスマホと圏外の攻撃を精神面にクリティカルで喰らってダウン寸前、さらに追い討ちをかけるかのように近くの草むらから物音が聞こえる。
「嫌、もういいから。充分驚いたから、怒らないから家に帰して〜。ねぇ」
一応話しかけるが返事がない。嫌な予感、嫌な汗が背中を流れた時、草むらから顔を覗かせて出てきた。マジかよ、猪じゃん。そう思った瞬間、草むらから二足歩行で歩いて来た。右手にはご丁寧に木と石でできた槍を携えて。
完全にゲームとかに出てるくオークじゃん。そう思うと同時に相手は、右手に持った槍で襲い掛かってきた。運良くそれを転びながら躱し、転びながらも走って逃げる。しかし基本ニートな生活をしていて体力、持久力があるわけでなくすぐに追いつかれ、回り込まれてしまった。
あ、死んだわ。そう思い諦めかけた瞬間、足元の木の根っこに躓きオークが倒れ、手に持っていた槍が自分の足元に転がって来た。今しかない!と思い咄嗟に槍を拾い、立ち上がるオークの頭目掛けて思いっきり突き刺した。オークは一瞬大きな声を上げたが、すぐに静かになり頭から血を流し二度と動かなくなった。
予定ではもう少し進んだ所まで書けると思っていたのですが、やはり文章だけで色々と表現をするのは難しいですね...。
次はいつ頃になるか分かりませんが早めに更新できるよう頑張ります。
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異世界ふしぎ発見
体から力が抜け、倒れ込むように座り込む。激しい息切れと心臓の音が、静寂を取り戻した森の中に響き渡るかのように聞こえる。先程まで命の危機を感じて興奮状態にあった意識が、段々と落ち着きを取り戻してきた。
「オェェェ...」
落ち着きを取り戻すと同時に、目の前にある死体のグロッキーな姿や、周りに漂う死体ならではの独特な香りに限界を超え、その場に吐き出してしまった。何もかもをぶちまけてスッキリした所で、改めて状況を整理しようと考えを始める。
オェェ、まず先にこの場所に長くいるとヤバそうだな。少し離れた所に移動するか。と考え行動を起こそうとした時、目の前にあった死体が突然光り、スマホへと吸収されるように吸い込まれ、消えていった。
「えっ?わっ、なっ...何だこれ!?」
光を吸収するも見た目には変化のないスマホを見つめ、画面を恐る恐る開いてみる。ここで改めてスマホの画面の変化に気が付く。先刻は電波の所しか見てなく、気が付かなかったがスマホのアプリが《カメラ》、《アイテム》、《ステータス》
の3つだけに変わり、アイテムは右上に+1と書かれていた。
「.........」
いや、先刻もオークを見た時に、もしかしてとは思ったけどさ、走ったらしんどかったから、夢でもなさそうだし。マジかよおい。本当にファンタジーな世界なのか...?
先刻の体験やスマホの画面で、段々と考えがまとまってきた所、次はスマホの画面に意識が集中する。
先刻の光とこの+1から考えられることは、まあアレしかないよなぁ。など考えながらスマホの《アイテム》のアプリを開いてみる。
アイテム一覧
・オークの死体 ×1
「おお、やっぱり!」
思った通り。これはスマホに収納されたっぽいな。どうしてこのスマホに収納されたか分かんねぇけど便利だな。でもこれって出す時はどうするんだろう?と思った時またスマホが光り、目の前にヤツが現れた。
慌ててスマホに収納するように考えると、また死体は光に包まれ収納された。成程、これは考えたりイメージするだけで、スマホに出し入れ出来るのか!確かに最初疲れてたから、移動しなくてもこの死体がゲームみたいに消えればなと思ったわ。
新たな発見と同時に此処が完全に地球ではなく、異世界なのだと確信する。
「本当にファンタジーな世界なんだな...実際に体験してみると、いきなり襲われて怖かったけどなんでだろ?今すげーワクワクしてる!」
今まで地球で何事も無く、目的もやりたい事も見つからずただ生きていた時と無意識に比べ、死ぬ可能性があっても、毎日が新鮮で命懸けの日々に心の高鳴りは最高潮にまで達していた。
次は最低一週間を目安に頑張ろうと思ってます。
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戦利品
実際に体験した異世界での出来事に対して、未だ少し興奮を抑えきれないが、改めて自分が今何をすべきなのかを考えてみる。ふと目の前に落ちていた、先刻の戦闘での命の恩人ならぬ恩武器が目に入る。
「先刻は命懸けでそれ所じゃなかったけど、モンスターに襲われたとは言え俺、他の生き物を殺したんだな...」
今まで人は勿論、動物や昆虫すら自らの手に染めなかった為か、冷静になって考えると自分の命が懸かっていた、という事に少し罪悪感に襲われる。かと言ってずっと悩んでいる訳でもなく、向こうが先に明確な殺意を持って襲ってきた、殺らないと殺られてた、と自分に言い聞かせる。
うん、それよりも今は目の前にある槍だな。今はスマホしか持ってないし、先刻は咄嗟に拾って突き刺したけど、以外と軽くて刺さったし暫くは持っておこうかな。
考えながらも落ちている槍を拾い、右手に槍を左手にスマホを携え装備を整える。
「とりあえずはこれで良しっと、他には...あ、そう言えばまだスマホのアプリ、アイテムしか使ってなかったな。」
ある程度の装備と周りの安全を確認し、他にするべき事を考え、まだスマホの使ってない機能を思い出す。
まあ、カメラは大体写真を撮ったりとかだろうし、アイテムは先刻使ってみたし、残るはこのステータスだけか。
ステータスのアプリをタッチして開いてみる。するとそこには自分の名前やゲームでよく見かけるモノが表示されていた。
名前 水野 蒼太
性別 男
種族 人間
Lv 1
年齢 16
【スキル】
・スマホ操作 ・言語翻訳
「あ、パラメータとか見えないタイプか...って異世界転生系ならチートとか俺TUEEEEとか無いのかよ!何だよスマホ操作って...言語翻訳もあのオークが喋ってたかとか覚えてないわ!」
恐ろしいまでに貧弱そうな自分のステータスに思わずツッコミを入れてしまう。異世界に転移したからには、何かしらのチート能力があるのでは?とかすかに期待していたものの、見事に弱そうなステータスに出鼻をくじかれた気持ちになる。
「うぅ、せめてスキルぐらいもう少し強そうなものでも......まぁ、それだけ自力で強くなれると思えば...ハァ...」
明らかにステータスを見る前よりも今も尚、下がり続けるテンションのまま次に何をするかを考える。
「ハァ...さて、他には...そうだ、この槍とかに少し付いてしまった血とか洗いたかったな。」
自分のジャージや戦利品である槍に、倒したオークの血が少し付着しているのを発見し、次の目的を川や湖などの場所を探すことに決める。
次は早めに更新出来そうだと思います。
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助っ人
「よし、次の目的も決まったのはいいが...どっちに行けばいいんだ?」
目的は決まったものの、未だに自分が何処にいるのかが分かっていない事に改めて気がつく。
「とりあえず、川さえ見つかればな〜。そしたら下って行けば何とかなりそうだし、水分補給や汚れも落とせる。マジ何でスマホに《地図》みたいなアプリがねぇーんだよ。」
暫くその場で何かいい案は浮かばないか、と考えたものの結局は時間が流れただけだった。このまま考えていても仕方がないと思い、手に持っていた槍を手放し地面に落とす。
「よし、とりあえずこっちの方向に進むか!」
倒れた槍が指す方へ身支度を整え歩き始める。暫く歩いて行くと、遠くの方から争う音が微かに聞こえる。
うーん、出来れば余り近づきたくないけどな...俺もそんな贅沢言える状況じゃないか。と諦めバレないように近付き音の正体を目撃する。
そこには3人の男女が、先程と同じようなオーク2匹に襲われていた。3人のうち2人は女性で、1人は杖のようなものを持っていて、一目見ただけでもあれだけ近づかれたらマズいと分かってしまう。もう1人は短剣を持っていて、明らかに相手の槍と比べてリーチが短すぎる。最後の男性は剣と盾を装備し戦っているが、盾を使い仲間への攻撃を防いでいる為か攻撃に移れず、防戦一方になってしまってる。
先刻オークに襲われた時の記憶が頭をよぎり、その場に尻餅をつく。恐怖に襲われ目の前が暗くなる。体が思うように動かなく、立つことすら難しい。泣き出してしまいたくなる。
しかし、同時に自分が武器を持ち、もっと大きなモンスターと戦っている。そんなイーメジが頭に思い浮かぶ。それはとてもカッコよくて、楽しそう!
「うらぁぁぁぁ〜」
気づけば槍を構えオークに向って走り出していた。何か作戦がある訳でもなく、ただ敵の頭目掛けて思いっきり力を込めて突き刺す。
オーク達は急に飛び出してきた事に驚き戸惑い、身動きが取れずに槍の突きを受けてしまう。それを見た3人組は隙だらけのオークに攻撃を仕掛け、見事に胴体と首から上を分離する。
槍に突き刺されたオークはそのまま顔面に後頭部からの穴を開け、その場に倒れる。
「危ない所助かったよ、ありがとう。」
「ありがとうね〜」
「ありがとうございます。」
「いえ、当然のことをしたまで...。」
目の前にいる3人の顔、主に頭を見てそこに存在するモノに言葉を失う。
「どうかしましたか?あ、もしかして獣人族を見るのは初めてでしょうか?」
「あぁ、失礼しました。ええ、初めてでしたので少し驚いてしまいました。」
いやいや、女の子はまだしも野郎のネコ耳とか誰得なんだよ。と心の中で愚痴りつつ、初めて見るネコ耳少女達に少しテンションが上がっていた。
この後続けて更新します...。
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情報
「ところで、えーっと。」
初めて見るネコ耳少女達に気をとられているとその少女の内の1人が話し掛けてきた。
確かこういう異世界的なやつだと名前だけ名乗った方がいいんだよな?
「ああ、申し遅れました、俺は蒼太と言います。」
「うん、ソータ君ね。ヨロシク〜。私はシピ。でこっちがミネットね。」
「よ、よろしくお願いします。」
「僕はフィルと申します。本当に先程は助かりました、ありがとうございます。」
作戦やレベルなど何も考えずに飛び出し、倒せから良かったものの逆にやられてピンチになっていた事もあるかも知れない、と改めて思い少し感謝されることに居た堪れない気持ちになる。
「いえいえ、偶然近くにいただけですから。そんな気にしないでください。」
「それでも自分たち3人が助かったのは君のおかげだよ。何かお礼出来ることはないかな?」
お、これは川や街の場所を聞けるチャンスじゃん。
「じゃあ、聞きたいことがあるんだけど、近くの川と街の場所を教えてくれないかな?」
「川と街?川はこっちを真っ直ぐ行くとあるよ、あと街はこっちの方だけど...。」
「川ってソータ君釣りでもするの?」
「いや、この武器とかについた血とか汚れを洗おうかなって...変かな?」
「変と言うか...えっと、武器や防具の手入れなら街の武器屋、防具屋に頼めばいいんじゃないかな...?」
「ソータ君ってあいつら一撃で倒してたから凄い人かと思ってたけど、以外と普通の事知らないのね。」
うっ、そんな店に任せれば良かったのか。知らなかった...。せめて最低限の知識とかスマホにあれば良いのに。
少し恨めしそうにスマホの画面を見る。そこには《ステータス》の右上にNEWの文字が表示されていた。ステータス画面を開くとそこには前に見たと違う内容に更新されていた。
名前 水野 蒼太
性別 男
種族 人間
Lv 2
年齢 16
【スキル】
・スマホ操作・言語翻訳・初級槍術
あれ、何か増えた?何だろう。おお、成長してんじゃん!やっぱゲームとか異世界とかのステータスと言ったら、この成長の感じが良いよな〜。
「あの〜、それは?」
「あぁ、僕にしか使えない魔法の道具みたいなモノかな。」
「ええっ!ソータ君魔法の道具って、もしかしてオーパーツ?本当に持っている人なんて居たんだ〜。」
げっ、やばいな。この世界の人と話してるとやっぱり少しズレがあるな、街の事や場所も聞いたし早めに分かれた方が良さそうだな。
「あ〜、申し訳ないけどそろそろ俺、街へ行くからそれじゃ。」
「あ、なら私たちと一緒に行きましょうよ。」
「そうだね、僕達も実は街に戻る途中だったんだ。良ければどうかな?」
あ、逃げ場はないんですね...。
「あの、そこのオークの、死体は持っていかなくて、いいんですか?」
「持っていく?」
「あはは...倒したモンスターの死体は、一部とかでもギルドが買い取ってくれたりするんだよ。」
「ホント、何も知らないのね〜。」
うっ、何も言えない。そう言えば最初に実験した死体もまだスマホに入れたままだったし、もう1つや2つ増えたところでか。
予定ではもう街に着いている筈だったのに...。やはり文章というものは難しいですね。
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街
「じゃあ俺がこの死体を持って行くから、向こうで換金して分ける感じでいいかな?」
「「え?」」
「持って行くって、これをそのままですか?それに僕達は助けて頂いたので分けるなんてとんでもない。」
あれ、アイテムボックスとかそんな感じの物無いのかな...。それに助けて頂いたって、ただ槍持って突っ込んだだけだしな。
「アイテムボックスみたいなのに入れていくので大丈夫です。それに1体はあなた方が倒したのでその分は受け取ってください。」
「もうソータ君が何言っても驚かないわ...。」
「そんな、助けて頂いただけで...」
「なんと言おうと受け取ってもらいますから。それでは出発しましょうか。」
ここは少し強引でも、受け取ってもらうようにしないとな。
話しながらオークの死体を新たに2体追加し、街へと歩き始める。道中は特に何か起こることなく歩き続け、無事街にたどり着く事が出来た。街につく頃には日も傾き、夕方になっていた。
「おお、これが。」
「はい、ここが新人冒険者たちの街で有名なハジメイユです。」
「新人冒険者たち?」
「そ〜だよ。ここの森にはスライムとか初心者にぴったりな魔物しか出てこないんだ〜。だから先刻オークなんかに遭遇した時は死んだと思ったわ...。」
「オークは普段は出てこないの?」
「初心者があんなの倒せる訳ないわよ。普段から居たら初心者の街とか言われてないわよ。」
なるほど、今日だけでも3体と遭遇なんて異常事態って感じか...。まさかとは思うが俺が原因とかじゃないよな。
「とりあえず換金にギルドに行かない?」
「そうですね、僕達もオークの件、ギルドに報告しときたいんで。」
早速、街中を軽く案内してもらいつつ目的地の冒険者ギルドを目指す。道中飲食店らしき建物から美味しそうな匂いが漂い、凄くお腹が減ってしまった。
「着きました。」
「ここが冒険者ギルドか。」
テンプレだと中に入ると強面の冒険者たちが睨んできたりするんだよな...。
恐る恐る中に入ると想像と違い、席に座って雑談や食事をしている冒険者や、壁に張り出されている紙に向かって立つ冒険者たち、机や椅子など備品も想像より何倍も綺麗で軽く驚いてしまう。
「それでは僕達は受付に報告に行くので、引き取りはあちらの方のカウンターです。」
「はい、分かりました。それではまた後で。」
3人と分かれて1人引き取りカウンターへと向う。そこには如何にもな雰囲気のあるガタイのいいおっちゃんが居た。
「あの〜、引き取りをお願いしたいんですが。」
「うん?ああ、じゃあちょっと付いてきてくれ。」
案内された場所は後ろにある扉の先にあるそこそこの小部屋だった。
「アイテムボックスに入れて持ってくる冒険者たちは、一部だけとかじゃなくそのまま持ってくるからな。ほれ、そこに出してみてくれ。」
「あ、はい。分かりました。」
言われた通りの場所にオークの死体2体を出す。
とりあえず異常事態みたいだし、3人も報告してるだろうから2体だけの方がいいよな?
「よし、あ。すまん忘れてた。ギルドカードも出してくれ。」
え?ギルドカード?ナニソレ、ボク、モッテナイデス。
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ギルドカード
スムーズに進んでいると思いきや、ここに来てそれが出でくるか〜。確かにゲームとか小説とかでもでてくるけどさぁ。
「あの、自分ギルドカード持ってないです。」
「なに?お前さん、冒険者じゃなかったのか?」
「はい、冒険者になりたいとは思ってますが。」
まぁ、せっかくファンタジーな世界に来たからには、冒険とか武器とか魔法とかやってみたいよね。実際になれるなら冒険者にもなりたいし。
「そうか。ならちょっと待ってろ。」
そう言い残し、ガタイのいいおっちゃんがどこかへ行ってしまう。暫くし戻ってきた時、手に紙とペンみたいなものを持っていた。
「ほれ、この紙に必要な所だけ記入しろ。そしたら、こっちのカードにその内容が記入されるから。そしたらお前さんのギルドカードの完成だ。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
思いがけない出来事に少しテンションが上がる。
「紛失とかして無くすと再発行に金がいるから、無くさないよう気をつけろよ。」
「はい、分かりました。」
その辺は、スマホに入れとけば問題はないだろう。それにしても今日から冒険者か〜。何か嬉しいな。
「書き終わりました。」
「よし、じゃあコレをこうして....っと。ほれ、これがギルドカードだ。先刻も言ったが無くすなよ?」
ギルドのおっちゃんからカードを渡され、それを嬉しそうに受け取る。
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ本題のコイツの買取だな。」
あ、ギルドカードの嬉しさのせいですっかり忘れてた。そうだ買取にそもそも来たんだった。
「そうですね、お願いします。」
「オーク2体だが、頭に傷があるがコイツの買取は別の箇所がメインだからな、全部で銀貨4枚と銅貨10枚だな。」
うーん。こっちの世界のお金事情にそんな詳しくないから、銀貨とか銅貨とか言われても分からないな。
「なんだ、お前さん驚かないんだな。普通、新人冒険者とかなら驚くんだがな。まぁ、五月蝿くなくて助かるぜ。ハッハッハ。」
「いえ、少し金銭事情に疎いものでして...。」
この人なら、自分実は異世界人です。とか言っても笑い飛ばしてくれそうだけど、この世界で異世界人なんてどう扱われるか、分からない間は出来るだけ隠しておきたいな。
「なんだ、見た目ほかの冒険者より頭良さそうなのに数字に弱いのか?俺も得意じゃないが軽く教えてやろうか?」
これは願ってもないチャンスじゃん。この機会に出来る限りのことを学んどこう。
「是非に。お願いします。」
「今時の若い者にしては素直だな。よし、任せな!」
終わりがなかなかいい感じに思いつかず変な感じになってしまった...。
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貨幣
「じゃあ、説明するぞ。まず最初にこれだ。」
そう言っておっちゃんが取り出したのは2種類の小銭だった。
「まずこっちのが青銅貨だ。これは銅貨で、青銅貨が10枚分の価値がある。ついでだが、新人冒険者たちがよく受ける薬草採取みたいな依頼は大体、青銅貨7枚~銅貨1枚ぐらいのもんだな。」
実際に物を見ながら説明をしてくれるので、とても分かりやすいな。特に初心者が1日どのくらい稼げるのかも分かるので、どれだけの価値なのかも何となく想像出来る。このおっさんやるな。
「そしてこれが銀貨だ。先刻の銅貨100枚でこれ1つ分だな。今手持ちに無いんだが、金貨ってのもあって銀貨10枚分だ。まぁざっとこんなもんだな。」
なるほど、青銅貨、銅貨、銀貨、金貨の順で、銅貨と銀貨の間だけ100枚必要なんだな。と言うことは、大体が青銅貨や銅貨で少しお金持ちになってくると銀貨や金貨って感じかな?っておい!
「あの、話を聞くとオーク2体で銀貨4枚と銅貨10枚って貰いすぎじゃないですか?」
「そうか?まぁオークにしては少し高いかもしれんが、場所が場所だからな〜。」
うーん。場所って言われてもさっぱり分からん。
「ほら、ここは冒険者を志す新人たちで有名な街だろ?それに周りの森にはスライム等の魔物しかいねぇ。そんな中にオークが居てみろ。分かるだろ?」
あ。そう言う事か。つまりオークなんて強い敵が居たら危ないから、居たら必ず討伐か報告が来るように、ほかの場所よりも買取が高いのか。買取...あっ。
「はい、分かりました。あと他にも色々と教えて頂きありがとうございます。本当は他にも教えて頂きたいのですが、この後約束がありましてお暇させていただきます。」
「おう、いつでも聞きたいことがあれば来いよ。俺が知ってることなら教えてやるよ。ガッハッハッ。」
ただ報酬を受け取るだけのつもりが、時間がかかってしまったな。その分収穫は沢山あったけど、相手を待たすのも悪いから手短に済まさないとな。
再びドアに入り、ギルドの待ち合わせたロビーへ向かう。ギルド内部の待ち合わせたロビーで見覚えのあるネコ耳を発見。
「ごめん、遅れた?」
近づくとこちらに気づき、3人ともそれぞれの言葉をかけてくれる。
「あ、ソータ君。おっそ〜い。」
「モノがモノですから仕方ないですよ。」
「お、お気になさらず...。」
換金以外で時間をかけてしまったので少し悪いなと思い、肩身が狭い。
「うっ、申し訳ない。」
「仕方ないな〜。今回は大目に見てあげよう、感謝するのよ?」
「シピ、偉そう...。」
「あはは、立ち話もアレですから、座って話しませんか?」
近くにあるテーブル席を指しながらフィルが提案する。
「ええ、ではそうしましょう。」
もう少ししたら本格的に冒険する予定です。早く冒険のシーンを書きたい...。
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一日の終わり
3人と近くのテーブルに座る。テーブルの上には簡単なお品書きとベルが置いてあった。
「あれ、ここって料理とか食べないと座ってはいけないんですかね?」
テーブルの上のモノを見ながら3人に話しかける。
「いえ、食事をとる時にはこのベルを使って注文をするんです。食事をしなくてもパーティ内でクエストの話し合いなど、誰でも自由に使っても大丈夫ですよ。」
「なるほど。勉強になります。」
一瞬不安になったけど、それなら問題ないか。
「それでは改めて、今回の換金の内容ですが全部で、銀貨4枚と銅貨10枚でした。」
「「.........」」
「さ、流石オーク2体ですね...。そんなにするとは...。」
おお、これがこの世界の金銭感覚の正しい反応か。俺もおっちゃんに教えて貰った時は少し驚いたが。まぁケモ耳娘たちの驚いた顔が見れて良かった。
「って事でこれが3人の分の銀貨3枚で、問題は銅貨なんだけど、どう分けようか?」
「いやいや、銀貨1枚でも十分だよ!?」
コクコク
「ええ、もう充分すぎます。残りはソータさんが受け取ってください。」
1人喋ってないけどすごい勢いで首を振るな...。バンギャの人でもそんな首振らんだろ。
それは置いといて。最初と比べ銀貨も受け取ってくれたし、あまりしつこいのもアレだし、この世界のお金も持ってなかったからここはお言葉に甘えて貰っとくか.。
「では、お言葉に甘えて3人に銀貨3枚で自分は銀貨1枚と銅貨10枚でいいですね?」
「はい、異論はありません。」
「うん。それでオッケ〜。」
「だ、大丈夫...です。」
最初はどうなるかと思ったけど、なんとかいい感じに話がまとまったかな?
3人に銀貨を手渡す。
「それじゃこの話はここまでで。俺お腹すいたからなんか注文しようと思うけど皆はどうする?」
「そうね。私もお腹すいてきたわ、食べていこう?」
「私は、別に...いいよ。」
「では僕達もご一緒させていただきます。」
やっぱ皆お腹すいてたのかな?時間もいい感じだし...。あれ、今日1日他に何食べたか考えると何も食べてなかった気が...。よし考えるのを止めよう。
適当に注文を済ませ料理が運ばれてくるのを暫し待つ。待っている間に皆と主に街の事で話をし、今夜の止まる宿や明日の予定を考えていると料理が運ばれてきた。
「おお、美味そう...。」
運ばれてきた料理は元の世界で表現するなら洋食に近かった。主食にはパンのようなものがあり、付け合せに食欲をそそる匂いのスープ。新鮮な野菜はシャキシャキと歯ごたえがよく、ドレッシングのようなタレとよく合う。
空腹と初めて見る料理のせいか、思わず無心で食らいつく。普通に美味しくまた食べに来ようと考え食後の水を一気に飲み干す。
「あんた良くあれだけの量を一瞬で食べたわね...。」
「え?そう?まぁお腹がすいてたからね。」
「本当、何者なのあんた...。」
あはは...。
けど念願の異世界、今日1日大変だったけど楽しかったな〜。これからはこの世界が日常になるんだよな。まだまだ何もかも足りないけど明日も頑張ろう。
そう思い日も完全に落ち夜になってきた頃、3人と別れ宿へと向かい夜の街に消えていった。
次回からはやっと冒険になる...予定です。次の部分からは今回の経験を生かしなるべく無駄に長くならないよう、スピーディーに書けていけたらなと思ってます。
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初めての依頼
鳥たちの合唱団による素敵な演奏が部屋の中にまでかすかに聞こえ目を覚ます。
「ん...朝か。」
着替えを済ませ朝食を取るために宿の中にある食堂へと向う。
「おはようございます。朝食大丈夫ですか?」
「おや、お早いね。もちろん大丈夫だよ。」
席につくと宿の女将さんが朝食を運んできてくれる。やはりあまり見慣れないものばかりだが食べると美味しい。
「美味しかったです。ご馳走様でした。」
朝食を済ませ部屋に戻り簡単に身支度をし宿を後にする。向かう先は昨日も行ったギルドだ。ギルドに入りクエストが張り出されている壁を見に行く。朝早い時間のせいかまだそんなにほかの冒険者はいなかった。
人がいないから見やすくてラッキー。やっぱ冒険者になったからには、なんかクエスト受けないとな。
軽く見ているとひとつの依頼が目につく。
ん、スライム討伐か。いいね、まさに異世界。スライムなら流石にオークより弱いみたいだしなんとかなるか?
暫くほかの依頼も見ながら考える。結局一通り見たが半分以上が採取系の依頼ばかりで討伐系自体が少なかった。結果スライム討伐の依頼を受けることにし、受付を済ませスライムの出現場所を確認しギルドを後にする。
スライムの生息地へ無事に着き、早速今回のターゲットを探し始める。近くの草むらから何かが動く音が聞こえた。
「お、スライムの登場か?」
素早くスマホから収納してある槍を取り出し臨戦態勢になる。それと同時に草むらから数匹のスライムが現れる。
「結構いるな。でも槍も持ってるしいけるだろ。うおおおおぉ。」
一心不乱に槍を振り回し、現れたスライムを次々に倒していく。暫くするとスライムが出てこなくなり、周りにはスライムの死骸で溢れていた。
うっ、ちょいやり過ぎた...。とりあえず回収しとくか。
スマホをかざしスライムたちを回収する。スマホによると合計24匹ものスライムを倒していたようだ。
結構倒したな。でも昨日オーク2体倒しただけでレベルが1上がったのに、今日はスマホ見た感じ変化がねぇな。やっぱスライムだしそんなにレベル上げとかには使えねぇか。
心の片隅に微かな期待をしていたが倒したのがスライムだと自分自身に言い聞かせる。時間も確認したところお昼少し前だったので、帰りの時間も考え今日はこの辺で街へと戻る。
ギルド内にある受付に依頼達成の報告に向かったところ「依頼の申し込みはこちらですが、達成報告でしたらあちらの引き取りカウンターにて取り扱ってございます。」とのこと。周りの視線などですごく恥ずかしく顔を熟れたトマトのように赤くしてしまう。
「あのおっさん、せめてそれぐらいカード渡す時に教えてくれても良かったろ。」
後で文句を言ってやろうと強く心に思い依頼達成の報告に向かった。
やっと冒険のシーンが書けました...。
次回は武器やら防具やらの話が書ければなと思ってます。
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ショッピング
「依頼達成の報告に来ました。」
「はい、それではギルドカードの提示をお願いします。」
言われた通り自分のカードを渡す。ふと依頼を受けた時もカードを渡したなと考える。カードを受け取った職員は何か機械のようなものにカードかざした。
「スライム5匹の討伐ですね?それでは討伐の証として倒した魔物を出してください。勿論一部のみでも構いません。」
前回のオークと比べモンスターのサイズが小さいからか、今回は机の上にトレイのようなモノが置かれそこに出すように指示される。
一瞬討伐数を見てなくそれ以上倒したことに気づき確認したところ、討伐数の倍数ならその数同じ依頼を達成したと数えられると言われ安堵する。が中には指定数より多く倒しても1回しか受け付けない依頼もあると注意をされる。
「それでは今回は複数可の依頼でしたので、スライム20匹の討伐で報酬を4倍にし、合計銅貨52枚です。」
ぶっ!昨日の晩御飯と朝食付きの宿で0枚になった銅貨が一瞬で増えた...。なるほどこりゃ銀貨なんかとんでもねぇ価値がある訳か、ますますオーク倒すことの難しさが理解出来てきたぜ。本当に運が良かったんだな...。
銅貨を受け取りギルド内の食事を注文しながら午後の予定を考える。
「そう言えばまだこの街にある武具屋に行ってないな。服もよく見るとボロボロだし新しいの買っとくか。」
午後の予定が決まる頃テーブルに注文した料理が運ばれてきた。昨日とはまた違う食べ物を注文し、昨夜の洋風な料理ではなく今目の前に運ばれてきたのはラーメンやチャーハン、餃子のような中華風な料理だった。
昼食を済ませまず向かったのは防具屋、と言うより服屋のような店だった。特に元の世界でも服などファッションに興味がなかったので店に入るなり適当に選び服を購入。上下2着買い合計銅貨12枚を支払い武器屋に向う。
「こりゃオークの槍じゃねぇか!武器屋で修理など取り扱ってるのは職人が作ったもんだけだ。」
武器屋にて今まで使ってきた槍の手入れを頼むと無理とのご返答が。そもそもこの世界では魔物が使っている武器などは、ドロップアイテム扱いで売ってお金にして新しい装備を買うか、自分で使えなくなるまで使うかの2択らしい。
自分で使う場合はいつ戦闘中に武具が破損するか分からないので、保険のためにサブの武具なども持っておくのが常識だそうだ。
「ちなみにこの店で安めの槍など置いてますか?」
ダメ元で聞いてみると意外な答えが。
「ん?槍なら確かあったはずだぞ。たがな、お前金はあるのか?」
見た目がボロボロなせいか財布事情を探られる。
「だいたい銅貨40枚ぐらいなら...」
「そうか、そのぐらいなら初心者向けの槍なら買えそうだな。」
店の店長らしきおっちゃんは所持金を聞き奥の扉から数本の槍を持って来た。
「こっち側のが1本銅貨35枚だ。こっちは40枚だ。好きなの選びな。」
目の前に20本近い槍が置かれそのどれもが現在使っている槍よりもしっかりと作られていた。その中でも1本だけ一目見た時から目が釘付けの槍があった。
「あの持ってみてもいいですか?」
「そりゃ実際に持ってみないと分からねぇこともあるからな。軽く振るぐらいならいいぞ。」
気になっていた1本の槍を手に取り軽く振るってみる。まるでゲームのモーションのように自然に槍を振るえたような感覚がする。
「これいいですね。決めました、これを買います。」
「まいど。その槍なら修理が必要になったら引き受けるから覚えとけよ。」
「はい、ありがとうございます。それでは。」
新しく武器を手に入れ店を出ると既に日が傾き夕方になっていた。他に行く場所など特に決めてなかったので今日は大人しく宿に帰ることにした。
宿に向かう帰り道
「おら、大人しくしろ。」
人気の少ない道の隅で男2人組に路地裏へ連れ去られる子供を目撃。
「どう見てもヤバいやつだよな...。」
どうやら宿に帰るのはもう少し遅くなりそうだ。
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現実は異世界でも甘くない
傾いていた太陽ももう僅かしか姿を見せず辺りは薄暗く視界を阻んでいる。先程見つけた二人組のあとをバレないように追いかける。暫くすると街と森の間に小さく汚い小屋のようなものが建っていた。
「つい追いかけてきたもののどうしよう?」
二人組が小屋の中に子供を連れて入る。やはり子供は無理やり連れてこられたようで抵抗しているものの男達に無理やり中に放りこまれる。
さすがに街まで戻ってギルドや衛兵に伝える時間は無さそうだな。現状槍持って突入しかねぇか。
覚悟を決め購入したての槍をスマホから取り出す。取り出す時に初心者の槍と書かれており急に不安になってきたのはここだけの話。
勢いよく扉を蹴り開ける。
「意外と簡単に開くもんなんだな。」
「てめぇナニモンだ!」
「ふざけたマネしやがって。シメてやる。」
部屋の中にはロープで手足を結ばれ身動きがとれない状態の子供と二人組の3人だけだった。
よかった。2人だけなら何とかなりそうだ。前の世界で格闘ヲタの友人から、街中で犯人と遭遇した時の対処法を聞いててよかったぜ。
槍を構えたまま片手を背中に隠す。聞いた話によるとコレにより相手は背中に何をもっているのか?と下手に動けなくなり場の支配ができるとのこと。
「野郎、背中に何か持ってやがるぞ。気をつけろ!」
「おうよ。」
相手もナイフとサーベルの如何にも盗賊みたいな武器を構え様子を伺う。
互いに武器を構え膠着状態が続く。次の瞬間背後から素早く手を相手に向け、予め起動させていたスマホのカメラのシャッターを切る。
「ぐわっ!」
「な、何だ!?」
カメラのシャッター音とフラッシュにやられ2人組に隙ができる。そこに力一杯フルスイングした槍を2人のガラ空きの腹部に叩きつける。
「「グハッ!」」
2人組を近くにあったロープで縛り、捕えられていた子供を解放する。
「どこか痛いところや怪我してないかい?」
「...大丈夫です。」
何やら少し警戒されているようだ。攫われてきて目の前であんな戦闘があれば当然の結果かもしれないが少し傷つく。
街に戻り捕まえた二人組を衛兵さんに引渡し報告を済ませる。捕えられていた子はどうやらスラムに住んでいるらしく、既に両親は亡くなっているとのこと。悲しい事にこの世界では良くあることなのだそうだ。街側としてもスラムの現状を何とかしようとなっているらしいが手の付けようがないので現在のままとなっているらしい。
その結果この街に限らず世界ではスラムで人攫いが活発になり幼い頃より奴隷として売られることも少なくないそうだ。
「この子はどうなるんですかね?」
「うーん。街側としても何も出来ないのが現実でね。そのままスラムに戻るしかないな。」
衛兵さんから悲しい現実を聞かされる。正直そんな事考えた事も無かったが人の命がお金で買える。それがこの世界では通用することにやるせなさを感じる。
その時にぐぅーと何とも可愛らしい音が夕食を食べてないことを告げる。聞かれたのが恥ずかしいのか音の正体である子は顔を真っ赤にしている。
「そう言えば俺も腹減ったな〜。奢るからご飯食べに行こうか?」
「......うん。」
恥ずかしくても空腹には勝てなかったようだ。顔を赤くしたままのその子を連れて近くの飲食店に入る。
さて、とりあえずご飯に誘ったはいいけどこのあとまた攫われるかもしれない場所に返すのもなぁ。本当にどうしたものか?
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パーティーメンバー
最初は遠慮して食べようともしなかったが注文を適当にして食べさせるとすごい勢いで食べ始める。
「誰も取りはしないから落ち着いてたべなよ...。」
途中何度か食べ物が喉に詰まりそうになるがそのたびにスープ類で流し込む。もはや食事と言うより作業に近いと思えてしまうほどの勢いだ。
スラムと聞いてまさかとは思ったけど、この様子じゃご飯もまともに食べてなかったな。
自分自身前の世界ではそこまで他人に興味を示さなかったが、何故ここまでこの子にあれこれしているのかふと疑問に思う。
自分も昔はこの子のように世界に何も期待をせず、死んだような目をしていただろう。だが自分はこの世界に転移して今では毎日が希望や楽しいことで溢れている。
それに異世界に来てから右も左も分からない自分に親切にしてくれた人達のお陰で今日こうして生きている。今まで蔑ろにしてきたものに助けられ異世界でも何とかやっていけてる。と自分でも自覚している。
だからこそなのだろうか?この子がこのまま元の生活に戻るのを嫌だと思うのは。これはただ目の前の子に昔の自分を重ねてるだけかもしれない。ただのお節介かもしれない。それでも自分がこの世界に来れて毎日に希望を持てるようになったみたいに、この子にもなってほしいと強く思う。
「普段はどんな生活をしてるのかな?」
最初は警戒をされていたがご飯を食べさせたからか、ある程度の会話はしてもらえるようになり気になっていたことを質問する。
「別に...全部が自給自足。」
端的に何事でもないように話しているが、その言葉の意味は現実の過酷さを訴えていた。
この子や他のスラムに住む子供たちに何かしてあげたい。しかし自分の事だけで精一杯な俺に何が出来るのか。悩み続けていたところふと視線に気づく。
「ん?どうかした?」
目の前の子は何かを決意したように話してくれる。
「ねぇ、お兄さんって冒険者の人だよね?私に冒険のこと教えてくれない?私冒険者になりたい!」
唐突にお願いをされ少し戸惑う。しかしこのお願いによりふと1つの方法を閃く。
あれ、もしかしてコレならこの子を救えるかもしれないし俺も少し楽になるか。いやもうコレ以外いい案なんかないだろ。
「それなら君もギルドに登録して冒険者になろう。ちょうどパーティーメンバー探してたんだ。」
「え?いいの!?」
「ああ、今日も1人でクエストを受けてたけど、もう1人いると楽だなって思ってたんだ。」
その日は日も落ち既に夜になっていたので翌朝ギルドに登録に向かうことを決め宿に帰ることにする。勿論スラムにこのまま帰らす訳にもいかず、宿代を代わりに払うと伝え2人で宿に帰るのであった。
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ショッピング2
翌朝目が覚める。ふと時間の確認にスマホを見る。表示されていたのは現在の時刻と新しい機能が追加されましたの文字だった。
「新しい機能?」
何故そんなものが今更になって追加されたのか?全く訳が分からなかったがとりあえず画面を開く。そこには新しく《地図》のアプリが追加されていた。
「コレってあとから追加より最初から付けとけよ...。」
異世界転生初日に山の中でどっちの方角に進むか悩んだ記憶が脳裏を過ぎる。
朝から少し鬱な気持ちになりつつも約束の時間に間に合わせるよう身支度を整える。
朝食も済ませ約束の場所に着くと既にその子は待っていた。
「おはよう、早いね。」
「おはようございます。それは今日から冒険者になりますから。」
余程冒険者になることが嬉しいのだろう。でも分からないことが1つだけあった。
「そんなに冒険者になりたかったなら、何で今まで登録して冒険者にならなかったの?」
「それは勿論教えてくれる人が誰もいなかったからですよ。」
答えを聞いてもサッパリ分からない。
「私の両親もでしたがプロの冒険者でもクエスト中に命を落とすこともあるんです。普通はどこかに通って講習などを受けてから冒険者になるんです。」
なるほど。それを聞いて納得した。今までそんなに考えた事も無かった。それも当然か、スラムに居る子供とたちはその殆どが両親の死によるもの。つまりそう言う事だったんだ。今まで分からなかったことがやっと分かったぞ。
少女と会話をしながら歩いていると目的地であるギルドに着く。中に入り受付にこの子の登録をしたいことを伝え手続きをしてもらう。
パーティーメンバーの登録も済ませ初めての依頼を探す。
「最初の依頼だから無理せずに採取系にしとこうか?」
「はい、お願いします。」
手頃な薬草採取クエストを受ける事にする。そこでパートナーの装備を見る。
「出発する前に装備を整えないとな。」
以前の買い物の時には訪れなかった防具屋に入る。
「いらっしゃいませ。」
「この子の防具を見たいんですが...。」
「ではこちらの方になります。」
案内された先には小さめの鎧など沢山の防具が並んでいた。ちなみに昨日の盗賊たちを衛兵に突き出した時に懸賞金が掛かっていたらしく所持金はどの防具を買うことになっても問題はない。
「どれが良いんでしょうか?」
「俺もよく分からないけど、重すぎるとおそわれて逃げる時に邪魔になるからなるべく軽くて丈夫な物が良いかな。」
「なるほど。分かりました。」
アドバイスを聞き革などの防具を見はじめる。
「あ、後君には短剣と弓をメインに使ってもらおうと思ってるから篭手や小さめの盾も買っといた方が良いかも。」
「え?槍じゃ無いんですか?」
昨日の戦いを見ていて槍の戦闘方法を教えてもらえると思っていたのか驚き質問をする。
「うん。同じパーティーに同じ武器はバランスが悪いからね。」
「そうなんですね。」
ちなみにこの世界ではパーティーを組む時は仲のいい人同士や知り合い、友人と組むことが多く大体のパーティーが似たような武器になる事が当たり前だったりする。
話しながら防具を見繕い購入を済ませ次は以前にも寄った武器屋に行く。
「すみません、弓と短剣を見せてください。」
「なんだこの前の小僧か。両方とも前と同じぐらいの値段か?」
「弓はそれで短剣はもう少し高くても大丈夫です。」
店のオヤジさんに弓と短剣を出してもらう。何故か今回も前回と同じく1つの弓と短剣が気になる。
「ちょっとコレとコレ持ってみて。」
気になった弓と短剣を持たせてみる。
「また良いの選んだな。お前武器を見る目あるんじゃねぇか?」
店のオヤジさんの言葉に1つ思い当たることがあった。
「ま、まさか。たまたまですよ。たまたま。」
そう言えば見てなかったけど後で確認しとかないとな。
武器も購入を済ませ準備を整えたところで記念すべき初のパーティーでの依頼達成に向けて出発するのだった。
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パーティーネーム
薬草探しを始めて暫く探したがなかなか見つからず一旦休憩をとる。
「いや、見つかりにく過ぎだろ。なんだよ。」
「他の冒険者の方が早かったみたいですね。」
どこに行っても先に摘まれた跡が残っていて目当ての薬草は見つからなかった。
今何処に生えてるか分かればな〜。
そこでふと思いつく。
アレ、そう言えば今朝スマホに地図追加されてたな。もしかして。
スマホを開き画面を見ると少し離れた場所にマーカーが付いていた。
ビンゴじゃん!これは便利なのが使えるようになったぜ。
スマホの情報を伝え目的の場所へ移動する。
「まさか、本当にあるなんて思いませんでした。」
「まあね。」
結果移動した先で大量に生えた薬草を発見した。どうやら他の人には知られていない場所らしく人の踏み入った形跡も無い場所だった。
そこで少し多めに採取をして街へと戻る。
「お疲れ様でした。こちらが報酬になります。」
ギルドでの報告も済ませ依頼を達成する。そこでふと見知った3人組と出会う。
「お、ソータ君久しぶりだね〜。」
3人の中でもいち早く気づいたシピがこちらへ声を掛けてくる。
「やあ、皆久しぶり。」
挨拶に応え軽く返事をする。皆もどうやら依頼から報告に戻ってきたところみたいだった。
「おや、そっちの子は?」
シピに聞かれ紹介する。
「この子は今俺とパーティー組んでる...ええっと、名前なんだっけ?」
ここで今まで名前を知らなかったことに気づき3人組(主にシピ)からツッコまれる。
「私はルマと言います。」
ここで実は女の子だったりなど今まで知らなかった気づかなかった事を改めて聞き終始驚きっぱなしの蒼太だった。
一通り話したところで質問をされる。
「それで、パーティーネームとか決めたの?」
聞かれた瞬間心の中であ、そんなのあるんだ。ゲームみたいだな〜。と考える蒼太だった。
「考えてなかったな〜。」
「ソータ君の事だからそうだと思った。一応あった方が便利よ〜。」
パーティーネームがあると有名になればギルドなどから指名で依頼が来たりと色々と説明を受ける2人。
「なるほど。ちなみに皆のはなんて名前なの?」
説明を聞き終え重要性を理解し、参考までにとパーティーネームを聞いてみる。
「私たちのは、牙獣ってのが一応あるわ。」
「な、なるほど。」
内心これはひょっとして?と嫌な汗が背中を流れる。
「他に有名なのとかあれば教えて欲しいな〜」
僅かな希望に掛け他のパーティーネームも聞いてみる。
「うーん。他には有名だと、聖刻騎士団とか鴉のツバサとかかな〜。」
ち、中二病じゃねーかよ!
僅かな希望は崩れ去ったのだった。
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緊急依頼
パーティーネームの件は一旦保留にしその日は3人と一緒に夕食を取り宿へと帰ってきた。
昨日今日と行動を共にしてるのに別々に部屋を取るので宿の女将さんに部屋を一緒にしましょうかと変に気を使われる。
前ならまだしも女の子と分かった以上尚更一緒にするわけには行かない。少し別でと頼む時にルマが悲しそうな顔をするのは気のせいだろう。
今日も中々に大変だった1日を無事に終え深い眠りへと誘われる。
翌朝。目が覚め着替えを済ませる。昨日の夜にステータスの確認をしようと思い寝てしまったことを思い出し一応ステータスの確認をしておく。
名前 水野 蒼太
性別 男
種族 人間
Lv 3
年齢 16
【スキル】
・スマホ操作・言語翻訳・初級槍術・武器鑑定
ほう、またレベルが1つ上がってますな。それに何だこの武器鑑定ってのは。まあ、なんか色々とレベルアップもしてるみたいで良かった...かな?
その日もいつも通りギルドに依頼を受けようと中に入ったところ。
「お、待っせたぜ。」
最初に蒼太がギルドカードの登録など色々と面倒を見てもらったオッサンが待ち構えていた。
「どしたんですか?急に。」
「実はお前さんがたに指名依頼ってヤツだ。とりあえずここじゃアレだ。ついてきてくれ。」
そう言って連れてこられたのはギルド長室と書かれた部屋だった。
「とりあえずどっか適当に座ってくれ。」
椅子に座りオッサンの話を聞く。驚いた事にこのオッサンこそこのギルドのトップであるギルド長だった。
話の内容は普段は山の奥に封印され、現れるはずがない凶悪な魔物が目撃されたとの情報を聞き緊急依頼で討伐をしてほしいどのこと。
「で?その凶悪な魔物とは?」
「ああ。八岐大蛇って言ってな、昔に勇者によって封印されたと言われてたんだがな。」
「そ、そんな化物倒せるはずがありませんよ。」
ルマがギルド長に言う。
「事情は分かりましたが、何故私たちに依頼を?いえ、ズバリ聞きますがどうして私たちが討伐できると?」
蒼太の質問にギルド長は苦笑しながら答える。
「ふっ、気づいたか。そうさなぁ。理由は色々とあるが一番は昔の勇者はオーパーツを使って戦いヤツを封印したそうだ。お前さんのそれ、オーパーツだろ?」
ギルド長はそう言いながら蒼太のスマホを指す。
「なるほど。」
もしかしてこの八岐大蛇を倒すため何者かによって召喚された?...ってそんな訳ないか。
内心で蒼太は自分がこの世界に来れたのはその八岐大蛇の討伐の為だったのではと考えたがそれなら召喚されてから数日も経つのに何の連絡もない筈はないと考えをやめた。
「分かりました。その依頼お受け致しましょう。」
蒼太は八岐大蛇討伐の依頼を受注するのであった。
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いざ決戦へ
ギルド長から依頼を受けたもののどうやって八岐大蛇などの大物を討伐するか考える。
「やっぱ可能性があるとすればこのスマホだよな〜。」
手に持っていたスマホを眺めながら独り言を呟いていた。
ちなみに現在は宿の借りてる部屋に戻ってきて作戦を考えているところだ。
勿論今回の討伐には危ないので自分一人で向かう予定だ。
何かいい案は出てこないかとスマホを触る。画面にはいつものアプリが表示されているのみで他に変化は見られなかった。
「全くもって何も思いつかね〜。」
何となくアプリの《アイテム》を開く。そこでふと1つの方法を閃く。
そう言や試したことないけど生きてる生物ってスマホに入るのか?もし出来るなら…。昔の勇者も戦い封印したと言われてるって事は倒せないと思ったか倒す方法は見つからなかったが封印なら見つけることが出来た?そしてその勇者もオーパーツ持ちだった...。これは。
いける。そう確信めいたものを感る。そして準備を整え支度を済ませる。残すは...。
「流石に行く前に話しとかないとな。」
ギルド長から話を聞いた後今回は危険だから1人で行くとルマに伝えたところ恐怖で青ざめてた顔から急に怒りの顔に変わり先に怒って帰ってからまだ会話をしてない。
古来より強敵を倒すことよりも困難な篭城戦を強いられ為す術もない蒼太であった。
「おーい。ルマさんやい、話を聞いてはくれませんか?」
返事がない。ただのひきこもりのようだ。
「ならせめて話だけでも聞いてくれよ。何とかいい案が浮かんだからちょっと行ってくるわ。」
そう言い残し八岐大蛇討伐に向かおうとすると背後から呼び止められる。
「絶対...約束だからね?」
「おう。」
討伐に向かっていると街の出口近くで3人組に出会う。
「やっほ〜。最後に喝を入れに来てあげたわよ。」
「...大役、頑張って...ください。」
「話を聞いて皆で会いに行こうってなったんです。迷惑だったかも知れませんがすみません、またいつか一緒に冒険しましょう。」
それぞれ挨拶に来てくれた見たいだ。
「ええ。皆ありがとう。じゃあ行ってきます。」
森の中へと踏み出して行ったのだった。
時は少し遡り数日前
森の奥深く。光さえも遮られ暗闇の中に蠢く大きな存在がいた。
グルラァァァ!
ただ動くそれだけで辺り一帯には災害が起きたかと思わせる傷跡を残す。
怪物は目の前の小さい存在を見る。
「これが伝説の化物...。これでこの世界は俺のもんだ。ヒヒヒッ。」
小さき者は何かを取り出し大きな生物へと向ける。
しかしなんの変化も見られない。
「アレ?お、おかしいぞ。僕の計算に間違いなど...。」
小さき者はそれ以上喋ることは出来なかった。ただ歩いた。それだけで踏み潰され命を落としたのだった。
唐突な思いつきでこの作品を書き始めたのですが、いや〜難しいですね。
改めて物語の道筋を考えることの大切さを思い知らされました。
と言うわけで急な展開だらけでしたと思いますが次回でラストの予定です。
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終わりと始まり
薄暗い森の中、想像を絶するほどの大きな生物と対面する。
「ま、マジか。思ってたよりでけーな。」
相手の姿を見て少しビビる。
対する相手はこちらの様子など見向きもせずただ目的の方へと歩いていた。八岐大蛇にまるで相手にされていない事にチャンスだと思い一気にケリをつけようと仕掛ける。
「無視していられるのも今の内だせ。」
ポケットからスマホを取り出し大きな生物、八岐大蛇へと向ける。
八岐大蛇はそれに気づきその巨体からは想像もできない早さで襲いかかってきた。
踏み潰すそうと上から大きな足が振り下ろされる。
それを見た蒼太は事前に用意していたモノをスマホから取り出す。
それを見て匂いを感じ取ったのか八岐大蛇は踏みつけるのを止める。
蒼太が取り出したモノに飛びつく八岐大蛇。そう、蒼太が取り出したモノとはお酒だった。八岐大蛇は酒に夢中で蒼太の事などもう気にもとめてない。
蒼太はスマホを改めて八岐大蛇に向けてかざす。段々と八岐大蛇の体が消えていきスマホに吸い寄せられるようにして消えていく。
「あ、焦った〜。マジで一瞬死ぬって思ったわ...。危ね〜。」
何とか収納に成功し一息つく。すると突然八岐大蛇の収納したスマホが光を放ち飲み込まれる。視界を光に覆い尽くされ眩しく目を閉じる。
光が落ち着き閉じていた目を開けると暫く見てなかった見覚えのある部屋にいた。
「へ?」
見覚えのあるゲームや漫画・ラノベの数々。他も見渡すと机やパソコンも目に入る。見る物全てに見覚えがあった。と言うよりも見間違える筈はない。紛うことなく自分の部屋だった。
スマホを開いてみても今まで使っていたアプリが表示され、アイテムやステータス等のアプリは消え去っていた。
「夢...だったのか...。」
異世界での体験を思い出しながら少し残念そうな表情を浮べる。ふと自分の服を見てみるが異世界で購入した服ではなく最初のジャージを来ていた。勿論汚れてなどいない。
夢での出来事なのか実際に異世界に行って体験した事なのか全くもって判断は出来なかったが1つだけ断言出来ることがあった。
「この記憶だけは夢にせよ何にせよ本物だよな。」
何となくだか今日は学校に行ってみようかなと思う。自分でも何故そう思ったかは分からないがとにかく行く気になる。
「久しぶりに顔見せるか〜。」
時刻を見ると今から支度すると登校するのに丁度いい時間だ。
準備を整え自宅を出る。
その後学校では蒼太を前よりも見かけることが多くなったそうだ。
今までご覧頂きありがとうございました。
今回でこの作品は終わりましたが他にも書いている作品や今後も何か書く予定ではありますのでそちらの方もよろしくお願いします。
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