ポケットモンスター―異世界調査― (機械龍)
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マサラタウンから異世界へ
「レッド!」
どこからか僕の名を呼ぶ男の声が聞こえてくる。
「レッドくん!早く!」
今度は女の声。
(あいつらがこんなに急かすことなんてあまりないよな…。何かあったのかな)
ベッドで横になっていた僕は体を起こし、彼らの元に行った。
「おい、レッド。大変だぞ」
最初に僕に声をかけてきた彼の名前はグリーン。髪を茶色に染色したトゲトゲ頭。不良みたいな見た目だけど頭はよく回る。
「これ、見てよ」
次に声をかけた彼女はリーフ。この辺の少女の中で最も美しい女の子。
2人とも僕の幼馴染みだ。
「……」
「驚くだろ?空間に歪みがあるんだ」
僕は小さい頃に起こった事故でものが言えなくなってしまった。しかし、僕のことを昔から知る人には言わなくても分かるようだ。
僕の家の前になにか黒いものができていた。
「おそらく、シンオウ地方で何かがあったんだろうな。空間を司る神であるパルキアに何かが起こってるかもしれない」
「……(だったらシロナさんに連絡を…)」
「オーキド博士に頼んで今してもらってるよ。もうそろそろ報告が来るんじゃないかしら」
(パルキアって確かコウキくんが捕まえたんだよな…。新しいパルキアが産まれた衝撃か…?)
そんなことを考えていると、向こうの方から白衣をまとった60代くらいの男性が駆けてきた。
彼はオーキド博士。グリーンの祖父であり、このカントー地方についてなんでも知っている博士。他の地方の博士とも仲が良く、よく連絡を取って情報共有をしているようだ。
「おお、レッドくん。グリーン達から説明は受けたかね?」
「……(はい。かなり大変な事が起こってるそうで…)」
「で、じいさん、結果はどうだった?」
グリーンが報告を急かした。
するとオーキド博士は首を振り、
「シンオウでは何も起きていないようじゃ」
「そうなんですか。ならどうして…?」
「まあ行ってみればわかるじゃろ。ほれ、改良したポケモン召喚機じゃ。これがグリーン、これが…」
行ってみろだなんて無責任な…。まあロケット団を壊滅させた後に博士の助手になりたいって言ったのは自分たちだけど。
「改良したって何をしたんだよ」
「前のはポケモンを召喚することしか出来なかったが、今度のは
「マジかよ!じゃあここでポッポの能力を使えば空飛べたりすんのか!?」
「まあそうじゃな。じゃあ準備を終わらせたら1時間後ここに集合じゃ」
一通り説明を終えたオーキド博士は僕らにそう言って去っていった。
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1:ワールドトリガーㅤ~対三輪隊篇~
異界へ
1時間後、僕らは再び集まった。
「持ち物は無限にポケモン召喚機に入るし、気にしなくていいよな」
「… ……(うん。いいと思うよ)」
「じゃあ、行こっか」
リーフは先陣を切って歪みの中に入って行った。
「じゃあ俺も」
次にグリーン。
そして最後は僕だ。
足を踏み入れようとしたその時、博士に呼び止められた。
「グリーンやリーフから離れないようにな。もし危険があったら召喚機のオプションの緊急帰還機能を使うんじゃぞ」
「… … (分かりました。行ってます)」
そう言い残し、僕は歪みに踏み入れた。
中は黒みがかった紫色で禍々しい感じがする。
「気分が悪くなってくるな…。最悪だ」
「もうすぐ出口みたいだよ。あそこに光が見える」
リーフが指さした先には白い光が見えた。
(なんとなく、アローラのウルトラホールの中みたいだ。ならあれはウルトラホールといったところかな)
そんなことを思いつつ、光の方に僕らは向かっていった。
歪みから出ると、そこは廃墟が大量にある所だった。
大きな豆腐のような形の建物が目立つ。
「荒廃した街、か…」
「真ん中の建物だけ発展してるようだね」
「…(行ってみよう)」
巨大な建物に向け、歩き始めたところだった。
「待て」
後ろから声をかけられた。
「人型かよー。いつぶりだ?」
「どうでも良い。警戒してかかるぞ」
高校生くらいの少年が話していた。
「なんだ、君たちは」
グリーンが話しかける。
「黙れ近界民」
「おっと…」
「……(これは…)」
歓迎されてないな。
「あー。俺らはあまり戦闘行為はしたくないんだ。その銃、収めてくれない?」
「バイパー!!」
少年が叫ぶと、銃からレーザーのようなものが飛んできた。
「くッ!」
グリーンとリーフは避けることが出来た。
が、僕は少しタイミングが遅れてしまい、太ももに弾が当たってしまった。
そこから黒い重りのようなものが出てきた。
「……!!!」
「なんだこれは…!?クソ…!リーフ!レッドを頼んだ!」
「了解!ゆけ、タブンネ!」
リーフが腕の召喚機からタブンネを繰り出した。
「『いやしのはどう』!」
タブンネがわざを発動した。
脚から重りが消え去る。
「…(ありがとう)」
「このくらいどってことないよ。気にしないで」
「レッド!早速だが、そっちのやつれた方を頼んだ!俺はこっちのつり目をやる!」
「わたしは援護に回るよ!」
「助かる!」
「陽介」
「しゃーない、敵さんに乗ってやるかー」
そう言ってつり目とグリーンはどこかへ跳んでいった。
「さて、2対1なわけだけど、この状況で戦う?」
リーフが言った。
「2対1だと?誰が1人だと言った」
すると僕の立っているすぐ横を、銃弾が通り、地面に当たった。
弾が飛んできた方を見ると、2つ、光の反射を見ることが出来た。
(遠距離攻撃…スナイパーか)
「… … ……(リーフ、2体3だ。分が悪い)」
「じゃあ、わたしがあっちの2人を始末するから、レッドくんはこのリーダー格をやっつけてよ」
1人でやるつもりか…!?
言おうとしたが、それよりもリーフが駆けるほうが早かった。
「おい近界民、トリガーは使わないのか」
「…… …?(トリガー…?)」
「質問に答えろ。トリガーは使わないのか」
(ああ、そうか)
僕はポケットの中にある携帯電話のメモ機能を起動し、入力した。
『トリガーとは?』
「なんだ、唖者か…。トリガーを使わない近界民か。聞いたことない事例だな。だが関係はない。近界民は全て敵だ…!」
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ワールドトリガー
米屋とグリーンは、少し離れたところで打ち合っていた。いや、一方的に米屋が攻撃していると言った方が正しいか。
「お前、さっきから槍の刃当たってねえぞ!」
「…と、思うじゃん?」
「?」
疑問に思ったその刹那、グリーンの体から血が溢れ出てきた。
「な、これは…」
なにか仕掛けがあるのか…?
「ちっ。『メタモン』」
グリーンがそう言うと、身体が変化し始めた。
「なるほど。そういうことなのか」
「身体がドロドロに?それがお前のトリガーか!」
「そのトリガーってのがなんなのか知らねえが、俺らの能力ってんだ。『へんしん』!」
すると、グリーンが米屋に変身した。
「うお、俺に変身かよ。すっげえ」
「これで同等、いくぞ!」
一方その頃…
「さっきレッドが見ていたのはこの辺にある建物だけど…」
リーフはスナイパーがいるであろう建物の近くに来ていた。
「うわっとと…」
周りを見ながら歩いているために、撃ってきているのが分からなかった。
「弾道、傾き、速さ…。あそこね」
前にある20階建てくらいのビルに焦点を当てた。
「『フーパ』」
リーフの周りに金色のリングがいくつか現れた。
「浮遊してるポケモンだとわたしも浮くことができるのね」
そのまま浮上していく。
浮き上がっているあいだにも撃たれていたが、リングを使いその弾を別の場所に転送させていたため、当たらなかった。さらに、その弾は彼らがいるであろう場所に転送しているため、反撃にもなっているということだ。
「いた」
そうこうしているうちに、建物の最上階に来ていた。
そこにはスナイパーライフルを手にしたキノコ頭(奈良坂)と眼鏡(古寺)がいた。
「
「アフトクラトルのワープ女みたいだな。章平、警戒しろよ。どんな攻撃が来るかわからない」
「分かりました」
奈良坂が古寺に言う。
(やっぱり戦うつもりだね。…一応聞いておこうかな)
「わたしたち、戦うつもりは無いんだ。出来れば穏便に済ませたいんだけど…?」
2人が銃口をリーフの方に向けてきた。
「カマかけてる可能性がある。素直に受け取って討たれるわけにはいけない」
(聞かないか…)
「君たちはわたしと、わたし達と戦いたいの?」
リーフが問う。
「近界民である以上、秀次が許すはずがない。実際、俺も近界民は少し恨んでいるからな」
奈良坂が答える。
「わたし達には全く関係ないと思うんだけど…」
「繋がりがないとは言えないだろう」
そう言うと、奈良坂は引き金を引いた。
「おっと」
不意打ちだったために危なかったが、間一髪避けられた。
好戦的か…。なら仕方がない。
「やるからには、本気でいくよ!『ラティアス』!」
身体が光に包まれた。
「なんだ…!?」
2人は連続して引き金を引く。
しかしそれはすべて光に吸収された。
「なに…?…
しばらくすると光が弾けた。
そこには白い服、濃い桃色のスカートに身を包み、スカートと同じ色の髪になったリーフがいた。
「『メガシンカ』ッ!!」
粒子がリーフに集合し、服や髪、眼の色、腕の形などを変化させ、強化させた。
「『りゅうのはどう』」
腕をスナイパー2人に向け、そこから銀色のレーザーを繰り出した。
「うわっ!」
奈良坂は華麗に回転して避け、一発撃つ余裕があったが、古寺は慌てて転んだように避けた。
奈良坂が撃った弾がリーフの頬をかすめた。
血がにじみ出てくる。
「トリオンじゃない…血だと?どうなってる…。そういう世界の近界民なのか…?」
「ら、ライトニング!」
古寺が灰色の尖った形の銃に持ち替えた。
「章平?」
「彼女に当てるのは俺の技術じゃ難しいです。ならスピード勝負だと思って」
「なるほど。ならそれでいい」
会話をしながらも奈良坂は撃ち続ける。
「姿を見せながら撃つなんてスナイパー失格じゃないの?」
リーフが煽る。
「お前がトリガーを使ってないとわかった以上、隠れなくてもいいと思ってな」
(トリガー…?それが無いと何かあるのかな…)
「教えてやろう。トリオン体はトリオンでしか壊すことが出来ない。ゆえに、お前は俺らを倒すことが出来ない」
へえ…。
「『なみのり』」
巨大な波がリーフの後ろに出現した。
「あんなのに飲まれたら…!奈良坂先輩!」
「気にしなくていい。飲まれたところで最悪、緊急脱出すればいい」
冷静に2人は建物の壁などに身をあずけた。
「ん?雨か…」
ポツポツと降り出した雨はやがて大雨、いや、暴風を伴う雨に変わっていった。
「あはははははは!さすがレッドくん!分かってくれたよ!」
波の勢いは増し、大きさもさらに大きくなっている。
「吹っ飛べ!」
波が当たった建物は崩壊し、奈良坂と古寺は波に飲み込まれていった。
「ふう。これでいいかな。レッドくんの援護に行こっと」
波に背を向け、レッドの所に行こうとしたその瞬間…
ビギュン!
「うっ…。あっ…」
見ると背中から腹にかけて身体が貫通している。
「ぐ…はっ…」
血が流れでる。
「これは…まずいかな…」
その場でリーフは崩れ落ち、地面に叩きつけられた。
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グリーンvs.米屋陽介
「はっはぁ!」
グリーンと米屋は槍で撃ち合いをしていた。
「お前、それの扱い上手いな!なんかやってんの?」
「昔から薙刀やってんだ。変わってるだろ!」
撃ち合いながら、そんな会話をする余裕が2人にはあった。
「でも…?俺の方が
「ああそうかよ。なら…『ゲッコウガ』!」
リーフと同様に、グリーンの体が光に包まれた。
「なんだこりゃ?」
光がはじけ、青い忍者風の服に身を包んだグリーンが現れた。
「いくぜ!」
質量のあるマフラー(ゲッコウガの場合の舌に当たる部分)で米屋を殴り飛ばし、その手に持つ槍で心臓を一突きした。
緑色のものが溢れ出る。
「くっ…ふっ…」
「あと…一閃ッ!」
首に向け、薙ぎ払った。
「…と、思うじゃん?」
米屋はそう言った。
「なに?」
「
次の瞬間、どこからか黒い服に身を包んだ白髪頭の少年(空閑)が飛んできて、グリーンの体を蹴り飛ばした。
「うおっ!」
地面に強烈に叩きつけられた。意識が朦朧とする。
「米屋先輩、援護に来たよ」
「助かる」
(意識が…。なんとかして繋がないと…)
槍を腹に突き刺した。
「はぁ?」
「ぐ…あぁああああ!!」
「なにやってんだ…?」
「はぁ…はぁ…。…っ『テッカニン』…!」
黄色のライダースーツに変わった。目が赤く変色した。
「米屋先輩?こいつのトリガーは変化するみたいな?」
「ああ、そうだ」
グリーンは高速で飛び回る。
「くそっ!追いつかないな!」
「『こうそくいどう』3段階!」
さらにスピードが増す。
「どこから来るか…。こういう時、
「大丈夫だよ、米屋先輩。
空閑がそう言うと、グリーンが飛び回っているであろう所に黒い魔法陣のようなものが出現し、黒い重りを発現させた。
「なにっ」
思い切り地面に墜落した。
「さて、これで殺しやすくなった。米屋先輩、どうする?」
「別に殺してもいいけど、捕虜った方がいいんじゃね?」
「なるほど。
うずくまっているグリーンの周囲に今度はオレンジ色の魔法陣が数個出現した。それらから魔法陣と同じ色の鎖が現れ、グリーンを捕縛した。
「っあ!」
「捕獲完了。さあ、連れてこうか。米屋先輩」
「ああ、そうだな」
空閑は、グリーンに絡みついてる鎖を手に持ち、犯罪者を連れていくかのように連行して行った。
「あー、くそ。タイマンでやりたかったぜ。お前、強そうだし」
「そりゃ悪かったな。お前らを敵とみなしてっから、嫌でも仲間が援護に来んだよ」
「そうかー。別れたのは失敗だったわけか…。残念だな」
「…!米屋先輩、近界民が来るって千佳が。それも今まで感じたことの無いほどの大きさだって」
「はぁ?マジかよ。こいつどうする?」
「手伝えるなら手伝いたい。敵に力を借りるのは嫌だろうが、戦力は多い方が良いだろ」
「…」
2人は黙っている。米屋は空閑の反応を見ているようだ。
「逃げはしない。多分、俺がいた方がそっちの利益にもなるだろうし」
「嘘はついてないよ」
空閑がそう言った。
「俺の一存でどうにかなる問題じゃないけど…。…秀次、どうする?」
数秒の沈黙のあと、米屋が言った。
「いいのか?相手は近界民だぞ?…わかった。お前…えーと」
「グリーンだ」
「そうか、グリーン。力を貸してくれ」
「おう。えーと…」
「俺は米屋陽介。こっちは空閑遊真」
「陽介、遊真。よろしくな」
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レッドvs.三輪秀次
「…」
「おい、
三輪とレッドは対峙していた。
「この状況なんだ。普通、攻撃してくるか誤解を解こうとするかするだろ。なぜお前は何もしない」
「…」
三輪が苛立ちを感じ始めた頃、レッドの顔は何かを思いついたように明るくなった。そして、腕の召喚機に何かを入力し始めた。
「何を…」
『僕たちは別にこっちの世界を攻撃しに来たわけじゃない。ただ、調査をしに来ただけだよ』
「調査…だと?」
『そうだ。だから、君たちに危害を加える気は無い。分かってくれたかな?』
「そうか…」
すると、三輪は手に持っていた拳銃を腰に収めた。
『分かってくれたようだね。ありがとう』
「分かってくれた?バカを言うな」
その手には
「近界民は…俺が全て殺す」
「…!」
肩から腰にかけて斬りかかった。
「ちっ。殺したと思ったんだがな…」
間一髪、レッドは「まもる」を使ったために、死を免れた。
「なら、これはどうだ!」
三輪はレッドの腹に孤月を突き刺し、貫通した直後足で蹴り飛ばした。
「…ッ!」
レッドは地面を転がっていき、廃墟の壁に激突した。
「かッ…ハ!」
「まだ死なないか。生身で腹を貫かれて死なないとか、どんだけ強靱な肉体してんだよ」
そんなことを呟いていると、突然レッドが高速で近づいてきた。
こうそくいどう
「なっ――!」
ばくれつパンチ
殴った箇所が爆発し、三輪は吹き飛ばされた。
『戦わないであげようと思ったんだけど…。ここまでやられちゃ、屈服させるしかないね』
その言葉は機械が放っているはずなのに、有無を言わせぬ威圧があった。
「近界民!」
『黙れ。叫ぶな。それでしか力を表現出来ない雑魚が』
(グリーンみたいな口調で挑発してみたけど…)
「ッ!!貴様アアァァ!!」
(乗ってくれたみたいだね)
拳銃の引き金を引き、アステロイドを打ち出した。
はかいこうせん
レッドは腕を胸の前に持ってきて、大きな箱を下から抱えるようなポーズをとった。その箱があるであろう空間に光の粒子が集まってきていた。
(あの弾は受けるしかないな)
1つはレッドの横を通り抜け、もう1つは先程孤月が刺さった傷のところに寸分たがわず当たった。
「くッ…!」
直後、はかいこうせんを発射した。
その大きさは、大きな車道の全てを覆う程だ。
「これは……!」
避けきれない!
そう思った直後、三輪の体に直撃した。
「うあああああァァァ!!!」
――戦闘体活動限界
三輪がいたであろう場所から緑の道ができていき、豆腐型の建物に伸びていった。
(終わったか…。うぅ。はかいこうせんの反動が…)
作戦ルームのベッドに三輪は戻ってきていた。
「…クソ。…クソッ!!!」
「三輪くん、城戸司令が呼んでるわ。司令室に向かって」
「…分かりました…」
重い足取りで司令室へと向かった。
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2:ワールドトリガーㅤ~対トリオン兵篇~
迫りよる巨大な地獄
「…三輪」
「申し訳…ありません」
開口一番、城戸正宗は三輪の名を呼んだ。
「怒るつもりは無い。お前は痛手を負わせた。よくやった」
「いえ、近界民を全て倒すのが俺の…」
「過ぎたことだ。…それでは本題に移る。林道支部長」
「はいよー。じゃ、千佳ちゃん。頼んだよ」
「は、はい」
玉狛支部の雨取千佳が前に出てきた。
「近々…というより、もしかしたら今日、近界民が来るかもしれません」
(そうか。予知能力)
なら、なぜ奴らの時は反応が無かった…?
「さて、君が言ったからこんな大規模な緊急会議を開いたのだが、何があるのかね?」
鬼怒田開発室長が千佳に訊いた。
「はい、今までにないほど強大な反応がするんです。もしかしたら
「それは困るな…。鬼怒田さん、対応できますか?」
忍田本部長が質問した。
「できる。だが、時間がかなりかかる。イルガー五体の自爆を耐えるのにはおよそ5日。それ以上なら…」
「では、至急取り掛かるように」
「分かった。開発室、聞いておったな!すぐ取り掛かれぃ!」
『了解しました!』
鬼怒田の席にあるであろうモニターから威勢のいい声が聞こえてきた。
「では、この場は解散とする。連絡があれば後に伝える」
「じゃあ三雲くん、千佳ちゃん行こうか」
「千佳?どうした?」
修が千佳の異変に気がついた。
「近界民…。来ます!」
ザワザワッ!
司令室内がざわついた。
直後、緊急警報が鳴り響いた。
――
「これは…!」
デカすぎる!
街ひとつを覆い尽くすくらいの巨大な丸く黒い物体が出現した。
中からは龍の形をした、同じく街ひとつを覆い尽くすであろうトリオン兵が出現した。
「き、緊急警報を発令しろ!」
「はい!」
――緊急警報、緊急警報。巨大な近界民の出現を確認しました。街の住民の方は至急、できる限り遠くに避難してください。繰り返します…――
「各正隊員に告げる!緊急司令だ!至急防衛に迎え!隊の隊員が全員揃わなくても構わん!これは
城戸司令が三門市全体に放送した。
「三門市役所ですか。こちら界境防衛組織、ボーダーです!近隣の市町村に伝達してください。三門市付近に住んでいる方は至急遠方へ避難してください、と!」
沢村本部長補佐が近隣の市町村に避難を勧告している。
「千佳、行くぞ」
「うん。でも、遊真くんは?」
「空閑は既に戦っているだろう。それにさっき、城戸司令が黒トリガーの使用を許可してた。いま、空閑は『玉狛第二』じゃない。1人のS級隊員だ。空閑のことは気にするな。行くぞ」
「分かったよ」
「「トリガー
2人の身体がトリオンでできた戦闘体に切り替わった。
「陽介、レッドとリーフを迎えに行きたい。すまないが、先に向かっていてくれないか?」
「分かった。白チビ行くぞ」
「了解。『
2つの印が出現した。
「じゃあ待ってっかんな!」
「おう!」
さて…。
(レッドは南、リーフは南南西か…。2人が比較的近くて助かった)
「ピジョット」
腕の召喚機からボールを取り出し、空に向かって投げた。
中からは大きな体の鳥ポケモンが飛び出した。
「レッドの所に行くぞ!『そらをとぶ』」
その場から飛び上がり、南へと向かっていった。
「レッド!」
「……!(グリーン…!)」
レッドは瓦礫に寄っかかって、座っていた。
「傷、大丈夫か?」
『大丈夫だよ。少し痛むけど、オボンのみをいくつか食べたら回復したよ』
召喚機に入力し、会話を成立させた。
「そうか。なら良かった。…早速本題だ。アレと戦うんだが、大丈夫か?」
グリーンが「アレ」と言い、指さしたのは巨大な龍の形をした「ナニカ」だった。
『なんだアレは!?』
「人々に害を成す存在らしい。さっき聞いた」
『害を成す…』
レッドは少し考えたような仕草を見せた。しかしすぐに了承の意を示した。
「そうか。じゃあ次はリーフを助けに行く。行くぞ」
レッドはリザードンを繰り出し、空を飛んだ。
「リーフ!」
ㅤリーフの腹は貫通し、地面が見えている。
「レッド!ふっかつそうを出せ!早く!」
ㅤ召喚機に何かを入力し、緑色のスムージーのようなものが入った瓶を取り出した。
「既にすり潰してあったか!流石だな、レッド!」
ㅤレッドからそれを受け取ったグリーンはそれをリーフに飲ませた。
「くそ、早く…ポケモンじゃなきゃダメなんてことは無いだろ…死んでないだろ…まだ『ひんし』のはずだ…早く…早く…」
ㅤこんなに焦っているグリーンをレッドは見たことがない。ポケモンリーグのチャンピオンだった頃もグリーンは残り一体って状態でも冷静でいた。やはり、人が死に瀕している時は焦るものなのか。
ㅤすると、リーフが咳をした。
「ゲホッゲホ」
「リーフ!」
「あれ、私…」
「細かいことはあとだ!体は大丈夫か?動けるか?戦えるか?」
ㅤ怒濤のように質問を浴びせた。
「え?私はちょっと辛いけど、ポケモンにならなんとか…」
「わかった。今すぐピジョットに乗れ。アレと戦うぞ」
ㅤ同じ説明、同じことを再び繰り返した。
ㅤその結果、
「分かったよ。私も戦う!」
「無理しない程度にな」
ㅤということになった。
ㅤ3人揃ったレッドたちはすぐにトリオン兵の元へと向かった。
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対超大型トリオン兵
〈コォォォ…〉
ビギュン――
―――ドドドドドド…ンッッ!!!!
一撃の砲撃で、警戒区域の東側の地区が焦土と化した。
「こんなん受けたら、本部が1発で崩壊してしまうぞ!忍田君!どうにかしたまえ!」
開発室長である鬼怒田が叫喚する。
「大丈夫です。既に手は打ってある。慶。ポイントに着いたか?」
『着きましたよ。あれを斬ればいいんですね?』
モニターに複数の男が映し出される。
彼らは、焦土と化した東側に配置されていた。
「不思議な組み合わせだな。……いや、そうでも無いのか」
太刀川と生駒でまずは白兵戦を行う。それの援護を他のふたりで行う。そして攻撃手のどちらかがギブアップしたら荒船が代わりに、という感じだろうか。
「生駒、行くぞ。『グラスホッパー』」
青い板を出現させ、それを踏んで飛び上がった。
「了解。『
先程の砲撃で犠牲にならなかった建物の上に立っている上に、生駒の旋空弧月はかなり伸びる。これで届かないはずがない。
が、
「なんやと!」
ガッツリ攻撃は入ったはずなのに、体表を軽く削っただけだった。
「はぇー。装甲車だなありゃ!太刀川さん、ちょっと削るから、ちょっとグラスホッパーで避けてください」
『分かった』
「『
出水は2つの種類のトリオン弾を混ぜ合わせた。
すると、1つの複合弾が完成した。
「『
無数にあるその弾を一気に打ち出した。
「砕けろ!」
小さな範囲に沢山の量を打ち込んでいく。
同じ所に荒船が『アイビス』を打ち込み、生駒が旋空で斬り、太刀川が危なくない距離まで近づいて同じく旋空。
〈ォオオォォオォオ!!〉
装甲が破壊された。
「良し!『
間髪入れず、次の弾を生成する。
「『
「出水さん、待て!」
徹甲弾を撃とうとしていた出水を、荒船が止めた。
「なんや、荒船さん。今やれば確実にいけるやん」
「見えないか、あれが!」
巨大な龍の方を見ると、変な格好をした人間が飛行しているのが見えた。
「なんや、あれ」
「多分、さっき三輪たちが戦っていた
「なんで近界民が近界民を攻撃すんだよ」
「きっと違う国なんだろ」
「じゃあこれは違うところに撃っとくか?」
「いや、温存しておいて下さい。無駄に撃つのはダメだ」
「…そうか。分かった。じゃあ沢山作っとけばいいかな」
そう言うと出水は複合弾の生成に移った。
先程、荒船が変な格好をした人間といったのはレッドだった。
(さっき、あの人たちが装甲を剥がしてくれたところを攻撃すれば…)
レッドは今、ミュウツーYの能力を得ている。特殊技が強化されるため、遠中距離の戦闘に向いていると思ったのだ。
出水が破壊した装甲の真下に到着した。
サイコブレイク
巨大な念力の玉を作り出し、装甲が剥がれているところに向け、発射する。
「はかいッこうせんッ!!!」
下の方では、グリーンがはかいこうせんを発射した。
「ゲノセクト、テクノバスター!」
リーフがゲノセクトにこおりのテクノバスターを発射させた。
まず初めに着弾したのは、テクノバスターだった。装甲が剥がれた部分と剥がれていない部分の境を凍らせ、回復できないようにした。
次に、はかいこうせんが着弾した。「肉」を抉り、内蔵のようなものをむき出しにさせた。
最後にレッドのサイコブレイク。内蔵のひとつに直撃し、それを破壊させた。
〈オォォォァァァアアア!!〉
バケモノが咆哮する。
その咆哮で東側の破壊されていなかった建物も倒壊する。
テクノバスターの氷が溶けだした頃、地上のボーダー隊員が攻撃を再開させた。
空中で待機していたであろう二刀流使いも、先程レッドたちが攻撃を与えた部分に何度も攻撃を与えている。
「君たち凄いね。この人数で俺らがここまでやるのにはあと1時間くらいかかってたかもよ」
「ありがとうございます。でも、油断は禁物ですよ」
ポケモンの力を使うとレッドは話すことができるようになる。それをいつも使っていれば良いだろ、と思うだろうが、レッドはできる限り自分の姿で心から伝えたい。と考えているため、いつも使うようなことはしないのだ。
「全く、その通りだ。下がれ!」
「え?」
その言葉にレッドが疑問に思っていると、付近で爆発が起こった。
「うああああ!!」
レッドはその爆発に直撃したため、墜落していく。
「ッッッ!!ギガ――ッインパクトッ!!」
持てる力を発揮し、最後に一撃を食らわせる。
貫通――
穴から空を見ることができるようになった。
「近界民!ナイスだ!」
地上で誰かが叫んでいる。
「しかし、この爆発は…イルガーの自爆か!?それよりも遥かに大きいが…。本部、解析できましたか?」
太刀川が通信を介して、本部に訊く。
『ああ、完了した。確かに、イルガーの自爆や爆発と似た反応がでた。先程の砲撃はバンダーだ。もしかしたら、そのトリオン兵は他のトリオン兵の力を使うことが出来るのかもしれない。…そうなると厄介だな…』
対抗できるのは、
本部室にいる全員がそう思った時、その彼が現場に到着した。
「別にここまでこなくても良かったじゃん。陽介先輩」
「太刀川さんたちがここの装甲を破壊してくれたって情報があるんだから使わないてはないだろ?」
「それもそうだな。じゃあ俺は殴ってくるよ」
空閑はそう言い残し、
「
至近距離で超強力なエネルギー弾を発射する。狙いはもちろん、太刀川たちが開けた穴だ。しかし、既に貫通しているので、少し斜めに撃ち込む。
一つの入口から、二つの出口ができた。
〈ッッッッッヒォオオォォォォオオ〉
トリオン兵が咆哮する。
すると、穴からトリオン兵の端までの約6000mが切り離され、凝縮した。
「なにが…!?」
切り離された部分は凝縮をすすめ、形を整え始めた。
それはボーマンダやカイリュー、ディアルガのような形になった。(元のはどちらかというとレックウザやラティオス、ギラティナ(オリジンフォルム)のような形だ)
「あの道は…!鋼!今すぐ向かえ!」
太刀川が叫ぶ。
あの道というのは、本部に対し直線になっている道だ。砲撃を受ければ、本部への直撃は免れない。
「鋼だけじゃなく、他の隊員もシールドを使って阻止しろ!絶対に本部に攻撃を与えさせるな!」
「「「了解!」」」
〈コォオォオォ…〉
口のような部分にトリオンを集め始めた。レーザーを発射するためにチャージをしているようだ。
「どのくらいの幅でやってくるんだ…?」
恐らく、幅によってレーザーの強さも変わるだろう。広ければ大きく出さなければならなくなり、狭ければ1点に集中させて強度をアップしなければならなくなる。
「今だ!シールドを出せ!」
「「「シールド!!」」」「
〈オォォォオァァオアァアアォッッッ!!〉
奇声のような方向とともにレーザーを射出した。
それはかなり細い。しかし、それはダイヤモンドすら砕くほどの圧力を持っている。
レーザーの目前には大量の幅の狭いシールドと、それより一回り大きく硬い『盾』印。そして、村上鋼がいる。
そして、レーザーが1つ目のシールドに当たる。
一気に割れていく。
「クソっ!やっぱり無理か!」
「諦めるのはまだ早い!村上先輩の所まではシールドを作り続けるんだ!」
どこかでそのような声がする。
そして一回り大きな遊真の『盾』印に当たるその一刹那前、今生成されているシールドの直後に、1人の少年と大きな岩山のような生き物が現れた。
「君、その盾で俺を覆え!」
人間の彼は鋼にそう言った。
「え…と…。…分かった。レイガスト!」
少年の体を覆った。
「メガハガネール、『ワイドガード』!」
〈グォォオ!!〉
「そして俺は、『まもる』!」
少年の周りをエネルギーの盾が覆った。
そう。少年は怪我を負っていない、この場にいる唯一のポケモントレーナー、グリーンだ。
これでグリーンの体には二重の盾ができ、シールド群にはメガハガネールのワイドガードが追加された。
グリーンとメガハガネールの目前までレーザーが迫っていた。
「耐えろ…」
〈クオォォ…〉
そしてその時はやってきた。
ガ…キィィィィィイイイイインン――――!!
グリーンと鋼は思わず目を閉じていた。
2人が目を開けると、
ワイドガードと『盾』印のおかげで、グリーンのところには達していなかったことがわかった。
「うおおおおお!!!」
「喜ぶのはまだ早い!付近にいる者は全員、攻撃を開始しろ!」
「「「了解!」」」
太刀川の指示に皆が応える。
「近界民、ありがとう」
「ん?ああ、いや。こっちも援護してやるって決めたから。人が困ってんなら助けるのは当たり前だろ?」
爽やかな笑顔でグリーンは答える。
「名前は?」
「グリーンだ。お前は?」
「村上鋼。鋼でいいよ」
「じゃあ鋼。行くぞ!」
グリーンと鋼は地上のトリオン兵に向け、走り出した。
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