※鎮守府を放置するのは止めましょう (ドラゴンTHEドラゴンAG)
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「引継ぎはいらない?アッハイ」

艦これ復帰します!!多分、恐らく、いやどうだろうなぁ・・・だって編成とか装備とか全然理解できてないし難しいし、でもみんな可愛いしなぁ・・・

駄文ですがよければ楽しんで行ってください





 「・・・鎮守府に帰ってくるのも久しぶりだな。俺が居ない間も大本営が艦娘達は面倒を見てくれていた訳だし皆元気にしていると良いな」

 

そう呟きながら道を歩いているのは単冠湾泊地で提督業を営んでいる男だ。とはいえ数年前から今まで提督の仕事を疎かにしており、本人曰く「俺にしかできない遠征」だそうだ。・・・まぁ実際の所はパズド●、メンコバースetcといったことにのめり込んで鎮守府に帰って来なかっただけなのだが、とんだ糞提督である。

 

 「今日久しぶりに帰ってきたのも、引継ぎのためだしな~」

 

そう、なぜそんな数年ぶりに帰って来たのかというと、何年も不在になるくらいなら艦娘のためにももっと有能な提督に提督業を引き継ごうと思い立ってやってきたのだった。

 

 「少しばかり寂しい気もするがそれが皆のためだし・・・それに提督業しんどいしな」

 

幸いなことにケッコンカッコカリも行っていなかったし、引き継いだ後の提督との間でも不和は起きないだろう。とりあえずは執務室に行って引継ぎ書類に目を通すとするか。

 

 「おぉ着いた着いた。思ったより変わってないんだな。それにしても執務室に来るまで誰ともすれ違わなかったけど、皆自室に籠ってるか?それとも食堂にでも行ってるのか?まぁどっちでもいいや、書類書類~っと」

 

 「・・・提、督?」

 

 「ん?あっ浜風か?」

 

書斎机に座りながら既に送られているはずの引継ぎ書類を探していると、最後に秘書艦として手伝ってもらっていた艦娘浜風が驚きが隠せないというような顔でこちらを見つめていた。俺は一旦書類を探す手を止めて久しぶりに会った浜風に挨拶をする

 

 「いやー久しぶりだな。俺が居ない間も皆元気にしてたか?あっなんなら俺が帰って来なかった方が気持ち的に楽だったか?なんてな」ハハハ

 

 「あ、あぁ・・・ようやく帰って来てくれたんですね!!一体今までどこに行ってたんですか!貴方が突然いなくなってから私たちがどれだけ心配した事か分かりますか?で?どこに行っていたのですか?大本営に呼び出されていたのですか?遠方まで出かけて道が分からなくなったのですか?それとも深海棲艦に襲われたのですか?・・・まさか女でもできたんですか?ねぇ!答えてください提督!!」

 

 

 「お、おい浜風?そんな一気に聞かれても答えられないよ?」

 

 「・・・すみません。少し取り乱しました」

 

 

 (す、少し?以前はこんな感じの娘じゃ無かった気がするんだけど・・・ていうか何か今の浜風は怖い!!)

 

 

取り敢えずは落ち着いてくれたみたいなのだが、どうにも様子がおかしい。もしかして俺が居ない間に何かあったのだろうか?あっ分かった。俺が居ないせいで面倒な書類仕事なんかの雑務を押し付けられたことを怒っているんだ。確かに何年もやらされれば嫌になるよな、そこに俺が帰って来て書類仕事から解放されることが嬉しいんだな。

 

 「いや、いいんだ。浜風の気持ちもわかるからな。でも安心しろ!明日からはちゃんと(有能な提督が)来るからな!」

 

 

 「本当ですか?!来てくれるんですね!」

 

 

 「あぁ、勿論だ」(すごい食い気味だな、そんなにうれしかったのか)

 

 

 「言いましたよ?絶対ですからね!!では私は皆さんにもこの事を伝えてきます!」

 

 

 「え?お、おう宜しく頼む」

 

 

何だか興奮気味にそう言うと浜風は執務室から走り去っていった。浜風ってあんなに落ち着きのない娘だったかな?まぁ浜風が伝えてくれるなら俺から皆に引継ぎの事を伝える必要はないな。

 

 「さぁて浜風も行ったことだし、書類を探しますかね」

 

ーなんだかんだ5分後

 

 

 「あ、あるぇ??引継ぎ書類がどこにも入ってないのだが・・・うーん手違いでもあったのかな?」

 

 

どういうことか書斎机のどこにも引継ぎ書類が見当たらなかった。おかしいなと思いながらももう一度見落としが無いか引き出しをゴソゴソと探していると、突如執務室のドアがバァンという轟音と共に開かれた。おいドア壊れちまうでしょうが・・・

 

 「「・・・」」

 

 「って皆揃ってどうしたんだ?」

 

執務室の入り口にはこの鎮守府の艦娘達が全員集合してるんじゃないかって程に所狭しと押し寄せていた。しかし皆こっちを見つめるだけで全く口を開かない。すげぇ怖い光景だなこれ。何てことを考えていると一番前にいた長門が一歩前に出た。

 

 「これは、夢ではないのだな」

 

 

 「いやそれは夢だ。なーんちゃっ「嘘だ!!」ヒッ!?」

 

 

 「どうしてだ?どうしてそんなことを言うんだ?見ろ頬をつねったら痛い、なのにどうして夢だなんていうんだ提督?もしかしてそんな嘘で煙に巻いてまたここを去るつもりか?」

 

 

 「な、長門?その何年もここを空けていたのはすまなかった!でももう大丈夫だ!浜風にも言ったがもう皆に辛い思いはさせないから、な?」

 

 

 「・・・わかった。私達は提督が帰って来てくれたことだけで十分だ」

 

 

よかった分かってくれたか。それにしても書類仕事や雑務は艦娘にとってはそんなにしんどいことだったのか。本当に申し訳なく感じる。まぁ彼女たちのためにも今日帰ってきたのは正解だったみたいだな。すぐにでも引継ぎ書類を纏めて、って書類が無かったんだった。これだけ艦娘が揃ってるんだったら誰かは知ってるだろうし聞いてみるか。

 

 

 「その帰って来て早々で悪いんだが、ここ何日かで大本営から重要な書類が届いてるはずなんだけど誰か知らないか?」

 

 

 「提督今日ぐらい執務は置いておいてもいいんじゃないか?」

 

 

 「いや、今日中に纏め切った方が良いモノなんだよ」

 

 

 「そうか、でそれはどういったモノなんだ」

 

 

 「えっとな。引継ぎ用の書類で、これくらいの大きさの奴だ」

 

そう言って似たようなサイズの紙をひらひらと動かすと、その瞬間に一瞬周囲の温度が数度下がったようなきがした。急に目線が集中したような感覚を受け、何事かと俺も探す手を止め顔を上げるとその場にいた艦娘全員が光を失った瞳でこちらを見ていたのだった。その光景に思わずヒッと情けない声が漏れる。

 

 

 「み、皆?なんか怖いぞ・・・」

 

 

 「怖いなんて言われたら傷ついちゃうなぁ?それで重要な書類だっけ?それなら私心当たりあるよ」

 

 

 「蒼龍、それはどこかな?」ブルブル

 

 

 「そうだなぁ、教えて欲しい?」

 

蒼龍は不敵な笑みを浮かべながらこちらに近づくとそう問いかけて来た。得体の知れない恐怖から声が出なかったが、ゆっくりと頷いて肯定を示す。

 

 「仕方ないなぁ。提督ゴミ箱の中覗いてみて、そこに答えがあるからね」

 

 

そう言われてゴミ箱を確認する。するとそこにはバラバラに引き裂かれた紙切れが入っていた。まさかと思いその紙切れを数枚取って見てみると、何とか引/継という文字を確認することが出来た。いや出来てしまった、これは間違いなく引継ぎ用の書類だ。一体どうしてこんなことを?

 

 「な、なんで」

 

 「どうしてそんな悲しい顔をしているんですか提督?」

 

 「古鷹・・・」

 

 「それに大本営も何でこんな書類送ってきたんでしょうね?提督の引継ぎ何てするわけないじゃないですか」

 

 「い、いやその書類は俺が「するわけ、無いですよね?」・・・はい」

 

 「うふふ、そうですよね。よかったです」

 

 

直感的に危険を感じたからそれ以上の言葉を紡ぐことはしなかった。古鷹は嬉しそうに笑っているが、その笑いが逆に恐怖心を煽った。そして分かったことが一つ、彼女たちが提督の引継ぎを望んでいないということだ。しかしそうなると俺がここに残るしか無くなるんだが、いや今まで俺が居なくても運営できてたし無理に引継ぎしなくていいってだけなのか?

 

でも浜風は雑務をやらなくていいって滅茶苦茶喜んでたしな、どっちが正しいのか分からん。とりあえず今は話しを合わせておいて、適当にそれとなく状況が分かってから対応するとしよう。うんそれが良い。今の皆は怖いし、気持ちに余裕ができれば大丈夫だろ、俺もすぐに急いでる訳では無いし・・・

 

 

 「あ~何て言うかごめんな。ちょっと焦りすぎてたみたいだ。引継ぎの件は大本営に伝えておくし、皆も気にせず、長い間鎮守府を空けてた俺が言うのもなんだが、ただいまかな?それとまた今日から宜しく頼む」

 

 

 「「はい!お帰りなさい提督(司令官)」」

 

 

 この時の俺はまだあんなことになるなんて一ミリも考えていなかった。俺はこの鎮守府に戻って来るべきでは無かったのかもしれない・・・



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「やっぱり何かがおかしい・・・おかしくない?」

好きなように書いてたらなんか難しいですの。まぁええやろ(小並感

ストーリー展開ありで書いてるけど、短編で艦娘一人ずつで書いた方がいいのかな?わからん

それとお気に入り60も行くとは思わなかった・・・皆さんありがとうございます!!


(うーん暑い・・・寝心地が悪いなぁ)

 

微かに目が覚めた俺が真っ先に感じたのがそれだった。未だ眠いが不愉快な熱っぽさのせいで中々もう一度眠りにつくことが出来ない。少しでも冷えた所を探して寝返りを打とうと身体を捻ってみる。

 

(・・・ん?身体が重くて動けないんだが)

 

しかし身を捻るどころか腕すら動かせない。まるで何かに押さえつけられているかのようにがっちりと固定されてしまっているのだ。金縛りかとも思ったが頭と指は動かせそうなので金縛りではないみたい。となると一体どうして?流石に違和感を覚えた俺は眠たい目をゆっくりと開く。

 

「んぅ提督、マシュって誰ですか?女ですか?・・・」

 

 

(な!?浜風ぇ!?ななな何で一緒に寝てるんだ・・・しかも意味の分からない寝言も言ってるし)

 

 

目を覚ましたら横で浜風が俺に抱き付いて寝ている、それもご丁寧に足まで絡められて・・・ありがとうございます。じゃなくて!やばいよこれどう考えても犯罪だよ。若干大人びてるとはいえ駆逐艦だし、まず第一に艦娘と一緒に寝てるところなんて見られたら憲兵さんにしょっ引かれても文句言えねぇよ・・・

 

この状況を何とかして打開しようとするもしっかりと左半身が艦娘の力で固定されてしまっていては動こうにも動けない。くそっこうなったらもう一方の腕で何とか引き剥がせば、と考えた所で右半身も動かせないことに気が付いた。

 

(は?あれ?いやいやいやそんなはずは無い・・・)

 

嫌な予感を感じつつも意を決して逆方向へと顔を向けた。するとそこには予感の通りにもう1人すやすやと気持ちよさそうに寝ていた。

 

「むにゃ司令、不知火は眼光だけでイ級くらい沈められます」

 

怖いっ!!眼光だけで深海棲艦沈めるってどういうことだよ!

 

浜風と逆方向で寝ていたのはまさかの不知火だった。一体どうしてこうなった。としか言いようがないぞ・・・昨日寝るときは確かに一人だったはず、誰かと一緒に床に入った覚えもないし、それも不知火と浜風と一緒にいた記憶すらないんだがな。そうなると俺が寝た後に2人が布団に潜り込んできたことになるんだが、それこそ一体何のため何だろうか。電とか暁なら寂しくて~とかありそうではあるがこの二人は寂しさとか全然感じ無さそうだしな。

 

(・・・もしかして監視か!?)

「そんなわけないか。にしてもこれでは起きることもできないしもう一回寝るか」

 

寝辛い原因がわかったら何だかまた眠気が出て来たし、と言う訳でおやすみなさい。今が一体何時なのかは分からないが俺はもう一度睡眠をとることにした。まぁ横で寝てる2人も目が覚めればついでに俺も起こしてくれるだろうしそれまで寝るくらい許されるだろう。それから数分もしないうちに提督は眠りについたのだが、それを見計らったかのように隣の二人が体を起こす。

 

「・・・私が見てない間に何処かに行こうなんて駄目ですからね」

 

「不知火はもう司令が居ない生活は耐えられません。ですので司令がまた逃げようなんて考えるなら・・・ふふふ」

 

静かに眠る提督を見つめながそう語り掛ける少女たちの瞳には一欠けらの光も宿っていなかった。

 

 

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----------------------

 

「司令、朝になりました。そろそろ起きてください」

 

「あ~後1時間眠らせてくれるか、キスしてくれたら起きるよ」

 

不知火が提督の体をゆすって起こそうとするが、提督はまだ起きたくないので適当なことを言って返した。

 

「そうですか。では失礼して「ちょっと待て!?」・・・どうかしましたか?」

 

「どうかって・・・不知火さん今何しようとしてるのかわかってるか」

 

「司令を起こすためにキスをしようと思ったのですが、不知火に落ち度でも?」

 

行動全てが落ち度だよ!!と言ってやりたい。というか不知火ってこんな冗談をいうような感じだったかな。もっと厳しくて冷たいイメージだったんだけどな・・・流石に本当にキスしようとするなんて思わなかったから驚きで物凄い目が覚めてしまった。

 

「いや、な。不知火そういうのは大事にしないとダメだぞ。この先本気で好きになった人とするために取っておきなさい」

 

「・・・?」

 

ここで何で首傾げるかな。まぁ仕方ない、取り敢えず一連の出来事は忘れることにして朝食を取ろうとしよう。そういえば確か昨日の夜起きてしまった時は浜風もいたような気がするんだが先に帰ったのだろうか

 

 

「浜風でしたら先に食堂に行っていますよ」

 

「えっ?あ、あぁそうだったのか」

 

俺今無意識のうちに口に出していたのか・・・口元緩くなってんのかな。今度からは気を付けよう。あらぬことまで無意識的に口に出していたら恥ずかしいことになるかもしれんからな。

 

「あっそういえば不知火と浜風はどうして俺の布団で寝てたんだ?寝ぼけてたのか?」

 

ふと疑問に思っていたことを不知火に冗談交じりに聞いてみた。これで寂しかったからとかいう返答が返ってきたのときは悶えてしまいそうだが、不知火に限ってそんなことは無いだろう。

 

「・・・どうしてそのような事を聞くのですか?」

 

「どうしてって気になったからだな。」

 

そう返すと不知火は「そうですか」と言うととその後にボソボソと何かを呟いた。はっきりと聞き取れなかったので、もう一度耳を澄ますががやはり声が小さすぎていまいち聞き取れない。

 

 

「司令は・た・・にげ・・と・てる」

 

何を言ってるのかは聞き取れなかったが、ブツブツと呟く不知火はどこか危険な雰囲気を醸し出していた。そう昨日引継ぎ書類の事について話した時と同じ感じだ。このままでは不味い、そう感じた俺はすぐに違う話題を探す。

 

「ま、まぁ別に怒ってる訳じゃないし無理に理由は聞かない!ただ君たちと一緒に寝てるなんて所を憲兵さんに見つかったらどうなるか分からないから、な?これから気をつけてくれよ?」

 

「・・・了解しました」

 

 

良かった、さっきまでの雰囲気も無くなったし今回注意すればそうそうこういった事態にはならないだろう。それにしても一体どうしたのだろうか、俺が居ない間に皆少しずつ雰囲気が変わったような

 

「では司令、私達もそろそろ朝食をとりに食堂へ行きましょうか」

 

「あぁそうだな」

 

そう言って不知火がドアに手をかけた所でピタリと動きを止め振り返った。

 

「あっ言い忘れていましたが、憲兵の皆さまはもうこの鎮守府にいませんので提督が気にすることはなにもありません。ですので安心してくださって結構ですよ」

 

 

・・・憲兵が居ない?どういうことなのだろうか。疑問は残るが俺が気にしたところで何が変わる訳でも無いので、今度大本営に引継ぎの件も含め連絡だけ入れようと決めて

食堂へ向かうのだった。

 

 

 

 

 



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「帰省二日目にして闇を見たんだがどうしよう」

ちょっと後半速足で進んだ感が凄い・・・まぁいいよね!!

なんか思ったよりもUAとかお気に入りとか伸びて嬉しい。けどいつ酷評されるか分からんし怖い。読んでくださってる方はありがとうございますm(__)m

この話から先あまり考えてないんで、どうなるか分からないですヨ~




不知火に連れられてやってきたのは食堂。主に間宮・伊良湖・鳳翔の三人+αと妖精さんで切り盛りされているのだが、ここで食べる食事は本当に美味しくそれこそ高級料理店じゃないのかって程美味い。まぁ高級料理店何て行ったこと無いから比べられないのだがな・・・

 

(それにしてもここで食事をするのは久しぶりだな・・・そして提督を辞めたらここに来れないのは少し心残りだ)

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、久しぶりだなぁと感じただけだ」

 

「そうですね。司令が最後にここで食事をしたのは2年3ヶ月と11日前ですのでそう感じるのも仕方のない事です」

 

「そ、そんなに月日が経っていたのか。というか不知火よくそこまで詳細に覚えていたな」

 

正直不知火が黙々とそう告げているときに背筋がゾクッとした。一体どうしてそんなに詳細な日付まで記憶しているのか、それは恐らくだが遠回しにこう告げて言うのだろう。

 

『これが貴様の仕事を放棄した期間の長さだ。貴様も覚えておけ』

 

・・・絶対ソウダ。不知火はあまり表情に出すような娘ではないから分かり解り難いが、腹の内は浜風と一緒で雑用を押し付けられたことを根に持っているのだろう。なら尚更優秀な提督に引き継いだ方が良いと思うのだが、それを拒むのは何故なのだろう?・・・もしかして

 

(この鎮守府を抜けてサボっていた分は働けという意思表示か!?)

 

「当然です。司令の事であればすべて把握しているつもりですから」

 

「そ、そうか。流石だな不知火」

 

少し誇らしげに言う彼女に対して反応に困りながらも取り敢えず褒めておく。その後ずっと食堂入り口付近でこうしていても仕方ないので不敵に微笑んでいる不知火と共に食堂へと入った。

 

「ふ、ふふふ司令が褒めてくれました。・・・折角なので録音しておくべきでしたね」

 

俺たちが食堂に入った途端に「未だ眠い」だの「今日も遠征か」だのと賑やかだった雰囲気が一瞬で静まり返る。一体何事かと思ったが、気にする間もなくすぐに元の賑やかな食堂へと戻ったので気にしすぎかな。と結論付け、食事を取りに行く。

 

「あら提督、不知火ちゃんおはようございます。すぐお食事をご用意いたしますので少しお待ちください」

 

「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ間宮さん、食事ができるまで空いてる席で「お待たせ致しました」はやっ!?」

 

俺が来ると挨拶だけして急いで取り掛かったと思ったらモノの数分、いや数秒単位で食事が用意されていた。流石に早すぎると思いながらも、これが当然ですと言わんばかりにニコニコしている間宮さんを見ると、変に聞くこともできなかった。

 

「ありがとう。それじゃ不知火、俺はあっちの空いてる席で食事をとるから君も姉妹や仲のいい娘と食事をしてきていいぞ」

 

そう言いながらお盆をもって隅っこの空いている席に向かって足を進める。がしかし歩いても歩いてもまったく身体が前に進まない。何故かって?簡単な事さ。後ろから女の子に服を掴まれているからだ。いやー艦娘の力って強いね。いざ反逆でもされたら人類本当に滅亡しちゃうよ。

 

「・・・不知火は司令と食事を共にしたいです」

 

「陽炎達と一緒じゃなくていいのか?」

 

「はい、構いません」

 

「まぁ不知火がそう言うなら別に俺はいいんだが、じゃあ行こうか」

 

俺なんかと一緒に食事しても楽しくはないと思うんだがな。心の中でそんなことを思いながら今度こそ席へと向かう。勿論不知火も俺のすぐ隣を歩いて同じ席へと向かっている。そして席へとつくとそこのテーブルには既に先客がいた。

 

「提督お待ちしてました。さ、私の隣をどうぞ」

 

「お、おう。失礼するよ」

 

「では不知火も司令の隣に失礼します」

 

ついさっきまで執務室で一緒に寝ていたはずの浜風だ。その他にもテーブルをはさんだ逆側に飛龍と蒼龍の二航戦コンビが食事をしていた。いや、浜風は食事に手を付けていない。ということはつまり待っていたのか?

 

「はい、なんせ提督と食事するのも2年3か月と11日前以来ですから」

 

「え?あぁそうだな。長い間ここを放置して本当にすまなかった」

 

また知らぬ間に思ったことを口に出していたのか、やばいなぁこれから話す時はしっかり気を付けて話すことを意識しないとダメだな。そして浜風もやっぱり最後に食事をとった日を細かに覚えていたか・・・艦娘の記憶力おそるべしだな。

 

「いえ気になさらず、こうして帰って来てくれただけで十分です」

 

「そ、そうか、ありがとうな。それじゃあそろそろ食べようか」

 

俺は両隣の2人にそう言ってから手を合わせる。そして「いただきます」と一言言ってから料理に手を付けようとしたのだが、何かが足りないことに気が付いた。あ・・・箸が無いんだ。パンならば手で食べることもできたのだが、生憎ホッカホカの白飯なので流石に素手では食えそうもない。間宮さんも少し抜けてるところがあったんだな、なんて思いながら仕方ないので箸を取りに行こうと席を立つ。

 

「ん?提督どこか行くの?」

 

「あ、いやな。どうやらお箸をつけ忘れたようだから貰いに行こうかと思って」

 

席を立つ瞬間に蒼龍が問い掛けてきたので用件を伝えた所、それと同時に両隣の二人が即座に俺の腕を掴んできた。あまりの速さと力強さで反射的に身体がビクついてしまう。ちょっと痛いしその速度は怖いよ、島風もびっくりだ。

 

 「提督座ってください」

 

 「で、でも箸が無いと「座ってください」・・・はい」

 

俺ってそんなに信用無いのかな?こんなタイミングで逃げ出すようなことはしないんだけど、というかまず逃げようなんて考えてない。

 

 「それでは提督、口を開けてください」

 

 「いきなりどうしたんだ?」

 

突然の要求に疑問が浮かび何が目的なのかと思ったが、浜風が白飯を箸でつまみこちらに向けているのを見てハッキリと分かった。無理無理それは恥ずかしすぎる、何の意図があるのか分からんが俺にはハードルが高すぎるんですの。

 

 「や、やっぱり箸取ってくる!」

 

しかしやはりというべきかなんと言うべきかしっかり逆側の娘、ぬいぬいが立ち上がるのを妨げてくる。

 

 「ぬいぬいは止めてください」

 

 「そんなことよりも提督、どうして食べてくれないんですか?嫌なんですか?」

 

 「別に嫌って訳じゃないぞ!?だからそんな寂しそうな顔は止めてくれ」

 

俺が浜風が食べさせようとしてくるのを拒否していると次第に浜風の表情に曇り始めてしまった。くっこれは覚悟を決めなければならないかと思ってると浜風が突拍子もないことを言い出した。

 

 「分かりました。ではお箸は止めて口移しで食べさせてあげます。お箸が喉に刺さったりしては危険ですからね♪」

 

 「ち、違う!!そう言うことじゃない!!」

 

俺の叫びも今の彼女にはなぜか届かない。白米を自分の口に入れるとこちらに向き直り俺の頬に両手を添えてくる。心なしか目が据わってるような気がするんだけども・・・これは不味い。あくまでも提督と艦娘は上司と部下でありそれ以上の関係を持ってしまってはいけない、というかこんな所憲兵さんに見られたら普通に終わる!!間違いなく!!俺は社会的に!!

 

 「待つんだ浜風!!こんな所を憲兵に見られたら俺はまたこの鎮守府を空けることになるぞ?いいのか?」

 

こう言えば浜風も何の冗談か知らんが突拍子もないことは止めてくれるだろう。俺が居なくなってしまってはまた元の雑用&執務パーティの始まりだからな。雑務をしなくて済むようになって一番喜んでいた彼女であればこの言葉の意味を理解してくれる。と信じていたのだが・・・どうやら俺の考えは浅はかだったようだ。

 

 ・・・だって

 

もう、唇が重なり合ってしまっているんだもの。あっ終わった・・・母さん父さん、こんな息子でごめんね。

 

 「ハァハァ・・・どうでしたか提督?」

 

若干息を荒くしながら感想を聞いてくる浜風。とはいえもう色んな感情が頭の中で渦巻いていたせいでコメの味なんて全くしなかったから感想なんてない。強いて言うとするならば「終わった」かな・・・

 

 「味が分からなかった?そうですか。ではもう一度しましょう」

 

駄目だ、このまま流されっぱなしじゃいけない。流石に鎮守府を放置した鬱憤晴らしに俺を辱めたいにしてもこれはやり過ぎだ。ここは一度ビシッと厳しく言った方が良いかもしれん。

 

 「いい加減にするんだ!!」

 

俺が厳しい口調で声を上げると流石に浜風が動きを止めた。それだけじゃない向かいの席で食事をしている飛龍と蒼龍、隣の不知火、食堂にいた全艦娘が話すのを止めこちらへと視線を向けた。

 

 「ここを何年もの間空けてサボっていた俺がこんなこと言うのはおかしいと思う。だけどな、その腹いせのためとはいえ今みたいなことを軽々しくしてはいけない。俺も二度と君たちに仕事を押し付けるようなことはしないと誓うから、君たちもあまりこういうことはしないと約束して欲しい」

 

俺が全てを言い終わった後もしばらく食堂を沈黙の時間が流れた。一体何年ぶりだろうなこんな真面目なトーンで説教じみたことをしたのは。ここまで言えばこれから先間違いは起きないだろう。

 

 「そんな事、約束できませんよ」

 

 「・・・・・・へ?」

 

一体誰が口にしたのか、帰ってきた返答は俺が望んでいたものとは真逆のモノだった。

 

 「だってこウやって迫れば優しい提督は・・・・・『鎮守府を引き継ごう』だなんて思わなくなりますよね?」

 

 「そ、その件は今日、大本営に連絡しようと」

 

 「引継ぎ書類の再送を依頼するため、それと引継ぎまでの期間延長と言ったことをですか?」

 

何でそこまで分かってるんだ。まだ話してはいなかったと思うんだが、まぁいいそこまで知られているのならば、これからの予定をすべて話してしまおう。

 

 「確かにその通りだが、これも君たちのためを思ってだな。そりゃ今までのやり方と変わるかもしれないし、提督が居なかった方が良かったかもしれない。でもやっぱり有能な提督が仕切った方が皆もいいんじゃないか?浜風だって俺が戻ってきた時雑務をしなくて済むって喜んでたじゃないか」

 

 「やっぱり提督は分かってないですね」

 

 「俺も身勝手だとは思う。すまない」

 

俺がそう言って返すと浜風はクスリと笑い、先ほどと同じように手を俺の頬に添え、しっかりとこちらを見据えながら話す。

 

 「私達のため?雑務をしなくていい?違います。全然違いますよ提督。薄々気が付いてはいましたがやはり鈍いですね」

 

 

 「そ、それはどういう?」

 

また俺は得体の知れない恐怖を感じている。頭の中では何か危険だとうるさいほど警報が鳴り響いてるような錯覚さえする。

 

 「何度も言ってるじゃないですか。『私は提督が帰って来てくれただけで十分』ですと。貴方が居ればそれでいいんです。貴方が居てくれるなら雑務だって出撃だって遠征だって演習だって何だってやります!!だから引継ぎ何て絶対にさせませんし、提督は今日から鎮守府からの外出は許しません。これが私の、そしてここの艦娘全員の総意ですので・・・」

 

 

「「「絶 対 に も う 二 度 と 逃 が し ま せ ん よ」」」

 

気が付いた時にはもう既に手遅れ、彼女たちは壊れてしまっていたのだ。そしてそのことに気が付かず戻ってきてしまった俺はこれからどうなってしまうのだろうか?



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「仲良し姉妹艦か・・・なるほど」

投稿が遅くなって申し訳ない限りですm(__)m

感想読んでると、思ったより同志(放置勢)の方が居て、皆それぞれ思うところがあるようですねw

どうにも方向性が定まらないので文章も少しグダってるかもです。それと出来る限り改善&参考にしようと思うので色々感想頂けると幸いです!!


鎮守府の皆が病んでしまっていると気づかされたあの日から数か月が経った。人間の適応力というものは俺が思っていたよりも凄いみたいで、最初こそ驚いたし混乱したのだが日が経つにつれ何とも感じなくなっていた。何だかんだ艦娘たちも以前のように普通に接してくれている。・・・まぁ布団に潜り込んだり、一緒に風呂に入ろうとしたり、鎮守府から外へは一歩も出させてくれなかったりすることに目を瞑ればの話ではあるが。

 

 「ん?どうしたんだ提督、手が止まっているが疲れたのか?」

 

 「いや、大丈夫だ日向。少しボーっとしていただけだしな」

 

 「そうか、それならいいが無理はするんじゃないぞ」

 

俺は「あぁわかってるよ」と返して目の前に積まれた書類へ取り掛かるのだが、やはり提督業ばかりは以前と変わらず面倒臭いしずっと書類と睨めっこしていると疲れてしまう。給料を貰っている以上仕事なので仕方のない事ではあるのだがどうしても気が滅入る・・・そういえば俺がここに来なかった何年間ってどういう扱いだったのだろう?

 

 (まぁ考えても仕方ないか)

 

そんな事を思いながらも俺は書類に目を通し始めた。

 

 

================================-

 

 

 「2人ともお疲れ様!そろそろ一段落着くころだと思って昼食持ってきたよ」

 

午前中には終わらせておきたかった分を片付け丁度キリが良い所で昼食にしようかと思っていたところ、まるで分っていたかのようなベストタイミングで伊勢が昼食を持って訪れた。

 

 「ん?伊勢か」

 

 「ほら間宮さんに提督と日向の分だけ先に貰って来たから一緒に食べよ?お腹空いてるでしょ」

 

 「まぁ、そうだな。提督もそれでいいか?」 

 

 「あぁ丁度キリもいいし昼食にしようか」

 

俺がそう言うと伊勢は分かりやすくガッツポーズを取り、日向も心なしか嬉しそうに口角を上げた。正直彼女たちの好意に気が付いた今でも一体何が嬉しいのか俺にはさっぱり分からない。彼女たち二人は姉妹艦の中でも結構仲が良い印象があるし二人で食事をとった方が楽しく食事できると思うのだがな・・・

 

 「はいっこっちが提督の分で、こっちが日向の分ね。それでこれが私の分っと」

 

 「ありがとう。わざわざすまないな」

 

 「いいのいいの!提督のためだしね」

 

伊勢から食事の乗ったお盆を受け取りながら感謝の言葉をかけると、彼女はいい笑顔でそんなことを言ってくれる。気恥ずかしさから思わず顔を背けそうになるが、ここで顔を背けてしまうと彼女の目から光が無くなってしまうのはほぼ確定なので何とか耐える。

 

 「そ、そうか・・・」

 

 「つまり私はついでと言う訳だ」

 

 「なになに?日向どうしたのさ」

 

 「・・・何の事だ」

 

 「不機嫌そうな顔してるよ~?もしかして嫉妬してるの?」

 

それにしても本当に仲がいいなこの二人は。伊勢の絡みに日向が適当に対応しているだけのようにも見えるが、こう遠慮なく話し合えるというのは本当に信頼し合っているからなのだろう。彼女たちを見ながら感心しているとあることを思いついた。

 

 そう、俺が鎮守府から安全に外出する方法をだ!!

 

別に仕事を辞めたいとか、嫌になったとかそう言った感情ではない。ただ鎮守府から一歩も出れないのは気持ちの問題でしんどい。だからたまには外で羽を伸ばしたいと思うのだ、そしてそのための方法を今思いついた。勿論すぐに実行に移すことはできないが、近いうちに試してみようか。

 

 「提督なんかうれしそうね?」

 

 「え"!?あ~、ご飯がおいしいからかな」

 

しまった、久しぶりに外部に出れると思うとつい喜びが表情に出てしまっていたようだ。咄嗟に誤魔化したものの2人は訝しげにこちらを見てくる。

 

 「・・・いつもと変わらないと思うんだけどなぁ」

 

 「今日の提督は少しおかしい、今朝もボーっとしていたようだがやはり疲れているんじゃないか?」

 

 「大丈夫!大丈夫だから!!ほら、さっさと食べて午後の分終わらせてしまおう!!」

 

これ以上怪しまれないように、俺は残ったご飯を急いで口に入れる。尚も不安そうな顔で見てくる二人だったが、何とか諦めて食事を再開してくれた。なんとか窮地を乗り切った後は、何事もなくその日の業務を修了させたのだが、終始心配そうに見守られていたせいで全く心が休まらなかったのは言うまでもない。

 

 「それでは私達は戻るとしよう。提督、今日はしっかりと休むんだぞ」

 

 「日向の言った通りに体休めてね!心配することは無いと思うけど~もし夜更かしするようだったら・・・分かるよね?」

 

 「分かっている。伊勢にも手伝ってもらって折角早く終わらせたんだ、今日は早めに就寝させてもらうとするよ」

  

 2人に限った話ではないが皆は本当に心配しすぎだ。今日も今朝ボーっとしていただけで終日心配してくるほどには心配性だ。心配してくれること自体は嬉しいのだが、どうにもずっとこんな調子だと息苦しさを感じてしまうのもまた正直な気持ちだ。

 

 俺は日向達が部屋から出て行くのを見届けた後すぐにベッドには向か・・・うようなことはせず、机に座りなおした。その目的は今度外出する時のための下準備であり計画をまとめるためだ。計画と言っても大したことをするわけではない。今日一日、日向と伊勢を見ていて思いついたことを、実行するにあたって必要になるであろう艦娘をピックアップして予定を確認しておくだけだ。

 

 「えーっと、たしか予定が空いてて条件に合致する奴は」

 

取り敢えずパッと確認して予定が空いてるのは【大井】と【山城】後は【龍田】か。よし、明日にでも声かけてみるとしよう。問題は了承してくれるかどうかなんだが、交渉材料何か用意しとかないとダメかなぁ。まぁその時になったら考えるか・・・

 

一先ずやりたいことは終わったので日向たちに言われたように寝るかと机から立ち上がろうとした時、コンコンとドアがノックされ返事を待つことなく開かれる。誰が来たのかとそちらに目線を動かし、誰かを確認するのと同時に額から汗がドッと噴き出した。

 

 「・・・提督~さっき私なんて言いましたっけ?」

 

 「はぁ・・・やはり君には言葉だけでは伝わらないようだな」

 

 「ま、待ってくれ!まだ君たちが出て行ってから30分も経っていない、夜更かしというには早すぎやしないか!?」

 

俺がそう伝えるも、彼女たちが戻ってくれるようなそぶりを見せない。それどころか伊勢は微笑みながら、日向は不敵に笑いながら少しずつこちらへと歩み寄ってきた。

 

 「そんなに起きていたいなら私達が手伝ってあげようか?」

 

 「・・・それって、どういう?」

 

 「もちろんその言葉通りだ。私達が眠れない夜を過ごさせてやろう」

 

このままではなんかいろいろとヤバイ気がすると感じ、彼女たちの横を走り抜けようとした。しかしさすがは艦娘といった所か、恐るべき速さで行く手を阻んだかと思うとすぐさま身体が抱えあげられてしまった。そのあまりの無力さにそれ以上の抵抗もできず、そのままベッドまで運ばれる。俺を中央に左に日向、右に伊勢という並びで寝る羽目になってしまったのだ。

 

 「んふふ、寝れると思ってる?今日は私たちが満足するまで寝させないからね」

 

 「まぁ、そうなるな。瑞雲以上に君を可愛がってやるからな」

  

・・・最近皆が普通過ぎて気が緩んでいたのか、どうやら俺は久しぶりに選択を誤ってしまったようだ。こうなるんだったらさっさと寝てしまっていればよかった。両隣の二人は明らかに興奮している様子でこちらの事を伺っているし、俺は一体どうなってしまうのだろうか・・・



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お断り勢編
「山城・・・本当に変わってないよな?」 前編


毎度毎度、気分と勢いで書いてる故、更新が遅くなってしまって申し訳ないですm(__)m
まだ更新を待ってくださっている方々本当にありがとうございます。ご期待に沿えるかどうかは分かりませんが少しずつ執筆していこうと思いますのでどうかよろしくお願いします。

今回からは「お断り勢編」と題して書いていこうと思うんですけど2,3年前からお断り勢って増えてないですよね?(把握できてないマン)と言う訳で山城編の前編となってます。


『ん…アッ…どう提督?気持ちいいでしょ』

 

『提督、伊勢よりも私の方が良いだろう?』

 

そんな事を問い掛けながら身体を密着させてくる伊勢と日向の航空戦艦コンビ。ベッドが狭いことも相まって両側の二人の温もりをじかに感じてしまい、駄目だとは分かっていても体が反応してしまう。そのことが二人にばれないように身を捩って少しでも密着をと試みるのだが、どうやらそれが仇となってしまったようだ。

 

『ふふふ♪これは一体なんですか提督ぅ?』

 

俺のどうしようもなく反応してしまった部分に伊勢が気付いてしまったのだ。パッと彼女の顔を見ると伊勢は嬉しそうな顔をこちらに近づけ、耳元でぼそりと呟いた。

 

『私達で興奮、してくれてるんだ?嬉しいな♪』

 

このままでは不味い、本能的に貞操の危機を感じた俺は急いでベッドからこの二人から抜け出そうとした。しかし起き上がろうとする意思に反して体は全くと言っていいほどに動かすことが出来なかった。それもそのはず、何故なら今俺の身体は2人の艦娘によってがっちりと拘束されてる、唯の人間にその拘束を解くことなんて出来やしないのだ。

 

『君は往生際が悪いな。私達から逃げられるわけがないだろう』

 

『そうだよ提督~。まっそういう事だし覚悟してね?』

 

そう言って伊勢がズボンに手を掛けた。待て!止めるんだ!今ならまだ無かったことにできるから、な?

 

『それじゃ、いくよ?』

 

俺の懇願も空しく、伊勢はズボンを降ろそうとしている。

 

「やめるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!・・・・・・あ?」

 

魂を込めた叫びと共にガバリと起き上がる。えっ?起き上がれた?

 

混乱する頭を一旦落ち着けて深呼吸をする、当然だが伊勢・日向の二人の姿はどこにもなく衣服も一切乱れていないことが分かった。つまり先ほどの妙に生々しい光景は夢だったと言う訳で、俺の貞操は無事だと言う訳だ。だが部下とそういった関係になっていないという安堵と同時に、あんな夢を見てしまったという罪悪感が襲い掛かってくる。

 

「・・・はぁ。最低だな、俺」

 

俺みたいな駄目な奴を待っていてくれた優しい娘たちを夢とはいえ邪な気持ちで見てしまっていた。これほどまでに自分をぶん殴ってやりたい気分になったのは久しぶりだ。いや、いっそ一発眠気覚ましの意味も込めて殴るか。

俺はゆっくりと拳を上げ、頬を殴る準備をする。そしてその拳を自分に向かって振り下ろそうとした時、何かに俺の拳が受け止められた。

 

「一体どういうつもりですか?」

 

驚いて声の主に目線を向けるとそこには山城の姿があった。なぜ彼女がここにいるんだ、という疑問があったがそれ以上に彼女の瞳が一瞬光を失ったように見え少し嫌な汗が滲む。

流石に夢のことを話すわけにもいかないので「少し眠気を覚まそうかなと思ってな」と俺はできる限り平静を装って山城に答えた。

 

「・・・そうでしたか。まぁあまり身を傷つけるようなことはしないでくださいね?心配しますから」

 

「あ、あぁ分かった。これからは気を付けるよ」

 

「そうして下さい。あ、それと寝ている時とても唸っていましたが悪い夢でも見ていたのですか?」

 

おっとその話題は不味い。一概に悪い夢とは言い切れない気もするが・・・いやあれは悪い夢だ。とはいえそのままの真実を山城に伝えるわけにはいかないので適当な言葉で誤魔化すことにしよう。俺は化け物に追われたのだとか何とかと典型的な悪夢らしいことをでっちあげ山城に伝える。彼女は終始疑わしい目で見ていたが何とか納得してくれた。

 

「ま、まぁ夢の事はこの位にして!!そういえば山城はどうしてここに居るんだ?」

 

これ以上深掘りされないうちに話題を無理やりに変える。

 

「どうしてって今日の秘書艦が私だからですよ」

 

Oh・・・そうだった。というか起こしに来ている時点で察するべきだったな。俺は苦笑いしながら「それもそうだ。すまない」と言って布団から出て立ち上がる。山城は呆れたような顔をしながらもすぐに着替えの服を持ってきてくれる。俺がその服を受け取り着替えようとすると山城は気を利かして部屋を出て行く、あまり待たせるわけにもいかないのでささっと着替えを済ませて声を掛けた。

 

「着替え終わったみたいですね。では朝食にしますか?」

 

「あぁ、食堂に行こうか」

 

「分かりました。まだ混雑する時間では無いですが一応急ぎましょう」

 

「・・・・お腹減ってるのか?」

 

どこか急いでいるように見えたので少し意地悪な質問をしてみると、山城は動きを止めてこちらに引きつった笑みと怒りが混ざったような表情をしながら振り返る。触れない方が良かったところに触れてしまった後悔する俺に彼女は問い掛ける。

 

「そんなに食い意地張ってるように見えますか?」

 

「滅相もございません!」

 

その問いに俺は全力で首を振ってこたえる。そんな様子に呆れ果てたのかはたまた元よりそんな気にしていなかったのかは分からないが、溜め息を一つついた後に「行きますよ」と食堂に向かい始めた。勿論俺もすぐ後について食堂へと向かう。

 

「はぁ、不幸だわ」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

食堂に着くとまだ朝早いこともあって艦娘たちは皆眠そうな顔で食事をしていた。こんなに早く起床したのは久しぶりでこの光景を見るのも何だか珍しく感じる。まぁいつもこの時間に起きれば見れる光景なのだとは思うんだけどな。

 

「あら山城おはよう、それに提督もおはようございます」

 

食事を持って席を探していると同じく今から朝食なのであろう扶桑が声をかけて来た。

 

「おはようございます扶桑姉様」

 

「おはよう。扶桑も今から食事なら一緒に食べるか?」

 

「よろしいのですか?」

 

「ん?あぁ、俺は別に構わないぞ。それに山城も扶桑と一緒の方が良いだろ?」

 

「・・・えぇ、そうですね!私も姉さまと食事を共にしたかったです!」

 

山城の奴どうしたんだ、いつもなら率先して扶桑にアプローチかけるのに今日は調子でも悪いのか。気のせいだとは思うがどことなく表情が引きつってるようにも見えなくも・・・・いやそんなことは無いな。普通に嬉しそうな顔してるわ。・・・多分

 

「そういう事でしたら私もご一緒させていただきます」

 

「おう、っとあそこにするか」

 

都合よく端から3人分の席が空いていたのでそこで食事をすることに決めた。並び順は端から俺 扶桑 山城の順番だ。山城は扶桑の隣が良いだろうし、俺も女の子二人に挟まれるよりかはこっちの方が気が楽だからな。

 

「ではいただくとするか」

 

今日の朝食はトーストにベーコンエッグとサラダだ。朝食はだいたいこのセットを頼むのだが、これがまた旨いのだ。一体自分で作るのと何が違うのかは分からないが、明らかにここで食べる物の方が美味しいんだよなぁ。

トーストにベーコンエッグを乗せながら何で間宮さん達が作る料理はどれもうまいんだろうなぁと考えていると、不意にちょんちょんと肩をつつかれハッと正気に戻り隣を向く。

 

 

「ど、どうしたんだ扶桑?」

 

そう聞くと扶桑は少し恥ずかしそうにしながらもおずおずと尋ねた。

 

「あの、良ければ提督の食べている物を食べてみたいのですが、少し頂いてもよろしいですか?」

 

突然の申し出に困惑していると、その様子を見て扶桑が少し残念そうに「駄目、ですよね」と呟く。俺は慌てて駄目な訳じゃないと扶桑に伝えるが、一体急にどうしたのだと問い返した。

 

「その、提督は良く同じものを食べていらっしゃるのでそれで少し気になってしまって・・・」

 

なるほどそういう事だったのか。まぁそういう事ならとトーストを小分けにし、その上にベーコンエッグを乗せて扶桑に差し出す。

 

「ありがとうございます。ではいただきます」

 

扶桑はその差し出したトーストを俺の手から受けと・・・ることは無くそのままパクリと食べた。あっ若干指も食われてる。・・・・じゃなくて!!?

 

「な!?ふ扶桑さん?!一体何をっ・・・!!」

 

「ふふ、これは美味しいですね。提督がいつも食べているのも納得です」

 

俺は慌てて手を引っ込め、半パニック状態で扶桑を見る。しどろもどろになっているこちらとは逆に彼女は満足そうに口に手を当てこちらに微笑みかけて来た。その笑みにドキッとしたのは内緒だ。恥ずかしさからもう彼女の方を見ていられなくなったので食事を再開しつつ、やんわりと注意を促す。

 

「あ、あまりこういうことは・・・その、俺も恥ずかしいし」

 

そこまで言った所で突然バンッと机を叩く音が言葉を遮った。急に大きな物音を立てられたことで身体が跳ね上がり、輪をかけて恥ずかしさがこみあげてくる。そんな恥ずかしさを誤魔化そうと音を立てた本人をキッと見たが、見た瞬間に表情をすぐに元に戻すこととなった。

 

だって山城さんガチギレしてるっぽいんだもん。

 

「・・・執務室に戻りますよ」

 

「えっあっまだ食事が「も・ど・り・ま・す・よ!!」ハイ」

 

こうして俺は半強制的に山城に執務室へと連行されてしまう。それを見ていた艦娘達は触らぬ神に祟りなしとでも思っているのか強制連行される俺をじっと見送るだけだった。こうなった元凶であろう扶桑も「山城、頑張るのよ」なんて言っている。

 

扶桑との距離が近すぎたからってここまでするか。ほんと相変わらずのシスコンぶりだ。だが、それが確認できたのは良かった、数年経って皆随分と過保護になってしまっていたからな。山城くらい変化が少ないと逆に安心するというものだ。それに彼女なら数日前に思いついた鎮守府の外に出るのにも協力してくれるだろう。

 

・・・取り敢えず執務室に戻ったらそれとなく相談するか



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