渡界者が行く(ちょっと再開) (完全怠惰宣言)
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if~あり得たかもしれないストーリー~
EPISODE G


ONE PIECE STAMPEDE公開記念


お金がもうありません

 

それは船の金庫番であるビビの一言が始まりだった。

 

偉大なる航路(グランドライン)を走る一艘の船「サウザンド・サニー号」。

言わずと知れた麦わらの一味の船であり大事な仲間である。

朝日が上がり、今日も一日元気よく過ごすために皆が思い思いに行動を始めていた。

 

朝食の後片付けに勤しむコック・サンジ。

そんなサンジのお手伝いをしている船医・チョッパー。

己の信じる道のために邁進する剣士・ゾロ。

今後の航海のためにログの確認をしつつ、今までの航海データをまとめる航海士・ナミ。

サニー号及びSDS(ソルジャードックシステム)の整備点検に精を出す船大工・フランキー。

その傍らで手伝いをしている狙撃手・ウソップ。

考古学書を読みながらも今後に不安が募る考古学者・ロビオ。

甲板でバイオリンのチューニングをしている音楽家・ブルック。

特等席で遥か先の目標を目指す夢を見ている船長・ルフィ。

 

そして、一味の生命線ともいえる金庫番、可能性の欠片と言われる王女。

蝶の羽ばたきにより、再び船に乗り込んだビビ。

彼女の仕事である一味の財務状況把握のために大切な大切な金庫を開けた次の瞬間。

サニー号に彼女の悲鳴が木霊したのは。

そして、冒頭に戻るのであった。

 

「昨日の島で買い込んだ食糧、衣類、サニーの修繕材料、トニー君のお薬、私たち女性の必需品etc...以上を持ちまして金庫の中身が底をつきました」

 

帳簿をダイニングテーブルに広げ収支報告をするビビの顔はアラバスタの悲劇を思わせるまでに苦痛で歪んでいた。

 

なんだと、おいお前ら

 

とりあえずお金が無いことは理解できたルフィは全員を見回すように立ち上がった。

 

船長として、前々から言おう言おうと思っていたけどな

 

それは仲間を攻めなければならないという苦境が故かルフィにしては珍しく苦渋をのぞかせる顔つきだった。

 

お前ら、金遣いが荒いんだよ

 

その時、船内の音が死んだように聞こえなくなった。

数秒後、”何か”を殴る蹴る音が船内から聞こえてきた。

 

「「「「「「9割方お前の”食費”だよ」」」」」」

「この2年間で胃のキャパシティーも上がりやがって」

「あたしたちが、どれだけ苦労して切り詰めてるか。あんた、少しは考えなさいよ」

しゅ、しゅびば、しゅびばしぇん

 

クルー全員から怒られ流石にヘコムルフィをしり目に話し合いは続いていた。

 

「しかし、実際どれだけ持つんだ。とりあえずオレは酒さえあれば1週間は余裕だぜ」

「クッソマリモが。酒は今回そんなに補充してねぇんだよ。手前がバカスカ飲んじまうからな」

「つってもサンジよ、食料は十分にあるんだろ。最悪、釣りをすれば持つんじゃないか」

「でもねウソップ。昨日から”ログ”に変化が見られないの。次の島まで何日かかるかわからないし、あんたたちがつまみ食いするかもしれないし」

「ナミ、オレはそんな事しないぞ。それよりも実は島で買えなかった薬があったから今作ってるんだけど、それも底つきそうだしな」

「トニー君はお医者さんの鏡ね。それよりも私が計算違いしたかもしれないし。みんな、ごめんね」

「ビビが悪いわけじゃないだろ、ここ最近、ウチの一味に収入がなかったことも問題だしな」

「アウ、ロビオの言う通りだぜ。いかに出てく金を抑えても入る”モノ”がなければ減る一方だからな」

「ヨホホホホ、フランキーさんの言う通り、ここいらで何か収入になりそうなモノがないと我々総出で骨と皮になんてこともありそうですね」

「「「「「「「「ま、ブルックは皮がないんだけどね」」」」」」」」」

「皆さん、私のオチ言わないでくださいよ」

 

そんな危機的状況のはずなのに笑い声が木霊する船の一室。

結局のところクルー全員が船長であるルフィを信じてここまで歩んできた”家族”なのだと認識させられる光景だった。

 

「あれ、そういえばルフィは」

 

だからだろうか。そんな船長がこの場にいないことに誰も気が付かなったのは。

 

 

ところ変わり船長室にて何かを探すルフィ。

あれでもない、これでもないとせっかくナミが整理してくれた部屋を荒らしまわり目的の物を探していた。

 

「おっ、あったあった」

 

ルフィの右手には羅針盤のような物が握られていた。

そしてそれは”黄金”で作られていたのであった。



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EPISODE GO

ただただ暑い。
皆さん、熱中症には気を付けましょう(経験者談)


「なぁなぁ、ナミ。“これ”使えるか?」

 

クルー全員で今後の金策に頭を悩ませていた時だった。

いつの間にか姿を消していたルフィが“何”かを握って戻ってきた。

一味の頭脳担当で航海士であるナミに手渡したのは全てが“黄金”で出来た羅針盤だった。

何気なく渡されたナミはその手の重量から“これ”が純金であることを瞬時に見抜いた。

 

「えっ、ちょちょちょちょっとルフィ。“これ”は何なの」

 

動揺のあまり声とてが震えているナミを尻目にそれはもう暢気に御茶を啜り、煎餅をかじる船長ルフィ。

そして、さも当たり前のように爆弾を放り投げるのだった。

 

「あぁ、テゾーロ“さん”の拠点?だったかな、へのゴールデンポースってやつらしいぞ、エターナルポースみたいな奴だって言ってたかな」

 

再び船内から音が消えた。

ただし、ルフィのイッシシシシシという特徴的な笑い声が代わりにこだましていた。

 

「ル、ル、ル、ル、ル、ルフィさん。その“拠点”の名前は解りますか」

 

思わず丁寧語になってしまっているナミだが、クルー全員が同じ心境だった。

 

「おう、たしか“グラン・テゾーロ”って言ってたような気がする」

 

笑って答えるルフィとナミが気絶して椅子ごと後ろに倒れたのは当然の結果のように思えた。

 

「なぁなぁ、ロビオ。“グラン・テゾーロ”て何だ?」

 

一味最年少、知らないことを知ろうとする意欲と知識欲は人一倍高い船医チョッパーは、一味で最も知識を蓄えている考古学者のロビオに質問していた。

 

「そうだな、簡単に言うと”世界中のありとあらゆる娯楽が集まるオモチャ箱のような場所”であり、”世界政府が黙認している無法地帯と言う名の悪徳の集う都市”だろうな」

「?????どういうことだ。世界政府が黙認しているって」

そんなチョッパーの疑問に答えたのは“変態”麦わらの一味の古き善き父フランキーだった。

 

「おぅ、チョッパー。あそこはな“最良の七武海”の旗を掲げる“どんな悪人”だろうと受け入れちまう場所さ。たーだーし、“守るべきルール”を守らないやつらの末路は悲惨だかな」

「へぇー、そうなのか」

「えぇ、私も一度“彼”が主催する海賊島でのフェスに呼んで頂いたことがありますが、遠目から見た彼からは何処と無くルフィさんと同じ気配がしたのを覚えていますよ」

 

ヨホホホホホと特徴的な笑い声をあげながらチョッパー(末っ子)に補足をつけるブルック。

 

「じゃ、ブルックは会ったことあるのか、その“最良の七武海”に」

 

目をキラキラさせながら羨ましそうに声をあげるチョッパー。

その反対に、ブルックはとても残念そうな雰囲気を出していた。

 

「残念ながら、私も直接はお会いすることは出来ませんでした。私もお話ししてみたかったですね、“緋影絶刀”と」

 

ヨホホホホホと笑うブルックと豪快にコーラを飲み干すフランキー、七武海という単語にやな思いでしかないためか顔をしかめているビビ、興味ないとばかりに船首へと走り出したルフィ彼ら以外全員がその単語に絶句し、ナミが気絶しながらも頭痛を押さえる仕草をしたのは仕方がないことだろう。

 

それから数時間後、ナミが復活してからの行動は迅速だった。

ゴールデンポースの示す方角へと自らかじを取り、他のクルーが引くほどの高笑いを上げながらサニー号を爆走させた。

それは、補充したばかりのコーラ全てを使いきったといえば、そのすごさを解っていただけると思う。

そして、ついに麦わらの一味の前に目的の場所が現れたのだった。

 

「おぉおぉいナミ、もしかしてこのバカデッカイ島船がまさか」

 

一流の航海士であるナミの腕を信じていないわけではないがウソップは思わず声を震わせながら彼女へと振り返った。

 

「えぇ、“此処”こそが世界最大のエンターテイメントシティ。世界中のありとあらゆる娯楽が集う場所。私たちの目的地“グラン・テゾーロ”よ」

 

彼らの目の前には光輝き、黄金で彩られた巨大な島船が存在していた。

 

“グラン・テゾーロ”

 

ありとあらゆる娯楽と人間の欲が交錯する黄金の坩堝がそこには輝いていた。

なお、ナミの目がベリーマークになっており、口から漏れる笑い声が「ベーリベリベリベリベリベリベリベリ」となっていることに突っ込む勇気のある者は誰もいなかった。

 

「ホロホロホロホロホロホロ、案外速かったじゃねぇか“ルフィ”」

 

そんな、彼らの目の前に一人の女性が“浮かんでいた”。

 

「うぉーーーーーーーーーーー、メッチャクソカワユイィィィィ。ルフィ誰だこのレディは」

 

興奮のあまり何時もより余計に回転がかかるサンジ。

 

「おぉ、“ペローナ”2年ぶりだなぁ!」

「ホロホロホロホロホロホロ、やっぱりあたしの、そう“あたし(・・・)”の“旦那”の勘はよく当たるな」

 

朗らかに笑う彼女を様々な感情で見上げる麦わらの一味。

 

アーベン海賊団4番船偵察部隊大隊長

 

“クイーン・オブ・ゴースト”

 

“アーベン・P・ペローナ”はそんなことを一切気にすることもなく優雅に空を舞っていた。



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EPISODE GOLD

「皆様、ようこそ”グラン・テゾーロ”へ。当カジノ都市の運営を任されております副支配人の”ギルド・ステラ”と申します」

 

珍しくルフィが率先してドレスコードを整え、オレ達全員が下船し麦わらの一味が全員集合した。

その時、オレの前に”女神”が現れた。

 

シックな黒いパーティードレスを夜空と例えるなら彼女の映える明るい黄金の髪はまるで天の川。

 

淡雪を思い起こさせる真っ白で汚れない白磁の陶器や真珠を思わせるきめ細やかな肌。

 

この世の全ての海(オール・ブルー)から写し取ったと言われても謙遜無い煌めく青色、アクアマリンの煌びやかな瞳。

 

この世の全ての美を詰め込んだと言われても納得してしまいそうな”女神”が”オレ”に微笑みかけてくれていた。

 

「初めまして、マドマーゼル。あなたのような素敵なレディに出会えるなんてなんて素晴らしい日でしょう。

 私、麦わらの一味にてコックをしております”黒足”のサンジともうします」

 

気が付いたらオレは”女神”にバラの花束を献上していた。

 

「あら、素敵な騎士(ナイト)様。バラをありがとうございます」

 

そう言って女神はオレの献上した花束を受け取ってくれた。

これはつまりイケル(・・・)気がする。

 

「サンジ、ステラ”さん”は止めとけ。あとお前の後ろも見てみろ」

 

ルフィが何か言っているが、知ったことか恋はいつでもハリケーンなんだよ。

 

「おい、小僧」

 

そう言われて肩を思いっきりつかまれたオレは、女神との合瀬を邪魔する大罪人に文句を言ってやろうと思いっきり蹴りを叩きこんでしまった。

しかし、オレの蹴りは黄金の籠手で覆われた左腕に阻まれその糞野郎と対峙する形になった。

 

「当カジノ都市の運営を任されております支配人の”ギルド・テゾーロ”と申します。オレの女(うちの家内)に何か御用でしょうか」

 

 

凪の帯(カームベルト)

 

「偉大なる航路」の両脇に沿って存在している大型海王類の巣でもある無風海域を一艘の海賊船が蛇に牽かれて爆走していた。

 

「なぁ、“ハンコック”よぉ。今から行っても間に合わないから諦めろよ」

「黙れ、貴様がオルビア達の“夫”で妾に“男のいろは”を教える者でなければ今すぐ石にしてやるところなのだぞ」

「だーかーらー、お前の”能力”オレに効かねえし。それに、“此処”から“グラン・テゾーロ”までどんなに急いでも1週間かかるから。絶対に長居しないからルフィは」

「あぁぁぁぁぁぁんルフィ、そなたの愛妻が今行くぞ」

「聞いちゃいねぇし、この恋愛処女帝」

「何をモタモタしておる。早う進まぬか」

 

そんな船首には一組の男女が悠然と立っていた。

夜空よりも黒い艶やかな黒髪、青空に浮かぶ雲が嫉妬するほどに白い肌、百花繚乱の花があまりの麗しさに一目ぼれしてしまうと言われるほどに艶やかな唇。

世界中にとどろく美貌と戦闘力、薔薇のような女性と誰かが例えた美の化身。

 

”海賊女帝 ボア・ハンコック”

 

風に棚引く自身を象徴させる紅の髪、その髪から覗く翡翠の瞳、そして隣にいる恋愛処女帝(ボア・ハンコック)の暴走に頭痛を覚える長身の男性。

女性の相棒ともいえる蛇のサロメに肩を叩かれ窘められるその姿に九蛇海賊団の船員からも憐みの視線を一身に受ける七武海の苦労人

 

”緋影絶刀 アーベン・D・リヒター”

 

二人の七武海を乗せた九蛇海賊団の海賊船は現在、グラン・テゾーロに向けて全速力で”偉大なる航路”を逆走していた。

 

「リヒター、そなたのナワバリなのだから少しは気を利かせてルフィを引き留めるなど手伝ったらどうなんじゃ」

「いや、ルフィが”ゴールデン・ポース”を起動させたの感知したテゾーロから連絡入れたのに取り次がなかったの自分じゃん」

「ウルサイ、そうしたら其方が妾に直接言いにくれば良いではないか」

「会いに行っても門前払いだったんだろうが、文句は受け付けん」

 

ムキャー、フシャーという擬音が聞こえてきそうな言い争いをBGMに船員たちは船を最大稼働最速全力で船を動かしていた。

 

 

「いやはや、よく来たなルフィ。ここまで成長するとは流石に船長が太鼓判を押した男だ」

 

ピンクのスーツにいたるところに黄金の装飾が施された大柄の男性”ギルド・テゾーロ”。

 

「本当ね、ルフィの成長ぶりは船長だけが一人勝ち状態だったものね」

 

ステラが昔を思い出し、腕白小僧のルフィの印象が抜けきっていないのか笑いながらも目の前に現れた青年に微笑んでいる。

 

「ホロホロホロホロホロ、今や”最悪の世代”の代表格になっちまったしネームバリューも相当だしな」

 

ペローナはこの中でただ一人、2年前にルフィと再会していたためか逆にこの2年間の成長ぶりに驚かされていた。

 

「おう、テゾーロさんお久しぶりです」

「テゾーロで構わんよ。それで、ウチに来たと言うことは」

「いや~、今後の資金が底つきそうでな。此処で一攫千金ってことになってな」

 

朗らかに進む会話を外から眺める麦わら一味。

前々から船長の異常な交友関係に度々驚かされてきたが、今回は更にぶっ飛んでいた。

 

「掛け金は以前、君が預けた海賊バンクに有るから後で“バカラ”と一緒に確認に行けばいい」

「おう、解った」

「では、“麦わらの一味”の皆さん。存分に楽しんでいってください」

 

テゾーロがそう宣言するように笑顔で締めた。



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渡界者は行く
巡る渡界者


血界が行き詰って先に進めないとボーっとしてたら書けちゃったんです。
反省はしていますが後悔はしていません。
時間軸がめちゃくちゃですがツコッミはなしの方向でお願いします。

追記(4/19)
主人公の異名を変更しました。


「また、"奴ら"がやらかしてくれました」

 

海軍本部大会議室において開かれた会議。

今回の議題はある”一味”に対してだった。

 

「我々、海軍の威厳を失墜させる大事件。新世界で8つの支部と海賊との癒着の暴露。それに伴う准将と船長の殲滅、そして領域の島民たちからの支持を得て縄張りを拡大させました」

 

会議の場に集っているのは全員が将校の地位にいる存在たちだった。

中でも会議室の奥に位置する席に座る過激派で知られるこの男の怒りは相当なものだった。

 

「こんなことばかり最近起きちょるの。海軍の恥さらし共め

 

サカズキの怒りに呼応するかのように右腕が溶岩と化し机を燃やし始めた。

 

「まぁ~、でもよ。こいつ等がこうやって行動してくれるおかげで、悪事の芽が潰れていると考えれば良いんじゃないの」

 

サカズキの対面に位置する席にダルそうに座っている長身の男性が声を上げた。

 

クザン、貴様それで良いと思うちょるんか、”奴ら”はわし等の面子を潰しちょるんぞ

 

クザンと呼ばれた男性はそんな怒号もどこ吹く風と言わんばかりに眠そうに欠伸をしていた。

会議室に轟くサカズキの怒声に出席した新参の准将たちは自分に向けられている訳ではないと分かっているその怒りの余波に息苦しそうにしている。

そんな中でも飄々とした態度で出された酒を煽っている男がいた。

 

「いやぁ~、困ったね~。あっしゃ二人の意見どちらにも賛同できる部分があるもんでね~。だからこそのわし等の招集だと思ったんですけどね~」

ボルサリーノ、お前もクザンと同じ意見ちゅうことか

「だから~、あっしゃ二人の意見どちらにも賛同できる部分があると言ってるでしょう~。

今回の件で”やつら”の名声はさらに高まりましたからね~、センゴクさんも既に何か手を打っているでしょうし~」

 

ボルサリーノの発言に会議室にいるすべての存在の目が上座に座る男に注がれた。

彼は盛大な溜息をつくと頭を数度振るい立ち上がった。

 

「ボルサリーノの言う通り、既に手は打ってある。というよりも以前から”奴”には連絡を取っているのだが、今回は何としても”奴”にはこの提案に乗ってもらわねばならんからな」

 

 

 

新世界 前半の海 とある無人島

 

”とある海賊団”が停泊してから1週間、彼らは宴を夜通し行っていたためか疲れ果てて眠っていた。

そんな中、とある男が急に目を覚ました。

 

「船長、ワシの”網”に反応でっせ」

 

大天狗(だいてんぐ)”ビュッフェ・ブランチ

懸賞金1億7千万ベリー

 

その異名の通り、天狗の様に高く長い鼻と赤い肌が特徴の男は自身の能力で張った”網”に船の形を感知して一番奥で気持ち悪そうに寝ている船長へと声をかけた。

 

「うるせえぞブランチ。お前の無駄に伸びたその鼻斬り飛ばされたいのか」

 

”ゴーストプリンセス”ペローネ・ペローナ

懸賞金200万ベリー

 

ゴスロリ風の衣装を身にまとい、プリンセスらしく愛らしい容姿をした少女が不機嫌そうに船長と呼ばれた男の背後から姿を現した。

不機嫌そうな彼女が左手を上げると周囲に転がっていた無数の剣がまるで意思を持っているかのように浮き上がった。

 

「・・・・・・・・オル・・・・ヨ」

「「「「何を」」」」

 

”オハラの悪魔”ニコ・ロビン

懸賞金3800万ベリー

 

同じくシックな色調に着せられた感満載のゴスロリ風の衣装を身にまとった艶やかな黒髪を下した、大人の女性になる途中の独特の愛らしさを感じさせる少女。

そんな彼女はペローナの現れた更に奥から顔を出し、人も殺せそうな目線をブランチへと向けたと同時に何かを握りつぶすリアクションをした。

 

「二人とも、ブランチにあたらないの。鎌足あなたも船長を起こすの手伝って」

 

知識の魔女(ラプラス)”ニコ・オルビア

懸賞金9200万ベリー

 

更にその奥からカーディガンを羽織り、肌を隠すように起き上がる女性。ロビンが大人になったらこんな女性になるだろうと思われるのと同時に大人の色香が周囲にほんのりと香るようであった。

そんな彼女は不機嫌さを一切隠そうとしない少女たちを窘めると向かいに座っている女性(?)に声をかけた。

 

「はいは~い。ほら、船長早く起きて。お酒弱いのにあんな飲み方するからよ」

 

大鎌(おおかま)本条(ほんじょう) 鎌足(かまたり)

懸賞金:9650万ベリー

 

ワノ国特有の着物を着た愛らしい女性(?)が船長と呼ばれている男を揺さぶっている。

彼女(?)も異変を感じ取っていたのか既に意識を戦闘可能状態まで戻していた。

 

「デレシシシシ、確かにそうだでよ。船長早く起きるでよ」

 

大戦鬼(だいせんき)”ハグワール・D・サウロ

懸賞金:2億9800万ベリー

 

彼らの後ろ小高い丘と間違いそうな大布から起き上がり、船長と呼ばれている男を起こすのに加わった巨人。

一般的な巨人族に比べると2周り程小さいが一味の中ではずば抜けた巨体を誇っている。

 

彼らの視線を一身に受ける上座に位置する場所に座り直した男性。

鋭い目付きと棚引く長髪といった外見の妖しさに目が行ってしまうが、その佇まいからは歴戦の王者の風格を匂わせていた。

そして、彼は徐に懐から眼鏡を取り出し掛けなおし、手で口を隠すような仕草をした。

 

「・・・ヴェ。

 ・・・・ヤッパ、ムリ。

 ・・・・・アタマイタイ。

 ・・・・・・キモチワルイ。」

 

その瞬間、その場にいた全員がコントのようにすっ転んだのは言うまでもない。

 

 

緋影(ひえい)”アーベン・D・リヒター

懸賞金:5億ベリー

 

 

 

 




キャラクターシート

アーベン・D・リヒター
異名:緋影 所属:アーベン海賊団 立場:船長
懸賞金:5億ベリー
外見モデル:リヒター・アーベント(出典:テイルズ オブ シンフォニア - ラタトスクの騎士 - )
好きなもの:緑茶、飯に合うおかず 得意料理:家庭料理なら大半可能

備考
本作の主人公。
とりあえず気が付いたら海の上に小舟で浮いていた存在。
好き勝手生きてきた結果が現在の海賊団結成につながっている。
おそらく、この世界において類を見ない下戸。
細かい設定は後々作っていく方向で


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渡界者に会おう

続きました。
あとがきにはキャラクターシート等を載せていく予定です。


「ここか、”彼ら”がいる島っていうのは」

 

紫髪を持つ筋骨隆々な身体の巨漢が目視した島を前に不敵に笑っていた。

彼はこれから、”とある任務”のために目標となっている島へ上陸しなければならない。

 

「”ゼファー”先生、彼らはこちらの要請に素直に従ってくれるでしょうか」

 

そんな彼の後ろから一人の女性海兵が姿を現した。

今回の任務に同行を許可されていることから、確かな実力の持ち主であると思われるがそんな彼女すら不安に思わせる相手なのだろう。

 

「なんだ”ヒナ”、ビビってるならお前は船に残ればいいだろ」

 

ヒナと呼ばれた海兵の後ろから白髪の男性海兵が姿を現した。

 

「な、違うわよ”スモーカー”君。心外よ、ヒナ心外」

「だったら、グダグダ言ってないでさっさと上陸しちまおうぜ先生」

「スモーカー君、人の話を聞いているの」

「2人とも止さないか、ここは敵地だぞ」

「(コクコク)」

「あと”ロシナンテ”、淹れ立てのコーヒーが零れそうだぞ」

「・・・・すまない、”ドレイク”」

「あなた達も私の話を聞きなさい」

 

部下の漫才みたいなやり取りに頬を緩めそうになりながら上陸予定の砂浜に目を向けるゼファー。

そんな、彼の前に突如として奇妙な存在が現れたのである。

 

「ホロホロホロホロホロ、なんだお前ら。あたし達に何か用か」

 

それは宙に浮かびこちらを見て笑っている少女だった。

 

「”ゴーストプリンセス”、やはり“緋影”はここにいるのだな」

 

”ゴーストプリンセス”と呼ばれた少女、ペローナの存在を確認し一安心したゼファー。

彼女が現れたことでこの島に訪れたことが無意味にならずに済んだからである。

 

「なんだ、船長に用事か」

「そうだ、オレは海軍大将ゼファー。君らの船長である”アーベン・D・リヒター”に話が合ってきた。是非お目通り願いたい」

 

ゼファーがそう言うと目の前に浮かぶペローナが目を閉じ、姿をぼやけさせた。

誰かと喋っているようにも見えるその姿に軍艦上の海兵たちにも緊張が走った。

そして、1分ほど時間が過ぎたころだった。

 

「・・・・解った。船長からOKでたしあたしが案内してやる」

 

どうにか会うことは出来そうだと周囲に安堵の空気が漂う。

 

「すまない、それでは「ただし

 

いざ上陸をしようとした時、ペローナの力強い声に動きを止められた。

 

「上陸を認めるのはゼファーも含めて5人までだ。それ以外の奴らは船で待ってろ」

「んだと、ふざけんじゃねぇぞ海賊風情が」

「文句があるなら来なくていいぞ。その方があたし達は都合がいいしな、ホロホロホロホロホロ」

 

ペローナの発言に怒りを露にするスモーカー。

その様子をバカにするように上から眺めているペローナ。

彼女の特有の笑い声がスモーカーの怒りにさらに拍車をかけており、今にも戦闘になりそうな雰囲気になっていた。

 

「やめろスモーカー。今回はこちらが窺った側だ、理不尽でない限り彼らに従うのが道理だ」

 

突如、静かにしかし怒気を孕んだゼファーの声にスモーカーも彼と対峙していたペローナも委縮し黙り込んだ。

 

「それでは、ペローナ君少し時間をもらえるだろうか、こちらの上陸態勢を整えたい」

 

先ほどの怒気が嘘であるかのようにペローナに対して笑いかけるゼファー。

その顔に委縮し涙目だったペローナも多少は持ち直したようであった。

 

「・・・・15分たったら案内を寄越すから、そいつに付いて来い」

 

そう言うと姿が徐々に霞んでいき、最後には幻であったかのようにペローナの姿は消えた。

 

スモーカー、貴様何をしたか解っているのか。貴様の不用意な発言で今回の任務を失敗させるつもりか

 

スモーカーの暴走とも取れる行動にドレークと呼ばれていた海兵が怒りを露にして食いついてきた。

今回、彼らに与えられた任務の重要性を考えると彼の怒りは至極当然ともいえる反応であった。

 

ドレイク、だったら何か。今回の任務っていうのはあんなガキに見下されなきゃならないような任務だっていうのか

そういうことではない、今回の任務の成否でこの海の平和がどうなるか左右されるんだぞ。多少の屈辱は甘んじて受け入れるべきだと言っているんだ

海兵が海賊風情に、ましてあんなガキに媚び諂えって言いたいのか手前は

 

二人の言い争いはヒートアップしていくばかりで終着点が全く見えないものだった。

互いに自分と相手の主張が間違っていないことは理解できているから尚のこと折り合いをつけずらいのだろう。

 

いい加減にせんか、お前たち

 

互いに手が出そうになっていたその時、ゼファーの怒声が軍艦中に響いた。

 

「彼との面会まで行きついた。ここからは事前に決めていた通りオレとスモーカー、ヒナ、ドレイク、コラソンの5人で行くこととする。他の者は別命あるまで船で待機していろ」

 

ゼファーの有無を言わさない迫力に今回同行した全海兵が縮こまってしまっていた。

 

「お前たち、返事は」

「「「「「「「「「「はっ、ゼファー大将」」」」」」」」」」

 

それから数秒の後、上陸に向けて準備が始まった。

 

 

「せ゛ん゛ち゛ょ゛う゛こ゛わ゛か゛っ゛た゛よ゛~」

 

涙を滝のように流したペローナがリヒターにコアラの子供のように抱き着いて大泣きしていた。

ゼファーの怒気にしっかりと当てられてしまっており、顔面ヤクザのスモーカーが本当に怖かったらしい。

ゼファーへの伝言を終えて本体に戻ってきてからずっと泣きっぱなしなのであった。

 

「はいはい、よく頑張ったなペローナ。偉かったぞ」

 

まるで赤子をあやすように背中をポンポンと叩くその姿に船員がほっこりとしかけている。

 

「ペローナ羨ましい」

「ロビンもいい加減落ち着きなさい。

 ・・・・・・でも確かに羨ましい(小声)」

「海軍も大人げないわね。まだ子供のペロちゃん威嚇するようなアホを連れてくるなんて。

 ・・・・・・でも本当に羨ましい(小声)」

 




キャラクターシート

ビュッフェ・ブランチ
異名:大天狗 所属:アーベン海賊団 立場:料理長
懸賞金:1億7千万べりー
外見モデル:天狗のブランチ(出典:トリコ)
好きなもの:雷撃ウナギの蒲焼 得意料理:全般(特に海鮮料理)

備考
外身・中身共にトリコのブランチ。
この世界では超人系エネエネの実を食べた発電人間となっている。
食べるものにも困る幼少期を過ごしたため人一倍”食べれる”大切さを知っている。
元々は天竜人に憧れる世界政府加盟国の一国お抱えの料理人の一人だったが、ある日自分の料理を一口も食べずに捨てられている現場を目撃し、ブチギレてしまいそのまま王様をぶん殴ってしまい国を追われた。
紆余曲折を経て、リヒターに出会い料理をふるまった際に碌な材料でもないのにすべて平らげて料理人になって初めて「美味かった」と言われ自分の原点を見直し、リヒターの船の料理人となった。


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渡界者と黒腕

平成最後の投稿になるのかな?


時間はあっという間に過ぎ約束の15分後となった。

砂浜にはゼファー、スモーカー、ヒナ、ドレイク、ロシナンテの5人が立っていた。

 

「大将黒熊(くろぐま)、準備整いました」

 

生真面目なドレイクが声をかけた。

すでに任務地に降り立っているという心構えからだろうか、ゼファーが大将の地位に就いた際に贈られた「黒熊」の名を呼んでいる。

 

「おう、それじゃ案内役を待とうか」

 

そういって砂浜から見える森林を見続けるゼファー。

他の4人といえばどこか落ち着かない表情を浮かべてゼファーの後ろに立っていた。

すると、草木をかき分ける音が仕出し、その音が徐々に近づいてきているのに全員が気が付いた。

 

「誰か来るな」

「えぇ、案内役かしら」

 

育った環境故に気配に敏感なコラソンとヒナがいち早く気が付いたようであった。

 

「スモーカー、分かっているだろうが」

「あぁ、こっちから(・・・・・)は手を出さねえよ」

 

先ほどのこともあり互いに牽制しあっているドレイクとスモーカー。

そんな部下たちの成長を心では喜びながら向かってきている者に対していつでも戦闘が行えるように身構えるゼファー。

彼らの緊張が高まり、誰かが唾を飲み込んだその瞬間だった。

 

「・・・・・・がぅ」

 

愛らしいトラのぬいぐるみが姿を現したのは。

恐ろしく達筆な字で『案内役』と書かれたプラカードをぶら下げて。

 

「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」

「あら、可愛い」

 

ゼファーの背後から男3人の驚きに満ちた声と女性の朗らかな感想が聞こえたのは同時だった。

 

 

「船長、トトラが砂浜についたよ」

 

やっと泣き止んだペローナの能力により案内役となった彼女のトラのぬいぐるみが目標地点に到着したのを確認した。

 

「そうか、そうしたらペローナ悪いけど遠回りのルートを通らしてくれ。ゼファー以外で”覇気”使いがいるかどうかブランチに調べさせる」

「解った」

「それはえぇねんけど、お嬢はいつまで船長の胡坐の上におる気なんや」

 

泣き止んだといってもまだ怖いらしくお気に入りの場所から離れようとしないペローナを揶揄するブランチ。

周囲からもほっこりとした視線を送られて、いつもなら癇癪を起こすペローナもそれを無視してリヒターを独占している。

当のリヒターも背中をロビンの背もたれにされ、右腕をオルビアに抱き着かれ、左腕を鎌足に抱き着かれてハーレム状態になっている。

下っ端のクルーで羨ましそうに見ている奴らもいるにはいるが、毎回起きている大惨事を知っている面子からすれば船長が苦労して、自分たちの平穏が保たれるならば、後で船長による八つ当たりという名の地獄のしごきが待っていようと我関せずを貫くのが得策であった。

 

「お前ら後で覚えてろよ・・・・・・・。ブランチ悪いが”感電知”でわかる範囲丸裸にしてくれ」

「・・・・ほな、いきますか」

 

 

 

「(・・・・・・・見られている、イヤ感知されているな”こいつら”)」

 

異変を感じ覇気を展開し、ブランチの感知網に部下たちが引っかかっていることにゼファーは気が付いた。

 

「せんせ・・・黒熊大将どうかされましたか」

 

育った環境故に気配に敏感なロシナンテが違和感を感じていたからか、ゼファーの異変に気が付いたロシナンテにゼファーは声をかけられた。

 

「いや、なんでもない(敵意を感じないということは”こいつら”が覇気使いかどうかを確認している、てとこだろ)」

 

ゼファーがそのことを教えるかどうか悩んでいると案内役のトラのぬいぐるみが急に止まった。

数秒立ち止まると腕をより深い森林へと向けた。

 

「・・・こっちに行けということかしら」

 

ヒナの声が聞こえたのか首をものすごい速さで縦に振るぬいぐるみ。

 

「罠じゃないのか」

「・・・であっても行くしかないがな」

 

気性に似合わず作戦行動中は慎重な対応をするスモーカーと任務であれば進んで危ない橋を渡ってしまうドレイクのコンビを横目にゼファーは考える。

 

「(ここまでの道中あきらかに遠回りさせられていた。

  それは4人の情報を得るためだろう。

  気配が消えてだいぶ経つが攻撃の気配すら感じない)」

 

ゼファーとて”彼”に対する恩義さえなければ多少の無茶を通すことを考えたが、ここまでの経緯を考慮すると自分たちが攻撃される可能性は低いと考えてた。

何より、今回連れてきた4人は自分の部下の中でも特に成長率が高いメンバーだった。

 

「お前ら、行くぞ」

 

故に彼は決断したのだった。

 

 

 

「・・・・・・なんだ、ここは」

 

誰が呟いたのか、もしくは皆がそう想ったのか。

そこには想像していた光景とは別の姿があった。

泉の畔に野営として作られたであろう複数の天幕。

真っ白なそれらは周囲に咲く花々の中にあって、より神秘そうに見えてしまう。

時おり漏れてくる女性達の声も合間って此処が海賊達が寝蔵としているキャラバンには到底思えなかった。

しかし、そこから聞こえてくる柄の悪そうな男達の声が海賊の象徴のように木霊し、不思議と安堵してしまった。

 

「船長達は奥の天幕でお待ちです、ご案内させていただきます」

 

クルーと思わしき女性に声をかけられたことでゼファーを含めた5人は意識を浮上させた。

女性の案内にしたがい、最も奥に位置する天幕へと足を進めた。

 

「ようこそ、“海軍大将”殿」

 

天幕の下、思い思いの場所に座る幹部と目されている存在達の一番奥に目的の人物は座っていた。

ハンモックチェアに腰掛けて、こちらを値踏みするような視線を向けるこの男こそ、今回の目標だった。

 

「はじめまして、“緋影”殿」

 

 

 




キャラクターシート

ペローネ・ペローナ

異名:ゴーストプリンセス 所属:アーベン海賊団 立場:アイドル(自称)
懸賞金:200万べりー
外見モデル:ペローナ(出典:ONE PIECE)
好きなもの:おにぎり(船長から初めて貰った食べ物) 得意料理:おにぎらず、クッキー

備考
原作に登場しているペローナ本人。
リヒターヒロイン。
ただし、モリアではなくリヒターに拾われたことで運命が激変した。
可愛らしい容姿をした少女だが、勝気でワガママ、かつ男勝りなお転婆娘。
一方、子供扱いされることを極端に嫌う。
ゴスロリ衣装を好んでまとっており、女性には好んで着せようとする(主な犠牲者は歳が近いロビン)。
リヒターとの出会いで最も影響を受けており、原作時間軸前にも関わらず能力が別物に進化している。


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渡界者、成る

時間があったからか、定かではないですか宜しくお願いします。


ゼファーにとって海賊とは二つの存在であった。

 

一つは「悪の象徴」。

 

彼らは己が欲を満たすために、罪もない人々を苦しめ、奪い、殺し、破壊の限りを尽くす。

日々、多くの罪もない多くの市民が悪逆の限りを尽くす海賊に脅え、明日の平和を願っている。

そんな奴らを捕らえ、少しでも長い時間市民が安心できる時間を作るために、”正義の英雄(ヒーロー)”となるために自分は海兵となった。

 

一つは「自由の象徴」。

 

何物にも縛られず、風のように気ままに、己が信念のために力の限り生きる。

時に周囲も巻き込み、笑顔を振りまく、不自由という名の鎖に束縛されることなく、精一杯笑い続けるために”今”に生きる。

正義という名の鎖に束縛され、時に不条理に従わねばならない自分ではできない、決して憧れてはいけない者たち。

 

「じゃ、早速で悪いんだけど本題に入ろうかい」

 

目の前の男は、いや目の前の男が君臨するこの海賊団は後者に分類される。

ゼファー達海兵は組織という型枠に無理やりはめられ、守らねばならないはずのモノに目を背けることもある。

しかし彼らは、そんな身勝手により世界に生まれた”悪”をつぶし、人々から賞賛を受けるも、それは己が我儘のための結果だと言い切る。

だからこそ、ゼファーを含めた現三大将全員が彼を認めたのだろう。

 

「大将黒熊、用件は何だい」

 

彼の瞳にはいったい何が写っているのだろう。

こちらの意図を全て見透かしているような瞳は自分が見てきた中でも最も澄んでいるように見えた。

もしかしたら、こんな提案をすべきではないかもしれない。

この提案は、彼らから“自由”を奪うに等しいモノだ。

それでも、”彼ら”の力が必要なのだとゼファーは自分に言い聞かせるのだった。

 

「率直に言わせてもらおう、”緋影”アーベン・D・リヒター、お前には”王下七武海”に加盟してもらいたい」

 

意を決して放たれた言葉は彼にどう届いたのだろうか。

 

 

「”オウカシチブカイ”?何だいそいつは」

 

初めて聞く単語にリヒターを含めたアーベン海賊団の一行は不思議そうにしている。

それもそのはず、これは世界政府が苦渋の末に決議した平和維持のための処置なのだから。

 

「王下七武海とは、世界政府によって公認された七人の海賊たちの総称だ。海賊および未開の地に対する海賊行為が世界政府によって特別に許されている。

 また、ありとあらゆる犯罪行為が合法化され、七武海に加盟した海賊は政府からの指名手配を取り下げられ、配下の海賊にも恩赦が与えられる」

「選定の基準は」

 

笑顔を崩さずゼファーと対峙し続けるリヒターの雰囲気にスモーカー、ヒナ、ドレイク、ロシナンテは飲まれそうになっている。

しかし、ゼファーに彼らを気遣う余裕は無かった。

 

「メンバーの選定には、他の海賊への抑止力となりうる“強さ”と“知名度”が重要視された。君は“強さ”・“知名度”ともに文句はないと判断されたのだ」

 

如何にゼファーが歴戦の戦士といっても、一言でも間違えれば自分たちは周囲の海賊たちによって排除されるだろう未来を幻視してしまいそうになる。

それほどの緊張感をもって勧誘は進められている。

 

「ただの若造にご苦労なこって、でも当然デメリットもあるんだろ」

 

そこらの海賊(クズ)なら二つ返事で承諾しそうなのだが、リヒターはしっかりとデメリットがあることを理解しているようであった。

 

「無論だ。まず、収穫の何割かを政府に納めることが義務づけられる。これは世界貴族への上納金に充てられる。

 次に、実施的に政府の監視・管理下に置かれる。如何に協力関係にあろうとも気を許す気はないという意思の表れととってくれて構わない。

 あたりまえのことだが、七武海を脱退・もしくは世界政府に対し非協力的だと判断され除名されると再度懸賞金が懸けられる」

 

ゼファーは戦場で戦う以上の疲労を感じていた。

それは宛ら、目の前に銃を突き付けられ続ける感覚に似ていたのであった。

 

「てことはだ、あんたらは協定決裂を理由に七武海の称号剥奪を行うことができる、というかそういう脅しをかけてくることも考えられるという訳だ」

 

リヒターのつぶやきに周囲にいるクルーが殺気立つのが分かった。

ゼファーは咄嗟に戦闘態勢に移行しようとする自身の体を押さえつけることに成功した。

だからこそ、この一味の異常性に気が付いてしまった。

多くの海賊を見てきたゼファーだが多くの海賊に共通して言えることがあった。

それは”野心”であった。

船長という頭を失ってもなお多くの海賊が存続し続けられている理由。

それは、前船長を超える野心を持った者によって纏まってしまうからだった。

しかし、この一味は何か違った。

先ほどのリヒターの発言を理解したその瞬間、全員から濃密な殺意が放たれた。この一味は”リヒター”という男に付き従うことを選んだ者たちの集団であることを理解させられた。

 

「確かに、そういったこともあり得るだろう。その時はオレたちを見限ってくれて構わない。

 お前たちには付き合う義理などないのだからな」

 

ゼファーのその発言をもってしても殺意が薄まることはなかった。

そんな時だった。

 

「フッ、クヒ」

 

リヒターが下を向いて何かを堪えている様な仕草をしたのは。

 

「ウ、クックククヒ、ックククフ]

「・・・・船長?」

「・・・・どうしたの」

 

リヒターの傍にいたロビンとペローナ。

二人は敬愛する男の異変に気が付くと顔を覗き込んだ。

 

「ウ、クックククヒ、あぁー無理。アハハハハハハハハハハハハハハ」

「・・・・・・何か可笑しいところでもあったか」

 

ゼファーほどの歴戦の戦士であっても何故ここで笑うのか理解できなかった。

それほどまでに、リヒターの行動は異常といえる。

 

「ブハ、あんた”馬鹿”なのか。そんな正直にいって”海賊”が承諾すると思ってんの」

 

嘲笑われている、と感じてしまいそうな態度だが、正面からリヒターの目を見てしまったゼファーは絶句してしまった。

それは、かつてこの海の頂点に立った男と同じ目をしていた。

 

「でもさ、大将さん」

 

後にゼファーはこの時のことをこう漏らしている。

 

「”世界政府”を信じる気は更々ないが」

 

”自分はあの時、歴史が動く音が聞こえた”と

 

「”あんた”を信じてやってもいいぜ」

 

世界が誰も知らないことだが。

 

「”王下七武海”その称号確かに受け取った」

 

後に「アヴラロッサの奇跡」と呼ばれることになる歴史の転換期と歴史上初となる「王下七武海」が生まれた瞬間だった。




キャラクターシート

ニコ・ロビン

異名:オハラの悪魔 所属:アーベン海賊団 立場:考古学者
懸賞金:3800万べりー
外見モデル:ニコ・ロビン(出典:ONE PIECE)
好きなもの:サンドウィッチ・甘すぎないケーキ・コーヒーに合う物 得意料理:煮物(船長に誉められたから)・パエリア

備考
原作に登場しているロビン本人。
リヒターヒロイン。
オハラの悲劇をリヒターによって乗り越えたことにより母と同等に依存しかけている。
現段階で後半の海に渡ったロビンと同等の技能を得ている。
最近の悩みは妹分のペローナの着せ替え人形状態になってしまうこと。


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転生者と大誤算

ありがとう平成


オレの名前は“ニコ・ロビオ”。

俗に言う“転生者”って奴だ。

死に様も、神様を名乗るオカマとのやり取りもテンプレ的に済ました。

そんなオレの人生は、ロビンが辿る筈だった人生とはかけ離れていた。

生まれは考古学者崩れの海賊が集う海賊島「カヒル」。

其処で一通り知識を貰い、ある程度“歴史の本文”を解読出来るようになったある日、島は海軍の一斉摘発で無くなった。

そして、世界の裏側に逃げ込むが懸賞金を掛けられることなく、賞金稼ぎとして生計を立てていた。

 

そんな過去を回想している「サラダ食べてONE PIECEの“ロビン”」の外見に成長してしまったオレは、今砂漠のど真ん中にあるカフェで紅茶を飲んでいた。

 

「それで、貴方の後任は見つかったのかしら“Mr.1”?」

 

そんなオレの目の前には、一人の女性が立っていた。

そして、それが誰なのかオレには瞬時にわかったのであった。

マンガでもアニメでも何回も見てきた存在なのだから。

 

「なんの話だったかな、“ミス・ダブルフィンガー”」

 

そう、オレの大好きな「ONE PIECE」に登場していた女性“ミス・ダブルフィンガー”がそこにいた。

そう答えると彼女は不機嫌そうに頬を膨らましてこちらを見てきた。

その仕種が剰りにも愛らしくて、ついつい笑顔を浮かべてしまった。

 

「今は、“ポーラ”よ。まったく、貴方が特例でボスのパートナーになるからって後任の「Mr.1」を探すように言われたって話でしょ」

 

そう、歴史の修正力というべきか、オレは今アラバスタにてB(バロック)W(ワークス)の副社長に昇進し、後釜を探していた。

 

「目星はついている。だが、君を任せるに値するか正直気が進まない」

 

そう、ポーラに伝えると彼女は驚いた様な顔をしていた。

 

「あら、あたしの心配をしてくれるのね。でも、私を侮らないで」

「君ならそういうと思ったよ」

 

お互い軽口を叩けるのは信頼の証、と割り切り残っていた紅茶を煽り飲み干した。

 

「それじゃ、これで」

「あら、どこにいくのかしら」

 

ポーラも意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見てくる。

 

「解っていると思うが、いくら”パートナー”といっても教えることは出来ない」

「・・・・そうね、なんせ我が社の社訓は」

「「”秘密”だから」」

 

 

”ボス”に指示されていたレインディナーズについたオレは手順に従い地下へと降りていく。

ポーラには言えないがオレは既にボスの正体を知っているのだ。

 

「クロコダイル氏、急ぎの用事とは何だい。こう見えてもオレは忙しいんだが」

「うるせぇぞ、ニコ・ロビオ」

 

原作知識ありきで推理と言って彼の正体を知ったことになったあの日以来、クロコダイルとは対等なビジネスパートナーとなっている。

 

「クソが、あの野郎。あの野郎のせいで計画を大幅に修正しなきゃなんなくなった」

 

そう言ってクロコダイルが読んでいた報告書の束を投げつけられ目を通していく。

 

「なぜ、あいつがあんな所にいたかはこの際どうでもいい。だが、この一件でダンスパウダーの製造と密輸ルートを新たに開拓しなきゃならなくなっちまった」

 

クロコダイルの怒りは相当なものでこちらから見ていても額に血管が浮いているのがよく分かった。

 

「で、オレを呼んだ理由を聞いていないんだが」

 

そういうと苛立たし気に舌打ちをし、オレを睨みつけてくる。

 

「今回の一件で計画を更に後ろ倒ししなければならなくなってしまった。

 その上、あの野郎のせいでこの国でのオレの評価が著しく下がってしまった。

 これからは、また”英雄”として活動して下地を作らなくてならなくなってしまった」

「そこで、オレは今まで道理使えそうな大臣たちをこちらに寝返らせればいいのかな」

「イヤ、その逆だ。お前にはスカウトマンとしての活動に専念してもらいたい。

 とりあえずはエージェントが固まるまではスカウトマンとしての活動を優先させろ」

 

そう言って葉巻に火を着けて煙を漂わせるクロコダイル。

そして、報告書に付随されていた新聞の一面に掲載された写真に目を奪われた。

そこには、オレという存在のためにこの世に存在しないはずの”女”が存在していた。

 

「あの糞野郎が、この国の歴史を調査できるように王に取り計らわれやがって」

 

そこには、コブラ王と固い握手を交わすオレの知らない七武海とその後ろに妖艶な笑みを浮かべる”ニコ・オルビア”と”ニコ・ロビン”親子が立っていたのだった。

 

「(誰だ、こいつは)」

 

原作コミック、アニメ、映画何れにも存在しなかった男の存在に恐怖を覚えた。

歴史の修正力によって今まで原作に準じて行動してきても生き延びてこれた。

なのに、今目の前にオレの知らない未知が存在していた。

 

「くそ、リヒターの野郎巧くやりやがったな。これでアラバスタに隠された古代兵器探しはあいつが先行した形になっちまったな」

 

クロコダイルの苛立ちに呼応するように、水槽の周囲にいたバナナワニの彷徨が聞こえてくる。

オレは無事にルフィの仲間になれるのだろうか?

 

 




宜しくお願いします、令和。


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渡界者出席する

初めまして令和。


リヒターが”王下七武海”となって十年余りが過ぎた。

当初は懸念されていた「アーベン海賊団」による裏切りもなく、世界は順調に回っていた。

 

「・・・・・クロコダイルの奴、馬鹿したな」

 

ここはとある無人島。

崖の上に立てたデッキチェアでリヒターは新聞を読んでいた。

号外としてニュースクーが運んできた内容は「クロコダイルの七武海称号剥奪」のニュースだった。

そして、もう一冊の新聞には世界経済新聞のスクープを凌駕するアラバスタで起きた”真実”が掲載されていた。

 

「・・・・・・はっ、ついに来たか”ルフィ”」

 

そこには、かつて短い時間だったがアーベン海賊団と共に過ごした少年が写っていた。

昔の面影を残しながら、一端の船長としての貫禄も見せる彼の顔は記憶よりも大人になっていた。

昔を懐かしみ柄にもなく黄昏ているリヒターが顔を上げると目の前にコウモリが止まっていた。

 

「伝書バット・・・か」

 

そこには、「王下七武海の召集令状」を持った伝書バットがいた。

リヒターはこの大海賊時代という流れが大きな音をたてて暴れ狂っているように感じられた。

 

 

数日後

 

 

『海軍本部よりマリージョアへ“王下七武海”アーベン・D・リヒター様がお見えになりました』

 

リヒターは海軍本部に来ていた。

それは召集に応じたからである。

 

「よぅ、リヒター。遠路遥々ご苦労なこって」

 

そこには、リヒターを優に越える長身の男性がやる気無さげにねころんでいた。

 

「お前が出迎えとは、随分と気前が良いじゃないか“大将青雉”」

 

そこには、かつて中将として出会い、今に至るまで良好とも言える関係を築いてきた男がいたのだった。

 

「“赤犬”の姿が見当たらないが・・・・・」

「あぁ、あいつならこの間お前さんと殺り合った傷が祟って未だベッドの上だよ」

「そうか、ザマミロ

「そう言うこと関係者の前で言うかね、同意しちゃうけど」

 

そう言って互いに声に出して大笑いする海賊(リヒター)海兵(クザン)の姿が其処にはあった。

 

「相変わらずじゃの、お前さんら」

「なんだ来てたのか“ジンベエ”」

 

リヒターの後ろから現れた魚人。

サメというよりは唐獅子や鬼瓦のような顔立ちが特徴だ。

 

「リヒター、お前さんたまには魚人島にも顔を出さんかい。“姫様”が会いたがっとったぞ」

「“白ひげの旦那”の縄張りに、出身でもない政府の海賊(七武海)が早々頻繁に出入りできるか?あの旦那は気にも止めないだろとうけど、また駄犬(サカズキ)と小競り合いは御免蒙りたい」

「オレとしては、サカズキのあの悔しそうな顔が見られるならどうでも良いけどな。リヒター、行く時はオレも絶対連れてけよ」

 

 

3人は連れだって会場へと向かっていった。

 

「お、前にいるの“ミホーク”じゃねえのか」

 

3人で喋りながら魚人島に行く算段をつけていると3人の前方を歩く一人の男をリヒターが見つけた。

 

「あぁ~、確かに“鷹の目”だな」

「あ奴が来るとは今回の議題に余程興味があるのだろうの」

「んぅんんんん、声かけるか。おーい、ミホーク

 

思いの外声が響いてしまい、驚いているリヒター。

そんな、リヒターの声に反応したのかゆっくりと後ろを振り向くミホーク。

 

「なんだ、お前たちか。仲良く一緒にという訳ではないのだろうが」

「おぅ、さっきそこで一緒になったんだ」

「珍しいの、お前さんが会合に現れるなんての」

「まぁ、いいんじゃないのよ。さっさと行かないとセンゴクさんがブチギレそうだしな」

 

立場・思想・信念・人種、様々なものが異なる彼らの歩みは、この時何故か同じ速度、同じ歩幅だった。

 

 

 

えぇ加減にせいよドフラミンゴ

 

4人が会場に近づいたその時、男の怒声が響き渡った。

 

「あれ、駄犬来てんじゃん」

「あれ~、今朝見た時はとても動けそうになかったんだったんだけどな」

「ここまで来ると執念としか言いようがないの」

「全く、煩わしい男だ」

 

4人がそれぞれ感想を言い合いながら会議室に続く通路を歩いてきた。

そして、会場が目にはいると想像通りの光景が広がっていた。

 

ドフラミンゴ、貴様“海軍(わし等)”に喧嘩売りに来たんか。さっさとその“糸”を引っ込めんか

 

怒りの剰り右腕が赤々しく燃えたぎるマグマと化している男。

 

「ふっふふ。だったらよ、こんな下らないことさっさと終わりにしちまおうぜ」

 

対面には会議で使う円卓に腰掛けて不適な笑みを浮かべる細身の男。

その手は操り人形で遊ぶように奇妙に動かされていた。

その手の動きに呼応するかのように彼の目の前では中将2人の切りあいが起こっていた。

ドフラミンゴと呼ばれた男のさらに後ろ、窓枠に座り本を読みふける巨漢の男性”くま”はこの状況にも動じていなかった。

 

「ドフィ、いい子だからお止め。赤犬もいちいち突っかかるんじゃないよ」

 

言い争いをする二人に挟まれた形で傍観を決め込んでいた女性が、二人をまるで子供に言い聞かすように話しかけた。

 

「おつるさん、しかしのぉ」

「ふっふふ、あんたにゃ敵わねえな」

 

しぶしぶという雰囲気ではあったが二人は矛を収めたようだった。

 

「全く、この忙しい時に貴様らは何をしているんだ」

 

上座に位置する席に座る男、海軍元帥「仏」の異名を冠するセンゴクがため息と同時に頭を押さえた。

 

「ふん、オレだって”興行”が上手くいき過ぎてるもんだからな。暇になっちまったから顔を出しただけだ」

 

得意気にそして暗に海賊としての仕事が順調であると匂わすドフラミンゴ。

 

「迷惑な話だ」

「あぁん」

 

そんなドフラミンゴの発言にセンゴク元帥の右隣に陣取りため息をつく男がいた。

 

「迷惑な話だと言っているんだ。貴様ら”海賊(クズ)”の羽振りが良いということは、我々”政府側”にとって不利益でしかないのだからな」

「おうおう、”監察官長”殿も言ってくれるじゃないか。”チクリ屋”のトップが偉そうに」

「ゼファー、ドフラミンゴ、せっかく収まった場をかき回すな」

 

「アヴラロッサの奇跡」による功績も加味され、新設された監察部にて海軍の風紀を取り締まっているゼファー。

巷では「チクリ屋」などと揶揄されることもあるが、その人脈により世界政府全軍に顔が利く彼は表裏に渡り研鑽を続けている。

また、海軍初の大目付に就任した彼はリヒターと世界政府の友好関係に一役買っている。

 

「つまらぬ、言い争いが聞こえてきたがオレ”達”は来る場所を間違えたのか」

「ワシ”等”を呼びつけておいてこの体たらく、センゴク殿も大変じゃの」

「センゴクさん、この間の赤派海軍が喧嘩売ってきた件の被害見積もり持ってきたんで、後程清算お願いします」

「あぁ~、オレは指示通り迎えに行って遅れただけっすよ」

 

四者四様の発言に緊迫していた会場の空気が緩んだ気がした。

遅れてきた4人は思い思いの席に座ると静かに会議の始まるのを待っていた。

 

「イヤイヤ、よく来てくれた。七武海5人も集まるとは私も予想外だったな。

 それでは、会議を始めよう。リヒター、見積もりはいつも通り監査部に廻しておいてくれ」

 

センゴクが腹部を押さえながら話を進めようとする。

すると突然、会場に声が響いた。

 

「いやはや、ここまで有名な方々が揃われると圧巻ですな」

 

声に反応し全員が声の発生源へと視線を移す。

 

「あわよくば、私にもこの会合に参加させていただきたく参上つかまつりました」

 

そこには、シルクハットを被りステッキを手に持った色白な素肌の男性が立っていた。

その姿は、良く言えばミステリアスであり、悪く言えば不気味である。

 

「なんじゃい、お前さんは」

「おんやぁ~、お前さんどっかで見たことあるね~」

 

流石のサカズキも警戒を露にしている。

ボルサリーノはその顔に見覚えがあるのか、記憶を漁っているようだ。

 

「“鬼保安官”が何故此処にいる、というかよく入り込めたな」

「そうか、貴様が“ラフィット”か

 

リヒターの声を聞き、出席していた少将が声を荒げた。

 

「ラフィットだって」

「おや、私の事をご存知とは恐悦至極」

 

恭しく一礼するラフィットに対して警戒心を強める海軍側。

一方、七武海のメンバーはと言うと其々がリラックスした態度で行く末を見ていた。

 

「カミーヤ少将、彼はいったい何者なんだい」

「奴は私の管轄である西の海(ウェストブルー)では名の知れた保安官をしていた男です。ですが度を超えた暴力、一般市民に対する数多の恐喝、行き過ぎた過剰捜査等の、問題行動が発覚し国を追われた男です」

 

カミーヤと呼ばれた少将の発言を聞きより一層警戒心を強める海軍側。

 

「ふふふ、私の過去等はどうでも宜しいこと。私がこの場に参上いたしましたのは、今回のクロコダイル氏の称号剥奪に伴い皆様が後継者をお探しではないかと思いまして。そこで私から”ある男”を推薦したくこの場に参上させていただきました」

 

軽快にタップのリズムを刻み、その言葉回しは丁寧であるがそこから漏れ出す不遜な雰囲気はこの男が良からぬことを考えていることは明白であった。

 

「その男の名は”マーシャル・D・ティーチ”、我々”黒ひげ海賊団”の船長を張る男です」

 




キャラクターシート

ニコ・オルビア
異名:知識の魔女(ラプラス) 所属:アーベン海賊団 立場:副船長
懸賞金:9200万ベリー
外見モデル:ニコ・オルビア(出典:ONE PIECE)
好きなもの:コーヒー、サンドイッチ 得意料理:無回答

備考
原作に登場しているオルビア本人。
リヒターヒロイン。
オハラの悲劇をリヒターによって乗り越えたことにより娘と同等に依存しかけている。
この世界において先代オペオペの能力者だった旦那の不完全不老手術を受けたため、娘と双子に間違えられてしまう美魔女となった。
旦那を亡くして早10年、次の恋に向けて準備は万全である。
副船長を張れるだけの知識と経験はあるがなぜか家事オンチなため、キッチンへの立入は禁止されている。
なぜかコーヒーだけは淹れるのが上手い。


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Luffy of ORIGINS

GW明けたとたんに残業続き。


「そういえば、ルフィって素敵なイヤーカフつけてるわよね」

 

空島を後にした麦わらの一味は現在穏やかな海で錨を下ろし各々が休息をとっていた。

剣士であるゾロは鍛錬の後に相変わらず昼寝をしており、マストの陰で気持ちよさそうに寝ていた。

料理人愛の狩人であるサンジは日課であるミカン畑の警護とナミのお茶くみに勤しんでいる。

新参であるロビオは持ち込んだ考古学書をデッキチェアに座り読みふけり時折空を眺めては何か考え事をしているようであった。

狙撃手ウソップと船医チョッパーは釣りを楽しんでおり、その最中にウソップの嘘を真に受けたチョッパーが海に飛び込もうとする場面があった。

そんないつも通りの一味の中で思い立ったかのようにナミが呟いたのであった。

 

「”コレ”か。コレもオレの大切な宝物だ、だからナミにはやらんぞ」

 

そういって左耳につけている紅い石が煌めくイヤーカフを両手で隠す船長ルフィ。

 

「そうじゃなくて、普段からお洒落しないあんたにしては良いアクセサリーつけてるなって思っただけよ」

「ナミさんの言う通り、洒落っ気の一切ないお前にしては随分と洒落たモンつけてるなって思ってたんだ」

「確かに、船長さんにしては素敵な物をつけているね」

 

サンジとロビオも何気なく気にしていたことを聞くチャンスとばかりにナミの援護に回っている。

 

「なぁルフィ、そいつも”赤髪”から貰ったものなのか」

「そうなのか、ルフィ」

 

船尾で釣りをしていたはずのウソップとチョッパーも気が付けば集まってきていた。

ふとルフィが気配をたどると寝ていたはずのゾロもこちらを見ている。

 

「いや、コレはリヒターが友達の証にってくれたんだ」

 

そういうとルフィは空を見上げた。

あの冒険の日々を思い出すように。

 

ルフィには二人の憧れる存在がいる。

二人とも綺麗な”赤髪”が特徴で、二人とも腕の立つ剣士だった。

一人は彼の根本を作り上げた。

普段は能天気に見えるほど大らかで、自分への無礼や嫌がらせは平気な顔で見過ごすが、自身の友や仲間を傷つける者には強い怒りを露にする。

そんな彼の周りにはいつも笑顔で溢れていた。

幼かったルフィにとってそれは鮮烈な思い出となって心の深いところにあり続けていた。

そんな、憧れの男とした約束。

 

「いつか、その”麦わら帽子(オレの宝物)”をオレに返しに来い」

 

その言葉がきっとルフィにとっての海賊としての原点となったのだろう。

 

もう一人は不思議な存在だった。

大の苦手である祖父が連れてきた彼は村の酒場で周りが酒を飲んでいるのに自分はマキノ特性オレンジジュースを飲んでいた。

そして、周囲の笑い声を嬉しそうに聞き、笑顔を眺め、時折女性に絡まれ、祖父に絡まれ。

それでも楽しそうにしていた。

今でも、ルフィにとって彼らと旅したあの航海は色あせない思い出となっている。

これは、そんな少年”モンキー・D・ルフィ”と”アーベン海賊団”との昔々の物語である。

 

 

「・・・・というわけでルフィ、お前さんには”こいつ等”と一緒にしばらく海に出てもらう」

 

そういって少年の前にて鎖で雁字搦めにされ身動き一つできない初老の男性”モンキー・D・ガープ”が鎖蓑虫にされ転がされていた。

少年にとって畏怖の対象でもある祖父をこのような状態にしてしまった目の前の男を再度見上げる。

まず目につくのは自分の憧れる大海賊”シャンクス”とは系統の違う赤い髪。

シャンクスの真っ赤な髪も綺麗だったが目の前の男の紅い髪も綺麗だった。

そして、彼の長い髪に隠れていた顔を覗き込む。

彼は心底、本当に心底疲れた顔をしていたのであった。

 

ガープ、貴様リヒターにまで迷惑をかけおってこの馬鹿者が。しばらく机から動けると思う出ないぞ

 

そして、そんな彼の目線の先にある祖父を縛り上げた鎖の上に置かれた電伝虫から先ほどから代わる代わる怒声が響いていた。

 

「しかし、センゴクよコレには訳があるんじゃ」

 

傍から見るとかなり情けない姿にも関わらず未だその不遜な態度が崩れないガープ。

リヒターと呼ばれた男性とその後ろにいるクルー全員が頭痛を抑えるように頭を押さえ、リヒターの横にさり気なくたっているマキノはリヒターの頭を撫でていた。

 

『ほう、貴様その”訳”とは3か月ため込んだ書類仕事から逃げ出し、七武海に変わりを任し、あまつさえその七武海のクルーに捕縛されるまで止まれない”訳”だったんだろうな』

 

通信の向こう側にいるであろう男性(センゴクと呼ばれていたがルフィにとって初めて聞く名だった)の声に怒気が混ざっていくのを周囲は感じ取っていた。

 

「だって、ワシのカワイイ孫達に半年も会えてないんじゃもん。だから会いに来たんじゃ」

「「『『アホか、己は!!!!!!!』』」」

 

通信越し、周囲からの息の合ったツッコミに悪びれもしないガープ。

 

「ホロホロホロ、お前のじいさん面白いな」

「本当に、どういう思考回路してればこういう考えに至れるんだ」

「とりあえず、少しは懲りないのかしらガープさん」

 

ルフィの傍に陣取り一緒におやつをしてる少年少女。

ガープを捕縛するのに一役買っていた彼らに誘われてルフィもおやつを食べていた。

 

「そういや、お前ら名前は?」

「・・・まずは自分から名乗れ。礼儀ってもんだろうが」

 

ルフィの右隣に座る白いモコモコ帽子が特徴の少年に言われ自己紹介もしていないことにやっと気が付くルフィ。

ちなみに、この段階で用意されていたおやつの8割がルフィの腹に消えていた。

そして、マキノが怒った時に見せる笑顔で自分を見ていることにもこの時になって初めて気が付いた。

 

「オ、オレはルフィ・・・です。いつかこの海を制覇する男・・・・です」

 

そう言ってマキノのほうを見るルフィ、マキノの笑顔がいつもの笑顔に戻っているのを確認して安堵している。

 

「あたしは、ペローナ。カワイイ物が大好き」

「ローだ、海賊団の船医見習いをしている」

「ロビンよ、ルフィは考古学に興味ない?」

 

モンキー・D・ルフィ彼の”初めて”の航海はこうして幕を開けたのだった。




うちのルフィはアーベン海賊団のせいでちょっとだけお洒落です


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Luffy of ORIGINS-TwoDays

少々下品な表現が入りますがご容赦ください。


「船長さん、今オレの聞き違いじゃなければ”リヒター”と言わなかったか」

 

今まで事の成り行きを笑顔で見ていたロビオが急に声をかけた。

その様は、まるで何かを恐れているようにも感じられた。

そして、ゾロもまた起き上がり、ルフィの次の言葉を聞き逃さないようにしていた。

 

「おう、オレが初めての航海でオレの理想の”海賊団”の姿を見せてもらったんだ。

 そん時に”コレ”も貰ったんだ」

 

誇らしげにほほ笑むルフィは左耳につけられたイヤーカフを撫でている。

 

ルフィ、お前”天下五刀剣”と二人も顔馴染みだったのか

 

ゾロにしては珍しく鬼気迫る勢いでルフィに詰め寄っている。

 

「テンカゴトウケン?なんだそれ?」

 

そんなルフィの言葉にチョッパー以外のクルーはコントのようにその場で転んでしまった。

 

 

 

海賊船「サウザンド・シンフォニー号」

アーベン海賊団の本船であり、今は亡きゴールド・ロジャーが乗船した“オーロ・ジャクソン号”の兄弟船と噂される世界に誇る船である。

ルフィはマキノと共に船長室に案内されていた。

 

「まぁ~あれだ、ガープさんにも困ったもんだな」

 

そう言って豪華なソファーに寝っ転がる長身の男性。

 

「クザン、お前がなんでいるんだ。ガープさん捕縛したら連行するはずだったろ」

 

そう呟いているのは、木製の執務机で航海予定を確認しているリヒター。

気が付くとマキノが嬉しそうに手伝いをしている。

 

「オレはあれだよ、未来明るい若者が海賊に憧れないようにだな「”G・T”に付いて行きたいならそう言え」

 

そうリヒターに言われたクザンは子供のように目を輝かせた。

 

「なんだよ、やっぱり行くんじゃねえか」

「元々そうだったんだよ、ガープ中将の思惑が外れる形になるけどな」

「あらあら、ステラさん元気にしているかしら」

 

大人3人組の話についていけず飽きてきたルフィは部屋を眺めようと後ろを向いた。

 

「・・・・・なんだよルフィ、コッチ見んな」

 

そこにはなぜか椅子にグルグル巻きにロープで縛られた義兄エースと。

 

「本っっ当にこいつ等ときたら心配ばかりかけやがって」

「あなた、”良いお母さん”してるわよ」

「本当よ、憧れちゃうな」

「んんんんんん、(シュバ)馬鹿野郎泣いてなんかねえぞ」

 

なぜか育児談議に花が咲いている鎌足とオルビアとダダンがいた。

 

「それにしてもよ、ガープさんの孫たちは解る。

 お前の現地妻のマキノちゃんも解りたくないけど解る」

 

そう言って目頭を押さえるクザン。

そう、マキノはいつの頃からかリヒターの押しかけ愛人状態を維持し続けている猛者なのである。

彼女がアーベン海賊団の女性クルーから一目置かれている要因でもある。

 

「さっきから保護者談義しているあの丸っこい女性は誰だ」

 

そう、何故かガープに脅されルフィたちの保護者扱いで海賊船に乗せられているダダンに違和感を覚えてしまうクザン。

 

「何でもガープさんの昔からの知り合いだそうで、お孫さんたちの保護者として乗船させるように頼まれまして」

「お、ロシナンテじゃないの。元気そうで何よりだ、センゴクさんへの良い土産話になったな」

「拾っていただいた恩も返さず、勝手に消えた馬鹿者ですよ」

 

事の理由を述べたのは人数分のお茶を淹れていたロシナンテだった。

とある理由から海軍すら頼れなかった彼はリヒターに繋ぎを着けてアーベン海賊団に“とある子供”と一緒に逃げ込んだのであった。

 

「ま、兎に角だ。今回の目的地に着くまでエース君とルフィ君はウチの見習いとして強いて良いとガープさんから許可が出てますから、早速“体育室”に放り込んでおきましょう。今日は都合良く鎌足が先生だから死ぬことはないでしょうし」

 

リヒターが一様の方針を決めると各担当へと連絡をつけるべく卓上におかれた電伝虫にてを伸ばした。

 

「鎌足、悪いんだけどルフィ君迎えに来てくれない、エース君はちょっと用事があるからオレが後で連れてくから」

 

《はいは~い、調度ローがぶっ倒れたところだからすぐ行くわね》

 

鎌足の明るい声が船長室に響くが、ものすごく不穏な言葉が混じっていた。

ルフィはあの時、一緒におやつを食べた少年を頭に浮かべながら、自分はとんでもないところにつれてこられたのではないかと考えていた。

 

 

「ロー、生きてるか?」

 

体育室と達筆な筆字が書かれた調練室ではロシナンテが心配そうにローに声をかけていた。

 

「コ、コラさん、あの“鎌女”相変わらず手加減が上手すぎる」

 

体を動かすことは出来そうにないが、喋れるレベルまで回復したローは何とか絞り出した声で答えた。

調練室には老若男女様々な人種が死んだように眠っていた。

自己紹介した女の子“ペローナ”は口から魂が逃げ出そうとしているほどだった。

 

「あらヤダ、みんな虚弱」

「「「「「「いやいや、鎌足の姐さん基準で決めないでくださいよ」」」」」」

 

ルフィの手を取り入口に立つ鎌足は汗一つかくこと無く爽やかに毒を吐いていた。

 

「あら、でも船長ったら昨晩は“あたし”に“マキノ”に“オルビア”3人相手にして朝普通にあたしたちよりも先に起きてきたわよ?」

 

「「「「「「船長、良く無事でしたね」」」」」」

 

叩きのめされたはずなのに、コントをこなす船員たちを尻目に、鎌足の発言の真意を読み取ってしまった子供たちは色々な意味で顔を真っ赤にしていた。

一方でロシナンテとクザンは戦慄で顔を歪めていた。

 

「(船長、だから朝あんなに顔色悪かったんすね)」

「(リヒターの野郎、やっぱ化物だわ)」

「(リヒターってスゲー強いんだな)」

 

ルフィ一人だけ的はずれなことを考えていた。




キャラクターシート

本条 鎌足(ほんじょう かまたり)
異名:大鎌(おおかま) 所属:アーベン海賊団 立場:航海士長 懸賞金:9,650万ベリー
外見モデル:“大鎌”の鎌足(出典:るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-完全版裏表紙)
好きなもの:お釜で炊いたご飯 得意料理:炊き込みご飯


備考
リヒターヒロイン。
ワノ国のサムライであり、細身の体躯からは想像を絶する怪力の持ち主(巨人族と対等)。
元々は性同一性障害に苦しんでいたがリヒターと出会った酒場で偶然出会えた顔のデカイオカマによって女性の体を手に入れた。
良くも悪くもオカン気質。


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Luffy of ORIGINS-CurrentDays

長くなりそうなので分割分割


「いいかルフィ。“天下五刀剣”てのはだな、世界に名だたる剣士、サムライの中でも五人の剣士を総称する名前だ。お前でも分かりやすく言うと七武海の剣士版だ。誰が言い始めたかは定かじゃないが、その名で呼ばれる剣士は全員が隔絶された実力者何だよ」

 

興奮しすぎて刀に手が出かけたため、ルフィに殴られ気絶させられ、チョッパーの手当てを受けているゾロに代わり以外と物知りなウソップが説明している。

ウソップの言うとおり、彼らは一介の剣士ではなすことが不可能と言われたことを平然とやってのけてしまう化け物とも言われている。

 

「現在所在がはっきりしているのは4人、一人はゾロが目指す”大剣豪”の名を有する「鷹の目」ジュラキュール・ミホーク」

 

まずは、全員が知っている存在であるミホークの名が挙がった。

 

「”剣士”の最高峰といわれるこの男はたった一人で5千人の海賊と戦い無傷で全員を切り伏せた伝説から始まり、「ポートレートの剣劇」、「海割事件」といった様々な歴史的事件で活躍し、たった一人で十の海軍艦隊と同等の戦力と言われている男だ」

 

”鷹の目のミホーク”。

”大剣豪”の称号を持つ、鷹の如く鋭い目つきと羽飾りのついた帽子や整った口ひげが特徴。

常に冷静沈着で基本的に無表情。

一匹狼気質で未だかつて海賊団を率いたという話は浮上していない。

剛柔共に桁外れの力を持つ。

 

「お次は、オレたち海賊の天敵。そこに行ったら二度と日の目を見ることはできねぇこの世の地獄インペルダウンに住む”剣鬼”、「雨」のシリュウ」

 

次に名を挙げたのは海賊にとっての地獄、国際統治機関世界政府が世界中の凶悪犯を収監する目的で、無風の海域“ 凪の海”に設置した海底監獄インペルダウンにて看守長を務める男だった。

 

「こいつに関しては名前と異名しか世間では知られていないが、噂ではその異名がしら示す通り、シリュウの通った後には”血の雨”が降ると言われているらしい。刀の腕こそすさまじいが世界政府にとって知られたくない暗部ともいわれている男だ」

 

”雨のシリュウ”

”剣鬼”の称号で恐れられる男。

インペルダウンにおいて、所長であるマゼランと共に二枚看板と謳われた剣士。

実力はほぼ互角で、勤務時間が短いマゼランよりも厄介な存在とされていた。

しかし、囚人を気が向くままに虐殺し続けたため、現在は宣告猶予の死刑囚としてLEVEL6に幽閉されている。

 

「名も明かされていないが、巷で”刀聖”と呼ばれる剣士もいるんだぜ」

 

突如、ゾロが割って入ってきた。

 

「おぅゾロ、起きたのか」

「てめえルフィ、オレが悪かったが手加減なしで殴りやがったな。まぁ今は置いといてやるけどな。“刀聖”はな、“斬る存在”を選ぶことが出来るらしい。噂では海賊に人質にされた子供を海賊ごと斬りつけたのにもかかわらず子供は無傷で後ろの海賊のみ斬り倒しちまったらしい」

 

そういうと再び濡れたタオルで目元を覆い、マストにもたれ掛かり空を見上げた。

ゾロはこの話を思い出した時、何故だか故郷の自分の師を思い出してしまった。

 

「お次はルフィの憧れ、「赤髪」のシャンクス」

「おぉ~、シャンクス」

 

突如としてルフィの目が輝きだしたがそれはご愛敬というものだ。

 

「ある日、隻腕になってしまい様々な噂が飛び交っているが、隻腕になってもその強さは衰えることなく、寧ろ研ぎ澄まされたと言われている」

 

ウソップの言葉を聞きルフィが自分の“左腕”を擦るがそれの意味に気づく仲間はいなかった。

 

「その一降りは空を、海を割り、時には島を消し飛ばすとまで言われている“剣帝”。しかし、誰よりも仲間と義に誰よりも熱くなれる男としての逸話の方が多いまさに男の中の男」

 

ウソップの話を聞きながらルフィはフーシャ村での一時と彼と交わした約束を思い出していた。

いつか、“この海の果て”で、シャンクス達と再会することを楽しみに、今は一歩ずつ航海を進めている。

 

「そして、最後は今オレ達の話題の中心人物。“始まりの七武海”とも呼ばれる男、“緋影”アーベン・D・リヒター」

 

その名を改めて聞いた時、ルフィは知らず知らず微笑んでいた。

彼は、リヒターは自分に“船長”としてのあり方を魅せて教えてくれた初めての師匠と呼べる人でもあった(祖父は決して師匠と呼ぶ気はない)。

彼と、彼の仲間と過ごしたあの日々があるからこそ、自分は“夢”を追い続けられている。

シャンクス達とは違い初めて同じ世代の宿敵(トモダチ)も出来た初めての場所だった。

 

「特に話題に上がるのは「バレスト海域の悪夢」って呼ばれてる戦いだろう。なんせ、その戦いはリヒター一人で“700人”の海賊を1分と過ぎずに壊滅に追い込んだ一方的な戦いだっんだからな。その戦闘以降、彼はこう呼ばれるようになった“絶刀”と」

 

だからこそ、正さねばならない。

 

「ウソップ、違うぞ」

 

師の“不名誉”な噂は。

 

「あ、何が違うんだよルフィ」

 

真実を語らねばならない。

 

「“700”人じゃねえんだよ、“7000”人だよ、“桁”が違うんだよ」

 

真実を知る者として。




キャラクターシート


未更新


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Luffy of ORIGINS-ThreeDays

分割したのに結局長くなってしまいました。
戦闘描写難しい。


ルフィとエースがアーベン海賊団に預けられてから1週間が経とうとしていた。

その間、エースは驚くほどに成長を遂げており、今では訓練にて一般船員相手に互角に戦えるようになり、航海に必要な知識も貪欲に取り込んでいた。

また、一番の違いと言えば乗船早々は警戒心を露にしていたリヒターを兄のように慕っている点であろう。

二人きりで何を話したかは誰も知らないが、ダダンが驚愕してしまう程にリヒターを慕うようになった。

一方でルフィはというと、勉強には興味を示そうとせず、隙あらば逃走を計りロビンに捕まり、エースもマキノも果てはダダンも自分に構ってくれなくなりショボくれてイタズラをし始めてはロビンにクラッチされ、盗み食いのために食料庫に忍び込んだのがバレてしまいブランチにおやつ抜きを言い渡され、ロビンにスラップされてを繰り返すようになった。

訓練は特に酷い有り様であり、体が出来上がっていないことも関係してか能力に振り回されてしまい、まともに訓練を行えたことが少なかった。

また、そこに拍車をかけるかのように同年代のペローナとローの子供とは思えないレベルの自身の能力に対する理解度とその習熟度により完全に自信喪失していた。

そして、今日も・・・・・・。

 

「いくぞ、ロー。ん~パーンチ」

 

そう言って先制攻撃とばかりにローへと右ストレートを繰り出すルフィ。

最近繰り返し行われるようになったルフィとローの一騎討ちである。

 

「・・・・・・」

 

僅かに半身を反らしただけで容易くルフィの攻撃を避けているロー。

もう何回目か解らないこのやり取りは数分後にルフィのスタミナが切れるまで行われるのであった。

 

 

「くっそー、何でオレのパンチが当たらねぇんだ」

 

訓練室の隅で不貞腐れているルフィ。

当初は一般船員やエースたちも声をかけていたが、リヒターからルフィに考えさせるように厳命されてしまい、誰も声をかけれなくなっていた。

 

ホロウアーミーズ(武器魂軍)サーベラーズ(刀剣部隊)

 

そんなルフィの目の前では、ペローナと先程まで自分と戦っていたローの戦闘訓練が行われていた。

ペローナの掛け声と共に床に散らばっていた複数の“木刀”が意思を持つかのように浮かび上がった。

 

「ペローナ、てめぇそれ全部“船長の使い古し”だろうが。汚ぇぞ」

「ホロホロホロホロホロ、うっせぇぞロー。今回の目的地が“あそこ”なら、あたしは何がなんでもお前に勝たなきゃいけねぇだよ」

「てめぇ、今回の賭け対象は“オレへの借金の帳消し”だな」

「そう言う、お前だって“あたしへの借金拒否権”を対象にするつもりだろう」

 

左手に重なるように円を作り上げ、迎撃体制を整えるローと、複数の木刀を意のままに操り、ローを警戒しているペローナ。

周囲の大人たちは二人の言い争いに大声で笑っているが、ルフィはとてもそんな気分になれなかった。

ルフィにとって今まで“同世代”と言えばエースと“彼”だけだった。そして、同世代といっても年上の二人には負けても仕方がない、すぐに勝てるようになる、と楽観視していた。

しかし、現実は違っていた。

自分とほぼ同じ年齢のローとペローナに出会ってしまった。

二人は自分と違い、自分の能力に振り回されること無く、寧ろ使い方を熟知しているようだった。

今、目の前で起きている剣劇乱舞の最中に自分が突っ込んでいったところで数秒とたたずに気絶させられて終わりになる未来しか見えなかった。

この時、ルフィは自分が気が付いていないだけで大きく成長していたのである。

ルフィは“考えた”のである。

どうすれば自分と彼らの間にある差は埋められるのか、自分に足りないものは一体何なのか。

その様子を二人の男が見ていたことを知らぬままに。

 

 

「まぁ~、あれだな。お前も中々に鬼教官だよな、リヒター」

 

そう言って船長室に備え付けられたバーカウンターの棚から“世界一カッコイイ酒”を取り出し勝手に呑み始めるクザン。

この数週間で海軍服からアロハシャツに着替えて存分にだらけきっている彼は先程の光景から目の前の男が何を考えているのかを察してしまった。

 

「ルフィに今必要なのは闇雲に強くなることじゃない。自分に何が出来て、何が出来ないか自覚して割りきることだ。

 酷な話だけど、何もかも出来るなら仲間なんか必要じゃないだろ。

 オレだって仲間がいなきゃ、“この海”を航海なんか出来ねぇよ」

 

そう言ってマキノ手製グレープジュースを飲むリヒター。

ただし、グラスがワイングラスなのは愛嬌と取ってもらいたい。

 

「これからの世代に求められるのは“一本の槍”だ。自分の腹のなかにただ一本、決して折れない槍を作ることが出来れば、どんな波だって越えていける。オレはエースとルフィにもその素質を魅せてもらった。だから、嫌われようと何しようとあいつらを強くしてやりたいんだよ」

 

そう、遠い目をしながら語るリヒターにキュンキュンしているマキノと、実は酔っているのではとグラスに残った滴をなめてジュースであることを確認するクザンがいた。

 

そんなことがあった数日後、ルフィの変化は案外分かりやすく周知されていた。

今まで、興味がないといって逃げていた勉強に頑張って参加し(途中知恵熱出して気絶するまでがお決まり)、自分にできることを模索して周囲に自分から話しかけるようになり(何回か冗談を真に受けて海に飛び込み溺れたが)、食事の後片付けを率先して行うようになった(初回で皿を割りすぎて出禁を食らったが)。

その結果かどうか知らないが、訓練においてルフィはまず相手を見ることが多くなった。

 

自分がパンチを打つ時、相手はどう行動しているか。

相手が攻撃に転じる時、どのように仕掛けてくるか。

自分の間合いがどれくらいなのか。

相手の間合いはどれくらいなのか。

 

そして、ルフィが更に上へと駆け上がる、そんな出来事が起きた。

 

『あ、あ、あぁ~、マイクテスト、マイクテスト本日もクソみたいに晴天なり』

 

昼食を終えて各々に休憩をとっているアーベン海賊団。

そんな一味の静寂をかき消すようなアホな声が聞こえてきた。

 

「船長、針路方向に二個師団級の海賊群を確認。垂れ幕のようなモノが夫々に掛かってるでよ」

 

本日の見張り番であるサウロが針路上に複数の奇妙な海賊団を発見したのである。

 

「・・・おい、そろそろ”あそこ”に着くころだけど、まさか”いつもの”じゃないよな」

 

リヒターのやる気が目に見えて落ち込んでいくのがわかるようで、周囲も「あぁ~、またか」といってため息をついていた。

 

「どうやら、そうみたいよリヒター。電伝虫も鳴ってるし」

 

そう言ってオルビアが差し出した金の装飾がなされた電伝虫を嫌々取るリヒター。

 

『はっはー、御機嫌よう船長。今日もエンタテイメントしてるか』

 

かなりの声量が食堂に響き渡るがそこにいた面々は呆れたような顔をしている。

 

「おい、”大番頭”。お前またか、またなのか。この”不良債権”共はそういうことなのか”テゾーロ”」

 

珍しく声が大きいリヒターに驚くエースとルフィだが他のメンツは笑いをこらえているようだった。

 

『いや、すまないリヒター船長。そいつら調子に乗ってステラとバカラまで賭けの対象にしてセクハラかまそうとしたからさ、その・・・あれだ』

「”タナカさん”と変われ、あと二人は無事なんだろうな」

『つかまれた腕に痣が出来てしまったが、無事と言われると無事だ』

「・・・カワレ」

 

二人の安否を確認した瞬間、リヒターから僅かながら怒気が漏れた。

 

『するるるる、お疲れ様です船長』

 

電伝虫越しに新たに聞こえてきた声は先ほどの男性と違いどこか道化じみた声だった。

 

「簡潔に答えろ」

『オヤオヤ、これは相当お怒りのようで。では、テゾーロ様も船長の怒気でトラウマ穿り返されて使い物になりませんから私がご説明を』

 

簡単に言うと

 

①来場(この時から既に問題行動を起こしていた)

②カジノにてステラとバカラに手を出す(タナカさんが未然に防いだ)

③キレたテゾーロに有り金全部巻き上げられた

④いつもの調子で同じ海賊旗を掲げるリヒターの船を襲おうとしている ←今ココ

 

という流れらしい。

 

『というわけですので船長、・・・・?あの船長、御応えを返していただけますか』

 

返答がないことに不思議がるタナカさん。

すると、別人から返答が返ってきた。

 

「あぁ~、タナカさんお久しぶりです。ローです」

『これはこれは、ローさんお久しぶりです。ところで船長は如何されましたか?』

 

突然のローの返答に驚くも、直にいつもの調子を戻すタナカさん。

方やローはと言うと、船内に訪れた静寂に耐えかねて誰でもいいからしゃべって欲しいと受話器を取った次第である。

 

「申し訳ないんだけど、当分船長と話しできないと思うよ」

『おや、私何かしましたかな?』

 

心当たりのないタナカさんだが、彼はまったくもって正しかった。

 

「タナカさん、船長の”逆鱗”に触れた奴らの末路ですよ」

『ほっほ~、なるほど。つまり我らが船長は』

「『完全にキレた」ということですな』

 

ところ変わって甲板上に無表情で佇むリヒター。

リヒターが出て来たのを確認して、代表を名乗る海賊が長ったらしく宣戦布告を行っているが、リヒターの耳には一切入ってきていなかった。

 

「オイ、クズドモ」

 

久しぶりにキレているためか、発せられる言葉がカタコトに聞こえてくる。

そんな彼の姿は映像電伝虫にて艦内と”G・T”幹部室に流されていた。

 

『なんだ、詫びるなら今のうちだぞ。金目の物と後”女”を寄こせば命だけは助けてやるよ』

 

そう言ってそこらかしこから笑い声がこだましている。

バレスト海域は普段は穏やかな海で知られているが、この日は違っていた。

リヒターの怒りに呼応するかのように空は曇り海は荒れていたのである。

 

「オレノ”宝”ニ手ダシテンジャネェゾ」

 

その声を切っ掛けにサウザンド・シンフォニー号へと雨のように砲弾が降り注ぐ。

外のあまりの景色にルフィは気絶しかけていた。

その時、リヒターの声が静かに聞こえてきた。

 

緋影(ひえん)抜刀(ばっとう)

 

その声が響くと共に腰に帯刀されていた刀を引き抜く。

 

演武(えんぶ)

 

そして、刀を揺らし、その揺れが全身へと伝播していく。

 

呀禽倶(がとりんぐ)

 

その声が響くのと同時にサウザンド・シンフォニー号へと雨のように降り注いできた砲弾は全て爆散した。

 

 

「おうおう、最初っから飛ばしてるねリヒターの野郎」

 

海軍最高戦力と呼ばれる”青雉”と畏怖されるクザンも久方ぶりにみるリヒターの戦闘。

 

「おい、クザン。リヒターは大丈夫なのか?」

 

初めて見る海賊の戦闘にルフィは心配そうにしていた。

しかし、アーベン海賊団の面々は映像に映し出されるリヒターをどこか誇らしげに見ている。

 

「クザン”さん”な。いいかルフィ、オレを含め多くの海兵があいつを信頼している理由があいつの戦う理由にあるんだ」

 

そういうと心配そうに映像と自分を交互に見つめるルフィの目線に顔を合わせるクザン。

 

「”仲間”っていう”タカラ”のために戦うんだあいつは」

 

そういうと視線を映像に移すクザン。

ルフィもつられて目を移す。

 

全ての砲弾が一瞬で爆散したことに驚いているG・T被害者の会一同。

そんな代表を務めている男は驚きおののいた一瞬に自分が巨大な何か得体のしれないモノに睨まれているような殺気を感じた。

その方向に目を向けると爆風で棚引く緋色の髪から感情を消失したかのような翡翠の色をした瞳がこちらを見ていた。

 

緋影(ひえん)抜刀(ばっとう)

 

再び、男が刀を構える姿が目に入ってきた。

先ほどの技だって能力者なら簡単にやってのけれると判断し、男との間に空いた1㎞近い距離も手伝い安全圏にいると確信していた。

 

刀突ノ型(とうとつのかた)

 

そのはずなのに汗が止まらない。

そして、自分ののど元に常に切先が突き付けられている、そんな感覚に襲われていた。

 

雷振(らいふる)

 

左手を眼前に置き刀を持つ右腕を引く独特の構えをとった男が刀を突いた瞬間。

”ガオン”という銃撃にも獣の咆哮ともとれる音が耳を貫いた。

その瞬間、代表を務める男の被っていた帽子が銃で撃たれたかのように弾き飛ばされたのであった。

 

「次ハ外サナイ」

 

そう男が呟いたように思えた。

 

演武(えんぶ)

 

そして、再び刀を揺らし、その揺れが全身へと伝播していく。

 

呀禽倶(がとりんぐ)雷振(らいふる)

 

しかし今度は、自分の周りにいた部下たちまで撃ち抜かれていく。

周囲を見回すと同盟を組んでいたほかの船からも悲鳴が聞こえてきている。

彼らは”この海”にたどり着けるだけの力を持った海賊だった。

ただ、彼らは疎かにしてしまっていたのである。

”情報”という”この海”で生きていくうえで最も大切なモノを収集することを。

その結果、一人の男の”逆鱗”に触れてしまったのである。

 

「面倒ダ」

 

声が聞こえた。

すでにその声は”死神の声”に聞こえていた。

 

-消エロ-

 

緋影(ひえん)抜刀(ばっとう)

 

気が付くと立っているのは自分だけになっていた。

 

威合(いあい)

 

刀が鞘に納められる光景のはずなのに、なぜだか恐怖で動けなかった。

それなりに力を持っており、いつかこの海を制するのだと部下たちと語り合った。

しかし、自分たちはとんだ勘違い野郎だった。

そして、今気が付いてしまった。

自分たちが対峙している男の正体を。

 

墟実玖華闇(あとみっくかのん)

 

迫りくる無形の砲弾を感じながら代表を名乗っていた男は呟いてしまった。

 

「”絶刀(ぜっとう)”」

 

と。

 

その後、「バレスト海域の悪夢」と呼ばれることになるこの事件。

政府公式発表によると死傷者700人、戦闘時間1分となっている。

しかし、真実を知る者たちはいる。

死傷者7000人、戦闘時間50秒、”緋影”アーベン・D・リヒター無傷。




キャラクターシート

ハグワール・D・サウロ
異名:大戦鬼 所属:アーベン海賊団 立場:操舵士長
懸賞金:2億9800万ベリー
外見モデル:ハグワール・D・サウロ(出典:ONE PIECE)
好きなもの:大皿料理 得意料理:火山パエリア

備考
原作に登場しているサウロ本人。
色々あってアーベン海賊団に入団する。
基本的に非常に温厚な性格で子供に好かれやすい。
身体的に一般的な巨人族ほど大きくないがただ小さいというわけでなく濃縮されているとのこと。


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Luffy of ORIGINS-LastDays

お久しぶりです。
最後にあのセリフを言わせることができた、それだけの自己満小説です。
お目汚しとなりましょうが、よろしくお願いいたします。


「バレスト海域の悪夢」と呼ばれることになる事件から数日後。

アーベン海賊団一行は目的地にたどり着いていた。

 

「「「うぉ~、すっげ~、なんだココ」」」

 

海域を抜けてから船内から外に出ることが出来なかったため、どこを船が走っているのか解らず色々な意味でドキドキしていたルフィ、エース、ダダンだった。

しかし、現在三人の目の前には黄金で彩られた巨大な街しか見えていなかった。

入港するにあたりドレスコードを整えられた3人はアーベン海賊団と共に颯爽と港へと降り立ったのである。

その際、リヒターの隣をめぐり女性たちの壮絶なアミダクジが行われた。

その結果、ことリヒターが関わる事象に対して絶対的な幸運を見せるマキノが右側を会得した。

 

「ようこそ、”グラン・テソーロ”へ。皆様長旅大変お疲れさまでした」

 

港に上陸して直にリヒターたちの前に現れたピンクのスーツを身に纏った黄金の装飾が所々になされた大男だった。

しかし、よく見ると足が微妙に震えており、まるで生まれたての仔馬のようであった。

 

「・・・・・”テゾーロ”」

 

そんな男”ギルド・テゾーロ”にリヒターが声をかけると、彼は流れるような動作で土下座をしていた。

そんな彼の態度に周囲に見に来ていた者たちは驚愕の声を上げていた。

 

「申し訳ありません船長、オレが至らないばかりにステラとバカラを危険な目に合わせてしまった上に、大切な金蔓共を処分させるなんて手を煩わせてしまい、誠に申し訳ない」

 

テソーロが頭を上げる気配がないと解るとリヒターはマキノを腕から離させるとゆっくりとテゾーロに向けて歩み始めた。

眼鏡が逆光で反射してしまい、まともに彼の眼を見ることはできないが周囲に集まった者たちはこの後に起こる惨劇を予想してしまっていた。

テゾーロとリヒターの距離が0になり、リヒターがしゃがみ込み、その手を高く上げる。

テゾーロに心酔してる社員たちはテゾーロが殺されると、何とか止めようと声を荒げているがリヒターは一切を無視しその手を振り下げた。

あたりに悲鳴が木霊するがその次の瞬間だった。

「ポン」という軽い音を立ててリヒターがテゾーロの肩を叩いたのだ。

数回テソーロの肩をリヒターが叩き、ようやくテゾーロが顔を上げる。

そこには満面の笑みを浮かべるリヒターが立っていた。

 

「テゾーロ、最高にカッコよかったぜ」

 

そう言って笑うリヒターを見て目から大粒の涙を流し始めるテゾーロ。

とんでもない速度で変わっていく展開に周囲が困惑しているとテゾーロの傍に一人の女性が近づいてきた。

シックな黒いパーティードレスに映える明るい黄金の髪。

淡雪を思い起こさせる白磁の肌。

海の青色を写したと言われても納得してしまいそうなアクアマリンの瞳。

 

「テゾーロ」

 

女性に名を呼ばれて、涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも振り替えるテゾーロ。

 

「ズデラ゛~」

 

子供のように泣きじゃくる“この海”で“怪物”と呼ばれる男がいた。

 

ぶお゛ぉぉぉぉ、船゛長゛に゛誉゛め゛ら゛れ゛た゛ぁぁぁぁ

「よかったわね、リヒターさんに誉められて」

 

突如として立ち上がり、喜びの雄叫びをあげるテゾーロ。

そんな傍らで悠然と寄り添うステラと呼ばれた女性。

グラン・テソーロを取り仕切るギルド・テゾーロと、そんな彼を公私ともに支え続けているギルド・ステラ夫妻のそんな光景に周囲もほっこりとしていた。

 

「するるるるるるるる、皆様長旅ご苦労様でした」

 

そんな夫妻をか隠すように地面から面白い等身の男が現れた。

 

「久し振りだな、タナカさん。元気そうで何よりだ」

「するるるるるるる、えぇ全く。船長に拾って頂いてこの方、暇になることもなく毎日を楽しませていただいております」

「主催者があの調子だから、悪いんだけど“今日の主役”のところまで連れていってもらえるかな?」

「えぇ、勿論ですとも。それでは、お手をどうぞ」

 

タナカさんに促され彼の手を握るリヒター。

その後、馴れたように女性陣が我先にリヒターに群がり、次いで男性幹部が、最後にサウロに群がるように一般船員とエース、ルフィ、ダダンがよじ登った。

 

「テゾーロ、先行くぞ」

う゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ

「船長ごめんなさい、私達は後から行くわ」

 

未だに豪快に男泣き中のテゾーロを慰めているステラからの答えを聞き、リヒターは苦笑いと共にタナカさんに視線を移す。

 

「皆様、準備は宜しいですね、それでは参りますよ」

 

そう、タナカさんが喋った次の瞬間だった。

突如としてアーベン海賊団全員が地面に落ちていったのであった。

 

 

「おい、おいルフィ。確りしろ」

 

エースの声に起こされたルフィ。

 

「んぁ、エース・・・・・・オレ達、落ちたぁぁぁぁ!!

「落ち着け、ルフィ。オレ達は無事だ。それより周りを見てみろ」

 

エースに促され、現状に目を向けるルフィ。

そこには想像を越える光景があった。

 

「お前ら、腹が弾けるまで食べてもええで。ただし、残したらブッ飛ばっしたるからな」

「ブランチさん、エンペラーサーモンのお握りお代わり」

 

アーベン海賊団料理長ブランチが見たこともない食材と己の持てる技巧を駆使して様々な料理を作り上げており、その側で黙々と大量のお握りを消化しているロー。

 

「んがぁーっはっはー、止まらない、コインが止まらないよ」

「まだまだ、こんなもんじゃないでしょ」

「“接待スロット”じゃないんで負けても知りませんよ」

「ダメだ、聞こえてねぇでよ」

 

周囲に置かれたスロットを回しまくり、コインの山を何個も築いているクザンとダダン。

そんな、典型的なダメな大人と化している二人に注意を促すロシナンテと呆れているサウロ。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

その最奥では困ったような笑顔を浮かべたリヒターを中心に複数の女性(リヒターの女達)が笑顔で互いにけん制し合っていた。

その時初めてルフィは女性の怖さを知ったような気がした。

 

「お、ルフィ。やっと気が付いたか」

 

周囲の殺気から逃げ出してきたリヒターがいつもより速足で歩いて来るのをエースと共にルフィは眺めていた。

そこには数日前、たった一人で数隻の海賊船を沈めた男には見えない優しそうなお兄さんにしか見えない男がいた。

 

「どうだ、エースにルフィ。ここはさっき会ったテゾーロが経営するうちの一味の金庫も兼ねている世界有数のエンターテイメントシティの”うちの一味専用”ホールだ」

 

そこには、この世のありとあらゆる楽しみを凝縮したような世界が存在していた。

子供の二人でもここが楽しい場所だと理解できてしまえるほどに、周囲は笑顔であふれていた(一部を見ないようにして)。

 

「エース、ルフィ。この航海が終わったらお前たちはオレの船から降りるだろう」

 

そう言って自分たちの目線に合わせて屈んでくれるリヒターにいつの間にか二人はくぎ付けになっていた。

周囲の喧騒が一切耳に入ってこない。

自分たちのすべての感覚が目の前の男からそらすことはできなかった。

 

「だから、いつかお前たちが一人前の海賊になった時、その時にはまた遊ぼうぜ。”王の椅子”を賭けてな」

 

そう、いたずらっ子のように笑うリヒターは、まずエースに向き直った。

 

「エース、お前は色々考えているようで、それでいてこうと決めたらそれ以外の選択肢がなくなっちまう。そんな時は”こいつ”を思い出してくれ」

 

そういうと自分の左中指につけていた赤い宝玉が際立つ黄金の指輪をエースに渡した。

 

「約束だ、お前は”ルフィの兄貴”だろうけど”オレの弟”なんだ。兄貴より先にいなくなるんじゃねえぞ」

 

そう言うと乱暴にエースの頭を撫でまわすリヒター。

ルフィからは見えないがエースは嬉しさのあまり笑顔になりそうな顔を必死でこらえていた。

 

「ルフィ、一人で何でもやることは不可能だろう」

 

そう言いながらルフィに向き直るリヒター。

その目はいつも以上に温かくシャンクスと同じ目をしていた。

 

「だから、自分に何ができるか考えろ」

 

そう一区切りつけるとおもむろに立ち上がり周囲を見渡すリヒター。

 

「船長になったら”針路”さえ決めちまえ。後は仲間に任せとけ。自分が選んだ仲間なら、そいつらを信じていればいい。それさえできれば”この海”は進んでいける」

 

そういうと左耳にしていた紅い石が煌めくイヤーカフをルフィに手渡した。

 

「それは、友達の証だ。ルフィ、でっかい男になれよ」

 

そう言うと宴の行われている場所に歩を進めるリヒター。

二人は置いて行かれないように小走りでその後姿を追いかけるのであった。

 

「お前ら、派手に騒げよ。今日はバカラの誕生日だからな」

 

「「「「「おう、船長」」」」」」

 

 

「バレスト海域の悪夢」の真実を告げたルフィは仲間たちが絶句している様子をしり目に自分の特等席へと歩いて行った。

あの後、リヒターに言われた通り自分が出来ることを考えて、考えて、考えて今の自分になれた。

まだ未完成だが”新しい戦法”も形になりつつある今、そんな”今”だからこそ胸を張ってこの言葉を言える。

 

「リヒタ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――」

 

突如、メリーの頭の上で叫ぶルフィに仲間達も再起動をはたし、目を向けている。

 

「オレは、オレはやるぞ」

 

グランドライン(この海)”の先で待つと約束してくれた自身の目標である偉大な海賊の一人へと届くように、ルフィは声を上げる。

 

「海賊王に、オレは、なる」

 

 

- Luffy of ORIGINS END -

 




最後にルフィに言わせられて満足です。
それでは皆さん、暑い日が続きますが熱中症や夏バテなどに気を付けてお過ごしください。


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歴史は揺蕩うよ何処までも

本小説は8割の勢いと、1割の作者の息抜きと、1わりの考えなしで出来ています。


エニエス・ロビー崩落。

現在、世界はこのニュースで溢れていた。

僅か“8”人の少数海賊団により正義の象徴と言われた場所が完全崩壊し、剰えその海賊団は世界政府そのものに喧嘩を売ったのだから。

 

「まったく、ルフィの奴め。随分と派手に暴れたもんじゃのう」

 

ここは件の海賊団「麦わらの一味」船長「モンキー・D・ルフィ」を孫に持つ海軍の大英雄「モンキー・D・ガープ」が所有する海軍船。

ガープは連日報じられる“操作された情報”を見ながら新聞に載る愛する孫の顔を切り取り、アルバムに張り付けている。

 

「ガープ中将、ウォーターセブンが見えて参りました」

 

一人の少年が目的地に近づいてきたことを報告に来た。

ガープに報告後、ガープの部屋の豪華なソファーに揺ったりと座る海賊に目を向けるが、頭を振るうとそのまま退室してしまった。

 

「久方ぶりにお前さんらに会ったらルフィはどんな顔をするのかのう」

 

ガープは犬の被り物をしながら、自身の客である3人の海賊に声をかけるのであった。

 

ガレーラカンパニー仮設社宅

 

ナミたち麦わらの一味が集うこの場所にガープが襲来し、ルフィとゾロに因縁を持つコビーとヘルメッポが打ち負かされたそんな時だった。

突如ルフィがコビーと相対した時よりも速く、敵意を全開にして構えをとった。

その場にいた麦わらクルーは、ルフィの行動に驚きと共に強敵の出現を予期し迎撃体制を整えようとした。

その時だった。

 

ROOM(ルーム)

 

広場にいる全ての存在を覆うように半透明な膜のようなものが瞬時に広がった。

 

「シャンブルズ」

 

ナミが瞬きをしてしまったその一瞬で、ルフィの目の前に長刀を振りかぶった青年がいた。

それだけではなかった。

 

愛玩霊魂人形部隊(ホロウ・パペティアーズ)

 

ゾロの間合いから僅かに外れた位置にゴスロリ衣装でクマのヌイグルミを抱いた少女が唐突にいたのであった。

 

愛玩人形百鬼夜行(ドールズ・ナイトメア)

 

少女の声に反応したのか何処からともなく無数の愛らしい人形が、その愛嬌溢れる姿を無視しまくって手に手に凶悪そうな武器を手にゾロに襲い掛かったのであった。

先程とは違い一味の主戦力であるはずの二人が突如現れた二人におされていたのであった。

負傷が影響していると考えても、二人より数段格上の相手の登場に頭がおかしくなりそうであった。

 

悪魔風脚(デァアブルジャンブ)

 

ナミの隣にいたサンジはルフィに攻撃を仕掛けている男を迎撃するために、自身最強の技を放つ準備を終えていた。

自らの騎士道に殉じる彼は、ゾロの相手なっている少女を攻撃することが出来ないため、また傷の癒えていない船長を守るために戦いに割って入ろうとしていた。

 

百花繚乱(シエンフルール)

 

だが、そんなサンジの覚悟を嘲笑うかのように女性の艶やかな美声が木霊した。

瞬時にその声の主を見つけ出したサンジの目には可愛らしく笑う大人の女性がいたのであった。

 

束縛茨(ソーンバインド)

 

彼女の声が再び木霊すと、サンジの体は無数の腕で捕らえられてしまった。

サンジが無力化されたのを皮切りに、ゾロはヌイグルミのフワフワボディに押し潰され、ルフィも刀を首筋に当てられていた。

 

「・・・、強くなったなルフィ」

「あぁ、くそー、負けちまった」

 

ルフィの首筋から刀を引くと左手を差し出し、ルフィを立たせる青年。そんな青年の手をなんの躊躇もなく取り、立たせてもらうルフィ。

 

「ホロホロホロホロ、やっぱコイツ可愛くねぇな」

ちくしょう、邪魔だ退かせろコラ

 

ゾロを下敷きにした大量のヌイグルミの上に座り一息ついている少女。

そんな少女に対して、何か言っているようだがその大量のヌイグルミが邪魔で声が聞き取りにくいゾロ。

 

「あらあら、おイタはダメよ」

「ふぁい、うぉおねぇ様♥️」

 

束縛を解き、サンジの頬を撫でながら、大人の色香を薫らせながら窘める女性。

そして、その色香に完全に遣られて戦意を喪失しているダメ男(サンジ)

急に気が抜けた雰囲気にナミが呆れていると、その隣にいたロビオが下をむきながら振るえていることに気が付いた。

 

「何でだ」

「ちょっと、どうしたのよロビオ」

 

ロビオを挟む形で反対側にいたたしぎがロビオに声をかけると、顔をあげ、先程とは反対に驚きのあまり大きくなってしまった声をあげて叫んだ。

 

何でこんなところに、七武海の海賊団の、しかも“幹部”が3人もいるんだよ

 

その声に思わず件の3人を凝視してしまう麦わらの一味とガレーラカンパニー、フランキー一家一同。

 

“アーベン海賊団第2師団総合医療部隊船医長”。

 

「黙れ、ニコ屋。今いいところなんだ」

 

生死の天秤(ライブラ)”トラファルガー・D・ワーテル・ロー。

 

「此方に“殺意”はない」

 

懸賞金元4億6400万ベリー(海軍非公式発表にて更新中)。

 

“アーベン海賊団第1師団第二遊撃部隊式隊長”。

 

「ホロホロホロホロホロ、世界を引っ掻き回したからっていい気になってたのか?」

 

虚の霊姫(ホロウズ・プリンセス)”ペローネ・ペローナ。

 

「あたし達は“友達”に会いに来ただけだ」

 

懸賞金元2億ベリー(海軍非公式発表にて更新中)。

 

“アーベン海賊団第3師団智略部門学術科学長”。

 

「そうなの、だからあまり物騒な“モノ”向けないで」

 

百花妖爛(ローゼン・ダンタリアン)”ニコ・ロビン。

 

「それに今回、私達は“ある方”のメッセンジャーとして来ているのだから」

 

懸賞金元3億9870万ベリー(海軍非公式発表にて更新中)。

 

ロビンはそう言うと、自身のコートから大事そうに電伝虫を取り出すと机に置いた。

数秒とかからず、受話器から声が聞こえてきた。

 

『・・・・・久し振りだな、元気そうでなによりだよルフィ』

リヒター

 

“アーベン海賊団大船長”。

 

『活躍は耳にしている、というとガープ中将が怒りそうだな』

 

緋閻絶刀(ひえんぜっとう)”アーベン・D・リヒター。

 

『少し、用事があってお前に会いに行けなくてな。ロー達を名代にしたんだ』 

 

懸賞金元17億9900万ベリー(海軍非公式発表にて更新中)。

 

受話器から聞こえてきた声に嬉しそうに声をあげるルフィ。

ナミ達麦わらの一味は、奇しくも2人目の七武海と声だけではあるが、会合したのだった。




唐突に仲間になってたり、居なくなってたりするので訳分からなくなりそうですが、EPISODEシリーズは映画のように異なる歴史として扱っていただくと幸いです


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作者の完結(敗走)報告

本小説は前話を持ちまして完結扱いとさせていただきます。

長らく更新もしてない上に中途半端な終わらせ方で大変申し訳ありません。

作品の削除等は考えておりませんが、ある日突然消えている可能性も有ります。

それに関しましては、何卒ご容認いただけると幸いです。

このような作品を読んでくださっていた皆様に多大なる感謝を記すと共に、今後の皆様の活躍と人生を楽しめる時間ができるだけ多く与えられることを祈っております。

この度は作者の勝手な都合ながら、この話の巻く引きを報告させていただきました。

最後になりますが、今まで拝読していただき本当にありがとうございました。

 

 

以下文字数稼ぎ文

あああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいああああああああああああああああえああああああああああああいあ



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A NEW WORLD
Re:00


もう一つの海賊物語が行き詰まってしまったので新しく書き直してイロイロ変えたこちらを書いてしまいました。
暇つぶし程度でも良いので見てやってください。


「オレの財宝か?欲しけりゃくれてやる」

 

その声を待っていたかのように曇天の空から雨が降り始めた。

 

「探せ!!」

 

そして、雨は強さを増していく。

それでもなお、男の声は全世界へ響き渡る。

 

「この世の全てを“そこ”に置いてきた」

 

海賊王『ゴールド・ロジャー』、彼の死に際に放たれた言葉は世界を揺るがした。

そして。

 

「悪いが、オレはオレの一味を作る。声かけてくれてありがとな“シャンクス”、“バギー”」

 

大雨の中、共に過ごし育った兄弟分からの誘いを断る青年。

その顔には二人への申し訳ないという感情がありありと映し出されていた。

 

「なんでだよ、お前もオレの誘い断るのかよ」

「おい、このハデバカ野郎。なんでオレからの誘いも断るんだよ」

「だってよ」

 

青年はその時、船長『ゴール・D・ロジャー』の駆け抜けた生き様を思い出し苦笑いをしていた。

 

「この海で、最も自由な男に育てられたオレ達が連んじまったら面白くないだろ」

 

 

小舟に揺られた男が目を覚ます。

 

「懐かしい夢を見たな。あいつら元気にやってるかな」

 

歴史の転換期、大海賊時代の幕開けを共に目にした仲間と別れて数年。

青年は大人の男へとなっていた。

男は起き上がり辺りを見回すと一隻の船を襲う海賊船を見つけた。

 

「んー、あれでいいか今回の“貯金箱”」

 

何もない筈の場所に男の手が沈み込む。

そして、その何もないはずの場所から一振りの真紅の巨大な鎌が姿を現す。

次の瞬間、男の姿は空にあった。

鎌の刃が水平になるように空中で構えると鎌を後に引き着け、間合いに入るなり鎌を振りきる男。

鎌は真紅の斬撃を放つとなり襲われている船と海賊船の間へと着弾した。

巨大な水しぶきを上げて2隻の船の間に渓谷のような海の切れ目が出来上がった。

 

「紳士淑女の皆様」

 

欄干に音もなく現れる男。

長く伸ばした緋色の髪が風でたなびき、左手を自身の胸に添えるその姿は絵になるも右手に握られた巨大な真紅の鎌が男が一般人でないことを物語っている。

 

「さしあたりまして、目の前の無法者。私が排除させていただきましょう」

 

そして、右手の鎌を海賊船へと向け優雅な笑みを浮かべる男。

 

「だから、金と食料少しくれ」

「「「確保ーーーーーーーーー!!」」」

「あれぇ?」

 

グランドラインとある海軍支部

 

「いやぁー、参った。まさかオレを誘い出す罠だったなんて」

「おどれアホ過ぎちゃうん」

 

料理を運んできた料理人に話しかけられて檻から顔だけ出す男。

 

「にしても旨いなお前のメシ、お前オレの船のコックになれ」

「アホ抜かせ、なんで海軍におる人間が好んで海賊になろうとすんねん」

 

料理人の男はトレイを回収するとそのまま立ち去ろうとした。

 

「だってお前、オレのトレー回収する時スゲー嬉しそうじゃん。ここで料理は作りがいがないんじゃないの?」

「・・・・・・、だぁとれボケが。明日も楽しみにしときや」

 

料理人ブランチは皿を洗いながら先程下げてきたトレーに置かれた皿を見つめた。

思えば喧嘩と料理ばかりの人生だった。

年老いた両親のために海軍に調理兵として入隊したが、配属されたこの支部では食事を粗末にされ続けた。

幼い頃、両親が自分たちの分の食事を削ってまで食べさえてくれたブランチは恵まれた体格と能力者ということから予備役として戦うこともあった。

それでも、根底にある料理人としてのプライドが常に怒りを覚えさせ続けた。

この海軍支部で日常的に料理は無駄にされ続けた。

元貴族の支部長の舌に合わないと言う理由からブランチ渾身の料理はろくに食べられず捨てられ続けた。

そんな最中、偶々入った情報により捉えた海賊。

何気なしに出した賄いにも劣る料理を笑顔で完食し礼を言われた。

ブランチは久しぶりに充実した日々を過ごしていた。

そんな日は唐突に終わりを告げることになる。

 

「お、メシの時間か」

「おう、ワシがお前に食わせる最後のメシや」

 

いつもの覇気を感じさせる豪快ぷりはなりを潜め、しかし一切の妥協と手抜きがなされていないと一目でわかるクオリティの料理を前に男はいつものように完食するのだった。

 

「ワシがオドレにメシ食わせるんも今日で最後や」

「何かあったん?」

 

いつもならトレーを下げて終わるそんないつも通りは今日は無かった。

 

「オトンとオカンが死んだ。流行病やったらしい、葬式も親戚連中が終わらせてもうて帰ったらワシの家も何もかも無くなっとった」

 

裕福であったとは言えない料理人の両親、その最たる理由が親族の借金の保証人だった。

それも、ブランチの働く支部の支部長が小遣い稼ぎで街のチンピラを擁護した腐った金貸しだった。

両親のために働き、いけ好かない奴に頭を下げ続けたのも両親のためだった。

しかし、その理由であった両親が居なくなった途端、ブランチの中にあった何かが音を立てて切れたのだった。

 

「せやから、今日で最後や。オドレいつでもここから逃げれるのになんで居ったか知らんけど元気でな」

 

料理人が話し終え顔を上げると牢の中でストレッチをしている男がいた。

 

「よっし、ぶっ飛ばすか支部長」

「は?」

 

いつものように軽い口調で言われたのは海軍への反逆の意思。

ブランチの口から思わず漏れた声もどこかアホっぽかった。

 

「ワ、ワレ何言うてんや!!ココはグランドラインの海軍支部やで!!どんなに弱く見積もっても昨日今日海賊になった小僧が勝てる訳ないやろ!!」

「えぇー、オレこう見えても結構歳いってるよ?」

「ほぉ年下やと思っとったわ、童顔なんやなぁ。てちゃうわ!!それにワレ、自分の得物は倉庫に「よいしょっと」

 

男は何のこともなく空間に手を突っ込むと真紅の大鎌を取り出した。

 

「お、刃研いでくれたみたいだなキレイキレイ」

「そ、それにあのボンボンは元貴族や。いくらあいつ自身が弱くても親の七光りが」

「なぁ」

 

ブランチの言葉を遮り男がブランチへと顔を向ける。

 

「いつまで()()()()()を探し続けるつもりだ」

 

ブランチは初めて男から真剣な眼差しを向けられた。

その瞳はブランチを真っ直ぐ射貫くように強い意志が感じ取れた。

 

「両親のことは残念だった、オレにはそれしか言えねえ。だけど、今のお前はその両親を()()()()()()にして諦めることに馴れているようにしか思えない」

「な、なにをゆうて」

「お前の両親は、息子にそんなこと望むような、そんな親だったのか」

 

そう言うと男は無造作に鎌を振った。

男が収監されていたのは監獄塔の天辺に位置する牢。

無造作に振られた鎌は強固に作られた筈の壁を綺麗に切り裂いていた。

 

「じゃ、オレ行くわ」

 

そう言うと男は自分の切り裂いた壁から外へと飛び降りていってしまった。

ブランチは自身の調理器具が入ったリュックを背負い門の前に立っていた。

自分の背後では爆発音が鳴り響き、建物の倒壊する音が木霊する。

しかし、ブランチの中では別の声が鳴り響き続けていた。

 

『いつまで諦める理由を探し続けるつもりだ』

 

男に言われた言葉。

それが常にブランチに語りかけていた。

海軍に入る前、ブランチはチンピラ同然に喧嘩もした。

それでも、両親のためにと真面になったつもりだった。

 

「おい、ブランチなにしてやがる。てめえもあの海賊捕まえるの手伝えや」

 

()上官の男がブランチに指図してくる。

しかし、ブランチにはその声は一切届いていなかった。

倒壊する支部の建物、しかしただ一つ無事な建物があった。

最上階にしか部屋はなく、全ての建物を見下すように建つその建物は支部長である男がいる建物だった。

 

「は、おもろい男やないの」

「おい、ブランチ」

 

直後、上官だった男の頬にブランチの拳が突き刺さる。

上官だった男は後に控えていた部下達を巻き込み盛大に吹き飛んでいく。

 

「仕舞いや、我慢すんのも。それを親のせいにするんも」

 

ズカズカとまるでチンピラだった頃のように歩き始めるブランチ。

その視線の先には土煙で見え隠れするあの男の姿があった。

大鎌を、棒きれを扱うように軽々と振るい向かってくる佐官クラスを笑顔でぶっ飛ばす。

その姿を目標にブランチは走り出した。

 

「おらぁ、いつまで遊んどんねん。ワシも混ぜんかいボケ!!」

 

全身から放電に似た音を滾らせながら大軍に突っ込んでいくブランチ。

ある者は鎌の棒部分で吹き飛ばされ、ある者は電撃を纏った拳でぶん殴られ、数分ともたずその場にはブランチと鎌を持った男しか立つ者は居なかった。

 

「かぁ、久しぶりに暴れたわ」

「ふふ、すっきりした顔しやがって」

 

男の言葉にブランチは男と同時に支部の敷地で無傷の一棟の塔を見上げる。

 

「それじゃ、いくか」

「おうよ!!」

 

支部長を務める海兵は急ぎ部屋中の金品と島民に無理やり書かせた借用書をバックに詰め込んでいた。

 

「ぱ、パパ。何なんだよあいつ、僕殺されちゃうよ助けて」

 

傍らに置かれた電々虫に向かって叫ぶその様は大変哀れだった。

 

『バカ者が!!だから“奴”に手を出すのは止めろといったのだ!!貴様の小遣い稼ぎもバレているだろうから全て処分してさっさと逃げ出せ』

「もちろん、パパが迎えに来てくれるんだよね。そうだよね」

『行けるわけ無かろうが、そもそも盗聴の危険性がある一般回線なんぞ使いおって。そこからの脱出は自分でなんとかしろ』

 

その言葉を最後に電々虫の交信が途絶える。

 

「ちょ、パパ」

「あらら、見捨てられてやんの」

「おうコラ、落とし前つけに来てやったで!!」

 

支部長が意識をそらしていた僅かな時間、その間に件の男とブランチがドアを開け中に入っていた。

 

「ひ、ち近寄るなゴロツキ共!!ボクに手を出せばどうなると思っているんだ」

 

地位と後ろ盾のみで生きてきた支部長にこの場を切り抜ける力は無かった。

 

「知るか、オレお前のこと知らないし」

「ワシも、オドレの事なんぞ興味ないわ」

 

男とブランチはその言葉と共に動いた。

男は飛び上がり鎌を振るう。

すると男の周囲、塔の頂上部は綺麗に細切れになり、男はより高く空へと駆け上がった。

ブランチもまた、右腕を引き体を捻る。

同時に溜め込んだエネルギーを右腕に集めていった。

 

戦鎌居合(せんれんいあい)

並列電血(へいれつでんち)

 

支部長の耳に刑を執行する執行人2人の声が聞こえた。

上空には昼間にもかかわらず赤い三日月を背負う狐が。

自分の眼前には雷を放出する天狗の幻想が見えていた。

 

威鳴(いなり)

「エレキパンチ」

 

支部には多くの住民が集まりその堅牢な扉を前に困惑していた。

数時間前、突如轟音が鳴り響き遠くから見ていても支部の建物が砂塵に塗れて見えづらくなっていく。

そんな異常事態に多くの住民が集まっていた。

すると突然、“シャラン”という音と共に片方の扉が粉々になりもう片方の扉も“ドゴン”という音と共に遠方に飛んでいった。

 

「ほんで、この後どないすんや」

「とにかく東西南北の4つの海を旅しようかなと思ってる。大きめの船も色々な装備も手に入ったし」

 

男はそう言うと海軍船を見上げる。

海軍を象徴するカモメのマークが付いた帆も付け替えられて白い帆が付けられていた。

 

「んで“船長”。あんた名前は?」

「あぁ、言ってなかったな」

 

すると1枚の手配書が風にふかれて空へと舞っていった。

そこには不敵に笑う緋色の長い髪を靡かす男が写されていた。

 

緋狐(ひこ) アーベンド・リヒター

賞金額 900万ベリー

DEAD OR ALIVE(生死を問わず)



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Re:01

何となく続き書きました。


リヒターとブランチが新世界の海軍支部を潰して2ヶ月が経った。

彼らは今何をしているのかというと。

 

「「ぶはぁ~、食った食った」」

 

潰した支部の金庫から拝借した金を文字通り食い潰していた。

 

「いやぁ、ブランチのメシの方が旨いけどよ、偶には外食もいいもんだな。あ、そこのお姉さん悪いんだけどデザートココからココまでお願い」

「まだ食うんかい!?ワシはもう腹一杯や。あっとお嬢ちゃんココからココまでの酒頼むわ」

 

とある島にて豪勢に宴を開いていた。

 

「うふふふ、面白い人を仲間にしたわねリヒター」

 

同席する1人の女性を含めて。

 

「しかし、人魚っちゅうんわ奇っ怪なイキモンおったんやな」

「あら、私もここまで鼻が長くて真っ赤な珍生物初めてよ?」

 

ピキという音が聞こえたような気がした。

 

「しかも、よりにもよってタコかいな。夢なくすわぁ」

「あらあら、その長い鼻の何処まで骨が入っているのか解剖しても良いかしら」

 

徐に立ち上がり両手から放電音を鳴らすブランチ。

蛸脚を巧みに扱い、全ての脚と両手に手術器具を持つ女性。

 

「2人とも落ち着いてよ。取り敢えず“スキュル”は術具(それ)仕舞う、ブランチも能力解除して」

 

「むぅ、わかったわ」

「しゃぁないのう」

 

リヒターを挟んでいがみ合うブランチとタコの人魚の女性。

リヒターとブランチは現在『魚人島』に来ていた。

そして、最近出来たばかりの『マーメイドカフェ』にて食事を楽しんでいた。

 

「それで、何をしに来たのリヒター?」

「ん?あぁ、船長との約束を守りに来た」

 

そう言うとリヒターは会計を近くを泳いでいた人魚へと手渡し、店の扉へと進んでいく。

 

「シャーリーはいつものとこかスキュル」

「えぇ、貴方が来ると知ってたみたいね」

「ほんでどこに行こうとしてんねんリヒ」

「付いてくれば解る」

 

魚人島のはずれ、海の上からの日が当たる深海の森に少女はいた。

 

「・・・・・、遅かったねリヒター」

「悪いなシャーリー、こう見えてもやっと立ち直ったんだぜ」

「うん、知ってるよ。“見た”から」

 

アオザメの人魚“シャーリー”、彼女には不思議な力があった。

水晶玉を使うことで、高確率で的中する未来予知をする事が可能であった。

 

「ほい、コレお土産。マーメイドカフェのシュークリームとエクレアだ」

「ありがとう、それじゃ“何”を知りたい」

 

笑顔で報酬を受け取ったシャーリーはリヒターの目を見つめ尋ねる。

 

「“ゴール・D・ロジャー(ロジャー海賊団船長)からの遺言”そのありか」

「“ゴールド・ロジャー(海賊王)からの遺言”じゃなくて?」

「あぁ、ウチの船長からの最後の指令を聞きに行く」

「わかった」

 

リヒターとシャーリー、その姿を遠くから見守るブランチとスキュルと呼ばれた女性。

 

「うちの船長は、海賊王を狙ってへんようやな」

「昔からそうさ。あいつは本当に大事なモノのためにしか戦わないからね」

「おまん、ウチに来ないんか?」

「はっ、あたしゃ“生物学者”が本業だよ。でも、リヒが心配だからついてってあげるよ」

「おう、そうしてくれや。リヒターも守るもんがあった方が自分を大事にするしの」

 

数日後、「凪の帯(カームベルト)」に存在する無人島。

その洞窟の中にリヒターはいた。

そこには、不自然に置かれた音貝があった。

もっとも、リヒターにとってそれは見慣れた音貝だったが。

音貝の置かれていた岩を椅子代わりにし、音貝を再生し始めるリヒター。

 

『よう、どうせコレ聞いてるのはリヒターだろ。いつも面倒くさいこと頼んで悪いな』

「そう、お思いでしたらこんな方法で遺言を残さないでくださいよロジャー船長」

 

普段のひょうひょうとした周囲を傾く雰囲気はなりを潜めたいた。

そこに居たのは思慮深く、それでいて様々の物事を理知的に捉えようとする男の姿だった。

 

『まぁ、お前にはとんだ貧乏くじになるだろうが引き受けてくれるだろうとオレは信じているぜ。

 オレの子供のことはガープニ頼んだ。だから、お前にはこれからの時代を頼みたい。

 オレ達は“早すぎた”、だからこれからの時代をお前のやり方で進んでくれ』

 

そう言うとロジャーの音声は切れた。

困ったように顔をゆがめるリヒターであったが、音貝からノイズのような音が漏れ続けていることに気が付いた。

 

『もう、流石に聞いてねえよな。クッソ恥ずかしいが最後に入れとくか。

 リヒター、お前は本当に可愛げが無くてレイリーと一緒になってオレに説教してくれたな。

 シャンクス、お前を拾ってからずっとハラハラしっぱなしで気が休まる日は少なかったぜ。

 バギー、お調子者で大事な時に限って大ポカかますお前には説教しっぱなしだったよな。

 それでも、お前達がいたからオレはラフテルまでたどり着けた気がする。

 お前達、次代の奴らを見てこれたから航海し続けてこれたと思っている。

 悔いは無いオレの海賊人生、お前達と航海出来たことこそが何よりも誉れだ。

 じゃあな、愛してるぜ馬鹿息子ども。

 オレの居なくなった海を思うがままに走り抜け』

 

それは、かつて敬愛した男から彼が可愛がった3人の見習いに向けた手向けの言葉。

松明が消えるその瞬間、笑みを浮かべていたリヒターの頬を一筋の涙が落ちていった。

 

「ほんで、何処に行くんやリヒター」

「西の海」

「あら?新世界に行かないのね」

 

どこかスッキリとした顔の、雰囲気も変わったリヒターの後ろからブランチとスキュルが笑顔で立っていた。

3人を乗せて船は進む。



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