クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン (じゃすてぃすり~ぐ)
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プロローグ「フレンドリー・ネバフッド・カスカベシティ」

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見ていたら、書きたくなりました。
忍殺語が色々と拙いですが、それでも『許せる!』と言う方だけ、お読み下さい。

5月6日:サブタイトルと本文の一部を訂正しました。

5月23日:さらに本文を大幅に訂正しました。


 ネオサイタマ。IRCネットワークが世界を網羅し、サバネティックス技術が普遍化した近未来の日本の首都である。

 

 そこでは、巨大企業群『暗黒メガコーポ』が裏で世界を支配し、秩序は悪化、その影では時を越え蘇った半神的存在『ニンジャ』が暗躍を繰り返し、世は正に古事記に記されたマッポーの世となった。

 

 だが、そんなマッポーの世に一人のヒーローが現れた。嘆き悲しむ人々の声に答えるが如く。

 

 摩天楼を巧みに駆け抜け、力なき人々を救い、悪を挫くヒーロー・・・その名を・・・。

 

 

 

―ネオサイタマ、カスカベシティ。

 

「ホッホーイ!」

 

 カスカベ・シティの摩天楼を手首から出る糸を使い、ターザンのように縦横無尽に駆け巡る人影があった。

 赤と青で彩られたタイツめいたスーツを纏った、赤いマスクを被った人物である。

 その人物は、どういう原理か、近くにある建物の壁に張り付くと、街にいる人々を見ていた。

 ザンギョ・ワークスから帰宅中のサラリマンや、ブカツ帰りの学生達、サイバーゴス、ペケロッパカルト等々・・・、色々な人間をその人物は見ていた。

 

『今のところどうですか、何か変わった事は?』

 

 その人物の耳元から声が聞こえる。マスク越しで見えないが彼の耳には通信インカムが付けられているのである。その通信インカムからの通信だ。

 

「んー、今のところは異常無しかな。今日は早く帰れそうかも・・・」

 

 その通信の主にそう答えた次の瞬間、「アイエエエエ!」と悲鳴が上がる。

 

「じゃないな。言ってる傍から問題発生だゾ」

 

 その悲鳴を聞き、少し残念そうにその人物はため息を漏らす。

 

「でもま、皆をお守りするのがニンジャにして『親愛なる隣人』のオラの役目だし頑張んないとね。それじゃ行って来るゾ~」

『はい、行ってらっしゃいませ「スパイダーマン」』

 

―TWIP!

 

 そう言って、通信を切るとその人物・・・スパイダーマンは手首から糸を出してターザンめいた動きで悲鳴の元へと向かったのであった。

 

 

―同時期・・・。

 

「ザッケンナコラー!スッゾコラー!」

「「アイエエ・・・ゴメンナサイ!」」

 

 人々が行き交うストリート、その往来でヤクザがヤクザスラングでまだ中学生ぐらいであろう若いアベックを恫喝していた。コワイ!

 余りの恐ろしさに、ドゲザするアベック。何故こうなったのか?

 理由は、男の方が肩がぶつかったという些細な事であった。

 

「どうするよ、コレ?お前がぶつかった所為でスーツが汚れちまったじゃねぇか?どうすんだ、エェ?」

「ハイ、スイマセン!」

 

 男の方にスーツを見せながらすごむヤクザ。正直に言うと汚れてはいない、実際言いがかりな。

 それには気づかず、男はドゲザしながら謝っている。

 

「このスーツ、何百万したと思ってんだ?スイマセンって言うなら金出せコラー!」

「アイエエエエ・・・」

 

 胸倉を掴みながら恫喝するヤクザ、男は情けない悲鳴を上げるしかない。

 

「金がねぇってんならいい方法があるぜ?この女をオイランとして売り飛ばせばいい。これだけ可愛いし、豊満なんだ。結構稼ぐんじゃねぇか?」

「アイエっ!?」

 

 ナムアミダブツ、ヤクザの子分・・・コブンヤクザがいやらしげに笑みを浮かべながら非人道的な提案!言われてみると、その女性のバストは豊満であった。

 

「そうと決まれば、こいつを連れてくぞ」

「い、嫌!ヤメテ、離して!」

「大人しくしろコラー!」

「ヤメロー!ヤメグワー!?」

「ウッセコラー!」

 

 女を連れて行こうとする、コブンヤクザ達。それを男が止めようとするも、ヤクザによって蹴り飛ばされてしまう。街行く人は目の前の凶行を止めようともしない。止められないのだ!おお、ブッダよ眠っておられるのですか!?

 その時だ!

 

「ちょーっと待った。肩がぶつかったからって、それはあんまりじゃない?」

 

 声が聞こえる。街行く人も、ヤクザも、アベックもその方を振り向けば、摩天楼の彼方から彼はやって来た。

 

「見ろ!スパイディだ!」

「俺達の親愛なる隣人、スパイダーマンがやって来たぞ!」

 

 そう、スパイダーマンだ!

 人々の歓声を受け、くるりとアクロバティック回転をしながら華麗に着地する。

 

「アァン、ダッテメコラー!」

「ドーモ、親愛なる隣人スパイダーマンです。地獄からの使者でも、キノコ狩りの男でもいいよ」

「ザッケンナコラー!おい、テメェら!このイカれたコスプレ野郎をヤッチマイナー!」

「「「ヨロコンデー!」」」

 

 ヤクザの一声で、子分ヤクザ達がスパイダーマンを取り囲むように近づく。そんな状況でも、スパイダーマンは臆するどころか、何処吹く風で軽口を叩く。

 

「全く、何でこんなヤクザってこんな怒りっぽいわけ?カルシウム足りてないんじゃない?」

「ワドルナッケンナグラー!」

 

 子分ヤクザが拳を振り上げてスパイダーマンに殴りかかる。

 だが、スパイダーマンはそれを難なくかわすと、腕を掴みイポン背負い!

 

「イヤー!」

「グワーッ!?」

 

 地面に叩きつけられノックアウト!

 

「テメッコラー!」

 

 アブナイ!モヒカンヘアーの子分ヤクザが、ドスダガーを引き抜いて背後からスパイダーマンに迫る!

 

「おっと、これは没収!」

「アイエッ!?」

 

 だがくるり、と振り向き手首から糸を発射。ドスダガーを絡めとり奪い取った。

 

「グサー!」

「あ、アイエエエ!?」

「なーんてね、冗談だゾ。ほい、コレ返す」

 

 そして、そのままドスダガーをモヒカン子分ヤクザの額目掛けて振り下ろす・・・と見せかけ刺さる一歩手前ですん止め!刃の方を手に持ち、モヒカン子分ヤクザに返却した。リチギ!

 

「イヤー!」

「グワーッ!?」

 

 呆気に取られるモヒカン子分ヤクザの顎に強烈なアッパーカット!モヒカン子分ヤクザは、イポンヅリマグロめいて吹っ飛びノックアウト!

 

「ウオー!」

「いいぞー!」

「ヤレー!スパイディ、ヤレー!」

 

 スパイダーマンがヤクザ達をぶちのめしている光景に、ギャラリーは口笛を吹いたりしながら声援を送る。

 

「ご声援ドーモー」

「チョーシノッテンジャネッゾコラー!」

 

 戦いそっちのけで、声援に答え手を振るスパイダーマンにチャカガンを抜こうとするも・・・、

 

「街の往来で、アブナイ物を出しちゃいけませーん」」

「アイエッ!?何だコリャ、取れねェ!」

 

―TIWP!

 

 それよりも早く、スパイダーマンの手首から発射された白い弾丸が子分ヤクザに命中。チャカガンをしまっていた服ごと取り出そうとした腕に命中し取れなくなってしまう。それはまるで蜘蛛の巣めいていた。

 

「イヤー!イヤー!イヤー!」

「あ、アイエエエエエエエエエ!?」

 

 続けざまに、白い弾丸を連射!たちまち子分ヤクザは蜘蛛の巣まみれにされた。ナムアミダブツ!そしてふらつきながら壁にぶつかり、そのまま壁に固定されてしまった。

 

「さてと、残りはアンタだけだゾ」

「あ、アイエエ・・・」

 

 子分をあらかた片付け終え、ヤクザの方へと向き直る。ヤクザは震えながら後ずさる。何故ならば、目の前の赤と青のスーツを纏った男(スパイダーマン)が一般人にとってはヤクザよりもコワイ存在であると悟ったからだ。そう、半神的存在『ニンジャ』である!

 

「アイエエエエ!?ニンジャ、ニンジャナンデ!?・・・ハッ、真逆コイツ『カスカベ・シティの親愛なる隣人』か!?」

 

 『カスカベ・シティの親愛なる隣人』・・・、カスカベ・シティの治安はネオサイタマのどの地域よりも実際良い方である。その理由としてはニンジャがカスカベ・シティを守っており、摩天楼を縦横無尽にかけてはヨタモノやテロリストなど犯罪者を捕らえているという。

 そのニンジャはクモめいて、糸を発射し犯罪者を捕らえるという都市伝説が存在するのだ。

 目の前のスパイダーマンがそのニンジャである事を悟った次の瞬間。

 

「タ、タスケテー!アイエエエエエエ!!!」

 

 NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)を発症したかのように失禁し、腰を抜かしながらヤクザはおっかなびっくり這い蹲りながら逃げようとするが・・・、

 

「逃がすか!イヤーッ!」

「アバーッ!?」

 

 そうは問屋は卸さない!手首から白い弾丸を放ち四肢を拘束、身動きを取れなくした。

 

「ふぅ、後はマッポの仕事だゾ。っと、そこの二人は怪我はない?」

 

 手をパンパンと払いながら、ヤクザに絡まれていたアベックに問いかける。

 

「アッハイ、僕はダイジョブです」

「アイエエ・・・私もダイジョブです」

 

 ヤクザほどではないが、軽くNRSを発症しているのだろう。妙に視線がぎこちない。そこへギャラリーの一人だったおばちゃんが声をかける。

 

「怖がらなくていいわ、スパイディはニンジャだけどイイニンジャよ」

「街の人がヨタモノとかに襲われた時や火事に見舞われた時も、すぐに駆けつけてくれるしな」

「カスカベ・シティの皆にとって、スパイディはヒーローなんだ。一部の連中は快く思ってない奴もいるけどな」

 

 普通なら恐れられて然るべきなニンジャであるスパイダーマンを賞賛する声、声、声。アベック達はただ、ただ呆然とするしかない。

 

「それじゃ、オラはそろそろパトロールに戻らなきゃ。こいつ等の通報ヨロシクね、それじゃオタッシャデー!」

「「「オタッシャデー!」」」

 

 スパイダーマンはそう言って、ギャラリー達に手を振ると巧みに糸を使いカスカベ・シティの摩天楼の中に消えていった・・・。

 

―その後・・・。

 

「ふぅ・・・」

 

 パトロールを追え、カスカベ・シティの外れにあるバイオバンブーが生い茂った森へと入った。そして近くにあった岩に触れる。

 

―キャバァーン!

 

 すると、おお見よ!その岩が光り輝き、その岩の中心から人が一人通れるような穴が現れたではないか!

 スパイダーマンはその穴を潜ると、その先にある階段を降りた。そしてその先にあるエレベーターを降りたその先。・・・そこは秘密基地であった。

 彼の活動を手助けする様々なガジェットが展示されており、カスカベ・シティのありとあらゆる場所から通じている出入り口を供えた基地だ。

 

「ただいまー」

「『しん様』ー!」

 

 彼を出迎えたのは大財閥の令嬢めいたカチグミの少女であった。そのバストは豊満である。

 この少女は、『酢乙女 あい』。大企業『スオトメ・エンタープライズ』社長の一人娘である。

 

「おかえりなさいませ、しん様!無事に帰って来て、あいは嬉しいですわ!!!」

「アー、そのさ・・・あいちゃん。離れてくれると嬉しいゾ。オラ、今汗臭いし・・・」

 

 豊満を押し付けながら抱きつくあいに頬をかきながら照れくさそうに、スパイダーマンは言う。

 そして、そのまま紅いマスクに手をかけそれを脱いだ。黒い短髪に、ノリめいた太い眉毛の少年。スパイダーマンの素顔だ。

 

「お疲れ様、しんちゃん」

「ボーちゃんもただいま」

 

 再び声、スパイダーマンが振り向くとそこには眼鏡をかけた少し髪を長く伸ばした男がいた。

 『石橋 ボー』、スパイダーマンの友人であり、スパイダーマンの装備・・・手首から発射されるスパイダー・イト。それをを発射する装置である『ウェブ・シューター』を作った張本人である。

 ウェブシューターだけでなく、スパイダーマンの活動の手助けになるガジェットを沢山開発しているのだ。スゴイ!

 

「今日は大活躍だったね、ヤクザとの件の他にも火災に取り残された人を助けたり、銀行強盗をやっつけたり・・・」

「・・・だけど、銀行強盗の件は大活躍とは言えないよ」

 

 あの後、スパイダーマンはカスカベ・シティ中を駆け回り困っている人達を助けて回った。だけれど銀行強盗を捕まえる際、駆けつけたときには4,5人かは撃たれていたのだ。

 結局、そのうちの一人は死亡。残りの3,4人は重軽傷を負ってしまうという事態となった。

 その事を思い出し、沈痛な面持ちとなるスパイダーマン。そんな彼を察してか、あいがスパイダーマンに言う。

 

「今、考えている事を当てましょうか?『もっと、早く駆けつけていれば・・・』『もっと上手くやれていたら・・・』そんな感じでしょうか?」

 

「うん・・・。考えてもしょうがない事なのは分かってるんだ、『ガリアおじさん』にもこの力を授かった時に言われてたっけ。

 『お前は、コミックブックのヒーローじゃない。百人を救おうとしても、十人しか救えないかもしれない。

 一人しか・・・いや、誰も救えないかもしれない。救えたとしても、ニンジャである以上恐れられ、怯えられるかもしれない。

 この道に希望のともし火はない。それでも、お前がこの道を歩むのならばお前は私の「ニンジャソウル」を継ぐ資格がある。

 決して立ち止まってはならない。救える命に手を差し伸べろ。救えなかったものの魂はその胸に刻め。

 誰一人救えなかったとしても、救った人に恐れられようとも人を救うことを諦めてはならない』ってね」

 

 己の手を見ながら、スパイダーマンは自分に言い聞かせるように、あいに決意を語る。

 

「だからこそ、オラはガリアおじさんから託されたこの『力』を人々をお守りする事に使うゾ。それが、オラの大いなる責任だからね!」

 

 その決意にあいはええ。と頷きながら答える。

 

「だから私達も、しん様が思う存分連中と戦えるように十分サポートしますわ!」

 

 

 「うん、僕達。友達だからね、ユウジョウ!」

 

 

 

 あいに続くように、ボーもそう言って、スパイダーマンと拳を重ねた。

 

 

 

 さて、そろそろスパイダーマンの本名を紹介しよう。

 

 彼の名は『野原 信之介』。かつて、カスカベシティで『嵐を呼ぶ幼稚園児』と呼ばれた少年である。

 

 そして今、マッポーの世となったネオサイタマで、あるニンジャからそのソウルを託され、スパイダーマンとなった信之介の戦いが、始まる!

 

 

 

 クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン

 

 

 

 

「アー、所でそろそろ離れてくれない、あいちゃん。このままじゃ色々アブナイゾ」

 

「私、しん様になら何されても構いませんわ。何なら今からネンゴロでm「それ以上いけない」」

 

 

 

 その戦いの行方はブッダのみぞ知る!




やはり、忍殺語を用いての戦闘シーンは難しい・・・。書いていてそう思いました。
忍殺のコミカライズ版や、書籍版を読んで色々勉強せねば・・・。
次回は、何故信之介がスパイダーマンとなったのか?その『オリジン』について書きたいと思います。お楽しみに!
それでは~。


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『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #1

ドーモ、読者=サン、じゃすてぃすり~ぐです。
今回のエピソードはしんちゃんスパイディがどうやって誕生したか?について語りたいと思います。
とは言っても、今回はまだ導入部分だけですのでご了承を・・・。
それでは、ドーゾ。


―カスカベ・シティ、野原家。

 

「信之介ー、起きなさーい。学校始まるわよー!」

 

 朝、誰も彼もが目覚め、朝食を食べる時間。

 二階に続く階段で、信之介の名を呼ぶ女性がいた。

 ボリュームのあるパーマヘアの妙齢の女性である。その胸は平坦であった。

 彼女の名は、『野原 みさえ』。信之介の母であり、専業主婦である。朝食を作った後なのであろう、手にはお玉を持っていた。

 

「ん~・・・後十分」

 

 ナムサン!信之介から返ってきたのはまだ、寝ると言う返事だ。今日は平日、学校も勿論ある。しかも時刻は二度寝をすれば遅刻は確実な時刻である!それを聞いたみさえは、はぁ。と深くため息をつくと、大きく叫んだ。

 

「ザッケンナオラー!早く起きろッコラー!遅刻スッゾコラー!!!」

 

 コワイ!ヤクザスラングめいた怒号が野原家に木霊する。普通のティーンエイジャーなら「アイエエ!?」と叫びながら大慌てで起きてしまう程の怒号だ。

 

「んー、分かったよ。ファーア・・・」

 

 そんな怒号に、大して驚く事も無く欠伸をしながら起き上がる。信之介にとっては、こう言う風に彼女の怒号はチャメシ・インシデントなのだ。

 

「ひまとパパはもう朝御飯食べて、家を出たわよ!早くご飯食べて学校行きなさい」

「ほーい・・・」

 

 欠伸をしながらみさえにそう返し、食卓につく。ゴハンにミソスープ、タマゴ焼きと言った典型的な献立だ。

 

「イタダキマス」

 

 両手を合わせてそう言うと、ハシに手をつけてゴハンを食べ始めた。

 

「アー、ウマーイ・・・。やっぱニホンの朝食はゴハンとミソスープに限りますな」

「イディオットな事言ってないで早く食べちゃいなさい。スクールバスが来ちゃうわよ」

「ホーイ」

 

 他愛の無い会話をかわしながら、信之介は朝食を食べる。そして朝食を食べ終え、皿やチャワンなどを片付ける。それから洗面所に行き、歯磨き、洗顔を済ませ、学校の制服に着替えた。

 

「あっそうだ、母ちゃん。オラ今日も友達と勉強会やるから、帰りは遅くなるゾ」

「あら、そうなの?なら晩御飯はいらないわね」

 

 学校のカバンにスパイダーマンスーツを仕込みながら、信之介はみさえに言う。勿論、それは欺瞞だ。本当は、『仲間達』と共にスパイダーマンの活動をするためである。

 スパイダーマンとしての戦いに、自分の家族を巻き込ませる訳にはいかない為でもあった。

 

((母ちゃん達にばれないようにしないとね))

 

 家族に自分がニンジャヒーロー『スパイダーマン』だと明かしてはいないからだ。

 NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)を恐れての事ではない。と言うか、過去に色々と信之介と共に超常的な経験をした彼らだ。NRSなんか引き起こすかどうかも怪しいものだ。

 だが、ニンジャの強さは過去に戦ってきた敵達とは桁違いに強い。実際にその戦いに巻き込まれニンジャの強さを目の当たりにしたことがあるからわかるのだ。

 あの時、『彼』からニンジャソウルを託されなければ今頃自分はサンズ・リバーを渡っていたかもしれない。

 自分がスパイダーマンだと知られ、家族が戦いに巻き込まれる。それだけは避けなければならない。

 

「それじゃあ、行って来ます」

「いってらっしゃい」

 

 みさえにそう言って、信之介は家を出た。

 

 

◆クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン◆

 

 

 

◆クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン◆

 

「オハヨ、皆」

 

 家を出て暫く歩いた後、バスの乗り場に到着した。丁度スクールバスが来ていた為、そのまま乗り込む。そして、バスに乗っていた幼稚園の頃からの『友人』達に挨拶をした。

 

「「オハヨ、しんちゃん!」」

「しんちゃん、オハヨ」

「オハヨ、信之介」

 

 赤茶めいた色の髪の毛を二つ分けにした少女、『桜田 ネネ』。

 おにぎりめいたボンズヘアーの気弱そうな少年、『佐藤 マサオ』。

 藍色の少しはねた髪型の少年、『風間 トオル』。

 そして、ボーちゃん。

 それが4人の友人の名前である。彼らのユウジョウは、幼稚園の頃から続いており高校生になった今でも変わることは無い。

 挨拶をした後、他愛の無い話で談笑をする信之介達。

 

「そう言えば、昨日大活躍(・・・)だったよねしんちゃん!ほら、コレ見てよ!」

 

 唐突に、マサオが興奮交じりに信之介に今朝の新聞・・・カスカベ・シティでよく読まれている『デイリー・カスカベ』を見せる。

 それには見出しで『スパイダーマン活躍!ヤクザの魔の手からアベックを救う!』とショドーされていた。

 

「やっぱ凄いよなぁ、しんちゃんは・・・。他にも、銀行強盗退治や火災で取り残された人を救ったって記事もあるよ」

「ちょっとやめないか、マサオ=サン。スパイダーマンの正体は僕達『カスカベ防衛隊(ガーディアン・オブ・カスカベ)』の秘密だろ?」

「あ・・・そうだった。ゴメンゴメン・・・」

 

 興奮しているマサオを、風間は小声で制止させる。恥ずかしさと申し訳なさで顔を真っ赤にしながら信之介に謝った。

 ちなみに『カスカベ防衛隊(ガーディアン・オブ・カスカベ)』とは幼稚園の頃、信之介達が結成した自警団のことである。とは言っても、ゴミ拾いなどのボランティアをやっているだけだが。

 

「気にしなくていいゾ。幸い誰も聞いてる様子はないからね」

 

 さも気にしてないように信之介は言う。実際、彼らの周りの生徒は皆、談話をしていたり『ネコネコカワイイ』のCDを聞いていたりで先ほどのマサオの言葉は聞こえていなかったようである。

 さて、読者の皆様は気づいているようだが、彼ら『カスカベ防衛隊(ガーディアン・オブ・カスカベ)』の面々も信之介がスパイダーマンである事を知っている。

 ある事件で、信之介が『ある人物』からニンジャソウルを託されニンジャとなったのをその目で見ているのだ。

 

「そう言えば、もう3年になるんだよね。しんちゃんが『スパイダーマン』になってから」

「ン、そうだねぇ。・・・そっか、もうそんなになるんだな」

 

 ネネの言葉に、相槌を打つと懐かしそうに過去を振り返った。

 『彼』からニンジャソウルを託され、スパイダーマンとなって3年・・・色んな事があった。

 ヤクザやテロリスト、邪悪なニンジャから街を守ったり、交通事故や火災、災害などでも多くの人を救った。学校生活とスパイダーマンとしての活動と言う二重生活・・・、モータルの身だったのなら身が持たなかっただろう。下手すればカロウでオタッシャ間違い無しである。

 

「今日、学校が終わったら『おじさん』に会いに行かなきゃな・・・」

「ああ・・・」

「そうだね」

 

 信之介は、自分に『大いなる力』をくれた『彼』に感謝しつつ、学校が終わったら『彼』に会いに行くことを決意する。『彼』にこれからも、『大いなる責任』を全うしていくという事を伝える為に。

 

 

―一方、その頃・・・。

 

「ザッケンナコラー!スパイダーマン、あの忌々しいクモ野郎め!」

 

 カスカベシティにあるとあるオフィスにてヤクザのオヤブンらしきボンズヘアーのスモトリめいた中年男性が、ヤクザスラングを撒き散らしていた。

 彼の名は『ウィルソン・フィスク』、このカスカベシティを牛耳るキンググリズリー・ヤクザクランのオヤブンである。このヤクザクランはネオサイタマでも、5本指に入るほどのヤクザクランであった。・・・そう、あの『親愛なる隣人』と名乗る忌々しいニンジャヒーローが現れるまでは。

 彼が現れてからというもの、武器やメン・タイと言った麻薬・・・ありとあらゆる取引が彼の手によって潰された。それからと言うもの、キンググリズリー・ヤクザクランの経済状況は悪化。芳しくない状況に追い込まれていった。実際崖っぷちな。

 そして、昨日もまたキンググリズリー・ヤクザクランの者がスパイダーマンに叩きのめされ、マッポに逮捕された。フィスクの腸は煮えくり返っている。

 

「あ、アイエエエ・・・落ち着いてくださいボス」

「ウッセコラ、スッゾコラー!これが落ち着いていられるか!」

「アイエエエエ!?ゴメンナサイ!」

 

 そんなフィスクに、部下であるヤクザの一人が怯えながら諭すもかえってそれがフィスクの怒りの火に油を注いだ。バン!と机が壊れるほどに拳を叩きつけ恫喝するフィスクに、ヤクザは怯え失禁しながらドゲザした。

 

「ドーモ、フィスク=サン・・・ってありゃ、取り込み中でしたかね?」

 

 そんな中、このキンググリズリー・ヤクザクランの事務所にエントリーしてきたのは世紀末めいた服装に、目元にはドミノマスクを装着した男。その胸元には、クロスカタナのエンブレム!

 

「あ・・・これはドーモ、『コメディアン=サン』。いや、別に何でもない・・・」

 

 その男、コメディアンを見るや否や、フィスクは冷汗を浮かべ出迎える。一方、ドゲザしていたヤクザはと言うと・・・

 

「ア、アイエエエエエエエエエエ!!?」

 

 ナムアミダブツ!NRSを発症し、失禁。

 この弱肉強食ヒエラルキーの頂点たるヤクザが怯え、失禁するほどのアトモスフィア。

 このコメディアンなる男、ネオサイタマを牛耳る犯罪組織『ソウカイヤ・シンジケート』所属のニンジャである!コワイ!

 

「そう言えば昨日、お前の所のモンがスパイダーマンに叩きのめされたんだってなァ。ニュースで見たぜ?」

「・・・ッチ、早く用件を言え」

 

 触れて欲しくない自分のクランの汚点に、フィスクは顔をしかめながらコメディアンに問いかける。本来ならば、ヤクザスラングをまくし立て殴りかかっていたが、相手はニンジャだ。モータルであるフィスクには勝ち目はない。いくら、頭に来ようともフィスクはその事を充分理解していた。

 

「そこでだ、お前に提案を持ちかけてきたんだ。スパイダーマンを倒して、クランを持ち直させる。実際アブハチトラズな方法をな」

「詳しく聞かせてくれ」

 

 コメディアンの言葉に訝しみながらも、フィスクはコメディアンの案に賛同した。スパイダーマンを倒し、カスカベシティを再び自分達、キンググリズリー・ヤクザクランの勢いを取り戻し、再びカスカベシティを我が物とする為に・・・。実際、藁にも縋る思いな。

 

 

―そして、時間は流れ夕方。視点は信之介の方へ。

 

 学校が終わり、信之介達はカスカベシティのはずれにある丘に来ていた。

 

「やぁ、来たよ。『ガリアおじさん』」

 

 その丘にポツン。と建っているお墓、『ガリア、ここに眠る』と掘られたそれを撫でながら信之介は語りかける。

 

「久しぶり、今日は何の日か覚えてる?3年前、オラが貴方に助けられた日・・・そして、オラがこの道を歩むって誓った日だゾ」

 

 そう言いながら、信之介は3年前の出来事を思い出す。そう、自分達が『ガリア』とであった時の事を。

 

『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #2に続く。




 次回、本格的にスパイディ誕生秘話が語られます。
 ガリアとは一体何者なのか?どうやってしんちゃんがガリアから、ニンジャソウルを託され、スパイダーマンとなったのか?!
 そして、コメディアン=サンが持ちかけてきた提案とは!?
 乞うご期待!
 では、次回もお楽しみに。
 それでは~。
 


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『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #2

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
もうすぐ『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』が始まりますね、スパイディ大好きな自分としては待ち遠しいです。

さて、今回の話についてですが信之介達とガリアが如何にして出会ったか?
それについて書きたいと思います。


 信之介達が、ガリアと出会ったのは3年前である。

 その時の彼らは、小学校を卒業し中学校に入って間もない少年少女達であった。

 遊び盛りな彼らは幼稚園、小学校の時からも変わらず遊んだり、カスカベ防衛隊の活動をやっていた。

 その日、彼らはいつも通りにカスカベ防衛隊の活動を行っていた。落ちているゴミを拾い、燃えるゴミや燃えないゴミと分けて袋に入れる、実際ボランティアな活動だ。

 

「ん?」

 

 そのいつも通りの活動で、最初に異変に気づいたのはマサオであった。ゴミを拾っていたら路地裏の方から「アイエエエ・・・!」と女性の悲鳴のような声が聞こえた。

 

「何だろう?」

 

 好奇心故かそう呟いて、路地裏の方を見た。見てしまったのだ。

 ジゴクと化した路地裏を。

 

「!?ア、アイエエエエエエエエエエエッ!!?」

 

 腰を抜かし、顔面蒼白になって悲鳴を上げるマサオ。無理もない、その視線の先にあったのは原型を留めないネギトロと化した人であったもの。散らばる手足と首、壁に飛び散った血糊。ツキジめいた光景だ、コワイ!

 そして・・・、

 

「ア、アバッ・・・」

 

 たった今、一人の男に首の骨を折られて女性が殺された所を目の当たりにしてしまったのだ。極めつけに女性を殺した男、ニンジャのような服装に、頭巾とメンポをつけたその男は・・・、

 

「おやおや、悲鳴に釣られて子供がノコノコと・・・。ドーモ、始めましてマーダートオリマです。いけないなぁ、こんな所へ来ちゃ」

「アイエエエエエエエエ!?ニンジャ、ニンジャナンデ!?」

 

 あからさまにニンジャであったからだ。マサオはNRSを発症し、失禁。

 

「マサオ=サン、どうしたんだ・・・!?」

「う、嘘・・・」

「・・・!?」

「そん、な・・・」

 

 騒ぎを聞きつけ、駆けつけた信之介らも、目の前の架空『だったはずの』の存在に驚きを隠せない。

 

「「「「ニンジャ!?ニンジャ、ナンデ!!?」」」」

 

 数々の冒険を乗り越えてきたカスカベ防衛隊の面々もNRSには抗えない。失禁こそはしなかったものの、恐怖で足がすくんでしまう。逃げなきゃ・・・そう思っても身体がいう事を聞かないのだ。

 

「おやおや、お仲間も来たみたいだな。この光景を見られたからには仕方ない、纏めて死んでもらおう!イヤー!」

 

 そう言って、マーダートオリマはスリケンをカスカベ防衛隊目掛けて投げようとしたその時だ!

 

「そうはさせるか!イヤーッ!?」

「グワーッ!?」

 

 突如、路地裏の隙間を潜るように飛んできた何者かがマーダートオリマにトビゲリを放つ!アンブッシュだ!

 当然、マーダートオリマはそのアンブッシュに対処する事が出来ず、吹っ飛ばされる。

 

「え・・・!?」

「生き、てる?」

「あの人が助けてくれたのか・・・?」

「やぁ、怪我はないかい?」

 

 やられる!そう思っていたカスカベ防衛隊の面々は自分が助かった事に安堵。そこへ、マーダートオリマにアンブッシュしたであろうその何者かが現れた。

 

「ええ、おかげさまで僕達は無事・・・ニンジャ!?」

 

 風間は、その男にお礼を言おうとして固まる。何故ならその男もまたニンジャだったからだ。背中と胸に蜘蛛のマークがした赤と青を強調したニンジャ装束、そして、紅い頭巾にメンポ。そして目にはゴーグルと言った格好である。

 

「そうか、無事ならいい。後は私に任せてくれたまえ、ここからは私のステージだ」

 

 そのニンジャは、風間にそう言うと、アンブッシュから立ち上がるマーダートオリマにオジギをしアイサツをする。

 

「ドーモ、始めまして。ガリアです」

「ドーモ、ガリア=サン。マーダートオリマです。一体何のつもりだ?ヒーローの真似事か?」

「その通りだ、『ニンジャはゴッドに非ず、獣に非ず。ニンジャはモータルの親愛なる隣人である』が私のモットーなのでね」

 

 マーダートオリマもアイサツを返す。アイサツはされれば返さなければならない、『古事記』にもそう書かれてある。アイサツを返した後、問いかけるマーダートオリマにガリアと名乗ったニンジャはそう答えた。

 

「何ともイディオットな事を考えるニンジャもいたものよ。力の無いモータルをカラテで支配する!それがニンジャの在り方だ!イヤーッ!」

 

 そのガリアの言葉を一笑し、マーダートオリマはスリケンを二つ投擲!

 

「あっ!アブナイ!」

 

 信之介が叫んだ。

 

「ダイジョブだ、イヤーッ!」

 

―TWIP!TWIP!

 

 だが、ガリアは慌てずに信之介にそう返すと中指と薬指だけを曲げた両手をかざす。すると、おお!見よ!両腕の手首からクモの糸めいた何かが吐き出され、スリケンを二つ絡め取る。

 

「ナニィー!」

「返すぞ、イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

 驚くマーダートオリマ。返す刀で、ガリアは糸で絡め取ったスリケンを投げ返す!1個目は回避するものの、2個目は右肩に直撃した。ワザマエ!

 痛みに顔をしかめ、怯むマーダートオリマ。

 

「イヤーッ!」

「イ、イヤーッ!」

 

 怯んだ隙にガリアはマーダートオリマに肉薄。チョップを繰り出す。マーダートオリマは怪我した右肩を庇いながら左の腕でガード!

 

「な、舐めるな!イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

 マーダートオリマは左の足でガリアを蹴る。ガリアはその足を掴んだ。

 

「イヤーッ!」

「ヌゥーッ!?」

 

 そしてジャイアントスイングの要領でマーダートオリマを投げ飛ばす。マーダートオリマは受身を取り、着地!

 

「イヤーッ!」

「イ、イヤーッ!」

 

 再び接近しガリアは左ストレート。だがコレも防ぐ。だが、マーダートオリマは徐々に押されて行っている。実際ジリー・プアー(訳:徐々に不利)な。

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「イヤーッ!イヤーッ!イyグワーッ!?」

 

 左ハイキック!右フック!左のアッパー!二発目までは防げたものの、アッパーをマトモに喰らってしまうマーダートオリマ。顎が、吊り上げられたマグロめいて跳ね上がる。

 

「イィィィィヤァァァァァァァッ!!!!」

「グワーッ!?」

 

 裂帛の気合と共に、右の後ろ回し蹴りがマーダートオリマの腹部に炸裂!マーダートオリマは身体をくの字に曲げ吹っ飛び、突き当たりにあるゴミ置き場に叩きつけられる。インガオホー。

 

「ア、アバッ・・・!」

 

 マーダートオリマは起き上がろうとするものの、グルンと白目を剥き気を失った。ガリアはザンシンを暫く取った後、TWIP!TWIP!とマーダートオリマに糸めいた何かを貼り付け拘束する。

 

「す、凄い・・・」

 

 そんなガリアの活躍を信之介は目を輝かせてみていた。まるで、かつてテレビで活躍していたヒーロー『アクション仮面』を間近で見ているような気分だった。

 彼の目にはNRSによる恐怖は消えうせていた、あるのは憧れ。いつか自分もああいう風になってみたいと言う憧れが、信之介のニューロンに去来していた。

 

「さて、後はマッポの仕事だし・・・私はズラカルとしよう。・・・ヌ」

 

 グラリ、と揺らぎそのまま倒れ、動かなくなるガリア。一体どうしたのか!?

 

「おじさん!」

 

 慌てて、ガリアにかけよる信之介。まさか、さっきの通り魔ニンジャの戦いで怪我を追ったのか?カスカベ防衛隊の面々はそう思い心配するが・・・、

 

「Zzzzz・・・」

 

 杞憂だった。ただ、寝ているだけだ。ズルッと一斉にずっこけるカスカベ防衛隊の面々。だが、こうしている場合ではない。

 

「と、とりあえずこのおじさんと一緒に何処かに行かなきゃ・・・」

 

 マサオのいう事ももっともだ。いつ、マーダートオリマが意識を取戻し動き出すかわからない。それまでに、この場から去れればいいのだが、この眠っているガリアもいる。

 ほっといてもいいのだが、邪悪な通り魔ニンジャから自分達を救ってくれたこのニンジャのヒーローを置き去りにする事など少年達にはできなかった。

 だが、ここで問題が一つ。

 

「「「「おじさんを何処に匿おうか・・・」」」」

 

 このガリアを何処に匿うかである。ウカツに、自分達の部屋に匿おうにも親にどう説明すればいいのか分からない。とりあえず、マッポには通報し、ガリアを抱え路地裏を離れる事にした。

 

 

―近くの公園。

 

 

 ガリアが何処に住んでいるのかわからないため、最寄の公園のベンチに寝かせる事にしたカスカベ防衛隊。 とりあえず、この後どうするか考えていた所。

 

「ム、ここは・・・」

「あ、起きた」

 

 ムクリと身を起こし、ガリアが目を覚ました。

 

「ここは、近くにあった公園です。貴方が倒れたから僕たちで運んだんだ」

「フゥーム・・・、そうだったのか。3日も寝ずに悪事を働くヨタモノやニンジャ退治や迷子のネコ探し・・・色々と駆け回っていたから疲れが溜まってたか・・・、スシを食えばダイジョブと思っていたがウカツだったなぁ・・・」

 

 風間の言葉に、苦笑交じりに頭を抱えるガリア。3日も寝ずに、そんな事をやってたのかとカスカベ防衛隊の面々は驚く。

 

「私はニンジャだからな、多少の無茶は平気なのさ。まぁ、それを過信した結果、倒れて寝てしまうというウカツをやらかしてしまったがね」

 

 さも、当然のようにそう言ってのけるガリアにニンジャの凄さを改めて知ったカスカベ防衛隊であった。

 

「あ、あの・・・助けてくれてアリガトゴザイマシタ!あの時、ガリア=サンが来てくれなかったら僕達皆オタッシャしてました!」

「「「「アリガトゴザイマシタ!」」」」

 

 マサオの言葉を皮ぎりに、オジギをしながらガリアに感謝の言葉を述べるカスカベ防衛隊の面々。

 

「いや、どういたしまして。久しぶりだな、こんな風に感謝されるのは・・・」

「そうなんですか?」

 

 これは信之介だ。うむ。とガリアは頷く。

 

「ニンジャである以上、助けた相手から恐れられ、怯えられる事が多かったからね。こうやって、恐れられず普通に感謝されるのは嬉しいものだ」

 

 ガリアの言葉の意味を信之介は理解していた。NRS・・・、モータル・・・つまり我々人類がニンジャと出会った際に引き起こされる恐慌状態である。

 かつて数々の冒険で超常的な存在と接触、戦ってきた信之介やカスカベ防衛隊の面々でさえも、竦みあがってしまうほどの恐怖。逃げ出してしまうのも無理はない。信之介はそう思っていた。

 

「それで、お礼と言っては何ですけど・・・オラ・・・じゃないや、僕達カスカベ防衛隊の皆で貴方の活動のお手伝いをしてもいいですか?」

 

 信之介はガリアにそんな提案を出す。実はガリアが目を覚ます前に、事前にカスカベ防衛隊の皆と話し合って決めた事だ。皆、『命の恩人だから』と言う理由で快諾した。

 

「危険だぞ?マーダートオリマのような危険なニンジャとエンカウントするかもしれない、死んでしまう危険性だってある」

「ダイジョブです、覚悟ならあります。危険な目もいっぱいあって来ましたから」

 

 ガリアの問いに、信之介は真っ直ぐ見詰めながらそう言った。

 一方のガリアは、黙して何も言わない。見入っていたからだ、10代前半の少年の瞳に宿る『強きソウルの輝き』を。

 

(この少年ならば・・・)

 

 キンカク・テンプルの高みへと登る事ができるかもしれない。それならば、自分に出来る事は彼をそこに導く事だ。決断的にそう決心したガリアは、信之介の提案を承諾した。

 

「分かった、君達の協力を許可する」

「アリガトゴザイマス」

「「「「ヤッター!」」」」

 

 それを聞き、信之介はお礼を言い、カスカベ防衛隊は嬉しさのあまり飛び跳ねる。

 

「その代わりといってはなんだが、君達を私の弟子にしたいと思うがいいかね?」

「オ、オラを!?」

 

 ガリアの突然の提案に、カスカベ防衛隊は面食らう。まさか、ニンジャに弟子になれと言われるのは予想外だったからだ。・・・だけれど、信之介は違った。

 

(オラも、ガリア=サンの様になれたら・・・)

 

 信之介のニューロンに浮かぶのは、かつて自分が救えなかった人達。

 過去に飛ばされた先で自分を保護してくれた『青空サムライ』と呼ばれたサムライの男。

 映画の世界で出会った初恋の人。

 一時期は『本物の父』であったモーター仕掛けの父親。

 ガリアのインストラクションを受けて、ニンジャとなれば・・・。

 そう思った信之介の行動は早かった。

 

「オラを、弟子にしてくださいガリア=サン!」

 

 頭を下げ、ガリアに懇願する信之介。残りのメンバーもまた、多少は驚きはしたものの信之介にならい、頭を下げて懇願する。

 

「ボ、僕もオネガイシマス!」

「僕も!」

「僕も!」

「私も!」

 

 それを見た、ガリアはゆっくりと頷き頭巾とメンポを外した。その素顔は白髪を角刈りめいて刈り込んだ短髪に、逞しい顎鬚の初老の男であった。ガリアはその顔に笑みを浮かべ告げる。

 

「弟子にする前に君達の名前を聞こう」

「野原 信之介です!」

「佐藤 マサオです!」

「風間 トオルです!」

「石橋 ボーです」

「桜田 ネネです」

「宜しい、これより君達は私、ガリアの弟子だ!よろしくな皆!」

 

 各々の名前を聞き、ガリアは満足げに頷くとそう告げた。

 

 これが、信之介達とガリアの出会いである。

 

 

『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #3に続く・・・




後半あたりが、少し適当になってしまった感が否めない・・・(汗)
このエピソードは次回ぐらいで終わりそうですね。如何にして信之介がスパイダーマンとなるのか?ガリアはどうやって信之介を救ったのか?
次回にて明らかになると思います。お楽しみに!
それでは~。


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『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #3

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです
本当なら先週の日曜日に投稿するはずでしたが、リアルが色々忙しく今日投稿する事になりました。
待たせてしまってすいません。

色々と詰め込みすぎ、無理矢理感がありますが温かい目でお願いシマス。
それではドーゾ!


「ここが、私のドージョーだ」

 

 ガリアの弟子となり、連れて来られたのは古びた建物。オバケとかが出てきそうな雰囲気である。コワイ!

 

「ガリア=サンのドージョー・・・凄くボロいですな」

「率直な感想をドーモ。・・・泣いていいかい?」

 

 信之介の率直な意見に、ガリアは滝めいた涙を流すも気を取り直す。

 

「さて、早速だが修行に取り掛かるぞ皆。今日の修行は座学だ」

「えーっと、お尻に入れる奴?」

「それは『座薬』だろ。ガリア=サンが言ってるのは座学、つまり勉強だよ」

 

 ガリアの言葉に反応した信之介に風間のツッコミ・ジツが冴える。

 

「ウム、犯罪者を追い詰めるには様々な知識が実際必要だからな。

 かっこよく人を助け、犯罪者を倒すのだけじゃあない、パルプ・フィクションの探偵めいて犯人を突き止め、第二、第三の犯罪を事前に阻止するのも『親愛なる隣人』のお仕事さ。

 その為には様々な知識を頭の中に入れなければならないぞ」

 

 そう言って、ガリアが持って来たのは凄まじいまでの大量の本の山。スゴイ・オオイ!

 

「こ、これ全部を読むんですか!?」

「犯罪学に心理学、科学、物理学そして歴史・・・これを全部覚えるんだ」

「ア、アイエエエ・・・ニューロンが沸騰しそうだよ・・・」

 

 フジ・マウンテンめいてそびえ立つ本にマサオは弱気だ。そんなマサオに追い討ちをかけるようにガリアは告げる。なんたる無慈悲。だが、コレも弟子の為を思ってのアイノムチである。

 

「それとただ覚えるだけじゃない。本に書いてある事は実験をし、実践してもらう。

 心理学や科学は実際に試してみないと身にならないからな。

 心理学を学び、相手の心理を読んでウソのサインを見つけ出せ。最新の科学捜査に必要な知識は理解しろ」

「本格的ですなぁ・・・。でも、頑張らなきゃ」

 

 覚えるだけではなく実践もしなければならない。実際難しいが、これもヒーローになる為に必要な事だ。

 そう思った信之介は、内心で自分を鼓舞する。

 

「うむ、その意気だ!」

 

 こうして、ガリアによるカスカベ防衛隊の修行が始まった。

 

「甘いぞ、信之介=サン!イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

 無論、座学だけでなく戦い方も叩き込まれた。ニンジャである為、実際強く毎度の如くカスカベ防衛隊の面々は叩きのめされた。

 信之介ですら、歯が立たない。後ろ回し蹴りを顎に喰らいコマめいて回転しながら倒れ伏す。

 

「つ、強いなぁ・・・、見た目はおじいさんなのに」

「そりゃあ、鍛えているからな。トシヨリだと思って甘く見てはイカンぞ。相対する敵が見た目どおりだと侮ってはいけない。それが、敗北に繋がるのだ」

 

 ふらつく頭を抑えながら言う信之介に、ガリアはニカっと笑いながら答えた。

 

「そう言えばガリア=サンのカラテって、どの型とも違うよね?我流か何か?」

 

 ふと、信之介は気になった事をガリアに聞いた。

 

「まぁ、我流は我流だがただ闇雲にこの自己流のカラテを編み出した訳じゃないぞ。世界各地を回って古代ローマ・カラテやイアイドや、チャドー、ジュー・ジツ、アイキドー・・・色んな武道を極めた。

 それだけじゃない、狩猟や追跡・・・それに医術も学んだ。それらを一つに纏めたのがこの『スパイダー・カラテ』と言う訳さ」

「ハエ~・・・スゴイ」

 

 ガリアの話を聞き、信之介は率直にそんな感想を述べた。

 その道のりは長く険しいものだっただろう。だが、それを乗り越え、あらゆるカラテ、武道を一つに纏め自分のカラテスタイル『スパイダー・カラテ』を立ち上げたのである。ゴウランガ!

 

「スゴイも何も、これからお前も私の『スパイダー・カラテ』を継承するんだ。さぁ、続きだぞ信之介=サン!」

「ハイ!」

 

 そしてある時には、ガリアがヒーロー活動で使用しているガジェットの説明を受ける事もあった。

 

「へぇ~・・・、あの時糸が出たのはそういう仕組みだったのか。凄いなこの『ウェブシューター』は」

「武器を絡め取ったり敵の動きを封じるだけではないぞ、建物とかに貼り付ける事で移動する事も出来る。『隣人』としての活動に欠かせないガジェットさ」

 

 今、信之介達が説明を受けているのは、『ウェブシューター』。前回、マーダートオリマとのイクサにおいて、スリケンを絡めとり投げ返したあの糸を発射した装置である。

 しかも、ガリアが自分で組み立て作ったハンドメイドなのだ。スゴイ!

 

「本格的に私のサポートをする際に、必要だろうと思って君達の分も作っている最中だ」

「エッ!?これと同じものを!?」

 

 驚きながら問いかけるマサオに、「まだ途中だがな」と苦笑交じりでガリアは答えた。

 

「出来上がった時に、いつでもウェブで町に繰り出せるようにコレを学んでおかないとな」

 

 そう言って、ガリアが取り出したのは『物理学』、『微分・積分』の本だった。何故、この本を?カスカベ防衛隊の面々は訝しんだ。

 

「ナンデ?と思っているな。ではここで問題だ。『長さが40メートル、角度が45度の振り子があります。振り子が一番下にある時の落差は?』」

「11.72メートルですけど、ナンデ?」

 

 答えたのは風間だ。

 

「君がその振り子そのものだとしたら?」

 

 ガリアの言葉に、頭にクエスチョンマークを浮かべながら首をかしげる。ふと、ここで閃いたのがボーちゃんだ。

 

「つまり、町中をスイングしながらそう言った計算をしてるって事」

「そう言う事さ。かっこよくスイングしたいなら、こう言うことも学んでおかないとな」

 

 そんな感じで、信之介達は厳しくも優しいセンセイの元で修行に明け暮れていた。

 

「へぇ、最近カスカベ防衛隊の皆さんの様子がおかしいと思ったら、こんな所にいたんですのね」

 

 途中ガリアに弟子入りしている事が、あいにバレたり、

 

「こんなマッポーの世の中で、世のため人の為に戦っているニンジャがいるなんてなぁ・・・。よし、決めた!我が『スオトメ・エンタープライズ』はガリア=サン!アンタの活動の全面サポートをするよ!」

 

 彼女の父親がガリアの活動に胸を打たれ、彼の活動の全面サポートを行ったりと色々あった。

 そんな中で、カスカベ防衛隊の面々・・・特に、信之介はそのワザマエをメキメキと上げて行く。

 

 それから半年後・・・、スオトメ・エンタープライズにより、新たに作られた地下の秘密基地。そこのトレーニングスペースで、イクサが行われていた。

 

「行くぞ、信之介=サン!イヤーッ!」

「その程度、イヤーッ!」

 

 ガリアのセイケン・ツキを信之介はマワシ・ウケでいなす。

 

「今度はこっちの番だゾ!イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

 返す刀で信之介はカラテ・チョップで反撃!ガリアは受け流す。

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「ヌゥーッ!?」

 

 チョップ、拳、蹴りの応酬。永遠に続くかと思われたが、信之介のマワシ・ゲリがガリアのガードを打ち崩す。

 

「今だっ!イヤァァァァーッ!!!」

「グワーッ!?」

 

 好機!とばかりに放たれた信之介のトビゲリ・キックがガリアを大きく吹き飛ばした。ワザマエ!

 

「おお!しんちゃんが、ガリア=サンから一本取った!」

「スゴーイ!」

 

 仲間達の歓声を聞きつつも、倒れ伏すガリアから目を離さず、信之介はザンシンを取る。暫くすると、ガリアはムクリと起き上がり、ムゥ・・・。と唸りながら信之介に言った。

 

「腕を上げたな、信之介=サン。2回に1回は私から一本を取れるようになるとはな」

「いやぁ、それほどでも。ガリアおじさんのインストラクションのお陰だゾ」

 

 ガリアの称賛の声に、信之介はザンシンを解き照れくさそうに笑って返した。この半年間で、彼らの特に信之介とガリアの絆は深まり今ではガリアの事を『ガリアおじさん』と呼ぶ仲にまで発展したのだ。

 

「これほどのワザマエならば、ハナミ儀式をしても問題ないだろう」

 

 ハナミ儀式とは、リアル・ニンジャになる為の必要な儀式でありセンセイとなるニンジャと共に行う事で、メンキョを授かりその肉体にニンジャソウルが発生。ニンジャとなる事が出来るのである。

 

「・・・って事は」

「ああ、晴れて君はニンジャになれる」

「オメデト!しんちゃん」

「オメデト」

「皆、アリガト。ニンジャネームと、コスチュームはどんな感じになるかな~?」

「コラコラ、まだメンキョを授かってないのに気が早いぞ」

 

 カスカベ防衛隊からの祝福を受け、すっかりニンジャになった気でいる信之介を諌めるようにガリアは苦笑する。

 

「まぁ、とりあえず今追っている事件が解決したら知り合いのドージョーへ行こう。そこでハナミ儀式だ」

「うん!ヤクソクだゾ、男同士のオヤクソク!」

 

 笑いあいながら拳を重ねる信之介とガリア。だが、・・・おお、ブッダよ!ザンコクな事にこのヤクソクは果たされる事はなかったのだ。

 

―それから何日か経って・・・。

 

 学業とブカツが終わり、皆が帰路へと急ぐユウグレ・アワー。その中には信之介ら、カスカベ防衛隊の面々もいた。

 

「アー、まだ事件解決しないのかなぁ・・・ガリアおじさん。早く、ハナミ儀式をしてニンジャになりたいゾ・・・」

「愚痴を言ってもしょうがないよ、結構長引くって言ってたし」

 

 待ち遠しそうに言う信之介に、風間がそう返した。

 

「そうだよなぁ・・・」

 

 ため息をつく信之介。その時だ!

 

―KABOOOOOM!!!

 

「アイエエエエエエ!!?」

「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

「ニゲロー!!」

「こんな所にいられるか!俺は逃げるぞ!」

 

 爆音と共に、人々の悲鳴と怒号が響き渡る。何事か?と逃げ惑う人々を掻き分けながら、カスカベ防衛隊の面々が進むと、そこには・・・。

 

「!?ガリアおじさん!」

 

 満身創痍のガリアが、ローブを纏った謎のニンジャと対峙している所を目撃した。あのニンジャは一体・・・!?それに、あのガリアおじさんにコレほどまでのダメージを与えるなんて・・・。

 信之介は目の前の光景が信じられないでいた。

 

「ヌ・・・ウウウ・・・」

「フフフ、ここまでだなガリア=サン。我が『アイアン・十字』に楯突いた事をアノヨで後悔するがいい」

 

 立つ事もやっとであるガリアに、止めを刺さんと右手の指先にカラテの光を収束させる謎のニンジャ。

 

「ヤ、ヤメロー!!!」

「「「しんちゃん!?」」」

「信之介!?」

 

 それを見た信之介は、居ても立っても居られなくなり仲間達が止める間もなく、一目散にガリアに向かって駆け出していった。

 

―ZAP!

 

 そして、無情にも指先からカラテ・レーザーが放たれ・・・、

 

「ア、アバッ・・・!?」

「し、信之介=サン!?」

 

 ガリアを庇った信之介の心臓を撃ち抜いた。口から大量に血を吐き倒れ伏す信之介。だが、ただで転ぶ信之介ではなかった。

 

「グワッ!?何だこれは!?」

 

 蜘蛛の巣まみれでもがく謎のニンジャ。コレは一体!?

 あのカラテ・レーザーが放たれる瞬間、信之介もボーちゃんが護身用にと開発したガジェット『ウェブ・グレネード』を投げていたのである。何と言う肉を切らせて骨を断つワザマエか!?ゴウランガ!

 

「い、今だ・・・ガリアおじさん・・・ヤレー!」

「信之介=サン・・・。ウオオオオオオオオッ、イヤァァァァーッ!!!」

 

 信之介の叫びに頷きながら、裂帛の気合と共に、謎のニンジャに向けてポン・パンチを放つ。

 

「グワァァァーッ!!?ヤ!ラ!レ!タァァァーッ!!!?」

 

 ポン・パンチは謎のニンジャの顔面に直撃!全身全霊の一撃を受け、血をまき散らしながら廃棄予定であったビルに直撃。そしてそのまま崩れ落ちるビルと共に運命を共にした。

 

「グゥーッ・・・」

 

 全身全霊の一撃を放ったガリアもまたザンシンを取る間もなく、ガクリと膝をつく。

 

「し、しんちゃん!ガリア=サン!ど、どうしよう・・・」

 

 片や満身創痍、片や瀕死であるガリアと信之介を見てうろたえるマサオ。

 

「と、兎に角基地に運ばないと!」

「ダメだ・・・、信之介=サンは心臓を撃ちぬかれている・・・。このままでは信之介=サンが死んでしまう」

 

 風間の言葉に、ガリアは息も絶え絶えにそう言った。実際、信之介は胸の辺りからドクドクと血があふれ出している。このままだとオタッシャ確実だろう。

 

「でも、このままだとどの道しんちゃんが・・・!」

「ダイジョブだ。信之介=サンを助ける方法が一つだけある」

 

 ネネの心配する声に、ガリアはそう言った。それを行えば、信之介は助かる!そう思った風間は、実際藁にもすがる思いで、問いかけた。

 

「あるんですか!?」

「ああ、コレを使う」

 

 風間の問いに、ガリアはそう言ってワキザシ・ダガーを懐から取り出し、続ける。

 

「ハラキリ・リチュアルを行い、私のニンジャソウルを信之介=サンに移す。それしか・・・方法はない」

「そ、ソンナ!?」

 

 ニンジャソウルを移す。それはつまり、ガリアは死んでしまうということだ。どちらかが死にどちらかが生きる・・・、そんな残酷な方法に風間は絶句した。

 

「ほかに方法はないんですか!?」

「無い。・・・それにどの道、私は長く生きられん。・・・グゥ」

 

 涙ながらのマサオの問いに、ガリアはそう答えると苦しそうに傷を抑えた。抑えた手からおびただしいほどの血が溢れる。ナムアミダブツ!その傷は致命傷だ。

 

「このままでは、両方ともオタッシャ重点だ。だが、私だけが犠牲となれば信之介=サンは生きる事が出来る。・・・身勝手だと思うがすまんな、本当にすまん」

「「が、ガリア=サン・・・」」

「そんな・・・」

「ウッウッ・・・やだよぉ、死なないでよガリア=サン」

 

 あまりにも残酷な決断に、ある者は無力さに打ちひしがれ、涙を流すカスカベ防衛隊。それを見て、ガリアは罪悪感に苛まれる。

 だが、彼を・・・野原 信之介を生かさねばならぬ!これから先、キンカク・テンプルの頂へと上りマッポーの世となったこの世界を救うであろう『希望』、それを守護(まも)らねばならぬ。己を犠牲としてでも。

 そう自分に言い聞かせ、ガリアはワキザシ・ダガーを握った。

 

「サヨナラだ・・・、先に逝く私を許してくれ皆。モハヤコレマデー!」

 

 カスカベ防衛隊の面々に、短く別れの言葉を言った後、ガリアはワキザシ・ダガーを己の腹に思いっきり突き刺した。

 

001000100010001000100010001001010010110

 

00101101101110111011011101110

 

 ここは何処なのだろうか?

 あたり一面が真っ白なこの空間で、信之介はボンヤリとそう考えていた。

 オラは確か、あの謎のニンジャの攻撃からガリアおじさんを庇って・・・。

 

「ここってひょっとして死後の世界・・・つまりアノヨって奴?」

「いいや、違うここは君のコトダマ空間だ。信之介=サン」

 

 聞きなれた声に振り向くと、そこにはガリアが立っていた。

 

「ガリアおじさん!?どうしてここに!?」

「ハラキリ・リチュアルを行い、ニンジャソウルとなって君に乗り移ったんだ」

「な、ナンデそんな事を!」

「死に掛けている弟子を助けぬセンセイが何処にいる?」

 

 悲痛な叫びをあげる信之介に、ガリアは優しく微笑みながら答えた。

 

「他に方法が無かったんだ。こうしなければ、どの道私も君も今頃サンズ・リバーを渡ってただろうからな」

「ナンデガリアおじさんも?」

「あのニンジャとの戦いで致命傷を負っていた」

「ソンナ・・・それじゃあ何の為にオラは・・・」

 

 肩を落とし絶望する信之介に、そう悲観するな。とガリアは答えた。

 

「あの時、君が私を庇ってウェブグレネードをヤツに投げてくれたお陰で勝機を見出せた。私は君の勇気に敬意を表したい」

「おじさん・・・」

「だからこそ、君に託したいと思う。私の、この『大いなる力』をね」

「大いなる・・・力」

 

 ごくり、と信之介は唾を飲み込んだ。

 

「だが、覚えておいて欲しい。この力は、ニンジャの力だ。大きな力であると同時に、それ相応に大きな責任を伴う。想像も絶するような大きな責任が・・・、それでもこの力を受け継ぎニンジャとなるか?」

 

 ガリアの問いに、信之介は目を閉じた。それと同時に、かつて助けられなかった人達がニューロンの中に浮かぶ。・・・答えはもう決まっている。

 目を開け、信之介は答えた。

 

「オラは、この力を皆の為に使いたい。だから、おじさん・・・オラをニンジャにしてくれ!」

「信之介=サン、君の覚悟・・・確かに受け取った。これより、私のニンジャパワを君に渡そう!」

 

 そう言って、ガリアは信之介に手を差し出した。信之介もその手をガシッと掴む。

 

―キャバァーン!

 

 するとどうだろうか!握った手が輝きだしたではないか!?それと同時に、信之介に力が漲る。

 

「ッ!?おじさん、身体が!」

 

 ガリアの体が透けていく。まるで、信之介に力が吸い取られるかのように。

 

「君のソウルと私のソウルが溶け合っているのだ。光が収まる時、私は完全にお前の中に溶ける」

「ッ・・・!」

 

 ガリアの言葉に、彼の肉体は本当に死んでしまったのだ。という事を改めて思い知り歯を食いしばる信之介。ソーマトー・リコールめいてニューロンに浮かぶのは厳しくも楽しかった修行の日々。

 もっといろんな事を教えて欲しかった。共に笑いあいたかった。そして何よりも、ハナミ儀式を終えてニンジャとなった時、その姿を見て欲しかった。悲しみを堪え、信之介は言葉を紡ぐ。

 

「おじさん・・・、オラ強くなるよ。強くなって、ガリアおじさんみたいな皆を守るニンジャのヒーローになる」

「そうか・・・、君ならなれるさ。・・・私よりも、ずっとアメイジングなヒーローに・・・」

 

 信之介の言葉に、ガリアは優しく微笑むとしめやかに消滅していった。

 

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―その後の事は語るまでもないだろう。

 

 意識を取り戻した信之介はカスカベ防衛隊の皆と共に、ガリアの遺体を見晴らしのいいこのはずれの丘へと埋めた。生前、ガリアがよく来ていた丘だった。

 そして、ガリアの跡を継ぎ『親愛なる隣人、スパイダーマン』としてカスカベ・シティの平和を守る為の戦いに身を投じる事になったのである。

 

そして、3年後の現在。

 

「この3年間、色々あったよ。町の皆を襲うニンジャやヨタモノとの戦いもあれば、火事や災害のレスキュー・・・後、迷子のペット探しとかもね」

 

 ガリアの墓前で信之介は、淡々と語りかける。その顔は、親に語りかける子供のように微笑んでいた。

 

「これからも、オラは『親愛なる隣人、スパイダーマン』として戦い続けていくよ。

 ・・・そして、次に来る時はカスカベ・シティを『報告する事なんか何もない。今日も町は平和だった』って報告できるようなそんな町にする。・・・だから、見ていてくれおじさん」

 

 そう言って、踵を返しカスカベ防衛隊の仲間達と共に丘から去っていった。

 

 

【クレヨンしんちゃん】

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 草木も眠るウシミツ・アワーのカスカベ・シティをスパイダーマンは駆けていた。

 マッポのIRC無線を傍受し、刑務所から脱獄した通り魔殺人鬼が現在逃走中だという事を聞き、その行方を追っているのだ。

 

「捉えた、画像を送るゾ」

 

 ふと、スパイダーマンのニンジャ眼力が闇夜をかける何者かを捕らえた。すぐさま、スーツのカメラ機能でその何者かを写真に収め、基地にいるであろうカスカベ防衛隊の面々に送る。

 

『画像、見たよ。まさか、脱獄した通り魔殺人鬼がマーダートオリマだったなんてね・・・』

「うん、オラも驚いてる。どこかで見たよなって思ったけど・・・」

 

 何たる偶然か!脱獄した通り魔殺人鬼が、あの日初めて出会ったニンジャ『マーダートオリマ』だったのだ。

 

『誓いを新たにした始めての相手が、まさかのあの日のニンジャって・・・因縁としか思えないわよねぇ』

「確かに、違いないね。・・・っと、拙いな」

 

 ネネの言葉に苦笑しつつスパイダーマンは、マーダートオリマの進路方向にモータルの親子が歩いてきているのを見た。このままでは親子がアブナイ!

 

『うん、こちらでも確認した!行って来い、僕達の親愛なる隣人!』

「ああ!行って来る!」

 

―TWIP!

 

 風間からの声援を受け、スパイダーマンは手首からスパイダー・イトを出し、ターザンめいて移動を開始した。

 

 

「ア、アイエエエエ・・・ニンジャ・・・ニンジャナンデ!?」

「フフフ・・・運が悪かったなぁ、夜中に出歩いたばかりにニンジャに出くわすなんてなぁ」

 

 一方その頃、路地裏ではその親子が案の定、マーダートオリマとエンカウントしていた。メンポの奥で舌なめずりしながら親子にナイフを見せ付ける。

 

「恨むなら、こんな夜中に出歩いた自分達を恨むんだな。さぁ、喚け!」

「わ、喚くもんか!」

 

 マーダートオリマの言葉に震えながらも力強く反論する子供。その眼は死んではいない。

 

「ホー、俺が怖くないのかボーヤ」

「お前なんか、怖くない!直にヒーローが来るぞ!ヒーローが来て、お前はコテンパンにやられるんだ!」

 

 子供の言葉に、マーダートオリマは嘲り笑う。

 

「バカか!?こんなマッポーの世にヒーローなんかいるわけねぇだろ!」

「ところがどっこい!居るんだな、ここに!」

「・・・え?」

 

 突如聞こえた、親子のものでも自身の声でもない声にマーダートオリマは声のした方を見やった。

 その時だ!

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

 視界いっぱいに広がったのは赤。次の瞬間、顔面に強い衝撃を受け、マーダートオリマは吹っ飛ばされた。鋭いケリ・キックを顔面にモロに喰らったのだ!

 そのマーダートオリマにケリを放った人物をその親子は知っていた。カスカベ・シティに現れる神出鬼没のニンジャのヒーローを。

 

「「「スパイダーマン!」」」

「ドーモ、親愛なる隣人スパイダーマンです。もう大丈夫、助けに来たよ。後はオラに任せて逃げるんだ」

「アッハイ」

「あ、アリガトゴザイマス・・・」

 

 腰を抜かしていた子供の両親を立たせ、逃げるように促す。おっかなびっくり立ち上がりながら子供の両親はスパイダーマンにお礼を述べた。

 その時、ムクリとマーダートオリマが起き上がる。

 

「ド、ドーモ、スパイダーマン=サン。マーダートオリマです。いきなり俺の楽しみを邪魔しやがって・・・何なんだよテメェは!?」

 

 苛立たしげにアイサツをしながら、喚き散らすマーダートオリマにスパイダーマンは静かに継げた。

 

「オラが誰かって?オラは、この町の親愛なる隣人・・・そしてお前たち悪党にとっての地獄からの使者さ」

 

 そう言って静かに告げながら腰を深く落とし、片手を地につけもう片方を上げるスパイダー・カラテの構えを取った。そんなスパイダーマンに子供は声援を送る。

 

「そんな奴、やっつけちゃえ!イケー!スパイダーマン=サン!!!」

 

 

―OK、もう一度説明するゾ。

 オラの名前は『野原 信之介』、ニンジャ『ガリア』からニンジャソウルを受け継ぎクモのニンジャとなったこの世界でたった一人の、スパイダーマンだ。

 スパイダーマンとなって早3年。カスカベ・シティを救ったり、色んな陰謀に巻き込まれたりと色々あった。

 これからも、オラはスパイダーマンとしてこの町を守っていこうと思う。

 だって、それがガリアおじさんから『大いなる力』を託されたオラの『大いなる責任』なのだから。

 

 

【ボーン・イン・ザ・スパイディ】終わり




コレにてしんちゃんスパイディのオリジン話は終了です。
スパイダーマン誕生まで書き上げちゃおうと思い、気がつけば9000文字オーバーに・・・アイエエエ。
でもまぁ、これから本格的に物語が動いていきます。勿論、フジキド=サンなどの忍殺本編のキャラも出す予定です!

では、次回もお楽しみに。
オタッシャデー!


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー』#1

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。

私事ですが、『スパイダーマン:ファーフロムホーム』見てきました。ストーリーやアクションが面白く、スゴクイイですよ。オススメです!
さて、本格的に物語が始まるトルネードコール・スパイダーマン。今の所はまだ、導入部分だけですがドーゾ。


「ウォーフォー!」

 

 サラリマン達がお昼ご飯を楽しむヒルメシ・アワーのカスカベ・シティ。そこで雄叫びを上げながらスパイダー・イトで摩天楼を駆ける人影がいた。ご存知、カスカベ・シティの親愛なる隣人スパイダーマンだ!

 今日は学校が休みなので、特に用事もないこの日は、一日をフルに活用してスパイダーマンとしての活動を行っていた。

 ターザンめいてスイングしながら、街をパトロールするスパイダーマン。

 

「ドケッコラーッ!」

「アイエエエエ!?」

「ん?スパイダー感覚に反応あり、行ってみるかな?」

 

 その時、怒号と悲鳴をスパイダー感覚、もといニンジャ聴覚が捉えた。聞こえた方向へと向かうと、そこには駐輪所にて自転車のチェーンを強引に破壊しそれに乗って、周囲の事を考えず爆走する男の姿。アブナイ!

 早い話が自転車ドロボウだ。そんなドロボウの前に、我らが親愛なる隣人が躍り出る。

 

「ドーモ、親愛なる隣人スパイダーマンです」

「ワッザ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

 

 突然現れたニンジャのヒーローに、驚いて止まるドロボウ。

 

「ちょっとこれ持っててくれないかな」

「エ?」

 

 あらかじめ建物に貼り付けていたスパイダー・イトの端を呆気にとられるドロボウの服に貼り付けた。

 

「アリガト」

「アイエエエエエエエエ!?」

 

 そして、手を離すと同時にドロボウは釣り上げられたマグロめいて飛び上がり、宙吊りの状態にされてしまった。インガオホー。

 

「コレは誰の自転車ですかー?」

 

 弾みで手放された自転車を受け止めると、スパイダーマンは道行く人に問いかけた。だが、誰も自分の自転車だと名乗り出る人は居ない。

 仕方がないので、駐輪所へと赴き紙と筆を借りると『これは貴方の自転車ですか? 親愛なる隣人スパイダーマンより』とショドーし、自転車に貼り付けると元あった場所に置き、立ち去った。

 勿論、破壊されたチェーンはボーちゃん特製の修理ツールで元通りである。ワザマエ!

 

「おや?」

 

 パトロールの最中、スパイダーマンが見かけたのは重い荷物を抱えた老婆の姿。その状態で階段を上ろうとしており誰の眼から見てもアブナイのは確定的に明らかだ。

 

「やぁドーモ、親愛なる隣人スパイダーマンです」

「アイエエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

 

 そこに、隣に降り立ってアイサツをかわすスパイダーマン。突然の事で、老婆はNRSを発症。腰を抜かして、荷物を取り落としそうになる。

 

「オットット、危ない。大丈夫、危害は加えないよ。オラは悪いニンジャじゃないからね」

「ア、アイエエ・・・そうなんですか?」

 

 咄嗟に老婆を抱き起こし、取り落としそうになった荷物をキャッチするスパイダーマン。おっかなびっくりしながら問いかける老婆に、スパイダーマンは頷く。

 

「見たところこの階段を上ろうとしてたみたいだけど、こんな重たい荷物持ったままじゃ危ないよ。オラが助けてあげる」

「エッ!?いいんですか?ニンジャなのに」

「いいんだよ。『ニンジャはゴッドに非ず、獣に非ず。ニンジャはモータルの親愛なる隣人である』ってのが、オラのモットーだからね。このまま、目的の場所まで一緒に行くよ」

「ア、アイエエエエエ・・・アリガトゴザイマス」

 

 そんな訳で、背中に老婆を背負い両手に荷物を持って目的の場所へと向かったのであった。

 

―その後・・・。

 

「フゥー・・・疲れた。こんな疲れた時にはスシに限るよね」

 

 老婆を目的の場所へと送り届けた後、建物の屋上にて、アグラをかきながら老婆にお礼として貰ったスシを食べるスパイダーマン。スシを食べながら、町を行き交う人々の様子を見る。

 特に変わった様子はない。スパイダーマンとして活動を始めてから、少しずつではあるがカスカベ・シティの治安は良くなってきている。・・・だけれどあくまでカスカベ・シティだけだ。

 犯罪組織『ソウカイヤ』、奴らがこのネオサイタマを牛耳っている限りこの町の・・・いいや、ネオサイタマの真の平和を取り戻す事は出来ない。だが、ソウカイヤには強力なニンジャ達がごまんとおり一筋縄ではいかない。それを、スパイダーマンはマルノウチ・スゴイタカイビルでの一件で思い知った。スパイダーマンのニューロンに、救えなかった人々とそれらを手にかけたオブシディアンのニンジャ装束を纏ったニンジャ。そして、動かなくなった母親に縋り泣く少年の姿が浮かんだ。

 

(・・・ソウカイヤは手強い、マトモに正面からぶつかっても勝ち目は実際0だ。だから、収入源を潰して弱体化を狙うのがイイんだけど・・・中々連中は尻尾を出さないしなぁ)

 

 あの時の一件を思い出し、ウーム・・・と唸るスパイダーマン。その時、チロチロチロン♪と彼の持っているスマートIRC端末が鳴った。電話着信だ。

 取り出してみると、画面には『ななこおねいさん』と表示されてある。

 

「ななこおねいさんから・・・、一体何だろう?ドーモ、信之介です」

『ドーモ、しんちゃん。ななこです』

 

 端末から、幼稚園時代の初恋の女性であった『ななこおねいさん』こと『大原 ななこ』の声が聞こえてきた。

 かつて恋をした女性の声に少しはドギマギしつつも、スパイダーマンはななこに問いかけた。

 

「急にどうしたの?電話をかけるなんて、珍しいね」

『急にも何も、今日「F.E.A.S.T」に来るって約束じゃない。『あの子』も貴方と会うの楽しみにしてたわよ』

「エッ、今日だったっけ?・・・エート・・・」

 

 ななこの言葉に、懐からスケジュール手帳を取出し見てみる。

 確かに今日の日付に『F.E.A.S.Tに顔を出す』と書かれてあった。アチャー・・・、と自分のウカツさに頭を抱えるスパイダーマン。

 ちなみにF.E.A.S.Tとは、事故や事件など何らかの理由で身寄りが無くなったり、住む場所を無くしてしまった子供達を保護する施設であり、彼女はそこで働いているのだ。

 

「こってり忘れてた・・・確かに今日だったよ、ゴメン。今から超特急で行くから」

『ダイジョブよ、しんちゃん。その心がけは嬉しいけど、カラダニキヲツケテネ』

「うん、気をつけるよ。それじゃオタッシャデー」

『オタッシャデー』

 

 ななことの電話が切れると同時に、スパイダーマンは立ち上がるとF.E.A.S.Tのある方角へ向けてウェブ移動を開始した。実際スピード速めな。

 ついでに、何か厄介事が起こりませんように。と内心でブッダにお祈りするのも忘れない。・・・だが、

 

「タイヘンダー!車が暴走してるぞ!」

「アイエエエエエエ!?」

「・・・ブッダム、こんな忙しい時に」

 

 ナムアミダブツ!お祈りしているそばから、早速事件発生だ。ため息をつき、ブッダに軽い呪詛を呟く。

 

「でもまぁ、皆をお助けするのが親愛なる隣人スパイダーマンの仕事だし、行かないと。・・・後でななこおねいさんには謝っておかないとな」

 

 そう呟きながら、スパイダーマンは事件現場へと向かったのだった。

 

 

【クレヨンしんちゃん】

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

「アイエエエエエ!?ブレーキを踏んでも止まらない、ナンデ!?アイエエエエエ!?」

 

 街中を暴走する車の中でその車を運転していたタモトはパニックに陥っていた。きっかけは、単なるウッカリミスであった。ブレーキと間違えてアクセルを思いっきり踏んでしまったのである。ウカツ!

 そのお陰で車は所々にぶつかり大暴走。ブレーキを踏もうにもぶつかった弾みなのか分からないがブレーキが効かないのだ!それがタモトのパニックを更に煽る。

 

「タスケテー!誰かタスケテー!」

 

 にっちもさっちも行かなくなり、タモトはあらん限りの声で助けを呼ぶ。その叫びが、ブッダに届いたのだろう。様子を見ていた町の人々が叫ぶ!

 

「見ろ!彼が来たぞ!」

「来た!スパイディ来た!これで一安心だ!」

 

 『彼』が来た事を!

 

「ドーモお待たせ、親愛なる隣人スパイダーマンです!オラが来たからにはもう大丈夫だゾ!」

 

 我らが親愛なる隣人のエントリーだ!

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!!」

 

 スパイダーマンはフロントに乗っかると、ウェブ・シューターからスパイダー・イトを大量に吐き出し建物や地面、ありとあらゆる所に貼り付ける。

 

「ヌゥーッ・・・!」

 

 そして、それを束ね足でしっかりとフロント部分に足をつけながら踏ん張る!先へ進もうとする車と踏み留めようとするスパイダーマン!メキリ、と車体に足がめり込む辺りそのパワは実際凄まじい。果たして結果は・・・。

 

―プシュ~・・・。

 

 スパイダーマンに軍配が上がった!オーバーヒートを起こしたのだろう煙を上げ、動きを止める車。フゥ。と一息つき、スパイダーマンは車から降りる。そして、巻き起こる大喝采。

 

「ウオー!」

「サスガスパイディだぜーッ!」

「ヤッター!」

「た・・・助かった。ヨカッタ・・・」

 

 車から降り、助かった事に安堵の息を吐くタモト。そんな彼にスパイダーマンは近づく。

 

「怪我はない?車壊しちゃったけど・・・」

「アッハイ、ダイジョブです。命あってのモノダネですしね。助けてくれてアリガトゴザイマス」

 

 車か命、どっちが大事なのか聞かれれば迷わず命と答えるだろう。高かった車が壊れたのは少し辛いが、タモトは自分を助ける為に身体を張ってくれたスパイダーマンに文句は言えなかった。

 タモトの言葉に、礼なんかいいさ。とスパイダーマンは答える。

 

「っと、ちょっと急いでるからオラはこれで。じゃ、ソウイウコトデー」

 

―TWIP!

 

 そう言って、スパイダーマンはスパイダー・イトを出しその場を去っていった。果たしてスパイダーマンはF.E.A.S.Tに間に合うのか?急げ!スパイダーマン、急げ!

 

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #2に続く】




ネオサイタマの死神やソウカイヤの皆さんとのエンカウントは次回からになるかもです。


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #2』

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
今回は漸く、タイトル回収できそうです。

それと注意事項を一つか二つ・・・。
ニンジャスレイヤー本編では死亡しているキャラクターが存命して登場します。
そして、オリジナル展開もあります。

それでも『許せる!』と言う寛大なお方はどうぞそのまま読み進めて下さい。
『ザッケンナコラー!こんなの許せるか!』と思うお方はブラウザバックを推奨します。

では、ドーゾ。


「フゥ・・・到着」

 

 スパイダー・イトを巧みに操りターザンめいて行く事、40分位。

 スパイダーマンは、F.E.A.S.Tの建物近くに来ていた。そこで、人目につかない所に移動すると周囲に人がいないかを警戒しながらマスクとスーツを脱ぎ、普段着に着替え信之介へと戻る。

 ニンジャはカラテなどのエネルギーからニンジャ装束などを生成し身に纏うが、中には装束を作れないニンジャもいる。スパイダーマンこと信之介もその一人であった。

 そんな訳でボーちゃんがガリアのニンジャ装束をベースに作ったのが、このスパイダーマンスーツなのだ。スオトメ・エンタープライズの協力のもと作られたこのスーツは様々なハイテック機能がついているが、どういった機能があるのかは割愛させていただく。

 

「ドーモ、遅くなってゴメン。ななこおねいさん」

「ドーモ、それほど遅れてないからダイジョブよ」

 

 スパイダーマンスーツを持参してきたリュックに入れ、F.E.A.S.Tへと向かう信之介。インターホンを鳴らし、出てきた女性・・・大原ななこにアイサツをした。

 その姿は信之介が幼稚園だった頃から10年たっても美しく、そしてバストもまた豊満であった。

 かつては恋をした初恋の女性。だけれど、時間と言うのは残酷なもので他の男性・・・、友人であったガイジンの男性と結婚と言う形で幼き恋は終わってしまったのである。ショッギョムッジョ。

 だけれど、失恋しても彼女との交流は続いており、今では気心の知れた友人と言う関係となっている。

 

「あー、シン兄ちゃんだ!」

「「「シン兄ちゃーん!」」」

 

 ガチャリとドアを開け、推定5歳から9歳位の子供達が信之介を見るなり突撃してきた。事故や事件に巻き込まれ親を失いF.E.A.S.Tに引き取られた子供たちだ。

 

「ドーモ、皆元気にしてたか?」

「「「「ウン!」」」」

 

 信之介の言葉に、満面の笑みで子供達は返す。その表情は、辛い過去を匂わせないほど明るかった。

 

「アッ、そうだ。今日シン兄ちゃんに見てもらいたいものがあるんだ」

「へぇ~、どんなの?」

 

 ジャジャ~ン!と信之介の問いに答えるように、子供達はそれを見せた。それは、子供達がクレヨンで描いたスパイダーマンのウキヨエだ。

 まだ子供である為、実際雑な所があるがスゴク・ウマイ。

 

「オオ、皆実際良く描けてるなぁ」

「シン兄ちゃんって、スパイダーマン=サンと知り合いなんでしょ?

 だったら、このウキヨエ渡して欲しいんだ。いつも、僕達や町の皆を守ってくれてアリガトって」

 

 子供たちを代表して、5歳ほどの活発そうな男の子が信之介にそう言った。信之介は彼の顔を見て、一瞬辛そうな表情をして、すぐに笑顔に戻し答える。

 

「ああ、勿論さ。ちゃんとスパイダーマン=サンに伝えるよ、トチノキ」

「ホント!?ヤッター!」

 

 それを聞き、満面の笑顔で飛び跳ねる男の子・・・『フジキド・トチノキ』。その姿を信之介は何処か物悲しい表情で見詰めていた。

 

(ケン兄・・・、フユコ=サン・・・)

 

 見詰めながら、心の中で今はもういないトチノキの両親・・・『フジキド・ケンジ』と『フジキド・フユコ』の名を呟く。

 去年のクリスマス、マルノウチ・スゴイタカイビルにてソウカイヤによるニンジャ抗争が勃発。それをある事情で通りかかったスパイダーマンこと信之介がエントリーし、レスキューを開始したのだ。

 だが、結果助けられた人は半分も満たされず、ケンジはレスキュー中に遭遇したあるオブシディアン色のソウカイニンジャとの戦いの余波に巻き込まれ、ガレキの中へと消えた。

 フユコとトチノキは何とか助け出したものの、そのニンジャからトチノキを守ろうとし致命傷を負ったフユコは手当ての甲斐もなく息を引き取った。息子であるトチノキを遺して。

 

(あの時、オラは『また』守れなかった・・・。オマタのオジサンやツバキ=サンの時と同じように・・・)

 

 連鎖的にニューロンに浮かぶのは幼稚園時代に助けられなかったサムライと、少女。

 もう二度とあの思いをしたくない為に、ニンジャソウルを受け入れスパイダーマンとなったのに、結局繰り返してしまった。実の兄のように慕っていたケンジを、その妻であるフユコを助けられなかった。

 もっと上手く出来ていたら・・・、もっと早くマルノウチ・スゴイタカイビルにたどり着いていたら・・・。今となっては実際アフター・カーニバルであっても、そのIFを考えてしまう。

 

「シン兄ちゃん、どうしたの?ダイジョブ?」

「ん?」

 

 ふと、声と共に思考の海から引き戻される。見やると、こちらを心配そうに見ていたトチノキの姿があった。他の子供達も、心配そうに信之介を見詰める。

 

「・・・何でもないよ」

 

 心配させる訳にはいかない。と信之介は安心させるように微笑みながら答えた。

 

(・・・そうだ、『決して立ち止まってはならない。救える命に手を差し伸べろ。救えなかった者の魂はその胸に刻め』・・・分かってるよ、ガリアおじさん。

 助ける為に行動するさ。二度と、トチノキのような子供を増やさない為にも・・・ソウカイヤを叩き潰す!)

 

 胸中で、誓いを新たに立てながら・・・。その後、子供達に絵本を読み聞かせたり、子供のサイズに合わせたきぐるみを作ったりして過ごしたのであった。

 

 

―そして時間は動き、ユウグレ・アワー。

 

「それじゃあ、オタッシャデー」

「オタッシャデー!また来てね、シン兄ちゃん!」

「オタッシャデー、しんちゃん」

 

 ななことトチノキに見送られながらF.E.A.S.Tを出る信之介。このユウグレ・アワーになるとヨタモノやヤクザが活発になり、犯罪が多く発生する。

 ソウカイヤを叩き潰すのも大事であるが、ヨタモノやヤクザが引き起こす犯罪からモータルを守るのも『親愛なる隣人』の大事なお仕事だ。すぐさま、人目につかない場所へ赴きリュックからスパイダーマンスーツを取出し着替え、スパイダーマンとなる。

 

―ピロリロリン♪ピロリロリン♪

 

 スマートIRC端末に着信アリ、電話だ。画面には『風間君』との表示。

 

「何だろう・・・モシモシ」

『モシモシ、信之介今すぐに『SSB』に来れるか?』

 

 電話をかけると、スパイダーマンの耳に飛び込んできたのは風間の、何処か切羽詰ったような声。

 

「何かあったの?」

『ソウカイヤの動きを掴んだ、詳しい話は『SSB』で話す』

「分かった、オラは今からパトロールする所だったから何もなかったらパトロール切り上げて『SSB』に戻るよ」

 

 『さっきからSSBって何?』と疑問に思う読者諸君にSSBについて説明しようと思う。

 SSBと言うのは、スオトメ・エンタープライズがスパイダーマンとカスカベ防衛隊をサポートする為に、オムラ・インダストリに負けず劣らずの最新鋭ハイテックを駆使しカスカベシティの地下に作り上げた秘密基地なのである。

 それが『Spiderman-Support-Base』略して『SSB』なのだ!

 

『そうか、カラダニキヲツケロヨ。それじゃあオタッシャデー』

「オタッシャデー」

 

 電話が切れる。スマートIRC端末を懐に入れると、スパイダーマンは夕暮れのカスカベシティのパトロールに赴いた。

 

 

【クレヨンしんちゃん】

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

―SSB内部、ブリーフィングルーム。

 

「おかえりー」

「それを言うならただいまじゃない?」

「そうとも言う」

 

 最新ハイテックで守られた要塞に帰還した親愛なる隣人。あの後、事件や事故などは無く、また起きる様子も無かった為、パトロールを早めに切り上げて戻ったきたのだ。

 その際、軽くボケをやりマサオにツッコミを入れられている。

 

「そうとしか言わないよしんちゃん」

「細かい事を気にしてると頭がおにぎりになっちゃうよ、マサオ君。ところで風間君は?ソウカイヤの動きを掴んだって聞いたけど」

「頭がおにぎりってなんだよ・・・。風間=サンなら、今夜ソウカイヤがやるメン・タイの取引場所と取引相手を『ミネルバ』と一緒に特定してるよ」

 

 スパイダーマンの言葉に、ジト目で睨みつつも答える。

 メン・タイとはロシアとの闇取引で輸入される非合法薬物である。摂取するとニューロンが活性化されるが寿命が削れてしまうデメリットがあるらしい。コワイ!

 

「メン・タイ取引か・・・、それを叩けばソウカイヤにとっても大きな損害だね」

「でも、ナンデ急に尻尾を出してきたんだろう・・・罠かな?」

「さぁね、でも同時にチャンスでもある。罠だろうと行くしかないよ、実際タイガー・クエスト・ダンジョンだゾ。・・・お?」

 

 メン・タイはソウカイヤにとっても貴重な収入源だ。それを叩かれれば、実際痛手である。

 だが、実際上手く行き過ぎていることにマサオは訝しんだ。罠なのでは?と言うマサオの心配にスパイダーマンはそう答え、何かに気づく。ドアが開き、2人の男女がこちらにやってきたのだ。

 一人は風間トオル。そしてもう一人は黒、赤、銀の青少年の何かが危ないピッチリとしたボディースーツを着た、銀色の奇妙な髪型をした女性だ。そのバストは豊満である。

 

「風間君とミネルバ、もう場所の特定終わったんだ」

『はい、勿論ですよスパイダーマン=サン』

 

 スパイダーマンの言葉に、女性・・・ミネルバは頷きながら両手をかざす。すると、どうだろう。虚空に様々な画像が浮かび上がる。これは一体!?彼女はニンジャなのか?否である。

 彼女、ミネルバはスオトメ・エンタープライズが作り上げたスーパーAIであり、ここ『SSB』のメインコンピュータである。情報分析、基地のセキュリティ管理、他のUNIXへのハッキングなど何でも出来るカナリ・スゴイAIだ。

 スパイダーマンや、カスカベ防衛隊の面々と会話する時は青少年の何かが危ないピッチリボディースーツを着た銀髪豊満な美女の姿の立体映像を介して会話するのである。

 

『今回、ソウカイヤとメン・タイ取引するであろうヤクザクランを調べた所、一人の男がヒットしました』

 

 ミネルバが、そう言って一人の男の画像を宙に浮かべた。鋭い目つきをしたスキンヘッドの黒人男性である。

 

「この男は?」

『スミス・ハマダ。ネオサイタマ沖合をナワバリにしている「ヨコハマロープウェイクラン」のオヤブンです。

 違法薬物メン・タイを売りさばいている彼のクランに所属している黒人ヤクザを確認できましたので、ジュッチュー・ハック間違いないと判断します』

「取引先は分かった。後は、取引場所なんだけど・・・特定できた?」

 

 スパイダーマンの言葉に、コクリと頷きながらミネルバはある監視カメラの映像を虚空に浮かべる。

 過去にヨコハマロープウェイクランとの取引があったであろうその映像には、港らしき場所に入っていく黒塗りの乗用車。そして、見よ!車体にペイントされてあるのはクロスカタナの・・・エンブレム!ソウカイヤだ。

 

『場所はネオサイタマ第三埠頭です。

 過去の監視カメラの映像でも、ここに入っていくソウカイヤの車両を確認しました』

「決まりだな、今回の取引もそこで行われる筈だ。それじゃあ、オラは行ってくるゾ」

「分かった、サポートは任せてくれ!ミネルバ、ネオサイタマ第三埠頭に続くゲートを開けてくれ」

 

 スパイダーマンの言葉に、頷きながら風間はミネルバにそう指示を出した。

 

『ハイ、ヨロコンデー。スパイダーマン=サン、ご武運を』

 

 ミネルバが頷き、『ネオサイタマ第三埠頭行きゲート』と表示されたウィンドウを虚空に開き、『解除』の部分をタッチする。すると基地のどこかでガコン!と何かが外れ動く音が聞こえた。

 

「それじゃあ行ってくる!」

 

 スパイダーマンはそう言うと、その音の方へと向かったのであった。

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

 

【クレヨンしんちゃん×ニンジャスレイヤー×スパイダーマン】

 

 

―ネオサイタマ第三埠頭

 

「ザッケンナコラー!テメッコラー!ボーシッ!トーリー、ボーシッ!」

 

 草木も眠るウシミツ・アワー、黒人ヤクザ達とソウカイヤのクローンヤクザ達のメン・タイ取引の現場にスパイダーマンは来ていた。物影に隠れ様子を見る。

 

『状況は?』

「一触即発さ、メン・タイ仕切値を上げるらしくてそれに抗議してるっぽい」

 

 クローンヤクザ達にヤクザスラングで凄むスミスを見て、スパイダーマンは基地にいるであろう風間にそう通信を入れた。

 

『ロシアとの為替だな、それで原材料とかが高騰したから上げざるを得ないって訳か・・・』

「フーン、ソウカイヤもやりくり大変なんですなぁ。・・・お?こりゃあちと拙いかな・・・?」

 

 風間の言葉に、物影に隠れ様子を伺いながら返すスパイダーマン。ふと、車からある人物が降りてきた事にマスクの下で眉を潜めながらそう言った。

 その人物は、白いヤクザスーツを着た男だ。それだけならば問題はないが、問題は顔を覆うように装着している鎖頭巾と<炎>のメンポだ。そう、彼はニンジャなのだ!とスパイダーマンはスパイダー直感で察知した。

 

『どうした?』

「問題発生だゾ、ソウカイニンジャが出てきた」

『連中を殺す気だな。・・・まぁ、お前の事だから分かってるが、どうする?』

「勿論助ける!」

 

 即答。・・・だろうと思った。とため息混じりに風間は言った。

 

『お前が決めたんなら、僕は止めないさ。ただ一つ、ヤクソクするなら・・・死ぬなよ信之介』

「ああ!」

 

 風間にそう頷くと、スパイダーマンは行動を開始した。

 

 

―一方その頃。

 

「ハッハァー!」

 

 スミスは自分の部下である元野球選手のアンドレを使って、アーソンと名乗ったふざけた格好をしたヤクザスーツの男を脅していた。だが、彼らは知らない。自分達が脅しているのは自分達よりもはるか高みにいるモンスター・・・『ニンジャ』であると言う事を。

 そうとも知らず、アンドレが棍棒を使ってアーソンの目の前スレスレに寸止めスイングをする。凄まじい風圧に、アーソンは微動だにしない。

 

「ハッハァー!」

 

 再び寸止めスイング、風圧がアーソンを叩く。

 

「ヒヒヒ、内心ビビッてやがる」

「程ほどにしろよ、アンドレ」

 

 そんなアーソンを見て、おかしそうに笑う黒人ヤクザ達。

 

「ハッハァー!」

 

 再度、寸止めスイングをしようとした次の瞬間である。

 

「イヤーッ!」

 

 アーソンがカラテシャウトを発し、アンドレの首を目掛けハイキック。そしてそのままアンドレの首を蹴り千切・・・、

 

「ヌゥッ!?」

「「「「ワッザ!?」」」」

 

 る前に、アンドレが消失した。突然の事に目を白黒させる黒人ヤクザ達。

 だが、アーソンは違った。アーソンはニンジャ視力によって、一部始終を見ていた。ハイキックをした瞬間、上からアンドレの肩に2本の白い糸が伸び、イッポンヅリ・マグロめいてアンドレを釣り上げたのである。

 

「そこにいるのは誰だ!?出て来い!」

 

 アーソンは糸が降りたであろう方向に向かって叫ぶ。クローンヤクザも黒人ヤクザも釣られて一斉にその方向をを見た。

 その方向には、糸でぐるぐる巻きにされたアンドレを片手で担ぐ、赤と青に彩られたスーツを着た男が。

 

「ワッザ!?スパイディ!?ナンデこんな所に!?」

「ドーモ、メン・タイ撲滅委員会会長スパイダーマンです」

「オ、オロセー!ハナセー!」

 

 ロウバイするスミスを尻目にスパイダーマンはオジギしながら挨拶。その傍らでアンドレはジタバタと暴れている。

 

「何だそのふざけた委員会は・・・。ドーモ、スパイダーマン=サン。アーソンです。カスカベ・シティの親愛なる隣人がこんな所まで何のようだ?」

「あんた等ソウカイヤを潰す為って言ったら?」

「ほう?」

「オロセー!」

 

 アイサツを返し、スパイダーマンに問いかけるアーソン。対するスパイダーマンは平然とそう答えた。傍らでアンドレはジタバタと暴れている。

 

「テメッコラー!アンドレをハナセッコラー!」

 

 蚊帳の外だったスミスが、スパイダーマンに向けてヤクザスラングで怒鳴り散らす。

 

「アー、ゴメンゴメン。これキミの仲間?それじゃあ返すよ、ちゃんと受け止めてね・・・イヤーッ!」

「アイエエエエエエエエエエエエ!!?」

 

 そう言ってスパイダーマンは肩に担いでいたアンドレをスミス目掛けて投擲。剛速球!

 

「エ!?ちょ、ま・・・アバーッ!?」

 

 ナムアミダブツ!スミス、投げられたアンドレを股間でキャッチ!当然悶絶。

 

「「「オ、オヤブン!?」」」

 

 心配そうにスミスに駆け寄る子分の黒人ヤクザ。それをスパイダーマンは、

 

「ウェブグレネード、イヤーッ!」

「「「グワーッ!?」」」

 

 ウェブグレネードを投擲。グレネードは空中で爆発!網型のスパイダー・イトとなり、スミスとアンドレごと黒人ヤクザを拘束した!一網打尽!ワザマエ!

 

「さて、ヨコハマロープウェイクランの連中はこれで一丁上がり」

 

 パンパンと手を払い、スパイダーマンはアーソンを見やる。アーソンを守るようにクローンヤクザが立ちふさがった。

 

「よせ、お前らが出張った所でこの黒人共の二の舞になるのがオチだ。私がやるから下がってろ」

「「「「センセイ、御武運を」」」」

 

 アーソンの言葉に、奥ゆかしく一糸乱れぬ動きでオジギし下がるクローンヤクザ。その様子をスパイダーマンは軽く口笛を吹きながら軽口を叩いた。

 

「意外と部下思いなんだね」

「そうじゃあない、貴様など私一人で十分だと判断したからだ」

 

 スパイダーマンの言葉に、平然とアーソンは返す。そして、互いに身構えた。

 

「ソウカイヤを潰す等と言うイディオットな事を抜かした罪・・・その身で味わうがいい!イヤーッ!!!」

 

 アーソンはそう叫ぶと、スパイダーマン目掛けて駆け出し拳を繰り出した。ダッシュストレート!

 

「イヤーッ!」

 

 スパイダーマンは、それを回避し、腕をつかむとイポンゼオイでアーソンを投げる。

 

「イヤーッ!」

 

 投げられたアーソンはアクロバティック回転で着地。だが、同時に隙が生まれる。

 

「スキアリ!イヤーッ!!!」

「グワーッ!?」

 

 アーソンの間を挟むようにスパイダー・イトを発射。そしてそれを引っ張りその反動で勢いよくドロップキック!近くにあったコンテナに叩きつけられるアーソン。

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「ヌゥーッ!?」

 

 そしてそのまま、弾丸型スパイダー・イトを連続発射。アーソンを拘束する。これで、勝負有りか!?否!

 

「これで私を拘束したつもりか!?イヤーッ!」

 

 アーソンを拘束していたスパイダー・イトが松明めいて燃え上がる。そしてそのまま、拘束が破られた。

 

「成る程、カトン・ジツの一種か。スゴイね、光熱費要らずでイイかも」

「今の内にほざいていろ、スパイダーマン=サン。貴様はこれから死ぬのだ、私のカトン・ジツによってな!」

 

 スパイダーマンの軽口に、アーソンは再び身構えながら返す。

 

「へぇー、そう頑張って。多分無理だろうけど」

「抜かせッ!イヤーッ!」

 

 アーソン、再び突貫!そして、凄まじい拳速でスパイダーマンの顔面目掛けてパンチを放つ。

 

「ほいっと」

 

 対するスパイダーマンは最小限の動き。首を傾けそれをかわす。

 

「グ・・・イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

 

 悔しそうに歯噛みしながら、アーソンは拳のラッシュ!

 

「ほい、ほい、ほいっと」

 

 だが、スパイダーマンには当たらない。何処ふく風でラッシュをかわす。

 

「イヤーッ!」

「ほんじゃ、そろそろ反撃しますか」

 

 アーソンが再び拳を繰り出したとき、スパイダーマンはそう呟いた。その時だ!

 

―ガシッ。

 

「アイエッ!?」

 

 アーソンのロウバイした声が響く。スパイダーマンがアーソンの手首を掴んだのだ。

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

 そして、その腕を高く掲げ、思いっきりへし折る。

 

「グワーッ!グワーッ!」

 

 折られた腕を押さえながら痛みにのた打ち回るアーソン。そんなアーソンにスパイダーマンは問いかける。

 

「さてと、まだやる?オラとしては、さっさと降参してオナワになってくれるとありがたいんだけどさ」

「ウ・・・グググ・・・。

 (つ、強い・・・、このまま奴につかまってマッポにオナワにされたら確実にセプクだ。

 ここは逃げて救援を呼ばねば、ケジメされるだろうが、背に腹は変えられない・・・)お前達!スパイダーマン=サンの足止めをしろ!私は逃げて救援を呼ぶ!」

 

 スパイダーマンの強さに本能的に不利と判断し、アーソンは逃げの一択を取る。そして、下がらせたクローンヤクザに決断的に足止めを命じた。

 だが、クローンヤクザ達は無言。「ヨロコンデー」とも言わない。アーソンは苛立たしげに叫んだ。

 

「お前ら、何をしている!?さっきの命令が聞こえなかったのか!?」

 

―ドサッ・・・。

 

「え?」

 

 突如、ジョルリ人形めいて倒れるクローンヤクザ達。当然、全員死亡。突然の事にアーソンは間の抜けた声をあげる。

 

「その必要はない、オヌシは今ここで私に殺されるのだからな」

 

 クローンヤクザを屠ったであろう下手人はすぐに見つかった。赤黒いニンジャ装束を纏った『忍』『殺』と刻まれたメンポを装着したニンジャであった。

 そのニンジャは、両手を合わせるとアーソンとスパイダーマンにアイサツをした。

 

「ドーモ、アーソン=サンとスパイダーマン=サン。ニンジャスレイヤーです」

 

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #3に続く】




はい、と言う訳でやっちゃいました。トチノキ生存。
本来であれば、フユコ=サンも生存させる予定でしたがそれだとフジキドの戦う理由が無くなるのでは?と思い、死なせちゃう事に・・・。すまんな、本当にすまん。・・・後で原作死亡キャラ生存のタグを追加せねば・・・。
ちなみに今回登場したSSBのメインコンピュータのミネルバ=サン。彼女のモデルは忍殺のコミカライズを担当していた作者=サンが描いた『マジンガーZERO』のミネルバX=サンです。今後も『マジンガーZERO』キャラモデルのキャラクターが出てくるかもですね。
そして、満を辞して我らがニンジャスレイヤー=サン登場!一体何キドなんだ・・・?(すっとぼけ)
次回もバトルマシマシで書いていきたいと思います、お楽しみに!
それではオタッシャデー!


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #3』

今回はちとリアル云々が忙しく実際難産でした・・・。
いろいろと拙い部分がありますが、温かい目でお願いシマス!

8月24日、少々本文の内容について変更しました。


「ニンジャ・・・スレイヤー」

 

 初めて聞く名前にスパイダーマンは静かに呟き、目の前のただならぬアトモスフィアを放つ赤黒いニンジャを見る。スパイダーマンとなってこれまで、様々なニンジャと対峙してきたが、これほどの並々ならぬアトモスフィアを放つニンジャは初めてであった。

 

(それに・・・彼とは初めて会った筈なのに、どこかで会ったようなデジャブを感じる・・・ナンデ?)

 

 ニンジャスレイヤーを見ていると湧き上がる得体のしれないデジャブに、スパイダーマンは訝しんだ。だが、考えているヒマはない。

 

「ハイクを詠め、アーソン=サン。カイシャクしてやる」

「あ、アイエエエエ・・・」

 

 ニンジャスレイヤーがジュー・ジツの構えを取って、アーソン=サンをスレイしようとしていたのだ。アブナイ!

 どんな悪党ニンジャでも、殺さずマッポに突き出すことを信条としているスパイダーマンはニンジャスレイヤーを呼び止める。

 

「あー、ちょっとマッテ。ニンジャスレイヤー=サンだっけ?殺しちゃダメだよ」

「・・・邪魔をするな、スパイダーマン=サン。ソウカイヤのニンジャは全て殺す」

 

 スパイダーマンの制止の声に、ニンジャスレイヤーは瞳だけをこちらに向けてそう返した。鋭いカタナめいた鋭い眼光、モータルならばしめやかに失禁してしまいそうなそれを受けてもなお飄々とした様子でスパイダーマンは返す。

 

「確かに、ソウカイヤの連中は極悪非道だ。女子供だろうと、容赦なく殺す。

 ・・・だけど、だからと言ってそいつらも殺す・・・と言うのはやりすぎなんじゃない?」

「当然の報い、インガオホーだ」

「彼らだって、元は人間・・・モータルだ。キチンと法で裁かれなきゃならないんだ」

「ソウカイヤのニンジャ共に法など無意味だ。だから私が殺す。邪魔立てするのなら、オヌシも殺すぞ?」

 

 オスモウめいた議論の中、ニンジャスレイヤーはギロリとスパイダーマンを睨む。その眼に殺意以外の光をスパイダーマンは見た。

 それは、憎悪の光だ。ニンジャが憎くてたまらない、殺したくてたまらない。ニンジャ殺すべし。そんな光だ。

 

(一体、何があったらこんな眼をするようになるんだ・・・?)

 

 彼の過去に何があったのか・・・?スパイダーマンはニンジャスレイヤーの眼光を見てそう思う。

 だが、突如頭上からライトを照らされ思考の海から引き剥がされざるを得なくなる。

 

『安い安い、実際安い』

 

 その合成音声の方へ眼を向けると、こちらを照らす飛行船があった。

 

『この飛行船は、広告目的であり怪しくは無い。安心です』

 

 欺瞞的な言葉を撒き散らすバイオマグロめいた飛行船だ。その名はマグロツェッペリン。ネオサイタマの上空をパトロール目的で飛んでいる飛行船である。

 

「ハハハハハ!救援が来たぞ、これで貴様等もオシマイだ!」

 

 先ほどまでの弱気な姿勢から一転。アーソンは勝ち誇った笑みを浮かべ、スパイダーマンとニンジャスレイヤーにそう言った。そんなアーソンに、ニンジャスレイヤーは鋭い眼光を向けながら返した。

 

「ならば、その救援もオヌシの元に送ってやろう。イヤーッ!」

「オット!だから、殺しちゃダメだって」

 

 アーソンの首目掛けて放たれたチョップを、割って入るように受け止める。

 

「ヌゥ!ジャマをするな!イヤーッ!」

「殺しちゃダメって言ってるじゃん!イヤーッ!」

 

 再び放たれたチョップを受け止める。

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

 

 チョップしては受け止め、チョップしては受け止め。の応酬が続く。その時、ミネルバから通信が入る。

 

『スパイダーマン=サン!』

 

―KA-BOOOOM!!!

 

 それと同時に、スパイダーマンとニンジャスレイヤーのいる位置が爆発!マグロツェッペリンから放たれたアンタイ・ニンジャ砲弾によるものである。

 二人の安否は・・・?

 

『マグロツェッペリンからロックオンを受けています。・・・と言いたかったんですが遅かったですね』

「そう言うのは、もうちょっと早めに言ってよね」

 

 無事だ!爆炎の中から、無傷のスパイダーマンとニンジャスレイヤーが飛び出してくる。

 

「ナ、ナンデ私までェェェェェェェェェッ!!!」

 

 ついでに、ギャグコミックマンガめいて真っ黒こげなアーソンも。スパイダーマンは咄嗟に、アーソンを掴むと器用にスパイダー・イトを使いアクロバティックに港から退散する。

 ニンジャスレイヤーもまた、ニンジャ脚力を持って港から退散。

 草木も眠るウシミツアワー、幻想的なネオサイタマの夜景でスパイダーマンとニンジャスレイヤー・・・2人のニンジャとマグロツェッペリンの追いかけっこが始まる。

 

『これはただのデモンストレーションであり、怪しくはない。安心です』

 

 欺瞞的なマイコ音声と共に、マグロツェッペリンは砲弾を、ミサイルをスパイダーマンやニンジャスレイヤー目掛けて発射する。

 

「そーゆーの全然説得力ないんだけど!?上空ならまだしもこんなものが往来とかに当たったらどうする訳!?」

 

 それを巧みにかわしながら、スパイダーマンは愚痴をこぼす。彼に捕まっているアーソンはと言うと・・・、

 

「アイエエエエエエ!?ヤメテー!ヤメテー!タスケテー!」

 

 再び、ヘタレ始めしめやかに失禁しながら泣き叫んでいた。

 

「アーソン=サン掴んだ状態だとやりづらいな・・・。どっかに、マッポの人がいたらいいけど・・・お?」

 

 スウィングしながら、街の往来を見る。・・・そこに、警邏中のマッポを発見。

 

「マッポのおにいさーん」

「ン?」

「これ、よろしく!」

「アイエエエエエエエエエエエエ!!?」

 

 マッポに声をかけると、そのままアーソンを思いっきりぶん投げた。

 

「ワワッ!?何だ何だ!?」

 

―TWIP!

 

「アバーッ!?」

「アイエエエ!?ニンジャ!?」

 

 驚くマッポに当たる前に、スパイダー・イトを発射。蜘蛛の巣めいて広がり、アーソンをキャッチ。キッチリと、アーソンの頭に『このもの、違法薬物メン・タイの密売人』とショドーされた紙を貼り付けるのも忘れない。ワザマエ!

 アーソンをマッポに突き出し、身軽になったスパイダーマンはビルのてっぺんへ上りマグロツェッペリンと向き直った。ニンジャスレイヤーも同様である。

 すると・・・おお見よ!マグロツェペリンの頭部辺りから人がグライダーめいた何かに乗って現れたではないか!

 実際世紀末めいたアーマーに目元を覆ったドミノマスクをつけた男であった。勿論、ただの人間ではない。ニンジャだ!コメディアンである。

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。それとにっくきスパイダーマン=サン、コメディアンです」

「ドーモ、コメディアン=サン。ニンジャスレイヤーです」

「ドーモ、コメディアン=サン。スパイダーマンです。なーんだ、救援って言うもんだから誰かと思えばエドガーじゃないか。また叩きのめされに来たの?」

「本名で言うのはヤメロー!本当に貴様はむかつく奴だな!」

 

 コメディアンに、肩をすくめながらスパイダーマンは言う。そんなスパイダーマンに、地団駄を踏みながらコメディアンは反論した。

 コメディアンもまた、フィスク同様スパイダーマンにコテンパンに叩きのめされているのである。それ以来、スパイダーマンを敵視しており、事あるたびにスパイダーマンの前に立ちはだかっているのだ。

 ・・・まぁ、その都度負けては命からがら逃げ帰っているが・・・。

 ちなみに、実際どうでもいい情報であるがエドガーとはコメディアンの本名で、フルネームは『エドガー・ブレイク』である。

 

「だが、貴様との腐れ縁もこれまでよ!

 今回は、貴様を確実にオタッシャさせる為の秘密兵器を持ってきたのだからなァ!ここが貴様の墓場となるのだ!さぁ、行け『マシーンベム』暴君竜よ!」

 

―BOM!

 

「GYAOOOOOOOOOOOOOON!!!」

 

 マグロツェッペリンから、何かが射出されスパイダーマンとニンジャスレイヤーの目の前に降り立った。キカイめいたボディに身を包んだ二足歩行のトカゲだ。コワイ!

 

「ドーモ、スパイダーマン=サンにニンジャスレイヤー=サン。マシーンベム暴君竜です」

「ドーモ、暴君竜=サン。スパイダーマンです」

「ドーモ、暴君竜=サン。ニンジャスレイヤーです」

 

 そのトカゲ、暴君竜はペコリとオジギをしてスパイダーマン達に挨拶。なんとしっかりしたレイギサホーか、スゴイ!

 

「何なのこれ?こんなヘンテコロボトカゲが秘密兵器?」

「そう言ってられるのも今の内だ、この暴君竜はとある組織の技術によって作られたヤバイ級のモンスター兵器『マシーンベム』なのだ!

 それだけじゃあない、上空には対ニンジャ用に改善したマグロツェッペリン。そしてこの俺様もいる!貴様に勝ち目は全くないのだァ!ハーッハッハッハッハッハ!」

 

 スパイダーマンの言葉に、そう言ってコメディアンは高らかに笑う。

 

「言いたい事はそれだけか?」

「・・・何?」

 

 そんなコメディアンに、一言物申す者が。ニンジャスレイヤーだ。

 

「オヌシのつまらぬ三流プレゼンなどはっきり言ってどうでもいい」

「な、ななな何ィィィ!?」

「偉そうにここがスパイダーマン=サンの墓場だとか何だ言っているが、オヌシのようなサンシタには無理だ。

 よく見たら、お前の指に幾つものケジメ痕が残っている。・・・どうせ、このニンジャにお情けで生かしてもらったんだろう?」

 

 ニンジャスレイヤーの容赦ないバトウ・ジツに、顔をユデダコめいて真っ赤にするコメディアン。

 さりげなくコメディアンの両手の指にあるケジメ痕を見た時に、チラリとスパイダーマンを見た。

 

「だが、それもここで終わる。何故ならば私がオヌシをカラテし殺すからだ」

「な、何を~~~!減らず口を叩きおって!見逃してやろうと思ったが気が変わった!貴様も纏めて討ち取って査定の足しにしてくれるわ!」

 

 ニンジャスレイヤーの言葉に、怒りが有頂天となったコメディアン。地団駄を踏みながら、ニンジャスレイヤーを睨む。

 

「何か、とんだチームアップになっちゃったね。どう言う風の吹き回しだい?」

「状況判断だ。オヌシはソウカイヤと敵対している、ならばオヌシと共にこの状況を打破した方が実際いい」

 

 肩を竦めながら、問いかけるスパイダーマンにニンジャスレイヤーはそう答えた。

 

「まぁ、確かにね。・・・だけど、一つ約束して欲しい。極力殺すな。・・・と言っても無理だろうなぁ・・・」

「当たり前だろう、オヌシに何を言われようとニンジャは全て殺す。何なら、オヌシを先に殺してもいいぞ?」

「デスヨネー。それは勘弁だから、オラは何も言わないよ」

 

 ニンジャスレイヤーの返答に、肩を竦めるとコメディアン・・・そして暴君竜に向き直る、そして二人同時に各々の構えを取った。

 草木も眠るウシミツアワー、ネオサイタマの摩天楼でイクサが始まろうとしていた。

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #4に続く】




ニンジャスレイヤー=サンを上手く動かせてるか不安でござる(汗)Web版や漫画版忍殺を読みながら書いてはいるんですが・・・心配だ・・・。
さて今回、満を辞して東映版スパイダーマンに出てきたマシーンベムが登場!勿論、マシーンベムだけでなく彼らも登場させる予定ですのでお楽しみに!
それでは~。


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #4』

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
明日で10月!10月と言えば、DCコミックのジョーカー=サンを主人公にした『ジョーカー』が公開されますね。
マーベル、DC問わずアメコミヒーローが好きなので、自分としては是非見に行きたいです。
おっとっとっと、話がそれましたね。今回は、スパイディ&ニンジャスレイヤーVSコメディアン&暴君竜の戦いとなります!
では、どうぞ!


「GYAOOOOOOOOOOOOON!!!」

 

 暴君竜が吼え、ミサイルを放つ。

 

「Wasshoi!」

「イヤーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーとスパイダーマンは飛び上がって回避。

 

「隙だらけだぞ、イヤーッ!」

 

 飛び上がった隙を突いて、コメディアンがマシンガンを構え二人を撃とうとする!アブナイ!

 

「おっと、これは没収!」

 

―TWIP!TWIP!

 

「ナニィー!?」

 

 スパイダーマンが咄嗟にウェブシューターからスパイダー・イトを放ち、コメディアンの持つマシンガンを絡め取り、奪い取った。

 

「イヤーッ!」

 

 それと同時に、ニンジャスレイヤーが上空からコメディアン目掛けチョップを放つ。

 

「GYAOOON!」

 

 暴君竜がコメディアンを庇うように、ニンジャスレイヤーの前に立ちはだかる。そのまま、脳天にチョップが直撃か!?

 

―ガギン!

 

「ヌゥーッ!」

 

 否ッ!頭部のシャッターが閉じ、チョップを防いだ!ニンジャ腕力から繰り出されるチョップを防ぐほどとは何たる硬さか!さしものニンジャスレイヤーも実際唸る。

 

「GYAOOON!」

「イヤーッ!」

 

 右手の鎌めいた剣で、ニンジャスレイヤーの首を刎ねんと振るう暴君竜。対するニンジャスレイヤーはブリッジ回避。そして、

 

「イヤーッ!」

 

 そのまま、シャッターに守られていない顎目掛けてサマーソルトキックを放つ。だが、

 

―ガキン!

 

「ナニィ!?」

 

 その顎部分にもシャッターが下り、防がれてしまう。

 

「GUOOOOOOO!!!」

 

 左手のミサイルを構え、至近距離でニンジャスレイヤーに向けて放とうとしていた。アブナイ!

 

「させるか!イヤーッ!」

「GUWAAAAAA!!!」

 

 だが、寸でのところでスパイダーマンが暴君竜を蹴り飛ばした。吹っ飛ばされた暴君竜は、隣のビルに衝突するが、無傷で起き上がりジェット噴射で飛び上がった。

 

「チェッ、この程度じゃ倒れないか・・・。ダイジョブ?ニンジャスレイヤー=サン」

「問題ない。私の事より、オヌシ自身を心配しろ」

 

 そんな暴君竜に舌打ちをしながらスパイダーマンは問いかける。スパイダーマンの言葉に、ニンジャスレイヤーは無愛想に返す。

 

「まぁ、それもそうだね。それにしても、ちょっとつっけんどん過ぎない?一応オラ達パートナーなんだからさ、もうちょっとフランクに行こうよ」

「オヌシとは、状況判断で共闘しているだけにすぎん。あまりしつこいとオヌシから殺してやろうか」

「OK,分かった。オラも黙っとく」

 

 ギロリ、と睨むニンジャスレイヤーに、スパイダーマンは肩をすくめながら答え暴君竜とコメディアンを見据え構えたのであった。

 

【トルネードコール】

 

 

【スパイダーマン】

 

 

―一方その頃・・・。

 

 貪欲なブッダデーモンの宝石箱めいた幻想的なネオサイタマの夜景。その美を高所から見下ろすようにそびえ立つビルがあった。

 その名はトコロザワ・ピラー。その天守閣にて、居を構える男がいた。

 こののっぴきならない男こそ、ネコソギ・ファンド社主であり、ソウカイヤシンジケートの首魁であるラオモト・カンである。ラオモトは傍らに座るフード付きのマントを羽織った人物と共に、モニターを観ていた。

 

「いかがでしょうか?我等が造りし『ニンダー』の性能は」

「ムハハハハハ!素晴らしいものだ、クローンヤクザにも引けをとらぬ性能!これにクローンヤクザの部隊と混成すれば、正に敵無しよ!」

 

 モニターに映されていたのは、灰色の全身タイツ。顔には黒いサングラスとクチバシめいたパーツを取り付けた異様な人物達。その人物の足元には・・・おお、見よ!凶悪さに定評のあるサバンナライオンをベースに生み出したバイオサバンナライオンがツキジめいた死体で転がっているではないか!

 対する、全身タイツの集団は無傷。・・・スゴイ!

 

「これからも、オヌシら『アイアン・十字』の面々とは仲良くしたいものだな!ムッハハハハハハ!」

「ありがたきお言葉にございます。我らが偉大なる『プロフェッサー・M』も、ソウカイヤの方々とは仲良くしたいとおっしゃっておりました」

「そうかそうか、ムハハハハハハハ!」

 

 マントの人物の言葉に、愉快そうに笑いながら侍らせていたオイランからスシを受け取り、豪快に食べるラオモト。そこへ、モニターから通信が入り、一人の男が映る。

 

『ドーモ、ラオモト=サン。「ブブジマ」船長のキンジマです』

 

 モニターでオジギをするのは宇宙服めいたパイロットスーツを着た、小太りの男。彼のヘルメットにはオムラ・インダストリの社章が描かれている。ちなみにブブジマとは、ニンジャスレイヤーとスパイダーマンを捕捉しているマグロツェペリンの事であり、正式名称は『戦闘鬼瓦飛行船ブブジマ』である。有事の際には変形し、鬼瓦めいた形態となるのだ。コワイ!

 読者の皆様の中には『オムラ・インダストリとは何か?』と疑問に思う人もいるだろう。オムラ・インダストリとは、日本の重工業を独占する暗黒メガコーポである。当然、ソウカイヤとの繋がりも深い。

 

「何だ?今はビジネスの途中だったのだがな」

『にっくきスパイダーマンと他1名のニンジャ存在を捕捉しましてございます』

「ウム、映せ」

 

 ヨロコンデーと船長の言葉と共に、イクサ現場が中継される。そこには、スパイダーマン&ニンジャスレイヤーのコンビとイクサをするマシーンベム・暴君竜、そしてコメディアンが映されていた。

 

「ホウ、あの憎たらしいウォールクローラーと相対しなおかつ梃子摺らせるとは、流石は『アイアン・十字』の作ったマシーンベムであるな」

「恐縮でございます」

 

 満足そうにクククと笑うラオモトに、ペコリと頭を下げるマントの人物。船長は、しかし!と得意げに語る。

 

『「アイアン・十字」の技術も凄いですが、我がオムラの技術も負けておりません!この「ブブジマ」にはオムラの最新鋭技術を詰め込んでおります!

 いざと言う時には、この圧倒的火力でコメディアン=サンを援護し、必ずやスパイダーマンを・・・』

「五月蝿いぞ、無礼者めが」

 

 船長のマシンガンめいたトークを、ギロリ。と睨み中断させながらラオモトは言った。コワイ!

 

『ア、アイエエエエエエ!?』

 

 その圧倒的恐怖に船長はガクガクと震えながら、しめやかに失禁した。そして、すぐさまドゲザをする。

 

『も、申し訳ございません!ヒラニー!ヒラニー!』

「オヌシ等の下らんオモチャなど心底纏めてどうでもいい、ただ黙って引き続き、マシーンベムとコメディアン=サンの戦いをモニタリング。危なくなったら援護しろ」

『ハイ、ヨロコンデー!』

 

 ラオモトの言葉に、ドゲザをしながら通信を切る。そして、再びイクサの場面へと映る。

 

「あのニンジャ共は『暴君竜』相手にどこまでやれるかな?・・・ククククク」

 

 その呟きは、ラオモトの笑いに掻き消されたのであった。

 

 

【クレヨンしんちゃん】

 

 

【ニンジャスレイヤー】

 

 

 ネオサイタマの摩天楼を縦横無尽にかけながら、スリケンを投げ、スパイダー・イトを放ち、ミサイルと銃弾が飛び交う。そんな激しいイクサが繰り広げられていた。

 

「ボディならどうだ!イヤーッ!!!」

「GUWAAAA!?」

 

 ボディ目掛けてのスイングキックが暴君竜に炸裂する。だが、大したダメージを与える事は敵わなかった。

 

「GUOOOOOON!!!」

「ウワワワワ!?」

 

 渾身の力を込めてそれを振り払う暴君竜。その勢いは凄まじく、スパイダーマンは吹っ飛ばされてしまう。飛ばされた先は・・・?

 

―CRAAAAAAAASH!!!

 

「グワーッ!?」

「「アイエエエエエエエ!?」」

 

 ホテルの・・・一室。そこで、一組のアベックが今まさにネンゴロをしようとしていたその瞬間、スパイダーマンは窓をぶち破ってエントリーしてしまう。

 ウーン。と身体を起こして、頭を振りながら周りを見て・・・アベックを見る。そして、自分のいる場所と周りの状況を把握し、一言。

 

「・・・ゴユルリトー」

 

―TWIP!

 

 そう言って、スパイダー・イトを窓の外へと放ち、外へと出ると再びイクサ場へと舞い戻った。

 

「GUOOOOON!!」

 

 それと同時に、ミサイルが放たれる。狙いはスパイダーマン。避ければ、アベックが危ない!どうする親愛なる隣人!

 

「イヤーッ!」

 

 慌てずに、スパイダー・イトをミサイルにくっつけさせ、そのまま投げ返した。ワザマエ!

 

「GUWAAAAAAA!?」

 

―KABOOOOM!

 

 ミサイルは暴君竜の胸部に直撃し、爆発。今度はダメージが通ったらしく、胸部の装甲が割れ、機械部分が露出していた。

 

「よっし!ダメージ通った!ここから反撃・・・!?」

 

 反撃に出ようとした瞬間、スパイダー感覚が危険を察知し、スパイダーマンに警告を知らせた。その方向を見ると、マグロツェッペリンからアンタイニンジャミサイルが飛来してきた!

 

「街中でそんなのをぶっ放すなっての!イヤーッ!!」

 

 先ほど暴君竜のミサイルを弾き返したと同じ容量で、ミサイルにスパイダー・イトを絡ませ、思いっきりブン投げた!投げられたミサイルはマグロツェッペリンを直撃!ワザマエ!

 爆炎に包まれるマグロツェッペリン。木っ端微塵に吹き飛んだか・・・?否!

 

『この飛行船は広告目的であり、怪しくは無い』

 

 欺瞞的なマイコ音声と共に、爆炎から姿を現したのはマグロツェッペリン・・・なのだが、その姿は異様に変わっていた。マグロ外装が変形し、憤怒の形相のデーモン・オニめいた姿、鬼瓦ツェッペリンとなっていたのだ!コワイ!

 

「説得力全く無いんだけど、一回怪しさの意味を辞書で調べてみたら?」

 

 そんな欺瞞的な言葉に、半眼でスパイダーマンはそう言った。

 

『デモンストレーションで、頼もしさが重点し、広告効果が倍増される。そして、爆発で広告効果がさらに倍増!』

 

 それと共に、アンタイニンジャ砲弾をスパイダーマンとコメディアンと戦っているニンジャスレイヤーに向けて放ったのであった。

 ここから反撃と言う時に、鬼瓦ツェッペリンと言う乱入者!危うし、スパイダーマンとニンジャスレイヤー!

 この危機を二人はどう乗り切るのか?負けるな、スパイダーマン!負けるな!

 

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #5に続く】




いかがだったでしょうか?
今回は・・・あまりニンジャスレイヤー=サンを動かしてないなぁ・・・(汗)次回は、もっと動かさなきゃ・・・。
マントに包まれていた人物は、東映版スパイダーマンに出てきたキャラクターです。誰なのかは・・・、次回明らかにします。
果たして、スパイダーマン達はどうなるのか?待て、次回!
それではオタッシャデー!


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #5』

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
段々と寒くなり、ストーブを頻繁に使う機会が増えてきました。
まぁ、なんと言っても注意しなきゃいけないのはインフルエンザ。かからないように、予防接種や体調管理などして、カラダニキヲツケテ行きたいと思います。


―KABOOOOOOOM!!!

 

 爆発!立ち込める爆煙の中、対敵であるスパイダーマンとニンジャスレイヤーなるニンジャは出てこない。

 

「やったか!?」

「艦長、それノボリです!」

 

 鬼瓦ツェッペリン・・・もとい、ブブジマのブリッジで叫ぶ艦長に、ツッコミを入れる乗組員。

 それと同時に、爆煙の中から飛び出す影が二つ。スパイダーマンとニンジャスレイヤーだ。しかも、無傷!ナムサン!見事な艦長のノボリ回収である。

 

「アイエエエエ!?無傷ナンデ!?」

 

 対敵が二人とも、無傷である事に驚く艦長。そんな艦長にラオモトから通信が。

 

『どうした、オムラ=サン。自慢の武装でスパイダーマン=サンは兎も角、野良ニンジャ一匹すら殺せんか?』

「ま、まさか!このブブジマの武装はこれだけではありません!おい、ミサイルで攻撃しろ!」

 

 慌てながらラオモトに弁明し、乗組員に指示を飛ばす。「ヨ、ヨロコンデー!」と乗組員達は答え、コンソールを操作した。

 

 

―ドドドドシュー!

 

 それと同時に、鬼瓦ツェッペリンからミサイルが放たれる。ミサイルは、くねくねと変則的にコメディアンと暴君竜から逃げているスパイダーマンとニンジャスレイヤーに迫る!アブナイ!

 だが、二人のニンジャ戦士も負けてはいない。ニンジャ運動神経で、アクロバティック回避!

 避けきれないと判断すれば、スパイダーマンはウェブを使って、ニンジャスレイヤーはスリケンを使ってミサイルを撃ち落す。

 

「そぉれ、ミサイルをプレゼントォッ!イヤーッ!」

「グワーッ!?」

『GUWAAAAAAA!?』

 

 ついでに、スパイダーマンはミサイルの一つを追いかけるコメディアン達めがけて蹴り飛ばした。カブーム!爆発と共に、コメディアン達は吹っ飛ばされる。

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーがスリケンを鬼瓦ツェッペリンに投擲!スリケンはツェッペリンのエンジン部分に命中!

 

―バチィ!

 

 エンジン部分がスパーク!ツェッペリン内部も揺れる!

 

「アイエエエエエ!?コレは一体!?」

 

 揺れるツェッペリン内部で艦長がイスにしがみつきながら叫んだ。

 

『当たり前だ!ニンジャのスリケンは、お前らモータルが投げる石つぶてとは訳が違うのだ!』

 

 そんな艦長に、モニター一杯でドアップに映るのはコメディアン!スパイダーマンがシュートしたミサイルの爆発によるものなのか所々すすけておあり真っ黒だ。

 そこに割り込むようにラオモト=サンも映る。

 

『反撃を許しておるではないか。おまけに、コメディアン=サンの足手纏いにもなっておる。

 これが、最新鋭とでも言うのか?聞いて呆れるな、オムラ=サン』

「アイエエエ・・・」

 

 ギロリ、と睨むラオモトに艦長は萎縮。軽く失禁した。

 

「で、ですがまだまだこんなものではありません!こんな事もあろうかと用意していた秘密兵器でスパイダーマンと野良ニンジャを亡き者にして差し上げますよ!」

 

 だが、気を取り直して艦長はラオモトにまくし立てるように言った。・・・ラオモトが心底興味なさげな眼でこちらを見ているということも気づかずに。

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

(全く心底忌々しい、にっくきウォールクローラーめ)

 

 艦長の言葉をどこか上の空で聞きながら、スパイダーマンの事をラオモトは考えていた。

 あのカスカベ・シティに住むニンジャはいつもそうだ。いつも何かを起こそうとすると正義の味方気取りでジャマをしてくる。

 おまけに、カスカベ・シティに住むモータル達からはやれヒーローだなどと持て囃されているスパイダーマンは眼の上のタンコブであった。

 そして今日、アイアン・十字によってもたらされたマシーン・ベムなる兵器でスパイダーマンを追い詰める事が出来た!と思った矢先にこれである。さっさと、オムラの連中に余計な手出しをさせず撤退させればよかったと悔いていた。

 

(ええい!これならばモータルを餌にスパイダーマンを罠にかけるなりすればよかったわ!)

 

 忌々しげにスシを掴み食べる。・・・そこで、ふともう一つスシを掴もうとし、止めた。

 

(待てよ・・・モータルを餌に・・・)

 

 その時、ラオモト=サンの脳内スーパーコンピュータに電流が走る。

 そうだ、目の前のモニターにいるじゃないか。スパイダーマンを罠にかけるのに丁度いい(モータル)が。

 モニターで、オムラの科学はどうだとか、何だかんだとどうでもいい事をまくし立てている小太りの艦長を見て、ラオモトは愉悦の笑みを浮かべていた。

 

『あ・・・あの、ラオモト=サン?いかがなさったので・・・?』

 

 黙っているラオモトを見て何か気を悪くしたのだろうかと顔を青くしながら問いかける艦長に、一切答えもせず、ラオモトはコメディアンに通信を繋ぐ。

 

『ゲホッゲホーッ!あのウェブヘッドヤロウめ!』

 

 爆炎で煤まみれになったコメディアンが映し出される。そんなコメディアンに、ラオモトは声をかけた。

 

「ドーモ、コメディアン=サン」

『アイエ!?ド、ドーモ、ラオモト=サン!一体どうなさったのですか!?』

 

 ラオモトに声をかけられ、おっかなびっくりで問いかけるコメディアン。

 

「暴君竜はまだ動くか?」

『エッ、アッハイ。ダメージは実際酷いですが、まだ動けます』

「よろしい、ならば暴君竜に命令しろ。『ブブジマを攻撃しろ』とな。沈めても構わん」

『え?』

 

 ラオモトの言葉に艦長は間の抜けた声を上げるが無視。一方のコメディアンは合点が言ったような顔をし、問いかける。

 

『そいつは良いんですが、オムラの連中にはどう言い訳するつもりで?

 この非ニンジャ共は兎も角、会社の商品がぶっ壊されたとあっちゃ連中も黙っちゃおりませんぜ?』

「オムラの連中には不幸な事故とでも言っておけ」

『ヨロコンデー。オイ、暴君竜・・・』

『チョ、チョット!チョットチョット!』

 

 割り込むように必死な様子で艦長が叫んだ。

 

「何だ?」

『どう言うおつもりですか!?このブブジマを攻撃しろとは!?』

「そのままの意味だ。オヌシらが暴君竜に襲われれば、あのウェブヘッドが助けに来てくれるだろう。そこをコメディアン=サンと暴君竜で叩くのだ。

 まぁ、巻き添えを喰らってオタッシャするだろうがソウカイヤにとってもオヌシらメガコーポの連中にとっても実際目の上のタンコブだったウェブヘッドの始末に貢献できる。実にWin-Winで問題はあるまい」

 

 ナムアミダブツ!何たる邪悪的思考か!人の命を考えない邪悪的作戦に、艦長は必死になって抗議!

 

『問題ありまくりですよ!まだオタッシャしたくありません!』

「どうせ、その玩具と同じ生きていても何の役にもたたぬ命よ。

 せめて、ウェブヘッドを始末する為に華々しく散らしてみせよ。おい、コメディアン=サン」

『ヤメテー!ヤメ・・・』

 

―ブツン。

 

 抗議を続ける艦長の通信を一方的に切断し、コメディアンに目配せをする。コメディアンは頷くと、腕時計型の機械・・・暴君竜に命令を下す装置を作動させ、あまりにも残酷な命令を下した。

 

『暴君竜、命令を変更だ。ブブジマを攻撃しろ』

 

 

【クレヨンしんちゃん】

 

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

『GYAOOOOOOOOOON!!!』

「な・・・何をやってるんだ!?」

 

 スパイダーマンは暴君竜の奇怪な行動に驚いていた。何故なら、先ほどまで共闘していたはずの鬼瓦ツェッペリンを襲撃し始めたからだ!

 ロケット弾をうち、鎌を振るい、鬼瓦ツェッペリンを破壊していく。

 

「ドーモ、クラウドバスターです!ヤメロー、気でも狂ったのか!?」

 

 ジェットパックを背負ったニンジャ(クラウドバスターと言う名前らしい)が鬼瓦ツェッペリンから飛び出し、暴君竜を止めようとする。だが、

 

『ドーモ、クラウドバスター=サン、暴君竜です。私は命令に従っているだけです、狂ってなどいない。GUOOOON!!!』

「アバーッ!?」

 

 ナムサン!アイサツと共に放たれた鎌の一撃が、クラウドバスターの首を撥ね飛ばした。

 

「サヨナラ!」

 

 胴体と首が泣別れしたクラウドバスターはそのまま爆発四散。それを確認した暴君竜は、再び鬼瓦ツェッペリンに攻撃を開始した。

 

―KABOOOOOM!

 

 爆発炎上する鬼瓦ツェッペリン。このままでは墜落するのは確定的に明らかである。墜落先は、多くの人々が行き交う大通り。落ちれば大惨事になるのは確実だ!

 

「このままじゃ拙い!早くアレをどうにかしないと!」

 

 墜落しようとする鬼瓦ツェッペリンを止めるべく、動き出すスパイダーマン。その後をニンジャスレイヤーが追う!

 

「着いてきてるけど、手伝ってくれる・・・とか?」

「冗談はその悪趣味なニンジャ装束だけにしておけ」

 

 スパイダーマンの言葉に、ニンジャスレイヤーはそっけなく答えた。

 

「悪趣味って酷いな、結構このコスチューム子供受けするんだぜ?

 マー、それはさておき悪いけどコメディアン=サンと暴君竜の足止めをしてくれるかな?オラはアレをどうにかしなきゃいけないからね」

「・・・言われなくても、私はアヤツ等を殺すつもりだ」

「いや、殺すんじゃなくて足止めなんだけど・・・」

 

 全くぶれないニンジャスレイヤーの言葉に、苦言を呈するスパイダーマン。そこへ、飛来するものが・・・グライダーに乗ったコメディアン!そして暴君竜だ!

 

「ハッハァー!やはり来たなウェブヘッド、イクサの最中に非ニンジャに気を取られているとはウカツな奴よ!」

「アーモー!後にしてくんない、今取り込み中だからさ!」

 

 コメディアンの言葉に、イライラしながらスパイダーマンが叫ぶ。

 

 

 ソウカイヤのまさかの裏切りに、危機にさらされる鬼瓦ツェッペリン!大通りに墜落すれば、大勢の人間が犠牲になる!

 果たしてスパイダーマンは、墜落を阻止できるのか!?急げ、スパイダーマン!

 

 

 

『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #5』終わり、『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #6』に続く・・・。




う~ん、ちと強引過ぎる気がする・・・今回も・・・(汗)
今回、クラウドバスター=サンも出して3対2にしようかどうか、凄く悩みました。
忍殺ほんへで疲労状態だったとはいえ、フジキド=サンを圧倒し戦闘不能に追い込んだ実力者なんですがねぇ・・・彼。ホントゴメンよクラウドバスター=サン。
鬼瓦ツェッペリンを襲い、それを大通りに落とそうとする暴挙に出たソウカイヤ!果たして、スパイダーマンは阻止できるのか!?・・・年明けるまでには終わらせたいなと思っております!
次回も楽しみに待っていてください、それでは~!。


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #6』

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
何とか、間に合った・・・(汗)今年最後の投稿となります。
ではどうぞ。


―BLATATATATATATA!

 

「オット!」

 

 コメディアンのマシンガンが火を吹く。吐き出される弾丸をスパイダーマンはアクロバティックに回避、ワザマエ!

 

「さっさと蜂の巣になりな、スパイディ!イヤーッ!!!」

 

―BALATATATATATATATATATA!!!

 

「イヤーッ!」

 

 再び、コメディアンのマシンガンが火を吹いた。それを再びスパイダーマンはアクロバティック回避!

 

「あのさ、いい加減に通してくんない?

 オラはさっさと、あのマグロツェッペリンが落ちるのを阻止したいんだけど!」

「そうはいかんな、貴様はここで死なねばならんのだ。

 それと安心しろ、あのマグロツェッペリンは貴様を殺した後で処理してやるさ。何処か適当な場所にぶち込んでな!」

「余計に安心できないんだけどそれ!」

 

 スパイダーマンとコメディアンはそうコントめいた会話をかわし激戦を繰り広げる。そんな最中、スパイダーマンは内心焦りを覚えていた。

 

(まっずいなぁ・・・、このままエドガーにかまけてたらマグロツェッペリンが落ちちまう。かといって、そう簡単に通してくれるって訳でもないしなぁ・・・。

 こうなったら一か八かで突っ込む・・・っきゃないよな!)

「考え事をしている場合・・・「イヤーッ!」グワーッ!目くらまし!!」

 

 コメディアンが再びマシンガンを撃とうとした瞬間、顔面めがけてスパイダー・イトを発射。それは顔面に張り付き、コメディアンの視界を奪った。

 顔に張り付いたスパイダー・イトを外そうともがいている隙に、スパイダーマンは素早く炎上するマグロツェッペリンへと移動する。

 

『GUOOOOOOOON!!!』

 

 それを食い止めようと迫る暴君竜!だが、

 

「Wasshoi!」

『GUWAAAAA!?』

 

 ニンジャスレイヤーの妨害により失敗に終わる。トビゲリ・キックを腹に受け体をくの字に折り曲げながら吹っ飛んだ。

 

―CLAAAAAASH!!!

 

 そしてそのまま、近くの壁に激突し動かなくなる。ニンジャスレイヤーは構えを解かず、コメディアンの方を向く。

 

「グ、グオー!顔にイトが張り付いて取れないー!何がどうなってるんだ!?」

 

 コメディアンは、顔に張り付いているスパイダー・イトを取ろうと必死にもがいていた。

 

「・・・何ともブザマな奴よ。何も分からぬまま、死ぬがいい」

 

 そんなコメディアンを見て、ニンジャスレイヤーはスリケンを生成し狙いを定めた。

 おお、ナムアミダブツ!コメディアン=サンはこの無慈悲な殺戮者の餌食となってしまうのか!?

 

【スパイダーマン】

 

 

 

【ニンジャスレイヤー】

 

 

「アッチッチ!ド派手に炎上しちゃってるなぁ・・・」

 

 マグロツェッペリンにたどり着いたのはいいものの、至る所に引火しておりスパイダー・イトを貼り付けられない状態であった。

 もし、燃え盛る状態のマグロツェッペリンにスパイダー・イトを貼り付けたらどうなるか?スパイダー・イトは可燃性である為、たちまち燃え広がってしまうのだ。

 それに、建物に貼り付けた場合、その建物にも火が燃え移ってしまう危険性がある。しかも、ここは街中。大惨事になるのは確定的に明らかだ。

 

(まずは火を消すのが一番だけど、中にいるであろうオムラ=サンの従業員を助けないとな)

 

 とりあえずはマグロツェッペリン内の乗組員をレスキューするのが先決。決断的にそう判断し、マグロツェッペリンの搭乗口を探す。

 

「あった、これか!」

 

 搭乗口であろうドアを見つけ、ニンジャ・・・もといスパイダー腕力でこじ開けるとマグロツェッペリンの中にエントリー!

 

「アイエッ!?スパイディ!」

「ここはもう危ない、早く脱出するんだ!」

 

 突然のエントリーに眼を白黒させる乗組員に諭すようにスパイダーマンは言う。そんなスパイダーマンに艦長は震えながらも反論する。

 

「だ、誰がお前のようなテロリストにしたが「ハイ!脱出します!」「俺も俺も!」「こんな所にいられるか!俺は脱出するぞ!」アイエッ!?」

 

 だが、最後まで言うよりも早く、他の乗組員が我先にと脱出しようとする。それに驚きながらも、艦長は引き止めた。

 

「マ、マテ!マッテマッテ!お前らそれでも、オムラの人間か!?持ち場を離れ・・・」

「ウッセコラー!」

「グワーッ!?」

 

 だが、乗組員の一人が放った裏拳が艦長にヒット。もんどりうって倒れる。

 

「ここが!落ちそうだって!時に!持ち場も!クソも!あるか!ザッケンナコラー!スッゾコラー!」

「グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!」

 

 そして怒りをぶつけるかのように、ヤクザスラングを吐きながら艦長にストンピングをする。

 

「そうだそうだ!」

「シンジューなら一人でやってくれ!」

「やっぱりオムラはダメだな、今回でそれがハッキリ分かったよ」

「ア、アイエエエエエエエエ!?」

 

 その一人の怒りが引き金となり、思い思いの言葉を吐きながら囲んで棒で叩くかのごとく艦長にストンピング。ナムアミダブツ!

 

「アー、ちょっとストップストップ。これ以上やったら、この人オタッシャしちゃうからね」

「あ、そうだそうだ。早いとこ脱出しないと実際危ない、逃げなきゃ」

 

 スパイダーマンの制止の声に、ぴたり。と艦長をストンピングするのを止め、乗組員の一人がそう言った。

 

「あ、ちょっと待って。今の状態で外に出たら実際危ないからハイコレ」

 

―TWIP!TWIP!TWIP!

 

 スパイダーマンがそう言って呼び止めるとスパイダー・イトでパラシュートを作り上げた。スゴイ!

 これならば、現在進行形で飛んでいるツェッペリンから飛び降りても平気である。ベンリ!

 

「アリガトゴザイマス、このご恩は決して忘れません!」

「ニンジャって悪くてコワイってイメージだったけど、アンタみたいなニンジャもいるんだなぁ」

「助かった、終わったかと思ったよ」

 

 それを受け取り、乗組員達はスパイダーマンに礼を述べてマグロツェッペリンから脱出しようとしたその時である。

 

―KABOOOOOOOM!!!

 

「ムッ!?」

「「「「アイエッ!?」」」」

『ピガー・・・敵対勢力・・・排除、ハイジョ・・・』

 

 天井を突き破り暴君竜がエントリーだ。ニンジャスレイヤーとの戦闘でいたるところが、ボロボロでズンビーめいていてスゴクコワイ。

 

「全く、仕事熱心だよねぇ・・・そんなボロボロでさ。君達、ここはオラに任せて早く逃げるんだ!」

「「「「ハ、ハイヨロコンデー!」」」」

 

 そんな暴君竜にため息混じりにそうぼやくと、乗組員に脱出を促す。乗組員は二つ返事でそう答え、気絶している艦長を連れて走り去っていった。

 

『ピガー・・・排除、ハイジョ・・・GUOOOOOON!!!』

 

 うわ言のように呟きながら、雄叫びを上げ襲い掛かる暴君竜。だが、ダメージの影響かその動きは実際緩慢。スパイダーマンにとって、その動きを見切るのはベイビーサブミッションめいて簡単であった。

 

「イヤーッ!」

『GUWAAAAAA!?』

 

 首を刎ねんと振るってきた鎌を、ブリッジ回避しムーンサルトキック!暴君竜の顎をカチ挙げ吹っ飛ばした。

 そして、そのまま大の字に倒れる暴君竜。

 

『ハイジョ・・・Haijo・・・ピガー・・・』

 

―プシュー・・・。

 

 起き上がろうとするも、ダメージ限界量を超えたのだろう。煙を上げ、機能を停止した。

 

「よし、暴君竜も倒したし・・・後はこのマグロツェッペリンを近くのタマ・リバーに不時着させるだけ・・・」

 

 そう呟き、操縦桿を握ろうとしたその時である!

 

『ギ・・・ガガガ・・・』

 

 機能停止した暴君竜が、再起動を始めたのである。

 

「な、何だ!?」

『スパイダーマン=サン!』

 

 突然の事に驚くスパイダーマンにミネルバからの通信が入る。

 

「どうしたの、ミネルバ!」

『目の前のマシーンベムから高エネルギー反応を検知しました!』

「えっ、それってまさか自爆!?何か、心なしか体が大きくなってるし」

 

 スパイダーマンの言うとおり、段々と暴君竜の体が大きくなってきている。何か分からないが、このままここにいたらヤバイのは火を見るよりも明らかだった。

 

『分かりません、マグロツェッペリンから脱出を推奨します!』

「了解ッ!!!」

 

 ミネルバにそう返し、スパイダーマンはマグロツェッペリンから脱出したのであった。

 

「ム?何だ・・・?」

 

 コメディアンにトドメの一撃を放とうとした、ニンジャスレイヤーはニンジャ第六感で異変を察知しマグロツェッペリンの方を向く。

 その視線の先、燃え盛るマグロツェッペリンがベキ・・・バキ・・・とまるで膨れ上がるようにいびつに変形を続けた。

 

―ベギャ!バギッ!

 

 おお、見よ!ヒヨコが卵から孵化するかのように、手が!足が!ツェッペリンを突き破って出てきた。そして・・・、

 

『GUOOOOOOOOOOOON!!!』

 

 マグロツェッペリンがはじけ飛び、中から巨大化した暴君竜が産声を上げるかのように咆哮を上げた。

 

「ホウ、これは一体何なのだ?」

 

 その様子を見ていたラオモトは、隣のローブの人物に声をかける。

 

「は、これは拡大変容機能と申しまして、マシーンベムが一定のダメージを受けると作動する機能にございます。これが作動すると、巨大化すると同時に戦闘力も上がる仕組みとなっております」

「ムハハハハ、それはいい!まぁ、多少町がメチャクチャになるだろうが。それでスパイダーマンを倒せるのならば必要経費だ!!」

 

 ローブの人物の言葉に、ラオモトは満足そうに嗤いマグロスシを食べたのであった。

 

 一難さってまた一難!果たして、スパイダーマンはこの危機をどう切り抜ける!?

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #6】終わり

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #7】へ続く・・・。




いかがだったでしょうか?
今年中に決着をつける予定だったのですが、「まだナラクおじいちゃん出てへんやん」と思い、どう言う展開にしようか悩んだ所。
「東映版見たくマシーンベムを巨大化させればいいんじゃないか?」と言う結論にいたりこうなりました。すまない・・・超展開ですまない(すまないさん)
決着は、次回ぐらいになると思いますので温かい目で見守って下さい。
では、皆さんよいお年を~。
オタッシャデー!


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #7』

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
実際久しぶりの投稿になりました。
最近始めたスマホゲームの「アークナイツ」や「キン肉マン マッスルショット」にドハマリしたり、プライベートでの用事に追われていたら結構な間がががが・・・。
ちょっと、忍殺語が至らなかったりする事もあるかもしれませんが、温かい目でよろしくオネガイシマス。
それでは、ドーゾ。


「チョットチョット!何なのアレ!?巨大化するとかアリ!?」

 

 巨大化した暴君竜を見ながらスパイダーマンは、そう愚痴った。

 

「アイエエエエ!?カイジュウ!?」

「コワイ!」

「タスケテー!」

『GUOOOOOOO!!!』

 

 町の人々は巨大化した暴君竜を見るなり、恐怖のあまり失禁しながら、叫び逃げ惑う。

 暴君竜も、カイジュウめいて咆哮を上げる!コワイ!

 

「まるでカイジュウ映画か何かだよ、コレ。

 それは兎も角、何とかしないと、このままじゃ大惨事は免れないゾ」

 

 暴れる暴君竜を見て、スパイダーマンはそう判断する。そして、被害を食い止めるべく無謀にもこの巨大なカイジュウに挑むのであった。

 

【クレヨンしんちゃん】

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

「何だこれは・・・」

 

 同時刻、カイジュウめいて巨大化した暴君竜を見て、思わずそう呟くニンジャスレイヤー。

 

「プハーッ!やっととれた・・・おや?暴君竜が巨大化しとる!?」

 

 コメディアンの声にハッと、彼の方を見ると、目に張り付いたスパイダー・イトを取り、暴君竜を見ていた。突然のハプニングに、ウカツにも驚いてしまったが、今はコメディアンをスレイせねば!

 そう思い、コメディアンの首を狩るべくチョップを繰り出す。

 

「イヤーッ!」

「ヌッ!?イヤー!」

 

 だがコメディアンも腐ってもニンジャ。ブリッジでチョップを回避だ。

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

 返す刀で、マシンガンを乱射。ニンジャスレイヤーは、マトリクスめいて回避する。タツジン!

 

―カブーム!

 

『GUOOOOOO!』

 

 暴君竜が暴れ、振るった腕によりビルが破壊される。その瓦礫がニンジャスレイヤーに迫る!アブナイ!

 

「イヤーッ!」

 

 ゴウランガ!ニンジャスレイヤーは、マトリクスめいたポーズから、素早く両手をついて逆立ち。両手に力を込めて、腕の力でジャンプして、瓦礫を回避

 

「イヤーッ!」

 

 そして、くるりと回転し体制を立て直すと、コメディアンと暴君竜にスリケンを投擲。

 

『GUWAAAAAAA!?』

「グワーッ!?」

 

 スリケンは、コメディアンの足と、暴君竜の目に突き刺さる。

 

「も一つオマケだゾ!イヤーッ!!!」

「グワーッ!?」

 

―TWIP!

 

 スパイダーマンがどこからともなくやって来て、瓦礫をスパイダー・イトでキャッチ!そして、コメディアンにリリース!瓦礫は狙い違わずに、コメディアンに直撃だ!

 

―CLASH!!!

 

 コメディアンは瓦礫と共に、近くにあったコケシビル。そこに鎮座してある巨大コケシに激突!

 

「ア、アバッ!?」

 

 白目を剝いてコメディアンは気絶。そのまま重力に引かれ、落下。

 

―TWIP!TWIP!TWIP!

 

「はい、これで一人っと」

 

 即座に、スパイダーマンはスパイダー・イトでコメディアンを宙吊り状態で拘束した。

 

『GUOOOOOOOOOOO!!!!』

「っと、あぶなっ!?」

 

 ニンジャスレイヤーのスリケンにより、目をやられた暴君竜が鎌をふるい、ミサイルを所構わず撃ちながら暴れまわる。

 それに気づいた、スパイダーマンはアクロバティックに回避。ワザマエ!だが!

 

―KABOOOOOOM!!!

 

 暴君竜が発射したミサイルが、タワーに飾ってあった巨大電飾フクスケに直撃!電飾フクスケはしめやかに爆発四散し、フクスケヘッドが地面に落下する。

 

「「アイエエエエエエエエエ!!?」」

 

 その瞬間、スパイダー聴覚が悲鳴を察知した。スパイダーマンがその方向へ振り向くと、おお、ナムアミダブツ!フクスケヘッドの落下先に仕事帰りであろうサラリマンの二人が失禁しながら腰を抜かしていた。

 このまま行けば、この哀れなサラリマン二人はフクスケヘッドの下敷きになってしまうであろう。

 

「間に合えッ!!!」

 

 そうは問屋が卸さないのが、我らが隣人スパイダーマン。すぐさま、サラリマン二人のレスキューへ向かう。

 

「!?」

((アヤツ、イクサを放棄して何を・・・!?))

 

 突然、暴君竜の方向とは違う別の方向へ向かったスパイダーマンに、驚くニンジャスレイヤー。訝しみながらも、その方向を見て気づいた。

 今正に、フクスケヘッドが落ちようとしている先に、サラリマンの二人がいる事を。

 

「((何故、あのサラリマン達の方へ・・・一体何をする気だ?))イヤーッ!イヤーッ!」

『GUOOOOOOOOON!!!』

 

 暴君竜のミサイル攻撃を、スリケン投擲で撃ち落としながらニンジャスレイヤーは訝しんだ。

 やがて、スパイダーマンは素早く、サラリマン達の下へ向かうと、落ちてきたフクスケヘッドを両手で受け止めた!スゴイ!

 

「ヌゥーッ!?」

「アイエエエエエ!?ニンジャ!?」

「ニンジャナンデ!?」

 

 突如、現れフクスケヘッドを受け止めたスパイダーマンを見たサラリマン二人は、NRSを発症。しめやかに失禁。

 

「今の内に早く逃げるんだ!」

「アイエエエエエ・・・」

「む、無理です・・・腰が抜けて立てません」

 

 腰をぬかしさらに失禁したサラリマン達に、スパイダーマンは逃げるように促す。だが、腰を抜かしているのか、サラリマンは動けない。

 そこへ、暴君竜の撃ったミサイルが飛来!

 

「イヤーッ!」

 

 スパイダーマンは、フクスケヘッドを思いっきり投げつけミサイルにぶつける。

 

―KABOOOOOM!!!

 

「グワッ!?」

 

 ミサイルの直撃を受け、フクスケヘッド爆発四散。だが、運悪く近くにいたためスパイダーマンは爆風のあおりを受けてしまい、マスクが少し破れ、素顔が左目部分だけ露になってしまう。

 勿論、信之介としてのトレードマークであるノリめいた眉毛も丸見えだ。

 

「「ア、アイエエエエエエエエエ!!!?」」

 

 サラリマン達はと言うと、爆風のあおりを受け吹っ飛ばされたものの怪我は無く。このまま、この場に居続けたら命が無い!と悟り、おっかなびっくりしながら逃げ出した。

 

「・・・ニンジャでありながら、モータルを助けた・・・?」

 

 その様子を遠くから見ていたニンジャスレイヤーは、驚愕していた。

 今まで出会ってきたニンジャは、一部を除いては皆自分のエゴの赴くままに動き、モータルを食い物にする者ばかりであった。

 だが、スパイダーマンは違う。イクサの最中であれど、モータルに危機が迫れば、率先してレスキューを行う。今まで見たことのないタイプのニンジャであった。

 

((それになんだ・・・?この懐かしい感じは?アヤツの顔、どこかで見たような・・・))

 

 露になった素顔の部分を見て、何処かデジャビュを感じるニンジャスレイヤー。・・・一体何処で見たのだろうか?そう思っていると・・・、

 

『GUOOOOOOOON!!!』

「ヌ!?しまった!」

 

 ウカツ!思案にふけっていた為対処が遅れてしまい、叫び声と共に現実に引き戻されたニンジャスレイヤーの視界にはこちらのいるビルに向かって体当たりをする暴君竜の姿が。

 

―CLAAAAAASH!!!

 

 暴君竜の体当たりにより、ビル崩壊!ニンジャスレイヤーは咄嗟に、跳躍したため無事。だが、

 

『GUOOOOOOOON!!!』

 

 今度は、暴君竜が蹴り上げたのであろう、車が宙をまいニンジャスレイヤーに襲い掛かる。

 

「グワーッ!?」

 

 空中で無防備になった隙を狙われた為、上手く対処できずに直撃。そのまま近くのビルへと突っ込んだ!

 

「グ・・・ウウ・・・」

 

 車を押しのけ、立ち上がるニンジャスレイヤー。

 思考にふけり、敵の接近に気がつかなかった自分のウカツさを呪う。ウケミ・ムーブは取ったものの、やはりあの巨大さから繰り出したシュートによるダメージは実際大きかった。

 グゥ・・・。と膝を着く。その時だ。

 

『フジキドよ・・・フジキドよ・・・』

 

 ニンジャスレイヤーのニューロンに直接語りかける声。ちなみに、フジキドとはニンジャスレイヤーの真の名である。

 それと共に、ニンジャスレイヤーの影から禍々しい人型の何かが姿を表した。コワイ!

 

「・・・ナラク、何のようだ?」

 

 それを見たニンジャスレイヤーは忌々しげに、その名を呼ぶ。その禍々しい人型の何かの名はナラク。

 ニンジャスレイヤーにニンジャの力を与え、今もなお彼のニューロンに居座り続ける邪悪的存在だ。ニンジャスレイヤーの問いかけに、グッグッグ・・・。とほくそ笑みながら、答えた。

 

『ブザマよのぅ、実際ブザマ。

 思案にふけって、あのようなサンシタにも劣るオモチャの攻撃に気づかなんだとは。ワシならばすぐに対処出来たぞ?』

「ヌゥ・・・」

 

 ナラクの指摘に、ぐうの音も出ないニンジャスレイヤー。さらにナラクのドクゼツ・ジツは続く。

 

『それに、スパイダーマンと言うあのふざけたニンジャにジャマをされニンジャを二人も殺せずじまい。

 これをブザマと呼ばずして何と呼ぶ?これならば、ワシが直々に出向いたほうが実際早い』

「黙れナラク!お前が出る幕ではない!これは私の戦いだ!私がやるのだ!ひっこんでいろ!!!」

『何をだ?小童よ、言うてみよ』

 

 ほくそ笑みながら問いかけるナラクに、ニンジャスレイヤーはあらん限りの声を上げて叫んだ。

 

「ニンジャを殺す・・・。ニンジャを全て殺すッ!ニンジャ殺すべし!!!」

 

 叫ぶニンジャスレイヤーのニューロンに、ソーマト・リコールめいて子供の顔と女性の顔が浮かび上がった。

 

―フユコ・・・トチノキ・・・。

 

 かつてニンジャスレイヤーが、フジキド・ケンジだった頃に愛して止まなかった家族である。だが、あの日マルノウチ・スゴイタカイビルでその家族はニンジャによって奪われたのだ。ニンジャによって()()()()のだ。

 だからこそ、ニンジャを許す事が出来ぬ!故に、ニンジャは全て殺す!

 ニンジャスレイヤーの目に憎しみの炎が激しく燃え上がった。それを、ナラクは面白そうに眺めている。

 

『そうだ、フジキド。ニンジャを殺すのだ。ニンジャ殺すべし!ならばこそ、ワシに身をゆだねるのだ!』

「!?そ、それは・・・ダメだ。・・・ウッ!」

 

 ナラクの言葉に、ハッとしてそう言うも、クラリ・・・。とニンジャスレイヤーはバランスを崩して倒れこんだ。

 

『フム、思ったよりもダメージが実際大きかったようだな』

 

 そう言って、何処から取り出したのかフートンを敷き、その上にニンジャスレイヤーを寝かせた。

 

『フジキドよ、オヌシはゆっくり休んでおれ、ワシが手本を見せてやろう』

「ダ・・・ダメだ。だが・・・ニンジャは・・・殺したい・・・」

『そうよのう』

「ニンジャ・・・殺・・・す・・・べし・・・」

『そうよのう』

 

 ニンジャスレイヤーの、フジキドの意識がゆっくりと溶けていく。そして、残ったのは・・・。

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

【トルネードコール・スパイダーマン】

 

 

『GUOOOOOOON!!!』

「ホンット見境なく暴れてるねぇ!オラさえ倒せれば、周囲の被害はお構い無しって訳!?」

 

 鎌を振り回し、ミサイルを辺りにばら撒く暴君竜。その攻撃をいなし、スパイダー・イトで絡め取って暴君竜に投げつけながら、スパイダーマンはぼやいた。

 

「そろそろお寝んねの時間だぜポンコツトカゲ、イヤーッ!!!」

『GUWAAAAAAAAA!!?』

 

―TWIP!TWIP!

 

 ウェブスイングで、暴君竜の真下に移動したスパイダーマンは、両手首からスパイダー・イトを発射。

 暴君竜の近くにあった電飾コケシと電飾マネキネコに貼り付ける。その貼り付けたイトを握ったまま重力に従って落ち、その反動を利用して思いっきり逆バンジーめいて飛び上がる。

 そして、そのまま暴君竜の顎にドロップキックを喰らわせた。反動をエネルギーと、ニンジャ脚力の合わさったドロップキックを喰らい、暴君竜がよろめく。

 

「よし、このまま追撃・・・」

 

―KABOOOOOOOOM!!!

 

「何だ!?」

 

 突然の爆発に、追撃を中断し、爆発音がしたほうへと顔を向けるスパイダーマン。

 そこには、ニンジャスレイヤーの姿が。だが、彼の異様過ぎるアトモスフィアをスパイダー感覚で察知。即座に、ニンジャスレイヤーと暴君竜から距離を取った。

 

((このアトモスフィア・・・、さっきのニンジャスレイヤー=サンとは違う。・・・一体彼に、何があったんだ・・・?))

『GUOOOOOOOON!!!』

 

 スパイダーマンが、前とアトモスフィアの変わったニンジャスレイヤーを見て思案していると、暴君竜が吼えながらニンジャスレイヤーに向かっていった。そして、鎌をニンジャスレイヤーに振るう!アブナイ!

 

「Wasshoi!!!」

 

 だが、ニンジャスレイヤーは難なく飛び上がって回避!そして、暴君竜の頭上まで飛び上がると、右腕を天高く掲げ、そのまま落下。

 

「イィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァッ!!!」

『ABAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!?』

 

 裂帛の気合と共に放たれた、チョップは暴君竜の頭を叩き割った。当然、暴君竜は絶命。ナムアミダブツ!

 どうっ!と地響きをあげて倒れる暴君竜を見て、スパイダーマンは喜ぶ気持ちにはならなかった。何故ならば、

 

「フン、やはりオモチャよ。我がカラテの足しにもならんわ。・・・さて、次はオヌシだスパイダーマン=サン」

 

 ニンジャスレイヤーの殺気が自分に向いていたのだから。

 

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー#7 終わり】

【#8に続く】




いかがだったでしょうか。
ニンジャスレイヤーこと、フジキド=サンのピンチに(多少強引ではありますが)ナラクおじいちゃん登場。
フジキドの地の文でお分かりかと思いますが、フジキド本人はトチノキ君の生存を知りません。あのマルノウチ・スゴイタカイビルで家族含め全員殺された。と吹き込まれております(その嘘を吹き込んだのは・・・お察し下さい)
そんでもって、ナラク化したニンジャスレイヤー。・・・ちょっと強くしすぎたかな?と反省しております(汗)
このエピソドンも次回で最後になる予定です。ナラク化したニンジャスレイヤーさんに目を付けられたスパイディの運命はいかに!?
次回もお楽しみに~。


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『スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー #8』

ドーモ、じゃすてぃすり~ぐです。
そろそろ、5月も終わる頃・・・。コロナによる緊急事態宣言が解除されたものの、まだまだ油断は出来ない今日この頃・・・。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
自分は、仕事やら何やらで忙しすぎて大変ですが元気に過ごしております。
さて、このエピソドンも今回で最後。ニンジャスレイヤー(ナラク)に狙われたスパイディの運命やいかに!?
ではドーゾ。


「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーが、スパイダーマン目掛けてチョップ突きを繰り出す。それを難なく回避するスパイダーマン。

 

「ちょっと大人しくして、イヤーッ!!」

 

−TWIP!TWIP!

 

「ヌゥーッ!」

 

 バックステップで後ろに下がり、スパイダー・イトを発射。ニンジャスレイヤーの両腕に命中し、動きを封じる。

 

「フン、こんなオモチャなど、こうしてくれるわ!Wasshoi!!!」

 

 だが、それを両腕に力を込めて、イトの拘束を引きちぎる様に振り解いた。ゴリオシ!

 

「うっそぉ、それをアッサリ引きちぎるってどんだけ力強いの?!」

「我がカラテにかかればこんなモノ造作もないわ、イヤーッ!!!」

 

 アブナイ!ニンジャスレイヤーのヤリめいたサイドキックが、スパイダーマンのボディに迫る。

 もしもニュービーやサンシタのニンジャが喰らえば、アッサリボディに風穴が空き、爆発四散してしまいそうな威力と速度である。

 だが、相対しているのはスパイダーマンだ。

 

「そんなもの、イヤーッ!!」

 

 即座にブリッジ回避。同時にそのままバク転しつつ、がら空きになった背中にオーバーヘッドキック!ワザマエ!

 

「イヤーッ!」

 

 ゴウランガ!それを見越してかニンジャスレイヤーは、オジギ姿勢でそれを回避。角度は90度!

 

「イヤーッ!」

 

 そしてそのまま、上体を起こし頭をスパイダーマンにぶつけにかかる。

 

「イヤーッ!」

 

 スパイダーマンも、頭突きで迎撃。

 

―CLASH!!!

 

 ぶつかる頭と頭!凄まじい激突音がウシミツアワーの夜空に響き渡った。

 

「「グワーッ!?」」

 

 威力は双方互角!吹っ飛ばされる両者。だが、ダメージはそれほどなく、ウケミ・ムーブをとり着地。

 

「イテテ・・・、中々の石頭だね。オラもオラで、結構な石頭だと思うけど上っているもんだなぁ」

「グヌゥー・・・、小童が」

 

 頭をさすりながら、軽口を叩くスパイダーマンに対しニンジャスレイヤーは殺意を持って睨みつける。

 

「とるに足らんサンシタの分際で生意気な・・・」

「なんて言うかキャラ変わってない?もしかして、多重人格者だったりとか?」

「それをオヌシに教える義理はない。オヌシはここで死ぬのだ、ワシに殺されてな!イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

 アブナイ!眼にも留まらぬ速さで、スパイダーマンに迫りストレートパンチを放つ。だが、スパイダーマンは慌てず騒がず、スウェーで回避。 

 

「それは勘弁。オラ、死ぬんだったらあったかいフートンの上でって決めてるんだ。

 ついでに綺麗なおねいさんに看取られてってのもつきで。マー、ニンジャだからいつその時が来るか分からないけど」

 

 平然とした様子で、ニンジャスレイヤーに軽口を叩くスパイダーマン。そして、距離を取ると両手をニンジャスレイヤーに向ける。

 

「ま、そんな訳だからコイツで大人しくなりな!イヤーッ!」

 

―TWIP!

 

 スパイダー・イトを発射。ニンジャスレイヤー目掛けて飛んでいく。

 

「二度も同じ手を喰らうか、イヤーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーはチョップで迎撃。その時である!

 

−バリバリバリバリ!

 

「ヌゥッ!?」

 

 イトがニンジャスレイヤーに触れた瞬間、スパークが迸る。

 それにより、痺れによるものか驚愕かは分からないが、ニンジャスレイヤーが一瞬怯んだ。

 

「どう、『エレクトリック・スパイダー・イト』の味は?結構ビリビリ来るでしょ?イヤーッ!」

 

 この機を逃す訳にはいかない。一瞬の隙をつき、スパイダーマンは左フックを放つ。だが、

 

「イヤーッ!」

「うっそぉ!?これも効いてないの!?」

 

 それをニンジャスレイヤーはガード。並みのニンジャであれば動けないエレクトリック・スパイダー・イトを受けても平然としているニンジャスレイヤーに、スパイダーマンは驚くしかない。

 

「この程度の電流等、肩こりがほぐれる程度にしかならぬわ!イヤーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーはあざ笑うかのようにそう言うと、スパイダーマンに右ストレートを放つ。咄嗟に、スパイダーマンはガードをするが・・・。

 

「グワーッ!?」

 

 そのガードごと、スパイダーマンを吹っ飛ばした。そのまま、近くの建物に叩きつけられる。

 

「が・・・ガードしたのに、これほどまで威力があるなんて・・・」

 

 先ほどの一撃によるダメージは凄まじく、立ち上がるもののふらつき膝を着いてしまうスパイダーマン。

 

「所詮はムシケラ、我がカラテの足しにもならぬ」

((く・・・っそぉ・・・))

 

 グググ・・・。と膝をついているスパイダーマンを見ながら、ニンジャスレイヤーは勝ち誇るようにそう言った。

 負けじと、ニンジャスレイヤーを睨みながら体を起こそうとするも、未だダメージの残るこの体。中々言う事を聞こうとしない。

 

((何か・・・、何か無いか?この実際アブナイ状況を打開できる方法が・・・))

 

 胸中でそう呟きながら、目の前のピンチに対する打開策を考える。考えながら、無意識にお尻にあるポケットの中身を探っていると・・・。

 

((ん?))

 

 その中にあった『あるもの』に触れた。これは何だろうか?そう思いながら、その『あるもの』を入念に手で触りながらチェック。

 

((そうだ!『これ』があった!!!『これ』ならば!!!))

 

 触るうちに、『あるもの』の正体に気づくと同時に、ニューロンに電流が走る!

 過去の戦いの中で、幾多のピンチを救ってくれた『これ』ならば、目の前のニンジャもどうにかなるかも知れない!その確信が、スパイダーマンにあった。

 

「さて、ハイクを詠むといい。カイシャクをしてやろう」

「悪いけどハイクを詠むつもりはないかな?・・・まだ死ぬつもりは毛頭ないし」

 

 ニンジャスレイヤーの言葉に、スパイダーマンはそう返す。そして、次の瞬間。ガバッ!と立ち上がり、ニンジャスレイヤーに接近。

 

「ヌゥッ!」

「これでも喰らえ!イヤーッ!!!」

 

 突然の事に面食らうニンジャスレイヤーに、スパイダーマンはポケットから『それ』を取り出すと、ニンジャスレイヤーの顔面に押し当てた。

 

「ア、アバババババババーーーーーーッッ!?クサイ!!何だ、この臭いはーーーーーーーーッッ!!!?」

 

 『それ』から漂うあまりにクサイすぎる悪臭。それを思いっきり嗅いでしまったニンジャスレイヤーは大悶絶!

 

「ある人の『靴下』さ!持ち主曰く『ジャスミン』の香り。・・・全然、ジャスミンの香りじゃないけどね」

 

 読者の中にクレしんファンがいるのならもうお気づきだろう、スパイダーマンが持っている『それ』。その正体はスパイダーマンこと、信之介の父親、野原ひろしがはいている『靴下』だったのである。

 アーチ級のニンジャですら逃げ出すほどの臭さを誇るひろしの靴下、それがニンジャスレイヤーの顔面に押し当てられているのだ。

 

「アババ・・・、このワシがムシケラ如きに・・・こんなしょーも無い手で・・・ウカ・・・ツ・・・」

 

 あまりの臭さに、白目を剥いてニンジャスレイヤーはしめやかに失神した。ドタリ。と倒れたニンジャスレイヤーを見下ろし、スパイダーマンははぁ~・・・とため息をつく。

 

「な・・・何とか勝てたぁ~・・・。靴下持っててよかったゾ」

 

 そう言って、チラリとひろしの靴下を見やった。これがなかったら冗談抜きで、ニンジャスレイヤーにスレイされてたかもしれない。

 父ちゃんにはホント感謝だな。と思いつつ、ニンジャスレイヤーを見やり・・・、

 

「え・・・?」

 

 固まった。倒れたはずみで、ニンジャスレイヤーのメンポが外れ、素顔が露になっていたのだ。それだけならまだいい。

 問題は、そのニンジャスレイヤーの素顔だ。何故なら彼の素顔は・・・。

 

「ケン・・・兄・・・?」

 

 あのマルノウチ・スゴイタカイビルで、自分が救えなかった『フジキド・ケンジ』の顔であったから。

 

「ケン兄が・・・ニンジャ・・・ニンジャナンデ・・・?」

 

 何故、フジキドがニンジャとなっているのか?今までトチノキにも会わず何をしていたのか?疑問がスパイダーマンの・・・信之介のニューロンを駆け巡る。

 ポツリと呟くスパイダーマンを、重金属酸性雲の切れ目から、インガオホーと嘲笑うかのようにドクロめいた月が嗤っていた。

 

 

【スパイディ・ミート・ニンジャスレイヤー】おわり。




いかがだったでしょうか?
親愛なる隣人とネオサイタマの死神の出会いの物語は、これにて終了。
ナラクおじいちゃん戦がちとあっさりしすぎたかな・・・と反省しております(汗)すまんな、本当にすまん。
さて、次のエピソドンですがソウカイヤ同様、スパイディの前に立ち塞がる『アイアン・十字』。その内部に迫るエピソドンとなっております、お楽しみに!
では、オタッシャデー!


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