剣槍弓が非常識すぎて盾の悪魔が天使です (namaZ)
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召喚された勇者にやべーやつしかいない件

 全ての元凶七つの人類悪の一つ、『憐憫』の理を持つ第一の獣・ビーストⅠ=ゲーティア。

 数多の英霊の協力の下——————大切な人を一人犠牲にして……この人理焼却は解決された。

 壮絶な旅路は出会いと別れの連続だった。

 造られた命でしかない彼女は魔術師にとって使い捨ての消耗品。

 少女は初めて先輩と慕う人ができた。

 選ばれた特別な人(Aチーム)に比べれば雲泥の差。

 世界でも稀なレイシフト適正を除けば一般人に魔術の魔の字が生えた程度の魔術師として基礎の基礎すら出来るか怪しい人物――――――カルデアにただ一人残された『人類最後のマスター』として、人類史の崩壊を回避すべく、数多のサーヴァントと聖杯探索に身を投じていく。

 

 今にして想うと、特異点F『冬木』で私は覚悟を決め先輩を守ると誓ったのではない。レフ爆弾に巻き込まれ、死の運命が確定された瀕死の私を最後まで見捨てず――――――手を握ってくれたあの時から……私は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゆめ?」

 

 

 違う。私は読書をしていたはずです。カルデア図書館で皆さん(キャスター)オススメの本を棚から取り出す際、『四聖武器書』なるなにやら古そうなタイトルの表紙が目に入り、つい手に取ってしまった。

 神話や伝説、伝承や歴史上の人物までほぼ知識として網羅しているマシュでさえしらない本。

 行儀が悪いと想いながらその場で立ったままページをめくる。

 本の内容は、異世界で終末の予言がなされた。その終末は幾重にも重なる災厄の波がいずれ世界を滅ぼすというもの。災厄を逃れる為、人々は異世界から勇者を呼んで助けを乞う物語。

 そして召喚された四人の勇者はそれぞれ武器を所持していた。

 剣、槍、弓、そして盾。

 

 この時点で、読む意欲が湧いてきたマシュ。自分と同じ盾をメインに戦う勇者の物語をどうしても読みたい。

 アルトリアさんを連想させる巨人や巨竜を斬り伏せる剣の勇者。

 クー・フーリンさんのように大雑把な振る舞いで周りを和ませ誰でも仲良くなる仲間思いの槍の勇者。

 ロビンフッドさんをアーラシュさんみたいに明るくした弓の勇者。

 剣、槍、弓の物語は終わり、盾の勇者のページをめくり――――――

 

 

「あれ?書かれていません」

 

 

 盾の勇者を語るページは真っ白だったのだ。

 作家(キャスター)がこれを見れば毒を吐きながら作者を馬鹿にすること必至。

 書くにしろ、書かないにしろ、本として出版するからには物語として成立する必要がある。

 こんな中途半端な未完成品を世に出したアホな作家は誰だと言うに違いない。

 残念と落ち込みながらまた白いページに視線を落とすと――――――それを最後に、私の意識は遠くなっていき。

 目を覚ますと魔術儀式の祭壇に立っていた。

 

 

(召喚魔術?いえ、これは違います。レイシフトにまだ近い。ならカルデアからは私一人違う時代に跳ばされたのでしょうか。ですが、一番の摩訶不思議は肉体と霊格がもとの戦える状態まで治っていることですか)

 

 

 特異点に跳ばされるのも慣れたもの。今回は先輩や他のサーヴァントは巻き込まれず一人。一刻も早く連絡手段を確保しなければと寂しい心に気合とカツを入れる。

 そうと決まれば呼び寄せたと思われるローブを来た男達に声をかけようと――――――ん?

 ローブを着た男達は唖然として、私と一緒に召喚された三人に膝を屈している。

 

 

(カルデア以外から召喚された人が三人も。うう……先輩がいないと私ダメダメです。もっと気を付けないといけませんね!!一般人かもしれない彼らをデミ・サーヴァントである私が守らなくては!!)

 

 

 マシュ、君は何も間違っちゃいない。一流魔術師であろうとデミ・サーヴァントであるマシュに正攻法で勝てるのはごく少数。

 そうこの場に召喚された三人は例外なく一般人でも魔術師でもなく、吸血鬼などの怪物よりたちの悪い――――――

 

 

「……ここはどこだ?星辰体(アストラル)が薄すぎる。第二太陽(アマテラス)に何かしらの問題が……」

 

 

 七刀も身に着けている金髪の男性。数多くの英霊と交流するマシュの観察眼が、この人もまた英雄だと直感する。

 

 

「女神が統治する世界でこのような現象に遭遇するとは……今度こそ、人として生きると約束したばかりというのに」

 

 

 黄金の槍を携えた同じく金髪短髪の男性。この人もまた凄みを感じどこか人間離れした別のナニかのような見えてしまう……がどこか悲しそうで懐かしむ横顔がまだ人間だと教えてくれる。

 

 

神々の黄昏(ラグナロク)とともに消滅したはずの俺がまだこうして地へ足をつけ五体満足に立っている。はて……阿頼耶(アラヤ)からの繋がりを感じるがか細いな。終段は使用不可能か。急段までは問題なさそうだな」

 

 

 無手の益荒男。獰猛な獣そのものであるかのような鋭い目つきと口角が印象的。この人もまた英雄としてのオーラを感じるが……何故か魔王が似合うと思った。

 

 

 

 ——————人を超えた存在。 

 マシュは気づかない、この三人は超問題児で守る必要もない自分勝手(ギルガメッシュ)な超人魔人の部類であることを。

 否、下手をすればビースト以上に世界を終わらせる。

 勇気ある一人のローブ男性が話を進めるべく話しかけてきた。

 

 

「——————勇者様方!!どうか、何卒どうかこの異世界をお救いください!!」

 

 

 そんな中、行動力の化身として真っ先に動き出したのが。

 

 

「おい。ここはどこで貴様らは何者だ?無関係な少女まで巻き込み集めたようだが事と返答によってはその首無いと思え」

「私もまた職務を全うするのみだ。これでも警察なのでね。異世界への誘拐を看過する気はない」

「ほう世界とな?わかるぞ、盧生として様々な時代に馳せ参じたがこんな経験初体験だ。ここがどんな世界か気になるがまずは戻る方法を教えてもらおうか」

 

 

 真っ先に三人同時に動き出した!!軍服姿も相まってマシュですら少し怖い。正面から対峙するローブの男は今にも気絶しそうな意識を繋ぎとめるために――――――ガゴン!!頭を石床に叩きつけ痛みと血が彼の意識を鮮明にさせた。そのままヒビの入った頭蓋をグリグリとより深々と頭を沈め土下座する。

 

 

「世界のピンチ故勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました!!歴代男しか召喚されず、意図的に誰かをと此方からの指定は不可能な魔法でありますので、そちらの少女が召喚されたのはまったくの予想外でございます!!同意なしの強制召喚。知りもしない異世界を救ってくれと道理も筋もない勝手な申し出でと理解しております!!ですがァ!!……何卒、なにとぞおおおおッッこの世界をお救いください!!……………………わたくしの権限では頭を下げ懇願するしかありません。死がお望みならばこの場で自害いたします。だから、どうかまずは王様と謁見して頂きたい。報奨等の相談はその場でお願いします!!」

 

「素晴らしい!!その心意気その魂から熱いリビドーなるものを感じるぞ!!」

 

 

 まあ当然この男が真っ先に感動するわけで。

 

 

「いいだろう案内を頼む。ここが国であるのなら必要最低限の礼儀は弁えているつもりだ。まずは話し合い。あの若き英雄ならばそう言うだろうからな」

 

「私もそれで構わん。この世界の知識が不足している今、へんに事を構える気はない。こと細かな情報を開示してくれると期待している」

 

「ハハーッ!!」

 

 

 前線で戦う将軍級だと思わせて実はこの三人元の世界で王様とかしてませんでした?マシュは訝しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王様は酷く緊張――――――を通り越して憔悴していた。

 謁見の間に現れた四人の勇者。特に『剣』『槍』『弓』の鳴り響く軍靴の音は、まさしく鋼鉄が奏でる響きだった。一歩近づくだけで三人の熱量と覇道は更に燃え上がる――――――王様は逃げたかった。

 謁見の間に一歩入っただけでこれだ――――――王様は逃げたがっている。

 それが10m離れているとはいえ、自分に近づきその眼光が自分に集中しその声が自分に向けられる――――――王様は腰を抜かした。もう逃げられない。

 

 

「よ、ようこそ古の勇者達よ。ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。……………………すまんが一歩だけ下がってくれまいか?」

 

 

 王様の言葉に素直に従い一歩だけさがった四人に、王様は安堵のため息がこぼれる。

 帰ってくださいお願いしますなんでもしますから、と言いたい衝動に駆られたがグッと我慢する。

 

 

「さて、まずは事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向いつつある」

 

 

 王様の話を纏めるとこうだ。

 1.現在、この世界には終末の予言と言うものが存在する。いずれ世界を破滅へ導く幾重にも重なる波が訪れる。その波が振りまく災害を撥ね退けなければ世界は滅ぶ。

 2.その予言の年が今年であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計という道具の砂が落ちた。

 3.この龍刻の砂時計は波を予測し、一ヶ月前から警告する。伝承では一つの波が終わる毎に一ヶ月の猶予が生まれる。

 

 なんやかんやあって、国の騎士と冒険者だけじゃ無理と判明。このままでは災厄を阻止することが出来ない。

 だから国の重鎮達は伝承に則り、勇者召喚を行った。

 というあらましを説明した。

 ちなみに言葉が分かるのは勇者達が持っている伝説の武器にそんな能力があるそうだ。……武器自前じゃね?

 衣食住やお金関係の交渉もしたがその辺はしっかりした人たちで話しやすかったが。

 

 

「剣の勇者が七刀。槍の勇者が神々しい黄金の槍。弓や盾の勇者はそもそも身に着けてすらおらん。イレギュラーが多すぎるぞ……ンン!!では勇者達よ。それぞれの名を聞こう」

 

 

 挨拶は大事。古事記にもそう書いてある。

 

 

「私の名はクリストファー・ヴァルゼライド。一国の総統をしていた」

 

「ブー!!!」

 

 

 ぶち込まれた爆弾に噴き出す王様。

 

 

「私はラインハルト・ハイドリヒ。最終的な階級は親衛隊(SS)中将。ゲシュタポ長官もしていた」

 

「え!!」

 

 

 これにはマシュ驚く。だってこんな凄い人を暗殺した人絶対に英霊に登録されてるって。

 

 

「俺の名前は甘粕正彦!!最終的な階級は大尉。分かりにくくて申し訳ないが俺が弓の勇者だ。飛び道具は創るのが得意だからなその影響もあり、無いと考えていたが……うむ、大きすぎて上にあるのか」

 

「?よくわからんがあるのなら良い。してそなたが」

 

 

 まさか宇宙空間に弓があるとは誰も思うまいて。

 

 

「はい!私の名前はマシュ・キリエライトと申します。人理継続保障機関フィニス・カルデアの局員をしてます。盾の勇者として、皆さんをお守りしますのでどうかよろしくお願いします!」

 

「……あぁッ、よろしく頼む!」

 

「はい!王様!」

 

 

 天使だ。盾の悪魔は天使だった。むしろ他三勇者が悪魔。

 

 

「ウンンッ……それでは皆の者、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい。今後の参考になるだろう。やり方は」

 

 

 ・・・・・・~王様説明中~・・・・・・

 

 

「成程、自分のステータスは確認できた。なら今後のことを踏まえ情報を交換しないか?」

 

「ヴァルゼライド殿それは自分をさらけ出せと言っているに等しいぞ?……職業柄だな悪い癖だ済まない。全く交流のないそれぞれ別の異世界から四人が協力して戦うのだ。そのくらいは妥協すべきか」

 

「ほう……それぞれ異なる世界と確証を持って発言されるのだなラインハルト。おっと許可もなく呼び捨てることを許してほしい。俺の世界では貴様らのような素晴らしすぎる人は一人しか知らんのでな。この際だ。クリストファーをクリスと、マシュはマシュと呼ばせてもらう。俺のことは好きに呼んでくれて構わない。参考までに皆俺のことを馬鹿だの阿保と呼んでいたな」

 

「でしたら、クリスさん。ラインハルトさん。甘粕さんと呼ばせていただきます。お二人も気軽にマシュとお呼びください」

 

「……分かった。これも何かの縁だ。マシュ、ラインハルト、アマカス、よろしく頼む」

 

「私の方こそよろしく頼む。みなの足を引っ張らぬよう精進する」

 

「挨拶も済んだことだ。それぞれ紙にでもステータスを書き込み情報交換を行うとしよう。すまないが王よ、紙を用意してくれないか?」

 

「容易だとも。しかし……おぬしら謁見中だと忘れておらんか?」

 

「関係者も全員この場に揃っているのだろ?ならば、最初のうちに私たちのステータスを知ってもらったほうが何かと今後の話もしやすいだろう」

 

「ヴァルゼライド殿がそうおっしゃるのであれば。おい、早く書き物と紙を持ってまいれ」

 

 

 渡された真っ白な紙に記入していく勇者四人。

 真っ先に書きあがったのは意外にもマシュ・キリエライト。

 

 

「では、お先に開示させます」

 

 

マシュ・キリエライト

職業:シールダー(盾の勇者)Lv80

 筋力:C

 耐久:A

 敏捷:D

 魔力:B

 幸運:C

 宝具:?

クラス別能力

 対魔力:A 

 騎乗:C 

 自陣防御:C 

 憑依継承:? 

 星見の旅路

保有スキル  

 誉れ堅き雪花の壁

 時に煙る白亜の壁

 奮い断つ決意の盾

 

宝具

 いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)

 ランク:B+++

 種別:対悪宝具

 

 

 

 

「こんなステータスワシは知らんぞ!!!??何故かっこ勇者なのだ!!ってLv80????」

 

「ええ!?皆さんこうじゃないんですか!?」

 

「どうやらそれぞれの異世界でステータス表示が違うようだ。俺はこれだ」

 

 

クリストファー・ヴァルゼライド

職業:星辰閃奏者(剣の勇者)

基準値: B

発動値: AAA

 

集束性:EX

拡散性:E

操縦性:E

付属性:A

維持性:D

干渉性:E

放射光極限収束・因果律崩壊能力。

 

 

 

「せめてLvを表示させろ!!後なんかやばい能力書いておらんか!!?」

 

「うわークリスさんと書き方あまり変わりませんね!私は分かりやすくていいと思いますよ!」

 

「次は私か」

 

 

ラインハルト・ハイドリヒ

職業:■■■黄金■■■(槍の勇者)※弱体化

形成

 ATK:4(-2)

 DEF:5(-2)

 MAG:3(-2)

 AGI:3(-2)

 EQP:5(-2)

創造※使用不可

 

■■※――――――

 

 

 

「もう突っ込まんぞ!!ワシは絶対に突っ込まん!!」

 

「デバフがかかってますね。先輩がいたら解除できたんですが……」

 

「最後になってしまったか。これだ」

 

 

 

甘粕正彦

職業:盧生(弓の勇者)

熟練度 Lv.999

 戟法 剛 60 

    迅 60

 楯法 堅 70  

    活 90  

 咒法 射 150  

    散 150  

 解法 崩 10  

    透 50 

 創法 形 150

    界 150   

能力値合計 940

【急段】:斯く在れかし(あんめいぞ)聖四文字(いまデウス)

 

【終段】※使用不可

 

 

 

「レベグァ!!?」

 

「国王!?お気を確かに!!」

 

「すごいのは分かるのですが、それぞれ基準が曖昧なのでその世界でどれだけ凄いステータスなのか判断しづらいですね」

 

「卿はなかなか観察に優れた良い目をしているな。まあそれもこの場にいる勇者全員に言えることだがな」

 

「早速だが我々が戦う敵の情報。この世界の細かな詳細が知りたい。王は体調が優れないご様子。謁見もここまででいいだろう。そこのローブの男、名を聞いてなかったな」

 

「わたくし如きが名乗る名などありません。どうぞわたくしの事は、そのまま"ローブ"とお呼びください」

 

「ローブさんよろしくお願いします!」

 

「ハハ、盾の勇者様。それでは謁見の間に出来うる限り情報を整理いたしましたので図書館にご案内いたします」

 

 

 こうして、それぞれ異なる世界からの来訪者。四勇者はそれぞれの目的に従い動き出した。

 外の景色を堪能しながら図書館に向かう最後尾で三人の後姿を視線を移す。

 

 

「優しく楽しい方ばかりでよかったです。これから共に戦う仲間なのですから私がシールダーとして皆さんをお守りしないと」

 

 

 先輩の助けを待つだけではいけない。自分でできることは最大限努力しないと。

 マシュは誓う。絶対に誰も死なせはしないと。

 

 

 

 

 

 マシュはまだ知らない――――――本当の非常識を。

 

 

 

 

 

 




多分続くと・・・・・・おもう?

こっちはオバロ書きながら息抜きに書いていこうと思っています。
ですからすんごい亀最新です。
むしろ誰かこのネタで書いて(懇願


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こんな規格外が召喚されたら原作通り進むはずないよね

Q:世界で最も有名な異世界転移は?






 王様が原因不明の発作で気絶したため――――――注意※こいつらが原因です。

 図書館で情報収集を行う四人。

 ローブ達が用意した資料はとても分かりやすく纏められており、種類ごとに仕分けがされているため、それぞれ知りたいことから手に取り読み進めていく。

 

 

 なすび:伝承、伝説、神話などの資料。

 総統閣下:軍事、情勢、(まつりごと)の資料。

 黄金の獣:同上+法律、異能力に関する資料。

 バカ:ロマン全般。

 

 

 時間にして一時間、ページをめくる静かなメロディー。他三名はさておいて、甘粕は意外にも文学少年なのだ。

 誰もが黙々と読み進めていくなか、こういった何気ない束の間の時間こそ、天賦の才は分かりやすく顔を覗かせる。

 ―――パタン―――二人の男性が本を閉じた。膨大に積み上げられた"常人が一週間本気全力頑張って読めば読み終わる"物量を一時間弱で読み終え、それらをちゃんと記憶し自分の知識として詳しく説明すらできる頭脳。

 

 

「なるほど。中々に興味深い世界だ。異能の力が当然のごとく社会に根付いた世界……永劫破壊(エイヴィヒカイト)の使徒すら、この世界は受け入れるのだろうな」※無理です(ヾノ・∀・`)ムリムリ

 

「俺の世界と似通った力が当然と振る舞われる世界。邯鄲の夢を全人類へと……そう考えていた時期はあるが、これは違うな。人類の代表たる盧生が不在、眷属だけが増え続ける世界……勇者がそうなのか?ならば、俺の理想はこの世界で叶うのかもしれん」※出来るわけないだろ馬鹿勇者魔王が。

 

「もう読み終わったのですか?一番に終える自信があったのですが……」※八割完了してる時点で大丈夫。普通じゃないよ。

 

「……書類仕事は不慣れだが、人並み以上に処理できると自負していたが……2割もいってないな」※総統閣下才能ないからね。仕方ないよね。

 

 

 アマカスとラインハルトは最初に選んだジャンル以外も読み進めようと資料を手に取ったとき、兵たちがノックと同時に扉を開けた。

 

 

「貴様ァ!!勇者様がおいでなのだぞ!!」

 

 

 激怒したローブに怯み体が硬直した兵士は、自分の使命を全うすべく最大の敬意を示すため膝をつき声を張り上げた。

 

 

「し、失礼いたします!!ですが国王陛下が目を覚ましました!!勇者様方には謁見の間まで至急移動のほどよろしくお願いいたします!!」

 

「目を覚まされたんですね……よかった。私は謁見の間に戻ろうと思いますが、他の皆さんはどうしますか?」

 

 

 無論とマシュについていく三人。謁見の間では顔色が若干よくなった王様が座っていた。

 

 

「すまぬ勇者様方。どうも体調がすぐれなくてな……………………すまんが一歩だけ下がってくれまいか?」

 

 

 王様の言葉に素直に従い一歩だけさがった四人に、王様は安堵のため息がこぼれる。……毎回コレ繰り返すの?ヤッダー。

 

 

「早速であるが、先の話の続きから始めたい。自己紹介、移住等に金銭の交渉……ステータスも確認させてもらった」

 

 

 滅茶苦茶な、くちゃくちゃなステータスを思い出しまた胃が痛くなる。

 王として、国を代表する男として、胃痛で腹を抱える真似だけはしないと心に誓う。でも痛いものは痛い。冷汗がでるのじゃ!!

 

 

「……こちらの世界では現実の肉体を数値化して見ることが当たり前なのだが、確認としてそちらの世界では違うのか?」

 

「専門用語を並べましても混乱を招くだけなので分かりやすく説明しますと、一般人や魔術師などのただの人は見れませんが、私のような人を超えた存在の一部は、ステータスとして確認が可能です」

 

 

 戦力としては守ることしかできないと云うlevel80(マシュ)。――――――魔境かな?

 

 

「私の世界も似た様なものだ。星辰体感応奏者(エスペラント)と呼ばれる兵士のみが得意分野を認識できる」

 

 

 この身はもう敗北した身らしい。――――――え?(二度見

 

 

「数値化はなかった。だが、強さの基準となる階位は存在していた」

 

 

 全身全霊で戦い、少年少女たちに彼の軍隊は敗北したらしい。――――――え?(三度見

 

 

「あったぞ、"すてーたす"」

 

 

 盧生(おれ)にカウンターストップという概念は存在しない――――――グハッ!!??

 

 

「王よ!!?」

 

「エエイ!!大丈夫じゃァ!?さっさと進めるぞォッ!!……勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化していただきたい。伝承によると召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうだ。その際には、勇者様方は別々に仲間を募り冒険に出る事になる。伝承によると、伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っており、勇者様たちだけで行動すると成長を阻害すると記載されておる……………………あ――……………必要かの?そもそも伝承と武器の形状が違うのだが……」

 

 

 剣の勇者は業物七刀。

 槍の勇者は比喩でも冗談でもなく魂が震える魔槍。

 弓の勇者は…………遥か上空を漂っているらしい。

 盾の勇者は取り出し自由の身の丈以上の盾。あぁ……普通だ(感覚麻痺

 

 

「もういいや……それぞれlevel上げに勤しむために、ワシが仲間を用意しておくとしよう。なにぶん、今日は日も傾いておる。勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つのが良いであろう。明日までに仲間になりそうな逸材を集めておく」

 

 

 ハイ解散!今日は終わり!これでやっと安心して休める。さっさと部屋まで行け。ワシは娘に癒されてもう寝る!

 無論、ちゃんと丁寧な言い方をした。

 

 

「お待ちください国王よ」

 

 

 穏やかに終えようとした王様の心情などバッサリと斬り捨て、鋼の英雄が待ったをかける。

 

 

「む、どうしたのだ?」

 

 

 早く終わってくれ――――――残念ながらその願いはかなわない。

 

 

「先ほどこの国に関する様々な資料を拝見させていただいた。まだまだ全容は把握しきれていないが、俺より優秀な三人の知識があればこの問題は解決する。移動の最中に相談したが三人共協力してくれるそうだ」

 

「……して、問題とは?」

 

 

 嫌な予感が背筋から前頭葉にかけピリっとくる。ワシもうだめかも。

 

 

「国を守護し、時には敵勢力を殲滅する軍事力。魔物が存在する以上武器と兵士は無くてはならないもの。……冒険者という役職は傭兵の認識で構いませんね?調べたところ国の管理外にある野良戦力が多すぎる。我々を召喚した経緯から考察しても騎士団と冒険者の団結力を高めより()()()()()()()()()

 

 

 ・・・・・・ん?

 

 

「他の奴隷制度などいくつか見直すべき問題は私が対処しよう」

 

 

 獣の眼光だよラインハルト殿?

 

 

「波の予測地帯は任せてくれ。次の波が来るまでにはおおよそにはなるが絞り込む」

 

 

 可能なのアホカス殿?

 

 

「実際に現地の人と触れ合い。魔物と戦い情報の齟齬確認を行い。国を見て回るのが私の役割になります」

 

 

 癒されるわぁ・・・・・・。

 

 

「以上、それぞれの分野に精通した者を明日までにお願いする。計画(プラン)は明日の朝までには用意します」

 

 

 えーまじでー?なんかその方向で進むこと前提になってない?これ他の貴族とか黙ってないよ?兵力強化は誰も文句は言うまい。波の研究もそうだ。だが奴隷制度など国の(まつりごと)まで口や手を出すとなると話は別じゃ。最悪……対勇者勢力が生まれて国が真っ二つになる。

 

 

「どうした国王よ。顔色が悪いじゃないか。なに安心しろ。我々が味方としてこの国のため、世界のために戦うのだ。戦を前に地盤を固め、土台をつくるのは兵法の基本だろ?我々にとってメルロマルク含め、この世界は未知数なのだ。ならばせめて後ろから撃たれる可能性くらい自分達の手で無くしても構わんだろ?安心したいのだよ我々は」

 

「なにより、我々がいた世界よりこの世界は文明的に遅れている。我々の祖先も通った歴史だ。政に口も手も出しはしない。先達者として耳を傾けてほしいだけだ」

 

「……アマカス殿とラインハルト殿の言葉には一理ある。可能な限り最善は尽くそう。ヴァルゼライド殿も我が兵士をよろしく頼む」

 

「了解した」

「了承した」

「分かった。任せておけ」

「それでは私だけ明日からこの世界の力が使えるか検証してきます!」

 

 

 王は休みたかった・・・・・・安易に承諾してしまったのも、疲れて疲弊した心を癒したかった。ようは逃げたかったのだ。

 その後、彼は知るだろう。規格外(トンチキ)の本当の恐ろしさを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は王様が用意した来客部屋で休むことなく、図書館に舞い戻った勇者一行。

 早速ローブたちが追加で用意した資料を参考に計画を練るのだが。

 

 

「ほう自己紹介とな」

 

「はい。やはり人間関係を円滑に進めるにはまず自己紹介からかと。まずはどの様にこの世界に召喚されたか話しませんか?」

 

「そうだな。お互い出会ってまだ数時間の付き合い」

 

「情報の共有は必要だ」

 

「なら聞き耳は邪魔だろう」

 

 

 パチン。甘粕が指を鳴らす。ただそれだけで図書館内に一軒家が出来上がる。

 

 

「創法で編み出した防音性抜群の部屋だ。密会には便利だろ?だが普通に壊れる。あまり暴れないでくれよ」

 

 

 まず壊すのはお前だろう――――――まだ大人しい甘粕相手にそう思う人はまだいない。

 まず男三人は、自分の世界でやらかした事を語り、どう終幕し今ここに至るのかを説明した。

 

 クリストファー・ヴァルゼライドの生き様は正しく『英雄』。

 彼の英雄譚、その破滅までの物語は、聞く者を魅了した。因果は廻り次代の英雄と共闘した男は『悪の敵』として特異点の彼方で戦い続ける。そして、『悪の敵(カウンター)』としてこの世界に召喚された。

 マシュは尊敬の念を。ラインハルトは感心を。アマカスは凶悪に口角を歪めた。

 

 ラインハルト・ハイドリヒの行いは正しく『悪魔』。

 次代の神を決める戦いに敗北した墓場の王の最後は、勝利を讃えただの人間として暗殺された。

 マシュは神座の考察を。ヴァルゼライドは目を閉じ。アマカスは極悪に眼光をギラつかせる。

 

 甘粕正彦の人生は正しく『魔王』。

 前人未到の踏破者。人類最初の代表者にして最強。人を想うがあまり、人の敵となった人格者。その人生の最後は己が認めた英雄に一発殴られ、真の勇気に納得して笑いながら黄昏の中に散っていった。

 マシュは抑止力と阿頼耶の関係性を。ヴァルゼライドはスッと閉じた目を薄く開き。ラインハルトは感心した。

 

 

 三人の話を聞き終えマシュ・キリエライトもまた一つの物語を紡ぐ。

 彼、彼女の歩みは正しく『救済』。

 人理焼却を目論むゲーティア。それを阻止すべく、人類を守るために永きに渡る人類史を遡り、運命と戦い未来を取り戻したただの少年と少女の物語。

 

 

「――――――無事解決したのですが、私の所属するカルデアにはそれは大きな図書館がありまして、今日も皆さん(キャスター)のおすすめをお借りしていたところ、見覚えの無い本を発見しつい読んでいたら……気が付いたらココにいました」

 

 

 グランドオーダーは三人に衝撃をもたらした。

 ヴァルゼライドと同じで才能のないただの人。精神は英雄と同じ超人ではなく本当にただの一般人。そんなただ巻き込まれただけの少年がすべての運命を背負い。生きたいがために戦う――――――その物語は、心優しいただの少年だからこそ成し遂げられたのだ。

 

 特別な人間でしか本当の意味で世界が変わらない神座世界。人のままでは魔人には勝てない。だからこそ――――――ただの人間として世界を救ったその栄誉に涙する。

 

 羨ましい。甘粕正彦は子供のように他人の世界(おもちゃ)を欲しがった。過去の英雄と触れ合ってみたいと心の底から渇望する。そして――――――一度でいいから少年と語り合いたいと願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アマカス様」

 

 

 一目ぼれだった。

 どうすれば彼の傍にいられるのか……学力は低いが別に頭が悪いわけではない頭脳がずる賢く謀略を張り巡らせる。

 

 

「次期女王も、アマカス様も手に入れる……そのためならばッ!!」

 

 

 マルティ=S=メルロマルクは望むすべてを手に入れる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




A:不思議な国のアリス



盾の勇者の成り上がりの疑問点。
 冒険者って他の作品みたいに独立した組織なの?




異世界転移もので是非おススメする小説『リオランド』
 原作者が昔から好きな人なので贔屓しますが、内容を一言で言うなら

 ――――――ファンタジーなめんな地球人。

魔法とは異なる儀法なる力:俺ら大好き魂とか運命力とか超関係します。
科学が発展した地球:星を渡り、標準装備がレーザービームの超文明。


「また科学無双でチートか?それとも知識で産業革命物語か?」と思いの方。異世界に地球人が降ってくるのは本当だけど、背後に「侵略」の2文字がある物語。
 
詳しいことは語れませんが、超お勧めします。あとちょくちょくエロイ※ここ重要



あ、優しい世界のタグを追加しときます。


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単体行動すると剣と槍だけシリアスになるのはどうすれば?

大塚明夫ボイスでお楽しみください。




 メルロマルクは変わった――――――

 貴族や王族のためではない。金や快楽のためでもない。

 英雄に忠誠を誓った騎士団と、隣人を守る冒険者が、果てしない鍛錬を繰り返す。

 体力(精神)を消費する鍛錬は、合理的かつ規則正しい軍隊へと変貌させた。

 

 

 メルロマルクは変わった―――――― 

 汚職を繰り返す貴族たちは、総統閣下とゲシュタポ長官が自らの過ちを理解させるための”授業”を受けさせた。

 体表の奴隷刻印が彼らの正しい心を助長し、管理する。

 貴族の制御、軍隊の制御、情報の制御。

 上層部の汚職は一掃されクリーンに統制された。

 

 

 メルロマルクは変わった――――――

 時代は腐敗から優しい世界へと移行し、クリストファー・ヴァルゼライドによる粛清は回避された。

 そして情報の制御は、甘粕のコントロールも可能にした。※期待薄

 

 

 メルロマルクは変わった――――――

 貴族が制御管理された時、王族は普遍のものとなった。

 

 

 メルロマルクは変わった――――――

 ひとつの時代が終わり、私たちの戦争は終わった。

 だが私にはまだ、やらなければならない事が残っている。

 最後に課せられた使命は、私の遺伝子、甘粕様とLAN直結する事。

 それが、私に残された最後のミッション。

 

 

 

 世の中には語り伝えきれないものがある。

 伝えなきゃいけないことがある。

 紡いでは繋げる命がある。

 

 

 メルロマルク第一王女。王位継承権第一位。マルティ=S=メルロマルク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四聖勇者が召喚され一つ目の波まであと数日。

 彼らは自重しながら好き勝手に行動していた。   

 そんな四聖勇者のこれまでの日常に注目してみよう。

 

 

 

 ~剣の勇者=クリストファー・ヴァルゼライド~『犠牲者物語』

 

 

 光が決して照らすことのない闇の牢獄。

 手首に繋がれた手錠が石天井から吊り下がり、座ることさえ許されない。

 静謐の空間。たまに聞こえるのは、虚しく擦れる鎖の音。

 エクレール=セーアエットは無力だ。

 セーアエット領領主であった父親が波によって亡くなった後、ルロロナ村で生き残りの亜人を襲った正規兵の奴隷狩りを制止しようとして捕らえられ王城の牢獄に入れられた――――――咎人として。

 刻一刻と衰弱していく肉体。

 水も食料も与えられない一人の時間。

 絶望。怒り。落胆。空腹。

 暗闇の中、無駄な自問自答を繰り返す彼女。 

 ”これでよかったのか”

 ”誰か助けは”

 ”王は何故”

 ”民はどうなった”

 ”体が重い”

 

 己の精神が己を追い詰める。

 この問答に答えなどない。あるのはただの無限にはまる落とし穴。

 意味もなく同じ問答を繰り返す。

 それしか出来ないから。それしか考えられないから。

 でも、それでも――――――

 

 

「……わたしは、あきらめない」

 

 

 乾いた喉と唇。声を発する痛みに耐えながらも誓いの言葉を”宣誓”する。

 挫けぬ為に、折れない為に、自分を見失わない為に。

 ――――――その諦めない意志が奇跡を呼び寄せた。

 軍靴の音が鳴り響く。僅かに灯る篝火。

 石作りの牢獄が、どもまでも音を浸透させる。

 

 

「……ぁ、」

 

 

 視界に映る柵の向こう側で止まった男。

 暗闇に慣れた目を気遣ったのか篝火を柵から離れた位置まで灯す。

 

 ――――――"この感情をどう表現すればいいのか分からない"

 

 カチリと鍵を開けた男は、光を灯さずに入ってくる。 

 

 

「……よく耐えたエクレール=セーアエット。君は自由だ」

 

 

 手錠を外され、暖かな毛布が包み込む。

 解放された安堵からか、疑問が浮上する。私を支えるこの男は何者なのだろうか?

 

 

「困惑しているだろう。大丈夫。私は剣の勇者。貴女の無実は証明されている。そして、こうなった原因を槍の勇者が対処している。貴女には見届ける権利がある。無理にとは言わない。辛いのならこのまま眠るがいい。だが、後悔しない道を選ぶのは貴女自身だ」

 

 

 気付けばその手を握っていた。了承と受け取った剣の勇者は、優しく抱きかかえ立ち上がる。

 負担を極力与えない歩き方。暖かく雄々しい腕。そして、篝火に照らされた双眸。

 闇に慣れた目が篝火の光さえ拒絶する。

 だがその眼は、光に焼かれようと瞬き一つすることなく黄金の炎を目に焼き続けた。

 のちに彼女は、剣の勇者の右腕としてその腕を高めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~槍の勇者=ラインハルト・ハイドリヒ~『爪牙誕生物語』

 

 

 この男は――――――マジで容赦なかった。

 剣の勇者も容赦ないが、アレはどちらかと云えば軍人気質。策略、政策はその道のプロより劣ってしまう。

 なにより多数対多数の戦場で、()()()()が得意って英雄頭おかしい※断言

 槍の勇者は約束通り、(まつりごと)を執り行う席にて手も口も出さなかった。ただ、こうすればどうだ?と静かに、誰の邪魔にもならない呟きを垂れ流す――――――その全てが可決された。

 確かにラインハルトは誰の邪魔もしていない。

 彼は怒声が飛び交う環境で、耳元に囁くように語っているだけなのだ。

 周りが五月蠅くて誰も聞こえない。槍の勇者が何故この様な場所に?と訝しむ者もいるがそれだけ。

 そんないつもと同じ状況で、オルトクレイ=メルロマルク32世は酷く憔悴していた。

 

 

「えー勇者様方の要望により奴隷制度の見直しを検討する」

 

 

 まあ当然甘い蜜を吸ってきた貴族と、今まで問題なく運営してきた制度を変えることに対する反対意見が出るわ出るわ。

 

 

「王よ。女王不在時に如何なものかと。せめて女王が居られる時に」

 

 

 ――――――ワシもそれがいい。うん。………………そうしたいなぁーはぁ~。

 

 

「そもそも王は甘いのです!とくに何故盾のあくッ……盾の勇者を一番甘やかしているのです!」

 

 

 ――――――ワシがにっくき盾の勇者にだだ甘だと?それこそ有り得ない。だってマシュは天使なんだから(お目目ぐるぐる

 

 

「勇者様も勇者様です。この国のことなど知りもせずこの様な提案を……ちょっとカッコよくて、完璧だからってッ///////」

 

 

 なに糞ジジイが頬赤らめ気色悪いこと言っておるのじゃ。

 そんなこんなで、議論はまたもや国王の一言により槍の勇者の案が可決された。

 当然反発する者が大勢いる。

 

 

「お考え下さい王よ!そうポンポン変えられたら大変なことに!?」

「可決可決って、その仕事するの我々なんですからね!?」

「一つでも調整しながら各所に書類と話をつけなきゃならないのに……」

「王は人の心が分からない」

「王よ!」

『王よ!』

 

 

 ――――――うるさいうるさいうるさーい!!じゃあてめぇーらこのポジション変われよ!?

 

 

 この場には国王、貴族、勇者、しかいない。ならば、アドバイザー呟き人件ラインハルトくんは一体何処にいるのか?

 

 

「……国王。次の議題に」

 

「う、うむ……」

 

 

 王様は耳元で囁かれた声に胃がさらに痛くなる。

 そう、ラインハルトはオルトクレイ=メルロマルク32世の右斜め後ろの直ぐ傍に自己主張しないよう控えている。

 ただ彼は呟くのだ。国王だけに聞こえるように、静かに、適確に、脳を震わせる美声(諏訪部順一)をお届けする。

 なにより常に抜刀状態の黄金の槍が近くにいる者の魂を震え上がらせる。※これが原因

 何が口も手も出さないだ!アドバイス(命令)に抗うことさえ許されない!!

 そしてラインハルトにとって有意義な時間が過ぎていった。

 

 

「——————本日はここまでとする!まずは奴隷制度から取り掛かれィ!これは勇者様の願いでもある!」

 

『ハッ!!』

 

「ならば私も手を貸そう。これで、奴隷狩りはなくなる。その被害者も救われるだろう。卿ら私の手足として励むがいい」

 

『ハッ!ありがたき幸せ!槍の勇者様!』

 

 

 ——————!!?しまった。ラインハルト殿はあくまで私に対するアドバイス(命令)で約束を守っていた。だが、可決され、これは勇者様の願いでもあると王である私が言ったのだ。ラインハルト殿は自由に手も口も挟んでくる!むしろ今の発言で奴隷制度見直しの全権は槍の勇者様握ったも同然じゃん!

 

 

 王様は今日も胃を押さえる。ミレリア……早く戻ってきて!!

 のちにこの数々の改革は、『英知の賢王』が復活したと喜ぶ女性の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地獄を体験した。

 第一波でお母さんお父さんが死んだ。生き延びた私たちは復興を誓った。

 死んだ人たちのために、家族のために。

 

 地獄を体験した。

 村の生き残りが騎士に殺され幼い私たちは奴隷として売られた。

 

 地獄を体験した。

 大きな屋敷の地下にある牢屋で、毎日鎖で宙吊りにされて鞭に打たれた。

 

 地獄を体験した。

 一緒に買われた友人のリファナちゃんは風邪を引いても毎日毎日鞭で打たれる。

 

 そして――――――

 

 

 

 

 ――――――そして。

 

 

 

 

 気を失っていた。

 地下まで響き渡る破壊音。振動までも伝わってくる。地上が五月蠅い。いったい何が――――――

 

 カツカツといつもの男と違う足音が聞こえてくる。

 

 

「あ……」

 

 

 綺麗な人。痛みさえ忘れて私はその人を見つめていた。薄汚れた牢屋で幻想的で非現実的な出来事に、口が勝手に紡ぎ出していた。

 

 

「勇者……様ですか?」

 

 

 叫びと渇きで枯れ果てた喉を懸命に動かす。

  

 

「わたしは……どうなっても構いません。だからッリファナちゃんを助けてくださいッ」

 

 

 友達を……家族を助けたい。

 

 

「お……願いします。リファナちゃんを、リファナちゃんをどうかッ」

 

「いいだろう。もとよりそのつもりだ。だが、この状況で自分よりも他人を優先する破滅性。優しさともとれる行動。それは強さだ。……卿は、この世界で初めて出会う強き者だ。よいな、決してその感情を忘れるな。懐いた渇望の欠片を手放すな。それこそが卿の強さなのだ」

 

 

 怪しく光る黄金の瞳がラフタリアを映し出す。

 

 

「私の手を取れ。その魂を成長させろ。卿が望むならば、もう二度とその手から零れる事はない。されど修羅の道。強制はしない。リファナ嬢とこれからも平和に生きていく事もできる。私は後者をオススメするが?」

 

 

 差し出された大きな武人の手。

 か弱く幼い肉体は繰り返された拷問と絶食でもう枯れ果てている。

 肉体を動かすだけの燃料は失われている。

 病魔にも侵された肉体に手を伸ばすだけの体力など――――――

 

 

「——————クッ」

 

 

 血が足りない。肉が足りない。体力も失い。病魔が追い討ちする。

 視界が霞む。

 

 ——————せ

 

 

 頭が痛い。吐き気もする。

 

 

 ——————ばせ

 

 

 体が痛い。力を込めた箇所が千切れそう。

 

 

 ——————のばせ

 

 

 それでも。余命間近の限界を超えた肉体がエネルギーを燃やす。

 

 

 ——————のばせ!!

 

 

 ――――――パン―—――――乾いた音が木霊する。

 ラフタリアは生物としての限界を超え、その強固な精神と魂の力から僅かに絞り出した雫をエネルギーに、手を届かせた。

 

 

「——————これにて契約は交わされた。今は安心して眠るがいい」

 

 

 耳元で囁かれた諏訪部順一ボイス。その美声と吐息にラフタリアの肉体がビクンと快楽に喜ぶ。

 そして、彼の物として初めて与えられた命令に魂が歓喜し、静かに眠りについた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~弓の勇者=甘粕正彦~『魔王の犠牲者物語』

 ~盾の勇者=マシュ・キリエライト~『平和な物語』

 

 

「ワーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッッッ!!!!!!!!!!」

 

「弓の勇者様!此方ノルマ完了しやした!」

 

「おぉおおおお!!そうかァ!!ならば更なる開拓よオ!!この地は荒れ果てている。俺の力で良さげな土と改良したおかげでどうにかなるはずだ!!まずは耕すのだあああああああああ!!貴様ら俺に続けエエエエエエエエエエエエエ!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 

 ムチムチ筋肉のマッチョ面たちが、熱く照らされた太陽の中上半身裸で汗を流していた。

 汗は全身を濡らし、筋肉にデコレーションされた汗が太陽光によりテカテカと光り輝いている。

 男たちは健やかに肉体労働に勤しんでいた。

 これで国は豊かになる。誰も困ることがない。

 男たちが汗を流すには十分すぎる理由だ。

 

 さて、彼らが何をしているのか?

 耕している時点でお察しかもだが、畑を耕している。それも広大に荒れ果てた大地を耕している。

 甘粕は人のいない魔獣が住む上質な土と、この地の粗悪な土を改良。

 全力で野菜造りをしていた。

 

 

「トマァトオオオ!!トウモロコシィイイイイイ!!イモイモイモイモイモオオオオオオオオオオオタルゥ!!」

 

 

 弓の力で改良された種を蒔いていく。

 勇者の武器を十全に使いこなしているのは、何気に甘粕だったりする。

 え?空にあるのにどうやって素材を吸収させているかだって?

 甘粕の神の杖なんだから甘粕が食べれば解決だろ(暴論

 

 

「アマカスさまぁ~此方準備完了でーす」

 

「おおマイン!!流石だな!!貴様らァ!!飯の時間だ!!飯の前の感謝の合唱を忘れるな!!」

 

『ありがとうございますマインの姉御!!いただきます!!』

 

「はいいただきます。しっかりと噛んで食べてくださいね」

 

 

 一人一人に水の入ったコップを手渡していくマイン・スフィア。この地区担当は甘粕含め五十人。

 他のところも弓の勇者に付き従う仲間たちが飯を炊いて元気づけている。

 勿論、この地区担当マインが飯からキンキンに冷えた水まで用意した。

 

 

「飯を食いながらで構わん聞いてくれ。俺たちは明日の朝旅立つ。お前たちに教えられることは教えた。これで、この国の食糧問題は解決する。レジスタンスも解散だ!!」

 

「そ、そんな!?俺達にはまだ弓の勇者様が必要です!」

 

「あんたがこの国を引っ張ってくれよ!?」

 

「勇者様!!」

 

喝ッ!!………………この国は弱い。小国として脆弱で、必要な軍備を整えるだけで民はここまで飢えてしまう。誰も悪くはない。この国の王に話を通し、国と民が強力してここまで作物が育つことができたのだ。ゆめこの事実を忘れるな。波がまであと二日……波の予測は困難を極める。やれることはやらねばな」

 

 

 こうして弓の勇者御一行は、翌朝別れの激励をし勇者の力でメルロマルクに転移した。

 小国の王から少なくない謝礼金を頂いた甘粕。

 甘粕とマインで二人きりの街探索。他のメンバーは装備やら消耗品の買い物で別行動中。

 甘粕は新しい発見はないかと眼光を走らせる。傍から見たらただの危ない人もマインにとっては「あぁ……アマカス様今日も素敵」ポイント。

 

 

「!!アマカスさんお久しぶりです。マインさんもお久しぶりです。城下町にいるのは珍しいですね」

 

「マシュではないか。久しぶりだな。なに、同じ"ぱーてぃーめんばー"の買い物帰りだ。終わり次第また旅立つ」

 

「それでしたら最近入手した情報にサーカステントのような場所でガチャが出来るというのをゲットしたのですが一緒に行きませんか?」

 

「"がちゃ"だと?ほお……面白そうだ。同行しよう」

 

「はい!それでは、マシュ・キリエライト行きます!」

 

 

 ――――――てくてくてけてけ――――――

 

 

「まさか奴隷商にガチャシステムがあるとは、驚きです」

 

「俺も"そしゃげ"で何度か十連"がちゃ"を回したことはある。リアルに考えればあれは金を払い。ランダムに排出された奴隷を従わせていたのなら納得だ。要らない仲間を売れば金になるのはまた奴隷商に売り飛ばしていたのだな」

 

「アマカスさん……夢がないです」

 

 

 奴隷商に案内されお目当てのガチャを見つける。

 

 

「こちらが銀貨100枚で一回挑戦、魔物の卵くじです。ハイ」

 

「100枚か……相場の半額か。だが子育てを考えるとどうだ?」

 

「ですが、卵から育てた方が懐き易いはずですし……育成をやったことがないので少し楽しみです」

 

「ハハハ!!それもそうか。店主よ、一回挑戦だ。十連もいいが、単発勝負も醍醐味だ」

 

 

 甘粕とマシュは好きな卵を一つ掴み取る。

 

 

「ああ店主よ、魔物使役は必要ない。男手一つで飼い慣らしてこその日本男児」

 

「それなら私もいいです。自分の手で大事に育てていきたいので」

 

「これはこれは変わったお客様ですね。ハイ」

 

 

 奴隷商は孵化器らしき道具を開く。甘粕とマシュは卵を孵化器に入れた。

 

 

「孵る数字が刻み始めました」

 

「ますます育成"げーむ"ぽいじゃないか。ではな店主。商売繫盛するのだぞ」

 

「槍の勇者様の御蔭でそれは色々ありましたので、これからも健全にクリーンに商売していきます。ハイ」

 

「あ、そういえばラインハルトさんが手を加えたのでしたね。気を付けてくださいね」

 

「ありがとうございます。盾の勇者様」

 

 

 そうして、卵を一つづつ抱えた盾の勇者、弓の勇者は二日後の波に備え別れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~今回の犠牲者~

 剣の勇者により、エクレール・セーアエット 光の亡者。

 槍の勇者により、ラフタリア 爪牙。

 弓の勇者により、マイン・スフィア なんだこれ?

 盾の勇者により、本日も平和。

 

 

 




自分が書いている本編より、息抜きの盾の勇者の方が人気で嫉妬(ニッコリ
大丈夫、よくあるよくある。


それと感想を読みますとfgoは知っていても他の作品を知らない方が多くてビックリ。light作品って日本を代表するじゃんるですよね?(゚∀。)y─┛~~

後みんな保護者好きすぎ!!
原作読めば読むほど設定細かいよ!!(嘆き


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IF√ 作者の思うままふざけた存在が孵る

 テーブルに置かれた白くてまんまるい綺麗な卵。

 孵化器に入れられた月の光を反射する表面を眺めながら、マシュは初めての子育てに心躍らせます。

 ぶっちゃけ、フォウは藤丸立夏との共同作業件初めての子育てと言っても過言ではないのでは?

 むしろ、二人の想いの結晶が第一章ラストの奇跡を呼び寄せたと言っても過言ではないのでは?

 フォウフォウフォオオオオオオオオオオオオオオオウ!!※二人はわいが育てた。

 

 それはさておき、マシュは今日も一日頑張りました。

 盾の勇者なのに盾で敵を叩き潰し、盾が薙ぎ払った衝撃波で敵を一網打尽にしたりと、まさに盾の勇者らしい活躍ぶりです。※Q=盾って何だろう? A=でかい鈍器

 今日も一日村や町を足で走り回りながらモンスターを倒していたせいか小さな欠伸をしてしまいます。かわいいですね。

 マシュは鎧を解除し、体を拭いパジャマに着替えます。擬似サーヴァントのマシュは戦闘服の早着替え早脱ぎが超得意。でもピッタリと体に張り付いた鎧の胸プレートを脱ぐ際、外した瞬間こもった熱と蒸れがモアっと広がり、汗でピッタリ張り付いたインナーと谷間と首筋を伝う汗とかもう辛抱溜まらん※妄想です。でもマシュの鎧って部分部分で外せるのかな?

 魔性のマシュ最高です※今作に関係ないです。

 さて、マインからプレゼントされた茄子色ラグジュアリーに身を包み。マシュは静かに眠りにつきました。お休みマシュ。今日も寝顔が可愛いよマシュ!!

 

 

 \チュンチュンチューン/

 

 

 朝目が覚めると、朝日に照らされた卵が虹色に輝いていることに驚き飛び起きます。

 孵化器タイマーは今日の午後なのにもう生まれそうです。

 どうやら暖かな太陽の光とマシュの早く生まれて欲しい強い願いが卵の成長を促進させてしまったようです。

 虹の輝きは強さを増していきます。虹ということは星四以上確定!!マシュも興奮する!!虹でエリザベートが来たことがある作者は金回転も虹回転もそう変わらい期待値で十連をタップしてます※でも虹回転はテンション上がるよね!!後今年の夏イベ水着サバ全部揃えました。アルトリアは宝具2。石200個とさらば諭吉!!で一人捧げてこの結果は中々上々では?(煽る

 

 卵の光は更に増していき部屋を明るく照らしすぎて目も開けられません。

 そして全てが白く染まったその瞬間――――――ピキピキアッカリーン!!

 

 

「う、生まれた!?」

 

 

 凄まじいエネルギーが殻ごと孵化器を破壊する。

 エネルギーの風が荒れ狂い。マシュは暴風が落ち着くのを待ちます。

 卵から感じる気配は神霊級。流石虹回転。単発召喚で当たりを引き当てた!!

 例えどんな存在だろうと、どう成長するかはお母さんであるマシュにかかっています。

 生まれてすぐこの暴れよう。子育てのしがいがあると上唇をぺろりと舐める。舐めたい。

 エネルギーと光が静謐となり。マシュはゆっくりと瞼を開きこの世界に生まれてきてくれた自分の赤ちゃんを目視で確認する。

 そこには――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オォンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオギャンアアアアアアアアアアアアアアアッ!!……うわまっぶし。ねぇねぇママ、太陽ダァ~~イキライだからカーテン閉めてぇー』

 

 

 べんぼうが生まれた。

 それも濃い顔をそのままに二頭身で。

 

 

『でも外れ引いたね~。可愛い可愛いフィロリアルだと思ったぁ?カッコいい羽ばたける竜だと思ったぁ?ざ~~ん~~ね~~ん~~だーね~~ッ悪魔でしたァ!!ギャハハハハハハハハハハハハッハ!!マジウケ!!?期待した!?虹回転で期待した!?ほんとーに残念だねー。外れも外れ、ほ・し・ゼ・ロォ!!期間限定ピックアップガチャで限定に召喚されるお邪魔虫。十連したら+一枚ぜ~んぶべんぼうでした!!』

 

 

 ナ~ニコレェ?

 

 

「——————です」

 

『え?キコエマセーン。もうちょっと声はってもらわないとなーに言ってんのかさっぱりですわ。耳

かっぽじってクレーム受け付けますね~。あ、耳ほじほじするほど腕長くなかった。実際顔はそのままで体は赤ちゃんってビジュアル的にどうよ?僕なら出会って直ぐにゴミ箱ポーイするね!!』

 

 

 さすがの後輩系ヒロインでも絶句。

 黒くて濃くてブサイクなドス黒いオーラ的なものまで発しているやべー赤ん坊?を見て。開いた目も口も塞がらないマシュ。

 脳が正常に機能しだしたのか右手で口元を覆い、その目には涙が零れる。

 

 

『ありゃ泣くほど?この僕でもその反応は傷ついちゃうなー(笑)生ませておいて育児放棄ですかーwwwwwまあでも無理は――――――』

 

「——————かわいいです」

 

 

 え?

 

 

『は?』

 

「こんなに捻くれて……私がどうにかしないと。ブーディカさんや源頼光さん、エミヤさんのような立派なお母さんになってみせます!!(おめめぐるぐる)」

 

『やべぇーこの子もこの子でおかしいですわ』

 

 

 こうして始まったマシュの育児生活。目を覚ますんだマシュ。起きるんだマシュ。そいつは赤ちゃんの皮を被った悪魔だ!!

 

 

 

 

 

 Fate/育成計画~マシュ初めてのママになる~摩訶不思議な特異点

 

 

 どれだけ口が悪かろうと相手は赤ちゃん。生まれてばかりの姿を隠すためにオムツを履かせます。

 

 

「よしよし寒いですか?いま可愛いお洋服着せますからね~」

 

『いや~ノリとはいえ赤ちゃんプレイきついです』

 

「そんなこと言わずお洋服はちゃんと着ましょうね」

 

『ア、ハイ』

 

 

 抵抗虚しく服を着せられるべんぼうちゃん。

 真っ黒いお肌に合うように、白をコンセプトした可愛らしい洋服。

 褐色炉利(ロリ)には白が似合うように(意味深い)。

 肌を強調させる真逆の色合いは、その人物を引き立たせる。白は清楚に時に背徳的に。

 全体的取り付けられたフリフリが真っ黒お肌を――――――

 

 

『ッッッて、女の子!!?ママこれ女の子!!??服選び壊滅的に間違ってる!!!!』

 

「私の目に狂いはありませんでした。すっごく可愛いです!!」

 

『腐ってる!!狂う時点に腐り果ててるよその目!?目ごと移植してもらっちゃえよ。いい逆十字紹介するよ!?』

 

「?いえ、見ての通りバイタル正常健康体なのでその必要性はないかと」

 

『ソウナンデスカー。なーんかもう好きにしちゃってください』

 

「そうですか!ならもっと赤ちゃんぽくしてみてください!」

 

『OGYAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

「はーいよしよしいい子ですねー」

 

『おっぱい当たるし暫くこのままでいいや』

 

「なにか言いましたかー?」

 

『いえね、お腹すいたと』

 

「それはいけません。赤ちゃんの時だからこそしっかり食べないと大きくなれません。食べたいものはありませんか?」

 

『母乳で』

 

「それ以外でお願いしますね(ニッコリ)」

 

『ハヒンッ!!』

 

 

 普段怒らない人が怒ると怖い。身をもって体感した。((((;✝Д✝))))ガクガクブルブル

 あ、手作りスープおいしかったです。

 そのまま身支度をするマシュは、現代社会のような便利な赤ちゃん用おんぶ道具などないので、大きめの頑丈な布を使い背中に固定します。

 

 

『ねぇママ~今日はどうするの?ノ?NO!!』

 

「国からの依頼(ラインハルト)がありますのでそれを受けます。本日は一日中家を空けるのでべんぼうちゃんを一人残すなんてできません。ですので、今日はこのまま過ごします!!」

 

『……うん。うっす~らそうじゃないかなって思ってたけど確信したよ。ママってヴァカだよね。真面目で純粋な眼鏡後輩キャラ。頭は悪くないのにみょーな天然キャラも追加されて一周してアホ。特に今はおめめぐるぐるしてるから余計にだよ!!』

 

「なら仲間に預けたほうが安全性もバッチリ?」

 

『僕まだ召喚されてこの世界の事とかよくわかんないけど、仲間って?』

 

「私と同じ異世界から召喚された勇者です。私を含め四人いるのですが、丁度三人とも近くにいるので預けることが可能です。早速クリスさんに会いに行きましょう!!」

 

『嫌な予感しかしない』

 

 

 

 ~エリア移動中~

 

 

 

 兵士訓練場に辿り着いたマシュは遠目からクリスを指さした。

 

 

「あの先頭で指揮を執って一番兵士を薙ぎ倒しているのがクリストファー・ヴァルゼライド。剣の勇者クリスさんです。朝から忙しそうですね。訓練を邪魔するも駄目ですしこのままラインハルトさんのところに向かいましょう」

 

『さらっと流してるけどもしも僕、あいつに預けられたら殺されるよ』

 

「クリスさんはべんぼうちゃんに手は出しません!!」

 

『それこそ嘘だね。むしろ僕を見てよくそれだけ断言できるね。君のイメージがどんだけ凄い英雄様でもアイツは人殺しだ。それも大量殺人鬼。ここからでも血の匂いがプンプンするよ!!僕あいつ大っ嫌い。大義名分、振りかざす正義の御旗。それがどんな結果を引き起こし自分がどれだけ罪深いと自覚しながら進むめんどくせー顔してる。それでいて折れない。悪魔がダァ~イキライなタイプ筆頭!!』

 

 

 次の目的地に向かい途中『嫌だ嫌だ死ぬ!?』と喚き出したべんぼうちゃん。赤ちゃんであるべんぼうちゃんはマシュに敵う筈もなく城に辿り着く。

 

 

『やべー気配ビンビン感じるよー死ぬよー殺す気?これ虐待で訴えれない?カァーヤダヤダ。今頃地獄で極楽してる親友が羨ましいぜ』

 

「身構えなくてもラインハルトさんは人格者ですよ。この異世界でまだ一度しか槍を振るっていませんし」

 

『本当にぃ?』

 

「はい。なんでも悪い貴族を拘束しようとしたところ抵抗されたらしく巨大モンスターの封印を解除されたそうです。それも天にまで延びる竜を思わせる3つの頭部。それを支える長くしなやかな3本の首、2本の長い尾、全身を覆う黄金色の鱗、腕の代わりに巨大な1対の翼を持つ化け物。それを何もさせず一振りで消滅させたのですから流石です!」

 

『ヘースゴーイ。…………マジもんの化け物じゃん。本当に大丈夫?』

 

「はい!ラインハルトさんは誰であろうと無下にはしません」

 

『んまそれなら暇つぶしの話し相手にはなるかな』

 

 

 マシュはラインハルトがいる執務室に到着する。ノックをし、許可を得て扉を開ける。

 

 

「おはようございますラインハル——————ッ!?」

 

 

 ――――――ガキン!!

 マシュと年齢がそう変わらない少女が不意打ちに斬りかかり、反射的に盾を展開したマシュは斬撃を防いだ。

 

 

「な、なにを!?ラフタリアさん!!」

 

「——————臭い。鼻が曲がりそう。糞や臓物を煮詰めたゲロ以下のコバエが神聖なる槍の勇者様にどうのようなご用向きで?黄金を汚すその暴挙。例え盾の勇者様だろうと容赦しません。ゴミにも劣るカスのシミを今すぐ処分しろ。グチャグチャに切り刻み磨り潰し燃やして聖水で浄化しろ。それが出来ないのでしたら……盾の勇者様にも同じ目に合ってもらいます」

 

『イイ感じにガンギマリ極まってるね。僕こういう子だ~いすき♡墜ちたらそれは愉快に踊ってくれるよ!!』

 

「煽らないでくださいべんぼうちゃん。——————ラフタリアさん。違うんです。この子は確かに、汚水を長年放置した形容しがたいアレですが」

 

『けっこーママも口悪いね』

 

「ンンッ……それでも私が初めて召喚した赤ん坊なんです!!どれだけ汚く醜くても可愛いんです!!だからこそッ!!」

 

 

 膨れ上がる魔力の渦。二人が繰り出す全力全開。

 始まってすらいない――――――否。始まろうとしている殺意と魔力の奔流が、執務室でお仕事をしていた王様の胃をダイレクトアタックで攻撃する。

 

 ――――――もうやだ……帰る。

 

 ※残念ながらこの願いは却下されました。

 

 覚悟完了。戦闘態勢完了。その盾は一切の敵をこれより先へ行かせない決意の証。

 

 

いまは遥か(ロード)――――――」

 

 

 殺意完了。獲物捕捉完了。その爪牙こそ黄金に敵対する一切を斬殺する忠義の剣なれば。

 

 

黄金郷は世界を照らす(エル・ドラード)——————」

 

 

 

 戦いは開戦される。

 互いに一歩を踏み出し、紡ぎ出すラストエンゲージを―――――― 

 

 

「待て。双方それまでだ」

 

 

 滅茶苦茶になった書類を顔面に張り付けながら黄金は槍を水平に掲げる。

 獣殿ならまだしも、人間性たっぷりの『飽いている獣様』はこの事態を祝福する筈もなく。

 

 

「おすわりだ」

 

「——————ふぎゅッ!?」

 

 

 聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)を逆に持ち柄底の石突で血の気が多い頭を床に叩きつけた。極限まで手加減された一撃と、名前も知らぬローブたちが強化を施した執務室は、ラフタリアの顔が沈没するだけに被害が収まった。

 頭部に大きなたんこぶを作り気絶したラフタリアをよそにラインハルトはマシュに用件を聞く。

 

 

「——————なるほど。その赤子を預かって欲しいと」

 

 

 黄金の瞳がべんぼうちゃんを観察する。

 見詰められたべんぼうちゃんは珍しく煽ることもせず沈黙し、不快感を察知される。

 

 

「似た者同士か。私はもかつてある者に悪魔だと揶揄されたものだ依頼を頼んだのは私だ。どれ、私が面倒を見よう」

 

『絶対に嫌だ。命がいくつあっても足りやしない。所詮理性の皮を被った獣。快楽と愉悦でどれだけの人間殺してきたの?僕の性質上分かっちゃうんだよねー。君は今も飢えている。飢えに苛まれ、全力を出すことを自ら拒絶してる。いや、自粛しているのかな?理由まではさっぱりだけど、ハッキリ言って人生舐めまくりだよね!!羨ましいねぇイケメンで強くて有能でカリスマ性もある。カァー完璧超人!!空気も読める仕事できる逆に何が出来ないの?生まれてきて出来ないことなかったでしょ?強いて言えば、全力で遊んだことないことくらい?暇つぶしに下についてる立派なロンギヌスで遊んでみたら?ギャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』

 

 

 この赤子、キレッキレである。

 

 

「す、すみませんラインハルトさん!!べんぼうちゃんに悪気はないんです。後でしっかり叱っておきますので許してもらえませんか?」

 

 

 このマシュマロ、だだ甘である。

 ベロベロママである。

 

 

「問題ない。赤子の言うことも最もな疑問だ。だが、それを私の口から語ることはない。私は確かに心から――――――満足したのだ。全身全霊、既知を未知に。それで十分であろう」

 

 

 "世界は未知に溢れている"

 

 どこか満足そうにこの世界を生きているラインハルトにとって、日々が祝福なのだろう。

 

 

「その赤子なら随伴しても問題ない。依頼を頼むマシュ」

 

「はい。マシュ・キリエライト必ずや依頼を達成してきます!」

 

「うむ。起きろラフタリア」

 

「——————はひん!も、もうしわけありまししぇんらいんはるとさまぁ~」

 

「まずは片付けからだ。やれるな?」

 

「はい!!」

 

「ははは……」 

 

 

 苦笑いを浮かべマシュは退出する。

 依頼を達成するために二人は頑張るのだ!!

 

 

『勇者人間できてるっていうか~妙に達観してる奴ば~かじゃん。弄りがいがなさすぎる』

 

「立派な人たちで、私もそうあれたらなと……駄目です。ナイーブが過ぎました」

 

『ところでさもう一人の勇者には会いに行かないのかい?』

 

「はい。よくよく考えるとあの人に預けるのは心配で……」

 

『ふーん。名前は?』

 

「甘粕正彦さんです」

 

『ア、フーン……でしょうね』

 

「知り合いなんですか?」

 

『いやなーんもないさ。依頼ちゃちゃと終わらせて美味しいご飯食べようぜ!!』

 

「そうですね。急ぎましょう」

 

 

 こうしてマシュ子育て計画は加速していく。

 負けるなマシュ!!

 他人がどういおうとママだけは味方だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じく卵から生まれた生物を前に甘粕は笑みを深める。

 

 

「ほう……中々の当たりを引いたな」

 

 

 夜天を照らす凶星のような紅玉の六つの眼で甘粕正彦を観察する三頭龍。幼くも威厳を感じさせる白くしなやかな肉体。

  “(Aksara)”の御旗を背中に靡かせている。

 

 

「愉しくなりそうだ」

 

「シャーッ」

 

 

 朝食のハムを食べさせながら、どう成長するかウッキウキな甘粕。

 この子龍の未来は甘粕にかかっている。

 がんばれ甘粕!!

 負けるな甘粕!!

 真っ直ぐ育つかは君にかかってるぞ!!

 

 

 

 

 

END?

 

 

 

 

 




おかしいな。当初の予定ではマシュは突っ込み役だったのに・・・・・・
序盤の文章はぬきたし2の影響だから俺は悪くない。

マシュと甘粕が召喚した存在……一体何者なんだ?


投稿遅くなり申し訳ありません。人生初の夜勤が予想以上に自分から書く気を奪いました。オバロの本編頑張って投稿して此方を二日ほどで完成したので適当っぷりが見えます(笑)
でも盾勇の方が人気なんですよね(困惑

誤字報告ありがとうございます。感想のほどお待ちしてます。
あとラフタリア可愛い(ガンマギリ


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初体験の波にテンションアゲアゲな勇者がいるそうですよ?

原作通りです(建前




 テーブルに置かれた白くてまんまるい綺麗な卵。

 孵化器に入れられた月の光を反射する表面を眺めながら、マシュは初めての子育てに心躍らせます。

 

 ―以下略—

 

 そして、何やかんや忙しかったマシュはマインからプレゼントされた茄子色ラグジュアリーに身を包み。マシュは静かに眠りにつきました。お休みマシュ。今日も寝顔が可愛いよマシュ!!

 

 

 \チュンチュンチューン/

 

 

 朝目が覚めると、朝日に照らされた卵が虹色に輝いていることに驚き飛び起きます。

 孵化器タイマーは今日の午後なのにもう生まれそうです。

 どうやら暖かな太陽の光とマシュの早く生まれて欲しい強い願いが卵の成長を促進させてしまったようです。

 虹の輝きは強さを増していきます。 

 卵の光は更に増していき部屋を明るく照らしすぎて目も開けられません。

 そして全てが白く染まったその瞬間――――――ピキピキアッカリーン!!

 

 

「う、生まれた!?」

 

 

 凄まじいエネルギーが殻ごと孵化器を破壊する。

 エネルギーの風が荒れ狂い。マシュは暴風が落ち着くのを待ちます。

 卵から感じる気配は神霊級。流石虹回転。単発召喚で当たりを引き当てた!!

 例えどんな存在だろうと、どう成長するかはお母さんであるマシュにかかっています。

 生まれてすぐこの暴れよう。子育てのしがいがあると上唇をぺろりと舐める。舐めたい。

 エネルギーと光が静謐となり。マシュはゆっくりと瞼を開きこの世界に生まれてきてくれた自分の赤ちゃんを目視で確認する。

 そこには――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オォンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオギャンアアアアアアアアアアアアアアアッ!!……うわまっぶし。ねぇねぇママ、太陽ダァ~~イキライだからカーテン閉めてぇー』

 

 

 べんぼうが生まれた。

 それも濃い顔をそのままに二頭身で。

 

 

べんぼうちゃん本編へ参戦!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 注意※この物語はノリと勢いと作者の魂が込められているかもしれないかもしれません。

「原作と全然違う!!」「いやwwwそのキャラそうじゃないだろwwwwwww」「原作と乖離しすぎ、もうオリジナルでやれば?」とうの文句に関しては……ドルズリバイインディスカ!?(どうすればいいんですか!?)

 

 

 

 

 ――――――私にも分からん。

 ――――――では切っていきます、はい。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 その日は無事ラインハルトの任務を完了させ一日を終えたマシュ。

 べんぼうちゃんの口におしゃぶりをぶち込み安眠妨害を防止。

 ラインハルトが仕事の報酬と人一倍頑張るマシュの為に、その日のうちに作らせたアイテム『おしゃぶり』。

 『おしゃぶり』の効果は、くわえさせた本人が外そうとしないと外れない拘束系アイテム。

 ついでとばかりにラフタリアが仲直りの印としてプレゼントしてきたベビー用施錠付き鉄製檻かごにべんぼうちゃんを押し込め、カチリと施錠する。

 

 

『ン˝ン˝コ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝~~~~~ッ!!!!!!???』

 

「お休みなさいべんぼうちゃん。朝になったら外してあげますからね」

 

 

 黒い害虫を隔離。こうしてマシュの一日は終わった。

 

 

 次の日からパーティーメンバーべんぼうちゃんのレベル上げに勤しみ、今出来うる準備を済ませ遂に波へのタイムリミットを迎えた。

 

 

「皆さんも砂時計を見に来たのですね。リミットまで残り十分。べんぼうちゃんは落ちない様にしっかり掴まっててください」

 

『そこは置いていくって選択肢も有りだよ?』

 

 

 ガングロ悪魔がパーティー編成から外すようお願いしても、マシュは純度100%の笑顔で大丈夫と励ます。

 

 

「波が始まれば騎士団は住民の避難を最優先。エクレール=セーアエットを代理とし防衛線構築を任とする」

 

「ハッ――――――剣の勇者様差し出がましいですが敵は数で攻めてくると思われます。四聖勇者といえど四人では……」

 

「最もな疑問だが――――――問題ない。歴代四聖勇者の文献を確認したがこのレベルなら我々だけで十分だ。もし我々四人でも対処しきれぬ敵が現れたなら……世界が耐えられないだろう」

 

「はは……御冗談を……冗談ですよね?」

 

 

 パーティーメンバーに騎士団精鋭を加え英雄は静かに時を刻む龍刻の砂時計を睨みつける。エクレアは先の言葉を審議して表情を青白くしていた。

 

 

「これ以上兵士を動員すれば他の守りが疎かになる。私にとっては最初の波だ。脅威を計る為にも勇者四人で敵を殲滅する。——————ラフタリア」

 

「はい!ラインハルト様!」

 

「卿は観ていろ。多少腕が立とうとまだ子供。勇者が戦場で磨き上げた魔技を糧としろ」

 

 

 敵の脅威度を身をもって体験する。もしも調査報告書通りならば問題はない。だが、もしもの時は……聖槍の力を解放する覚悟を決める。

 ラフタリアはラインハルトとヴァルゼライドとの模擬戦で身に付けた観察眼の精度を高めるため深く息を吸い瞑想する。子供に甘い二人だが、心から剣術を学びたいと懇願する相手には一切の容赦がない。死の淵で掴み取ったこの眼こそがラフタリアの武器になる。

 

 

「ククク……楽しみだ。俺はまだ武器である弓を一度も攻撃として使用していないからな。フィーロ、窮屈かもしれんが担いで移動するぞ」

 

「クエー!」

 

「そうだったのですかアマカス様!てっきり空中に浮かぶ無数の銃器が神器とばかり」

 

 

 自称戦うのが好きじゃない男は、波に心躍らせる。

 マルティはそんな男に目が釘付けさ!どうしようもないね。

 そして、砂時計が残り一分。

 

 

「うむ。勇者様方どうかご武運を。皆さまの勝利を信じております」

 

 

 王様は四聖勇者にエールを送る。

 本当に、ほんとぉおおおおに、残念だが、槍の勇者がどっかに行ってくれるだけで涙が零れ落ちる。

 何故同じ部屋で仕事をしているんだこの男?同じ部屋にいるだけで心がまったく休まらない。

 むしろ勇者なんだからレベル上げのためにモンスターと戦えよ――――――その必要性がなかった。

 何はともあれ、勇者は消える。また戻ってくるとはいえこの安らぎを満喫するつもり――――――

 

 

「oh……王を間違えてパーティーメンバーに加えてしまったか。キャンセルしようにももう時間がない。なに、問題はない。ラフタリアに護衛させる故安心するがいい」

 

「チクショウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 この言葉最後に、戦士たちは戦場へ転移する。

 勇者よ、覚悟するがいい。これは生き残りをかけた戦争。

 命を奪い去る異形の魔物が恐れを懐くことなく襲い掛かる死の墓場。

 勇気も覚悟も愛も友情もない哀れな怪物退治。

 終わりの見えないこのゲームを、果たして四聖勇者は諦めることなく戦えるのか?

 誰も知らない異世界で、孤独と戦う四人の精神は果たして折れることはないのか?

 

 それはまだ……混沌の中。それが……ドロヘドロ!※全巻持ってるけどアニメ化が一番驚いた。全体的にグロい作品だからアニメ化してもOVAかなと思ってたら地上波で普通に放送してて頭がキノコになりました。なら全く関係ないけど異種族レビュアーズが全年齢アニメとして放送できるなら『ぬきたし』も可能なのでは?むしろやれよ孕めやオラァ!!(テンプレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転移を終えた軍隊は迅速に動き出した。

 エクレアの指示の下、星の位置などの周辺情報から現在位置を割り出し村に向け馬を走らせる。それでも、四人の方が速かった。音速で走るマシュより先行する三人は音を置き去りにし、村の外周部へ降り立った。

 

 

「み、皆さん足が速すぎです。アキレウスさんより速いかもしれません……敵を捕捉!マシュ・キリエライト戦闘を開始します!」

 

「よっこいしょ……餌だフィーロ。敵を蹂躙しろ。クリス、ラインハルト。ボスが出現したら俺が倒しても構わないか?」

 

「好きにするといい。だが、別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「私は目の前の敵を壊すだけだ。それがボスであろうとな。あぁ……帰還したらラフタリアとお茶の約束をしていたのだったな」

 

「死ぬはずないのに物凄く死にそうな台詞が聞こえます!」

 

 

 問題なく敵を薙ぎ払う盾の勇者。攻撃手段がない盾の勇者の盾による攻撃という最適解で、デミ・サーヴァントの性能をいかんなく発揮する。卵から孵化したフィーロはアマカスの教育もありモンスターを一撃で絶命させ捕食していく。

 

 

「武器としては癖の強い盾をああも使いこなすか。流石だマシュ・キリエライト」

 

「ありがとうございます。クリスさんもセイバークラスの凄腕に感無量です」

 

 

 剣の勇者、槍の勇者もまた武器を振るっただけで直線上の敵が消滅する。

 各異世界で最高クラスの武力を保持する二人には数がほんの少しだけ多い魔物など物の数ではない。

 そしてついに――――――甘粕正彦が弓を構えた。

 

 

「敵の進行方向からおおよその位置は把握した――――――これこそは、星を穿つ一撃なり。我が矢は既に放たれた。『ロォォオオッズフロム……ゴォオオオオオオオオオオオッッッド!!!』」

 

 

 衛星軌道上から発射された神の名を冠する超質量兵器。音速の十倍もの速度で金属の棒を叩きつける宇宙兵器は人類の歴史の中でも既知最強の鉄槌であり、運動エネルギー弾(Kinetic energy penetrator)——————その究極系に他ならない。

 山一つ先に居るであろうボスへ放たれたソレは、大地を揺らし大気を震撼させ圧倒的破壊力が山を抉る。着弾に遅れ余波による暴風が村まで到達する。

 着弾音に耳をやれた王様に兵士たち――――――魔王がノリだした。

 

『うわー……前のご主人の悪ノリがくるぞー』

 

 

 べんぼうの忠告を聞いたマシュは何のことか分からなかったが、答えは直ぐに出た。

 

 

「必殺技と違い通常攻撃は連続が基本だろう。あーるぴーじーで、装備した武器による通常攻撃でえむぴーを消費するげーむがどこにある?」

 

 

 故に――――――

 

 

「神の杖の発射可能弾数は無限だ。……と言いたいが一発一発に魔力を消費する仕様のようだ。残念でならない」

 

「えーと……つまり後何発撃てるのですか?」

 

 

 マシュの素朴な疑問にニヤリと口角を上げた甘粕が答える。

 

 

「俺が気を失うまでだ」

 

「つまりはほぼ弾数無限なんですね。——————え」

 

 

 ボスの息の根を止めるべく連続で着弾する神の杖に、マシュは迷わず切り札を展開した。

 

 

「真名、開帳——————いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)!!」

 

 

 そびえたつは美しい理想の城。村と人々を護るために展開された対悪宝具。その強度は使用者の精神力に比例し、心が折れなければその城壁も決して崩れることはない。

 暴風と飛散物から完全に守り切ったマシュは、波の終わりと同時に発射をやめた甘粕を一瞥すると続いて宝具展開を止め一息ついた。

 波の戦いは無事村の被害なく終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 王様は消し飛んだ山があったであろうクレーターを見詰め――――――胃を押さえ兵士に支えられながら帰っていった。

 




皆さんお久しぶりです。
1つの作品を完結させた私は帰ってきました!

また亀最新でちょくちょく書いていくと思いますのでよろしくお願いします。


今回のミスリード:フィーロの種族を言明していない


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主人公がいない?マシュだって立派な主人公でしょ!?

 教会にある隠し部屋。

 召喚された四聖勇者の内、剣・槍・弓の盾を除く『三勇教』を信仰する者たち。

 教会を運営する上で欠かせない者たちが、勇者召喚が成された歴史的日から今日までのその輝かしい黄金時代の到来を祝福していた。そう――――――頭がおかしくなるほどに。

 狂信者の一人であるその男は涙した。今回召還された勇者の方々は素晴らしく、遠目からであるが初めてその御身を拝見した際、彼は膝を付き大の大人が大粒の涙を流しながら祈りを捧げた。

 

 

「あの方々こそ勇者。人類を繁栄へと導く救世主。直接拝見した槍の勇者様に、私は光を見た。あの光こそ……すべてをお救いする希望の輝き!!」

 

 

 ――――――注意※破壊の光です。

 

 狂信者の一人であるその男は叩き起こされた。メルロマルクの女王と兵士を引き連れ、手懐けた白き怪物に跨り駆けるその姿に、越えられないモノなど何もない可能性の踏破を見た。

 

 

「私こそ、弓の勇者様を見た刹那……頭が覚めました。私はまだ何も始まってすらいなかった……穏便派代表である私は、失うのを恐れていた。それではもう駄目なのだ。すべてを捧げなければ目的達成など出来やしない!そう……やるからには、やられる覚悟が必要だ!!」

 

 

 ――――――注意※ぱらいぞに目覚めました。

 

 狂信者の一人であるその男は覚醒した。あれこそが英雄。あれこそが光。あれこそが我々が目指すべき生き方。偶然にも犯罪者を追い掛け町の街道を駆けるその後ろ姿を目にした際、背中から伝わる熱量をその身に浴び……己を恥じた。

 

 

「剣の勇者様は私に向け背中で語ってくださった。生きるとは、光となり駆け上がること。だらだらと怠惰に生きてきた無為な時間は終わりを迎えた。この身すべては剣の勇者様のために。私もまた剣の勇者様の足跡へ続きたいのだ!」

 

 

 ――――――注意※光の亡者に覚醒しました。

 

 皆が皆、三勇者を褒め称える。

 伝説に語られた――――――伝説以上の偉人。

 魔性のカリスマにあてられた彼らを止めるのは不可能。

 唯一止められる可能性を秘めている”教皇”もまた、頭がパーになっていた。

 

 

「皆さん良い心がけですねぇ。私もまた剣の勇者様、槍の勇者様、弓の勇者様のお三方と同時にお会いする機会がありました」

 

「なんと羨ましい!!」

 

「ああ神よ!!これもまた試練なのですね!!?」

 

「あぁ……黄金の光、槍の勇者様ぁあああああああ!!」

 

 

 とっておきの話に過剰に反応する三人に微笑みを向ける。

 彼らとて羨ましいのだ。一人としか会ったことのない自分と、三人同時に問答を交わした教皇に嫉妬さえしている。

 

 

「ははは、落ち着きなさい。これは神託なのです。勇者様と言葉を交わした際頭の中に……光が差しました」 ――――――こいつさてはインテリぶってる馬鹿だな?

 

 そんなインテリ馬鹿が次に発した言葉によって三人は凍り付く。

 

 

「明日……聖戦を行います」

 

「「「!!!」」」

 

「剣の勇者様は雄々しく逞しく、槍の勇者様はすべてを屈服させ、弓の勇者様は破壊と再生を——————盾の悪魔がどう足掻こうと真の勇者の前には無力」

 

 

 三勇教が信仰する勇者とは、人々を救い、波から世界を救う勇者の事。

 

 

「故に……盾の悪魔を我々の手で浄化しなければならない。そもそも勇者様が何故盾の悪魔を見逃しているのか、その聡明なお考えを……光と共に神託を授かったのです」

 

 

 剣の勇者様は断言した——————信じるものは否定しない。だが、神の名のもと全てが許されると思うな。

 槍の勇者様は呟いた——————卿と同じく、神に仕えたシスターを知っているが……まあいい。

 弓の勇者様は宣言した——————好きにするがいい。やりたいようにやれ。

 

 

「なるほど……おっしゃる通りだ。だから私は神の代理ではなく、忠実なる一信徒として三勇教の矜持を貫かねばならない。ええそうです、私は私の意思でやりたいようにやる……これは、三勇者様が我々にくだされた試練なのです」

 

 

神は沈黙を是とする。ならば、三勇教の教えを十全に理解し実行してこそ真なる信徒。

 

 

「盾の悪魔はその容姿と庇護欲を駆り立てる仕草で人々を惑わしています。これだけなら、私も見逃したでしょう。盾の悪魔はまだ、悪魔になりきれていないと……そう思っていました」

 

「……悪魔の子」

 

「あの赤子は邪悪なり、滅ぼすべきだ」

 

「盾の悪魔が、悪魔を生み出した。これが、何度も可能なら……この国は堕ちる」

 

「ええそうです。早く対処しなければ手遅れになる。故の明日。どうせ、皆さんの事です。盾の悪魔を浄化するための準備をしていたのでしょう?」

 

 

 そう、此処にいる四人は三つの光に焼かれた狂人なり。

 

 

「明日、盾の悪魔に依頼を要請します。心優しい彼女の事です。潔く引き受けてくれるでしょう。伝説の勇者が残した聖遺物がある遺跡の探索……決着はそこで付けます」

 

 

 四人は席を立ち、目的のために歩みだした。

 振り向くことなく、互いの背中を支える仲間として——————聖戦、万歳!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教会から直々の依頼を受けたマシュは、茄子を頬張るべんぼうちゃんを背負い、遺跡に訪れていた。

 

 

「ここが伝説と噂される伝説の勇者が残した伝説の聖遺物があると、伝説されている伝説の洞窟なのですね」

 

「伝説って?」

 

 ——————ああ!

 

 

 魔物を見かけることなく仕掛けられた罠全ての直撃を喰らいながら最深部へとたどり着く。

 

 

「魔物もいないし巧妙に設置されたとはいえ罠は全部踏み抜くし盾として恥ずかしくないんですかね!!?あ、効かないんだから中央突破がいいに決まってる。でもね?後ろに仲間がいたら絶対に罠避けてたよね??つまりこれは君の怠慢が生んだ失敗!盾とは思えない敗北!ノーダメなら構わないって君はそれでいいけど君が守るべき者は果たして無事かな!?」

 

「?……先輩とはいつもこうやって乗り越えてきましたよ?」

 

「はぁ~……あそ、相変わらず弄りがえのないご主人様だね」

 

 

 最深部にたどり着いたべんぼうちゃんは辺りを見渡し、素直に疑問を口にする。

 

 

「伝説って言ってた割には何もないね。どーなってんの?」

 

「おかしいです……事前情報によれば此処に伝説の勇者が残した伝説の聖遺物があると伝説で語られている伝説があると……」

 

「伝説って?」

 

 ——————ああ!

 

「そうなると教会に騙された可能性が高いね。まったく!悪魔を騙す聖職者とか恥ずかしくないのか!?普通は逆でしょ!!」

 

「すみませんべんぼうちゃん……私が一人で依頼を取りに行ったばかりに……」

 

「んもう!気にしちゃだめだよご主人様!あいつらの目的が何であれ——————マスター上!!」

 

「ッ!!シールドエフェクト、発揮します!」

 

 

 べんぼうの剣幕に押され、咄嗟に直上に盾を展開と同時に洞窟を蒸発させる熱量反応を感知。

 

 

「まずいまずいまずいまずいよおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

 

「はああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 視界が、光で満ちた。

 巨大な光の柱。

 着弾と同時に、マシュとべんぼうを除く世界が消えた。

 

 

「カーッ強力な聖光ビンビン感じるよォ!!肌が焼けるゥ!!」

 

「くっ……!なんて、出力!宝具展開の隙がッ」

 

 

 高出力の熱量が一寸の隙間なく降り注ぎ続ける。

 マシュは戦闘経験が、絶望的状況を予感させる。

 

 

「ま、まずいですべんぼうちゃん。もしこのまま降り注げば——————」

 

「僕たちが死ぬまで止まないだろうね。いやー完璧に嵌められたね。この場に来た時点で僕たちの敗北は決まってたんだね!!アハハハハッハ!!——————死んじゃうじゃん!?」

 

「ええ!?今更ですか!?」

 

「僕の魔力貸してあげるから持ちこたえてね。元々EXクラスの魔力がCくらいしかないけど無いよりましでしょ」

 

「助かりますべんぼうちゃん!これなら持ちます。敵の魔力は無限じゃない。その時まで耐え切るだけです!」

 

「おいおいそんな受けの姿勢でだぁいじょうぶ?ここは向こうの狩場。ならやっぱり死ぬまで止まらないかもしれない。でも止まるかもしれない。いつ終わるかわからない攻撃にさらされて助けも来ない。あれれ~?これは素直に命乞いした方がいいんじゃないかな!!無様に!滑稽に!頭を垂れて助けてくださ~いって叫んでみたらいいんだよ。そうすれば……助かるかもしれない」

 

 

 悪魔を悪魔たらしめる言葉の誘惑。楽な方へ、無意識に尊厳を削ぎ堕とす。

 

 

「べんぼうちゃん……」

 

 

 マシュは死線を一瞬合わせると、微笑んだ。そして盾越しに、光の先にいるであろう敵を睨みつける。

 

 

「私は最後まで諦めません。私達なら、この危機を乗り越えられます!絶対に、勝つんです!!」

 

「あぁ……ほんっと、眩しいご主人様だ」

 

 

 それは悪魔の気紛れ。自分も死んでは本末転倒。だから、魔力を流し込む。

 ボーダーラインが崩れないギリギリの魔力補給。

 マシュが諦めたり、力を抜けば突破されてしまう微々たる支援。

 それでも、人の本質を見抜く悪魔は確信している——————マシュは何があろうと諦めない。

 

 

「ほんっと、つまんない人だ。だから——————」

 

 

 ——————”だから、堕としたい。その時を、永遠と楽しみにしているよ”

 

 

「はあああッ!!先輩ッ私に力を!!」

 

 

 数十分に及ぶ光は遂に、終わりを迎える。

 視界が正常化し辺りを確認する。

 洞窟は消えていた。焦土どころではない。マシュの盾面積を除き穴となった惨状。

 

 

「ぐぅ!」

 

 

 降り注ぐ『裁き』を盾の悪魔が消滅していないと想定した剣の勇者の狂信者は、魔法が切れる刹那に討つべき悪魔に向け飛んでいた。

 多少服と肉が溶けるが、些細な事。

 攻撃が止んだ僅かな深呼吸の間隙にドロップキックをかました。

 

 

「落ちろ悪魔。貴様が生きる道理はない」

 

「貴方方は!!?」

 

 

 言葉を最後まで告げることなく穴へ落ちていくマシュ。

 だが、まだだ。

 まだ悪魔は生きている。

 高等集団合成儀式魔法『裁き』を受け、光さえ閉ざされた闇の穴へ落ちようと切り抜ける。

 そう、悪魔を討伐するにはまだまだ足りない。

 

 

「油を流し込め、すべてが空になったら火を放て。第二射魔力充填はあとどれ程で完了しますか教皇様?」

 

「心配には及びません。先程の試し打ちで使い方が分かりました。魔力の効率のいい使い方も威力の底上げも理解しました。三分もあれば『裁き』を一時間行使できます。複製品とはいえ過去のロストテクノロジー。じゃじゃ馬だ」

 

「ふ、そのじゃじゃ馬を一回でモノにするとは、流石です教皇様」

 

「ハハハ、これは聖戦なのですよ?ならば、人員も資材も、命すべてで挑まなければ」

 

 

 教皇は寿命を消費して勇者武器の複製品を十全以上に使いこなす。

 

 

「この聖戦が終われば私は死ぬでしょう。ええ、この命を引き換えに悪魔を滅ぼしますとも。故に、あとは頼みました。次の教皇は、貴方だ」

 

「……教皇様!?」

 

「これまで……私は愚か者でした。俗物が神の名の下と私利私欲を謳歌する屑が私です。三勇教の教皇として正しいと思っていた。所詮は自己欺瞞の詐欺師だ。私は、真の勇者様との出会いで目が覚めました。生まれ変わったと言ってもいい……故に恥ずかしい。過去を無かった事にはできない。振り返った道を否定してはならない。どの行いもすべて私が私の意志で実行した私の罪。なら、最後だけは正しく胸を張りたいのです」

 

 

 己は塵屑だ。故に、最後くらいは正しい光でありたい。

 

 

「汝、光あれ――――――勇者(実物)を見なければ信じなかった愚かな男の最期に……正しき光を」

 

 

 掲げられた勇者武器が七色に輝き始めた。

 神が作りたもうた奇跡に涙を流し祈りを捧げる信者たち。

 供物とされた魔力と命――――――意思力が勇者武器の位を踏破する。

 

 

「……奇跡だ」

 

「おお神よ」

 

「勇者様は我々を見捨てなかった!!」

 

 

 数多の祈りと奇跡を捧げ、命すら吸収された勇者武器はただの複製品にあらず。

 注がれた念と血を吸い上げてきた殺しの武器は、一人の男の意志の元――――――願望を叶える聖遺物(アーネンエルベ)と化す。

 

 

「さあ皆さん、盾の悪魔に『裁き』の鉄槌を」

 

 

 予定チャージを大幅に短縮。三分を三十秒に高等集団合成儀式魔法『裁き』が上書きされる。

 

 

創造(ブリアー)――――――愚か者よ、光あれ。(ゲヘナ・ヴルガータ)三勇教、万歳(ブレイヴ・コンプリート)ッ」

 

 

 世界が変換する。

 マシュが落ちたアビスゲートの影に無数の口が出現する。嘘を吐き、唾を吐き、この世のモノとは思えない罵倒を吐く、獲物を捕食する悪魔の口。

 奴らは獲物を咥えて離さない。

 逃れようとも、無数の口が邪魔をする。

 そこは地獄なり、愚か者が定めた口だけの詐欺師なり。

 そいつらが発する言葉一つ一つが魂を縛り上げる言霊なり。

 そして愚か者は、光となる。

 

 

【ピギャアアアアアアアアアアアアア!!!!???】

 

 

 闇が光となり、悪魔は自分もろとも浄化の柱となりて対象を消滅させる。

 これこそが、愚者が天に捧げた祈りなり。

 汚い叫びとともに、天に捧げる祈りが昇っていく。

 連鎖していく悪魔の叫びと浄化の柱。

 いつしかアビスゲートを塞ぎ天へと延ばす光は、消滅することなく柱として存在する。 

 

 

「この……力は?」

 

 

 『裁き』を超えた『天罰』。

 人々の祈りが神の怒りとして顕現する。

 神が人に下す天罰は絶対。

 躱せず、防げず、絶対の一撃。

 

 

「さあ?使えるのですから使っていきましょう」

 

「ははは……適応能力は教皇様が一番ですな。この光の柱はいつ消えるので?」

 

「消え続けてますよ。その後もまた生まれ続けているだけで、この光の下では今も愚者の祈り(叫び)が続いている」

 

 

 この力の持続時間は三十分強。その分、威力も性質も跳ね上がっている。この三十分で魔力を提供してくれている信者の大半が死ぬだろう。その魂もまた養分として生き続ける。

 

 

「待っていてください皆さん。最後には私も行きますので」

 

 

 悪魔を完璧にとらえたこの状況下で、周囲を警戒していたのは僅か四人の狂信者。

 目に見えない。まるで誰かが通ったかのような土埃と数ミリ陥没した土。

 教皇は創造を維持したまま後ろへ飛んだ。

 

 

「勘のいい……あなた達三勇教は死ねばいいんです。私たちの村を友達を家族をッツ!………………槍の勇者様がその命をご所望です。死んでください」

 

 

 切り飛ばされた左肘の止血を、狂信者に任せ亜人の小娘を警戒する。

 

 

「(解せない……私にはわかる。この肉体はそう簡単に傷つけることはできない。なら、この傷はなんだ?まさか……同じというのか?この亜人もまた神に選ばれたと?)思い出しました。あなたは確か槍の勇者様の従者であるラフタリア……でしたかな?あなたの境遇には同情しかありません。波により村と家族を失い」

 

 

 ―――ガキンッ!―――振り下ろされた刃を教皇は苦も無く受け止める。

 

 

「どの口でほざいてるんですか?塵が屑が糞が……殺す殺す殺す殺す三勇教は殺す。絶対に殺す。なんて汚いんでしょうか?可哀そうです。生きているだけで害悪だなんてあんまりです!!……だから死んでしまえ!!?」

 

 

 純化された殺意が、教皇の信仰を押し返す。

 鍔迫り合いの両者を助けるべく狂信者三人がラフタリアに飛び掛かる。

 

 

「させるか!」

 

「やっておしまいフィーロ!!」

 

「イヤーッ!!」

 

「「「ぐわぁ!!?」」」

 

 

 勇者により覚醒した狂信者がこの程度で敗北はあり得ない。態勢を立て直すと新たな敵を全身全霊で排除すべくスイッチを切り替える。

 

 

「神父とは思えん動きだ。私もまた三勇教には思うところがある身。投降はすすめるが、あまり選んでくれるな」

 

 

 "女騎士"エクレール=セーアエット。三勇教が招いた不幸を彼女は忘れない。

 

 

「ガンギマリすぎでしょあなた達。女子はどんな時でも優雅で可憐に戦うものよ。行くわよフィーロ!!アマカス様から付加された廃神(タタリ)の力を見せてやるのよ!!」

 

 

 "自称王位継承権第一位"マルティ=S=メルロマルク。化学反応の結果、蝶が飛んでどっかの宇宙がパンツになった。

 

 

「うん!フィーロごしゅじんさまのためにがんばる!——————GYEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAaaaaaa!!!」

 

 

 "冠羽の覇者(Aksara)"フィーロ。白と桜色を基調としたフィロリアル・クイーンのアリア種。(Aksara)の原語を刻んだ純化する獣。

 

 

「これぞ最終試練」

 

「盾の悪魔に魅入られた勇者の眷属を撃ち滅ぼす」

 

「勝つのは、俺だ」

 

 

 ここに——————主人公たちが全く戦わない。ヒロインやライバルポジ、普段活躍しないやつが頑張る編~が始まる!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大変遅くなりました。
ノルマであった王様の胃が無事であることが遺憾の意。

一番最初のアンケートで保護者参戦√が確定しています。
この√は勇者がピンチの時に保護者が颯爽と登場というのを考えているのですが……そんな敵盾勇でいます?

それと筆が乗った理由なのですが、漫画16巻で作者の性癖にぶっ刺さった狩猟具の勇者様のおかげと言っておきます。

全く関係ないですが、リゼロではラム派
アズールレーンではシェフィールド目当てで始めて真っ先にlevel120にしました。
つまり、作者のもう一つの性癖は、目隠れジト目クール系メイドってことに!!?

アルトリア・キャスター当たったけどスキルマの材料足りない涙


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仲良し五人組。女子会は続くよどこまでも

黒白のアヴェスターが完結したので初投稿です。






 これまでのあらすじ~だいじぇすとでおうくりします~

 

 

 人理継続保障機関フィニス・カルデアで『四聖武器書』なるなにやら古そうなタイトル本を読んでしまったマシュはナゾの召喚魔法により異世界へと転移してしまう。

 そこで出会った摩訶不思議な力を奮う三人の男。

 剣の勇者クリストファー・ヴァルゼライド。

 槍の勇者ラインハルト・ハイドリヒ。

 弓の勇者甘粕正彦。

 

 四人は様々な無理難題を踏破!

 マシュはべんぼうちゃんや協力者と共に大冒険!!

 アマカスは姫様を改心させ、敵という敵を殴っては仲間にしていき。

 クリストファーは女騎士を救い、腐った軍組織を正しく祖国を守る軍隊へと変革させた。

 ラインハルトは奴隷の少女を爪牙へかえ、国の中枢を掌握し国を豊かにした。

 

 三人の規格外の力に周囲と王様の胃が荒れていった……

 

 そして月日が流れ、悪魔な三勇者の不在時にマシュ・キリエライトは三勇教の罠に嵌められ絶体絶命の窮地に立たされていた!!

 教皇が仕組んだ依頼書は、伝説の勇者が残した伝説の聖遺物があると伝説で語られている伝説がある伝説の洞窟の探索依頼。

 

「伝説って?」

 

 

 

 ――――――ああ!

 

 

 最深部までたどり着いたマシュの目の前にはもぬけの殻とかした謎の空間!

 突如として降り注ぐ高等集団合成儀式魔法『裁き』!

 『裁き』による光の柱を防ぎ切ったマシュを蹴り落とす光に侵された者たち!

 第二第三の策略が盾の悪魔打ち滅ぼすべしと襲い掛かる!

 教皇が掲げる勇者武器の複製品は、数多の信者の血と魂を生け贄に聖遺物(アーネンエルベ)と化し遂に創造階位にまで至った。

 

 

創造(ブリアー)――――――愚か者よ、光あれ。(ゲヘナ・ヴルガータ)三勇教、万歳(ブレイヴ・コンプリート)ッ」

 

 

 渇望―――己は塵屑だ。故に、最後くらいは正しい光でありたい。

 

 

 教皇は勇者と出会う前の自分を屑な愚か者と断じた。

 何も信じず、神の代行者と嘯き、権力に汚れた哀れな男。それが教皇。

 

 

「汝、光あれ――――――勇者(実物)を見なければ信じなかった愚かな男の最期に……正しき光を」

 

 

 故にこれは神の奇跡では非ず。

 勇者と出会う前は、口だけはよく回る愚か者だった己をトレースし、嘘を吐き、唾を吐き、この世のモノとは思えない罵倒を吐く、獲物を捕食する無数にある悪魔の口。

 

”優しい微笑みの下は捕食者なり。

勇者と出会う以前の世界は地獄そのものであり、己は口だけの詐欺師なり。

その肩書と発する言葉一つ一つが信者や異教徒を縛り上げる言霊なり。

故に――――――光あれ。光へ浄化される天罰こそ相応しい”

 

 

 以上の詠唱をもって、教皇は人を超えた。

 地獄から這い出る悪魔の口は対象を魂から縛り上げる。

 そして、光を知った悪魔は最後だけでも正しい光になるべく自らを天罰とし、礎となる浄化の柱となり、対象を救済(消滅)する。

 

 だからこそ、盾の悪魔に加担する愚か者を救済しなければならない。

 光に汚染された三人の狂信者と教皇の前に立ちはだかるは勇者の眷属。

 

 ”爪牙”ラフタリア

 ”女騎士”エクレール=セーアエット

 ”自称王位継承権第一位"マルティ=S=メルロマルク

 ”冠羽の覇者(Aksara)”フィーロ

 

 

 どいつもこいつも正しい歴史を知るものなら誰だこいつ?と首をかしげるくらい豹変してしまった女たち。

 勇者不在に派遣された彼女たちは、自らの力で事件解決を行った。

 そしてこの三勇教が発生させた盾の勇者暗殺事件は、勇者の手を借りることなく終息した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも事の発端は何か?

 争いが発生するには原因と理由がある。

 根本的な原初の嫌悪。

 相容れぬと思考停止。

 理由はいくつも思いつく。

 

 一つ、三勇教が盾の勇者を悪魔とし、剣、槍、弓の勇者だけを信仰しているから。

 一つ、三人の益荒男勇者があまりにも規格外過ぎたから。

 一つ、教会関係者がそのせいで、頭が可笑しくなってしまったから。

 一つ、盾の勇者であるマシュがあまりにも天使であったから。

 

 天使であるはずの盾の勇者マシュが襲撃された最大の原因――――――それは。

 

 

「なすびマァマァ~~~~もっとしっかり赤ん坊守らなきゃダメでしょ!!まったくこれだから試験管ベビーは。もっと赤ちゃんを大切にしないと罰が当たるんだぜ!?あ、お母さんのお腹の中で愛も知らず試験管で育ったマスターに、赤ん坊を大切にするのは無理かな?だって自分が育てられてないんだもん!所詮は実験体の使い捨ての駒。管理された白いお部屋に愛はあったのかな?あったとしても、授けられたとしても、その愛は憐憫。哀れで何も知らない可哀そうなかわいい女の子に同情した下心丸出しの爛れた欲望の自己満足でしかないんだよ!!」

 

 

  この赤子、キレッキレである。

 

 

 事件が終息して一息入れるために女子会に招待されたマシュ・キリエライトはべんぼうちゃんに馬鹿にされながらも席に着いた。

 

 

「べんぼうちゃん。ラフタリアさんも居るのですから、あまり口が悪いとお祓いされますよ」

 

「……………………………………槍の勇者様が許可したのです。私からのコメントはありません!」

 

「あら~この子ったら可愛いわね。正に忠犬ね。この場合は好きな男の言うことを素直に聞く恋する乙女がいいかしら?」

 

「フィーロもご主人様だーいすき~!!」

 

「フィーロ殿は見た目に反してこの中で一番厄介だからな……侮れん」

 

 

 女子会は続くよどこまでも。

 べんぼうちゃんをあやしながら暖かなパンを美味しそうに食べるマシュ。

 見た目は大人びていても、まだまだ精神が幼く、槍の勇者様の真似をしてブラックコーヒーの苦味に苦戦するラフタリア。

 周りを巻き込みながら弓の勇者様の良さを語りまくるマルティ。

 そんなマルティに(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪と頷きながら頬っぺた一杯にご飯をほおばるフィーロ。

 大人の余裕か、適度に頷きながら優雅に紅茶を啜るエクレール。

 以外にバランスの取れた五人は、交流を深めていく。

 

 

「マシュ殿は流石盾の勇者であられる。あれ程の集中砲火でほぼ無傷とは恐れ入る。私も騎士として、あの方を支えていきたいのだが……」

 

「エクレールさんは十分頑張っています。あの苛烈極まるクリストファーさん相手にあそこまで食らい付いてるんですから!」

 

「私たちは勇者様にお仕えすればいいのよ。共に頑張り共に駆け上がる……それが理想なんだそーは行かないのが現実よ。荒れ狂う道を、あの方が踏破し、整備された安全な道を歩むしか出来ない不甲斐ない王女よ」

 

「なにさらっと王女と言ってるんですか。王位継承権第二位様?」

 

「ラフタリアと言ったかしら?誰に口を聞いてるのか理解してます?処刑しますよ?」(^ω^#)ビキビキ

 

「えーできるんですかー?今の貴女にそんな権限があるとは思えません王位継承権第二位様?」

 

「その名称やめなさいよ!妹から絶対に取り返すんだから!」

 

「取り返すもなにも今まで第一位になったことがあるんですか王位継承権第二位様?ねえ王位継承権第二位様?教えてください。過去に一度でもあったんですか王位継承権第二位様?」

 

「(ꐦ°᷄д°᷅)」

 

「まずいですよエクレールさん!このままでは楽しいお茶会が台無しになってしまいます!」

 

「任せておけ、んん!……そういえば、戦いのときラフタリアのあの力は凄かったな。フィーロは、規格外として人と言う枠組みなら確実に上位クラスだ」

 

「はいはい!私も気になります!」

 

 

 マシュに話を振られたラフタリアは少し考える仕草をし、口を開いた。

 

 

「あれは、私が凄いんじゃありません。この小さな体では受け止めきれない黄金の輝きを、知らない人にも分けてあげたい。教えてあげたい。……槍の勇者様を知っていただく、只それだけで人は救われるのです」

 

 

 ――――――黄金郷は世界を照らす(エル・ドラード)獣の爪牙(ビースト)

 

 

 形成と創造の中間の技。未熟なラフタリアでは真創造に至れない。

 だが、こと戦闘に関してこれ程有用な能力もない

 その身は黄金の獣により救われた一匹の爪牙。

 ラインハルトに与えられた奇跡は、光となり対象を焼き払う。

 振るわれる魔法剣から放出されるレーザーは、貫通力、攻撃範囲ともに優秀。

 教皇は救いの光を前に抗うすべはなく、最後は正しい救いにより光になった。

 

 

「まさかあれだけ大物ぶっていた教皇がラフタリアの一撃で死ぬとは思わないでしょ。その後の幹部みたいな強そうな感じの三人もほぼフィーロが一撃だし」

 

「文字通り私とマルティ様は役立たずだな」

 

「そんなことありません!来ていただいただけで私は助けられました。皆さん本当にありがとうございました」

 

「えへへ~褒められちゃった!」

 

 

 女子会は続くよどこまでも。

 

 

 

 

 

 厄災まで残り一時間。

 女子会から五人は交流を深め、勇者も今日に合わせ戦いの準備を済ませていた。

 

 

「ボスは我々勇者が担当する。散らばっている敵はエクレール、軍の指揮を任せる」

 

「ハッ!お任せください!戦場に村が隣接していれば防衛にあたります」

 

「今回はラフタリア、メルティ、フィーロもエクレールの指揮下に入ってもらう。アマカスも構わないな?」

 

「異論はない。敵のボスを叩けば終わるのだ。我々で即効終わらせればそれだけ被害は無くなる」

 

「アマカスさんには弓を控えてもらえるよう私も頑張ります!べんぼうちゃんも頑張りましょう!」

 

「え?置いていくって選択肢はないの?」

 

 

 00:05

 

 

 後5分。

 リラックスしている勇者。緊張気味の軍は呼吸を整える。

 そして、

 

 

 00:00

 

 

 世界中に響くガラスを割る様な大きな音が木霊する。

 次の瞬間、フッと景色が一瞬にして変わった。

 空を見るとワインレッドのような色で亀裂が走っている。

 

 

「「「行くぞ」」」

 

「はい!」

 

 

 ソニックブームを発生させる益荒男三人の背中に必死に食らいつくマシュ。

 幽霊船のような巨大ガレオン船が空中を漂い、前進しているのを視界にとらえる。

 みんなの力があれば勝てる。

 そう信じているマシュは、次の瞬間驚愕に身を震わせた。

 

 

「ッツ!!止まれ!!」

 

 

 彼らの実力があれば一撃で滅ぼせるボスを前に四人は急停止する。

 その刹那、()()()()()巨大幽霊船が周りに余波もそよ風の影響を与えることなく消し飛ばされた。

 その人物の、噴き上がる桁外れの闘気が、重力に逆らい男の髪を波うたせた。 荒々しい顔つきに反し、穏やかさすら感じさせる緋色の瞳に稚気が浮かぶ。

 両者の瞳が互いを視界に収める。彼らが出会い、互いに認識した時こそ戦いの始まりとなる。

 故に必然的に凄まじい破滅の気配をぶち撒ける。

 生きているなら、こちらを見るなら、すなわち戦闘開始の鐘である。己の前に立つ以上、誰であろうと最強への道を阻む敵。

殺す以外、どんな処方があるという。

いま高らかに、誓いの絶唱を轟かせた。我とおまえはここにいると、天下に謳いあげるがごとく―――

 

 

「俺のほうが強い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




作者も忘れていたなら読者も忘れているはず√保護者参戦


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保護者参戦√ そうか、俺のほうが強い

独自設定・解釈などもあるけど気にしちゃだめだよ





 四人の勇者と同じく、異なる世界からの降臨者。

 悪側の首魁である七大魔王の一柱。暴窮飛蝗という渾名を有する、魔将達の頂点に君臨する絶対悪。

 二メートルを超える体躯と桁外れの筋肉を持つ、灼炎のごとき蓬髪の男性。

 男の名はバフラヴァーン。

 不義者(ドルグワント)の頂点たる七柱のうち、第三位に据えられた魔王である。

 

 

「俺のほうが強い」

 

 

 魔王が地に降り立つ。

 男を中心にして、周囲の草木が瞬く内に燃えていった。先の幽霊船のボスを倒すのに巻き込まず攻撃しておきながら、今は塵も残さず消し去っている。徹底的に容赦なく、放散する鬼気の波動で根ごと滅ぼし尽している。そこに慈悲や手心といったものは寸毫たりとも見当たらず、この世に己以外の生命など認めぬと、狂気に等しい自負だけが猛っていた。

 俺を見たな。俺を知ったな。同じ空気を吸い地に立ったな。

 であれば敵だ。いざどちらが強いか証明してやる。逃がさないし降伏も聞かん。生き残りたければ俺と戦い勝ってみろ。

 物言わぬ草木にすら全力で叩き付け、完膚なきまでに踏みにじる最強への執念。男の求道は森羅万象を滅殺し、最後の一人として頂点に立つまで終わらない。

 故に第三位魔王バフラヴァーンを目前に、殺意と敵意を向ける行いは、男を喜ばすスパイス。

 

 

「いいぞ、おまえらは素晴らしい」

 

 

 戦いのゴングが鳴ったのだと理解したマシュは、シールダークラスとして恥ずかしくない反応速度で三人の前に立ち、最強を証明する拳を正面から受け止め後方へ吹き飛ばされた。

 

 

「ッツ!!」

 

 

 円卓の盾がどれだけ頑丈でも、生身であるマシュは無事ではすまない。

 マシュが稼いだコンマ数秒を三人は攻撃に転じる。

 

 

「神鳴る裁きよ、降れい雷ィッ!!」

 

 

 甘粕正彦が繰り出した創形。数十万の衛星によるロッズ・フロム・ゴッド。本来黄錦龍の万仙陣によって生み出された数億のタタリに対抗するための絨毯爆撃を、魔王バフラヴァーンへ叩きつける。

 

 

極光斬撃(ケラウノス)!!」

 

 

 クリストファー・ヴァルゼライドによる邪悪を滅ぼす死の光。数十万の超密度ロッズ・フロム・ゴッドの中を駆け、光刃と化した刀剣は概念破壊の性質を激烈に帯びている。放つ刃はあらゆるものを両断して存在意義ごと踏み躙る。

 

 

「聖槍……聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)

 

 

 ラインハルト・ハイドリッヒが持つ聖槍真名解放による爆発的な出力上昇。

 一撃が核爆発を超えるDies iraeの大隊長クラスさえ殺せる威力を、甘粕正彦のロッズ・フロム・ゴッドを浴びながら連撃を繰り出す。

 

 並みの相手……どころか、そこいらのラスボスや主人公級を呼んでも来てくれない三人を相手に戦っている男は、いつくしみ深き眼差しを向け――――――全霊で応える。

 

 

「「「————―ッツ!!??」」」

 

 

 それぞれへ放たれた拳は、まずお前からだとヴァルゼライドへ振り下ろされるも回避され、その肌に傷を刻む。最強の我力使いであるバフラヴァーンの我力の鎧を突破する放射光極限収束・因果律崩壊能力は恐ろしいと言える。

 この脳筋の極みにいる男が使う『我力』とは、我の強さで荒唐無稽な現象を無理矢理に実現させる特殊能力の事。

 彼の世界における不義者(ドルグワント)の中でも高位の魔将(ダエーワ)は物理法則を超越する程の意志の力を持っており、己の我で持って世界を思い通りに変えてしまう。生物としての範疇を超え、秩序を乱す不義の力。

 この男の『我力』を突破し肉体にダメージを与えるとはそれ程凄い事なのだ。

 互いにカバーし合うラインハルトとヴァルゼライド。

 ロッズ・フロム・ゴッドの衝撃で動きが鈍るバフラヴァーンに聖槍の連撃が炸裂する。

 空間を破裂させる音を轟かせる聖槍。

 横なぎの風圧で町が消し飛ぶ一撃はバフラヴァーンの肉体を破壊する。

 

 

「なんだ……違うぞ」

 

 

 そんな圧倒的不利な状況にいる男は、あまりの矛盾に困惑する。この違和感はバフラヴァーンの戒律にも抵触する恐れがある。だが、彼にとって当たり前のこと故に気付くのが遅れる。

 

 

「すみません!マシュ・キリエライト再戦します!」 

 

 

 バフラヴァーンの拳を盾ごしとはいえ受け止めて軽傷で済んでいる違和感。

 相手の攻撃をくらう度に、己が攻撃をする度に、無限に成長していく男は、幾ばくかの回避できる攻撃で致命傷を負う反応の遅れに、ついに肉体の違和感の正体に気付く。

 

 

「ははは、懐かしいな。何故かは分からんが戻ったか」

 

 

 男の肉体が、千八百年前近くまで基礎レベルが戻っている。

 正規な手段で召喚された勇者と違い、波の亀裂を経由した異世界移動は不手際(エラー)を引き起こした。

 強さのレベルを引き継いで召喚された勇者。

 新たにこの世界に移動したことにより、強さが初期状態に戻されたバフラヴァーン。

 故に本来、単純な物理的な攻撃力、つまり殴っただけで相手を原子レベルにまで分解し、恒星級を粉砕する拳は星すら砕けずにいる。

 耐久性も、表面重力が人類が居住可能な星の数千億倍という環境下でも耐え、ブラックホールすら踏み砕く全力の突撃を受けても原型を保つ肉体が、星すら砕けない核爆発級の攻撃で破壊される。

 ああだが――――――それで?

 

 

「わはははははは!!面白い面白い面白いぞ!!楽しい趣向だぁ!!もっと楽しませるんだお前の務めは他にない死ぬな死ねェ!!!」

 

 

 支離滅裂だが本人の中で筋が通っている祈りの奔流。

 

 

「武器作りが得意か。弱体化したとはいえ俺の肉体を金属の塊で傷をつけるとはな。だが、それだけか?他に作れるなら出し惜しみせずに出しきれ!」

 

 

 回避すらできなかった神の杖の質量を五指で掴み握り潰す。 

 

 

「いやはや参ったな。地球の兵器では殺しきれんか。終段は使えず、急段の協力強制は条件が達成できんか」

 

 

 甘粕を天井知らずの強さへと至らしめるには、甘粕の破壊行為やその二次被害を受けながらも、諦めず希望を信じ、甘粕という絶望に立ち向かうという行為が必要。その誇るべき行動をとっている人々の全てが協力強制の対象者となってしまい、敵である甘粕に力を貸すことに繋がってしまうということを意味している。

 現状人類の勇者として世界を守るアマカスに、敵対する人類は存在しない。魔物では協力できず、バフラヴァーンは論外だろう。

 

 当初、衛星軌道上から音速の十倍もの速度で金属の棒を叩きつけるロッズ・フロム・ゴッドに対応できず、表面上は動きが鈍るだけに見えるが、ロッズ・フロム・ゴッドの一発は中身を衝撃でグチャグチャニにされている。毎秒数十万の衛星に蹂躙されていたバフラヴァーン。そんな中での英雄と黄金と戦いは至高の喜び。

 

 

「破壊力とも違う。切断とも違う。理屈はさっぱりだが、何かしらの概念を崩壊させているな。これ程殺しに特化させた力もあるまい。すべてを殺しに捧げたのか」

 

「否定はせんよ。俺は殺す事しか能がない。どれだけ正義を掲げ、守りたいものを守ろうと、殺しが俺の本質だ。故にだ邪悪なる者よ――――――滅びろ」

 

「そうか、ぶち壊してやる!!」

 

 

 交差する拳と剣。腕を縦に割られたバフラヴァーンは、衝撃でヴァルゼライドを弾き飛ばした。

 拳を強く握りしめ、負傷を癒すのではなく、筋肉の収縮で強引に傷口を塞いでから含み笑い、聖槍を振るうラインハルトを指摘する。

 

 

「力を抑制するタイプは初めてだ。何を我慢している?俺のために曝け出せ。俺が殺そうとしているのに躊躇するな。お前の過去も今もこれからも、俺のためだけに在ると知れ!!」

 

 

 黒白のアヴェスターの世界で自分を磨く者はいても、自分から力を下げる者は存在しない。

 生き残るのに、勝つために付けた力を抑制する必要性がない。抑制する余裕も発想もない。

 持てる力を全力で使う世界。人間賛歌の世界。戦う事が当たり前な世界。

 

 

「卿のような生物には理解も共感もされんだろう。…………飽いていれば良い、飢えていれば良いのだ。生きる場所の何を飲み、何を喰らおうと足りぬ。忠告だ。だがそれでよしと、そう思えぬ生物は、その時点で自壊するしかない」

 

「そうか、よかったな。しかし俺のほうが強い」

 

 

 正義の魔王、怒りの英雄、黄金の獣―――共に敵が強ければ強いほど覚醒し続ける者同士、発生する相乗効果は両者の激突を果てしない暴凶の宴に変えていく。

 消耗という概念が存在しない永久機関こそバフラヴァーン。

 

 

 戒律『殲くし滅ぼす無尽の暴窮(ハザフ・ルマ)』 

 出会った者とは誰であろうと全力で戦わねばならない代わりに、体力・持久力の消耗しない永久機関になる。

 己こそが最強。それを証明するための戒律。消耗がないため死の寸前まで全力で戦える覚醒と成長の化け物。

 

 

 

 

 

 つけ入る隙間はないか模索するマシュの盾が青白く輝きだす。

 出現するは召喚陣。

 "あの怪物をどうにかしなければならない"そんな思いに応え、マシュの盾が別の世界に召喚された事象をもとに、勇者を召喚の触媒としてその世界の人を召喚しようとしていた。

 本来なら、不可能な所業。召喚できたとしても、本人ではなく一部の側面を持つサーヴァントが召喚される。その機能を、この世界の神かよく分からない何かが円卓の盾へ力を注ぎこむ。

 今回だけのイレギュラー。

 召喚陣を起動させた『何かが』格勇者の世界において、勇者を止められる実力を持つ者を求めた。

 規格外の勇者でも勝てるか怪しい敵を前に、規格外の勇者を止めれる実力者がいれば可能性が生まれる。

 召喚陣の立体サークルが高速で回転し、輝きが増す。

 

 

「この悪寒は!?べんぼうちゃん来ます!!」

 

 

 其は冥府の底から現れた闇の冥王星(ハデス)

 死神の鎌を振う最悪最凶の人造惑星(プラネテス)

 絶叫する奈落の使徒。

 あらゆる勝者を呪いながら邪悪を氾濫させていく星を滅ぼす者(スフィアレイザー)が召喚された。

 

 

「英雄め、バケモノ共め。勝手にやってろもうたくさんだ。好きなだけやってりゃ良いだろ、俺らの知らない何処かでよ」

 

 

 ――――――ゼファー・コールレインの反粒子が、バフラヴァーンを飲み込んだ。

 

 

 時よ止まれ――――――おまえは美しい。

 この言葉はまさしく愛の証明。永遠に女神へ捧げた一人の男の鎮魂歌に他ならない。

 二人目は覇道の神。

 異なる世界を侵食しないよう完全では召喚されなかった永遠の刹那。

 創造以上流出以下の超越する人。

 

 

「久しぶりだなラインハルト。人として凡人としてどうだった?」

 

「ふ、存外悪くなかったぞ」

 

「そうかよ……よかったな」

 

 

 ――――――藤井蓮のギロチンにより、バフラヴァーンを処刑執行する。

 

 

 三人目は静かに甘粕正彦の隣へ並び立つ。

 第一盧生 :『魔王』甘粕正彦。最初にして最強の盧生を倒すべく誕生した第二盧生 :『英雄』。

 自身の指針として仁義八行を掲げ、自身の生き様を後続の者達に見せることによって未来を少しずつよりよいものに変えていく「継承」を理想とする唯一まともな盧生。

 彼だけは、マシュは何故か安心感を覚えた。

 

 

「久しぶりだな甘粕。相変わらず馬鹿をやらかしているのか?」

 

「はっはっは、なるほど実に明快だ。ああ、大好きだ。お前はお前たちはなんと素晴らしい!!世界は越えて人の愛と勇気に満ちている!素晴らしい、実に実に素晴らしい! すべてが光り輝いている!……やっていいんだな?」

 

「好きにしろよ。熱心な馬鹿ほど手に負えん者はない。おまえのことは自然現象のようなものだと理解している。だが、それでこちらの障害となれば、言うまでもない。二度とお前のような奴と戦いたくはなかったが、そういうことだ」

 

 

 ロッズ・フロム・ゴッドを超える超兵器を次々に創形。味方ごと巻き込む兵器群もお前たちなら大丈夫と信頼している。

 

 

 ――――――柊四四八。ただそこに立つ人間は対話すら不可能なバフラヴァーンを前に再び盧生として力を揮う。

 

 

 最後に召喚された四人目。

 マシュは土煙で姿も確認できない人物と自分の繋がりを感じ取る。

 影からも分かる跳ねた髪型。

 男性で、懐かしさを覚え、特別な繋がりを感じる人物は一人しか思いつかなかった。

 マシュは走る。

 まだ会えないと思っていた。世界を隔て別れてしまったあの人に会いたい。

 この先にいる。

 会いたくて。

 寂しくて。

 力になりたくて。

 守りたくて。

 

 "私の……大切な、大切なマスター"

 

 

「――――――先輩ッ!!」

 

「ああ、パパだよ!!」

 

「空気を読んでください!!」

 

 ゴッ!!

 

「イタイッ!!?」

 

 

 そう、召喚陣を起動させた『何かが』格勇者の世界において、勇者を止められる実力を持つ者を求めた。

 そう、マシュより強くて、深い繋がりのある人物。

 そう!マッシュを実力で止められる実力者で異世界に来てもおかしくのない繋がりを持つ人物!

 

 

「た、助けを求められ召喚されたのに。まさか、私は叱られているのか?」

 

 

 セイバー:ランスロットが助けを求める声に応え、召喚に応じた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バフラヴァーンの素晴らしさや、他のキャラクターの素晴らしさを引き出せるように頑張っていきます!!





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