アタランテの息子がカルデアに来た件 (日本人)
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アタランテの息子がカルデアに来た件

感想評価誤字脱字報告よろしくお願いします。


追記:なんか短編の方のランキング3位に載ってて草。修羅場好きすぎでも1つ草。


────人理継続保障機関フィニス・カルデア。

人理焼却を受けた世界を救う為に活動する、人類の希望。このカルデアに残された最後のマスターは、今日もまた、新たな英霊を呼び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あン⋯?俺かイ?そうだなァ⋯⋯。

ミュシアのバーサーカーとでも呼んでくれヤ。これからよろしく頼むゼ、マスター」

 

つい先程、カルデアの召喚サークルより現れた彼は人類最後のマスターである私、藤丸立香にそう名乗った。

見た目は筋骨隆々、という程ではないがかなり引き締まっている。所謂細マッチョと言うやつだ。かと言ってエミヤ(見せ筋D)の様な無駄筋、基見せかけ筋肉でもなく、純粋に必要な肉が必要なだけついている風に見える。容姿も整っていて、生えるままに任せた金の混じる緑髪も彼の持つ雰囲気に合っている様に思える。

そんな彼は英霊としての本名である〝真名〟を明かさなかった。

当然の事だが、通常の聖杯戦争では真名は最重要機密である。英霊としての弱点を露呈する恐れがあるので基本的にバレてはいけないのだ。が、カルデアでは多方面から英霊が多数集まっているので真名を隠すまでもなく大抵バレる。そもそも隠してもメリットが無いので基本みんな真名で呼びあっているのだ。

⋯⋯ただまぁ、最近は真名隠しが流行っていて自分と何も関係ない変わった通り名を名乗る風潮があるのでその流行りに乗っかっただけなのかもしれないが。

そこの所を本人に聞いてみれば、

 

「真名ィ?ヤダよヤダヤダ。あんな小っ恥ずかしい名前なんぞ名乗れるかってノ。まぁ、アレダ。要するにきらきらねーむってヤツダ」

 

との事らしい。

どうやら彼は名前が恥ずかしくてで明かしたくないタイプらしい。曰く、『受け取る方によっちゃ笑うか微妙な気分になるかだナ』だそうだ。

まぁ人によれば本名の意味が別の地方では〘魂垂れ流してる人〙みたいな感じになるらしいし、地方によっては言葉の意味も変わってしまうのでその類の理由なのかな?

後輩兼私の初めてのサーヴァント(正確にはデミ・サーヴァントだが)であるマシュが言うには、彼が名乗った〝ミュシア〟はギリシャの地名らしい。そこから推測するに彼はギリシャ出身の英霊の様だ。

彼は『想像に任せル』と実質的なノーコメントだったが違うとも言わなかったので多分合っているのだろう。自分としてはぜひとも仲良くやっていきたいので彼の事をよく知りたいと思う。

 

 

 

 

 

 

さて、彼についての考察はこんな所だろうか。色々と聞きたいことはあるが今はいいかと思考を中断する。

これから行われるのは食堂での顔合わせだ。ここでは知り合い・友人・恋人との再会や、宿敵同士の殺し合いなどがちょくちょく発生し掛けるが、迷惑をかけると我がカルデアのグラップラー姐さん(マルタ)による鉄拳聖裁ゲンコツを全身にくらうハメになるので皆基本大人しい。早い話、抑止力が近くにいるので万が一暴れてもなんとかなるから顔合わせ場所に使われている訳だ。

 

 

 

食堂に入れば多数の英霊達やカルデアの職員達が食事をとっているのが見える。相変わらずいつも通りの賑わいだ。

 

「ヘェ⋯、英霊連中もメシ食ってんのかイ?俺らにゃ食いモンは必要ねェハズだがねェ?」

 

彼の反応は見慣れたものだ。大抵の英霊───ストイックなタイプの英霊程───食事を必要としないサーヴァントが大勢でモノを食べている光景に驚くか訝しむ。当然この行為に必要性はあまり無い。魔力は雀の涙ほどしか回復しないし、そもそもサーヴァントは空腹を感じない。ただ単に娯楽として食事を楽しんでいるのだ。

というか、私としては彼らが羨ましい。こう⋯⋯乙女的に⋯⋯ね?体重とかの心配も無いしお通じに苦しむことも無い。なんだったら月のアレが無いので基本いつでも万全の状態。私の月のアレが来る度にドクター達は微妙な顔して『休んでいいよ』行ってくるし、某Pは訳の分からない薬で止めようとしてくるし気まずいったらない。人類最後のマスターの私の体調はそのまま人類の存亡に関わる。なのでここのスタッフ達は私の体調管理に人一倍気を使ってくれるのだが⋯⋯。

メインスタッフ達は基本男所帯。そのメンツに自身の周期まで把握されてるとか死にたくなる。乙女的に。

⋯⋯話が脱線した。てか途中から私の月のアレの話になってんじゃねーか。何やってんだ作者(メタいわ)。

 

と、まぁ大抵の魔術師はサーヴァントを顧みることなんてしないので食事をするサーヴァントは殆ど居ないらしい。カルデアに慣れた私からすれば違和感しか感じないのだが、彼の様な反応が普通らしい。

 

「確かに英霊の皆は食事を取らなくてもいいのかも知れないけど、どんな人でも美味しいもの食べれば元気が出るでしょ?肉体的には問題ないかもしれないけど精神的には余裕を持ってやって行きたいってのが1番大きな理由だね

どっかの皇帝も『兵站の確保は軍の基本』って言ってたし」

 

「はい。英霊の皆さんの中には精神的に不安定(バーサーカー)な方々もいますが、シェフエミヤやブーティカさん、タマモキャットさん達がつくる料理によってある程度狂化を抑えることが出来ています。それに、世界各国の様々な料理も楽しめますし、カルデアの士気向上に一役買ってくれているとドクターやダウィンチちゃんも言っていました!」

 

「待ってマシュそれ初耳なんだけど」

 

さりげなくとんでもないことぶちまけてやがるこの後輩⋯⋯!てか大丈夫なのかその料理。サーヴァントの霊器に影響与えるって割とヤバイ気がするんだけど。

 

「軍⋯⋯カ。カハハッ!わかりやすくて良いじゃねーのそいツ。士気向上は軍の基本、美味い飯食えるならやる気も出るってもんダ。生前味わえなかった美食も食えるってなら尚更、悪くないわナ」

 

1人内心でカルデア料理人達に戦慄していると彼は何処か納得した様な顔だ。軍を率いていた経験があるのかも知れない。受け入れるのはそこそこ早かった。

 

「そんじャ、オレも早速食っていいかマスター?座じゃ知り合い連中と酒か殴り合いしかしてなかったんでナ」

 

おぉっと?何気なくバイオレンスなカミングアウトが聞こえた気がする。これはまたそう遠くない内にカルデアで喧嘩という名の災害が発生しそうだ。マシュも不安そうな顔をしている。

そうなった時どう鎮圧しようかと悩んでいると、既に彼は食堂内に入ってしまっていた。慌てて追いかけると既に彼はここの主(と言われるほど馴染んでいる)であるエミヤの所にいた。

 

「む、マスターか。そこの彼は見ない顔だが新しい英霊か?」

 

「うん、さっき召喚されたばっかの人で名前は⋯」

 

「ミュシアのバーサーカーとでも呼んでくレ。本名は色々あって名乗りたくねェんダ」

 

「成程。まぁ理由は人それぞれだ。あまり詮索はしない事にしよう」

 

「ありがとヨ。あんちゃんなかなか話がわかるナ」

 

「あんちゃんはよしてくれ。そんな風に呼ばれた事がないからむず痒い。ああ、まだ名乗って無かったな。

私の真名はエミヤ。君達の様な人理に名を刻んだ英霊には及ばないが多少はやれると自負しているよ」

 

エミヤの自己紹介を聞き、くつくつとバーサーカーが笑いを漏らす。

 

「オイオイ、あんちゃんかなり〝やれる〟だロ?それで多少なんて嫌味だゼ?オレなんて知ってる奴ァ殆どいねェ様なマイナー英霊ダ。知名度補正もねェしあんちゃん相手にするのはかなり苦労するだろうサ」

 

「勝てない、とは言わないのだな?」

 

「やる前から勝ち捨てる様な負け犬にはなりたくないんでネ」

 

「ククッ、違いない」

 

「⋯⋯お二人とも、仲良くなるのが早いですね」

 

確かに、と思う。エミヤは割と周囲に壁を作る方だ。本人の出典故か自分を卑下する傾向が強く、本質に触れられたくないタイプの人間。真名も自分から明かす様なことは少ない。それが初対面の相手と割と親しげに話しているのは、正直違和感が凄い。どこか自分と通ずるものでも感じたのだろうか。

 

「んじゃマ、とりあえずなんか頼むゼ。オススメとがあるかイ?」

 

「この食堂の料理は大体がオススメのものさ。宗教的な理由で食べられないものなどはあるか?」

 

「いんヤ、特にはねぇナ。酒があるならなおイイガ。ワイン以外でナ」

 

「成程了解した。では今は丁度魚介系が豊富でな。アクアパッツァとシーフードパエリアでも用意しよう。昼からの酒はマスターやマシュの教育に悪いから遠慮してくれ」

 

「アッチに酒クセェのが集まってるガ?」

 

「………あれは例外だ」

 

そう言いながら食堂の一角を指さすバーサーカー。そこにたむろするのは酒好きな日本人組とフェルグス達を初めとするケルト勢。他にも荊軻やドレイク等のチーム飲兵衛共。遠目で子供のサーヴァント達が興味深々に見ているがブーディカを始めとする保護者会がシャットアウトしている。

……うん、控えめに言って教育に悪すぎる。令呪でしばらく禁酒してもらうべきかもしれない。

苦々しげな顔のエミヤに若干同情的な表情を浮かべるバーサーカー。この状況に自分が突っ込むのも悪いと思ったのだろう。酒についてそれ以上言う事は無かった。

 

「む、マスターにマシュではないか。そなた達も食事か?そちらは新人のサーヴァントの様だが」

 

「あ、()()()()()さん」

私達の後ろから別のサーヴァントが顔を出す。真名はアタランテ。ギリシャに名を轟かす麗しの狩人だ。本人曰く()()()()()、その影響か子供好きをやや拗らせている。

 

___ピクリとバーサーカーの方が震える。たまたま彼を見ていたから気付けた程度の些細な揺れ。思わず彼の正面に回り込み、その顔を見てしまったのは幸か不幸か。

 

「はい、先程召喚された方でミュシアのバーサーカーさんです」

 

「ミュシアだと?ふむ……知り合いには()()()()。何処の者だ?」

 

その表情は___限りなく憎悪に近い『殺意』。カルデアにいる復讐者(アヴェンジャー)と殆ど同じものだった。

 

「エミヤッ!」

 

「分かっている!!」

 

反射的に叫んだ声に飛び出す赤い弓兵。瞬間的にバーサーカーとアタランテ達の間に入る。思わず固まってしまったマシュを庇いアタランテも戦闘態勢で前に出た。

周辺のサーヴァント達も食事の手を止め、いつでも動ける様に構える。英雄王や太陽王のような剛毅な方々はむしろ面白がって見物の体勢に入っているが、それでも万が一の時は動くのだろう。

そして、彼がゆっくりと振り返る。その顔はアタランテのみを真っ直ぐと見詰めている。

 

「なァアンタ。俺の聞き間違いならすまねぇんだがナ?今『アタランテ』っつったカ?」

 

「……あぁそうだ。お前の言うアタランテが何者かは知らんがギリシャのアタランテならば私以外におるまい」

 

「そうカそうカ、なるほどナ?………ようやく見つけたぞこのクソ○○○(ピーー)

 

「んなっ!?」

 

「…?せ、先輩○○○(ピーー)とはなんの「マシュ。悪い事は言わないから今すぐ忘れなさい」あ……は、はい」

 

どこか軽薄そうな雰囲気は也を潜め、乙女の口からはとても言えない言葉がアタランテに向かい吐き捨てられる。最初の喋り方等はあくまで外面であり、こちらが彼の本性の様だ。

その瞳はいつの間にか()()なっており、それ自体が彼の神性を表していた。

 

「……誰だお前は?少なくとも私に求婚してきた相手にお前の様な戦士はいなかったハズだ」

 

「ハッ、テメェ見たいなアバズレクソビッチに求婚するような変人共と一緒にするんじゃねェよグズが。

テメェの穴に突っ込むくらいなら犬とファ○クした方が万倍マシだボケ」

 

「貴様……そろそろ口を閉じた方が身の為だぞ」

 

「知るかよ。幾多の聖杯戦争を巡って漸く会えたんだ。この程度で言いたい事を終わらせられるか」

 

恐らく、彼の口振りからアタランテ自身の生前の知り合いであるのだろう。彼女の関係者となると恋人疑惑のあったメレアグロスか、それとも父であるイアソスか、はたまた彼女は認めたがらないが夫のヒッポメネスだろうか。近くに居たイアソンとケイローン先生に確認の意味を込めて視線を送るが帰ってきたのは否定の意を込めた首振り。

では消去法でイアソスだろうか?だが自分が知る限り彼に英霊として召し上げられるほどの逸話があっただろうか?少なくとも彼よりも先程述べたメレアグロス達の方がまだ納得出来る。だが彼らでは無いという。

 

「……矢張り見覚えが無い。人違いではないのか?」

 

「……そうかい。まァ当然か」

 

知らないというアタランテの言葉を、寂しそうな表情を浮かべながら肯定するバーサーカー。

だが、次の瞬間には先程の憎悪の表情へと戻っていた。

 

「なァアタランテ。キュベレーの神域にてヒッポメネスと交わり獅子に姿を変えられた愚かなる女よ。

『パルテニオス山』という名前を聞いても思い出せないか?」

 

「知らん。お前が何を言いたいのかも分からんし、少なくとも私はヒッポメネスなどとと関係を持ったことなどない」

 

「………そうかい。テメェのくだらねぇ誓いを通す為にはテメェが産んだガキの事すら無かったことにするってか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なァ………()()

 

 

 

 

 

「はっ?」

 

「へっ?」

 

「あ?」

 

『???』

 

上からアタランテ、私、バーサーカー、その他大勢。意味がわからないといった様子のアタランテ。まさかのカミングアウトに驚いている私。アタランテの反応が以外だったのか怪訝な顔のバーサーカー。???だらけの、そして状況を理解して興味を失ったり面白がって酒盛りを再開するサーヴァント達。

最も先に正気に戻ったのはアタランテだった。

 

「待て、待て待て待て待て待て!?息子!?誰の!?」

 

「テメェのだよ耄碌したか?」

 

「し、知らんぞ!?私は知らん!膜だってある!?なんなら見せるぞ!!?」

 

パニックになっているのかとんでもない事を気づかず叫ぶアタランテ。その際ド変態(黒髭とか黒髭とか黒髭とか)が立ち上がってマルタにしばかれてたが関係ないので割愛する。

 

「オイ、この期に及んでまだしらばっくれる気がテメェ……!

俺の真名は()()()()()()()()!テメェと戦神アレスの息子だ!!

座にもそういう英霊として定義されて存在している、正真正銘テメェの子だ!!」

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___なんじゃそりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?

 

 

 

 

カルデアに処女(疑惑)の悲鳴が響き渡る。どうやら、また血縁関係での揉め事が発生した様だった。




もしかしたら続くかも。


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アタランテの息子がカルデアに来た件 その2

久々に書いてみた。会話文多め。


 

「で、結局の所本当に知らないの?」

 

「本当に覚えが無いんだよっ!?確かに私は処女だ!膜だって見せただろう!?」

 

「……サーヴァントは全盛期の姿で現界する存在なのですからソコも全盛期なのでは?

ええ、ええ。まさかアタランテさんまであのランスロット(ヒトヅマニア)と同類だったとは。子供好きな姿はブラフですか?それとも幼女にしか興奮出来ないから息子さんを捨てたんですかこのスケベ獅子女」

 

「マシュステイ。なんかとんでもない事言っちゃってるから。ギャラハッドさんとかと重ねちゃってるのは分かるけどそんな多方面から文句来そうなこと言っちゃダメだって」

 

「なんかそなた怖いぞ!?」

 

後輩サーヴァントがめちゃくちゃ怖い顔でアタランテをネチネチ責め出すのを死んだ目で制止する藤丸。可愛い後輩の豹変にビビるアタランテ。そして先輩サーヴァントのまさかのガチクズ疑惑に闇落ち寸前のマシュ。

後が怖いけど話が進まないので何とか宥める。ようやく落ち着いた辺りで、再度確認のために〝彼〟の情報を思い返す。

 

「パルテノパイオス……。〝処女の息子〟の意味する名を持つ英雄……。幼少期に山に捨てられ、後に共に捨てられていた親友であり主君テレポスと共にミュシアに辿り着く……。

後にテバイを攻めた7人の将の1人でその際に戦死していると……。父親については色々説があるけど本人曰く戦神アレスの息子、母親アタランテとされる、か」

 

「父親はヒッポメネスとされるのが一般的ですが、アレス神の子とする説も有ります。

もしくはヘラクレスさんと同様の方法で托卵されたのか……。中々複雑な様です……」

 

「まぁそこはともかくさ……アタランテは認知しよ?」

 

「だから違うと言っているだろう!?本当に身に覚えが無いんだ!?」

 

「………なんかそれだけ聞くと凄いクズ親の香りが……」

 

「本当に違うんだーーー!!!??」

 

アタランテの悲鳴が響く。悲鳴を上げたいのはコッチだし、かつてない特大地雷をの原因になってる本人がコレでは解決のしようもない。

 

「本当にどうしよう………」

 

頭を抱えるしか出来ない私だった……。

 

 

 

 

━━━━━━━━━食堂

 

「……クソがヨ」

 

「……まぁ飲めよ」

 

「……おにいさん大丈夫?」

 

酒瓶にまみれたテーブルの中央。そこにはベロンベロンに酔っ払って突っ伏したミュシアのバーサーカーことパルテノパイオス、そんな彼の背中を軽く叩きながら慰める赤雷の騎士モードレッド、心配そうにパルテノパイオスの頭を撫でる幼女ジャック・ザ・リッパーがいた。

中々に犯罪的な光景に見えなくもないが、傍から見てもあらゆる陽キャ系サーヴァントも避けるような怨念の如しオーラが漂っている。

 

「ダメだロ………仮にも親が忘れてんのはダメだロ……」

 

「……うん、まぁ経緯は違うが気持ちはよくわかるぞ……」

 

「………自分で産んでおいてポイ捨てはダメだよね」

 

 

「オイアレどうすんだよ……」

 

「知るかよ……。アキレウスお前仮にも知り合いらしいな?何とかしてこい。」

 

「オレアイツと面識ねーんだよ。アイツの主とはぶち殺しかけた仲だけどよ……」

 

「なんでギリシャ共はどいつもこいつも拗れる人間関係ばかりなんだ!?」

 

「言っとくがお前もその1人だからな?」

 

怨念の塊3人を遠巻きに眺める1部の面々。イアソンとアキレウスのしょうもない漫才を他所に、次々と流れ弾が飛んでくる。

 

 

 

「テレポス見たいにやむを得ずにってなら分かるゼ?なんだよ急に脈略なく捨ててきやがっテ……。

オマケに処女の息子?テメーがバージンなのはケツ穴だけだローガよ……。なんで覚えてネェんだヨ……」

 

「……そうだよな。事情があるとは言え、血の繋がった子供無視して殺して現界先でちゃっかり卒業するような親だもんな………」

 

「避妊も出来ない、孕む気も無いのになんでヤルんだろうね?今なら腹カッ捌いて全部出してやるのに……」

 

愚痴が溢れるパルパ(ry。つられて吐き出すモードレッド。いつの間にか酒を飲んでIQが上昇してバイオレンス全開のジャック。紛うことなきカオスである。

ちなみにこの時点で主に某魔女、円卓最高の騎士、そして各アルトリアシリーズに割と致命的なダメージが展開しているのだがそれに気付く様子は無い。

ついでに剣トリア共はおそらくモードレッドにバラしたであろうマーリンをシバきに食堂を飛び出して行った。

 

「お前らも大変なんだナ……」

 

「お前もな……」

 

「駄目な親を持つと苦労するよね」

 

気付けば3人の間に妙な連帯感が生まれていた。ここに時空を超えた『毒親の被害者同盟』が誕生した瞬間である。多分そのうちめちゃくちゃ増えそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━召喚室内

 

それは、唐突だった。

 

「……あら?なんか変わった形での召喚ね?」

 

突然、カルデア内の召喚サークルが起動し複数のサーヴァントが召喚される。魔力リソースを消費した訳ではない、何者かによるイレギュラーな召喚。ソレ自体が抑止力の機能の一種である事は後に判明する。

その中心に経つドレス姿の女性は周囲を見渡し他のサーヴァントを確認しつつ、カルデア内にいるであろう顔見知り達の気配を感じとった。途端に歪む端正な顔。しかしその中に()()()()を見つけた。

 

「やっと会える……!もう国も何も関係ない、本当の意味で貴方と共に歩める……!

待っててね()()()……!」

 

狂気的な笑みを浮かべその場から去る女性。ランスとやらの元に向かったらしい。おおよそ正気とは思えないその様子を呆然としながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━彼/彼女は見ていた。



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