用務員の日常 (八雲 紅)
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アカデミア用務員編
俺はアカデミアの用務員


GXを見直してたら書きたくなったので書きました


 

トラックに轢かれた覚えは無し。死んで神に会った覚えも無し。

気が付けば遊戯王の世界に転生。

たまたま持ってた現代のカードと知識と原作情報を活かして無双するぜ!と息巻くも両親が多額の借金を残して蒸発、そして残された俺は船に乗せられ怪しい場所に連れて行かれそうになるも嵐で船は難波。

流れ着いた先は遊戯王GXの舞台であるデュエルアカデミア。

着の身着のままで、デッキが無くなって、でもなんとかアカデミアに用務員として拾って貰えまして、俺……遊佐健斗(ゆさ けんと)は元気です。

 

今日も元気に用務員の仕事に励む。

現在、大徳寺先生に頼まれてレッド寮の物置を整理し補強や配置換えを手伝っていた。朝から始めた作業も気付けば昼を過ぎて日が傾く夕時になっていた。

 

「いやぁ、遊佐くんが手伝ってくれて助かったにゃー」

 

「いえいえ、大徳寺先生のお願いでしたら喜んで」

 

「そろそろ新入生が来る時期だから少しでも綺麗にしとかないとにゃー」

 

「はい、お茶だにゃー」と言って大徳寺先生は俺に冷たい麦茶を差し出す。

レッド寮の整理と清掃という仕事終えた俺は食堂で一息吐いて先生から麦茶を受け取り一気に飲み干す。

汗をかき火照った身体に麦茶が染み渡る。

 

「それにしても遊佐くんが流れ着いてから今日で3ヶ月、早いもんだにゃ」

 

大徳寺先生の言葉を肯定するかのように彼の飼い猫のファラオが「ニャーゴ」と鳴いた。

 

「もうそんなに経ったんですか」

 

「君を海岸で見つけた時は何事かと思ったけど、無事にやっていけてるようで安心だにゃ」

 

「自分でもなんで生きてるのか不思議ですよ……」

 

ここに流れ着いた経緯を振り返りながら遠い目をする。

脳裏に過ぎるのは典型的な黒服サングラスの借金取り。親の借金のカタに俺をナントカカントカすると言ってきたのでデュエル勝ってみろと宣言してボコボコにして返り討ちにしたのにあいつらリアルファイトで取り押さえてきた。

「お前らそれでも決闘者か!」「リアリストだ!」の問答は記憶に新しい。

その後は取り押さえられデッキも家も奪われ怪しい船に乗せられ、しかし嵐で監視の目が無くなった隙に船内で大暴れ。デッキを返せとバーサークゴリラ並にリアルファイトを繰り広げた結果、嵐で船ごとひっくり返り漂流した俺は無事デュエルアカデミアに流れ着き海岸でキボウノハナーを咲かせていたところを散歩中の大徳寺先生に発見、保護された。

その後は大徳寺先生に事情を話し、彼を通じてアカデミアの経営陣も話を聞いて不憫に思ったのか用務員として雇ってもらえる事になった。

例の船がかなり離れた沖で転覆して見つかり、乗組員と見られる怪しい男達が捕まっており話が事実だったという事も大きい。

 

「生きてるだけで儲けものだと思うにゃー」

 

「そうですね」

 

大徳寺先生の言葉を軽く流して立ち上がるが、この人が命とか言うと重みが違うので困るのである。

 

「では、今日はこれで」

 

「またよろしく頼むにゃ」

 

大徳寺先生に手を振りレッド寮を後にする。

イレギュラーな用務員として過ごしている俺は正規の部屋を与えられる余裕が無く、レッド寮の近くの森にある小屋が与えられそこで過ごしている。この島自体に廃寮やら怪しい施設やらあるしこの小屋は「この建物一応使えない事も無いけど管理面倒だなー、そうだこいつに使わせよう」的なノリで渡されたんだろう。

小屋はこの3ヶ月の間に隙を見て改装増築を加えて住みやすくし、更には周りに簡易的な畑も作った。

一応アカデミアで働いてる訳なので給料もちゃっかり貰っていたりするのだが小屋の改装や日用品に使いっぱなしでカードやデュエルディスクを買う余裕は無かった。

ぶっちゃけデュエルするよりこの秘密基地小屋を開拓してた方が充実していたかもしれない。

 

小屋に帰り改装して作ったシャワールームでシャワーを浴び、パジャマ代わりのジャージに着替えてベッドへと寝転がり思案する。

 

 

俺にはこの世界の知識がある。

今は原作……遊城十代が入学する直前の秋でありこれからあの深夜42時アニメと呼ばれた怒涛の展開が始まるのだ。

 

「なるようにしかならないよな」

 

ごろん、とベッドで寝返りを打ちながら呟く。

経緯はどうあれ元々原作に関わるつもりで来たのだ、もう止まれはしない。

いち原作ファンとして、決闘者として、出来る限り十代をサポートすると決めたのだ。そのためにレッド寮の設備を多少改善したりレッド生達とはそれなりに仲良くなっている。

デッキが無いのとデュエルで通じ合う十代のスタンス上、直接デュエルに関わる事は難しいが、それ以外では助けになってあげたいのだ。

 

 

自分勝手かな、そう最後に呟いて俺は明日の仕事の準備に取り掛かるのだった。

 

 




主人公はただの遊城十代強火オタク。


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用務員、色々と会う

明日香って凄い完成されたデザインですね
未だに人気があるのが分かる


「ようこそ新入生諸君。このオシリスレッドの寮長の大徳寺だにゃ。担当教科は錬金術。そしてこっちはファラオだにゃー」

 

「ふなぁーご」

 

「アカデミア用務員の遊佐健斗です。時間外はレッド寮の近くの小屋で過ごしているので気軽に声を掛けてください」

 

「遊佐くんは別にレッド寮専属って訳じゃないけどこの寮の補修やみんなのご飯の準備もしてくれたりと色々頼りになる方だにゃ」

 

時は流れてアカデミアに新入生が入学する当日。

俺はこの日、レッド寮の歓迎会の準備を在校生達と手伝いそのまま流れで歓迎会に出席している。

原作では焼き小魚に味噌汁と白米という、歓迎会とは思えないメニューだったが俺の介入によりメニューは大盛りカレーへと進化した。見る限り新入生達のウケは悪くない。

挨拶途中で原作通り既に十代が夕飯に手を付けるフライングする事態が発生しているが。

 

「翔、美味いぞこれ!」

 

「アニキ、ダメですよ!まだ挨拶の途中なんだから!」

 

「細かい事は気にしないにゃー。皆ヘリの旅で疲れただろうし長い話はこれまでにしていただきますだにゃ」

 

十代の様子を気にする事も無く大徳寺先生は食事の号令を取る。

そして俺は2人分の湯呑みに茶を注ぎ十代と翔の机へ持って行く。

 

「いい食べっぷりだ、おかわりもあるから沢山食べてくれよ」

 

「凄い美味しいぜ先生!」

 

「アニキ、この人は先生じゃないっスよ……」

 

「大丈夫、好きに呼んでくれて構わないよ。隣で食べさせてもらってもいいかな?」

 

湯呑みを2人の前に置いてじっと観察する。

カレーをガツガツと貪る茶髪の少年、GX主人公の遊城十代。

小柄な青髪眼鏡の少年、丸藤翔。

 

あの2人が目の前に居るのだ、既に生クロノスや生大徳寺で憧れのキャラを現実に目の当たりにする感動を味わってはいるがこの2人は格別とも言える。ていうかこうして実際に目にしたから分かるが本当に十代は純粋な良い子だ。心から美味しそうにカレーを食べてくれている姿を見るだけでこちらも幸せになってしまう。

 

「ふぉーかひはんへふは、へんへ」(どうかしたんですか、先生)

 

「カレーは逃げないから落ち着いて食べていいからね」

 

少し見過ぎたのか、カレーを頬張りながら十代が疑問を飛ばしてくる。

たくさん食べてくれるのは嬉しいが喉を詰まらせて欲しくはない、というのが本音である。

いかん、十代が可愛い過ぎて過保護になりそう、俺はユベルだった……?やめよう、ユベル案件はマジでシャレにならんから。

 

「聞いてるよ、入試でクロノス教諭を倒したんだってね?凄いじゃないか」

 

「んぐ……おう!俺はこの学園で1番になる男だからな!」

 

「アニキは本当にそればっかりっスね」

 

とりあえず十代の疑問には入試の話題を出してはぐらかす。実際に噂になっているのは事実だし何よりも十代の話を聞いてみたいというのもあるからだ。

その後は十代や翔と楽しく会話をして解散した。その時に2人を下の名前で呼ぶ事になり俺は健斗さんと呼ばれる事になった。

 

 

 

入学式から数日経過した。ぶっちゃけ用務員なので原作が何処まで進んだのかよく分からない。

恐らく入学式の後に十代は万丈目に呼び出されてデュエルをした……のは分かるが次の展開が何時なのか分からない、確か次は女子寮の話だと記憶しているが。

 

「健斗さん!翔が大変なんだ!」

 

と、思ったその日の夜。小屋の扉をドンドン叩く音と十代の深刻そうな声が響いた。

 

「こんな夜更けにどうした十代くん」

 

「翔が女子寮に攫われちまったんだ!」

 

案の定女風呂イベントだったので即十代に同行する旨を伝えてブルー寮まで全速前進DA☆

途中にある湖で何故か十代がボートに乗ろうとしていたので陸路から行った方が速いよと伝えてそのままランニングフェイズ続行。

原作でも思ったけどなんで真っ暗闇の中でボート漕ごうと思ったのかコレガワカラナイ。

そんなこんなでブルー寮の女子寮前に到着。そこでは女子生徒にお縄を頂戴されている丸藤翔くん。

十代の到着を確認し、こちらに視線を向けるのは本作のヒロインである天上院明日香。綺麗な金の長髪に夜でもその身体付きが分かるナイスバデー、実物はやはりガチ美人だ。

制服とは思えない露出過多のアカデミア制服がいい味を出している。

 

「アニキぃ〜助けてぇ〜!」

 

「来たわね遊城十代。それと……」

 

「用務員の遊佐健斗です、十代くんに呼ばれて来たのですが……状況を説明していただけませんか?」

 

十代を呼んだのに十代以外の、しかも生徒じゃない人間が来ていて「なんで?」という表情を明日香は浮かべているが彼女は説明を始める。

原作通り、クロノスの用意した偽のラブレターで翔が釣られたところに風呂場を覗かれたと勘違いした女性達に捕まったという経緯だ。

ちなみに途中で十代が俺を呼んだ理由を話してくれた。本人曰く「先生に言う訳にもいかないし他に頼れそうな人が健斗さんだった」とのこと。

至極真っ当な理由の上に十代に頼りにされて少し嬉しかったのは内緒だ。

 

「状況は分かりました。しかし偽の手紙が用意してある以上は誰かの思惑があるのは確実です、翔くんは巻き込まれた被害者だと考えられます」

 

「でも実際に覗いたかもしれないじゃない!」

 

「たとえ知らなかったとして見られていたとしたら嫌ですわ〜」

 

俺の言葉に反論するのは本編で明日香と一緒にいる事が多かった茶髪の男勝り娘の枕田ジュンコとおさげのお嬢様言葉の浜口ももえ。

この2人が言う事も尤もだ、実際に見ていたらフォローしようが無い。

 

「だから見てないってばー!」

 

「じゃあこうしましょう、遊城十代。私とデュエルよ」

 

そしてごく自然な流れでデュエル。十代が勝ったら翔は無罪放免、明日香が勝ったら翔は教師に報告。よし、いつもの遊戯王だ。

元々明日香が十代と戦いたいがための口実だったし仕方ないよな……まぁこれで明日香と知り合えたからヨシ!(現場猫)

そして俺と翔と十代、明日香、ももえ、ジュンコで分かれてボートに乗り湖でデュエルを始めた。ボートデュエルアクセラレーション!

 

結果は原作通り十代が勝ちました。勝ち卍

その後は無事解放された翔と十代を連れてボートを走らせレッド寮へ送って1日を終えた。

 

 




大徳寺先生可愛い
なお正体


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用務員、巻き込まれる

デトろ!開けロイド市警だ!

遊戯王ではよくある会話しろよフェイズに突入させてもらうぞ


用務員って意外と原作に関われない、レッド寮の食事を準備しながらそう思った。ちなみに今日のメニューはシチューだ。

 

「やったぜ!今日はシチュー召喚の日だ!」

 

「1週間に一度の健斗さんの日は嬉しいっス!」

 

「たくさん食えよ」

 

十代はいつの間にか万丈目を倒していた。

そしてレッド寮に残る事を嬉嬉として報告して来たので状況を理解した訳だが。

当然、断るなんて勿体無いとか色々説得したが「イエローに行ったら健斗さんの料理が食えなくなっちまう」と言われたら「好きなだけ残れ!」と答えてしまう。

いや違うだろあの時の自分、イエローまで出前してやる!くらい言ってやるべきだったろう。今はまだ良いが十代のこのスタイルが後の悲劇の引き金になるのを知っている自分としては微妙な心境だ。

料理を褒められるのはとても嬉しいんだよ、うん。

 

「うめぇー!うめぇーよ!」

 

笑顔でシチューをかき込む十代。その表情から心の底から自分の料理を美味しく食べてくれているのが分かるので憎めない。

次も作ろうってなるじゃないか……。

 

「いやー、十代くんは残るみたいだけれど、これでレッド寮がまだまだやれるんだぞ!っていうのは証明された訳だし今日は健斗さんからのお祝いだにゃー」

 

大徳寺先生の言葉に食堂内に歓声が上がる。寮生は口々に十代を讃え、十代はシチューをもぐもぐしながらそれに応えている。

とりあえず落ち着いて飲み込んで欲しい。

さて、次のイベントは何だったかな……。

 

 

 

十代が万丈目を昇格戦で下してから数日後

いつものように自分の小屋で眠りについているところ、騒がしい車の走行音で目を覚ます。

 

「誰だ」

 

睡眠を邪魔された怒りのままに小屋のドアを開くと1台のトラックがレッド寮へ向かっていくのを発見する。

その車両に心当たりのある俺は舌打ちをしながら靴を履いてレッド寮へと走り出した。

 

「開けろ!すみやかに開けないとこのドアを爆破する!」

 

「その扉は誰が直すと思ってんだ、あぁ?」

 

集団はレッド寮の一室……十代の部屋の前を占拠しわざわざメガホンまで用いて怒鳴っているリーダー格の女性に後ろから悪態をつく。

 

「貴様は不法侵入容疑者の遊佐健斗!」

 

「安眠を妨害されて絶賛不機嫌の遊佐さんですよ。朝早くからご苦労さまです倫理が通じな委員会の皆様」

 

俺の姿を確認するなりそう言い放つメガホン女に青筋を立てながらそう返す。

 

「まさか今回の件に貴様も関わっているのか!?」

 

「どの件だよ全く分からねぇよ。倫理も論理も会話も通じな委員会に改名しろ今すぐにだ」

 

売り言葉に買い言葉、いつの間にか他の寮生や大徳寺先生が騒ぎを聞き付けドアの隙間から様子を伺っている。そして「ちょっと待ったー!」という言葉と共にドアが開き十代が出て来た。

 

「首謀者の遊城十代、並びに丸藤翔を査問委員会まで連行する」

 

「え、首謀者?何の事だよ」

 

「査問とサモン(召喚)を掛けたギャグ凄いですね、帰っていいぞ、帰れ」

 

「この際だ、貴様も来い!」

 

何が何だか分かって居ない様子の十代、翔、そして完全についで扱いの俺達3人はトラックに乗せられ連行。着いた場所は巨大モニターに覆われた部屋。

それぞれのモニターにメガホン女、鮫島校長、クロノス教諭、あと他の教師とかその辺の偉い人数人が映し出されている。

 

「どうしてシニョール健斗が居るノーネ?」

 

「彼は我々の行いを邪魔しました、よって今回の件に関係があると疑われます」

 

「あ、そうナノーネ……」

 

クロノスは十代に対しては当たりが強いが意外にも俺には何も無い。

今も俺がついでに連行されてきたのを見て少しメガホン女に引いてるし申し訳なさそうな視線も感じるけどその優しさを十代に分けてやって欲しい。

 

「遊城十代並びに丸藤翔、お前達2人は立ち入りが禁止されている廃寮へ勝手に侵入し内部を荒らしたと報告が来ている。重大な校則違反により退学処置もやむを得ない。そして遊佐健斗、お前はこの2人に廃寮の情報を流し侵入を唆したに違いない」

 

「ち、ちょっと待ってくれ!廃寮に入ったのは間違い無いけど健斗さんは関係ない!」

 

「そうです!それに廃寮に入ったのは明日香さんが不審者に拐われたからそれを助けに行ったんです!」

 

「なに?」

 

メガホン女の滅茶苦茶な発言に待ったをかける十代、そしてそれに続いた翔の発言に一同が驚く。

 

「あー、とりあえず証拠の提示をお願いします。監視カメラとかなんか色々あるでしょ?なんせ十代くんと翔くんが廃寮に入った事が分かってるんですから他の人間が廃寮に入った事も調べたら分かりますよね、あともし十代くんの言う通り不審者が島に入っている事実があるとしたら島のセキュリティ管理の問題も浮上しますねぇ」

 

「貴様……!」

 

「あと唆したってありますけど、廃寮があるけど入っちゃいけないよ、っていう注意も唆したうちに入るんですかね」

 

「ふむ、君たちの話はよく分かった。これから話し合い、追って処遇を伝えよう」

 

「鮫島校長!」

 

「元々は2人から話を聞くのがこの査問の目的の筈だ。では3人とも時間を取らせて済まなかった」

 

俺の皮肉を皮切りにメガホン女との舌戦が繰り広げられるかと思ったがそこに鮫島校長が待ったを掛け、処遇は後に報告するという形で解散した。

 

 

「ちくしょう、健斗さんは悪くないのに!」

 

「いいんだよ十代くん」

 

その帰り道、悔しそうに声を上げる十代を宥める。

 

「俺あいつら嫌いだし、寝起きでイライラしてたからちょっとやり過ぎた」

 

「ちょっとどころじゃなかったし、なんならキャラも変わってたような……」

 

翔の呟きにハハハ、と笑って答えるのみに留めておく。

翔は「絶対に怒らせないようにしよう」と小さく呟いた。

 

「とりあえず、何があったのか話を詳しく聞かせてくれるかな?」

 

「実は……」

 

そして十代から改めて夜の出来事を聞いた。

原作通り肝試しに廃寮へ行くと明日香が連れさられタイタンと闇のデュエルを繰り広げた、という。タイタンは途中で姿が消えて自分達は朝になったので急いで帰った、で十代は話を締めくくる。

 

「次は健斗さんの番だぜ」

 

「俺?」

 

「僕も気になるっス、健斗さんがあんなに怒ってるの初めて見たっス」

 

つまりは倫理委員会との馴れ初め(笑)の話だろう。

いいか、と前置きして俺はアカデミアに流れ着いた時の話をするのだった。

 

「えーっとつまり健斗さんは元々プロを目指してたけど両親の借金で借金取りに捕まって」

 

「船に乗せられて決死の覚悟で逃げたけど船が難波して」

 

「運良くアカデミアに流れ着いたけど持ち物は無くて、おまけに倫理委員会に不法侵入者として捕まった……いや、すげぇよ健斗さん」

 

「本当に生きてて良かったっス」

 

「転覆した船と捕まった船員の話もあるのに未だに疑ってきてるんだよ、本当に人の話聞かないし」

 

話を聞いた十代と翔は引きつった笑みで返事をするが、素直に俺が無事だったことを喜んでくれた。

こちらこそ君たちに会えた事にお礼を言いたい気分だ。

 

「まぁ校長達がなんとか話を付けてくれるだろう、じゃあ俺は寝直すから2人はまっすぐ帰るんだぞ」

 

話していると小屋の近くに着いたので2人に別れを告げてその場を去る。睡眠を邪魔されて気分が悪いし今日は用務員の仕事も無いし二度寝に限る。

 

 

「健斗さん、本当に機嫌悪かったな」

 

「口調とか普段と全然違ってたから実は怖かったっス……」

 

「翔、健斗さんだけは怒らせないようにしような」

 

 

 

この時の自分の行動ほど後悔した事は無い。

後日、俺と十代のタッグによる制裁デュエルが行われる事が決定した。

 

 




巻き込まれる(自分から)

原作十代ここで「なんでもするからチャンスくれよ!」って言ってるんですよね……ん?今なんでもするって言った?


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用務員、原作を壊す

GXといえばカードの精霊


「私たちもあの場に居ました、私たちも罰されないとおかしいです!」

 

「お、俺もなんだな」

 

「どういうことですか、説明してください」

 

制裁タッグデュエルを言い渡された瞬間に頭に来たので、その時は購買部の手伝いをしていたがトメさんとセイコさんに途中で抜ける事を告げて校長室へ向かった。その道中に明日香と出会ったので目的が一緒の彼女を伴い殴り込みを掛けると既に十代達のルームメイトである隼人が抗議していたので今はそれに明日香と共に乱入したところだ。

 

「もう委員会で決まったことなんだ」

 

「ドロップアウトボーイ達が深夜に外出していた事だけは庇いきれなかったノーネ」

 

憔悴した表情の鮫島校長とクロノスが続ける。

校長はまだしもクロノスがフォローに入るって珍しくないか?

 

「ドロップアウトボーイだけならともカーク、シニョール健斗を辞めさせるのは我々もおかしいと思ウーノ」

 

あー、あれか。無関係の俺が巻き込まれたうえに詳しく調べられると自分がタイタンを手配したのバレるかもしれないからフォローに回ったのか。俺もクロノスもお互いに自業自得なのが笑える、いや笑えねぇわ。

 

「で、でも、健斗さんは関係無いんだな!」

 

「そうです!それは証明できます!」

 

「委員会が言うには、レッド寮の近くに居ながら生徒の行動を制御できなかった責任がある、との事だ」

 

「そんなの滅茶苦茶です!」

 

「それなら大徳寺先生の責任なんだな!廃寮の事も大徳寺先生から聞いたんだな!」

 

「ありがとう2人とも。もう大丈夫だ」

 

このままだと大徳寺先生にも飛び火しかねないので2人を制止する。

2人は納得いっていない様子だったが渋々引き下がる。

 

「校長に色々言っても仕方ないですし、制裁デュエルまで話を引き下げてくれたのも校長達でしょうし、受けます」

 

自分たちの管理不届きを棚上げして責任を下の人間やあまつさえ守るべき生徒に押し付けてよく委員会が名乗れるな、なんてこれっぽっちも思ってないですし。元凶お前の隣に居るぞとか全然思っていないし。

 

「本当にすまない……。だが今回の事は委員会に対して私も思うところがある。近いうちにオーナーや運営に話してみるよ」

 

「対戦相手を決める権利はこちらが得たから相手は追って伝えルーノ」

 

そこまで言われたら引き下がるしかない、正直完全には納得していないが3人で校長室を後にした。

 

 

「デュエルで勝てばお咎め無しとはいえ、元々健斗さんには関係ないんだな……」

 

「まぁまぁ、大丈夫さ。隼人くんも天上院さんもありがとう」

 

「明日香で大丈夫ですよ。そういえば健斗さんはデッキは……?」

 

明日香の言葉に事情を知っている隼人は「まずい」と言いたげな表情となり明日香はその隼人の様子に首を傾げる。

 

「今から作る」

 

その二人へ向けてキメ顔でそう言った。

 

「……、今からですか!?」

 

俺の言葉に呆ける明日香だがすぐにハッと意識を戻すとそう声を上げた。

 

「給料は少し残ってるから適当なパックと用務員の仕事中に拾ったカードを合わせればなんとか……」

 

そこまで言って気付く。あれ、そういえば購買部のパックって……

 

「購買部のパックはテストの時に誰かが買い占めたから無いんだな」

 

「と、いうことは……」

 

事態を理解した隼人と明日香は暗い表情となりこちらを見やる。

 

「な、なんとか、なるさ……ハハ」

 

流石の俺も苦笑いしかできなかった。

 

 

 

 

 

「ちくしょう、これは予想外だ」

 

校長室を後にし、2人にはカードを探してくると告げて別れた俺は現在、リュックを背負ってぼやきながらアカデミアの森を歩いている。寝起きのテンションに身を任せた自業自得とはいえ本来なら翔と十代の成長とカイザーとの確執について触れる場面なのに俺が翔のポジションを奪いタッグデュエルパートナーになってしまったことで翔は弱気なままパワボンを使わずカイザーも成長した翔を見る機会をなくすというとんでもないやらかしだ。

この辺は知識を生かして原作イベントの無い空白期間にケアするべきかもしれない。

 

それは後で考えるとしてまずは目の前の問題だ。

俺は漂流してきたためデッキが無い。

いや、正確にはある。ここに流れ着いてくる前、本来ならば原作とは関係ない本土で使う予定だったデッキ。何故か手元に集まって来た、前世の自分のデッキ。

上等なデッキケースに入れていたそのデッキは俺が流れ着いた数日後に、まるで導かれるように海岸に流れ着いていた。中身は無事で、40枚構成のそれはEXデッキを使わずともこの時代のカードならば軽く蹴散らせるパワーがある。ここがGXの世界だと分かった時からこのデッキは大事な時にしか使わないと決めた。

俺は十代の助けになりたいのであって十代の立場を奪ったり目立ちたいわけではない。

使うとして、最低でもセブンスターズで闇のデュエルに絡まれた時や精霊界とかダークネスとか、あの辺の本当に命の危機がある時にだろう。

 

「でも背に腹は代えられないよな」

 

現在、向かっている場所はカードが捨てられている枯井戸。

原作だと後に万丈目がおジャマ兄弟を発見し低ステータスデッキを作るために使用した場所である。

サンダーには悪いがこの井戸は本当に有用なカードが多いので先にお借りするという訳だ。

サクリファイスとか図書館捨てるとかほんとあり得ないと思う。

増Gとか落ちてないかなと期待してみたり。

 

そしてとうとう目的地の井戸に到着した。

精霊のイタズラだろうか、近づくにつれ不気味さを増していくその井戸に縄梯子を投げ込み降りてライトを照らす。照らし出されるのは辺り一面に散らばるカード達。そして……

 

『人間めぇ~』

 

『捨てられた恨み~』

 

くねくねと体をくねらせてこちらを睨む、黒色と緑色のナマモノ。もとい、おジャマグリーンとおジャマブラック。

あぁ……見えちまった。

 

『ここは捨てられた精霊たちの力が集まり生まれた現世と精霊界の間~』

 

『素質の無い人間でも俺たちの姿が見えるようになる~』

 

2匹に言われて改めて辺りを見回すとたくさんのモンスターが周りを取り囲んでいた。

 

『怖くて声も出ないな~?』

 

「いや全然」

 

『あれぇ~?』

 

このままだと話が進まない気がするので返事をし、先ほどから踊ったままのおジャマ兄弟と対話を試みる。

 

「デッキを組みたいんだけどカードが無いから君たちをスカウトに来た!」

 

『本当!?』

 

「ああ!とにかく俺は君たちの敵じゃあない」

 

『ささ、ごゆっくり!旦那!じっくり見てってくだせぇ!俺達はあと1人兄弟が居ればかなりやりますぜ!』

 

対話を続ければ態度を一転しておジャマ兄弟は媚を売るように自分達の宣伝をするがそれをスルーして持ってきた荷物の中から更に照明を取り出して目当てのカードを探すのだった。

 

「お、図書館だ。これ捨てるなんて勿体無いな」

 

『そうですよね旦那ぁ!ところでおジャマデッキなんていかが?』

 

「魔法罠も結構あるな」

 

『探せば俺達の魔法罠もありますぜ旦那』

 

「よし、これで大体集まった」

 

『お、俺達はどうなるんですか旦那!?』

 

『また置いてかれちまうのか!?』

 

『『うわぁぁぁぁぁん』』

 

「うるさーい!」

 

カード探しの途中、茶々を入れてくるおジャマ兄弟をスルーしつつ目的のカードを手に入れた事を呟くと兄弟達は泣き始め、その声は井戸に反響して騒音となる。

 

『おやめなさい』

 

突如、辺りに凛とした女性の声が響き渡るとおジャマ兄弟は泣くのを止めて井戸の奥に広がる暗闇へと視線を向けた。釣られて俺もそちらを見る。

 

『姫様!』

 

「姫様?な、貴女は……!?」

 

奥から淡い光と共に現れたのは装飾の施された神々しいローブを着込んだ女性。その背中からは天使のような2対の翼が存在している。

俺は彼女を、このカードを知っている。

 

『初めまして、異界の魂を持つ御方。私はドリアードと申します』

 

「こちらこそ初めまして、デュエルアカデミアの用務員の遊佐健斗と申します」

 

こちらへ柔らかい笑みを向ける彼女におジャマを始めとした他の精霊達も大人しくなる。

 

『姫様はこの井戸を守ってくれてるんだ!失礼は許さないぞ!』

 

なるほど、原作でも思っていたがこの井戸のカードが無事なのは精霊達の力のお陰だったという訳だ。でもドリアードは原作に居なかったし、そもそもこのドリアードがこの世界に居るはずが無いのだが。

 

『貴方の考えている事は分かります。私は本来この世界に存在するカードではありません』

 

「確かに、精霊術師ならまだしも精霊神后の貴女はこの時代には存在しない」

 

『ええ、そしてそれは貴方も同じ筈です』

 

俺は彼女がこの時代に無いカードだと知っている。

そして彼女は俺が異界の魂を持つ者、転生した人間だと分かっている。

……でも十代とユベルもあれ転生だよな、その辺どうなるんだろう。

 

『私は未来の精霊界で過ごしていましたが次元の歪みに巻き込まれ、気付けば過去へと飛ばされていました。カードとしてこの世に顕現したのは良いのですが私はこの島で直ぐに井戸へと捨てられてしまったのです』

 

彼女はこの時代より遥か後に作られたカードだ。

儀式の精霊術師ではなく墓地に存在する属性の数に応じて能力を発動するカード。確かに攻守0ではあるが……まぁ作中でも言われてたパワー主義の時代だからか。

 

『この井戸で精霊達と過ごすうちに私は気付きました。この島の地下に眠る幻魔の力に。三幻魔の復活は私の居た未来の精霊界でも話は伝わっています。全ての精霊の命と引き換えに復活を果たそうとした悪魔がいる、と。予想したのですが私は三幻魔の復活の揺らぎで生まれた歪みに巻き込まれてしまったのでしょう』

 

5D'sでもそうだったけど精霊界ガバガバ過ぎないか?

 

『俺達が兄弟と離ればなれなのもそいつらの仕業か!』

 

「多分関係ないと思うぞ」

 

茶々を入れたおジャマグリーンにそうツッコミを入れて改めてドリアードへと向き直る。

 

「俺は転生した人間です、この世界の事を知っています。貴女が言った三幻魔に対抗出来る人間が今この学園を去るかもしれないピンチなんです。貴女の力をお借りしたい」

 

俺は包み隠さず秘密を打ち明け、同時に協力を申し出た。

恐らく俺やドリアード存在がある以上、これからも原作通りに進むとは限らない。ならば、事情を知っている協力者が欲しいのが本音だ、それが強力なカードの精霊ともなれば尚更だ。

俺の提案にドリアードは柔らかく微笑み手を合わせて祈ると光が集まり形を成していくとそれはカードの形となる。

光が消えればそこには1枚のカード【精霊神后(エレメンタルグレイス) ドリアード】が存在していた。

 

『元よりそのつもりでした。彼の王達に代わり貴方の進む道を照らす光となりましょう。よろしくお願いしますね、健斗』

 

自分の分身であるカードを渡したのが彼女の答え。

こうして俺は精霊の協力者であるドリアードを得たのであった。

 

 

『あれ?俺達はどうなるの?』

 

おジャマ兄弟やその他の精霊達には「いずれ兄弟を引き連れた者が君たちを必要とする時が来る」と説得し、これ以上カードが捨てられないように井戸に立て看板をしビニールシートで水が入らないようにする、週1で顔を見せる事で決着した。

 




十代が可愛いなって動機で描き始めたこの作品ですが十代はヒロインではありません(当然)
次くらいにデュエルします


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用務員、働きながらデッキを作る

十代可愛い(挨拶)

初めてのデュエル
タッグフォース新作まだですかKONMAIさん

※KONMAI語を理解出来ずプレミしていたのでデュエル内容を修正しました


「健斗さんってさ、その……モンスターの精霊って信じる?」

 

昼休み。購買部での手伝い中に十代が呼んできたので向かうとそう言われた。

 

「ああ……十代くんも見えるのかい?」

 

「やっぱり!健斗さんも見えるんだ!」

 

やったぜー!と俺の手を掴みぶんぶんと振って喜びを露わにする。

やだもう本当に十代可愛い。なにこの可愛い生物、守らなきゃ(使命感)

 

「この島でカードを探していたら色々あってね」

 

「すげーたくさん精霊がいるぜ。あ、健斗さんデッキ作ったって聞いたし、タッグに向けてデュエルしようデュエル!」

 

確かにドリアード以外にもカードを拾った。そしてそれらももれなく精霊なので精霊が見える十代からしてみれば驚くだろう。

ぶっちゃけヨハン越えたし。

そんなことを考えていると十代がデュエルをしたいと願い出てきたので放課後にデュエルをすると約束をした。

 

「やったー!じゃあ放課後待ってるぜー!」

 

ちゃっかりドローパン黄金タマゴ味を手に入れた十代は手を振りながら購買を後にした。

十代が帰ったのですぐさま購買のレジに戻ってしばらくすると再び見知った顔がやって来た。

 

「こんにちは。デッキが完成したみたいですね」

 

「いらっしゃい明日香さん、情報が早いね」

 

「さっきすれ違った十代が嬉しそうに教えてくれましたよ」

 

「なるほど……あれ、いつもの2人は居ないのかい」

 

笑顔で明日香に教えたであろう十代の顔が容易に想像できた。

ふと彼女の隣を見るといつものメンバー、ジュンコとももえとは違う女子生徒を連れているのが目に入る。一応知らない生徒ではない、こちらが一方的に知っているだけだが。

 

「前の時間が実技だったのでグループの子とそのままお昼を過ごそうかと」

 

俺の疑問に明日香は丁寧に答えた。

話題を振られたのに気付いたグループのメンバーがこちらに視線を向けてくる。

 

(デュエルの腕が)イカれたグループメンバーを紹介するぜ!

 

「どうも、(はら)麗華(れいか)と申します」

 

1歩前に出て名乗ったのは緑色のショートヘアに眼鏡の女子生徒。

知っている人は知っている、タッグフォースシリーズのフルバーン鬼畜眼鏡委員長だ。

 

「ウフフ、話は明日香から聞いているわ。藤原 (ふじわら)雪乃( ゆきの)よ」

 

妖しい笑みと共に名乗るのは藤色のロングツインテールに赤いツリ目の女子生徒、肉まん大好き儀式使いのゆきのん。

 

(つむぎ)(ゆかり)と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

 

次いで名乗るは黒髪おかっぱの日本令嬢。ガジェット使い。

身体だけでなく心も若干病んでいる。

 

「……レイン(めぐみ)。……よろしく」

 

白髪ツインテールの無口ミステリアス、アンデ使いのレイン。この世界だと人間なのかデュエルロイドなのか分からんぞ!

 

以上、デッキパワーがおかし過ぎてお前が世界救えレベルの生徒でお送りしました。

なんでこの子たちここに居るの?赤帽子もここに居たりするの?まるで意味が分からんぞ?

 

「アカデミア用務員クビ寸前の遊佐健斗です、よろしく」

 

混乱を表情に出さないようにしながらそう名乗る。

本編でもブルー女子がストーリーに強く関わる事は無かったし……実は描写されてないだけで本編に彼女達が居てもおかしくはない。

難しく考えなくて良いか。

 

「もう、冗談でもそんな事言わないでください」

 

「ごめんごめん。じゃあ何買う?」

 

明日香の言葉に謝罪を入れつつ店員の業務に戻る。

明日香達はドローパンを買って購買部を後にしていった。

 

正直全員は覚えてないけど他のタッグフォースキャラも居るんだろうか?特に本編に関わらないとはいえ誰が居るのか見て回るのも面白いかもしれない。

密かにそう決めて昼の業務をこなすのだった。

 

 

 

 

「デュエルしようぜデュエルー!」

 

「元気だね十代くんは」

 

時間は夕刻。アカデミアの授業は終わり、俺の仕事も落ち着いた頃に約束を果たすために連絡を入れるとレッド寮まで来て欲しいと言われたので向かうと十代は寮の前で既にデュエルディスク片手にスタンバっていた。翔と隼人も一緒に居る。

 

「アニキ、午後からずっと健斗さんとデュエルするんだー!って言ってあの調子っス。授業もぜーんぶ寝て過ごしてたし」

 

「そこはキチンと勉強して欲しかったかなぁ」

 

「へへっ、俺は実技専門だからいーの!それより、早くデュエルデュエル!」

 

「はいはい、慌てない慌てない」

 

翔の言葉にやれやれといった気持ちになるが、それはそれとして気持ちを切り替えてデュエルディスクを構えて十代へ向き直った。

このデュエルは後の制裁デュエルのためのデッキ調整でもありお互いの実力を測るためでもある、このデッキでやれるところまでやるだけだ。

 

ディスクにデッキをセットすると起動音と共に辺りにソリッドビジョンが展開され、十代と視線が交差する。ワクワクと興奮を抑え切れないその純粋な瞳に思わず笑みが漏れた。

君のその期待に応えられるような楽しいデュエルにしてみせるよ。

 

「「決闘!(デュエル)」」

 

そしてお互いに開幕の宣言を放った。

 

「先攻は貰うよ。俺のターン、ドロー!」

 

懐かしの先攻ドローで6枚の手札を見つつ、展開を考える。

よし、十代相手なら最初からクライマックスだ。

 

「手札から魔法カード【苦渋の選択】を発動!」

 

あっちの世界では禁止されていたパワーカードもこっちの世界では使い放題。しかもこれ、井戸に捨てられてた1枚なんだぜ?

 

「確かデッキから5枚のカードを選んで相手が選んだ1枚を手札に加えて残りは墓地に送るカードだっけ?」

 

「正解だよ十代くん。俺はデッキから【ダンシング・エルフ】【キーメイス】【眠り子】【キャッツ・フェアリー】【ウォーター・エレメント】を選ぶよ」

 

「全部通常モンスターか。なら俺は【ダンシング・エルフ】を選択!」

 

十代の宣言したカードを手札に加えて残りは墓地に送る。

墓地に送られたカード達はどこか恨めしい視線をダンシング・エルフに送っている。

 

「あ、やっぱり。健斗さんそれ精霊?」

 

「ああ。まだまだたくさん居るから目を回すんじゃないぞ?手札に加えた【ダンシング・エルフ】を召喚!カードを2枚伏せて更に永続魔法【凡骨の意地】を発動してターンエンド」

 

【ダンシング・エルフ】

星1/風属性/天使族/攻 300/守 200

 

健斗

LP:4000

手札:2

フィールド:【ダンシング・エルフ】

魔法罠:【凡骨の意地】

 

 

「あら、始まったみたいね」

 

「明日香さん!」

 

「俺も居るぞ」

 

「三沢くん!」

 

「十代が嬉しそうに話していたからな、様子を見に来たんだ」

 

1ターン目を終えたところでギャラリーに明日香と三沢が追加された。

 

「健斗さんって三沢とも知り合い?」

 

「イエロー寮にも良く仕事で行くからね、その時に知り合った」

 

「ふーんそうなんだ。それじゃあ俺のターン、ドロー!いくぜ【E・HERO フェザーマン】を召喚!」

 

【E・HERO フェザーマン】

星3/風属性/戦士族/攻1000/守1000

 

十代ってよく初手にフェザーマン引いてるよね。

フレイムウィングマンを絶対に出すという鉄の意志と鋼の強さを感じる。

 

「いくぜ!このままバトル!フェザーマンで【ダンシング・エルフ】に攻撃!」

 

「ダメージ計算時に罠発動、【ガード・ブロック】この戦闘で受けるダメージを0にして1枚ドローする」

 

「やっぱり防がれるよなー、カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

十代

LP:4000

手札:3

フィールド:【E・HERO フェザーマン】

魔法罠:セット2

 

 

「お互いに様子見といったところかしら」

 

「ああ。しかし健斗さんは何故あんなデッキを……?アイドルカードしか見ていないのだが」

 

「まさかアイドルカードだけでデッキを組んでたりとか?」

 

「もしそうだとしたら凄いんだな」

 

外野が何やら話しているが残念ながらこちらまでは聞こえない。

今は目の前のデュエルに集中だ。

 

「じゃあ俺のターン、ドロー!この時【凡骨の意地】が発動する!ドローフェイズに通常モンスターをドローした場合、そのカードを公開する事で更にドロー出来る!」

 

「へへ、いいぜ!どこまで続くか楽しみだ!」

 

さすがにこのカードの効果を十代は知っているらしい。

では楽しみにしている十代のために続けさせて貰おうか。

 

「では今ドローした【ハーピィ・ガール】を公開しドロー!モンスターカード【王座の守護者】!再びドロー!モンスターカード【ヴィシュワ・ランディー】!ドロー!モンスターカード【月の女神 エルザェム】!ドロー!モン……じゃ無かったのでここで終了」

 

5枚のカードを手札に加えて思案する。

フェザーマンが棒立ちに加えて十代の引きを考えるならばあの伏せはアレだろう、少し仕掛けてみるか。

 

「手札を1枚捨てて手札から魔法カード【振り出し】を発動。フェザーマンをデッキトップへ戻す!」

 

「それを待ってたぜ!罠発動【フェザー・ウィンド】!フェザーマンが場に居る時に発動した魔法か罠を無効にして破壊する!」

 

「やっぱりそれかー、フェザーマンとウィンドを同時引きするって余程の確率だよ」

 

「運も実力のうちってね!」

 

「でもね十代くん、予想されてるって事は対応もされてるって事なんだよ」

 

「えっ」

 

「こっちが本命だよ、ライフを800払い手札から魔法カード【魔の試着部屋】を発動。デッキの上から4枚をめくりその中にレベル3以下の通常モンスターがある場合、特殊召喚できる」

 

健斗

LP:4000→3200

 

「めくられたのは【戦線復活の代償】【ウンディーネ】【暴君の自暴自棄】【アルラウネ】だ。よって【アルラウネ】と【ウンディーネ】を攻撃表示で特殊召喚し残りはデッキに戻す。そして手札から【ハーピィ・ガール】を通常召喚」

 

 

【アルラウネ】

星3/地属性/植物族/攻 800/守1000

 

【ウンディーネ】

星3/水属性/水族/攻1100/守 700

 

【ハーピィ・ガール】

星2/風属性/鳥獣族/攻 500/守 500

 

 

 

「また通常モンスターね」

 

「どうやらあれは通常モンスターを軸にしたデッキのようだな。十代のE・HEROは通常モンスターも含まれているからタッグを組むなら確かにシナジーは生まれる」

 

 

「そして俺は永続魔法【ワンダー・バルーン】を発動。このカードは1ターンに1度手札を捨てる事によりその枚数に応じたバルーンカウンターを置く。そしてこのカードが存在する限り相手フィールドのモンスターの攻撃力はバルーンカウンターの数×300ダウンする。俺は手札を2枚捨てバルーンカウンターを2つ置く。よって攻撃力は600ダウンする」

 

「風船がフェザーマンに!?」

 

このカードも本来はこの時代には無いはずだが、やはりドリアードや俺の本気デッキが存在していることから予想するにカードプールが少しおかしくなっている可能性はあるな。

ソリッドビジョンを見てみると勢い良く放たれた風船がまるで意志を持つかのようにフェザーマンにまとわりついている。

十代ってハネクリボーばっかり目立つけどHERO達も精霊だよねきっと。

 

「バトルだ、【ハーピィ・ガール】で【E・HERO フェザーマン】に攻撃!」

 

【E・HERO フェザーマン】

攻:1000→400

 

「うっ!」

 

十代

LP:4000→3900

 

「続けて【ウンディーネ】でダイレクトアタック!」

 

「そうはいかないぜ!罠オープン【ヒーロー見参】これは相手の攻撃宣言時に発動できるカードで相手は俺の手札を1枚選択し、それがモンスターだった場合、特殊召喚する!」

 

「じゃあ真ん中のカードだ」

 

「大当たりだぜ健斗さん!選択されたのは【E・HERO バブルマン】こいつを守備表示で特殊召喚!」

 

「げっ、だからフェザーマン破壊させたのか」

 

【E・HERO バブルマン】

星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200

攻:800→200

 

「そういうこと!バブルマンの効果発動!召喚、特殊召喚された際に自分のフィールドがこのカードだけの場合に2枚ドローできる!」

 

十代

手札:4

 

しかもアニメ効果じゃねーか!

 

「むむ、やるね十代くん。攻撃を中止してターンエンドだ」

 

 

健斗

LP:3200

手札:0

フィールド:【アルラウネ】【ウンディーネ】【ハーピィ・ガール】

魔法罠:【凡骨の意地】【ワンダー・バルーン】

 

 

「俺のターン、ドロー!いくぜ健斗さん、手札から魔法カード【O-オーバーソウル】を発動!効果により墓地のE・HEROの通常モンスターを特殊召喚する。甦れフェザーマン!」

 

「わざわざフェザーマンを甦らせたということは……」

 

「更に手札から【融合】発動!手札の【E・HERO バーストレディ】と場の【E・HERO フェザーマン】を融合!現れろマイフェイバリットカード【E・HERO フレイム・ウィングマン】!」

 

 

【E・HERO フレイム・ウィングマン】

星6/風属性/戦士族/攻2100/守1200

攻:2100→1500

 

「まだまだぁ!更に【天よりの宝札】を発動!お互いに手札が6枚になるようドローする!」

 

瞬く間に回復する十代の手札。

これが……強欲で強欲な十代か……チート過ぎるだろ。

 

「よし、手札から【E・HERO スパークマン】を召喚!そして装備魔法【バブル・ショット】をバブルマンに装備して攻撃力は800アップ!バブルマンを攻撃表示にしていくぜバトルだ!バブルマンで【ハーピィ・ガール】を、スパークマンで【アルラウネ】をそれぞれ攻撃!」

 

 

【E・HERO スパークマン】

星4/光属性/戦士族/攻1600/守1400

攻:1600→1000

 

「くっ」

 

健斗

LP:3200→2700→2500

 

「フレイム・ウィングマンで【ウンディーネ】に攻撃!フレイム・シュート!」

 

「全滅か……フレイム・ウィングマンは戦闘で破壊したモンスターの元々の攻撃力のダメージを相手に与える、だったね」

 

LP:2500→2100→1000

 

「そーいうこと!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

十代

LP:3900

手札:2

フィールド:【E・HERO バブルマン】【E・HERO フレイム・ウィングマン】【E・HERO スパークマン】

魔法罠:セット2【バブル・ショット】

 

 

「俺のターン、ドロー。凡骨の意地は発動しない」

 

危ないところだった、十代がワンダーバルーン破壊してたら死んでた。もしくはワイルドジャギーマン出しても死んでた。

せっかく回って来たターンだ、この手札で決着を着けて見せる!

 

「まった!罠カード【砂塵の大竜巻】を発動して【ワンダー・バルーン】を破壊するぜ!これでこっちのモンスターの攻撃力が元に戻る」

 

「一手遅かったね十代くん、反撃させてもらうよ!魔法カード【トライワイトゾーン】発動!墓地のレベル2以下の通常モンスター3体を特殊召喚する。甦れ【キーメイス】【ダンシング・エルフ】【ハーピィ・ガール】!ここで装備魔法【魂喰らいの魔刀】を【キーメイス】に装備!このカードは装備時に装備モンスター以外のレベル3以下の通常モンスターを生贄に捧げその数×1000攻撃力をアップさせる!」

 

 

【キーメイス】

星1/光属性/天使族/攻 400/守 300

400→2400

 

「攻撃力がフレイム・ウィングマンを越えたわ!」

 

「あれじゃあキーメイスじゃあなくて魔刀メイスなんだな」

 

隼人の呟き通り、キーメイスは鍵から手を放すと仲間の魂を喰らい強化された身の丈以上の魔刀をブンブン振り回しながらフレイム・ウィングマンを見据えている。

 

「まだまだいくぞ!【エルディーン】を召喚し手札から【鹵獲装置】を発動!お互いのプレイヤーはモンスターを1体選択しコントロールを入れ替える。発動者は通常モンスターを選択する必要があるので俺は【エルディーン】を選択」

 

「面白い効果だな、俺は【E・HERO スパークマン】を選ぶぜ!」

 

 

【エルディーン】

星3/光属性/魔法使い族/攻 950/守1000

 

 

「健斗さんは通常モンスターデッキなんだよね?なんでアニキは利用されるかもしれないスパークマンを渡しちゃったんだろ?」

 

「【バブル・ショット】は装備モンスターの破壊を肩代わりする効果と戦闘ダメージを0にする効果がある。攻撃力が一緒ならスパークマンと相討ちになっても場に残るバブルマンの方が都合が良い。だから十代は向こうに渡すモンスターをスパークマンにしたんだろう」

 

フィールドに現れたヘンテコな装置によりお互いのモンスターの位置が変わりあちらにエルディーン、こっちにはスパークマンが現れる。

 

「手札から装備魔法【下剋上の首飾り】をキーメイスに装備」

 

魔剣に加えて首飾りを身に着けたキーメイスはもはや天使ではなく悪魔に近いだろう、スパークマンも軽く引いている。

さて、後はあの伏せがミラーフォースやミラーゲートの様な逆転のカードじゃなければいいが……いや、罠ごと踏み倒してみせる!

 

「十代くん。今度は俺の切り札を見せてあげるよ」

 

「いいぜ!どんなカードがくるのか、くぅ~ワクワクするぜ!」

 

純粋な瞳でこちらを見つめる十代に微笑み、手札から1枚のカードを掲げる。

 

「このカードはお互いの墓地のモンスターの属性の合計が6種類以上の場合に特殊召喚出来る」

 

「お互いのって事は……」

 

「そう。俺の墓地には水、地、風、光、闇のモンスターが。そして十代くんが融合素材として墓地に送った炎のバーストレディで条件を満たしているのさ!現れろ【精霊神后(エレメンタルグレイス) ドリアード】!」

 

天から色とりどりの光が降り注ぐと純白の翼を広げた美しき魔法使いがフィールドに降り立った。

 

「凄い綺麗……」

 

「あれが健斗さんのエースカード。全ての属性を司るカード、か」

 

「か、可愛い〜」

 

「でも攻撃力は0なんだな」

 

ギャラリーが口々に感想を述べる中、フィールドに降りたドリアードはこちらに微笑みを向けた後に十代にも微笑む。

 

「それが健斗さんのエースなんだな!スゲー力を感じるよ!俺ワクワクが止まらないぜ!」

 

『はじめまして、光の翼に導かれし者よ。私はドリアード』

 

「俺は遊城十代!よろしく!」

 

『クリクリー』

 

「んで、こっちが相棒のハネクリボーだ!」

 

『ふふ、健斗が待っているのでお喋りはデュエルの後に』

 

「それもそうだな、ゴメン健斗さん!続けて!」

 

「オッケー続けるぞ。【精霊神后(エレメンタルグレイス) ドリアード】の攻撃力と守備力はお互いの墓地に存在するモンスターの属性の数×500アップする」

 

精霊神后(エレメンタルグレイス) ドリアード】

星9/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0

0→3000

 

「俺の墓地も利用するなんて驚いたぜ!」

 

ぶっちゃけ炎属性だけ可愛いローレベル通常モンスターが居ないんだよ!素材用に【炎の女暗殺者】と【ファイヤー・ソーサラー】組み込んでるけど凡骨ドローが止まるのが玉に瑕。

 

「バトルフェイズ!ドリアードで【エルディーン】に攻撃!」

 

『ドリアードさまぁ……』

 

『大丈夫ですよ』

 

井戸出身で世話になった身だからか、向かって来るドリアードにエルディーンは半泣きで迎え撃とうとするがドリアードは彼女を抱き締めて頭を撫でると手を繋いで墓地の手前まで送っていきエルディーンはそのまま墓地へ歩いていきフィールドから姿を消した。

各ヒーロー達は腕を組んで様子を見守っていた、やっぱりお前らも精霊だろ。

 

十代:3900→1850

 

「……はっ!見逃すところだった!罠発動【ヒーローシグナル】!フィールドのモンスターが戦闘破壊された時にデッキか手札からE・HEROを特殊召喚出来る!」

 

やり取りに呆気に取られていた十代だがダメージ音で我に返ると罠を発動させた。

ぶっちゃけミラフォだったら死んでたがシグナルなら無問題!

 

「【E・HERO クレイマン】を守備表示で特殊召喚!」

 

【E・HERO クレイマン】

星4/地属性/戦士族/攻 800/守2000

 

 

「これでトドメだ!【キーメイス】で【E・HERO フレイム・ウィングマン】を攻撃!この時【下克上の首飾り】の効果が発動、戦闘する相手モンスターのレベルが自分より高い時に装備モンスターの攻撃力はそのレベル差×500アップする!2体のモンスターのレベル差は5!よって2500追加!」

 

【キーメイス】

攻:2400→4900

 

 

「そうはさせないぜ、速攻魔法【融合解除】を発動!フレイム・ウィングマンを融合デッキに戻してバーストレディとフェザーマンを墓地から守備表示で特殊召喚!」

 

「そうはさせない、手札から速攻魔法【禁じられた聖槍】を発動!フレイム・ウィングマンは攻撃力が800下がり魔法と罠の効果を受けなくなるため不発になる!そのまま行け、キーメイス!」

 

このカードは井戸以外の場所で拾った。ステータス主義の時代では微妙に使いにくいため捨てられたのだろうきっと。

 

「マジかよー!」

 

キーメイスの振り下ろした魔刀はフレイム・ウィングマンを真っ二つに切り裂き爆風を巻き起こす。その爆風に十代は派手に吹っ飛ばされライフが0になる音が辺りに鳴り響いた。

 

十代

LP:1850→0

 

 

ソリッドビジョンが解除されると同時にデュエルディスクを解除し吹っ飛ばされた十代の元へ寄ると十代は勢い良く立ち上がり笑顔で決めポーズを取った。

 

「負けちまったけど楽しかったぜ健斗さん!ガッチャ!」

 

「ありがとう、こちらこそ楽しかったよ」

 

こちらこそ生ガッチャありがとうございます、と心の声を秘めながら右手を差し出して握手を求めれば十代も応えてくれて硬い握手を交わした。

 

「2人とも凄いデュエルだったわ!」

 

「ああ、お互い1歩も引かない白熱した戦いだったよ」

 

「可愛いカードが見れて僕は満足です!」

 

「2人ともお疲れ様なんだな」

 

見守っていた4人もこちらに駆け寄れば感想を述べる。

それに少しの恥ずかしさと照れを感じながらもいつの間にか辺りは日が沈んでおり今日はもう解散する旨を全員に告げる。

明日香と三沢は俺のデッキが気になったらしく見せて欲しいと頼んできたのでまた時間がある時に全員で集まる約束をしてその時に見せる事を決めた。

十代は軽くドリアードやハネクリボー達と会話して解散するつもりだったが、デュエルの熱が冷めずに最後までゴネていたので翔に全部丸投げして小屋へと帰る事にした。

 

 

 

『遊城十代、彼が以前言っていた三幻魔に対抗する鍵となる少年ですか?』

 

「ああ」

 

小屋へと帰る途中に顕現したドリアードはそう訊ねてきたので肯定した。すると彼女は思案する表情を見せ、ゆっくりと口を開いた。

 

『健斗、貴方は彼をどうするつもりですか』

 

彼女は高位の精霊だ。俺が別世界の人間だというのに気付いたなら十代の事も当然分かるはず。それを踏まえた上での質問だろう。

ならば、俺の答えは決まっている。

 

「別に何もしないよ。ただ、困ってる十代の力になりたいだけさ」

 

『…………新しき光と闇はお互いを支え合うか、混じり合い新たな混沌となるか』

 

俺の答えを聞いたドリアードは沈黙。そして探るような視線を送った後にため息と共にポツリと呟いた後に姿を消した。

 

「ドリアードって格好付けた言葉使いたがるよね」

 

『忘れてください!』

 

少し揶揄うと頬を膨らませて再顕現してきた。

素直に可愛いと言っておこう。

 

 

 

 




三沢解説として便利なんでエアーマンにさせません
シャドミ並に使い回します

主人公のデッキは命名するなら
【ローレベル嫁ビートのパワーカード添え】です


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用務員、タッグに挑む(前半)

このハゲーーーーー!!!


アニメ次元決闘は難しいが十代は可愛い(挨拶)


十代とのデュエルから少し経過した日、遂に制裁タッグデュエルの日を迎えた。

この日のために明日香や三沢に協力してもらい汎用カードを分けてもらったりデッキの調整をしたりと色々と準備をしてきた。

後から聞いたが十代とデュエルをした後に翔と十代がデュエルを行い原作通りの展開になったらしい。十代はカイザーに負け、翔はカイザーと会話してパワボンの封印を解いてめでたしめでたし。

俺はカイザーに会ってないけど向こうは明日香経由で知ってそう。

 

 

『慢心はいけませんよ』

 

「もちろん、全力で臨むさ」

 

控え室で待っている時、傍で顕現したドリアードの言葉にそう答えながらデュエルディスクにデッキをセットする。

 

「健斗さん、行きましょう!」

 

十代が控え室まで呼びに来たので頷いて立ち上がり会場へと向かう。

会場のデュエル場へ入るも歓声等は無い。どちらかと言うと相手である伝説のデュエリスト目当ての人間が多いのだろう。

レッド生と用務員の退学&退職なんて普通は興味湧かないよな、うん。

 

翔や隼人や三沢を観客席で発見したので十代と一緒に笑顔で手を振る。

その近くには明日香も居るが珍しくブルーの女子達と集まっている。

明日香達のグループにピンク髪が居るけどあれもしかしてツンデレか?後はレインとゆきのんと……あ、あの青髪はさちこ(誤字にあらず)じゃないか?

ももえとジュンコ以外にもタッグフォースキャラとも仲良かったんだな明日香。

 

 

「ではこれよりタッグデュエルを始めルーノデスネ」

 

ステージに上がったクロノスの宣言により会場が歓声に包まれた。

 

「対戦相手の方は誰でしょうか?」

 

「焦らなくてもちゃんと呼んでるノーネ。これは制裁を目的としたデュエル、対戦相手はこの2人の相手をするのに相応しい伝説の決闘者なノーネ!」

 

俺の問いかけに応えるクロノス。その言葉の後に掛け声が響くと対戦相手らしき2人がステージ上でアクロバティックなパフォーマンスを披露すると俺達の目の前に背中合わせで着地する。

 

「我ら流浪の番人」

 

「迷宮兄弟」

 

額に「迷」と「宮」が刻まれた中華服の兄弟。

初代の王国編に出てきた迷宮兄弟である。お前ら流浪って事は仕事クビになったんだな。

 

「すっげー!カンフー映画みたいだ!」

 

「彼等はあの伝説の決闘王、武藤遊戯とデュエルした事のある伝説の決闘者でスーノネ」

 

デュエル以外はクッソ卑怯な事した上に負けてませんでした?

 

「お主等に恨みは無いが」

 

「訳あって対戦する」

 

「我らを倒さねば」

 

「道は開かぬ」

 

「「いざ、勝負!」」

 

さすが兄弟、そしてプロとも言うべきか、2人のパフォーマンスと動きのシンクロ率は高い。

 

「こんな人と戦えるなんてワクワクするぜ!」

 

十代は当然のようにやる気だし俺も気持ちを切り替えてデュエルに臨もう。

 

「なあ健斗さん、俺達もあれやろうぜ!」

 

突然十代がそう言うと視線をこちらに向けて微笑みかける。

やだ十代可愛い。じゃなくて、意図を理解できない俺に十代は耳打ちしてくる。

その後俺達は迷宮兄弟へ向き直った。

 

「それでは」

 

「こちらも」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

迷宮兄弟の真似をして十代と一緒にデュエルディスクを開くポーズを決めてみた。

視界の端で明日香や翔達がずっこけているのが見えた。

 

「ふっ、面白い小僧達だ」

 

「だが手加減はせんぞ?」

 

良かった、迷宮兄弟は笑って受け入れてくれた。

スベったら悲しかった。

 

「ではでは両者位置に着いーテ!タッグパートナーへの助言は禁止デスーノ。LPは両者合わせての8000で墓地とフィールドはお互いに共有になりまスーノ。それでハ!」

 

「「「「決闘(デュエル)!」」」」

 

 

「先攻は私だ、ドロー。【地雷蜘蛛】を召喚しカードを1枚伏せてターンエンド。1ターン目は全員攻撃出来ないからな」

 

【地雷蜘蛛】

星4/地属性/昆虫族/攻2200/守 100

 

 

迷宮兄

LP:8000

手札:4

モンスター:【地雷蜘蛛】

魔法罠:セット1

 

 

「じゃあ俺のターン、ドロー」

 

ドローしてから手札を眺める。

十代とは綿密な打ち合わせを行いお互いのデッキを把握している。

残念ながら十代はMやVなどの亜種HEROに属性融合HERO、いわゆる漫画版HEROを持っていなかった。

当然エアーマンやシャドミやソリ男も居ない。

魔法の呪文アライブアバレチカラは使えないという訳だ、いやぶっちゃけ使えたらパワーバランス壊れるとかいう次元じゃ無くなる。

 

思考が逸れた。

要は攻めを十代に任せて俺はサポートや防御を行うという結果に落ち着いた。

 

「永続魔法【凡骨の意地】を発動。カードを1枚セットし手札から【ウォーター・ガール】を守備表示で召喚してターンエンド」

 

 

【ウォーター・ガール】

星4/水属性/水族/攻1250/守1000

 

 

健斗

LP:8000

手札:3

モンスター:【ウォーター・ガール】

魔法罠:セット1【凡骨の意地】

 

 

「私のターンドロー、手札から【生け贄人形】を発動。兄者の場の地雷蜘蛛を生贄に手札からレベル7のモンスターを特殊召喚する。現れよ【風魔神-ヒューガ】そして【カイザー・シーホース】を召喚する」

 

 

【風魔神-ヒューガ】

星7/風属性/魔法使い族/攻2400/守2200

 

【カイザー・シーホース】

星4/光属性/海竜族/攻1700/守1650

 

 

「さすがだな弟よ」

 

「いや、兄者のモンスターを勝手に使ったのは心苦しい、償いをさせてくれ」

 

この辺の会話もパフォーマンスなんだろうか。

プロって演出にも気を遣うんだな。

 

「手札から【闇の指名者】を発動。このカードは宣言したカードが相手のデッキにあればそれを手札に加えさせる。私が指名するのは【雷魔神-サンガ】」

 

「当然持っている」

 

そう言って迷宮兄はサンガを手札に加える。

この裁定だともし俺が十代のターンに増G発動したら十代の特殊召喚でもドロー出来るなこれ。

あるかどうか分からないけど今度増G探そう。

 

「これでターンエンド」

 

 

迷宮弟

LP:8000

手札:2

モンスター:【カイザー・シーホース】【風魔神-ヒューガ】

魔法罠:セット1

 

 

「見たこともねぇモンスターだ!俺のターンドロー!おっと、凡骨の意地は発動しないぜ」

 

「それは通常モンスターを引く限りドローを続けられるカード」

 

「通常モンスターでは無かったみたいだな」

 

「どうだろうな!【カードガンナー】を守備表示で召喚し効果発動!デッキの上から3枚までを墓地に送り枚数×500攻撃力をアップさせる!俺は3枚墓地へ送る。カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

【カードガンナー】

星3/地属性/機械族/攻 400/守 400

 

 

十代

LP:8000

手札:3

モンスター:【ウォーター・ガール】【カードガンナー】

魔法罠:セット3【凡骨の意地】

 

 

周囲からは攻撃できない1ターン目に、しかも守備で効果を発動したことにどよめきが広がっているが墓地に落ちたカード見てもこいつら同じこと言えるのかな。

共有情報で墓地を確認した俺のデュエルディスクには【ネクロ・ガードナー】【E・HERO ネクロダークマン】【非常食】が表示されている。

十代ほんとヤバイな……。

 

 

「私のターンドロー!何を企んでいるかは知らんがいくぞ永続罠【リビングデッドの呼び声】を発動し墓地の【地雷蜘蛛】を復活させ更に【生け贄人形】を発動。手札の【水魔神-スーガ】を特殊召喚!更に【カイザー・シーホース】を生け贄にする」

 

「カイザー・シーホースは光属性のモンスターを召喚するときに2体分の素材となることができる」

 

「お見せしよう【雷魔神-サンガ】!」

 

 

【水魔神-スーガ】

星7/水属性/水族/攻2500/守2400

 

【雷魔神-サンガ】

星7/光属性/雷族/攻2600/守2200

 

 

「魔神が3体……来るぞ十代くん!」

 

「まぁそう慌てるな、生け贄人形を使用したターンは攻撃できない。カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「こなかったですね健斗さん」

 

 

迷宮兄

LP:8000

手札:2

モンスター:【雷魔神-サンガ】【風魔神-ヒューガ】【水魔神-スーガ】

魔法罠:セット1【リビングデッドの呼び声】

 

 

来ねーじゃねーかアストラル!(幻聴)

正直な話、今合体する理由が無いし手札に門番居ないんだろうな多分。

 

「俺のターン、ドロー!俺がドローしたのは通常モンスター【氷水】よって追加ドロー!ここで終了する」

 

ドローして思案する。

今引いたのは【手札断殺】だ、そして相手の手札はそれぞれ2枚。

これ使ったらどちらかが門番握ってても確実に墓地に送れるよな。

でもここまで整えた迷宮兄弟にそれしていいの?

いやでも迷宮兄弟といえば門番っていうの多分有名だろうしプロならメタられても文句言わないよね?言わないだろ!ヨシ!(現場決闘者)

 

「カードガンナーの効果発動、デッキから3枚落とす」

 

すぐさま墓地を確認すると【下降潮流】【恍惚の人魚】【エンジェル・魔女】の表示が。悪くない。

 

「魔法カード【天使の施し】を発動。3枚引いて2枚落とす。更に【手札断殺】を発動。全てのプレイヤーは手札を2枚捨てた後に2枚ドローする」

 

「なんだと!?」

 

その様子だと弟の方が門番握ってたみたいだな。でもまぁこれルールなので、悔しいでしょうねぇ。

 

『健斗、凄い悪い顔してますよ』

 

ドリアードの声が聞こえるが慢心するなと言ったのは誰だったかな。

断殺の処理が終わり墓地を確認すると相手の方に予想通り【ゲート・ガーディアン】が落ちていた、やったぜ。

さて、こっちの墓地は潤ってきたのはいいけど肝心のドリアードが居ないし攻めの手札ではないな。

 

「モンスターをセットしてターンエンド。十代くん、後は任せた」

 

「任されたぜ!」

 

 

健斗

LP:8000

手札:2

モンスター:セット1【ウォーター・ガール】【カードガンナー】

魔法罠:セット3【凡骨の意地】

 

 

「小癪な真似をするではないか。私のターン、ドロー!我らの場には三魔神が居る、そのモンスターなど踏み潰してくれよう!魔法カード【ハリケーン】を発動!お互いの魔法罠を手札に戻す!」

 

 

十代

手札:3→5

 

健斗

手札:2→4

 

迷宮兄

手札:2→4

 

迷宮弟

手札:2

 

 

場の魔法罠が手札に戻りましたが十代にドローを託せたのと三魔神くらいなら死なないので問題ありません。

リビデ回収されたけど門番は正規召喚できていないから復活できないし問題ありません。

 

 

「バトルだ!ヒューガで【カードガンナー】に攻撃!」

 

「【カードガンナー】が戦闘で破壊されたとき、デッキからカードを1枚ドローできる、ドローするぜ」

 

「ふん、サンガとスーガは兄者のモンスター、よって私は攻撃権を持たぬ。カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

迷宮弟

LP:8000

手札:1

モンスター:【雷魔神-サンガ】【風魔神-ヒューガ】【水魔神-スーガ】

魔法罠:セット1

 

 

攻撃権は召喚したプレイヤー、バウンスはそれぞれのプレイヤーへ。

実際にやると分かるけどこれタッグフォースと違って本当に墓地と場とライフを共有してるだけで別々に戦ってる感じだな。

何はともあれ手札が潤った十代のターンだ。

 

 

「俺のターンドロー!いくぜ魔法【融合】を発動!手札の【E・HERO バーストレディ】と【E・HERO クレイマン】を融合し【E・HERO ランパートガンナー】を守備表示で融合召喚!」

 

 

【E・HERO ランパートガンナー】

星6/地属性/戦士族/攻2000/守2500

 

 

「ランパートガンナーは守備表示の時、相手プレイヤーへ直接攻撃することが出来る!ランパート・ショット!」

 

「甘い!三魔神は一度だけ戦闘の間に相手モンスターの攻撃力を0にする効果がある!ヒューガの効果を発動し攻撃力を0にする!」

 

おい、その効果は自分が戦闘するときじゃないのか、お前らもアニメ効果か。

 

「そんな効果があるんだな!じゃあ魔法【融合回収】を発動して墓地の【融合】と融合素材となった【E・HERO クレイマン】を手札に加えて【E・HERO クレイマン】を守備表示で召喚してカードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

 

十代

LP:8000

手札:2

モンスター:セット1【ウォーター・ガール】【E・HERO クレイマン】

魔法罠:セット2

 

 

「私のターンドローだ!ふっ、小細工もここまでだ小僧達よ!手札より【戦士の生還】を発動!墓地の【ゲート・ガーディアン】を手札に加える」

 

「あのモンスターは!」

 

「見せてやろう!3体の魔神を生贄にこのモンスターは特殊召喚できる。現れよ【ゲート・ガーディアン】!」

 

 

【ゲート・ガーディアン】

星11/闇属性/戦士族/攻3750/守3400

 

 

「攻撃力3750……」

 

十代は驚いているが3体の方が強いとは言ってはいけない。

 

「驚いたか小僧。だがまだ早いぞ、手札より装備魔法【メテオ・ストライク】を発動し【ゲート・ガーディアン】に装備。これで守備貫通を得た。ではバトルだ!【ゲート・ガーディアン】で伏せモンスターに攻撃する!」

 

「攻撃したのはリバースモンスターの【炎の女暗殺者】だ、デッキの上から3枚をゲームから除外し800ダメージを与える!」

 

「だが貫通ダメージは受けてもらう!」

 

「うっ……」

 

 

【炎の女暗殺者】

星4/炎属性/炎族/攻1500/守1000

 

 

健斗・十代

LP:8000→6250

 

迷宮兄弟

LP:8000→7200

 

 

【ゲート・ガーディアン】の攻撃で【炎の女暗殺者】は爆散し余波の爆風がソリッドビジョンで襲いかかる。だが死の間際に放った3本のナイフが迷宮兄に当たりライフを削った。

 

「ここで罠オープン【ヒーロー・シグナル】戦闘で自分の場のモンスターが破壊された時にデッキからレベル4以下のHEROを特殊召喚する!来てくれ【E・HERO スパークマン】」

 

 

【E・HERO スパークマン】

星4/光属性/戦士族/攻1600/守1400

 

 

「ただではやられんか、だがかすり傷よ。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

迷宮兄

LP:7200

手札:1

モンスター:【ゲート・ガーディアン】

魔法罠:セット3【メテオ・ストライク】

 

 

リビデ使わなかったな、弟に任せるつもりか?仕掛けてみよう。

 

「俺のターン、ドロー。では【凡骨の意地】を再び発動。更に魔法【馬の骨の対価】を発動して場の【ウォーター・ガール】を墓地に送り2ドロー。じゃあ手札から魔法【鹵獲装置】を発動」

 

「そのカードは!」

 

「効果は知っているみたいですね」

 

さあ、どう出てくる。

 

「兄者、助太刀するぞ。【リビングデッドの呼び声】を発動し【風魔神-ヒューガ】を復活させる!」

 

「助かったぞ弟よ、私は【風魔神-ヒューガ】を選択する」

 

「ではこちらは十代くんの【E・HERO クレイマン】を選択します。門番欲しかったんですけどねー、ではバトルに行きます」

 

「させん!速攻魔法【サイクロン】で自分の【リビングデッドの呼び声】を破壊しヒューガをこちらの墓地に返してもらう!」

 

「上手くはいかないですね、ですが伏せは使わせました。カードを2枚セットしてターンエンド」

 

 

健斗

LP:6250

手札:2

モンスター:【E・HERO スパークマン】【E・HERO ランパートガンナー】

魔法罠:セット3【凡骨の意地】

 

 

上手いな、ヒューガを敢えて選択させてバトルに持ち込ませて破壊させてきた。

他のモンスターだとこっちの魔法罠のコストに切り替えて来るのを嫌って勝負に出たみたいだな。

 

 

 

――勝負はまだまだ続く。

 

 





意地でも門番を出す兄弟VS門番メタの用務員

こいつ本当に主人公側の決闘者なんですかね……?


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用務員、タッグに挑む(後半)

筆がノッたので連続投稿するね

いいよ


健斗・十代

LP:6250

手札:2・2

モンスター:【E・HERO スパークマン】【E・HERO ランパートガンナー】

魔法罠:セット3【凡骨の意地】

 

 

迷宮兄弟

LP:7200

手札:1・1

モンスター:【ゲート・ガーディアン】【E・HERO クレイマン】

魔法罠:セット1【メテオ・ストライク】

 

 

「私のターンだ、ドロー!クレイマンを生贄に【雷帝ザボルグ】を召喚!生贄召喚に成功した事により効果で【E・HERO ランパートガンナー】を破壊する!」

 

 

【雷帝ザボルグ】

星5/光属性/雷族/攻2400/守1000

 

 

「ランパートガンナーが!」

 

「ゆくぞ、バトルだ!ザボルグで【E・HERO スパークマン】を攻撃!」

 

「健斗さん!」

 

「それを待っていた!罠発動【ジャスティブレイク】このカードは自分フィールドの通常モンスターが攻撃対象になった時に発動できる!フィールドの表側攻撃表示通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する!」

 

「なに!?」

 

ザボルグの放った雷以上の雷が相手フィールド上に降り注ぎ全てのモンスターを焼き尽くした。

 

「やったぜ!ゲート・ガーディアン撃破だ!」

 

十代は相手のエースの撃破に喜んでいるが相手はあまり慌てた様子を見せない。

 

「正直ここまでやるとは思わなかったぞ小僧達よ、少し侮り過ぎたようだな。私はカードを1枚伏せてターンエンドだ。兄者、すまない」

 

「なあに、お前だけの責任ではないさ」

 

 

迷宮弟

LP:7200

手札:0

モンスター:無し

魔法罠:セット2

 

 

「よーしいくぜ俺のターンドロー!凡骨の意地は発動しないぜ。墓地の【E・HERO ネクロダークマン】の効果でこのカードが墓地に存在するとき1度だけ生贄なしでモンスターを召喚できる。【E・HERO エッジマン】を召喚!」

 

【E・HERO エッジマン】

星7/地属性/戦士族/攻2600/守1800

 

「バトルだ!エッジマンでプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

「させん!カウンター罠【攻撃の無力化】を発動しバトルを終了させる!」

 

「それなら俺はこれでターンエンド!」

 

 

十代

LP:6250

手札:2

モンスター:【E・HERO スパークマン】【E・HERO エッジマン】

魔法罠:セット2【凡骨の意地】

 

 

「弟よ、すまないな。では私のターンだ。ドロー!【ゲート・ガーディアン】を打倒した貴様らに真の切り札をお見せしよう!」

 

そう宣言すると迷宮兄は高らかに宣言した。

 

「このカードは自分の墓地に【ゲート・ガーディアン】が存在する時にライフを半分払うことで発動できる!【ダーク・エレメント】を発動!デッキから【闇の守護者-ダーク・ガーディアン】を特殊召喚する!現れろ!」

 

 

迷宮兄弟

LP:7200→3600

 

【闇の守護者-ダーク・ガーディアン】

星11/闇属性/戦士族/攻3800/守3700

 

 

闇の中より現れたのは上半身が人間で下半身が蜘蛛の体を持つ、斧を携えた異形の守護者。

 

 

「すげぇ……まだこんなモンスターが居たなんて」

 

「ダーク・ガーディアンは戦闘では破壊されん。ではバトルだ、【E・HERO スパークマン】に攻撃!」

 

「墓地の【ネクロガードナー】の効果発動!このモンスターを除外することで攻撃を1度だけ無効にする!」

 

「しぶといではないか。では私はこれでターンエンド」

 

 

迷宮兄

LP:3600

手札:1

モンスター:【闇の守護者-ダーク・ガーディアン】

魔法罠:セット1

 

 

「俺のターン、ドロー!ドローは【音女】なので公開し追加ドロー!ここで終了する」

 

「随分とドローするではないか」

 

「よいカードは引けたか?」

 

エースが居るからって随分余裕で煽るじゃないか。

良いカード?無いよぉ!ずっとセットしてる【暴君の自暴自棄】は十代の妨害になるから今は使えないし手札は通常モンスターだらけだ。

 

「モンスターをセットしてターンエンド。ごめん十代くん」

 

「大丈夫ですよ健斗さん!」

 

 

健斗

LP:6250

手札:4

モンスター:セット1【E・HERO スパークマン】【E・HERO エッジマン】

魔法罠:セット2【凡骨の意地】

 

 

「私のターンだ、ドロー。兄者ばかりに苦労は掛けられんな【強欲な壺】を発動し2枚ドローする」

 

みんな強欲だなぁ。

よほどいいカードが引けたのか迷宮弟はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「手札より【死者蘇生】を発動!甦れ【ゲート・ガーディアン】!」

 

良いカードってレベルじゃねぇぞ!おい!

 

「手札より魔法【泉の精霊】を発動し墓地の【メテオ・ストライク】を手札に加える。ではバトルにゆくぞ、ゲート・ガーディアンで【E・HERO スパークマン】に攻撃!」

 

「くっ!」

 

十代・健斗

LP6250→4150

 

「【泉の精霊】で手札に加えたカードは発動は出来ないがセットは可能。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

迷宮弟

LP:3600

手札:0

モンスター:【闇の守護者-ダーク・ガーディアン】【ゲート・ガーディアン】

魔法罠:セット2

 

 

さて、割とピンチだ。

十代の手札に【融合】があるのは分かるが破壊効果のあるプラズマヴァイスマンもサンダージャイアントも素材が両方墓地にあるため召喚が難しい。

 

 

「そんな難しい顔しなくても大丈夫だぜ健斗さん」

 

声を掛けられ横を見ると十代が笑顔を向ける。

 

「俺はまだ諦めてない。いや、あのモンスターをどう倒すか考えてワクワクしてるんだ。だから健斗さん、安心してくれ」

 

本当にデュエルバカなんだな十代って。

でも十代の言う通りここで折れていたらこの笑顔を守ることは出来ない。

十代にはデュエルを楽しんでもらいたい、それなら俺も楽しまないと。

 

「ごめんね十代くん、おかげで目が覚めたよ。――思いっきりやっておいで」

 

「ああ!いくぜ相棒!」

 

『クリクリー』

 

十代はそう言ってデッキに手を掛けた。

その傍にはハネクリボーが寄り添って十代を応援している。

 

 

「どうした」

 

「サレンダーの相談は終わったか?」

 

「いいや、悪いけどこの勝負に勝つのは俺達だぜ!俺のターン、ドロー!凡骨の意地は発動しない!」

 

『クリクリー!』

 

「まずは魔法【ホープ・オブ・フィフス】を発動!墓地の5体のE・HEROをデッキに戻してシャッフルしその後2枚ドローする。俺は墓地の【E・HERO スパークマン】【E・HERO クレイマン】【E・HERO バーストレディ】【E・HERO ネクロダークマン】【E・HERO ランパートガンナー】をデッキに戻し2枚ドロー!」

 

さすが十代、ここぞという時の引きが強い。

 

「よし、手札から【サイクロン】発動!あんたが伏せたカードを破壊するぜ!」

 

「【メテオ・ストライク】を破壊し守備を固めるつもりか」

 

「だが甘いぞ小僧!カウンター罠【アヌビスの裁き】を発動する!手札を1枚捨て相手が発動した魔法罠を破壊する魔法を無効にして破壊する」

 

なんつーピンポイントなカードを持ってんだこいつら……。

 

「ちぇっ、止められたか」

 

「ふ、まだ効果は続いているぞ。その後に相手フィールドのモンスターを1体破壊しその元々の攻撃力分のダメージを与える。【E・HERO エッジマン】を破壊しその攻撃力2600のダメージを受けてもらう!」

 

「うあぁっ!」

 

 

十代・健斗

LP:4150→1350

 

 

「へへっ、ミスっちまった。俺は【ハネクリボー】を守備表示で召喚してターンエンドだ」

 

 

【ハネクリボー】

星1/光属性/天使族/攻 300/守 200

 

 

十代

LP:1350

手札:2

モンスター:セット1【ハネクリボー】

魔法罠:セット2【凡骨の意地】

 

 

「サレンダーしないか」

 

「よかろう、ならば引導を渡してやる。私のターン、ドロー!伏せカードを発動する」

 

「兄者の場の【闇の守護者-ダーク・ガーディアン】に【メテオ・ストライク】を装備する」

 

「バトルだ!ダーク・ガーディアンで【ハネクリボー】に攻撃!」

 

バトルフェイズに入り異形の守護者がハネクリボーを抹殺せんと武器を振り下ろす。

会場の観客も終わったと見切りをつけて立ち上がろうとする者もいる。

 

 

『私の出番は……ああ、もう終わりみたいですね』

 

隣で顕現したドリアードがぽつりと呟く。

その声色からしてデュエルの結果と、自分の出番が無かったことに拗ねているのが伺える。

 

「ああ終わったよ――俺たちの勝ちだ」

 

 

突如としてハネクリボーが光に包まれ姿を消し、ダーク・ガーディアンは対象を見失う。

 

「何だ、なにが起きた!?」

 

「俺はバトルフェイズの時に速攻魔法【進化する翼】を発動していたのさ」

 

「それは最初から伏せられていたカード!」

 

「このカードは自分フィールドの【ハネクリボー】と手札2枚を墓地に送り発動できる。手札・デッキから【ハネクリボー Lv10】を特殊召喚する!こい相棒!」

 

 

【ハネクリボー LV10】

星10/光属性/天使族/攻 300/守 200

 

 

『クリィッ!』

 

天から光が降り注ぐと白き翼を持つ龍と合体したハネクリボーが現れると十代を守るようにダーク・ガーディアンの前に立ちはだかる。

 

「レベルモンスター!?だが攻撃力はこちらが上だ、蹴散らせダーク・ガーディアン!」

 

「【ハネクリボー LV10】は相手バトルフェイズ中にこのモンスターを生贄に捧げることで相手の攻撃表示のモンスターを全て破壊する!そして破壊したモンスターの元々の攻撃力の合計のダメージを相手に与える!」

 

『クリクリクリクリィーッ!』

 

ハネクリボーの退場時に放った光はダーク・ガーディアンとゲート・ガーディアンを飲み込み爆発した。

その爆風の余波が迷宮兄弟に襲いかかり2人を吹き飛ばす。

 

 

「「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 

迷宮兄弟

LP:3600→0

 

 

「勝者、十代&健斗ペアなノーネ!」

 

勝者を告げるクロノスのアナウンスに会場が湧き上がる。

翔達の方を見れば笑顔で手を振り何か叫んでいるのでこちらも手を振り返す。

 

 

「小僧とみて侮っていた」

 

「見事なデュエルだったぞ」

 

声を掛けられそちらを向くと復活した迷宮兄弟が居た。

 

「それでーハお互いの健闘を讃えて今一度拍手をお願いするノーネ!」

 

「対戦ありがとうございました」

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

「機会があればまた戦いたいものだ」

 

「次はこうはいかんがな」

 

拍手と歓声に包まれる中で握手を交わしてそう会話し、迷宮兄弟は去っていった。

 

「見事だったよ2人とも」

 

「鮫島校長」

 

ステージから降りたところで笑顔の校長が俺達を出迎えた。

あー、そういえば……

 

「校長!これで俺の退学と健斗さんの退職はチャラになるんですよね!」

 

「ああもちろん。だが君はそれとは別に夜間外出の罰がある。反省文を書いて提出すること、健斗さんは十代くんがキチンと書き終わるまで見張っててくださいね」

 

笑顔の十代は一転して苦しい表情になり「そんなー!」と叫ぶとステージから走り去っていった。

あとで何か作って持って行ってあげよう。

 

「お疲れ様でした遊佐くん。君が学園に残ってくれて嬉しく思うよ。倫理委員会の件は私に任せて今まで通りの業務に戻ってくれ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

校長と会話した俺は十代を追いかけるためにステージを後にする。

なにはともあれ学園に残れて良かったという安堵感で俺の心は一杯だった。

 

 

 

 

 

 

「健斗さんっていつから精霊が見えるようになったんですか?」

 

制裁デュエル勝利記念のプチ宴会がレッド寮で行われた後、寮の談話室で反省文を書いている十代を見守っていたらそんな事を聞かれた。

 

「どうしたんだい、いきなり」

 

「いや、ちょっと気になって。俺と健斗さん以外に見える人って居ないし」

 

十代はそういうとシャーペンから手を放して聞く体制に入っている。

でも減るものじゃないし休憩がてら話してもいいだろう。

 

「この島に来た時だよ。デッキを探しているときに精霊が集まっているスポットがあってね、そこでドリアードと出会って見えるようになったんだ」

 

「へー」

 

そう答えてお茶を飲み干すと十代は静かに語り始めた。

 

「俺、最近思い出したんだけど多分子供のころから精霊が見えてたんだ。でもなぜか最近までその事をサッパリ忘れてて、しかも精霊も見えなくなってて……相棒を遊戯さんに託された時にまた精霊が見えるようになってから思い出したんだ。でも、小さい頃の記憶が所々抜けてる感じがして全部ハッキリ思い出せなくて……モヤモヤしてるんだ」

 

「そっか……不安なんだね」

 

事の顛末を知っている俺からすると何とも言えない。

まさか「その精霊が原因でうなされてたから両親が記憶消した」なんて……ねぇ?

 

「急に変なこと言ってゴメン、でもこういうの話せるの健斗さんしかいないから」

 

十代に頼られるってもう控えめに言って最高では?

ええんやで!もっと頼ってええんやで!あと俺以外にも頼ろうな!ちょっと弱いとこ見せないと皆離れていくからね!なんでも一人で抱えんなよ!いやマジで(マジで)

 

「もうすぐ冬休みだし一回実家に帰って親御さんに聞いてみたらどうだい?それに今なら精霊も見えるし小さいころに見えていた精霊にまた会えるかもしれないよ。そうしたら分かるんじゃないかな?」

 

俺から言える事はここまでだろう。別にユベルやネオスの事は早く思い出しても問題は無いし、というか早く思い出してユベルの機嫌が治るならそれに越したことはない、本当に。

 

「そっか……そうかもな!ちょっと考えてみるよ」

 

「十代くん。あんまり1人で悩んじゃダメだよ。誰かに相談するのは悪い事じゃない」

 

「分かったよ健斗さん!よし、反省文なんてすぐに終わらせてやるー!」

 

 

 

この時の十代への言葉で後悔することになる事を俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 




手札管理がめんどくさかった(爆)
デュエルで、十代に……笑顔を……


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用務員の冬休み

十代は出ません


制裁タッグデュエルから数日が経過した。

用務員の作業に再び追われる日々を過ごすうちにいつの間にか三沢と万丈目のデュエルは終わっており万丈目は武者修行の旅に出るためアカデミアを去っていった。

万丈目の捜索を十代にお願いされた時にようやく時系列を把握した俺は在学中に万丈目と話してないなと思いつつ協力した。

サルに関してはほぼ原作通りだったが俺としてはサルよりサルが居た施設の方が大事なのでこっそりと、単独行動スキル持ちが判明したドリアードを派遣して施設の場所をマッピングする事に成功。この場所は後でデュエルマッスル野郎のコブラが引きこもるので事前に細工を施しておく事に決めたのだった。

 

何はともあれアカデミアに冬休みがやってきた。

ほとんどの生徒が実家へ帰る中、帰る家が無い俺はレッド寮で大徳寺先生や残った翔と隼人に餅を振舞っているのだった。

 

「やっぱり冬には熱々のお餅だにゃー」

 

「それにしてもアニキが帰るなんて意外だったっスね」

 

「十代くんには十代くんの用事があるんだよ」

 

原作と違う点で云えば、本来は残った十代が実家に帰っている。

俺が精霊についての悩みに答えたからだろう、両親に話を聞くと言って1番の船で島を出た。出る時に直ぐに帰るとも言っていたが。

精霊についてだが、ネオスやユベルの事を十代が早く思い出しても問題は無い。ネオスは味方だし思い出す事によってキモイルカ達が早期参戦してくれるのは全然構わない。

反対にユベルに関しては既に手遅れな上に前世フェイズというどうしようもない問題があるため、ちょっと早く思い出してユベルが苦しんでたのを十代が理解し受け止める心の余裕を作るくらいしか対策が無い。

 

原作については前世含めて何十年も前の記憶だから自信は無いが何とかなるだろう。

そう思いながら餅を頬張っているとレッド寮の入り口のガラスが派手に割れる音が響きブルーの制服姿の男子生徒が飛び込んできた。

何事かと駆け寄る大徳寺先生や翔達に、ブルーの生徒の向田は怯えた様子で「サイコショッカーが……サイコショッカーが……」と呟くだけだった。

その単語により摩耗していた記憶の一旦が蘇る。

そうだ、確か序盤にサイコショッカーの精霊と十代が戦う話があった。

だが今十代は居ない、ならばどうする?

悩んでいる間に向田は事の経緯を大徳寺先生に話していた。

 

『健斗、気をつけてください、精霊の気配がします』

 

ドリアードがわざわざ顕現して注意を促してきた時、部屋の電気が突然切れた。

 

『そこです健斗!』

 

「用務員キック!」

 

翔や隼人や大徳寺先生が騒ぎ出す中、隣のドリアードは向田を捕まえようとするサイコショッカーが居るであろう方を指し示し俺は蹴りを繰り出すが手応えは無かった。

 

『ククク、こいつは頂いていくぞ』

 

怪しい男の声が響き、電気が復旧すると全身黒づくめの男は意識を失っている様子の向田を脇に抱えて逃走した。

 

「なんだあれ!?」

 

「本当にサイコショッカー!?」

 

「俺が行ってくる、大徳寺先生は翔くんと隼人くんを頼みます」

 

「待つのにゃ遊佐くん!」

 

「1時間経っても戻らなかったら人を呼んでください!」

 

大徳寺先生に2人を押し付けて走り出す。

十代が居ない責任の一端が俺にあるならこの事態は俺が解決するしかないだろう。

 

『健斗、あっちに逃げました』

 

「ありがとうドリアード、その前に1度小屋に戻る」

 

ドリアードが指し示す方角は原作通り変電所がある場所だった。

それを確認した俺は変電所には向かわず小屋に戻る。

鍵の掛かった小屋の扉を開け、更に鍵の掛かった机の引き出しを開けて1つのデッキケースを取り出す。

 

『それは……』

 

ドリアードの言葉を無視してケースを開きディスクにそのデッキをセットし小屋を飛び出して今度こそ変電所へ向かう。

ドリアードは何も言わずに黙って後に続いた。

 

走り出して数分で変電所に到着。立ち入り禁止のその場所は扉が開いており不気味に発光しており足を踏み入れるとともに青白い電気が走り始めた。

 

『ククク、人間よ。何をしに来た』

 

「決まってんだろ、生徒を返してもらうためだ」

 

『人間如きが私に勝てるとでも?……ほう、貴様かなりの数の精霊を連れているな。気が変わった、貴様が代わりになるならこの3人は離してやってもいい』

 

そう言うとサイコショッカーは黒づくめの衣装を脱ぎ捨てその姿を晒す。カード通りのグロいデザインを実際に目にすると迫力があるというかなんというかキモさ3割増しだ。

そして電気が照明代わりに辺りを照らすと気絶した3人の生徒が目に入る。

 

「シンプルにデュエルで決めようぜ。俺が勝ったら3人を離す、お前が勝ったら好きにしやがれ」

 

『良いだろう』

 

ごく自然な流れでデュエル。

俺はデュエルディスクを構えサイコショッカーはホログラムのようなカードを展開する。

 

「『決闘(デュエル)!』」

 

『私のターンだ、ドロー。【怨念のキラードール】を召喚し更に永続魔法【エクトプラズマー】を発動する』

 

【怨念のキラードール】

星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1700

 

サイコショッカーのフィールドに斧を持った不気味な人形が現れる。

さて、原作通りなら……

 

『私はこれでターンエンド。この瞬間に【エクトプラズマー】の効果が発動!エンドフェイズ時にフィールドのモンスターを生贄にする事でそのモンスターの攻撃力の半分を相手に与える』

 

キラードールの魂と思われる光がこちらに向かって飛び直撃する。

ソリッドビジョンとは思えない衝撃が身体に襲いかかると共に自分の足元が透けているのを確認した。

 

健斗

LP:4000→3200

 

「それで終わりか」

 

『強がるのはよせ、貴様の足元をよく見てみろ』

 

「透けてるな、じゃあ俺がお前のライフを削れば同じ事がお前に起こるんだな?」

 

『ククク、出来ればな。さぁお前のターンだ』

 

 

サイコショッカー

LP:4000

モンスター:無し

魔法罠:【エクトプラズマー】

手札4

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

デッキからカードをドローし手札を確認する。

ああ、最高過ぎる手札だ。

 

「手札からフィールド魔法【王の舞台(ジェネレイド・ステージ)】を発動。更に手札から速攻魔法【手札断殺】を発動。お互いのプレイヤーは手札を2枚捨て2枚ドローする」

 

『いいだろう……!?』

 

辺りは9つの光が輝く空間へと変わる。そしてサイコショッカーがカードをドローした瞬間に光の1つが輝きを増した。

 

「【王の舞台】の効果発動。相手がデッキからカードを手札に加えた場合、俺は【(ジェネレイド)】と名のつくモンスターをデッキから守備表示で特殊召喚する。来い【鉄の王 ドヴェルグス】」

 

【鉄の王 ドヴェルグス】

星9/地属性/機械族/攻1500/守2500

 

現れたのは機械仕掛けの王。その巨体の胸、顔ともとれる部分に光を灯しサイコショッカーを見下ろす。

 

「ドヴェルグスの効果発動。自身をリリースし手札から機械族モンスターか(ジェネレイド)モンスターを特殊召喚する。俺は【王の影 ロプトル】を特殊召喚。特殊召喚したロプトルの効果発動、自分か相手のメインフェイズにこのモンスターをリリースする事で自身以外の王をデッキから特殊召喚する。俺は【轟の王 ハール】を特殊召喚」

 

機械の王が姿を消し次に現れたのは金髪の怪しい青年。

その青年は舞台の裏へと姿を消し再び光が輝くとそこに現れたのは隻眼の巨人。

手に持つ杖を構えて赤き瞳を光らせる。

 

 

【轟の王 ハール】

星9/闇属性/魔法使い族/攻3000/守3000

 

 

『こ、攻撃力3000……!』

 

「だから言っただろ、これで終わりか?ってな。更に俺は手札から2体目の【王の影 ロプトル】を通常召喚」

 

【王の影 ロプトル】

星4/炎属性/天使族/攻1500/守1500

 

金髪の怪しい雰囲気を醸し出す青年は舞台裏からフィールドへ戻る。

怪しい笑みを浮かべてサイコショッカーを見やり更に一層笑みを濃くした。

 

『バカな!認めん、認めんぞ!私は復活して……』

 

「バトルだ。ハールとロプトルでダイレクトアタック」

 

 

サイコショッカー

LP:4000→0

 

 

最後の言葉を残させる前にハールとロプトルの攻撃がサイコショッカーに炸裂しライフを削り切る。

デュエルに敗北したサイコショッカーの身体はみるみるうちに透明になってゆく。

 

『まだだ、まだ諦めん!この人間を生贄に……な、なんだこの力は!?貴様何を……グワァァァァァァ!!!』

 

サイコショッカーは最後の悪あがきなのか、倒れている3人の方へ向かおうとするが足元に突如として開いた裂け目に呑み込まれて消えた。

恐らく精霊界に強制送還されたのだろう。

それと同時に身体から力が抜けてその場にへたり込む。

 

「……疲れた」

 

『大丈夫ですか?』

 

顕現したドリアードがおでこに手を当てたり他にもケガが無いかと呟きながらぺたぺた身体に触れてくる。

 

「大丈夫、ちょっと疲れただけだから」

 

『あまり無茶をしないでください』

 

ドリアードの言葉を受け流し、深呼吸して立ち上がる。

そして倒れた3人の元へ向かおうとすれば変電所の扉が開いた音が響き、振り返る。

 

「遊佐くん、心配したにゃ」

 

「大徳寺先生、まだ1時間も経ってないですよ」

 

「あんな事言われて心配するなって方が無理だにゃ。……どうやら事態は解決したみたいかにゃ?」

 

変電所に入ってきたのは大徳寺先生。先生は倒れている3人に目を向けると全て終わった事を察したようだ。

 

「ええ、あの不審者は本当にサイコショッカーの精霊でした。とりあえず3人を起こして寮に送りましょう」

 

「そうだにゃ、指導はその後にするにゃ」

 

そうしようと決めれば俺と大徳寺先生で3人をたたき起こす。

向田を始めとした3人は襲われた事を覚えており2度と怪しい実験はしないと誓った後に寮へと帰っていった。

 

 

『健斗、少し話があるのですが』

 

大徳寺先生とも別れて小屋へ戻る途中にドリアードが姿を現す。

 

「どうした?」

 

『あの大徳寺という男、ずっと貴方のデュエルを見ていました』

 

「ふーん」

 

ドリアードの言葉に適当に相槌を打つと共にあの人ならやるだろうな、と納得する。

セブンスターズの1人として暗躍していた彼の事だ、要注意人物として俺に目を付けたのだろう。本気のデッキを見られてしまったが元々セブンスターズに巻き込まれた時は使うと決めていたし、彼が1番に目を付けているのは十代だけなのでさほど問題は無いだろう。

 

『前から気になっていましたが、彼は普通の人間ではありませんね?』

 

「正解、ガチの錬金術師だよ」

 

精霊術師(エレメンタルマスター)と呼ばれていたのは伊達ではありません』

 

そう言ってフフン、と胸を張るドリアード。

確かにその道に関わった事がある者なら大徳寺先生の授業がただの現代科学ではなく本当の錬金術だというのが分かるだろう。

 

「大徳寺先生はしばらく放っておいて大丈夫だよ。本当にヤバい時は素直に言うしこのデッキを使う、だからドリアードは心配しなくていいよ」

 

『……分かりました。ですがあまり無闇にそのデッキを使わない事を約束してください』

 

俺の言葉にドリアードは渋々といった様子で頷くが納得はしていない。そして更にジェネレイドを使うなと約束してきた。

 

『そのデッキのモンスターは全て精霊です。今は何らかの理由でその力を失っているみたいですがその力は強大です、先程のように身体に負担が掛かります』

 

「マジか、本土で使ってる時は何も無かったが?」

 

『それは本土と違ってこの島が特殊な場所だからでしょう。元々精霊の力が強まるスポットが多い事に加えて三幻魔の影響もあります。もしこのままそのデッキを使い続けて封印されている王の力が解放され、その力を一身に受ければどうなるか……』

 

真剣な表情で語るドリアードの言葉を聞きながら手元のデッキに目を落とす。

前世で使っていたジェネレイドデッキ。EXデッキを使わずともその1体1体の強力な力で相手を制圧する事が可能なこのテーマは何故か今生の俺の手元に集まって再び組み上げられたものだ。

あれも今考えれば精霊の仕業だったのだろうか、よく分からない。

 

「分かった、約束するよ。その代わりにお前をガンガン使うからな」

 

『ええ、彼の王に代わり貴方を守るという気持ちは今も変わりません。これからもよろしくお願いしますね?』

 

俺の言葉にドリアードは柔らかい微笑みを向けて答える。

厄介な悩みは増えたが俺にはドリアードという心強い味方がいる、その事実に心が軽くなるのを感じながらその日は終わった。

 

 

 




サイコショッカーをリリースし主人公とドリアードの親愛度をアップさせてもらうぞ
という訳で主人公のガチデッキはジェネレイドでした、次回辺りでまたその辺掘り下げます


ドラゴンメイドを組もうと思っていたらジェネレイドが出来上がっていた、そんな経験ありませんか?
「俺もだ」「シャーク!」


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用務員の昇格

いつの間にか日間ランキングに載っていたようです
皆様ご愛読ありがとうございます

今回デュエルはありませんが十代が出ます


冬休みのサイコショッカー襲来から数日が経過した。

冬休みは終了し帰省していた生徒が学園に戻り学校も再開した頃、購買部の荷物の整理をしていた所に放送で校長室に呼ばれた。

 

「遊佐です、入ります」

 

「どうぞ、入ってくれたまえ」

 

校長室の扉をノックし返事を聞いてから中へ入ると笑顔の鮫島校長が席に座っており隣にはクロノスが居る。

さて、呼ばれた心当たりがまったく無いのだが。

 

「何の御用でしょうか。また肝心な時に役に立たな委員会が何か言ったんでしょうか?」

 

「ハハハ……君は相変わらず委員会に当たりが強いね」

 

「心配しなくても今回は怖い話じゃないノーネ、むしろシニョール健斗にとっても喜ばしい話なノーネ」

 

半眼で問いかける俺に苦笑いを浮かべる鮫島校長。

しかし俺の心配するような事は無いとクロノスは言い、そして鮫島校長は真剣な顔付きになる。

 

「話というのはだね、君に臨時のデュエル講師をやってもらいたいんだ」

 

「デュエル講師ですか?」

 

「ああ、といっても教員のように教壇に立つ必要は無いよ。実技試験の手伝いや実習の補助をしてもらうことになる」

 

いまいち事態を掴めていない俺に向けて補足するように鮫島校長は言葉を続ける。

 

「制裁タッグでのデュエルを見た生徒や教員からいくつか要望があってね、君をただの用務員にしておくのは勿体無いというのは私も思っている。だから少しでもデュエルに関われる立場を用意しようという事になったのさ」

 

「貴方のタクティクスはこの実技最高担当者の私が保証するノーネ」

 

「有難いお言葉ですが、あのデュエルは十代くんが居なければ勝てませんでした。評価は私ではなく彼に向けられるべきです」

 

「その辺は問題無いでスーノ。近々昇格デュエルを行う時にドロップアウトボーイにも声を掛けるノーネ」

 

「そういう事だ。それに元々あの件は君に非は無かったんだ、これくらいはしないと学園としても申し訳が立たない」

 

「はぁ……」

 

突然の提案にそう返事をする他がない。

俺を評価する前に十代を評価しろと一応言ってみたがあまり効果はない。まぁ十代は実技はともかく授業態度は良いと言えないしまだクロノスが彼を嫌っているので仕方ないだろう。

 

「遊佐くんは島に来る前にプロを目指していたんだろう?これで実力を示せば学園としても君をプロに推薦する事も出来るし今の待遇よりももっと良い待遇にする事も出来る。君にとっても悪い話では無いと思うんだ」

 

「本土に居た時の貴方の公式大会のデュエルも調べたノーネ。【暴君】の名に恥じないパワフルなデュエルだったノーネ」

 

「クロノス先生、その名で呼ばないでください。あれは他の人が勝手に呼んでいただけです」

 

何が悲しくてあんな厨二ネームで呼ばれなければいけないのか。

それに本土には正直良い思い出が無いし用務員として緩やかに過ごせればそれで良いのだが……断るのは難しそうだ。

とりあえずその場はよく考えてきますと答えて校長室を後にした。

 

 

「健斗さーん」

 

「やあ、十代くん」

 

校長室から出た瞬間に待ち構えていたのか十代が手を振りながら駆け寄って来る。

 

「放送で呼ばれてたから気になって来たんだけど何を話してたんですか?」

 

「大した話じゃないさ。十代くんは確か調べ物だったよね?」

 

「その事なんだけど、アカデミアの情報網でもやっぱり何も分からなかったんだ」

 

「仕方ないさ」

 

十代は冬休みで実家に帰り両親に事の次第を問いかけたらしいが両親は気の所為だと誤魔化したようだ。しかし十代の家に居た精霊が過去の事を簡単に伝えた。それにより十代は【ユベル】と【ネオス】の存在を知り、それらをロケットに乗せた事実も知る。

しかしロケットに乗せられたカードの行方だけは分からず十代はアカデミアで詳しく調べるために図書室へ向かったようだが、徒労に終わったようだ。

まぁ1枚は宇宙にそのまま残ってもう1枚は地球に戻って十代に会うために色々企んでるとか思わないだろう、言ってて俺もよく分からん。

 

「ま、そのうちひょっこり帰って来るかもしれないし気長に待ってればいいよ。それで、帰って来たらおかえりって言うんだよ」

 

ひょっこり(協力者がやベー奴)(無関係の人々を洗脳)(ガチの死人が出る)(あの時点での十代の1番の理解者を乗っ取る)(ちくわ大明神)(世界を壊す僕の愛)(コーナーで差を付けろ)

ひょっこり帰って来るとかいうレベルじゃない。

 

「それもそうだよな!よーし、この冬もガンガンデュエルするぜー!」

 

「授業も真面目に受けるんだよ」

 

走り去っていく十代に手を振りながら忠告を残す。

十代を見送ると俺は作業の続きをするために購買部へ戻った。

 

 

「健斗ちゃん、ちょっといいかい?」

 

「どうしました?」

 

「最近ドローパンが盗まれているみたいなんだ」

 

購買部で作業中にトメさんが声を掛けてきた。

内容を聞くと購買のドローパン、しかも限定の黄金の卵味だけが決まって盗まれているらしい。

 

「あー……」

 

それを聞いて思い出したのがドロー回。

確か山篭りしてる奴が腹減らしてパン盗んでるんだっけか、あと一撃必殺居合ドローの使い手だっけ。

トメさんは泥棒をなんとかして欲しいと俺に相談してきたという訳だ。

 

「分かりました、十代くん達にも協力してもらうようお願いします」

 

「ありがとうね」

 

こういう時は原作通りにするのが1番だ。

早速十代に連絡を取ると最近食べれていない恨みからか、すぐに協力するという返事が来た。

 

 

 

 

『なぜ話を受けなかったのですか?』

 

待ち合わせの夜まで時間があるのでファラオに魚でもプレゼントしようとレッド寮近くの岩場で釣りをしているとドリアードが顕現し、隣に座る。

そして先程の校長室での一件を訊ねてきた。

 

『普段から給料が少ないと嘆いているじゃないですか、待遇が良くなるなら受けるべきでは?』

 

「普通は嬉しいんだろうけどね」

 

ドリアードにそう答えながら釣竿を横に置いて一呼吸。

そしてゆっくりと口を開く。

 

「俺、正直言うとこの世界のデュエル好きじゃないんだ」

 

『は?』

 

突然の言葉にドリアードは面食らう表情となるが構わず続ける。

 

「俺が元居た世界にもデュエルモンスターズはあったよ。でもこの世界みたいに発展はしてないし社会の一部になるほどじゃない、ただの趣味のひとつだったんだ。勿論やってたし金もかけてたくさんのデッキも組んだ、ジェネレイドもそのひとつさ」

 

『デュエルを前世でしていたのならなおさらこの世界は貴方にとっては都合が良いのではないのですか?少なくともカードの種類はこの世界よりは豊富な事も伺えますし、あの王達が居れば負けなしでしょうに』

 

「俺も最初はそう思ったよ。周りは一昔どころか三昔はありそうな環境、対してこっちは最新のカード。結果は連戦連勝、公式大会はほぼ負けなしさ」

 

『だったら……』

 

「でもさ、だんだんデュエルを全く楽しいと思えなくなったんだ」

 

『何故ですか?』

 

純粋に分からないといった様子の彼女は首を傾げて俺の答えを待っていた。

ため息をひとつ吐いて再び話を続ける。

 

「この世界の人との意識の"ズレ"だな。俺の世界のデュエルはぶっちゃけ金さえかけりゃ強くなれる。そのテーマの初動や展開、手札誘発や魔法罠のタイミングさえ覚えとけばあとは手札と相手のデッキとの相性の問題。勝つ確率を上げる事はあるけど負ける時は負ける、まぁ結論言うと運」

 

『ぶっちゃけましたね』

 

「ああ。でもこの世界はそんな運ゲーで物事決めてるっていっても過言じゃないだろ?そこなんだよ、俺にとってのデュエルはどう頑張っても金のかかる趣味なんだ。だからデュエルに人生とか色々大切な物を掛けられるこの世界に困惑しかないワケ。だってどんなデッキでも勝つ時は勝つけど負ける時は負けるだろ?手札事故で負けて職を失いましたー、とか俺にとっては絶対納得できないの」

 

『はぁ……』

 

「一番嫌なのがそういうのをこっちに押し付けてくるこの世界の風潮。バーンとか先攻制圧やめろとかお前らの風潮とか知らねーよ、こっちはこっちでジェネレイドのセオリー通りに動いてんのに。んで勝ったら勝ったで陰口叩くわ批判するわで煩わしいしプレイにケチ付けるし負けたら負けたで普通に罵倒するし全体的に民度低いんだよこの世界。デュエル強けりゃなんでもいいのか。カード作ったペガサスに謝れ」

 

『でも【暴君】って通り名があるんですよね?』

 

「あれこそ周りの奴らが勝手に言ってるだけだ、ジェネレイドの徹底妨害の事を皮肉ってんだよ。一応言うが俺はいつも真面目にルール守ってデュエルしてるよ。んでジェネレイド以外を使ったら舐めプとか言うし。ジェネレイド好きなのか嫌いなのかどっちなんだよ、それとは別に違うデッキとか組んで使いたくなる時もあるだろうが。……色々あって、それならプロになって大会荒らして金だけ稼いでとっとと隠居でもしようと思ったら前に説明した騒ぎがあって今に至る。だから必要以上にデュエルに関わらないで用務員してる方が気が楽なの」

 

そう締めくくり、釣り道具を片づける。

いつの間にか日は傾き沈んでゆく、少し話過ぎたようだ。

 

『傲慢ですね』

 

釣り道具を片付けているとドリアードがそう呟く。

 

『異界で過ごしていた貴方にとってみればこの世界は異質に感じるのでしょう。この世界の人々に対しての知識があるからこそ見方が違うのでしょう。ですがそれは傲慢に他なりません』

 

「……知ってる」

 

彼女の言葉に片付けをする手が止まる。

彼女に言われなくても分かっている。薄々感づいてたし考えないようにしていた。

俺はこの世界の未来を知っている。人物の過去や未来を知っている。

だからこそ、それが分かる自分は特別なのだと思っていた。何とかできるのは自分しか居ないと思っていた。

だがそれは無意識にこの世界の人間を下に見ていたのと同じだ。

 

『そんな顔をしないで下さい健斗、私は悪いとは言っていませんよ?』

 

俯く自分の両頬に温かな手が添えられ、顔を上げると穏やかな表情を浮かべたドリアードがにっこり微笑んだ。

 

『貴方がそれを自覚しているなら良いのです。貴方が優しい人間だからこそその傲慢に気付き、改めようと苦しんでいる。それは私の、いえ、誰が望むものでもありません。貴方の価値観と人生を否定する事は誰にも出来ませんから。それに、傲慢であったとしてもこの世界を守るために立ち上がった貴方は間違い無く正しいです』

 

「ドリアード……」

 

『私も未来の刻に生きる精霊として貴方に協力を申し出た身です、貴方を責める事など出来ません』

 

それに、とドリアードは続ける。

 

『貴方は一言もカードの事を悪く言ったり否定しなかった。デュエルを愛しカードを大切にする人にこそ、精霊は力を貸すのです。講師の話を受けても受けなくても私は気にしません』

 

「……ありがとう、お前に出会えて本当に良かった」

 

俺の心からの言葉を伝えると彼女は再び微笑んだ。

 

『さぁ帰りましょう、夜にも仕事があるんでしょう?』

 

「あぁ」

 

纏め終わった釣り道具を抱えて小屋へ戻る道を歩き出す。

ドリアードはふよふよと浮遊し俺と一緒の道を行く。

 

「なぁドリアード。俺、この世界に来て良かったと思う事が他にもあるんだ」

 

『なんですか?』

 

「十代に出会えた事だよ。しがらみも何も無い、純粋にデュエルを楽しむ彼を見てたら俺もああいうデュエルがしたいと思ってさ。そこで気付いたんだ。やっぱり俺、デュエルが好きだって」

 

だからこそ決めたんだ。

何もかもを吹き飛ばしてくれるような気持ちのいいデュエルをしてくれる十代を、あの笑顔を守るために、俺はアカデミアに残って過ごすと。

 

『遊城十代……まるで太陽みたいな子ですね』

 

「抱えてるのは闇だけどな」

 

『全然笑えませんよ傲慢男』

 

「その時はドリアードが何とかしてくれ」

 

そう茶化し合いながら小屋へと戻るのだった。

 

 

その夜、ドローパン泥棒が現れたが原作通りだった。

俺もドロー力を磨いた方が良いのか真剣に考えようと思った。

唯一違ったのは一撃必殺居合ドローの使い手では無かった、あれ別の奴だっけ?記憶があやふやだ。

 

 

 




『マスターが傲慢なんてショックでした、せっかく協力してるのに。でもカードとデュエルを大切にしてくれるならオッケーです!』

永続魔法【転生者あるある】を発動するが【ドリアードの抱擁】の効果により無効にさせてもらうぞ


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用務員VSカイザー

カイザーが壺を2回も使うミスをしていたので修正しました
十代は出ません


「今日はよろしくお願いしますよ、遊佐くん」

 

「こちらこそお願いします」

 

俺は結局講師になる話を承諾した。

そして今日は講師としての初勤務であり予定はアカデミア3年生の実技デュエルの試験官。

担当はブルー寮で一緒に行うのは佐藤先生だ。

 

「いやぁ、校長に話が通って良かった。私も君を推薦した一人なんですよ」

 

「佐藤先生が!?」

 

「私も元はプロでしたが身体を壊してしまいリーグ昇格を諦めた身……君の気持ちは分かります。君の道を開く助けになればと思いまして」

 

「ありがとうございます佐藤先生、頑張りますよ」

 

とまぁ、俺自身は実際プロ云々はどうでもいいのだが彼がこちらを案じてくれたというその気持ちは素直に嬉しい。

佐藤先生は終盤で十代の目の前で投身自殺をした先生だ。

彼の死が覇王の目覚めの兆しと言っても過言ではなく、実際あそこから展開が暗くなるし救われないのでアカデミアに来たら彼と接触しようと思っていたが……。

 

「君が流れ着いてきて随分と経ちましたね」

 

「佐藤先生にはお世話になりっぱなしです」

 

「困った時はお互い様というだろう、それに私も君のアドバイスがあったおかげで授業崩壊を起こさずに済んだからね」

 

驚く事に佐藤先生は発見者の大徳寺先生を除けばアカデミアで最初に仲良くなった教師だ。

身の上を聞いた彼は俺の身を案じてか学園の説明や案内などをしてくれたのだ。新入生が入ってからはお互い忙しくなり会う機会は減ったがその前はよく小屋で一緒に呑んだりした仲だ。

思えば佐藤先生はこの世界では珍しい常識人で真面目で優しかったからこそ原作であのようにコブラに目をつけられ悲劇に遭ってしまったのだろうと考える。いやまぁそれだけじゃなくて普通に逆恨みとか先生自体融通きかないとか問題はあったがそれはそれとして置いときたい。コブラが悪いよコブラが(責任転嫁)

 

まだ授業崩壊を起こしてはいないが生徒の態度が気になっていた佐藤先生は小屋呑みの際に酔った勢いで授業の事を愚痴ってきた。

「じゃあ明日授業見ますね」と答えた俺は翌日に佐藤先生の授業を見学し問題点を指摘した。

 

「先生の授業はテキストを読むだけで淡々とし過ぎています」

 

「実践的デュエルって授業ですけど、実践的過ぎて生徒にはつまらないんじゃないですか?」

 

「え?じゃあどうすればいいか?んー、先生の意見とか実体験を交えるとか、時にはデュエルと全く関係ない話するとか……遊び心って言うんですかね、それが足りないかと」

 

「あー、後は先生自体のデュエルタクティクスを見せれば良いのでは?それが手っ取り早いかもしれませんね。俺の方からも生徒に色々聞いてみたり他の授業を見てみますよ」

 

とまぁこんな感じでアドバイスなのかどうか分からないやり取りを何回か交わし、佐藤先生はそれらを実行。

生徒の心を掴もうと不格好に歩み寄ろうとするその姿勢と元プロの実力を改めて見せつけたおかげからか佐藤先生の授業は居眠りやボイコットする生徒が減り、先生自身も生徒との交流が増えた。

今ではすっかり悩みを払拭し教師生活を頑張っているようだ。

これでコブラに騙される事も無いだろう、安心安心めでたしめでたし。

 

「本来は試験用のデッキが支給されるのですが今回の試験は、まぁ初回ですし遊佐くんは自分のデッキを使用しても良いですよ。……遊佐くん?」

 

「あ、すみません。思い出に耽ってました」

 

「もうすぐ授業だ、切り替えてくれたまえ」

 

「申し訳ありません」

 

佐藤先生の声で我に帰り、素直に謝罪する。

 

「ふふ、思い出話なら久しぶりに君の小屋で1杯やりながら話そうじゃないか」

 

謝罪に対して佐藤先生はにこやかに微笑みそう答えてきた。

俺もそれに笑顔で返すとデュエル場に3年生が入場し試験の時間となった。

 

「それでは3年生の実技試験を開始します、本日は特別に彼も試験官として実技に参加します」

 

「臨時講師の遊佐健斗です、本日はよろしくお願いします」

 

軽い自己紹介を終えると「よろしくお願いします」と生徒の返事がデュエル場に響く。

 

「では最初は……」

 

「俺がデュエルを申し込みます」

 

佐藤先生の言葉を遮る声が響くと生徒達の視線が一斉に集まる。

その視線には白を基調とし青いラインが入ったブルー寮の制服を着こなした青髪の男……カイザーこと丸藤亮がそこに居た。

 

「遊佐試験官、俺とデュエルしてもらいたい」

 

「えっと、確か順番は筆記の成績トップ順でしたっけ?」

 

「え、ええ。しかし遊佐くんには半分から下をお願いしようと思っていたのですが……カイザー直々の指名なら良いでしょう」

 

おっと、あっさり許可が降りてしまった。

カイザーの方もやる気に満ちた表情でディスクを片手にフィールドに上がって来る。

 

「色々と話は聞いています、貴方と1度デュエルをしてみたかったので」

 

「それはどうも、じゃあ早速始めようか」

 

「よろしくお願いします」

 

なんか敬語のカイザーって新鮮だな。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

健斗

LP:4000

 

カイザー

LP:4000

 

 

「先攻は生徒側だよ」

 

サイバー相手に後攻は基本。あと試験のルールだから俺悪くない。

先攻のカイザーは特に表情に変化は無く素直に頷いた、やっぱりいつもの事なんだな。

 

「俺のターン、ドロー!【プロト・サイバー・ドラゴン】を召喚!」

 

【プロト・サイバー・ドラゴン】

星3/光属性/機械族/攻1100/守 600

 

「手札から魔法カード【タイムカプセル】を発動!デッキからカードを1枚選択して裏側でゲームから除外し2ターン後のスタンバイフェイズにそのカードを手札に加える」

 

フィールドにタイムカプセル……というより棺に近い何かが現れるとカードが1枚収納され蓋が閉じられる。

あれ護封剣みたいに永続魔法じゃないのに場に残るし残ってる時に除去されたらサーチ出来ないんだっけか。

 

「更にカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 

カイザー

LP:4000

手札:2

モンスター:【プロト・サイバー・ドラゴン】

魔法罠:セット2【タイムカプセル】

 

 

カイザーっていきなり融合ぶっぱするのと後半に仕掛けるイメージがあるけど、これどっちかなぁ……場に居ないとサイドラ扱いにならないプロトを出したって事は何かあるよな。

まぁいい、考えても仕方ない。

 

「俺のターン、ドロー」

 

とりあえずサイドラ警戒のためにドリアードを早く出す準備を整えるとしようか。

 

「手札から魔法【苦渋の選択】を発動!デッキから5枚のカードを選択し相手はその中から1枚を選ぶ。俺が選ぶのは【ヴィシュワ・ランディー】【ダンシング・エルフ】【炎の女暗殺者】【アルラウネ】【ウォーター・エレメント】だ」

 

「俺は【ダンシング・エルフ】を選択する」

 

「【ダンシング・エルフ】を手札に加え残りは墓地へ送る。手札から魔法【天使の施し】を発動し3枚ドローして2枚捨てる」

 

【氷水】と【ダンシング・エルフ】を墓地に送る。

属性も揃って来たし仕掛けるか。

 

「手札から【ハーピィ・ガール】を召喚し更に魔法【魔の試着部屋】を発動!デッキの上から4枚をめくりその中のレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚する」

 

「いいだろう」

 

「1枚目【黙する死者】2枚目【キャッツ・フェアリー】3枚目【月の女神 エルザェム】最後は【恍惚の人魚】なので3体のモンスターを特殊召喚する!」

 

 

【ハーピィ・ガール】

星2/風属性/鳥獣族/攻 500/守 500

 

【キャッツ・フェアリー】

星3/地属性/獣族/攻1100/守 900

 

【月の女神 エルザェム】

星3/光属性/天使族/攻 750/守1100

 

【恍惚の人魚】

星3/水属性/魚族/攻1200/守 900

 

 

「一気に4体のモンスターが並んだぞ」

 

「でもみんな弱いモンスターだぜ、カイザーも呆れるだろ」

 

 

外野が何か言っているが無視。

 

「バトル!【恍惚の人魚】で【プロト・サイバー・ドラゴン】に攻撃!」

 

「この瞬間にリバースカード【アタック・リフレクター・ユニット】を発動!フィールドでサイバードラゴン扱いの【プロト・サイバー・ドラゴン】を生贄にする事でデッキから【サイバー・バリア・ドラゴン】を守備表示で特殊召喚する!」

 

 

【サイバー・バリア・ドラゴン】

星6/光属性/機械族/攻 800/守2800

 

 

あー、そういえば居たなあんなモンスター。

あと似たような召喚方法でレーザーとかいうのも居たな。

とはいえ守備2800は高い。

 

「バトルを終了しメイン2で永続魔法【弱者の意地】を発動。カードを3枚セットしてターンを終了します」

 

 

健斗

LP:3200

手札:0

モンスター:【ハーピィ・ガール】【キャッツ・フェアリー】【月の女神 エルザェム】【恍惚の人魚】

魔法罠:セット3【弱者の意地】

 

 

「俺のターン、ドロー。手札より【強欲な壺】を発動しデッキから2枚ドローする。そして【サイバー・フェニックス】を召喚」

 

 

【サイバー・フェニックス】

星4/炎属性/機械族/攻1200/守1600

 

 

「ここで手札から【融合】を発動!手札の【サイバー・ドラゴン】2体を融合し現れろ【サイバー・ツイン・ドラゴン】!」

 

 

でた!サイバー流の積み込みコンボだ!

実際積み込み疑ってもおかしくない引きだよな、サイバー流は積み込みを教える流派説が濃厚になってきた。

 

 

【サイバー・ツイン・ドラゴン】

星8/光属性/機械族/攻2800/守2100

 

 

「あれで雑魚モンスターを一掃だ!」

 

「しかも魔法罠の耐性も完璧だ!」

 

外野が先ほどから元気だけど俺アウェーなの?泣きたいんだが?

 

 

「バトル!【サイバー・ツイン・ドラゴン】で【ハーピィ・ガール】に攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

『ひぃっ』

 

二つ首の機械龍はガールを標的とするとその口を開き光を溜める。

その姿に自身の破壊を悟ったガールは怯えた声を出す。

 

しかしそうは問屋が卸さない。

 

 

「速攻魔法【突撃指令】を発動。自分フィールドの通常モンスター【キャッツ・フェアリー】を対象にし、対象モンスターを生贄に捧げ相手のモンスター1体を選んで破壊する。選ぶのは【サイバー・ツイン・ドラゴン】」

 

『えっ』

 

私なの?と呆ける暇もなくキャッツの体は光に消えツインドラゴンも光となり消える。これもデュエルのため、許せ。

 

「【サイバー・フェニックス】が無効に出来るのは機械族モンスター1体のみを対象とした効果のみ、抜け穴を突いてきたか。では【サイバー・フェニックス】で【ハーピィ・ガール】を攻撃!」

 

「それも通さない、【和睦の使者】を発動。このターンモンスターは戦闘で破壊されず戦闘ダメージを受けない」

 

もう1枚の伏せの【窮鼠の進撃】は地味に対象取るから無効にされるんだよな。

発動して返り討ちにして【弱者の意地】でドローしたかった。

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 

カイザー

LP:4000

手札:0

モンスター:【サイバー・バリア・ドラゴン】【サイバー・フェニックス】

魔法罠:セット1【タイムカプセル】

 

 

「俺のターンドロー、手札から装備魔法【下剋上の首飾り】を発動して【ハーピィ・ガール】に装備。装備した通常モンスターが相手モンスターと戦闘する場合、レベルの差の数×500攻撃力を上げる」

 

まぁそれでもバリアはレベル6だからギリ突破できないんだが。

 

「バトル。【ハーピィ・ガール】で【サイバー・フェニックス】に攻撃!この瞬間にレベル差2つ分、よって攻撃力が1000アップする!」

 

【ハーピィ・ガール】

攻:500→1500

 

『てやーっ!』

 

首飾りの力でパワーアップしたガールの一撃でサイバー・フェニックスは真っ二つになり爆散した。

 

カイザー

LP:4000→3700

 

「【サイバー・フェニックス】が戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを1枚ドローする」

 

「こっちも永続魔法【弱者の意地】が発動。手札が0の時にレベル2以下のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時にデッキから2枚ドローできる。俺はバトルを終了しカードを1枚セット、【月の女神 エルザェム】【恍惚の人魚】を守備表示にしてターンエンド」

 

 

健斗

LP:3200

手札:1

モンスター:【ハーピィ・ガール】【月の女神 エルザェム】【恍惚の人魚】

魔法罠:セット2【弱者の意地】【下剋上の首飾り】

 

 

さて、俺の予想が正しければ次のターン絶対サイバーエンドが飛んでくると思うが果たしてどうなるか。

 

 

「俺のターン、ドロー。この瞬間に【タイムカプセル】の効果で除外したカードが手札に加わる。俺は【天使の施し】を発動しデッキからカードを3枚ドローし2枚捨てる。そしてライフを半分払い伏せていた速攻魔法【サイバネティック・フュージョン・サポート】を発動!」

 

カイザー

LP:3700→1850

 

「このカードはこのターン、自分が機械族の融合モンスターを融合召喚する場合に1度だけその融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる」

 

「発動して終わり……ってわけじゃないですよね」

 

「勿論。俺は手札から【融合回収】を発動しツインドラゴンの素材となった墓地の【サイバー・ドラゴン】と【融合】を手札に加えて【融合】発動!手札の【サイバー・ドラゴン】1体と墓地の2体を素材とし現れよ【サイバー・エンド・ドラゴン】!」

 

さっきの施しでサイドラ捨てたのか!

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

星10/光属性/機械族/攻4000/守2800

 

 

「バトル!サイバーエンドで【ハーピィ・ガール】に攻撃する!この瞬間に【リミッター解除】発動!サイバーエンドの攻撃力を2倍にする!」

 

「……守備モンスターじゃなくてガールにするのかい?」

 

「相手の全力を受け止め、リスペクトし、乗り越える事こそサイバー流の教えですので」

 

なるほど、そういえばサイバー流ってそんな教えがあったな、実際にやられると舐めプにしか思えん。

正直、守備モンスターを攻撃されてたら負けてたんだが少しイラついたので抵抗してやる。

 

「チェーンして永続罠【窮鼠の進撃】と更に速攻魔法【非常食】を発動。まず【非常食】の効果で自身の魔法罠を墓地に送りその数×1000ライフ回復する。俺は【弱者の意地】を墓地に送りライフを1000回復する。そしてダメージステップ時にライフを3600払い【窮鼠の進撃】の効果を発動。俺の場のレベル3以下の通常モンスターが戦闘するダメージステップ時に払ったライフ分、攻撃してきた相手モンスターの攻撃力を下げる」

 

「……」

 

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

攻:4000→8000→4400

 

【ハーピィ・ガール】

攻:500→4500

 

カイザー

LP:1850→1750

 

 

『とぉおう!……やった、倒しちゃった!』

 

ガールの振り上げた爪はサイバーエンドの首を全て叩き斬った。

ガール自身も自分の力に驚きつつも勝利に喜び俺の場へ戻る。

 

 

「俺は【サイバー・ヴァリー】を召喚しターンエンド。この時【リミッター解除】を受けたバリアドラゴンは破壊される」

 

 

【サイバー・ヴァリー】

星1/光属性/機械族/攻0/守0

 

 

カイザー

LP:1750

手札:0

モンスター:【サイバー・ヴァリー】

魔法罠:0

 

 

相手の場にはバトルフェイズを終了するヴァリーが1体。

でも今はあれを除去したりあの効果をどうにか出来る手札ではない、このドローが重要になる。

 

「俺のターン、ドロー!……あれ?」

 

勢いよくカードをドローし手札に加えた瞬間だった。

周りを覆っていたソリッドビジョンが消えフィールドのモンスターたちが姿を消す。

そしてデュエル場にピリリリリ!と何かを知らせる音が響くと佐藤先生がやれやれといった表情で口を開く。

 

「残念ながら時間切れです。両者戻ってください」

 

「えー!今いいところだったじゃないか先生!」

 

「続き続き!」

 

「静粛に!本音を言うと私も見たいですが今日は皆さんの試験なんです、時間が押しているんですよ!」

 

佐藤先生は生徒たちのブーイングに本音を漏らしながらも一刀両断する。

周りの生徒も自身の成績には代えられないにか渋々と引っ込んでいく。

 

「ありがとうございました」

 

「あ、うん、丸藤君お疲れ様でした」

 

「この決着は、いずれ」

 

そう言い残しカイザーはデュエル場から立ち去っていく。

なんか静かに闘志燃やしてるけど何回か負ける場面があった俺からしたら「ふざけてんの?」としか言いようがない。

カイザーも一応何かアクションした方がいいよな、ヘルカイザーになったらなったで厄介だしドMになるし最終的に車椅子生活だし。

ヘルカイザーになる流れは個人的には好きだが被害を受ける未来が見える立場なら話は別だ、奴には綺麗なカイザーで居てもらわないと困る。

サイバーダークは、まぁ、あれだ、ヤバい状況になったら新たな力として鮫島校長が貸してくれるだろう、多分。綺麗なカイザーなら使いこなせるとか何とか、あるよね、きっと(適当)

 

 

 

そんなことを考えながら、ふと、最後にドローしたカードに視線を落とす。

 

『私の出番……』

 

いつもなら優しい笑顔を浮かべているはずの【精霊神后 ドリアード】のカード。

今だけ彼女は悲しみの涙を流している。

 

「ごめんな」

 

そう声を掛けてカードをデッキに戻し、佐藤先生の号令のもと試験の続きを行うのだった。

 

 




俺は速攻魔法【サイバネティック・フュージョン・サポート】を発動!ライフを半分払い特になにもしない!
ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!

ヘルカイザーってネタ成分が強過ぎるけど、完璧だと言われた男が挫折し今まで何も感じなかった勝負への勝利を渇望した果ての姿って書くとエモくない?


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無職→用務員→講師→師匠

ベクターの前世こと神楽坂登場
結構好き

十代はちょっと出ます


『今、プロで活躍している響紅葉選手が監修した新パックの登場だ!君も連続融合でHEROを呼び出せ!』

 

購買部の休憩室のテレビを眺めているとCMに入る。

CMには赤いコート姿の男性が数々のHEROを召喚し、それらが収録されたパックが出るという内容だった。

 

この響紅葉という男、俺の記憶が確かなら漫画版の登場人物だったはずだ。彼が死んだか倒れたかで彼のデッキを十代が受け継ぎアカデミアで過ごす、という内容だったような気がする。

漫画版はマトモに見ていないので記憶が朧気だが、確かトラゴエディアが黒幕だっけ?この世界にトラゴエディアが居ないから彼も元気なんだろう。

あとプラネットシリーズも漫画産か。

昔帝のストラクを崩してアドバンスプラネットを組んだな懐かしい。

ジュピターでモンスターを装備したりプルートで手札を当てたりするのが地味に楽しかった。

 

「トメさんに頼んで入荷してもらうかな」

 

CMを見たところ属性HERO等が入っているようだし十代のために頼んでおいて損は無いだろう、そう決めて休憩室を出る事にした。

休憩室を出たところで購買部に人だかりが出来ている事に気付きそちらへ向かうと翔とイエローの生徒がデュエルしていた。

 

「あー、確か遊戯デッキのやつか」

 

その光景を見て原作の一幕、武藤遊戯のデッキをあのイエロー生が奪う話を思い出す。確かに今ちょうど購買部では整理券が配られているし間違いなくそれだろう。

 

「トメさん、このパックを仕入れてもらう事できますか?」

 

「あら、健斗ちゃんがそう言うなんて珍しいね。分かったよ手配しとこうね」

 

別に関わる必要はない、と判断し俺はレジでデュエルを見守っていたトメさんに仕入れて欲しいパックのリストを渡すのだった。

 

「じゃあ俺は準備に戻ります」

 

「はいよ。楽しみだねぇ健斗ちゃんのカードショップ」

 

「仕事が少ない今の内に準備しないとですね」

 

今は冬、火山島で温暖な気候とはいえ寒いものは寒く植物は休眠しているので草刈りやら植木の刈込等の用務員としての仕事は少ない。

そこで鮫島校長に前々から思っていた「カードの投棄が多過ぎる」という文句を告げ、臨時とはいえ講師になったのを利用し購買部のスペースにカードショップを開く事を了承して貰った。

購買部の店員のトメさんとセイコさんがカードの知識が無いためデュエルの学校でありながらショップが無いというのは薄々感じていたらしくすんなり許可は下りた。

まぁ鮫島校長は俺に負い目感じてるところがあるのは事実だがカードの不法投棄は実際問題なので、という事だと予想する。

 

なんにせよ今はカードショップの開店準備に忙しいのだ。

作業に入ると同時にデュエルが終了したらしく、原作通り翔が勝ちイエロー生は敗北したようだ。

敗北した生徒、どうやら神楽坂という名らしい彼はデュエルを見ていた野次馬から陰口を受けており膝を付いたまま立ち上がらない。

はい民度民度、お前ら明日は我が身という言葉を知らんのか、見ていて気分が悪いしやっぱり無理だもう見てられん。

 

作業を中断し神楽坂の前へ立つと陰口を叩く生徒達はビビって散っていった。

 

「惜しかったね、大丈夫かい神楽坂くん?」

 

それを確認し、膝を付いたままの神楽坂にそう声を掛ける。

 

「は、はい……」

 

神楽坂は戸惑いながらもそう返事をすると立ち上がる。

その表情はデュエルに負けた落ち込み半分、いきなり声を掛けられた困惑が半分といった様子だ。

 

「いやぁ、ちょっと放っておけなくてね。あれクロノス先生のデッキだろう?よく使いこなせてたよ」

 

「ありがとうございます……?」

 

「デッキの相性もあるし勝つ時は勝つし負ける時は負ける。デュエルなんてそんなもんだよ。陰口なんて気にせずに頑張れ」

 

そう肩を叩いて俺は作業に戻ろうとする。

 

「健斗さーん」

 

「やあ十代くん」

 

まぁあっちに翔居るし俺を見掛けたら声を掛けてくるよね。

俺は振り返り十代に向けて返事をすると十代は翔を連れて駆け寄ってきた。

 

「健斗さん!勝ったっス!」

 

「見てたよ、ギアゴーレムの魔法罠を封じる効果を躱す上手いプレイングだった」

 

「見てくれよコレ!憧れの遊戯さんの展覧会の整理券!健斗さんは行くの?」

 

「しばらく忙しいから無理かな」

 

「そっかー……そういえば健斗さんずっとレジの端に居たけど何してんの?」

 

勝利の余韻と憧れの遊戯の展覧会に行ける、というテンションの高い2人の相手をしていると十代が俺の作業について訊ねてきた。

 

「秘密」

 

「ケチー!教えてくれよー!」

 

「お楽しみって事で」

 

「ちぇっ、仕方ないか」

 

本当は教えても良かったのだが意地悪をしたくなったので適当にはぐらかすと十代は諦めて購買を後にした。

さて、それでは作業に……

 

「健斗さん」

 

「居たんだ三沢くん」

 

「最初から居たんですが……」

 

「冗談だよ」

 

作業に戻ろうとすると今度は三沢が声を掛けてきた。

振り返ると彼の後ろには神楽坂が居る。あれ?こいつこの後遊戯のデッキにリアル強奪発動しに行くんじゃなかったっけ?

 

「彼はイエローの神楽坂です。健斗さん、彼の力になってもらえませんか?」

 

「お願いします!」

 

三沢がそう言うと神楽坂は頭を下げる。

こりゃ直ぐに作業に戻れそうにないな、そう判断した俺は2人を休憩室に上げる事にした。

 

 

 

 

 

「神楽坂くんはデッキを組もうとすると誰かのコピーデッキになってしまう、と」

 

「そうなんです」

 

休憩室に2人を上げて茶を出し、詳しい話を聞く。

神楽坂は記憶力が良過ぎるせいでデッキを組もうとするとデータ等で見た誰かのデッキになってしまう。使用者のデュエルデータを読み込みデュエルをするも勝率は悪く思った結果が出せず行き詰まっていた。

さっきの翔のデュエルで心折れかけたが拾ったカードであの制裁デュエルを勝利し試験でカイザーと渡り合った俺の存在を三沢に話され思い切って相談する事にした、という流れだそうだ。

カイザーの件、ちょっと広まってるのか……あれあんまり納得出来ないから広まって欲しくないんだけど、まぁそれは置いておこう。

 

「俺も覚えがあるな、そういうの」

 

「健斗さんもですか?」

 

「気になったテーマを組もうとしてレシピとか見るけどだいたい寄っちゃうんだよね」

 

思い出すのは前世の記憶。

気になったテーマがあったらまずはデッキパーツを集めて純構築で揃えデッキレシピを見て楽しく動けそうなものを見つけて参考にする。

レシピ通りになる事は少ないんだけどね……手札誘発足りないから。

うらら……増G……夢幻……うっ、財布が。

 

「でも凄いじゃん神楽坂くん。コピーデッキを使いこなすのも才能だよ?タッグデュエルのパートナーとかテストデュエルとか活かせる場面はたくさんあると思うよ」

 

「才能……?」

 

「うん。タッグデュエルとかだと自分がもう一人居たらなー、って思うし。自分のデッキとのミラーマッチとかだとデッキの弱点を発見出来そうだし。物の見方、捉え方を変えればそれも才能さ」

 

自分がもう一人欲しいはタッグフォースやってた時に死ぬほど思ったわ。

やめろバカイザー!相手のサイクロンに対してサイバネティック・フュージョン・サポートを撃つんじゃない!勝手にライフポイントを減らすんじゃない!

うっ、頭が。

 

「才能、才能か……俺、初めて言われました。自分のデッキが組みたいのに組めなくて、でも勝ちたくて必死にデータを集めて読み込んで……でも勝てなくて。真似事しか出来ないって馬鹿にされる事はあっても褒めてもらえた事なんて1度も……うぅっ」

 

「神楽坂……」

 

「泣くには早いぞ、お茶でも飲んで落ち着きなさい」

 

感極まったのか、神楽坂は涙を流す。

少し気恥しさを感じながらお茶を飲むよう促して落ち着くのを待つ。

神楽坂は差し出された湯呑みを掴むと一気に呷る。

 

「あっっっつ!!!」

 

「落ち着け神楽坂!健斗さん水を!」

 

「ちょっと待っててね」

 

熱々のお湯で神楽坂が悲鳴を上げ、三沢は慌て、俺は水を用意する。

そんなやり取りを挟み、空気も落ち着き和む。

 

「死ぬかと、思った……」

 

「大丈夫か?」

 

「なんとかな」

 

「さて、神楽坂くんが復活したところで話を戻そうか」

 

パン、と手を叩き2人を注目させて俺は再び口を開く。

 

「決闘者なら自分のデッキを持ちたいよね、その気持ちはよーく分かる。だから俺は神楽坂くんのデッキを作る手伝いをするよ」

 

その俺の言葉に神楽坂は目を丸くする。

 

「放課後またここに来てくれ、もうすぐ昼休みも終わるしね」

 

「はい!」

 

話し込むと昼休みの終わりが近くなった。

俺はまたここに来るよう伝えて2人を帰した。

 

 

 

 

そして放課後

 

「あれ、三沢くんも来たんだ」

 

「ええ。頼んだのは俺ですし、俺も自分の第七のデッキを作るヒントを与りたいなと」

 

そうか、まだ試験で十代と戦ってないのか。

まぁあのデュエルは別にどっちが勝っても大した問題にはならないだろう、もし三沢が勝ってもブルーに行った三沢がどうなるか興味がある。

三沢は空気化するという大人の事情を除いても最後までブレる事なく十代の味方だったし、単純に今からやらせる事を考えると人手が欲しかったから有り難い。

 

「それで、何をするんですか?」

 

「2人にはコレの仕分けを手伝ってもらいたい」

 

「これは……色んなカードがたくさんありますね」

 

神楽坂の質問に、俺は休憩室の隅に積み重なっているダンボールの山を指差し、三沢がダンボールの1つを開封してそう呟いた。

 

「捨てられたカードや回収BOXに入っていたカードを詰め込んだんだ」

 

「あの不要カード入れは健斗さんが考えた物だったんですね」

 

三沢の言葉に俺は頷く。

捨てるくらいならこっちにどうぞ、とストレージBOXを購買に置いてみたところ結構カードが貯まったのでショップに使えそうなものを厳選しそれ以外は学園の教材等に回す予定だ。

 

「前からカードの投棄は問題だったからね。校長に頼んで購買部にカードショップを開く事に決めたんだ。仕分けの報酬って訳じゃないけど、気になるカードは君達にあげるよ」

 

そして、と俺は神楽坂に向き直る。

 

「デッキを作るならまずは実際にカードを見るのが一番。気になったカードとかこいつを使ってみたいとかそんな些細な気持ちや閃きが大事だと俺は思ってる。デュエルは楽しんだもの勝ちだよ」

 

「デュエルを、楽しむ……ですか」

 

「まるで十代みたいですね」

 

「実際影響は受けてるよ」

 

三沢の言葉に笑顔で肯定する。

デュエルを楽しむ心、ワクワクを思い出させてくれた彼の影響を受けたからこそ俺はここに居るのだから。

 

「じゃあ仕分けを始めようか。初めはモンスターと魔法罠の種類を分けてそれが終わったらモンスターは属性順、魔法罠はあいうえお順に分けよう」

 

「「はい!」」

 

2人にそう指令を飛ばして作業に入った。

俺も何か気になるカードがあったらデッキを組んでみるかな。

 

 

作業を開始して数時間が経過した。

時々三沢や俺が「いいなコレ」と呟くくらいで会話らしい会話はなく仕分け作業は続く。

 

「第1段階はこれで終わりか。どうだい何かあった?」

 

「ええ、俺は気になるカードをいくつか。神楽坂は?」

 

「うーん……」

 

三沢の言葉に神楽坂は難色を示す。

やっぱり良いカードが見つからなかったのだろうか。

 

「強いて言うなら……」

 

そう言って神楽坂は1枚のカードを俺達に見せてきた。

 

「これは……【デーモンとの駆け引き】か」

 

「【バーサーク・デッド・ドラゴン】を小さい頃に当てた事があるんです。あれが初めてのレアカードで、懐かしいなって思って」

 

「ふむ、これは」

 

「決まったな」

 

神楽坂の返事に俺と三沢は顔を見合わせ笑い合う。

 

「作ろうぜ、そのデッキを」

 

「ああ、俺も協力するぞ神楽坂!それなら早速高レベルモンスターを探さなければ」

 

「ああ、ちょっと忙しくなるな三沢くん」

 

「え、あのっ」

 

「仕分けはここまでやってくれたら後は俺がやる、それよりデッキ作るぞ神楽坂くん!っと、まずは腹ごしらえか。じゃあ夕飯後にまたここに集合、外出申請は俺の名前を出して構わないから申請するように!」

 

「分かりました、行くぞ神楽坂!」

 

「引っ張るな三沢!」

 

三沢は神楽坂を連れて購買部を後にする。

半ば引っ張られていた神楽坂だがその表情はどこか嬉しそうだ。

うむうむ、ちょっと強引過ぎて引かれたかと思ったがあの様子なら良かった。

 

「さて、と」

 

2人が去った後に軽くダンボールを移動させて休憩室を整える。

その際に先程の仕分けで見つけた、新しいデッキのパーツになりそうなカードに視線を落とす。

そのうちこのカードもデッキにして形にしよう、そう決めてレッド寮の夕飯の準備のために休憩室を後にした。

 

 

その後、再び合流した2人とデッキ作りを再開。

神楽坂は小さい頃に当てた【バーサーク・デッド・ドラゴン】を持参して気合いを入れ、神楽坂の意思を尊重しつつコピーデッキにならないよう三沢と共に見守りつつアドバイスや意見を出し合い、夜遅くに遂に神楽坂のデッキは完成した。

 

「で、出来た……!」

 

「やったな神楽坂!」

 

「誰のコピーでもない、君だけのデッキだ神楽坂くん!」

 

「ありがとうございます!三沢もありがとうな!師匠と呼ばせてください健斗さん!」

 

「いいぞ神楽坂くん!弟子1号だ!」

 

「「「アッハッハッハッハッ!」」」

 

完成した時、俺達3人はやり切った達成感と深夜テンションでお互いを褒めちぎり肩を叩き合い喜びあい、神楽坂は涙を流しながら俺を師匠と呼び敬い俺も弟子にしてやるぞと笑いながら返し、2人を寮まで送った。

 

そして翌朝、レッド寮の朝食の用意していたら神楽坂と三沢が訪ねてきた。

 

「あれ、どうしたの」

 

「今日の実技で早速あのデッキを使う事を知らせておこうと思いまして。あと、昨日は本当にありがとうございました」

 

そう言って神楽坂は頭を下げる。

本当にいい子だな、と思いつつ他のレッド生の視線が痛いので頭を上げさせ、ここで食べていきなさいと勧めた。

三沢と神楽坂は了承して席に着く。

そして朝食のハムエッグ定食が完成し、取りに来た神楽坂くんのお盆に昨日渡しそびれた手伝いの報酬として封筒を挟む。

 

「これは……展覧会の整理券!?」

 

「そ、昨日の手伝いのお礼。俺は行かないからあげるよ」

 

「し、師匠……!」

 

これを機に神楽坂が本当に俺を師匠と呼び始めたので改めて深夜テンションは恐ろしいと感じた。

だけどなんだろうか、こう騒がしくも平和な日常が楽しくて心地よい。

しかし、この平和な日常も長くは続かない事を俺は知っている。

だけど今だけは良いだろう、この世界の住人として、この瞬間を楽しんでも。

 




神楽坂はあのアテムのデッキをまともに回せただけでも凄いと思う

神楽坂のデュエルは次回くらい
これには主人公も後方師匠面


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用務員、観戦する

おい、会話しろよフェイズ(遊戯王ではよくあること)
漫画版キャラが出ますが十代は出ません


神楽坂のデッキ作りから数日。

武藤遊戯のデッキ展覧会も無事終わった。

神楽坂はあれから調子を上げておりレッドへの降格はギリギリ免れた。

そして神楽坂は今、教育実習で高等部に来ている先生のデュエル相手に指名されたらしい。

なんでも教育実習生は決まった回数デュエルするルールがあるらしく神楽坂はその相手に選ばれたという訳だ。

 

俺は店番をセイコさんに任せて作業服にエプロンのいつもの購買部スタイルで神楽坂の勇姿を見届けるためデュエルフィールドに来ていた。

ちなみにこの間に早乙女レイの転入から送還という一連の原作イベントがあったが全てスルーした、というかいつの間にか終わっていた。関わる理由も必要もきっかけも無いから仕方ない。

あとノース校との代表を賭けた十代と三沢のデュエルも終わっていた。結果は原作通り十代が勝ったので復活のサンダーと十代が戦う事になる。

 

何はともあれ弟子1号の新デッキお披露目会だ、師匠として見届けなければならぬと決めて席を探すために移動。

席は余っており周りに生徒の居ない席を確保して試合開始を待つ。

 

「隣、いいかしら?」

 

妙に聞き覚えのある落ち着いた女性の声が隣から聞こえれば声の主は俺の返事も聞かずに隣の席へ座る、聞いた意味とは。

 

「何か用かな藤原さん」

 

「購買部のボウヤがここに居たから、ではダメかしら?」

 

俺の問いかけにくすりと笑って答えるのは遊戯王界の跡部景吾こと藤原雪乃。両方青いし金持ちだしおもしれー奴好きだから実質一緒だろ(適当)

彼女については以前に購買部で明日香に紹介されてから挨拶を交わす程度……まぁ知り合いレベルにはなっている。

もちろん向こうは俺をボウヤ呼びである、俺歳上なんですがね。

 

「ご自由にどうぞ」

 

「つれないわねぇ」

 

向こうは俺の返答に不満そうに唇を尖らせるが知らん俺の管轄外だ。

 

「珍しい組み合わせね。私もいいかしら」

 

「失礼します」

 

「……どうも」

 

「あら、委員長に明日香と、レインさん?」

 

次に声を掛けてきたのは明日香。珍しく委員長こと原麗華とレイン恵を連れている。

明日香は俺の隣、委員長とレインが後ろの席へ座る。女子率が高い。

 

「健斗さんはどうしてここに?」

 

「神楽坂の応援だよ。今日デュエルするって聞いたからさ」

 

「知り合いだったのね、それなら少し話しておきたい事があるの」

 

「なにかしら?気になるわね」

 

「真剣な話なので藤原さんはお静かに」

 

明日香が真剣な顔つきで俺にそう言い、雪乃が茶化し、それを委員長が制する。

間を見計らうと明日香は再び口を開く。

 

「相手の教育実習生なんだけど、対戦相手の生徒からカードを奪っているらしいの」

 

「は?」

 

「しかも生徒の話だと、教育実習生とのデュエルの時だけ魔法カードが発動できなくなるらしいの」

 

「【魔法族の里】とか【ホルスの黒炎龍】の効果とかではなく?」

 

「ええ、まるでデュエルディスクが故障したみたいにカードの発動が出来なくなるって聞いたわ」

 

「十中八九、イカサマ……」

 

「でもレインさん、デュエルディスクにはイカサマ防止機能があるはずよ」

 

みんなの話を聞きながら、記憶の断片に引っかかる物を感じ、頭をひねる。

教育実習生、魔法カード使用不能、なんだか覚えがある。なんだったっけ……。

 

「あら、始まるわ」

 

「真偽はこのデュエルで見極めるしかないわね」

 

雪乃と明日香と言葉に意識を会場に戻すとフィールドにライトが灯りクロノスが壇上に上がる。

 

「それではただいまよーリ教育実習生のシニョール龍牙とラー・イエローのシニョール神楽坂のデュエルを始めるーノ!両者入場ナノーネ!」

 

入場したのはアカデミア教師のコートを着た眼鏡姿で長身の男性。

なんか見覚えがあるが思い出せない。

そして神楽坂が反対側から入場するが、その表情は険しく睨み付けるように対戦相手の龍牙先生を見据えている。

 

「よろしくお願いしますよ、神楽坂くん」

 

「俺は、絶対に負けない!」

 

「もちろん、約束は守りますので貴方も約束を守ってくださいね」

 

なにやら穏やかでない会話を繰り広げ、2人はデュエルディスクを構える。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

龍牙

LP:4000

 

神楽坂

LP:4000

 

 

「先攻は俺だ!ドロー!速攻魔法【手札断殺】をはつど……」

 

神楽坂は魔法を発動するためディスクにカードをセットするが反応は無い。

 

「あれ!?なんで発動しない!?」

 

「いけませんねぇ、メンテナンスはキチンとしないと。自己責任ですよ」

 

動揺する神楽坂に龍牙先生は眼鏡をくいっと上げながらそう口にする。

クロノスが何も言わないということは本当に自己責任なんだろうか。

 

「くっ、なら俺は【レベル・スティーラー】を守備表示で召喚しカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 

【レベル・スティーラー】

星1/闇属性/昆虫族/攻 600/守 0

 

 

神楽坂

LP:4000

手札:3

モンスター:【レベル・スティーラー】

魔法罠:セット2

 

 

「やっぱり発動しない……」

 

「怪しいわね」

 

「まずいな、もし魔法が使えないなら神楽坂のデッキはかなりキツい戦いになる」

 

デッキ内容を知っているからこそ神楽坂が焦っているのが分かる。

だがまだ勝負は分からない、諦めるなよ神楽坂。

 

「では私のターン、ドロー。手札より【俊足のギラザウルス】を特殊召喚。この方法で特殊召喚に成功した時、相手は墓地のモンスターを特殊召喚できますが君の墓地にはモンスターが存在しないので続けますよ。さらに【猛進する剣角獣】を召喚しバトルへ入ります」

 

 

【猛進する剣角獣】

星4/地属性/恐竜族/攻1400/守1200

 

【俊足のギラザウルス】

星3/地属性/恐竜族/攻1400/守 400

 

 

「そうはさせない!メインフェイズ終了前に罠【威嚇する咆哮】を発動する!これであんたは攻撃宣言を行うことが出来ない!」

 

「【猛進する剣角獣】の貫通効果は分かっていましたか。でも罠とモンスターが使えて良かったですね」

 

「てめぇ……!」

 

「永続魔法【つまずき】を発動してターンエンドしますよ」

 

 

龍牙

LP:4000

手札:3

モンスター:【俊足のギラザウルス】【猛進する剣角獣】

魔法罠:【つまずき】

 

 

あれは召喚されたモンスターを守備表示にするカードだ。

いったい何を狙っている?

 

 

「俺のターンドロー!……くっ、カードを2枚セットし【素早いモモンガ】を召喚!【つまずき】の効果で守備表示になる。これでターンエンド」

 

 

【素早いモモンガ】

星2/地属性/獣族/攻1000/守 100

 

 

神楽坂

LP:4000

手札:1

モンスター:【レベル・スティーラー】【素早いモモンガ】

魔法罠:セット4

 

 

「あのボウヤ、苦しそうね」

 

「やっぱりあの先生は怪しいわ」

 

神楽坂はガチャガチャとディスクを弄るがやはり魔法は発動せず焦っている。

恐竜族で魔法封じ……でも後で剣山が来るから少なくとも原作には居ないはず。なら漫画かタッグフォースか……いや、待てよ確か……!

 

「……!思い出したぞこいつ!」

 

「なにか分かったの?」

 

龍牙の正体に行き付いたところ、声に出ていたらしく明日香をはじめとした女子勢の視線が集まる。

 

「ゴメン、思い出したのは大した事じゃないよ。でもあいつがイカサマしてるのは確実だと思う」

 

思い出したぞ、こいつ漫画版の序盤で出てきた奴だ。十代がデュエルディスクをフリスビーにして遊んでたか何かでイカサマには気づかなかったけど指輪か何かの電波でデュエルディスクを妨害して魔法だけ使えなくしてるはずだ。

十代がフリスビーしてる事しか印象になかったから思い出すのに時間掛かった。

 

 

「私のターン、ドロー」

 

そして龍牙の声でデュエルに意識を戻す。

そうだ、今は神楽坂の勝利を信じるんだ。

 

「永続魔法【一族の結束】を発動。そして魔法【強欲な壺】を発動し2枚ドロー、更に【俊足のギラザウルス】を生贄にし【大進化薬】を発動。発動から相手ターンで数えて3ターンフィールドに残り、私はその間レベル5以上の恐竜族を生贄無しで召喚できる。そしてギラザウルスが墓地へ行ったことにより【一族の結束】の効果で恐竜族モンスターの攻撃力は800上昇します」

 

【猛進する剣角獣】

攻:1400→2200

 

まるであてつけの様に龍牙は魔法カードを発動する。

実際にあてつけなのだろう、悦に浸った笑みを相手は浮かべている。

 

「では生贄無しで私は【暗黒ドリケラトプス】を召喚。【つまずき】の効果で守備表示に」

 

【暗黒ドリケラトプス】

星6/地属性/恐竜族/攻2400/守1500

攻:2400→3200

 

 

「また貫通効果持ちか……!」

 

「バトル、【猛進する剣角獣】で【レベル・スティーラー】に攻撃!」

 

「ダメージ計算時に罠【ガード・ブロック】を発動!戦闘ダメージを0にし1枚ドロー!」

 

レベル・スティーラーは剣角獣に突進され串刺しにされ爆散するがその爆風が神楽坂に1枚のカードを届ける。

 

「足掻きますね、カードを1枚伏せてターンエンドです」

 

 

龍牙

LP:4000

手札:1

モンスター:【暗黒ドリケラトプス】【猛進する剣角獣】

魔法罠:セット1【つまずき】【一族の結束】【大進化薬】

 

 

「強いな……」

 

見たところ相手は貫通効果を持つ恐竜で削るデッキのようだ。

教員を目指すだけあって中々やる……これで卑怯な事してなかったら良かったんだが。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

だが神楽坂は諦めていない、ドローには熱が残っている。

 

「【俊足のギラザウルス】を守備表示で特殊召喚!効果はわかってるよな?」

 

「ええ、もちろん。墓地から【俊足のギラザウルス】を特殊召喚し【つまずき】で守備表示に。そして【一族の結束】の効果が無くなり攻撃力が戻る」

 

 

【俊足のギラザウルス】

星3/地属性/恐竜族/攻1400/守 400

 

 

「俺はフィールドのモンスター2体を生贄にしてモンスターをセット!ターンエンドだ!」

 

 

神楽坂

LP:4000

手札:1

モンスター:セット1

魔法罠:セット3

 

 

「わざわざモンスターをセットしたわね」

 

「俺の予想ならあれは【禁忌の壺】だな」

 

「なるほど、それならリバース効果でモンスターの一掃が狙えますね」

 

神楽坂のあの表情はまだ勝負を諦めていない。

相手の盤面は確かに強力だが場を一掃し場を繋げばまだ勝機はある。

 

 

「私のターン、ドロー。どうやら君はそのモンスターに相当自信があるようだ」

 

「だったらなんだ、攻撃してみろよ」

 

「焦らずとも攻撃してあげよう、それでこのデュエルは幕引きだ。手札から速攻魔法【非常食】を発動。【大進化薬】と【つまずき】を墓地へ送りライフを2000回復する」

 

 

龍牙

LP:4000→6000

 

 

「【つまずき】は当然として【大進化薬】まで墓地に送ったわね」

 

「多分……結束の効果のため」

 

「あと罠を警戒してライフを回復したんだろうな」

 

仮に【魔法の筒】や【ディメンションウォール】が発動しても耐えられるようにしたんだろう、意外と考えている。

 

「【猛進する剣角獣】と【俊足のギラザウルス】を生贄にし、現れよ【暗黒恐獣】!」

 

 

【暗黒恐獣】

星7/地属性/恐竜族/攻2600/守1800

 

 

「そいつは!」

 

「このモンスターは相手のモンスターが全て守備表示の場合、プレイヤーにダイレクトアタックすることが出来る。では更に罠【生存競争】を【暗黒恐獣】に発動。このカードは発動後に恐竜族モンスターの攻撃力を1000上昇させる装備カードとなる。さて、私の墓地には生贄となった2体のモンスターがいるおかげで【一族の結束】が適用され攻撃力が800上昇しています」

 

 

【暗黒恐獣】

攻:2600→3400→4400

 

「攻撃力4400……!」

 

「では終わりです。【暗黒ドリケラトプス】を攻撃表示にしてバトル!【暗黒恐獣】でダイレクトアタック!」

 

「ぐっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

神楽坂

LP:4000→0

 

 

暗黒恐獣の突進をまともに受けた神楽坂はソリッドビジョンとはいえ派手に吹き飛ばされ、辺りにライフが無くなった機械音が響く。

 

「勝者、シニョール龍牙!」

 

クロノスが勝利を告げると龍牙は眼鏡をくいっと上げ、倒れた神楽坂を一瞥した後にフィールドを去っていった。

残された神楽坂は悔しそうに顔を歪めるて床を叩く。

 

「くそっ、くそっ、くそぉぉぉぉ!」

 

「あ、あのーシニョール神楽坂?早く戻ってほしいのーネ」

 

クロノスにそう言われた神楽坂は起き上がると脇目も振らずに駆け出した。

 

「行ってくる」

 

席を立ち、周りの女子にそう告げ俺は神楽坂を追いかけるため観客席を後にした。

 

 

 

 

「神楽坂の場所分かるか?」

 

『私のこと便利屋か何かだと思ってます?』

 

アカデミアの中を駆けながら傍で浮いているドリアードに問いかけるとそう返答される。

 

『まぁ分かりますけど。そこの角を曲がってください』

 

案内通りに進むと人通りの少ない廊下に神楽坂は居た。

だが彼だけでは無かった。

 

「返せ!それは俺達の大事なカードだ!」

 

「おいおい約束が違うだろう?私が勝ったらカードを譲ってくれると言ったじゃないか」

 

「何が約束だ、インチキした上に脅して他の生徒からもカードを巻き上げてる奴が偉そうに!」

 

「人聞きが悪い。私がいずれ教師になった時の事を考えて生徒達と仲良くさせてもらってるのさ。カードはその証だよ、心配しなくても君の【バーサーク・デッド・ドラゴン】は私が有効活用してあげるよ」

 

どうやらこいつは漫画と同じく巻き上げとインチキを行っているようだ。

 

「神楽坂から離れろ」

 

瞬時に理解した俺は2人の方へ進み声を上げると2人の注目が集まる。

 

「し、師匠……」

 

「やっとお出ましか」

 

俺の登場に龍牙は怯むどころか笑みを深めてこちらを見つめてくる。

その口ぶりからして俺の事を知っているらしい。

 

「こいつ、今まで他の生徒を脅してデュエルしてカードを奪ってるんです!それだけじゃなくてこいつ師匠の事を暴君とか非道とか有る事無い事言ってバカにして……!」

 

「分かった、落ち着け」

 

「クク、俺は知っているぞ。かつて【暴君】と呼ばれたお前を。それが今はただの作業員とは、堕ちるところまで堕ちたな」

 

悪いが本土に居た頃からそういう風評被害味わってんだよ。今更なんだよ。

 

「誰目線だよ、あと現在進行形で堕ちてんのはお前だよインチキ眼鏡」

 

「お前を倒せば俺のアカデミア統一も完璧なものになる。喜べ、お前を最後の決闘相手に指名してやろう」

 

「どこに喜ぶ要素があるんだよ、ちゃんと頭で考えたか?頭までダイナソーか?」

 

「俺と決闘しろ遊佐健斗。俺が勝ったらお前のデッキを頂く」

 

「いいぞ、俺が勝ったら奪ったカード全部返して生徒一人一人に謝罪したあと校長に自首しろ」

 

「いいだろう」

 

「いいことを教えてやる、俺を【暴君】と蔑んで無事で済んだ奴は一人も居ない」

 

「それは怖い怖い。では対戦は明日の夕方にでも」

 

そう言うと龍牙はコートを翻して去っていく。

去ったのを確認した俺は神楽坂に向き直る。

 

「大丈夫か?」

 

「師匠、俺、俺……!みんながあいつにカード奪われてるって知って許せなかった!師匠の事もバカにしやがった!でも、でも、勝てなかった……!」

 

神楽坂は溜まった感情が溢れ出したように涙を流しながら悔しがり床を叩く。

デュエル開始前から神楽坂の様子がおかしかった理由が分かった。神楽坂はあいつに対して怒りを燃やしていたんだ。

 

「ありがとう、俺のために怒ってくれて」

 

俺は涙を流す神楽坂の頭に手を置く。

 

「それにみんなのために戦ったんだろ?偉いぞ、師匠として俺も鼻が高い」

 

「ししょう……」

 

「後は俺に任せてくれ」

 

笑顔でそう慰め神楽坂を寮まで送る。

 

さて、可愛い弟子を泣かせたアイツをどうしてやろうか。

 

 

 




こいつこんな強かったっけ……?
?「俺より強いなんて許せんザウルス!」

ちゃうねん、こうでもしないと神楽坂が勝っちゃうねん……
ちなみに神楽坂のデッキは【冥界軸最上級】です

主人公は普通の人には普通に、慕ってくる人には優しく、敵意や悪意ある相手はDisる、鏡の様な人間です


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用務員VS教育実習生

やめて!先攻で【王の舞台】を発動されたら返しのターンでハールやフローディで制圧盤面ができちゃう!

お願い、負けないで龍牙!

あんたが今ここで倒れたら、教員になってクロノスを蹴落しエリートを排出する夢はどうなっちゃうの?

指輪はある。魔法を封じれば、暴君に勝てるんだから!

今回「龍牙死す」デュエルスタンバイ!


みんな龍牙先生好き過ぎでは?


「健斗さんが龍牙先生の次の対戦相手!?」

 

「面白い事になったじゃない」

 

あのあと購買へ戻ると明日香達が十代一行を連れて事情を聞きに来たのでそう答えると皆それぞれの反応を示した。

ちなみに三沢は神楽坂を寮へ送っていったので居ない。

 

「そういえばレッドの生徒も何人か被害に遭ってるらしいんだな」

 

「隣の部屋のチックくんとかがそう言ってたっス!」

 

「私も調べてみたけど中等部の生徒や一部の女子も被害があったらしいわ」

 

「皆……魔法が発動出来なかった……」

 

みんな龍牙には何かしら思うところがあったのか調べた情報を伝える。

やはり分かっていた事だが漫画通りのロクでもない奴のようだ。

 

「明日香さん、被害者には女性も居るんだよね?」

 

「ええ、気の弱そうな相手を狙っているみたいよ」

 

全く許せないわ、と明日香は怒りを露わにする。

 

「その子達全員で校長に直訴しようぜ、この人痴漢でしかもカード奪いましたって」

 

「ええっ!?」

 

「マトモな仕事出来な委員会のリーダーっぽいの女性だしあいつら証拠無くても動くしいけるんじゃね?あいつらの杜撰なとこ逆手に取ろうぜ」

 

俺の提案に全員は驚きで口を開いたまま固まっている。

 

「それはちょっと……」

 

「決闘者に決闘させないのってかなりの仕返しになると思うんだけど?元々俺がデュエルを受けるメリットは無いしアイツが捕まれば余罪も全部バレてカードも戻るんじゃないかな?」

 

思い返すはリアルファイトで俺を捕らえてきた借金取り。

2、3人ならばなんとかなるがさすがにそれ以上が一斉に来たら無理だった。世の中にはデュエルを捨てリアリストにならなければならない場面もあるのだ。

なんにせよ今回の事件、先に人としての道理を破っているのはあの眼鏡だ、外道にかける情けは無い。

 

「調べりゃ証拠たくさん出そうだし被害者もたくさん居るし、たまたまデュエル前に余罪がバレて御用されても不思議じゃないよね?」

 

「……それは最終手段にしましょう」

 

「健斗さんも明日香もそれほど怒ってるって事なんだな……」

 

明日香と十代がそう返事する。

明日香も否定せずに最終手段として残す辺りやっぱり腹が立っているんだろう。

 

「まぁデュエルで白黒付けた後に告発でも問題は全く無いね。向こうが約束守るとは思えないし」

 

「で、ボウヤは実際勝てるのかしら?」

 

「もちろん」

 

雪乃の言葉にそう返しながら俺は新たに構築したデッキをディスクにセットする。

デッキを作っていたのは神楽坂や三沢だけでは無い、俺もカード整理しながら新たなデッキを作っていた。

 

「あいつはきっと俺が本土で使っていたデッキが流された事を知らない。だから対策してたとしてもそのデッキか、ここで新たに組んだローレベルデッキだ」

 

実際【王の舞台】が無いと展開が難しいジェネレイドを使う気は無い。

それにまだあのデッキを公に出す訳にはいかない。

 

「魔法が使えないなら、罠中心に……?」

 

「いや、相手がそれを見越してイカサマを罠に切り替えたとしたらその時は目も当てられない。変に弄らずにこのまま行く」

 

心配せずともこのデッキはモンスター効果がメインだ、魔法罠のどちらかが封じられても問題は無いし貫通効果を活かすためならスキドレも無いと踏む。

 

「健斗さん!あいつをぶっ倒したら俺とデュエルしてくれよ!」

 

「もちろんだよ十代くん」

 

十代と新たなデッキで戦う事を約束し、明日の龍牙とのデュエルはみんな応援に来るという事が決定して解散となった。

 

 

 

 

 

翌日の夕方。

龍牙は宣言通り教育実習デュエルの最後の相手に俺を指名し夕方にデュエルが執り行われる事となった。

 

「急にすみません、佐藤先生。頼れる方が貴方しかいなくて」

 

「遊佐くんの頼みなら構いませんよ。……今は教師ではなく一個人として君を応援します」

 

急なお願いにも関わらず監督者を承諾してくれた佐藤先生に礼を述べる。そして最後の言葉からして先生も龍牙のよくない噂に気付いているようだ。

 

「おや、怖気付いて逃げたと思いましたよ」

 

佐藤先生と話していると龍牙が到着したらしく、フィールドに上がりながらそう挑発してくる。

 

「そっちこそ、無事に決闘が行えて良かったですね。いつ龍牙先生が校長に呼ばれるかヒヤヒヤしながらお待ちしておりました」

 

「言わせておけば……!」

 

おうおう沸点低いな眼鏡、もっとポーカーフェイスの練習をしな。

 

「揃いましたので、これより龍牙教育実習生の最後の試験デュエルを開始します。このデュエルは私、佐藤が監督します」

 

口論に発展しそうだと判断した佐藤先生がすかさず間に割って入りデュエル開始を取り仕切る。その際に俺に咎めるようなジト目を向けてきた。

佐藤先生には申し訳無いが、今回は口が悪くなるのを抑えられそうに無い。

 

「あぁ、今回のデュエルは関係者のみの観戦を許してます。龍牙先生こんなにいっぱい関係者が居るなんて大人気ですね」

 

「……ええ、いずれはここに赴任しますから今のうちに生徒と交流してたんですよ」

 

観戦席には俺の応援に来ている十代達以外にも他の生徒も居る。

龍牙はこう言っているがもちろん彼らは龍牙にカードを奪われた生徒達だ、十代達に頼んで呼べる奴全員呼んだ。

 

「関係者のみなら何が起きても大丈夫ですね」

 

「私の勝利を全生徒に届けられないのが残念です」

 

「負けても関係者にしか知られないですし良かったですね」

 

「…………」

 

「…………」

 

煽りの押収が続き、お互いに沈黙が流れる。

俺は涼しい笑顔で対応しているが龍牙の方は表情こそ笑顔だが青筋を浮かべて怒りを隠せていない。乳酸菌摂ってるぅ?

 

「両者、位置に着いて。デュエル開始!」

 

これ以上は耐えられないといった様子で佐藤先生はデュエルの開始を宣言した。俺も龍牙もすかさずデッキをディスクにセットして構える。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

健斗

LP:4000

 

龍牙

LP:4000

 

 

「先攻は俺が貰いますね。ドロー。手札から魔法発動」

 

【おろかな埋葬】を発動するべくカードをディスクにセットするが反応無し。そのまま魔法を妨害するつもりのようだ、知ってた。

 

「どうしました?」

 

「失礼、俺のデュエルディスクはお転婆でね。貴方相手なら魔法は要らないって言ってるんですよ」

 

わざとらしく訊ねてくる龍牙にそう答えつつ、此方を伺う佐藤先生にニッと笑う。恐らくこうでもしないと彼は中断をしてくるだろう、仮にも俺は教員側の人間な訳だしそのデュエルディスクが故障しているなら中止する理由にはなる。

佐藤先生はやれやれ、といった様子で首を振るとデュエルを見守る事にしたようだ。

 

「では早く続けてください」

 

「モンスターをセット、カードを2枚セットしてターンエンド」

 

 

健斗

LP:4000

手札:3

モンスター:セット1

魔法罠:セット2

 

 

「口の割に随分と慎重ではありませんか。では私のターン、ドロー。【ハイパーハンマーヘッド】を召喚しバトル。セットモンスターに攻撃」

 

「攻撃された【魔導雑貨商人】のリバース効果発動。魔法か罠が出るまでデッキの上からカードをめくりそれを手札に加える。それ以外は墓地へ送る」

 

 

【魔導雑貨商人】

星1/光属性/昆虫族/攻 200/守 700

 

 

【ハイパーハンマーヘッド】

星4/地属性/恐竜族/攻1500/守1200

 

 

「貴様……あのデッキはどうした」

 

「どんなデッキを使おうが俺の自由だ、効果続けるぞ」

 

ジェネレイドと違うデッキだと気付いた龍牙が険しい顔で睨み付けるが軽く流す。

 

「まぁいい。ごほん、続けてください」

 

「1枚目【ワイトプリンス】2枚目【ワイトメア】3枚目【ワイトプリンセス】4枚目【カオス・ネクロマンサー】5枚目【ライトロード・ハンターライコウ】6枚目【ワン・フォー・ワン】、魔法カードのため手札に加える」

 

「いい魔法カードが引けたじゃあないですか。あ、今は使えないんでしたね」

 

「いま墓地へ送られた【ワイトプリンス】の効果発動。デッキから【ワイト】と【ワイト夫人】を墓地へ送る。そして【魔導雑貨商人】は破壊される」

 

 

名前の通りのハンマーの頭が振り下ろされ商人は爆散する。

 

 

「雑魚がワラワラと溜まろうが無駄です。では私はメイン2でカードを3枚伏せてターンエンド」

 

「エンドフェイズ時に永続罠【闇の増産工場】を発動。手札を1枚捨てて1枚ドローする。【カードガンナー】を捨てドロー」

 

「チッ、手札交換か」

 

 

龍牙

LP:4000

手札:3

モンスター:【ハイパーハンマーヘッド】

魔法罠:セット2

 

 

「俺のターン、ドロー。【闇の増産工場】の効果発動。手札の【ワイトベイキング】を捨て1枚ドローする。この時墓地へ送られた【ワイトベイキング】の効果発動。【ワイト】か【ワイト】の名が記されたモンスターを2枚まで手札に加えその後手札を1枚捨てる。俺は【ワイトメア】と【ワイトプリンセス】を手札に加え【ワン・フォー・ワン】を捨てる。そして【カオス・ネクロマンサー】を召喚」

 

 

【カオス・ネクロマンサー】

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

 

 

「ふ……やはりきましたか」

 

人形を操る男がフィールドに現れる。

ネクロマンサーの登場に龍牙は想定の範囲内だと笑みを浮かべた。

 

「【カオス・ネクロマンサー】の攻撃力は俺の墓地のモンスターの数×300アップする。俺の墓地にはモンスターが10体、よって攻撃力は3000」

 

 

【カオス・ネクロマンサー】

攻:0→3000

 

 

「バトル。【カオス・ネクロマンサー】で【ハイパーハンマーヘッド】に攻撃」

 

「甘いですよ、罠発動【重力解放】!この効果により全てのモンスターの表示形式が入れ替わる。守備になった【カオス・ネクロマンサー】の攻撃は中断!」

 

突如としてフィールドが無重力空間になるとネクロマンサーは宙に浮きモンスターに向かえず守備になり帰ってきた。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

健斗

LP:4000

手札:3

モンスター:【カオス・ネクロマンサー】

魔法罠:セット3【闇の増産工場】

 

 

「私のターン、ドロー!手札から【俊足のギラザウルス】を特殊召喚する!このモンスターがこの方法で特殊召喚に成功した時、相手は墓地からモンスターを特殊召喚できる」

 

「じゃあ俺は墓地からもう1体の【カオス・ネクロマンサー】を攻撃表示で特殊召喚」

 

「だが墓地のモンスターが減り攻撃力は2700です」

 

 

【俊足のギラザウルス】

星3/地属性/恐竜族/攻1400/守 400

 

【カオス・ネクロマンサー】

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

攻:0→2700

 

 

「更に手札から【テラ・フォーミング】を発動!フィールド魔法【ガイアパワー】を手札に加えそのまま発動!フィールドの地属性モンスターの攻撃力は500上昇し守備力は400下がる。そして【猛進する剣角獣】を召喚。【ハイパーハンマーヘッド】を攻撃表示に戻しバトルだ!」

 

「ならメイン終了時に【闇の増産工場】の効果発動、【タスケルトン】を捨て1枚ドロー。【カオス・ネクロマンサー】の攻撃力は3000になる」

 

 

【猛進する剣角獣】

星4/地属性/恐竜族/攻1400/守1200

攻:1400→1900

 

【俊足のギラザウルス】

攻:1300→1800

 

【ハイパーハンマーヘッド】

攻:1500→2000

 

 

突如フィールドに生えた巨木から降り注ぐ恵みにより向こうの恐竜たちがイキイキとする。

それでもネクロマンサーには劣るがバトルに入るってことはあの伏せは恐らく……

 

 

「モンスターを墓地に送るのは読んでいたぞ!攻撃表示の【カオス・ネクロマンサー】に【猛進する剣角獣】で攻撃!その瞬間に罠【生存競争】を発動!剣角獣に装備し攻撃力を1000上昇させる!更に伏せていた速攻魔法【蛮勇鱗粉】を発動し攻撃力を更に1000上昇!」

 

【猛進する剣角獣】

攻:1900→2900→3900

 

「【生存競争】を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合、もう一度モンスターに攻撃できる!【蛮勇鱗粉】を発動したモンスターは直接攻撃出来なくなるが関係ない!貫通効果を持つ剣角獣で守備表示の【カオス・ネクロマンサー】を攻撃すれば終わりだ遊佐健斗ォ!」

 

度重なる強化を受けた剣角獣は血走った眼をこちらに向けながらネクロマンサーを貫かんと迫る。

これまでかと覚悟を決めるネクロマンサーだが剣角獣の横っ腹に豚の骨が体当たりし、バランスを崩した剣角獣は倒れもがく。

 

「墓地の【タスケルトン】の効果。バトルステップ時に墓地のこのカードを除外して発動、モンスターの攻撃を無効にする。この効果は1デュエルに1度しか使用できない」

 

「ちぃ!小癪な真似を!」

 

「モンスターを戦闘破壊していないので【生存競争】の追加攻撃は不発。……で、誰が終わるって?」

 

「うるさい!だが墓地からモンスターは減った!【ハイパーハンマーヘッド】で攻撃表示の【カオス・ネクロマンサー】に攻撃!このモンスターとの戦闘で破壊されなかった相手モンスターはダメージステップ時に手札へ戻る!」

 

龍牙

LP:4000→3300

 

ハンマーヘッドはネクロマンサーに向かっていくも人形の群れに行く手阻まれ消耗するが最後の力を振り絞り頭突きをお見舞いした。頭突きを受けたネクロマンサーは手札へと吹っ飛ばされるが同時にハンマーヘッドも力尽きた。

ごり押しで来たか。

 

「【俊足のギラザウルス】で守備表示の【カオス・ネクロマンサー】に攻撃!」

 

ギラザウルスに飛び掛かられたネクロマンサーはあっけなく爆散した。

守備0だから仕方ない。

 

「メイン2で永続魔法【つまずき】を発動しターンエンド!【蛮勇鱗粉】のデメリット効果で【猛進する剣角獣】の攻撃力は2000下がる」

 

 

【猛進する剣角獣】

攻:3900→1900

 

 

龍牙

LP:3300

手札:0

モンスター:【猛進する剣角獣】【俊足のギラザウルス】

魔法罠:セット1【生存競争】【つまずき】

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

「無駄無駄。何を召喚しても【つまずき】の効果で守備表示になる、諦めたらどうだ?」

 

「自分はもう後がないから降参しろって言ってるように聞こえるんですけど気のせいですよねアハハ。じゃあ【闇の増産工場】の効果で手札の【ワイトプリンス】を捨てて1枚ドロー。墓地へ送られた【ワイトプリンス】の効果で【ワイト】と【ワイト夫人】を墓地へ」

 

「そっちこそ【カオス・ネクロマンサー】の攻撃力を上げるのに必死じゃないか」

 

「ええ、攻撃力を上げるのに必死ですね」

 

【カオス・ネクロマンサー】の、とは言っていない。

 

「【ワイト夫人】を守備表示で召喚」

 

 

【ワイト夫人】

星3/闇属性/アンデット族/攻 0/守2200

 

 

現れたのは骸骨の貴婦人。椅子に座りカップを手に優雅にティータイムを過ごす。

 

「壁モンスターで凌ぐつもりですか、浅はかな考えだ」

 

「墓地の【ワイトプリンス】の効果発動。このカードと墓地の【ワイト】2体を除外しデッキから【ワイトキング】を特殊召喚する」

 

龍牙を無視してプレイを続行する。アイツは語るに落ちるって諺を知らんのか。

そんなことを思っているとフィールドに一際雰囲気の違う骸骨、【ワイトキング】が降り立つ。

 

 

【ワイトキング】

星1/闇属性/アンデット族/攻 ?/守 0

 

 

「攻撃力不明だと……?」

 

「【ワイトキング】の攻撃力は墓地の【ワイト】と【ワイトキング】の数×1000上昇する。そして俺が今まで墓地に送った【ワイト】モンスターは墓地では【ワイト】として扱う」

 

「なっ……あれら全部を数に含むのか!?いや、だが【つまずき】の効果によりそいつは守備表示になる!守備力は0!俺の勝ちは変わらん!」

 

高笑いしながら龍牙はフィールドを見るが【ワイトキング】は直立不動のままである。

 

「何故だ、なぜ変わらない!?」

 

「【ワイト夫人】がフィールドに表側表示で存在する限りこのモンスター以外のレベル3以下のアンデッド族モンスターは戦闘で破壊されず魔法罠の効果を受けない。ついでに手札の【ワイトメア】を捨てて効果発動。除外されている【ワイト】1体を墓地に戻す。更に【ワイトプリンセス】を手札から捨て効果発動。お互いのフィールドのモンスターはこのターン自身のレベル×300攻撃力が下がる」

 

プークスクス、といわんばかりに夫人は龍牙を指さしキングは全身の骨を鳴らしながら体を震わせる。たぶん両方とも笑ってるんだろう。

 

「これで俺の墓地には【ワイト】が9体、レベル1のため300下がり攻撃力は8700」

 

 

【ワイトキング】

攻:?→8700

 

 

「ば、バカな……攻撃力8000越えだと……!?」

 

「そしてそっちのモンスターはレベル4とレベル3のため1200と900下がる」

 

 

【猛進する剣角獣】

攻:1900→700

 

【俊足のギラザウルス】

攻:1800→900

 

「私のモンスターが……」

 

龍牙はフィールドの状況を見ればその場に膝をつく。

 

「バトルだ、【ワイトキング】で【猛進する剣角獣】に攻撃」

 

「ぐぼぉぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

龍牙

LP:3300→0

 

 

ワイトキングは助走を付けてその骨の拳を振るい猛進する剣角獣を殴りつける。ワイトキングの攻撃は猛進する剣角獣を貫通し勢いそのままに龍牙へと向かうとその拳が頬へとめり込む、迫真のソリッドビジョンだ。

ワイトキングの一撃で吹っ飛ばされライフが0になる音がフィールドに響き渡る。

 

「そこまで。勝者、遊佐健斗!」

 

佐藤先生が俺の勝利を告げソリッドビジョンが解除されデュエルが終了する。

そして遅れて観客席からワァと歓声が上がった。席を見渡すと十代達と見守っていたであろう神楽坂を見つけたので笑顔でサムズアップを向けておく。

 

「信じてましたよ師匠ォーー!」

 

それを見た神楽坂はこちらにまで届くほどの歓声を送ってきた。

元気になったのならよろしい。

 

「さて、と」

 

俺はディスクを解除すると吹っ飛ばされたまま起き上がらない龍牙の元へ向かう。

 

「約束だ、奪ったカードを生徒に返して謝罪して校長に自首しろ」

 

「……の、せいだ……」

 

「あ?」

 

「お前のせいだ!いつもいつも最後の大事な時にお前は邪魔をする!2年前のあの日も、今も!」

 

何やら叫び始めた龍牙に面食らっていると尚も言葉は続く。

 

「2年前、本土で開かれた社交界の交流デュエル会!エリートとして期待されていた私は優勝まであと一歩のところで当日参加枠のお前に敗れた!あの無慈悲な【(ジェネレイド)】のデッキにな!当日参加の一般人に負けた、その事実と敗北で私の明るいエリート街道は無くなった!だから私は決めた、デュエル界でトップになり貴様を倒せるようなプロを排出すると!」

 

「ふーん、覚えてねーわ」

 

2年前と言われても当時は賞金やコネ欲しさにあらゆる大会に出ていたから覚えていない。

正直いい思い出が無い、忘れたい記憶だ。

 

「お前がアカデミアに居ると知ったときは胸が躍った。落ちぶれて作業員になっていると知ったときは爽快だった。そしてデュエルで勝利しあの時の借りを返すと共にアカデミアの教員にお前より上になれると……思っていた」

 

「……はぁ」

 

佐藤先生も龍牙の言葉にため息をついている始末だ。

 

「おい。お前が好き勝手言うんなら俺も好き勝手言うぞ」

 

「遊佐くん」

 

佐藤先生が止めに入るが構わず口を開く。

 

「リベンジ上等、メタデッキ上等、デュエリストとして再戦したかったってんなら大いに結構。だがお前がやったことは何だ?醜い逆恨みにデュエルを妨害するイカサマ、無関係の生徒を巻き込む脅迫と強引なアンティルール!自分の非道の理由に俺を使うな反吐が出る」

 

俺の反論に茫然とする龍牙にそのまま近づきその指に嵌まっている怪しい指輪を奪い取る。

 

「な……あっ、お前」

 

「これが魔法カードを使えなくするイカサマの正体なんだろ?KC製のデュエルディスクのプロテクトを突破するなんてやるねぇ。……なんでこの才能を伸ばさなかった!デュエルなんざ忘れて機械に進んでいたらエリートも夢じゃなかっただろ!」

 

そう吐き捨てて指輪を地面に投げ捨てる。指輪は砕け散り辺りに精密機械の部品が散らばった。

 

「自分からデュエルに囚われた挙句に無関係の人間を自分のエゴで巻き込んだお前にかける情けは無い。恨むんなら俺じゃなくてデュエルで全てを判断した周りの人間を恨むんだったな」

 

「あ……あ……」

 

「遊佐くん、それ以上は私も黙っていません」

 

まだまだ続けたいところだったが佐藤先生に肩を掴まれ止められる。

いつの間にか血が上っていた頭が冷めていく。

 

「……すみません佐藤先生」

 

「あとの事は我々教員に任せてください」

 

「ありがとうございます」

 

佐藤先生にそう告げて俺はデュエルフィールドを後にする。

あれほど歓声に包まれていた会場はいつのまにか静まり返っており俺の去り際の靴音だけが響いた。

 

 

 

 

 

『さすがにやり過ぎたのでは?』

 

「いいんだよ、あれで」

 

小屋への帰り道、顕現したドリアードが心配そうに声を掛けてきた。

 

「これだからこの世界のデュエル社会は嫌なんだよ」

 

あの龍牙も社会風潮の被害者なのだろう。それは分かる、同情も出来る。

だがそれは悪事を働く理由にはならない。それにあいつは機械方面の才能があった。それならそっち方面に進むことも出来たはずだ。

俺みたいな、デュエルしか能がない(・・・・・・・・・・)人間と違って選択肢はあったのだ。

それを無視してあんな事をしたのだ、自業自得だ、同情も消し飛ぶ。

何より神楽坂を泣かせたのが許せない。相応しい報いを受けてしまえばいいのだ。

 

『健斗……』

 

「大丈夫、こんなのは今回限りだ。もともと説教とか怒るとかするようなガラじゃないからね」

 

俺は大層な事が言えるほど立派な人間じゃないのだから。

ドリアードは何も言わずに小屋まで一緒に隣を付いて歩く。

それでいい。今更何を言っても変わらないのだから、隣に居て癒してくれる、それだけで有り難い。

 

 

その日の夜、龍牙の不採用と今までの脅迫とアンティが暴かれアカデミアを追放する処分が下った事を佐藤先生から知らされた。

カードは全部持ち主の元へ返却されたようだ、これでこの件は落着した。

 

 




龍牙のデッキは書いてて楽しかった(コナミ感)
本当はきれいな龍牙プランもあったんですよ、再登場も考えたんですよ
でもこいつのやらかしてることどう頑張ってもフォローできなかったし後に出てくる変な語尾の後輩ザウルスとデッキが被るので救いようのない眼鏡にしました
神楽坂を泣かせたのが悪い(確信)

なんかこの主人公、十代より先に闇堕ちカウンター溜まってるんですけど大丈夫ですかね(他人事)


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用務員と復活のサンダー

1ヶ月も更新をしなかった不甲斐ない私を許してくれ……

十代は少し出ます


龍牙の処分が下って数日経過した。

一部の生徒間だけとはいえブチ切れて醜態を晒してしまった事を小屋に帰ってから猛省しビビりながら翌朝にレッド寮で朝食を準備していたが十代達は変わらずに声を掛けてくれた。

更に被害に遭っていたレッド生も俺に礼を伝えてきた。

相手が相手だったので他の生徒も「カードを返してくれてありがとう」「スカっとしたぜ!」など感謝を伝える言葉がほとんどだった、とのこと。

気分が良くなった俺は皆のご飯を大盛りにし夕飯はエビフライに変更しレッド寮食堂は歓声に包まれた。

神楽坂もカードが返ってきたことを喜び感謝していた。

 

 

そしてノース校とアカデミア本校の代表戦は終わった。

結果は原作通り十代が勝ち万丈目はアカデミアに残留した。もちろんアームドドラゴンを借りパクして、だ。

そして出席日数が足りないという事でオシリスレッドに編入し夕飯前の食堂にて改めて皆に万丈目が紹介されるため待機している。

 

「というわけでレッド寮の新しい仲間の万丈目くんだにゃ、みんな仲良くするのにゃ」

 

「万丈目"さん"だ!」

 

「よろしくサンダー!」

 

というやり取りが行われて夕飯タイム。

万丈目はレッド寮の質素なメニューに引いていたがブルー寮はブルー寮でメニューがおかしいからな、1回行った事あるけどあそこ毎日高級食材並ぶからな。余りでいいから分けて欲しい。

と、思考が逸れたので現実に意識を戻すと万丈目や十代達がワイワイと騒ぎながら食べ始めたのでその席に移動する。

 

「はじめまして万丈目くん、レッド寮へようこそ。用務員の遊佐健斗です、よろしく」

 

実は初めましてだということを改めて思いながら夕飯の焼き鮭定食に手を付けている万丈目に挨拶する。

彼は俺の顔を一瞥した後に思い出したのか「ああ」と声に出す。

 

「確か迷宮兄弟とのタッグデュエルで十代のパートナー……でしたか?」

 

「あ、うん。そんなこともあったね」

 

万丈目の言葉に頷いて返すと「よろしくお願いします」と答えた。

なん、だと……万丈目が敬語だと……。

 

「万丈目が敬語だ……」

 

「明日はきっと大嵐がくるんだな」

 

「ふざけているのか貴様ら!」

 

十代と隼人も俺と同じ気持ちだったらしくそれを口に出せばすぐさま万丈目のツッコミが飛んでくる。

まぁ初期の万丈目ってクロノスとかにも敬語だったしこのあと吹雪にも敬語使うし尊敬する相手とか特に何も無い相手に対してはそういう感じなんだろうか。

さっき大徳寺先生に思いっきりタメ口だったから少なくとも大徳寺先生よりは上の模様、やったぜ。

 

「あ、そうだ聞いてくれよ健斗さん!万丈目も俺達と同じで精霊が見えるんだってさ!」

 

「万丈目"さん"だ!いや、ちょっとまて俺達だと?」

 

「ああ!健斗さんも精霊が見えるんだ!」

 

驚きの表情を見せる万丈目に十代は笑顔で肯定する。

 

「その話は夕飯のあとにしよう。後で十代くんの部屋に行ってもいいかな?」

 

「それもそうだな!じゃあ部屋で待ってるぜ」

 

他の生徒や大徳寺先生の目があるこの場所でする話でないと判断し後で十代の部屋に行く約束をしてその場を離れた。

 

 

 

 

「いらっしゃい健斗さん、上がってくれよ」

 

「お邪魔します」

 

夕飯の片づけを済ませた俺は約束の場所へ向かうと笑顔の十代が出迎えてくれる。部屋にはルームメイトの翔と隼人、そして万丈目が居た。

 

「いいな~アニキ達は精霊が見えて。ボクもブラマジガールの精霊と……」

 

「…………」

 

翔は見えないことにいじけてベッドへ上がり妄想に耽る。

そして隼人は隼人で何やら考えている。

安心しろ翔、お前の願いは近いうちに叶うぞ。

 

「ふん、見えたところでいい事なんて無いぞ」

 

「えー、俺はいろんな精霊と話せて楽しいけどな」

 

『クリクリー』

 

「ははっ、擽ったいぜ相棒」

 

十代の言葉に呼応するかのようにハネクリボーが姿を現すとご機嫌な様子で十代に甘えるようにすり寄る。

微笑ましい、永遠に見ていたい、守りたいこの笑顔、守らなきゃ(使命感)

 

「はぁ……お前はまだいい方だな」

 

『あらぁ~ん、おいらも負けてないわよサンダーの兄貴ぃ~』

 

ため息を吐く万丈目の傍に体をくねらせる黄色いナマモノ、おジャマイエローが姿を現した。

 

「それが万丈目くんの精霊か」

 

「おもしれーやつだなー」

 

「オカマみたいな声が聞こえるんだな……」

 

隼人、聞こえるのか。そういえば隼人は声が聞こえたりソリッドビジョンの変化に気づいたりしてた気がするから素質はあるんだろう。ちなみに君のデスコアラは精霊だ、いま部屋の隅でユーカリ食ってるぞ。

 

「くっ、引っ込んでいろ!」

 

『いやぁ~ん』

 

万丈目に叩かれておジャマイエローは変な悲鳴と共に消えた。

順番的に次は俺だろう。

 

「俺の精霊はまずこの子達」

 

そう言って俺はローレベルデッキを取り出して床に広げるとたくさんのモンスターが飛び出てくる。

ダンシングエルフやキーメイスやエルディーンなどなど、様々なモンスターが部屋いっぱいに姿を現した。

 

「なっ、これ全員か!?」

 

「俺も最初は驚いたけど話せるし慣れると楽しいぞ?」

 

『よろしくー!』

 

「はいみんな戻って―。で、こいつが俺の相棒」

 

モンスター達をデッキに戻したのちに1枚のカードを取り出しそれを万丈目に見せる。

そのカードはもちろん【精霊神后 ドリアード】。見せたと同時に光と共にドリアードが姿を見せる。

 

「これが……」

 

『初めまして、弱さを知り己を知る者よ。私はドリアード、彼のパートナーとして力を貸しています。よろしくお願いしますね?』

 

「は、はい」

 

柔らかい微笑みと共にそう話すドリアード、これには万丈目も思わず敬語で頷く。

弱さを知る者かぁ、絶好調ですねドリアードさん。たぶんノース校で自分を見つめなおした=自分の弱さに気づいたからなんだろうなぁ。

 

「俺の精霊はどうしてこんなやつなんだ……」

 

ドリアードとおジャマイエローを比べて肩を落とす万丈目。

大丈夫、更に増えるから。ていうか増やす。

 

「万丈目くん、明日の朝に時間あるかな?渡したいものがあるんだ」

 

「朝ですか?構いませんが」

 

そう俺は彼に持ち掛けるとあっさりと承諾した。

万丈目にはあいつらを引き取って貰わねばならない。

その後はみんなで雑談して解散し1日を終えた。

 

 

 

 

翌朝。アカデミアも週末は授業が無い休日があり今日はその休日。

今日はレッド寮の当番ではないので早めに購買部へ向かい今日もショップの準備をする。休日といえど購買部は開いており朝早くから買い物に来る生徒もよく居る。

 

「カードショップのオープンはもうすぐといったところかしら?」

 

「なんでここにいるのかな藤原さん」

 

「あら、生徒が購買に来るのは普通でしょう?」

 

カウンターに越しにこちらを見つめる赤い眼差しの主であるゆきのんにそう返すも軽く流される。

龍牙との一戦以降に俺は彼女の興味の対象になったのか最近距離が近い。

彼女におもしれーやつカウンターを乗せられてしまったようだ。

 

「はぁ……ショップはまだだよ。機械とか色々な調整がまだ残ってるからね」

 

「そう、残念」

 

残念のざの字も無い返事がくる。

さすがにショップの件は既に生徒間に知れ渡っている。

コツコツと準備を進めてはいるが本格的なオープンは先になるだろう、さすがに新学期までには間に合うとは思うが。

 

「おはようございます師匠!」

 

「おはよう神楽坂くん」

 

ゆきのんの視線に耐えながら作業をしていると元気よく響く神楽坂の声、救世主の登場である。

『決闘主義』と達筆な字がプリントされた白地のシャツを制服のインナーとして着用している。

このダサT集めは神楽坂の趣味のようだ。初めて見たときは千年パズルのシャツ着てたし納得である。

 

「おはよう弟子のボウヤ」

 

「おはよう藤原」

 

挨拶を交わす2人。

俺の弟子である神楽坂は俺と関わりのある原作メンバーとの交流が増えた事でよく十代達といる事が多くなった。

ゆきのんも明日香と行動をすることが多くなりその流れで2人はいつの間にか知り合いになっていたりする。

 

「誰か待っているんですか?」

 

「うん。万丈目くんに渡したいカードがあるから倉庫を開けてるんだ」

 

「けーんーとーさーん」

 

「お、噂をすればきたね」

 

神楽坂の問いに答えていると万丈目を連れた十代がやってきた。

 

「おはよう2人とも、朝早くにごめんね」

 

「全然オッケー」

 

「何故勝手に付いてきた貴様が答える!」

 

「だって面白そうだし?」

 

「はいはい、それじゃあ早速本題に入るから付いてきて」

 

いつもの騒がしいやり取りを笑顔で諌めながら俺は目的の場所である倉庫へ進む。十代と万丈目、そして成り行きを見守っていた神楽坂とゆきのんも付いてきた。

俺はみんなを購買部の倉庫の一角、カードの在庫をを並べるために清掃したエリアに案内し、事前に準備していたカードを手に取りそれを万丈目に差し出す。

 

「このカードが君の元へ行きたがっている」

 

「俺の元へ?……んなぁ!これは!?」

 

疑問に思いながらも万丈目はカードを受け取り、それを見た瞬間に素っ頓狂な声を上げた。

俺がこのタイミングで万丈目に渡すカードなんてアレ(・・)しか無い。

 

「どうしたんだ万丈目?おっ【おジャマグリーン】と【おジャマブラック】じゃん」

 

万丈目に渡したカードを十代が答えた瞬間、そのカードから緑色と黒色のナマモノがそれぞれ姿を現した。

 

『どうもどうも、健斗の旦那から話は聞いとります』

 

『なんでもイエローを連れているそうで。兄弟共々よろしくお願いしますぅ』

 

「断る!これ以上ザコを増やしてたまるか!」

 

綺麗にお辞儀をするグリーンとブラックに切れるサンダー。

おジャマ達をはじめとする井戸のカードはショップ設立の際に回収し倉庫に保管していたのだ。

また使ってもらえるかもしれないという希望と薄汚れた井戸は嫌だという総意のもとで実行している。

そしてノース校から帰ってきた万丈目にもうおジャマを渡しておこうと思い呼んだのである。

 

『誰かオイラのこと呼んだ?』

 

『イエロー!』

 

『弟よー!』

 

『グリーン兄ちゃん!ブラック兄ちゃん!』

 

目の前では原作と同じ兄弟再会が繰り広げられている。

 

「万丈目も精霊見えるんだな」

 

「ああ、いまおジャマ達と話してるぞ」

 

「もう慣れたわね」

 

蚊帳の外の神楽坂とゆきのんだが十代達といる場合ではこういう事は日常茶飯事なので慣れている。

さて、目の前では万丈目がおジャマ兄弟を拒否しているのでそろそろ助け船を出そう。

 

「万丈目くん、提案があるんだが」

 

「なんだ!?じゃなくてなんですか!?」

 

肩で息をしながらこちらへ振り返る万丈目。イライラのせいか少し素が出ている。

 

「無理して今のデッキに入れるんじゃなくていっそおジャマ専用のデッキを組んでみるのはどうだい?」

 

「……は?」

 

「確かアームドドラゴンは借り物なんだろう?いつ返せと言われるか分からないしもう一個デッキがあってもいいと思うんだ。もちろんこっちがおジャマ達を押しつけ、もとい紹介した責任もあるしこの在庫のカードは好きに使っていいよ」

 

「……そうか。それもそうだな、アリだな」

 

俺の話を聞いて腑に落ちたのか納得した表情を浮かべる万丈目。

 

「聞いたかザコども。それで納得しないなら捨てる」

 

『『『ありがとうサンダーのアニキ!』』』

 

どうやら落着したようでおジャマ達は喜び涙を流して万丈目に縋り付いて、万丈目に蹴り飛ばされている。

 

「じゃあせっかくだし、万丈目くんがそのデッキを作ったら俺とデュエルしよう」

 

「貴方とですか!?」

 

「俺も最近新しいデッキを組んでみたからね、それにおジャマ達も戦いたいだろう?」

 

『『『もちのろん!』』』

 

俺の提案に驚く万丈目だがおジャマ達はやる気を見せて団結している。

おジャマ関連のカードは確かストレージにたくさんあったし構築に関しては大丈夫だろう。

万丈目の事だから作ったまま放置という可能性もあるが万丈目がおジャマを使わないのは今後を考えると少しマズいので1回でもいいので使わせておく。

 

「万丈目がやらないなら俺が健斗さんとやりたいぜ」

 

「いや、ここは弟子である俺が!」

 

「黙っていろ2人とも!指名されたのは俺だ!」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

万丈目の方も十代と神楽坂に乗せられて気合い充分のようだ。

しかし先程からゆきのんが怪しい笑みを浮かべているのが気になる。

 

「明日の昼!それまでにデッキを仕上げて貴方に挑みます!」

 

「分かったよ、デュエル場を抑えておくね」

 

こうして俺と万丈目のデュエルが決定するのだが……

 

「ふふふ、楽しい事になりそうね」

 

この時に放ったゆきのんの言葉の意味を俺は翌日に改めて思い知る事になる。




万丈目、意外と敬語使ってたりする
あと神楽坂のダサTは私の趣味です、千年パズルシャツ持ってるなら絶対色んなダサT持ってるって信じてる

おもしれーやつカウンターが乗るとどうなる?
知らんのか、男優にされる


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女王と女帝とサンダーと用務員

一体いつから万丈目と主人公がデュエルすると錯覚していた?

十代は少し出ます


おかしい。絶対におかしい。

 

「じゃあよろしく頼むわねボウヤたち」

 

今日はおジャマを組んだ万丈目ことおジャ万丈目とデュエルする約束の日だった筈だ。

 

「貴方とは一度戦ってみたかったの」

 

なんで向こうにデュエルディスク構えてやる気の明日香とゆきのんが居る。

 

「こっちこそ天上院くんと戦えるなんて光栄さ!さぁ行きますよ健斗さん!」

 

隣には今日戦う予定だった万丈目が居る。しかもノリノリで共闘するつもりだ。

 

「明日香も健斗さんも頑張れー!」

 

「師匠の足引っ張るなよ万丈目ー!」

 

「応援してますよ明日香さーん!」

 

「アカデミアの女王と女帝は伊達ではありませんわー!」

 

「……ふぁいと」

 

観客席には十代達レッドのいつメンと神楽坂と三沢。

明日香の取り巻きであるももえやジュンコ、更にはレイン恵や委員長などのブルー女子も居る。

 

 

なぜこういう状況に陥ったのか、時間は少し遡る。

 

 

 

 

 

「こんにちは、健斗さん」

 

「こんにちは。今日はどうしたんだい?」

 

約束の日、予約が取れたデュエルフィールドでセットアップ等の準備をしていたら明日香がやってきた。

 

「雪乃に呼ばれて来たんです。でも早く来過ぎたみたいね」

 

「明日香さんが一番乗りだね」

 

ゆきのんが呼んだのか―、確かに昨日居たし万丈目とのデュエルを教えててもおかしくないか。

そう判断した俺はそう返して作業を再開し、数分でセットを終える。

 

「これでよし」

 

「お疲れ様です」

 

「大人の仕事だからね。じゃあ皆が集まるまで待とうか」

 

フィールドの傍で待機しながら新しく調整したデッキをディスクにセットすると明日香が興味ありげにそれを見つめているのが分かる。

 

「気になる?」

 

「ええ、今度はどんなデッキなのか気になりますね」

 

「これはね、みんなが融合してるから俺も融合したいなーって事で組んだデッキ」

 

「融合ですか。私も新しく自分のデッキを調整し直したので楽しみですね」

 

楽しみ?まぁ他人のデッキから学ぶとかそんな感じかな?

若干の引っ掛かりを覚えながらもそのまま他愛もない話を続けているとゆきのんと万丈目が一緒にやってきた。

何故、万丈目が凄い浮かれた表情なのか。

何故、ゆきのんの笑顔がいつもの三割増しで怪しいのか。

引っ掛かりがどんどん増えていく。

 

「健斗さん、いま藤原くんと話していたんだが」

 

「今回のデュエル、貴方と万丈目のボウヤのタッグで私と明日香のタッグと戦って欲しいの」

 

「は?」

 

「……雪乃、貴女まさか健斗さんに伝えていなかったの?」

 

「ふふ、思いついた時には伝えるタイミングがなかったのよ」

 

どうやら俺はゆきのんに謀られたらしい。

昨日の怪しい気配はこれか、ってことはこいつはじめから俺に伝える気は無かっただろうし万丈目を釣るために明日香誘ったなこれ。

 

「本来は俺と万丈目くんのデュエルだったんだが」

 

「俺は全然構いませんよ!健斗さんも構いませんよね!?」

 

「まぁ……万丈目くんが良いなら俺も良いけど」

 

「ふふふ、天上院くんとデュエルできるとは藤原くんに感謝しないとな」

 

万丈目が明日香に惚れているのは大体の奴が知っている。

哀れ万丈目、君の恋心はこの女悪魔ゆきのんに利用されているとも知らずに。

 

「じゃあ、決まりね」

 

俺が渋々了承したのを見ればゆきのんはにこやかに笑みを浮かべてデュエルフィールドへ上がる。

そしていつの間にか集結していたギャラリーに囲まれ俺と万丈目の即席タッグが誕生した。

 

 

 

 

 

以上、現実逃避終了。

正直ゆきのんのおもしれーやつカウンターを甘く見ていた。まさかこんな事になると誰が予想できようか。

でもまぁ別に驚いただけで嫌という訳ではない。明日香とデュエルしたことないしこのタッグを機に万丈目と仲良くなれるなら良い。おもしれーやつカウンターが乗り続ける未来?知らん、俺の管轄外だ。

 

「では、ルールは最近制定されたタッグフォースルールにしましょう」

 

現実逃避していた耳にゆきのんの言葉が入り意識を現実に戻す。

タッグフォースルールとは、ゲームのルールまんまのアレだ。

新しいルールとして成立しているのを最近知った。

 

「ライフと墓地とフィールドは共有でLPは8000」

 

「交互にターンプレイヤーが交代しカードの発動やプレイはその時のターンプレイヤーに決定権があり、カードの効果はその時のターンプレイヤーが受ける」

 

「お互いのアドバイスや手札公開は原則禁止、かな」

 

「説明の必要は無さそうね、それなら早速始めましょうか」

 

俺達の簡単な補足で納得するとゆきのんはデュエルディスクを構え、明日香もそれに続く。

 

「行きますよ健斗さん!」

 

「足引っ張ったらごめんね」

 

「その時は貴方を引きずりながらでも前に進みますよ」

 

「頼もしい」

 

そんな会話をしながら俺達はタッグ用に増設された台にデュエルディスクを嵌め込む。これはタッグデュエルを円滑にするために開発されたようでデュエルディスクと連動しタッグパートナーとフィールドの情報を公開しつつ墓地や除外はディスク内では無く台の所定の場所に設置する事で効果等の処理もしやすくなるという訳だ。

ゲームやアニメだとその辺でデュエルディスク片手にタッグデュエルしてた?知らん、俺の管轄外だ。

 

お互いの準備が整い、向こうも準備が終わった様子。

そして少しの間を置いた後に全員が宣言を放った。

 

「「「「決闘(デュエル)!」」」」

 

 

明日香・雪乃

LP:8000

 

万丈目・健斗

LP:8000

 

「最初は万丈目くんに任せるよ」

 

「わかりました。先攻はレディファーストでそちらからどうぞ」

 

俺が先攻を譲ると万丈目は更にそれを明日香に譲った。

おジャマは先攻の方が良くないかと思わなくも無いが彼はそういう人間なので問題はない。

 

「いくわよ、私のターン。ドロー!【サイバー・ジムナティクス】を守備表示で召喚!カードを2枚セットしターンエンド!」

 

【サイバー・ジムナティクス】

星4/地属性/戦士族/攻 800/守1800

 

 

明日香

LP:8000

手札:3

モンスター:【サイバー・ジムナティクス】

魔法罠:セット2

 

 

先攻だし様子見といったところかな。

 

 

「俺のターン、ドロー!永続魔法【凡骨の意地】を発動し手札から【魂虎】を守備表示で召喚。カードを1枚セットしてターンエンド。本来ならこのターンから攻撃は可能だが今は動かないでおく」

 

 

【魂虎】

星4/地属性/獣族/攻 0/守2100

 

 

万丈目

LP:8000

手札:3

モンスター:【魂虎】

魔法罠:セット1【凡骨の意地】

 

 

「そのカードは……」

 

万丈目が今召喚したモンスター、記憶違いでなければ井戸のカードだった筈だ。

俺の呟きが聞こえたのか万丈目はフンと鼻を鳴らしながら口を開く。

 

「あのザコどもだけではマトモなデッキなど組めないのは明白。それならザコはザコで纏めて使う方が効率が良いと思ったまでです」

 

『そんなこと言ってサンダーのアニキはおいら達が居ないとだめなんでしょ~?』

 

万丈目は無言で茶々を入れてきたイエローを手で払う。

召喚された【魂虎】が張り切っているのを見る限り、なんだかんだで残りの精霊もデッキに入れて面倒みるつもりなんだろう。

 

「随分と慎重ね。でも時には激しくしないとダメよ?私のターン、ドロー」

 

さて、ゆきのんのデュエルはなんだかんだ見るのが初めてだ。

だが彼女のデッキは控えめに見積もっても候補が3つある。

【リチュア】【推理ゲート】【デミスドーザー】だが、どれだ、どのデッキだ?

ていうかどれも強いから嫌なんだが。

 

「カードを2枚セットして魔法【手札抹殺】を発動。この場合は万丈目のボウヤが対象ね。3枚捨てて同じ数ドローするわ」

 

「わかった、こっちも3枚捨ててドローする」

 

お互いが捨てたカードをすぐさま確認する。万丈目は……お、マジック落ちてる。

 

「墓地へ送られた【おジャマジック】の効果発動。このカードがフィールドまたは手札から墓地へ送られた時デッキから【おジャマ・グリーン】【おジャマ・ブラック】【おジャマ・イエロー】を手札に加える。こいおジャマども!」

 

『がってん!』

 

おジャマ兄弟が万丈目の手札に加わり勇ましく構えるが手札に加わっただけだからな、君たち。

 

「ふふ、中々運が良いわね。伏せていた魔法【儀式の準備】を発動。デッキからレベル7の儀式モンスター【救世の美神 ノースウェムコ】を手札に加え、更に墓地の儀式魔法【救世の儀式】を手札に加えてそのまま発動」

 

ノースウェムコ?デミスでもリチュアでもないのか。しかも墓地に儀式魔人落ちてるし初めて見るぞこのデッキ。

 

「墓地にある【儀式魔人プレサイダー】【儀式魔人プレコグスター】の効果でこのカードを除外することにより儀式召喚の生贄にすることが出来るわ。現れなさい【救世の美神 ノースウェムコ】」

 

 

【救世の美神 ノースウェムコ】

星7/光属性/魔法使い族/攻2700/守1200

 

 

「ノースウェムコが儀式召喚に成功した時、儀式の生贄にしたモンスターの数だけフィールドの表側表示のカードを選ぶ事が可能。選んだカードがフィールドに存在する限りこのカードは効果で破壊されなくなるわ。じゃあ私はそっちの【凡骨の意地】とこっちの【サイバー・ジムナティクス】を選ぶわね。更に生贄となった儀式魔人は儀式モンスターに新たな力を与える。プレサイダーは戦闘でモンスターを破壊した時にドローする効果を。プレコグスターは戦闘ダメージを与えたときに相手の手札をランダムで1枚捨てさせるわ」

 

「リリーサーじゃなくて良かった」

 

つい本音が口から漏れる。この環境でも特殊召喚封じは普通にキツイ。

 

「あら、用務員のボウヤは知ってるの。流石ね」

 

俺の呟きが聞こえたのか彼女はふっと笑みを浮かべる。

どう見ても獲物を狙う捕食者のソレにしか見えない。

 

「バトルよ、【救世の美神 ノースウェムコ】で【魂虎】に攻撃」

 

ノースウェムコの杖から光が放たれるとそれは魂虎に直撃して爆散。

 

「では効果で1枚ドローしてターンエンドね」

 

 

雪乃

LP:8000

手札:4

モンスター:【サイバー・ジムナティクス】【救世の美神 ノースウェムコ】

魔法罠:セット3

 

 

いきなり耐性持ち上級モンスターが出てくるが対処出来ないわけではない。

そしてこれはタッグデュエル、お互いのサポートを上手く行うことも勝利につながる。

ぶっちゃけ明日香と万丈目のカードパワーはそれほど高くないが肝心な時に必要なカードを引く運命力の強さはズバ抜けている。この2人の実力が同じならあとは俺とゆきのんの実力比べだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ドローしたカードを見て笑みを深める。

このデッキは「みんなが融合してるから俺も融合使う」という理由で組んだデッキだ。

不純極まりない理由だが、俺には精霊が付いている。力を貸してくれる。

つまり、活躍したいというカード達と勝ちたいという俺の思いが重なった時にデッキは応えてくれる。

 

「【凡骨の意地】の効果発動!今ドローしたカードが通常モンスターの場合、それを公開する事で追加ドローする事が出来る!今ドローした【フレイムキラー】を公開しドロー!モンスターカード【エンシェント・エルフ】!ドロー!モンスターカード【斬首の美女】!ドロー!モン……じゃないので終了」

 

大量ドローで潤った手札を見ながら展開を考える。

ウェムコは力押しで行くしか無いとしてジムナティクスは残したくない。だがあの伏せ、絶対ドゥーブルパッセだよな。明日香の伏せって言ったらパッセのイメージ強いし。

でも動くしかない。

 

「手札から【融合】発動!手札の【エンシェント・エルフ】と【心眼の女神】を素材に【砂の魔女】を融合召喚!更に手札から【融合回収】を発動し墓地の【融合】と【心眼の女神】を手札に加えおまけに装備魔法【フュージョン・ウェポン】を【砂の魔女】に装備させ攻撃力と守備力を1500アップさせる!」

 

 

【砂の魔女】

星6/地属性/岩石族/攻2100/守1700

攻:2100→3600

守:1700→3200

 

 

「永続魔法【ブランチ】を発動し再び【融合】発動!手札の【心眼の女神】と【女王の影武者】を素材に【裁きを下す女帝】を融合召喚!」

 

 

【裁きを下す女帝】

星6/地属性/戦士族/攻2100/守1700

 

 

フィールドに現れたのは赤い外套にとんがり帽子で箒に跨る魔女と黄金の衣装に身を包んだ厳格な女性。

どちらも初期から存在する融合モンスターだ。このデッキは彼女達初期融合モンスターを軸に組んだ融合デッキで、高速化していないこの時代でしか出来ないと俺自身思っている。

 

「ふふ、来るのかしら?」

 

「勿論。バトル、【砂の魔女】で【救世の美神 ノースウェムコ】に攻撃!」

 

箒に跨った砂の魔女が指を鳴らすとウェムコの周囲に砂の嵐が巻き起こりゆきのんごと包み込んだ。

 

「明日香、使わせてもらうわね。罠【ドゥーブル・パッセ】発動。相手モンスターの攻撃の対象を自分に変更するわ。……あぁん」

 

雪乃

LP:8000→4400

 

やっぱりパッセかと思いながら見守っているとゆきのんが砂嵐に巻き込まれながら変な声を上げている。

色々と危険が危ないのでやめてほしい、深夜42時には早すぎる。

 

「ふぅ……その後、攻撃対象にされていたモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与え、次のターンそのモンスターは相手に直接攻撃が可能になるわ」

 

「くっ」

 

健斗

LP:8000→5300

 

「バトル続行!【裁きを下す女帝】で【サイバー・ジムナティクス】に攻撃!」

 

こちらをチラリと確認した女帝はダメージの礼だと言わんばかりに錫杖型の武器を振り回しモンスターを破壊する。

ウェムコは破壊できなかったが大ダメージを与える事は出来た、それで良しとしよう。

 

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

健斗

LP:5300

手札:2

モンスター:【裁きを下す女帝】【砂の魔女】

魔法罠:セット2【凡骨の意地】【ブランチ】【フュージョン・ウェポン】

 

 

 

 

激動の初ターンが終わる。

 

 

 

 

 

 




ゆきのんはガチカード使っても違和感無いから一番書きやすいのは内緒


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女王と女帝とサンダーと用務員 その2

更新をサボった不甲斐ない私を許してくれ……

タッグデュエル後半戦です、十代は出ません


「私のターン、ドロー!」

 

全員のターンが終わり一巡して明日香のターンになる。

さて、相手はパッセの効果で直接攻撃が可能だがどう出てくる。

ウェムコで女帝を攻撃してドローを稼ぐか無視をして削りに来るか。

 

「魔法【天使の施し】を発動し3枚ドローして2枚捨てる。……よし、これならいけるわ!リバースカード【融合準備】を発動!私は融合モンスターの【サイバー・ブレイダー】を融合デッキから公開し融合素材となる【エトワール・サイバー】を手札に加え、更に墓地から【融合】を手札に加えるわ!」

 

融合は施しのコストかー。

伏せが融合準備ならゆきのんが使わなかったのも納得だな。

 

「いくわよ!【融合】発動!手札の【ブレード・スケーター】と【エトワール・サイバー】を融合し、現れなさい【サイバー・ブレイダー】!」

 

 

【サイバー・ブレイダー】

星7/地属性/戦士族/攻2100/守 800

 

 

フィールドに降り立つは近未来的な装備に身を包んだプリマ。女神の横で優雅に一礼する。

どうでもいいが現在、女性モンスターしかフィールドに居ない。

 

「あれは天上院くんのエースモンスター!」

 

せやな。この状況だとマジきついぞアイツ。

 

「【サイバー・ブレイダー】の効果は相手フィールドのモンスターの数で変わるわ。2体の場合【サイバー・ブレイダー】の攻撃力は倍になる!パ・ド・トロワ!」

 

 

攻:2100→4200

 

 

「やるじゃない明日香」

 

「まだ油断できないわよ雪乃」

 

 

くるくると回転し力を高めるブレイダーに雪乃が関心するが、明日香は警戒を崩さない。それはもっともだ。

なぜならこちらは永続魔法があるとはいえガン伏せである。正直、万丈目のカードはコンボ用っぽいので使わないでおくから実質使えるのは俺が伏せた1枚だけだけどな。

 

 

「バトル!【サイバー・ブレイダー】で【砂の魔女】に攻撃!グリッサード・スラッシュ!」

 

「くっ、融合モンスターが破壊されたことにより【ブランチ】の効果で融合素材の【エンシェント・エルフ】を墓地から守備表示で特殊召喚する」

 

 

健斗

LP:5300→4700

 

 

サイバー・ブレイダーは砂の魔女が反応するより早く接近しスケートのエッジで切り裂くハイキックをお見舞いし砂の魔女は爆散し、煙が晴れた時には代わりにエンシェント・エルフがこちらを守るように佇む。

 

 

【エンシェント・エルフ】

星4/光属性/魔法使い族/攻1450/守1200

 

 

「まだよ【救世の美神 ノースウェムコ】で【裁きを下す女帝】に攻撃!」

 

やっぱりモンスターを消しに来たか!

 

「罠【ガード・ブロック】発動!戦闘ダメージを0にし1枚ドローする。よって手札を捨てる効果は不発。そして【ブランチ】の効果で【女王の影武者】を墓地から守備表示で特殊召喚」

 

「でもモンスターを破壊したからドローはするわ」

 

ウェムコの光線で消えた女帝の代わりに今度は剣を付けた衣装を身にまとう赤髪の女性が現れる。

 

「直接攻撃をしていたら損をするところだったわね。カードを1枚セットしてターンエンドよ」

 

 

明日香

LP:4400

手札:3

モンスター:【サイバー・ブレイダー】【救世の美神 ノースウェムコ】

魔法罠:セット2

 

 

「俺のターン、ドロー!【凡骨の意地】は発動しない!」

 

さて、万丈目のターンだがどうする?

 

「【サイバー・ブレイダー】の効果は厄介だ。こちらが3体の場合は全ての効果を無効にされる。だが4体以上なら効果は無効となる。ならば数を増やすまで!ライフを800払い【魔の試着部屋】を発動!デッキの上から4枚をめくりその中からレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚できる!」

 

 

万丈目

LP:4700→3900

 

 

「1枚目【薄幸の美少女】2枚目【バット】3枚目【ジャグラー】4枚目【ネコ耳族】、よって【バット】と【ジャグラー】を守備表示で特殊召喚!これでフィールドには4体のモンスター!【サイバー・ブレイダー】の効果は無くなる!」

 

 

【バット】

星1/風属性/機械族/攻 300/守 350

 

【ジャグラー】

星3/光属性/魔法使い族/攻 600/守 900

 

 

さすが万丈目サンダー、引きが強い。

 

「ここで罠【おジャマトリオ】を発動!相手の場におジャマトークンを3体特殊召喚する。準備は整った!俺は【融合】を発動!手札の【おジャマ・イエロー】【おジャマ・グリーン】【おジャマ・ブラック】を素材にし融合召喚!いけ!【おジャマ・キング】!」

 

『『『どうもどうもお邪魔します~』』

 

相手の場に3体のナマモノトークン。

 

『おジャマ究極合体!』

 

 

【おジャマ・キング】

星6/光属性/獣族/攻 0/守3000

 

 

そしてこちらは融合の渦に巻き込まれた3体のナマモノが巨大なナマモノになって帰ってきた。

ナマモノだらけになったフィールドにモンスターもデュエリストも凍り付く。

でも多分勝ったな、風呂入ってくる(慢心)

 

 

「て、手札から【おじゃマッスル】を発動!【おジャマ・キング】を対象にしそれ以外のフィールドのおジャマと名の付くモンスターを全て破壊しその数×1000攻撃力を上げる!そしておジャマトークンは破壊された時にコントローラーに300ダメージを与える!よって900ダメージを与えキングの攻撃力は3000アップ!」

 

あんまりな反応に少し戸惑う万丈目がプレイを続行する。

大丈夫、俺は今の万丈目の動きが強いの分かってるから。

 

「させないわ、手札を1枚捨て罠【ホーリーライフバリアー】を発動!このターン、モンスターは戦闘で破壊されず受けるダメージは全て0となる!」

 

 

出た!テキストが分かりにくすぎるカードだ!

しかし効果は戦闘耐性にダメージ無効と中々に強い。この環境なら手札コストに釣り合う効果だし実際にいま万丈目がカントリー発動してたらキングの攻撃力は6000になりトークンの効果ダメージとブレイダーへの戦闘ダメージで削りきれた。

 

 

「防がれたか、見事だよ天上院くん。フィールド魔法【おジャマカントリー】を発動しカードを1枚セットしてターンエンドだ。このフィールド魔法はおジャマが存在する限り全てのモンスターの元々の攻撃力と守備力を入れ替える。よって【おジャマ・キング】の攻撃力は6000」

 

【おジャマ・キング】

攻:0→3000→6000

 

フィールド魔法の効果により風景がのどかな田舎の景色へと変わる。

ところどころにカラフルなナマモノが映り込まなければ景観は中々良いのだが。

 

 

万丈目

LP:3900

手札:0

モンスター:【おジャマ・キング】【バット】【ジャグラー】【女王の影武者】【エンシェント・エルフ】

魔法罠:セット1【凡骨の意地】【ブランチ】【おジャマカントリー】

 

 

「ふふ、私のターンね。ドロー」

 

仕留めきれなかったのは痛いな。ここからゆきのんがどう反撃してくるかによる。

攻撃力6000キングいるけど普通に負ける可能性あるのがヤバい。

 

「明日香、最初に謝っておくわね」

 

「使うのかしら?いいわよ、いきなさい」

 

ん?何の会話だ?

 

「伏せていた魔法【ブラックホール】を発動するわ」

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

『『嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』

 

ゆきのんの無慈悲な宣言に俺と万丈目、そしてキングをはじめとした精霊たちの悲鳴が重なる。

 

「フィールドの全てのモンスターを破壊するけれどノースウェムコは耐性が継続しているから破壊されないわ」

 

フィールドの全てのモンスターが黒い渦に飲み込まれていく。

助けて兄貴とか旦那とか聞こえる気がするがどうすることも出来ない、許せ、これもデュエルのため。

 

「【ブランチ】の効果で墓地から【おジャマ・イエロー】を守備表示で特殊召喚!」

 

『嫌ぁぁぁ!おいらに盾になれっていうの!?』

 

「そうだ!」

 

 

【おジャマ・イエロー】

星2/光属性/獣族/攻 0/守1000

 

 

「続けるわよ?手札から儀式魔法【高等儀式術】を発動。デッキの【デュナミス・ヴァルキリア】2体を生贄に【破滅の女神ルイン】を儀式召喚。そして手札から【アームズ・ホール】を発動してデッキの1番上を墓地へ送り装備魔法【メテオ・ストライク】を手札に加えてそのままルインに装備するわ」

 

 

【破滅の女神ルイン】

星8/光属性/天使族/攻2300/守2000

 

 

降臨するのは銀の長髪をなびかせる美しい女性。

フィールドには破滅と救世、真反対の性質を持つ女神が揃う。

 

「貫通持ちの2回攻撃か!」

 

「ええ、相変わらず詳しいわね用務員のボウヤ。さぁこれで終わるのかしらね?バトルよ。【破滅の女神ルイン】で【おジャマ・イエロー】に攻撃」

 

「させん!墓地の【タスケルトン】を除外しその攻撃を無効にする!モンスターを戦闘破壊していない事により2回攻撃は不発だ!」

 

もう終わりかと思った瞬間に万丈目の声が響く。

タスケルトンはイエローを潰さんとするルインへ体当たりをし攻撃を妨害する。

ルインはどこか冷めた目に変わると自分の場に戻る。

 

「最初の手札抹殺の時ね、では【救世の美神 ノースウェムコ】で攻撃」

 

『助かったと思ったのにぃ!』

 

ウェムコの攻撃でイエローは爆散した。

だがありがとう、君が居ないと負けてた可能性ある。

 

「ふふ、これでターンエンド。どう逆転してみせるのかしら?」

 

 

雪乃

LP:4400

手札:2

モンスター:【破滅の女神ルイン】【救世の美神 ノースウェムコ】

魔法罠:【メテオ・ストライク】

 

 

「俺のターン、ドロー。【凡骨の意地】の効果で今ドローした【水の魔導士】を公開しドロー!モンスターカード【キャット・レディ】!ドロー!【ヴァルキリー】!ドロー!【ラムーン】!ドロー!【ハーピィ・ガール】!ドロー!ここで終了」

 

「ふふ、大量にドローしたけれどボウヤの手札は【ガード・ブロック】の効果と最後に引いたカード以外はモンスターカードでしょう?それもほとんどが通常モンスター」

 

「そうだね」

 

彼女の問いに素直に答えれば彼女は更に笑みを深くする。

まるで逆転してみせろといわんばかりに。ならばそれに応えて見せよう。

 

「使わせてもらうよ万丈目くん!」

 

「ええ、使ってください健斗さん!」

 

俺を信じて後を託してくれた万丈目の為にも。

俺は万丈目が伏せたカードを発動する。

 

「カードを1枚伏せて速攻魔法【リロード】発動!手札8枚をデッキに戻し同じ枚数ドローする!」

 

再び配られた手札を見て微笑む。これならばいける。

 

「手札から【闇の量産工場】を発動!墓地の【おジャマ・イエロー】と【魂虎】を手札に加え、【おジャマカントリー】の効果発動!手札のおジャマカードを捨てる事で墓地のおジャマを特殊召喚する!甦れ【おジャマ・キング】!これで攻撃力と守備力が入れ替わる!」

 

『がってん!』

 

墓地より再び甦るおジャマの王。腕組みしながらマントをたなびかせフィールドに降り立つ姿が今は頼もしい。

 

「永続魔法【ワンダー・バルーン】を発動し効果!手札を4枚捨ててこのカードにバルーンカウンターを4つのせる!そしてこのカードがフィールドに存在する限り相手フィールドのモンスターの攻撃力はカウンターの数×300ダウンする!よって1200ダウン!」

 

 

【破滅の女神ルイン】

攻(守):2000→800

 

【救世の美神 ノースウェムコ】

攻(守):1200→0

 

 

さぁ、準備は整った。

俺は1枚のカードを手にし、いつもの召喚条件を口にする。

 

「このモンスターはお互いの墓地のモンスターの属性が6種類以上の場合のみ手札から特殊召喚できる」

 

「来るのね」

 

このカードを知っている明日香は呟かずにはいられなかったのだろう。

万丈目も大人しくデュエルの推移を見守っている。

 

「現れろ【精霊神后 ドリアード】」

 

フィールドに光が降り注ぐと羽を広げたドリアードがフィールドに降り立ち、おジャマキングに微笑んだ後に相手モンスターを見据える。

 

『姫様ー!』

 

『一緒に頑張りましょうね』

 

女神、美神、神后の三柱が存在するフィールドは正に絵画の如き迫力がある。

……おジャマ達には申し訳ないが、キングの存在感とフィールド魔法のせいで台無しである。

 

「ザコどもが居るのが気に入らんな」

 

『ひどいですぜサンダーのアニキ!』

 

思っていた事を万丈目が言っていた。

申し訳ないがそれには同意したいが気を取り直してプレイに戻る。

 

「ドリアードの攻撃力と守備力は墓地の属性の数×500、つまり3000だ。反転しても変わらない」

 

 

【精霊神后 ドリアード】

星9/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0

攻:0→3000

 

 

「バトル!【おジャマ・キング】で【救世の美神 ノースウェムコ】に攻撃!フライング・ボディプレス!」

 

『いってきますぜ旦那!』

 

おジャマキングは跳躍するとウェムコに向けて跳躍し巨体によるボディプレスをお見舞いする。

戦闘破壊の余波と爆発がゆきのんに襲い掛かる。

 

「あぁん……」

 

 

雪乃

LP:4400→1400

 

 

「【精霊神后 ドリアード】で【破滅の女神ルイン】に攻撃!ディヴァイン・エレメント・レイ!」

 

『はぁっ!』

 

ドリアードが手を合わせて祈ると6つの魔法陣が展開され色とりどりの光線が放たれる。

ルインは為すすべなく光線に撃ち抜かれ爆散した。

 

「私達の負け、ね」

 

雪乃

LP:1400→0

 

 

ライフが尽きた音が鳴り響くとソリッドビジョンが解除されおジャマカントリーからいつもの見慣れたデュエルフィールドへと戻る。

 

「お疲れ様です、お見事でした」

 

「万丈目くんもお疲れ様。色々助けてもらっちゃったね」

 

「いえ、こちらこそ勉強になりました」

 

デュエルが終わり万丈目とお互いの健闘を讃えあい、デュエル中に混ざったお互いのカードを返却しあう。

万丈目ほんとあそこでリロード伏せてくれてありがとう助かったよ。

 

「ふぅ、負けちゃったわね」

 

「さすがね、いつもと違うデュエルが出来て楽しかったわ。またやりましょう」

 

「よろこんで!」

 

雪乃と明日香もこちらへやってきて感想戦へと加わる。

秒で返答したのはもちろん万丈目だ。頑張れ万丈目、君の恋を俺は応援しよう。

観客席から走ってくる十代達を横目に見ながらそう思っているとゆきのんが近づいてきた。

 

「今回は負けたわ。次はお互い本気で戦いたいわね」

 

「機会があればいつでも」

 

本気って事は今回は本気じゃなかったのか。じゃあやっぱりデミスドーザーが本命か?

 

「ええ、次は『暴君』の貴方と……ね」

 

そんな事を考えていた俺はゆきのんの言葉に固まることになった。

固まる俺を見て彼女は更に笑みを深めて続ける。

 

「今の楽しいデュエルをする貴方もいいけれど、やっぱり本土の時の荒々しい方が私は好きよ」

 

っ、藤原雪乃が、本土の時の俺を、知っている……?

 

「……あのデッキは、海に流れたよ」

 

そう返すのが精一杯だった。

俺の返答にゆきのんは「そういうことにしておいてあげる」と答えると明日香たちの方向へ向き

 

「『暴君』と『女帝』、お似合いだと思わないかしら?」

 

去り際にそう残していった。

 

 

 

「まいったな」

 

デュエルフィールドの設定を直すのも兼ねて皆から距離を取って1人呟いた。

まさかゆきのんのおもしれーやつカウンターを乗せられたんじゃなくて既に乗っていたものを増やされていたとは。

 

まぁ考えても仕方ない、あのデッキが公に出来ない以上ゆきのんのことは放置するしかないだろう。

 

 

『健斗』

 

機械のセットに取り掛かろうとしたところドリアードが話しかけてきた。

そうだ久々に使ったしねぎらいの言葉を

 

『犯罪ですよ』

 

「海に流すぞこの野郎」

 

 

掛けようとして辞めた。

 

 






一体いつから――――――おもしれーやつカウンターが初めて乗せられたと錯覚していた?



「……あのデッキは、海に流れた(後に何故か同じくアカデミアに流れてきてたから密かに拾って回収したけど公の場では使いたくない)よ」

嘘は言ってない


今回でアカデミア編は終了、次回からセブンスターズ編に突入します


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セブンスターズ編
7人目は用務員


プリ箱売り切れてた民につき怒りの更新

セブンスターズ編突入
原作改変が顕著になりますが十代は出ます、安心してください


万丈目達とのタッグデュエルから数日。

あれからゆきのんからは動きは無く穏やかな学園生活が流れている。

あくまで穏やかだったのは俺だけでこの数日の間に十代達は墓守の精霊達とバトっていて勝利し無事に生還している。

このイベントは十代達の命に関わる重要なイベントで、十代が墓守達に勝利し闇のアイテムの欠片を手に入れ最初の刺客ダークネス吹雪を倒して闇のアイテムを完成させるという流れになる。

闇のアイテムを完成させないとカミューラ戦が辛くなるが墓守達との戦いも命が掛かっている。

俺も参戦を考えたがあれは十代が試練を乗り越える必要があり、俺の参加で未来が変わり皆がミイラ送りになるのは怖かった。そしてドリアードに「墓守とバトって勝てる?」と聞いたら「当然」と胸を張って答えたので参加を見送る決意をした。

確かに彼女は六霊神の力を受けて覚醒したんだから強いのは当然だ。エレメントセイバー達の上司的な存在になるしそもそも召喚時に攻撃力3000は確定しているのだから間違いない。

しかしいくら死にたくないし守りたいとはいえドリアードや他の精霊を解放してしまえばそれはもはや遊戯王ではなくジョジョになってしまう。精霊(スタンド)の力比べはさすがに……うん。

 

なので俺は課外授業に参加せず、皆の分のお弁当を用意し、十代には以前個人的に注文していた響紅葉パックをプレゼントするというサポートに徹した。プレゼントしたパックで十代は属性HEROを何枚か当てていた、流石の引きである。

 

 

「遊佐くん、校長が呼んでいるのにゃ」

 

そんな事があり今日も今日とて雑務に勤しんでいると大徳寺先生から呼び出される。

何事か訊ねても知らないらしく、先生は呼ばれていないらしい。

十中八九セブンスターズの事だろう。大徳寺先生が呼ばれていないということは俺が彼の枠に収まったと予想できるしジェネレイドを見ている彼なら代わりに俺を推薦するだろう。

遂にこの時が来たかと気持ちを引き締めて校長室に向かうとそこには十代をはじめとした原作と同じメンバーが揃っていた。

 

「集まりましたね」

 

俺が来るのを待っていた校長は集めた理由を話し出す。

学園地下に封印されている三幻魔、それを解放しようと企む七人の刺客セブンスターズ、封印を解く七つの鍵を守るに相応しい学園の決闘者、と。

原作まんまの説明を聞いたのちに俺はゆっくりと手を挙げる。

 

「どうしましたか遊佐くん」

 

「話を聞く限り相手は危険な集団だと予想できます。俺は生徒を巻き込むのは反対です」

 

お前も戦えハゲ、カイザーの師匠だろ。と続けたくなるのを堪えて原作視聴時に思っていたことを告げる。

こうでもしないと話が出来ないというのはあるかもだがこれ抜きにしても校長ってこの後からだんだんおかしくなるのでまだまともかもしれない今のうちに釘を刺す。

 

「考えすぎなノーネ。相手はただの道場破りーネ」

 

校長の代わりにそう言ってやれやれと首を振るクロノス。

おい大人ぁ!クロノスはせめて俺の味方しろよ!

 

「デスーガ、生徒に危険が及ぶのならば道場破り全員この実技最高責任者のクロノス・デ・メディチがコテンパンにして島から叩き出してみせまスーノ!」

 

そう言ってクロノスは七精門の鍵を取る。

前言撤回します、あんた最高の先生だよ(手のひらD-HEROドリルガイ)

 

「頼もしいぜ先生!負けてられないな!」

 

「……フッ」

 

クロノスに続いて十代やカイザー、全員が鍵を手に取り首に提げる。

残ったのは俺の分のひとつ。それを見て校長は俺をじっと見据える。

 

「どうしますか、遊佐くん」

 

「決まってます」

 

呼ばれた時から俺の答えは決まっている。

十代を守るため、助けるためにアカデミアで過ごすと決めたんだ。

残った最後の鍵を取り、首に提げる。

全員が鍵を受け取ったのを確認した校長は頭を下げる。

 

「君たちの協力に感謝します。最初の刺客は既に島に来ているという情報があります、いつでもデュエルが出来る準備をしていてください」

 

その言葉を最後に俺達は校長室を後にした。

 

 

 

 

 

 

『三幻魔……いよいよですね』

 

レッド寮で夕飯の準備をしているとドリアードが現れてそう語り掛ける。

 

「お前の目的だもんな」

 

『ええ。三幻魔の復活を阻止しても私が元の世界へ帰れるかは分かりませんが精霊界の危機を無視することは出来ません』

 

「……お前は、元の世界に帰りたくないのか?」

 

ふと会話に出た元の世界という言葉が気になり、思わず聞き返す。

ドリアードは一瞬きょとんとした表情に変わり、そしてふっとした笑みを浮かべる。

 

『帰りたくないと言えば嘘になります。ですが、貴方を残して帰りたいとは思いません』

 

「そうか」

 

『反対に、健斗は元の世界に帰りたくないのですか?』

 

ドリアードの質問に俺は作業の手を止めて考え込む

 

「無いな、絶対無い」

 

『早いですよ』

 

事もせず即答した。

 

「こっちは確かにデュエルが社会の一部に組み込まれてる。それに不満は確かにあるけど利点も嬉しい点もある。あっちの世界は何もないんだよ、デュエルの楽しさが社会に無いあんな世界に帰りたくないよ俺は」

 

『言い切りますね』

 

「まぁ?俺デュエル強いし?色々知ってるし?この世界で成功する自信あるし?元の世界と比べるまでもないね!」

 

『傲慢さを隠そうともしなくなりましたね』

 

ドリアードの言葉に俺はヘラヘラとした笑みを浮かべて答えとし、夕飯の準備に戻る。

ドリアードの方も溜息を吐くと傍にある椅子へと座り作業を眺める。

 

 

「この世界には、大切なものが出来過ぎた」

 

『私もですよ』

 

 

夕食の準備が終わるまでお互い何も言わなかった。

 

 

 

 

「よし……」

 

その日の夜、小屋で準備を整えデッキをディスクにセットする。

 

『健斗、そのデッキは……』

 

「言っただろ、大事な時には使うって」

 

俺が今ディスクにセットしたのはジェネレイドデッキ。サイコショッカーの時に使用を止めるよう言われたデッキだが鍵の守り手に選ばれた以上はこのデッキを使うことに躊躇いは無い。

 

「刺客の1人は既に島に乗り込んでいて今夜仕掛けてくる」

 

今から攻めてくる1人目の刺客はダークネス。

明日香の兄である吹雪の身体を乗っ取り闇の力を操る深淵の化身。

第4期でアカデミア生を飲み込み皆や視聴者を絶望へと叩き落とした張本人。今の時点でオネストの持ち主の方の藤原もダークネス化しているであろう事を考えればこのダークネスも本体ではなく端末だろうがこの端末から本体を叩く事が可能ならば第4期を丸々カットできる。

 

「刺客の1人がある意味幻魔より厄介でね、お前の力を借りるためにも負けられないんだ」

 

『……そういう事なら、仕方ありません』

 

「ありがとうドリアード。幻魔の件が片付いたら全部話すよ」

 

そう言ってドリアードはカードへ戻る。

俺がこの世界の未来の事を知っているのはドリアードも薄々感じている筈だ。この戦いが終わった時にはそれを全部話そう。

決意を改めて俺はデュエルの準備を整えて小屋を後にした。

目指すはレッド寮。首飾りに導かれた2人に割って入り俺がデュエルを受けるのが目的だ。

ダークネスはレダメと黒炎弾に気を付けていれば問題無い。

先攻で舞台を張りハールとフローディで対処すれば勝てる。

 

 

「健斗さん」

 

「貴方もレッド寮ですか」

 

「丸藤くんと明日香さん?」

 

道中で明日香とカイザーの2人に出会った。

明日香は確かにこの後十代のところに行っていた記憶はあるがカイザーって居たっけ?まぁいいか。

 

「少し不安で……」

 

「俺も気持ちが昂って眠れなくて」

 

「俺も同じだよ、せっかくだしレッド寮に行って話でもしようか」

 

2人は灯台で一緒に居たのかなと予想しながら3人でレッド寮へ向かっていると原作と同じく十代の部屋が光っているのを発見し、3人で乗り込む。

 

「十代!」

 

「大丈夫か!」

 

「明日香!カイザー!健斗さん!」

 

「相手が仕掛けてきたみたいだな」

 

部屋に入ると慌てた様子の十代と眠ったままの翔と隼人。

そして、何事かを把握する前に視界が光に包まれ浮遊感に襲われる。

光と浮遊感が収まり目を開くと光の床がまず目に入り頭を上げると仮面を付けた黒衣の男の姿を確認する。そして辺りを見回しここが原作と同じ火口であり側には巻き込まれた十代、明日香、カイザーが居ることを確認する。

 

「お前がセブンスターズか」

 

「如何にも。我が名はダークネス」

 

俺の問いに仮面の男、ダークネスは肯定する。

 

「この首飾りに導かれ、遊城十代を選んだつもりだがこんなにも巻き込まれていたとはな。だが貴様ら全員が鍵の所有者ならば問題はない、全て俺が頂く。もちろん闇のデュエルでな」

 

そう言い放ちダークネスはデュエルディスクを構え、それに呼応するように火口から火の龍が宙を舞う。

 

「ひぇ〜!」

 

「なんなんだなこれは!?」

 

そして床の下、火口に近い岩の上に光の球の中に囚われている翔と隼人を全員が発見する。

 

「あの光は時間の経過と共に消えていく。こうしているうちにも光は消えていくぞ」

 

「翔!……貴様」

 

「お前から来るか。この闇のデュエルはお互いの魂を賭けてもらう。闇のデュエルの敗者はこのカードに魂を封印される」

 

囚われた翔を見てカイザーが声を上げ、ダークネスを睨み付ける。

そしてカイザーはデュエルディスクを構えて1歩前に躍り出る。

 

「丸藤くん!」

 

「遊佐さん、ここは俺に行かせてください」

 

「では始めようか、闇のデュエルを」

 

俺の言葉にカイザーは振り返らずに答え、ダークネスは相手をカイザーに定めデュエルの開始を宣言する。十代も明日香もカイザーの背中越しでも伝わる覇気に押され何も語らなかった。

 

「俺は丸藤亮だ。ダークネス、勝負の前に仮面を取ったらどうだ」

 

「丸藤……亮……」

 

デュエルの前にカイザーはダークネスに向かってそう言い放つ。その言葉には何処か確信めいたものがありダークネスもカイザーの名前に反応を示す。そしてゆっくりと仮面に手をかけその素顔を晒した。

 

「これでいいか」

 

「あ……ああ……そんな……」

 

「……やはりか」

 

晒されたダークネスの素顔に明日香は手で顔を覆い、カイザーは予想していた様子で目を伏せ数秒思案し、顔を上げる。その目には強い決意が見て感じ取れた。

 

「なぁ明日香、ダークネスと知り合いなのか?」

 

唯一何も分からない十代は明日香にそう訊ねる。

 

「あれは……あの人は、ダークネスなんかじゃない……」

 

手で顔を覆う明日香はその場に崩れ嗚咽と共に涙を流す。

答えられない明日香に代わりカイザーが十代に向けて口を開く。

 

「あの男は天上院吹雪。数年前に行方不明になった明日香の兄で、俺の親友だ」

 

「なんだって!?」

 

「だからこそ、ここは俺が行く。待っていろ翔!そして目を覚まさせてやるぞ吹雪!」

 

 

弟と親友(とも)を救うため、皇帝(カイザー)(ダークネス)へと挑む。




デュエルで辛い部分もあるけど成功する可能性もソリッドビジョン(超重要)もある時点でこっちの世界の方が現実と比べるまでもなく爆アドォ!なんだよなぁ

主人公のテンションがおかしいのは仕様です
だんだん原作に引っ張られてるのと傲慢さを隠す必要も無くなってきてるからです

正直ハゲはこの辺から無能化していくのがフォローできない


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激突! カイザー亮VSダークネス吹雪(前編)


お待たせしました。
今回も十代が出ます。


「「決闘(デュエル)!」」

 

火山の火口にて、2人のデュエルが始まる。

 

 

ダークネス

LP:4000

 

丸藤亮

LP:4000

 

 

「俺の先攻だ、ドロー」

 

先攻はダークネスのようだ。サイバー相手に先攻は迂闊と言いたいがダークネスのデッキ次第ではそれでも優位にはなり得ない場合もある。

 

「俺は【真紅眼の飛竜】を召喚しカードを2枚伏せてターンエンド」

 

【真紅眼の飛竜】

星4/風属性/ドラゴン族/攻1800/守1600

 

 

ダークネス

LP:4000

手札:4

モンスター:【真紅眼の飛竜】

魔法罠:セット1

 

 

「なぁ、明日香のお兄さんって強いのか?」

 

「兄さんは、この学園で亮と並び立つライバルと言われていたわ……」

 

「カイザーと互角か、すげぇデュエルになるんだろうな」

 

後ろで十代と明日香の会話を耳に入れながら状況を観察する。

ダークネスは恐らく原作と同じ真紅眼デッキのようだ。

 

「俺のターンだ、ドロー。【サイバー・ドラゴン】を特殊召喚!更に【サイバー・フェニックス】を召喚!」

 

【サイバー・ドラゴン】

星5/光属性/機械族/攻2100/守1600

 

【サイバー・フェニックス】

星4/炎属性/機械族/攻1200/守1600

 

「バトル!【サイバー・ドラゴン】で【真紅眼の飛竜】に攻撃!エヴォリューション・バースト!【サイバー・フェニックス】でダイレクトアタック!」

 

「くっ」

 

ダークネス

LP:4000→3700→2500

 

2体の攻撃を受けてダークネスはふらつきながらも立ち上がる。

 

「どうしたダークネス、この程度か」

 

「ククク、闇のデュエルに過程は関係ない、最後に立っている者が勝者だ」

 

「……俺はカードを1枚セットしターンエンドだ」

 

 

丸藤亮

LP:4000

手札:3

モンスター:【サイバー・フェニックス】【サイバー・ドラゴン】

魔法罠:セット1

 

 

「闇のデュエルはまだ始まったばかりだ!俺のターン、ドロー!」

 

劣勢の筈のダークネスはそれを感じさせないかのように声高々に叫ぶとそれに呼応するように火の龍が火口から吹き上がる。

 

「【レッドアイズ・インサイト】を発動!手札・デッキから【レッドアイズ】モンスター1体を墓地へ送りデッキからこのカード以外の【レッドアイズ】魔法・罠カード1枚を手札に加える。俺はデッキから【真紅眼の黒炎竜】を墓地へ送り【レッドアイズ・スピリッツ】を手札に加える」

 

「……」

 

「更に【紅玉の宝札】を発動。手札の【真紅眼の黒竜】を墓地へ送り2枚ドロー。その後デッキからもう1枚の【真紅眼の黒竜】を墓地へ送る」

 

「なんだあいつ、自分のモンスターをどんどん墓地に送ってる」

 

ダークネスのプレイングにカイザーは黙って見守り十代は疑問を口にする。

このデッキの怖いところは墓地肥しが豊富なうえにサポートが多いところだがカイザーは大丈夫だろうか。

しかし原作と違いカードプールが若干増えているからか真紅眼のカードが多い。でもドラグーンは流石にいないよな……な?

 

「【ワン・フォー・ワン】を発動。手札の【軍隊龍】を墓地へ送りデッキから【黒竜の雛】を特殊召喚。そして貴様に切り札を見せてやろう」

 

「来るか、レッドアイズが」

 

 

【黒竜の雛】

星1/闇属性/ドラゴン族/攻 800/守 500

 

 

ダークネスの言葉にカイザーは落ち着いた様子で答える。

確かに盤面を見るなら雛の効果で手札からレッドアイズを召喚するだろう。

だが俺は知っている、やつがドラゴン族に対して革命を起こしたあのカードの所有者だということを。

 

「それは合っていて違うな。見るが良い、闇の力を!フィールドのドラゴン族モンスターを除外しこのモンスターは特殊召喚できる。現れろ【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】!」

 

予想通りダークネスはレダメを召喚してきた。

火口の中から漆黒の機械装甲を持つ竜が現れ、咆哮を上げると続くかのように別の黒竜が火口から現れる。

 

「なんだ、これは……」

 

「【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】の効果。1ターンに1度、手札か墓地のドラゴンを特殊召喚する。俺はこの効果で墓地の【真紅眼の黒炎竜】を甦らせた。だがまだ終わりではない!永続罠【真紅眼の鎧旋】を発動し墓地の【真紅眼の黒竜】を特殊召喚!そしてそれを生贄に手札から【真紅眼の闇竜】を特殊召喚!」

 

 

【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】

星10/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2400

 

【真紅眼の黒炎竜】

星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

 

【真紅眼の闇竜】

星9/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

 

 

フィールドに並び立つ3体の真紅眼は機械仕掛けの不死鳥と龍に狙いを定め、勝負の瞬間を待ちわびている。

 

「【真紅眼の闇竜】の攻撃力は墓地のドラゴン1体につき300上昇する。俺の墓地にはドラゴンが4体、よって1200上昇し攻撃力は3600!」

 

【真紅眼の闇竜】

攻:2400→3600

 

「そして俺はこのターン通常召喚を行っていない!デュアルモンスターである【真紅眼の黒炎竜】を再召喚することで効果を得る!」

 

「デュアルモンスター?」

 

「墓地とフィールドでは通常モンスターとして扱われる特殊なモンスターだよ。フィールドにいるデュアルモンスターを再召喚することで初めて効果モンスターになる」

 

聞きなれない単語に疑問を浮かべる十代にそう答えながら内心で冷や汗を流す。

アナザーネオスがいるからデュアル自体はこの時代にあったのだろうが真紅眼の黒炎竜はヤバい。

あいつがモンスターを破壊すると黒炎弾が飛んでくる、というかあの伏せでなんとかしないとカイザーが総攻撃で終わる。

 

「バトルだ!【真紅眼の闇竜】で【サイバー・フェニックス】に攻撃!ダークネス・ギガ・フレイム!」

 

【真紅眼の闇竜】が飛翔すると機械の不死鳥目掛けて闇の炎を放つ。しかしその黒炎は突如展開された緑色の膜に吸収され、相手を焼くことは無かった。

 

「俺は罠カード【ドレインシールド】を発動させていた。貴様の【真紅眼の闇竜】の攻撃を無効にしその攻撃力ぶん俺のライフを回復する」

 

丸藤亮

LP:4000→7600

 

「さすがカイザーだぜ!」

 

「よかった……」

 

大幅にライフを回復したカイザーを見て二人は安堵の表情を見せる。

だがまだ終わりじゃない。

 

「ふん、凌いだか。ならば【真紅眼の黒炎竜】で【サイバー・フェニックス】に攻撃!」

 

「【サイバー・フェニックス】が戦闘破壊された事により効果で1枚ドロー……ぐぅっ!?」

 

LP:7600→6400

 

効果処理を行っていたカイザーが突如うめき声を上げ腹部を抑える。

 

「闇のデュエルの意味が分かったか。だが終わりではないぞ【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】で【サイバー・ドラゴン】を攻撃!ダークネス・メタルフレア!」

 

「ぐあぁぁ!」

 

LP:6400→5400

 

「フハハハハ!バトルフェイズ終了時に戦闘を行った【真紅眼の黒炎竜】の効果が発動する!このモンスターの元々の攻撃力のダメージを相手に与える!」

 

「ぐっ、うぅ……」

 

LP:5400→3000

 

黒炎弾がカイザーに襲い掛かり炎に包まれ、闇のデュエルのダメージにより遂にカイザーがその場に膝を突いてしまう。

ライフを回復したのは逆に苦しむ時間を長引かせてしまったのかもしれない。

 

「カイザー!」

 

「亮!」

 

「お兄さん!」

 

膝を付くカイザーに十代、明日香、翔が悲痛な叫びを上げる。

 

「心配ない。これが……闇のデュエルか」

 

三人の叫びに応えるかのようにカイザーはよろよろと立ち上がる。

現実化したダメージにより制服は所々が痛み擦り切れている。

 

「ほう、まだ立ち上がるか」

 

「当然だ……」

 

「ククク、そうこなくてはな。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

ダークネス

LP:2500

手札:0

モンスター:【真紅眼の黒炎竜】【真紅眼の闇竜】【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】

魔法罠:セット1【真紅眼の鎧旋】

 

 

「俺の、ターン。ドロー」

 

カイザーのターンになるが先ほどの覇気は無くドローは弱弱しい。

 

「くっ……俺は【サイバー・ヴァリー】を守備表示で召喚しカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

 

丸藤亮

LP:3000

手札:3

モンスター:【サイバー・ヴァリー】

魔法罠:セット1

 

 

カイザーは手札が悪いのかすぐにターンエンドを宣言する。

防御としてはヴァリーは普通だがあれは本当に手札事故だろうか。

 

『迷っていますね』

 

「どうしたいきなり」

 

「迷ってる?カイザーが?」

 

「はい」

 

顕現したドリアードの言葉に俺と十代が反応すればドリアードは頷いて続ける。

 

『恐らく彼は察したのでしょう。乗っ取られているとはいえこのまま続ければ親友の体を傷つけてしまう事とデュエルの敗者が魂を奪われてしまうことに。負ければ鍵と弟と自身が、しかし自分が勝てば相手はどうなる?無事に彼は戻ってくるのか?と』

 

「そういう事か」

 

ドリアードの言葉で納得してしまう。俺は事の顛末を知っているから何とも思わないが彼らは違う。

闇のデュエルがどういうものかを知らないんだ。だから基本的に、仕掛けてきた奴や大元を倒してしまえば解決することを知らない。

このダークネスだって、確かに体にダメージは残るが封印されるのはダークネスだけで吹雪の魂は無事だ。

だが当然、他の奴らはそんなの知らない、だからカイザーの葛藤は正しいんだ。

 

「お前の力で何とかならないか?最低でも翔君と隼人君だけでもなんとか」

 

『無理です。闇の力とデュエルの力が強すぎます』

 

『クリ~』

 

俺の問いにドリアードとハネクリボーは首を横に振る。

 

「じゃあどうすりゃあいいんだよ!?」

 

「……黙って負ければ翔君、隼人君、丸藤君が死んで鍵が奪われる。デュエルに勝てば三人は死なない。ならば答えは決まってる」

 

「それって……」

 

「十代くん、デュエルを見守ろう」

 

 

どうするか、どうなるかはカイザー次第なのだから。

 

 





デュエルアカデミアをサボってトレセン学園に入り浸っている不届き者が居るらしい。


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