東方不動語 〜岸辺露伴の幻想入り〜 (佐々木邦泰 )
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始まり
幻想郷の奇妙な事件簿 第一話


1話目になります。誤字脱字報告してくださいね。

初投稿です。初めの1話でアレルギーが出たなら、ブラウザバックを推奨します。

拙い駄文ですが、ゆっくりしていってね。


忘れもしない。あの日僕は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気だるい休日の昼下がり、露伴は杜王町内にあるカフェ・ドゥ・マゴにて担当編集者と打ち合わせをしていた。もっともこの露伴に打ち合わせなんて必要だとは到底思えなかったが。

「露伴先生、ここって...」

クソッタレ。わざわざ完璧な彼のマンガにケチをつけるためにこの打ち合わせはあるのだろうか?

「ああ、もういいもういいもういい」

「えっ、でも...」

「あのなぁ、わざわざ僕の時間を奪ってまでこんな意味のないことする必要あるかぁ? 普通ないだろ」

「い、いえ、あ、あのぉ」

「なんだよ。はっきり言えよ。どーせ編集長だろ。彼こんなことしてまで僕の時間を奪いたいのか?」

今日は機嫌が良くない。康一くん...ああ彼の友人だ、今日の午前中に僕の家に遊びに来てもらうはずだったのに、急に熱を出すなんて。まあはっきり言って最悪な気分なんだ。

「どこかにマンガのネタになるものはないかなぁ〜」

わざとらしく、それでいてムカつきを加えてまるで非難するような声色で露伴は担当の編集者を脅す。彼、気が弱いんだよなぁ。

「ろ、露伴先生っ!そんなこと言われましてもぉ...あっそうだ。知ってますか?〇〇県北部の〇〇市」

「聞いたことないなぁ。一体何が特産品なんだい?」

「いやぁ、特産品ってわけじゃあないんですけどぉ、頻繁に人がある日突然消えるらしいんですよ」

人が消える。僕の住む町杜王町もある日突然人が消える。まあ、よくある失踪事件だろうと多くの人は思うだろう。だがつい先日、吉良吉影という殺しの女王をまとった殺人鬼をこの目で見た身としては聞き捨てならない話だ。

「じゃあ僕はもう帰るよ。またな」

「露伴先生!まだ打ち合「もういいだろ。訂正もないんだから。それに早く帰って連載分を書き上げなくっちゃあいけないしな」

「...」

 

 

 

〇〇県北部の〇〇市と言ったか。これは一つ取材の価値がありそうだ。

 

 

 

 

思い立ったら吉日...とはよく言ったものだ。誰が最初に言い始めたのかは知らないが。幸いなことに露伴が時間の有り余っている漫画家でよかった。だってこうして次の日には取材旅行に出かけられるんだから。

 

 

 

 

市内は特にめぼしいものはなかった。〇〇市がタダのベットタウンとして成長して市ということもあり、興味のそそられるものもない。まあスタンドを使った殺人が横行しているとは限らないしな。

では人が消えるとは一体なんなんだ?

 

何か異様なものが近くにあるとしか思えない。数々の不気味な現象を見たり、聞いたりしたカンが叫んでいる。

...こーゆう事案の場合、老人に話を聞くという手段が有効な場合が多い。何故かじーさんやばーさんほどこーゆう話に詳しい。事前にインターネットで下調べはしたがろくな情報はなかった。

インターネットの情報なんてアテにならないからな。せいぜい天気予報で十分さ。

 

 

 

幸いなことに小路へ入ると人通りはなくなる。ちょうどそこに70代後半程の老人もいるし、いきなり”読んで“もいいんだが、マナーとして世間話でもしようじゃあないか。敬意を払えだっけか?

 

「なあなあそこのじーさん。ちょいとお聞きしたいんだが」

「なにかね?」

「この町、人がよく消えるだろ。隠さなくっていいぜ。教えてくれよ」

「死にいくようなものじゃ。やめておけ」

「そーかい。じゃあ手荒な真似をさせてもらうよ。天国の扉(ヘブンズドアー)!」

老人の顔が“本”になる。

天国の扉(ヘブンズドアー)。露伴の持つスタンド。対象を本にして、経歴や記憶を読む能力。余白に書き込めば、対象を思い通りに操れる。書き込まれた命令には絶対に逆らえない。まさに天国の扉。神の力だ。

 

「ほう、市内から少し離れた南部の山に妖怪伝説が...六壁坂以外にもあったのか。なになに、若者を中心に山にいたずらしに行くだって?..........まさか妖怪伝説というのは...」




どうだったでしょうか?ぜひぜひご感想お寄せください。

???「あんた何者?」
A.ぺんたろう

???「仕事してんの!? ニートは許さんぞ!」
A.貿易関連

次回投稿は未定!できれば一ヶ月以内で出す!

作品への質問、作者への質問。お答えできる範囲ならばお答えいたします。それではおやすみなさい。

ニートは許さん発言は大学の頃、両親にめちゃくちゃ言われました。リーマン直後ですげぇきつかったの覚えてる。


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幻想郷の奇妙な事件簿 第二話

できる限り暇を見つけたら書きます。
ゆっくりしていってね!


まっまさか妖怪伝説が本当だなんて。

恐らく、失踪事件の正体はこの妖怪によるものだろう。

だが、いたずらして失踪か...恐らく生きてはいないだろうな。

 

...興味が湧いてきたぞ。一体どんな妖怪なのか。

 

水木しげるっていうすごい漫画家がいる。戦後日本を代表する偉大な怪奇系の作家なんだがね。彼はよく妖怪を自身のマンガのネタにしていた。そのおかげ、というのもなんだが知識はある。どんな妖怪に出会えるのやら。楽しみだぜ。フフ♡

 

「一体どんな妖怪がこの山に住み着いているのやら」

独り言というには大きすぎる、話しかける声にしては小さい。そんな声で僕はぽつりと声を漏らした。もちろんこの山に巣食う妖怪に話しかけているつもりだ。人語が通じるとは思っていないがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分? いや10分? 時間の感覚が薄い。

「はぁ...はぁ...はぁ...」

山の調査を始めてから時間はそんなに立っていないはずだが...空気が薄いのか? そこまで標高が高くないはずなんだが...

「妖気というヤツかい?ブルっちまうな〜」

山へ話しかけても返事はない。とにかく前へ進もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから2時間は過ぎたか? 

それから僕はボロボロの今にも崩れそうな古ぼけた神社を見つけた。ちょいとでも風が吹けばバラバラになりそうなのに、崩れていない。これは一体...?

「付喪神だったか。失踪事件の正体は君かい?」

神社に向かって僕は問いかける。

返事は...ない。

「おいおいおいおいおいおいおいおいおい、恥ずかしがり屋かい? まあいいさ。僕にはこいつがあるんだから。読ませてもらうよ」

 

天国の扉(ヘブンズドアー)>

 

自身の半身の名を僕は叫び、神社の記憶を読んだ。

「.......結界ィ? ほう...ここが境目? スキマ...?」

ページを捲ると意味不明な単語が並んでいた。露伴はページを捲る。

「いたずらしたら、幻想入りぃ? こいつ大当たりだッ! わかったぞ! この神社は、不敬を働いたものをどこかへ転送する装置だッ! だから人が消えるとされるんだッ!」

思いがけぬ正解に僕は歓喜した。それが恐ろしい罠とも知らず。

 

市内に戻った僕は〇〇市のカフェにてネタをまとめていた。結界だとか言っていたし、次作の部はオカルト成分を強めてもいいかもしれない。そんなノンキな事を考えている時だった。

「あなた、岸辺露伴ね?」

女の声だ。無視してもいいが声だけ反応する。

「だったらどうだってんだい? サインでも欲しいのか?」

「いえ、サインが欲しいんじゃないのよ。あなた博麗神社に何かしたわね?」

「随分悪趣味なヤツだな。僕をストーカーしたのかい? 君は。ああ読んだよ」

「知ったからにはきてもらうわよ。幻想郷へ」

こいつ何言ってんだ...?




はい幻想入り〜

質問等受け付けてます。どしどし送ってね。

誤字脱字報告よろしくねー。

それじゃあ!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第三話

連日投稿とか一日に何話もとか無理なんで自分のペースでやります。

社会インフラじゃないんで、ぺんたろうは。そこんとこ勘違いしないように。


「幻想郷...」

「そうよ。幻想郷のことを知っておいて生きて帰れると思っていたのかしら?」

この女、妖怪か? 何か能力を持っているとみて間違いない。仕掛けてみるか。

 

僕のスタンド天国の扉(ヘブンズドアー)は強力な能力を持っている。しかし先手を打たないと、隙を与えてしまう。先手必勝とはまさにこのこと。こいつが、どんな能力を持っているか知らないが、友好的に解決できるならそのほうがいいに決まってる。命は惜しい。まずは相手の名前から...

 

「なあ、僕は君の名前を知らないんだが、君も名前くらい教えてくれてもいいだろォ〜? マナーに反するってやつだぜ?」

「そうね。いいわよ。私は八雲紫。妖怪の賢者。幻想郷の管理人よ」

いきなりビックが来たな。さては結界とやらもこいつが展開してるんだろう。

「そんなビック様が僕になんのようだい? 暇してるってわけじゃあ無さそうだが? 紅茶飲む? コーヒーがいい? そのバームクーヘン食ってもいいぜ」

「ご親切にどうも。でもご遠慮するわ。あなたはもっともデリケートな部分に触れてしまった。残念だけど、こっちへくるか、ここで死ぬか。選びなさい」

 

この女、イカれてるのか? 突然現れて殺害予告なんてバカバカしい。そもそもこいつが本当に妖怪かどうかも怪しいしな。待て待て待て。考察しよう。判断材料はあの神社だ。確かに幻想入りだとか書いてた。こいつも幻想郷だとか言ってた。やはりこいつはホントに妖怪か。

 

「幻想郷のことが外に知られるのがそんなに嫌かい? なあTwitterって知ってるか? 僕が一言幻想郷について書き込むだけで、世界中のヤツがこの市、いやあのボロい神社に突撃するんだぜ」

「あなたがそんなことするとは思えないわ。ちょくちょく外の世界に来て情報を集めているもの。岸辺露伴。1979年生まれ。16歳の頃漫画家デビュー。その後現在まで『ピンクダークの少年』を連載。1999年頃一ヶ月ほど休載していた...その頃から怪奇現象に頻繁に首を突っ込む...リゾート開発として話題になった山の周囲の土地を買いまくり、妖怪を守ろうとして、破産した...どうかしら? これで信用できる?」

「おどろきももの木だね。僕の読者に妖怪がいたなんて」

「選びなさい。ここで死ぬか。幻想「わかったよ。幻想郷とやらへ行ってやる。」

僕だって死ぬのは嫌さ。読者にマンガを読んでもらうことが僕の生きがいなんだから。今の読者には申し訳ないが、新天地で新連載だ。それにまた新たに妖怪に取材ができるかもしれない。こんなチャンスはないだろう。

「移住にあたってだが、その幻想郷ってのは君しか住んでいないのかい? それとも僕は君の食糧か?」

「迷いがないわね。だから気に入った。私以外にも住んでいるわよ。人間も神様も妖怪も。吸血鬼もいるわよ」

なかなか楽しそうなところじゃあないか。この取材旅行には価値があったというものだ。

「ぜひ行かせて欲しい。なんなら今すぐに行こう」

「えっ?」

「さあさあさあさあ。はやくしろよ。お前すっとろいぞ。取材だ。取材。楽しみだなぁ〜」

一人で興奮し始めた露伴が落ち着くのは、30分ほど経過した後だった...




次回投稿は時間が開くかもしれません。

一ヶ月以内には頑張る!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第四話

いやぁきつい。
きつきつですわ。って事でどうぞ


「ちゃんと人間のいるところに連れて行ってくれるんだろうな。八雲紫さんよぉ〜」

「当然よ。幻想郷に住むって言っている人を人喰い妖怪の前なんかに差し出すものですか」

そう言うと紫はプイと顔を背けた。ここはスキマ。聞くと八雲紫の能力らしい。

「ひとつ聞いていいかい? いや実にくだらないんだけどさぁ〜。お前さん、なんて妖怪? もしかしてだけど隙間女?」

「...」

「...沈黙は肯定と捉えるぜ」

まあいい。相手の情報も少しは手に入った。しかし...はっきり言わせてもらうと、こいつは信用できない。胡散臭さがプンプンしてる。こいつほんとに大丈夫か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきあなた読んだとか言ってたわね? どういう意味よ?」

沈黙を破り、紫が聞いてくる。

「おいおいおいおいマヌケ。人にものを頼む時はgive and take (ギブアンドテイク)だろぉ〜? 常識だぜ。それとも人間の常識は通じないってか? よく出来た教育なことで」

「能力を教える代わりに、自分の能力も明かせってことかしら? いいわよ。私の能力は“境界を操る程度の能力”よ」

「もっと詳しく教えてもらってもいいかい?それじゃあ全然わかんないぜ。眠たくなっちまう化学の授業じゃあないんだからよぉ〜」

「物事にはなんでも境目がある。生と死、夢と現実、昼と夜...その境目を自由に操ることができるのよ」

 

(おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいなんだそりゃ。チート能力もいいところじゃあないか。つまりはあれだろ。こいつは僕をいつでも殺せる状態だったってことだ。今更寒気がしてきたよ。)

「じゃああれかい。君は僕のことをいつでも殺せたし、話をする必要もなかったはずだよなぁ。どーゆう風の吹き回しだい?」

「あなたの背中に悪霊でも憑いているように、何かがいるわ。可視と不可視の境界を弄ってもダメなのよ。強力な何かがいるわ。だから興味が湧いたのよ」

こいつは好都合だ。相手にはスタンドが見えないと来た。こんなにいいことはない。このマヌケ相手に少しからかってみようか。

「そうだな。君の見立てどうりさ。僕には悪霊が憑いてる。僕の能力はこいつに起因するものさ」

「もったいぶらずに教えてよ!」

紫はたまらず声を荒げた。

「ダメダメダメダメダメダメ。この悪霊の力は他人に知られたくないんだよ。もし絶対に約束に逆らわないって約束できるんなら教えてやってもいいがよぉ〜。お前さんはちと信頼できないんでね。なんつーかよぉ〜。胡散臭いっていうかぁ〜いやーな匂いがプンプンするね」

「いいわよ。約束するわ。じゃあ「天国の扉(ヘブンズドアー)

パラパラと本のページを捲るような音がスキマの空間に響く。

「手加減したぜ。気絶しない程度にな」

紫は自身の体を見る。そこには見慣れた体ではなく、“本”となった体があった。

「これは...!」

「これが僕の能力。対象を本にして体験や記憶を読む能力。余白に指示を書き込めば、その指示には絶対に逆らえない。まさに天国の力。神と僕を接続するから天国の扉だ」

「...ッ!」

紫は困惑すると同時に恐怖していた。こんなやつを幻想郷の住人として迎え入れていいのかと。

「安全ロックだ。『私八雲紫は漫画家岸辺露伴の能力について他言しない。した場合には、焼身自殺する。』そう書き込んだよ」

(くっ命令の有効と無効の境界が操作出来ないっ! まさか本当に...これは...)

「さあ命令も書き込んだし、とっとと送っておくれ。八雲紫さんよぉ〜」

「...私のことは紫でいいわ」

「どぉでもいいからさっさと送ってくれ。早く吸血鬼さんに取材がしたいんだよ」

紫は岸辺露伴をつくづくわからない人物だと思った。




次回投稿は未定!
なるべく早く出す!

でも仕事の都合でTOEIC取らなきゃいけなくなったんで勉強ですね。学生時代英語だけは無理だったのよ。

いつになるかわかんないけどまた次回!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第五話

不定期投稿と言いつつ何やってんだオメェと言われても仕方がない。がんばります。


「じゃあまずは博麗神社ってところに向かうわよ」

「あのボロい神社ならスキマの外だろぉ? なんのためにこの気持ち悪い目玉だらけの空間に入れだなんて」

「気持ち悪いはひどいわ。はぁ、幻想郷側に存在する方よ。まあ正確には違うんだけど...」

聞けば、結界で断絶された空間の境目にあるらしく、厳密には幻想郷内に建っているわけではないらしい。

一体どんな奴がそこに住んでいるのか。興味があるね。

「あと一つ! やっぱり幻想郷の森の中でいいから一番始めに転送しとくれ」

「あなたおかしいのかしら? まあいいけど」

 

「着いたわ」

5分も経たないうちに幻想郷に着いたらしい。森の中を希望したのは、自分の足で幻想郷を歩きたかったからだ。

「へぇーここが幻想郷か。ほう...ふうん...」

「随分と嬉しそうじゃない」

不敵に紫が笑う。

「嬉しいに決まっているじゃあないか。妖怪や神様に取材ができるなんて嬉しくないわけがないね。これが暇だとか抜かすヤツがいるなら、そいつマジにおかしいぜ」

「そう」

...おいこれって...

「ハイミミガタシダか? すごいなぁ〜。野生じゃあ絶滅したんだぜ。どれ、味も見ておこう。...うむ、苦味が強いな」

(こいつ本当におかしい! 勢いで住んでいいなんて言ったけれど大丈夫かな。)

過去の自分を恨んだ紫だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...私がこの幻想郷を作った理由。...話してもいいかしら?」

ひとしきり観察...もとい味見が終わり、博麗神社への参道(と言うには急すぎる階段)をトコトコ歩いているときだった。

「かまわん、好きにやれ」

冷たくあしらったが、露伴は実は興味があった。

「妖怪って強いようで弱いのよ。人間たちが私達を恐れれば妖怪は存在できるの。神様も同じよ。神様の場合は信仰だけどね。人間たちの文明が進むにつれて妖怪の数は減っていった。同族が一人一人と消えていくのが耐えられなかった。だから、人間のをある程度入れて、各地の妖怪達をここへ呼んだ。こうすればみんな幻想を見ながら生きられるから」

「同族を守るために、結界の境目に近づいた不敬ものをここへ送り込むってわけかい。これが神隠しの正体か」

「ここへ来た人間の多くは野良妖怪に喰われて死ぬわ。ごく一部のものが人里にたどり着けるのよ。人里では妖怪は人を襲うことは禁止しているから安全よ」

やっと繋がったよ。話を聞く限りじゃあどうも違和感があったんだ。

 

通常の食物連鎖の場合、食物となるものは上位捕食者よりも数が多くなる。

だが話を聞く限り、食物、(こう言う言い方は良く無いが)人間の数に対して妖怪の個体数が多すぎる。監視者か...そうかい。おもしろいヤツだ。胡散臭いし金髪の女だからよぉ〜く目立つ。こいつも取材してみるのもいいかもな。そう思いつつ、まだまだ長い終わりの見えない参道を眺め露伴は大きくため息をついた。




次回はどうなるか。
今作は東方キャラたちに不気味な体験をしてもらうお話です。導入だけで何日かかってんだよ。随時感想、誤字脱字報告お待ちしています。

それじゃあおやすみなさい。
次回投稿も未定だよ!
一ヶ月以内に出せるように頑張る!
はずさ!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第六話

そろそろハーメルンの使い方もマスターしたい。
誤字脱字の報告しておくれよ!


さてさて、長い長い参道を登り終わると、少し開けたこじんまりとした、神社が見えてきた。

「ここが博麗神社か。外のボロいやつとは大違いだな」

「そうね。ここは人も「天国の扉(ヘブンズドアー)!」

鳥居に向かって露伴が叫ぶ。

(まさかこいつの能力の範囲は生物だけじゃ無いの!? っていうか、なにやってんのよ!)

「ほーう、まだまだ新しいんだな。なになに天人だって? 気になる記述だ。興奮して来たぞ」

(っていうか人の話聞かないわね。この漫画家)

 

「ちょっとそこでなにやってんのよ! あれ? 紫もいるってことはあんたの知り合い? とっとと止めなさいよ!」

天国の扉(ヘブンズドアー)を解除して、声のした方を見る。声質から判断するに十代だろうか?

「紹介するわ。彼女が楽園の素敵な巫女。博麗霊夢よ」

大幅に改造された巫女服を着た少女が軽く会釈する。あのクソッタレ仗助とアホの億泰を思い出してしまう。

「僕は岸辺露伴。漫画家だ」

「漫画家...絵描きさんかしら?」

「まあ同じようなもんさ」

「外の世界に帰るんでしょ?じゃ「おぉい! ふざけてんじゃあないぞ! このクソガキィ! 僕はここに取材のために来たんだ! 帰るだって? いい加減にしろ!」

突然激昂する僕に紫と霊夢は...端的にいうとドン引きした。何が彼の地雷だったんだ? って顔してる。それがさらにムカつく。

「いいかい? 作品を作る上で最も大切なものは何かわかるかい? リアリティーだよ。マンガは一から十までウソを描いているように見えるがそうじゃあない。随所に見られるリアリティーが作品に命を吹き込むんだ。ウソっぽいセリフひとつが作品のクオリティを下げてしまうんだ。この僕に! そんな低俗なマンガを描けっていうのかい!? ここはネタの宝庫だ。こんなに美味しいものをぶら下げておきながらお預けかい。いい趣味だな」

「そんなつもりはないわよ。っていうかあんた傲慢よ!」

「知ったことじゃあないね」

「はいはい、もう喧嘩しないの」

紫が制止しことなきを得たが、確実にスタンドを出すつもりだったんだろう。

「チッ」軽く舌打ちをする露伴だった。

 

紹介も終わり、露伴の住居を決めねばならなくなった。

住居となれば、人里ということで、空を飛べない僕は、歩いて行くと言った。送っていく。空を飛べるから速い。と実際に空を飛んでみる霊夢。自由に空を飛び回る霊夢を見て若干興奮気味な露伴。だが興奮はすぐに引くことになる。

「ここのやつらはみんなすごいやつばっかりなんだな。空を飛べるのか。まあこの程度! 天国の扉(ヘブンズドアー)で自分に書き込んでやる!」

自分で空を飛べるとなれば、クソガキの巫女に興味はない。とっとと家を探すまでだ。

(この悪霊、なんという力!他者の行動を制御できるだけでも十分チートだというのに、自分に対しても指示が書き込めるなんて!) 紫は驚くばかり。ちなみに霊夢からは何をしているか見えなかったようだ。

 

こうして僕は飛行能力を得たのだが、一つ天国の扉(ヘブンズドアー)には欠点がある。それは自身に対しての行動制御は一時的なもので、1時間という制限があるのだ。

 

ー人里ー

幻想郷で多くの人間が住む場所であると同時に、妖怪に襲われない唯一無二の場所。

紫はじゃあここでと人里の入り口でスキマに消えていった。

事前に金銭の類は両替してもらった。優しいんだなぁ〜。スゴく胡散臭いし、不気味なヤツだし、スゴクムカつく面してるけど。

 

何はともあれ僕の幻想郷での生活は今始まったばかりだ。




前回までは休日だったからよかったものの、こんな投稿ペースはないぜ!
露伴先生のヘブンズドアーが強力すぎるので、弱体化してます。インフレしちゃうんだな。
次回からほんとに不定期投稿!
ごめんな!
さらばだ!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第七話

き、きつかった。
上司と同僚が同時に胃腸風邪で倒れ異常な量の仕事が舞い込んできてて。

いやぁ。地獄でした。

これが精一杯です。誤字脱字だらけだと思うから、報告と黄金の理解力でカバーしてくれ。


家探しということだが...こういう場合どうしたらいいんだかわからないな。

「おい。そこのヘソだしファッショナー」

誰かがものすごく失礼なあだ名で僕を読んでいる。くるりと振り返ると人のファッションに口を出せそうにない、絶望的なファッションをした少女が仁王立ちしている。

「もしかして僕のこと言ってんのかい? 君の家って鏡とかあるの? 自分のファッションセンスを先に見直した方がいいと思うんだが...?」

「なっ、何を言うんだ! 困っていそうだから、私が声をかけてやったんじゃないか!」

「自己紹介がまだだったろ。僕は岸辺露伴。漫画家だ」

「むぅ、上白沢慧音だ。寺子屋で教師をしている」

早速レア引きを当てた露伴だった。

「見たところ君は外来人だな? 家がないなら私の家に泊まって行くといい」

「こいつはありがたい。ぜひ一晩よろしく頼むよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、夕食と風呂をいただいた僕は上白沢慧音と名乗った少女から質問されていた。

「幻想入りして大変だっただろう? 一晩と言わずアテが見つかるまで止めてやろう」

「ご好意は受け取っておくよ。それにここには迷い込んだんじゃあなく、取材に来たんだから」

「漫画家と言ったな。迷い込んだんじゃない? どう言うことだ?」

 

僕はこれまでの経緯を上白沢慧音に話した。

人が頻繁に消える○○市のこと

能力のことは話さずに、妖怪伝説の山を知ったこと

八雲紫と出会い、幻想郷で取材がしたいと伝えたこと

博麗神社に行って霊夢にブチギレたこと

 

このことを聞いた上白沢慧音は頭を抱えて蹲った。

「ううう。君ちょっとおかしいぞ。なんでったって取材のためにこれからの生涯を、無駄にするなんて」

その言葉にカチンときた露伴はゆっくりと口を開く。

「おいおいおいおい、上白沢慧音。僕は漫画家だ。読者に読んでもらうために描いているんだ。スランプとは少し違うんだが、マンガを描いて不安になるんだ。もしかしたら今週は誰も読んでくれないんじゃあないかってね。僕はおもしろいマンガを読者のために描いているんだ。だからおもしろいマンガを描くために手段は選ばない。ある意味マンガと結婚したようなものだな。君のそのくだらない価値観で僕のマンガをバカにするんじゃあない。もしも本当にどーしてもバカにしたいなら、今から1時間で連載されていた分を書いてやるから全部読んでからバカにしろ。筆を借りるぞ。紙はこれでいいな?」

捲し立てる様に話す露伴。

あまりの剣幕に上白沢慧音は何も言えなかった。...いや『言えなかった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後、部屋の床を埋め尽くすほどにマンガの原稿(授業で使うプリントの裏)が積もった。

「さあ読んでみろ。その上で僕の取材旅行をバカにしてみろ」

「いいだろう。もしおもしろくなかったら、明日八雲紫のところに連れて行って外の世界へ送り返すからな! 覚悟しろよ! 厳しく行くぞ!」

そうは言ったものの上白沢慧音の意識はスデに『ピンクダークの少年』に支配されていた。

(お、おもしろい...これはッ! ダメだ! ここで折れたらダメだ! 絶対に露伴を外に返すんだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の取材旅行をバカにする権利は私にはないな。素晴らしいよ。家を明日探そう。私でよければ、取材に協力しよう」

勝敗ッ! 慧音ピンクダークの少年の面白さに完敗。

「ふん、こちらこそよろしく頼むよ」

画してここに歴史を喰らう少女と天才漫画家のコンビが生まれたのだった。




露慧はずっとやりたかったんだよね。
構想の時点でスデにあったので。
次回投稿ッ!未定ッ!
すまんね。
ゆっくり待ってくれよ!


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老婆
幻想郷の奇妙な事件簿 第八話


実は宅飲みしながら書いたりしてます。
不定期投稿を盾にサボってるわけじゃあないですよ。
ほんとに。


これは執念に取り憑かれた、ある老婆の話だ。ここでは仮に、鳥井老人夫妻としておこう。その鳥井老夫妻をめぐる奇妙なエピソードを紹介しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上白沢慧音から、新しくもんぺをもらって、朝食をいただいた。上白沢慧音は午前中は寺子屋で授業があるらしく、午後から家を探す約束だ。午前中のうちに人里を軽く回ってみようか。昨日はヘソだしファッショナーって呼び止められて全然回れてない。

 

しかしここは本当に安全なところなんだな。ちょくちょく妖怪と思しき者とすれ違う。あいつは...背中から烏の羽が生えているな。うさ耳のセーラー服を着た少女が必死に薬を売っている。何の薬かと聞いてみると即効性の風邪薬だと言った。正直信頼できなかったので買わなかったけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里も大通りから外れると人通りは急に寂しくなる。小径をできる限り選んで歩いていくと、いつの間にか人通りも無くなった。普通に考えたらおかしい。生活音が全くしない。

 

なんだ? 何かがおかしい。

 

 

..........ろ........か?

..........ろ........か?

 

 

...何か声が聞こえる?

 

やろうか?

 

 

やろうか?って言ってるのか?

「おい、何をくれるんだよ。はっきりさせてからだぜ」

 

やろうか?

 

(僕ははっきりさせろって言ってるんだがなぁ。)

どこだ?どこだ?周囲に人影はない。

「姿を表せ」

いつ相手が出てきてもいい様に<天国の扉(ヘブンズドアー)>を側に出す。

一秒をこんなに長く感じたのは初めてだ。

 

チリリーン

 

鈴の音?

以前姿は見えないっと。

だがわかるぜ。確実に近づいてきている。

「こいよ...妖怪さんよぉ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー寺子屋ー

「不安だ...一応人里の外に出るなと釘は刺したが一晩過ごしてわかった。あいつは人の話を聞かないタイプだ」

「どうしたの? けーね? 恋する乙女の顔だよ?」

「なっ何を言ってるんだ! からかうのもいい加減にしろ!おい! 妹紅!」

私の友人藤原妹紅。時々授業を手伝ってもらうんだが...こいつこういうよくない癖がある。

「はぁ〜。絶対露伴は人里の外に出てる! 帰ったら頭突きだ!」

ため息と共に頭突き宣言をした慧音は次の授業の準備へ取り掛かった。

「その露伴ってやつ外来人だろ? しかも人の話を聞かないタイプの。異変とかに、首突っ込んで早死にする未来がハッキリ見えるね」

 

グキッ

 

ぼそりと独り言を言ったのに聞こえていたらしい。次の瞬間妹紅の視界は電源の落ちたカメラの様に真っ暗になった。

慧音の頭突きが妹紅に炸裂したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー人里のどこかー

露伴は迫り来る何かに天国の扉をあててやろうと躍起になっていた。

(どこだ?どこから僕を見ているんだ?)

 

チリリーン

 

また鈴の音だ...

まさかこいつ反響定位(エコーロケーション)か!?

クジラやイルカ、コウモリなどが使う位置の特定方法。妖怪にも出来たとはな。

驚きだぜ。

どこだ? 音はどこから出ているんだ?

 

次第にチリリーンという鈴の音は小さくなっていく。

「待ってくれよ。おい。まだ僕は君の姿を見てないぜ。おいおい卑怯だぞ!」

露伴の叫びは虚しくも、どこからか戻ってきた人々の生活音に消えていった。




さーどんな不気味な現象を露伴は目撃するのでしょう?

次回に期待!
更新は未定!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第九話

ネタには困っていないけれど、執筆する時間がひねり出せなくて、困っているぺんたろうです。
結構空いたな。


鈴の音が消え、生活音の音が露伴の耳に入ってくる。

「僕は...ただ知りたいんだ! 何がどうしてこんな結果が生まれたのかが気になるんだ! お前は何者なんだ!?」

人目も憚らず、大声で叫ぶ露伴。

「あやや? なんだか妙な髪型の人がいますね。何か叫んでましたがどうかしました?」

失礼なヤツが声をかけてくる。ここのヤツらは本当に...!

興奮を抑えて話しかけてきたやつを見る。

「おい君、名前は? 僕は岸辺露伴。漫画家だ」

「私は、里に最も近い天狗の射命丸文と申します。文々。新聞ってのを書いてます。今日はここにネタを探しに来たんですよねぇ〜なんだか、似たような匂いがしますね」

クンクンと僕の匂いを嗅ぐ少女。天狗って言ったな。こいつ。

「おい君、天狗と言ったな。僕の勝手なイメージじゃあ長い鼻を持っているんだが」

lesson 1 まずは疑問に思ったことを聞いてみよう。

「それは数ある天狗の種族の1つですよ。私は烏天狗です」

「お前新聞記者なんだろぉ? この付近に妖怪だとか化け物が出たって言う噂知らないか?」

「目の前にいるんですが...」

「もういいしゃべるな。話が噛み合わねぇ」

天国の扉(ヘブンズドアー)>を発動させる。

「...何ですか? そのあなたの右腕? 手だけ別の生物みたいですよ」

こいつ回避しやがった。僕の<天国の扉(ヘブンズドアー)>を...!

僕のスタンドの発動には手をかざして、ページをめくるような動作をしなければならない。結構手首の早さには自信があったんだけどな。こいつもしかしてめちゃくちゃ素早いのか?

「まさか新聞のネタが、歩いてるだけで見つかってしまうなんて驚きですね。今日はツイてるなぁ。星座占いじゃ最下位だったのにぃ。漫画家さんでしたっけ? 私の新聞であなたの漫画を連載しませんか?」

こいついきなり何を言ってやがる? 八雲紫に似た胡散臭さを隠しきれていない。...いや紫は隠すつもりがないのか溢れているが、こいつは...なにかやばい。激ヤバかもしれない。

「君の新聞を1部読ませてもらってもいいかい? それから君の新聞に僕のマンガを連載するかどうか決めさせてもらうよ」

新聞を射命丸文から受け取った僕は素直に新聞を読むふりをして、その新聞に向かって<天国の扉>を発動させた。読めばわかるというのは便利だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...素直に認めたらしい露伴が顔を上げる。この新聞は作り手の誠意がこもっている。こういう類のものは露伴の大好物だ。

「なかなかいいじゃあないか。いいよ連載してやるよ」

「ふふふ、ありがとうございます。私の新聞、結構こだわってるんですよ? こだわりのわかる人ですね〜。作りがいがあるってものですよ」

文はまだ知らない。目の前の漫画家が天才であることを。

露伴はまだ知らない。文々。新聞が不定期発行であることを。

こうして『ピンクダークの少年』は文々。新聞にて再連載することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとつ聞きたいんだが射命丸文。この辺りで鈴の音が聞こえたんだか何か知らないか?」

聞き方を変えて文に聞いてみる。

「あやや。聞いちゃったんですね。鈴の音。ここ1週間あたりで突然幻想郷全体で聞こえるようになったらしいんですよ。決まって、やろうかやろうかと、何をくれるのかわからないけれど、聞いてくるらしいですね。もしかして露伴先生も鈴の音を聞いたんですか?」

「ああ、さっき聞いたぜ。君が話しかけてくる前まで聞こえていたんだ。僕はさっきの鈴の音の正体が知りたい。ただそれ以前に、僕には上白沢慧音との約束があるんだ。僕の家を探さなくちゃあ、いけないからね」

「家がないんですか? 露伴先生? もしかして外来人ですか?」

「ああ、そうだよ。昨日幻想入りして、今日の午後から家を上白沢慧音と、探す予定なんだ」

「良い家が見つかるといいですね。では私はここで。新居の方は慧音さんに聞いときますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上白沢慧音の家戻ると、上白沢慧音がゴゴゴゴゴと言う、擬音がにじみ出しそうな雰囲気で仁王立ちしていた。こいつは人と出会うときには絶対に仁王立ちをしなくちゃぁいけない呪いでもかかっているのか?

「露〜伴〜? どこへ行っていたんだい?」

「別に? 射命丸文とかいうガキに会って人里の中で奇妙な鈴の音を聞いたぐらいだが?」

「待て。射命丸か。そこだけならいいんだが鈴の音だと言ったな。詳しく聞かせてもらおう」

「いや、実のところ、僕もあんまり詳しい訳じゃあないんだ。ただ鈴の音を聞いただけさ。早く家を探しに行こうぜ」

「おい待て、話はまだ...」

露伴には説得はあまり意味を持たないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里の不動産関連で成功した、鳥井さんというところを訪れることになった。盲目だが、極めて聴覚が鋭く、10メートルほど先の蚊の羽音が聞こえたという。妻と夫、2人が共に40代を超えて生まれた娘の三人家族とのこと。娘は体が生まれつき弱く、結婚もしていないと言う。体調がいい時に授業をまとめてやっていたと慧音が言う。コイツいくつなんだ? 不動産王の鳥井氏ならば、いい物件を知っているかもしれない。...しかしこの鳥井邸、僕が住んでいた家ほどじゃあないがそこそこでかいな。

「鳥井さん? いるか? 上白沢慧音だ。昨日幻想入りした人物の家を探しているんだ。手伝って欲しい」

「主人はいませんよ。もう1週間も帰らないんです」

と老婆が出てきた。先程の発言から察するに鳥井さんの妻だろう。

「...鳥井さんがいない? どういうことだ? 説明してもらおう。人里の外に出て、妖怪に喰われたってことか?」

「分りません。でも主人はそんなことをするような人じゃありません。でも以前から一度でいいから、人里の外に行ってみたいと言っていましたが...まさかそんな本当にするだなんて...」

うううと、老婆は涙を流す。

鳥井さんに一体何があったんだ?




お仕事辛いよぅ。
でも次回投稿に向けて頑張る!
それじゃあ!


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幻想郷の奇妙な事件簿 第十話

やっぱヘブンズドアーってチートスタンドだよ。
今回は長めです。
感想と誤字脱字報告よろしくお願いします。


「仕方がない。鳥井さんを探すのを手伝ってやるよ。どーせ慧音くんが家に泊めてくれるし、仕事もあるから一ヶ月ぐらいお世話になってもいいだろ」

「露伴............奥さん、自治組織に訴えは出したのか?」

「はい...妖怪に喰われてしまっていては意味を成しませんが...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。少し早めの夕食と風呂をいただいた。タダ飯食わしてもらっといてなんだが、味付け薄くないか? 風呂もぬるいし。もしかして高血圧だったりして...? 上白沢慧音は紹介したい人物がいるといい、呼んでくると出て行った。

一方、露伴は険しい顔で昼間出会った鳥井妻の言葉をゆっくりと反芻していた。

(何か...不自然だ。しつこいほど妖怪と人里の外という単語が出てきたぞ。何か隠しているんじゃあないか? まあ考察材料があまりにも乏しいし、何より天国の扉(ヘブンズドアー)を使ってもいいんだが、八雲紫の言うように、ここは妖怪と人間、神々が住まう楽園。当然半妖とされるものもいるだろう。そいつがなんらかの能力を持っていないとも限らない。やはり人前で使うのはリスクが大きい。こいつでケンカなんて吹っかけられてみろ。先手必勝の天国の扉(ヘブンズドアー)は能力に大きくパワーが割かれていて、スタンド自体の破壊力は強い訳じゃあない)

地道にやるしかない。スタンドはいざというときの切り札だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな露伴。紹介しよう、私の友人藤原妹紅だ」

「こんばんわ〜。あんたがけーねの言ってた外来人の漫画家だね? よろしく頼むよ。うわぁ早死にしそうな顔。んでもってすごい偏屈そー」

「ああこちらこそよろしく。君の失礼な態度は大目に見るとして。君の名前で判断すると君の父親、藤原不比等だろ? 日本史の重要人物だ。確かかぐや姫にも出てきたな。いや、倉持皇子のモデルか?」

「いきなり質問攻めか。けーねが言ってた通りだな。確かに私の父親は藤原不比等だ。それに実際にかぐや姫ならいるぞ。この幻想郷に。何なら輝夜とは、殺し合いの仲だ」

何を言ってるんだ...? こいつイカレてるのか? それに殺し合いだって? このガキが? かぐや姫って空想のお話だろ? いやいやいやいやいやいや。

「信じられないって顔してるな。私は老いることも死ぬこともない程度の能力を持っているんだ。だから今日に至るまで、生き続けているんだ。いやいやほんとだってば」

...幻想郷では常識に囚われてはいけないと言うことを露伴はすっかり忘れていたのだった。

「ああ、ぜひ輝夜とやらに会ってみたいな。ぜひ君にも取材がしたい。都合をつけて何度でも取材に行きたい。楽しみだ」

なにを聞かれるんだか...妹紅は少し寒気を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このクソカスが。わしの娘の邪魔をしおって。まあ良い。焦らずにじっくりやっていけば良い。妖怪どもに支配された世界じゃ信頼できるのは金と娘だけじゃ。そうじゃろ?」

ひひひと笑う何者かの下衆な笑い声。

グググという音と共に起き上がる巨体。

その声は闇夜に消えていった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。朝食を三人で食べて鳥井さんの行方を調べるため会議をしていた。

「なあ露伴。鳥井さんがどこへ行ったかどうやって探すつもりだ?」

「地道に聞いて回るしかないだろう。幸いなことに幻想郷はかなり閉鎖された空間だ。あせらずとも、すぐに見つかるだろうさ」

まあそうだ。と慧音と妹紅はうなずく。

このなんの変哲もない行方不明事件。鳥井さんが高齢だったこともあり、徘徊でもしているんじゃないか? とノンキにいう2人。しかしと続けて露伴が言い始める。露伴は険しい顔をしていた。

「今回のおかしなポイントはふたつある。ひとつは行方不明の期間が長すぎることだ。ふつーに考えたら三日くらいで見つかってもおかしくない。こんなど田舎の閉鎖空間ならな。ふたつ目に鳥井さんが居なくなった時期と奇妙な鈴が鳴り始めたのがほぼ同時期と見ていいことだ。都合が良すぎる」

「露伴。君は鳥井さんが誘拐されたとでも言いたいのか?」

「あらゆる可能性は考慮しておくべきだぜ。特に正体の分からない異常なものに対してはな」

「なにか知ってるのか? 露伴?」

「あのばーさん。なにか隠してると思う。慧音ちゃん。君は人里の守護者だったな。そんなヤツが折角家に尋ねて来たんだ。ふつーお茶ぐらい出さないか?」

「向こうにも事情があるんだろう。お茶ぐらい...」

「家の中に入ってほしくないとか?」

「お前! 鳥井さんの奥さんを疑うのか!?」

慧音は声を荒げる。

「可能性さ。それに僕だってこんなことしたくない。だが人間は皆生まれ持った性というものがある。外の世界には女の手に異常なほど興奮を覚えるヤツがいたよ」

「...人を疑うのは気が進まないな。」

「いざとなったら、無力化は容易だ」

露伴はこの2人なら自身の秘密を話してもいいと思っていた。

「なに言ってんだおまえ? 無力化? 何か能力を持ってるのか? おまえ! 早く見せろよ!」

幼い子供の様に目を輝かせる妹紅。

「...君たちには教えてやってもいいぜ。特別にな。天国の扉(ヘブンズドアー)

「「なっ...!」」

2人の体が本になる。

「これは僕に備わった能力だ。カミサマってヤツが普段から頑張ってる僕にプレゼントしてくれたんだろうな。だから矢に選ばれた。八雲紫にもこの能力は話してるよ。もっとも口外すれば焼身自殺するように書き込んで命令しているけどね」

「相手を本にして命令させる程度の能力か。面白いな」

くっと噛みつきそうな顔で妹紅が言う。

「正確には、対象を本にして体験や記憶を読む能力だ。ページの余白に指示を書き込めば、その指示通りに行動しなければいけない。記憶改変。能力改変。行動制御。これが僕の能力だッ! 君たちにも八雲紫と同じ安全ロックをかけさせてもらうよ。『私は漫画家岸辺露伴の能力について口外しません。した場合には焼身自殺します。』」

両手に筆を持ち、同時に書き込んでいく露伴。人間離れした左右同時筆記。

「外の世界は物騒でね。個人の能力が知られることは死と同義なんだ。すまないね。...ああ妹紅くん。君には書き足しておこう。『岸辺露伴の書き込みの能力による死亡には、不死の能力は発動しない』っとこんなもんでいいだろ」

 

「この恨みは忘れないぞ。露伴」

妹紅は睨みを効かせる。があっけらかんとした様子で露伴は言う。

「君が僕の敵になるかもしれないだろ? だったら鎌くらいかけておくさ。当然だよ。そんなこともしないくらいここは平和か? さあ行こうか。あのばーさんの正体を暴きにな...」




次回は早く出す!
いつになるやら...まあ気ままに待っててくださいね。
アンケートもよろしくね。



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幻想郷の奇妙な事件簿 第十一話

暇がないのよぉ〜とか言いながら連日投稿?
ボク頑張る。
今回初の戦闘描写!&長め!
一応グロ注意!
(すごく疲れてます)
黄金の理解力だッ!
(後々編集しとく)

*追記5月7日 ネタが一つ潰れました。困りました。


「おーい。ばばあ、居たら返事しろよな」

「なんでございましょうか?」

突然の暴言にも冷静に対処する鳥井妻。

「おまえ何か隠してるな? おいおいおい隠さなくていいじゃあないか? 友達になろう。はいお友達。上がらせてもらうよ。...って広い家だねー。そーとーな金持ちじゃあないか」

「おっおい露伴! 許可もなしに上がるな!」

「そうでございます。そんな勝手に...」

急に現れて暴言を吐き、さらには勝手にズカズカ乗り込む露伴を非難する慧音。妹紅は気乗りしない。めんどくさい。つまらなさそー。お前嫌いだ。とどこかへ行った。恐らく甘味処だろう。あの砂糖中毒者め。

非難された露伴はケロリとして、

「許可を貰えばいいんだな? 天国の扉(ヘブンズドアー)! 書き込め! 『岸辺露伴が家に上がることを許可する。』」

「よろしいですよ。どうぞこちらへ」

「人のこころや信念を弄くり回すのはどうかと思うぞ。露伴聞いてるか?」

「君は好きな小説の続きが気にならないのか? ギモンはそのままにしておくのか? 僕はゼッッッタイ嫌だね。納得してからだ。それに教師ならギモンは解決しろって子供たちに教えてるだろ? まさか自分ができないなんて言わないよな? KE★I★NE? ん?」

グギギギギと歯軋りしながら露伴を睨む慧音。こっちが怒っているのに煽り返されては誰でもこうなろう。だが虚しき身長差。故に結果的として上目遣いしている様にしか露伴からは見えなかったが、慧音の纏うオーラが怒気を含んでいたため、ハッキリと意図は感じ取れた。揶揄うと面白いがやりすぎには注意が必要だ。後日の話だが露伴は強く思い知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて私が何か隠しておるとのことですね?」

客間に案内され、お茶をいただいた。このお茶うまいな。どこのお茶だろうか。自分でも飲みたい。紅茶のような深い味わいだがとてもあっさりしていて飲みやすい。

「私は違うと言っているんだが露伴が聞かなくてな。なにもないならもういいんだが...」

「...ださい」

「おい今なんつった? ださいって言った?」

「娘を救ってください...」

ビンゴォ!キタキタキタ!

「ほぉーら。ほらほらほら、ほらほらほらほらほらほらほらほらほら。どうだよ? どーなんだよ? 隠し事があったぞ。ん?」

「うぐぐ、そ、それで一体救うとは?」

露伴の煽りに睨みを返しつつ、鳥井妻へ尋ねる。

「ともかくこちらへ...」

そう言って娘の部屋へ案内される。謎の答えはすぐそこだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? お客様かしら。珍しいわね。お母様?」

「伴実や。お前に会いたいと言うお客様だよ。それじゃあ私はここで...」

伴実と呼ばれた女性は見た目三十代の女だ。どこか幽霊の知り合いに似ていた。体が弱いと言っていたように具合が悪そうにベットで寝ていた。

慧音が一歩前へ出る。

「久しぶりだな。伴実ちゃん。もう20年になるか。すっかり色気付いたな」

「あらあら。先生もお変わりなく...そちらのお方は?」

「僕は岸辺露伴。漫画家だ。出会って数秒だが早速やらせてもらうよ。天国の扉(ヘブンズドアー)

伴実は気絶すると同時に本へ変わっていく。

「おっおい! なにを...制御を誤ったか?」

「いやこれでいい。本来なら気絶するけど、君たちには手加減したんだ...。気絶でいい...」

どこか神妙な顔をして本になった伴実を読む。

「ほうほう、鳥井伴実32歳。許嫁等恋愛経験なし。スリーサイズ上より78、57、80。12歳3ヶ月の2週目の水曜日に初潮。それから「おおい! なに読んでるんだ!? 伴実ちゃんにもプライバシーってものが...っていうか普通に気持ち悪いぞ! そんなことするなんてサイテーだぞ!」

「あのなぁ〜そこまでいうことないだろ。これぐらい「ふつうじゃない! それ以上読むなら絶交だッ!

「わかったよ。真面目にやるよ」

露伴は康一くんを思い出した。約束すっぽかしちまったな。悪いことしちまった。

 

チロリ

 

ビクッと反応する慧音。

「おっ...おい露伴? 何か...出てないか?」

「はあ? 天国の扉(ヘブンズドアー)が発動してるんだ。こいつは何もできないよ」

「いやさっき!「疲れてるんだろ。ここに病院があるか知らないが、幻覚が見える様なら病院をおすすめするよ。本気(マジ)に」

ワイワイふざけていたテンションから一転。露伴が震える声で慧音を呼ぶ。

「おい。なんだよこれ。

 

夢を見た。私の体が化け物になってお父様を殺す夢。血濡れた大きな手。血の海に沈むお父様の頭と腕の一部分。視線に気付くと母の姿。嫌だ。来ないで!「よくやった。成功だ。もうすぐ意識もなくなろう。体の弱いおまえを救うにはこれしかなかったんだ。許せ」...い...いや...お母様..............助......

 

まじかよ」

 

「おいこれウソだろ? 露伴!」

涙目になりながら露伴に尋ねる慧音。

「...これは事実だ。天国の扉(ヘブンズドアー)にウソはつけない。体にきざまれた記憶だ。これは事実で...もう伴実さんは...」

おい、なんだこれは?鬱陶しいぞ。このぉ...

先程の伴実さんの声ではない。低い気味の悪い声だ。

天国の扉(ヘブンズドアー)が破られただと...!?

グキグキと関節が伸びる様な音。伴実さんがトカゲの様な化け物の姿に変貌していく。

「ばっ、ばかな。な、なんという精神力...ッ! そしてこの妖気と殺気! ケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ...やばいぞ! 慧音ちゃん!」

 

「うまく行ったかい? 伴実? とっととクソガキと漫画家を喰ってしまって...おや? スタンド使いと能力者かい。お喰い。うまくいけば能力が手に入る。それがあれば金になる。おまえには金がかかってる。楽をさせておくれよ。金で役人達を買収するのは相当な額がかかってるんだ」

「...奥さん? なにを言ってるんだ? タチの悪い冗談だ。そうだろ?」

冷ややかな目が慧音に向けられる。

「お喰い。伴実」

天国の扉(ヘブンズドアー)!」

奥さんと伴実さんだったトカゲは本になる。ギリギリで間に合ったようだ。

「んぐッ! 精神力がッ、抵抗が大きいッ! 2人とも異常な精神力だ。これはッ! 目的のためなら殺人をも厭わない、漆黒の意思! 維持だけで精一杯だ...!」

 

チリリーン

 

「ッ! 鈴だッ! こんな時に...! 攻撃が来るぞ!」

 

やろうか?

 

「こんな時に...! 慧音ちゃん!」

「わかってる!」

オレの遺産をやろうか? 化け物にやる金はない。おまえにやろうか?

 

「なんだ...? まさか...これは...鳥井さんか? 鳥井さんを本当に...殺し...た...?」

どさりと座り込み、呆然とぶつぶつとつぶやく慧音。

「書き込むぞ。伴実さんは『化け物の姿を保てない。30分間意識を失う。』ッ!」

どさりとトカゲ(伴実)は倒れる。次第に人型へと戻っていくのを見ながら老婆の方を見る。

「ばばあ。人を化け物にするなんてどうやったんだよ? 是非読みたいね」

軽口を叩く露伴だが、正直に言うとボロボロだった。息が上がっている。今だけは無防備だ。

老婆の目やオーラから漆黒の意思は消えて、惨めな姿になった。

「頼みの伴実がやられてしまってはなにもできん。完敗じゃ。化け物の血を食事に混ぜ、輸血に混ぜ少しずつ体を化け物に置き換えていったんじゃ。体を化け物に変えて伴実の精神をズタズタに破壊すれば完成じゃ。心優しい穏やかな子じゃからタイミングを見て自分で何人かを殺させて、食糧にしつつ、自責の念を無意識に溜めれば良い。どうせ化け物と人は相入れん。意識はない。最後の仕上げのために親族でも殺せばよかった。夫はその為の贄よ。30年以上ここまでやってきたのに...」

「へぇぇ〜! おっそろしいこと考えたなぁ。よくもまあそんなこと思いつくなあ。感心するよ」

感心するとは言ったが、露伴は老婆を軽蔑していた。

「こんな世界じゃ信頼できるのは金と己と血族だけじゃ。夫は信用ならん。金のためにここへ嫁いだがもうどうでもいい。断罪されよ。娘が目覚めたら言っておいておくれ。悪かったと。もっとも伴実も長くないが...」

そう言うと老婆は注射器を取り出して自らの手で血管に刺した。

「おい! なにをするだ!」

「急激な多量摂取は毒じゃ。化け物の血もこれが最後。伴実へこいつを注射すれば完全なる化け物にできたが、わしの勝手な都合で伴実を苦しめた。母親失格よ。伴実共々もうおしまいじゃ」

直後肉が溶け始め、白骨が残った。

あまりにも乏しい情報。化け物の血の入手ルートも聞けなかった。

その直後。

「あああ...」

伴実の体が溶け始めた。天国の扉(ヘブンズドアー)は死体には効力を持たない。つまりは...もう...。

「伴実さん! 天国の扉(ヘブンズドアー)! せめて最後に! 『魂は天国に行く』」

書き込むと同時に肉が溶けていく。

ドロドロになった肉が黒ずみ始め、肉が蒸発する様に消えてゆく。

 

「ん? 白骨が...!」

最後に残った骨は赤子ほどの大きさしかなかった。

「すでに赤子の時点で死んでいたんだな。そこから30年我が子を生かすため化け物の血を与え続けたのか...」

「...私には鳥井夫妻が仲のいいように見えたが...あれはウソだったのだろうか? 金のための演技だったのか? 伴実ちゃんは会う時はいつも元気そうだったのに...」

少し落ち着いたらしい慧音が座り込みながら露伴に問う。

「さあな。僕には関係ない話だ。化け物の本体はもしかしたらこのばばあだったのかもな。醜い本当の姿。こいつも半妖だったかもしれない。娘を生かしたい執念かもしれない。娘への不器用な愛の形だったかもしれない。まあ今となっては確かめようがないが...本来の計画なら伴実さんに鳥井氏を殺させ、財産を乗っ取り豪遊し、化け物として延命した伴実さんと一緒に暮らす...ってとこだろう」

 

やろうか? 慧音ちゃんにやろうか? オレの遺産をやろうか? なぁやろうか? やろうか?...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、鳥井氏の財産は命蓮寺に鳥井家の墓を作る費用を残して自治組織の運営費となった。

 

金が入った壺のすぐ近くに犠牲になったと思われる42名の白骨が地中から見つかった。どれも共同葬儀で弔うそうだ。その中には完全な無縁仏もあったらしい。彼らは幻想入りをして伴実さんに殺されったってとこだろう。

 

事件の顛末を聞いた人々は驚き困惑した。

あの鳥井家がそんなことに...騒動は大きくはなかったが波紋を呼んだ。

 

露伴はわからない。なぜ赤子のころに死んだ伴実さんを延命させる方法を知っていたのか。そして老婆のスタンド使い発言。くわえどこで化け物の血液を入手したのか。慧音にはあのばばあが正体では? と言ったがそうは思わない。

「娘を生かしたい執念か...。金への執念もあったのかもな。

もう今となってはわからないな。いつか伴実さんにもう一度会いたい。あのばばあにも話を聞きたい。僕が死んで天国に行ったら取材したい。何年かかるか...まあいいさ。動機なんてどうでもいい。僕はジャーナリストじゃあないからな」

 

漫画家、岸辺露伴の取材はまだまだ続く...




執念って恐ろしいですね。
何かを強く思うとその思いが独り歩きすることもあります。
どうかお気をつけてくださいね。
なんて柄じゃあないな。
誰か描写力をくれ。

次回から新部がはじまるよーん。
次回投稿未定!
頑張れ!ぺんたろう!
まだあなたのライフは残ってるわ!
アンケートもよろしくね。


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番外編
幻想郷の奇妙な事件簿 番外編


次回から新部って言ったな。すまん。ありゃウソだった。
色々補完します。
3日連続ゥ!
とりあえず今日は非番でいいってさ。


ここは地獄。閻魔大王によって死者の行方...天国か地獄かを決める場所。そこへある霊が来た。

四季映姫・ヤマザナドゥ。彼女が裁判長でたった今裁判が終わろうとしていた。

「さあ判決を言い渡しましょう。あなたはクロ。父親殺しの罪は重い。地獄行きです。鳥井伴実」

彼女の持つ白黒はっきりつける程度の能力は絶対的なモノである。つまり閻魔大王の判決は覆らない。

 

無効だ。彼女の天国行きは天国の名のもと決定されている。異論は認めない。

 

「な...なんの権限がある! 何者だッ! 姿を見せろ!」

突如響く何者かの声。周囲の者がざわつく。

「天国の名のもとにだ。私は天国の扉(ヘブンズドアー)

そう言うと伴実の顔や体が本のように捲れていき、その中から少年が出てくる。

「彼女の天国行きは決定されている。それは絶対なんだ。神から借りた力と神に匹敵する力ではどちらが強いか賢明な者ならわかるはずだ。そうだろう?」

「地獄の裁判は死者の行く末を決めるものですが? それを妨害したのですよ? どうなるかわかっているのですか?」

周囲の鬼達が矛先を少年に向ける。いつでも...殺れる。

「その上でさ。決定は決定さ。彼女の魂は天国行きだ」

それじゃ。と言って少年は伴実の魂と共に天国の方へ歩いて行く。

不思議とそれを止めるものはいない。全員がわかっていたのだ。これは絶対。この少年には勝てないのだと。

 

「小町、鳥井伴実になにがあったか調べてきなさい。私も仕事を片付け次第地上へ行きます」

少年が去り、周囲のものが仕事に戻りつつある中、映姫はため息を吐いて部下の名を呼び、指示する。

「えぇ〜。今日非番なのにぃ〜」

だるそうに小町と呼ばれた少女が言う。彼女は映姫の部下の死神である。

「上司命令です。今すぐ行きなさい」

「はいぃぃ...」

映姫が珍しく怒りを見せている。

今は...逆らわない方がいいだろう...。

小町は渋々地上へ出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって八雲邸。結界に触れた者がいると言って数日間家を開けていた紫が帰ってきた。

「紫様おかえりなさいませ。結界に触れた外来人は始末したのですか?」

「彼は受け入れたわ。そうそう藍。彼、面白いものを持っているわ。でも厄介でもあるわ」

八雲紫をもってして厄介とは...?

「彼の能力について口外すると、私は焼身自殺しなければならなくなったわ」

「なっ! 何故故そのような...?」

「能力が他者に知られるのが嫌いらしくってね。ひどいわぁ」

その外来人の能力に起因するものか。藍は声を振るわせる。

「そんな...。それってあんまりですよ! 呪いとかその手の類ですよ! 私解除するように言って来ます!」

そう言って藍は飛び出しっていった。

独り残った紫。藍を止めることもなく、ぽつりと独り言を漏らす。

「ふふ。見せて。精神の具現化を。傍観(スタンド)立ち向かう(スタンド)か。あなたを探していたの。いつかお誘いしようと思っていたけどまさか...ふふふ。自らの意思で超常の力を繰り、定められた運命を逃れる、神に抗う者。程度の能力と対を成す能力、幽波紋(スタンド)。神に与えられた力と神へ抗う力。仙人が目指す果て。魔法使いが目指した究極形態。さあ私の...」

不気味な紫の声だけが八雲邸に残った...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは人里。

露伴は狭いが家具付きの一軒家を運良く見つけ、即金で購入した。金は『ピンクダークの少年』の初回連載部が普段ならば余ってしまう量が印刷しても足りないほどに売れ、射命丸文があなたの取り分だと言って持ってきたものだ。今日は甘味処で射命丸文と打ち合わせをしていた。

露伴は茶と団子を。文はあんみつをそれぞれ食べながらまったりと打ち合わせだ。たまにはこういうのもいいかもしれないと露伴も珍しく思っていた。

「キミにも取材がしたいな。今いいかい?」

文への好奇心が抑え切れず、取材したいと言ってしまう。

「露っ露伴先生! 今だなんてそんな。なにも答えられないですよ」

「言葉はいらないよ。読ませてもらうからな」

こっそりとテーブルの下に天国の扉(ヘブンズドアー)を出してすでに射命丸文を読んでいた。視覚は同期させていて、じっくりと読んでいた。

 

「おい君。岸辺露伴だな?」

「だったらなんだ?サインでも欲しいか?」

顔を上げずに(No Lookで)露伴は答える。

「鳥井伴実を知っているか? 裁判の結果を覆されて映姫様がお怒りなんだ」

「私もだ。紫様にかけた呪いを解け!」

別の声が聞こえてくる。仕方なく顔を上げると妙な格好をした赤髪の女と狐みたいなヤツがいた。なんだコイツら? コスプレ大会の帰り道か?

「なあ文くんキミの知り合いか?...あれ? いない...?」

そう! 射命丸文は死神の小野塚小町が現れた時点ではまだいたが、あのすきま妖怪の式が来たとなれば話は別だった。

故にすでに安全圏まで逃走していたのだ!

(困りましたねぇ。露伴先生の『ピンクダークの少年』は傑作だったのに。まあ何があったか知らないですけど、あんなところにいたら命がいくつあっても足りませんよね〜。逃げるが勝ちってヤツですよ。こりゃ。頑張ってくださいね♪露伴センセッ!)

射命丸文は腹黒かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど、本当心が痛むんだけど、ペンで書き込んじゃったから天国の扉(ヘブンズドアー)は効力を永遠に発動するし、何より魂自体に書き込んだものは解除できない。もしどうしてもってなら、書き込んだページを破らなきゃいけない。でもそれってそのページに書かれた記憶を完全に失うってことになる」

「どうにかならんのか!?」

藍が声を荒げ、小町が睨む。

露伴は嫌々ながら口を開く。...策はスデに張り終わっている。

「なるなら解決策を言うだろぉ!? 大体なんなんだよ。この岸辺露伴の時間を潰してまでやらなきゃいけない問題か? 1人や2人うっかり天国に行っちゃいました位よくあることなんじゃあないか? それに幻想郷の管理人が僕のことを知ってりゃいいだろ。そこの狐! お前が僕の能力の詳細を知る必要性はないね」

じゃあと言って店を出て行く露伴。

店から少し離れたところでぽつりと言う。

天国の扉(ヘブンズドアー)。『僕が言ったことを全てまともと思い込む。一切の違和感を抱かない』案外ちょろい奴らだったな。ついでに少し読んだが、中々にやばい奴らだったようだ。死神に九尾か」

まともにやり合ったら即死だな。と思いつつ、フフと笑い、露伴は生活用品を買いに出かけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...小町が地上でサボっているのが見つかり、映姫に13時間説教を喰らったのは言うまでもなかった...




小町かわいそうに。
これだけはウソつかない!
コレが終わったら本当に新部だよ!
アンケートの結果、結構辛辣だよぅ。
毎秒投稿ってwww

できるわけがないッ!
できるわけがないッ!
できるわけがないッ!
できるわけがないッ!

ハッ! できるぞ!(大嘘。ムリ)

アンケートはまだ受け付けてますよー!
も一個アンケート増やしたから見といてね。


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味噌
幻想郷の奇妙な事件簿 第十二話


エヴァにぺんぺんっていますよね。
私あれすごい好きなんですよね。
どうでもいいって?
はい投稿です。
めっちゃ仕事きつかった。
投稿頻度がしばらくしたら急激に落ちるけど、書いてるから!
本当だから! 
失踪しないから! 
TOEICの勉強だから!


ある味噌にまつわる話をしよう。味噌ってあの味噌だ。わかってると思うが。数々の奇妙な話を聞いてきたが、本当に不気味なものってのはもしかすると人間かもしれないと思った事件だ。さあ始めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、露伴は文と茶屋で打ち合わせをした帰り道だった。お前あの時どうしたんだ。なんで守ってくれなかったんだ。やばいヤツらに殺されかけたんだぞ。不定期発行の新聞なんて聞いてない。いい加減にしろ。と文句を言い、僕のマンガだけでもいいから毎週発行しろと要望したのだった。一週間もネタを溜めたら古くなっちまうのに。やっぱり烏は鳥だな。バカめ。

帰りの道中、日は傾き、帰りを急ぐ多くの人間とすれ違う。その中に紛れ、多くの人外と思われる者達を見るが人里の者達が気にする様子はない。やはりここは安全なのだ。ん? アイツは...この間の狐か。あれ...? なんで...油揚げ...爆買いしてるんだ...?????? 伝承って...本当(マジ)かよ...。

「さて...何が足りないんだっけ?」

降りかかる疑問を無理矢理払い、目的を思い出す。狐が油揚げが好きとは限らない。確か以前読んだ通りなら、アイツは紫の従者。きつねうどんかいなり寿司でも作るんだろう。そうだそうだ。きっとそうだ。

露伴は一人暮らしをしていたが、家事の類はあまり上手いとは言えない。今日は何食べようか。面倒だし外食でいいか。そんな事を考えている時、声をかけられる。

 

「味噌...いりません? うちの味噌評判いいんですよ?」

「...いや。いらない。やめとくよ。味噌まだあるしいらない。それに味噌汁ぐらいしか作れない」

徳田味噌(仮名。実在するかもしれないので)と言う中堅規模の店の店主のジジイが話しかけてくる。見た目だけで判断するのは本当によく無いが、このジジイは背が低く、右目が見えていないのか眼帯の代わりに包帯を巻いている。なんというかそのぉ〜...チビなフランケンシュタイン? みたいに見えるボロい服。はっきり言うと。

従業員を雇わずたった1人で経営しているらしい。業績はそこそこ。ここ最近、急激に味が良くなったと評判だ。ただ、正直言って味噌は足りてるし料理しないってば。

「残念だな。絶対後悔するのに」

いや本当にいらないって言ってるだろ。しつこいヤツだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽く人里を散策し、帰宅の道を急ぐ途中、慧音とクソッタレの巫女と魔女みたいなコスプレした女が井戸端で話をしていた。これが井戸端会議か。初めて見た。こんなの。うん。

「ん。ウワサをすれば露伴じゃないか。外に出て取材か?」

「まあそんなところだな。せっかく来たんだし、取材してマンガを描かなきゃもったいない」

「お前もしかして『ピンクダークの少年』の作者の岸辺露伴かよ! 聞いてた通り偏屈そうだな。んでもって早死にしそうな面だ! サインしてくれよ! ここでいいんだぜ」

と持っていた箒を差し出し、魔女(仮称)がサインをねだる。とりあえずムカついたのでじゃんけんで勝ったらサインしてやると言って煽り、じゃんけんグーだッッ!

 

グキッ!

 

全力で顔面を殴りつけてやった。鼻血を出してぶっ倒れる。大人を舐めるなよ。クソガキ。

「ちょっと落ち着きなさいよ! 10:0で魔理沙が悪いけどやりすぎよ! サインなんてそんなの話の後にしましょう。魔理沙、立てる?」

「...僕に話ってなんだよ。クソ巫女。なんかやらかしたか? 特に覚えはないんだが」

「うむ。君の口の悪さと霊夢への暴言と魔理沙への暴力はひとまず置いといてだ。実際魔理沙が10:0で悪い。擁護しようと思わん。いいお灸だ。ここで立ち話もなんだ。私の家でよければそこで話そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー慧音の家ー

上白沢慧音の家はよく整理された家だ。露伴も作業場は整理しているが、生活スペースはさほど気にしていない。布団も上げずにすぐ作業に戻るくらいだからだ。何故か妹紅もいる。コイツも『お話』に参加するのか? めんどくさいことになりそうな予感がするぅ...。

「さて露伴。先日の鳥井さんの件だが...お前も能力を持っていたよな。何故伴実ちゃんに天国に行くなんて書き込んだんだ? 後は...あの...なんだったっけ...えと...そのぉ...」

「スタンドのことか? んまあ理由か...幽霊の知り合いに似てた。そいつがあんまりにもツイてないんで、無意識に...か?」

「理由はわかった。では本題だ。スタンドって言ったな。あれは一体なんなんだ? いやそれ以前にお前は幻想郷の敵か?」

一斉に露伴を睨む4人。1人は手ぬぐいで赤く腫れた鼻を抑えていたが。...見えてきたぞ。コイツらは僕が敵かどうかここで判断するつもりみたいだ。このガキ達が? 笑っちゃうね。

「あのなぁ。僕はあの胡散臭い八雲紫に連れてこられたんだ。それも結界だかの重要部の博麗神社に『いたずら』してな。管理人がわざわざ許可して連れてきたんだぜ。もし敵だったら結界内部に入れたりなんかふつーするか?」

僕ならしないね。と言うと巫女が口を開く。

「紫が胡散臭いのは同感ね。それにアンタが言うことも筋も通ってる。ただねぇ...アンタの能力が危険じゃないかと判断したのよ。鳥井さんの事件を聞いてね。聞けば事件の中心にいたらしいじゃない。生身の漫画家があの場にいて無傷なんて信じれないのよ。慧音は腰を抜かしてチビったって言うし」

「おい! チビってなんかないぞ! いい加減なこと言うな!」

慧音が顔を真っ赤にしながら巫女に詰め寄る。やっぱりこいつは根が真面目な分からかうと面白いんだろうな。

 

天国の扉(ヘブンズドアー)は依然発動中だ。ってことは事件の顛末を聞いて僕が何かしらの能力を持っていると判断した訳だな。素晴らしい発想力だ。称賛するね。

隠し通す意味はないのかもしれない。能力さえ明かさなきゃ。

「...スタンド。それは自分の意思で操る超常の力。スタンドと僕は常に繋がっている。どちらかが傷付けば、呼応して片側も損傷する。僕の能力の詳細は明かさないが、姿は見せてやるよ」

そう言って筆と広告の裏紙を借りて、『ピンクダークの少年』の主人公を描いていく。

「おい待てよ。これってマンガの主人公だろ! ふざけてんのか! うっ、いてて...」

魔女(仮称)がそう叫び痛がる。

「いいや。これが僕のスタンド像だ。スタンドは人にもよるが明確な像を持っている。僕のスタンドはこんな形だ」

「ふーん。じゃあアンタの能力は、スタンドを操る程度の能力ってところね」

クソ巫女が言い、妹紅が口を開く。

「コイツに安全ロックだかをかけられて大変だったんだよ。能力を話せば私も慧音も死んじまうからな。蓬莱の薬を超える力だ」

「やっと止まったぜ。しかしなぁ女の子に顔面グーパンなんて普通するかよ? 敵に回したくねぇヤツだぜ。なあ妹紅、蓬莱の薬の効果範囲はお前の死と怪我だろ? 露伴の能力による死亡は復活対象外にされたってことかよ?」

うわぁぁと一斉に少女達がドン引きする。今まで他人の能力に干渉する能力者はほぼいなかったし積極的に使用することもなかったから当然の反応だ。それに加えて月の頭脳と言われたあの八意永琳が作成して薬が容易く破られたとなれば話も変わってくる。

「もうこれでいいだろ? 特段危険性はないし。取材に行きたいんだ。胡散臭いアイツが吸血鬼がここにいるって言うし会ってみたいんだよ。んまあもう遅いし明日にするけど」

「...そうね。まあ問題を起こせばぶちのめせば良いだけだし」

「じゃあ店が閉まらないうちに味噌買って帰るとするんだぜ。露伴! この恨み忘れないからな!」

「私も行くわ。ちょうど切らしてたのよね」

ん?

「なぁ。その味噌ってよォ〜もしかして徳田味噌か? ジジイに味噌いらないかって聞かれて断ったんだけどよォ」

「えぇぇッ!? あそこの味噌ものすごく美味しいのよ!? なんで買わなかったのよ!」

「そんなに美味いのか? 大体僕は料理しないんだから味噌も足りてるし要らないって言ったんだよ」

「あそこの味噌は極上だぜ! おまえ人生の半分以上後悔するぞ!」

「君より伊達に長く生きてないよ。そんなことおまえに言われる筋合いはないね」

「冥界の...いや西行寺幽々子と言えばいいか。彼女もものすごく好きらしくて、妖夢に爆買いさせてたよな。毎食味噌汁にして飲みたい。食べたいって」

美食家として知られる西行寺幽々子がひどく好む程の味噌だと言う少女達。

 

そんなに美味い味噌があるっていうのか...?

どうしても『あれ』を思い出してしまう...

興味が湧いてきたぞ。

 

「買ってみるか。その味噌とやらを」




次回マジにいつになるかわかんねぇわ。

露伴先生の口調ってどんな感じだったっけ?
ジョジョ語は難しい。
動かないシリーズの底知れない不気味さが再現できましぇん...。

不安の種とか知ってる人いるかな。
あーゆーホラー系が書きたい。(無理だけど)
しばらく書くのに苦労するかも知れないわぁ。

アンケート結果は活動報告にするわ。

...仕事...行きたない...もうええやろ...?
課長...頼むぜ...もう嫌だ...。

Twitter始めました。マイページのとこにURL貼ってるからそっからお願いします。生存報告もそっちの方がいいかなとか思ってたりする。んまあ一日二、三回しか呟かないけど。


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幻想郷の奇妙な事件簿 第十三話

次回から月二投稿出来る様ならしてみようかと。
え?お前にゃ無理だって?
仕事がひと段落したら、頑張る。ハズ


「とにかく美味いんだぜ。ここの味噌」

「そうよ。食べないなんて損よ」

「それを決めるのは君達じゃあないね。この僕だ」

 

慧音と妹紅に是非行ってこいと強く言われ、さらに一緒に行ってやると巫女と魔女(仮称)がお節介を焼きやがった。1人で行けるってば。邪魔だよ。いや本当に。うざいってば。

承太郎さんの口癖を言わせてもらうよ。いいよな?

「...やれやれだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら来た。知ってたよ」

このジジイ、なんかムカつくな。『知ってた』だって? バカにしてる。

「そのご自慢の味噌とやらを食わせてもらおうか。料金以下の不味い物に金は払わないけどな」

「それって食い逃げって言うんだぜ」

「あんたが言っても説得力ないわよ。死ぬまで借りてるんでしょ? パチュリーがすごい怒ってたわよ。『細菌と魔導』がないって」

...外野がうるさい。

「はい、これが味噌ね。おすすめは味噌汁だけど...肉味噌炒めにしてもいいし、鍋にしてもいいんじゃないかな。まあ好きに食ったら(喰ったら)いいと思うよ。お代は...満足したらでいいよ」

ってことで買わされた訳だ。まあ実際の所、興味があるんだ。味噌ってそんな美味いもんだったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしここで問題が発生する。

「...実は料理得意じゃあないんだ。どうしよう?」

料理ができない露伴は普段は外食か出前で済ませていた。つまり味噌があっても凝ったものは作れないんだ。

「ひとつアテがあるぜ。白玉楼だ! 連れってってやるぜ。この霧雨魔理沙様がな! 妖夢も幽々子も『ピンクダークの少年』が好きだって言うし、連れってってもいいだろ。妖夢にその味噌渡して作ってもらうといいぜ」

「よーするにたかるってことか。それとちょおっと待てよ。そこって話に聞いた冥界ってとこか? ってことははよぉ〜ごくごく普通の人間である僕はそもそも辿り着けるのか? 一回死ななきゃいけないとかなら絶対行かない」

「あら、なら私が連れて行くわ」

ぬるりと現れた女。聞き覚えのある胡散臭い声。八雲紫だ。

「幽々子は私の親友だし...。私も一緒に行くならいいでしょう? それにその味噌一度食べてみたかったのよ」

ふふふと笑う胡散臭いヤツ。はっきり言わせてもらうとこいつのことは信用していない。勝手に可視と不可視の境目を弄くり回した前科があるし何か企んでると思う。

「お前さんのことは信用してないけど、冥界ってとこに連れってってくれるなら早くしろ。お前の話なんて興味ないんだ。もう読んじまったからな。すっかり日が落ちちまったじゃあないか。それにとっとと帰ってマンガを描かなきゃいけないんだ。用もなくおちょくりに来たなら帰れ」

「えーん。いきなり暴言吐かないでよ露伴。私だって好きでこんな雰囲気ばら撒いてないわよ! それに連れっていってあげるっていうのは本当よ」

柄にもない様な嘘泣き。はっきり言って気持ち悪い。お前そんなキャラじゃあないだろぉ?

「...嘘だね。君は嘘をついてる。天国の扉(ヘブンズドアー)。今心の扉は開かれる。...バカらしい。自分から胡散臭い雰囲気をばら撒くことを楽しんでるじゃあないか。おっ! 『博麗神社に行くときはパンティーを履かずに霊夢達に会うのがスリルがあって楽しい』...こんなヤツが賢者か。妖怪の賢者なんて肩書きを捨てて胡散臭いド変態性欲持て余しBBAに変えた方がよっぽどまともに見えるよ。お前マヌケ♡」

自身の秘密を暴かれた怒りと恥から顔を真っ赤にして露伴を睨む紫。しかし動くことはできない。天国の扉(ヘブンズドアー)で拘束されているからだ。

「紫。マジで軽蔑するぜ。変態。しかし...こいつが露伴の能力か! なんだ? すごいな!」

「...へぇ。激ヤバ性癖じゃない。しかし、紫の体が本の様に...すごい能力ね。これ露伴の能力、スタンド...」

「あっ君らも安全ロックな。どこから僕の情報が漏れるかわからない。自分を守る手段だ。許してくれよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幽々子さーん? ちょっとぉ〜4・2・0」

ズカズカと白玉楼へ入っていく露伴、紫、霊夢、魔理沙。

スキマで門前に出、幽々子の名を呼びつつ不法侵入する。一般的に家主の許可なく敷地へ入るのは犯罪である。...良い子はマネしちゃダメよ!

「はーい。どなたかしら。あらあら紫じゃない。霊夢に魔理沙も...そちらは?」

「彼は岸辺露伴。『ピンクダークの少年』の作者よ」

どもと軽くお辞儀をし、味噌を突き出す。

「この味噌を料理して欲しい。なにせ僕は料理が得意じゃあないんだ。ここの庭師にご飯も作らせてるんだろ? まだ晩御飯食べてないってならついでにやっとくれ」

「じゃあ今日は六人で食事かしら。宴会でもないのに...なんだか久しぶりな気がするわ」

妖夢、ちょっといいかしらと名を呼び、もう四人分追加でと指示する。

その間に食卓へ案内される。

「紫? なんだか落ち着かないわね? どうかしたの?」

「あーこのド変態性y「なんでもないわよー。

会話は紫の威圧で遮られてしまった。

そうこうしている間に料理が運ばれてくる。

「そこの銀髪さん? お名前は?」

「...妖夢。魂魄妖夢ですが」

「この味噌、めっちゃうまいだってな。どう思う?」

「どうって...美味しいですね。なんです? 邪魔したいんですか?」

そう言って仕事へ戻っていく。

「おーい露伴? どうしたんだよ? 腹が減って死にそうだぜ。もうとっくに出来てんだ。早く食おうぜ」

「そうだな。食おう」

「「「「「「いただきます」」」」」」

一斉に食事を始めた六人。

露伴は他の五人の動向を観察していた。

(幽々子さんは味噌汁から。巫女は漬物。魔女(仮称)は炊き込みご飯。BBAも漬物。妖夢も味噌汁か...)

「うん! 今日のお味噌も美味しいわぁ。今日はなんだかあっさりしてる感じ。遅めの夕食に合うっていうかぁ、ほんわかするわ」

「ほんとだぜ。やっぱり味噌は徳田味噌に限るな。里一、いや世界一だ!」

疑問に思いつつ、露伴は味噌汁を啜る。

「うん...うまい。悔しいがこれは芸術レベルだ。うまい」

「ヘヘヘ。あの偏屈な露伴が素直にうまいだってよ! やっぱりうまいんだ」

魔女(仮称)が自分の家でもないのに自慢気に話す。

「あの不気味なジジイ、一体どういう方法で味噌を作ってるんだ? あっさりしている様でコクが深い。味噌の匂いが鼻腔を貫くたびに喜びを訴える。ぜひぜひ取材がしたい」




誤字報告よろしくお願いします。
あーあ。仕事行きたくねー。って10年以上言ってる。
眠い。


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幻想郷の奇妙な事件簿 第十四話

ここんとこの前書きにあらすじ載せてほしいよって人います?
自分としてはどっちでもいいんだけど。


翌日、露伴は徳田味噌へと来ていた。

(あのジジイは芸術家として尊敬に値するッ! 僕ほどじゃあないが素晴らしい!)

「どうだった? やっぱり美味しかったでしょ。そりゃそうだ。この特殊な作り方で作ると美味しいんだ」

「...その作り方、見せてもらってもいいか?」

「ちょっと無理かな。なんでって少しばかり危険なものでね」

味噌作りが危険ンンンン? そうは思えない。

「何か特注の機械を使うとか?」

「無理は無理なんだなぁ。いくら君が里一の漫画家でもねぇ」

そうも言われれば仕方ない。企業秘密なのだろう。小さい集落である人里とはいえ、味噌屋はいくつかある。露伴を触媒に他店に味噌の情報がバレるのは好ましくないのだろう。

「そうかい...残念だ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

露伴は帰宅中に慧音と出会った。

「どうだった? あそこの味噌はうまいだろう」

「ああ芸術だ。はっきり言える。うまい」

「そうだろう。そうだろう。幻想郷の生活も悪くないだろう? 外の世界は...はいきがす? だかで空が白っぽく見えるらしいじゃないか。ここは空が青い。人も優しいものばかりだ」

「...忠告しといてやる。これから僕は岸辺露伴としてではなく能力者として言うぞ。その優しさ、甘さが伴実さんを殺したんじゃあないか? 別の選択をした結末はどうなったかわからないし知りたくないが...。君は優しすぎる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優しすぎる...か。ハハハ。なにを言っているんだ私は。十分人里の守護者として働いているじゃないか」

露伴と別れ、帰宅した慧音は露伴との会話を思い出していた。時刻は午後十時をとっくにまわり、腹も鳴っている。

 

「優しすぎる」

 

これほど慧音を傷つける言葉はあるだろうか。人里のために時に危険を犯し、みんなを守って来た。

「...伴実ちゃん...どうするのが正解だったんだ...?」

自問しつつ、軽い食事をと思い、小さな鍋を取り出し昨日の残りの炊き込みご飯を具なしの味噌汁へ突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた翌日。

「なあなあなあなあジジイ。本当にダメェ?」

「あのねぇ...」

露伴はしつこいのだ。

「ダメはダメなの。Do you understand? Can you speak English?」

ネイティブ顔負けの発音で露伴に英語で話す店主。

「じゃあ見なくていい。どう作るか口頭で伝えてくれよ。それならいいだろ?」

「でも断る」

「そこまで自分のとこの味噌の情報の流出が怖いのか? 頼むよ。この僕がここまでやってるんだぜ?」

「なにもされた覚えはないんだけどなぁ...」

何度でも言おう。露伴はしつこいのだ。

「どうしても知りたいんだ。なあ頼むよ、僕はアンタの味噌を芸術品だと思ってるんだ。この手段は使いたくないんだ」

「...なにするつもり?」

「...敬意を払え。か...。まあ...もういいか。天国の扉(ヘブンズドアー)

「ダメなんだな」

一言そう老人が言うとちょうど天国の扉(ヘブンズドアー)の射程距離外に移動した。

「このくらいで射程距離外だね。そっかぁ...君が...」

どこか悲しげな顔をして老人は

「いいよ。見せてあげる。味噌作りの作業現場」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにやってんだけーねのやつ。10時にここで待ち合わせって言ったのに」

約束を破られてかれこれ30分も待っている妹紅は底知れない気味の悪さを感じていた。

真面目な慧音がこんなに遅れるなんて。

妹紅の足は慧音の家へ向かっていた。

「けーね? どうしたんだ? なにやってんだ!?

上白沢慧音の家の扉は開いており、中が見えていた。そこからは壁に寄りかかり、手首を包丁で切ったのだろう。血濡れた包丁を握って倒れている友の姿が見える。

「おい! しっかりしろ! 慧音! 何があったんだ!?」

「...違う。体が熱いんだ。こうすると涼しいんだ。血で冷えていいぞ。妹紅もやってみろ?」

トロリとした目で妹紅に訴える慧音。その様は動く屍の様。

「う...ウワァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これなーんだ?」

「桶に見えるけど。なにこれ?」

「Exactly! 桶だよ」

作業風景を見せてくれると言い、倉へ案内された...がずっとこの調子だ。露伴のイライラはもう限界だった。

「ジジイ...。作業現場を見せてくれるんじゃあなかったのか? こんなくだらないクイズが味噌作りに重要なのか?」

「人間とその他の動物の明確な差ってなんだろうか」

「...なに?」

「思うに感情の有無だと思ってる。味噌って素直だ。温度管理をしなくちゃいけない。夏に味噌を作ろうと思ったら相当苦労するんだ。35°を超えてるのにコタツを使うんだよ。手間がかかるねぇ。幼子のように愛おしい」

どういう性癖? 否定するつもりはないが...。

「なにが言いたいんだ?」

思考を停止してクリアな頭で考えよう! ...わっかんないや!(CV:サーバル)

「だからぁ...実際に幼子なんだよ。この味噌」

この味噌高かったんだ〜みたいな異様なテンションで話す老人。ハッと我にかえる露伴。

「鳥井さんがねぇ...いいこと教えてくれたんだ。曰くヒトの脳は実際には数%しか稼働してないんだってさ(諸説アリ。ソースはどこだったか忘れた。)。だからぁ妖怪の血液を使ったんだ。人間の脳を覚醒させるんだってさ。でも注射嫌いでさぁ...味噌汁に混ぜたんだ。ビビったね。いいアイデアだと思ったよ。血液は鳥井さんが始末に困るっていうからもらってきて、幼子は幻想入りしてくる子供を使えば誰も迷惑しない。塩漬けにして魚醬ならぬ人醤! まだまだ製品段階じゃないから個人で食べてるよ。ゆっくり大豆と一緒に煮るんだぁぁぁぁぁ...泣き叫ぶ悲鳴が心地いいぃぃぃ。あの感覚は最高だよ」

恍惚の表情を浮かべ、露伴に狂った行動を暴露する。

「以前...人肉は豚肉か羊肉に近い味だと聞いたんだが...あの味噌はそんな味はしなかった。それどころかとんでもなくうまい味噌じゃあないか? 一体どういう...?」

「罪の味は蜜の味ってね♪ ああそうだ。なんかあの味噌、面白い特徴があってさぁなにかを思い詰めたりしてる人が食べると死にたくなったり、気が狂ったりするらしいんだよねぇ。どうしてだろ? 鳥居家も食べてたけどもしかして...」

ニタニタと笑い出した老人。どんな理由があれ死者を冒涜するのは許せなかった。

天国の(ヘブンズ)「ダメだってば」

またもやヒラリと射程距離外に逃げる老人。

「味噌作りの過程で幼子を使う。仕上げに血を1kgあたり100CCほど混ぜれば完成! いい塩加減になるんだよ? この話をしても誰も理解してくれないんだ。君もそうでしょ? スタンド使い(運命に抗う者)さん。理解されない超常の力。この幻想郷において能力者は珍しくないんだけど...『程度の能力』はスタンドと似ているようで非なるものだ。『程度の能力』は何らかの加護や魔法の勉強なんかで発現するよ。なんでこんなこと知ってるのかって? さぁてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『程度の能力』と『スタンド』

よく似たものだが実は少し違う。『スタンド』は精神の具現化。『程度の能力』は人や妖怪などの外側に付随するものである。中と外。大きく異なる点である。例としてスタンドは奪われてしまうと動けなくなることもしばしばだ。『程度の能力』は使えなくたっても大した弊害はない。幻想郷における多くの能力者は稗田阿求という転生を繰り返す、能力者によって幻想郷縁起に書き記されている。対して『スタンド』には記録者はいない。ここも異なる点である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジジイ,,,お前はいったい何者なんだ?」

「,,,僕は...キミだよ。君の中に存在する狂気さ。いつも外に出ることを望んでる。普段は理性(ロゴス)によって抑えられている」

「...」

沈黙する露伴。

「へへへへへへへへへ。わかってもらおうとは思わないよ。他人を本当に理解することは決してできない。傲慢なんだよ。君のスタンドは」

「おい! 露伴!? いるか!? ここにいるか!」

徳田味噌の倉に響く聞き覚えのある声。藤原妹紅の声だ。

「なんだよそんなに慌てて。お前のことよりこのジジイの方がよっぽど興味深いんだ。お呼びじゃない...ってその背中のソレどうしたんだよ。その二日酔いした酔っ払いみたいなの」

「酔っぱらって自殺なんてするか! 早く! 気が狂ってんだ! お前ならなんとかできるだろ!」

? なにを...いってるんだ...????

「お前さんか? それとも背中のソイツか?」

「け...っー...゛......゛ねええっをぉ...ぉったす゛......゛けええっ! てぇ...く...! れ゛ぇぇえ」

泣き叫びながら露伴に懇願する妹紅。うまく聞き取れなかったが慧音と言った様な気がする。

「おい...ソレ慧音ちゃんかよ。なんか血の気がないな」

「手.........゛首............! をぉぉお掻.........っ............! 切...............っ...! て......ぇ゛っ! 自...っ! 殺............しぃ............よ......う...と゛しぃ゛た......ぁぁんんだ......あ......っよ...っ! ぉ............゛っ」

,,,ひとまず妹紅を天国の扉(ヘブンズドアー)で黙らせた露伴は慧音に天国の扉(ヘブンズドアー)を向け、発動する。

「んんんんん? 慧音ちゃんの記述の上に上書きしたみたいな...全く異なる字が書かれてる」

慧音の文字は辞書のように丁寧な字だがこっちは...

「なんだか汚くて拙い字だな。しかも全部ひらがな。まるでガキ...おい」

いやな汗が露伴の背中に流れ、頬を伝う汗が地に落ちる。

「ジジイ...お前さんとこの味噌を何か思いつめた人間が食べると死にたくなるっていったな」

「そぉだぁよぉ? どぉしぃたぁのぉ?」

「お前...隠してることがあるだろ。自殺したくなるんじゃあない。死に導かれる。違うか?」

慧音に書かれた文字は

 

『しにたくない?』

『らくになるよ』

『くるしいだけだよ』

『いっしょにいこ』

 

書き込まれた文字...。

「お前、僕と...」

「似た者同士だよ。君もいつかこうなるんだよ。はははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、徳田味噌で火事が発生した。

焼け跡から黒焦げになった店主が見つかり、人々は『あの味噌が食べられなくなった』と悲しんだ。

 

「気が狂う味噌。死にたくなる味噌。なぜ僕はあれを芸術品だと誤認したんだろうか」

死を題材にした作品は古来よりある。例えばメメントモリ。死という題材ながら根強い人気のあるテーマだ。

「死だけが全てを解放してくれる...水木しげる作の短編にもあったようにあらゆる苦しみから解放を目指すならそれが一番なんだろう。材料に使われた子供たちからのメッセージだったのだろうか。苦しみながら死んでいった...だが...あのジジイ、僕と似た者同士だって言ってたな。僕もそうなっちまうって? バカにしやがって」

他人の心の奥底に忍び込み無理やりこじ開ける天国の扉(ヘブンズドアー)。この力はどう使うのが正解か。未だ正解は見えない。

「死は美しい...か。僕にとって最高に美しいのは僕のマンガを読む読者だけだ」

立ち上がり、就寝の準備を始めた露伴。

「とはいえ、あのジジイは悪魔だ。人の心に住み着く狂気の悪魔。そいつを表に出しちまったんだ。芸術家でも何でもない。ただの狂気だ。もし、僕があの味噌を食べ続けていたら...? もし慧音ちゃんに『上書きされた命令を全て無効化する』という指示が効かなかったら? 考えただけで恐ろしい」




音mad作ってみようと思ってます。
東方ロストワードの紹介動画にポンポロロっていう音楽だけの動画があるんでソイツと露伴先生をアニメとOVAから切り抜いて貼り付けようと思ってます。
一体作成に何か月かかるやら...
作成でき次第、Twitterにリンク貼ります。

♪次回投稿は〜未定なの〜仕事が〜この時期で〜忙しいの〜。
月二投稿?すまん。ありゃウソだ。
仕事がひと段落したら、東方不動語の再編集版を書きます。具体的に言うと一話完結型に編集します。んで再編集に当たって、いくらか独自シーン+尺の都合上で大幅に変わります。大筋は変わらない予定です。多分そっちのほうが読みやすいハズ。
いつになるかわからないけどね。
まあ気長に待っててくださいね。

次回は予定上風見幽香さんにひどい目にあってもらう予定です。乞うご期待?


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妖しい花
幻想郷の奇妙な事件簿 第十五話


ある花によって狂った幻想郷の住民たち。露伴は何を見るのか。










え? なんで更新こんなに遅れたのって? 忙しかったんだよ! 寝る直前まで書いてた努力(?)の結晶だ。伝わってください...。短めですがね。アンケートの結果で雑談とあらすじとほぼ同数だったので両方書きます。あ、あとTwitterやってるんでそっちのほうでもくだらないアレコレとかやってるんでよかったら。青色になってる「ぺんたろう」のとこクリックしたら私の詳細が出るんで、そこのちょっと下にリンクありますからそこからどうぞ。


花ってあるだろ? そうそうお花だよ。今回お花しするのは花なんだ。え? 花言葉を一つだけ知ってるだって? いいよ言ってみなよ。

 

『黄色いカーネーションの花言葉は軽蔑』

 

...あーうんすごいすごいどこでしったのあーそっかーへー

 

いやいやいや。こんなことがしたいんじゃなくてだな。ただちょいとおかしな話を聞いただけだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許してくれよぉぉぉぉぉ。ただ興味があっただけじゃあないか。随分と手入れされた美しい向日葵畑がありゃあ誰だって立ち寄っちまうだろうがよォ〜」

 

伴、土下座

 

何故プライドの高い露伴がこんなことになっているのか? 話は数分前に遡る...。

 

吸血鬼の住む館、紅魔館という吸血鬼の住む館へ取材へ行くことが許可され、(いや許可されたというよりさせた)ウキウキと紅魔館へ向かった露伴だったが館主のレミリア・スカーレットに早速、無礼(ヘブンズドアー)をはたらいて叩き出された後に起こった事件というか事故というか勘違いというかうっかりミスだった。

インタビューでは決して得られないリアリティは天国の扉(ヘブンズドアー)でしか得られない。うっかりやってしまい、追い出され、出禁処置を施されて、仕方なくその辺りの妖怪と妖精を出合い頭に読みながら人里へ急ぐわけでもなく、とぼとぼ帰っているところだった。

「はぁぁぁ。なにも叩き出すこたぁないだろ。無礼なヤツらだ。あんなガキが吸血鬼です♪なんて言われて信じられるか? ドアホ。ふつーの感性してたら疑うだろ」

...先程言った様に完全に露伴に非がある。そのセリフ...よく言えるね。すごいね。

「おや。美しい向日葵畑だナ♡」

少し開けた場所に手入れの行き届いた向日葵畑が一面に広がる。山中を歩き回ってクタクタだったがこれを見ていい気分になった。誰だって美しいと思うだろう。

「あなた...そこでなにしてるの?」

ゆっくりと傘を持った女が近づいてくる...何故か血塗れの傘を持って。

「美しい向日葵だと思ってね。眺めていたのさ。きれいなものを見ると心が安らぐと思わない?」

「そうね...ところであなた。この向日葵畑をもっと美しくしたいと思わないかしら?」

 

「端的に言うと...死んで♡私の花畑にいたずらしに来たんでしょうが。死んで償え」

 

あーやばい。すごくやばい。血濡れた傘を持ってる時点でもうやばい。溢れ出る狂気がもうやばい。

「肥料ってぇことかい? そりぁあないだろぉ」

 

ゴンッ

 

土下座である。

これが露伴の土下座事件の真相である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあどうして貴方が歩いてきた方向の向日葵が五本も根元から引っ込ぬかれてるのよ? おかしいじゃない。それに許してくれってもう確定じゃない」

 

Let's thinking together! みんなもいっしょにかんがえよう!

 

Q, ちまみれのかさをもったじんぶつがさつがいよこくしてきた! ろはんせんせいはこわいとおもうでしょうか?

 

A, 当然怖い。怖くない人ってメンタル鬼でしょ。

つまり何が言いたいかっていうとビビッてしまったのである。

 

「そんなヤバげな見た目したやつが近づいてくる。んでもって死ねと言われる。こちとら全く非がないし身に覚えがない。天国の扉(ヘブンズドアー)でのぞいたら僕じゃ勝てない。だから誤解だってば。本当に知らない」

後半の方は早口になりながら、弁明する露伴。

「あれ? 勘違いってことかしら。いやいやいや足跡は二つあった...ああ、そこね」

数秒間考える仕草をすると槍を投げる要領で傘をブン投げる。300Mほど先にあった大木を余裕で貫通し向こう側がよく見える。

「ちょっと待ってて。すぐ終わるから。あそこ...小屋が見えるでしょ? 私の家よ。勘違いの件で謝りたいわ。適当に座ってて」

...なんとなく女の行く先にいるものの正体がわかる気がする。あの...ご愁傷様です。手を合わせて見なかったフリをする露伴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね。ちょっとお花の世話をしてきたのよ」

露伴は知っている。こいつが世話と言っているのは花畑を荒らしたものを比喩無しに肥料にしてきたんだろう。なんて女だ。

「お互いに自己紹介といきましょう。私は風見幽香。皆、花妖怪と呼ぶわ」

妖怪ならばさっきの行動は...納得...出来るゥ? 少なくとあんな所業が人間に許されていいはずがない。実際妖怪だから...で済ましていいものではない。気分はあまり良くなかった。

「僕は岸辺露伴。漫画家だ。『ピンクダークの少年』をあの胡散臭くて腹黒いバカ鳥の天狗のところでやってる人間さ」

「ああ! あの岸辺露伴! 私ファンなのよ! 尚更申し訳ないわ」

深々と謝罪する化け物...もとい風見幽香。

「いやいやいやいいよ。誤解ならいいんだ。君がわかってくれてよかったよ」

危うく殺されかけたのに今回限りの作り笑顔。

露伴かて人の子なのだ。死ぬのは怖い。それにファンだと言う人物の手前、彼にも尽くさねばならないマナーがあった。それが例え屈辱的であったとしても。だ。

「ところで露伴先生。どうしてこんなところに? ごく普通の人間である露伴先生がこんなところをうろついてたら危ないんじゃ?」

「そうだな。確かに君の言う通りに危険極まりない。自殺行為だよ。実のところ吸血鬼のガキのところに取材に行ってね。その帰りなんだ」

「? まだ9時にもなってないんじゃ...?」

時計を見て頭の上に大きな ? マークを浮かべる幽香。泊まりがけで取材? そうは思えなかった。

「ちょいとばかり品のないことをしでかしてね。叩き出されたんだ。まあその...調子に乗ったガキの吸血鬼には会えたは会えたしいい経験になったよ」

「そうですか...あっ。お茶のおかわり入れますね」

「ああどうも。しかしうまい紅茶だね」

「ふふ。嬉しいわ。誰もここに立ち寄らないから折角おいしい紅茶をブレンドしても誰も飲まないんですよね...もっと気軽に来てほしいのに」

おっと露伴先生。ここで『狂気じみた花の世話をしてるから誰も立ち寄らないんだろぉが。もう少し自重したらどう?』とか言ったら確実にやられちまうよ? わかってるよね? 自重してね? ここで死んだら作品が終わっちゃうからね? ダメだよ?

「おいしい紅茶ありがとね。君がブレンドしてたのか。そりゃおいしいわけだね。どうもありがとう。そろそろお暇するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里に帰りついた時には昼時になっていた。露伴は定食屋でかきたまうどんを注文して、半分自我を失ったように、大通りを眺めていた。まだまだ幻想入りして日も浅く、慣れないことも多いが慣れてしまえば最高のネタと体験が得られる。ここまで刺激されるものはなかっただろう。

「おやっ、そこにいるのは...露伴センセッ! お久しぶりですね!」

ふっと声をかけられて意識が現実に引き戻される。顔を上げると腹黒編集者()ともう二人、似たような見た目をした少女とぼさぼさの髪をした男がいた。

「席開いてないし相席、いいですか?」と聞かれるが無視する。

注文したかきたまうどんが届き、さっさと食べ、帰ろうとしたら呼び止められる。

「ちょいちょいちょい。置いていくんですか? しかもこっちを向いたのに無視して!?」

「どうして僕が君を待たなくっちゃあいけないんだい? 文くん。それにね僕は君と午後から行動する予定もないし、なんなら打ち合わせは二日前にしたんだ。声をかける道理はないッ」

「いや、まあそりぁあ...」

「言葉に詰まるようなら用事はないんだな。僕は忙しいんだ。帰らせてもらうよ」

「聞いてた通り、すごい偏屈だね。里一の漫画家さん」

「この人が岸辺露伴! あの天才漫画家!」

本当にもう...! 露伴イライラゲージ:92/100

「なあ俺のこと知ってる? 俺暗木輝介(くらききすけ)ってんだ。暗いのに輝くんだ。変だろ? 本名なんだぜ」

暗木輝介。22歳の小説家。そこまで人気がない『花果子念報』の裏で『あの夏の恋心』を好評連載中。好評?

「君の頭が変だと僕は思うね」

「そんなこと言わないでよ~俺は同じ作家としてアンタを信頼してんだ」

「ナニッ!? 君と同レベルだといいたいのかッ! 僕のマンガは間違いなく最高のマンガだ! 君の書くような湿った恋愛小説なんぞと『ピンクダークの少年』を一緒にするんじゃあない!」

露伴の地雷はどこにでも埋まっている。みんなも気をつけようね!

「まあまあまあ。いったん落ち着いて。露伴先生、実はこっちのはたてが相談があって」

「今僕を引き留める理由を思いついただろ。で? 相談ってなんだ。『漢字がわかりましぇーん。たしゅけてー』とかなら蹴り殺すぞ。なにかね烏天狗のはたて君」

普通、天狗というのは誇り高き種族であり、格下の人間に怯えるなんてことはあってはいけない。だがッ! 露伴の放った『蹴り殺す』の一言は天狗を恐れさせる威圧があった。恐怖があった。なによりなぜ彼は自分を烏天狗だと見抜いたのか。そこが妙に引っかかった。

「そっそのですね。いや私というより...こっちの暗木先生の方で...」

「実はよネタに困ってるんだ。ちょっとだけホラー要素を絡めようと思うんだ。どう思うよ?」

「どうって...普通他人の意見なんか聞くか? マンガも小説もネタは被り被られの世界だろぉが。僕に相談して僕がそのネタをマンガにしない確証がどこにある?」

「先生だからだよ」

随分と信頼されているようだ。

「その偏屈で傲慢で自分至上主義的な考え方! だから気に入ってるんだよ。いやーよかった。露伴先生はやっぱり違うな。うどんは驕りますよ。金置いてきます」

「なにッ!? フザケるなッ! お前はこの岸辺露伴がたかがうどんを一杯奢られたくらいでデレデレになって『わーうれちーありがとー♡』とでも言うと思っているのかッ!? おい! こんな小さい貸し作らせるなッ!」

「露伴先生に会えてあまつさえ意見も聞けて金払わないなんて柄じゃないし。ここは奢らせてくれよ。な? じゃ原稿取りに行こうぜ」

「ちょ...もういいんですか? はあもう! 本当に気ままなんだから!」

定食屋から出て大通りの方へ向かっていく暗木とはたて。どうやらはたての方が振り回されているようだ。

「おい! こんなのいらないぞ! ハァ...どうしてこう僕をイラつかせることばっかり起こるんだ!」

「機嫌悪そうですね? どうしたんですか?」

空気を読まず、地雷を踏みぬく文。

「いい加減君とその連れ二人組が僕の機嫌をさらに悪くさせたってことに気づけ。スカタンッ。花妖怪のところに連れってってあの二人を肥料にしてほしいくらいだよ」

「ちょっと待ってください。あの風見幽香のとこに行ったんですか!? 殺されますよ! 約束してください。もう二度と絶対に風見幽香に関わらないって!」

ちなみにだが『もう二度と絶対に』は文章的におかしい。豆知識だよ!

「君に誓う必要が一体どこにあるんだね。もともと偶発的な事故だったんだ。二度と行くつもりもないし立ち寄るつもりもない。あんなあからさまなド地雷をわざわざ踏みに行くなんて何も知らないアホか自殺志願者くらいだよ。逆にアイツに友達とかいるわけ?」

「わかってくれたようでなによりですよ。はぁ...ホントに心配した...露伴先生のおかげで発行部数はうなぎ登りなのにこんなところで死なれちゃ困りますもんね☆」

「君ってやっぱり性格悪いよなァ~~~~~~~~~~~~??? どうしたらそんなに歪んだ性格になるんだか。ご立派な教育を受けたようで何よりだよほんと」

担当編集者との他愛のない会話。

 

何の変哲もない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一ヶ月の朝

起床して顔を洗い、花の世話をしに花畑に出かける幽香。

日の光が朝露で濡れた向日葵の花弁を優しく照らす。なんとも美しい光景だ。いつ見ても美しい花畑だが、管理者のイチオシは早朝だ。この光景がもっとも美しい。と彼女をよく知る者達も口を揃えてそう言う。

「あら...? こんな花ここに植えたかしら?」

そんな向日葵の中に、植えた覚えの無い花が一本咲いていた。紫の、少し赤味の強い感じの不思議な花。

ここは確か...肥料を埋めた場所...?

「? 何の花かしら少し調べてみましょうか」




音mad制作状況:5秒まで!(1/6制作終了)
次話執筆状況:0%(一文字も書いてない)
再編版執筆状況:0%(一文字も書いてない)


お花‐お話は言葉遊びですぜ。気づいたかな?????? 誤字じゃねえよ。くだらないだって? 許して。一度やりたかったんだからさ。

1文字でもいいから、一行でもいいから頑張って書く!

んでもって音madなんだが、新しくゲーミングパソコンを買ったので、もしかしたらMMDが使えるかもしれない。楽しくなってきたぞ。

読者にとって読みやすい文章とは何か。最適な文字数は何文字なのか。ジョジョらしい言い回しとは? 考えるほどわからない。私に...どうしろというのだ...。

それじゃあ寝ます。また今度。


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幻想郷の奇妙な事件簿 第十六話

前回までのあらすじ!

うっかり風見幽香の花畑に迷い込み、殺されそうになるも誤解を解き、何とか生きながらえることに成功した露伴。ゆっくりと根は張られていく。















随分と空いたなァって?

すいません、精神を病んだんです。
詳しくはTwitterの方で報告しました。
もう一回リンク貼っときます。
☟☟☟
https://mobile.twitter.com/Pentaro_inChiba


わからない

わからない

わからない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあああっ!」

書物や本といった文献や、誰かが書き残した記録が散らかった部屋で壁に向かって『シン・ウイルス学』と『年刊 みんなの仙術大全♪第3659刊』と書かれた妖怪向けの本を投げつける藍。ぬるりとスキマから這い出てくる紫。

「どうしたの? 貴女がそんなに荒れて。珍しいわぁ」

「どうして...私にまで隠すんです? 岸辺露伴の持つ力は存在してはいけないレベルです。『人の記憶を本にして読む程度の能力』や『指示を書き込んで対象を自由に操る程度の能力』、『記憶を書き換える程度の能力』。複数の強力な能力を有している。何故そんなものを!? 私に何の相談もなく!? 挙句の果てに幻想郷(ここ)に入れるんです!?」

壁や床を蹴り、あたりを破壊する藍。

「最近...おかしいと思わない? グルグル回って...止まっては吹き飛んで...」

「言ってることがよくわかりませんが。生け贄と。そう言いたい訳ですね。紫様」

「そうよ。彼って行動の動機が異常で面白いでしょ? だからほっとくだけでいいのよ。そうほっとくだけで」

「ほっとくだけなら好都合ですね。この手の能力者は自ら進んで能力を開示しようとしない。これが...深層心理ですか...随分といたずらが過ぎますよ。紫様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自殺者が出たァ? ほう。それって僕に何か関係あるか? 利益につながるか? 僕のマンガに生かせるのか? そもそも仕事を始めようと準備体操を終えた途端に開口一番に言う言葉か?」

「調べて欲しいんだ。お前のその能力なら何かわかるかと思ってな」

仕事を始めようとして、準備体操を行い、さぁ仕事を...と思った瞬間にこれだ。究ッ極に間が悪い。露伴のイライラゲージは限界寸前だった。

「どうして僕に相談に来るんだ。僕が仕事中かもしれないのに玄関で大声を出して...迷惑だと思わないのか? あの胡散臭い紫にでも相談に行けよ。それは僕の仕事じゃあない。それとはっきり言わせてもらうが...慧音ちゃん。僕は君のことが嫌いだ。関わってくれるな」

「おっおい!? ちょっとぐらい手伝ってくれてもいいだろう! なんでそんなに頑固なんだ!」

「嫌いだからだ。なぜ自殺したのかとか、その自殺者自体には興味があるが、帰れ。君に協力するっていう姿勢が嫌だ。僕は君と違って忙しいんだ。さあ帰った帰った。ほれっ。アメでもやるから帰れ。それともリンゴがいいかい?」

「うぐぐぐぐっ! もう知らん! 好きにしろ!」

ブチギレてアメも受け取らずにドカドカと小クレーターを作りながら帰って行く慧音。ニヤニヤ笑って後ろ姿を見送る露伴。

「ああ。最高のネタだよ慧音ちゃん。『手伝ってくれると思っていた人物に裏切られた気分』。最高のネタになる。極上のエンタメだ。どんなところかと心配したが来てよかったァ。最高だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

露伴は仕事に手を抜かない。それはつまり、ネタを集めるためには手段を選ばない。と言うことだ。故に何度も何度もこのようなことがあった。

 

人を見下す傲慢さ。

自分が1番。

エゴイズム。

 

そんな彼を変えたのは友人達だ。時に相談に乗り、彼らの依頼にも答えた。何故彼らにだけ? 理由は至極当たり前だ。同じ『運命に抗う者』であり、彼らは気づいていないが心の奥底にある、正義の心に露伴がぞっこんだからだ。

 

「慧音ちゃん...君はたしかに正義だ...だけど到底僕の友人達には敵わない。だから嫌いなんだ。君も覚悟を決めてくれ。それは最高のネタになる」

マンガの鬼。露伴の異名である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慧音の要望を蹴って二日後、寺子屋の近くを通りがかった露伴は暗木輝介(バカ)に偶然出会った。

「おい...どうして君がこんなところにいるんだ?」

「いやいや。そりゃこっちのセリフだよ。お米買いに行ってきたの」

「へぇ。じゃあ」

「ちょちょちょ。なんか反応ぐらい...」

「さっさと帰れ。僕は君に関わりたくないんだ」

露伴はこの男が嫌いで苦手だった。イラつかせる話口調にズケズケと話しかけてくる性格。大っ嫌いなプッツン由花子やクソッタレの仗助、アホの億安と話しているような不快感を覚えていた。

「あっあー。慧音先生がすっげぇ怒ってたのって露伴先生が機嫌悪くて、慧音先生の話を聞いてないからだな。ぜってー露伴先生この話聞いたら飛びつくだろうなァ好奇心の塊みたいな人間だし」

「...なに?」

「公的にゃあ自殺ってなってんだか、どうも呪術めいた痕跡があったらしい。ほら例の自殺者ですよ」

「どうしてそれを君が?」

「その死んだ奴がオレの同居人だったってゆーそういう設定どう思う?」

 

 

「やっぱいいよなーあの露伴先生さえ意味わかんねーって顔するこのネタ。最ッ高だぜ。ぜってー書くしかないな」

「まて新作の話か? そのネタを僕に披露したのか?」

「そうだよ。いいネタだろ?」

「チビりそうだったよ。最高」

「ダッロ~~!? ああ、でも自殺した奴がオレの知り合いだってのは事実よ。『呪術的な痕跡』ってとこは完璧なオレの創作だ」

「キミの知り合いだったの? 例の?」

「そうっすよ。ガキの頃にアイツの家の前で小便したんだ。アイツめちゃくちゃ怒っててよォ! 今思えばクソガキだったよ」

惜しい友を亡くしてもここまで気丈に振る舞えるのは純粋にすごいと思った。

「彼...自殺だったんだってな。残念だったな。ところで死体。まだあるか」

「へ? なんでオレに聞くんスカ? まあ常識的に考えりゃ残ってないって考えるのが当然だと思いますよ。なにしろ二日前。加えてこの気温。なにがとは言わねーけど臭いが」

まあ正論だ。なにがとは言わないが臭いがきついのだろう。

「いやでも本当...いい奴だったよ。佐ノ木智彦ってやつッス。うん。文章もうまいし、挿絵だって自分で描いてたんだ。緻密でよォすっげえきれいな絵を描くんだぜ。この間も『新連載が決まった』って喜んでたんすよ。本当...なんでくたばっちまったんだよ...」

「君みたいなヤツでも人の死を悲しむんだな。てっきり気にしないようなもんだとばかり思っていたが違ったようだ」

「おっす。露伴に暗木先生。こんなところで漫画家と小説家のネタ合わせ? そっかやっぱり()()()ものがあるんだなぁ...」

「おお妹紅くんか。ねぇ君さ、さっきこのバカのことは先生って呼んで僕のことは呼び捨てだっただろ。どーゆーことだよォ~~~~? え? どうして僕だけ呼び捨てなんだ? ン? どうしてだ?」

「あーあーあーあーあーもう! わかったわかった。はいはい岸辺先生こんにちは!」

「若干不服だが仕方ない。で? 用もなくこんなところをぶらついてどうした。とうとう徘徊かい? まあお前さんも相当年喰ってるだろうしなァ...家まで送っていくよ。自分の家はどこかわかるかい?」

「あのさぁ...寺子屋でけーねの授業を手伝ってきた帰りだよ! なんだよ人を勝手に認知症扱いして!」

「僕の煽りに本気でキレるあたり、まだまだ子供だな。年だけ喰っておミソを鍛えなかった君に全面的に非があるよ」

「おまえ絶対友達いないだろ」

「まあまあお二人とも! ちょっと落ち着きましょうよ」

すっかり盛り上がった煽り合戦(一方的)は暗木の一言で終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう! さっぱりわからん! この単純な図形と文字群の意味さえ分からん」

「ホントだよ...なんだよこれェ。家を貸すにしてもこの荷物と落書きを片付けない限り借り手もつかんしなあ...」

 

自殺をしたという作家の家。

 

広いとは言えない居間に大量の本、原稿、ゴミ、挿絵の下書き、萎れて花瓶に挿さった紫色の花、意味の分からない落書きが散らかっていた。お世辞にもきれいとは言えない...いやお世辞でも言いたくないほど汚かった。畳はカビて緑色に。台所の水は腐っていたようで何とも言えない異臭を放っていた。そしていつからあるのか不明なミカン。ここにぶら下がっていた作家...ゴクリッ

 

どんな大食漢でもここに来たらなにも食べたくなくなるであろう。

そんなところに二人はいた。

 

一人はこの家の大家。ビッグサイズな大食漢。おおらかな性格だが、ギャンブル狂い。

もう一人は上白沢慧音。寺子屋の教師。

 

「不審な死に方...この落書きが手掛かりなのかそれとも単純に気が狂ったか...せめて露伴がいたら...」

「借り手がつかないんじゃ困るよ~この間麻雀でボロ負けしたしお金がないし建て直そうにも...今月の食費だって厳しいのに~」

「それは貴方の責任でしょう。っていうか賭け麻雀する暇があるなら早くここを片付けなさい。これ以降は慎む...というかしないこと。暴食もやめるんだ」

「慎むけども~これなんだ?」

「? おいなにやってるんだ!?」

「えっ?」

スパッ

「ひいぃっ! あービックリした。悪趣味だな~うっかり断頭されちゃうとこだったよ☆」

すんでのところで戸棚の上に置かれていた降ってきたナタを回避した。

「この家...罠だらけだ!」

「慧音先生! 自殺だ! また出た!」

外から声が聞こえる。自分を呼ぶ声だ。

「ここの調べも終わらぬ内に出た? 人手が足らんぞ...もう皆四日は働き詰めだぞ!」

「すっすまねぇ...でも仕事だろ?」

「ふう。やるか。で、どこなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「墓荒らしをする」

「「何言ってるんです?」」

いきなり露伴が爆弾...いや水爆発言をする。

「その作家の墓を荒らして死体を確認してみる。このバカの知り合いだったと言うなら死んでようが取材したい」

「死因は首吊りによる、頸部圧迫だ」

死因が気になるなら私が立ち会ったよ。と妹紅。

「死因も気になるがその後も確認する。僕の天国の扉(ヘブンズドアー)で見てみる」

「なんスカその...」

暗木は露伴の放った言葉に聞き覚えがないようだ。

「君はまだ知らなくていい。それに知る必要もないねッ」

「しかし...墓荒らしって...それは道徳的にというか...人間としてまずいんじゃ...」

躊躇いがちな妹紅。

「知ったことか。僕は興味が湧いたんだ。この知識欲を誰が止められようか」

「押さえろよ! って言うか自分のことだろ!?」

「なにかがおかしいぜ。だって理由もなく死ぬヤツがあるかよ。聞く限りじゃあ順風満帆な生活してる様だよ。到底自殺とは思えない」

「そうだけどさぁ...墓荒らしって...正気か?」

正気じゃないと思う。

正気(マジ)正気(マジ)。大真面目よ。決行は今夜。暗木、キミも来るか?」

「それって...もしバレたら...?」

「一発アウトだ」

道徳的にも。人間としても。社会的にも。終わる。

「行くか?」

「行きたいです」

「うしっ。行こう」

「私は行かないけど乗り掛かった舟だ。口は閉じとくよ」

「ありがたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖夢~()()()()、どう感じた~?」

「一言でいうなら”奇妙”ですね。変です。ただの人間じゃない。そう感じました」

二人の少女が話す。

一人は魂魄妖夢

もう一人は西行寺幽々子

「霊夢や魔理沙とは違うってことね。たしかに何か不気味に感じたわ。心の奥底を見透かされてるみたいな感じ」

紫からの指示。『岸辺露伴を監視せよ』

白玉楼ではこんな話を二人はしていた。

「肉体に...半分癒着してるというか。私の半霊とは違うような感じでした」

「そう遠くないうちにまた会えるわ。今度お誘いして宴会でもしましょう」

「あの性格からして素直に来てくれるとは思えませんが」

「えっ。えぇっとぉ~そうよね~...アハハ」

 

本当にそうだろうか?




後半はやる気を無くしました。


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幻想郷の奇妙な事件簿 第十七話

墓荒らしをした。


「おいもう少し丁寧に掘れ。死体に傷がつくだろ」

できるだけ綺麗な状態で読みたいんだ。と露伴。

「死体に綺麗もなにもないでしょう...っていうかよくこんなことしようって思いましたね」

命蓮寺の墓場で必死に墓を荒らす二人組。字面だけでも相当お腹一杯だがそのうちの一人は岸辺露伴だ。

「さて...随分臭いしとっとと読んで帰るか。天国の扉(ヘブンズドアー)

 

パラパラッ

 

捲れ捲れ捲れていく。死体と暗木の腕が、足が、顔が、腹部が、腰部が、胸部が。本のページのように捲れていく。

「ごくろう。手伝ってくれてありがとな。さてさて...?」

 

『今から数えて24時間、全ての記憶を全て失う』

 

「どうせ他人だし? 困るのはコイツ。僕が知ったことじゃないし」

手伝った時点で君の負けは決まっていたね。と。書き込んだ後にフッと笑う。

 

「ンー...............大ハズレ! 面白そうな記述はない! でもおかしいな。人間ってもう少し大きくないか?」

言われてみれば小さい。140センチあるかどうかだ。

「人間って...こんなモンンンン?」

幻想郷は確かに隔離された空間だ。時代は明治で止まっており、肉類を食す機会はあまりないのかもしれない。かつての日本人が西洋人と比べてブッちぎりで背が低かったのも食肉の機会があまりなかったからという説もある。

 

とはいえ。

 

低い。

天国の扉(ヘブンズドアー)をかけた上からもう一度天国の扉(ヘブンズドアー)をかけてる。

デバックじみているが違う。こうすることでもう一段階、踏み込んだ読みができるのだ。

通常よりも時間が詳しく書かれる。

「ン。なっ、なんだこれ??? 『花』。花ァ? ここ一ヶ月だけ花の記述が多いな。もう少し...おっ! いいもんあるじゃん。口の中になにか入ってるぞ。ン。うわっ! 溶けた肉が服に付いた! 帰ったら捨てよ。でこれは一体何の種なわけ?」

 

捲る捲る捲る。

削れ削れ削れていく。

 

「変な花の種を拾った...この前見た火球が降ってきたあたりにあった、紫色の毒々しい種。変な色をしているがとっても綺麗な紫。持って帰って育ててみた。一ヶ月くらいで成長して...すっごいキレイなんだな♡ちょうど花瓶もあるし挿してみようかな」

 

火球といえばごく稀に観測される、宇宙に漂う()()が地球の大気圏に衝突した際に非常に明るい光を放つ現象のことだ。場合によっては満月の光より明るいこともあるちいう。近年では2020年に千葉県で火球の成れの果て、隕石がアパートの屋根で見つかっている。露伴が幻想郷で目撃したものはたしかロリ吸血鬼のもとに取材に行った......あの日の一ヶ月と二週間前のものだ。それから一ヶ月が経っている...

 

「これも紫色だが...植物の方面は明るくないなァ。花、花、花ァ..................行きたくないけど行くか。あの花妖怪ンとこ。ああっ今回こそマジで殺されるぞ」

軽く死期を悟ると同時に「これが走馬灯か」と思う露伴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよ~ございますっ! 露伴先生! 今度単行本出ますよ!  楽しみですよね! って...あれ? 居眠りですか? しっかりしてくださいよ。これからはさらに発行ペースを上げる予定ですからね! 露伴先生にもバリバリ描いてもらいますよ!」

墓を掘り起こして一人で埋めて。(暗木は起きなかった。強めにあてすぎたせいだろう)

帰ってきたのは朝五時。現在の時刻九時。

「んあ? ああ文くんか。はあ............眠いんだ寝かせてくれ」

「うええっ!? ちょっとしっかりしてくださいよ! ホラペン持って」

「............スゥ」

「寝るなー!」

「ああ! わかってるよ。わかってるさ! でも眠いんだよ...........................ネェ突然だけどさァ~~~~君ってさァ...1000年近くは生きてるよねェ??? 紫色の種子をもつ植物についてなにか知らない?」

「女性に対して失礼じゃないですか!? ほんっとデリカシーないですよね」

「いいから答えろ。僕のマンガのおかげで君の新聞は売り上げが伸びてるんだろォ? 今僕を切ったらどうなるか。賢い君ならわかってるはずだ。つまりは僕の方が上ということだ。正直君の書く記事を読んでるヤツはいないと思うよ」

さっきまで寝ていた人物とは思えないほどハキハキと息を吐くように煽る露伴。煽るという行為においては右に出るものはいないだろう。...決して褒められるようなことではないのだが。

「最後の一言、余計ですよ」

「スマン。そりゃ事実だよ。で? 実際のところどうなのさ」

「知らないですっ!」

知らないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局あの花妖怪のとこに行くしかないのね。ハァ...本当に参ったよ...どんな拷問だよ」

「露伴先生、やっぱり僕怖くなってきましたよぉぉぉぉぉぉぉ」

暗木を誘い、花妖怪を訪ねる二名。が。未だに里の外に出られずにいた。

「いつもの威勢はどうしたんだよ。家にでも忘れたか? いやならついてこなくてもいいんだぜ? キミがどうしてもっていうから僕がわざわざついて行っていってやってるんだが」

「だってだって! 関わってはいけない妖怪リスト一位の妖怪ですよ!? 怖いじゃないですか!?」

「じゃあ帰るか。うんそうしよう。この種について知ってるかもしれないけど帰ろう。そうしよう! 自分の身の安全が一番だもんな!」

「いやでも...」

「キミってめんどくさいなァ~~~~~~~~!? どっちなんだよはっきりしろよ! 行く行かないの二択だ!」

「う~う~う~う~う~う~う~........................行きます! もうどうにでもなぁれ!!!」

覚悟を決めた暗木。

「さあ行こうか」

「死ににですか?」

当然違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の畑に到着した二人。途中妖怪に襲われながらもなんとか五体満足でたどり着いた。

「マジで保険見直そう。特に労災。だってこれは取材だもん。そうだよそう!」

「風見くん。いるかい?」

コンコンとノックをする。

「その声は...露伴先生? 一体どうしてここへ? とっとりあえずお茶でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この種に見覚えはあるか? 先日火球が落ちたあたりに落ちてたものらしいんだが」

この間と同様に特製ブレンドティーを頂き、暗木は「へっへぇぇぇ~ろっ露伴先生って花妖怪と友達だったんですね...」とガタガタ震えながら言っていた。

紅茶を一口、口に含む。

ボソリ「甘っ」

ボソリ「で、ですよね」

「ナア風見君。キミって甘党だっけ?」

「それになんか散らかってない? 気のせい?」

幽香はそれらに答えない。

少しムッとした。

露伴は種を渡す。

 

「ちょっといいですか? ンー...わからないですね。色々育ててきて身ですが...こればっかりはどうも。悔しいなぁ...あっそういえば! 私の花畑にも肥料を埋めたところに変な花が咲いたんですよね...わからないことばっかりですよ。これじゃ花妖怪の名もウソみたく思われちゃいますよね...」

シュン...とする風見幽香。

「気に病む必要はないさ」

「ご期待に沿えず申し訳ございません」

「いやいやいやァ! キミは立派にやってるよ。あの向日葵畑を全部一人で管理してるんだろ? 十分だよ。自分に自信を持て。せめて自分ぐらいは『私は無敵だ!』って思ってやらないと簡単に心をすり潰すよ」

 

露伴は今まで何人も若き漫画家を見てきた。キャリアも長くなってきて、度々新人賞の審査員に選ばれる。もちろん自分が一番であることに変わりはないが中には「コイツは凄いぞ!?」と思う漫画家が何人もいた。

 

しかし彼らが最終的に芽を出すことはなかった。

元々生存競争の激しい職業である漫画家でそれ一本で食べていけるようになるのはごく稀。

 

「どうしてだ...」「こんなはずじゃ...」「今回も落選...」

 

そうやって心と体を蝕まれ、ボロボロになって...

そんな漫画家の先輩、後輩、同期を両手で数えられないほど見た。

だからこそ言うのだ。

「自分に自信を持て」と。

ありふれた言葉だが露伴なりの優しさだった。

 

「ところで風見くん。その花ってさァ...種とかもう出来てたりする?」

「えっ? ええ。あと二日もすれば種はできると思います。表に出てる植木鉢に移し替えますから持って帰って貰っても結構ですよ?」

「本当かい? じゃあありがたくもらっていくよ。なにか...妙に引っかかるんだ」

「その種と花畑の変な花がですか? そうは思えないんですが...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来たら徹底的に調べ上げてやる。この岸辺露伴を舐めるなよ」

朝に出発したのに人里に戻ってくると午後7時。二人で軽く食事を済ませる。かき揚げうどんと塩むすびだ。

「露伴先生。そんなにその種が気になるんですか?」

「モチロンだ。なんのために妖怪に追い掛け回されながら花妖怪の元へ行ったんだい?」

 

「何かわかったら連絡するよ」と暗木に伝えると二人は別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三ヶ月後、とある茶屋を借り切って風見幽香、上白沢慧音、藤原妹紅、暗木輝助、岸辺露伴が集まった。

「結論から話そう。この植物はエイリアンだ。.....................キョットーンってカンジだね。僕もびっくりしたよ」

「意味がわかんないっす! どうしてその結論に至ったんスカ?」

暗木が問う。

「あの後件の火球を調べてみたんだ...岩石部分を慎重に砕いていくと中になにがあったと思う?」

これだ。といって箱のようなものをカバンから取り出す。

「この中にたっぷり例の種が詰まってたよ。考えてみろよ。普通箱詰めの種が宇宙から降ってくると思うか? そう! ありえないんだよ。顕微鏡を借りて天国の扉(ヘブンズドアー)で読んでみたんだ。こんな風に文字化けして書かれてたよ『遘√�雜」蜻ウ縺ッ繧イ繝シ繝�縺吶k縺ィ縺薙↑繧薙〒縺吶¢縺ゥ縲∵怙霑大ソ吶@縺上※蜈ィ辟カ縺ァ縺阪※縺ェ縺�s縺ァ縺吶h縺ュ縲ゅ↑繧薙〒莉雁屓縺ッ譎る俣繧剃ス懊k縺溘a縺ォ蝨ー逅��閾ェ霆「繧呈サ�幻闍ヲ闌カ驕�¥縺励※縺励∪縺医�荳€譌・繧帝聞縺上〒縺阪k繧薙〒繧�▲縺ヲ縺ソ縺セ縺励g縺�°縲�』ってね。正直言ってなんて書いてあるのかわかんないけど多分よくないことだろうし、五粒だけ残して全部燃やしたよ」

「おい露伴。お前が人間としてやってはいけないことをした件については後でみっちり怒るとして、なぜ佐ノ木智彦が自殺したんだ?」

「そこっスよ! なんでやつは自殺なんて!」

「すべての結果には必ず理由がある。あの種さぁ...里の近くをうろついてた妖怪に投げつけてみたんだ...その妖怪を洞穴に軟禁してみたらさ、ビックリよ。だんだん小さくなりながら種を植えて、育てて、種を収穫したら最終的には種を飲み込んで自決したんだ」

あ、もちろん意思のない無名の妖怪だよ。と付け加える。

「つまり、あの種は他の生物の行動を制御する力があって、隕石として惑星に降り立ち、そこでその星の生物を洗脳して増殖するつもりだったと? そういうことですか? でっでも生物が小さくなるとは...?」

風見幽香が露伴に問う。

「おそらくは養分が吸われたんじゃないかね。外にいたんだよそんなやつ」

はて誰のことだろう?

「僕は彼らの真意がどうなのかは知らない。し、知りたくもない」

「おやっ? 今日は随分と弱気じゃん? どったの露伴?」

「あの種が一体どのくらいの範囲まで洗脳できるのかわからないからだよ。少なくとも種を一番弄くり回したのはこの僕だ。こりゃあしばらく療養だな。文くんになんて言い訳しようか...それになにをしでかすかわからないだろ?」

「「いやそれは普段からだろ」」

と彼をよく知る二名が声を合わせる。

「じゃあ...私の花畑に生えてきたのは...?」

「キミが埋めた肥料がエイリアンに洗脳されていたか。たまたま持って帰る途中だったんじゃあないか? そう考えればすべて説明できるよ。風見くんも要注意人物だろ。君もしばらくは大人しくしてるんだな。だってあの花に水やったんだろ? そりゃあマズイだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局のところ芽が出る出ないは環境次第か...もっとも僕は常に咲き続ける花だがね」

岸辺露伴。その性格、エゴイスト。




次回は布都か文をとりあえず怖がらせようと思います。やる気出ない時ってほんとに出ないんですね。はぁ...疲れた...

共感出来たら評価していってね。
療養するので気長に待っててね。

Hunter×Hunterで鍛えた精神だ。
それぐらい大丈夫でしょ?


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アレルギー
幻想郷の奇妙な事件簿 第十八話


アレルギー (独: Allergie)とは、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることを指す。過敏反応とも呼ばれる。免疫反応は、外来性の異物(抗原)を排除するために働く、生体にとって不可欠な生理機能である。語源はギリシア語の allos(変わる)と ergon(力、反応)を組み合わせた造語で、疫を免れるはずの免疫反応が有害な反応に変わるという意味である


異物排除は生物生理にとって当然の反応である...というのは今更語るべきではないかな

例えばホロコースト、イスラーム排斥運動

ある民族を特定の遺伝子の集合体、例えば生物であったと仮定すると、これも広義的にはアレルギー反応と言えなくもない...

もっとも、人にとって悪い方向へ働くものをアレルギーと一般に言われるようなものだが、この辺りは発酵腐敗に通じるような人間主体的な意志を感じざるを得ない

 

つまり本質的に、人間や生き物には手出しできない領分というものがあるのだ...

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

人里で「名医といえば?」と聞けば八意殿であると皆口を揃えてそういうが、人の評判というのはそこまで当てにならないため、片眉唾で聞いていたが、どうやらその認識は改めた方が良さそうだ

たまたま先日、画材の補充のために人里で買い物をしていたら、目の前を大怪我を負った土方の兄ちゃんが担架でえっさほいさと運ばれていったのを見た

露伴は医師ではないので怪我の程度の正確はわからないが、もし治療となると相当難しいのだろうなと予想できるほどひどかった

が、つい先ほど、ここへ向かう途中でその時分に見た土方の兄ちゃんが元気にしているところを見たので、どうやら八意という医者は有能でその名実は確かなのだろう

しかしその八意が客として露伴を招くというのも妙な話であった...

話は永遠亭と呼ばれる、蓬莱山かぐやを筆頭とする月に由来を持つ者らが住まう宅で行われた

「私、お世話係をさせていただきます、鈴仙と申します。外からいらっしゃった画家様とお聞きしました」

印象的なのはうさぎ耳

うさぎの印象を受ける少女は鈴仙と名乗った

「ああそうだよ...『漫』画家だね」

漫を強調して発音したがキョトンとしていたので、どうやら漫画自体を知らないのかもしれない

『わざわざ招いたんだから相手のことくらい多少は勉強しておけよなァ〜』と詰め寄りたくなったが、そこまで子供ではないし厄介事を起こしたくはなかった

「八意様はまもなくいらっしゃいます。しばらくお待ちください」

そういうと下がっていってしまった

なんとなく手持ち無沙汰で、部屋を見回していて、それにも飽きてしまうと竹林を眺めていた

永遠亭は竹林で囲まれた中にある邸宅で、病院でもあるが、病院特有の空気感は竹藪が吸って染まったのだろうか?

「お待たせ致しました。八意様です」

鈴仙ともう一人、幾ばくか年上の落ち着いた雰囲気をした女性がいた

人というのは不思議なもので、案外感覚的な直感力もばかにはできない精度を持つのである

「初めまして。岸辺です。岸辺露伴と言います。御主人たるかぐや姫様の御評判はかねてより」

「お待たせしてしまい申し訳ありません。八意永琳です」

社交辞令的な自己紹介をお互いに終えると、鈴仙に席を外すように伝えて、少し堅苦しい空気が和らいだ

「本来、こういう堅苦しいのは苦手なんです。ですからどうか楽に。多少の失礼に青筋を浮かべるほど度量の狭い人間が出来ていませんから」

「堅苦しさは緊張から生まれるからな。わかるよそりゃ...まあ、『招いた側』と『招かれた側』って立場がある以上はな」

本題を語り始めた

「その立場。というのが厄介で不思議なのですよ」

「不思議ィ?ハァ...」

「私は確かに医者ですが、それでも一介の医者に過ぎないのです。ということです。苦い薬を処方して子供を泣かせていないかとか、術後経過はどうかとか...ある程度は鈴仙には頼んでいますが、それでもやっぱり、どうしても...」

「ハッハーン、『リアル』な声が聞きたいってことかい...しかしそれ、どうして僕に話す必要がある?」

不思議でたまらないと言った顔をすると、評価されていたと今更ながら気がついた

「まさしくその『リアル』ですよ。その『リアル』が必要なんです。患者の表情、汗のかき方、息づかい、そういうものが全部伝わって初めて遠くから察すことができるわけです」

「確かブン屋の...えっと、なんて言ったかちょっと思い出せないんだけど、あいつカメラ持ってたぜ。天狗のヤツだ。姫なんちゃらだ」

「あんなものではいけません!必要なのは重厚感、立体感、存在感です」

『リアリティ』へのこだわりは一点においてこの二人、妙に気が合った

ウマが合うのだ

「わからんわけじゃないよけどなァー僕だって仕事があるんだぜ?アンタら名義で依頼を出すならともかくよしみでやってくれなんてのはナシだぜ?」

「もちろん報酬はお渡しします。私の持つ知識で開示可能なものであれば提供できますし、医学の知識が必要なら授業だって多少はできますよ」

「僕は僕の描くものに誇りを持ってる。プライドだ。一番だNo.1だって自信がある。そういう自信に対して対価を払わないのは『失礼』だよなァ〜?」

ここから言ったって鈴仙には聞こえるわけがないのに、うさぎの耳を試してみたくなった

「報酬は...一件毎にしましょうか。出来れば顔と、あとは処置の方法によって変わってきますから、その都度の指示した部位をスケッチして頂ければ助かります」

少ないながら露伴にはリスペクトの心があった

その道を探求する者、極める者、先人を追い越す者...

そう言ったある種のプロと呼べる者には敬意を表するそんな心があった

なにかを極めたその先に、自身と同じ力があるかもしれないという少しの期待が、そのリスペクトの大半でもあったと、露伴は今後知ることになる




次回更新未定
今月中?


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幻想郷の奇妙な事件簿 第十九話

※アレルギーは個人差があります


永遠亭を退出する頃には日が傾き掛け、この季節なら体感的には午後四時半頃かと思われた

竹林の出口からは鈴仙うさぎが深々とお辞儀をしていた

「入りは入口、出たるは出口...」

どうも人間主体的な感覚でなにかに名前をつけるという行為に少し違和感があった

モノの本質とは名前ばかりで決まってはいけないように思う個人的な意見からである

しかしそのように言ったところで、『名』がなければ雲を掴むようなものであるような代物も触れてきたから、それもどうかと思う

思うに、立場や価値観によって。あるいは白か黒では性質全てを説明はできないし、一方的な善悪では計れないナニカがこの世にはあるのだ

 

月の賢者、八意は八雲のような腹黒ではなかったが、その底知れなさは匹敵するだろうと少ない会話から思った

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

人里で少しばかりの画材の調達を済ませ、安っぽい夕食をいそいそと終えて帰宅すると、家の前にふざけた格好の巫女がいた

「チッなんだよ、久しぶりだな博麗の」

「用があって来たんだけど『ちょっと』いいかしら?」

例えるなら、『怒らないから言いなさい!』と言っているヒステリックな女教師のような、そういう雰囲気を纏っていた

いやもう怒る寸前じゃ〜ん!ちょっと勘弁してよォォ〜!!というツッコミは誰もが経験したことだろう

『声を掛けずに無視すればよかった』と後悔先に立たずであった

「長話なら今日は悪いが帰ってくれないかな。僕だって君に構えるくらい余裕がある日とない日とがあるんだ。暇人の君にはわかんないだろうけどねェ〜ッ」

「んなっ、暇ってわけじゃ!ちょっと!」

「ナァもうともかく今日は帰ってくれよ。僕は君と違って忙しいんだぜ。アポなし訪問に対応できるほど暇してるわけじゃない。明日だ明日。午前ならずっといるから来い」

嘘である

本当は明日は頼まれたスケッチをしに行くのだ

「絶対!絶対よ!約束よ?」

「わかってるよしつこいナ〜」←わかってない

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

骨折の治療を行なった男児

副鼻腔炎で高熱を出してブっ倒れた女性

脳梗塞で右足に麻痺の残る老人

そして、致命的なダメージを負った土方の兄ちゃん

 

四名のスケッチを取り、人里へ降りていた鈴仙うさぎにスケッチを渡して報酬をその場で受け取って小遣い稼ぎは終了した

早朝から歩き回ってスケッチを取り、指の運動にもなったとホクホク顔であった

適当な店で買ったつまみ食いで適度に空腹を満たし、午後からの仕事を考えながら帰路を歩いていると、いきなり目の前に射命丸がカッ飛んできた

「露伴先生早く帰って霊夢さんに謝ってくださいお願いします殺されちゃいますよ」

「なんであいつが僕の家に?」

「約束がどうこうって言ってましたけど、なにかお忘れじゃないですか?」

印象に残らなかったので記憶にならなかったこと、昨日適当にあしらったことを思い出した

「おいちょっと待てよ。あいつリップサービスってのを知らないのか...?」

「というか今日は、原稿を取りに昼に来いって言っておきながら不在だった件についても約束でしたが...」

「それについては心底悪かったと思ってるよ。だからこうして謝ってるだろ?大体、〆切の3週間も前に君には渡してやってるんだからそうカリカリするなよな」

「いや、それはまあ、いいんですけどね?霊夢さんはどうする気ですか?あんまりお金はないですけど露伴先生のお葬式は私の懐から...」

「君さァ〜〜!!助かる方法を考えようとかそういうアタマはないのかよォォ〜〜??」

露伴は知らないからそういうことを平気で言えるが、そういうことはできないと射命丸は知っている

「とにかく一緒に謝ってあげますからっ...!なんとか許してもらって話し合いましょう...!」

ちょっとした茶菓子を三人分買って、急いで帰った

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

アフリカに生息するとあるシカの仲間には、超能力に近い能力があると言われている

ハイパー・センス(超感覚)と言われているもので、近縁種と比べても危機察知の能力が非常に高いという

野生動物の感覚の鋭さでは説明のつかないほど遠くから危機を察知するというが、もしそのシカがこの場にいてもそんな能力は必要なかっただろう

きっと逃げ出していただろうから

必要なかった。というのは、今まさにこの場がハイパー・センスで捉えたらその場で泡を吹いて倒れてしまいそうなほどの空気だったからだ

「やい、射命丸編集部長さんやい...なんだい、この、空気...」

隣を見るとガタガタ震えている射命丸

ボソボソ口を開くと、なにかを言っているのはわかるが、奥歯のガタガタという音で掻き消えた

霊力混じりの殺気が進むにつれ、家に近づくにつれどんどん濃くなっていく

「この、殺気が、露伴、せんせい、のお宅から、近くから、出てて、それで、」

と言ってバッタリ座り込んで、ゼェーハァーとしている

殺気の混ざった濃い霊力にアテられたのだろう

露伴は純粋な人間であるから、互いの妖力や霊力が干渉してしまってアテられるということはない

そもそも、スタンドはそういった能力とは別系統の能力であって、混ざることも干渉することもないのだ

だが逆に言えば、混ざらないということは、外から見たら筒抜けというわけで...

「ムッ、霧だと...?」

さーっと霧のようなものが辺り一体を包む

霧に触れた射命丸の肌が軽く火傷をしているように見えるのから、恐らくは相当に濃い霊力か、殺気が特に濃く混ざったものかだろう

遠くから聞き覚えがあるような声がする

『岸辺〜岸辺エエ、露伴ンン〜』

多少枯れてはいるが、すぐに巫女の声だとわかった

声の聞こえる方向は殺気の来る方向だ

動けない射命丸を置いて、スタスタと霧の奥へ進んでいくと呆然と立つ巫女がいた

「『天国の扉(ヘブンズドア)』」

 

殺気混じりの霧はたちどころに消えていった

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

ボソボソした茶菓子を食べながら霊夢の話を改めて聞く

「この話、本来なら紫のとこの九尾がやる仕事だったんだけど、当の本人の紫が『露伴に相談しろ』って言うからここへ来たの」

「オイオイ、なあちょっとオイオイ。まさか、オイオイ。君まで僕に描けなんて言わないよな?」

「?全く状況が飲み込めてないんだけど。いや、絵の話じゃなくて、あんたって外から来たんでしょ?だからさ、あれるぎー?ってのを聞きたくて」

「それこそ医者の領分だぜーっ。僕は医者じゃない漫画家だぜ?一般教養の知識しかないが、それでいいのか?」

餅は餅屋...である

専門家でない意見を言ったところで正確なことも伝えられないし、踏み込んだ質問にも回答できない可能性がある

「アレルギーってのは、免疫、つまりは身体から異物を排除しようって反応が原因だな。これだけ聞けばよくわからんって話だが、アレルギーは過剰反応だ」

「それって、例えば、アレルギーは風邪をひいたら高熱が出る...って意味?」

「だからさァーッ!僕は医者じゃないって言ってるだろ?僕は漫画家という職業にプライドを持ってるップライドだぞ。テメーは今ッ、仕事に対して真剣に向かう全ての人間を侮辱してるぜ」

文も霊夢もポカーンである

「帰ってくれ。君とは話したくない」

「ハァ?ちょ、岸辺露伴!?」

「八意って知ってるだろ?そいつのとこに聞きに行けよ。君が知りたいことが聞けるんじゃないか?それか八雲だ。あいつを呼んでこい」

家から押し出して、口をつけなかった個包装の茶菓子と一緒に放り出した

「茶菓子の一つくらい遠慮するなよビンボー巫女」

とはっきり言ってやった

状況に置いてけぼりの文は固まったままだったのでそろそろ追い出そうと思って、原稿の話を振った

「で、キミは原稿か」

「原稿もですけど、露伴先生、お聞きしたいんですけど、さっきの霊夢さんの怒りってどうやって鎮めたんですか?」

「ン、まあ...ちょっとした催眠術のようなものが使えてね。それでちょちょーっと鎮めたんだ」

「そんなことが...」

「エジプトに取材旅行に行った時に小汚いババアに教えてもらったのさ」

語りすぎず、会話の主導権を相手に渡さないペース配分を行えば、人は深く追求しない

催眠術の前後の記憶がはっきりしないとも付け加えておけば、1:1の場面では催眠術を実際にやろうとやるまいと大差はない

原稿を渡して文を帰らせて、机に向かって仕事を始めたのは午後三時を少し回った頃だった

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

仕事を終えたのは午後七時前

いつもより始めたのが遅かった分長くかかってしまったが、どうやらナイトルーティンを始めるわけにはいかなかった

先程から気配がするのだ

しかも二人いる

「...?」

忘れ物を取りに文か霊夢が来たのかと思ったが否定した

仮にそうであっても、それではもう一人の気配の説明ができない

「家主の許可なく他人の家を物色なんて悪趣味なんじゃあないの?八雲さんや」

「露伴先生ェ〜〜!バレちゃった⭐︎」

キラーンと星のようなエフェクトがアニメなら出ていただろう

八雲紫である

「他人の家に勝手に上がり込むなんてことが出来るのは君くらいだろうとは思ってたぜ。本当に一言も断らずに入って来るとは思ってなかったが」

「いけずゥ!ちょっとお茶しましょうよ♪。晩御飯まだでしょう。ご招待いたしますよ?」

態度がいやらしかったのが気に入らなかった

それこそ、少し脅迫じみた嫌な態度であった

この岸辺露伴、八雲紫の『顔』を評価していなかった

彼女のそれはどのような表情でも裏があるようなそういう顔に見えてくる。それは不幸な顔だろうと思った

「お茶くらいなら付き合うけど、晩御飯までご馳走になっちゃ悪いよ...」

「『アレルギー』でもありましたか?」

「ヘェ!図星かい...」

九尾こと八雲藍がお茶を持ってきた

二人の気配は紫と藍であったと納得顔である

「改めて聞きます。嘘はいけませんよ?」

同じ殺気である

八雲紫と博麗霊夢、深い関係にあると聞くが、それはその殺気が証明した

親子のようであると無意識のうちに思った

「奇妙な経験をたくさんされてきた人であると見込んで、もしかしたらと思っています。こちらもはっきり申し上げますが、アレルギーというものについて、『その力』で見たことはありますか?」

まっすぐな目であった




次回更新未定


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幻想郷の奇妙な事件簿 第二十話

私は学生時代、量子の研究をやっていましたが、今になって考えてみると、医学というのも面白い学問だったのかもしれないなとは思いますね


「『天国の扉(ヘブンズ・ドア)』は読むだけで、支配するなんて部分はオマケだよ」

興味深いと言った様子で身を乗り出している

「女の子に対して『男になれ』と書き込んだってオチンチンが生えてくるワケじゃあないし、現実を書き換えるなんて次元はできない。まあ、『そういうこと』だ」

「その次元まで、干渉できなかったということですか。実に面白い...」

「つまりはそういう生理的なこと、現実的に関わるような場面において天国の扉(ヘブンズ・ドア)は無力だった。それが僕の限界だったんだろう。そういえば昔な、アレルギーについても見てみたことがあるんだ。顔も思い出したくないがクソッタレの知り合いがいてな...ソイツの友達は僕の親友だからってのでカフェでケーキ食ってたんだ。ケーキだぞケーキッ!僕が奢らされたんだッ!いくらしたと思う?800円だぞ800円ッ!あのクソッタレのために800円だ!康一くんの卒業祝いにカフェを奢ったらあいつと、アホの億泰まで付いてくるなんて思ってなかったよ...こればっかりは僕のミスだね」

「あの、その方への恨み言はいいので...」

途中から私怨になってきたので切り上げさせた

「フン、それがな、アイツ、ケーキに使われた着色料にアレルギーがあったらしくってな、しかも本人もそのこともアレルギーも知らなくって、食ってる途中でぶっ倒れたんだよ。とうとうクソガキがぶっ倒れたかってついニヤニヤしちゃってな。救急車が来るまでの間、そいつを読んでたんだけど、どうしても書き込めなくってな」

岸辺露伴は『クソッタレ』のことになると饒舌になった

いつもは近寄らせないような空気を纏っている分、こういう時は素直でもある

「最低」

「マジモンのクズじゃないですか」

非難の声は当然である

「マ、変えられないことだってあるってことだろうな。なにかしら、少なからずそういう『運命』ってのがあるんじゃないかって僕は思うけどな」

「もうこれで十分です。ありがとうございました。晩御飯...食べます?」

「イヤッ、遠慮しとくよ...」

妙なところで潔癖症であった

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

世の中には珍しいアレルギーがある

柑橘アレルギーなんてのもあるし、ニンニクアレルギーというものも存在する

ある意味、明確にそうだなどという検査結果は、特定のものを摂取したときにこうなるという事実関係においてはあまり意味を持たないのである

プロセスは不明でも、それは結果としてそう起こっているからそうとしか言えないだろう

 

ある意味で科学をやる人間である以上、八意医師は困っていた

語弊があった、悩んでいるとも言えた

 

「八の字困り眉はシワになるぜ?」

「岸辺...露伴?」

「オイオイ怒るなよォ〜!なんかさァ、見てらんないぜソレ」

無意識のうちに浮かんだ青筋を理性で沈めると、なにかが吹っ切れたような気分になった

「一昨日納品したスケッチ、役に立ってるかなって思って来てみりゃツレない顔してたからな」

「そうでしたか?」

「酷い顔だぜ。しばらく食ってないって顔だし、寝てない顔だ」

確かに机に向き合ってこの現状に悩み始めてから、どれだけの時間が過ぎたかを把握していない

不老不死に甘えては医者の不養生になってしまう

そうなってはお笑い種である

「あの八雲紫が、来ましたよ。ここへ」

「ヘェーっ、アレ、風邪薬でも取りに来たのか?」

「その件は岸辺露伴に相談してみろって言ってましたよ」

露伴はクラリと眩暈を覚えると同時に腹が立った

「オイオイ、ちょっとさァ、オイオイオイオイ。君たちちょっと変だぜ」

「もちろん私もあなたに頼るなんて絶対お断りでしたから、こうして机に向き合っているわけです」

「ワケ知りってことかい...天国の扉(ヘブンズ・ドア)は慈善事業のためのモノでもないんだが」

「もう先に言いましょうか。『アレルギー』を解決して欲しいんです」

 

『アレルギー』

『アレルギー』だ

またこの話だ

 

「謎のアレルギーの正体を調べて欲しいんです。スケッチを依頼したのは、アレルギーの調査名目です」

「取引ではしちゃいけない『ルール』があるはずだよな。嘘を言わないこと。隠し事をしないこと。公正に取引すること。『マナー』だぜ。信用がないねッ」

「無礼を承知でもう一度お願いしてもいいかしら?どうしてもこの件だけはフラットな気持ちで偏見なく見たままを描いてもらう必要があったの」

「僕が、この僕が嘘を描くような人間だって...?ふざけるんじゃあないぞッ!ボケ」

「これで私もあなたも信用がないでしょう?お互い0:0。納得?本題に入りましょう。便宜上アレルギーとは呼んでいますが、その正体はハッキリとしていないわ」

「ちょっと待てよォ〜〜!話は終わってないだろ!君、それじゃあまるで僕が『手伝う』、『結論』ありきで話してるってことじゃあないか!?」

「『症状』はアレルギーのそれと同じとしか言えません。そして血中アレルギー抗体の量も通常のアレルギーとは相違は見られない。ただただ原因だけが不明なの」

「話を聞けェェ!お前のその耳は飾りか?笑うぞ、マヌケ」

原因だけが不明などそれこそ科学の分野の仕事である

比較実験を繰り返せばいいだけの話だ

それをする時間も、知識も、人員もその気になれば用意できる状態でありながら、岸辺露伴に助力を求めるという状況を疑う

そういう疑問を素直にぶつけると意外な言葉が返ってきた

「なににも反応しないのです。全くの未知。科学のアプローチでは原因に判別がつかなかった」

「ますますおかしいぜ。それこそ、奇妙だ。抗体取れるんだろ?どういう症状なんだよ」

『会話』を諦めて話を聞いてみると面白いことをいう

たぶん、『芯』が強いんだろう

そういう、学者肌の気質は苦手ではない

「特定の場所、特定の時期、特定の食物を摂取すると発症する特殊なアレルギー反応(便宜上)よ。あなたが好きな『奇妙』じゃない?」

「そういう気質が気に入った」




5,000文字がパーになってしまいました(涙)
原因は、パソコンが落ちました

次回更新未定&次回完結
新規タイトル「噂のお客様」はゴールデンウィークごろに公開予定(予定変更あり)


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幻想郷の奇妙な事件簿 第二十一話

生物学、文化人類学など、今になって考えてみると、もう少しよく考えて学科を選ぶべきだっただろうなと反省しています
後悔はしていません


条件がある

どのようなものにせよ、条件があるのだ

 

『刻は満月』

『場所は森。竹林でも構わない。出来れば火を焚かないこと』

『腐った肉と、腐った果実を食べる。この時、腐った水でも構わない』

 

「なんていうかさァ、それ、ものすごくクレイジーな条件だよな?バカになんてしてないぜ?アタオカだとは思うが」

「いいから黙って従って。私が『雇い主』だから。私が上。あなたは下。別にいいのよ?あなたの助けなんてなくっても、時間はあるから、解明なんて容易いこと。鈴仙、そこの檻に近づかないこと!」

舐めたやがってと腹が立ったがそれ以上に好奇心がそれを殺した

大きな檻である

愛玩動物なんかを動物病院へ連れて行くときに使うようなケージではない

もっと大きな、熊?

「この檻、その『条件』に関わるのか?」

「条件とは別の理由で必要なの。あなたは死にたくないでしょ?私は別になくても構わないんだけど...」

「(やっぱりコイツ頭おかしいよなァ〜〜しかもコイツ()()で言ってるから尚更なんだよなァ〜)」

人のことを言える立場か?

というツッコミはさておき、檻の設置が着々と進んでいく

「今日が満月なのは都合が良かったな?」

「そうね?八雲が満月の日に訪ねろって言ってたんでしょ?」

そうこう答える前にさっさと行ってしまった

「八意様、これで最後です。第五次実験開始準備完了しました」

「よーし、あくびはすんだかしら?今日こそ突き止めてもう終わりにしましょう」

竹林に設置された檻に当該患者が連れてこられた

土方の兄さんである

腐った肉と水を食わされている

「うぇっ!う、う、」

しばらくして吐きそうになりながら堪えている

飲み込んだのか?アレを?

「吐き気がありますか?」

苦しみながら小刻みに首を振っている

それをどこか他人事のようにメモを取っている

「身体が火照りますか?」

首を横に振っている

「失敗ね。もう吐き出させて。お疲れ様。出していいわ」

ウジの涌いた腐肉と唾液とが混ざった腐った水が吐き出されなんとも言えない悪臭を放つ

「オイオイ...これじゃあまるで拷問じゃあないか。それはそうといい顔をしている。スケッチさせてもらっても?」

「スケッチは構わないけど...」

「アンタら狂ってる!こんなの食わせようなんて考えてるし、大体オメーはなんなんだよーッ!フザケてんのか!?顔を描くだ!?イケメンの俺っちじゃなくて体調悪い『今』をか!?舐めたマネしやがってよォォ〜!殺すぞ!?」

「おいこれッ!『失敗』じゃない!反応が出てるッ!『成功』してるぞ!?檻の外へ出た途端に反応してる!天国の扉(ヘブンズ・ドア)!書き込めーッ!」

意識を失って倒れ込んだ

「この攻撃性は?本人由来か、それとも全く別のモノか...」

「本来はもっと危険なんです。前回は私、五回も死にましたからね」

「そういう大事なことをなんでもっと早く言わないんだよ。早くいえば僕もなにか持ってくるくらいしたのに...ヘルメットとかな。まあいい。もう危険性はない。少なくとも僕は襲えないように書き込んだからな」

仕事が早いのである

「さて。ご開帳だな。『仁井橋仁三郎』次男なのに『三郎』。気に入らない。クソ親父」

「いやあの。そういうことを聞きたいんじゃないんです。開示可能な範囲でカルテ見せたでしょ?」

ちょっと怒っているような態度だが、妙に楽しそうであった

謎が解ける喜びか、はたまた全くの別のことか...

「『戌年戌の刻戌の方にて生まれる』これ生まれた時の記録じゃあないか?カルテと照合してみるか」

その後もカルテと同じ情報がゾロゾロと読み解かれてきた

病歴や怪我の程度と箇所...抜いた奥歯が真横倒しで酷い目にあったこと...

「信用してなかったんです。本音はね?胡散臭い八雲がいうことだから、眉唾ってわけです」

生まれ・生い立ち・家族構成・好き・嫌い含めて赤裸々にしたが、八意の思う望んだものはないように思える

イライラが募っているのが、聞くまでもない

調べているうちに時間だけが過ぎて、日が上りつつあった

「...ナァ。この際だからな?いっそ気にしないってのはどうかな?」

「はぁ?」

「君が欲しい情報はどこにもなかったんだ。天国の扉(ヘブンズ・ドア)をもってして、欲しい情報がなかったってのは、そりゃ、相当難しいことだぜ?」

「...貴方になにか頼もうなんて考えた私がバカでした。やっぱり自力でやるべきことでしたね。報酬は鈴仙から。お疲れ様」

プイとして帰って行った

『怒らせたかも』

などと考えながら、当てつけがましいものだとして落とし込む努力をした

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

アレから数週間経って、朝刊を読んでいた所に射命丸が飛んできた

「露伴先生!新聞読みました!?」

「今まさに読んでいるが?」

「それ南部日報じゃないですか。北部日報は取ってないんですか?」

「ないね。取る気もない」

「そっかぁ...じゃなくて!今日の北部日報読んでくださいよ!」

そう言って手渡してきたのは東部日報である

「君さァ、『北』を読んで欲しいのか『東』を読んで欲しいのかはっきりしろよ。結局どっちを読んで欲しいんだよ?」

「どっちもです。昨日北東の地区でたくさんの動物が暴れ回る事故があったの知ってますか?」

「それは知ってるよ。それでそれがどうした?」

「で、ここから先なんですけど。逃げ出した動物は全部八意医師が面倒見てるって話なんですよ」

「で?」

八意の名前を聞いた時から不機嫌である

「行きませんか取材?」

「動物なら見に行きたいな」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

永遠亭からは家畜小屋のような、動物特有のあの香りがしてきた

一体どれほどの動物を収容したのだろう?

「すみませェ〜ん!取材なんですけど!」

「すみませんお断り中なんです。写メもペケです」

鈴仙である

「露伴先生はこちらへ。射命丸さんはどうぞお引き取りを」

「露伴先生!あとで教えてくださいね!約束ですよ!」

引く時は引く強かさがあるのだ

露伴は治療室へ案内された

実験の際に使われた大きな檻に三十匹ほどの動物が閉じ込められている

見えただけで馬・犬・豚・猫・インコ・猿・ビーバー・カワウソまで確認でき、種は違えど仲睦まじげであり、落ち着いているように見える

「お連れしました」

「ナァここって動物病院だったのか?」

「動物。そう。動物ね?」

ニタニタ顔でケラケラと不愉快に笑う声が嫌に耳に障るが、どこか興奮しているようにも見えるのが一層不気味であった

「なにがおかしいんだ?」

「これがアレルギーですって言ったらどう思われますか?アハハ?」

オーバーワークが祟ってどこかが壊れてしまったのかもしれない

不老不死は心は治せないのだろうか?

「せめて面白い冗談言えよ」

「ものは試しにそこの黒と白のマダラの犬を天国の扉(ヘブンズ・ドア)してみたらどうですかァ?」

これまた妙に甘ったるい声である

天国の扉(ヘブンズ・ドア)

 

『仁井橋仁三郎』次男なのに『三郎』。気に入らない。クソ親父」

 

天国の扉(ヘブンズ・ドア)に嘘はない...この犬がなぜ、あの青年と同じ情報を持ってる!?答えろ八意!」

「犬に変化してしまったのよ。全部。骨も肉も毛も。血液を調べたら抗原抗体反応がパーッって出てるの。信じられる?人が犬になってるあり得ないわアハハ」

どうしようもない事態に直面した時、まともなメンタルでは太刀打ちできないから意図的に心を壊すのだろうか?

「僕らが見ていたのは、人としての部分だ。そりゃそうだ。人間は、もとを辿れば動物だよな?だから人としての部分を見てばかりいたんだ...」

「『アレルギー』は『生理現象』!だから踏み込めなかったんだ!動物として本能的に拒絶する腐肉を喰った時!『動物側のアレルギー反応』が出たんだ!そしてそれがククク、より近い『戌年戌の刻戌の方』なら尚更犬に近いんだキャハハ」

「自然な形...もっといえばはるか昔。人間の祖先がネズミと大差ない姿をしていた頃か。野生を思い出したんだ。危機的状況により対処するために...!?」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

八意医師はオーバーワークにより倒れ、数日の休養を取ってその後職務に復帰した

動物になった青年を含めた動物らは危機的状況を脱したのか、元の人の姿に戻ったようで、元気に仕事をしていた

日常は戻ったのである

「それで結局、どうだったんですか?八意先生がお休みしてるって聞いてあ、なんかコレは記事にできないなって思ってたんですけど、個人的興味で気になって」

「『山月記』だ」

「はい?」

「『人間は誰でも猛獣であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な差恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ』だ。わかるだろ?強いストレスとか、危機的状況では内心や本性を露呈してしまうことがある。その一線を超えてしまった時。それが今回の騒ぎの原因だよ」

「よくわかりませんが...」

「人間ってのはそういうものだとだけでいいよ。そういう惨めなものなんだろ。きっと」

「(気になるのは、なぜ多くの住民が超えてはいけない一線を超えたのか...だ。誰かが、境目でウロチョロしてたのかもな?)」

 

超えてはいけない一線。その見極めは大切だろう




次回も楽しみに

次回更新はゴールデンウィークごろを目処に考えていますが、前後する可能性があります
また、花粉症にはお気をつけてください


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