目が覚めたら死亡フラグしかないクローンでしたとミサカは報告します (妹達10032号)
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第一話

 目が覚めたら、何故か液体の中にいた。

 

 肺呼吸をする生物として、息が出来ないという現状に対し、反射的に混乱と恐怖が頭を支配する。必死に酸素を求めて動き出すが、今は液体の中にしかいない。オレが必死にもがいたとしても、酸素を体内に求める事が出来ない。

 

 ……あれ? 普通に息が出来てる? 

 

 肺の中に液体が満ちている感覚があるのに、息が出来る。そんな何とも言い難い感覚が本当に気持ち悪い。一体何が起きているのかと疑問を抱いてしまうが、その疑問を解決する手掛かりも無ければ、予想する事すら出来ない。

 

 肺に液体が満ちながらも、息が出来るという違和感にも多少なりとも慣れてきた。違和感に慣れた事で出来た余裕を使って、周りを見てみる。そして、周りを見た事で分かった事はオレの周りには、狂気的な光景が広がっている事しか分からなかった。

 

 思わず吐きそうになってしまう程の気色悪さを感じてしまうが、口と肺の中に謎の液体が充満していて嘔吐く事すら満足に出来ない。

 

 周りに広がっていた光景は、同じ顔をした少女がオレと同じように液体が満ちた容器の中に入れられている。それと同じ物が360度見渡しても、終わりが見えない程に大量に設置されていた。

 

 世の中に同じ顔を持つ人が3人いるという事を聞いた事はあるが、片手、両の手では下らない程に同じ顔が周りに広がっていた。まるで複製したかのように。

 

 明らかに常軌を逸している光景に暫しの間、思考が数分ほどストップする。

 

 再起動を果たした今でも、今のオレの現状、周りに広がる狂気の光景、ありとあらゆる事に理解が追い付かず、思考は停止と再起動を永遠と繰り返す。

 

 だが、永遠のループの最中、ある事実に気が付く。オレが入る容器に反射して、僅かながらオレの顔が見える。そう、幼女の顔が。周りに幾百と広がる少女と同じ顔が。

 

 ふぁッ!?!?!?!?!?!?!? 

 

 オレは成人した男の筈である。にも関わらず、容器の鏡に反射しているオレの顔は、小学生にもなっていなさそうな幼女の顔。オレには、生憎と自分の顔が女性的だったり、整形した記憶すらない。

 

 1時間にも満たない間にも、幾つもの衝撃を経験したおかげか、違和感等に慣れる事が早くなってきた。

 

 多少落ち着いたが、オレの持ち前の低能で必死に考える。

 

 ここで目覚める前の最後の記憶は、夏休みを通して「とあるシリーズ」というラノベの一気読みを行っていた。ラノベを読む人なら大体は知っているだろうし、ラノベに疎い人でも聞いた事がある人はいるだろうという超人気作品である。原作は50巻以上。スピンオフ作品も膨大な数を誇る創作品なのだが。

 

 それの一気読みというのは、それなりに疲れた。全て読み終わるのと同時にベッドに突っ伏したのである。それで目が覚めたら、これである。

 

 うん、訳が分からない。

 

 一体全体、何が原因で、何があって、何でこうなったのか、起承転結の全てが全く分からない。疑問しか湧かず、何とかしてここから抜け出そうかと思ったその時、視界の端から白衣を着たウェーブの掛かった髪とジト目が特徴的な女性が現れた。

 

 誰だコイツ。口が開いたり、閉めたりしている事から喋っている事は何となく分かるのだが、オレが容器の中にいるせいか、何を言っているのか全く分からない。

 

 その女性の左胸の部分に名札が付けられているのが見える。水の中にいるせいで多少見えにくいが、目を凝らしてみると、何とか読めた。

 

 名前は「布束砥信」であるらしい。

 

 ……うん? 何処かで聞いた事がある名前である。そう、最後の記憶で読んでいたとあるシリーズに出てきた名前だ。ある目的の為にクローンを複製する研究員であったが、他の研究員は複製したクローンを目的のための実験動物ぐらいにしか見ていなかった。

 

 だが、布束さんはクローンに情を抱き、色々と画策した研究者である。活躍する場面は少ないが、個人的に好きなキャラの1人だ。

 

 要するに、オレが知っているとあるシリーズの布束さん砥信と目の前にいる布束さん砥信は、名前、容姿、全てが合致している。

 

 ちょっと待てよ。まさかとは思うが、1つの予想が出来てしまった。

 

 そういえば、周りにいる幼女やオレの顔には見覚えがある。幼女の微笑ましさを持った顔。肩まである茶髪のボブカット。それはとあるシリーズにて幾度か描写されていた「御坂美琴」というキャラの幼女姿そのもの。そして、オレの何の感情も映さない無表情に、ハイライトのない瞳。

 

 ちょっと待てよ。オレは、知ってるぞ、これ。この顔。

 

 オレってば、まさかの妹達(シスターズ)だったりする……? 妹達(シスターズ)というのは前述した「御坂美琴」のクローンである。

 

 いやいや、ないない。これは夢に違いない。寝て起きたら、何の取柄もないオレがとあるの世界にいて、妹達(シスターズ)の内の1体になってるとか、意味が分からな過ぎるだろ。

 

 きっと、1回寝たら見慣れた天井が見えるに違いない。そうに決まってる。

 

 そうと決まれば、お休み。さらば、とある夢想の想像世界。ようこそ、とある現実の平凡世界。お願いだから、夢から目覚めてくれ。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 はい、あれから1週間半程経過しました。ここが夢ではない事がよく分かりました。

 

 オレが入っていた容器は、培養器であり、オレというクローンを成長させる為の機械であった。そして、大体中学生程度の身体にまで成長した辺りで培養器の外に出されたのである。

 

 流石は学園都市上層部公認の裏施設とでも言うべきか、研究施設はそれなりの広さがあるようで、クローン各々に狭いが、独り部屋を与えられている。

 

 天井にカメラが付いており、四六時中監視しているのでプライバシーもへったくれもないが。クズ研究員共にとってのオレ達は、単なる一方通行(アクセラレータ)絶対能力進化(レベル6シフト)計画の為の実験動物なだけだから、オレ達に人権などないのだろう。

 

 絶対能力者進化(レベル6シフト)計画というのは、オレみたいな御坂美琴のクローンを2万体用意し、最強の能力者に殺させることでその能力者を更に上の次元へと上げようというろくでもない計画なのだ。

 

 ただ、オレはオレであると他の妹達(シスターズ)との差別化を図りたかったから髪をゴムで纏めて、短めのポニーテールにしている。ついでに趣味で全妹達(シスターズ)に配給されたゴーグルを黒色のバイザーに改造したりしている。F〇teのセイバーオ〇タでバイザーが好きになったのはオレだけじゃないはず。

 

 ちなみに、改造に必要な部品は布束さんから貰った。やっぱり、布束さんはこんなクズだらけの施設の中の唯一の良心では無かろうか。

 

 そして、今は学習装置(テスタメント)を用いた学習を行っている最中である。学習装置(テスタメント)とは、五感全てに対して電気信号を送り、人格形成、知識の習得、技術の活用、ありとあらゆる事を即座に脳に学習させる超装置だ。きっと、試験日が近い学生諸君にとっては夢のような装置だろう。

 

 オレも学生時代にこんな装置が欲しかったです。

 

 ただまぁ、知らない筈の知識が頭に埋め込まれるのは、中々に気持ちが悪い。

 

「今日の分は終わりよ」

 

 オレが付けていた学習装置(テスタメント)を布束さんが外してくれる。どうやら、今日の分の学習装置(テスタメント)は終わりらしい。学習装置(テスタメント)は脳にそれなりに負荷がかかるので膨大な情報を脳に書き込む場合は、数日かけて行われるのだ。やる事終わったので布束さんとは今日の所は別れる事になる。だが……

 

by the way(ところで) 何か話したい事があるとか言ってたわね?」

 

 そう、オレは彼女に話があると言っておいた。きっと、他の研究者にこんな事を話した所で一蹴されるのが、オチだろうが、クローンであるオレ達妹達(シスターズ)に情を持ち、とある個体に感情のエッセンスを注入したり、絶対能力者進化(レベル6シフト)計画を阻止する為に動いていた彼女ならば、このお願いを受けてくれる可能性が高いと思っていた。

 

 それに彼女も研究者。命令通りに動く感情無きクローンであるはずのオレが自発的な行動を起こす事に何らかの興味を示す可能性が大きいとも思っていた。

 

「オレの外出の許可が欲しいとミサカは貴方にお願いします」

 

 オレの口調は、強制的に「~~とミサカは○○します」という特徴的な口調に変換されてしまう。どう足掻いても、この口調は変えられなかった。「オレ」という一人称は、強制される口調へのほんのちょっとした抵抗のようなものである。最初は、この口調はバグだと判断されたが、どこを見ても異常が見られなかった為、放置されている。

 

 まぁ、それはさておき、外出許可こそが布束さんへのお願いである。

 

 オレのそのお願いは、余程に想定外の事であったらしい。一目で分かる程に目を見開いている。

 

「……理由を伺ってもいいかしら?」

 

 その顔を見ると、どうやら中々に好意的な印象なのかもしれない。布束さんは、学習装置(テスタメント)の監修を行っていたりしたので、妹達(シスターズ)の責任者ではないとはいえ、それなりに高い地位にいるはず。そんな彼女を味方に付ける事が出来れば、困る事にはならないだろう。

 

「オレたち妹達(シスターズ)は負ける前提とはいえ、一方通行(アクセラレータ)を殺すように命令されています。ミサカネットワークや学習装置(テスタメント)によって、ある程度の一方通行(アクセラレータ)や外界の情報を知れますが、それだけでは不十分です。研修で外に出る事は出来ますが、それも数日だけです。あまりに時間が少なすぎます。だから、早めに外に出る事で一方通行(アクセラレータ)や殺す手段等の情報収集を行う為に外出したいとミサカは長々と言い訳を貴女に説明します」

 

 ただの素人が思い付いたような言い訳である。やれ、布束さんには好意的な印象を与えるとか自発的に行動して研究者としての知的好奇心を抱かせるとか頭良さそうに言ったが、ぶっちゃけ断られる可能性は99.9%ぐらいと思っている。

 

 学習装置(テスタメント)とかのおかげでオレの頭は前世よりも遥かに演算能力が向上している。だが、上手い言い訳が思い付くような柔軟な頭脳は獲得していない。つまり、基礎をめちゃくちゃ固めているが、応用が苦手というあまり使えない頭脳の持ち主がオレだ。

 

 駄目だろうなぁとか思いながら、考え込む布束さんを見つめる。やがて、口を開いた。

 

「とりあえず上に申請してみるわ。But(けど) あまり期待しないでもらうと助かるわ。Well then(それじゃあ)今日の学習装置(テスタメント)の使用は終わりだから部屋に戻ってなさい」

 

 おぉ、まさかの返答である。ただし、了承した布束さんもあまり申請が通るとは思ってもいない様子だ。それはそうだろう。妹達(シスターズ)は学園都市上層部の公認とはいえ、それでも学園都市の闇の研究筆頭である。バレれば、多少面倒な事になるだろう。

 

 ただし、布束さんとの大きな関わりを持てた事を大きな成果と思っておこう。

 

「失礼しますとミサカは挨拶をしながら退室します」

 

 部屋から出て、オレの部屋へと歩いて行く。

 

 ……どうせ駄目なんだろうなぁ。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「外出の申請通ったわよ」

 

 今日の分の学習装置(テスタメント)使用が終わった後、布束さんから衝撃の言葉が告げられた。暫しのフリーズをした後に漸く口を開く。

 

surprised(びっくり)とミサカは貴女の真似を試みながら驚きを口にします」

 

 からかい半分で布束さんの真似をすると常時よりも更にジト目と化している。

 

「……貴女、他の妹達(シスターズ)に比べて良い性格をしてるわよね。他の個体とは脳波も同じだけど、唯一の大能力者(レベル4)なのに、何故か他の妹達(シスターズ)とは何かが違う。That' why(そんなだから) 貴女は異常個体(ミサカイレギュラー)なんて呼ばれるのよ」

 

 異常個体(ミサカイレギュラー)。それはオレの異名である。打ち止め(ラストオーダー)番外個体(ミサカワースト)等の特別な役割が無いにも関わらず、他の妹達(シスターズ)とは明解な違いがあり、一人称が「オレ」だったり、色々な要素から異常であると判断され、変な異名が付いた。

 

 施設の研究者達に何度か変な装置を付けられ、検査された事もあったが、検査結果はよく分からないというものであった。まぁ、脳も身体も妹達(シスターズ)と同じで違うのは魂が前世では男だったというくらいだから、魂を観測するぐらいしないと違いが分からないだろう。

 

 魔術サイドなら違いぐらい分かりそうだが、科学サイドであるこの施設ならば、調査するのは難しいのかもしれない。

 

 勿論、それを馬鹿正直に言う訳がない。良くて実験祭りか記憶消去、悪くて解剖である。「前世が男なんです」とか言えば、間違いなくエラーでも起こしたと思われるだろう。オレの頭の初期化が行われるか、能力者に記憶を覗かれれば、前世を持つ稀有な実験動物として脳を解剖される光景が目に浮かぶ。

 

「オレは至って普通の妹達(シスターズ)であると異常呼ばわりする貴女方に訴えます」

 

 勿論、嘘ですとミサカは内心で自分にツッコミを入れます。なんて変な言葉を内心で呟く。

 

「……それもそうね。妹達(シスターズ)を生み出して使い潰している異常な私達に異常なんて呼ばれたくないわよね」

 

 やべぇ、まさかの方向に飛んで行った。ただ単純に本当の事を言える訳がないから否定しただけなのに、ネガティブな捉え方をしてしまった。確かにそう捉える事が出来るかもしれないけど、思考がネガティブ過ぎじゃないだろうか。

 

 オレ個人としては「人を異常呼ばわりしてごめんなさい」程度の答えを予想していたのに、重すぎる返答に思わず詰まってしまった。

 

「あ、えっと、決してそんな意図はなくてですねとミサカは慌てながら否定します。いや、一人称が「オレ」だったり、髪形を変えたり、ゴーグルを改造したり、他の妹達(シスターズ)とは多少の違いがあるのは自分でも分かっててですねとミサカは自分が変というのを認めながら答えます。ただ、ちょっと異常と呼ばれるのが心外とでも言うべきか、自分が変なのは認めますが、ちょっと──」

 

「ふふっ。もしかして、慰めようとしているの?」

 

 どうにかして先程の言葉を撤回か訂正しようと四苦八苦しているオレの様子を見てか、布束さんに笑われてしまった。その笑いを聞いたおかげでオレの思考が冷却化した。上手い言葉が見つからず、何とかしようとしている自分を顧みて、恥ずかしくなってきた。

 

 相も変わらずオレの表情筋は仕事をしないのでバレる事は無いだろうと思うが。

 

「それで外出についての注意事項が幾つかあるわ」

 

 やはりと言うべきか、外出許可には色々と制限があるらしい。

 

 他の妹達(シスターズ)と接触しない事。オリジナル御坂美琴と接触しない事。不用意に人が多い場所に行かない事。自分の番が来るまで一方通行(アクセラレータ)と戦闘しない事。

 

 他にも色々と注意事項はあるが、大事なのはそんなものだろう。

 

 外出許可の目的は、大きく分けて2つ。

 

 1つ目は原作をこの目で見てみたいというのがある。原作を知っている者として、それを直に見たいと思うのは当然だ。

 

 そして、2つ目は早めの内に一方通行(アクセラレータ)と接触する事だ。

 

 何故かって? 

 

 まず、オレの製造番号は10032号。

 

 絶対能力者進化(レベル6シフト)計画において、何体の妹達(シスターズ)が殺されたのかは具体的に覚えていないが、たしか10000体と少しだったはず。10032号は原作で虐殺される妹達(シスターズ)の内の1体である可能性は非常に大きい。

 

 そんな死の運命から逃れ、どうすれば生き残れるかを考える必要があった。

 

 考えた結果として、一方通行(アクセラレータ)の懐の内側に入る事。決して善人という訳でもないが、打ち止め(ラストオーダー)と接しているロリコンを見ていると、なろう系にいるような敵には冷徹、身内には甘い奴である事は明白。身内判定が滅茶苦茶厳しいが。

 

 だからこそ、あいつの内側にさえ入ってしまえば、実験の最中に躊躇ってくれる可能性が少なからずあるのではないかと考えたのだ。故に、早めに接触して、一方通行(アクセラレータ)がオレに情を移してくれるように動く必要があると判断した。

 

 一方通行(アクセラレータ)を打ち負かした原作主人公こと、上条当麻に接触し、一方通行(アクセラレータ)と戦ってもらう案もあったのだが、失敗する可能性が大きいと判断した。第1の理由は上条当麻にオレのオリジナルである御坂美琴が惚れて、偶に遭遇しているという事である。それでオレとオリジナルが接触した場合、ちょっと面倒な事になるのは想像に容易い。

 

 オレは死亡フラグしかない妹達(シスターズ)である。生き残る為にその死亡フラグを叩き折ってやる。

 




布束さんの口調を書くのむずくね……?


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第二話

 ボストンバッグ一杯に詰め込まれた銃火器を持って、外に出て来た。人通りが少ない夜の時間帯に。

 

 今の俺の姿は、顔を見られないように常にバイザーで顔を隠している。服は流石に常盤台の制服そのままは有り得ない。なので布束さんが適当に買って来てくれたフード付きの黒いジャケットを、これまた布束さんから貰った長点上機学園の制服の上に着ているのだが、下はミニスカである。スースーして恥ずかしい。

 

 俺の格好を改めて見てみると、見るからに不審者でしかないのだが、顔バレによって妹達(シスターズ)の情報が漏洩するよりも、不審者として見られた方がまだマシという事らしい。オレには不審者として見られたとしても、喜ぶような性癖など持っていないのでオレの心労は募るばかりであろう。

 

 ふと上を見上げてみれば、バイザー越しに暗い夜空を照らす三日月が見えた。そういえば、生まれ変わって初めて見た月だった。どうせなら、三日月より満月の方が記念日っぽくて良い気がするのだが。でもまぁ、オレに似ているのかもしれない。完全な満月ではなく、不完全な三日月。それとクローンであり、中身は全く別の中途半端なオレ。

 

 ……うわ、何考えてんだ。恥っず。

 

 恥ずかしい思考を頭の外に放り出して、隣にいる人物を見てみる。

 

 施設の外に出て来たオレの隣には、布束さんがいた。その手には黒色の携帯機器とカードが2枚置かれていた。それらをオレに差し出してきた。ナニコレというのが率直な感想なのだが。説明を求めるような視線を向けると、布束さんは口を開いて答えてくれた。

 

「外出記念日という事で幾つかプレゼントを渡しておくわ。私の連絡先を入れておいたから何かあったら知らせなさい。私の権限で出来る範囲ならお願いぐらいは聞いてあげる。一応、貴女を偽名だけど書庫(バンク)に追加もしておいたわ。And(それから) 私のクレジットカードだけど、貴女なら無駄な使い方はしないでしょうから渡しておくわよ」

 

 あれ、思ったよりも布束さんに好印象だったらしい。とりあえず受け取った物を見てみる。スマホに学生証にクレカとな。外出許可を取ってくれるばかりか、自分の連絡先まで教えてくれるとは思わなかった。確かに困った時に布束さんと連絡が取れるのは有難いし、学生証も身分証としてあっても困る事は無い。学生証を見てみると、長点上機学園1年生で名前は「布束忍」である。

 

 ……それについては何も言うまい。

 

 だけど、カードとかは流石に受け取れない。ここまでしてもらうと何故か罪悪感が湧いてくる。

 

「流石にこれは受け取れませんとミサカはカードを貴女に返却します」

 

 貰ったカードは布束さんに返そうとするが、全く受け取る気がない様子。返品は受け付けないという確固たる意思を見せ付けようとしているのか、両手を上げている。仕方ないのでポケットにしまっておくが、あまり無駄に使わないようにしよう。1円も使わない事をまだこの目で見た事のない姉にでも誓っておくか。

 

 そして、ここまでしてくれる彼女には疑問が尽きない。

 

「オレはただのクローンの内の1体に過ぎません。20000体いる内の10032号。それがオレです。単価18万という安すぎる命の実験動物(モルモット)に過ぎないオレをここまで気にかけてくるのかと優しい貴女に心底疑問に思いながらミサカは質問します」

 

「……私は優しくなんてないわ。貴女達妹達(シスターズ)を何千と見殺しにしておいて、漸く自分の行いに疑問を持ち始めたばかりよ。そんな私が優しいなんて言われれば、Maybe(たぶん) 殆どの人類が聖人よ」

 

 これである。オレに自意識が芽生えてから2週間が経過した。その2週間の間に何度か布束さんと話してみたのだが、オレ達妹達(シスターズ)と話す度に布束さんは苦しそうな表情をする。そんなに苦しいのにここに居続けるとは、やっぱり優しいと言える。

 

 殆どの研究員は自分達が生み出したクローンを人間とは思わない。たった2週間で培養器内で誕生し、中学生程度にまで身体を成長させたのを目の当たりにしてしまえば、それを自分と同じ人間とは思わないだろう。多分、オレも思えないだろう。

 

 結論として、オレ達みたいな実験動物(モルモット)を人として見てくれ、未来においてオレ達の為に行動をする布束さんは、やはり優しいのではなかろうか。

 

「それでもオレは貴女が優しい人であるとミサカは間違いなく認識しています」

 

 オレが言葉を撤回するつもりがないと判断したのか、布束さんは顔を手で覆って溜息を吐いた。その目から「もう駄目だコイツ」みたいな意志を感じる。手の隙間から見えるジト目は通常時より数割増しのジト目なのだが、俺の目の前では普通になってきたように思う。

 

「もう分かったから。貴女には何を言っても無駄という事が分かったから。誰かに見られない内に早くここから離れなさい。Well then(それじゃあ) またいつか」

 

 それだけ言って、布束さんは施設の中に戻って行った。布束さんにはお世話になった身だし、その姿が見えなくなるまで頭を下げ続けた。

 

 布束さんが見えなくなるまで頭を下げて、目的地に向けて歩き出した。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ……どうしよう。早くも金に困ってしまった。買いたいと思っている物があるのだが、それを買う有り金がない。5000円もあれば充分足りる程度の買い物であるが、今の俺は文無し状態である。ちらりとポケットの中にあるカードを見るが、いやいや有り得ない。使わないと誓ったその日から使うとか有り得ない。

 

 なるべく人目に付かないように裏路地を歩きながらどうしようかと考えていると、何かにぶつかった。顔を上げてみると人の背中があった。

 

「あ、ごめんなさい。考え事をしていて……とミサカは謝罪を口にします」

 

 ぶつかった人をよく見てみるとそれなりにガタイが良い。てか、明らかに事案現場だった。いかにもチンピラ風金髪の大男達4人が1人の男を囲むようにして立っている。囲まれている男はその場に腹を抑えて蹲り、唸っている。不良のスキルアウトの恐喝現場という事で間違いないのだろうか。

 

「んだてめぇ……?」

 

 外出する際の注意事項には、目立たない事とか厄介事に巻き込まれない事が含まれていたのだが、こう意図も容易く厄介事に遭遇するとは。目が覚めたら死亡フラグしかない妹達(シスターズ)になってる時点で察していたが、オレはついていないようである。

 

 こういう時は「不幸だ」とか言っておけばいいのだろうか。この世界の1人の主人公の口癖である。そんなどうでもいい事を考えている間は、勿論オレは一言も喋っていない。要するに無視。無視している事に苛立ったのか、男の1人が顔を真っ赤に染めて、口から唾を飛ばしながら叫ぶ。

 

「無視すんなや! でもまぁともかく。見られたんなら、ただで返す訳にはいかねぇよな!」

 

 オレがぶつかってしまった相手がいきなり大声を上げて殴りかかってきた。ただのトーシローのパンチだし、身を捻る事で容易く避ける。

 

「こんの野郎ッ!」

 

 ただの不審者でしかないオレに簡単に避けられたのに逆上された。解せぬとかいう言葉が最適なのだろうか。その後も何度も殴りかかってきたが、大振りで遅いだけのパンチなど避けるのは簡単である。学習装置(テスタメント)に習得した技術の中には格闘技術も含まれているのでそれなりにオレは腕が立つようになっている。

 

 ただ、学習装置(テスタメント)一辺倒だとやはり体と頭のズレがある。こういうスキルアウトとの戦いもそのズレを解消する良い機会なのかもしれない。

 

「おいおいどうしたんだよぉ? そんな変な奴ぐらいさっさと倒しちまえよぉ!」

 

 オレに殴りかかって来ている相手以外の3人は、どうやらパンチを手加減しているとか思っているらしい。目の前で腕を振るい続ける相手は出鱈目なパンチを何度も撃ったおかげか、それなりに疲れているご様子だが。はてさて、どうしたものか。逃げるか、応戦するか。2つに1つだ。

 

 ……あ、良い事思い付いた。

 

 今のオレは金欠ナウ。金が無い。そして、目の前にはカツアゲをしていそうなチンピラ4人組。

 

 もうここまでやればお分かりだろう。つまり、良い金づる見つけたという事である。

 

 オレに迫りくる拳をただ握って受け止める。クローンであるオレの体は弄られているので中学生女子程度の身体にしか見えないが、それなりに身体能力は高い。まぁ、別にオレは殴ったりする訳ではないのだが。オレは超能力者(レベル5)超電磁砲(レールガン)のコピー体である。オレの能力はオリジナルには劣るが、色々と頑張ったおかげで大能力者(レベル4)欠陥電気(レディオノイズ)に到達している。

 

 握った拳を伝って、相手に電流を流す。それだけでスタンガンを撃ち込まれたように相手は気絶する。体は崩れ落ちて、地面に倒れる。はい終了。

 

「てめぇ、能力者か!?」

 

 その様子を見て、残った3人の内の1人が叫び、後退る。その瞳には能力者への嫉妬、畏怖、憎悪、羨望。色々な感情が入り混じった混沌とした感情が見えた。

 

「相手は1人なんだ! 3人一斉にかかれば勝てる!」

 

 だが、1人がそう叫んだ事で何をどう勘違いしたのか、3人は俺を囲み、一斉にオレに飛び掛かってくるが、上に跳んで建物の壁に立つ事で拳を避ける。非能力者である彼らには、手が届かない高さの壁に立つオレに手を出す事は出来ないだろう。

 

 能力の応用で磁力を操り、建物に埋め込まれた鉄筋コンクリートに作用させる事で壁や天井に張り付く事が出来るのだが、やはり壁に立つというのは些か違和感がある。

 

「ちっ! 卑怯だぞ能力者! とっとと降りて来い!」

 

 オレに手出し出来ないと分かるや否や、阿呆な事を言いながら地団太を踏む男達。たった1人のオレに3人で襲い掛かってきたこの状況で奴らが卑怯とか言うとは思わなかった。自分達の事を棚に上げてよく言うよ。

 

 男達に呆れながら、視界の端でこちらを呆然と見る男を見る。その男は、スキルアウト達に囲まれ、痛めつけられていた男である。スキルアウト達の注目がオレに向かっている内にとっとと逃げろという意思を示すように見つめ続ける。オレの考えに気が付いてくれたのか、その男はオレに頭を小さく下げてから、路地裏から出て行った。

 

「あっ、待ちやがれ!」

 

 残った3人の男達の内の1人がその男を追いかける為に走り始める。だが、追いかける男との間に降り立ち、逃げる男を追いかけないように立ち塞がる。襲い掛かってくるが、先程と同じように避けるだけ。特に代わり映えのしない退屈な戦闘である。

 

 ぶっちゃけ、顔しか分からない名も知らぬ人を助けるような善性をオレは生憎と持ち合わせていない。あの人が可哀想だから助けたいとは思わない。ここでスルーしたとして、スキルアウトが逃げた男に追い付いたとして、その結末は想像に難くない。それを想像しただけでなんか後味が悪い。後味が悪いから助けた。それだけである。

 

 さて、あの男もそれなりに遠くに逃げた事だろう。これなら巻き込む事は無いだろう。オリジナルの御坂美琴よりも能力の範囲は狭いが、半径数メートル程度なら余裕で射程圏内だ。

 

 全方位に人を気絶させる程度の放電を行う。蒼い雷光が路地裏を満たし、夜にも関わらず白昼のように辺りは一瞬だけ明るくなる。

 

 男達は濁音だらけの汚い叫びを上げながら、白目を向けて地面に倒れた。

 

「どれほどの金を持っているのでしょうかとミサカは懐を漁りながら未だ見ぬ金銭に思いを馳せます」

 

 4人の男達のポケットには財布が入っており、中身を覗いて見る。闇の取引でもしたのか、それともカツアゲで巻き上げたのか。どちらか分からないが、財布の中には平均して数万程度のお金が入っていた。財布の1つずつから1万円札と小銭を少々拝借する。これは貸してもらうだけだから。奪う訳じゃないからセーフ。死ぬまで返さないだけだから。

 

「げへ、げへへへとミサカは万札を見てゲスい笑みを零します」

 

 それにしても、オレの口はどうにかならないのだろうか。自分の感情を勝手に口にしてしまう事が偶にあるのだ。オレ達妹達(シスターズ)の作成者はオレ達が反乱しないのか心配だったのだろう。感情を勝手に言うように、隠し事が出来ないようにプログラムすれば、反乱の意思をすぐに察知する事が出来るからだ。

 

 周りに気絶したスキルアウト4人組と財布から万札を奪う……じゃなくて、貸してもらうオレという絵面。なお、オレの容姿はバイザーで目を隠し、フードを深く被っている者とする。圧倒的不審者達の極み。

 

 さっさとここから離れる事にしよう。そして、目的の物を調達する事にしよう。

 

 その前にアンチスキルにスキルアウト達が路地裏で気絶していたと一部嘘の報告をしておく。アンチスキルが来る前にオレは退散しておけば、問題ナッシング。

 

 良い物を貰ったよ、スキルアウト達。アデュー(さよなら)! 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 辿り着いたのは夜のスーパー。閉店まで30分程度という事もあって、人の数も殆ど無い。流石にめちゃくちゃ怪しまれそうなバイザーは上げておく。全身黒ずくめでハイライトのない瞳というヤバい姿をしたオレ。人の姿は殆ど無いとは言え、数少ないが人はいる。結果、めちゃくちゃオレに視線が集まる。

 

 この世界で妹達(シスターズ)の1体として生きていくには、この視線に慣れていくしかないだろう。

 

 これからの未来を憂いつつ、割引パラダイスのスーパーを堪能していく。そうは言っても、閉店間近のスーパーなので品薄状態なのだが。残っている品物を見つつ、どんな料理が出来上がるのかを考えながらスーパーを散策する。

 

 スキルアウト達から金を巻き上げた理由は、料理を作る為の食材を買う為である。

 

 それならば、何故料理を作る必要があるのかというと、すぐに分かる事だ。今はHIMITSU☆という事で。

 

 さて、買う物だけ買って、目的地へ向かう事としよう。

 

 ……スーパーを散策中に不幸な主人公を見つけたとだけ言っておこう。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ここだなとミサカは現在地を確認します」

 

 今の現在地は、とあるマンションの一室である。扉の横にある部屋番号を見てみると310号室。誰の部屋なのかというと……

 

 一方通行(アクセラレータ)の部屋である。



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第三話

妹達の口調も難しい事に気が付いたアホな作者です


この話を書いてて思った事は「オリ主があまりにもクソガキ過ぎてクズ過ぎる」です。
ご注意ください


 インターホンを鳴らす。今の時間は実験は行われていないはずだから、家の中にいると思うのだが、反応なし。ここに来る前にこのマンションのカメラをハッキングして、一方通行(アクセラレータ)がつい1時間程前にここに戻り、それから出ていない事は確認済み。間違いなく居留守である。

 

 もう1回インターホンを鳴らす。反応無し。インターホンを鳴らす。反応なし。

 

 成程、一方通行(アクセラレータ)はこのオレを無視するらしい。実験以外では自分のトラウマとなる妹達(シスターズ)とは会いたくないという事だろうか。そりゃそうか。だが、ここで引き返す訳にはいかない。生き残る為に。

 

 ……そっちがその気ならやってやろう。一方通行(アクセラレータ)妹達(シスターズ)を好き好んで殺している快楽殺人者でない事は分かっているので苛立たせたとしても、オレの命を消す可能性は低い。つまり、強硬手段が可能という事である。

 

 インターホンを連打してもいいんだが、居留守をしている一方通行(アクセラレータ)如きに連打するのは面倒。インターホン連打は嫌がらせには適切だが、連打というのは中々に疲れるのだ。

 

 ならば、どうするのか。話は多少変わるが、オレの能力は電気を操る。それを応用する事で磁力の操作、機械のハッキング等が出来る。ここで重要なのは機械のハッキングである。そして、目の前のインターホンは機械です。

 

 もうお分かりだろう。インターホンをハッキングして、毎秒10回程度鳴らすように仕様を変更してやる。はい、実行。

 

 きっと室内では甲高い音が鳴り続けている事だろう。だって、外にいる俺にさえ聞こえてくる程に喧しいのだから。

 

 ……あれ、ちょっと待てよ。今更ながらこの作戦の重大な欠陥に気が付いた。

 

 一方通行(アクセラレータ)は能力を使い、音の遮断とか出来たような気がしなくもない。ただし、四六時中も音の遮断をするとは考え辛い。音が無い生活というのは不自由だろうから、能力を解除する事はあるだろう。その解除の時にもインターホンが鳴り続けているのは、それはそれでストレスが溜まると思われる。

 

 そうすれば、いつか諦めて外に出てくれるかもしれない。

 

 そんな事を思っているとドアが開いた。ドアの隙間から白髪赤目の男の顔が現れる。その目は今から人を殺しそうな程の怒りが浮かんでいる。勿論、その殺意はオレのインターホン操作のせいであるが。殺意を抱く程度にはうざかったらしい。まぁ、出てくれたのでバグらせておいたインターホンを正常の動作に戻しておいてやろう。

 

 一方通行(アクセラレータ)の容姿はミサカネットワークを通じて、共有された視覚情報の中で見た事はあるが、自分の目で生の姿を見たのはこれが初めてである。原作の主要キャラをこの目で実物を見る事が出来た事に中々の感動を覚えてしまった。

 

 そんな初めて会った主要キャラである一方通行(アクセラレータ)の瞳に最初に浮かんでいたのは殺意。そして、俺の姿を見た事でその殺意は困惑へと変わった。

 

「オマエ、何もンだァ?」

 

 そう言われて気が付いた。オレの今の姿は何度も言っているように不審者みたいなものだ。黒いジャケットに身を包み、フードを深く被り、バイザーで顔を隠す変な奴。如何に一方通行(アクセラレータ)であろうとインターホンの嫌がらせをされて、ドアを開けてみれば不審者がいたとかいうカオス極まる状況に困惑するのも仕方ない。

 

 バイザーを上げて素顔を晒す。オレの素顔を見た瞬間、その瞳に浮かんでいた困惑は更に深くなった。

 

「なンでこンな所にオマエがいやがる。今日の実験は終わったはずだろォ?」

 

「確かに本日の全実験は終了しましたとミサカは肯定します。オレはあなたの為に料理を作りに来ましたとミサカはここに来た目的を伝えます」

 

「…………………………………………はァ、そォかよォ。じゃあなァ」

 

 永遠に続くかと思われた沈黙の末に一方通行(アクセラレータ)は現在の状況を理解する事を拒んだらしい。その目が「面倒くせェ」という意思をオレにひしひしと伝えていた。

 

 開けていたドアを閉めようとしたので慌てて足を滑り込ませて、ドアが閉められるのを防ぐ。オレの動きに驚いたものの、オレの異常行動に一方通行(アクセラレータ)は慣れたらしい。こちらに目を向ける事もなく、ドアを閉めようと力を込める。

 

 ちょ、痛い痛い! 足が千切れるッ! 

 

「痛いです足が千切れますオレを部屋の中に入れてくださいとミサカは暴行を加えるあなたに苦情と願いを言います」

 

 この体は、どれだけ感情を荒ぶらせたとしても、その感情は口調に反映される事は少ない。感情を表す事が出来たとしても、その口調は平坦でしかない。自分の口調と感情の差異に違和感を抱かずにはいられない。つまり、どれだけ痛かろうとそれが一方通行(アクセラレータ)にはあまり伝わらないのである。

 

 あぁ、痛すぎて泣きそう。

 

「だったらァ、オマエが足を退ければいいだけだろォがァ!!」

 

 ドアを少し開いては勢いよく閉めるという動作を一方通行(アクセラレータ)が何度も繰り返す事でオレの足にとてつもないダメージが蓄積していく。けれど、一方通行(アクセラレータ)はオレに慈悲でもかけてくれたのか、能力を使う事なく、素の身体能力だけでそれをしてくれてるのが不幸中の幸いだろう。能力なんて使われた日には、オレの足は18禁指定になりかねない。

 

 まぁ、それでも痛いんだけど。どうにかして入れてもらう必要がある。よし、脅すか。

 

「このまま入れて貰えなかったらアンチスキルに彼氏に暴行を加えられて追い出されたと通報し、近隣の人には、ある事ない事ばかりを言い、更には先程のインターホンバグを何度も行うとミサカは足に暴行を加えるあなたに脅迫を実行します」

 

 オレが言った未来の光景を想像したのか、一方通行(アクセラレータ)はとてつもなく、それはもう凄まじい程に面倒そうな顔をした後に無言でドアを開けた。ドアを開けてくれたという事は、オレが家に入る事を許可したという事だろう。そこには渋々という言葉が付け加えられるけど。

 

「お邪魔しまーすとミサカは一方通行(アクセラレータ)の家に足を踏み入れます」

 

 一方通行(アクセラレータ)の家の中に入って、とりあえず一言。

 

「コーヒー依存症だったのですねとミサカは一方通行(アクセラレータ)にドン引きします」

 

 家のそこら中に空のコーヒー缶が幾つも転がっていた。無類のコーヒー好きである事だけは確かなようで甘めのコーヒーから苦めのコーヒーまで無数に大量に置かれていた。うん、趣味嗜好が良く分かる部屋だよね。それぐらいのコメントしか言えない。

 

 なお、一方通行(アクセラレータ)は俺を家に入れるだけ入れてベッドに寝た。オレの相手をするのは時間の無駄だと悟ったのだろうか。

 

「それでは勝手に冷蔵庫を使わせてもらいますとミサカは一方通行(アクセラレータ)に許可を取る事もなく、冷蔵庫を開けてみます」

 

 どうせ今日は一方通行(アクセラレータ)はオレが料理を作ったとしても、食べはしないだろう。オレがこの家に入る為に色々と画策したおかげでストレスマッハだろうし。

 

 買っておいた食材を冷蔵庫に入れようと開けてみると、想像したくはなかったが、やっぱりなという光景が広がっていた。冷蔵庫の8割弱をコーヒーが占めていたのである。そして、冷蔵庫の中に食べ物なんて殆ど無い。あるとしても、溶けないように入れてあるチョコレートぐらいである。能力の演算とかで脳が糖分を欲するのだろうか。

 

 買っておいた食材を何とか冷蔵庫に詰め込む。それが終わったら次は部屋中を探して、鍵を探すとしよう。何故かって? 合鍵を作る為です。

 

 玄関のすぐ近くに鍵が置いてあったのですぐに見つける事が出来た。仮にも学園都市第1位の家なのだから防犯性能が高い家なのかとも思ったが、そんな事は無さそうだ。家の鍵はそこら辺に置いてあるし、鍵の形状も単純な物らしい。

 

 まぁ、一方通行(アクセラレータ)の存在自体が最高性能の防犯機能みたいなものか。それに家の中にも特に価値のありそうな物はなさそうだし。

 

 とりあえず、スマホで検索して見つけた合鍵を作る方法を少しアレンジして試してみる。

 

 能力を応用して、鍵に磁力を付与させる。その後に外で拾ってきた砂鉄をくっ付ける。その鍵にテープを付けて、砂鉄で鍵の型を取る。次にそこら辺に転がってあるコーヒーの空き缶を砂鉄の刃で綺麗に真っ二つに切断して、平たく広げる。広げたアルミ板にテープを貼り付けて、砂鉄の刃で丁寧に鍵の型通りに切り取る。

 

 はい、完成。この家のドアで試してみたが、問題無さそうである。

 

 やっている事が完全に犯罪の匂いしかしないけど、気にしてはいけない。

 

 さて、とりあえず今日やる事は終了したし、寝るとしよう。それでどこに寝るのかという事なのだが、ここは大人しくソファで勘弁してやろう。一方通行(アクセラレータ)にここで寝てもいいか聞いても断られる未来しか見えないので、何も聞かずに勝手に使う事にする。施設のオレの部屋に備え付けられたベッドは硬すぎて嫌いだったから、出来れば普通のベッドで寝てみたいのだが、ここは我慢するとしよう。あのベッドと比べたらソファでも十分過ぎる。

 

 ソファで寝る前に一方通行(アクセラレータ)の寝顔を見てみる。整った顔立ちだし、能力で不必要なものは反射しているおかげか、肌は綺麗。顔も中性的なイケている顔なので目付きの悪い女子と言われても信じられる。こんな顔を見る限り、10000体弱のクローンを殺すような男には見えない。

 

 まぁ、一方通行(アクセラレータ)は男だから「一方通行(アクセラレータ)は女みたい」とか言ったら半殺しを超えて、10分の9ぐらい殺されるだろうが。

 

 一方通行(アクセラレータ)の寝顔を盗み見るのはこれぐらいにして、今は寝よう。

 

 ソファでもそれなりに寝心地良いし、すぐに寝れそう。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ぅん……」

 

 意識が覚醒する。うっすらと目を開けても部屋の中は暗いままだった。カーテンは完全に閉められているが、その隙間からは朝日が昇っていた。

 

 むくりと起き上がると、体に掛けられていた毛布がずり落ちた。

 

 あれ、なんで掛け布団がオレの体にあったんだろ。寝る直前には無かったはずなんだけど。一方通行(アクセラレータ)の方を見てみると、一方通行(アクセラレータ)自身が掛けていたはずの毛布が無いまま寝ていた。

 

 以上の事から察するに一方通行(アクセラレータ)は夜中に起きて、毛布をオレに掛けてくれたという事になるのだろうか。

 

 ……なんというか、うん。こんなだからアクセロリータとか呼ばれるんじゃないだろうか。

 

 毛布は一方通行(アクセラレータ)に返しておこう。一方通行(アクセラレータ)を起こさないように足音を立てずにゆっくりと動いて、キッチンへと向かう。

 

 キッチンに立って何をするのかと言えば、答えは1つ。

 

 一方通行(アクセラレータ)が起きる前にオレと一方通行(アクセラレータ)の2人分の料理を作ります。一方通行(アクセラレータ)との敵対を避ける為の第一歩として、胃袋を掴もうと思う。一方通行(アクセラレータ)の事だし、予め料理を作り、お願いすれば食べてくれる気がする。文句をぐちぐち言いながらも食べてくれる未来が容易に想像出来てしまう。

 

 さてと料理を作りますかね。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 作った料理は至って普通の朝食である。ご飯、味噌汁、焼き鮭、野菜の和え物とかである。

 

 何となく予想はしていたが、一方通行(アクセラレータ)の家のキッチンはヤバかった。普段料理をしないのが良く分かったよ。

 

 独り暮らしを始めた時に買ったであろう食器や鍋は埃を被っていた。そして、どこを探しても調味料の類は一切無かった。こんな事だろうと思い、昨日の買い物で調味料も買っておいて良かったと思うよ、本当に。

 

 料理を作り終わり、皿に盛っていこうとした時、ベッドから一方通行(アクセラレータ)が起き上がる。未だに眠たげに細められる瞳をこちらに向けるが、オレが料理をしているのを見た結果、目を大きく見開く。

 

「……ホントに何やってンだオマエ?」

 

 何ってそんなに難しい事ではないだろう。

 

「見て分かる通り料理を作っていましたとミサカは答えます」

 

「いや待て、ちょっと待て。料理を作ってるなンざ見りゃ分かる。なンでオマエは俺の家で! 俺の台所で! 勝手に料理してンだよってェ聞いてェンだよォ!」

 

 ご尤も。実験で殺し合いをしている妹達(シスターズ)が家に無理矢理上がり込んできて、勝手にソファで寝て、起きて見たらそいつが料理をしているのだ。しかも、2人分。そんな状況に遭遇すれば、誰だって混乱する事は間違いない。オレも一方通行(アクセラレータ)側だったら頭がこんがらがるのは確定だろう。てか、殺意を抱く。

 

 必死に思考を回して、最終的に現状を理解する事を諦めたのだろう。

 

「アホくせェ」

 

 一方通行(アクセラレータ)はそれだけ言って、外に出て行こうとする。ファミレスとかでご飯を済ませてくるつもりだろう。

 

 だが、ここで一方通行(アクセラレータ)を外に行かせる訳にはいかない。胃袋を掴みたいというのもあるが、一方通行(アクセラレータ)と話してみたいとも思っていたのだ。てか、せっかく2人分作ったのだ。どうせなら食べてくれ。オレ1人だけで2人分は食えるけど、お腹が苦しくなる事は間違いない。冷蔵庫に保存するのもありだが、コーヒーが多過ぎて料理を格納するスペースもないし。

 

 つまり、食えという事である。

 

 そういう訳で一方通行(アクセラレータ)の前に立ち塞がる。

 

「不健康にしか見えないあなたの為にバランスの良い料理を作っておきました。さぁ、一緒に食べましょう。せっかく勝手に作ったんだから食べてくださいとミサカはあなたのもやしボディを心配しながら朝食に誘います」

 

 俺を睨み、舌打ちだけして、一方通行(アクセラレータ)は引き返して、家の中に入って行った。

 

「やっぱり一方通行(アクセラレータ)はツンデレであったとミサカはミサカネットワークを通じて妹達(シスターズ)に報告します」

 

「…………オマエの飯なンて食うかよ」

 

 この後、めちゃくちゃ説得した。




合鍵の作成方法はネットでテキトーに調べて出てきた方法をテキトーに書いたものです。ミサカが一方通行の合鍵を無断で勝手に複製した程度の認識ぐらいでお願いします。こんなで鍵できる訳ねーだろとかツッコまないでください、お願いします。


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第四話

毎度の誤字報告ありがとうございます。マイページを開く度に上に「新しい誤字報告があります」と通知が来てビビりまくってます。

水金の週2定期投稿にしようか迷ってます。そこなら空き時間もあるのでね。

あっ、そういえば何時の間にか日間ランキングとかにお邪魔していてビビりまくりました。アクセス数とかお気に入り数が一気に上がったからランキング様は偉大だという事を再認識しました


 頑張って説得した結果、一方通行(アクセラレータ)は机についてオレが作った料理を食べてくれた。食べ切ってくれたから、オレが作った料理は気に入らなかったという訳ではないのだろう。

 

 やっぱり、一方通行(アクセラレータ)という名前よりもツンデラレータとかアクセロリータとかの名前の方が合っている気がする。一方通行(アクセラレータ)という名前を付けた奴は、間違いなく命名を間違えた。

 

 朝食を食べ終わり、オレと一方通行(アクセラレータ)の分の皿洗いが終わると一方通行(アクセラレータ)から席に着くように言われた。

 

「それでェ、オマエはなんだってこんな所に来たんだァ?」

 

 やっぱり、それを聞いてくるよな。嘘を言えば勘づかれる可能性がある。ならば、本当の事を言うしかないだろう。だが、馬鹿正直に「打算で」とか言う訳にはいかない。そういう事なので打算以外の他の理由を言おうと思う。

 

 オレが一方通行(アクセラレータ)の元に来たのは生き残る為だが、それ以外にも理由がある。本当の事を言いはするが、全てを言わないというのは、話術の基本だろう。話術の基本とか知らないけど。

 

「オレが一方通行(アクセラレータ)の元に来たのは、あなたの健康を心配しての事ですとミサカはあなたの完璧もやしボディを哀れみながら答えます」

 

「…………はァ?」

 

 オレの答えを聞いた一方通行(アクセラレータ)は、「マジで何言ってんだコイツ馬鹿だろ」みたいな目を向けられる。オレが一方通行(アクセラレータ)と接触してから似たような視線を、より具体的に言えば、アホの子にでも向けるような視線を何度も頂戴している気がする。

 

 一方通行(アクセラレータ)の目がオレに続きを言うように促している気がしたので更にここに来た訳の説明をする。

 

一方通行(アクセラレータ)は能力に頼り過ぎて、痩せすぎ筋肉なさすぎというダブルパンチのガリガリもやし君です。食事も外食や冷凍食品ばかりで栄養バランスが偏り過ぎて、未来にて戦う相手ながら心配になるぐらいにヤバいです」

 

「やかましい」

 

 本当の事を言ったら一方通行(アクセラレータ)が何か言っているような気がしたが、無視である。

 

「もし、食事が原因で実験が延期とかいう光景を想像してしまうだけで腹がねじ切れるぐらいには笑ってしまいます」

 

「オマエェ……!」

 

 何やら一方通行(アクセラレータ)の額に血管が浮かび上がっているように見えるが、軽くスルーしようと思う。

 

「そこでオレが一方通行(アクセラレータ)に健康的な料理を振る舞えばいいのではないかという天才的な発想に至りましたとミサカは自画自賛しながら説明を終えます」

 

 オレのナイスパーフェクト(仮)の言い訳を聞いた一方通行(アクセラレータ)は、額に手を置いて深く、それはもうとても深く溜息を吐いた。

 

「はァ、もう知らねェ」

 

 一方通行(アクセラレータ)は大きな溜息と1つの言葉だけを口から吐き出して、立ち上がった。その溜息には色々な感情が含まれているように感じた。まぁ、オレの奇行に対する呆れとか説得する事の諦めとか「もう駄目だ」みたいな感じの感情だろうけど。

 

「俺は実験行くからお前も家から出て行け。お前を家に残しておくと何を仕出かすか分かったもんじゃねェ」

 

「少しはオレを信頼してくださいよとミサカは先程までの自分の行いを棚上げして言います」

 

 何故、こんなにも一方通行(アクセラレータ)はオレの事を信頼してくれないんだろうなぁ。理由なんて大体分かってるんだけど。昨夜に急におしかけて、そのまま家で寝て、朝に勝手に料理を作り、無理矢理食わせた。うわぁ、信頼する要素皆無だな。

 

 まぁ、別にいいか。オレも外に出る予定だったし。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「それではまた夜に来ますとミサカは鍵を閉めながらーー」

 

 一方通行(アクセラレータ)と一緒に家から出て、鍵を閉める。すると、オレが話している途中だというのに後ろから一方通行(アクセラレータ)がオレの肩を掴んできた。一体何事だろうかと振り向いてみるとすごい剣幕でこちらを睨んでいた。

 

「おい、ちょっと待て。なんで家の鍵をオマエが持ってんだァ?」

 

 あぁ、この鍵か。

 

「昨日の内に複製しておきましたとミサカは密かにやっていた事を今更ながら報告します」

 

 そう言うや否や、一方通行(アクセラレータ)の眉間に皺が寄るのが目に見えて分かる。肩を掴んでいた手を放したかと思うと、今度はオレの頭を鷲掴みにした。そして、前後左右に振りまくり、脳がシェイクされる。

 

 脳が揺さぶられ、少し気持ち悪い。一方通行(アクセラレータ)はある程度揺さぶると顔を近付ける。息を吸い、そして口を開いた。

 

「なンで他人の鍵を勝手に複製してやがるんだオマエはァ!」

 

「急に叫ばないでくださいとミサカは耳の痛みを感じながら苦言を呈します」

 

「苦言を呈したいのはこっちだっつうのォ!」

 

 まったく、鍵を1つ程度複製されたぐらいで何を騒いでるのやら。例え、オレがどこかで鍵を落としたとして、その鍵で不法侵入者が来たとしても一方通行(アクセラレータ)の能力で瞬殺だろう。つまり、オレが鍵を複製した事は特に悪い事でもない。なんという完全無欠なQ.E.D。誰もこの完璧過ぎる証明を否定する事など出来ないだろう。

 

 完璧なる証明を一瞬にして導き出したオレは、肩を竦めながら素直にオレの気持ちを吐露する。

 

「ふっとミサカは一方通行(アクセラレータ)の器の小ささを鼻で笑います。あとはい、おにぎりです」

 

 予め作っておいたおにぎりを一方通行(アクセラレータ)に無理矢理渡して、すぐにオレは目的地へと向けて歩き出した。遥か後方から一方通行(アクセラレータ)の叫びが聞こえたような気がするが、きっと気のせいだろう。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 やって来ましたは、とあるバーガーショップ。別にスキルアウト達から金を毟り取ってもいい気がしなくもないが、それではスキルアウトと何も変わらない気がしたのでやめておいた。既に昨日やってしまっているが。あれは正当防衛と損害賠償という事にしておこう。

 

 そういう訳で正規の方法で金を稼ぐためにバイトをする事に決めた。

 

 それで何故にバーガーショップなのかというと、時給が良さそうだったからでしかない。出来れば、なるべく人目のつかない裏方のバイトをしたかった。例えば、倉庫の整理とか。だが、流石は最先端の学園都市という事だろう。大体の仕事は機械で自動化されており、バイトの求人は殆ど無い。仕方ないから堂々とバイトをする。逆に堂々としていれば、あんまりバレないかもしれないし。

 

 もし、御坂美琴の顔を知っている者が現れたとしても、オレには「布束忍」という書庫(バンク)に登録された偽名がある。ただのそっくりさんとごり押ししてもいけるだろう。

 

 そういう事で何のバイトをしようか迷った結果、バーガーショップとなった。

 

 事前に電話で連絡をしておいたらバイトの面接はいつでもいいと言われたので、早速やる事にした。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 経歴と名前が嘘しかない嘘(まみ)れの面接を終えた。

 

 面接での1番の問題点はオレの偽名が布束さんが雑に考えたであろう「布束忍」という名前であり、妹達(シスターズ)特有の「~~とミサカは──します」の「ミサカ」なんていう名前と偽名が矛盾してしまう。そこを面接官にツッコまれると面倒だ。

 

 そういう口調をどう誤魔化すか必死に模索した結果、強硬手段に出た。この口調は強制的に口に出てしまう。どう我慢した所で妹達(シスターズ)がそうプログラムされている為にどうする事も出来ない。ならば、どうするか。

 

 答えは簡単。口調を口に出さなければ良いだけだという事だったのだ。言葉だけは矛盾しているようだが、説明すれば分かってくれるだろう。

 

 声というのは声帯が震える事で発生する。脳からの信号が神経を伝って送られる事で声帯という筋肉が動く事で声帯が震える。

 

 そして、我ら妹達(シスターズ)のオリジナルである御坂美琴は能力を使って、麻痺して動かない体を電気で無理矢理動かしていた。それと逆の事を声帯でやる。

 

 声帯に送られる電気信号を支配して、阻害すれば、声帯は震えず、声が出ないのではないか。面接前に試してみたが、これが上手くいったのである。妹達(シスターズ)の「~~とミサカは──します」という口調は、先に言葉を出し、最後に具体的な行動の説明をするのが定型だ。

 

 言葉だけを言って、「ミサカは」と説明する前に信号を阻害する。そうすれば、妹達(シスターズ)の口調を言わずに済む。 何故にバイトの面接だけでこんな事をしなければならないのかと疑問でしかないが、仕方あるまい。

 

 布束さんから教えられていた携帯電話の電話番号を教えておいたので採用されれば、後日に連絡が来るらしい。早くて明日、遅くても3日の内に採用の通知があるらしい。学校にも行っていないので最高で週7行けるのである。めちゃくちゃ稼いでやる。

 

 面接も終わり、次にするべきは作業場の確保。人目に付かない所でやりたい事があるのだ。

 

 調べてみた所、学園都市第19学区が良さげな気がする。再開発しようとした結果、失敗してしまい、寂れてしまった可哀想な学区である。そこには廃ビルが立ち並んでいるらしく、人目がない場所が目的のオレには丁度いい場所だと思った。スキルアウト達が巣食っていそうだが、ちょっとぶちのめせば問題ないだろう。

 

 面倒になったら、適当にボコしてアンチスキルに丸投げするのもアリだ。まぁ、その時は慰謝料代わりに財布から諭吉さんを貰うけど。

 

 え? さっきスキルアウトから金を取らないって言ってた? 知りませんね。きっと人違い。いや、妹違いです。

 

 そして、見つけたのは第19学区の端の方にある廃ビル。19学区は学園都市でも端にある学区であり、その端ともなれば学園都市の端の端という事になる。だからどうしたという話になるのだが。

 

 見た限りだが、人が出入りした感じは無い。埃とか積もってるし、ここを拠点にしているスキルアウトもいないと見ていいだろう。

 

 調べてみた感じ、配線はされているし、電灯は設置されているが、廃棄されて久しいのか、電気は来てないっぽい。まぁ、その電気はオレの能力で流せば明かりとかは点くと思われる。だが、ビル内にあるのはそれだけで中は空っぽ。机とか椅子も何もなく、あるのはゴミだけ。

 

 まぁ、別にいいんだけど。

 

 さて、人目のない廃ビルで一体どんな作業をするのかと言えば、色々である。だが、その全ての作業の目的は同じ。なるべく来ないように努力していきたいが、来るかもしれない一方通行(アクセラレータ)との対決への備えだ。オレと一方通行(アクセラレータ)の対決は今から大体3ヶ月後。それまで自分の戦闘能力をどうにかして高めておきたい。

 

 その作業はそれなりに散らかる予定なので一方通行(アクセラレータ)の部屋でやった場合、ゴミが散乱し、一方通行(アクセラレータ)にブチ切れられる光景が目に浮かぶ。

 

 正直、オレの能力でどう工夫した所で一方通行(アクセラレータ)の万能の能力には勝てる気がしない。だが、この世界は色々と物騒だから、自分の戦闘能力を高めておく事は無駄にはならないだろう。()しんば一方通行(アクセラレータ)との戦闘を生き延びたとしても、その後には色々と待ち受けている事になる。全ては一方通行(アクセラレータ)との戦いを生き延びた前提なのだけれど。

 

 学園都市とロシアとの戦争とか北欧の主神とか神浄とか面倒な未来しか見えない。本当に主人公君には頑張ってもらいたい。

 

 実の所、レベル5に到達する目途は立っている。まだ理論段階なので実行すらしていないが、ほぼ確実にとある裏技を使えば到達する事が出来ると思っている。

 

 そうは言っても、後のインフレについて行けなければレベル5も有象無象にしかならないだろうが。とあるのインフレはヤバいのでレベル4程度のオレがどう頑張った所でミジンコがアリに進化した程度にしかならないだろうけど。

 

 まぁ、やらないよりはマシかもしれないと思っておく事にしよう。無駄になる未来しか見えないけれども。

 

 他にも戦闘能力が欲しい理由はある。

 

 それは学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーの存在である。アレイスターは幾つかの計画(プラン)を保有し、同時進行で進めている。とある世界の主人公である上条当麻とか一方通行(アクセラレータ)とかは計画(プラン)の1つだ。

 

 そして、アレイスターは計画(プラン)から逸脱した存在には容赦しない。

 

 例えば、レベル0の浜面(はまづら)仕上(しあげ)とか。アレイスターの予定では浜面という人物はある時に死ぬはずだった。だが、彼はレベル0にも関わらず、レベル5のある人物と戦い、辛勝し、生き残ってしまった。

 

 結果として、一時期アレイスターに計画(プラン)の障害と見なされ、アレイスターの駒である学園都市の抹殺部隊に命を狙われるようになってしまったのである。

 

 そして、オレは計画(プラン)から逸脱した行為をしようとしている。それが絶対能力者進化(レベル6シフト)計画への抵抗である。

 

 恐らく、アレイスターはその計画を上条当麻が阻止するのは計画(プラン)の過程と思っていいだろう。阻止するとは言っても、ある程度の妹達(シスターズ)の虐殺も計画(プラン)の内だろう。虐殺と上条当麻による阻止をきっかけとして、一方通行(アクセラレータ)は次のステージへと足を踏み入れる事になるのだから。

 

 果たして、アレイスターが妹達(シスターズ)虐殺をどこまで具体的に考えているのか分からない。

 

 もしかしたら、この個体までを殺させると考えているかもしれないし、半分程度殺しておけばいいだろうと雑に考えているかもしれない。

 

 流石にアレイスターの思考を読める程、彼の人柄を熟知している訳ではない。だが、もしも、前者だった場合。もしも、オレという妹達(シスターズ)10032号を殺すのが確定事項だった場合はどうなるだろうか。それから必死に生き残ろうと四苦八苦して、生き残ってしまったらどうなってしまうのだろう。

 

 浜面仕上という計画(プラン)逸脱者先輩の例を見てみると、抹殺部隊とかの影の組織に狙われる可能性が大いにある。

 

 てか、そもそもの話。上条当麻の介入は予見していたとしても、オレというクローンが生き残る為に色々と画策しているとは考えてもいなかっただろう。それを予測する為にはオレという前世持ちの人間がこのクローン体に宿るという未来を予測するしかないからだ。流石にアレイスターと言えど、前世持ちオレっ娘TS妹達(シスターズ)の登場を予測していたら、もはや変態である。

 

 まぁ、つまりだ。

 

 オレの死亡がアレイスターの中で確定事項の場合、絶対能力者進化(レベル6シフト)計画から生き残ったとしても、次はアレイスターという準魔神から命を狙われる訳だ。

 

 ダレカタスケテ(誰か助けて)




次回、主人公のちょっとした強化。お楽しみに!
なんちゃって科学の本領が発揮されます


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第五話

皆さん、ちゃんと勉強しましょう。
去年単位落として再履修で地獄を見た哀れ者からの助言です。
あ、今回から独自設定と妄想のオンパレードです


 アレイスターとか一方通行(アクセラレータ)とかは純粋に忘れて、強くなる事に集中しよう。今では性別は女であるが、前世では男だったのだ。男として強くなる事に憧れるのは仕方のない事だろう。

 

 さて、どうやって強くなろうかという事だが、まず1つは能力の強化。今のオレは大能力者(レベル4)相当の欠陥電気(レディオノイズ)である。技のレパートリーを増やす前に能力の出力増加、つまりは超能力者(レベル5)への進化をやっておきたい。

 

 方法は至ってシンプル。

 

 まず、能力を次のレベルへとシフトするに必要なのは2つ。自分だけの現実(パーソナルリアリティ)とそれを可能にするだけの演算能力。自分だけの現実(パーソナルリアリティ)というのは小難しい言葉に聞こえるかもしれないが、その内実は簡単だ。要するに自分の妄想を完全に信じ切る生粋の厨二病になれという事である。誰しもが「こうなったらなぁ」と思う事があるだろうが、その思いが現実になると強く思い込む事が必要になってくる。

 

 妹達(シスターズ)が何故に低能力なのかというと自分だけの現実(パーソナルリアリティ)が弱過ぎるせいだと思っている。クローンであるが為に自我が小さく、そのせいで自分の妄想を全く持っていないからなのではないかと。オレ以外にも後に大能力者(レベル4)の能力を持つ番外個体(ミサカワースト)という特殊な妹達(シスターズ)が登場するのだが、アレは絶対に自我が強い。

 

 そういう訳で自我の強さが大事なのである。オレの場合は前世というものがある為、自我は強い。あと能力など一般的でない前世に比べて、この世界は能力を身に付けるチャンスなど誰にでもある。能力への憧れと妄想は誰よりも強いと自信を持って言える。

 

 次に演算能力について。

 

 御坂美琴は作中において、一時的にだが超能力者(レベル5)の壁を壊し、絶対能力者(レベル6)へと至らんとした。したというより、させられたという表現の方が正しいだろうか。イカレた科学者がミサカネットワークの演算能力を利用する事で壁を壊したのだ。

 

 超能力者(レベル5)絶対能力者(レベル6)の間にある壁をぶっ壊せるというのなら、それよりも遥かに低い大能力者(レベル4)超能力者(レベル5)の壁を壊せるのも普通ではないだろうか。どうやって、ミサカネットワークの演算能力をオレに付与するのかという事が1番の鬼門となるだろう。

 

 だが、その点は全く問題ない。木原幻生がやっていたのと同じように、オレが演算能力を利用できるようなプログラムを作成し、ミサカネットワークを通じて、全妹達(シスターズ)にインストール済みである。

 

 ある出来事がきっかけで打ち止め(ラストオーダー)よりは弱いが、妹達(シスターズ)内においてそれなりの権限を保有している。ナンバーワンを打ち止め(ラストオーダー)とするなら、オレはナンバーツーである。その権限のおかげで特に大した障害もなく、諸々と実行する事が出来た。

 

 そういう訳で早速試してみようと思う。

 

 先述したプログラムを起動し、ミサカネットワーク内の30%程度の演算能力をオレに付与する。100%の演算能力を使うと間違いなくオレの脳がぶっ壊れる。100%だとノートパソコン単体に世界最高峰のスパコン並みの性能を無理矢理与えているようなものになるだろう。間違いなく、ぶっ壊れるに決まってる。30%と言っても、ノートパソコンに数十万円もするデスクトップの性能を与えるようなものだが。

 

 試しに放電してみる。試しとは言ったが、周囲の状況を考えていつもより手加減して放電してみる。その放電だけで分かった。きっと、オレは超能力者(レベル5)に至れたであろう事に。手加減してるつもりだったのだが、放電した威力は常時よりも数倍のものであった。

 

 尤も大能力者(レベル4)であった時よりも桁が違う演算が脳内で行われ、頭が破裂しそうな程に痛いんだけど。

 

 超能力者(レベル5)到達という結果も出たので放電を終了させ、付与していた演算能力を取り除く。

 

 実験も終了し、元の状態には戻ったのだが、未だに反動が続いている。頭がハンマーで粉砕されたように痛み、視界は歪み、明滅する。鼻からは生暖かい赤い鼻血が流れだす。立つ事すら儘ならずにその場で腰を下ろしてしまった。

 

 数分もすれば、痛みも収まってきた。試しに立ってみると未だに足が多少ふらつく。もう少し座っていよう。

 

 それにしても、一瞬だけ超能力者(レベル5)になっただけでここまでの反動が襲ってくるとは思わなかった。まぁ、大能力者(レベル4)のオレがミサカネットワークの演算能力を利用して強制的に超能力者(レベル5)へと上がったのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。

 

 一方通行(アクセラレータ)との戦いが来るまでの間に何とかしてこれを実戦でも耐えれるようにしておかないと。

 

 それにしても、30%だけで超能力者(レベル5)へと至れるとは。100%使用したら超能力者(レベル5)の壁を壊し、更にその先に行ける可能性がある。御坂美琴は全てを捨てる事で一瞬だけ絶対能力者(レベル6)へと到達する事が出来ると言われていた。

 

 元が大能力者(レベル4)のオレが100%使えば、絶対能力者(レベル6)にはなれずとも、一瞬ぐらいはレベル5.5ぐらいにはなれるかもしれない。まぁ、その後は碌な事にならないだろうけど。

 

 さて、超能力者進化(レベル5シフト)の検証はこれぐらいにしておこう。

 

 次にしたいのは装備の改造である。

 

 御坂美琴の代表技である超電磁砲(レールガン)をオレなりに工夫できないだろうかという事である。

 

 超電磁砲(レールガン)劣化版ならオレでも使用可能だ。お姉様は音速の3倍とかいうバカげた速度でコインを放つが、大能力者(レベル4)のオレなら音速1倍程度が限界であり、御坂美琴の3分の1のスピード。3分の1とは言え、速度は音速に等しい。多少の加減速はあるとしても、数字にして毎秒約340メートル。もうね、頭おかしい。

 

 思い付いた事はこれをどうにかして連射出来ないだろうかという事だ。速度で勝てないのなら数の暴力でやってやろうという事である。一応、既に方法は考えてある。

 

 御坂美琴はコインを指で弾いて超電磁砲(レールガン)を放つ。そして、オレには絶対能力者進化(レベル6シフト)計画で支給された銃が数多くある。申請さえしてしまえば、銃の100丁や200丁程度入手するのは容易い。

 

 ここまで言えば分かると思うが、銃器で超電磁砲(レールガン)を再現できないだろうかという事だ。超電磁砲(レールガン)と差別化する為に超電磁銃(レールライフル)とでも名付けておこうか。

 

 ローレンツ力による加速に加えて、火薬による加速。その2つの加速を使えば銃弾は秒速500メートル以上に達すると予測している。超能力者(レベル5)になれば、速度は3倍以上になり、銃弾の速度は更に上昇し、秒速1300メートルぐらいに到達すると思っている。その速度は御坂美琴の超電磁砲(レールガン)を凌駕する速度となる。

 

 何故、そこまで速度に固執するのか。それには一応の訳がある。勿論、一方通行(アクセラレータ)戦を想定しての事だ。

 

 一方通行(アクセラレータ)の身体の周囲には膜のようなものが張られている。これに触れる事で能力は発動し、対象のベクトルを自由自在に操る。そして、一方通行(アクセラレータ)の能力を開発した木原数多曰く、膜に触れてからベクトルを操るまでの間には多少のラグが存在するという。御坂美琴の超電磁砲(レールガン)は毎秒1000メートル程。それを反射している時点でそのラグは恐ろしく短い。

 

 木原数多という研究者は一方通行(アクセラレータ)にパンチを放ち、そのラグの間に拳を引き戻す事でベクトルを逆転させて殴るという言葉にしても意味が分からない事をやっていた。初見の時は「なるほど」とか思ったが、よくよく考えると御坂美琴の超電磁砲(レールガン)を反射していたので木原数多の神業の速度はそれを上回るという事になる。

 

 マジで意味分からな過ぎて「木原神拳」とか呼ばれてネタにもされているのだが。

 

 オレにはそんな事は出来ないのでオレはオレでやれることをやるしかない。

 

 それが超電磁砲(レールガン)の更なる加速である。そのラグを超える程の速度で射撃すれば、一方通行(アクセラレータ)の反射を突破できるのではないかとオレは思っている。反射される前にその体を撃ち抜いてしまえという事である。

 

 まぁ、一方通行(アクセラレータ)のラグの具体的な時間が分からないので戦う事になったら運頼みという事になる。

 

 もしも、一方通行(アクセラレータ)のラグが文字通り桁違いの早さであった場合、反射された無数の弾でオレが蜂の巣になる未来しか見えないけど。そんな未来を気にした所でオレが一方通行(アクセラレータ)と戦った時点で人生終了が確定するので気にしても意味は無い。

 

 長々と語るのはこれぐらいにしておこう。

 

 とりあえずは、超電磁銃(レールライフル)を試しにやってみようという事で持って来ていた無数の銃の内の1つのハンドガンをバッグから取り出す。

 

 よしやるぞと思ったが、流石に室内でやる訳にはいかない。超電磁砲(レールガン)を模した超電磁銃(レールライフル)は強力な技になる予定であるが、周りへの被害も元の技と同じように凄まじいだろう。道路を融解させたり、衝撃波で周りの人を巻き込んだり。明らかに街中で放つような技でない事だけは確かである。

 

 超電磁砲(レールガン)の被害額というのが動画にアップされるぐらいにその被害はあまりに大き過ぎる。室内でやればどうなるのか分かったもんじゃない。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 そういう事で廃ビルの屋上にやって来た。オレが作業場として選んだものとは少し離れた廃ビルの屋上である。屋上で撃つのは被害を抑える為。空に向けて撃ち出せば、被害は小さくなるだろう。オレの予測では銃弾は音速と同程度の速度で発射されるとなっている。

 

 音速の数倍程度の速度で物体が飛ぶとソニックブームと呼ばれる衝撃波が発生してしまうが、オレの場合は音速と同程度なのでソニックブームは発生しないと思っている。だとしても、それだけの速度で銃弾を撃てば音が轟くだろうが。

 

 ビルを移したのもこの為だったりする。

 

 それだけの音が響けばどうなるのか。スキルアウトやらアンチスキルなどの面倒そうな奴らが寄ってくる確率はだいぶ高い。

 

 オレが作業場として選んだ廃ビルは、オレが過ごしやすいようにこれから改造していく予定である。改造と言っても、過ごしやすいように家具やオレの電気を使える電化製品などを運び込む予定なだけだが。

 

 人が入ってこないような対策も考えてはいる。実現出来るか分からないが。

 

 さて、実験を始めるとしよう。

 

 1丁のハンドガンを手に持ち、空に向けて狙いを澄ます。引き金に指を掛け、躊躇う事なく引き金を引いた。瞬時に銃身に能力を応用し、磁力を付与。前世にて中学生の時に習ったフレミングの法則などによって発生したローレンツ力が更なる加速を銃弾に付与する。

 

 火薬と電気の2つの加速が加えられた銃弾は銃口を飛び出し、轟音と光の道筋を残しながら蒼い空に消えていった。

 

 射程は凡そ100メートルから150メートルと言った所だろうか。やはり速度が落ちた分、空力加熱による温度上昇は抑えめであり、射程が伸びるようだ。耐熱性が優れた金属を用いた弾丸とかなら更に射程は伸びるだろう。

 

 超電磁銃(レールライフル)の実験は成功と思っていいだろう。ハンドガン以外にもアサルトライフルやショットガン、スナイパーライフルなどの他の銃器の実験もしておいた方がいいだろう。超能力者(レベル5)状態でスナイパーライフルの超電磁銃(レールライフル)を行えば、マッハ5、つまり音速の5倍以上の速度に到達する事は間違いないだろう。

 

 一方通行(アクセラレータ)戦を抜きにしても、元男でこことは異なる異世界出身のオレからしたら異能である能力と科学である銃の複合技にはロマンを感じる。要するに何か楽しい。

 

 さて、音も弾丸の軌跡も分かりやすすぎた為、ここから離れるとしようか。

 

 面接やら能力の実験やらを行っていたせいでそれなりに良い時間になっており、水平線に陽が沈みかけている。今日の全ての実験は、20:00頃に終わるらしい。それまでに料理を準備しておかなければならない。今日の分の食費は、まだ足りると思うから大丈夫だろう。

 

 数日分の食費は足りると思うのだが、それ以降となると足りなくなるだろう。それまでにバイトが始まってくれればいいのだが。まぁ、足りなくなったらそこら辺に転がっているスキルアウト(歩く収入源)からちょろっと強制的に貰い受ければいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……勉強疲れた。でもなぁ、月末にテスト…………
_:( _ ́ཫ`):_ぐは


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