ハイスクールD×D 俺と愉快な神話生物達と偶に神様 (心太マグナム)
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放課後の自由人
キラキラネームって何かかわいそう(粉蜜柑


最初からゲロ注意!


いやホントごめんなさい。でもこういうノリが書いてて一番楽しいと思った(粉蜜柑

書いてる時は真顔ですが。


俺阿見定治!好きなのは熟女!よろしくな!

 

さて、自己紹介も終わったし……そろそろ現実を見なきゃな……

 

「我が名を侮辱した罪は重いぞ!悶え苦しんで死ね!」

 

「どうすっかねコレ……」

 

いやさ、目の前で三十過ぎてそうなデブ&ハゲのおっさんがブチ切れてんのよ。あ、本人曰く堕天使だそうです。そのおっさんはお顔を真っ赤にして手を掲げてなんか光の槍を作ってんのよ。つまり何が言いたいかと言うと……

 

俺、死にそうです!

 

ん?何でおっさんキレてんのかって?

 

んー、さっきいきなりあのおっさんが現れて「アザゼル様の命令で貴様をこのデブゥエルがしまつする!」って言ってきたからさ

 

「そんな……!その歳でキラキラネームだなんて!かわいそうに……」

 

って言ったのよ。同情100%で。そしたらさ……デブゥエルがキレたんだ。俺怒らせたつもり無かったのに……。そんで今に至るんですよ。正直笑わなかった俺はまだ良い奴なんじゃないかなって思った。

 

話戻すけど俺殺されそうなんだけど、ただでやられるつもりは無いです。ちょっと生まれつきある能力を使います!

 

深淵の門(ルールブック)

 

「な!貴様神器(セイクリッドギア)を覚醒させてたのか!?」

 

セイクリッドギア?イタタタタッ!!心の古傷がメッチャ痛い!グリグリ来る!メッチャグリグリ来る!おっさん!おっさんの見た目でそれ言ったらアカンヤツやで!許されんのは中学二年生のイケメンくらいや!

 

アカン……!このままだと中学二年生の頃の古傷でやられる……!殺られる前にやらなアカン!

 

俺はルールブックを開きあるページを見つけ読み上げる。

 

「来いや!レンの蜘蛛来いや!」

 

「関西弁ヘタか!」

 

『おいすー』

 

俺がエセ関西弁で呼ぶと地中に暗闇ができ、そこから巨大な蜘蛛がヤケに軽いノリで現れる。あ、デブゥエルさんツッコミありがとうございます。

 

さて、みなさん。ここで一つ質問があります。みなさんは蜘蛛をマジマジと観察した事はありますか?私はありません。ん?何が言いたいのかって?いやさみなさん目の前に自分よりはるかにデカイタランチュラみたいな蜘蛛出てきたらどう思う?キモいよね?嫌だよね?うん……もう限界かな……。

 

「KIMEEEEEE!!?オロロロロロロ!!!」

 

『呼び出しといて!?ていうかクッサ!?キミのゲロクッサ!?』

 

ごめんなさい……呼び出したのにいきなりゲロ吐いてごめんなさい……でも無理なの!生理的に無理なの!オロロロロロ(ry

 

俺が吐いている一方でデブゥエルさんはというと俺とレンの蜘蛛さんとのやり取りを見て頭の血管を浮かばせていた。

 

「貴様ァ……?ふざけるのも大概にしろよ……!蜘蛛を召喚したくらいで良い気になるなよ!その蜘蛛!このデブゥエルが消してやる!」

 

『うわ……その見た目でキラキラネームはかわいそうに……』

 

すんませんレンの蜘蛛さん、そのやり取りさっきやったんスよ。あ、デブゥエルさんにはレンの蜘蛛さんの声は聞こえないか。俺はルールブックのオート翻訳機能があるから聞こえるし話せるけど。

 

レンの蜘蛛さんの憐れみの声はデブゥエルさんには当然届かなくデブゥエルさんは光の槍をレンの蜘蛛さんに投擲する。レンの蜘蛛さんは憐れみの目で見てたので光の槍を避ける事は出来なく、レンの蜘蛛さんの脚に光の槍が突き刺さる。

 

『痛っ!』

 

ヤケに軽い声出してますねレンの蜘蛛さん。

 

『痛いわー。貫通で1D3くらい食らったわー。超イッテー』

 

いやアンタ耐久力27くらいあるじゃん。微微たる程度じゃんそれ。

 

『痛いなー!何すんだよこのヤロー!』

 

見える……俺にはレンの蜘蛛さんの頭に浮かぶやけにコメディチックなお怒りマークが見えるぞ……!ていうか本当にノリ軽いなこのレンの蜘蛛さん。

 

レンの蜘蛛さんは怒りながらデブゥエルさんに向かって糸を飛ばす。広範囲に降り注がれた糸はデブゥエルさんに避ける暇すら与えずデブゥエルさんは翼に糸が絡みつきデブゥエルさんを飛べなくすると地面に落ちて身動きを取れなくする。

 

『もう何すんだよこのヤロー!お前なんか体液一つ残らず吸い尽くしてやるからな!覚悟しろよこのヤロー!』

 

『レンの蜘蛛さん、それデブゥエルさんには聞こえてないっスよ』

 

『え!?マジで!?……まぁいっか!定治くん、これ持って帰っていい?』

 

『あ、ハイ。どうぞ』

 

『ありがとね。それじゃ僕もう帰るね。アトラク=ナクア様にご飯作らなきゃだから』

 

『ア、ハイ。お疲れ様でした』

 

『お疲れ〜』

 

そう言うとレンの蜘蛛さんはデブゥエルさんを口で掴むと脚を振って呼び出した穴から何か喚いてるデブゥエルさんと一緒に帰っていった。レンの蜘蛛さんが帰ると穴は閉じて後にはレンの蜘蛛さんが撒き散らしたネバネバネットだけが残っていった。さて……

 

「どうすっかね……コレ……」

 

俺はレンの蜘蛛さんが残したネバネバネットを眺めながらこう呟くのだった……。そしてこの時俺はまだ気づいていない。俺が後々いろんな事に巻き込まれて行く事に……そして俺が今後呼び出していく神話生物のカオスっぷりに頭を悩ませる事に……そして……

 

「え……何アレ……」

 

近くで俺の事をドン引きで見ていたリアス先輩の視線に。

 

あ、この後ネバネバネットは燃やしました。警察にバレなくて良かったです。公園だったけど火遊びは危ないからね。ちゃんと消火しました。焼きマシュマロすごくおいしかったです!

 




今回のは元々あった短編のヤツをほんの少し弄っただけなので月曜日にもう1話投稿する予定です。


阿見定治プロフィール。

名前の由来、クトゥルフ新話に出る架空の人物ミスカトニック大学の図書館館長ヘンリー・アーミテッジ博士から。ネクロノミコンを調べ、奇妙な魔術の助けを借りヨグ=ソトースの息子と出会った人。

熟女好き。熟女に限り自身の魅力(APP)を18に出来る特技を持つ。普段はそこそこのイケメン。精神力(POW)は120(trpgにおける精神力の最大は18、つまり阿見定治はトンデモメンタル。有名なニャル様よりも高い。)人間をはるかに超え、神格ですらドン引きする驚異的な精神力の持ち主、なんだただの神話生物か。神格を見てもキメェ!で済む精神力。あまりに驚異的な精神力のため余程のことでない限りSANチェックをスルーする。彼が神話生物を見て吐くのは恐怖や狂気によるものでは無く、単純に神話生物達が気持ち悪いから吐くのである。本人曰く、一回吐いたら大抵の神話生物たちは大体友達。

深淵の門

阿見定治の神器。クトゥルフ神話trpgに書いてある神話生物を呼び出すことが出来る。神格は呼べない筈だがたまに間違って(ファンブルorクリティカルして)呼んでしまう事がある。



テキトーな神話生物講座

レンの蜘蛛

クソデカイ紫色の蜘蛛。ドリームランドの生き物で知性を持っている。しかし知性を持っているにも関わらずお互い協力し合う事は無い。今回定治が呼び出したレンの蜘蛛は神格であるアトラック=ナチャに目を掛けられている蜘蛛で、種族の中でも取り分け優秀な蜘蛛さん。ノリは軽い。


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彼も、彼の友人も、大抵おかしい。

アカン……今回D×D要素全く無い……クトゥルフ要素も全く無い……ただのバカな会話だけに1話分も使ってしもうた……つ、次やっとオカルト部だよ……はぁ〜作者ってホントバカ。




今日の授業が終わり、俺は教科書とかを片づけながら友人である元浜と松田と一緒に話をしていた。

 

「元浜、松田、この後俺例の店行くけどお前どうする?」

 

「あ〜……今回俺はパスで。今日はちょっと外せない用事があるから」

 

「あ、俺も。今日は例の店でお宝探しよりも大事な用があるから」

 

元浜と松田は何が楽しみなのか笑顔で教科書やらをしまっている。まぁ凡その検討はつく訳だが……。俺はコイツらの為を思って小声で元浜たちに向かって口を開く

 

「どうせ覗きだろ?」

 

「「Of course」」

 

「メッチャ発音良いなお前ら」

 

いや、めっちゃネイティヴな発音だよ。コイツら英語の点数俺より下なのに俺より発音上手いよ。もうオフコースだけで英語圏歩けるくらい上手いよ。もうホント……ばっかじゃねえの?……でもこいつらのこういう所ホント好き。

 

「まぁバレないようにな。……ていうかそんなに同年代って良いか?俺にはよくわかんないんだけど」

 

いやホントに。同年代の何が良いのか俺にはさっぱりわからない。熟してないもの見ても美味しいとは思えないもん。少なくとも30代は過ぎてないと……ねぇ?

 

俺が同年代の裸なんて見る価値あんの?と聞くと元浜と松田はハァ……と溜め息をつく。

 

「お前にはガッカリだよ阿見……じゃあ逆に聞くけどお前、メッチャタイプな熟女が隣で着替えてたらお前ならどうすんの?」

 

「はぁ?そんなもんクレイモア仕掛けられてても覗きに……ハッ!!」

 

「気づいたか」

 

そうか!コイツらは同年代だから覗きに行く訳じゃない!覗きたいから!女の裸が見たいから覗きたいんだ!そこには歳なんて関係ない、女の裸か否か、それだけが問題なんだ!コイツらにあるのはエロへの探究心のみ……フッ、やれやれ間違ってたのは俺の方だったようだ。

 

「「「…………フッ」」」

 

自分の間違いを認識した俺はフッと笑い元浜と松田に向かって手を差し出す。すると元浜と松田もまたフッと笑って手を差し伸べ俺たちは固く手を結ぶ。そこには友情があった。口にしなくてもわかる確かな友情「さっきから何やってんだそこの変態共ォ!!」

 

「そげぶ!?」

 

俺たちが友情を再確認しようとした正にその時、俺の背後から鋭い蹴りが襲いかかりそれを友情を確かめ合ってて油断してた俺の背中に見事にシューーッ!し、俺は見事に机に向かって派手に突っ込んで行って超エキサイティン!※マジで痛いです。

 

俺は机やら椅子やらに埋もれながらも何とか起き上がり、俺を蹴り飛ばして超エキサイティンしてるであろう人に目を向ける。そこには剣道部に所属しており、俺たちを敵対視してる村山の姿があった。彼女の目は明らかに苛立ちを移しており、俺は溜め息をつきながら村山の肩に手を置く。

 

「ヤレヤレ……村山、生理中か?タチ悪いな、お前の生r「何て事言ってんだこのド変態!」あっぶね!?」

 

俺が溜め息をつきながら、生理中は女の子機嫌悪いってホントなんだなぁと思いながら話すと村山の方は顔を真っ赤にしながら俺の手を掴んで一本背負をしようとしたので踏ん張って投げられないようにしてから村山の手を振り払い距離を取り、いきなり一本背負をされそうになったので焦りながら村山にまくし立てる。

 

「バッカじゃねぇの!?床がクッソ硬い教室で一本背負ってバッカじゃねえの!?もう何か、ホントもう、バッカじゃねえの!?」

 

「うるさい!黙れ死ねこの馬鹿!このド変態!!」

 

「ちがいますぅ!俺は年上が好きなだけですぅ!変態じゃありませーん!それに成績は俺学年トップなんで馬鹿じゃありませぇん!」

 

「アンタのそういう所が馬鹿だって言ってんのよ!」

 

「んだとこの女ァ!!大体何で生理って言っただけで一本背負されなきゃなんねぇんだよ!んな事でキレてんじゃねぇよクソアマァ!!」

 

ギャーギャーと喚き散らし、睨み合いどころかメンチを切り合っているという表現が正しいかのような睨み合う二人、このまま男と女の総合格闘技が始まろうとしたその時、ピシャリ!とドアが開く音と共に何者かが定治と村山の元へと近づいてくる。

 

「ねぇ、ちょっといいかしら?」

 

「アァン!?ヤンのかコラァ!村山ァ!!」

 

「ハァ!?見てわかんない!?後に……し……グ、グレモリー先輩!?」

 

ドアから二人に向かって近づいていく女性を見て定治、村山以外の全員が鎮まり返り、女性……リアス・グレモリーが声をかけると村山も固まってしまう。だが定治の方はと言うとリアスなんて知るかと言わんばかりに村山しか視界に映っていない。

 

「テメェ!目ェ逸らしてんじゃねぇぞ村山ァ!」

 

「一回落ち着けこの馬鹿!!」

 

「ゴフッ!?」

 

村山の顔にほんの数センチしか離れていない距離で村山を睨み、プッツンして何も身構えていなかった定治は突然鳩尾に襲いかかる村山の拳を避けられず変な声を出してうずくまってしまう。

 

「テ、テメェ……いきなり鳩尾とか……やるじゃん……」

 

武術の達人である定治が久し振りに貰った鳩尾への一撃は油断してた彼に直撃し、その痛みのお陰か彼は正気に戻り自分にこうも良い一撃を与えた村山にやるじゃんと笑顔を送るが村山の方は突如現れたリアスに慌てており、定治の賞賛の言葉は耳に届いていなかった。

 

「す、すみませんグレモリー先輩!そこのバカは直ぐに片しときますからちょっと待ってて下さい!」

 

「いえ、それには及ばないわ。私が用があるのは彼だもの。」

 

「ええ!?コイツにですか!?」

 

用があるのは村山では無く定治、それを聞いた村山は目を見開いて驚く。阿見定治、兵藤松田元浜と並ぶ駒王学園きっての恥晒しカルテットエロ、もしくはバカルテットと呼ばれる四人組の一人である定治に用があると聞いて村山は驚いてしまう。

 

周りの定治への評価は''黙ってればイケメン"、この一言に限る。入学当初は村山自身、定治に少しだけ一目惚れをしてた時期があったりしたのだが、定治が入学時の自己紹介で言った

 

「あー、俺はぶっちゃけ同年代に興味ありません!この中に美人なお母さんがいるなら俺に紹介してくださひでぶっ!?」

 

教師に頭をフルスイングでぶっ叩かれて途中で終わったこの自己紹介が阿見定治という人物を正しく表している。そんな男にあのリアス・グレモリーが用がある!?村山の頭の中には驚きで一杯だった。

 

驚く村山の一方でリアスは驚く村山を見ながらクスクスと笑っていた。

 

「そうよ、ちょっと彼に聞きたい事があって此処に来たの。彼、借りて良いかしら?」

 

「ハ、ハイ!どうぞ!」

 

「イヤ……ちょっと待って……」

 

定治を無視して思わず了承してしまう村山に向かって定治がうずくまりながら片手を上げる。

 

「ちょっと先に保健室行かせて……久々に鳩尾に食らったから結構効いてる……いいっすか?いいっすよね?」

 

「え、ええ……」

 

涙目になってキツそうに言う定治の願いを断ることが出来ず、リアスは定治を連れて保健室へと向かう。そして保健室の養護教諭(42歳)に看病されつつナンパし始める定治のせいでリアスはオカルト研究部に連くのが予定より1時間遅れてしまう事にまだ気づいていない。




この会話……高校生どころか中学生……下手したら小学校レベルの低レベルな会話だなぁって書きながら思いました。


人格ブレブレで何するかわからない主人公、こういうのが書きたかったんだよ!(迫真

もう書きやすいったら無いよこの主人公。読者さんたちがどう思うかなんて知らんけどな!

さーて、次もおフザケ100%でがんばっちゃうぞぉ!スベりなんて恐れない!


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A「店長ー、斉藤さん消えましたー」店長「斉藤時給ダウンねー」

今日お休みの作者、特に予定が無いので暇つぶしに更新をする作者。

そんな作者が書く今回のお話。

展開が全然先に進めなくて僕は一周回って楽しくなってきました。

やはりおふざけは至高、はっきりわかんだね。


保健室の養護教諭に1時間粘ってナンパしていた定治の後ろ襟を掴んで引きずり、リアスはオカルト研究部の扉を開ける。

 

「ごめんなさい、遅れたわ」

 

オカルト研究部にはリアスを待っていたのだろう、オカルト研究部のメンバー全員がそこで各々色々な事をやっていた。リアスが部室へと入ると彼女が最近下僕にした兵藤一誠が彼女に挨拶をしてくる。

 

「あ、部長おはようございます!それで用がある奴って誰なんですか?って定治!?」

 

「あれ?一誠じゃん。おいすー」

 

後ろ襟を掴まれ引きずられてきた定治を見て一誠はええ!?と驚いている一方で定治はへらへらと笑いながら片手を上げて一誠に挨拶をする。

 

「ぶ、部長!何で定治の奴がこんな所にいるんですか!?」

 

「今からその話をしようとしてる所だから座ってちょうだいイッセー」

 

「は、はい」

 

リアスにそう言われ一誠はおずおずと席に着き、リアスもまた部室での定位置に座るとソファに座らせた定治の方へと視線を向ける。

 

定治が朱乃が入れたお茶をジッーと見つめているとリアスは咳払いをして定治に向かって口を開く。

 

「さて、定治くん。あなたを此処に呼んだ理由何だけど

「あれ?祐斗じゃん。お前ホントにオカルト部入ってたの?意外だわー」………」

 

「ハハ、そう思うよね。でも今はそんな事より部長の話を聞いてあげてよ定治くん。部長、凄い顔しちゃってるから」

 

 

リアスの話に被せるかのように先程同様へらへらと笑いながら定治が木場に話しかける。木場と定治は以前から交友関係がある、定治自身余り人見知りをしないタイプの人間だったので木場に気軽に話しかけ、廊下で会えば軽く会話をするくらいには仲がいい。木場は苦笑いしながら定治に返す。リアスはというといきなり話の腰を折られ何て言えば良いのかわからないといった顔をしていた。リアスがどう話を戻そうか考えている時、リアスの視線には定治の前に置かれた飲まれていない紅茶が目に入る。

 

 

「ソレ、飲まないのかしら?定治くん」

 

リアスがそう言うとやっと定治がリアスの方へと視線を向け、リアスに向かって口を開く。

 

「いや出されたお茶とかは一声貰ってから飲むようにってビジネスマナーの本に書いてあったか「どうぞ!!」あざーっす」

 

「ハハハ、定治くんは相変わらずマイペースというかフリーダムというか……」

 

「木場、残念だけどコイツはそんな言葉で治るレベルの奴じゃねえから。良い奴なのは確かだからそれだけ認識してればOKだから」

 

リアスが声を荒げながらどうぞ!!と言うと定治はヘラヘラ笑いながら出された紅茶にやっと口をつける。そんな様子を見て木場は苦笑いし、一誠はもう見慣れたように定治に向かって溜め息をつく。

 

「さて定治くん、貴方を呼んだ訳何だけど。貴方昨日堕天使を一人返り討ちにしたわね?」

 

「ええ!?」

 

リアスの言葉を聞いた時、一誠が驚きの余り声を出してしまう。一誠自身、堕天使に一度殺された身であり、堕天使の強さは実感していた。だがリアスの口からは定治が堕天使を返り討ちにしたと言っており、一誠は勿論、他の部員でさえ少し驚いてしまう。

 

リアスは今度こそ話の腰を折られないようにいきなり本題へと入ると定治は「あー」と気まずそうに溜め息をつく。

 

「昨日見てたんスか、リアス先輩」

 

「ええ、それを見たから貴方に用があったの」

 

「そっかー、見られちゃったかー。……今度焼きマシュマロ上げるんで火遊びの件については黙ってもらえません?」

 

「そっちじゃないわ!火遊びは確かにダメだけど!今私が聞きたいのは貴方が召喚したあの蜘蛛についてよ!」

 

「あ、そっち?」

 

再び話を逸らされそうになった リアスは話が逸れぬように話す。一方の定治はというと「何だそっちかー、あー良かった」と言ってヘラヘラ笑いながら手元に自身の神器であり、自身が'深淵の門(ルールブック)と呼ぶ一冊の分厚い本を呼び出す。

 

「まあアレは俺がコレを使って呼び出した神話生物ですよ。あの時呼んだのはレンの蜘蛛のレッさんですね。あの後レッさんがご飯作り終わった後オセロやるくらいには仲がいいっスよ」

 

その話を聞いたリアスは巨大な蜘蛛と一緒に和気藹々とオセロをやる定治の姿が容易に想像できてしまい苦笑いを浮かべる。

 

「け、結構仲が良いのね……。それで貴方の神器はどう言った能力なのか説明して欲しいのだけれど」

 

「別に大した能力じゃないっスよ。ただこの本に書いてある生物達を呼び出す事が出来るってだけっス。例えば……ホラ」

 

定治はそう言うと適当にのページをめくり、コイツでいっかと適当に神話生物を召喚する。部室の床に黒い穴が出来ると其処には一見すると普通の人間が現れる。現れた人間はファーストフードの店員なのか制服に身を包んでフライドポテトを持っていた。店員はえ?ここどこ?と辺りをキョロキョロと見回し定治を見つけるとワナワナと身体を震わせてから定治に襲いかかる。

 

「テメェ定治ゥ!バイト中は呼び出すなって何時も言ってんだろうがぁ!!」

 

「うるせぇ!俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!ポテトワンプリィィィズ!!」

 

「OKでゴフッ!?」

 

 

襲いかかる店員に定治はまずフライドポテトを奪うと店員の攻撃をかわして腹に向かって鋭い拳をぶつける。腹に定治の拳を食らった店員は崩れ落ち、定治は鼻で笑うと店員から奪ったフライドポテトを勝手に食べ始める。

 

「あー、コイツはグールの斉藤って奴で駅前のファーストフード店でバイトリーダーやってます」

 

「ど、どうも斉藤です……学生の皆さんには何時もお世話になってます……」

 

「普段コイツの見た目はもっと気持ち悪いし臭いんですけど魔術で姿を変えて、臭いも消してるんですよ。……やっぱポテトうめぇな。偶に無性に食いたくなるわ」

 

ポテトを咀嚼しながら定治がグールを紹介すると斉藤は涙目になりながらも精一杯の笑顔をリアス達に向ける。

 

このグール、定治の言う通り本来ならもっと醜悪な外見なのだが定治が魔術を教えて姿を変えているため、一見ただの店員である。もっとも、定治がこのグールに教えた魔術も、定治がとある神話生物に教えてもらったものなのだが。しかしその正体は犬に似た顔で鉤爪を持ち、身体にカビの生えている死肉を食らうグールなのだ。定治のワンパンで沈んでる姿からは想像出来ないだろうが。

 

しばらくして定治がポテトを食べ終わりごちそうさまでしたと言うと定治は斉藤を呼び出した穴に放り投げようとする。

 

「あー、美味かった。それじゃお疲れー」

 

「え!?何で呼び出した!?何で呼んだんだよ定治!」

 

「イヤお前が一番暇そうだったから……」

 

「バイト中だからメッチャ忙しいに決まってんだろボケェ!ふざけんなこの野郎ォ!空鬼とかメッチャ暇人なんだからアイツ呼んでやれよ!「ハイハイお疲れー」覚えてろよ定治ゥゥゥゥ!!アッーーーー!」

 

定治は斉藤を担いで穴に向かって放り投げると斉藤の悲鳴をこだまさせながら穴は塞がり、元の部室の床へと戻る。後には空になったポテトの容器だけが残り、定治はリアスたちの方へと視線をむける。

 

「俺の能力は大体こんな感じです。神話生物達を呼べるってだけの何の変哲のない能力っす。まぁ、呼び出した奴らの殆どが何処かクセのある奴らばっかりで困るんですけどね」

 

ヘラヘラと笑いながら言う定治に先程のコントのようなモノを見せられ固まるオカルト部部員一同。その中で一誠が先程の定治の発言にツッコミを入れる。

 

「クセのある奴らで困るってお前が言ってんじゃねぇ!」

 

類は友を呼ぶ、その言葉の意味をしっかりと認識したオカルト部部員一同であった。

 

 

 

 




阿見定治のステータス

STR(筋力) 16 武道で鍛えた細身の圧倒的パゥワー
CON(体力) 18 元気ハツラツ過ぎてヤバい
SIZ(体格) 17 デカイ(意味深)
INT(知性) 18 天才ですから(ドヤ顏)
POW(精神力) 120 神格「なんだこの精神力……たまげたなぁ」
DEX(敏捷性) 18 速すぎィ!!
APP(外見) 16 学校内指折りのイケメン
EDU(教育) 21 天才ですから(二度目)
SAN値 600 ハハッ、ワロス。人間の上限?そんなの知らんな。
幸運 99 神(意味深)に愛されたラッキーボーイ
アイデア 90 天才ですか(ry
知識 99 天才(ry
DB(ダメージボーナス) 1D6 強い(確信)
耐久力 17 強い(二度目)

特に制限とか考えずにやったらこうなった(白目)

テキトーな神話生物講座

食屍鬼(グール)

ゴムのような弾力ある皮膚を持つ亜人型の怪物。色々な都市の地下のトンネル網にいるらしい。偶に魔女と手を組んで人間に襲いかかる。人間が時間をかけてグールになってしまう事もあるそうな。なお斉藤はタイトル通り、あの後時給ダウンをマジで食らった模様。

SAN値チェック 0/1D6


あ、レンの蜘蛛さんのSAN値チェックは普通は1/1D10ですがレッさんは滅茶苦茶デカイので1/1D20です!

さぁダイスを振って、どうぞ


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クッキーって美味しいよね

私は甘いクッキーが大好きです(デブ

クッキー普段は食べないんだけど偶に食べるとホント美味しいんですよねアレ。最後の方は飽きちゃって、食べるという作業になるか、もしくは姉にあげるんですが。

姉で思い出したんですが昔私の姉が生理中の時に「お姉ちゃん今生理で機嫌悪いから!」と言ってきた事があります。目の前で言われて思わず笑ってしまったので私は仕事から帰ってきた親父に「お姉ちゃん今生理中だから刺激しない方がいいよw」って言ったら私は親父に無言で頭を叩かれました。そして親父に言ったのがバレて姉にぶっ飛ばされました。読者さんは生理中の女の子を刺激しちゃダメですよ!私のようにビンタかグーパンを食らいたくなければ……ね?

私は姉に今でも頭が上がりません。幼少期からそう言う風に躾けられたからね仕方ないね。以上、作者の無駄話でした。ごめんなさい。


あ、今回短めです。(2000文字いかなかったです)

それと今回神話生物は出てきません。次は出せるように頑張ります。


フリーダムな定治がグールを追い返してから一息ついて、リアスは紅茶を飲みながら定治を見る。

 

「それでは定治くんの神器についてわかったところで、次は私達の番ね。端的に言うと私達は悪魔よ。聖書に出てくるような……ね」

 

「ほーん」

 

普通自分が悪魔です何て言ったら「頭大丈夫?」なんて聞かれそうだが定治は置かれてるクッキーをもしゃもしゃと食べながら適当に返事を返す。

 

「あら?余り驚かないのね」

 

「いやまぁ堕天使なんてものがいるなら悪魔もいるんだろうなって思ってるだけですよ」

 

定治は特にリアクションをするまでも無く「クッキーうめぇ」と言いながらリアスの話を聞く。

 

「悪魔にも土地を管理する者がいて、この地を管理しているのは私。私はそこで起こった出来事を上に報告する義務があるの」

 

「ほうほう」

 

「今回貴方が堕天使を返り討ちにした事は上に報告するつもりよ。門を通して何処でも様々なモンスターを召喚出来るという貴方の力は利便性が高いわ。上に報告すれば貴方の力を欲しがる者たちがこぞってやってくるでしょう」

 

「せやろか?」

 

相も変わらずクッキーを食べながら適当に返事をする定治の一方で真面目に話をしているリアスは眉をピクピクさせながら話を続ける。

 

「いい?悪魔が私のように親切という訳ではないの。無理な契約をさせて貴方を下僕にしようとする下衆な輩も出てくるでしょう。そう言った事を防ぐために私は貴方を保護下に置きたいの。わかる?」

 

「あ、すみません。クッキーお代わり下さ「聞きなさいよ!!」ワオ!」

 

「さっきから貴方という人は……人の話を聞く気が無いのかしら?」

 

「そら聞く気ありますよ。でもクッキーが美味しいからねしょうがない「アァン!?」ごめんなさい」

 

リアスが女性が出してはいけない声音を出しながら定治を睨むとさすがにこれ以上ふざけるのは良く無いと感じた定治はクッキーを食べるのを止め大人しくリアスの話を聞く態勢に入る。

 

「いい?あなたが神器を持っていると私達悪魔と堕天使に知られている以上これから色々な事件に巻き込まれると思うわ、それは避けられない。そのためにも私達と組まないかしら?」

 

「んー……(なーんか俺に対するメリットしか言ってないしデメリットは言ってないんだよなぁ。まぁいいや堅い話キライだし)まぁ俺を下僕にしなければいいっすよ」

 

「そう、貴方がそう言うのなら私は下僕にしようとは思わないわ。あくまで私達と貴方は協力関係、という事でよろしいかしら?」

 

「モシャモシャ……ゴクン……いいっすよー」

 

「話纏ったからってクッキー食べるのを止めなさい!……ゴホン、という訳で貴方はこれからオカルト部に入ってもらうわ。よろしく定治」

 

「うっす、よろしくお願いしまーすモシャモシャ「だからクッキーを食べるのを止めなさい!!」美味しいからね仕方ないね」

 

リアスは定治を入部させ、仲間になった証として''くん''を外して呼ぶが定治はそれを気にせず話が終わった途端クッキーを食べ始める。クッキーを食べるのを止めない定治を叱るリアスだが定治はヘラヘラと笑うだけで全く意に介していない。リアスは定治が未だどんな人物かわからず、定治に振り回され溜め息をつくのだった。

 

「取り敢えず、貴方には私達がどんな事を普段やっているのか知ってもらいたいから今夜8時頃にもう一度この部室に来てもらってもいいかしら?許可は貰っておくから」

 

「わかりました〜」

 

クッキーを食べながら適当に返事をする定治にリアスは彼が今夜本当にここに来る気はあるのだろうかと溜め息をつくのだった。

 

 

 

夜の8時も30分を過ぎ、オカルト部に集まるリアスと眷属一同。だがそこには案の定と言おうか定治の姿は無かった。リアスは眉をピクピクさせ、定治の友人である一誠の方を見る。

 

「イッセー、定治が来てないのだけれど何か連絡は来てるかしら?」

 

「さ、さっき電話したんですけど電話出ないです!ちょ、ちょっと俺もう一回電話かけ直して来ます。」

 

リアスのイライラを感じ取り一誠は冷や汗をダラダラ垂らしながら一旦部室から出て定治に電話をかけ直そうとする一誠。そんな一誠の携帯電話に着信音と共にメールが一通くる。送り主は定治でタイトルには''ごめん''と書かれていた。そのタイトルを見た一誠はホッと溜め息をつく。

 

「なんだ、寝坊でもしたのか?てっきり来ないと思ってたからそれならよかった……」

 

ホッと息をついてメールを開く一誠。一誠が届いたメールを読むと一誠は思わず固まってしまう。メールには少ない文字しか書かれていなかったが一誠が固まるには十分すぎた。

 

『お・や・す・み ♡』

 

「おのれ定治ゥゥゥゥッ!!」

 

一誠は怒りのあまり廊下の壁にケータイを全力で投げつける。オカルト部のある校舎に一誠の絶叫が響き渡り、リアスたちが定治が約束をドタキャンをしたと知るまで少し前の出来事だった。




最初はシリアスっぽくなってたのですが私の身体に拒否反応が出てきたので全部消してから書き直しました。作者シリアス苦手だからね仕方ないね。

次ははぐれ悪魔狩り辺りに入ります。

次回!新たな神話生物現る!乞うご期待!

……期待されるとお腹痛くなるのであまり期待しないでください(土下座

みなさん約束のドタキャンはやらないように気をつけて下さいね!


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悪魔狩り行こうぜ!俺何もしないけど!

今更ですが主人公の名前のフリガナを書き忘れていたので紹介しておきます。

阿見 定治(あみ さだはる)

です。普通に書き忘れてました!ごめんなさい!

感想見てたら誰もSAN値チェックしてなくて私は悲しい(´・ω・)

おうダイス触れや神話生物やぞ(豹変

そういえば定治1話から吐いてないな……吐かせなきゃ(謎の使命感

それと今までオカルト部と書いてましたが正しくはオカルト研究部です。ご迷惑をおかけしてすみません。少しずつ修正していきますので少々お待ちを。



オカルト研究部の一員となった定治は「フンフンフフーンフンフフーンフレデリカー」と謎の鼻歌を歌いながらオカルト研究部の扉を開ける。

 

「馬鹿野郎俺は礼子様押しだ!あ、おはよーごぜーます!」

 

「おはよう定治。色々と言いたい事はあるのだけれど昨日はよく寝れたかしら?」

 

昨日来なかったにも関わらずお気楽にやってきた定治を見て頑張って笑顔を作ろうとしているが眉をピクピクさせるリアス。定治はというとリアスの問いかけに対していい笑顔で、それはもういい笑顔で口をひらく。

 

「ハイッ!今日は6時にパッと気持ちよく起きれて凝った朝食を作れて最高でしひでぶっ!?」

 

嬉しそうな笑顔で喋る定治の顔の側面から豪速球の如き速さのクッションが飛んでくる。いくら柔らかいクッションでも恐ろしいスピードで飛べば凶器になるんだなぁと定治は実感した。定治は床に落ちたクッションを拾うと自分に向かって投げた張本人にクッションを返す。

 

「いきなり投げるとか酷くない?」

 

「約束破ったのに……悪びれないから……です。」

 

「いやー、一昨日レッさんと罰ゲームオセロ百勝負なんてバカな事やらなければあんなに早く寝ずにすんだんだけ''ゴォッ!!''当たらなければどうという事はない!!」

 

クッションを持った小猫がムスッとした表情で定治を叱るが定治は反省する素振りすら見せずヘラヘラ笑う。だがそれが小猫の苛立ちを呼び起こし先ほどよりも速い速度でクッションを投げるが定治は何処か聞いた事のあるセリフを言いながらブリッジをして豪速球クッションを躱す。豪速球クッションを躱すと定治はブリッジ状態から立ち上がる。

 

「セフセフ、さっきの食らったら流石にヤバイからね。」

 

「さっきのも避けようと思えば避けられた、って事ですか?」

 

「不意打ちは回避ロール振れないからね、無理」

 

「回避ロール?」

 

意味のわからない言葉を言われ頭にクエスチョンマークを浮かべる小猫を定治は無視してソファに座る。

 

「さーて、クッキークッキー……と。……あれクッキー無くね?」

 

ソファに座り昨日舌鼓を打ったクッキーを食べようとしたがそこには置かれてあるはずのクッキーは無く、定治が「あれ?」と思っていると朱乃がニコニコ笑いながら話しかける。

 

「ごめんなさい、クッキーは今無いの。ウフフフ」

 

「そんなー」

 

一見朱乃はニコニコしており気分が良さそうに見えるが定治以外のメンバーは皆、朱乃が静かに怒っている事を理解していた。一方でそれに気づいていない定治はというと鞄の中をガサゴソと漁り、ポテトチップスの袋を取り出して開ける。

 

「無いなら仕方ないね。よかったー、購買でポテチ買っといて」

 

ヘラヘラと笑いながらポテトチップスを食べる定治を見て朱乃はニコニコしながら紅茶が入っているティーポットを持って定治に近づく。

 

「あらあら、ならポテトチップスに合う紅茶を淹れて差し上げますわ」

 

朱乃はニコニコとしながら紅茶を開いたポテトチップスの袋に流し込む。流石の定治もこれは予想外だったらしく目が点になってしまう。

 

「ウッソやろお前ア''ッヅッ!?」

 

一般的に美味しい紅茶を入れるための温度は沸騰する直前の95度と言われている。これは茶葉のジャンピングを起こすためである。ティーポットに入れられた紅茶は95度は流石に下回っているだろうが依然熱湯に変わりは無いだろう。その紅茶が持っているポテトチップスの袋に入れられたらどうなるか……こうなる。

 

「ア''ッヅッ!?アッヅッ!?アッツ!?何で!?ねぇ何で!?」

 

あまりの熱さに持っていたポテトチップスの袋を投げ、転げ回る定治。それを朱乃はニコニコと笑って定治の質問に答える。

 

「あらごめんなさい手が滑ってしまったわウフフフ」

 

「う、ウィッス……(ぜ、絶対嘘だ……)」

 

姫島朱乃は怒ったら怖い、定治はそう思ったのであった。だがこの事も直ぐ忘れてまた朱乃にシバかれるんだろうなと定治は何となく自覚するのであった。

 

 

「はぐれ悪魔の排除ですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

 

少し経ってオカルト研究部に部員全員が集合し、リアス・グレモリーが管理する地域にてはぐれ悪魔がいる事が確認された事がリアスから全員に伝わる。

 

「はぐれ悪魔の排除のため、夜に全員一度ここ集まってもらうわ。場所は付近の山にて、詳細は後ほど教えるわ。今回イッセーはまだ神器の力を使いこなしていないから他のメンバーで狩りを行うからあなたは見てるだけでいいわ。」

 

「わかりました。」

 

自分の弱さを自覚している一誠はリアスの言葉に素直に頷く。ここで話は終わりかと思われたがリアスは定治の方に視線を向ける。

 

「定治、今回の狩りはあなたにも参加してもらうわ」

 

「え、俺?」

 

「そうよ、今回は貴方が悪魔と闘う際の訓練も兼ねているもの。」

 

「まあそういう事ならいいですよ。あ、でも俺悪魔に比べたらきっと脆いんでそこら辺のカバーはお願いしますね」

 

「ええ、もちろん」

 

最初は驚く定治だったがリアスが話す理由に納得し素直に従う。また、定治が素直に言う事を聞くとは思わなかったリアスも顔には出さずとも内心少し驚いていた。そして時は進み、はぐれ悪魔狩りの時間へと進んで行く。

 

 

一同ははぐれ悪魔バイザーを狩るためにバイザーがいると思われる山の小屋へと向かう。皆戦いの為に様々な準備をしているが定治はというと何故か折り畳みの長机を担ぎ、後ろにいる新たに呼び出していた神話生物にパイプ椅子を持たせて山を登っていた。何故机と椅子を持ってきたかわからない木場は定治に苦笑いしながら質問をする。

 

「定治くん、なんで机と椅子を持ってきてるのかな……?」

 

「いや呼び出した神話生物が必要だっていうからさ……ね?」

 

「ね?じゃないよ!何に使うのそれ!?ていうか後ろの魚人みたいな人誰!?」

 

先ほどから全員がツッコミたくて仕方がなかった事を木場が思い切って質問をする。定治の後ろには灰色がかった緑色のツルツルとした皮膚を持ち背中の隆起している部分は鱗に覆われた魚人がいた。木場が思い切って聞いた質問を定治は相変わらずヘラヘラと笑いながら答える。

 

「この人?この人は深きものっていう種族のフッコさん「スズキです」ごめんなさい。この人はスズキさんっていう人で今回俺のお手伝いをしてくれる人」

 

「あ、そうなんだ(いつ召喚したんだろう……?)」

 

定治の言葉を聞いて木場は定治が神器を使って呼び出したモンスターなのかと納得する。そして一同の視界に小屋が見えた時、空気がガラリと変わる。

 

小屋の中からは長髪の女性が上半身裸という姿でリアス達を見ていた。その姿を見たリアスは軽く息を吸うとバイザーを睨みつけよく通る声でバイザーに向かって口を開く。

 

「バイザー!主の元を離れ欲望のままに生きる悪魔!貴方の存在を私はこの土地を管理する者として生かしておくわけにはいかない!貴方を消させて貰うわ!」

 

「ウッヒョーッ!!いいおっぱい!!」

 

「ヤダ……ちょっとタイプかも……」

 

上級悪魔の威厳を持って言うリアスであったが、後ろにいる一誠と定治のバカ二人はというと、一誠はバイザーの胸を見て興奮し、定治はバイザーの未亡人のような見た目に心奪われていた。だが二人の表情は直ぐに変わる事になる。

 

「ケタ……ケタケタ……ケタケタケタケタケタケタケタケタケケケケケ!!」

 

リアスの言葉を聞いたバイザーが狂ったように笑うと小屋が弾けとび小屋から見るもおぞましいバイザーの下半身が露わとなる。それを見てしまったバカ二人は先ほどの表情からうって変わった表情へとなる。

 

「ギャアアァァァ!?」

 

「オロロロロロ!?」

 

一誠は悲鳴を上げてリアス達の後ろへと隠れ、定治は吐瀉物を木に向かってぶち撒ける。定治が吐瀉物をぶち撒けていると定治の首をスズキが掴み、用意してあったパイプ椅子に座らせると自身ももう一つのパイプ椅子へと座り、定治が座るパイプ椅子の前にプロレスなどに使われている試合開始と終わりを告げるゴングを机に置く。

 

「ほら定治、ゴング鳴らして」

 

「オロロロロロ!?」

 

''カーーン!!''

 

スズキにゴングを鳴らすように言われ、定治はゲロを吐きながらも器用にゴングを鳴らす。その鐘の音が鳴るとスズキの目の色が変わる。

 

「さて始まりましたはぐれ悪魔狩り。今回はぐれ悪魔のバイザーを狩るのはリアス・グレモリーの眷属、眷属一同の活躍が期待されます。実況は私、深きもののスズキと」

 

「オロロロロロ!!」

 

「先ほどからゲロをぶち撒けている定治がお送りいたいます。」

 

「「「「……………」」」」

 

突然実況を始めたスズキを目にして一同が同時に固まる。そして固まった一同の中でリアスがスズキにツッコミを入れる。

 

「いや戦いなさいよ!!」

 

リアスの半ギレに近いテンションで出されたツッコミを受け、スズキはと言うと「ヤレヤレ……わかんないの?」といった感じでため息をついてから口を開く。

 

「私、あくまでクトゥルフ様を崇める下級の奉仕種族ですのでぶっちゃけ弱いです。今回の戦闘では私、役に立ちません。ですので今回はみなさんの応援をしに来ました。」

 

「なんでこんなのを呼んだの定治!?」

 

「オロロロロロ、オロロロロロ!(訳:いやコイツ個体値高いし魔術覚えてるからソコソコ強いです!)」

 

「ハハハ、何を言ってるかわかりませんよ定治」

 

「まだ吐いてるの貴方!?」

 

定治に何故スズキを呼んだのか聞くリアス、定治もまた吐きながら懸命に答えようとするがいかんせん吐いているのでリアスには伝わらない。このなんとも言えない空気の中で戦闘に入りづらいリアス達。だがバイザーは大人しく待ってくれるわけではなく、バイザーの雄叫び越えと同時に一同は気を引き締め直し、これよりはぐれ悪魔狩りが始まる。




テキトーな神話生物講座

深きもの

水陸両生の種族でクトゥルフを崇めており、父なるダゴン、母なるハイドラに支えている。彼らには寿命というものが無く、深海に沢山の都市を持っているとされている。クトゥルフ神話TRPGにおいてナメプしているミ=ゴ並みに弱いゲフンゲフン……セッションの探索者が倒すことが出来るであろう神話生物。武道キック、拳のラッシュによって犠牲となった深きものが沢山いるとかいないとか……。

SAN値チェック 0/1D6


おふざけをいつまでやるかって?……そりゃこの作品が終わるまでよ(ドヤ顔

この作品でシリアスっぽいなと思うのが出てきたらそれは作者が死にそうな、泣きそうな顔で書いてるモノだから慈愛に満ちた目で読んでください。

シリアスなら他の作品で面白いのいっぱいあるからそっちを読んだほうがいいです。僕の書くシリアスのレベルなんてたかが知れてるんだよなぁ……。


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飯の恨みはジッサイスゴイ

はい、新しいお話書き終わったので投稿します。

社会人になって一年が経とうとしてるんですがこの一年、学生時代より早く感じました。未熟な私に後輩が出来るとか考えられないんだよなぁ……。

え……他の作品の更新……?シラネ

忙しいからね、仕方ないね。この作品は書いてて楽しいからちょくちょく更新しますけど。


最初に動いたのは木場だった。木場は持ち前のスピードを活かし、バイザーを撹乱させながら隙を見てバイザーを切っていく。

 

「おお、木場選手中々に素早い!バイザーに対して素早い動きで攻撃をさせずに斬り刻んでいきますねぇ。ですが地味ッ!見てて何も面白くない!チマチマせずにもっと派手にやって下さいよおォ!!」

 

「僕の持ち味全否定するのやめて!」

 

その様子を見てスズキは速いと褒めはするが直ぐに木場の持ち味であるスピードを全否定する。木場はバイザーの攻撃を避けながらスズキにツッコミを入れる。そしてツッコミに気を取られた木場にバイザーの下半身が襲い掛かる。

 

「変わります」

 

木場に向かって襲い掛かる下半身を小猫が正面から受け止める。小猫はそのままバイザーの下半身を掴み小柄の体格からは想像できない怪力でバイザーを投げ飛ばす。この派手な投げとばしにスズキはニッコリと満足気な表情を見せているが横で吐き出すものを吐き出し終えた定治がボソリと呟く。

 

「タッチしないで変わったからルール違反じゃね?」

 

「おおっと!小猫選手、定治にタッチをしてないのがバレてしまった!これは判定に響きますねぇ!」

 

「なんのルールと判定よ!」

 

「うるさいです」

 

騒ぐスズキにリアスがツッコミを入れ、小猫はバイザーを再び掴み、今度はスズキと定治に向かって投げ飛ばす。

 

「「''消滅''(VANISH)!」」

 

定治とスズキは目の前に飛んできたバイザーを見た瞬間に呪文を唱える。呪文を唱えると二人はフワッと煙の様に消え、少し離れた所にいつの間にか置かれていた箱の下に姿を現す。

 

「小猫選手、実況者に攻撃をしてきました。中々のヒールレスラーっぷりですねぇ」

 

「イッさんから呪文教わっておいてよかった……」

 

箱の下に現れたスズキは小猫を煽る様に話し、定治は冷や汗を拭う。

もう一度バイザーを投げ飛ばしてやろうかと考えていたその時バイザーが雄叫びを上げる。

 

「ahhhhhhhhh!!」

 

雄叫びと同時にバイザーの上半身が膨れ上がり先程までの美女の外見から悍ましいものへと変化していく。

 

「ギャアアァァァ!おっぱいがぁぁ!!」

 

「バイザーさん、もうそういうのいいから」

 

再び悲鳴を上げる一誠、だが定治はと言うと先程見た下半身で慣れてしまい冷静に手のひらでSTOPの意を示す。だが定治が止めてもバイザーの上半身の変化は止まることなく、とうとう上半身も悍ましいものへと変わる。

 

「あらあら、困りましたわねぇ」

 

「全然困ってる風に見えないんですがそれは」

 

悍ましいものへと変わり果てたバイザーを見ながらニコニコと笑う朱乃に定治が冷静にツッコむ。朱乃は定治のツッコミを無視して手を上に掲げるとバチッと音がし、バイザーに雷が落ちる。

 

「ギャアアァァァ!?」

 

「あらあら、痛そうですわね。まだまだこれからですのに」

 

「ギャアアァァァ!!」

 

「スズキさん?今のこれを見てどういう風に実況をしてくれるのかしら?ウフフフ!」

 

「ギャアアァァァ!」

 

悲鳴を上げるバイザーととても楽しそうに笑う朱乃という両極端な表情を見せる二人。朱乃はバイザーに雷を落としながらスズキの方へどんな事を言ってくれるのか期待の意味を込めてスズキの方を見る。

 

「いや……流石にコレは……」

 

「ドン引きですね……」

 

一方的にバイザーをいたぶりながら楽しそうに笑う朱乃を見てスズキと定治は「うわぁ…」と言いながら完全にドン引きしていた。朱乃は期待してたものとは違った表情をしていた二人に向かってうっかりバイザーに攻撃するための雷を落としてしまう。

 

「あらあら、手が滑ってしまいましたわ♫」

 

「水遁・水陣壁!」

 

「水の無いところでこれ程の水遁を……なんと卑劣な……」

 

「ネタに走ってる場合ではありませんよ定治!」

 

魔力がこちらに向かってくるのを直ぐに感知したスズキは奇妙な仕草をして魔力で水の壁を作り、朱乃が落とした雷を防ぐ。まさか雷を落とされるとは思わなかったスズキは定治の言葉に必死な顔でツッコむ。このまま第二撃が来るかと警戒していたスズキだったが朱乃の視線は既にバイザーの方へ向けられており再び雷をバイザーに落としていた。スズキはぬめりとした汗を拭いホッと一息つく。

 

「危なかった……少々フザケすぎましたかね……」

 

「また手が滑ってしまいましたわ♫」

 

「なんと卑劣な!」

 

冷や汗を拭っていたスズキだったが朱乃が再び手を滑らしてしまい雷がスズキたちの方へと向かっていくがまたしてもスズキは水の壁を作り雷を防ぐ。

 

「あ、あの少女ちょっと怖すぎやしませんかね……」

 

「もうはぐれ悪魔より姫島先輩の方がヤバくみえるよ俺……」

 

「このままだとまた雷落とされるかもしれませんし、ちょっと本気出すとしますか」

 

「最初からやって」

 

「ahhhhhhhhh!」

 

朱乃に対して恐怖を感じる二人。このままだとまた雷を落とされかねないと判断したスズキは臨戦対戦に入る。そのスズキに定治は最初からやってと呟く。

 

スズキがやる気になったその時、朱乃が雷を落としていない一瞬のスキをついてバイザーは雄叫びを上げてスズキに向かう。バイザーを見たスズキはバイザーを膜のある手で指差し、呪文を呟く。

 

恐怖の注入(IMPLANT FEAR)

 

「ガッ……」

 

スズキが呪文を呟くとバイザーは歩みを止め、目は虚ろになり身体がカタカタと震え出す。バイザーが動かなくなったのを確認するとスズキはふぅと一息つく。

 

「やれやれ、定治には効かないので効くかどうか微妙だったのですが成功して良かった。どうやら精神力は大したことないようですね。」

 

スズキが汗を拭い一息ついている時、カタカタと震えるバイザーを定治は呆れた様子で見つめていた。

 

恐怖の注入(IMPLANT FEAR)くらいで何固まってんだか」

 

「普通の生物はああなるんですよ定治。あれを食らっても鼻で笑って◯時だよ全員集合をバカ笑いしながら見てる貴方がおかしいんです。」

 

そう、大抵の生物がこの呪文を受ければ魂も凍るような恐怖を植え付けられ今まで行っていた事の集中力は途切れ、恐怖に怯えるしか無いのだ。定治に恐怖の注入(IMPLANT FEAR)が効かないのは単純に神格すらドン引きするとんでも無いメンタルの持ち主だからである。その精神力と魔力は外なる神の総帥ですらドン引きするくらいオカシイ。

 

バイザーが動かなくなるのを確認すると定治は深淵の門(ルールブック)を開き、新たな神話生物を呼び出す。

 

「ショゴス〜、ご飯の時間よー」

 

『わーい!』

 

バイザーの上に深淵の門(ルールブック)によって現れた黒き穴が出現し、そこからテケリ・リという奇妙な鳴き声と共に電車1両程の大きさの不定形の生物、ショゴスが現れる。ショゴスは落ちるようにバイザーの元へ向かっていき、バイザーを喰らい始める。ショゴスがバイザーを食らう事で肉を食いちぎるような音が聞こえ、血飛沫が辺りに飛び散る。ショゴスは暫くの間黙々とバイザーを食らっていたが突然食べるのを止めてしまう。

 

『ん?どしたのショゴスくん。美味しくない?』

 

『ん〜……そういう訳じゃないんだけど……』

 

ショゴスは何か考えているような表情(定治から見て)でバイザーをモグモグと食べ、何か思いついた表情(定治から見て)をする。

 

『あ!やっとわかった!コレこの前定治の家で食べた馬刺しの味がする!』

 

『あの馬刺し失踪事件の犯人はお前かよぉぉぉ!!』

 

『あ、ちょ、火!火は止めて!燃えちゃう!ボク燃えちゃう!らめぇぇぇ!火には弱いのぉぉぉぉ!んほぉぉぉぉ!!』

 

「落ち着きなさい定治!ショゴスは純粋な子なんです!馬刺しくらい許してあげて下さい!」

 

「ゆ''る''ざ ん''!!」

 

「馬刺しくらいでマジギレしないで下さい!」

 

定治が自宅にて突然消えた馬刺しの犯人を見つけ出し、ショゴスにライターを近づけ、ショゴスを燃やさんと襲い掛かるところをスズキが必死に羽交締めして定治を止める。ちなみにライター一本ではショゴスには対して意味はない。だが定治の馬刺しの恨みによってショゴスにはライターの小さな火が業火のように見え、ショゴスは必死に定治から距離を取る。

 

「「「「…………」」」」

 

10〜20mはあるショゴスをライター一本で怯えさせる定治とそれを必死に止めるスズキ。この奇妙な光景を目の当たりにしオカルト研究部一同は先程の恐怖の注入(IMPLANT FEAR)の衝撃すら忘れ固まる。

 

少し時間が経ち、一同の視界に身体の一部が無くなっているバイザーが見える。

 

「バイザー……倒しません?」

 

「ええ、そうね……」

 

一誠の一言にリアスが頷き、バイザーを消滅の力が宿った魔力で文字どおり消し飛ばす。後にはバイザーが壊した小屋の残骸だけが残った。こうしてリアスの眷属一同と定治のはぐれ悪魔狩りは終了した。

 

 

 

 

 

 

 




魔術講座

消滅

呪文を唱えることで儀式?によって作られた箱の元へワープする事が可能な呪文。主に敵が使ってくる。

恐怖の注入

魂も凍るような恐怖を相手に植え付け、強制的に0/1D6のSANチェックを行わせる。探索者が覚えてもあまり意味のない呪文ベスト10に入るだろう呪文。作者の探索者は一度の戦闘でコレを三回やられ、作者と探索者両方とも発狂した嫌な過去を持つ。絶許。

テキトーな神話生物講座

ショゴス

テケリ・リという奇妙な鳴き声で大きさを自由に変えられるスライムのような生物。古のものによって作られた奴隷代わりの生物。元々知性は低かったのだが自分の現在に不満を抱き反乱を起こした。古のものたちに多大な被害を与えはしたが自身らは封印されてしまったという過去を持つ。物理的なダメージを受けないが火に弱い。あと洗脳系に弱い。洗脳しても偶に反逆されるけど。出てきたらガソリンぶち撒けて燃やせばええねん!……持っていたら、ですがね。

SANチェック1D6/1D20

本来深きものどもは魔力で水を操るなんて出来ないんですが、ハイスクールD×D要素という事で勘弁してください。


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不意打ちは回避ロールが出来ない

アーシアとの出会い編はカットして今回話をかなり進めに行きます。

アーシアと一誠の出会いは本編と変わらないためです。ていうかイジリようが無ゲフンゲフン。

アーシアはもうちょっとしたら出ますので少々お待ちを。

今回は最初はギャグ、途中からシリアスになりますのでご注意を。

特にシリアスはクオリティが……あっ(察し


はぐれ悪魔狩りから数日が経ったとある日の夜。オカルト研究部の部室にはリアス達悪魔と定治がそこにいた。今日は悪魔の稼業を行う日でリアスとその眷属達はやる気を見せているが、定治はというとあからさまに不機嫌な顔をしていた。

 

「さて、今日も仕事を始めましょう」

 

「ねぇ」

 

「はい!今日も仕事頑張りましょう!」

 

「ねぇ、ちょっと」

 

「……今回は何処に行けば良いんですか?」

 

「待って、ちょっと言いたい事あるんだけど」

 

「うふふふ、今日も張り切って行きますわ」

 

「おい……おい……!」

 

「一誠くん定治くんは今日は僕と一緒に行動するからよろしくね」

 

「ちょっと待てやゴラァァァァッ!!」

 

一誠たちがそれぞれやる気のある発言をしていると先ほどから無視されていた定治が我慢の限界とばかりに絶叫する。絶叫する定治にリアスがキョトンとした表情で定治を見る。

 

「あら定治、どうしたの?悪魔の稼業を見るのがイヤなの?別にやましい事はしてないから安心していいわよ?」

 

「それじゃねぇ!悪魔の稼業をやるのはわかりましたよ!それはわかりましたよ!だけどさぁ!だけどさぁ!」

 

キョトンとした表情をするリアスに定治が叫ぶような声でツッコミを入れた後スゥーっと息を吸い込んでから心から思ってることを思い切り叫ぶ。

 

「なんで俺簀巻きにされてんだよぉぉぉぉ!」

 

「え?だってこうでもしないと貴方来ないでしょう?」

 

定治が言った言葉に対してリアスはまたもキョトンとした表情で当たり前のように話す。それに納得がいかない定治はまたも声を大にして叫ぶ。

 

「言えよ!今日予定無かったからそう言えばちゃんと行ったよ!ていうか俺放課後から記憶ないんだけど!何した!?」

 

「子猫をあなたの教室に派遣させただけよ?」

 

定治の問いにリアスは相変わらずキョトンとした表情で言った言葉を聞いて定治は視線をリアスから小猫に移すと小猫が若干ドヤ顔のような表情でVサインをしていた。

 

「……不意打ちは回避出来ないって……言ってたので……振り返る瞬間にボディブローしました……」

 

「お前が犯人かぁぁぁ!」

 

「凄かったぜアレ、人が殴られて浮く所初めて見たよ俺」

 

「おかしくね!?なんで俺いきなり殴られてんのに驚く所がそこなんだよ!?」

 

Vサインをする小猫に定治がキレていると一誠が苦笑いしながら定治が殴られたときの事を話す。それを聞いた定治はそれちょっとおかしいだろとツッコミを入れるが一誠はため息をついて定治の肩を叩く。

 

「お前普段いろんな奴らにやらかしてるから俺以外の奴らも『あぁ、定治に何かやられたんだろうな』くらいにしか思ってないぞ。まぁ俺が言えた義理じゃないけど、普段の行いが悪いからなお前」

 

「チクショウ何も言えねぇ!!」

 

「さて、そろそろ時間だね。それじゃあ行こうか一誠くん定治くん」

 

「ちょ、待っ!俺はまだ納得してねぇぞ!てかそろそろ簀巻きの状態から解放しろよ!『ハイハイ行くぞー』クソがぁぁぁっ!!」

 

木場と一誠は怒りでシダバタと暴れる定治を無理矢理担ぎ上げて転移用の魔方陣へと向かい、木場の魔力を媒介としてクライアントの元へと転移するのであった。

 

 

魔方陣からクライアントの元へと転移した一行達がまず目に入ったのは辺り一面に飛び散る血だった。その光景を目にした一誠は吐き気が込み上げ担いでいた定治を落としてしまう。

 

「な、なんだよコレ……ウプッ」

 

「あひん!」

 

床に落ちた定治は奇妙な声を出して床に激突し、少しの間痛みで動けなかったが直ぐに芋虫のように動き辺り一面に広がる血の一部を舐めとりその味から血と判断し直ぐに吐き出す。

 

「ペッ、これ血じゃん。祐斗、一応聞いておくけどコレがお前らのやってる事なん?」

 

「そんなわけ無い!こんな事僕たちがする訳が……っ!!」

 

ジロリと睨む定治の問いに対して木場が直ぐさま否定した時、外から物音が聞こえてくる。それを聞き取った木場は直ぐさま音のする方へと向かう。

 

「一誠くんたちはそこにいて!僕は音が聞こえた方へと向かう!」

 

「って言ってるけどさ、どうすんの一誠?」

 

「んなもん決まってるだろ!木場の所へ行くぞ定治!」

 

「りょーかい」

 

木場の言葉を無視し、一誠は定治を担ぎ木場が向かった方向へと向かう。一誠たちが着くとそこでは木場と白髪の神父服を身に纏った少年が切り結んでいた。

 

「ヒャハハハ!やるじゃねぇか悪魔クゥゥゥン!!」

 

「何故……!何故罪の無い人を殺したんだキミは!」

 

「ハァ〜?ンなもん決まってるでしょ?悪魔とやり取りする罪深い人間なんて殺すのが当たり前って奴デェェス!!」

 

「この……!これだからカトリック狂いは……!」

 

悪魔である木場と真っ向から切り結んでいる白髪の少年を目の当たりにして一誠は驚きを隠せない。スピードは確実に木場の方が上のはずだが白髪の少年はそれに対して最小限の動きで木場のスピードに対応して見せている。この一場面を目の当たりにして定治は一誠に声をかける。

 

「一誠、この縄ちょっと解いてくんね?」

 

「え!?あ、ああわかった」

 

定治がいきなり発言した事で驚く一誠だったが、このままだと定治が逃げづらいだろうと判断した一誠は定治の縄を解く。

 

「ハァー、それじゃ行きますかね」

 

「お、おい定治!なんでそっちに行くんだよ!」

 

縄が解かれた定治は肩を回し、首を鳴らして身体の調子を確かめ、木場と白髪の少年の元へと歩いていく。木場たちの元へと向かう定治を見て一誠は止めようとするが、定治は手をヒラヒラと揺らして歩みを止めようとはしていない。

 

定治はゆっくりと歩きながら白髪の少年の元へと向かい、白髪の少年が木場に気を取られている内に背後から蹴りを入れる。

 

「法治国家で人殺ししてんじゃねぇよ」

 

「ガハッ!?」

 

定治の身体能力は人類最高峰と言っても差し支えないほどで、定治は自覚していないがその身体能力は歴戦の英雄たちと比べても差し支えないほどである。そんな定治の蹴りを受けた白髪の少年は声を上げて蹴り飛ばされコンクリートの壁に激突してしまう。それを見た木場は驚いた表情で定治を見る。

 

「定治くん!?」

 

「祐斗、ちょっと部長に連絡取っといてくんね?俺あの人のメアド知らないし」

 

「え?でも……『まぁまぁ』」

 

「ここは俺に任せろって。時間稼ぎくらいなら出来るからさ」

 

定治の提案に木場は危険だと思い、それを止めようとするが定治はそれを言わせんとばかりに言葉を被せる。木場が見た定治はこんな時でも相変わらずヘラヘラと笑い、彼が死ぬ所が全く想像出来なかった。木場は恐らく定治に何かしらの秘策があるのだろうと判断し、定治の提案に頷く。

 

「……わかったよ。だけど無理はしないでね定治くん。友達に死なれるのは悲しいんだ……」

 

「あいよ」

 

「何してくれやがりますかこの野郎ォ〜〜ッ!!」

 

木場が一誠を連れて撤退したすぐ後に、白髪の少年は壁に激突したにも関わらず平気そうな声を放ちながら定治を睨む。睨まれた定治はというと背後から蹴りを入れた事に対して全く悪びれていない表情をしていた。

 

「うるせぇ。法治国家日本で人殺ししといて何笑ってんだよこの野郎」

 

「ハァ〜〜?悪魔と取引なんざしてる人間は法じゃ裁けないでショォ?俺っちは法の代わりに裁いてやってんだよ!人としてナ!」

 

「なるほど、正しいかもな」

 

「だろォ?だからさ『けどな』っ!?」

 

白髪の少年に言葉を被せるように定治が言った途端、白髪の少年に寒気が走る。その原因は定治が持つ恐ろしいほどの魔力を感じ取ってしまったからだ。過去に対峙した悪魔たちをはるかに凌ぐ量の魔力を感じ取り、白髪の少年は目の前の定治に対してすぐさま臨戦態勢へと入る。

 

「定治、クリスチャンが仏教徒を裁くってのはおかしいと思うの。それに……お前の喋り方とか正直イラッと来たからとりあえずぶっ飛ばすわ」

 

定治は制服のタイを緩め、自身の神器である深淵の門(ルールブック)を手に取り白髪の少年を挑発的に見る。

 

「来いよクソ神父。武器なんて捨ててかかってこい」




次回は定治が割と真剣に闘うのでシリアスだと思います。まだ書いてないからわかりませんけど。

定治の闘い方はイメージできてるので予め言っておきますと、結構セコいです。身体能力は英雄並みだけど耐久力はたいして無いからね、仕方ないね。


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ずっと俺のターン

定治の身体能力ですが、前にも書いた通り英雄の子孫たち並みの身体能力とさせて頂きます。ぶっちゃけこれくらい無いと後々キビシげふんげふん。

タグにチートつけてあるからいいですよね……?

また、今作品ではクトゥルフ神話TRPGルールブックの魔術の設定に一部変更を致します。クトゥルフ神話の魔術はデメリットが大きい為です。グダグダですがホントに許して下さい!
タグに''一部の魔術設定変更''を追加させて頂きました。


さーてと、人殺しといて笑ってられるようなサイコパス野郎には容赦しなくていいよな?というわけで、始めるか。

 

俺は神父に向かってとある物を投擲しながら片手で深淵の門(ルールブック)のとあるページを予め開いておく。

 

「甘ェんだヨォ!!」

 

俺がページを開き終えた頃に神父は持っている剣のような物で俺が投擲した物を弾いた。よし、計算通りだな。

 

消滅(VANISH)

 

「なっ!?消えガハッ!?」

 

俺が突然消えて驚く神父の背中に俺は思いきり蹴りを入れて神父を蹴り飛ばす。

 

先程俺が投擲したのは儀式で作り出した消滅の呪文用の箱で、奴が箱を剣で弾き、それで死角に行った箱の元へ俺が転移し、それにより奴の死角から蹴りを入れる事が出来たってわけだ。

 

うーん、久しぶりに割と本気で蹴ったけどよく飛んだな。大体10数メートルくらい飛んだかな?よし、距離は取ったしこれで安心して召喚が出来る。

 

「テメェ〜!なんつう蹴りしてやがる……!英雄の子孫か何かかァ?」

 

「そんなカッコいい設定なんざ無ぇよ。……普段は相手の数と同じだけ召喚するのが俺のモットーだけど今回は別だ。来い、シャッガイからの昆虫たち」

 

『『『『ウィーーーwww』』』』

 

「何ダァ!?このキメェハエみたいな虫どもは!?」

 

黒い穴から10本の足を持ち、三つの口を持つ鳩ほどの大きさのハエに似た生き物、シャッガイからの昆虫が数えるのも馬鹿らしくなるほど大量に現れる。現れたシャッガイからの昆虫たち(以後シャッガイと明記)は驚く神父を他所に俺の周りを取り囲むように辺りを飛び回る。

 

『久しぶりじゃん定治w何?寄生先でも紹介してくれるのw?』

 

『悪いけどそうじゃねぇ。今回呼び出したのは目の前のクソ神父ぶっ飛ばすのにお前らが適任だからだ』

 

『マジかよwそんな事の為に俺ら呼ばれたのかよw』

 

『定治虫使い荒すぎてワロえないw』

 

『くやしい!でも従っちゃうw!ビクンビクンw!』

 

『俺等基本ヒマだから退屈凌ぎになればそれでいいしなw』

 

相変わらずこいつ等の話し方は変だな。語尾にwが見える喋り方なんておかし過ぎる。過去に俺はこいつ等と初めて出会った時、こいつ等の喋り方が素だと思わなくて、俺の事煽ってんのかと勘違いしてしまいこいつ等にかけてる地球の大気への保護を消しかけた事があります。あの時はホントごめん。

 

さて、あの神父がいつ攻撃してくるかはわからない。無駄話はそろそろ終わりにしよう。神父は俺とシャッガイたちとの会話は聞こえていないだろうが俺の口の動きから、シャッガイたちと俺が会話をしている事に気がつく。

 

「ハエとお話しするなんて何てお下品な人間なんでショ!これはしっかりこの僕チンが虐殺してあげなければいけませんねぇ〜?」

 

「やってみろクソ神父」

 

神父は銃の照準を俺に向け、俺は軽く跳躍してから拳を構える。先に動いたのは俺だ。奴は銃を持っている分離れて攻撃が出来るが俺は今回奴を俺の拳と足でぶっ飛ばすと決めているので攻撃を当てるために拳と蹴りを当てられる間合いに入らないといけない。俺が動くと同時にシャッガイどもが俺より速く動き、俺の前方をその数で埋め尽くし俺と神父の視界を塞ぐ。

 

「チッ!」

 

神父は俺が見えなくなった事で舌打ちをしながら先程俺がいた所を銃でうつ。だが残念、もうそこからは移動済みだ。

 

『ウィーw定治ゥ箱回収したぜw』

 

「よくやった!消滅(VANISH)!」

 

ここで一体のシャッガイが俺が先程投擲したまま放っておいた箱を回収して神父にバレないように奴の死角に回ってくれたので俺は消滅(VANISH)の呪文を唱え箱の下に転移し、死角から思い切り奴を蹴り飛ばす。

 

「ゲハァ!?」

 

『ほれもう1回w』

 

消滅(VANISH)!」

 

「同じ技がこの俺に通じると思うなヨォッ!!」

 

蹴り飛ばされて神父が吹っ飛ぶより先に箱を持ったシャッガイが神父の上に回り込む。それを瞬時に把握し、俺は再び消滅(VANISH)の呪文を唱えて奴の上へと行く。だが神父も馬鹿では無い。箱を持ったシャッガイが俺のワープの鍵だと気づいてたようで俺が転移して現れたと同時に奴は自身が持つ剣を振って迎撃をしようとする。だが、その行動を直ぐに止めてしまう。

 

『させっかよw』

 

「グガァァァァ!?」

 

「オラァッ!!」

 

神父の攻撃を止めさせたのはシャッガイが放った青いチカチカと光る光の様なモノ。アレはシャッガイが持つ神経ムチというもので食らってしまった場合恐ろしいほどの苦痛が神経に直接響いてくるというシャッガイの武器の一つだ。俺は奴が怯んだ隙に神父を上から叩き潰す様に拳を奴の腹にぶつける。殴られた神父はコンクリートの床に叩きつけられ、ぶつかったコンクリートにはヒビが入る。

 

『よーしw俺暇つぶしにコイツにいっぱい神経ムチぶつけちゃうぞ〜w』

 

『俺も〜w』『わたくしも〜w』『拙者も〜w』『僕ちんも〜w』『ワイも〜w』

 

『『『『もうみんなでやろうぜ〜w』』』』

 

『『『『ナイスアイディアw』』』』

 

「グガァァァァッ!?ア''ア"ァア"ア"ア"ア"!?」

 

おー、痛そ。一体が神経ムチを当てた瞬間、無数のシャッガイたちが神父の周りを取り囲み、神経ムチを様々な場所に当てていく。その強烈な苦痛の度合いは神父があげる悲鳴が表している。

 

『殺すなよ?そいつには会わせたい奴がいるんだ』

 

まぁ、会わせたい人物って部長の事なんですけどね。コイツは恐らく法じゃ裁けない。こういう奴の相手は部長にぶん投げておけば一安心だ。

 

俺がシャッガイに神父を殺さないように言うとシャッガイたちは相変わらず人を煽るような喋り方で俺に向かって話す。

 

『おうw任せろwこちとら拷問のプロだぜw殺さない様にするなんて朝飯前だからw』

 

『ならいいや』

 

暫く苦痛でもがき苦しんでろクソ神父。それは俺みたいなクズはともかく、何の罪の無い見知らぬ人間を惨殺した罰だ。

 

文字通り神父をぶっ飛ばし終えた俺は制服のタイを締め直し、拳を拭う。一息つこうとした俺だったが上を見るとそこには黒い翼を持った女がこちらに向かって光の槍を今正に投げようとしている所だった。

 

「あっぶね!」

 

「あら?今のを避けるの?やるわね」

 

『おいおい新手かよw』

 

投擲された光の槍は俺が避けた事でコンクリートに突き刺さり、その音に気づいたシャッガイたちが神父への神経ムチ攻撃を止め直ぐに俺の周りへと集まっていく。

 

「ま、待って下さいぃ〜レイナーレ様〜!」

 

クソ、新手か。黒髪のボンテージを着た女の次は金髪の幼い体型をしたシスターがやってきた。これで相手はあの神父を含めて数は3、いけないことは無いがこのままだと派手にやり過ぎて寝ているマダムのお肌に悪影響を与えることになってしまう(※もし熟女が近くに住んでたら今でも大分悪影響を与えています)。それは絶対に防がなければいけない。熟女好きにかけて!え?熟女以外?30過ぎてから出直して来てください。いずれ30過ぎになるかもしれないけれど今30過ぎてなければ論外だから。

 

ていうかさ今頭上に飛んでる女、前見たイッセーの元カノにそっくりなんだけどどういう事?

 

「定治!来たわよ!」

 

「悪ぃ!遅れた定治!」

 

「無事かい定治くん!」

 

そんなこと考えている内に部長を呼んできた一誠たちがこちらへとやってくる。あ、ちょうど一誠来たじゃん。夕麻ちゃんだったけ?一誠の元カノの名前。あれが夕麻ちゃんなのか聞いとこ。一誠は俺の周りを飛び回るシャッガイたちにビックリするのも束の間、俺の前に現れた少女を見て驚いた表情をする。元カノがボンテージ着て空飛んでたらそらビックリするよね。空だけにウン、ゴメン寒いよね。ホントごめん。

 

「アーシア!?」

 

「イッセーさん!?」

 

まさかここで会うとは思わなかったのだろう、見つめ合い驚愕しあう一誠と金髪のシスター。

 

いや元カノっぽい奴の方じゃなくて金髪シスターの方かよ!

 




うん、消滅の呪文による瞬間移動攻撃、どうみても某忍者マンガのパクリですね。でもクトゥルフ神話の呪文でも同じような事出来ると思ったから書いたんです許して下さい!

シャッガイからの昆虫

光合成で栄養を得る事が出来る鳩ほどの大きさの虫。彼らは食料に困らず、寿命がとても長い。退廃的な文化を好み、異種族を拷問する事が好きな事からそれはわかるだろう。彼らは物質的な肉体は持たず、異種族に寄生してじわじわと悪夢などを見せ人格を侵食していく。地球の大気に含まれる謎の成分により、彼らは地球では生活がしにくい、もしくはできない。定治の神器ルールブックで召喚された際は、特殊な膜によって守られその影響は受けない。定治は一度これを解除してしまい、シャッガイからの昆虫を召喚したのに殺しかけた過去がある。スピードはメチャクチャ速い。wをつけたのはぶっちゃけキャラ付け。

SANチェック 0/1D6


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空気を読みたく無い時だってある

今回アーシアの出番はほとんど無いです。木場とリアスの出番はもっと無いです。

アーシアの本格的な参加はもうちょっと先になると思います。

今回かなりマキでいきます。


「イッセーさん、どうして……どうしてここに……!?」

 

「アーシアこそ……なんで堕天使と一緒にいるんだよ!」

 

星が瞬く夜、二人はこんな再会は望んでいなかったと驚きながら、そして悲しそうに話す。お互いが何故、あなたはそこに居るのかと、何故自分の敵と一緒にいるのかと。そして二人が話していく中で、アーシアにはピクピクと痙攣して気絶している白髪の神父、フリードが目に入る。

 

アーシアはフリードの元へと駆け寄り、フリードの怪我の具合を確認するとフリードの身体のあちこちは骨折しており、一部の内臓が破裂していることがわかると、フリードの事を思い涙を浮かべる。

 

「フリードさん!……ひどいです……誰がこんな事を……」

 

「俺だけど?」

 

アーシアの声に定治が反応して頬を指でポリポリとかきながら話すと、アーシアは非難の目で定治を見る。

 

「どうしてこんな風になるまでやったんですか!」

 

「え!?え、えーと正当防衛?」

 

「いくら正当防衛とはいえこれはやり過ぎです!内臓が破裂してます!これでは過剰防衛ですよ!」

 

「あ、うん(やべぇ……この子の言ってる事正論だから反論しにくい……)」

 

アーシアの正論に定治は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。アーシアが定治を問い詰める中で、アーシアと共にきた堕天使レイナーレはフリードと定治たちを交互に見てからため息をつく。

 

「ハァ……まさかエクソシストが人間にやられるとは思わなかったわ。この強さならデブゥエルがやられたのも何となくわかるわね。アーシア!フリードを連れて一旦この場から離れなさい!」

 

「え?は、はい!」

 

レイナーレがそう言いながら手のひらをアーシアとフリードの方へと向けるとそこに魔法陣のようなものが現れ、アーシアとフリードはその場から消える。この場にいるのはレイナーレと一誠、木場、リアス、そして定治だけ。周囲に味方のいないレイナーレだがその口には何故か笑みが浮かんでいた。

 

「久しぶりね、イッセー君?」

 

「やっぱり、お前だったのか……夕麻ちゃん!」

 

「(ああ、やっぱり夕麻ちゃんだったのね)」

 

微笑を浮かべるレイナーレと憎々しげにレイナーレを睨む一誠。この光景を見て定治はやっぱりそうだったとうんうんと頷く。一誠は様々な事、何故自分を殺したのか、何故ここにいるのかなどをレイナーレに問い、レイナーレは終始見下した態度で一誠に話す。二人が話している様子を他の3人は何かあれば何時でも一誠を守れるようにしながら黙って見ていた。3人が注意している一方でレイナーレと一誠の会話は進んでいき、アーシアの話へと入っていく。

 

「お前はアーシアに何をするつもりだ!」

 

「別に酷い真似なんてしないわよ?私はあの子を救ってあげるんだから」

 

「救う……?」

 

「ええ、あの子は優れた神器を持っている。だけれどその優れた神器は人どころか悪魔が負った傷だって治してしまう。倒れている悪魔を助けた罪により、あの子は聖女から魔女の烙印を押されてしまった。ホント、人間っていうのは身勝手よね?私は可哀想なあの子を救ってあげたいの。」

 

「………っ」

 

一誠から見てレイナーレは嘘をついているように見えない。アーシアを救いたいと思っていることは確かだ。だがレイナーレは一誠を一度殺した女、一誠はレイナーレの事が信用しきれていなかった。だから問うた、どのようにして彼女を救うのだと。そう一誠が聞くとレイナーレは嗜虐的な笑みを浮かべて言った。

 

「彼女の神器を抜き取るのよ。悪魔さえ癒してしまう神器が無ければ彼女はもう魔女の烙印を押されずに済むもの。ま、彼女がその後どうなろうが私には知った事では無いんだけれどね」

 

「部長」

 

「ええ、そうよ」

 

レイナーレの言った事に木場がチラリとリアスとのほうを見るとリアスは木場の思った事がわかったようで静かに頷く。

 

「堕天使、神器を奪われた人間がどうなるのか、知らない訳無いでしょう。あなた、あのシスターを殺す気ね?」

 

「さぁ?私は彼女を救ってその代わりに彼女の神器を貰うだけ。抜き取る過程で彼女が死ぬかは彼女次第よ」

 

「ふざけないで!神器を抜き取られた人間はただではすまない!良くて重い後遺症レベルの最悪な結果にしかならない!この土地を管理するものとして、そんな非道なマネをさせてたまるものか!」

 

上から見下ろしせせら笑うレイナーレにリアスが一誠の前に立ち、激昂する。リアスの周りに消滅の魔力が宿り、今まさに堕天使と悪魔の闘いが始まろうとした時、定治が静かに動いた。定治は一誠の真後ろに立って一誠の耳元でボソリと呟く。

 

「悪く思わないでくれ一誠」

 

「?、定治、なに、をぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

『ちょwwwあのバカwww』

 

『や り や が っ た w』

 

定治が突如として行った事に驚き一誠が大声を出してしまう、それも仕方が無いだろう。定治は一誠の制服のスラックスを下に履いているパンツごと掴み、力任せに一気に引き摺り下ろしたのだ。力任せに引き摺り下ろした事でベルトのバックルが外れ、ズボンとパンツは一誠の足元まで降ろされ、一誠のナニが星が瞬く夜に現れこんばんわする。これにはシャッガイからの昆虫たちも驚いたようで、その驚きはシャッガイたちが羽ばたくことを忘れてしまい、地面に落下するほどだった。後に定治はこの時の事をこう語る。

 

『シリアスな空気に耐えられなくなり、ムシャクシャしてやった。反省も後悔もしている』

 

この後定治がリアスに強烈なお仕置きを食らう事になるのはまた別のお話。

 

一誠があげた驚きの声につられ、リアスとレイナーレは何があったのかわからず、チラリと一誠の方を見る。そしてそこで一誠のナニを見てしまい二人は顔を赤くする。

 

「「キャ、キャアアアアア!!?」」

 

「ウォォォ!?ぶ、部長!見ないでください!」

 

「まぁまぁ、なかなか良いブツ持ってんだから自信持てよ一誠」

 

「うるせぇ!お前なんてことすんだよ!?マジでふざけんな!!ちょ、おい!羽交締めすんな!隠させて!お願いだから隠させて!俺が何をしたんだよ!ちょ、木場!頼む!助けてくれ!」

 

「え、あ、う、うん!わかったよ一誠くん」

 

顔を赤くして両手で目を隠すリアスとレイナーレ。そして驚きながらも必死にナニをどうにか隠そうとする一誠に定治がそんなことさせるかと羽交締めをする。定治の筋力は思ったより凄かったようで、悪魔である一誠が抵抗してもビクともしない。一誠が木場に助けを求めると木場はいきなり起きたこの状況に戸惑いながらも一誠の方へ向かおうとする。

 

『シャッガイからの昆虫どもォォォォ!!あそこにいる祐人を止めろォォォォ!』

 

『ちょwマジかよw』

 

『アイツさっきよりマジじゃねぇかwこれ断ったら間違いなく保護無くされるぞw』

 

『なんだコレwなんだコレw』

 

『もうどうにでもなーれw』

 

『『『『ディーフェンスwディーフェンスw』』』』

 

「え、えぇ!?」

 

一誠を助けに行こうとする木場だったが、定治がそれを直ぐさま感知し、シャッガイからの昆虫たちに命じさせ壁を作り、木場の動きを完全に止める。自身より速く動き、必死に木場の行く先を封じるシャッガイからの昆虫たちに木場は動揺を隠せなかった。

 

「アッハハハ!シリアスがなんぼのもんじゃーい!」

 

「うおぉぉぉっ!?やめろぉ!回り始めんな定治!風が当たるゥゥゥゥ!?開くから!変な扉開くからやめろ定治ゥゥゥゥ!」

 

「あっはっはっ!楽しいよなぁ!?一誠ィィィ!!」

 

「不潔!不潔よぉぉぉ!助けてぇぇぇアザゼルさまぁぁぁ!!丸出しコプターが私を襲って来ますぅぅぅぅ!」

 

 

定治が一誠を羽交締めしながらグルグルと回り始める。下半身丸出しの一誠が必死に定治を止めようと叫ぶが定治はアホみたいに笑って全く聞いていない。下半身を丸出しにしてグルグルと回り始める一誠を見てレイナーレは顔を茹でタコのように真っ赤にして不潔不潔言いながら普段より速く飛び、逃げて行った。そしてリアスはというと顔を手の平で隠してはいるものの、指の隙間から一誠をチラチラと見ているのだった。

 




アッハッハッハッハw!やってやったぜ!シリアスなんて無かったんや!

今回は定治がキレて一誠がフル◯ンになっただけや!それ以上でも以下でも無い!

ここで作者について一つ、作者は精神年齢が小さい頃から変わっていないので下ネタが大好きです。だからこんなの書いちゃうの。

次回!新たな神話生物登場(するかも)!イくぞ定治!

あ、最後に一つだけ。


下ネタ注意


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真夜中の聖堂の悪夢

今回の話とある神話生物のせいでかなり汚いです。悪いのは作者、はっきりわかんだね。

読むか読まないかは皆さんにお任せします。

どうなっても知りません!作者は注意しましたからね!




「それじゃあ定治、あとはお願いね」

 

そう言って部長は教会の地下へと続く階段を降りて行った。現在、俺の目の前には堕天使が二人おり、俺の事を殺意を込めながら睨んでいた。

 

俺たちオカルト研究部のメンバーはレイナーレたちがいる場所を突き止め、アーシアという少女を助ける為に教会へと突入していた。俺たちは順調に進んでいき、教会の地下へと続く階段を発見したのだがそこでレイナーレの部下と思われる堕天使と遭遇してしまったのだ。部長は現れた二人の堕天使を一瞥すると、自分が出るまでも無いと判断したのか俺に相手を任せて階段を降りて行った。

 

 

現在、一誠のバカは勝手に単身で突入していて、祐斗はクソ神父と交戦中、また、姫島先輩と子猫ちゃんは他の敵と交戦中。どうやらマジで俺がこの堕天使二人を相手にしなきゃいけないらしい。

 

「マジかよ……」

 

俺だけ相手する奴のレベル高くね?俺人間にはだよ?悪魔より脆いんだよ?この前丸出しコプターやったのは俺が悪いけどさ、俺だけ戦闘ベリーハードモードとか酷すぎじゃね?当たったら俺ほぼ死ぬよ?丸出しコプターやった翌日に普通の人ならSANチェックもののお仕置き食らったのにまだこんな仕打ちなんてあんまりだと思います。

 

だが俺が悲しんでいる間もなく、堕天使たちは俺に向かって光の槍を形成し、投げようとしていた。だがそう易々とくらうわけにはいかない。こいつ等を一誠と部長の元へは行かせるわけにはいかない。ダチが命賭けて女救おうとしてんだ。ここで俺が頑張んなきゃ漢が廃るってもんだろ。

 

ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)

 

俺がそう呟くと俺を中心とした球状の障壁が展開される。魔力を込め、広がる障壁は堕天使たちの光の槍を難なく防ぎ、俺と堕天使たちは障壁によって包まれる。この呪文は俺が使える呪文の中でもかなり強力な部類の呪文だ。この呪文は魔力を注ぎ込めば注ぎ込むほど堅牢なものとなり、過去に俺はこの呪文を用いてうっかり呼び出したしまった神格を完全に閉じ込めた事がある。教えてくれてサンキューパッパ。

 

「悪いが、ここから先は行かせねぇ。テメェらはここでくたばってろ」

 

「ほざけ人間が!」

 

「来い!忌まわしき狩人!」

 

堕天使の内一人が俺へと光の槍を投げようとするより早く、俺は深淵の門(ルールブック)を使い神話生物を召喚する。現れた一枚の翼を持つ20メートル以上の巨大なクサリヘビのような神話生物、忌まわしき狩人は俺の意図を即座に理解し、俺をとぐろを巻くように包み込み、光の槍を弾き返した。

 

忌まわしき狩人の表皮は硬く、銃弾すら容易く防ぐほどだ。特に今回俺が呼び出した忌まわしき狩人のユキちゃんは種族の中でも巨大で、その分表皮も分厚い。あの程度の攻撃なんてなんてユキちゃんからしたら蚊に刺されたレベルだろう。ん?なんでユキちゃんって名前なのって?雪の日にタイマンでボコボコにした時適当につけました。堕天使たちが驚いている一方で、ユキちゃんはとぐろで俺を包み込んだまま話し始める。

 

『まったく、この私をこんな事に使うなんて相変わらず生意気ね定治。』

 

『悪い悪い、でもユキちゃんならやってくれるって思ったからさ』

 

 

『ハァ……私にそんな事を言う人間なんて貴方くらいのものよ。』

 

溜息をつきながら俺を包むとぐろを解くユキちゃん。暗いとぐろ中にいたので光に目が慣れるのに少し時間がかかったけど誤差の範囲だ。現在、障壁の中にいるのは俺とユキちゃんと堕天使二人、そしてピンクの触手を口に生やしたヒキガエルのような生物ムーン=ビースト……ん?

 

『なかなかいい友情じゃないの』

 

『何か呼んでないのいるんだけどぉぉぉ!?KIMEEEEEE!!オロロロロロ!!』

 

「なんだあの人間!?急に吐き出したぞ!?」

 

「神器が暴走したの!?」

 

おれが突然吐き出してビックリする堕天使たち。お前らより俺の方がビックリしてるわ!忌まわしき狩人のついでにムーン=ビーストだぞ!?こんなの初めての経験だよこの野郎!

 

『初対面の相手にいきなり吐くとは……たまげたなぁ』

 

『定治にとってあれは挨拶みたいなものよ』

 

はいそこ!普通に会話しない!ていうか挨拶じゃなくてマジでキモオロロロロロ!!

 

 

「フゥ……フゥ……ナーク=ティトの障壁の創造!(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)オボロロロ!!」

 

 

「またこの障壁か!この程度!……バ、バカな!!ありえん!」

 

「な!?か、硬い!?この私が全力でやっても壊れないの!?」

 

 

と、取り敢えず何もかも吐き終えて一旦落ち着こう。堕天使はナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)に向かって攻撃をしてどうにか障壁を壊そうとしているが無理無理。火力が足りません。俺が解除するか神格以上の火力が無いと消えないから、大人しく待っててね。

 

俺は堕天使との間に障壁で壁を作り、吐瀉物を吐き終えるとムーンビーストの方を見る。

 

『なんでお前いんの!?俺呼んでないよね!?』

 

『ああ、それなら私が教えてあげるわ』

 

『一体どういう事なのユキちゃん!』

 

『簡単な事よ、私はさっきまで彼とお茶してたんだけれど定治が呼び出したから行ったの。そしてあなたが作ったゲートを通って彼が来た、と言うわけよ』

 

マジで?あのゲート呼び出した生物以外も通れたの?10何年くらいこの神器使ってきたけど初めて知ったよ俺。ああもう、ムーン=ビースト登場の衝撃で何呼ぼうとしたのか忘れちゃったよ。ていうか面倒くさいからムーン=ビーストさんのことムーンさんって呼ぼう。

 

忌まわしき狩人は俺にムーンさんがいた理由を説明し終えると障壁を壊せず困惑する堕天使たちを見る。

 

『それで定治、獲物はあそこの烏二匹でいいのかしら?』

 

『そうそう、そいつら。ムーンさんもお願いしていいっすか?』

 

『ジュルリ……中々いい穴持ってそうじゃないの。堕天使掘るのは初めてだぜ……』

 

『…………』

 

ツッコまない。俺は絶対にツッコまないぞ。ツッコんだら負けだろコレ。

 

さて、凄い不安は残るけど準備は出来た。それじゃあやってもらいますか。

 

ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)解除!さぁ、頼むぜ。ユキちゃん、ムーンさん!」

 

『まかせなさい』

 

『やらないか』

 

俺と神話生物を守っていたナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)を解除し、ユキちゃんとムーンさんを堕天使の元に行かせる。え?俺は何もしないのかって?いやコレ俺いらないだろ。

 

だがしかしこの後俺は後悔する事になる。あんなの見るくらいなら俺がやればよかった……と。

 

 

レイナーレを倒し無事にアーシアを救い出した一誠は定治の元へ向かっていた。いつもヘラヘラと笑う友人が死ぬことは想像できないが万が一の事があるかもしれない。一誠はアーシアをリアスに預けて教会の聖堂へと駆け出していた。

 

「定治!大丈夫か!?……え?」

 

階段を登り、定治がいる聖堂へと着く一誠。だが一誠はそこで見た光景を見て固まってしまう。

 

『ほらほら、こういうのがいいんでしょう?』

 

「アッー!しゅんごい!これしゅんごい!凄い締め付けてくるのほぉぉぉ!!」

 

『どうだい俺の槍は……気持ちいいだろう?』

 

「ンギモチイィィッ!!」

 

「なんだこの地獄絵図……もう吐くもんねぇよ……オロロロロロ!!」

 

一誠がそこで見たのは悶える堕天使をその身体で締め付ける忌まわしき狩人、そしてもう一人の堕天使の穴に槍を突き刺すムーン=ビースト、そして吐いている定治。この光景を見たら誰だって固まってしまうだろう。

 

「な、なんだコレェェェェ!?」

 

『『あ』』

 

ゴキッ、ズブッ。

 

予想出来なかった光景を目の当たりにして一誠が絶叫するとその声にビックリした忌まわしき狩人とムーン=ビーストが力を込めてしまい、堕天使二人を殺してしまう。まだ殺すつもりが無かった忌まわしき狩人とムーン=ビーストはフルフルと震えてから一誠の方へ怒りを込め向かっていく。

 

『ちょっと何してくれんのよ!まだいたぶりたかったのに!』

 

『人の楽しみを邪魔してくるとは……やってくれるじゃないの』

 

「え!?何!?コイツら何言ってんの!?何か怒ってる!?定治!コイツらなんて言ってんの!?」

 

「オロロロロロ!!」

 

「まだ吐いてんのかよお前!待ってろ定治!今背中さすってやるから……って何だこのバリアみたいなの!?」

 

一誠は未だに吐き続けている定治を介抱しようとする一誠だったが定治と忌まわしき狩人、ムーン=ビーストの周りには定治が展開したナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)により入れない。この障壁は定治が吐き終えるまで展開され、その頃には忌まわしき狩人もムーン=ビーストは帰って行った。

 

なお、定治は翌日ゲロの臭いが染み付いた制服をクリーニングに出した。

 




1巻はこれで終わりです。あっけないよね。

レイナーレ戦で定治を出しようが無かったんです。後ろで妖◯体操踊らせようとしたけど著作権に引っかかりそうなので止めました。

今回の話にチラッと出しましたが定治の家族はいずれ紹介します。どんなのかはお楽しみ、ということで。

テキトーな神話生物講座

忌まわしき狩人

奇妙に歪んだ頭とグロテスクな巨大なかぎ爪のついた付属器官を持った空飛ぶヘビのような生物。素早く動き、神格の猟犬のような役割を持っている。尾で包んで獲物の自由を奪い身動きに出来ない状況にしてからじっくりといたぶるという残虐な習性がある。数少ない弱点として日の光に弱い、というものがある。定治が呼び出したユキちゃんは忌まわしき狩人の中でも一際巨大で、定治と初めて会った時襲おうとしたのだが割と本気を出した定治が"破壊"という呪文をかけた後、魔力を付与された足でひたすらボコボコにされたという過去を持つ。

SANチェック 0/1D10

月=野獣

ドリームランドに住む怪物。非常に残酷な性格で捉えた異種族をよく拷問している。ムーンさんもその例外ではなく、捉えた獲物の穴♂に槍を突き刺すのが生き甲斐らしい。定治の穴♂もあなたの穴♂もムーンさんに狙われているのかもしれない。キャラのモデルは勿論あのお方オイバカナニスルソコハサクシャノアッーーーー!!

SANチェック 0/1D8



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人間の力
K(こんな危険を)Y(予知なんて無理に決まってんだろ)T(達観)


フゥ〜、仕事すっげぇキツかったゾ。

明日も仕事だけど投稿します。

※今回定治がマジギレします。


「遅刻遅刻〜!」

 

今オカルト研究部の部室に向かって全力している俺は駒王学園に通うごく一般の男の子。しいて違う所をあげるとすれば熟女にしか興味が無いってとこかナ……名前は阿見定治。

 

そんなわけで放課後急いで部室に向かって今着いたんだけどなんか部室から言い争いみたいなやり取りが聞こえてくるな。

 

『今ここで燃やし尽くしてもいいんだぞ?』

 

ん?知らない奴の声もするな。

 

まぁいいや。

 

こうして俺は特に何も思わず部室の扉に手をかけて勢いよく開ける。すると何ということでしょう。目の前には勢いよく燃える炎があり、炎は俺の方へと向かってくるじゃありませんか。

 

「ウホッ!いい炎……ア”ッヅ!?」

 

「定治!?」

 

え!?ちょっと何!?姫島先輩が炎でも使ったの!?トラップ!?イジメ!?そういうの定治良くないって思うな!

 

視界の端に部長が俺を見て驚いてたけど今はそれどころじゃねぇ!炎が俺の制服に引火してんだよ!ていうかマジでア''ッヅ!?

 

制服に引火した炎は容赦なく俺に襲いかかり、俺は文字どおり火だるまになりながらあまりの熱さに廊下に転げまわってしまう。こんなの転げまわんなきゃやってられんわ!

 

「ア''ッヅ!?ア''ッヅ!?何!?何なの!?マジで何なの!?シャレに何なア''ッヅ!!」

 

俺が転げまわっているとそこに大量の水が俺を包み込む。

 

ありがてぇ……ありがてぇ……。

 

大量の水は俺を包んでいた火を鎮火させ、俺は息を整えてから部室を見るとそこには見知らぬ女たちと赤いスーツを着こなした男が申し訳なさそうに俺の方を見ていた。

 

……ほう。

 

お ま え ら が 犯 人 か 。

 

「…………」

 

俺はただ無言でもう炭になってしまった制服を手で払いボクサーパンツ一丁という服装で学園のカバンを背負って部室に入ると気まずそうに赤いスーツの男が俺に近づいてくる。

 

「い、いや〜ほんとわりぃ!リアスとその眷属しか目に入って無かったからア、アンタが近くにいると思わなかったんだ。制服くらいなら新しく作らせるからさ……ごめんね?」

 

「ほう」

 

俺の怒りを感じ取り、冷や汗を垂らしながら俺に何か言ってくる赤いスーツのイケメン。俺が静かに呟くと冷や汗をダラダラ垂らしながら両手を合わせてウィンクしながら軽く上半身を折る。

 

「マジでゴメン!ほんと反省してっから許してくれ!」

 

舐めてんのかテメェ。人の制服燃やしといてそんな謝り方で許して貰えると思ってんのか?俺は頑張ってニコリと笑顔を作って静かに抑揚のない声を出す。

 

「言い訳はそれだけだな?」

 

「…………え?」

 

あんな謝り方で許して貰えると思ってた赤いスーツのイケメンはニコリと笑う俺の裏に見え隠れする怒気に当てられ表情が固まり、冷や汗を更にダラダラと垂らす。

 

うん、もう……(怒りを隠すのは)限界かな……?

 

「人燃やしといてそんだけで許して貰えると思ってんのかテメェェェェ!!今すぐ正座しろォォォォ!!そこのお前らもだ!全員説教してやラァァァァ!!」

 

全員が沈黙する中、俺の怒声が旧校舎に響いていた。

 

 

狭い部室の中赤いスーツのイケメン、ライザーとかいう男とその眷属が正座をしていた。俺?パンツ一丁でコイツらのこと思いっきり睨んでますが何か?火傷の傷は''治癒''(HEALING)って魔術でもう治ってます。炭になった制服は''治癒''(HEALING)でも癒せないんですがね!

 

泣きたい。

 

俺は心の中で涙を流しながら、それを表に出さぬように無表情でライザーたちを見下ろす。

 

「お前らさ、何でこんなことしたの?」

 

「いやほんと悪いって思ってます……」

 

「いや謝罪が聞きたいわけじゃないから。何でこんなことしたの?って聞いてんだけど」

 

しどろもどろしながらライザーは懸命に言葉を選びながら俺に事情を話す。どうやら軽い威嚇のつもりで炎を迸らせ、部長たちをビビらせようとしたらしい。

 

……俺の制服、威嚇の為に燃やされたん?……スゴく……腹が立ってきました……。

 

「それで、自分の偉大さを見せつけようとして俺と制服を燃やしたの?……ブチコロスゾ?」

 

「「「「ヒィ!?」」」」

 

俺が最後にボソリと呟いた一言を聞いたライザーの眷属の内、何名かが涙目を浮かべ短い悲鳴を上げる。

 

何涙目になってんだよ。

 

泣きたいのはコッチだよ!

 

「それでさお前、ライザーだっけか?こんな所で火を使うってこと、危険だと思わなかったわけ?」

 

「す、すみません……そんな事思ってませんでした……」

 

「ハァ?お前は大人、つまりは社会人なんだよな?社会人がこんな所で火を使うってことの危険さがわかんなかったっていうの?ガキでもわかるぞこんな事。おい!そこのライザー眷属一同!」

 

「「「「ハイィ!」」」」

 

ライザーに一頻り説教した後、俺がライザーの眷属に目を向けるとライザーの眷属はビシッと姿勢を正して怯えた様子で俺を見てくる。だがそんな目をしても説教は手加減してやらん。俺は熟女以外男女平等なんだ。

 

「お前らもお前らだ。主人がこんな所で火を燃やしてんだぞ?何で止めようとしないんだよ?なぁ?」

 

「そ、それは……何というか……ライザー様のカッコいいところ見てみたかったというか……」

 

「ライザー様の邪魔は出来ないっていうか……」

 

「舐めてんのかテメェら。コイツがやったのはただの放火だからな?立派な犯罪だからな?オマケに俺という怪我人が出てんだぞ?俺じゃなかったら即病院行きの大怪我だぞ?……ミ=ゴニタノンデノウズイヒキズリダシテヤロウカ?」

 

「「「「ヒィィィ!!?」」」」

 

「ア''ッ?何叫んでんだよ、こちとら体と制服燃やされてたんだぞ?それに比べたらこんなのまだマシだよな?なぁ、そう思うよな?」

 

俺が怒気を孕みながら言うと、ライザーとその眷属一同は必死にコクコクと首を上下にさせる。俺がライザーたちを睨んでいると確かライザーのところの女王だったか?そいつが辛そうな顔で足をモゾモゾと動かしていた。

 

「ツ、ツラい……「おい、誰が動いて良いっつった?」ヒィ!?ゴメンなさい!」

 

正座がツラいのだろう。足を動かしてその痛みを誤魔化そうとするライザーのところの女王。だがそんなマネさせるわけないだろ。正座の痛みも説教の内に入ってんだからな。言っとくけどまだまだ続くからな、覚悟しとけ。人の制服を燃やした罪は重いからな?

 

 

 

【1時間後】

 

 

「なぁお前ら、本当に反省してるか?」

 

「ハイ''……スビバゼンデジタ……」

 

「反省しでマズ……」

 

「グスッ……グスッ……」

 

長い長い説教が終わり、ライザーとその眷属一同のほとんどは涙目どころか完全に泣いてしまっていた。

 

※ここまで俺はパンツ一丁で説教してました。寒い。

 

そんな中、部室の魔方陣から新たな悪魔が現れる。メイドの姿をした20代くらいの歳の女だ。論外。何がとは言わないけど論外。悪魔ってみんな若い見た目のやつらしかいないのかよ。色気が欲しいよ、熟女みたいな艶やかな色気が。

 

メイドの悪魔は泣きじゃくるライザーたちと未だパンツ一丁の俺を見て何があったのか解らず、ギョッとした表情を見せるが直ぐに冷静さを取り戻したようですぐに落ち着きのある表情へとなる。

 

「どうやらお嬢様の説得は失敗に終わったようですね。これでお嬢様が引いてくれば良かったのですが、そういうわけにはいかなかったみたいですね」

 

メイドの悪魔が部長の方をチラリと見ると先ほどまでライザーたちをかわいそうな目で見ていたため、一瞬反応が遅れてからグレイフィアをキリッとした表情で見つめる。

 

「当たり前よグレイフィア。私は勝手に許嫁を決められた事、納得していないもの」

 

「ハァ……お嬢様も頑固ですね。わかりました、それではこちらにも用意があります。お嬢様にはこれからライザー様と婚姻を賭けたレーティングゲームを行って頂きます。」

 

そう言ってグレイフィアって女は部長に何かが書かれた手紙を渡す。部長はグレイフィアから受け取った手紙を読んで苦虫を潰したような顔をするとグレイフィアにレーティングゲームを受けると静かに言葉にする。グレイフィアは部長の言葉を聞くと静かに頭を下げ、泣きじゃくるライザーとその眷属を宥め、やって来た魔方陣を使ってこの場から消えていった。

 

何かトントン拍子に話決まってるけどさ、レーティングゲームって何よ?俺知らないんだけど。

 

 

 

オマケ

 

パンツ一丁の定治の帰宅

 

定治「ただいま〜。母さん、今日の晩飯なに?」

 

定治母「あ、定ちゃんおかりなさ〜い。今日の晩御飯はハンバーグよ……ってどうしたの定ちゃん!?あなたなんでパンツ一丁なの!?」

 

定治「燃やされた」

 

定治母「燃やされた!?え!?帰りはどうしたの!?」

 

定治「段ボールで隠れながら帰った」

 

定治母「段ボール!?さ、定ちゃん、あなたイジメられてるの!?ママ凄く不安だわ!」

 

定治「大丈夫大丈夫、制服燃やした奴らは泣かせたから。もうやって来ないと思う。」

 

定治母「え!?イジメを返り討ちにしたの!?まさかの大逆転なの!?凄いわ定ちゃん!流石だわ!今日はご馳走ね!」

 

定治「ご馳走!?今日ハンバーグって言ってたよね母さん!?いやハンバーグ好きだけどさ!?」

 

定治母「ええ!今日はいいお肉が手に入ったもの!ほらアレよ定ちゃん!」

 

ショゴスくん『定治のママコワイ定治のママコワイ定治のママコワイ(ry』

 

定治「ショゴスくーーーん!?」

 




※定治は制服を燃やされてからずっとパンツ一丁です。

激しくキレる人、淡々と言ってくる人、怒り方は人それぞれだけど怒られるのは怖いですよね?ね?

オマケで出てきた定治の母は今回本当にオマケなので紹介はしません。いずれ定治の事を紹介するついでに紹介しようと思います。定治のパッパとマッマ、どっちが先に本編にて登場するのか……もうこれわかんねぇな。

※定治のマッマはたまたま遊びに来たショゴスくんから色がよく、そして臭いが無くて柔らかい部分を問答無用で綺麗に切り落としました。マッマ強い(確信)

なお定治は吐きました。

ナーク=ティトの障壁の創造

作者が前回紹介し忘れた魔術。物理と魔術両方を防ぐことが出来る障壁。魔力を注入した分だけ障壁を強くする事が可能。定治はこの魔術を完璧に使いこなしており、障壁の即時展開、障壁の形、大きさの制御が可能で、障壁の形を球状のみにとどまらず壁のようにしたり、自分の身体に膜のように貼る事が可能。余談だが定治はこの魔術を使い、うっかり呼び出したゾス=オムモグを完全に閉じ込め、死の都市ルルイエへ追い返す事に成功している。

治癒

傷を!病気を!毒を!癒す!終わり!

ちなみに正しいKYTとは危険予知トレーニングのことです。え?そんなの知ってるって?

うん、知ってる( ^ω^ )


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定治、悪魔式魔術を習う

今回一つだけ皆さんに謝りたい事があります。

今回の話で顔文字を使ってしまいました。作者はこの小説を遊び感覚で書いているためなんか面白いと思い、顔文字を使ってしまいました。

顔文字を使う?そんなの小説じゃないやんけ!

ごもっともです。本当にすみません。でも顔文字は消しません。許してください!なんでもしまむら!


ライザー来訪の次の日、部長がレーティングゲームに備えた特訓を行うと言ったので俺は面白半分で特訓についていく事にした。

 

現在、特訓場所の山に向かっているのだが基礎体力をつけるという名目上で俺の分の荷物を持った一誠がなんか不満気に俺の事をチラチラ見てくる。

 

「一誠、さっきから何?俺に何か用?」

 

俺が声をかけると一誠はあからさまに不機嫌そうな声音で口を開く。

 

「定治、お前俺たちと一緒に特訓をするんだよな?」

 

「おう」

 

「それで今はみんなで体力作りの一環で山まで歩いて行こう、ってなってんだよな?」

 

「おう」

 

「体力作りの一環なのになんでお前この前呼び出したショゴスって奴に乗ってんだよ!?」

 

『えっさほいっさ、えっさほいっさ』

 

一誠に言われた通り現在俺は車くらいの大きさになっているショゴスくんの背中に寝そべりながら山に登っていた。いやーマジ楽だわー。臭いも昨日ファブっといたから気にならないし。ファブリー◯、有能。

 

一応言っておくとこれショゴスくんの正しい使い方だからね?スズキさんもショゴスタクシーよく使うって言ってたし。

 

報酬は昨日の母さんの件の詫びも含めて牛肉1キロです。まぁショゴスくんバk……ゲフンゲフン天然だから嫌な事あってもすぐ忘れちゃうから覚えてないんですけどね。

 

話を戻そう、一誠が凄い形相で俺の事を睨んでくるからそれっぽい理由を言っておこう。俺は少し考えてからそれっぽい理由を一誠に言うことにする。

 

「そりゃお前ショゴスくんの体力作りの為に決まってんだろ」

 

『山登り楽しいね!ご褒美が待ってると余計に楽しいよね!』

 

うんそうだね、山登り楽しいよねショゴスくん。

 

「お・ま・えの体力を鍛えろ!」

 

あ、やっぱりそう言うよね。よし、じゃあ今さっき思いついた事を言っておくとしよう。

 

「ばっかお前、俺は今自分の召喚時間をより伸ばす為にショゴスくんを召喚し続けるという特訓を現在進行形で行ってんだよ。俺だって頑張ってんだよ!」

 

まあウソなんですけどね。俺の神器召喚時間とか関係ないし。神話生物達が通る門を作るとき以外に魔力消費しないから召喚時間の維持もクソも無いんですけどね。コスパの点において俺の神器は沢山あるらしい神器の中でもトップレベルだと思う。

 

俺がそれっぽい理由を言うと、俺の神器についてあまり知らない一誠はどうやら納得してくれたようです。チョロいわー。一誠マジチョロいわー。一誠いつか詐欺に合いそうで不安だわー。

 

「え、あ、そうなの?なら仕方ない……のか?」

 

『あ、ショゴスくん。アクエリ飲む?』

 

『飲むー!』

 

「なんか納得いかねぇ!」

 

俺がショゴスくんの為に作ったデカい水筒のストローをショゴスくんの口に入れるとショゴスは嬉しそうに中に入っているアクエリをチューチュー吸う。そんな光景を見て一誠がなんか納得いかねぇって叫んでるけど無視無視。フヘヘヘ、楽する時は楽しなきゃ。え?お前クソ野郎じゃねぇかだって?よく言われるからもう褒め言葉として受け取ってるわ。

 

 

山に着き、定治は一誠、アーシアと共に朱乃の元で魔術の勉強をしていた。教わっている三人の内定治とアーシアは朱乃の魔力の玉を作るという課題をなんなくクリアするが、一誠は苦戦をしていた。

 

「ムムム……!ダメだ!上手くいかないです!朱乃先輩!」

 

「あらあら、一誠くんには少し難しかったかしら?」

 

「一誠さん、頑張ってください!魔力をキューってする感じです!そうすればこんな風にできますよ!諦めないで一緒に頑張りましょう!」

 

苦戦する一誠にアーシアがジェスチャーを交えながら教えるが一誠は尚も苦戦している。一方で定治は一誠に目もくれず、魔力で作った玉を投げショゴスくんに取りに行かせるという遊びをしていた。

 

『よーし、ショゴスくん!取ってこーい!』

 

『わーい!』

 

一誠に目もくれずショゴスと遊んでいるとそれが朱乃の目に入り、朱乃の眉が釣り上がる。

 

「フザけ過ぎですわ定治くん」

 

「ギャアアァァァッ!!?」

 

『定治ーー!?』

 

「あ、出来た。出来ましたよ朱乃先輩!」

 

「やりましたね一誠さん!」

 

おしおきと言わんばかりに朱乃が雷を定治に向かって落とすと、ショゴスと遊んでいて油断していた定治に雷が直撃する。辺りに定治の悲鳴が響き、ショゴスが魔力の玉を口に咥えながら定治の元に心配そうに駆け寄る。定治がピクピクと痙攣している中、一誠の方はアーシアの懸命な教えの元、小さいながらも魔力の玉を完成させ、魔術の第1歩を踏み出していた。

 

 

一誠が魔力の玉を作るという課題をクリアしたので姫島先輩が次のステップに入りますわと言って俺たちは次に魔術の応用へと入っていく。あ、ショゴスくんは俺の隣で報酬の牛肉嬉しそうに齧ってます。

 

「まず一誠くんですわね。一誠くん、魔力の玉を作って下さるかしら?」

 

「あ、はい!」

 

姫島先輩の指示の元、一誠が小さな魔力の玉を作る。いやほんと小せぇなおい。スーパーボールくらいの大きさだよ。一誠魔力無ぇんだな。でもキライじゃない。魔力を必要としない脳筋キャラみたいで良いじゃん。

 

「それでは次は赤龍帝の籠手でそれを倍加してくれますか?」

 

 

「わかりました!」

 

姫島先輩の指示で一誠は赤龍帝の籠手で魔力の玉を倍加させる。10秒ごとにBOOST!という音声の元、魔力の玉が倍加されどんどん大きくなっていく。え、ちょ!デカいデカい!

 

「それでは倍加した魔力の玉を飛ばす感覚であの小山に向かって飛ばして見て下さい」

 

「わかりました!」

 

一誠が空孫悟の必殺技のようなポーズをとり、姫島先輩の指示通り魔力の玉を向こうにある小山に向かって投げとばす。

 

( д ) ° °

 

脳筋だと思ってた友人が、魔力で山一つ消しとばしてたでござる。なんやアレ!チートやんけ!

 

この光景を見て驚きの余り目が飛び出る俺に対し、アーシアちゃんは一誠さん凄いです!と言いながら目をキラキラさせながら拍手している。ええ!?なんで驚かないのアーシアちゃん!?この子なんかズレてね!?

 

山一つ吹き飛ばしたのを見て満足そうに笑う姫島先輩の元、一誠は更なるのでステップ魔力の変換へと向かう。姫島先輩の教えの元一誠は自らがイメージしやすいものを浮かべている。俺の考えだけど一誠は炎を使いそうだな、あいつ熱血漢なところあるし。一誠が頭から湯気が立ちそうなくらいイメージを頑張り、姫島先輩に触れた時姫島先輩の衣服がビリビリっと細かく千切れ姫島先輩が裸になった。

 

こんなの予想できるか!真剣な魔力の修行のはずがエロアニメみたいな展開になったんだけど!こんなの誰だって笑うわ!俺だって笑うわ!

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!サイコー!一誠マジサイコー!アッヒャッヒャッギャアアァァァッ!!?」

 

『定治ーー!?』

 

「何笑っているんですか定治くん?」

 

裸になったのに羞恥心を一切感じずに姫島先輩が容赦なく俺に雷を落とす。再び雷を食らった俺にショゴスくんが慌てて駆け寄る。だ、大丈夫、電流値自体はそんなに凄くないから大丈夫。きっと、メイビー。

 

「乙女の裸を見て爆笑するなんて男の風上にも置けませんわ。定治くん、あなたにはキツい課題を貸しますわ」

 

「え、ちょ!?あんなの誰だって笑うじゃないですか!ヒド過ぎですよ姫島先ギャアアァァァッ!!?」

 

『定治ーー!?』

 

なんでよ!笑ったっていいじゃない!なんで1日に3回も雷食らわなきゃいけないんだよ!しかもなんでショゴスくん以外みんな''残念でもないし当然''みたいな顔してんの!?俺の味方はショゴスくんだけかよ!

 

「課題、やってくれますわね?」

 

「ウィッス……」

 

姫島先輩マジ怖い……。逆らわんようにしよう、そうしよう。

 

姫島先輩が制服に着替え、少し考えるような仕草をしてから何か良いことを思いついたような仕草をする。

 

……すっげぇ嫌な予感がするなぁ。

 

「定治くん、向こうに裸の小山がありますわね?」

 

「ありますね。え……まさか……」

 

「あの山丸ごと魔力で攻撃してくださいな。方法はお任せしますわ。一ミリでも山に何もなければ夕飯は抜きですわ。」

 

「そんなの出来るわけないよ!!ギャアアァァァッ!!?」

 

『定治ーー!?』

 

「言い訳は聞きません。これはお仕置きであり課題でもありますから。出来るまで夕飯は抜きですわ」

 

雷食らうのもうこれで四回目だよ!もうイヤ!身体が言うこと聞かなくなっちゃう!

 

「わかりましたよ!やればいいんでしょ!やれば!」

 

「大丈夫です定治さん!定治さんならきっといけますよ!イメージを言葉にしながら言うといいかもです!」

 

もうヤケクソじゃあぁぁ!!やってやるよ!なめんなよ!俺はクソ親父とイッさん曰くとんでもない魔力持ってるらしいから出来る筈だ!あとアーシアちゃんアドバイスありがとう!

 

いくぜ!厨二力全開放!FFの必殺技みたいな奴やってやんよ!

 

「我が創るは絶対零度の氷結の大地!生命の有無など関係無く全てを凍らせる!全てを等しく凍らせる氷結よ!極寒の地に眠る神の如き力を!ゴフッ!」

 

「え!?すげぇ吹雪なんだけど!?何事!?マジで何事!?」

 

『え!?定治何々!?え、イッさん何!?定治を止めろって!?無理無理無理無理!!僕まだ死にたくないよ!僕が余裕で死ねるくらいのレベルであれはヤバいよ!』

 

俺がイメージを口にしながら魔力を氷に変換すると辺りに吹雪が舞う。フヘヘヘ!楽しくなってきたぜ!一誠が俺の魔力で辺りが吹雪になってるのを見て驚いてるけど関係ねぇ!ショゴスくんがイッさんとなんか通信してるけど関係ねぇ!中学二年生の頃の古傷が抉られて思わず口から血吐いちゃったけど関係ねぇ!こちとら夕飯かかっとるんじゃ!やってやる!やってやるぜ!

 

「寒っ!!?マジで寒っ!!?定治、もういいから!もう頑張んなくていいから!!」

 

「うるせぇ!阿見定治、頑張ります!我が魔力の一部を代償に彼の地を無に帰す!この氷結から逃れる術はなく、全てのものが永遠なる眠りにつく!……えーと」

 

あまりの寒さに一誠とアーシアちゃんが身を寄せ合って震えてるけど関係ねぇ!そしてやべぇ!もうネタが切れてきた!久しぶりに厨二力使ったから鈍っちゃってる!えーと、えーと!

 

も う セ リ フ が 思 い つ か ね ぇ !!(エターナルフォースブリザード!!)

 

俺が詠唱し終わった瞬間、姫島先輩が指定した裸の小山の全てが凍った。本当に全部凍った。後に姫島先輩はこの時の事をこう言っていたらしい。

 

『ほんの出来心だったんです。私が自信のある自分のプロポーションを見て爆笑してた定治くんに対してほんの少しイライラしてしまったのでちょっと困らせようとしただけなんです。まさか本当に小山一つ完璧に凍らせるとは思わなかったんです』

 

見事に小山一つ凍らせ、俺は満足気にドヤ顔をする。一誠とアーシアちゃん、そしてショゴスくんが絶句して固まってるけど無視無視。今は満足感に浸りたいし。いやー、最初は出来ないと思ってたんだけどやれば出来るもんなんですね!姫島先輩は俺にそういう事を教えたかったんですね!姫島先輩ありがとうございます!

 

そしてなにより……

 

っしゃあぁぁぁ!!夕飯は抜き回避!!やったぜぇぇぇ!!

 




今回謎のショゴスくん押し(作者がショゴスくん気に入った)でしたね。ショゴスくんカワイイ……可愛くない?(不定の狂気

定治の魔力は神格超えてるからそりゃ小山一つ凍らせるなんて当たり前よ(ドヤ顔

補足?になりますが定治はクトゥルフ神話式魔術を魔術を覚えている変わり者のイスの偉大なる種族、通称イッさん。そしてパッパ(実の父親とは言ってない)から教わっています。二人が定治に魔術を教えている時思ったことは

『え……なにこの子……(ドン引き』

大体こんな感じです。イッさんは今後(たぶん)出番あると思います。

決めてないですけど定治は10D10くらいクトゥルフ神話式魔術を覚えてるんじゃ無いスかね(適当)

これはレーティングゲームトップレベルの悪魔たちですら喉から手が出るくらい欲しい人材(確信

定治は自覚してないけどコイツもやっぱりチート、はっきりわかんだね。


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定治は案外落ち込みやすい

今日のお話も特訓編です。

ライザー戦?……まだ先ですね……。

尺稼ぎ?いいえ違います!本当です!信じて下さい!

まだもう少し特訓編で遊びたいんです!本当です!信じて下さい!



エターナルフォースブリザードを習得した次の日の午前、定治は木場の訓練相手をしていた。

 

「ハァッ!!」

 

「ほいほいっと」

 

「くっ……強い……!定治くんがこんなに強かったなんて……!」

 

木刀を持って襲い来る木場を定治は冷静に脚で捌く。人間である定治相手に良いように攻撃を捌かれてしまい木場は焦りを見せて一気に突っ込んでいく。

 

「ハァァァッ!」

 

「焦っちゃダメだぜ祐斗、こうなるから……な!」

 

「なっ!?ぐぁっ!?」

 

その瞬間を待っていたかのように定治は木場の木刀を持っている方の手を掴み、合気道の技である四方投げを決める。地面に叩きつけられた木場は肺から空気が抜けるような衝撃を受けて呻いてしまう。呻く木場だがすぐに起き上がろうと行動をするが視界には既に拳を振り下ろす定治の姿があった。木場がやられると直感した時、定治の拳は木場の眼前数センチのところでピタリと止まる。

 

「へへへ、俺の勝ち」

 

木場の視界にはいつも通りヘラヘラと笑う定治の姿があり、木場に手を差し伸べていた。木場は友人の強さに驚きながらもフフっと笑い、定治の手を取り起き上がった。

 

 

「人型で速さのある奴と戦ってみたい?」

 

定治が木場を投げ飛ばしてから少し経ち、タオルで汗を拭きながらスポーツドリンクを飲む定治に木場が要望を伝えてくる。

 

「うん、そうなんだ。現状で相手の騎士の速さに対応できるのは副部長と僕だけだからね。速く動く相手にできるだけ対応できるようにしておきたいんだ」

 

「んな事言われてもなぁ……」

 

定治は木場の要望に困ったように頭を掻く。現在定治の召喚できる神話生物の中でダントツに速いのはシャッガイからの昆虫だ。だが木場が出した条件には"人型"というものがある。定治が召喚できる神話生物はシャッガイからの昆虫を除くといずれも種族の平均値をみたら定治より遅いものしかいない。木場が求めている相手は恐らくシャッガイからの昆虫並みの速度を持つ相手の事を言っている。

 

定治がシャッガイからの昆虫を人にする魔術でもかけようか迷っている時、定治にある神話生物の姿が思い浮かぶ。

 

「あー、速さとはちょっと違うかもだけどそれっぽいのはいるな」

 

「本当かい!?なら早速召喚してもらってもいいかな?」

 

「あいよー」

 

定治が呟いた一言に木場が目を輝かせ、再び木刀を持ち構える。木場の好戦的な面を見て定治は苦笑を浮かべ、深淵の門(ルールブック)を取り出す。

 

「先に言っておくけどコイツは速く動くというより、瞬間移動を使って攻撃してくるタイプだ。ありとあらゆる所から攻撃してくるから気をつけろよ裕人」

 

「うん!ありがとう定治くん!」

 

「そんじゃいくぜ。来い!空鬼!」

 

深淵の門(ルールブック)が光ると黒い穴が現れ、そこから猿のような、昆虫のような見た目で退化した目の痕跡のある神話生物、空鬼が現れる。空鬼は黒い穴を通して現れると定治の方を振り向く。

 

『定治、久しぶり。何の用?』

 

『ちょっとダチの稽古相手をしてやってほしくてな』

 

『なるほど、暇だったからいいよ』

 

『んじゃ頼むわ。あ、くれぐれも言うけど殺すなよ?』

 

『言われるまでもない。定治の友達、俺の友達』

 

何回か定治と空鬼がやりとりをした後、空鬼がチカチカと少し光ってからスーッとその姿を完全に消した。それを確認した定治は木場の方に目を向ける。

 

「そんじゃ始めんぞ裕人、少しヒントをやる。空鬼は現れる時、消える時みたいに現れる場所がチカチカと光る。それを見逃さないようにな」

 

「うん、ありがとう定治くん!」

 

定治の助言に木場が礼を言って木刀を構えて辺りに気を配る。木場が注意を払っていると木場の死角である真上の方がチカチカと光始める。

 

「ほら裕人、上から来るぞ気をつけろ」

 

「ハッ!」

 

定治の一言に木場はすぐに反応し、真上を向く。そこには定治が先ほど言ったチカチカと光るものがあり、裕人はすぐに身構える。

 

『しょーりゅー◯ーん』

 

「へぶっ!?」

 

「あ、ごめん下からだった」

 

上を向いていた木場だったが、それを嘲笑うかのように木場が見えない角度でチカチカと光りだし空鬼が現れる。空鬼は木場に上を向いて気を取られている隙に屈んで力を溜めてからそのままジャンプするようにアッパーカットを当てる。

 

「クッ!!」

 

『遅いよ』

 

木場は空鬼のアッパーで空中に浮かび上がるが直ぐに体制を立て直し、近くの木を足場に空鬼に斬りかかるが既に空鬼はの体は既にチカチカと点滅しており木場が斬りかかる頃にはその姿をスゥーッと消してしまう。

 

「次はどこから来るんだ……?」

 

「祐斗、左左」

 

「え?」

 

『たつまきせ◯ぷうきゃく』

 

「ぐぁっ!?」

 

木場が定治の忠告通りに左を向くとそちらとは逆方向に空鬼が足を横回転させ、ストリート◯ァイターのリュウばりの蹴りをお見舞いする。その光景を見た定治はふと何か気づいた表情をすると木場にリュウ向かって両手を合わせる。

 

「ごめん。俺から見て左だった」

 

『ばいばいきん』

 

攻撃が決まると空鬼は再びチカチカと点滅してから消える。先ほどから(主に定治のせいで)ペースを乱されている木場は一度深呼吸をしてから空鬼を撹乱させる為に辺りを素早く動き回る。

 

「おお速い速い。空鬼、いけるか?」

 

『余裕』

 

素早く動き回る木場を定治は目で追いながら深淵の門(ルールブック)を通して現在次元の狭間にいる空鬼に語りかけると空鬼が余裕と返してくる。

 

素早く動き回る木場だが、動き回りながら辺りを見回すとある場所がチカチカと点滅しているのが目に入る。

 

「そこっ!」

 

チカチカと光るものを見つけ木場がそれに向かって走ると、定治の視界に木場の後ろで点滅する光を見つける。

 

「あ、祐斗後ろ後ろ」

 

「その手には乗らないよ定治くん!」

 

定治が忠告するが木場は定治が自身に注意を引かせる為の嘘だと思い、定治の忠告を無視して自身の視界に入る点滅する光の方にしか視界を向けない。だがそれがいけなかった。空鬼は木場の後ろに現れ、逆さになりながら足を180°開き、木場の背後から襲い掛かる。

 

『すぴにん◯ばーどきっく』

 

「ホントに後ろへぶっ!?」

 

「だから後ろっていったじゃん……」

 

『再びばいばいきん』

 

本当に後ろから来ると思わず背後に目を向けていなかった木場は空鬼の蹴りが直撃する。その光景を見た定治は呆れたようにため息をつく。先ほどから(主に定治のせいで)ペースを乱されて仕方のない木場は定治に向かって思わず声を荒げてしまう。

 

「ちょっと定治くん黙っててくれないかな!?気が散るから!」

 

「えぇ!?」

 

「ええ!?じゃないよ!とにかくそこで静かにしてて!」

 

「わかった……」

 

自分としては真剣に助言をしているつもりだった定治は木場が声を荒げながら言った言葉が心に思い切り突き刺さり、ガックリと項垂れてしまう。項垂れた定治は木を背もたれにして体育座りをして地面に木の棒で何かを書きながらイジけてしまう。それを見て木場はこれで気が散らなくて済むと思いながら木刀を構える。

 

『定治にひどいこと言ったらダメ』

 

「へぶっ!?」

 

だが木場は空鬼の気配を感じ取れず、斜め後ろに現れた空鬼に頭をフルスイングで引っ叩かれて地面とキスをしてしまう。その後数時間に及ぶ戦いの末、木場は空鬼の気配を完全に感じ取る事に成功し絶えず瞬間移動をする空鬼を相手に負けずとも劣らないほどにまで持ち込めるようになった。

 

『定治泣かないで!ほら!定治のママから貰った僕のおやつ、黄金の蜂蜜酒味の飴ちゃんあげるから!』

 

『うん……ありがとショゴスくん……』

 

『美味しいでしょ?ほら元気出して!いつもみたいに笑っていこうよ!』

 

『そだね……あ、○が勝ったよショゴスくん……』

 

『いつもみたいなテンションに早く戻って定治ーー!!何かすごい面倒くさいよ!こんな定治僕じゃ扱い切れないよ!!助けてスズキさーーーん!!斎藤さーーーん!!』

 

木場と空鬼が真剣に闘っているその頃、定治はショゴスくんに宥められながら貰った飴を舐めて地面で一人○✖️並べをしていた。そして今までに無いくらいイジけている定治を見てショゴスくんはお手上げと言わんばかりに自分と定治が共に仲良くしているグールの斎藤、深きもののスズキに届くはずもないのに声を出して助けを求めていた。




今回定治めんどくさくね?って?うん、作者もそう思った。でも仲の良い友人にお前ちょっと黙ってろ!って言われたら誰だってショボーンってしちゃうでしょ?少なくとも作者はなります。

落ち込む定治に自身のおやつまであげて慰めるショゴスくん……やっぱりショゴスくんって天使やな!(不定の狂気

合気道の技ってスタイリッシュでなんかカッコ良いですよね。作者は合気道やったことありませんけどね!四方投げはyo○tubeで探せば出て来ると思います。

あ、この特訓編あと二、三話は続くと思います。特訓が終わったらシリアスになる可能性が高いので今の内にふざけておきます。


テキトーな神話生物講座

空鬼

次元と次元の間、宇宙の様々な世界の間を行き来出来るとされる生物。彼らは本来、惑星から惑星といった大規模な移動しか出来ないがこの作品ではこまごまとした瞬間移動も可能。また瞬間移動?をする為には4ポイントのマジックポイントと1ラウンドの時間が必要だがこの作品ではコストと時間は大幅に軽減されているのでホイホイ移動してくる。定治の友人であり、よく定治の家で格ゲーをしている。阿見家ゲーム最強の定治パッパに格ゲーで勝つのが当分の目標らしい。


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武道キックとちょっとしたシリアス

さて、書き終えたんで投稿しますね。

今回シリアスな場面があるのでご注意を。

……こんな注意をするとはさすがの作者も思いませんでした。


午後になり、俺は一誠の特訓に付き合う事にした。午前のこと?もう忘れたよ。切り替え大事、マジ大事。そんで今から一誠の相手をするところなんだけど一誠の奴が何故かイラッとくる笑みを浮かべていた。

 

「どうした一誠、ニヤニヤして」

 

「いやぁ俺悪魔だろ?で、定治は人間だろ?身体能力は俺の方が上だし、定治は召喚と魔術を中心に闘うだろ?だから素手の闘いなら案外早く終わりそうだな、って思ってさ」

 

「ほう」

 

中々面白い事言うじゃないか一誠。一応アイツ、俺が武術を修めているのを知ってるはずなんだけどな。それでも俺に身体能力だけで勝てると申すか、ふむ面白い。

 

「それじゃちゃっちゃとやってサクッと終わらせようぜ」

 

「あ、その前にちょっと準備体操するわ」

 

「おう。いいぜ」

 

ニヤニヤ笑う一誠にタイムを宣言して俺は準備体操として近くにあった偶然人っぽい形をした大木の前に立ち、脚に力を込める。

 

「武道(立ち技)+キック+DB!その威力グレネードランチャーに匹敵ィ!!更にラッシュ宣言!」

 

ズドン!!

 

「え!?ちょ、ま、えぇ!?」

 

俺が大木を思い切り蹴るとズドンッという音が響き大木はミキミキと悲鳴を上げる。後ろで一誠の奴がメチャクチャ驚いているけどまだまだいくぞコラァ!!

 

「もう一度武道(立ち技)+キック+DB!更に3D6ゥ!!総ダメージ量81mm迫撃砲に匹敵ィ!オラァ!!」

 

ズドンッ!

 

「え、えええええ!?あんなに大きな木が倒れたぁぁぁ!?嘘だろお前!?」

 

もう一度蹴った事により大木が倒れる。大木が倒れた音が辺りに鈍く響き俺はそれを満足気に笑ってから一誠の方を見る。

 

「さて、準備体操終わったし殺ろうぜ一誠。あ、俺人間だから、身体能力優れている悪魔の一誠さんに劣るから本気でいきますんで!よろしくお願いします!!」

 

「ナマ言ってサーセンっしたぁぁぁぁ!!」

 

あれ、何か一誠が土下座してる。油断を誘うつもりだな!だがそうはいかないぜ!俺は土下座する一誠に向かって脚を振り上げる。さぁ、回避ロールを振れ一誠!

 

「問答無用!行くぞオラァァァ!!」

 

「ヒィィィ!?助けて部長ォォォォ!!」

 

脚を振り上げる俺を見て一誠が何故か逃げ出すので俺は本気で一誠を追いかけ、容易く回り込む。DEX18を舐めんじゃねぇ!

 

「一誠は逃げ出した!しかし回り込まれてしまった!定治からは逃げられない!」

 

「ほげぇぇぇ!?」

 

「なぁに安心しろ、ラッシュはしないでおくから!フェイントはするけどなぁ!」

 

「て、手加減を!何とぞ手加減をお願いします定治さん!グレネードキックとかくらいたくないんです!」

 

「大丈夫大丈夫!イケるイケる!人間より身体能力優れてる悪魔なら耐えられるって!だからノックダウン攻撃とかいう手加減はしないでおきますね!つーわけで、覚悟しろやオラァァァ!」

 

「お助けぇぇぇ!!"ブオンッ!!''あぶねっ!?」

 

「チィッ!避けたか!次行くぞ!死ねやオラァァァ!!」

 

「ヒィィィ!?死ぬ!死ぬゥゥゥゥ!!?」

 

こうして俺は1時間くらい一誠にグレネードキックを仕掛けまくった。後には一誠が避けた事で巻き添えをくらい、倒れた木だけが残った。一誠はというと怯えた様子で部長の後ろに隠れている。女の後ろで怯えるとか男としてちょっとどうかと思うぞ一誠ィ!

 

「定治、ちょっといいかしら?」

 

「あ、ヤベ」

 

なお、このあと部長にしこたまシバかれた。

 

 

夜になり、夕食を終えた定治は深淵の門(ルールブック)を片手に持ちながら外で星空を眺めていた。

 

『ああ、そうだ。いざとなったら頼むぜ』

 

「定治、隣いいかしら?」

 

「ん?ああ部長か。どうぞ」

 

定治が気づかぬ内に近くにはリアスおり、定治は少し横にずれると隣にリアスが座る。

 

「いよいよライザーとの闘いが近づいて来てるわ」

 

「そうっすね」

 

「今回定治は私の眷属で無いにも関わらず特訓について来てくれた。そのお陰でイッセーと祐人は私一人で鍛えるより強くなれたわ。改めて礼を言わせて頂戴。本当にありがとう」

 

そう言ってリアスは定治の方を向きペコリと頭を下げる。プライドの高そうなリアスから礼を言われるとは思わなかった定治は身体に何かが走るような感触を覚える。

 

「な、なんですか部長急に。そういうの言われても身体が痒くなるんでやめてくださいよ……」

 

「フフフ、気にしないで。ただ言いたくなっただけだから」

 

「は、はぁ……そうですか」

 

戸惑う定治を見てリアスがクスクスと笑う。そんなリアスを見て定治は戸惑いながら頬を人差し指でポリポリと掻く。

 

「あなたは本当に変わらないわね定治。何時もふざけてばかりで人を困らせて、後でヒドイ目に会うのを分かっているのにも関わらず真っ直ぐ突き進んで、そしてこういった真面目な空気をとても嫌う。」

 

「まぁそれが俺ですからね」

 

そう言って定治は手に持っていた深淵の門(ルールブック)を仕舞う。二人は暫くの間沈黙する。辺りには虫が奏でる音色と風で木の枝が揺れる音しか聞こえなくなる。何秒、何分経っただろうか。風に揺れる紅髪を押さえながらリアスが口を開く。

 

「短い間だったけど私はあなたに会えて良かった、そう思っているわ。あなたの悪ふざけには何時も困らされているけれど、それも悪く思っていない私がいる。あなたが来てからオカルト研究部は良い意味で騒がしくなった。本当、何時も困らされてばかりだったけど毎日が本当に楽しかったわ。」

 

「……そう言われると悪い気はしないですね」

 

「私はあの学園に入ってからあなたみたいな人には初めて会ったわ。最初私は貴方の事をとても扱いに困る人、そう思ってたわ。」

 

「よく言われます」

 

「本当に最初はそう思っていたけれど、だんだんあなたと言う人と過ごしていく中で私はあなたと言う人が解ってきて……何時しか私はあなたにちょっとした尊敬の念を抱いていたわ。」

 

「…………」

 

リアスの噓偽りの無い本心の言葉、それを聞いた定治は何も言わずにただ夜空に瞬く星を眺めていた。

 

「何時も悪ふざけばかりしてヘラヘラ笑っているけれど、心にしっかりとした芯を持っていて……そしてとても友人思いの素敵な人」

 

「…………」

 

リアスの見えた定治の人物像を聞き、定治は照れ臭そうに無言で星空を眺める。そんな定治を見てリアスはフフッと笑いながら定治に向かって首を傾げる。

 

「ねぇ定治。私はあなたと友達、なのかしら?」

 

「そう言うのは聞くもんじゃないですよ。友達っていうのは気づいたらなってる、そう言うやつです。少なくとも俺はそう思ってます」

 

「ええ、そうね。その通りだわ」

 

リアスの問いに定治は自身の考えを口にする。それを聞いたリアスは微笑みながら頷き、定治の考えに同意する。そして再び二人の間に沈黙が包む。

 

「定治、私はあなたを友人だと思ってる。友人思いのあなたにつけ込むような聞き方でとても失礼だけれど……私が困っていたら、あなたは私の事を助けてくれるかしら?」

 

「当たり前ですよ。友達(ダチ)が本当に困ってるって時は助ける。じゃなきゃ俺はそいつの友達(ダチ)じゃいられなくなる」

 

定治の言葉を聞いてリアスはやはり定治は友人思いの人なんだと確信する。そしてリアスの中である思いが芽生える。この子を、素晴らしい思いを持つこの子を……私の仲間に、眷属にしたい……と。

 

「そう……定治、もし良かったら「ストップ」」

 

リアスが口を開くとそれに被せるように定治が口を開く。定治の視線はいつの間にか星空からリアスへと向けられていた。

 

「俺を眷属にしよう、って言おうとしてんならそれは止めて下さい。部長が後どれくらいその悪魔の駒って奴を持ってるかは知らないですけどその貴重な駒を俺なんかに使わないで下さい。俺みたいな奴がアンタの眷属になるのは荷が重すぎる。それに状況が状況だ。今俺には闘える駒が一つでも欲しくてなし崩し的に俺を選んでいるようにも見えるんです。」

 

「そんな事は「それに」……っ」

 

そんな事はない!とリアスが言おうとした時、再び定治がリアスの言葉を包むように口を開く。言葉を被せられ押し黙るリアスとは対象に定治の表情は何時ものヘラヘラとした笑みとは違う、とても優しい微笑みを浮かべていた。定治は普段見せない優しい微笑みを浮かべたままリアスに向かって自身が思っている事を口にする。

 

「もっと自分の眷属の事、信用してやって下さい。祐人は何か隠してるみたいに何処か暗い部分があるけど、誠実でとても優しい部長に剣を捧げている立派な騎士。一誠はエロくてバカだけど、良い意味で真っ直ぐで、熱血なところがあって、人の悲しみを自分の悲しみのように受け止めて一緒に歩いていってくれる俺の尊敬してる親友だ。今のままだと負ける確率が高いかもしれない。だけどアンタには二人だけでこんなに良い眷属がいるんですよ。それが他にもまだ沢山いる。だから……もっとアンタの眷属の事、信じてやって下さい」

 

「…………」

 

優しく微笑む定治の言葉を聞き、リアスは口を噤む。そんなリアスを見ても定治は気にせずに再び話を始める。

 

「ライザーって奴の闘いが終わって、それでもアンタが俺の事眷属にしたい。そう言うのならその時また答えますよ。だから……負けないで下さいよ部長」

 

「……ええ」

 

「そんじゃ、真面目な空気が嫌いな俺はそろそろお暇しますわ。」

 

定治は最後にそう言うと立ち上がり手をヒラヒラと揺らしてその場から去っていく。周りにいるのはリアス一人。心地よい風が吹いていく中でリアスは静かに溜息をつく。

 

 

「……困ったわね。負けられない理由、増えてしまったわ」

 

言葉とは裏腹にリアスの表情はとても晴れやかなものだった。リアスは定治が去ってから暫くして立ち上がると自分達が寝泊まりしている小屋に向けて歩いていく。負けられない理由が増えてしまった。だからこそ待ち受ける決戦の日に備えてより完璧に仕上げなくては、そう考えながら。小屋が目に入り、リアスはいつも通り自身の眷属に見せる微笑みの表情を浮かべながら小屋の扉を開ける。

 

するとリアスの視界には特訓中に何時も使っている枕が視界一杯に入る。

 

「な、何へぶっ!?」

 

枕が直撃し、変な悲鳴をあげるリアス。一方で枕を投げた張本人である定治はというと何故か悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「くそっ!外した!」

 

「フフフ!甘いよ定治くん!午前は不覚を取ったけど枕投げ対決ならスピードのある僕の方が有利だ!今度こそ君に勝つよ!」

 

「ハン!DB1D6の俺が投げる豪速枕、何時まで躱せられるかな祐人!」

 

「オラァァァ!死ねや定治ゥゥゥゥ!昼間の仕返しだぁぁぁ!!」

 

小屋の一番広い部屋では現在、今まさに定治に向かって枕を投げようとしている一誠、素早く動き枕を避ける木場、そして豪速枕を投げ続ける定治の姿があった。定治は木場に向かって枕を投げるとすぐに一誠の投げる枕に気づき、迎撃の体制に入る。

 

「不意打ちでも無いのに効くかそんなもん!武道達人並みの俺の受け流しを見るがいい!」

 

「バ、バカな……!至近距離から撃った俺の波動枕が完璧に受け流された……だと!?」

 

「その程度のちっぽけな速度の枕でこの定治を倒せると思ったかァァァ!?貧弱貧弱ゥ!!URYYYYYY!!」

 

「く、やはり一番の強敵は定治くんか……一誠くん!ここは手を組んで一緒に定治くんを倒そう」

 

「ああ!任せろ木場!俺たちが組めば定治にだって負けねぇぜ!」

 

「ちょ!セコ!?これ全員敵がルールだろ!手を組むな手を!」

 

「こ、これは一体どういう事かしら……?」

 

「あ、部長!」

 

顔に覆い被さった枕を掴み、リアスは眉をヒクヒクさせ怒りのあまり魔力が迸る。そんなリアスに気づいたアーシアが両手で枕を持ってリアスに寄ってくる。

 

「定治さんが先程『合宿の夜にやるといったらやっぱり枕投げだろ!全員敵ルールで枕投げやろうぜ!動体視力と反射神経の訓練にもなるし!』って言ったら木場さんが同意して、さっき定治さんにやられた仕返しだ!って一誠さんも同意して、それを見て面白そうという理由で子猫ちゃんと副部長も参加してこうなってます!あ、私もこんな楽しそうな事今まで無かったので参加させて頂いてます!」

 

それだけ言ってアーシアは可愛く鼻息を鳴らして枕投げを行っている闘いの場所へと向かっていった。

 

ギャーギャーと騒がしい声が小屋の中で響く。決戦の前だというのにみんな何処か楽しそうだ。その光景を見ながらリアスはフフッと楽しそうに笑い、枕を片手で抱えて定治たちがいる方向を指差す。

 

「なかなか面白いわね!この枕投げ対決、この私も参加させてもらうわ!」

 

凛としたリアスの宣言の元、第一回オカルト研究部枕投げデスマッチの火蓋が切って落とされた。




アヒャヒャヒャ!シリアスで終わると思ったかァ!?イイハナシダナ-で終わると思ったかァ!?残念だったなァ!この作品は作者のおふざけで出来てるんだよォォォォ!!WRYYYYY!!

あ^〜、シリアス書いた後のコメディ楽しいんじゃぁ^〜。

途中のシリアスを見て、枕投げを読んで

「どうせこんなオチだと思ったよ!」

そう思った読者さん!おめでとう!そんな貴方には"思考回路が定治と同じ"というとても名誉な称号をあげましょう!

あ、作者はこんな称号クソほどいらないです。

本来、人以外にラッシュは出来ないのですが定治は違います!理由ですか?

定治「襲ってくる神話生物何回もボコボコにしてたらいつの間にか人以外にもできるようになってた」

大体こんな感じ。ハウスルールハウスルール(こんなハウスルールは無い)。

とまぁそういう訳で次回!枕投げ大会!イクぜぇぇぇ!!


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枕投げデスマッチ。チーム戦へ

僕は今日お仕事お休みです。

暇なので今回の話書いたので投稿します。

今回、久しぶりに深きもののスズキ登場。じゃけん、読者さんはSANチェックしましょうね〜。

SANチェックしない悪い子はスズキさんの上司さんが挨拶しにきますよ(ニッコリ

今回、定治とスズキさんは勿論、木場と一誠もはっちゃけますのでご注意下さい。


部長の宣言の元枕投げが始まった訳だが、部長が『レーティングゲームはチーム戦だし、連携を高めるためにここはチームを組んでやりましょう!』というので現在俺、一誠、祐斗、そして深きもののスズキさんを助っ人に呼んだAチーム。部長、姫島先輩、子猫ちゃん、アーシアちゃんのBチーム。以上のチームで枕投げデスマッチが行われる事になった。ルールはこんな感じ。

 

1.三回当たったら失格(腕と足はセーフ)

 

2.どちらかのチーム全員が失格になるまで行われる

 

3.ショゴスくんは何処が頭部なのか足なのか身体なのか解らないので不参加

 

4.失格した人を盾にするのはダメ

 

5.定治だけは絶対に殺す

 

とまあそんな感じ。5ヒドクね?俺だけ失格になっても死体撃ちされそうなんだけど……これ書いたの誰?

 

「(俺だよ)」

 

一誠……こいつ……直接脳内に……!

 

後で覚えてろこの野郎。

 

 

ていうか一誠と俺同じチームじゃん。俺を殺すとか絶対に無理じゃんバーカバーカ!

 

おっと、そんな事考えてるうちに始まりそうだな。

 

「それじゃ行くわよ!よーいスタート「オラァ!」……え?」

 

部長がスタートと言った瞬間、俺は恐らく俺以上の豪速枕を投げるであろう小猫ちゃんに向かって枕をぶん投げる。あまりに突然な事に反応できなかったのだろう。小猫ちゃんが驚く間も無く俺の豪速枕が小猫ちゃんの顔面にヒットする。

 

よし、まずは一回当てたぜ。

 

フライングギリギリで投げた俺を見てみんな固まっているがそんなの関係ない!フライングじゃねぇからセーフだしなぁ!

 

一同固まっている中、小猫ちゃんの顔面に張り付いていた枕が落ちる。するとなんという事でしょう。小猫ちゃんの目が思いっきりつり上がっているではありませんか。……マジギレしちゃった感じ?

 

小猫ちゃんはつり上がった目のまま俺が投げた枕を拾い、部長の方を見る。

 

「部長、枕投げルールその5、言ってください」

 

「えーと、確か……定治だけは絶対に殺す、だったわね」

 

「了解しました。部長の命令の元、定治先輩をこれからブチ殺します」

 

「ルール言っただけよ!?殺せと命じてはいないわよ!?」

 

「やだ……俺の後輩殺意高すぎ……?"ゴォッ!"受け流しィ!!」

 

ヤベェ……マジで速かった……この前食らった豪速クッションより速かった……もしかして俺、割とマジで生命の危機?

 

ヤバイヤバイヤバイ!

 

「スズキさぁぁぁん!ヘルプ!殺される!子猫ちゃんにマジで殺される!」

 

「仕方がないですねぇ。水遁・水陣壁!」

 

俺がスズキさんに助けを求めるとスズキさんは呆れながらも魔力で水の壁を作り小猫ちゃんの枕を防ぐ。

 

助かった……。

 

魔力を使うのはギリギリアウトな部類だけど勝ちゃええねん。ルールにも魔力使っちゃダメなんて書いてないしなぁ!俺は使わないけど!

 

「フフフフ!これでこちらが相手側の枕を食らう確率は下がりましたねぇ!ワンサイドゲームほど楽しいモノはありませんよ!」

 

ゲスや!スズキさんほんまゲスや!でも嫌いじゃないでぇ!フフフ、さぁ子猫ちゃんもう一度俺の枕を食らうがいい!強そうな奴から先に倒しておかないとなぁ!

 

「チッ……厄介な壁です」

 

投げた枕を水の壁で防がれ、小猫ちゃんが苛立たしげに舌打ちをする。そんな子猫ちゃんに姫島先輩が枕を持って近づく。

 

「子猫ちゃん、この枕を使うといいですわ」

 

「フ!どんな枕を使おうがこの水陣壁の前には意味なし!さぁ自分の無力さを感じながら倒れなさぶべらっ!?」

 

「「「スズキさぁぁぁぁん!?」」」

 

姫島先輩から貰った枕を小猫ちゃんが投げると枕は水の壁を容易く突き破りスズキさんの顔面にエグい音を立ててぶつかる。枕がぶつかったスズキさんはその衝撃で吹っ飛び壁に激突し、俺と一誠、祐斗の叫びが小屋にこだまする。そして壁に激突したスズキさんはピクピクと痙攣して意識を失いかけている。

 

なんだあの枕!?羽毛枕の威力じゃねぇぞ!?

 

メディィィィック!メディィィィック!!

 

俺と一誠がスズキさんの意識を懸命に取り戻そうとしていると祐斗が先程小猫ちゃんが投げた枕を拾い何かに気づいたようだ。

 

「さ、定治くん!大変だ!」

 

「どうした裕人!」

 

「さっき小猫ちゃんが投げた枕……羽毛じゃなくて砂がパンパンに詰められてる……!」

 

「「……は?」」

 

裕人が冷や汗を垂らしながら言った事に俺は勿論一誠も固まる。ま、待て……あの枕、確か姫島先輩が子猫ちゃんに渡してたよな……?

 

ギギギッと錆び付いた機械が動くように首を動かし姫島先輩の方を見るとそこにはニコニコ笑顔で枕から羽毛を抜き取り、砂をパンパンに詰める姫島先輩の姿があった。

 

「ウフフ、砂を詰めた枕を投げたらダメ、なんてルールはありませんでしたわ」

 

ニコニコ笑顔で姫島先輩が言った一言に俺と一誠は勿論、祐斗でさえもダラダラと冷や汗を流す。

 

お、俺たち……い、生きて帰れますかね……?

 

俺たちが姫島先輩の容赦の無さに怯えていると俺たちの後ろからか細い、今にも死にそうな声が聞こえてくる。

 

「お、怯えてはいけませんよ定治、祐斗くん、一誠くん……これは試練なのです……敵は強大で容赦の無い者たち……ですが貴方たちはまだ戦える……!その身体はまだ枕を投げれるはず……!それに……まだ負けると決まった訳ではありません……!い、いきなさい……私の死を……無駄にしないで下さい……後は……頼みましたよ……ガクッ」

 

「「「ス、スズキさぁぁぁぁん!!」」」

 

スズキさんが息も絶え絶えで言った俺たちへのエールに俺たち三人の目に涙が溢れてくる。クソッ!スズキさん、この戦いが終わったら漁師の田中さんと酒を飲むって言ってたじゃねぇか!なんで……なんでこうなるんだよ……!

 

「定治、行こうぜ。俺たちは戦わなきゃいけない。前を向いて戦わなきゃいけないんだ。スズキさんの死を無駄にしないために……」

 

「いやスズキさん死んで無いわよ」

 

「ああ……!一誠の言う通りだな……!」

 

ああ、お前の言う通りだ一誠!ここで泣いてもスズキさんは喜ばない……!俺たちが亡くなったスズキさんのためにできるのは目の前の敵の方を向いて戦うことだけだ!

 

「だから死んで無いわよ。気絶してるだけよ」

 

涙を拭う俺に祐斗が肩にそっと手を置く。俺を勇気づける祐斗の顔は目に涙を浮かべていたが顔は敵を真っ直ぐに見ていた。

 

「僕たちは立ち向かわなきゃいけない……!そして勝つんだ!僕たちこそが枕投げ界最強なのだと証明するために……!さぁ行くよ一誠くん定治くん!今、この戦いに……!」

 

「「「決着をつける!!」」」

 

スズキさんの死により俺たちの心は一つになった!今この時の俺たちを止められる奴なんていない!俺たちは……無敵だ!

 

「なんなのこの子たち……急に熱くなったのだけれど……」

 

「ウフフ、男の子にはああいう時期があるんですよ部長」

 

「……ああいうノリ、嫌いじゃ無いです」

 

「わ、私はスズキさんの治療に向かいますね!」

 

心が一つになった俺たちを見て先程から何か言ってたリアス先輩が戸惑いを見せている。フ……俺たちの心は一つになった。だが向こうはどうだ?俺たちを見てそれぞれ違う事を思っている。心が全然一つになっていない。この時点でわかる……!この勝負俺たちの、勝ちだ。

 

勝負を棄権してスズキさんを介抱するアーシアちゃんは良い子やな。

 

アーシアちゃんがスズキさんの方へ向かっていくのを確認すると俺たちは両手に枕を抱えた後、祐斗が俺と一誠に指令を下す。

 

「行くよ定治くん一誠くん!敵にジェットストリームアタックを仕掛ける!」

 

「「了解!」」

 

祐斗の指令の元、俺たちは祐斗、俺、一誠の順に並び敵に向かって突撃する。

 

「「「ハァァァァッ!!」」」

 

「感動的ですね。ですが無意味です。」

 

ただ、真っ直ぐに突撃する俺たちに向かって小猫ちゃんが枕を二つ持ち俺たちを迎え撃つ。

 

フ!三人に勝てる訳無ぇだろぉ!!?

 

俺たち三人は向かってくる小猫ちゃん目掛けて枕を構え、投げると小猫ちゃんは俺たちのジェットストリーム枕を軽々手でいなしてから跳躍すると祐斗の頭を踏み、その勢いで俺の頭も踏み抜いてからより高く跳躍する。

 

バ、バカな……!?

 

「僕たちを!?」

 

「踏み台にしたぁ!?」

 

「まずは一誠先輩」

 

俺を踏み抜き高く跳躍した小猫ちゃんは高高度から一誠に向かって砂入り枕をぶん投げる。それは枕が無くなり防ぐ手段を無くした一誠には防ぎようが無く、砂入り枕は一誠の背中に激突し一誠は床に叩きつけられる。

 

「グァァァッ!?木場……定治ゥゥ……!」

 

背中に砂入り枕が激突した一誠は苦しそうな声で俺たちの名を呼ぶとそれからピクピクと痙攣し動かなくなる。

 

一誠、あのバカ!お前、この闘いに勝ったら部長と姫島先輩のオッパイを揉むんだって言ってたじゃねぇか!

 

なんで……なんで死んじまうんだよ……!

 

一誠がやられてしまった……だけど俺たちはたった一人になっても……戦いぬいて……勝つんだ!

 

「一誠がやられた!だが!マダァッ!」

 

俺は後方にいる子猫ちゃんの方を向いて枕を受け流す態勢に入る。現在小猫ちゃんはまだ枕をもう一つ持っている……。

 

あれを食らう訳にはいかない!

 

ん?上からバチバチって音がするな……?

 

「定治くん、上がお留守ですわ」

 

「なっ!?ギャァァ!?」

 

小猫ちゃんの方を向いていたため、俺は姫島先輩の雷を避けられず直撃してしまう。

 

クッ……こんなところで終わりかよ……!

 

息も絶え絶えな俺に先程から枕投げを見ていたショゴスくんがテレパシーで直接脳内に語りかけてくる。

 

『定治ーーー!!死ぬなぁぁぁ!!まだ、僕は!キミと遊びたいんだ!だから死ぬなぁぁぁ!!』

 

……ああ!そうだなショゴスくん!俺はまだ死ねない!ショゴスくんと海で遊ぶ約束をまだ果たしていない!そしてまだ俺はあの時の事を後悔している!今度こそアレを達成してみせる!動け!俺の身体ァァァ!!

 

「ウォォォッ!そうだ!俺はまだ死ねない!俺は!生きる!生きて!ショゴスくんの肉を!今度こそ!食べきってみせる!」

 

『朱乃ちゃん。定治殺して良いよ』

 

「な、ショゴスくん……テレパシーで私にお願いを……?了解ですわ♪」

 

「ショゴスくぅぅぅん!?ギャアアァァァッ!?」

 

なんでよ!ショゴスくんの肉食べて吐いちゃったの未だに後悔してるから言ったのになんでよ!なんでショゴスくん姫島先輩にテレパシーでお願いしてんだよ!

 

「次に定治先輩。死ね」

 

もう身体が言うこと聞かなくなり、俺は声のする方を向くと横で小猫ちゃんが砂入り枕を投げる瞬間が目に入る。

 

終わり、か……。

 

「グハァァァッ!?ゆ、祐斗……すまない……俺はここまでみたいだ……後は……任せた……ぜ」

 

砂入り枕が直撃し、俺は吹っ飛んで壁に叩きつけられてしまう。二回も雷を喰らった俺にはこのダメージは耐えきれず、俺はどうにか声を出して裕斗に後を託す。

 

俺が死にそうな声で呟くと、後を託した祐斗の目には涙が浮かんでいた。

 

おいおい泣くなよ……こっちまで泣きそうになるだろ……?

 

「定治くんもやられた……!定治くん、この闘いが終わって帰ったら一緒に温泉に入ろうって言ってたじゃないか……!こんなところで死ぬなんて……定治くん……本当にキミは……大馬鹿野郎だ……!」

 

俯いて静かに呟く祐斗の目から涙が落ちていく。ああ、ダメだなおれは……友達を泣かせちまうなんて……本当にダメな奴だ……。

 

祐斗は静かに呟いた後、涙を拭い、再び枕を手に取り意を決した表情を見せる。

 

裕斗……今のお前……最高にカッコいい……ぜ……。

 

どうやら俺も限界みたいだ……瞼を開ける力すら残ってない……スズキさん……一誠……すまない……。

 

「みんなの意思、確かに僕に託された!みんなの仇は僕が取る!ハァァァァ!!」

 

閉じていく俺の瞼の隙間から涙と共に駆けていく祐斗の姿が見える。あぁ……祐斗……すまない……そして……ありがとう……。

 

 

 

なお、この後裕斗も普通に砂枕をくらって壁に叩きつけられ俺たちAチームは惨敗した。

 

女の子には勝てなかったよ……。




死んでいく仲間たち、突然裏切るショゴスくん。そして倒れてしまう定治に後を託され、死んだ仲間のことを思い涙を浮かべる木場。

枕投げごときでこの熱い展開。やっぱりギャグって書くの楽しいね!

ショゴスはテレパシーなんて本来出来ないんですが、この作品は出来るって事でオナシャス!ガバガバですみません!

次回はどうやって遊ぼうかな……男組みに猥談でもさせようかな?

あ、そういえばお気に入り500超えました!ありがとうございます!

この作者のオフザケほぼ100%小説をお気に入りしてくれたみなさんは僕が定治に突然

定治「おちん○ん」

と言わせても笑って許してくれる器の大きい人たちということでよろしいですよね!(満面の笑み

一応言っておきますと原作2巻におけるレーティングゲーム編はたぶんカットします。定治がレーティングゲームに参戦しないのでやることと言ったらスズキさんとレーティングゲームの様子を実況するくらいしかやる事が無いので。本当にすみません!


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定治とサーゼクス

この小説の弱点に気づいてしまった……

定治のアホがシリアスやると止められる奴がいない……

まぁいっか(楽観

私は小説書くの才能なんてありませんがそんな私でも今回何か上手く書けなかったと感じてしまうほどダメな気がします。クトゥルフ要素入れられなかったからか……それとも……なんだろ?

取り敢えず、これ以上は無理そうなので投稿しておきます。




ライザーとの決戦当日、定治はレーディングゲームに参加はしないが特別に選手の控え室に入る事を許されていた。定治は朱乃が淹れたお茶をゆっくりと飲みホッとため息をつく。

 

「はぁ〜、久しぶりに姫島先輩が淹れたお茶を飲んだ気がする……」

 

「あら?そうだったかしら?」

 

定治がお茶に舌鼓を打っていると、お茶を淹れた朱乃が首を傾げながら近寄ってくる。朱乃が首を傾げながら言った言葉に対して定治は過去の記憶を呼び起こし、冷や汗を垂らしながら引きつった笑いを浮かべる

 

「俺、ここ最近姫島先輩にシバかれた記憶しか無いっスよ……」

 

「あらあら?変な事を言う口はそこですか?」

 

「スミマセン!ナマ言ってスミマセンっしたぁぁぁ!!」

 

定治の言葉を聞くと朱乃が魔力を滾らせ辺りにはバチバチと音がなる。それを目の当たりにした定治は直ぐさま朱乃に対して頭を擦り付けて土下座をする。その光景を見てリアスはため息をつき、朱乃を戒める。

 

「朱乃、あまり定治をイジメてはダメよ?」

 

「いえいえ、イジメてはいませんよ。定治くんリアクションが面白いのでからかってるだけですわ」

 

「からかいでシバかれる俺の身になって下さいよ……」

 

「あら?何か言いました定治くん?」

 

「何も!何も言っていません姫島先輩様!!」

 

「そうですか、ならいいですわ」

 

シバかれる定治と微笑む朱乃。オカルト研究部では見慣れつつある光景を見て一同はため息をつきながら微笑む。

 

「フフフ、定治くんは相変わらずだね」

 

「一応今決戦の前なんだけど、とてもそんな空気には見えねぇな」

 

「……定治先輩はこういう人ですから」

 

「でも、お陰で緊張がなんだか解れてきましたよ!」

 

『これより、レーディングゲームを開始します。出場者は用意された魔方陣の元までお越しください』

 

定治を除いて微笑む一同にスピーカーからレーディングゲーム開始の通知が響く。それを聞くとリアスは顔を引き締め、一同に声をかける。

 

「時間ね。さぁ行くわよみんな!この闘い、勝つのは私達よ!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

リアスを先頭に皆顔を引き締めて用意された魔方陣の元へと歩いていく。魔方陣に皆が着くと魔方陣が光り出しリアス達は決戦の地へと向かっていった。

 

土下座したままの定治を置いて……。

 

 

朱乃に土下座してから暫く経ち、リアスとライザーのレーディングゲームの様子を定治は爆笑しながら見ていた。

 

「アッヒャッヒャッヒャ!!洋服崩壊(ドレスブレイク)!マジでやりやがった!アッヒャッヒャッヒャ!!」

 

モニターに映るのは洋服崩壊(ドレスブレイク)と叫ぶ一誠と一誠の力により服がビリビリと破けるライザーの眷属の姿だった。

 

「なんだよ洋服崩壊(ドレスブレイク)って!サイコー過ぎる!マジサイコー!お腹痛い!ぽんぽん痛ぇよ一誠!アッヒャッヒャッヒャ!」

 

モニターに映る光景を見て定治が爆笑していると、近くにリアスに似た紅い髪を生やした男が定治に近寄ってくる。

 

「隣、いいかな?」

 

「アッヒャッヒャッヒャ!」

 

「む、無視……?後笑いすぎじゃないかな……?」

 

男が微笑みを浮かべながら定治に尋ねるが定治はモニターを見て爆笑しており男の声がまるで耳に入っていなかった。

 

「アッヒャッヒャッヒャ!死ぬ!死ぬ!」

 

「まだ無視!?」

 

「アッヒャッヒャッヒャブホッ!?オエッ!?ゴホォッ!?」

 

「え、えぇ!?だ、大丈夫かい!?」

 

モニターにはもう一誠の姿は無いにも関わらず定治は洋服崩壊(ドレスブレイク)の余韻を引きずって爆笑していた。無視されて驚く男を無視して定治が爆笑していると、笑いすぎて唾が気管に入り苦しそうにして椅子から転げおちる。

 

「ゴホッ!?ゴホォッ!?」

 

「本当に大丈夫かい!?」

 

気管に入り苦しそうにする定治を紅髪の男を心配そうに背中をさする。暫くして荒い呼吸から落ち着いた呼吸になり口に垂れた唾を拭う。

 

「し、死ぬところだった……」

 

「良かった……大丈夫みたいだね」

 

「ハイ……ありがとうございます……」

 

何とか無事に助かった定治を見て先程まで背中をさすっていた紅髪の男が微笑む。定治は男を見て男に笑い返してお礼を言うと、男の方を見て顔が固まる。

 

「……誰ッ!?」

 

「今更!?」

 

互いに驚いてから暫くして、定治では無く紅髪の男の方が先に口を開く。

 

「は、話に聞いていた通り変わっている人だねキミは……定治くん?」

 

男が口にした自身の名前を聞き定治は驚いた顔をみせる。

 

「え?俺のこと知ってんの?マジで誰!?」

 

「ああ、私としたことが名乗るのを忘れてしまっていたね。私はサーゼク「あ、もしかしてグールの斎藤さんの仲間の齋藤さん?ダメだよ今バイト中でしょ?シフトはちゃんと守んなきゃ」齋藤さんって誰!?」

 

目の前の男が齋藤ではないと否定すると定治は男に向かってキョトンとした顔をみせる。

 

「え?……違うの?」

 

「違うよ!!……ゴホン、私はサーゼクス・ルシファー。魔王の一人であり、あそこで闘っているリアスの兄でもある。齋藤という名前では無いよ、本当に齋藤という名前ではないからね」

 

「あ、ハイ」

 

「さて、定治くん。私がここに来たのは何でかわかるかな?「わかりません!」即答!?もうちょっと考えようよ!」

 

「はーやーく!おーしーえーてーよー!」

 

「なんなのこの子!?ああもう!」

 

喚きながらゴロゴロと転がる定治を見て、せっかくカッコよく行こうとしていたサーゼクスは頭を掻きながら悲鳴に近い声を上げる。このやりとりが暫く続いる中、ある音声が二人の元に響いてくる。

 

『レーディングゲーム終了。勝者、ライザー・フェニックス』

 

「……は?」

 

この音声を耳に入れた瞬間、定治が動きをピタリと止める。

 

「おい、試合……変な事してる内に終わったんだけど……?」

 

眉をヒクつかせながら定治が起き上がると、サーゼクスは苦笑いしながら定治を見る。

 

「なんていうかな……私、悪い事してない気がするんだけど……?あ、ちょ、な、何で私の腕掴んでるのかな?え、強っ!?力強っ!?」

 

苦笑いを浮かべるサーゼクスの腕を定治が素早く掴み上げ、そのまま関節技を極める。

 

「武道(組み付き)だオラァァァ!!今の俺はお父さんにチャンネル争いに負けた息子並みに不機嫌だコラァ!腹いせじゃぁぁぁぁ!!」

 

「キミすっごいタチ悪!?ちょ、痛い痛い痛い!?アッーーーー!!」

 

こうして定治が魔王相手に関節技を極めている中で、リアスの敗北が決定しライザーとリアスの結婚が決まった。

 

そして時は進み、場面はリアスとライザーの結婚式へと移って行く……

 




はい、レーディングゲーム終了です。

最初定治とサーゼクスでシリアスな会話をさせようとしていたのですが上手くいかなかったので止めました。

次回の分、現在セリフだけ書いているのですがかなりシリアスとなっています。ごめんなさい。



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冒涜的な笑み

書き終わった……長かったなぁ(遠い目

今回ギャグ要素ありません。シリアス100%です。

ご注意下さい


今日はリアスとライザーの結婚式が行われる日、定治は溜息をつきダルそうにタイを緩める。

 

「ハァ〜、だっりぃ……」

 

定治は現在木場たちと離れ、コルクで蓋をされた瓶を片手に持ちながら披露宴の周りを歩いていた。

 

「ったく……あの馬鹿。どこほっつき歩いてんだよ……お?」

 

定治が暫く歩いているとアーシアと一緒に何か話し込んでいる一誠を見つける。

 

「お、一誠じゃん」

 

一誠を見つけると定治はいつも通りのヘラヘラした笑いを浮かべながら近づいてくる。

 

「何々どうしたん一誠?アーシアちゃんと話し込んじゃって。俺も混ぜてくれよ」

 

「一誠さん……」

 

「ああ、定治になら言ってもいい」

 

アーシアが一誠を不安気に見ると一誠はアーシアの頭に手を置いて宥めるように優しく撫でる。そして一誠は定治にこれから行おうとしている事を口にする。ライザーを倒し、リアスを奪うという作戦を。

 

定治は一誠の話す事に何も言わずに頷くと手に持つビンを転がしながら一誠に向けて口を開く。

 

「へぇなるほど、ライザーをぶっ飛ばしてから部長を奪って逃げるってわけか」

 

「ああ、俺はこんな結婚納得できない!魔王様から許可は貰った!俺は部長が喜べない結婚なんか許せねぇ!だからアイツをぶっ飛ばしてこの結婚をなかった事にする!」

 

恐らく一誠はリアスを奪う事以外目に入っていない。定治はそれを理解すると何時ものヘラヘラとした表情から一変し、静かに一誠を見る。

 

「……ハハ、一誠お前やっぱり馬鹿だわ。そんな事して向こうさんがどんな報復をしてくるかわかってんのか?あっちは曲がりなりにも貴族だ。貴族って奴にはメンツがある。そのメンツって奴は向こうさんにとっては命の次に大事なもんだ。お前、向こうのメンツ潰してただで済むと思ってんのか?」

 

定治の言った事に一誠は口を噤んでしまう。だがそれは少しの間だけであり、一誠は拳を握り締めて定治を見つめ返す。

 

「そんなの関係ねぇ!あいつらのメンツなんて知った事か!俺は俺が正しいと思った事をやる!そしてその結果、報復って奴が来るならそれは俺が全部振り払う!」

 

そういう一誠を見て今度は定治が黙る。定治が見た一誠には目に決意の炎を宿しており、これを鎮火させるのは不可能だ。だがそれがいい。コイツはこうやって馬鹿みたいにアホで、向こう見ずで、熱血漢で……最高にカッコいい、と定治は思っていた。一誠の決意を耳にした定治は静かに笑うとコレを用意しておいて良かったと思う。

 

「うん、やっぱりお前馬鹿だ、それもとんでもない大馬鹿野郎だ。だけど俺はお前のそういうところ、嫌いじゃ無いぜ。ほらよ」

 

 

定治は先程から持っていたコルクで閉じられたビンを一誠に向けて投げ渡す。投げられたビンを一誠が受け取るとそれは手のひらほどの大きさでビン自体が不透明な為中身がわからない。

 

「ん?……なんだこれ?」

 

「お守りだ。お前の目の前でどうしようも無い者が目に入った時、それを祈りながらフタを開けろ。そうすればきっと、奇跡は起きる」

 

定治が投げたビンにはとある神話生物が入っている。それは恐らくこうなるだろうと思っていた定治が一誠の為に用意したものだった。定治が始めからこのビンを渡すつもりだったのを理解した一誠は定治に向けて拳を突き出す。

 

「定治……サンキューな」

 

「……それはライザーって奴をぶっ飛ばしてから言え。礼はその時また聞いてやる。じゃあな親友、式場でまた会おうぜ。……しくじんじゃねぇぞ」

 

「……おう!」

 

定治は最後に静かに呟いてから一誠に近づいて拳を向ける。その拳の意図をわかった一誠は定治の拳に自身の拳をぶつける。拳を伝って一誠の覚悟を知った定治は何も言わずに一誠の肩を叩いてから何時ものヘラヘラ笑いを浮かべながら結婚式の会場へと向かっていった。

 

 

 

リアスを賭けた一誠とライザーの闘い、一誠は時間制限つきだが禁手化に至りライザーを圧倒していた。だがライザーは腐っても上級悪魔でありその実力は本物だ。目の前に立つ一誠を自らが全力を出すに相応しい敵と判断したライザーは自身の周囲に魔力が迸らせる。

 

『相棒、フェニックスの炎は流石のドラゴンでもキツいぞ』

 

「チィッ……ハッ!」

 

ライザーに迸る炎を見て赤龍帝ドライグが一誠に警告をする。その警告を聞き一誠はわかってると言いた気に舌打ちをしてから先程定治が言っていた言葉を思い出す。

 

『お前の目の前でどうしようも無い者が目に入った時、それを祈りながらフタを開けろ。そうすればきっと、奇跡は起きる』

 

 

自分の親友が言っていた事を思い出し、一誠は渡されたビンを取り出す。

 

「行くぞ!今の俺が出せる最高の一撃だ!!受け取れぇぇぇ!!」

 

ライザーが持っている魔力の全てを使って繰り出された炎の一撃、コレを食らっては最強の生き物と呼ばれるドラゴンですらもただではすまない。

 

それを見ても一誠は不敵に笑い定治に渡されたビンのコルクを外す。

 

「定治、使わせて貰うぜ!!」

 

一誠がコルクを開けた瞬間、ビンから何かが吹き出る。ライザーが放った炎がぶつかり辺りに爆発が広がった。煙が立ち込め、暫くすると煙が晴れていく。自身の全てを出し切った一撃、それが当たったのを見たライザーは自らの勝利を確信し、不敵に笑っていたが直ぐにその顔は驚きへと変わっていく。

 

「バ、バカな……!俺の炎を止めた!?お前、魔術は出来なかったはずじゃ……!」

 

ライザーが見たのは無傷の一誠、そして一誠を守るように一誠の前に立ち轟々と燃える炎だった。

 

『ヌルいヌルいヌルい!!その程度の炎でこの炎の精が倒せると思っているのか!』

 

「なに……あれ……?」

 

「生きる炎……?」

 

「(へへ、正解。ライザー、お前が炎を使ってくるのはわかってた。だからアイツを一誠に渡したんだ。炎で炎の精が倒せるかバーカ)」

 

まるで生きているように脈動する炎を見て会場にいる悪魔の全てが驚いている中で人間である定治は壁にもたれかかり炎の精を見て不敵に笑っていた。

 

あの生きる炎は炎の精、グレート・オールドワンであるクトグゥアに仕える者。定治は結婚式前日にこの炎の精を呼び出し、魔術により従属させていた。この炎の精は定治がビンに閉じ込める際に言った一言を忠実に守っている。

 

『お前を出した奴の事を守れ』

 

従属させられ、定治にひれ伏した炎の精は定治の命を忠実に守る。先程の一撃で魔力を切らしつつあるライザーは自らの誇りにかけてこの炎の精を倒そうとするが炎の精は倒れない。その様子を見てライザーはあからさまな焦りを見せてしまう。

 

「クソクソクソ!!この俺が!こんな奴にぃぃぃ!」

 

炎の精を倒せず、焦り苛立つライザーの一方で一誠は壁にもたれかかる定治の方を向き声に出さずに口パクで定治に言葉を伝える。

 

「(サンキュー、親友)」

 

一誠が声に出さずに言った言葉を理解し、定治は少し驚いた様子を見せるが直ぐにフッと笑い誰にも聞こえないような静かな声で呟く。

 

「おう、ぶちかまして来い。親友」

 

『さあ、行くがいい。我を解き放ちし者よ。貴殿に祝福あれ』

 

「ウォォォォォッ!!」

 

炎の精が役目を果たしたように消える。消えた炎の精の後を通り一誠が聖水を手にしてライザーに向けて駆け出す。雄叫びと共に一誠の拳がライザーの顔面に直撃する。こうして決着はついた。

 

 

 

決着はつき、一誠がリアスを連れてこの場から離れたのだがそれを良しとしない者がいた。フェニックス家の分家たちである。

 

「ク、追え!追え!こんな事あってたまるか!このような事、あって良いはずが!」

 

この結婚式の企画を行ったフェニックス家の分家の者は血管を浮かせ自らの眷属に直ぐに一誠を追うように命じていた。命じられた眷属が主の命の元一誠を追おうとしたその時、壁にもたれかかっていた定治が静かに呟く。

 

ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)

 

定治が呟くと定治を中心とし、周りが巨大な障壁に包まれる。一誠を追おうとした眷属は定治が創った障壁を壊そうとするが障壁はビクリともしない。

 

「ご、ご主人様!周囲に強固な結界を貼られました!我々では突破できそうにありません!」

 

「何!?クソ!これではフェニックス家の恥では無いか!おのれ下級悪魔の分際でぇ!!」

 

「やめとけよ」

 

焦る分家の主に向かって定治が歩いていく。その手には深淵の門(ルールブック)を手にしていた。

 

「貴様は……!リアス・グレモリーの所の人間か……!」

 

「女は真に自分の事を思ってくれるヒーローにより助けられ、二人は幸せにキスをして終わる。これで物語は完結してんだ。無粋なマネはやめようぜ。感動の余韻が台無しになるだろ?」

 

倒れているテーブルに片足をかけ、定治は挑発的に分家の主を見る。だがその挑発的な視線が分家の主を余計に苛立たせる。

 

「人間がぁ……!この私に舐めた口を聞くな!」

 

「オラよっと」

 

分家の主が放った炎は定治が蹴り飛ばした魔力を用いて凍らせたテーブルにより防がれる。氷と炎がぶつかり辺りに白い蒸気が立ち込め、定治はそれを払い、深淵の門(ルールブック)に魔力を込めると深淵の門(ルールブック)は込められた大量の魔力に呼応するかのようにこの世のモノとは思えぬ色の光で輝き始める。

 

「ったく、あんたはホント無粋な奴だ。良いぜ、俺を倒したらこの障壁解除してやるよ。倒せたら……な!!」

 

「な、この大きな穴……!定治くん、キミは一体どれだけの力を……!?」

 

現れたのは木場たちオカルト研究部たちが見たことのない巨大な門だった。巨大な門からはこの世界のモノとは思えぬ冒涜的な言語と大量の水が流れてくる。やがて冒涜的な言語と流れる水を弾き飛ばすように人の三倍以上はあろうかという巨大な魚人が二匹現れる。

 

『フム、''いざとなったら''……それが今まさにその時、という事で良いのだな定治?』

 

『ああ、そうだ。だから頼むぜダゴンさん』

 

水を滴らせながら現れたのは深き者の支配者ダゴンとハイドラ。ダゴンは定治にあの時の夜に言っていたことを確認し、定治がそれを肯定するとダゴンは牙をチラつかせながら笑う。

 

『まぁ、いいだろう。こう言った趣向も中々悪くない。』

 

不敵に笑うダゴンだが一方でその妻ハイドラは何か思い残したことがあるようで頬に手を当てる。

 

『それはいいとして困ったわね……クトゥルフ様をほったらかしにしてしまったわ。一応部下をある程度残しておいたけど……大丈夫かしらダーリン?』

 

『問題ないさハニー。どうせすぐ終わる。……息子たちも来たようだしな』

 

自らの主の心配をするハイドラに対してダゴンは心配ないと言う。そしてダゴンの一言を合図にするかのようにダゴンとハイドラが現れた門から続々と深きものどもが現れる。その数はどんどん増えて行き、結婚式の会場を壊しながらその数を増やしていく。

 

「あ、あぁ……」

 

「な、なんだこの軍勢は……!」

 

「軍勢もそうだがあの二匹の大きな魚人……あれはマズい……!あれの実力は上級悪魔……いや、下手したら最上級悪魔に匹敵するぞ……!」

 

目の前いるダゴンとハイドラ、そして無数の深きものどもの軍勢を見て分家の主の眷属は絶望し一人は膝を着き、一人はただ震える。その中で定治だけは挑発的に分家の主の方を見ていた。

 

「門を死の都市ルルイエへ繋ぎ深きものの支配者ダゴンとその妻ハイドラ、そしてその配下の深きものどもを無数に呼び出した。倒せるもんなら倒してみろ。まだ奥の手は沢山ある。さぁ、どうする?」

 

「な……あ、あぁ……」

 

定治が一瞬で出した軍勢を見て分家の主は膝に力が抜けるように尻餅をついて絶望の声を上げる。定治はゆっくりと分家の主の元へダゴンとハイドラを連れて歩み寄っていくと、分家の主は定治から逃げるように尻餅をついて震えながら手と足を使って離れるがやがて壁にぶつかってしまう。

 

「そういえば一度見てみたかったんだよ」

 

壁にぶつかり焦る分家の主に定治が近づいて行きやがてその歩みを止める。分家の主は視界に見える定治の足を見てゆっくり視線を上げていき、見てしまった。深きものどもの軍勢を、その支配者を連れている男の表情を。

 

「ひ、ひぃぃぃ……!?」

 

「お前みたいなプライドが高そうな奴のプライドをズタズタにしてやったらどんな表情が見れるのかを、な」

 

分家の主から見える定治は確かに笑みを浮かべていた。だがその笑みは人の恐れを喜び、狂気を良しとする冒涜的な笑み、見る者を狂気へと誘うものだった。

 

「さぁどうする?立ち向かうか?それとも諦めるか?選ばせてやるよ」

 

「……ア」

 

定治の笑みを見て分家の主は口から泡を吹き出し気絶する。気絶した男を見て定治は笑顔を止め、つまらなそうな表情を見せる。

 

「んだよ……もう終わりかよ」

 

『いや無理もないと思うぞ定治、先程までお前が浮かべていた笑み。クトゥルフ様も飛び起きるレベルの凶悪な笑みだったぞ』

 

『流石にアレは私とダーリンですらドン引きしたわよ……。人間に恐れを抱いたのは貴方が初めてよ定治』

 

『え?そんなに怖い?』

 

『『うん』』

 

『……マジかー。ま、いいや』

 

深きものどもの支配者であるダゴンとハイドラですら怖いと言われ、落ち込む定治だが直ぐに切り替え、背後にダゴンとハイドラ、そして大量の深きものどもを引き連れ周りで固まる悪魔たちを見る。

 

「俺の名は阿見定治、空気は読めるが敢えて読まない、そんなごく一般の男の子だ。普通な男の子の俺だが友達の為なら、俺は何だってやってやる。一誠と部長を邪魔する無粋な奴はいるか?このハッピーエンドに文句がある奴はいるか?いるなら出てこい、男女平等に潰してやる。」

 

定治の言葉を聞き、前に出る者、声を出す者、いずれもいない。この場を支配しているのは紛れもない定治である。こうして定治の名はフェニックス家とその繋がりのある者達を黙らせ、よくも悪くもその名は魔界に響き渡るのだった。

 




原作2巻これにておわり。

定治がその気になったら大体こんな感じになりますよゴフッ(喀血

なんだろう、とんでもない事をやってしまったような……?

今回はシリアスな分、来週はシリアスなんて知りません。

テキトーな神話生物講座

炎の精

クトグゥアに仕える生きる炎。物理攻撃完全無効な鬼。ビンに入れて護身用に持ち運ぶことが可能な神話生物

ダゴンとハイドラ

深き者どもの支配者にしてクトゥルフの部下の中でも優れた者である二人。この二匹非常に強い。ステータスだけ見れば二匹でやれば下手なグレートオールドワンと殴り合えるくらい強い。定治でもおいそれと突然呼び出せない。あらかじめ呼び出す約束をしておかないと大人しく来てくれない。だが約束をしていればキッチリと働いてくれる何だかんだいい魚人。

SANチェック1/1D10


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狂騒
COOLでカッコいい魔術師


特に書くこと無し!

シリアス?誰だよそいつ!コーンフレークの事ですか!?


ライザーとの決着を終え、何時もの日常へと戻ったオカルト研究部の一同だったが現在部室では険悪な雰囲気が流れていた。

 

その理由はエクスカリバー強奪事件に伴いやって来た教会からの使者二人の内一人ゼノヴィアによってもたらされたものだった。

 

「聖女が悪魔に、なんと悲しい事だろうか。私が主にその命を返せば主もきっとお前の罪を許してくれる事だろう」

 

「テメェ!」

 

ゼノヴィアがエクスカリバーの一振りをアーシアの首に近づけると一誠が怒りをゼノヴィアにぶつける。一方で一誠に怒りをぶつけられているゼノヴィアはというと一誠をせせら笑う。

 

「口を突っ込まないでもらおうか赤龍帝、これは救済なんだ。悪魔の身に落ちた聖女を救うためのムグッ!?」

 

「ふざけんムグッ!?」

 

せせら笑うゼノヴィアと激昂する一誠の口に何かが投げ込まれる。ゼノヴィアと一誠が何かが投げ込まれる方向を見るとそこでは定治がクッキーを食べていた。

 

「さっきからうるせぇ、クッキーでも食ってろ」

 

クッキーを咀嚼しながら定治は一誠とゼノヴィアを面倒くさそうに見ており、手には何か起きた時の為に深淵の門(ルールブック)を手にしていた。

 

「え?クッキーあるの?私も食べたーい!」

 

「おう、いいぞ」

 

「やった!ありがと!」

 

クッキーを食べている定治の元にもう一人の教会の使者である紫藤イリナが近づいてくる。定治が許可を出すとイリナは喜んで定治の前に置かれているクッキーを手にとって食べ始める。それを見たゼノヴィアと一誠はイリナにつられてクッキーを食べ始める。その光景を見て定治はヘラヘラ笑う、何故か顔に汗を垂らしながら。

 

「まぁそれ姫島先輩が俺の為に用意したデスソース入りのクッキーなんだけどね。いやぁよかった、クッキーの数減らせて」

 

「「「辛っ!?」」」

 

定治が喋ると同時にクッキーを食べた三人が顔を真っ赤にして悲鳴をあげながら床に転げ回る。その光景を見て定治は汗をダラダラ垂らしながらヘラヘラ笑う。

 

「アッハッハッハ、マジで辛いよね。いやぁ本当ツラいわぁ……誰か飲み物ちょうだい」

 

「はいどうぞ、お茶ですわ定治くん」

 

「あ、すみません」

 

辛さを必死に我慢する定治のもとに飲み物が差し出されると定治は礼を言って湯のみに入ったお茶を一気に飲み干し、顔が一気に真っ赤になる。

 

「辛ぁぁぁいぃぃぃ!?唇がぁぁぁ!?喉がぁぁぁ!?死ぬ!死ヌゥゥゥ!!」

 

顔を真っ赤にして定治は口を押さえて三人と同様に転げ回る。転げ回る定治を見てお茶を入れた朱乃が楽しそうに笑う。

 

「お茶ですわ、デスソース入りの」

 

「おかしいですよ姫島先輩!デスソースはマジでヤバいんですって!どっかのバカが翌日お尻が痛くなるくらいシャレになんないんですって!」

 

「そんなもの友達に食わせるなんてどうかしてんぞテメェ!」

 

定治が微笑む朱乃に向かって叫ぶと今度は一誠が定治に向かって叫ぶと、定治はミルクをガブ飲みしながら一誠に向かって逆ギレをする。

 

「うるせぇ!マジでシンドいんだよ!あの時何も言わずによく耐えたって自分の事褒めたいくらいヤバいんだから誰かにこの苦痛を味あわせてもいいじゃない!」

 

「ふざけんな定治ゥゥゥ!!」

 

「アッヒャッヒャッヒャ!俺たち友達だよなぁ!?苦痛は共に味合わないとなぁ!?」

 

「友達じゃない私たちは何でこんな目に合わされたのかな!?」

 

「そんなもん八つ当たりに決まってんだろ!」

 

「最悪だこの人!?」

 

八つ当たりにクッキーを食わせられた事がわかり驚くイリナの後ろでゼノヴィアが未だにデスソース入りのクッキーの辛さに悶えながら定治の方を見て何か思い出したような顔を見せる。

 

「お、思い出したぞキサマ……」

 

「あぁん!?」

 

ゼノヴィアが定治にそう言うとデスソースの辛さによりヤケになっている定治がギロリとゼノヴィアを見ると、ゼノヴィアは確信を持った表情で辛さに悶えながらも口を開く。

 

「キサマ……そのヘラヘラとした笑い方、手に持つ黒い背表紙の本、そしてこの狂ったように場を考えずに騒ぐその姿……4年前教会でも限られた者しか入れぬ部屋に無断で立ち入り、とある書物を強奪した男だな……?」

 

ゼノヴィアの話を聞いた直後、定治は顔中に汗をダラダラ垂らしながら誰がどう見ても何か隠してそうな表情を浮かべる。

 

「な、なななんのことかな?さささ定ちゃんわかんなーい★」

 

「え!?あのうっかりとか言って教会のあの部屋を全焼させた大犯罪者の事!?」

 

汗をダラダラ垂らす定治の近くにいたイリナもゼノヴィアが言っていた話を聞いた事があるようでミルクをガブ飲みしながらゼノヴィアが言っていた話の内容を確認する。

 

「へ、へへへへぇ〜、そんなヒドいことする奴いたんだぁ★き、きっとそいつは持ち出そうとした本と一緒に燃えてそのまま行方知れずになって死んだ扱いにされたんだから気にしないでいいんじゃないかなって思うな★」

 

「やけに具体的ね定治」

 

イリナの話を聞いて更に汗をダラダラと垂らしながら話す定治にリアスが懐疑的な視線を送ると、ゼノヴィアが辛さをどうにか克服したようで、ゼノヴィアは口元を押さえながら立ち上がるとエクスカリバーを定治に突きつける。

 

「その男は全焼した部屋と同時にその姿を消したのだが、ここで会えるとは何という僥倖……あの時の罪、貴様の命と引き換えにすれば主も許してくれよブッ!?」

 

「ウォォォッ!!?忘れろォ!都合よく頭打って忘れろォ!もしくは死ね!!俺の拗らせていたあの頃の心と黒歴史と共に死ねぇぇぇぇ!」

 

ゼノヴィアが剣を定治の喉元に突き立て、その命を奪おうとしたその時、剣よりも速く定治の足がゼノヴィアの頭に襲いかかる。

 

「ブッ!?ヘブッ!?」

 

「定治落ち着けぇぇぇ!!」

 

定治の蹴りを受け、壁に叩きつけられるゼノヴィアだが定治はゼノヴィアに向かって容赦なく追撃し、何回も頭部めがけて渾身の蹴りを入れる。何か恐ろしいものが来るような表情を浮かべながらゼノヴィアを蹴り続ける定治に向かって、流石に相手が死ぬと思った一誠が定治を羽交い締めし、定治を止める。

 

「離せ一誠!コイツだけは!俺の黒歴史をこれ以上思い出させないよう!俺の安眠のために!俺はここでコイツを、殺さなきゃいけないんだよぉぉ!」

 

「わかったから!お前が中学二年生の頃、そういう病気にかかってたのは知ってたから!かくいう俺もだから!男にはそういう時期があるのは仕方がないんだって!そういうことをしていって俺たちは成長していくんだから!何も恥ずかしくないから!だから一旦落ち着こう、な!」

 

一誠が必死に説得してもなお、定治は何かに取り憑かれたようにゼノヴィアの頭に向かって攻撃をしようとする。暴れる定治とそれを懸命に抑える一誠を見て、朱乃が微笑みながら一誠の肩にポンと手を置く。

 

「ダメですわ一誠くん、定治くんを落ち着かせる為にはこうやってやるんですわ」

 

「ギャアアァァァッ!?」

 

「俺までぇぇぇぇ!?」

 

朱乃は微笑みながら定治に向かって雷を落とすと、定治の悲鳴は勿論、定治を羽交い締めしていた一誠まで雷をくらい悲鳴をあげる。ピクピクと痙攣する定治をリアスがジロリと睨む

 

「さて定治、説明してもらってもいいかしら?」

 

「イヤァ!止めて!俺の黒歴史ほじくり返さないでぇ!!ギャアアァァァッ!?」

 

「よく聞こえませんでしたわ定治くん。もう一度お願いしていいかしら?」

 

定治がリアスの要求を拒むと、再び朱乃が雷を落とし定治が悲鳴を上げる。だが雷を二回受けてもなお、定治は喋りたくないようで定治は必死な顔を浮かべながらどうにか話さずに済む方法を考えていた。

 

「待って!これだけは勘弁して下さい!今でもたまに思い出して枕に顔被せて足バタバタさせちゃうんです!誰にだって触れられたくない過去があるでしょう!?勘弁して下さギャアアァァァッ!?」

 

「も う 一 度 お 願 い し ま す わ」

 

嫌がる定治に襲いかかる3撃目の雷、またも悲鳴を上げる定治の目には微笑みながらも目が完全に笑っていない朱乃が次の雷を当てる準備をしている所だった。

 

「クソがぁぁぁぁぁ!!わかりましたよ喋ればいいんでしょ!喋れば!!」

 

電撃をくらい過ぎて流石に観念した定治は最初はギャーギャー喚きなからもやがてボソボソと自身が黒歴史と呼ぶ過去を話す。

 

定治の話を纏めると

 

ヴァチカンの秘密の書斎に深淵の門歴代所持者の一人、アブドゥル・アルハザードが書いた書物があるらしい。フム、俺程では無いにしろ我が書物を使っていた者が書いた書、暇つぶしに読みにいってやるとしよう。

空鬼の力で無事潜入成功。そして件の書を発見。フ、ヴァチカンも案外容易いものだな。

さて、目的の者も手に入った事だ、鮮やかに撤退するとしよう。教会の犬共が何時この書が奪われたのに気づくか楽しみだ。来るがいい、空ヘッキシ!あ、ヤベ。

再び空鬼呼ぼうとしたらクシャミしちゃって空鬼呼ぶはずがうっかり炎の精呼んじゃった♡

炎の精の炎が書斎に引火。

大★惨★事★

目の前の光景を見て今までやってたCOOLでカッコいい魔術師という設定を忘れて爆笑してたらいつの間にか教会の人が来ちゃった♡

アッハッハッハ!ヤッベどうしよう。捕まったら流石に殺されるかも……あ、俺空鬼呼ばなくても消滅の呪文で家帰れるわ。

教会の皆様、お疲れ様です!クシャミをしたらうっかり火事を起こしちゃいましたゴメンなさい!僕はこれから友達の家でゲームする約束があるので後の事は任せますね!あ、それと警備はもう少し厳しくしといた方が良いですよ!それじゃ!

秘密の部屋から消滅の呪文を使用して逃走し、何食わぬ顔で一誠の家にゲームをしに行く。そして何時もの日常へ……end.

 

大体こんな感じ。

 

一通り定治の話を聞いた一同の内、一誠は心辺りがあった様で定治に向かってツッコミを入れる。

 

「あの時何故か持ってたキモい本ヴァチカンから持ってきたヤツかよ!」

 

「おう、ちなみにあの時アレ読んだらお前大変な事になってたぞ。俺は読んでもフーンくらいだったけど」

 

「お前人ん家に何てモノ持ち込んでんだよこの野郎!ていうかマジで何者だよ!!」

 

「人間」

 

「知ってるよこのバカ!」

 

定治の制服の襟を掴み、定治をグラグラと揺らす一誠と雷のダメージから回復してヘラヘラ笑う定治。リアスは定治の話を聞き、俄かには信じられないと最初は思ったがこの男なら平気でやりかねないのを何となく理解し、呆れて溜息をつく。

 

「なんてバカな事を……しかも普通に無事に帰ってくるなんて……あなたスゴイわね定治」

 

「ノリで行ったら案外行けました、ハイ。」

 

ヘラヘラ笑いながら話す定治を見てリアスが深い溜息をつくと、先程まで黙って定治の話を聞いていた子猫が無表情で定治に向かってボソリと呟く。

 

「……COOLでカッコいい魔術師(笑)……プフッ」

 

「教会の犬共が何時この書を奪われたのに気づくのか楽しみだ……あらあら、その後すぐ気づかれてしまうとはなんてカッコいいんでしょう定治くん。流石COOLでカッコいい魔術士様(笑)ですわ」

 

子猫が顔を俯かせながらプルプルと必死に笑いを堪えているとそれにつられて朱乃もCOOLでカッコいい魔術師の部分を強調しながら話す。

 

「イヤァァァァ!!恥ずかじぃぃぃぃ!!こうなるから言いたく無かったんだよぉぉぉぉ!!殺せぇ!もういっその事俺を殺してぇぇぇ!!」

 

子猫、朱乃両名の言葉がグサリと突き刺さり定治は恥ずかしさのあまり、真っ赤になった顔を両手で隠しながら床にゴロゴロと転がり続ける。

 

「……ねぇゼノヴィア、私達教会はこんなアホみたいな人に軽々秘密の部屋に忍び込まれて且つ、無傷で逃げられたの?」

 

「それ以上言うなイリナ、何故か悲しくなる……」

 

恥ずかしさのあまり床に転がる定治を見て教会のメンバーであるゼノヴィアとイリナはなんとも言えない表情で床に転がる定治を眺めていた。




アブドゥル・アルハザード

有名なネクロノミコンの原書、キタブ・アル・アジフを書いた狂人。この作品では深淵の門の歴代所持者の一人という設定。細かいことはツッコマないで下さいお願いします!

キタブ・アル・アジフ
地球と宇宙の真実の歴史が書き記されたマジでヤバい本の一つ。この作品の世界にはミスカトニック大学は無いため、ヴァチカンが秘蔵していた。読むだけで人の精神を壊しかねないほど凶悪な本だが定治は平気な顔でコレを読む、というよりもう読み飽きている。


POW120の定治が読んでもほーんぐらいで済んでSANチェックスルーするのは当たり前だよなぁ?

定治の家にあるクトゥルフ神話系の書物。キタブ・アル・アジフ、妖蛆の秘密、ルルイエ異本、ナコト写本、無名祭祀書、金枝篇、エイボンの書、法の書、黄衣の王、屍食教典儀、セラエノ断章、水神クタアト、エルトダウン・シャーズ、サンの七秘聖典、ドジアンの書、影のフランスetc……

……なんやこの沢山の本……ミスカトニック大学図書館かな?まぁ、定治がクトゥルフ神話みたいなもんやしええやろ(適当

なお、定治は全部読んでも「ほーん(知ってた)」で終わりな模様。

沢山の魔術書を読んだ定治の感想

定治「こんなの(魔術書)よりルールブックの方がよくね?」

その内ブッ○オフで売りにいく定治の姿が見られるかもしれない。なお、売れない模様。

上記の本たちを集めたのはほとんどがパッパで、たまに定治が盗ってくる。目指せ魔術書コンプリート!


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○女

ゴールデンウィーク前は忙しくてメンドくせぇ。

あー、宝くじ当たらないかなー。

当たったらって妄想は結構してるんだけどなぁ……。

……悲しいなぁ。


現在俺と祐斗は校庭でイリナ、ゼノヴィア相手に戦う事になっている。ん?何でかって?それはさっき頭何回も蹴ったのに俺の黒歴史覚えてるゼノヴィアって奴がいまだに俺のこと襲ってくるから

 

「そうだ!勝負しようぜ!俺とお前らで!お前ら勝ったら俺をしょっ引いていいぜ!だけど負けたらお前ら俺に何もすんなよ!」

 

って俺が言ってそれにゼノヴィアが同意して決闘をすることになったんだよ。そんで俺は1対2でも全然良かったんだけど祐斗がすごい顔してどうしてもって言うからこんな感じになってるわけだ。

 

話を聞いてみると祐斗はどうやら聖剣使いを人工で生み出す計画の犠牲者であり本人曰く失敗作とのことだ。今の祐斗の表情から察するにえげつない事やっていたみたいだな。

 

ふむ、ここは好きにやらせた方がいいな。溜まってるものは存分に吐き出させた方がいい。祐斗の相手はゼノヴィアでいいな。あいつはさっき俺の蹴りを避けられなかった、この時点であいつの強さは大体察しはつく。俺が魔力使わなくても余裕で勝てる程度の強さだから弱い奴は祐斗に任せるとしよう。問題はイリナの方だな、あいつの強さが俺にはよくわかっていない。不確定要素に対しては俺の方が応用力効くだろうしコイツは俺がやるとしよう。

 

俺は制服のジャケットを一誠に預け、タイとボタンを緩めて戦闘の準備に入るついでにイリナを軽く挑発する。

 

「さて、やるか。ああそうだ手加減なんてするなよ?言い訳されても面倒だからな。まぁ安心しろよ、俺は手加減してやるから」

 

「カッチーーン!中々言ってくれるじゃない。教会の聖剣使い舐めないでもらいたいかな!」

 

俺の軽い挑発にイリナは耐性が無かったのか口元をヒクつかせる。ていうか俺本気出すところ今の所ないし。出そうと思えば何時でも出せるけどまだ出しません。マジで痛いからやりたく無いんだよアレ。まぁ本気は出さないけどアイツを苛立たせる挑発の言葉は出すとしよう。

 

 

「舐めてるに決まってんだろ。だってお前ら全然強そうに見えないし」

 

「……ぶっ飛ばす!」

 

おーキレたキレた。イリナは額に血管を浮かせながら耳から聖剣を取り出し羽織ってたローブを脱ぎ捨てる。

 

……ん?

 

「あ、ゴメン。ちょっとタイム」

 

「はぁ!?何それ!?そんなの認めるわけ無いでしょ!」

 

少し気になる事が出来たのでタイムを宣言したのだが、イリナはそれを許してくれなかったようで聖剣を伸ばしながら攻撃してくるので仕方なくブリッジをして聖剣を躱す。

 

「ほいっと。いや少し気になったんだけどさ、お前その衣装何なの?」

 

「ハァ!?コレは教会の由緒正しい戦闘服だよ!?そんなのもわかんないの!?」

 

……え?アレが?

 

確かに言われてみれば前教会に忍び込んだ時にあんなの着てた奴がいたけどさ……

 

「いや……だってそれ……ボディコンじゃん……」

 

「ボディコン!?違うよ!コレは教会の由緒正しい戦闘服!ボディコンじゃないよ!」

 

いやどっからどう見てもそれボディコンじゃん……恥ずかしくないの?

 

「いやどっからどう見てもそれボディコンじゃん……恥ずかしくないの?」

 

ヤベェよ思わず思った事口にしちゃったよ。俺がこうなっちゃうくらいあの格好はヤバイよ。仮に俺があんなの着てたら街歩けないもん。そんなのを着るとかどう考えてもそうとしか考えられないよね。

 

「だーかーらーボディコンじゃないの!戦闘服なの!だから恥ずかしくないの!」

 

「……え?恥ずかしくないの?」

 

「当たり前でしょ!」

 

戦闘服だから恥ずかしくないもん!とか言っていたので再度俺が確認をするとイリナは当然でしょと言いながら聖剣を振り回す。うん、どうやら彼女は本物みたいだな。やっぱりコイツ……

 

「痴女じゃん……」

 

「痴女!?ちちちち痴女じゃないよ!何て事言ってるの!?」

 

俺が自分でもわかるほどドン引きしながら言うとイリナは顔を真っ赤にして否定する。うーん、これはそういうVIDEOでよく見る清純派なんちゃらって奴か……?業が深いよこの子……。

 

俺は未だにドン引きしながら顔を真っ赤にしているイリナに向かって再度口を開く。ホントもう、ドン引きしながら。

 

「いやだってそんな服装してて恥ずかしくないなんてそう言った性癖の人くらいじゃん……」

 

「な、なななな……!」

 

ドン引きしている俺と顔を真っ赤にして聖剣を振り回すイリナ。そこに先程から祐斗と剣戟を繰り広げているゼノヴィアがイリナに声をかける。

 

「落ち着けイリナ!そいつの言う事に気をとられるな!過去にあの男は今のように周りを呆気にとって自分のペースに巻き込んでから逃げ出したんだ!」

 

「あ、うん!わかったよゼノヴィア!」

 

ゼノヴィアの言葉によってイリナが落ち着くとイリナは自らの持つ変幻自在の聖剣を使って俺に襲いかかる。俺は普通に襲いかかる聖剣を捌いていると俺の中である考えが頭によぎる。ボディコンを着て幼気なイケメンに襲いかかる女……こんな光景……イッセーの部屋のエロ本によくある展開だなって。うん?待てよ、そしたらもしかして俺このまま負けちゃったら……?

 

「わぁぁぁぁ!?助けてぇぇ!エロ同人みたいにされちゃうぅぅぅ!犯されちゃうのぉぉぉぉ!!」

 

「ゼノヴィアの言う事はわかるけどやっぱり腹立つ!絶対にぶっ飛ばしてしょっ引いてやる!」

 

ちょっと本気で襲いかかりに来すぎじゃない!?そんなに俺の身体を狙っているっていうのか!?俺の初めてはキレイな熟女のために残しているんだよ!お前みたいなガキにやるわけじゃないんだよ!でも割とコワイ!これが貞操の危機って奴なんだね!マジでコワイ!

 

「イヤァァァ!助けてぇぇぇ!……なーんてな。出番だスラぼう!」

 

さて、おフザケもこれくらいにしとくか。そろそろ飽きたし。

 

俺はルールブックを呼び出し、直ぐさま無形の落とし子スラぼうを呼び出す。

 

『呼ばれて飛び出てピキーッ!無形の落とし子スラぼう只今参上!』

 

俺はイリナとの間に門を作り、そこに無形の落とし子を落とす。

 

「な!?スライム!?……なーんてね!スライム如き、聖剣の前じゃゴミみたいなものだよ!」

 

イリナはいきなり現れたスラぼうに最初は驚きはするがスラぼうを見てあからさまに楽勝そうに笑いながらスラぼうに向かって聖剣を振り下ろす。

 

振り下ろされた聖剣はスラぼうを容易く斬り裂き、イリナは勝ちを確信したように笑みを浮かべるイリナだがその笑みは直ぐに驚きへと変わる。

 

「……え?」

 

アッヒャッヒャッヒャ!ドラク○のスライムと同じと思って油断したなぁ!スラぼうに物理攻撃効くわけねぇだろ!お前が聖剣以外に攻撃方法が無いのはなんとなくわかった。だから物理攻撃無効のスラぼうを呼んだんだ。いやー、こういう奴の相手としてスラぼうはホント優秀だな。

 

ヤッベ、楽しくて思わず顔に笑みが浮かんできた。こっちだけズルして無敵モードとか楽しいに決まってるよなぁ?

 

「アッヒャッヒャッヒャ!さぁコイツに勝ってみせろ。勝てたら少し本気出して相手してやる。まぁ勝てたらだけど、なぁ?」

 

「うっわーえげつねぇ笑み。ああいう笑みを浮かべてる時の定治ってヤベーんだよなぁ……」

 

俺が悪役のように笑っていると一誠の奴がドン引きして苦笑いしているがそんなの関係ねぇ!楽しけりゃいいんだよ楽しけりゃ!

 

『おい定治』

 

俺が焦りを見せるイリナを嘲笑っているとスラぼうが俺を呼び止める。

 

『スラぼう何?今ちょっといい所なんだからちょっと待ってて』

 

『そういうわけにはいくか!定治、お前約束したよな!?俺の次の相手には色っぽい大人の女性にするって!それなのにあいつは何だ!どっからどう見ても乳クセェガキじゃねぇか!こっちはワクワクしながら来たのにこんな仕打ちあってたまるかボケェ!』

 

「何言ってるかはわからないけど何か腹の立つ事言ってるって事だけはわかるな!」

 

あ、ヤッベ。あの時の約束まだ覚えてたのかよ。どうすっかなぁ……あ、そうだ。

 

『落ち着けスラぼう。約束はちゃんと覚えてるって。だからお前を呼んだんだ。あれは、熟女だ。安心しろ』

 

『どっからどう見てもアレは熟女じゃなくてガキンチョだろうが!!スラ○トライクすんぞテメェ!』

 

ヤベェよコイツスラスト○イクの使い手だったの忘れてたよ。スライムもりもりのドラ○エとか見せるんじゃなかった。アイツがやるとマジでシャレにならない威力だからやめさせないと。

 

俺はスラぼうを納得させるためにワザとらしくヤレヤレと溜息をついてからスラぼうを見る。

 

『わかってねぇなスラぼう。お前には見えないのか?あそこにいる女の出す熟女特有の色気が』

 

まぁ俺は見えないんですけどね。

 

『……言われてみれば……熟女、なのか……?』

 

いやーコイツチョロいわー。マジ助かるわー。目の前のイリナを熟女と勘違いしたスラぼうに俺はしてやったりと内心笑いながらイリナに向けて指差し、命令を下す。

 

『おう、だから存分にヤッてこい』

 

『ッシャァァァ!!ヤル気出てきたぁぁぁ!!ピキーーーッ!!』

 

「え、何!?何!?キャァァァァッ!!?」

 

ヤル気になったスラぼうがイリナに向かっていく。イリナも最初は聖剣を振り回してスラぼうに近づかれないようにしていたがそれも時間の問題でやがてスラぼうに捕まりその身体に飲み込まれてしまう。

 

スラぼうに身体を包まれるイリナ。その身体はスラぼうの腹へと入っていき初めに戦闘服、そしてイリナの肌が溶かされていく。

 

さぁ、捕食の始まりだ。

 

『ングング……。ンッ!?やっぱりガキンチョじゃねぇか!!ペッ!!』

 

「キャァァァァ!?あひんっ!?……きゅう」

 

スラぼうは取り込んだイリナを熟女ではないと判断するやいなや勢いをつけて吐き出す。吐き出されたイリナは勢いよく木に叩きつけられて頭を打ちそのまま気絶してしまう。

 

ちょっと早い早い!捕食シーン終了早いよスラぼう!さぁ、捕食の始まりだとかカッコつけてたのに直ぐに捕食やめるのやめてよ!なんかカッコわるいじゃん!

 

ヤベェなぁ、イリナが熟女じゃないってバレちゃったからなぁ。スラぼうマジギレしてそうだなぁ。嫌だなぁ、アイツ蹴り効かねぇからキレてたら相手すんのメンドくさいんだよなぁ。

 

『おいどういう事だ定治ゥ!やっぱりガキンチョだったじゃねぇか!全然熟れてねぇじゃねぇか!折角服溶かしてから触手プレイしようと思ったのに!テンションマックスから一気に萎えたぞテメェ!』

 

ヤッベェよマジでキレちゃってるよ……あ、そうだ。

 

『クッ……すまない。俺の目にも狂いがあったみたいだ……今度お宝貸してあげるから許して』

 

『許す!!』

 

『サンキュースラぼう!!』

 

危ねぇー。チョロくて助かったー。ホント助かったわー。俺と同じ熟女好きで良かったわー。趣味が同じで良かったわー。

 

俺が内心ホッとしているとスラぼうが俺から見て微笑みを浮かべながら腹から手を出していた。

 

『なぁ、定治。俺たちって』

 

『ああ、そうだな。俺たちって本当……』

 

微笑み、俺を許してくれたスラぼうに俺は同じように微笑みを浮かべながらその手を取り、お互いが思った事を口にする。

 

『『熟女大好き!!』』

 

あ、コイツの腹部分強酸性だったの忘れてた。

 

俺の手ジュウジュウ言ってるよ、メチャクチャ痛いんだけどどうしたらいいのコレ?

 

あ、皮が無くなってきた。

 

『な、なぁ……そろそろ手を離さない?』

 

『何!?俺たちの友情はこの程度の握手で表現できるわけ無いだろう!』

 

俺が顔に冷や汗を浮かべながらスラぼうとの握手を止めようとするがスラぼうは余計に手のようなモノに力を込めて離そうとしない。あ、ヤベェ流石にピンチかも。

 

『いや俺もそう思うけどさ、そろそろ手が痛いんだよね……』

 

『ん?ああ、強く握りすぎた?でもこんくらいじゃないと俺たちの固い友情は表せないだろ?』

 

うん、友情はこの程度じゃ表せないけど……でもね……もう無理なんだよね……。

 

耐久力のピンチを感じ取り、俺は皮が無くなり筋肉が露わになってきた俺の手に魔力を込める。

 

『溶けてんだよ''ぉぉぉぉ!!俺の手がァァァ!!いいからとっとと手を離せやぁぁぁ!!燃やすぞこのクソスライムゥゥゥゥ!』

 

『燃やしながら言ってんじゃねぇぇぇ!!マジでア"ッヅゥゥゥゥ!?フザケんな定治ゥゥゥゥ!!』

 

俺が魔力で生み出した炎でスラぼうの身体を燃やすとスラぼうは身体をその身体を炎で包まれながらも俺を飲み込んで反撃をしようとする。暫くの間俺とスラぼうは全裸で気絶してるイリナを放っておいてケンカを始める。

 

後日、俺とスラぼうは一緒にエロ本読んで仲直りしましたんでソコは大丈夫です。

 

あ、俺はスラぼうのお陰で余裕でイリナに勝てたけど祐斗は負けてしまったらしい。

 

……おいおいマジかよ。何があったんだよ祐斗……。

 

 

 




無形の落とし子

変幻自在の黒い生き物、ヒキガエルに似た塊から体の形を即座にいろいろ変えられることが出来る生物。分かりやすく言うと物理攻撃無効のメチャクチャ強いスライム。ダメージを与えるには火、もしくは化学薬品などくらいだろう。因みに定治に熟女好きについて語られ熟女好きに目覚め、熟女の事が食べたいくらい好き。なお、ホントに食べようとしたら定治がマジで殺しにかかる模様。

SANチェック 1/1D10


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母と父

今回、再びショゴスくん登場。え?贔屓し過ぎだろって?

……まぁいいでしょ!

キャラと設定的に出しやすいんですよ。スズキとかも同じ理由ですし。

定治のノリについていけるキャラは必然的に出番の多くなる法則……仕方ないよね!


イリナとゼノヴィアとの対決から暫く経ったとある休みの日、定治は自宅にて忽然と消えた木場の行方を追っていた。現在定治は自室のソファに座って深淵の門(ルールブック)を片手に持ちながら木場を見つけるために放ったネズミ怪物たちのリーダーから報告を聞いていた。

 

『駄目ッスね定治さん、一族全員で探し回っているんスけど木場さんって人は未だ見つかって無いッス……』

 

『……そっか。ここんところ働き詰めにして悪かったな、今日はもう探索切り上げてゆっくり休んどいてくれ』

 

リーダーの報告を聞き、定治は表情こそ変えていないが残念そうに溜息をつく。それを見てネズミ怪物のリーダーは自身らの至らなさを感じ申し訳無さそうに頭を下げる。

 

『へい、申し訳ないッス定治さん。明日からまた探索を始めますんで……』

 

『ああ、頼むぜ。お疲れさん』

 

『へい!今日のところは失礼するッス!明日こそはあの時定治さんに助けてもらった恩を返すため、必ずや木場さんを見つけてみせやす!』

 

定治が申し訳無さそうに頭を下げるネズミ怪物のリーダーの頭を撫でるとネズミ怪物のリーダーは嬉しそうに目を細め、その後定治に頭を下げてから定治の肩から下り何処かへと走り去っていった。

 

 

「ハァ……ったくどこ行ってんだ祐斗の奴は……眠い……」

 

定治が溜息をついて寝ぼけ眼を擦っているとドアからコンコンとノックの音が聞こえた後、艶やかな黒髪を靡かせながら絶世の美女が入ってくる。

 

「定ちゃん……お友達が心配なのはわかるけれど……あなた最近あまり寝ていないでしょ?今日はお休みなんだからゆっくり寝なさい、お友達を探すのはまた明日からでいいじゃない、ね?」

 

定治を''定ちゃん"と呼ぶこの女性は定治の母親の阿見矢儀(あみしぎ)。矢儀は部屋に入ると定治の隣に座ると赤子をあやすように慈愛の笑みを浮かべて定治の頭を撫でるが定治はその手を掴んで撫でるのを止めさせてしまう。

 

「母さん……悪い。でも今回はそういう訳にはいかないんだよ」

 

「定ちゃん……」

 

「ダメだよ矢儀(シギ)、こういう時の定治はテコでも動かない。全く、友達思いなのは良いことなんだがいかんせん根を詰め過ぎてしまうのがコイツの悪いクセだ」

 

矢儀の手を止めて定治はルールブックを開き、他の神話生物を呼ぼうとするのだが開かれたページは定治でも矢儀の手でも無い人物に閉じられてしまう。いつの間にか現れルールブックを閉じた人物を見て矢儀と定治が反応する。

 

「あら、あなた」

 

「あん?親父じゃん。株はもういいのかよ?今日が売り時って言ってたじゃん」

 

そこにいたのは定治の父親阿見夢桐(あみむどう)、夢桐は矢儀に片手を軽く上げて返事をしてから定治の問いに反応する。

 

「ん?ああ、それはもう済ませたよ。あんな上がる株をテッペンになった瞬間売るヌルゲー、私がしくじるわけないだろう。」

 

「まぁ親父ならヌルゲーになるか……。」

 

夢桐が株取り引きをヌルゲーと答えると父親の事をよく知っている定治は参ったように溜息をつく。溜息をつく定治を見て夢桐は傲慢の表情を浮かべて口を開く。

 

「当たり前だ。私を誰だと思っているんだ定治」

 

「修行と称して邪悪な教団の本部にほっぽり出すクソ親父「そぉいっ!!」ブホッ!?……クソ親父……テメェ」

 

定治が父親に聞かれた質問に対して思っていたことを口にするが、夢桐が焦りを浮かべながら繰り出したヤクザキックにより最後まで喋ることは出来ず定治は最後にクソ親父と呟いて意識を失う。

 

「油断してた……そう言ってくるとは思っていたが対応が遅れてしまった「あ・な・た?」……ハッ!?」

 

冷や汗を垂らしながらホッと一息をつく夢桐だが横から矢儀の声が聞こえると顔から汗をダラダラと垂らす。汗を垂らしながら夢桐が横目で矢儀の方を見ると矢儀は微笑みを浮かべていたのだが矢儀が醸し出すオーラを感じ取り、夢桐はダラダラと垂らしていた冷や汗がより一層流す。

 

「今あなた定ちゃんに何をしたのかしら?わたしには貴方が定ちゃんのお腹に蹴りを入れているのが見えたんだけれど?それにさっき定ちゃんが邪悪な教団に一人でほっぽり出したって言ってたんだけれど……説明、してくれるわよね?」

 

「お、おおお落ち着くんだ矢儀!まずああいう時の定治は休めと言われても素直にハイと言わないのはわかっているだろう?あれは気絶させて無理にでも休ませる親としての心遣いだ!」

 

「ふーん?」

 

恐ろしいオーラを撒き散らしながら夢桐に質問をする矢儀を見て夢桐は口をどもらせながら必死に考えた言い訳を口にする。その言い訳を聞いた矢儀はというとふーんとだけ呟いて恐ろしいオーラは未だに収めようとはしていない。矢儀の顔は口にはしていなが"じゃあ邪悪な教団にほっぽりだした理由は?"と聞いており、夢桐はどうにかこの場を乗り切ろうと必死に言い訳を考える。

 

「あ、後ほっぽり出したことだがアレは……えーと……すまん!」

 

必死に考えた結果言い訳が思いつかなかった夢桐が取り敢えず全力で土下座をして謝ると矢儀から呆れたような溜息が聞こえてくる。

 

「ハァ……貴方って人は本当に……覚悟は出来てるわね?」

 

「……許してもらえない?」

 

「ええ」

 

矢儀の言葉を聞いて夢桐は土下座の状態のまま頭を上げて矢儀を見てヒクついた笑みで許してもらえるかどうか聞くと矢儀は普通の男ならその微笑みだけで恋に落とせそうな美しい笑みを浮かべて返事をする。もう許してもらえないことが確定した夢桐は再び頭を下げて土下座をして口を開く。

 

「……逃げちゃダメ?」

 

「逃げてもいいけれど、逃げたらどうなるかアナタなら言わなくてもわかるわよね?」

 

矢儀の返答をきいて夢桐の脳内には暫くの間自分の食事がどう見ても生ゴミのようなものになっている光景と燃やされた自分の書斎、そして何時も使っているパソコンが粉々にされている光景が目に入る。この光景を見て夢桐は観念したように溜息をつくと顔を上げて矢儀に啖呵を切る。

 

「……好きにしろやぁぁぁ!!ナメんなよ!そう易々とこの私をヤレると思うなよ矢儀ィ!!「そうね、だから手加減しなくていいわよね?確定してる未来ってツラいわねあなた?」ハイそうですね!っておいバカやめろぉ!そこはダメェ!!ちょ!ヤバイヤバイヤバイ!アッーーーー!!」

 

こうして定治の部屋から近所ではイケメンお父さんと呼ばれている一人の男の絶叫が響き渡るのであった。

 

 

定治が気絶してから暫くすると机に置かれていた定治のスマホから着信音が鳴る。

 

「お、起きろ定治……電話来てるぞ……」

 

「……ハッ!?親父テメェ!何いきなり人に踵落とししてんだ!ぶっ飛ばしてや……あ」

 

電話の着信音と夢桐の声により定治は目を覚まし、父親の顔が目に入った瞬間に先程いきなりヤクザキックをされた事を思い出して夢桐にヤクザキックをやり返そうとするがその足をすぐに止めてしまう。

 

何故なら起き上がった定治の視界にはパンツ一丁の姿で亀甲縛りをされ天井に吊るされ、何故か身体が若干痙攣している父親の姿があったからだ。このような光景を見て定治が固まっていると、夢桐が自嘲気味に笑いながら口を開く。

 

「フフフ、ぶっ飛ばされた方がマシだったよ……母さんは今日スーパーのバーゲンがあるらしいから一旦出ていったが……帰ってきたら再び私のお仕置きが始めるだろう……お前も巻き添えを食らいたくなければ電話に出て家から離れるんだ……」

 

「お、おう……」

 

夢桐の話を聞いて定治の頭には"何で俺の部屋で亀甲縛りされてんの?"など色々な考えが頭の中によぎるが定治は戸惑いながら父親に向けようとした足を下ろして先程から着信通知が来ている自身のスマホを手に取ると夢桐が気まずそうに定治に頼み事をしようと口を開く。

 

「あ、定治、この縄ちょっと解いてくれないかな?この時間くらいに売りたい株があるんだ……パッパ一生のお願い★」

 

「おう一誠、どうした?うん、ちょっと人を探すのを手伝って欲しい?わかった、今から向かうわ。待ち合わせは?ああ、あそこか。了解、そんじゃ後で」

 

「ねぇ定治、縄解いてよ。ねぇってば」

 

父親の頼みを定治は完全に無視して電話を掛けていた一誠と少しの間会話をして電話を切る。電話を切った後も頼み込んでくる父親の声を聞き、定治は父親のいる方向に振り向くとスマホと財布、そして着替えを持ってから軽く手を挙げる。

 

「……母さんがキレる時は大体親父が悪いからこうなるのは仕方がないんじゃないかな!じゃ、俺は約束あるから!ていうかキレた母さん敵に回すようなマネしたくないから俺は逃げる!」

 

定治は言いたいことだけ言うと、自らの身体能力の全てを使って部屋から逃亡した。凄い速さでこの場から去っていく定治を夢桐はポカーンと眺めてから自身が見捨てられたのを理解すると悔しそうに声を荒げる。

 

「オーマイゴッド!!チクショウ!!何て日だ!!」

 

定治の神器ルールブックによって作られた黒い穴のようなゲート、実は大変使い勝手の良いモノで魔力さえあればゲートをいかなる場所で作れるのは勿論、ゲートの閉じる閉じないを自由に選択できるのは勿論、それに自らがゲートに入って指定した神話生物が住んでいるドリームランドや死の都市ルルイエ、狂気山脈に自ら移動することも可能なのである。

 

定治の家はとても大きな和風な家屋で、そこの普段使われていない部屋には現在定治が意図的に閉じていないゲートが何個かあり、そこは死の都市ルルイエなど様々な場所に繋がっている。

 

そしてその門からショゴスが魚を咥えながら現れる。ショゴスは魚を咥えながらのんびりとした歩みで定治の部屋へと行き扉を開ける。

 

『定治ー!遊びに来たよー!アレ?定治は?(何で定治のお父さんパンツ一丁で天井に吊るされてるんだろう……変態?)』

 

『や、やぁショゴスくん……定治なら友達と約束があるって出かけて行ったよ。あとコレは矢儀にやられたんだ。私の性癖がドMでこんな事をしてるわけじゃ無いからね?信じてくれるよね?』

 

ドアを開けるとそこには先程と変わらず亀甲縛りで天井に吊るされている夢桐の姿が目に入りショゴスは少しヒキ気味に夢桐を見る。

 

『そんなー。スズキさんから美味しいお魚貰ってきたから一緒に食べようと思ったのに……(ドン引き……)』

 

『そ、それなら私が定治の元に送ってあげようか?あと変態じゃないからね?本当だよ?』

 

夢桐の口から定治がここにいない事を聞いてショゴスは落ち込んだ様子を見せるが夢桐の提案にハッと視界を挙げる。

 

『え、いいの?』

 

『ああいいとも。それじゃあこの縄解いてくれないかな?じゃないと術が発動出来ないからね』

 

『うんわかったー!』

 

夢桐の提案を聞いてショゴスは夢桐を縛っていた縄を噛みちぎって無理やり解く。縄を解かれ夢桐は固まった筋肉をほぐすようにストレッチをしてショゴスの方へ視線を向ける。

 

『ふぅ、ありがとうショゴスくん。それじゃあ約束通り定治の元へ送ってあげよう。今から転移させるんだけど、定治は転移してから10分後にそこに来るはずだからちゃんとそこで待ってるんだよ?』

 

『はーい!』

 

『ああそれと、お魚は鮮度が落ちちゃうからウチの冷蔵庫に入れて置きなさい。後でみんなで食べよう』

 

『わかったー!』

 

ショゴスは夢桐の言う通りに持ってきた魚を家の冷蔵庫へとしまってから夢桐の元へと戻る。夢桐は戻ってきたショゴスを指定した位置に移動させると掌に魔力を込める。夢桐が魔力を込めるとショゴスのいる位置の床から魔方陣が現れる。

 

『いい子だ。それじゃあいってらっしゃいショゴスくん』

 

『行ってきまーす!あ、定治のお父さん、緊縛プレイなら自室でやろうね!』

 

『だから私はドMじゃねぇから!早よ行けやボケェ!』

 

夢桐が自身の性癖を否定したそのすぐ後、魔方陣が光りショゴスの姿は消える。無事に成功したのを確認した夢桐は直ぐさま自室のパソコンへと向かっていく。

 

『さて、矢儀が帰ってくるまでに売る株を売っておかねば……』

 

阿見夢桐、天才相場師と呼ばれている彼はとんでもないお仕置きを食らうとわかっていても株取引を止めようとしないレベルの株ジャンキーである。

 

一方でここは駒王町のとある場所、そこに魔方陣が現れショゴスが街に現れる。

 

『よっと。ついたついた』

 

ショゴスは夢桐が言っていた10分後にここに定治が来るという情報を置いて信じて大人しく待つことにしていた。ショゴスが定治を待っている間の時間潰しに色々な考え事をしているとショゴスの頭の中にとある疑問が思い浮かぶ。

 

『それにしても定治のお父さん、血は繋がってないはずなのに定治にそっくりだなぁ。DNAはちゃんと違うらしいし……不思議だなぁ。ま、いいか!難しいこと考えるのはやーめよ!定治早く来ないかなー』

 

ショゴスは血の繋がっていないにも関わらずそっくりな定治と夢桐の姿を頭の中に思い浮かべ不思議そうに首を傾げるがメンドくさくなり直ぐに考えるのを止めてしまう。定治が街でショゴスくんと会い、驚き過ぎてひっくり返るまで後9分……。




ネズミ怪物

邪悪な人間の顔の頭部を持つネズミ型の怪物。邪悪な魔術によって生み出される神話生物で定治は邪悪な魔女をボコボコにして奴隷のように酷使されたネズミ怪物を結果的に助け、ネズミ怪物はその事を大きな恩と思い定治をとても慕っている。そのため下手したら魔女の元にいた時よりいっぱい働く事があるらしい……。

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阿見夢桐(あみ むどう)

何処にでもいるAPP16のイケメンなおっさん。戸籍上は定治の父親だが血の繋がりなどは一切ない。阿見家の生活金を株で過剰なほど稼ぐ株ジャンキー。定治にナーク=ティトの障壁の創造など様々な魔術を教えている。グールを人の見た目にする、何処にあるかもわからない魔術書を手に入れてくるなど、定治が出した無茶ブリを平気で成し遂げるくらいにはスゴイ。


阿見矢儀(あみ しぎ)

戸籍上定治の母親だが夢桐同様血の繋がりは一切ない。傾国の美女すら霞むレベルの美女で定治の性癖を確定させた女性。とんでもないレベルの美女(APP測定不能)なため、ただ微笑むだけでそこにいる男が恋に落ちてしまうほどの男殺し。ショゴスから肉を切り落としたりするくらいにはメンタルがヤバい。怒ると大変怖いが定治に対してかなり過保護。


本来定治のマッマとパッパはまだ出さない予定だったのですが急遽変更して登場。パッパとマッマの血の繋がっていないうんぬんかんぬんはその内書く定治の過去編で補完させて頂くので少々お待ちください。

え?パッパとマッマが何者かですか?たぶん皆さん気づいてるでしょう?たぶんそれで合ってますよ。

次回!街に現れた恐怖の生物ショゴス!逃げ惑う人々の何人が犠牲になるのか、乞うご期待!


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ショゴス=ロード

書く事がねぇw!

とりあえず新話投稿いたします。


一誠に呼び出された俺は現在、一誠が指定した待ち合わせの場所へ向かうためにのんびりと歩いていた。

 

え?親父はあの後どうなったのかって?

 

……うん、世の中には知らない方がいい事もあるんだよ。知ったら何か大切なもの失うからやめとこう!定治からマジの警告だよ!

 

さて、待ち合わせの場所へ適当に歩いていると二十代くらいのOLの女二人と十代いくかいかないくらいの男の子が何か話しているのが目に入る。事案かな?

 

「わぁー!カワイイー!」

 

「僕どうしたの?迷子?お姉さんと一緒にお母さん探す?あ、飴あるけど食べる?」

 

あ、結構いい人っぽいな。うん、大丈夫だ。事案だった場合に準備してた110って押したスマホは閉まっておこう。いや一応出しておこう万が一がある。

 

OLの女の子は男の子を見て何やらカワイイなんて言っているが本当か?女の子のカワイイにはカワイイって言ってる私カワイイって意味もあるからなあらやだホントにカワイイ。

 

OL二人に可愛がられている男の子はクリリとした目で短く切り揃えられた髪、服装は半袖短パンでいかにも子供らしい服装をしている。強いて他の子供たちと違うところを上げるとすれば髪の色が何色とも形容しがたい色をしているくらいだろうか。まぁそれを含めてもかなりの美少年と言えるだろう。間違いなくAPP18はあるな。俺が熟女以外に興味無かったら新たな性癖に目覚めていたかもしれない。

 

男の子はOLのお姉さんから貰った飴を口の中でコロコロと転がしながら辺りをキョロキョロと見回す。ふむ、迷子か?可哀想に、あの年頃の男の子はお母さんがいないと不安だろう。まったく、最近の親はなっていないな。ウチの母さんみたいに過保護すぎなのも考えものだけど。

 

男の子があたりをキョロキョロと見回しているとやがて俺と目が会うと目をキラキラさせて俺に駆け寄ってくる。

 

……え?

 

「あ、定治ー!」

 

「え!?ちょ、ま、誰ッ!?」

 

待って!男の子は真っ直ぐ俺に向かってくるんだけど!この子全く記憶に無いから来られても困るんだけど!

 

男の子は俺の元へ向かうと俺に腰元に抱きついてくるイデデデ!この子力強ッ!腰が死ぬゥ!

 

「本当に10分くらいだったね!流石定治のお父さん!ドMだけど!」

 

「え、俺の親父ドMだったの!?知りたくなかった新事実!ていうかマジで誰!?あと力強いからもうちょっと優しくしてイダダダッ!!」

 

ヤバいヤバい!腰が折れそう!マジで力強いんだけどこの子!神話生物並のSTRなんだけど!

 

悲鳴を上げる俺から男の子が離れると、何故か男の子はプンプンと怒っていた。

 

「もー!わからないの定治!?」

 

「わからねぇから聞いてんだよ!」

 

マジで誰だよこのショタ!

 

俺が目の前のショタが誰かわからず困惑する中、ショタは呆れたように溜息をついてから口を開く。

 

「まったく、これだから定治は……僕だよ、ショゴスだよ!」

 

へぇー、この子はショゴスって言うのかぁ。珍しい名前だなぁ……は?

 

「いやいやいや!ショゴスくんはもっとキモい見た目だから!そんなショタコンのハートをブチ抜く容姿じゃないから!」

 

「だ、誰がショタコンよ!」

 

「うるせぇ黙れショタコン!」

 

今テンパってるんだから横からいきなり口挟むなよ!今はそれどころじゃねぇんだよ!とりあえずお前らは寝てろ!

 

俺がOL二人を子守唄(物理)で寝かせると、ショゴスと名乗るショタそれを見ても驚かず、ヤレヤレと溜息をつく。

 

「定治、ルールブックで僕のページを見てみなよ」

 

え、何でこの子ルールブックの事知ってんの?ま、まさか本当に……いや、無い無い。

 

で、でもまぁ見てみるだけならいいかな?最近読んで無いから思い出すついでに読むだけだから、うん。言われるがままに俺はルールブックを呼び出しショゴスくんのページを開く。

 

「えーとショゴスくんのページは……あれ?」

 

み、見間違いかな?ショゴスくんのところ名前がショゴスじゃなくてショゴス=ロードになってるんだけど……。あ、ページに高度な知能を要しており、人の姿になる事も可能って書いてある……マジで?

 

「……ショゴス=ロードになったの?」

 

「うん」

 

「高度な知能もってんの?」

 

「うん」

 

「人の姿になれるの?」

 

「うん」

 

「ホ……」

 

「ホ?」

 

「ホゲェェェェッ!?"ゴッ!!"イッデェェェ!!?」

 

「定治ーーー!?」

 

イッダ!?マジイッダ!?え?何で痛いのかだって!?教えてやるよ!お前らとりあえずコンクリの路上で起立しろ!そんで思いっきり勢いつけて上半身後ろに反らせ!そんで頭と足でブリッジしろ!手を使うなよ!思いっきり頭をコンクリにぶつけろ!!

 

やったか!?痛ぇよな!?痛ぇだろ!?痛ぇんだよ!!

 

ああやっと理解したわ!このやり取りするのはショゴスくんだけだわ!ホントにショゴスくんだこの子!ていうかマジでイッテェ!ギャグ空間でよかった!

 

 

「「お恵みを〜、お恵みを〜」」

 

現在、いつの間にかロードになっていたショゴスくんを連れ俺は頭のタンコブを押さえながら街を歩いている。なんかこの前会った教会の奴らがいるけど無視無視。今は一誠と会う用事があるからアイツらに構う余裕は無いし。

 

「ショゴスくんロードになってたんだ、全然知らなかった……」

 

俺がタンコブを押さえながら言った一言を聞いてショゴスくんは飴を転がしながらプンプンと怒り出す。

 

「も〜!定治最近ルールブック読んでないでしょ!ダメだよちゃんと定期的に読まないと!ボクたちの情報はどんどん更新されていくんだから!」

 

ああ、そう言えば最近読んでないわ。だって分厚いんだもん。

 

「六法全書並に分厚いやつ読む気起きねぇよ……で、いつからロードになったの?」

 

「まったく、定治は面倒くさがりだなぁ……んーとね、先週合格通知来たから先週からだよ!」

 

「「お恵みを〜、お恵みを〜」」

 

ハイハイ無視無視。

 

ほうほう、昇格試験かぁ。……え、昇格試験?

 

「昇格試験!?え、ショゴス=ロードって昇格試験でなるもんなの!?」

 

「そうだよ?ショゴスのリーダー格なんだから試験通んないとなれないのは当たり前でしょ?」

 

ショゴスくん何呆れたように溜息ついてんの!?俺何か変な事言った!?

 

「そんな当たり前知らねぇよ!つーかどんな試験なんだよロード昇格試験って!」

 

「どんな試験って言われても……普通の学識と姿形を操る実技試験、それに他のショゴス=ロードさんたちとの面接だよ?」

 

「なにその試験!?ショゴスがやるような試験じゃなくね!?」

 

「「お恵みを〜、お恵みを〜」」

 

ああもう!訳わかんねぇ!!流石の俺でも困惑するわこんなもん!!ていうかショゴスくんはなんでそんなに平常運転なの!?なんでいつものバカなショゴスくんなの!?これで高度な知能って信じられるかよぉ!

 

ていうかさっきからお恵みお恵みうるせぇんだよクソ女共ォ!!

 

「何言ってんの定治、ショゴスだってそれくらいやるよ?あ、そうだ。定治、これ返すね」

 

困惑する俺の一方でショゴスくんは自分の身体に手を突っ込んで人皮装丁された一冊の本を取り出す。ちょっと、なんて所から本取り出してんのショゴスくん、周りに人がいないから良かったものの普通の人が見たら発狂ものだよソレ。あ、その本は……。

 

「あ、水神クタアト。そういえば借りるって言ってたけど……え、まさか……」

 

「うん!今回の試験会場はクトゥルフ様のいるルルイエだからね!これ読んだら学識試験は楽勝だったよ!ありがとね定治!」

 

「試験範囲コレの内容かよぉ!?」

 

もうワケわかんねぇ!もうこんな事起きないようにこれからは定期的にルールブック読むわ!絶対定期的に読むわ!

 

驚く俺を見てショゴスはいつも通りの調子でニパーッと笑いながら口を開く。

 

「うん、なんて言ったって会場がクトゥルフ様のいるルルイエだからね!」

 

「ああもういいや。今回はショゴスくんが超強化された事を喜ぼう。ショゴスくん、話は変わるけどこれから一誠の所に行くんだけど暇だったら来る?」

 

「行くー!」

 

うん、深く考えたら負けな奴だわコレ。よし、それじゃそろそろ一誠の所に行こうかな。待ち合わせ遅れそうだし。

 

「「お恵みを〜、お恵みを〜」」

 

……ナニコレ?何回コイツらと会ってんの俺ら?あ、目が合った。

 

わぁ〜★人間ってあんな顔出来るんですねぇ★定治初めて知ったぁ★

 

「「…………」」

 

ここで俺とショゴスくん、無言でアイコンタクトをして一気に駆け出す。

 

「何!?何なのアレ!?何処歩いても現れるだけど!?ドラク○の魔物みたいにエンカウントしてくるんだけど!?何なのアイツら!?」

 

「怖いんだけど!?人間から見たらモンスターの僕が怖いって感じてるんだけど!?何なのあの娘たち!?」

 

「お恵みを〜、お恵みを〜!」

 

ちょ、待って!ショゴスくんに合わせてるとは言え人が全力疾走してんだぞ!?何で先回りしてんの!?何ホーミングお恵みしてんの!?ホーミング強制お恵みとかただの取り立てじゃねぇか!

 

もうイヤ!アイツらイヤ!教会の奴らもうキライ!アイツら今度会ったら覚えとけよ!!絶対ただじゃすまさねぇ!!ドリームランドに放り込んでやる!レっさんとユキちゃんとムーンさんとで地獄の鬼ごっこさせてやる!!でもとりあえずここは逃げる!だって怖いんだもん!すっごいプレッシャーだもん!

 

「ウオォォォ!!ショゴスくん!適当なビルの屋上に行くぞ!陸からだと何処までも追ってきそうだ!空から逃げるぞ!」

 

「ちょ、定治早ッ!?全力定治早ッ!?待って!僕、人間の姿になってやっとDEX8なの!元々のDEX2なの!4倍になったけど定治の全力に追いつけないの!お願いだからちょっと待って!もしくはおんぶして!」

 

「ああもう!仕方ねぇなぁ!」

 

息切れしてるショゴスくんを俺は背負い近場のビルへと勝手に入り屋上まで全力疾走!不法侵入!?今それどころじゃねぇんだよ!!

 

「ウオォォォ!到着ゥ!そして来ぉぉぉいっ!ビヤアァァァキィィィィ!!」

 

ルールブックを開き、おれは直ぐさま神話生物を呼び出すと近くから門が現れ、神話生物が顔を出す。のんびりしてないで早く来て!早く早く!!

 

『お初にお目にかかります定治様、ビヤーキーと申します。ハスター様からあなた様の事は良く聞いております「KIMEEEEE!!オロロロロロロ!!」……え?』

 

「『は、吐いたーー!?』」

 

「え、ちょ、ど、どうすればよろしいのですかコレ!?」

 

やっべ、ビャーキー呼び出すの初めてだった!マジでキモオロロロロロ!!吐き出す俺を見て焦るショゴスくんとビヤーキーさん。ゴメンね!いきなり吐いちゃってゴメンね!でもキモいんだもん!あ、ビヤーキーさんもうちょっと距離とってお願いだから!

 

「ビヤーキーさん初めて召喚したの定治!?何でこういう時に初めて呼ぶヤツ呼ぶのさ!?ああもう!ビヤーキーさん!僕と定治乗っけてここまで運んで下さい!」

 

『わ、わかりました!頑張ります!』

 

吐いている俺の代わりにショゴスくんがビヤーキーさんに取り次いでくれる。ありがとうショゴスくん。ゴメンね、吐いちゃってゴメンね!

 

「ほら行くよ定治!ゲロ止めて!」

 

「う……サンキューショゴスくん……」

 

こうしてショゴスの助けを借りてゲロを吐き終えた俺はショゴスを抱えてビヤーキーの背中に乗りゼノヴィアたちから逃亡する事に成功した。

 

だが一誠の探し人がそのゼノヴィアたちだという事を俺はまだ知らない……。




ショゴス=ロード

高度な知能を持ちショゴスたちの司令塔たちとされる存在。人の姿になれるとされ、ショゴス=ロードの変身は普通の人では見ても気づかないほどである。この作品ではショゴスくんはロードになってもショゴスくんと呼ばせていただきます。昇格試験とかは適当に考えた設定なのは秘密。

ビヤーキー

ハスターに奉仕している神話生物。宇宙空間すら航空可能の恐ろしき生物。一匹につき一人まで乗って飛ぶ事が可能。ショゴスくんは現在ショタだから二人でもダイジョーブ!(超適当)

SANチェック1/1D6


※定治の神器ルールブックの内容について補足

定治のルールブックに書いてあるのは神話生物たちの情報についてだけです。趣味、弱点、姿形様々な事が書いてあります。内容はどんどん更新されている不思議な本です。


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共闘の申し出

ショゴス=ロード昇格試験はお酒の弱い作者が飲み会帰りにベロンベロンになりながら帰りの電車で適当に考えた設定。酔った勢いで考えた設定を採用してしまうアホの作者でゴメンなさい。

今回区切を示す◆多めとなっていますがご容赦ください。


ビヤーキーに乗ってゼノヴィアたちから逃走し終えた後定治たちは待ち合わせ付近のビルの屋上に着地し、待ち合わせの場所へ向かう。数分経ち、一誠との待ち合わせの場所についた定治とショゴス。待ち合わせの場所には既に一誠がおり、そして一誠の他に見知らぬ男が一人いる。一誠と一緒にいる男、匙元士郎は定治を見て明らかに嫌そうな顔をみせる。

 

「ゲ、阿見!」

 

匙が定治を見て嫌そうな顔をしている一方で定治は匙を見てキョトンとした表情を見せる。

 

「んー?何処かで会ったっけ?」

 

匙の顔を見てもいまいちピンと来ていない定治を見て、匙は焦りの表情を浮かべる。

 

「え、俺だよ!生徒会の!」

 

「いや誰だよ……」

 

未だに匙を見てもピンと来てない定治は困惑の表情を見せ、それを見て匙はより焦りの表情を浮かべる。

 

「なんでナチュラルにわかんない顔してんだよ!俺はお前が良く説教されに行く生徒会の役員!会長の部下の匙元士郎だよ!」

 

「へぇー、そっか匙くんかー。俺阿見定治、好きなのは熟女。よろしく!」

 

「知ってるわボケェ!」

 

ヘラヘラと笑いながら手を差し出す定治を見て匙は声を荒げながら捲したてる。一連のやりとりを見てからショゴスは一誠の方へ目を向ける。

 

「匙くんだっけ?なんか一誠くんと似てるよねー。ね?」

 

「えー、そんなに俺とアイツ似てるかなー?……誰ッ!?」

 

目の前の少年がショゴスだと知らない一誠はフレンドリーに話しかけられたショゴスを見て思わず驚いてしまう。一方でショゴスは驚く一誠に向けて小首を傾げながらキョトンとした表情を見せる。

 

「え?ショゴスだよ?何回か合ってるでしょ?」

 

「え……?……は?さ、定治……?」

 

ショゴスという名前を聞き一誠の脳内に何回か見ている神話生物時のショゴスの姿を思い浮かべ、驚き戸惑い定治の方へ視線を向ける。視線を向けられた定治は一誠が思っている疑問を理解して首を縦に振る。

 

「おう、この子はお前が知るショゴスくんだぞ」

 

「……ホ、ホゲェェェェ!?」

 

「そのリアクションさっき俺がやったからもういいよ」

 

 

 

一誠がショゴスが人間の姿になったのを見て驚いてから暫くして、一誠は定治に今回呼び出した事情を話す。一誠のゼノヴィアたちと会いたいとの事情を聞いた定治は額を手で押さえ、溜息をつく。

 

「マジかよ……さっき会ったわ……」

 

「え!?マジで!?何処にいた!?」

 

定治たちが先ほどゼノヴィアたちに会ったのを聞いた一誠は定治にゼノヴィアたちが何処らへんにいたのか聞くと、定治は口をヒクつかせながら一誠の後ろあたりを指差す。

 

「……アレ」

 

「「お恵みを〜、お恵みを〜!」」

 

「で、出たぁぁぁ!?ホーミングお恵みシスターだぁぁぁ!!ヒィィィィ!?」

 

「ホーミングお恵みシスター!?何だソレ!?って怖っ!?なにあの目!?超怖ェ!?兵藤、お前コイツらに会いたかったのか!?」

 

定治が口をヒクつかせながら指差した先にはショゴスが定治の後ろに隠れてしまう程怖い表情を浮かべたゼノヴィア達がおり、ゼノヴィア達の表情を見た匙は驚愕の表情を見せる。直ぐに探し人を見つけ喜ぶべきはずの一誠だがゼノヴィア達の表情を見てドン引きしてしまう。一誠がドン引きしているとゼノヴィア達の腹からグゥ〜ッと腹の虫が大きな音が聞こえてくる。その音を聞き何となく察しがついた一誠は口をヒクつかせながら近くのファミレスを親指で指差す。

 

「……飯食うか?少しなら奢るぜ?」

 

「「食う!!」」

 

「腹減ってたっていうだけであんな表情を浮かべてたのかよ……」

 

「ご飯の執念って怖いね定治……」

 

一誠の誘いにゼノヴィア達は直ぐに反応する。その光景を見て先ほどまで追われていた定治とショゴスはただただ口をヒクつかせていた。

 

 

ファミレスに入った一行は話の内容の事を考え、店の一番奥の席にさせてもらう。席についた一同はそれぞれ頼むものを注文し終え、頼んだものが来るまで話をしていた。現在席には奥から一誠、匙、ショゴス、定治。反対側にはイリナ、ゼノヴィアといった形に席に着いている。定治は疲労困憊しているゼノヴィアたちに視線を向け、疑問に思った事を口にする。

 

「お前らさ、なんでそんなになるまで何も食わなかったの?」

 

定治の問いを聞いてイリナは気まずそうに視線を逸らす一方でゼノヴィアは自嘲気味に笑いながら口を開く。

 

「食べなかったのでは無い、食べられなかったのだ。溶かされたイリナの服を発注したまでは大丈夫だったのだがな、イリナがよくわからない絵を買ってしまい金が無くなってしまったのだ……お陰でここ最近公園の水だけで生活するハメになってしまったてな……」

 

「……うわぁ」

 

定治の問いに対して自嘲気味に話すゼノヴィアを見て定治はドン引きの声を漏らしてしまう。定治の反応を見て、気まずそうに視線を逸らしていたイリナは焦りを浮かべながら持っていた絵を定治たちに見せる。

 

「よ、よくわからない絵じゃないよ!これはペトロ様が書かれた聖なる絵なの!どう!?すごいでしょ!?」

 

「……ドンマイ」

 

「……フ、同情なんていらないと思っていたが……フフ、何故だろうな……涙が止まらん……」

 

イリナの見せる絵を見て一同は思わず口をヒクつかせてしまう。ゼノヴィアに定治は同情の視線を向けると、ゼノヴィアは自分でもわからず目に涙を浮かべてしまう。事情を理解した定治はゼノヴィアに机越しに肩をポンと叩く。

 

「うん、事情はわかった。今日は金のことなんて気にせず好きなだけ食えよ。奢ってやるからな、一誠が」

 

「俺ェ!?」

 

定治が言った一言を聞き、この流れは定治が奢る流れだと思ってた一誠は驚愕の表情を浮かべてしまう。驚愕の表情を浮かべる一誠の一方でイリナとゼノヴィアはまるで救世主を見るような視線を一誠に送る。

 

「うぅ……すまない……この恩絶対に忘れん……礼を言うぞ赤龍帝!!」

 

「ありがとイッセーくん!!本っ当にありがとう!!」

 

「……ハイ」

 

二人の視線を受け、元々自分が奢るつもりだった事もあってか観念した様子で溜息をついてから頷くのだった。

 

やがて数分経つと店員がお盆の上に皆が頼んだものを乗せてやってくる。

 

「失礼しまーす、こちらご注文の品をお届けに参りました!」

 

「あ、すまない。コレとコレ、あとコレ、そしてコレも追加で頼む」

 

「私にも同じの一つずつお願いします!」

 

「コチラとコチラとコチラ、そしてコチラを二つずつですね!ハーイ!かしこまりましたーー!!」

 

「グッバイ俺の諭吉さん!!」

 

店員が頼んだ物を届け終えるとゼノヴィアとイリナは店員を呼び止め、メニューに載っている量が多く、その分値段も張るものをどんどん注文する。容赦なく頼む二人を見て一誠は財布の中の福沢諭吉と別れを告げる覚悟を決めたのであった。

 

 

現在、定治たちのテーブルには所狭しと料理が並べられている。それらをゼノヴィアとイリナは凄い勢いで食べている。その様子を見て財布の都合上、水しか飲めなくなった一誠は苦笑を浮かべつつもゼノヴィアたちに奪われたエクスカリバーの件、という共通の目的の元、共闘を申し出る。ある程度食べ終えた後、ゼノヴィアたちは口を紙ナプキンで拭った後デザートを食べながら一誠の方を見る。

 

「フム、正直言わせてもらうと悪魔の手を借りるなど死んでも御免被る」

 

「な……!」

 

ゼノヴィア口から出た言葉に予想してはいたものの焦りを隠せない一誠。一誠が焦りを浮かべ何かを言おうとした時、その口をゼノヴィアが人差し指で押さえる。

 

「まぁ待て赤龍帝、人の話は最後まで聞くものだ。先ほども言ったが悪魔の手を借りるなど死んでも御免なのだが……今回の件、どうもきな臭い。勘なのだが今回の強奪事件、ただの盗人だけでは無く、他の者が関わっているだろう。その他の者が私たちの手に負えないものだった時、最悪の場合私たちのエクスカリバーが奪われる可能性がある。それは何としても避けなければならない。」

 

「……という事は」

 

一誠の口を押さえながらゼノヴィアが言った言葉を聞き、一誠は焦りの表情から嬉しそうな表情を浮かべると、ゼノヴィアは一誠の口から人差し指を話してから静かに頷く。

 

「ああ、この度の共闘の件、受けよう。可能性は高いほうが良い」

 

そう言ってゼノヴィアは席に着くと食後の紅茶を静かに飲み始める。この二人のやり取りを見終え、どうにか上手くいった事を理解した定治は頬杖をつきながら視線だけデザートを食べるイリナの方へ向ける。

 

「で、ゼノヴィアだっけか?アンタが共闘してくれる事はわかった。だけどそこの痴女、お前はいいのか?」

 

「誰が痴女よ!……ゴホン、まぁ私としても悪魔に貸しは作りたくないけど、ゼノヴィアの考えは概ね正しいと思うし、乗ってあげてもいいよ!」

 

定治の言葉を聞いて思わず顔を赤くして席を立つが店員の視線を感じ、咳払いをして着席してから自身も今回の共闘を良しとする返事をする。

 

「サンキューイリナ!安心してくれ!組んで損させる様なマネは決してさせない!」

 

「あ……う、うん」

 

「(痴女なのに生娘とは……よくわかんねぇなコイツ)あ、ショゴスくんほっぺにクリームついてるよ。拭ってあげるからこっち向いて」

 

「んー」

 

イリナの言葉を聞き、一誠が嬉しそうにイリナの手を握りブンブンと振る。いきなり一誠に手を握られ、イリナは顔を紅くして俯いてしまうが手だけはしっかりと握って離そうとしない。その光景を見て定治はイリナを不思議そうに見つめてから、自身の身長ほどのあるパフェを食べるショゴスの頬についたクリームに気づいて紙ナプキンでクリームを拭き取る。

 

少し時が経ち、イリナは一誠と手を離しはしたものの顔は未だに紅くして俯いている。一方で食後の紅茶を飲み終えたゼノヴィアはティーカップを置いて再び一誠たちの方へと視線を向ける。

 

「さて、目的のためとは言え組むことになった訳だ。改めてよろしく頼む。ああ、勿論貴様にも働いてもらうからそのつもりでな。」

 

ゼノヴィアが視線を定治の方へ向けて言った言葉を聞いて、定治はほうほうと頷いて何故か匙の方へ視線を向ける。

 

「だってさ頑張れよ匙くん」

 

「俺ェ!?」

 

「貴様の事だァ!!」

 

「ワオッ!!ここファミレスゥ!!エクスカリバー抜くなこのドアホォ!!」

 

「お客様ァ!店内で剣を振るのはお止め下さいィ!!」

 

流れでファミレスに入り、話を適当に聞いていた匙は定治にいきなり背中を叩かれ驚いてしまう。そして定治の反応を見てゼノヴィアは思わず腰に携えたエクスカリバーを定治目掛けて横に一閃振るってしまう。定治は驚きながらも横から振られたエクスカリバーをどうにか白刃取りして防ぎ、ゼノヴィアにまくし立てる。定治の言葉を聞き、思わずエクスカリバーを振ってしまったゼノヴィアはハッとして謝りながらエクスカリバーをしまい、席につく。

 

「す、すまない……ついやってしまった……」

 

「ああ、すみません。コイツ劇の話をしてたら熱が入っちゃって、大丈夫なんで、ハイ、スミマセン、よく言っておきますんで……ハイ、本当にスミマセン。……全く……俺が白刃取りできたから良いものの……普通だったら大事だからな気をつけろよ?なぁショゴスくん……あ」

 

定治は驚いてやって来たファミレスの店員に適当に考えた話を話し、どうにか店員を納得させてからゼノヴィアに軽く説教をし、ショゴスにも同意を求めて視線を向けた時、固まってしまう。

 

定治の視界にはエクスカリバーによって容器ごと真っ二つにされたパフェとそれを無表情で見つめるショゴスの姿があった。ショゴスは真っ二つされたパフェを暫く見て、首をゆっくりとゼノヴィアの方へ向ける。ショゴスは身体から恐ろしいオーラを醸し出し、顔は目の付近の形が崩れ、頬には人間の姿の時についている口とは別に不気味な口が現れ、"テケリ・リ"と口ずさんでいた。ショゴスは崩れつつある顔を気にせず、恐ろしい表情を浮かべながら静かに口を開く。

 

「……喰うよ?」

 

「「「「「す、すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 

ショゴスが両方の口で、静かにドスのある声で呟いた一言を聞き、ゼノヴィアはおろか一誠、匙、イリナ、定治全員が思わず土下座する。

 

この後、定治たちはショゴスの機嫌を直すために財布が空になるまでパフェをご馳走し続ける事になった。

 

 

 

ファミレスから解散し、定治とすっかり機嫌を直したショゴスは定治の家へと帰宅する。

 

「ただいまー」

 

「ただいまー!定治、今日はボクがスズキさんから貰って持ってきたお魚があるからご飯は豪華な筈だよ!早く行こ!」

 

「おう、スズキさんセレクションの魚は美味いから楽しみだ……な……」

 

家に入り、食欲のそそる香りに誘われるように家のリビングへと向かう。夕飯に出てくるであろう魚を思い浮かべ上機嫌にリビングの扉を開く定治だが、そこにいる人物を見て思わず固まってしまう。リビングには頭のテッペンから出ている長いアホ毛のある銀色の長髪を持つ少女がお椀と箸を持って定治たちの夕飯を食べていた。

 

「あ、おかえりなさい定治さん!ご飯お先に頂いてます★」

 

「帰れ」

 

10人が10人カワイイという銀髪の美少女が笑顔でご飯を食べながら出迎えるが、定治は冷め切った表情で少女を見ていた。




中々話が進みませんね、次回にフリードくんまで持っていけるのだろうか……?

まぁなるようになるでしょう(適当

適当な作者でゴメンなさい。

さて、次回定治の家に現れた謎の美少女とのお話回。文字数的に短くなりそうな予感がしますが頑張ります。

美少女の正体ですか?

(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!

もうわかりましたね(ニッコリ

まぁ、次回になったらわかりますのでお楽しみに!


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這い寄るシリアス

……来ちゃったなぁ。

来ちゃったなぁ……。

奴が来ちゃったなぁ……。

シリアス書かないといけなくなるなぁ……。

助けて定治!ヘルプミー!


目の前の美少女を見て冷め切った表情をして、片手に深淵の門(ルールブック)を出す定治だったが、矢儀の「話は色々あるだろうけどご飯を食べてからでもいいでしょう?」という言葉を聞き入れ、大人しく席に着く。

 

夕飯を食べる定治だが目の前にいる少女が気になってしまい、味が全く感じられなかった。定治が黙々と食事をしていると、少女はおもむろに口を開く。

 

「定治さん、最近の調子はどうですか?」

 

「さっきまではそこそこだったけどお前が来たから最悪だな」

 

「も〜★こんな美少女がいるのに最悪とか酷くないですか?」

 

「いやお前まともなのは外面だけじゃん」

 

「ひっどーい★まだ何もしてないのにこんなにヒドく言うなんて……女の子にモテる要素ありませんね★ね?ショゴスくんもそう思うでしょ?」

 

可愛らしい、そして胡散臭い仕草をする少女を定治が冷め切った表情のまま見つめていると少女はショゴスに同意を求める。

 

「うん、定治ちょっと言い過ぎだよ。女の子を泣かせたらいけないんだよ?ダゴンさんが言ってたもん、間違ってないよ、うん」

 

夕飯を食べながらショゴスはうんうんと頷く。その様子を見て定治はため息をつきながら少女に向けて指を指す。

 

「コイツがカワイイ女の子?冗談にも程があるぜショゴスくん。コイツは外なる神が一柱、這い寄る混沌、クソ邪神ニャルラトホテップだよ」

 

定治の言葉を聞いたショゴスは驚きのあまり手に持っていた箸を落としてしまう。そして手を勢いよく振って誰がどう見ても焦った様子を見せる。

 

「……え?……いやいやいや!そんなビッグネームがホイホイ定治の家に来るわけないでしょ!冗談にも程があるよ定治!」

 

「おいニャル、今日お前俺が来るまで何してた?」

 

目の前の少女を這い寄る混沌と認めたくないショゴスを見て定治はため息をついてから少女の方へ先ほどまで何をしていたか尋ねる。ニャルラトホテップは定治の問いに対して人差し指を顎に当てて可愛らしく小首を傾げるとさも当たり前のように話を始める。

 

「えー?何って言われても適当に暇つぶししてただけですよ?この姿で街歩いてたら色んな人間が声かけて来たので、ソイツらを纏めてゲームしてたってだけです★」

 

「え」

 

この時、ショゴスの中で嫌な予感が遅れてやってくる。それはもう、ビンビンに。

 

「因みに、お前の言うゲームで今回何人が生き残った?」

 

「んー、ゼロですね★最近の人間はすぐ発狂して死んでしまうので全然面白くなくてつまらないです★全く、少しは足掻いてくれないと見てる側としてはつまらないので勘弁してほしいです★」

 

ニャルラトホテップがどんなヤツかをある程度理解している定治は夕飯を口にしながら生存者がいるかいないか尋ねると、ニャルラトホテップは笑顔でゼロと答える。そしてショゴスくんはとうとう理解する。目の前の少女がニャルラトホテップ本人だという事に。

 

「ニャ、ニャルラトホテップ様だぁぁぁぁ!?テケリ・リ!テケリ・リ!!』

 

「フフフ、ショゴスの言語で私を崇めてくれますか。嫌いじゃないですよ★あなたみたいなカワイイショゴスと会うのは初めてです。面白そうなのでこれからも見守ってあげますね★」

 

ショゴスは驚きのあまり人間の姿がすこし崩れてしまい、崩れてしまった箇所から現れた口から何かを必死に口ずさむ。ショゴスが何を言っているかわかるニャルラトホテップは笑顔で受け答えるが、それによりショゴスはより早口で何かを必死にニャルラトホテップに伝える。

 

『テケリ・リ!テケリ・リ!』

 

「いえいえ★そんなにかしこまらなくていいですよ★ただ見守るだけですから★」

 

「ヒィィィ!!?さ、定治ぅ!!」

 

とうとう恐怖に耐えきれなくなり、ショゴスは人間の姿で隣に座る定治の腕にしがみつく。ショゴスにしがみつかれた定治はため息をつくとニャルラトホテップを戒めるような視線を送る。

 

「ニャル、あまりショゴスくんを虐めてやるなよ。」

 

「えー★虐めてなんかいませんよ★」

 

「……ニャル」

 

とぼけるニャルラトホテップを見て定治がキツイ視線で睨むとニャルラトホテップはやれやれとため息をつく。

 

「もう★わかりましたよ★定治さんがそう言うのならやめますよ★あ、ご飯ごちそうさまでーす★」

 

「ほ……」

 

ニャルラトホテップはそれだけ言うと使い終わった食器をキッチンへと持っていく。どうにか災厄を免れたショゴスが安心してホッとため息をついていると、ニャルラトホテップがショゴスの元へ向かいショゴスの耳元で静かに呟く。

 

「命拾いしましたね★」

 

「ヒィィィ!?ぼ、僕もごちそうさまでしたぁぁぁ!!さ、定治僕もう帰るね!!お邪魔しましたぁぁぁぁ!!」

 

耳元で呟かれたショゴスは悲鳴を上げながら食器をキッチンに置くと逃げるように自身がやってきた門へと走り去っていく。ショゴスが帰ってから数分ほど経ち、定治も夕飯を食べ終え食器をキッチンへと持って行き、その後誰もいない部屋の方へ指を向ける。

 

「ごちそうさん。さて飯も食い終わった事だし、ついて来いニャル」

 

「えー?誰もいない部屋にこんなカワイイ女の子連れて行ってナニするもりですか?ヤラシイですねぇ定治さん★でもいいですよ?定治さんにならあげちゃいます!私のは・じ・め・て♡」

 

「おう、サンキューな」

 

「定ちゃーん、あまり声を大きくしないように頼むわよー?ウチが広いとはいえあまり声を大きくしたらご近所さんに迷惑だからー」

 

「それはコイツ次第だからなぁ。善処はしとくよ母さん。行くぞニャル」

 

「はーい★」

 

ニャルラトホテップは何を思っているのか頬に手を当てて体をクネらせているが、定治はそれを見ても至って普通に対応する。

 

部屋へ入る途中に洗い物をしている矢儀の言ってきた言葉に答えてから定治はニャルラトホテップを誰もいない部屋へと連れて行った。

 

 

ここは阿見家の客室、畳が置かれた広い部屋にはテーブルと座布団が置かれており、定治とニャルラトホテップはそこで話をしていた。だが、話をしているのに二人とも座布団もテーブルも使っていない。

 

何故なら現在定治が美少女姿のニャルラトホテップに容赦無く卍固めをかけているからである。

 

「それで今日は一体どんなご用件でしょうか、クソ邪神様?」

 

「イダダダ!?言ってることに対してやってる事違いすぎません!?ていうか何でいきなり卍固め!?さっきまでのシリアスは何処に行ったんですイダダダッ!!ギブギブギブ!!」

 

卍固めをかけられ悲鳴をあげるニャルラトホテップ。ニャルラトホテップの首を抑えている足に力を込めながら定治は真顔で答える。

 

「だってさっきくれるって言ってたじゃん。お前のは・じ・め・て(の卍固め)♡」

 

「何でそうなるんですか!?痛い痛い痛い!もうホント勘弁して下さいホントに!体のあちこちが悲鳴を上げてイダダダッ!?卍固めやめて下さいお願いします!!」

 

「キミがッ泣くまで!卍固めをやめないッ!」

 

「もう泣いてますから!目尻にうっすら涙浮かんでますから!だからもうやめて下さイダダダッ!?」

 

先ほどからずっと卍固めを掛けられているニャルラトホテップの目には自身が言う通り涙が浮かんでいる。普通の人なら美少女が浮かべる涙に卍固めをやめてしまいそうなものだが、定治は先ほどまでの冷め切った表情からニンマリとゲスな笑みを浮かべて、足と肘により一層力を込める。

 

「そしてッキミがッ泣いても!卍固めをやめないッ!」

 

「鬼ですかあなたは!?」

 

定治がより一層力を込めた分ニャルラトホテップの悲鳴もより一層大きくなる。定治はニャルラトホテップの腰に当てている肘をグリグリと捩込むようにしながらニャルラトホテップに向かって口を開く。

 

「さぁ吐けニャル!何をしに来た!?吐くまで卍固めはやめねぇからな!」

 

「痛い痛い痛い!大した用じゃないんです!ただ定治さんの顔を見に来ただけですから!ほら言いましたよ!だから離してくださいよぉぉぉ!!」

 

「嘘をつくな嘘をッ!テメェがそんな理由でここに来る訳ねぇだろぉ!!」

 

ニャルラトホテップは定治に聞かれた事に対して素直に答えるが定治はそれを嘘と決めつけ、卍固めから流れるように飛びつき腕十字固めを決める。

 

「卍固めからまさかの飛びつき腕十字固め来たぁぁぁぁ!?イダダダッ!!」

 

「ほら吐け!何で此処に来た!!言え!」

 

「ギャアアァァァッ!!いやホントに顔を見に来ただけなんですって!信じてくださいよぉ!!」

 

「テメェの俺に対する信用、説得、その他諸々の技能は全部ゼロだから無理!!」

 

「何でぇぇぇ!?少しは私の事信用して下さいよぉぉぉ!!痛い痛い痛い!!何で私がこんな目にぃぃぃ!?」

 

腕十字固めを決められ、悲鳴をあげるニャルラトホテップ。そんな声に反応したのか隣の部屋から矢儀の声が聞こえてくる。

 

「定ちゃーん、ニャルちゃんの声もうちょっと落とさせてー!テレビの音が聞こえないのー!」

 

「りょーかーい!おいニャル!もうちょっと声押さえろオラァ!!」

 

「それなら技かけるのやめて下さいよぉぉぉ!!ギャアアァァァッ!!」

 

ここで矢儀、プロレス技をやめてあげなさいというのでは無く、テレビの声が聞こえないから声を落とすように言ってくる。悲鳴に対しては特にこれといった感情を抱いてないあたり、阿見家の住人はジッサイスゴイ。

 

矢儀の声に定治が返すと、定治はニャルラトホテップに声を抑えるよう言いながら力を込めるが、それで声が小さくなるはずも無く、悲鳴は大きくなるばかりである。このニャルラトホテップの悲鳴はしばらくの間阿見家に響き渡るのであった。

 

 

ニャルラトホテップの悲鳴が治ってからしばらくして、現在客間には四つん這いになってガクガク震えるニャルラトホテップとそれを上から見下ろす定治の姿があった。

 

「……で、ホントに顔を見に来ただけなの?」

 

「だからさっきからそう言ってるじゃないですか!!少しは私を信用して下さいよぉ!!」

 

「やだ」

 

「ヒドっ!?定治さんは本当に相変わらず自由人ですね……シクシク……ま、そこがいいんですけどね!」

 

「(もうちょっと技かけりゃ良かったと思った)」

 

今までの体験上、ニャルラトホテップと関わると碌な事がない事を理解している定治は未だ疑うような視線をニャルラトホテップに送るが、涙を流すニャルラトホテップを見て流石に悪かったかもと少し思う。

 

だがしかし直ぐに泣き止んでケロッとしているニャルラトホテップを見てついでに他のプロレス技でもやれば良かったと後悔する。

 

ニャルラトホテップは座布団に座り、定治によってブレイクされた序盤にあったはずのシリアスをどうにか取り戻そうと思い、話題として定治の神器、深淵の門(ルールブック)の事を尋ねる。

 

「定治さん、深淵の門(Gate of abyss)の使い心地はどうですか?」

 

「良いと思うぜ。神話生物の奴らは頼もしくて強い、なによりみんな面白いから退屈せずにすむ」

 

ニャルラトホテップが無理やり話を変え、尋ねた事に定治は直ぐに返答する。定治がどう言うかある程度予測のついていたニャルラトホテップだが、改めて定治の返答を聞き面白そうにクスクスと笑う。

 

「フフ、深淵の門(Gate of abyss)歴代所持者たちの中でそれを言うのはあなただけですよ。定治さん、神器というのは聖書に記された神が作ったのは知ってますね?ですがその神器だけは違います。その神器の大元は白痴の魔王が望み、面白半分に全てを知る無名の霧が書き上げ、最後に私がちょっとした祝福をかけた後、たくさんの神器たちの中に紛れ込ませたモノなんです。つまりは完全なるイレギュラー、人間からすれば碌なモノじゃないということ。そんなものを"良い"、なんて言うのはあなたくらいですよ(ま、あの後聖書の神は直ぐに気づいて、深淵の門(Gate of abyss)の削除こそ出来ていませんでしたがちょっとした仕掛けを施していましたけど。それで、地球の神もそこまで無能じゃなかったって続きの話があるんですけどメンドくさいので話しません)」

 

『あ、シャッガイからの昆虫、飲み物とってきて』

 

『うぃーw』

 

「うっわ全然興味なさそう」

 

ニャルラトホテップが深淵の門(ルールブック)がどういった物なのかを話すが定治は全く興味を持っておらず、シャッガイからの昆虫を呼び出し飲み物を持ってくるように頼む。シャッガイからの昆虫は素直に定治の頼みを聞き入れ、ペットボトルに入ったお茶を持ってくる。

 

先ほどまでニャルラトホテップにプロレス技をかけていて喉が渇いていたのか定治はペットボトルに入ったお茶をラッパ飲みして身体に水分が満ちるような感覚と共に気持ちのいい声を上げてからニャルラトホテップの言葉に反応する。

 

「……プハァッ!だって全然興味無いし。ていうかさ、前々から気になってたんだけどお前何深淵の門(ルールブック)の事深淵の門(Gate of abyss)って言ってんの?間違えんのやめてくれよ。コレ深淵の門(Gate of abyss)じゃなくて深淵の門(ルールブック)だから。」

 

「え?いやそう言われてもソレ深淵の門(Gate of abyss)って名前ですし……アレ?」

 

定治がルールブックを見せながら、自身の神器深淵の門(ルールブック)の呼び名が間違っていると指摘するとニャルラトホテップは頭にクエスチョンマークを浮かべて深淵の門(Gate of abyss)と書かれている筈の本のタイトルを見て固まる。

 

数秒後ニャルラトホテップは驚きのあまり大声を出してしまう。

 

「タイトルがRule Bookになってるぅぅぅぅ!?ええ!?ちょ、ま!えぇ!?なんでぇぇぇ!?」

 

「ニャルちゃんうるさーい!」

 

「ごめんなさい!ル、ルールブックゥ!?え、ええ!?」

 

大声を出した事でテレビを見ている矢儀に怒られ、直ぐに謝るニャルラトホテップだが驚きは未だ収まっていない様で深淵の門(ルールブック)の表紙にデカデカと書かれているRule Bookというタイトルを再び見てから再度驚愕の表情を見せる。驚愕の表情を見せるニャルラトホテップとは対照に定治はいたって普通な顔でさも当たり前の様に話す。

 

深淵の門(Gate of abyss)って名前ダサいから無理矢理ルールブックにタイトル改名させた」

 

「えぇぇぇ!?そんなホイホイ出来るもんなんですか!?」

 

「コレにお前ルールブックだよな?って言い続けたら出来たぞ」

 

「定治さんSUGEEEEE!!」

 

衝撃の事実を知り、再度驚くニャルラトホテップ。しかしここでいつの間にかシリアスが消えかけている事に気付き、軽く咳払いをして話題を変えてシリアスを取り戻そうと画策する。

 

「ゴホン、そう言えば定治さん。あなた教会の人間たちと手を組む事にしたんですよね?……あの娘たちも可愛そうですよねぇ、本人たちが知らないとは言え、敵が自分より強いヤツなのにその相手をしなければならないんですから。……聖書に記された神なんてもういないというのに一体彼女たちは何のために戦ってるんでしょうね?」

 

「ああ、だけど立場上やるしか無いんだから仕方ないんじゃねぇの?事が終わったらドリームランドで鬼ごっこさせてやるけどな。……おい待てお前今最後何つった?」

 

「あぁっと!私の混沌レーダーがビンビンに立ちました!ちょっとそっちに向かいますね!それじゃお邪魔しました!消滅(VANISH)!」

 

ここでニャルラトホテップは定治にシリアスを殺される前に逃げる事を思いつき、片手をシュタッと上げて消滅の呪文を使ってこの場から去る。後には驚いた表情を浮かべる定治とソレを興味深そうに眺めるシャッガイからの昆虫だけが残る。数秒経ち、ニャルラトホテップが言い逃げした事に気づいてから定治はワナワナと身体を震わせてペットボトルを握りつぶす。

 

「あのクソ邪神最後にとんでもないこと言って消えやがった!!」

 

『定治がめっちゃ驚いてるんだけどw』

 

『何コレ大爆笑w』

 

『ちょーウケるwダッヒャッヒャッヒャッw!!』

 

「クソがぁぁぁ!!だからアイツ嫌いなんだよ!いつもいつもとんでもないネタぶっ込んできやがって!!今回はそうさせないように注意してたのに言い逃げしやがった!!あんのクソ邪神がぁぁぁぁ!!「定ちゃんうるさーい!」ごめんなさい!」

 

爆笑して笑い転げているシャッガイからの昆虫を無視して定治は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて絶叫する。絶叫をしたため、定治は矢儀に怒られ声を抑えるがその顔は今度ニャルラトホテップに会ったら地獄の断頭台をやりかねないような表情を浮かべていた。

 

 

「いやー相変わらず定治さんは面白いですね★ホント、人間にしておくには惜しい方です★」

 

定治の家から出ていったニャルラトホテップは消滅の呪文用の箱を回収してから夜の街をのんびりと歩く。その姿は千の貌を持つものと呼ぶに相応しく、1歩くにつれ様々なものへと変化する。

 

1歩歩く、その姿は赤き衣を纏った威厳ある女性へ。

 

「定治、妾がお主に初めて会った時言った言葉を覚えておるか?」

 

1歩歩く、その姿はスーツを着た褐色肌の青年へ。

 

「あの時キミは興味無さそうにしてたが、今はもう違うんじゃ無いかい?」

 

1歩歩く、その姿は白衣を纏った研究者へ。

 

「お前は今も昔も、そしてこれからも様々な事に巻き込まれるだろう、私が手を出すまでも無く。」

 

1歩歩く、その姿は胸元が大きく開いたスーツを身に纏ったメガネをかけた美女へ。

 

「キミは我が主が選んだ主役、私はキミという存在にすごく興味を持っているんだ。」

 

1歩歩く、その姿は顔の無いファラオへ。

 

「故に貴様という一つの物語を盛り上げるため、協力は惜しまぬ。」

 

1歩歩く、その姿は長い銀髪の美少女へ。

 

「楽しみにさせて貰いますよ★あなたの物語を、ね。……おっと」

 

銀髪の美少女へと姿を変えたニャルラトホテップだったが、曲がり角にいる人物を察知し、その姿を神父服を着た三、四十代ほどの白髪の男へと変化させる。神父の姿へとなって歩いてから二、三分経つとそこに階位の高い者が着る法衣を纏った男がいた。男、バルパー・ガリレイは神父の姿へとなったニャルラトホテップを見つけると険しい表情を浮かべて歩み寄る。

 

「探したぞナイ。何処に行っていた?」

 

「なに、ちょっとした散歩ですよ。気分転換には丁度いいので」

 

「まったく、散歩に行くのなら一言くらい言え。今は一刻一秒が惜しいのだ、勝手な行動は許さん」

 

「フフフ、すみません。これからはそうしますよ」

 

バルパーの非難の言葉をニャルラトホテップは笑って軽く受け流すとバルパーは呆れたように溜息をつく。

 

「ハァ、計画は既に最終段階へと向かっているのだ、勝手な行動をされては困る。……計画は私の予想よりはるかに順調に事が進んでいる。後は準備を整え、機を待つのみ。これも何かと協力してくれた貴様のお陰だな」

 

「フフフ、私は自身の目的の為にあなたの計画に一枚噛ませて頂いているだけなので。どうか私の事はお気になさらず」

 

遠回しに礼を言うバルパーだがニャルラトホテップは軽く笑って気にもとめていない。バルパーは未だニャルラトホテップの真意を掴めず探るような視線を向けるがそれも時間の無駄と判断し、ニャルラトホテップに背を向ける。

 

「……私はもう戻る。エクスカリバーの事が気になるのでな。貴様も気分転換とやらが済み次第来い」

 

「了解いたしました。ああ、そう言えば話は変わりますが近くのコンビニで一風変わったBLTサンドが発売されたとか。私はこの後買いに行く予定ですがバルパーさんの分も買ってきて差し上げましょうか?」

 

「いらん。飯など栄養さえ足りてればそれで良い。」

 

ニャルラトホテップの言葉をバルパーは一蹴し、コツコツと歩いて何処かへ向かう。バルパーが見えなくなるのを確認した後、バルパーを嘲笑うかのように笑う。

 

「全く、困った人間だ。やはりアレはダメだ、全く面白くない。まぁ、つまらない人間でも物語のちょっとした刺激にはなるか。その点では期待しているよ、バルパー・ガリレイ」

 

ニャルラトホテップは神父服の男の姿から銀髪の少女へと姿を変え、空に浮かぶ星たちの、その先を見て目尻を下げ、口角を吊り上げてニンマリと笑う。

 

「定治さん、初めて会った時に言った"門のある所に安息など無い"、この言葉ゆめゆめお忘れなきように……フフフフフフフ!」

 

その言葉を最後にニャルラトホテップの姿は夜の闇の中へと消えた。




こんなに長く書いたの初めてだゾ……ぬぅぅわぁぁぁん疲れたもぉぉぉん!

作者が凄く疲れてる……これもニャルラトホテップって奴の仕業なんだ(確信)

さて、ニャルラトホテップ登場。彼がこの作品においてどんな役割なのかはもう決めてあります。おふざけ的な意味で、ですが。

それと一応言っておきますが、現在ニャルラトホテップはナイ神父の姿をしてますが別にアーカム計画とかはやらないのでご安心を。

定治がこの邪神の所為でどんな目にあったのかはちょくちょくポロっと書きます。

テキトーな外なる神講座

Nyarlathotep
外なる神の総帥、白痴の魔王アザトースをあやす蕃神。知性の無い主の意思を具現化させるために動いている一方で、その主の事を冷笑している。千の貌を持つとされ、様々な姿(化身)としてその姿を現し、混沌と狂気をもたらす。過去に色々な事に定治を巻き込み、そのせいか定治はこの神に対して非常に辛辣。なお、基本的に人間を見下しているのでたまに手痛いしっぺ返しをされることがあるそうな。

SANチェック この神が人間の姿をしている時、SANチェックは無い。


卍固め
日本の有名なプロレスラーが使っていた技。肩、脇腹に最もダメージを与え、首筋、腰にもダメージを与えられる一度で4度おいしい技。ノリで一回された事あるけどメチャクチャ痛かったゾ。良い子は絶対友達にやっちゃダメだゾ。

飛びつき腕十字固め
文字通り相手の腕に飛びついて勢いで相手をマットに倒しそのまま腕十字固めを決める、という技。動画で見てなんかカッコいいと思いました(コナミ感


作者はプロレスあまり詳しくないので何かカッコいい、派手なプロレス技とかあったら(定治にやらせたいので)作者に教えて下さい!お願いします!


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狂人って呼ぶんじゃねぇ!

さて、フリード戦。

原作3巻も終盤へと向かっていきます。

展開を早くしたいのでどんどんマキでいきますよぉ!




暗い朽ちた教会で、俺と匙くん、一誠、木場は神父服へと着替えていた。

 

「悪魔が神父服を着るとはな……」

 

「目的のためだ仕方ないよ匙くん」

 

「おっしゃ、どう?似合ってる?」

 

「似合ってるけど、そのへらへら笑いのせいですっげぇ胡散臭そう」

 

「泣くぞ」

 

酷くね?一誠ひどくね?

 

現在俺、一誠、匙くん、頬が腫れている裕斗はイリナとゼノヴィアが用意してくれた神父服へと着替え、エクスカリバーの件と絡んでいる神父狩りを見つけるための準備をしている。

 

ん?なんで祐斗の頬が腫れてるのって?あぁ……うん。まぁこんな事があったんですよ。はい、ホワンホワンホワーン。

 

 

『おかえりィ!!』

 

『グァッ!?』

 

『おま、何ヒョッコリ帰ってきてんだよ!いくら探しても見つからなかったからメッチャ心配したわボケェ!』

 

 

まあこんな感じでまず安心した後、何かがふつふつと込み上げてきて思わず殴っちゃったんですよね。この後祐斗の奴にちょっと周りを見て考えて行動しろみたいなこと説教したんだけど説明しません。何故なら恥ずかしいから。まあこんな事の後に一誠からなんやかんやあって祐斗が今回の共闘を認めてくれたっていう説明を受けて今に至るってわけ。

 

そんな訳で現在、俺たちはイリナとゼノヴィアと別れ、歩いて公園付近まで来ているわけだけど、上から殺気が感じる。殺気に祐斗も感じたようで手元に魔剣を作り出して身構える。

 

「上っ!」

 

「ヒャッハー!!」

 

「シッ!」

 

「テメェはあの時の神父!」

 

"BOOST!!"

 

上から白髪神父の男が剣を振り上げて襲いかかるのを見て俺は拳で剣の腹を弾いて受け流し、お返しに顔面に向かって拳を振るうが神父は悪魔の祐斗と同じくらいの速さで俺の拳を躱して距離を取る。

 

そして俺に攻撃してきた神父をこの前会った神父と判断した一誠は直ぐさま赤龍帝の籠手を呼び出し、倍加の準備を始める。

 

「ハッハァ!!相変わらずやるじゃねぇの!でもこの天閃の聖剣、人呼んでエクスカリバーラピッドリィ!俺呼んでチョッ速の剣のスピードについてこれるのかなぁ!?」

 

おー、速い速い。だけど速いだけなんだよなぁ。クーガーの兄貴みたいに速さに命かけてるレベルのスピードならともかく、コイツのスピードは目で追えるしいくらでも反撃できるから自慢できる程じゃないと思うんだけど。

 

俺が辺りを高速で走る神父を目で追いながら拳を握りしめ、何時でも反撃できるようにしていると後ろから声が聞こえてくる。

 

「定治くん!アイツは僕が相手する!」

 

神父が持つ剣をエクスカリバーと聞き、木場が目の色を変えて神父に襲いかかっていく。まぁ、こうなるのは仕方ないか。

 

「りょーかい。援護に徹するぜ」

 

ため息をついてから俺は魔術を行使するために一呼吸して魔力を身体に漲らせる。

 

魔力を身体に漲らせながら祐斗と神父の方を見ると神父は向かっていく祐斗を余裕そうに眺めて口角を思い切り釣り上げる。

 

「ハァ?そんなチャチな剣でエクスカリバーちゃんを相手しようとか本気ですかァァ!?」

 

「くッ……」

 

口角を釣り上げた神父が聖剣の柄を掴む手に何かの力を込めると聖剣が光を放ち祐斗の持つ魔剣を軽々砕いてみせる。魔剣を容易く砕かれ驚く木場に神父は追撃に上から下に聖剣を一閃する。

 

チッ!援護が出来なかった!祐斗は……どうにか大丈夫みたいだな良かった。

 

「ハァ……ハァ……危なかった」

 

紙一重でどうにか躱して距離を取る祐斗の腕には切れた制服、そして手首から肩までの切り傷が出来ていた。傷は浅いが悪魔が大の苦手とする聖剣の一撃だ。見た目以上に深刻なのかもしれない。肩で息をする祐斗を見て神父は勝ち誇った笑みを浮かべながら聖剣の切っ先を俺たちに向ける。

 

「ハッハァ!!そんなチャチな剣でエクスカリバーちゃんの相手が務まると思ってんのぉ?てめぇら雑魚になんて始めから眼中にねぇんだよ!俺が狙ってんのはそこの人間、頭おかしい狂人くんだけだよぉ!!」

 

クソ、祐斗はもう全力で戦えそうに無いな。ここからは祐斗を守りながら闘わないといけなくなった。さて、どうするか……。

 

ん?ちょっと待て、今アイツなんて言ったっけ……?

 

俺はさっき神父が言った事を思い出し、ゆっくりと頭の中で繰り返す。

 

頭おかしい狂人、頭のおかしい狂人、狂人、狂った人……そして人間……ここにいる人間はあの神父を除いて俺一人。え、もしかして……?

 

「狂人ってもしかして俺の事ォ!?」

 

「お前以外いるわけねェだろォ!!」

 

俺は自身に指差し驚くと、神父は若干キレながら聖剣を構えながら俺に真っ直ぐ向かっていく。神父が真っ直ぐこちらへ向かっている現状だが俺の頭の中で狂人という言葉が頭の中で繰り返し、そして何かがキレた。

 

「だぁれがぁ……!」

 

神父は天閃の聖剣とやらでスピードが上がっているはずだが、真っ直ぐ向かっていく神父の姿が今の俺にはゆっくりに見えた。俺はゆっくりと動く神父の動きを読んでからスゥーッと息を吸い込んでタイミングを合わせる。

 

「狂人だゴラアアァァァァ!!」

 

神父が振り下ろす聖剣を最小限の動きで躱し、俺は思い切り力を込めて片足を振り上げ、神父の顔面に回し蹴りを決める。回し蹴りを決めた足からは神父の顔、そして頭蓋骨にヒビが入った音と感触を感じるがお構い無しに蹴り飛ばす!

 

チッ!威力が足りなかった!頭をザクロみたいにしてやろうと思ったけどダメージが足りなかったか、もしくはよほどの石頭を持ってやがったかクソッタレ!

 

蹴り飛ばされ、公園の遊具に叩きつけられた神父を俺は眉をヒクつかせながら歩み寄る。もう本当、おこです。大噴火レジェンドサイクロンなんちゃらほどじゃないけど、激おこスティックなんちゃらくらいはキレてるからなゴラァ!

 

「俺はなぁ!別に狂ってねぇ!狂人じゃねぇんだよ!ただ人より元気が有り余っててちょっと不真面目なだけだゴラァ!!」

 

頭おかしいまではまだ許す。ちょっとフザケすぎちゃうとこ自覚してるし。けどなぁ、俺別に正気失ってねぇから!狂ってねぇから!俺のこと狂人って言うんじゃねぇこのクソ野郎!!

 

俺が眉をヒクつかせながら言った言葉に一誠と祐斗は慣れた様子でやれやれと溜息をつく一方で、匙くんは俺の言葉を聞いてからいかにもこれからツッコみそうな表情を浮かべてからツッコミをいれる。

 

「お前結構なクソ野郎じゃねぇか!!」

 

「褒め言葉ありがとう匙くん!」

 

うん!言うと思った!クソ野郎はセーフ!もう褒め言葉として受け取ってるから!けど狂人呼ばわりは許さん!!

 

「さぁて、共闘の件もあるし、そのエクスカリバーは貰うとしようか。それと俺、お前の事キライだからボコボコにして骨の数本は折るけどいいよな?いいよね!!」

 

ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)

 

眉をヒクつかせながら歩み寄ると、どこか聞いたことのある声と共に俺とクソ神父の間に障壁が貼られる。

 

「コイツは……」

 

「これは!?定治の魔術と同じ……!」

 

貼られたこの障壁に見覚えのありすぎる、一誠も同じように思っているようでその表情さとても驚いているように見えた。そして目の前に貼られたこの障壁を見た瞬間俺の頭の中は冷静になり、障壁の先を睨む。

 

「迎えに来てやったぞフリード。ただの人間如きに何やられておる」

 

「バルパー・ガリレイ!」

 

障壁の中から魔法陣が現れる。魔法陣から出てきたメガネをかけた老人を見て、ソイツが誰なのか直ぐにわかった祐斗は激情しながら老人の名前と共に激しく睨む。

 

祐斗が老人を見ている一方で、俺の目を引いたのはもう一人の白髪の男。間違いない、アイツはクソ邪神の貌の一つ、ナイ神父だ。

 

クソ邪神は神父の元まで歩み寄り、神父の容態を判断すると参ったように溜息をつく。

 

「やれやれ、天閃の聖剣だけでは定治の相手にはならなかったみたいだね。バルパーさん、フリードは死んではいないがアゴと頭にヒビが入っている。直ぐさま治療しなければ後遺症が残ってしまうだろう」

 

「……テメェ」

 

神父の元まで歩み寄るクソ邪神を思い切り睨むとクソ邪神は俺に気づいたようで笑顔を浮かべながら俺に軽く手を上げる。

 

「やぁ、定治。おいおい、そんな顔をして睨まないでおくれよ。怖くて震え上がってしまう」

 

「……何が目的だクソ邪神」

 

「ハハハ、私の事をよく知っているキミがそれを聞くのかい?私が求めるのは混沌、それだけさ」

 

俺の問いに対してクソ邪神は笑ってまともに取り合う気がない。全く、やっぱりこの前あれだけじゃ済ますんじゃなかった。

 

「まぁた何時ものか、何回潰せば止めんだよソレ。ッ!?ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)!!」

 

クソ邪神に苛立ちながらルールブックを取り出した時、殺気を感じ取った俺は直ぐさま障壁を貼る。障壁を貼った直後、俺に向かって光の槍が放たれる。光の槍が障壁によって防がれたのを確認した後、俺は槍が投げられた方向を見る。そこには何枚もの翼を持った男の姿があった。

 

あの翼、デブゥエルさんと夕麻ちゃんについてた翼と同じだな……アイツ堕天使か?

 

俺に向かって光の槍を投げた男は空中に浮かびながら自らの攻撃を防いでみせた俺を見て興味深そうに笑みを浮かべる。

 

「ほう、貴様がナイの言っていた男か。中々、面白い人間がいるではないか」

 

男はそう言うと片手に持っていた何かをこちらに向かって無造作に放り投げる。

 

「こんな事なら私がこちらにいれば良かった。こちらはハズレだったぞ。なぁ、ナイ」

 

「イリナ!ゼノヴィア!」

 

一誠の声と同時に俺は男が無造作に投げたものが何なのかわかった。あれは傷ついたイリナとゼノヴィアだ。ゼノヴィアはまだ軽症だがイリナの方は重症だ。早く手当てしないとマズイなアレは……。

 

男はイリナとゼノヴィアをつまらなさそうに見た後、クソ邪神へと同意を求めるとクソ邪神は男の言うことに微笑みながら頷いて口を開く。

 

「ええ、仰しゃる通りですコカビエルさん。教会のエクスカリバー使いは中々の戦士と聞いていたので少し期待していたのですがねぇ」

 

頷くクソ邪神を見て俺が苛立ち紛れに舌打ちをすると、コカビエルは俺をククッと嘲笑った後、自身とバルパー、そして神父の下に魔法陣を展開する。

 

「ソイツらは返してやる。今の内に準備を整えておくことだ。3日後、駒王学園にて会おう定治とやら。期待してるぞ?精々私を楽しませてくれ」

 

俺を嘲笑いながらその姿を消す。後には障壁越しにクソ邪神だけが残るとクソ邪神は悪戯をする子供のような笑みを浮かべて俺に話しかける。

 

「さて、彼らも帰ったことだし、話でもしようじゃないか定治。そうだな、先ずは私の本来の目的の内容でも話すとでもしよう。実はね定治、私の本来の目的は「一誠、俺ちょっと用事できたからイリナとゼノヴィアの事をアーシアちゃんの所に送ってやってくれ」……?」

 

「え、お、おう。どうしたんだ定治?」

 

「ちょっとアイツをシメてくる。」

 

俺は子供のような笑みを浮かべながら話すクソ邪神の言葉を遮るように一誠に頼むと一誠は戸惑いながらも了承してくれる。

 

足に魔力を付与する(ENCHANT LEG)

 

「あ、ヤバい。定治のあのチート魔術の事忘れてた」

 

魔力を込められた足を見てクソ邪神は顔をヒクつかせながら顔から滝のような汗を垂れ流す。この魔術は俺が独自に編み出した魔術だ。コイツのヤバさ、テメェはよく知ってるよなぁ?クソ邪神?

 

「まったく……何時も何時も面倒ごと引き起こしやがってぇ……!!オラァ!!」

 

障壁と魔力が付与さらた俺の足がぶつかると、"バリィィィンッ!!"というガラスが砕けるような音と共に障壁が砕け散る。

 

魔力を込められた足の爪先を地面で叩いて調子を確かめながらクソ邪神との距離を詰める。俺の顔は自分でもわかるくらいの笑みを浮かべている。この感触はあの時のダゴンさんとハイドラさんたちを呼んだ時に浮かべてた笑みと同じだな。ダゴンさんとハイドラさんが恐いと言っていた笑みを見てクソ邪神はより一層汗を垂れ流している。うんうん、最近調子乗ってるから一度シメておかないとね?

 

「さ・ぁ・て?お・は・な・し、しようか?」

 

「(……どうしよう……定治のこの笑みメッチャ怖い)」

 

さぁ、どうお話してやろうか。取り敢えず何発か蹴り飛ばさねぇと気が収まる全くしないのは確かだ。俺の顔を見て汗を垂れ流すクソ邪神はウンとだけ呟くと手を上に上げて指を鳴らす。

 

「来るんだシャンタク鳥!」

 

『お呼びでしょうか主よ。おや、主のお気に入りの定治もいるのですね』

 

クソ邪神が指鳴らすと直ぐさまクソ邪神の眷属の一匹、シャンタク鳥が現れる。シャンタク鳥は俺を見て呑気にそう言うがクソ邪神の方はメチャクチャ焦っているようで大慌てでシャンタク鳥の背中に乗る。

 

『そんなことよりシャンタク鳥!今直ぐここを離れるんだ!今の定治は私でもヤバい気がする!とにかく早く!』

 

『夜鬼×10』

 

ハッハッハ、そう易々と逃げられると思うなよクソ邪神。ルールブックに魔力を込め、俺は大きなゲートを作り出しそこから夜鬼が10体現れる。夜鬼は俺の周りを取り囲むと元気一杯に手を上げる。

 

『オイッスー!!』×10

 

『オイィィィッスゥゥゥゥ!!ヤッさんたち!あそこのシャンタク鳥までお願いします!』

 

『あいよぉ!!』×10

 

元気よく話す夜鬼たちに俺は元気一杯に返してから夜鬼のヤッさんたちの一匹の背中に飛び乗り、ヤッさんたちにお願いするとヤッさんたちは了承してくれてシャンタク鳥に向かって飛行する。

 

『ギャ、ギャァァァァ!?や、夜鬼だぁぁぁぁ!!』

 

『容赦なくシャンタク鳥の天敵呼んだぁぁぁぁ!?は、早くするんだシャンタク鳥!』

 

シャンタク鳥は天敵の夜鬼を見て絶叫しながら急いで飛び立ち、俺たちから離れようとするので俺たちも負けじと逃さないように飛んで追い始める。絶対に逃さねぇからな!!

 

『待ァてやこんのクソ邪神がぁぁぁぁ!!いっつもいっつも面倒ごと引き起こしやがってぇぇぇぇ!!ついこの前も別の県でよくわからないアホの教団にクトーニアンの召喚方法教えたばっかりじゃねぇかぁぁぁ!!クトーニアンさん卵身籠っててメチャクチャ機嫌悪くて危うく街一個滅ぼすところだったんだぞ!教団ぶっ潰すのよりクトーニアンさんにどうにか帰ってもらうように説得する方がメチャクチャ大変だったんだぞテメェ!ていうかあの後何故か俺がシュド=メルさんに呼び出されて怒られたんだぞ!"新たな生命の誕生が起きようとしてるのに何勝手に呼び出してんだこのドアホォ!!"って何で俺が言われなきゃなんねぇんだよぉぉぉ!?俺悪く無ぇだろぉぉぉ!?』

 

「ま、待つんだ定治!その件はキミ好みの熟女紹介してチャラにしたはずだろう!?」

 

「ああ紹介して貰ったよ!だけどなぁ……!」

 

激怒しながら追いかける俺に向かってクソ邪神が必死に返答をする。ああそういえばあの後お前をシメた後にそんな事約束させたっけなぁ!だけどなぁ!!

 

「あれギリシャ神話の女神ヘラじゃねぇぇぇかぁぁぁ!!よく知らずにナンパしたからゼウスに死ぬほど追いかけられるハメになったじゃねぇかこのボケェ!!」

 

「美女だっただろう!?いい感じに熟れてて美人だっただろう!?何が不満だったんだい!?」

 

不満しかねぇんだよこの野郎ォ!!何発雷撃たれたと思ってんだボケェ!ホントに死にかけたわ!マジでテンパっててヤバかったんだぞアレ!

 

ていうか実はあれ女神ヘラが"浮気されるこっちの身も身をもって知れよゼウス"的なヤツで俺当て馬にされただけだったしなぁ!!

 

ていうかさぁ!女神ヘラって神話を見るにヤバい履歴しかねぇじゃん!いくら美しい熟女でもそういうのは俺ムリなんだよこのボケェ!

 

もう腹立つ!今までのツケ纏めてボコボコにしてやる!残機一くらい減らせやクソ邪神!そうと決まればぶっ殺す!!よく使う方の神話式魔術じゃダメだな!アイツは神話式魔術は俺より精通してるから今回は悪魔式魔術で殺す!!魔力を指先に込めて炎に変換!そして発射ァ!!

 

「いくら美人でも厄ネタ持ちの美女とか嫌に決まってんだろボケェ!死ねやオラァ!!」

 

「あっぶな!?」

 

チィッ!避けたか!だけどまだまだ撃てるぞ!炎、氷、雷!どんどんいくぞゴラァ!!

 

「さぁ死ね!今すぐ死ね!どうせ今回も碌な事じゃねぇんだろぉ!?とりあえず死んどけやオラァ!」

 

「おわっ!?ちょっと掠った!?ま、待つんだ定治!今回のはキミの為に動いてるん「嘘つくな死ね!」あっぶな!?」

 

チッ!中々直撃しねぇ!当てるまで、ていうかアイツ一回ぶっ飛ばすまで追い続けてやる!!

 

 

ギャーギャー喚きながら追われ追う二人を一誠と匙はポカンとした様子で眺めていた。もう定治とニャルラトホテップは点ほどにしか見えないはずなのだが一誠と匙はなんとも言えない表情でニャルラトホテップと定治がいる方向を眺める。

 

そして眺めていた二人の内、匙が定治とニャルラトホテップの姿が点すら見えなくなった後にボソリと呟く。

 

「……兵藤、さっきまであんなに空気だったのに……いきなりこうなって、俺何て言えばいいのかわかんねぇよ」

 

なんとも言えない表情で呟く匙に同じくなんとも言えない表情を浮かべた一誠がボソリと呟く。

 

「……今後定治と関わるんならこういうのしょっちゅう起きると思うぞ。とりあえず、イリナとゼノヴィアを部長たちの元まで運ぶぞ匙。ゼノヴィアは軽症だけどイリナの方は重症だから」

 

「……おう」

 

二人は何とも言えない表情でイリナとゼノヴィアを担ぎ、木場を連れてアーシアの元へと向かうのだった。




適当な魔術講座

足に魔力を付与する
定治独自のオリジナル魔術。効果は魔力を込めた分だけ相手を守る装甲、障壁などの守りを貫通、もしくは撃ち破る事のできる魔術。ぶっちゃけチートです。効く相手にはとことん効くが効かない相手には大して意味のない魔術でもある。

適当な神話生物講座

シャンタク鳥
宇宙空間を飛行可能とする生物で乗ってるとうっかり白痴の魔王の元へと運んでいってしまうようだ。洞窟に巣を作る為、翼は霜と硝石にまみれている。夜鬼を極端に恐れており、彼らに出会うと直ぐさま逃げてしまうらしい。

SANチェック 0/1D6

夜鬼
旧き神ノーデンスに仕える生物。それほど知性のある生物ではないがある種の言語を理解する事が可能とされている。夜鬼の特徴的な攻撃としてくすぐりというものがあり、あまり闘いを好む種族では無いようだ。しかし、ノーデンスのために侵入者を最も悲惨で恐ろしい場所へドンへと連れて行くこともあるらしい。

0/1D6

補足、フリードが定治の事を頭のおかしい狂人と呼ぶ理由

本作9話、空気を読みたくない時だってあるにて定治が故レイナーレの前で一誠のアレを出す

レイナーレ、顔を真っ赤にしながら治療の終わったフリードに話す

フリード「イカれてますやん……」

こんな感じです。これは定治が悪い。フリードくんはそんなに悪くないですねぇ……。ハイスクールD×Dきってのイカれ野郎フリードくんにこう言われる定治、これは間違いなく狂人ですね(確信

ん?こんな時間に誰だろう……?はーい?

定治「死ね!」

"ズドンッ!!"

ゴファ!?……ガクッ

O(:3 )~ ('、3_ヽ)_


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VSコカビエル&ナイ神父

ハイ、もうコカビエル戦です。凄い巻いてますね、ゴメンナサイ。

原作3巻までの話は後2〜4話くらいで終わる予定です。

それではどうぞ。


コカビエル達との会合から3日後、オカルト研究部の部員たちはコカビエルたちとの決戦の前に数分だけだがミーティングを行っていた。

 

「ーーーという訳で私達の目的は魔王様たちの援軍が来るまでの時間稼ぎよ。何か質問はあるかしら?」

 

リアスからの話を聞き、現在ゼノヴィアとイリナの看護をしているアーシア以外のメンバーは首を横に振る。メンバーの反応を見たリアスは一度だけ頷いてから口を開く。

 

「どうやら無いようね。それじゃあ行くわよ皆!!」

 

「「「「ハイッ!!」」」」

 

リアスに返事をしてメンバーがオカルト研究部から出ようとした時、リアスは不機嫌そうな表情を浮かべる定治に声をかける。

 

「定治」

 

「なんスか部長?」

 

リアスに声をかけられ振り返る定治の顔はずっと追いかけていたニャルラトホテップになんやかんやあって逃げられたため、未だに不機嫌そうな表情を浮かべている。そんな定治を見てリアスは困ったようにため息をついてしまう。

 

「そんなあからさまに不機嫌な顔を見せないでちょうだい。定治、今回もあなたの力を借りる事になるわ。悪魔でもなく教会の者でもないのに私達に力を貸してくれると言ってくれて本当にありがとう。それが言いたかっただけよ」

 

「……うっす」

 

まさか礼を言われるとは思わなかった定治は微笑みながら頭を軽く下げるリアスを見て少し驚いた様子を見せた後、人差し指で頬を掻き、リアスにつられるように頭を下げて部室から出て行った。

 

定治がオカルト研究部の部室から出て旧校舎の廊下を歩いていると、今度は木場が定治に声をかける。

 

「定治くん」

 

「今度は祐斗か、何だ?」

 

定治が木場に声をかけられ歩みを止めると、木場は慎重な面持ちで定治に話を始める。

 

「ごめん、今だからこそ言っておきたい事があってね。……僕の過去については部長から色々聞いてると思う。僕の人生は聖剣に対する憎しみが殆どだった。だけどね、最近は違うんだ」

 

「違う?」

 

木場の話を聞いて定治が首をかしげながら聞くと、木場はうんと頷く。

 

「うん、この学園で定治くんと出会って一緒に遊ぶようになって、それがとても楽しかった、だけど同時にとても申し訳なかったんだ。」

 

最初、木場は定治と遊んだりした日を思い出して楽しそうに笑うのだが、その表情はだんだんとバルパーの計画によって死んでいった仲間の事を思い複雑な物へと変化していく。

 

「あの時、死んでいったみんなも本当はこんな日常を味わえた筈なのに……僕だけがこんな日常を味わっていいんだろうかって。定治くん、いいのかな?僕には守りたいと思う人達がいて、良い友人がいて、今の生活にとても満足している。僕は、今こんなに幸せでいいのかな?」

 

躊躇いがちに笑う木場の言葉を聞き、定治は静かに木場の元まで近づくと木場の頭をスパーンッ!と叩く。

 

「何フラグっぽい事言ってんだ祐斗」

 

いきなり頭を叩かれ戸惑う木場を見て、定治は木場の肩に手を置いて自らが思った事を口にする。

 

「……まぁ、俺ならその死んでいった奴らの分まで楽しむけどな。人生一杯に楽しんで、そんであの世でソイツらに自慢気に話す。たぶんぶっ飛ばされるだろうけど、それでいいのさ。そんなモンでいいのさ。少なくとも今のお前みたいにそんなに重く考える必要なんて無いと思う……ぜ」

 

普段のヘラヘラとした笑いとは違う優しい微笑みを浮かべながら自らの考えを語る定治だが、最後の方で何故か言葉を失う。定治の視界にはあたたかい目で定治を見つめるリアスたちの姿がいた為である。定治は自身の顔が熱くなるのを感じながらリアスたちに向かって口を開く。

 

「……見てた?」

 

定治が顔をだんだんと真っ赤にしながら聞くと、子猫が頷く。

 

「ハイ、最初から見てましたし、聞いてました。」

 

「いつもフザケてばかりの定治くんもたまには真面目な事を言うんですわね。定治くんの考え、定治くんらしくて中々素敵だと私は思いますわ。ウフフフ」

 

普段定治にお仕置きをして定治に恐れられている朱乃も今回はあたたかい目を定治に送りながら頬に手を当てて微笑む。

 

「私もライザーと闘う日の前にこんな風に言われた事あるのだけれど、普段が普段なだけにビックリするわ。でもそんなあなたも素敵だと思うわよ、定治」

 

「……何て言えば良いのかわかんねぇけど、ウン、普段が普段なだけにギャップもあってカッコ良かったぜ定治」

 

皆から送られるあたたかい目と言葉を聞いて定治の顔は微笑みを浮かべながら熟れたトマトのように真っ赤にしながら湯気を出し、身体は何故か小刻みに震えていた。

 

「……イ」

 

「イ?」

 

顔を真っ赤にし、身体を小刻みに震わせながら定治は静かに呟くと、一誠はキョトンとした表情で首を傾げる。そして定治に限界がやって来る。

 

「イヤァァァァ!!恥ずかじぃぃぃぃ!!みんなが見てる前で何か語っちゃってる俺恥ずがじぃぃぃぃ!!」

 

"バリィィィンッ!!"

 

「定治ゥゥゥゥ!?何やってんだお前ぇぇぇぇ!?いや割とよくやってるわアレ!」

 

定治は顔を真っ赤にしながら全力で駆け出して廊下に並んでいる窓のガラスに身体を突っ込ませる。ガラスをぶち破ったせいで定治の身体のあちこちにガラスの破片が突き刺さるが定治は御構い無しにこの場から逃げるように全力疾走する。ガラスをぶち破り逃げ出す定治を見て叫ぶ一誠の声につられるようにオカルト研究部の一同は定治を追いかけるために駆け出す。そんな一同の中で木場は顔を真っ赤にしながら駆け出す定治を見て、何を思っているのかはわからないが先ほどまでの表情とは違う表情を浮かべていた。

 

「……フフ。定治くん、僕はキミと出会えて、本当によかった」

 

そう言って一同を追いかける木場のその表情には確かな笑みが浮かんでいた。

 

 

身体にガラスの破片が突き刺さり、身体を血塗れにしながら全力疾走していた定治、ひたすらに走っていたお陰でどうにか冷静さを取り戻したようで、全力疾走を止めて立ち止まり目の前にいる敵を見る。定治が目の前の敵を見つめていると遅れてオカルト研究部のメンバーたちも続々とやって来る。

 

やがてオカルト研究部のメンバー全員が出揃うと、この時を待ちわびていたコカビエルが笑みを浮かべながら両腕を広げて一同を歓迎する。

 

「来たか、待ちわびたぞ。ナイ、エクスカリバーは?(……何故あいつは血塗れなんだ?)」

 

「フム、エクスカリバーの完成まではあと数分、といったところですね。(何で定治は血塗れなんだろう……?)」

 

「そうか。ならば手筈通りに頼む(まぁいいか)」

 

「ええ、わかりました。……そら!(まぁなんかノリでガラスか何かをぶち破ったんだろうね)」

 

二人はそれぞれ頭の中で何故定治が血塗れなのか考えていたが直ぐに切り替える。コカビエルが合図を送るとナイ神父は頷いて手の平から比較的大きな火球を作り出し、定治に向けて放つ。

 

「あっぶね!?」

 

ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)

 

ナイ神父から放たれた火球を定治が大きく横に飛んで回避すると、あの程度の火球なら定治は障壁を貼らずに避けると読んだナイ神父は目論見通りと言わんばかりに笑いながら障壁を貼り、オカルト研究部と定治を分断する事に成功させる。砂煙りを上げながら地面に着地した定治はナイ神父の目的が最初から分断であったと気づき苛立ちまぎれに舌打ちをする。

 

「チッ!さっそく分断か!けどなぁクソ邪神、その障壁を俺がブッ壊せること、忘れてねぇか?ていうか今すぐ割ってお前シメるからなぁ!?」

 

勢いよく舌打ちをして定治がナイ神父に殺意を向けながら睨むと、ナイ神父は3日前の事もあってか少し焦りながら定治の言葉を返す。

 

「い、いや、今回は忘れてないさ。ほら、頭上注意だ。」

 

「うおっ!?」

 

少し焦りを浮かべいるナイ神父が定治の頭上より少し上を指差す。ナイ神父の指先につられるように定治がナイ神父の指差した先を見るとそこではコカビエルが光の槍を作り出し定治に向けて投擲しており、定治は再び横に大きく飛んでコカビエルの作り出した光の槍を躱す。

 

見事光の槍を躱した定治を見てコカビエルは満足そうに笑いながら定治を指差す。

 

「そういう訳だ。貴様の相手は私、さぁ始めようか」

 

治癒(HEELING)……チッ、障壁ぶっ壊してあのクソ邪神シメるためには、どうやらテメェをぶっ飛ばしてからじゃないとダメみたいだな。……ルールブック!」

 

定治は身体に突き刺さるガラスの破片を抜いてから治癒の魔術をかけて傷を塞ぐと、目の前の敵をナイ神父の前に倒さなければいけない事を理解し、舌打ちをしながら手元にルールブックを呼び出す。

 

「クク、ヤル気になったようだな。それではまず、腕試しといこう」

 

戦闘態勢に入った定治を見てコカビエルは嬉しそうに笑うと手元に力を込めてある獣を召喚する。コカビエルが召喚し、現れたのは地獄の番犬と名高いケルベロス。コカビエルの命により現れたケルベロスは唸りながら口元から火を溢れ出して定治を睨む。

 

「コイツは私のペットでな。フフフどうだ、中々カワイイだろう?」

 

コカビエルはケルベロスを見て笑いながら自らのペットを定治に自慢する。しかし定治は手をブンブンと振りながらコカビエルの話を全力で否定する。

 

「いやいやいやいや!!全然可愛くなくね!?めっちゃよだれ垂らしてんじゃん!めっちゃ目つき悪いじゃん!めっちゃハァハァ言ってんじゃん!頭三つだから通常の三倍ハァハァ言ってんじゃん!何処がカワイイのソイツ!?」

 

「そうか?……まぁいい。とりあえず最初の相手はコイツだ。さぁ見せてみろ、貴様の力を。」

 

全力で否定する定治を見てコカビエルが不思議そうに首を傾げてからケルベロスに定治を襲うように命令する。

 

「……仕方ねぇ。ケルベロスくん、お前には何の恨みも無ぇけど、とりあえず殺す。悪く思わないでくれよ?」

 

定治は自身に向かって襲いかかるケルベロスの攻撃を躱しながらルールブックを開き、魔力を込めて門を作り出す。

 

『飛行するポリプ』

 

定治の声に応えるように門から翼を持たぬにも関わらず空中を飛ぶ異形の怪物飛行するポリプが四匹現れる。

 

『Heeeeey!!』

 

『Yeah!!』

 

『Hey定治ゥ!調子はどうだーーーい!?』

 

「GURR……!」

 

現れた四匹のポリプの力を感じ取り、唸りながらポリプたちを警戒する。一方でヤケに高いテンションで現れたポリプは定治の周りをグルグルと飛び回りながら定治に調子を聞くと、定治は"何回も召喚してるけどこのテンションには馴れねぇ……"と思いながら引き気味に返す。

 

『え、えーと普通だけ『ンーー?ウ・ル・ト・ラ・ハッピー!?ソイツは最高って奴だなァオイ!安心しろ!俺たちもウルトラハッピーだぜぇぇぇ!!』』

 

『『『『HAHAHAHAHA☆』』』』

 

『普通だって言ってんだろォ!?相変わらずテンションクソ高ェなコイツら!?』

 

普通と答えようとした定治の言葉を塞ぐようにポリプが話を被せ、ポリプ一同が明るく笑う。定治は相変わらずのポリプたちのテンションにツッコミを入れるがポリプたちは定治のツッコミを全く聞いておらずグルグルと飛び回りながら定治に再度質問をする。

 

『それで定治ゥ、今日は一体何の用で呼び出したんだーーい?『あそこにいるケルベロスを倒してもらいたくt』フムフム、向こうさんがカワイイ生物を出してきたからこちらもカワイイワタシたちを出して対抗しようというわけだな!わかってるじゃないか定治ゥ!『そんな事言ってねぇ!!』』

 

『オメェらにカワイイ要素あるわけ無ぇだろ!?ケルベロスを倒すのに呼んだんだよ!』

 

ポリプの質問に答えようとする定治だが再びポリプの言葉に被せられ最後まで言わせてもらえない。若干キレかけている定治を無視してポリプたちは勝手に話をし始める。

 

『Heyジョニー、カワイイ対決であのワンちゃんが私たちに勝てるわけ無いじゃない!『話聞けよ!!』カワイイ対決なんてしたらワンちゃんが可愛そうでしょう?』

 

定治、キレながらポリプたちに向かって叫ぶがポリプたちはこれを華麗にスルーし、話を続ける。

 

『おおっと、それもそうだなエリー!』

 

『ワタシたちよりカワイイ生物なんてワタシにはショゴスくんくらいしか思い浮かばないね!』

 

『ウンウン、ピーターの言う通りだ!全く、古の者共はなんであんなカワイイ生物達を奴隷にしたのか私にはわかりかねるね!』

 

『そんなの決まってるじゃないかマイケル、彼らは好きなものほどイジめたくなっちゃう思春期の子供みたいなヤツらだからさ!まぁイジメの仕返しで滅ぼされかけるとは夢にも思ってなかっただろうけどな!』

 

『『『『HAHAHAHAHA☆』』』』

 

『いいから早よケルベロス倒しにいけやボケェ!!』

 

一斉に笑うポリプたちに我慢の限界がやって来つつある定治は足に魔力を込め始める。足に魔力を込め始めた定治を見てポリプたちは明るく笑いながら定治を宥めさせて目の前で唸るケルベロスを見る。

 

『オーケーオーケー!わかってるよ定治ゥ!目の前のワンちゃんで遊べばいいんだろう?』

 

『任せとけって!遊ぶのは得意なんだ!』

 

『おいおいマイケル、キミが遊んでるのはベッドの上でだろう?』

 

『嘘言わないでちょうだいジョニー、私達の所にベッドなんて無いでしょう?』

 

『おいおい、マジレスはやめてくれよエリー!』

 

『『『『HAHAHAHAHA☆』』』』

 

『お前らフリーダムすぎんだろぉぉぉぉ!!いいから早よ行けやぁぁぁぁ!!』

 

目的がわかっているにも関わらず話を始めて笑うポリプたちに向かって定治が絶叫する。絶叫する定治と笑うポリプを見て好機と判断したケルベロスが定治に向かって駆け出しその牙を定治に向ける。

 

「GURRRRRRR!!」

 

『あっぶね!?ほら来たじゃん!もう向こうから襲いかかって来たじゃん!変な会話してないでさっさと闘ってよぉ!いや闘って下さいお願いします!』

 

定治は襲いかかるケルベロスの牙を何とか避けるが、ケルベロスは諦めず襲いかかっていく。定治はポリプたちに向かって叫びながら襲いかかるケルベロスの攻撃を土下座しながら回避する。ケルベロスの攻撃を躱しながら土下座してお願いする定治の姿を見て、ポリプたちは心打たれたようで明るい笑いを一旦止める。

 

『Oh……ジャパニーズDO☆GE☆ZA☆』

 

『It's so cool……うーん参ったわね、こんな事されたらちゃんとやるしかないじゃない!』

 

『定治がDO☆GE☆ZA☆をしたんだ。そろそろ答えてあげようかね!』

 

『さて、それじゃあ気を引き締め直して行こうか!マイケル!ピーター!エリー!フォーメーションKMZNARSだ!』

 

『『『オーケー!!』』』

 

ようやくやる気になったポリプたちは二匹一組でケルベロスを挟むように辺りを飛ぶ。

 

『定治ゥ!わかってるね!』

 

『最初からやってよぉ!!ナーク=ティトの障壁の創造(CREATE BARRIER OF NAACH-TITH)!!』

 

やる気になったポリプたちの一匹が定治に声をかけると定治は叫びながらポリプの意図を理解し、ケルベロスの頭を踏みつけ、その勢いでケルベロスから距離をとってからポリプとケルベロスを包むように障壁を貼る。

 

「GUR……?」

 

『ワタシたちは左回転』

 

『そうするとワタシたちは右回転か、オーケー!!』

 

予期せぬ事に困惑するケルベロスを無視し、ポリプたちは打ち合わせを終え、ポリプたちの持つ風を操る力を用いて片方は右回転、もう片方は左回転に竜巻を巻き起こす。

 

『『『『HeyHeeeeeey!!ワンちゃんHeyHeeeeey!!』』』』

 

二組の起こす竜巻の回転圧力、二組はそれぞれ別の向きで回転し、その間にいるケルベロスの所には二つの竜巻によって起こる真空状態の破壊空間に巻き込まれる。障壁によって閉じ込められたケルベロスにこの破壊空間から逃げる術は無く、その身体は数十秒後にはグチャグチャの肉塊へとなってしまう。

 

『『『『ワンちゃんのミンチいっちょ完成!!』』』』

 

ケルベロスを容易く倒し、ポリプたちは明るい声を出しながらも竜巻を止めようとはしない。ポリプたちはこれから定治が行う事をよく知っているのか定治に向かって声を出す。

 

『『『『さぁて定治ゥ!お次はァ?』』』』

 

『障壁解除!コカなんとかさん、暴風注意、ってな!!』

 

ポリプの声に応えるように定治が貼られていた障壁を解除する。ポリプもそれをわかっていたようで二つの竜巻の向きをコカビエルへと向け、コカビエルに襲いかかる。

 

「フン!!」

 

コカビエルは両腕を使ってポリプごと竜巻を吹き飛ばす。だが竜巻が消え去ったすぐ後に突如として忌まわしき狩人のユキちゃんが襲いかかる。

 

『オォォォ!!』

 

「クッ……!さっきの暴風は囮か!……何ッ!?」

 

襲いかかるユキちゃんの攻撃をどうにか受け流したコカビエルが定治がいる方向を見るとその表情は驚きのモノへと変わる。コカビエルの視界には確かにそこにいた筈の定治の姿はそこには無く、代わりにポリプたちが現れた門とは別に二つの門が置かれていた。

 

「よお」

 

「なっ!?」

 

『確かに送り届け完了しましたよ定治様』

 

ここで後ろに気配を感じとったコカビエルが振り向くとそこにはビヤーキーに乗る定治の姿が目に入る。定治は拳に魔力を込めており、驚くコカビエルを気にせず魔術を発動する。

 

ヨグ=ソトースの拳(FIST OF YOG-SOTHOTH)ッ!!」

 

定治が魔力を込めながら魔術の名を叫ぶと、声と共に目に見えぬ一撃が放たれる。

 

「ぐっ!?おぉぉぉ!?」

 

驚きながらも両腕に力を込めて定治の放つヨグ=ソトースの拳を防ごうとするコカビエル。見えぬ一撃とコカビエルの両腕がぶつかり、あたりに衝撃と爆音が響いていく。

 

「ぶっっっっ飛ばす!!」

 

互いに負けじと力を込めてぶつかる中、コカビエルの身体が定治の放つヨグ=ソトースの拳の一撃に耐え切れず徐々に後退していく。そしてこの競り合いに決着がついた。定治の雄叫びと共にコカビエルが競り負け、その身体は吹き飛ばされ校舎に叩きつけられた。

 

 

定治がコカビエルに競り勝った時、コカビエルが競り負けその身体が校舎に叩きつけられたのを見ていたナイ神父は周りをリアスたちに囲まれているに構わず何とも楽しそうに笑っていた。

 

「おお、コカビエルさんに競り勝つか。さすがは定治だね。……おっと」

 

「……余所見とは随分余裕ね」

 

笑うナイ神父はリアスが放った巨大な消滅の魔力の弾丸をリアスなど見向きもせず指先を振るだけでその巨大な消滅の魔力の弾丸を弾き飛ばす。その様子を見て、相手にされていない事を理解したリアスがナイ神父を睨むとナイ神父は笑いながら困ったように溜息をつく。

 

「おやおや、怖いお嬢さんだ。……こちらも、ね」

 

そう言ったナイ神父の視線の先には雷を放つ朱乃の姿があり、ナイ神父はリアスの時と同様に指先を振って朱乃の雷を弾き飛ばす。

 

「私たちの攻撃をこうも容易く……!?リアス!」

 

「ええ!」

 

「加勢します」

 

「合わせるよ小猫ちゃん!」

 

「コイツ、強い!」

 

"BOOST!!"

 

オカルト研究部の中でも屈指の実力を持つ二人の一撃を容易くいなすナイ神父を見てリアスたちは各々の力を合わせてナイ神父に襲いかかる。リアスが渾身の一撃を放つため魔力を貯め始めると先ず小猫と木場がナイ神父に襲いかかる。

 

「ぶっ飛ばします」

 

「遅いよ」

 

「ッ!?」

 

最初に小猫がナイ神父に殴りかかるがナイ神父はその動きを読み、小猫の手首を掴んで力任せに木場へと投げ飛ばす。

 

「そらっ!」

 

「小猫ちゃん!!」

 

「いきますわよッ!!」

 

投げ飛ばされた小猫を木場はどうにか受け止める。木場は攻められなかったが、小猫が吹き飛ばされた直後に朱乃がナイ神父に雷を放つ。ナイ神父は迫る朱乃の雷を見ても驚かずニヤリと笑い、驚く程のスピードで魔法陣を生み出す。

 

「その雷、そのままお返ししよう」

 

「キャアアアッ!?」

 

朱乃の放った雷がナイ神父の生み出した魔法陣にぶつかると朱乃の放った雷は跳ね返され朱乃に直撃をする。目の前のナイ神父を倒すために放った雷は朱乃を気絶させるには十分だったようで朱乃は膝から崩れ落ちるように気絶する。

 

「朱乃ッ!?このぉぉぉ!!」

 

崩れ落ちる朱乃を見てリアスの怒りは最高潮に達し、先ほどよりはるかに強力な消滅の魔力の弾丸を生み出してナイ神父に放とうとする。

 

「残念だけど、そうはさせない。支配(DOMINATE)

 

「なっ!?…………ア」

 

リアスが魔力の弾丸を放とうとした直後、ナイ神父が恐ろしい速さでリアスの目の前に現れ支配の魔術をかける。支配の魔術をかけられ、リアスの目には生気が失われ、物言わぬ人形のようになってしまう。

 

「部長!?てめぇぇぇ!!」

 

"EXPLOSION!!"

 

「フフフ」

 

リアスに何かされた事に気づいた一誠は激昂した表情で貯めた力を解放してナイ神父に襲いかかるがナイ神父は微笑みながら手の平に魔力を込めて一誠の足に向けると、一誠の足はまるで地中に埋められたかのように動かなくなってしまう。

 

「動かない方がいい。君たちの主の命は今、私のモノなんだ」

 

「くっ……!」

 

ナイ神父はリアスの身体を操り、リアスが生み出した巨大な消滅の魔力の弾丸を消させてからリアスにナイフを手渡し、刃をリアス自身の首へと向けさせる。機会を見はからって襲いかかろうとした木場だがナイ神父の警告にその場から動けずにいた。ナイ神父は焦る木場を見て静かに笑う。

 

「フフフ、安心するといい。少しの間だけさ。今の私の役目はエクスカリバーの完成、そして定治とコカビエルさんの対決が終わるまでの時間稼ぎだからね」

 

ナイ神父が笑いながらそう言っていると、ナイ神父は何かに気づいたようで先ほどよりも楽しそうな笑みを浮かべる。

 

「ほら、話をしてみればどうやら完成したみたいだよ。」

 

ナイ神父の声と同時にバルパー・ガリレイの錬金術が終わりを告げ、複数のエクスカリバーの芯を混ぜ合わせた新たなエクスカリバーがここに誕生した。




今回の話でナイ神父が呪文の名を言わずに使用した魔術がありますが、それはクトゥルフ神話式魔術ではなく、何処かの星にて存在する魔術、というモノなので名前などはつけていません。ご了承下さい。

今回の話を書いてて一番思った事。

作者『書いといて何だけど……ポリプたちは何が面白くて笑ってるんだ?(困惑)』

数分後作者

作者『まぁいいか!!』

いつだって作者は超テキトー。ゴメンナサイね。


テキトーな神話生物講座

飛行するポリプ
7億5千万年に宇宙から地球に飛来した生物。地球にいくつもの都市を築き繁栄したのだがイスにより地下に追いやられた。しかし白亜紀の終わり頃にイスの文明を滅ぼしたとされている。姿形は作者の文章力では再現できそうに無いです、ゴメンナサイ。

SANチェック1D3/1D20


テキトーな魔術講座

ヨグ=ソトースの拳
対象に目に見えない一撃を与える呪文。より多くの魔力を込めるごとにその威力も上がっていく。拳を受けたものは使い手と逆方向に吹き飛ばされ意識不明になってしまうこともある。

支配
対象の意思を呪文の使い手の思い通りにする恐ろしい魔術。定治やニャルラトホテップといったデータ上とんでもないPOWを持つ者達が使うとシャレにならないくらいヤバい。


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VSコカビエル&ナイ神父 2

今まで更新してなくてすみませんでした。

ペルソナ5ずっとやってました!コミュオールMaxにして二週目が終わったので更新します。

相変わらずヨシツネは強かったです。

※下ネタ注意


ヨグ=ソトースの拳を受け、校舎に叩きつけられたコカビエル、壁に叩きつけられた顔を俯かせるその姿を定治とビヤーキーは注意深く見つめる。

 

『定治様』

 

『ああ、わかってる』

 

二人がほんの僅かなやり取りをしているとコカビエルの身体が動き始め、その身体からは徐々に強力な力の奔流を溢れ出させ、口から笑みが浮かんでいた。

 

「フフフ、フハ、フハ、フハハハハハハ!!素晴らしい!実に素晴らしい」

 

「……コイツ」

 

『定治様、彼奴の力、先ほどまでとは比べ物になりません、ハスター様ほどではありませんが十分脅威になるでしょう。決して油断なさらぬよう』

 

「……あいよ」

 

コカビエルから溢れ出る力にビヤーキーが反応し定治に注意を促そうとするが既に定治はルールブックに魔力を込め終えており自分の前に向かって飛ぶコカビエルの後ろに門を設置していた。

 

「さあ第二ラウンドといこうか!グォッ!?」

 

"クスクス、クスクス"

 

好戦的な笑みを浮かべて定治に近寄ろうとするコカビエルだがその歩みは突如として聞こえてきた人を小馬鹿にしたようなクスクスという笑い声と同時に何者かにより止められてしまう。

 

何者かに動きを阻害され驚きもがくコカビエルを見て定治は不意打ちが上手くいったのを確信し、ほくそ笑んで呼び出した神話生物の名を呼ぶ。

 

「ーー星の精」

 

『やあやあ久しぶりだね定治。ま、君に僕の姿は見えてないんだろうけどね、クスクスクス』

 

名を呼ばれた見えざる生物、星の精は久しぶりに会えた定治を見て先ほどまでの人を小馬鹿にしたような笑いでは無く、仲の良い友人と下らない話をしているような楽しそうな笑い声を発しながらかぎ爪でコカビエルを拘束する。

 

「くっ!身動きがとれん!?これは、近くに何かいるのか!?」

 

星の精により拘束され困惑するコカビエルの一方で話しかけられた定治はというと星の精の言葉に片手を軽く上げて返事をした後、コカビエルに人差し指を向けるてから親指で自分の首を掻っ切るような仕草を見せる。

 

「ま、そんなところだ。悪ィがお前の力は厄介そうなんでな。お前には力を一切震わせる事無く一方的に倒させてもらうぜ。さぁほっちゃん、吸血をやってくれ」

 

大抵の相手に効く攻撃方法がこの星の精による吸血である。星の精に組みつかれ力が上手く入らないであろうコカビエルにはこの拘束を解く事ができずに致死量まで血を吸い尽くされるだろうと踏んだ定治は星の精に号令を下す。

 

『りょーかい。ハーイ、ちょっとチクっとしますよ』

 

定治の号令を聞いて星の精は吸血を開始するため触手をコカビエルの身体に刺しこむ。

 

そしてあまり良くない音がコカビエルの下半身から聞こえてしまう。

 

"ズブリ"

 

「アッーーーー!!」

 

「……ん?……んー?……ハァ!?」

 

コカビエルの上げた苦悶の声と下半身から聞こえた音、最初定治は何かわからず戸惑っていたが徐々に何が起こったのかを理解し始め表情が驚愕のものへとガラリと変わる。定治の驚きはかなりのものようで上手く言葉が発せなくなってしまう程である。

 

「ちょ、おま!え!?はぁ!?」

 

『まさか…まさか…!?』

 

上手く言葉が出せなくなった定治の一方でビヤーキーは定治のように言葉を発せなくなってはいないが身体から嫌な汗を垂れ流しながらガクガクと震え始める。

 

そして定治とビヤーキーを驚愕させた星の精はというとクスクスと笑っていた。

 

『あれ?刺すとこ間違えちゃった。まぁいいかな?』

 

『よくねぇよ!!どこ刺してんだお前!?』

 

クスクスと笑って刺すところを間違えたという星の精に言葉がしっかりと発せるようになった定治が若干キレ気味でツッコむと星の精は定治の問いに対してキョトンとしたように声を出す。

 

『え?アナ『『アウトーーッ!!』』大丈夫大丈夫、吸えるから。『『何を!?』』ん?』

 

『血と、あと『『ストーーーップ!!』』えー』

 

星の精が言おうとした事を定治とビヤーキーは大声を出して聞こえないようにする。二人も薄々感づいてはいたが、聞いてはいけない、聞いたらもうツッコみきれない、それだけは防がなければいけない。その思いだけが二人を掻き立てていた。

 

『ちょっとタイム!マジでタイム!』

 

『えー』

 

『私からもお願いします!いやほんとに!状況が整理できていないんです!頼みますから落ち着く時間を下さい!』

 

『仕方ないなぁ、ちょっとだけだよ?』

 

『ハイ!ありがとうございます!』

 

二人がまず思ったのはまず最初に落ち着こう、そして状況を整理しよう。その為には星の精に少し時間を貰わなければいけないそう思った二人は星の精に必死に落ち着く時間が欲しいと頼み込むとどうにか了承の返事をもらう事ができ、二人は急いで離れたところに移動する。

 

「くっ!この程度の束縛でこの俺を止められるとでも『ハイ出し入れしちゃいますねー』アッーーー!」

 

『『………』』

 

再び聞こえたコカビエルの苦悶の声、二人は何も言わずに離れた後直ぐに話を始める。

 

『定治様!何ですかアレ!?私の記憶では星の精は血しか吸わない筈では!?何であんなに人の『それ以上言うなバカ野郎!』扱いを心得ているのですか!?』

 

『俺が知るか!俺だってアイツが血以外にウ『それ以上いけません定治様!』を吸えるなんて始めて知ったぞ!?』

 

『落ち着きなさい貴方達!』

 

『ユキちゃん!?だってさぁ!アレだよ!?あそこに触手ぶっ刺してんだよ!?落ち着けるわけないだろ!?』

 

お互いがお互いのOUTの発言を塞いでいると先ほど呼び出していた忌まわしき狩人のユキちゃんが近づき二人を一喝する。

 

『まったく、あれくらいの事で驚かないの。結局は血を吸うのだからどこ刺しても同じよ。一々どこ刺したなんて気にしないの、男らしくないわよ!』

 

『『(いやめっちゃ気にするでしょ……)』』

 

ユキちゃんの言葉により二人は未だ困惑はしているもののどうにかゆっくりと落ち着きを取り戻す。

 

落ち着きを取り戻す事ができた定治だがふとある事に気づき、ユキちゃんに尋ねる。

 

『ん?そういえばユキちゃん、ポリプ達は何処?さっきから見ないんだけど』

 

『ああ、あの子達なら帰ったわよ。テンション維持できなくなったからって』

 

『やっぱアイツらクソフリーダムだなオイ!』

 

『お?ここが弱いんか?ここがええんか?クスクスクス』

 

「アッーーーー!!」

 

『ほっちゃんは少しは自重してぇぇぇ!!もう捌き切れないのぉぉぉ!!』

 

 

定治が絶叫している頃、一誠たちはというとナイ神父に軽くあしらわれ、新たなエクスカリバーが生まれるのを阻止する事ができずにいた。

 

「すっげぇ……!これが複数の芯を掛け合わせた新しいエクスカリバー……!」

 

「エクス、カリバー……ッ!!」

 

バルパーから新たなエクスカリバーを受け取りフリードは子供のように目を輝かせながら手に取ったエクスカリバーを眺める。その光景を木場が憎々しげに見ているが直ぐ近くには自分と仲間が総出でかかっても手も足も出ないナイ神父がいるため迂闊にエクスカリバーの元へ行けない。すると木場の内心に気づいたのかナイ神父は心底面白そうにに笑いながら彼の元へと歩み寄る。

 

「行くといい、君が憎むエクスカリバーだ。好きなだけ闘うといいさ」

 

「………ッ!!」

 

ナイ神父はにこやかな笑みを浮かべながら木場にエクスカリバーの元へと向かうように木場の背中を押す。木場はナイ神父の言葉に揺れるが魔剣をナイ神父の首を斬ろうと動いた。

 

「いい太刀筋だね、だが無意味だよ」

 

「なっ!?だけど!!」

 

「言ったはずだよ、無意味だと」

 

だがナイ神父の首を斬ろうとした魔剣はナイ神父の首には届かず彼の指に挟まれ止められる。自らの剣をこのような形に止められ驚く木場だがその後直ぐにもう片方の手に魔剣を生み出し斬りかかる。だがもう片方の魔剣はナイ神父が人指し指で弾くだけで粉々に砕け散ってしまった。

 

「まったく聞き分けの悪い子だ。私はキミとエクスカリバーの闘いを決して邪魔しないし邪魔させないよ。ん?どうしてかって?私は一部の例外を除いて、面白かったらそれで良いんだ。うーん、これじゃあ納得できないかな?ならこうしよう、キミが行かないなら私はキミの仲間で面白いことをしようじゃないか、ああ面白い事って言うのは楽には殺さないっていう意味だよ。わかるね?うん、これならキミも言い訳ができるね。今の仲間を守る為に、そして過去の仲間の無念を晴らす為に行くんだ。さぁ、行きなさい」

 

「…………」

 

「そう、それで良いんだ」

 

ナイ神父は木場にエクスカリバーの元へ向かわせる言葉に木場は悩みに悩み抜き、その後魔剣を力強く握りしめてフリードの元へと向かっていくとナイ神父は満足そうに笑う。しかし近くにいるであろう一誠の声を聞くとナイ神父は表情を少しの間だけ騒音を聞くような不機嫌な顔を浮かべる。

 

「待てよ木場!俺も行く!」

 

「ハァ…キミはダメだ」

 

ナイ神父が声のする方を向くとそこにはナイ神父の予想通りナイ神父がかけた魔術により動けなくなっているにも関わらず必死に木場の元へと向かう一誠の姿があった。ナイ神父はもがく一誠を見てため息をついてから一誠の前に瞬間移動のような速さで一誠の前に行くと一誠の腹に掌打を打ち込む。

 

「ゲハァッ!?オ、オブッ…!?」

 

ナイ神父が打ち込んだ掌打は一誠の身体内部に深く響き、一誠はその場で蹲り、胃の中のものを吐き出してしまう。蹲る一誠をナイ神父は見下ろして口を開く。

 

「今回の劇にキミの出番は無い。この劇の登場人物は聖剣を憎む魔剣使いと新たなエクスカリバーだけ、弱い赤龍帝の出番は無いよ」

 

「ハァ…ハァ…劇、だと?」

 

蹲る一誠にナイ神父が言うと一誠は口元を拭いながらナイ神父の言った事が気になり尋ねるとナイ神父は先ほどまでの表情から一変し、一誠に向けてとても楽しそうな笑みを向けながら口を開く。

 

「ああ、そうだよ。面白そうだと思わないかい?聖剣を望んだが手に入れられず、仲間を殺されて悪魔へと堕ちた少年が顔に憎悪を浮かべてチャチな魔剣を携えエクスカリバーへと挑む。フフフ、見ごたえがありそうだろう?」

 

この木場の過去、思いを劇のいいスパイス程度にしか思ってないナイ神父の発言に一誠は激怒し、目の前にいる相手が格上の存在だとわかりつつも、怒りのままにナイ神父の足を力の限り掴む。

 

「ふざけんな!木場の想いも知らねぇくせに!木場はテメェなんかを楽しませるためにやってんじゃねぇんだよ!」

 

ナイ神父は自らの足を掴む一誠を見てキョトンとした表情を浮かべる。自らの足を掴む矮小な生き物が何故怒るのか理解ができない。だが遥か格上の相手とわかっているだろう自分に臆する事なく向かおうとする様は好感が持てた。

 

「フフフ、面白い子だ。そうだな、あの子がダメだったら今度はキミで遊ぶのもいいかもしれない。うん、それがいいね。面白そうだ。キミみたいな子は壊れにくくて遊び甲斐があるし、グチャグチャにした時面白い顔を見せてくれるだろうしね」

 

「…………っ!?」

 

ワザと一誠の同じ目線に合わせて笑うナイ神父。ナイ神父の笑みは見た目こそ普通の笑みだが一誠はその裏にある恐ろしさを感じ取り身体から大量の汗を拭き出させ、身体が震え始めて動けなくなってしまう。

 

『気をつけろ相棒!コイツ、人の形ををしてはいるが恐らく人間じゃない!とんでもない力だ、正面からやりあっても勝ち目は無い!ここは我慢して機を待て!』

 

「……クソッ!」

 

 

一誠の神器に宿る龍ドライグはナイ神父の底知れなさを感じ取り警告すると一誠は震えて動けない自分に対して悔しそうに唇を噛み締める事しか出来なかった。

 

一方でナイ神父は悔しそうな表情を見せる一誠に対し、満足そうに笑った後横目で木場の元へと向かおうとしている小猫を一瞥する。

 

「そう、そこで大人しくしていればいい。そうすれば私は何も危害を加えない。そこの猫ちゃんもそうだよ?」

 

「……ッ!!」

 

ナイ神父に警告され、小猫はその足を止める。動きを止めた小猫を見てナイ神父は微笑むと蹲る一誠に腰掛け、高らかに劇の始まりを宣言する。

 

「さぁ、楽しい楽しい劇の始まりだ。さて、キミはどうするのかな定治?」

 

劇の始まりを宣言した後、この光景を見て定治が何を思うのか気になったナイ神父が定治のいる方向をみると先ほどまでの微笑みから表情が一変してしまう。

 

「……無いわー」

 

そこでナイ神父が目にしたのは苦悶と恍惚とした表情を浮かべるコカビエル、そして困惑しながら叫んでいる定治の姿。その光景を見てナイ神父は今まで自分が作ってきたシリアスを壊されたように感じた。




更新しましたが、近日中に資格試験があるのでその勉強のために中々更新できない状況が続くと思いますが許して下さい。

コカビエル戦はあと2話くらいで決着の予定です。

テキトーな神話生物講座

星の精
星間宇宙に住むとされる怪物でクスクスという君の悪い笑い声が特徴的。その姿は透明な為見たものは少なく、もし見たとしても多くの者は星の精により吸血されてしまうだろう。定治の呼びだしたほっちゃんは何故か※※※の扱いを心得ている。理由は面白いから。ムーンさんと気があうのかもしれない。多分擬人化したらカワイイボクっ娘になると思います。


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VSコカビエル&ナイ神父 3

ようやく書き終えました。こんなに長く書いたのハジメテ……

あ、今回から小説タイトル変更しました。

何でお前らSAN値チェックしねぇんだよ!?
⬇︎
俺と愉快な神話生物達と偶に神様

こんな作品ですが今後ともよろしくお願いいたします。


ナイ神父に誘われ木場はバルパーガリレイの前へと立つ。その目には激しい怒り、そして憎悪が宿っている。

 

「バルパーガリレイ!」

 

木場がバルパーの名を呼ぶとバルパーはエクスカリバーから木場へと視線を向ける。その目には新たなエクスカリバー誕生による喜び、そして木場に向ける愉悦の感情が宿っている。

 

「ほう魔剣使いか、私に何の用だ?新たなエクスカリバーの誕生でも祝いに来てくれたのかね?」

 

ほくそ笑むバルパーに対して木場の怒りと憎悪をより深いものへと変わりバルパーに魔剣の切っ先を向けて叫ぶ。

 

「黙れ!僕は貴様が行なった悍ましい計画の生き残りだ!僕は同志たちの仇を討つためだけに今まで生きてきた!同志たちの無念、ここで晴らさせてもら「あーれー!」オブッ!?」

 

今すぐにでも魔剣の切っ先を突き刺しそうな気配を醸し出しながら木場が自分の心の内に秘めた怒りと憎悪を吐き出していると突如としてナイ神父の障壁を突き破って飛んできた定治が木場に衝突してしまい木場は変な声を上げてその場から吹き飛ばされてしまう。

 

 

「イテテテ…完璧に油断してた…まさかあの野郎開発されながらも攻撃してくるとは思わなかったぜ…まぁ偶然足に魔力を付与してたおかげでクソ邪神の障壁が解除できたのは幸運かね?うん、不幸中の幸いって奴だな。……ん?」

 

定治はコカビエルにより突き飛ばされたが大してダメージは受けてないようで軽口を叩きながら後頭部を抑えながら起き上がり、後頭部をさすっていると定治の視界には吹き飛ばされたのにも関わらず平気な顔して起き上がる定治を見て固まるバルパーとフリード、そして近くで鼻血を流して倒れている木場が目に入る。

 

「お、おい裕斗どうした!鼻から血が出てるじゃねぇか!チクショウ許せねぇ!一体誰にやられたんだ!?」

 

定治は鼻血を流しながら倒れている木場の元へと駆け寄り木場の上半身を持ち上げ木場の身体に他に傷があるか、木場にまだ意識があるのかを確かめ、一体誰が木場をこんな目に合わせたのかと怒りを露わにしながら激昂しながら木場自身に尋ねると木場は人差し指を真っ直ぐ定治へと向けると

 

「さ、定治くん……」

 

と発言する。

 

「…………」

 

木場の口から予想だにしてなかった犯人の名前聞き、定治はなんとも言えないような表情を浮かべてから木場をゆっくりと寝かせた後近くにいたバルパーへと視線を向ける。

 

「おい、お前バルパー・ガリレイとか言ったよな?」

 

「あぁ、そうだがそれがどうかしたか?」

 

定治は何とも言えない表情のままバルパーに本人確認をしてバルパー本人であると確認すると唇をワナワナと震わせて拳を強く握りしめてバルパーに怒りの視線を向ける。

 

「お前が裕斗に鼻血を出させたんだな…!許せねぇ…!俺の友達によくも…!絶対に許さねぇ…!」

 

「は?」

 

「やっぱコイツイカれてますわ……」

 

定治が怒りの視線をバルパーに送る一方で視線を送られているバルパーはというと何故自分が定治に怒りの視線を送られているのかわからず困惑し、その隣にいるフリードに至っては正にイカれた人物に向ける視線を定治に向ける。

 

だがこの光景を目の当たりにしたナイ神父が至って冷静に定治に現実を伝える。

 

「いや定治がぶつかった所為だからね。思いっきり激突してたからね。なんか友人が傷つけられて激昂するシーンみたいにしてるけど傷つけたの定治だからね」

 

「…………」

 

「…………」

 

ナイ神父の言った真実に定治はまたもなんとも言えないような表情で口を閉じているとナイ神父もまた冷静に定治を見つめる。

 

長いようで短い沈黙の数秒、最初に動いたのは定治。定治は膝から崩れ落ちた後拳を地面に叩きつけた後、息を大きく吸う。

 

「ウォォォッ!!俺は!お前を!絶対に許さねぇぞバルパーガリレイィィ!!」

 

「うっわ無かった事にしたよ。私のツッコミなかった事にしたよ」

 

ナイ神父の真実を無視し定治は顔に怒りを浮かべて近くにいるであろう呼び出した神話生物達を呼び出す。

 

『ユキちゃん!ほっちゃん!ビヤーキー!「シカトはやめよう」行くぞ!裕斗の仇!俺が討つ!』

 

ナイ神父のツッコミを無視し、定治は木場を傷つけたバルパーを倒すため神話生物に集合をかけたのだがそこに集まったのはビヤーキーのみ。そして集まったビヤーキーはというと非常に申し訳なさそうな表情を定治に向けていた。

 

『あの、定治様すみません』

 

『なんだビヤーキー!』

 

友を傷つけられた怒りにより定治は話しかけるビヤーキーに苛立ちながら返すとビヤーキーは尚も申し訳なさそうにしながら定治に向けて口を開く。

 

『ユキ様なのですが御夕飯を食べる前にこちらに来たらしくエネルギー切れになってしまった為一旦戻られましたよ』

 

『……え?』

 

ここで定治、忌まわしき狩人のエネルギー切れによるための帰還を聞き思わず固まる。

 

だがまだビヤーキーの口は閉じようとしていない。

 

『それと先程までコカビエルの※※※開発をしていたほっちゃん様ですが反応がつまらないと言って帰られました』

 

『……What's?』

 

ここで定治、星の精の帰還を聞き思わずネイティブな英語を発音する。

 

だが、まだまだビヤーキーの口は塞がらない。

 

『それと非常に申し上げにくいのですが私もハスター様から呼び出しをかけられてしまったので戻らないといけません。ですのでここからは1人、もしくは新たに仲間をお呼びください。それでは失礼致します。頑張って下さい』

 

そして最後にビヤーキーは自分も帰りますとだけ言うと定治に有無を言わさず勝手に帰還してしまう。後に残ったのは固まる定治のみ。定治はしばらく固まったままだったがようやく事態を完璧に理解したのか再び膝から崩れ落ちて力の限り絶叫する。

 

「……チクショォォォォ!!これだから神話生物共はぁぁぁ!!いつもいつもアイツらフリーダムすぎんだろぉぉぉぉ!!」

 

定治が崩れ落ちて力の限り絶叫しているとそんな定治を見かねてかナイ神父が定治に声をかける。

 

「定治」

 

「あぁん!?なんだクソ邪神!」

 

声をかけたナイ神父に対し定治は今すぐにでもナイ神父に掴み掛かりそうな表情をナイ神父に向ける。そんな視線を送られているナイ神父は大して反応せずに首をしゃくって定治にそちらを見るように促す。

 

「落ち込んでいる様だがそんな暇は無いよ。エクスカリバーは完成した。エクスカリバーが一つになった時膨大なエネルギーが発生する。エクスカリバーの方を見てごらん」

 

「……なんだあの魔法陣?エクスカリバーが生み出すエネルギーを燃料にしてんのか?……おいまさか」

 

ナイ神父に促され定治はナイ神父の話を聞きながらエクスカリバーと魔法陣を見ていると定治の脳内で最悪の事態が思い浮かんでくる。そして定治の脳内で浮かぶ最悪の事態を理解しているようにナイ神父は頷く。

 

「察しがいいね。その魔法陣は発動におよそ20分ほどかかるが一度発動されればこの街など軽く消し飛ぶ威力のモノを生み出す。魔法陣を生み出しているのはコカビエルさんだ。彼を早く倒さないと駒王町が滅んでしまうよ?」

 

定治の脳内で浮かんだ最悪な事態がナイ神父に肯定され、それを防ぐ方法が如何に面倒なのかを理解し定治はキレながらナイ神父に向けて距離を詰めていく。

 

「ハァァァァッ!?何だそれ!?ふざけんなよ!そういうのは最初に言えよ!」

 

「いや直前に行った方が面白いかなって」

 

「死ね!!ダァックソッ!裕斗聞いたな!?あと20分でこの街が消し飛んじまう!ここはエクスカリバーより先にコカビエルを倒しにいくぞ!」

 

定治はナイ神父が腰掛ける一誠に気づかずナイ神父を罵倒した後未だ倒れているであろう木場がいる方向に視線を移し、木場にコカビエルを先に倒そうと伝えようとするがそこで定治が目にしたのは定治が全く予期していない光景だった。

 

「ハァァァァッ!!」

 

「ハッハァァ!!この超素敵仕様になったエクスカリバーにそんなチャチな魔剣で勝てると思ってんのぉぉぉ!?弱ぇ弱ぇ!!」

 

定治の視界に映るのはエクスカリバーを手にしたフリードとまだ寝ているだろう思っていた木場が切り結んでいる光景。この光景を見た瞬間定治は裕斗がナイ神父の話を全く聞いていないのを理解し、力の限り絶叫する。

 

「裕斗全く話聞いてNEEEEEEEEEE!!」

 

「いつまで談合を続けているつもりだ?」

 

「あっぶね!」

 

定治が力の限り絶叫しているとコカビエルが不意を打つように巨大な光の槍を定治に向けて投擲する。定治はいち早くコカビエルが作り出した巨大な光の槍に気づくと大きく横に飛び、砂煙をあげながら光の槍を躱してコカビエルに視線を向ける。するとそこには先ほどまでの笑みが消え失せたコカビエルが定治の目に入る。

 

「……奇襲のつもりだったのが容易くよけるか。まず褒めてやろう。俺に新たな性癖を植え付けるとは大したものだ。「褒められてる気が全くしねぇ!!」そして聞いていた以上に厄介な神器、また神器使いだ。アザゼルが警戒するのも頷ける。この俺が知らない強力な生物を何種類も呼び出し使役する能力、そして神器だけに頼らず様々な魔術を行使しオマケに体術も優れている。。戦争が起こる前の余興程度にしか思っていなかったが、お前はかなりの強敵のようだ。」

 

「(……コイツ、目に驕りが無くなりやがった)」

 

コカビエルの出すオーラは先ほどと変わっているようには見えない。恐らく力の底は先ほどまでと変わらないだろう。だが定治は直感で理解する。戦いはこれからが本番だと。先ほどまでのコカビエルはまるで生意気な少年を痛めつける傲慢な大人のような視線だった。しかし今は自身を一人の敵として見ている。

 

「(こりゃぁやっちまったなぁ……最悪だ)」

 

定治は後悔した。最初から手段を選ばず本気で殺しにかかればこうはならなかったかもしれない。相手が油断していたあの時こそ一番楽に殺せたと。定治は今までの戦いに自分自身コカビエル同様に驕りがあったのを理解し自分を深く戒める。

 

コカビエルが定治を一人の敵として視線を送っているのと同様に定治も気持ちを切り替えコカビエルに同じような視線を向け、深く深呼吸をしながら父夢桐より教えられた武術の構えを取る。

 

「故に!俺はお前、阿見定治を目的達成の為の最大の障害と判断し!驕らず!油断せずに!どんな手を使ってもお前を殺すと宣言しよう!」

 

「ああそうかよ!なら俺はダチとこの町を守る為にお前を倒すと宣言してやる!ナーク=ティトの障壁・鎧・兜・籠手・具足!」

 

コカビエルと定治は同時に動き出す。コカビエルは無数の光の槍をすぐさま生み出し定治に向けて投擲し、定治はナーク=ティトの障壁を発動。生み出された障壁を操り自分の体を覆うような鎧を作り出しながら地を跳ねコカビエルの光の槍を躱す。

 

コカビエルの光の槍を躱しながら定治は周囲を確認し、周りの状況を理解しながら次の手、その次の手をシュミレートしながら動き続ける。

 

「(一誠と小猫ちゃんはニャルに監視されてて動きにくそうだな……部長もありゃニャルに支配をかけられちまってる。コカビエルを倒す為に一誠の神器を使わない手は無ぇ。部長の魔術も充分戦力になる。小猫ちゃんは…クソッ俺あの子は力強い事くらいしかわからねぇ!…….フゥ、さて次手はどうする俺……!)」

 

 

 

定治とコカビエルが激戦を繰り広げている一方で木場とフリードの闘いは早くも決着を迎えようとしていた。木場とフリードの周りには砕かれた魔剣のかけらが大量に散らばりその中央では木場が魔剣を杖代わりにしてどうにか立っており、対してフリードは弱り切っている木場を残酷な子供のような目で眺める。

 

「ヒャーハッハッハッ!!いやー弱ぇ弱ぇ、お前程度じゃこの超素敵仕様エクスカリバーちゃんの相手にならねぇなぁオイ?」

 

「ハァ……ハァ……!」

 

フリードの挑発に木場は歯ぎしりしながらフリードを睨む。目の前に憎むべき聖剣とバルパーガリレイがいるというのに木場は何も出来ずにいる。それが木場から冷静さを奪う。

 

「まだ、まだだッ!!僕は負けられない!!」

 

「そういえば、だ」

 

木場がなんとか立ち上がり剣を構えたその時、バルパーガリレイが何を思ったのか木場の元へ歩いていく。

 

「あの時被験者が一人脱走したと聞いていた。どうせ野垂れ死ぬだろうと思っていたがまさか悪魔に転生していようとは」

 

そう言ってバルパーは木場に冥土の土産だと言わんばかりに自身が生み出した聖剣計画の全貌を語り始め、およそ人が口にするのも悍ましい自身が行なった事全てを嬉々として話し出し、やがて全てを語り終えたバルパーは狂気の笑みを浮かべ木場に唾を撒き散らしながら告げる。

 

「君らには感謝している。お陰で計画は完成したのだから!!」

 

この声は駒王学園にいる全ての人物に聞こえ、コカビエルと闘っている定治の耳にも入り、バルパーが行なった計画の全てを聞いた定治の頭の中に数々の記憶が蘇る。

 

『私はより偉大な魔術士になる為この子供たちの寿命を奪い我が物とする!そうすれば私はさらなる寿命を得てより高みへと至るのだ!』

 

『わからないのか?これは必要な犠牲なのだよ!私が救世主となる為のなぁ!コイツらの精神を吸い上げた後私はクトゥグアの封印を解き、吸い上げた精神で出来上がる宝具で私はクトゥグアを操り汚れたこの世界を燃やし尽くす!その後私は燃え盛る大地に立つ救世主として君臨するのだ!!』

 

それは過去に定治が防いできた計画、儀式の首謀者達が放った言葉の数々。いずれも誰かの為では無く、己の欲望の為に多くの人々を犠牲にしようとしてきた者達だった。

 

数々の忌まわしい記憶を思い出した定治は頭に血管を浮かばせ、高く跳躍するとコカビエルが光の槍を放とうとしている手の関節を外してから八つ当たりのようにコカビエルの頭を蹴り飛ばす。

 

「……クズ野郎が!」

 

コカビエルを蹴り飛ばして地面に着地した定治は憤怒とも侮蔑とも言える表情を浮かべてバルパーガリレイを一瞥する。だがバルパーガリレイはその視線に気づく事なく一通り語り終えて満足そうな表情を浮かべた後何かを木場の元へ放り投げた。

 

「欲しければくれてやる。因子はもうより質の良いものを量産できる体制に入っているのでな」

 

バルパーガリレイが放り投げたのは深い青い色の物体。一見すると一体それが何なのかわかるものはおそらくいないであろうそれを見て、話を聞いていた誰もがそれはバルパーの悍ましい計画により犠牲となった者達から抜き出された因子の集合体だと気づく。

 

木場は因子の集合体を拾い上げ優しく包むと傷ついた身体のことなど忘れ体を怒りと悲しみに震わせる。

 

「……貴方は自分の研究の為に、欲望の為に、どれだけの命を弄び犠牲にしたんだ。貴方のせいで、みんなは……!!」

 

木場がそう静かに呟いたその時、因子から青く光る球体がいくつも現れ木場の周りを包むように回り始め、球体はやがて人のような形へとなっていき木場の元へと集う。

 

「あれは……人か?」

 

「……みたいですね」

 

その幻想的な光景は見る人々を魅了し、一誠と小猫は魅入るようにその光景を眺めていた。しかしナイ神父はその光景を魅入るように見つめておらず学者のように淡々とした表情で青い集合体を見て呟いた。

 

「ほう、彼の思いが抜き取られた因子の持ち主の意思を呼び起こしたのか?こんな事がたったそれだけで起きたのか……興味深いね」

 

人の形を成した青い光は聖歌を奏で、木場も気がつけばそれを口ずさむ。そして人の輪郭を象っていた光ははっきりとした人間の姿へと変えていく。木場はその姿を目にした時思わず涙を流しそうになるがそれを懸命に堪えながら死んでいった同志たちに声をうわずらせながら語りかける。

 

「僕はずっと疑問に思ってたんだ。僕よりも夢を持っていた子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。……僕だけが平和な日々を過ごして良いのかって。……ッ!」

 

涙を堪える木場。木場が涙を堪えるのはたとえ死んでしまったとしても会う事が出来た同志たちに泣いている所、情けない所をを見せたくないというちっぽけな男としてのプライド、それが木場の目から出る涙を懸命に堪えさせていた。青き魂は涙を堪える木場に語りかけ、木場は涙を堪えながら頷くと青き魂は木場の中へと入っていき後には亡き同士たちの言葉を受け取り、必死に涙を堪える木場だけが残る。

 

定治は懸命に涙を堪える木場を眺め、起き上がってこちらへと真っ直ぐ向かってきているコカビエルに気づいていながらも苦笑しながらルールブックのページを開く。

 

「(……油断、しないつもりだったんだけどな。だけどこれはダメだ。やらずにはいられねぇ、やんなきゃだめだわ。悪いな少し前の俺)」

 

自嘲気味に笑う定治。しかしその笑みには確かな優しさも浮かんでいる。コカビエルはもう近くまで来ている。ここでルールブックを使わずにおけばコカビエルを迎撃できる。だがそれは出来ない。木場の友として、涙を堪える友の為ここでやらない訳にはいかない。覚悟を決めた定治はルールブックに魔力を込め神話生物の名を呼ぶ。

 

「ノフ=ケー」

 

「隙だらけだぞ阿見定治!鎧の着いてない箇所!そこだぁっ!!」

 

ルールブックに魔力を込め終え、木場の近くに門が設置された。だがそれと同時にコカビエルは定治の身体の殆どを覆っている障壁が覆っていない箇所、定治の手首目掛け作り出した刃を振るう。門を作る事に集中していた定治にこれを避ける術は無く、コカビエルによって切り落とされた箇所からは鮮血が舞い、定治に通常の人なら叫びかねないほどの激痛が襲う。しかし定治は叫ぶ事なくコカビエルへと向き直ると

 

「ごちゃごちゃうる、せぇ!!」

 

「しまっ!?」

 

定治は襲ってくる激痛に叫ぶ事なく切り落とされた手首をコカビエルの目に押し付け相手の視界を奪ってそのままコカビエルの胴元を力の限り蹴り飛ばす。コカビエルの胴元にぶつけられた足からコカビエルの肋骨がヒビ割れる感触を感じながら定治はコカビエルを蹴り飛ばし、コカビエルは砂煙を巻き上げ地面と衝突した。

 

木場の近くでこのような闘いが行われたが木場はそれに気づかず懸命に涙を堪え、最早言葉になっていないが自らの身体へと受け入れた同志達へ謝罪と感謝の声を呟く。

 

「みん、な……ぐっ……ぁぐっ……!」

 

 

「オイオイオイ?いつまで泣いてんですかぁ?隙だらけでやんすよぉ!!」

 

悲しみにくれる木場、しかし敵は泣き止むのを大人しく待っていてはくれない。悲しみにくれる木場を見て好機と判断したフリードは木場の背後に回ってエクスカリバーを木場の首めがけ一直線に振るう。

 

「隙だらけなのはテメェだよクソ神父!!」

 

「ゴフッ……!?」

 

しかしそれをフリードの敵である定治が絶対させまいと横から蹴り飛ばす。横から飛ぶように跳躍した定治は勢いをそのままに神速の蹴りをフリードの脇腹に突き刺し、フリードは木場の首を切り落とすことなく、口から血を吐き出しながら横に数メートル蹴り飛ばされる。

 

 

敵をあらかた吹き飛ばし終え、定治は切り落とされた手首を出血を抑える為、制服のタイで締め付けながら木場の背後まで行くと木場に手首を見せないように背中合わせ優しく木場の名を呼ぶ。

 

「裕斗」

 

「さ、定治く「振り向かなくていい」……え?」

 

優しい声音で木場の呼ぶ定治。木場は定治の声に気づき涙を未だに堪えながら定治の声が聞こえた方向へ振り向こうとする。しかし定治は声でそれを止めさせた。今定治の手はコカビエルによって切り落とされている。タイで締め付けて出血は抑えているものの完全に血が止まっている訳ではない。友に余計な心配をかけさせたくないというちっぽけな意地が木場を振り向かせるのを止めさせる。

 

「泣いとけよ」

 

定治は木場が振り向いていない事を確認すると、友に先ほどからずっと言いたかった事を伝える。その声は普段ヘラヘラと笑っている男からは想像も出来ない程の優しい声。友を思う優しい声は木場の心目掛け真っ直ぐ飛んでいくり

 

「いっぱい泣いていいんだよ。その涙は男の子の意地やプライドで堪えなくていいものなんだ。こんな時、泣いちまうのは絶対に悪い事じゃない。……これは俺個人の考えなんだけどさ、思いっきり泣いて、そんでもって最後に思いっきり笑う。それが死んじまった奴を見送る為に一番だって俺は思ってる」

 

定治の言葉を聞き、木場の目から堪え続けた涙が溢れ出していく。だが木場のちっぽけなプライドはそれでもなお、木場の涙を堪えさせ続ける。言いたかった事を伝え終えた定治だが木場が懸命に涙を堪えているのを感じ取り、木場が涙を堪える理由を理解して口元を少し釣り上げる。

 

「(ハハ、そうだよな裕斗。男の子のプライドや意地はちっぽけだけど簡単に捨てられるほど安くはない。一言二言言われたくらいじゃ捨て切れやしない。わかるぜ裕斗。男の子ってのはホント生きづらいよな。……ハハ、ようやく来たよ。遅ぇんだよノフ=ケーさん)」

 

友を思い定治が口元を釣り上げていた時、ようやく先ほど設置した門から吹雪と共に一匹の獣が悠然と歩いてきた。まるで見計らっていたかのように現れた白銀の獣ノフ=ケーに定治は心の中で笑いながら毒づいた後、木場から離れる。

 

「……さっきうっかり周辺を吹雪にしちまうノフ=ケーさんを呼び出しちまってさ。多分俺には何も見えねぇし聞こえねぇと思う。それにしても寒ぃな……裕斗、俺は魔術を使えばこの吹雪でも十分に動ける。だけど裕斗はそんな事出来ねぇだろ?ノフ=ケーさんの体は暖かいんだ。ノフ=ケーさんに抱きついて暖でもとるといいぜ」

 

定治はまだ切り飛ばされていない方の手で木場の肩をポンと叩いた後現れたノフ=ケーの元へと向いてノフ=ケーにある頼み事をする。

 

『ノフ=ケーさん』

 

『すまないね定治、ちょっと野暮用で来るのが遅れたよ……って定治お前さん!』

 

「手が無くなってるじゃないか!」ノフ=ケーはそう言おうとしたが定治が片目を閉じながら人差し指を口に当てているのを目にして口を噤む。ノフ=ケーが口を噤むのを確認し、定治は下を向いて懸命に涙を堪える木場に親指を向ける。

 

『悪いけどそこにいる人間、裕斗っていうんだけどさ。ソイツの事守ってやってくれ。頼む』

 

手を切り落とされ、自身が立つ地面が血による染みだらけになってもなお気にせず笑いながら頼む定治にノフ=ケーはそんな事言ってないで傷を直しなと言いかけるが口をつぐみ、ゆっくりと、深く頷く。

 

『……解ったよ。今からこの周囲を強烈な吹雪に包ませる。並みの奴は入れないよ。この子は私が上から包んでおけばこの吹雪でも大丈夫。だからお前さんは好きなだけ暴れてきなさいな』

 

『おう、ありがとノフ=ケーさん。そんじゃ行ってくる』

 

『やれやれ、お前さんと会うたび男の子ってのは難儀な生き物だって思わされるもんだ。……はいよ、行ってらっしゃい』

 

ノフ=ケーが定治の願いを聞き入れ定治は良かったと頷いてノフ=ケーと木場の元から離れ、それと同時にノフ=ケーは自身が持つ力を使い周囲を視界さえ満足に見えないほどの吹雪を生み出した。

 

ある程度の吹雪を生み出した後ノフ=ケーは木場の元へと近寄ると木場の隣に寄り添うように座り木場に語りかける。

 

「さて、お前さん、裕斗くんだったかね?」

 

「……え?」

 

ノフ=ケーが話し出したのは日本語ではないが間違いなく人間の世界の言葉。悪魔の駒の力によりその言葉を聞き取れる事が出来た木場は隣に座る獣が人の言葉を話す事が出来るのを理解し涙を堪える事も忘れ思わずノフ=ケーを凝視すると木場に凝視されたノフ=ケーは涙を堪えていてグチャグチャになった表情のまま驚く木場を見て面白そうな物を見たように静かに笑う。

 

「フフフ、驚いたかい?さっきまでは一族の言葉で話したから聞こえなかっただろうけどあたしゃ実は定治の大体5代ほど前の深淵の門の担い手のお陰でソ連っていう国の言葉を話す事が出来んのさ。……不器用な人だったけど、優しい人でね。一生懸命私に教えてくれたのさ。」

 

「…………」

 

昔自分に人の言葉を話せるようにしてくれた過去の深淵の門の担い手の不器用な笑みを思い出しノフ=ケーは微笑むが隣にいる木場の視線に気づいて気持ちを切り替える。

 

「おっと今はそんな事どうでもいいね。さて裕斗くん、お前さんに一つ聞きたい事がある」

 

気持ちを切り替え、ノフ=ケーは木場に涙を堪える木場に子を慰める母親のように優しく問いかける。

 

「どうしてお前さんはまだ涙を堪えとるんだい?」

 

「……え?」

 

つい先ほど現れたばかりのノフ=ケーから出された予想していなかった問い。木場はノフ=ケーからまさかこのような問いが来るとは思わずあっけにとられてしまい、ノフ=ケーからの問いに答えられる事が出来ない。ノフ=ケーはそんな木場の心持ちを知ってか知らずか、頭を使って木場を背に乗せた後、先ほどと変わらず子を慰める母親のような優しく語る。

 

「定治は私にお前さんを守ってくれと頼んだ。そしてお前さんには思いっきり泣いておけ、そういった筈だよ」

 

先ほどノフ=ケーは登場が遅れたのを野暮用があったからと言っていたが実のところノフ=ケーに野暮用なんて無い。現れなかった本当の理由は定治が今自分が背に乗せている少年に言いたい事がありたげに見ていたのを見てそれが終わるまで現れないと決めていたため。

 

定治が言いたかった言葉、涙を堪える木場の姿。それらを最初から見て聞いていたノフ=ケーは先ほど定治が向かっていった方向を向いて口元を釣り上げながら続きを話す。

 

「生憎わたしゃ人間の機微ってやつがちょいとわかりづらい。なんで定治の奴がお前さんに泣いておけと言っていたのかはいまいちわからない。だけれど、定治がああ言ったのはきっと意味があるんだろう?だから思いっきり泣いておきなさいな。大丈夫、この吹雪だ。辺りに声なんて聞こえないし、姿もぼんやりとしか見えないから誰がどうなってるかなんてわかりゃしないよ」

 

そう言ってノフ=ケーはもう言う事は無いと言わんばかりに身体を軽くゆすり背に乗っていた雪を振り落とす。吹雪は強まり木場から体温を奪おうとする。しかしそんな状況だからこそ乗っているノフ=ケーの毛と体温の暖かさがより安らぎを与えてくれる。

 

「……暖かい」

 

木場はノフ=ケーの身体にしがみつきながら誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。だがその呟きはしっかりとノフ=ケーの耳へと入りノフ=ケーは誇らしげに笑う。

 

「フフフ、そうだろう?わたしゃとてもとても寒い場所に住んどるからね。どんな寒い場所だろうと私に包まれればへっちゃらさ」

 

「……そう、です、ね」

 

誇らしげ笑いながらに言うノフ=ケーに木場もつられて微かに笑みを浮かべた後ノフ=ケーの身体に顔を埋める。

 

「……少しだけあったまってもいいですか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

「ありが、とう、ございます……」

 

木場の願いにノフ=ケーは二つ返事で了承する。木場はノフ=ケーに何とか礼を言うとノフ=ケーの身体に顔を思い切り埋め、身体に強く、強く掴まる。ノフ=ケーの身体に顔を埋める木場の頭によぎるのは定治とノフ=ケーの言葉。この場ならきっと大丈夫。一人の人間と一匹の獣の優しさ、そして寒い吹雪の中で感じる温もりが木場の涙を堪えさせてきた男の子の意地、プライドを溶かし尽くし木場は心の底から死んでしまった友の事を思い力の限り泣き叫ぶ。

 

「あ、あぁぁぁぁ!うわぁぁぁぁ!!みんな、みんなぁぁぁ!!あぁぁぁぁ!!」

 

泣き叫ぶ木場にノフ=ケーは何も言うことなく自身の周囲を1メートルだけ吹雪の勢いを弱めて木場が寒さで困らぬようにするのであった。

 

 

 

木場が力のかぎり泣き叫んでいる時、定治は苦笑しながらコカビエル達のいる方へと歩いていた。

 

「やれやれ困ったもんだぜノフ=ケーさんよ。たしかに辺り周辺を吹雪かせることには了承したけどこりゃいくらなんでもやり過ぎだ」

 

定治が苦笑しながらコカビエルの元へ歩いているとそこで道中あればいいかなと思っていた物を発見し嬉しそうな声を上げる。

 

「お、あったあった。これをくっつけてっと……治癒×10」

 

定治が見つけたのはコカビエルによって切り落とされた自身の手。定治はそれを拾い上げると切断された手首部分に押しつけるようにくっつけて治癒の呪文を唱えた。

 

治癒の呪文は何回も書けることで手首の切断面を塞いで行きやがて切られた筈の手が定治の思う通りに動く。

 

「ん、本調子とまではいかないけど十分いけるな。……さて、これからどうすっかね」

 

切られた手の調子を確認し終えた後、定治は周囲に自身に殺気をむける3つの気配を感じる。それは恐らくバルパー、コカビエル、フリードの三人。見栄を張って木場に言った手前一人でどうにかしようと考えていた定治の元へ二つの気配が近づいてくる。定治が二つの気配の方へ振り向くとそこには空を飛ぶピンク色の奇妙な生物ミ=ゴ、そしてその奇妙な生物に掴まれているゼノヴィアの姿が目に入る。

 

「困っているようだな阿見定治」

 

「ああ、割と困ってる。来てくれて助かったよ。それで、怪我は大丈夫か?」

 

「ああ、アーシア・アルジェント、そしてここにいるお前が召喚したミ=ゴという生き物のお陰で身体も本調子になった。感謝してもしきれん」

 

ゼノヴィアと定治が交わしたのはたった二、三の会話。しかしこの二、三の会話は初めて会った頃だったらきっと二人とも想像すらしなかっただろう。それ故に定治とゼノヴィアは互いが互いに今までとは大分違うような印象を覚え、楽しそうに笑う。

 

「ハ、なんだ礼もちゃんと言えるんだな。お礼は期待してるぜ?」

 

「ああ、期待以上のものをくれてやるさ」

 

定治が軽口を言えばゼノヴィアもまた軽口で返す。闘いで意識が高ぶっているのか、それとも共通の目的の為に動いてるからくる信頼感なのか二人は近づいてくる敵の気配に恐れる事なくなおも楽しそうに笑う。

 

「オッケー、それじゃ早速だけど働いてもらうぜ?」

 

「ああ、行こうか定は『重い』ヘブッ!?」

 

敵との距離が縮まっていく。気持ちを切り替え向かってくる敵とぶつかろうとしたその時、今まで沈黙を守って来たミ=ゴが呟いたと思ったら掴んでいたゼノヴィアから爪を離してしまう。突然の事にゼノヴィアはあっけにとられ鈍い音と共に地面とキスしてしまう。そんな光景を定治はバッチリと目にしてしまっており

 

「(し、しまらねぇ〜……)」

 

定治はなんとも言えないような表情で地面とキスするゼノヴィアを眺めていた。




テキトーな神話生物紹介

ノフ=ケー
極寒の地に住む獣。自分の周りのある程度に吹雪を呼び起こす力を持っている。およそ五代ほど前の深淵の門の担い手の優しさに触れ、人間を好むようになり以後人間に友好的な態度を取り続けている。ちなみにこの五代ほど前の担い手ですが完全な脳内設定なので実際のクトゥルフ神話の誰かというわけではありません。自称人の機微に疎い()。性格のモチーフは映画とかでよく見るやさしいおばちゃん、もしくはおばあちゃん。

最後にチョロっと出て来たミ=ゴの紹介は次回へと送らせて頂きます。



ナーク・ティトの障壁・鎧・兜・籠手・具足

定治が作り出したナーク・ティトの障壁を操りそれぞれの形になるように作ったもの。魔力を込めれば困るほど堅牢な鎧になるが動きを阻害しないようにしているため関節部分には貼られていない。それを手首部分だけだがコカビエルに見抜かれてしまい定治は手を切り落とされてしまっている。

定治の手首は切り落とされてしまったため、本調子とまではいかなくなっており握力などが低下してしまっています。完璧に治すためには優れた医療知識を持ったものの治療が必要です。ん?そういえばミ=ゴさんは……!


最後に今回の話を書いてて思った事。

内臓マグナム「ん?あれ?最後の方のゼノヴィアと定治、なんかいい感じになってね?え?何これ?え?」



……みなさん、ヒロインはやっぱりいた方がいいと思います?


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"とっておき"、使っちゃいます!

久しぶりに更新します。

前回手をぶった切られたりした定治ですが今回はチートタグに恥じない活躍をします。

それではどうぞ。


「クッ、いきなり落とすとはやってくれるなミ=ゴ」

 

「重かったから」

 

「お、重くなどない!他の同年代の女子より多少筋肉は多いがまだ適正体重だ!」

 

ミ=ゴに落とされ顔から地面に激突したゼノヴィアは顔面をさすりながらミ=ゴを睨む。

 

しかし睨むゼノヴィアに対してミ=ゴは無感情に返しており、ゼノヴィアを落とした事について全く気にしていない様子。ミ=ゴとは短い付き合いだがずっと無感情に返され続けているゼノヴィアが感情を荒立たせていると敵を見据えている定治が声を荒立たせる。

 

 

「おい、漫才なんかやってる暇ねぇぞ!ゼノヴィア!一手間稼いでくれ!」

 

「死ねや狂人野郎ゥゥゥゥ!」

 

「あ、ああわかった!」

 

定治の声にゼノヴィアは直ぐに戦闘へと気持ちを切り替え聖剣を握る手に力を入れる。

 

 

戦闘態勢に入ったゼノヴィアは真っ直ぐ向かって来るフリードを見ても動かずフリードが間合いに入るのをじっくりと待つ。その光景にフリードは勝利を確信し、口元に笑みを浮かべる。いくら聖剣エクスカリバーの一振り、破壊の聖剣といってもこちらは何本ものエクスカリバーを錬金術で束ねた一振り、質が違う。相手が剣を振るうより早く心臓に突き刺して終わり、とフリードは脳内でシュミレーションをしてその通りにゼノヴィアに斬りかかる。

 

エクスカリバーの力で手に入れた驚異的な速さに身をまかせるように真っ直ぐ自身のの心臓目掛けエクスカリバーを突き立てるフリードを見てようやく動き始めるゼノヴィア。しかし既に距離はもう遅い、避けられず、返し技も放てない間合いに入っている。ゼノヴィアの心臓にエクスカリバーが突き刺さる光景を誰もが目にすると思ったその時"ガギン‼︎"と金属がぶつかり合うような音が響き渡り、フリードの手には激しい衝突により生まれた衝撃が伝わって来る。

 

 

フリードが目にしたのは剣の腹でエクスカリバーを受け止めるゼノヴィアの姿。ありえない、いくら破壊の聖剣といえどいくつもの聖剣を束ねたこのエクスカリバーを受け止めきれるものでは無い。予想外の事態に困惑するフリードとは対象にゼノヴィアはこの光景を知っていたかのように口角を吊り上げる。

 

 

「これはデュランダル。ローランが叩き折ろうとしても決して折れることのなかった伝説の聖剣。不完全なエクスカリバー如きに砕けるものではない。定治!」

 

「オラァ!」

 

ゼノヴィアの声と同時に定治の蹴りがフリードの横顔に突き刺さる。フリードの顔からは骨が砕けるような音が聞こえ、それと同時にその身体は横に飛んでいき激しく地面を擦った。あの蹴りを受けてはもはや立ち上がることすら困難だろう、一瞬でフリードを退場させてみせたゼノヴィアと定治は油断する事なく直ぐにコカビエルの方へ意識を向ける。

 

「さて、一人倒したがこれからどうする定治。奴は聖書にも名を残す強大な堕天使、デュランダルだけでは勝てんぞ」

 

「そうだな……よし決めた。お前が"とっておき"を見せたんだ。なら今度は俺の番だ。俺の"とっておき"、見せてやるよ」

 

「ほう?随分と自信があるようだな」

 

眼前に強大な敵がいるというのに定治は楽しそうに笑う。"とっておき"という部分を強調しながらかなりの自信を見せる定治にゼノヴィアは妙な安心感を覚え定治に任せようと一歩身を引いたその時、ゼノヴィアの上に漂い沈黙していたミ=ゴから声が発せられた。

 

「待て定治。まさか、"アレ"をやるつもりか?」

 

感情が無いとされるミ=ゴが見せたのは明確な恐怖。もしも定治が見せようとしている"とっておき"がミ=ゴの予想しているモノなら絶対にやめさせなければならない。

 

だが焦り、止めさせようとするミ=ゴに対し、定治は笑いながらチッチッチと指を振る。

 

「大丈夫だミっちゃん、今回は"アレ"をやるつもりは無いって、使うのは4分の1だけ。あいつらを呼び出すつもりはねぇって……あいつら呼ぶとこの街がほぼ確実に消滅するだろうし」

 

「ならいいのだが……」

 

定治は安堵するミ=ゴから視線を会話の内容をいまいち理解出来ていないゼノヴィアの方へ向けると、ゼノヴィアに分かりやすく説明するように話し始める。

 

「あまり使わないんだけど実はルールブックには隠された章がいくつかある。恐らくは聖書の神が意図的に隠したと思われる章、今回はその一つを解放する」

 

「主が隠した、だと……!?それはつまり、主が封印しなければならないと思うほど危険な章ということか……!?」

 

「さぁ?それは"神のみぞ知る"、だ。まぁちっぽけな人間の俺が一つ言える事があるとすれば今から解放する章は生まれてからコレを持ち続ける俺ですら手に余るモノだって事だけだ。おっと、ナーク=ティトの障壁の想像!」

 

それだけ言うと定治はコカビエルが投擲した槍を障壁で防いでから親指を勢いよく噛み意図的に血を出すとルールブックの1ページ目、目次欄の上部分の白い箇所をなぞる。するとそこには"禁断の叡智"と書かれた文字が浮かぶ。

 

「我、見つけるは決して人が知り得てはならぬ禁忌!ルールブック第0章"禁断の叡智"、解放!!」

 

"Quarter Balance Break!!"(1/4禁手化!!)

 

 

「我、見つけるは決して人が知り得てはならぬ禁忌!ルールブック第0章"禁断の叡智"、解放!!」

 

定治の声は校庭に響き、その声はナイ神父、そして一誠たちの耳に入る。

 

「ほう、定治は0章を解放する気になったみたいだね」

 

「0章……?」

 

「ん?知らないのかい?なんだ定治の事だから親友のキミにはてっきり話しているものだと思っていたが。……いや、内容が内容だけに流石に話せないか。フフ、そのまま私の椅子になって見てればいい。そうすれば0章がどういうものなのかわかるよ。」

 

定治の0章を解放する宣誓にナイ神父は笑った後、0章が一体なんなのかわからず困惑する一誠の上で足を組み直しこれから定治によって振るわれるだろう蹂躙劇を想像し、より深い笑みを浮かべた。

 

 

0章を解放した定治にルールブックが答えるように定治の脳内に0章の目録を書きこんでいく。現在定治の脳内に書き込まれている目録はいわば知識のタイトルのようなもの。だが0章の目録はタイトルだけと言えど膨大な量があり、それらが時間にしてわずか数秒で定治の脳内に一斉に書き込まれていく。、脳に書き込まれた膨大な情報に定治の脳は悲鳴を上げ激しい頭痛となって定治自身に襲いかかる。

 

わかっていたとは言え、襲いかかる激しい頭痛に定治は苛だたしげに頭を叩く。

 

「ア"〜クッソ、頭は痛ぇし気持ち悪ぃ。やっぱ最悪だなコレ。」

 

一見するとルールブックにも定治にも外見に全く変化は見られない。ナイ神父を除く全員が0章とは一体なんなのか未だに検討がつかずただ見守ることしかできない。

 

「だけどまぁ、悪くない気分だ。ゼノヴィア、ここからは俺一人でやる。お前は巻き込まれないように一誠たちの方にいろ」

 

「何?」

 

「有り体に言うと邪魔だ。お前が近くにいると気になって0章の力を上手く使えねぇんだよ」

 

「……わかった。大丈夫なんだな?」

 

「ああ、100パーセント大丈夫だ」

 

邪魔だと言ってゼノヴィアを後退させた定治は満足そうに、楽しそうに笑顔を浮かべる。

 

定治が解放した力にコカビエル達が警戒し、定治の様子を注意深く見ていると定治が動き始める。

 

「クソ邪神。俺のダチに何時まで腰掛けてんだよ。」

 

定治が指差したのは一誠に腰掛けるナイ神父。最初の対象がまさか自分だとは思わずナイ神父は驚きどうにか0章の力を使う定治から逃れようとするがそれよりも早く定治が口ずさむ。

 

『チェック、クソ邪神(ニャルラトホテプ)の退散。チェック、クソ邪神(ニャルラトホテプ)の退散、儀式超簡略化』

 

「ま、待て定治!私はキミにプレゼントをーーー」

 

「えっ!?」

 

「ウソ……」

 

「バ、バカな!?ナイが消えた!?あ、ありえん!?あの男がああも容易く!?」

 

「私とイリナをまるで羽虫のようにあしらったあの男が一瞬で!?アイツは何をしたのだ!?」

 

一瞬、ナイ神父の身体に不可思議な紋章が現れたと思ったらナイ神父の姿が文字通り消える。圧倒的な強さを見せつけていたナイ神父のあまりにもあっけない退場に一誠達はもちろん、ナイ神父が持つ強力な力の事を知っていたコカビエル達も驚愕することしかできない。

 

定治は消えたナイ神父を目にし、まるでそれが当たり前のように何も思う事なく一誠の元へと歩み寄るとナイ神父の魔術により動けなくなっていた一誠の足を動かせるようにし、笑顔を向ける。

 

「大丈夫か親友」

 

「……ああ、大丈夫だ親友」

 

親友が露わにした強大な力に聞きたい事はあるものの、一誠はあえて何も聞かず、伸ばされた手を掴み起き上がると無事な事を定治に伝える。

 

「ん、小猫ちゃんも無事みたいだな。副部長はダウン、部長は……チッ支配をやられてんのか。」

 

一つ小さく頷いて一誠と小猫の無事を確認した後、定治が周りを眺めるとそこには気絶している朱乃と支配の呪文をかけられ目が虚のリアスを目に入る。定治は舌打ちをしてこの後ニャルラトホテプを必ずシメると決めるとリアスに歩み寄り額に人差し指を当てる。

 

「支配」

 

ニャルラトホテプ同様定治はリアスに支配の呪文をかける。定治の強大な精神から発動された支配の呪文はナイ神父がかけた支配を強制的に上書きする。こうしてリアスの主人がナイ神父から定治へと変わり、主人からの命令をいつでも受けれるような状態に入っているのを確認すると指をパチンと鳴らす。

 

「解除」

 

「ハッ!?わ、私は何を……!?」

 

「おはようございます部長。起きて早々悪いんですけど一誠達を守ってて下さい。俺はこれからアイツらをシメに行くんで」

 

「え!?さ、定治!待ちなさい!「ナーク=ティトの障壁」定治!」

 

目覚めて早々のリアスに一方的に頼みごとをし、その返事を聞く前に障壁を展開した後定治はコカビエルを見据える。

 

「ーーさて、コレを使った以上悪いがここからずっと俺のターンだ。蹂躙させてもらう」

 

「死"ねぇぇぇぇ!」

 

定治はそう宣言した後背後からグチャグチャになった顔のまま襲いかかってくるフリードに指を向ける。

 

『チェック、ジジイ(クトゥルフ)の右手』

 

フリードを指差した定治の右手から禍々しい巨大な手が現れると禍々しき巨大な手はフリードに抵抗も避ける時間も与えずフリードの身体を鷲掴みにする。

 

「さっきからうるせぇよクソ神父。寝てろ」

 

「ガフッ!?」

 

禍々しき巨大な手は定治の手が握りつぶすような仕草をするとそれに連動するようにフリードを握りつぶす。フリードの体からは骨の砕ける音、そしてグチャ、と何かが潰れたような音が鳴り禍々しき巨大な手がフリードを手放すとフリードは口から鮮血を吐き出して動かなくなる。

 

「さて、コカビエルさんの前に次はお前にしようか。なぁ、クズ野郎」

 

「ヒィッ!?」

 

定治が指差したと同時にバルパーは短い悲鳴を上げて後ずさる。

 

何故ならバルパーには笑いながら自身に向け指差す定治の姿は悪魔以上に邪悪な存在に見えたからだ。

 

強力な力を持つナイ神父を消し、聖剣使いを握りつぶした男を見て狂気に走った男が感じたのは恐怖、そして死。どう足掻こうと殺される自分を認識すると今更バルパーの足がガクガクと震え始め、表情は恐怖と泣き顔をごちゃ混ぜにした見るに耐えないものへと変化する。

 

「と、いきたい所だがテメェは見逃してやる。テメェは裕斗の獲物だからな」

 

怯え竦むバルパーを見て満足したのか定治はより口角を吊り上げながら指先をバルパーからコカビエルへと向ける。

 

「待たせたなコカビエルさん。次はアンタだ。……さて0章を解放した今、あんたを倒す方法はいくらでもある。だけどここはルールブックらしく、神話生物を召喚して倒させてもらう。チェック、ゲートの制限解除。」

 

ルールブックを開くと定治は自らの持つ膨大な魔力をルールブックに送り込むとルールブックはそれに呼応しかつてリアスとライザーの結婚式の時よりも激しく鈍重な光を辺りに撒き散らす。

 

「気をつけろよコカビエルさん。これから作れる門は何もかもが今までとは桁違いだ。さぁ行くぜ!……あ」

 

無数の門を作りコカビエルを無数の神話生物たちで押しつぶそうと考えた定治。

 

 

だが最初の門を作ろうとしたその時、ルールブックのページが真っ黒に塗りつぶされる。定治はこのページが真っ黒になる光景を過去に何度か見ており、何が起きたのか直ぐに理解する。

 

「(あ、ファンブルだ)」

 

ファンブル、それはアザトースが望みヨグ=ソトースが書き上げたこのルールブックに混沌たるニャルラトホテプがかけた祝福の力によって起きてしまうもの。これはかなり低い確率で起きるものだが一度起きてしまえばルールブックは暫くの間使用不可となってしまう最悪のモノ。だがそれよりも問題なのはファンブルを引いてしまった時、現れるのが呼びたかった神話生物ではなく違う者達がランダムに呼ばれてしまう事である。

 

「…………」

 

ファンブルを認識した定治は顔から大量の汗を吐き出しながら暫しの間沈黙し、やがて意を決して一誠の方へ顔を向け口を開く。

 

「……ごめん……ファンブル、しちゃった♪」

 

定治の謝罪と同時に校庭から門が現れた。大きさにして十メートルは優に超える門。その巨大な門からはファンブルによって呼び出されてしまった者がゆっくりと姿を現わす。そして呼び出してしまった者の体の一部を目にした瞬間定治が笑い声をあげる。

 

「アッヒャッヒャッヒャ!もうこれ笑うしかねぇわ!!アッヒャッヒャッヒャ!!アッヒャッヒャッヒャゴフッ!?」

 

黒い門から見えたのは巨大な頭の頭頂部。それを見た瞬間定治は何が来てしまったのか即座に理解し「もうどうにでもなーれ★」と大爆笑。そして次にこれから起こる事を想像しあまりのストレスに吐血。

 

「お、おい定治!なんだよファンブルって!?何がマズイんだよ!?ていうか何が来るんだよ!?」

 

事態を把握できていない一同を代表して一誠が定治に問いかける。その問いかけに対し、定治は非常に言いづらそうな表情で、そしてか細い声でこれから来るだろう者の名を口にする。

 

「ク、クトゥルフ……」

 

呼び出してしまった者の名を口にした後定治はある程度気持ちが楽になったのか大きく息を吸って大声を上げる。

 

ファッキンクソビィィィッチ!!(おのれダイスの女神ィィィィ!!)

 

夜の駒王学園の校庭にいるかもわからないダイスの女神への暴言が響いた。

 

"ルルイエ"

 

ダゴン「ンッンー、ああ今日もルルイエは平和だぁ。ここは一つハニーに送るラブソングでも歌いたくなってしまうなぁ!」

 

深き者「ダ、ダゴン様ーーー!!」

 

ダゴン「ん〜?どうしたのだブリよ。今私はハニーに送るラブソングを歌おうとしていたのだ。邪魔をしてくれるな」

 

ブリ「ラブソングなんて歌ってる場合じゃないですよ!ク、クトゥルフ様が!黒い穴、ルールブックの門に顔だけ突っ込んでます!どうやら定治の奴がやらかしたみたいです!」

 

ダゴン「……は?」

 

ダゴン現場へ急行。

 

そして現場を見る。

 

ダゴン「な、何やっとんじゃあのアホォォォォォ!?」




ミ=ゴ
優れた科学技術、医療技術を持つ生物。鉱物資源の採取の為地球にいたりする意外と身近にいるかもしれない神話生物。雪男の正体とも言われている。基本的に人間という種に対して興味はないが、もし彼らの怒りを買ってしまった時生きたまま脳を引きずりだされる事があるそう。逆に気に入った種にも褒美として脳を生きたまま引きずり出して様々な場所へ連れて行ってくれるらしい。


ルールブック第0章"禁断の叡智"
隠されていたルールブックの秘密の章。これを使うためには所有者の血で目次にある0章のタイトルを見つけ、決められた言葉を言って0章の封印を解く必要がある。この章を解放した時、ルールブック所有者はありとあらゆる神話魔術と知識を手に入れ、死者の尊厳すら踏みにじる魔術すら行使できるようになる。わかりやすくクトゥルフ神話TRPGで例えるとクトゥルフ神話技能が100%になります。

というわけで御大の活躍は次回です。

あ、そうだ(唐突

原作3巻は後少しで終わる予定です。


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とんでもないの、来ちゃいます!

時間は少し遡り定治がクトゥルフを呼び出し大爆笑している頃、父である夢桐が0章を解放した定治を校舎の屋上で見下ろしていた。

 

『全く、相変わらずお前は手間のかかる子だよ定治』

 

苦笑する夢桐はタバコを口に咥え火を点けると、校舎を包む結界を一瞥する。

 

『フム、子供の群れの割にはよくやっている、と言いたい所だがこれでは不十分だ。コレではアレ(クトゥルフ)の脳波を防げない』

 

そう呟くと夢桐はタバコを咥え一息吸うと肺に溜めた煙を吐き出した。

 

夢桐が吐き出した煙は空中に搔き消える事なくゆっくりと上へと向かっていき、やがて結界にぶつかる。

 

瞬間、結界がソーナ達が張っていた物とは全く別の結界に変わり果てる。

 

だがそれに気づいた者は誰もいない。

 

『これでいい。……ん、やれやれ手間のかかる奴がもう一人いたな』

 

一つ目的を終えた夢桐は次に手の平に大きな魔法陣を描くとそれに腕を差し込み、何かを力任せに引っ張るとそこには銀髪の美少女が現れた。

 

『ハハハ、無様だなニャル』

 

先程までの活躍からあっけなく退散させられたニャルラトホテプを夢桐が嘲笑するとニャルラトホテプは夢桐の嘲笑に対して恥ずかしそうに目を逸らしてしまう。

 

『あ、あまり笑わないで下さいよぅ……まさか私が最初のターゲットだとは思わなかったんですって……』

 

『フッ、相変わらずバカで傲慢な奴だ。あの中で一番強いのは間違いなくお前、そしてお前は定治の友である一誠くんに腰掛けていたのだ。お前がいの一番に狙われない訳がないだろう。』

 

『……ハッ!!』

 

『いや今気づいたのかお前』

 

ようやく定治に最初に狙われた理由を理解したニャルラトホテプを見て夢桐は呆れたようにため息をついてしまう。

 

『全く、こんなのが混沌の象徴とは。呆れてため息しか出ないな』

 

『まぁまぁそう言わないで下さいよ。こう見えて貴方には感謝しているんですって。ありがとうございます、貴方が定治さんの退散魔術をハッキングしてくれたお陰で私は宇宙の果てに飛ばされずにすみました』

 

礼を言うニャルラトホテプに無桐は無表情でタバコを吸いながら嫌味のように呟く。

 

『ほう、礼を言えるくらいには成長していたか』

 

『ハァ……相変わらず冷たいですねぇ。我が兄弟、一にして全、無明の霧、門にして鍵、ヨグ=ソトース』

 

ニャルラトホテプが夢桐の本来の名を口にすると夢桐は眉を顰めながらタバコを一口吸うと肺に溜めた煙をニャルラトホテプの顔めがけて吐き出した。

 

『今この時の私の名は阿見夢桐、だ。その名で呼ぶな愚妹』

 

『ゴホッゴホッ!?ちょっと!タバコの煙を人にかけないで下さい!何怒ってるんですか!本名言っただけでしょゴホッゴホッ!?ハイハイわかりましたよ!言わなきゃいいんでしょ言わなきゃ!全く貴方程の存在が人間のフリをして子育てをしているなんて……最初に聞いた時はひっくり返るほど驚きましたよ』

 

『イースに実際に体験してみないとわからない事もあると言われたからやってみているだけだ。実際やってみれば存外難しく面白いしな。……やりすぎて偶に矢儀にシバかれるが』

 

『アレは加減ってもの知りませんからねぇうわっぷ!?なんで!?』

 

『ちょっと嫌な事思い出したから八つ当たりしただけだ。まぁそんな事はどうでもいい『良くないですよ!?』ちょうどお前に一つ聞きたいと思っていたんだ。何故お前があの程度の奴らに手を貸した?お前が興味を持つような連中でもないだろう』

 

『えぇ……貴方なら知ってる筈でしょゴホッゴホッ!?だから煙顔ににかけないで!わかりましたよ説明しますよ!!いいですか、まず定治さんには普通の人があまり持っていないのを大量に秘めています。それはーーー』

 

 

 

ダイスの女神に一通りの罵詈雑言を言い終え、定治は呼び出してしまったクトゥルフを眺める。

 

『ンゴ、ンゴゴゴ……グガァァ……』

 

現在定治の眼に映るのは門から顔だけを出し、大きな鼻提灯を膨らませながら爆睡しているクトゥルフの姿。

 

「(親父が察知して結界張ってくれてるだろうけどマジでやばいぞコレ……うわっ、ダゴンさんからめっちゃ通知くるんだけど。これ絶対俺後でシバかれるじゃん……)」

 

「な、なんだコイツ……!?」

 

「わからないわ、ただ一つだけわかるのはアレが魔王に匹敵するとてつもない力を持っているという事だけよ!絶対に刺激してはダメよ!定治、あなたあんなモノまで呼び出せたの……!?」

 

リアス達は眠っていてもなお感じ取れるクトゥルフの強大な力に冷や汗を流していると定治はスマホの画面に映るダゴンのチャット内容を見て冷や汗をダラダラ流す。

 

そんな中校庭に置かれていた門から一旦帰ったユキがエネルギー補給を終えて口から血を滴らせながら顔を出した。

 

『ふぅ、エネルギー補充完了。待たせたわね定治。さぁ行くわよ……あ』

 

エネルギー補給を終えやる気満々のユキが見たのは門から顔だけ出して爆睡しているクトゥルフ、そしてスマホを見て冷や汗をダラダラ流す定治。

 

この二つを見てユキは定治がファンブルしたのを理解し、すぐ様Uターン。

 

『あらやだいけない。そういえば今日はムーンさんのドS講座の日だったわ。今から行かないと』

 

逃げよう。ユキがそう考えた直後、逃がさんとばかりに定治がユキの翼をガッシリと掴んでユキを人とは思えない力で門から引っ張り出した。

 

『 今 日 は 休 め 』

 

ニッコリと笑い脅してくる定治を見てユキは汗をダラダラ垂らしながらどうにか抵抗して逃げ出そうとするがそれでも定治は手を離さない。

 

『イヤよ!何でアレが来てるのよ!?帰らせて!お願いだから帰らせて頂戴!ユキ一生のお願いよ!』

 

『逃がさん、逃がさんぞ……お前だけは、お前だけは……!』

 

『イヤァァァァ!?』

 

校舎にユキの絶叫が響いた数分後、次に現れたのはショゴス。彼は定治からの依頼でアーシアとイリナの警護をしていたのだが定治のピンチを察知し、校庭にやってきた。

 

『助けに来たよ定治ーーーー!!……あ』

 

『久々にぃっ!カッコよくぅっ!決まったとぉっ!思ったらぁッ!コレかよぉっ!!』

 

『ブッ!?ブベラっ!?ブボッ!?ベバッ!?ボヘッ!?』

 

『私をぉ!?鈍器変わりにぃ!しないでぇ!おぶっ!というよりぃ!なんで人間の貴方が私を振り回せるのよぉ!?』

 

定治のピンチに駆けつけたショゴスの目に映ったのは逃げ出そうとするユキの翼を掴んで力任せにコカビエルにユキの身体を叩きつける定治の姿、そして爆睡しているクトゥルフ。これらを見てショゴスはすぐ様理解した。

 

『(定治、ファンブルしてブチ切れてる……)』

 

ショゴスは思った。巻き込まれたくない、逃げよう、と。

 

『僕そろそろおやつの時間だから帰るね!』

 

Uターンしてその場から逃げ出そうとしたショゴスだがまるで何かに掴まれたようにその場から動けなくなってしまう。

 

『(まさか、まさか……)』

 

恐る恐るショゴスが振り返るとそこには瀕死状態のユキとショゴスの身体をガッチリ掴んでニッコリと笑う姿が目に映る。

 

『 残 念 だ が お や つ 抜 き だ 』

 

『やだぁぁぁ!!僕帰る!おうち帰るの!クトゥルフ様来たんだからもう僕いらないでしょ!?巻き込まれたくないから帰らせてよ!お願いだよ定治!』

 

『道連れだ……!一人でも多く道連れにしてやる……!』

 

『アツイアツイッ!?ダメェ!火はやめて!?わかったよ!わかったから手を離してよ定治!』

 

ショゴスを逃す気など更々無い定治はショゴスの身体を火で炙って脅すとショゴスはヤケクソ気味になりながら観念してその場に残る。

 

こうして二匹の神話生物の説得(物理)に終了した定治は頭に血管を浮かばせながら未だ爆睡しているクトゥルフに歩み寄り

 

『クソがあぁぁぁぁッ!!最近出ないから完璧に油断してたぁぁぁ!!何でこんな時に起きるんだよぉぉぉ!!ふざけんなやオラァ!』

 

"パァンッ!!"

 

クトゥルフから出している鼻提灯を思い切り蹴り飛ばした。

 

『定治ーーーー!?』

 

『ア、アホだわ……何で眠ってる神をわざと起こすのよ……バカだわ……あ、バカだったわ』

 

『うるせぇ!コイツは寝てる方が厄介なんだよ!』

 

蹴り飛ばした鼻提灯から大きな音が響き、ショゴスは絶叫しながら定治に詰め寄ると定治は全く悪びれもせず逆ギレする。

 

そしてついに、自らが膨らませていた鼻提灯の割れる音でクトゥルフが目覚めた。

 

『ほ、ほぇ?何じゃ?ご飯かのう?』

 

『………』

 

『………』

 

寝ぼけ眼のクトゥルフの第一声がまさか"ほぇ?"なんて思わずユキ、ショゴスは暫しの間沈黙。

 

『『(ね、寝ぼけてるぅぅぅぅ!?)』』

 

その後思わず心の中でツッコんでしまう。

 

一方で定治はというと寝ぼけ眼のクトゥルフを見て少し考えた素振りを見せた後

 

『あらやだおじいちゃん。二億年前に食べたでしょ?』

 

恐らくダゴンが聞いたら確実に定治をボコボコにするような発言をした。

 

アイツシバかれる、誰もがそう思っていたがクトゥルフは怒るどころか孝行爺のような雰囲気で微笑みを浮かべると。

 

『ホッホッホ、そうじゃったかのう?ならええか』

 

『『(えぇぇぇぇぇ!?)』』

 

定治の発言に流石のクトゥルフも激怒するのではないかと思っていたがクトゥルフは微笑みを浮かべるだけでユキとショゴスは再び驚愕してしまう。

 

『んー、ここはどこじゃ?』

 

ユキとショゴスが心の中で突っ込み冷静さが取り戻せない中、寝起きのクトゥルフは今自分が見ている景色がルルイエではない事は気づいたようで寝ぼけ眼で周りを眺める。

 

『ここは駒王町だよクトゥルフさん』

 

『駒王町?はて、何処かで聞いたような……?』

 

定治の声に首を傾げるクトゥルフ。何回か"駒王町、駒王町……"と呟いた後、近くにいる定治の顔をじっと眺め、その後合点したような表情を浮かべる。

 

『ーーおお!お主定治か!久しぶりじゃのう!そうじゃそうじゃ駒王町と言えばお主が住んどる町じゃったのう!』

 

クトゥルフは定治を見つけると愛する孫に会えた老人のように微笑んで顔から生えている触手で定治の頭を撫でる。触手で撫でられた定治は特に表情を変えず軽く会釈だけする。

 

『ウィッス、お久しぶりです。で、来てもらって悪いんだけどもう帰ってくんない?』

 

『目覚めて早々帰れコールじゃとォ!?』

 

クトゥルフ、目覚めて早々の帰れコール。流石にこれはクトゥルフも驚いたようで思わず目を見開いてしまうが直ぐに咳払いして落ち着きを取り戻す。

 

『ーーゴホン。ホッホ、そう言うでない。ほれ、久しぶりに会ったんじゃ。これをやろう、ワシからのお小遣いじゃ。じゃから帰れコールはやめんか定治』

 

『いらんいらんいらん小遣いいらん!小遣いってアンタ何時も呪いのアイテムしかくれないじゃん!いらねぇから!マジでいらねぇから!!』

 

目覚めて早々の帰れコールを止めようとクトゥルフは小遣いを渡そうとするが定治はそれを全力で拒否する。

 

理由は過去にクトゥルフがもたらしたアーティファクトの所為で色々と酷い目に合っているからである。

 

過去の経験を思い出し、定治は全力で"お小遣い"をもらうのを拒否するがクトゥルフは嫌がる定治に問答無用で"お小遣い"を手渡す。

 

『ホッホ、そう言うでない。どうじゃコレをやろう。『無理矢理ですかそうですか!』ルルイエの黄金のメダルじゃ。ついでにワシの魔力も注ぎ込んであげたぞい。スゴいじゃろ?ありがたいじゃろ?崇拝してもええんじゃよ?』

 

クトゥルフが顔から生やしている触手で手渡したのは自らの顔が描かれている黄金のメダル。

 

一見すると金額的にも歴史的にも大変価値のあるものに見える。しかしそれには最早呪いとも言えるほどの魔力が込められており、それを受け取った定治は直ぐに頭に血管を浮かせながら上半身と腕を上に上げ

 

『だからぁ!』

 

一歩踏み込み足と腰に力を入れて

 

『いらねぇって!』

 

肩と腕部分に力を入れて

 

『言ってんだろがあぁぁぁぁ!!』

 

クトゥルフの額目掛けて全力でメダルを投げ飛ばした。

 

『いった!?何をするんじゃお前!?』

 

『うるせぇ!いるかあんなもん!いいからもう取り敢えず帰ってくれ!さっきからダゴンさんのチャットの通知がやべぇんだよ!』

 

『いーやーじゃー!久しぶりのシャバじゃもん!儂ゃもう少し堪能したいのじゃー!』

 

定治は絶叫しながらクトゥルフに帰れと繰り返すがクトゥルフは首を横に振って嫌がってしまう。多少予期していたとはいえ全く言うことを聞く様子がないクトゥルフに定治はもう何度目かわかららない絶叫をあげる。

 

『クソがあぁぁぁぁ!!神って奴はコレだからぁぁぁゴフゥッ!?』

 

『定治ーーーー!?』

 

定治、ストレスにより吐血(本日二度目)

 

『大丈夫定治!?もうやめてクトゥルフ様!定治の胃はもうボロボロだよ!』

 

『ホッホッホ、相変わらずよく口から何か吐き出す奴じゃのう。愉快愉快』

 

『その程度のリアクション!?』

 

『ゼェ、ゼェ……か、神っていうのはゼェ、大体あんな感じゼェ、なのよショゴスくん……き、気分がオブッ……』

 

『解説はいいからユキちゃんは寝てなよ!』

 

現在、場には口から血を出している定治と定治に駆け寄り定治の身の心配するショゴス、鈍器代わりにされ息も絶え絶えのユキ、そして呑気に笑うクトゥルフというカオス極まりない状況。

 

だが数秒後、周りの空気は一変する。

 

『……さて』

 

「ッ!!」

 

「っ!?おぶっ!?」

 

「っ!?こ、この力……!体のふ、震えが……止まらない…!」

 

クトゥルフは先ほどまでの孝行爺のような雰囲気から一変し、その声と雰囲気は恐ろしく冷徹なものへと変わる。

 

直ぐにそれを察知した定治は懐に手を伸ばして懐に隠しアーティファクトに魔力を込めて何時でも発動できるように警戒体制に入る。

 

そして一誠達は障壁越しとはいえ、クトゥルフの膨大な力を感じ取ってしまい恐怖のあまり一誠は胃にあるものを吐き出しかけ、リアスは身体の震えが止まらなくなる。

 

他のメンバーも多少の違いこそあるが皆同じようにクトゥルフから感じる力に恐れ慄く。

 

『お主は何時までワシを見下ろしておるのだ?』

 

「なっ!?」

 

クトゥルフが見据えたのは自身の上で飛んでいるコカビエル。クトゥルフは目の前で飛ぶハエを見るような苛立った表情のまま頭頂部から自身の禍々しい手を大量に出現させコカビエルに襲う。

 

コカビエルは驚きながらも襲いかかる禍々しい手を槍で貫き、剣で切り裂いていくが禍々しい手は時間が経てば経つほどその数を増やしていきついに四肢を掴まれてしまう。

 

「は、離せ!何をするつもりだ!」

 

クトゥルフは頭上を飛んでいたコカビエルを自身と同じ目線に移動させて冷酷な声のまま告げる。

 

『お主程度の存在がワシを見下ろすな』

 

声と同時に禍々しき手はコカビエルの四肢を引っ張る。コカビエルは逃れようと必死に抗うがそれは最早無駄な足掻きでしかない。

 

コカビエルの身体から"ブチ、ブチッ"と肉が千切れる音がする。

 

やがて生々しい音と同時に

 

『死ぬがよい』

 

「グギャアァァァァ!?」

 

コカビエルの四肢が千切れた。

 

四肢が千切れたコカビエルは地に落ち、激痛に絶叫し、のたうち回った後意識を無くす。

 

聖書に名が刻まれているコカビエルが赤子の手を捻るように簡単にあしらわれたのを見て定治と神話生物を除いた一同はただ驚く事しかできない。

 

一方でコカビエルの四肢を引きちぎったクトゥルフは倒れ伏すコカビエルを鼻で笑った後、懐に手を伸ばす定治に目を向ける。

 

『ーーこの程度か。すまんのう定治、急にわしが来たから焦ったであろう。これはワシなりの罪滅ぼし、というヤツじゃ。故に、そこまで警戒しなくてよいぞ』

 

『……ああそうかい。ありがとなクトゥルフさん』

 

額に汗を垂らし、苦笑いを浮かべて懐に隠し持つ五芒星と目が書かれたアーティファクトから手を離す。冷や汗を拭いながら定治は礼を言うとクトゥルフは再び元の孝行爺のような雰囲気に戻る。

 

『ホッホッホッ、気にするな。礼を言われるほどのことはしてないぞい』

 

『あ、じゃあ気にしない事にしますね』

 

『なんじゃとぉぉぉ!?流石にもちっと感謝せい!というよりさっきまでのシリアスモードは何処行きおった!?切り替え早すぎじゃろォ!?』

 

『あ、ファンブル時間終わった『話を聞かんかこのバカタレ!』ハイハイ気をつけまーす』

 

悪びれる様子もなくルールブックの中身を確認する定治に流石のクトゥルフもツッコんでしまうが定治はヘラヘラ笑い話を聞いている様子は見られない。

 

暫く経ってクトゥルフと定治がじゃれあっていると吹雪が止み、ノフ=ケーと共に新たな力を手にした木場が現れる。

 

「待たせたね定治くん。ここからは僕も「すまん裕斗!もう終わった!」……え?」

 

定治の発言に木場が思わず固まっているとルールブックの確認を終えた定治がルールブックを手から離して、ルールブックを仕舞う。

 

ルールブックを仕舞う中でふと定治の視界の隅に倒れ伏すフリードとエクスカリバーが映ると定治は思い出したように今回の元凶の元であるエクスカリバーを拾いにいく。

 

「そう言えばコレ回収しなきゃいけないんだったな。ったく、今回はコイツの所為で大変な目に合ったぜ。……あ?』

 

定治がエクスカリバーを拾い上げたその時、エクスカリバーが光り始める。

 

まるで、相応しい担い手を見つけたように。

 

 

オマケ

 

ダゴンさんのSNS通知の一部

 

"おい!お前なにやってるんだ!?"

 

"さっさとクトゥルフ様をルルイエに戻せ!"

 

"何ファンブルしてるんだ!お前後で必ずシバくからな!"

 

中略

 

"取り敢えず私を呼べ!"

 

"早くしろ!"

 

"早く呼べ!"

 

"今なら三分のニ殺しで許してやる、早く呼べ"

 

中略

 

"筋肉バスター"

 

"地獄の断頭台"

 

"ナパーム・ストレッチ"

 

"マッスルスパーク"

 

"好きなものを選べ"




と言う事でパッパの正体、そしてちょっとボケちゃったクトゥルフ様の披露回でした。

もう早く三巻終わらせたかったのでかなり巻きでいっちゃってすみません。

今回の話でパッパの正体がわかったのでみなさんマッマの正体ももうお分かりだと思います。

まぁパッパとマッマの正体の予想は殆どの人がついてたと思いますけどね!!

因みにパッパの名前はヨグ=ソトース様の異名である"無明の霧"の"無"と"霧"を取って漢字を適当に変換しただけです。


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エクスカリバーですかそうですか

『ほう、という事はあの子は聖剣を持つのに必要な因子。それを大量に持っているのか』

 

タバコを吸いながら確認する夢桐にニャルラトホテプは頷く。

 

『ええ、私が観測した限りでも定治さんの持つ因子の量は一般の人間とは比べ物になりません。恐らく定治さんに扱えない聖剣はこの世にほぼ存在しないでしょう。もし彼がルールブックを待たず、生まれが何処かの教会だったのなら彼は世界でも、また歴史でも有数の聖剣の担い手になっていた筈です。ま、たらればの話ですがね』

 

『ああ、まさにその通りだ。あの子はルールブックの担い手で教会の生まれでもない』

 

『ええ、仰る通りです。それで話を戻しますが何故私がアイツらに接触したのかというとエクスカリバーこそその理由なのです』

 

先程まで真面目な表情で夢桐に話していたニャルラトホテプだがここでその表情はとても楽しそうな満面の笑みへと変わる。

 

『彼は我らの主が選んだ主役。主役にはそれに相応しい武器を持つべきではありませんか?だからこそ私はアイツらと接触し、エクスカリバーを間接的に定治さんに渡そうと思ったのです。』

 

ニャルラトホテプの真の目的、エクスカリバーを定治に渡す事、渡したい理由を聞き、夢桐は短くなってきたタバコとニャルラトホテプの顔を交互に見比べ微かに笑みを浮かべる。

 

『なるほど、多少は納得した』

 

『でしょう?『だがお前は二つ程忘れている事がある』ア"ッヅゥゥゥゥイ!?』

 

そして夢桐から見て若干ムカつく顔になっていたニャルラトホテプの額にまだ燃えているタバコを押し付ける。何百度もあるタバコを押し付けられ絶叫しながら転げ回るニャルラトホテプを見て夢桐は笑いを堪えきれず愉快そうにニヤニヤ笑う。

『なんて事するんですかこのバカ!流石に怒りますよ!?マジギレしますよ!?』

 

額に残るタバコの熱に悶えながらタバコを揉み消して詰め寄るニャルラトホテプ、しかし夢桐は全く悪びれる様子もなく話を進める。

 

『まず一つ『無視ですかそうですか!!』あの子は"敵"であるお前が死ぬほど嫌いだ』

 

"コイツ殺す!!"と思ったニャルラトホテプだったが夢桐の口から衝撃の新事実を聞き思わず固まってしまう。何故なら自分は定治にむしろ好かれてると思ってたから。普段行われる自分への暴力は愛情の裏返しだと思っていたから、

 

『ーーえ?私嫌われてたんですか!?』

 

『(コイツあれだけの事しといてなんで嫌われてないと思ってるんだ?)』

 

夢桐は自身と同格の存在のニャルラトホテプのバカっぷりに一つため息をついてから再度話を進める。

 

『あくまで"敵"であるお前は、だ。話を進めるぞ二つ目だが私もイースもあの子に剣に対する対応は教えたが剣術自体は教えていない。素人同然のあの子にエクスカリバーを持たせてもあまり意味がないぞ』

 

『……あ』

 

夢桐の話を聞き定治が剣術を学んでいない事を思い出し、ニャルラトホテプの表情が固まる。

 

"やっぱりコイツバカだ"

 

呆れ返るようにため息をついた後、夢桐は気持ちを切り替え屋上から聖剣を手にした定治を眺める。

 

『ま、エクスカリバーを受け取る受け取らないはあの子が決める事、見ていようじゃないか。あの子がエクスカリバーをどうするかを、な』

 

 

場面は校庭へと戻る。

 

定治が手にした途端溢れんばかりに光り輝くエクスカリバー、その様子をリアス達は驚愕した様子で眺めていた。

 

「エ、エクスカリバーがあんなにも輝いて……!あの子まさか!?」

 

聖剣を扱えるだけの因子を保有しているの!?リアスの中で浮かんだ驚愕と疑問に近くにいたゼノヴィアが頷く。

 

「ああそうだ。奴もまた天然物の因子の持ち主、しかも見る限り保有している量は恐らく私よりも遥かに多い。とんでもない男がいたものだ」

 

ゼノヴィアは数日前にファミレスで定治に斬りかかってしまった時の事を思い出す。あの時本気ではなかったとはいえ自分は定治を斬ろうとしていた。しかし実際には定治に白刃取りされてしまい定治自身はは全くの無傷だった。

 

それが"おかしい"と何故あの時気づかなかったのか。

 

自身に与えられていたのは破壊の聖剣、白刃取りなんてしようものなら英雄並みの身体能力を持つ人間とは言え多少の被害は出ていた筈。だが定治は無傷だった、あの後それを疑問に思ったゼノヴィアは考えた末にある仮説に至った。

 

"定治は大量の因子を持っており、それを感知したエクスカリバーが定治を怪我させないようにしたのではないか"という仮説に。

 

仮説をたてはしたが実際は半信半疑だった。何しろ白刃取りしたけど無傷だったなどという前例がない。だが今確信した。奴は持っていたのだ。聖剣が殺すには惜しむほどの大量の因子を。

 

 

しかしゼノヴィアが自らの仮説に確信を持った一方で定治はというと

 

「ーー気に入らねぇ」

 

「え?」

 

『あ、ヤバいよあれ』

 

『完全に不機嫌な顔してるわね……』

 

『まさか……』

 

光り輝くエクスカリバーに苛立ったように眉を顰めていた。

 

そして小さな声で呟いたセリフに一誠が首を傾げ、ショゴスとユキとミ=ゴが定治が何かやらかすのを確信したその時、定治がエクスカリバーの刀身を校庭に突き刺す。

 

「身体能力強化、脚部魔力付与」

 

エクスカリバーを校庭に突き刺したその次に定治は自身の身体能力を上昇させる呪文と頑丈なものでも装甲、結界を貫通し衝撃が行き渡るようにする魔力付与の呪文を唱える。

 

そしてーーー

 

「いるかこんなもん」

 

大地に突き刺した聖剣を蹴りで叩き折った。

 

「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」

 

『やっぱり……』

 

『やると思ったわ……』

 

『相変わらずとんでもない事をする……』

 

刀身が真っ二つに折れたエクスカリバーを見てリアス達は驚愕した表情を見せる。その一方で"定治ならやりかねない"と思っていたショゴス、ユキ、ミ=ゴは驚く事なくため息をつく。

 

リアス達の驚きが治らぬ中、定治はまだ虫の居所が悪い様子で折れたエクスカリバーにさらなる蹴撃を浴びせ続ける。

 

「"貴様こそ我が担い手に相応しい"みたいな感じで上から目線で輝きやがって、ホント気に入らねぇ。武器如きが勝手に俺の武器って決めてんじゃねぇよ」

 

何度も何度も執拗に蹴撃を与え粉々になってしまったエクスカリバー。粉々になったエクスカリバーを見てようやく怒りが収まったのか定治は粉々になったエクスカリバーに唾を吐き捨てる。

 

「俺の武器は俺が決める。テメェ如きが決めてんじゃねぇよ駄剣が」

 

「……ハハ、アハハハハ!!」

 

定治が唾を吐き捨てると何処からか笑い声が聞こえる。声の方を向いているとそこには涙を流しながら泣いていてる木場の姿が目に入る。

 

「誰もが憧れた聖剣をたった気に入らないっていう理由だけで叩き折るなんて!ハハハハ!定治くん、やっぱり僕は君と出会えて本当に良かった!」

 

あんなにも憧れた聖剣、あんなにも憎んだ聖剣。それがあんなにぞんざいな扱いをされるなんて誰が思うだろうか。それも"貴様こそ我が担い手に相応しい"みたいな感じで上から目線で輝いていたからという理不尽極まりない理由で。粉々になった聖剣を見て木場の心に聖剣に対する憎しみが消えていき、むしろ粉々にされた聖剣に対する哀れみが浮かんでくる。こんな気持ちにさせられるとは思わなかった。聖剣への憎しみが消えて一つとても清々しい気分になれた。木場は再度定治と出会えた事に感謝して心から大笑いする。

 

木場の声に定治は戸惑いながら「お、おう……いきなりそんな事言うなよ……」と照れ隠しに頬を人差し指で掻いていたが木場の後ろに四つん這いの姿勢でコソコソ逃げ出そうとしているバルパーが目に入ると目の色を変える。

 

『ノフ=ケーさん』

 

『あいよ』

 

定治が呼ぶと同時にノフ=ケーがバルパーを取り押さえる。ノフ=ケーの前脚で押さえつけられ、怯えた様子でもがくバルパーに定治はゆっくりと歩み寄っていく。

 

「まあ待てよクズ野郎」

 

"ズガンッ!!"

 

「ヒィィィィィッ!?」

 

バルパーに歩み寄った定治はバルパーの顔のすぐ横にエクスカリバーを砕いた足をぶつける。砂煙を撒き散らしながら足を引き抜くとそこにはくっきりと定治の足型ができており、お前の頭くらい何時でも潰せると定治は遠回しに警告するとバルパーは怯えきった様子で顔をグチャグチャにする。

 

「裕斗、コイツ仇なんだろ?どうしたい?お前が決めろ」

 

定治の声に木場の表情が変わる。確かに聖剣への憎悪は消えた。だがそれとバルパーへの憎悪は別。木場の中に同志の無念、そしてバルパーに対する恨みが膨れ上がる。

 

「……少しソイツを動かないようにしてもらえるかい定治くん」

 

「あいよー」

 

木場は冷酷な表情で定治に頼むと、定治は躊躇無く慣れた手つきでバルパーの四肢の関節を外す。

 

「ガッ!?ギィヤァァァァ!?」

 

「四肢の関節外しただけだろ……そんなに騒ぐんじゃねぇようるせぇなぁ」

 

四肢の関節を外され、あまりの痛さに醜悪な顔で悶え苦しむバルパーに定治は見るに耐えないと言わんばかりに舌打ちを一つする。

 

「た、助けてくれ!主よ、どうかこの私に憐れみを!どうか!どうか!」

 

定治の苛立った舌打ちに自らの運命を悟ったバルパーは破門された身でありながら主に祈りを捧げ自らを助けてくれる奇跡を願う。その様は余りにも無様で自分勝手なもの、それを見て定治が笑う。

 

「アッヒャッヒャッ、教会から破門されてんのに今更神様へお祈りかよ。んー、そうだな。一つ、いい事を教えてやるよ」

 

無様な様を見せるバルパーを笑う中、定治の中でほんの少しだけ悪意が芽生える。この咽び泣いて祈り助けを乞う"クズ野郎"に絶望を与えたい、というちょっとした悪意が。定治は心の中で芽生えたこの悪意に一切逆らう事なくバルパーの耳元である事を呟く。

 

「この世にはもう聖書に記された神様はいないらしいぜ。だからお前の祈りは届かない。"主はいませり"ならぬ"主はいません"ってな。もうお前を助けてくれる奴なんて何処にもいねぇ。今更祈った所で遅ぇんだよ」

 

"Balance Break!!"

 

「ほら、届かなかっただろ?」

 

木場の禁手化が終わったのを確認し、定治は悪意を含んだ満面の笑みで呟いた後その場から離れる。

 

「双覇の聖魔剣。同志たちが僕に授けてくれた奇跡の結晶。この剣で、貴方を地獄に送る!」

 

定治が場から離れた事でそこにいるのは絶望を浮かべるバルパーと聖魔剣を携える木場。聖魔剣は目の前の男の命を奪わんと聖なる光と邪悪な光を携えその刀身を光らせる。絶望を浮かべるバルパーの視界に聖魔剣が映った時バルパーの中で認めたくなかった事実を確信してしまう。聖と魔、それは本来交わり合う事はない対極の力。それが今あの剣に混ざり合っている。それは魔を象徴する魔王も聖を象徴する主もこの世にいないと出来ないありえない事象。それが今まさに混ざり合っているという事はあの男が言っていた通り、もう主もいないという事。

 

「聖魔剣……!バ、バカな!あ、ありえん!魔王のみならず本当に、本当に主も死んだというのか!?」

 

「二回も言うつもりはねぇよ。じゃあな」

 

驚くバルパーに定治がメンドくさそうに呟いた瞬間バルパーの首と身体が木場の手によって切り離される。

 

バルパーの首を切り落として数秒後、長い間果たせなかった亡き同志達の仇を討った木場は涙で顔を歪ませ膝から崩れ落ちてしまう。今現在木場には後悔、達成感、一体何が宿っているのだろうか、それは定治の知らぬ所。

 

定治は崩れ落ちる木場の肩を励ますように優しくポンと叩いた後、バルパーの首を拾い上げショゴスがいる方向へと放り投げる。

 

『ショゴスくん、コイツ食っていいぜ』

 

『わーい!いただきまーす!』

 

バルパーの首を放り投げ、ショゴスに食べても構わないと伝えるとショゴスは嬉しそうな表情でバルパーの首と身体を丸呑みにする。その様子を定治は無表情で少し眺めた後、表情を何時ものヘラヘラとした笑い顔に戻してリアス達の元へと歩み寄る。

 

「部長お待たせしてすみません。終わりました」

 

ヘラヘラと笑いリアスに全て終わった事を伝えるとリアスが何か言うより早くゼノヴィアが憤怒の表情で定治の胸倉を掴みあげた。

 

「定治!貴様主が死んだと言ったな!?戯言にも程があるぞ貴様!」

 

「(耳いいなコイツ)」

 

先程定治がバルパーに向けて呟いた"主は死んだ"という言葉を耳にしたゼノヴィアが激しい勢いで詰め寄る。しかし定治はゼノヴィアの怒りに表情を変える事なくただヘラヘラと笑う。

 

「俺はある奴からそう聞いたのを信じてああ言った。信じる信じないはお前次第だ。そうだ、お前はどう思う?白龍皇」

 

「「「っ!?」」」

 

ヘラヘラと笑いながら定治が視線を上空に向けるとそこには白い龍のような甲冑を身に包んだ男が上空で定治達を見下ろしていた。定治が言うまで気がつく事すら出来なかったリアス達が驚く中、定治が白龍皇と呼んだ男は顎に手を当てて考える素振りを見せる。

 

「……そうだな。アザゼルは前の戦争で神は死んだと言っていた。なら恐らく死んだのだろう。死んだと思われる現象もチラホラ見られているしな」

 

堕天使の総督アザゼルが神が死んだ事を認めている、一同が驚く中何時の間にかゼノヴィアの手から離れた定治が乱れた制服を正しながら白龍皇に問いかける。

 

「ご意見ありがと白龍皇。そんで、何の用だ?アザゼルって奴の使いか?」

 

「そうだ。コカビエルとその部下の回収でここに来た。こちらから手出しをするつもりは一切ない、と言えば信じてもらえるか?」

 

衝撃的な事実を聞き置いてかれてしまっている一同を他所に定治と白龍皇は話を進めていく。

 

「おう、早いとこ回収してくれ。俺これからダゴンさんにシバかれる予定が入ってるから。嫌な事は早めに済ませておきたいタイプなんだよ俺」

 

「あ、ああ」

 

自らを待つ運命(オシオキ)を白龍皇に伝えると白龍皇は戸惑いながらも了承し、コカビエルとフリードを回収して再び空へ上昇する。しかし、途中何かを思い出したようで一旦上昇を止めると視線をリアス達のいる方向、特に一誠へと向ける。

 

「お前達とは近い内また会うだろう。それまでに強くなっておいてくれ。特に今代の赤龍帝、出来ればその間抜け顔を2度と見なくて済むくらいには強くなってくれ。そうでなければつまらない」

 

そう言い残し白龍皇は飛び去っていく。暫く白龍皇の飛んでいく方向をジッと眺めていた一同だが定治のパンッ!と手を叩いた音で意識をヘラヘラと笑う定治へ向ける。

 

「さて、部長。積もる話もあるでしょうがそれはまた後日にお願いします。ちょっと無事に済みそうにないと思うんで……」

 

途中までヘラヘラと笑っていた定治だが後半になってくにつれその声はか細く、表情は見るものを哀れに思わせるものへと変わっていく。

 

『ダ、ダゴンさーん……』

 

そして周りの了承を得ずに定治はルールブックを開き、ダゴンを呼び出す。定治の表情につられてかルールブックもまたその光り輝き方が心なしか哀れなものに見えてくる。

 

ルールブックがこの世のものとは思えない色で光り輝き、ダゴンを呼び出す門が設置された瞬間門から六メートルはあるだろうダゴンが勢い良く現れ、その勢いのまま定治の顔面にドロップキックを食らわせる。

 

『何やっとるんじゃこのアホォォォォっ!!』

 

『ヘブウゥゥゥゥッ!?』

 

凄まじい勢いのドロップキックは定治の顔面に突き刺さり、奇妙な叫び声と同時に定治の身体が吹き飛んでいく。しかしダゴンはドロップキック一発で許すつもりなど更々無く吹っ飛ぶ定治を捕まえ空高く舞い上がると筋肉バスターの姿勢をとって地面に急降下。

 

『よりにもやってクトゥルフ様を呼ぶなこのドアホォォォォ!お前と言う奴はぁぁぁ!!』

 

『ギャアァァァァ!?』

 

筋肉バスターをその身に受け悲鳴をあげる定治。流石に見ていられなくなったのかここでクトゥルフが口を挟む。

 

『ダ、ダゴンさんやそれくらいにしておきなさい!つい応じてしもうたワシも悪いんじゃから!』

 

あまりの痛みに身体をピクピク震わせる定治、しかしダゴンの怒りは未だ治っていない様子でクトゥルフを睨み

 

『クトゥルフ様は黙ってて下さい!これは私と定治の問題です!死ねや定治ゥゥゥ!!』

 

『ギャアァァァァ!?折れる!折れるぅぅぅぅ!』

 

容赦無く定治にアルゼンチンバックブリッカーを食らわせた。

 

 

時間にして十数分が経った頃、ようやく怒りが治ったのかダゴンが手をパンパンと叩き定治を睨む。

 

『今回はこのくらいにしてやる。次はないぞ定治、いいな?』

 

『…………』

 

『返事ィ!!』

 

『ヒャ、ヒャイ……』

 

ダゴンにありとあらゆる技を食らわせられた定治は指一本ですら動かすのがやっとの状態。その定治に次は無いと警告し、返事をさせた後ダゴンは鼻息をならしてクトゥルフの元まで歩く。

 

『さ、帰りますよクトゥルフ様。ハニーがご飯を作ってくれてますので』

 

『え、ワシもうちょっとシャバを楽しみたいんじゃけど……』

 

ダゴンが笑顔で帰りましょうと言うとクトゥルフは先程の光景を思い出しながら若干控え目に帰りたく無いと伝えるがダゴンが有無を言わせぬ表情でクトゥルフの頭を門に向けて押す。

 

『ワガママ言わないで下さい!あなたまだ水陸両用になってないんですから!なるまでは我慢!』

 

『あ、あぁぁぁんまりじゃぁぁぁ!』

 

『叫んでもダメなものはダメ!今日はハニーがカニ飯を作ってくれてるんだから早く帰りますよ!さぁ早く!』

 

『な!?カ、カニじゃとぉぉぉ!?カニはやめんか!わしゃカニ嫌いなんじゃ!というよりわしゃ魚介類よりお肉派じゃぁぁぁ!』

 

『タコみたいな触手生やしてんのに何言ってるんですか!好き嫌いしない!ハニーの手作り料理を食べないとは言わせませんよ!』

 

『イ、イヤじゃぁぁぁ!!』

 

有無を言わせぬ表情のダゴンに問答無用でルルイエへ強制帰還させられクトゥルフが悲鳴を上げながら去っていく。この光景を見終え、ユキとショゴス、ミ=ゴはどっちが上司だっけ……?と疑問に思うがそう言えばルルイエは大体あんな感じだったなと思い出し自身らも定治の家へ帰る事にする。

 

『僕たちも帰ろっか。ユキちゃん乗せてって』

 

『ええいいわよ。今日は一刻も早く帰って休みたいわ……』

 

『それがいい』

 

『アタシも実家に帰るとするよ。お疲れさん』

 

『お疲れ〜』

 

帰る事にしたショゴスはその身を本来の姿から人間の子供のものへと姿を変え、ノフ=ケーが帰るのを見届けた後ピクピクと震える定治を担ぎ上げ置いてけぼりのリアス達へ手を振る。

 

「じゃ、みんなまた会おうね!バイバーイ!ほら行くよ定治!」

 

「…………」

 

「定治返事!」

 

「ウィ、ウィッシュ……」

 

こうして周りを置いてけぼりにしてショゴス達一同は定治を抱え家へと帰っていった。

 

 

「ひ、酷い目にあった……」

 

「死んでないだけマシ。よし治った」

 

自宅へ帰る途中、定治はユキの背に乗りながらミ=ゴによる治療を受けていた。ミ=ゴが持つ医療技術は人間より遥かに進んでおり定治の傷という傷は自宅まで帰るまでの時間だけで治療の全てを終え、定治の受けた傷は全て元どおりになっていた。

 

「サンキューミッちゃん。あーもう疲れたぁ……こうなったのも全部アイツが悪い。ニャルの野郎、今度会ったら絶対シメてやる。」

 

ようやく傷が治った定治は今回の諸悪の根源であるニャルラトホテプの顔を思い出し怒りでその心を燃やす。やがて治療を終えた数分後、定治の家の大きな敷地が見え我が家に着いてホッと一息つく一同だが庭で待っていたと思われる銀髪の少女、ニャルラトホテプの顔を見た瞬間全員の表情が変わる。

 

「ちょっと定治さん!どうしてエクスカリバー砕いたんですか!私がアレを間接的に渡す為、どれだけ時間を割いたと思ってるんですか!?」

 

「ショゴスくん、確保」

 

「はーい」

 

「え、ちょええ!?早速ぅ!?」

 

ニャルラトホテプが出会い頭に何かを言っている、しかし一同にとってそんな事はどうでもいい。定治がショゴスに命じると先日あんなにニャルラトホテプを恐れていたショゴスでさえなんの躊躇いもなくニャルラトホテプの足を掴んで動けなくする。只ならぬ気配を感じたニャルラトホテプは焦った様子で定治に話しかける。

 

「お、落ち着いて下さい定治さん!話をしに来ただけですって!もう何も企んでませんって!」

 

「確かにお前は話をしに来ただけなのかもしれない。だけど俺は違う」

 

何時ものヘラヘラとした笑いを浮かべず本気の殺意をニャルラトホテプに向ける定治。その目に殺意以外の感情は無く、淡々とニャルラトホテプを殺す為の準備を始める。

 

「身体能力強化、炎の外套、脚部魔力付与、旧神紋章製作。ユキちゃん」

 

「ええ、ちょうど誰かに八つ当たりしたい気分だった所よ「私貴方の上司なんですけど!?」諸悪の根源ですね、わかりますわ「ちょっとぉぉぉぉ!?」」

 

焦るニャルラトホテプと殺意全開の定治達。やがて全ての下準備を終え、燃え盛る炎の衣を纏い、足に五芒星と目の印を刻んだ定治がユキの名を呼ぶとユキは宙に浮かぶ定治の付近に滞空する。

 

「ニャル、コイツを見てくれ。コイツをどう思う?」

 

「すごく…リュ◯ガのファイナルベントです……え、まさか」

 

ニャルラトホテプが聞かれた事に素で返し、その途中で嫌な予感が思い浮かび額に汗を垂らすと定治がニャルラトホテプの嫌な予感を肯定するようにニッコリと笑い

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「な、なんでこうなるんですかぁぁぁ!?アッーーーー!!」

 

定治のファイナルベントがニャルラトホテプに直撃。ニャルラトホテプは哀れ絶叫と共に爆散。

 

そしてファイナルベントを終えた定治は自身にかけた魔術を全て解くと軽く伸びをした後ショゴス達と一緒に自宅の玄関を潜る。

 

「あー、スッキリした飯食おうぜ飯」

 

「はーい!」

 

「本来不要だが貰うとしよう」

 

「私はお茶だけでいいわ」

 

こうして定治の濃い1日は終わりを迎えるのであった。

 

 

夜の暗い空、そこには今代の白龍皇ヴァーリがコカビエル達を抱えながら誰かと会話をしていた。

 

「アザゼルか?コカビエルを回収した。これから戻る。……ああ、間違いない、確定だ。アイツがアーミテイジだ。」

 

 

 

オマケ

 

定治がエクスカリバーを追った時のパッパとニャルラトホテプの反応

 

ニャルラトホテプ『ハ、ハァァァァ!?お、折ったぁぁぁぁ!?ハァァァァ!?意味わかんないんですけどぉぉぉぉ!?』

 

パッパ『アッハッハッハッハ!!アッハッハッハッハ!!サイコー!定治サイコー!流石我が息子!アッハッハッハッハ!!』




クトゥルフ様
この作品のクトゥルフ様について覚えて欲しいのは以下の点
・基本的には優しい。多少の無礼も許してくれる。目の前でタップダンスを踊るくらいならセーフ。
・あまりにも無礼な奴(例えばずっと長い間クトゥルフを見下ろし続けたコカビエル)には容赦無し
・偶にお小遣いをくれる(オマケでクトゥルフ様の魔力もついちゃいます!)
・魚介類よりお肉派
・面倒見てもらってるダゴンとハイドラには部下だけど頭が上がらない
・ハスターが死ぬ程嫌い
これだけです。

身体能力強化
TRPGのルールブック的には完全という魔術の応用版。一時的に定治の精神力、もしくは魔力を媒介に身体能力を上げるという魔法

旧神紋章作成
旧神の力が宿った印を作成する魔術。アザトース様に効くならニャル様にだって効くんじゃね?(小並感)って感じで使いました。

炎の外套はまた今度に先送り。

と言うわけで原作3巻終了。今回の話は僕が

内臓マグマム「エクスカリバーって折ったら面白そうやん?」

という欲望に逆らわなかった結果出来た話です。どうもすみませんでした。

今回定治が結構なゲスッぷりを披露しました。これについては自分で少しやりすぎたな、と思いました。次回はこうならないようにしていきたいです。出来ればですが。

それと僕は仮面ライダーだとオーガのデザインがカッコ良くて好きです(小並感


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そうです私がアーミテイジです
プールだぜヒャッハー!




ばかるてっと の にちじょう !

一誠「なぁ定治。アイラブユーって十回言ってみ」
定治「アイラブユー」×10
一誠「俺の事は?」
定治「アイラァブユゥゥゥゥ!!」ガシッ
一誠「Oh!アイラァブユゥゥゥゥトゥゥゥ!!」ガシッ
定治一誠「「yeaaaaah!!」」全力のハグ
元浜「おい!俺の事は!?」
松田「俺も俺も!」
定治一誠「「アイラァブユゥゥゥゥ!!」」ガシッ
元浜松田「「Oh!アイラァブユゥゥゥゥトゥゥゥ!!」」ガシッ
定治一誠元浜松田「「「「yeaaaaah!!」」」」全力のハグ
女子A「えー、じゃあウチのことはぁ?」
定治一誠元浜松田「「「「ア、アイラブユゥ?(困惑」」」」
女子A「ウチもアイラァブユゥー!」
定治一誠元浜松田「「「「yeaaaaah!!(ノリ100%」」」」
女子A「イェーイ!」
村山「ちょっとA!?何しようとしてんの!?」
女子A「えー?ノリでイケメン(定治)に抱きつけんじゃーん。ノらない手は無いっしょー」
村山「!?」

イケメン は それだけで 得。

男子高校生は偶にノリでこのような意味のわからない行動をします。あくまでノリです。決してホモではない、いいね?


 

 

 

コカビエルとの戦い、俺がダゴンさんにシバかれてから数日が経ちました。あんな闘いがあったにも関わらず、学園では何事も無く授業が始まり平和な日々が続いております。しかしある一点において、俺の学園生活の中で変わったものがあります。それはーーー

 

「定治くん!オカルト研究部に行こう!ほら早く!」

 

「お、おう」

 

祐斗がなんかこう、近い。

 

こら、手を繋がない。

 

そこの女子キマシタワーじゃねぇ!何も来てねぇから!

 

 

コカビエルとの戦いから数日たった夜の旧校舎。そこでオカルト研究部のメンバーが集まりとある事について会談を行っていた。会談には定治ももちろん参加しており、木場の隣で紅茶に口をつけながら一誠とアザゼルが接触した時の事を聞いていた。

 

「ーーーといった理由でアザゼルはコカビエルの企みを察知し、ついでに俺の神器への興味も兼ねてこの街に潜入していました。本来はあの時来た白龍皇がコカビエルの始末をつける予定だったそうです。そして今回の件によって堕天使天使悪魔のトップがこの地で会談を行う事が決定した。アザゼルはそう言ってました」

 

「へぇ、アザゼルがそんなこと言ってんのか。で、部長は知ってるんです?」

 

「ええ、先程連絡が来たわ。さっき一誠が言ってた通りこの前のコカビエルの件により、一度三勢力のトップ同士が集まり今後の関係について話し合う会談が行なわれるわ」

 

リアスはここで一旦話を区切り、視線を定治に写す。

 

「先日の戦いは各勢力でも色々と問題になっているわ。原因はわかってると思うけど貴方よ定治」

 

「ま、でしょうねぇ」

 

コカビエル戦がどうなったかは各勢力に知れ渡り、阿見定治という名は三勢力の間で一気に広まった。定治もそれを承知しているはずだが定治は気にしてる様子は無くいつも通りヘラヘラ笑っている。そんな定治を新しくリアスの眷属になったゼノヴィアがジッと見据える。

 

「コカビエル討伐はほぼお前一人の力でやったのだ。当然といえば当然だ」

 

「おうそうだな神がいなくなったのを教会に言ったら追い出されたからムシャクシャして悪魔になったゼノヴィア」

 

「それを言うな貴様ァ!」

 

「あっぶね!?」

 

定治の一言にゼノヴィアが思わず斬りかかる。しかし定治は若干焦りながらも見事に白刃取りを成功させる。だが剣を白刃取りをされてもゼノヴィアは一向に剣を離す様子は無くグイグイ剣を押し続け、定治もそれに対抗する。

 

「何キレてんだよバーカ!自分から言ってただろバーカ!」

 

「自分で言うのは良いが貴様に言われるのは気にくわん!」

 

「殺すぞテメェ!!」

 

「私が先に殺してやるとも!」

 

「「グギギギギッ!」」

 

押して押される二人を見てリアスは呆れたようにため息をつくと視線を一誠へと写す。

 

「しかし参ったわね。アザゼルがこの街に潜入していたなんて」

 

「……やっぱり狙いは俺の神器なんでしょうか。」

 

アザゼルの名を口にして再度ため息をつくリアスを見た後、一誠は神妙な面持ちで自身の神器を眺める。

 

「それと定治の神器も、でしょうね。でも大丈夫よ一誠は私が守るもの」

 

「部長〜デヘヘヘ」

 

神妙な面持ちの一誠を安心させるようにリアスは一誠を抱きしめる。

 

胸に顔を埋めるような形でリアスに抱きしめられた一誠はリアスの胸の柔らかさを味わうように顔を埋め、表情をニヤケたものにさせる。

 

「え、俺は!?」

 

微笑みを浮かべて一誠を抱きしめるリアスに定治が俺の事は誰も守ってくれないの!?とツッコみをいれながら未だゼノヴィアと押して押されてを繰り返していると木場がポンと定治の肩に手を置く。

 

「大丈夫、定治くんは僕が守るよ!」

 

「お、おう。ちょっと近いぞ祐斗」

 

「視線を移すとはいい度胸だな定治!」

 

「テメェは何時まで俺に斬りかかってんだゴラァ!!」

 

このゼノヴィアとの押して押されての競合い、これは約一時間後の朱乃の雷が落とされるまで続くのだった。

 

 

会談が行われた次の日、オカルト研究部は生徒会の依頼でプール掃除を行い、その褒美として学園のプールを今日一日中貸し切り状態にする事が許されていた。

 

「一番定治いっきまーす!ヒャッハー!」

 

「二番一誠いっきまーす!ヒャッハー!」

 

「三番ショゴスいっきまーす!ヒャッハー!!」

 

「飛び込みはやめなさい貴方達っー!」

 

プールには我先にと定治達が駆け込み、到着した順番にヒャッハーの掛け声と共に勢い良く飛び込んで行く。飛び込むバカ達を見たリアスは大声で止めさせようとするが既に定治達は大きな水飛沫をあげている。そしてリアスの後ろから木場がやや控えめな声を出してプールに駆け込んでいく。

 

「ぼ、僕も、四番祐斗いきまーす!ヒャ、ヒャッハー!」

 

「祐斗あなたも!?」

 

騎士の力で加速してその勢いでプールに飛び込んで行く木場にまさか木場もやると思わなかったリアスは驚いてしまう。

 

「あらあら、男の子ですわねぇ」

 

「な、なんて事……祐斗と一誠が定治に毒されてしまってるわ……」

 

「みなさーん!準備体操ちゃんとしないとダメですよー!」

 

飛び込んで行く定治達に笑う朱乃、一誠達が毒されたとため息をつくリアス。そしてアーシアが飛び込んだ定治達に向けて声を上げたと同時に定治と一誠が苦悶の表情で水面から顔を出す。

 

「「ギャアァァァァ!?足つったぁぁぁぁ!?」」

 

「定治ーーー!?一誠くーーーん!?」

 

バカ二人が足をつり悲鳴を上げるとそれに直ぐ気づいたショゴスが人間形態のまま腕だけを触手状に変えて直ぐ様二人をプール縁へと運ぶ。

 

「サンキューショゴスくん……」

 

「死ぬかと思ったぜ……」

 

プール縁に運ばれた二人はショゴスに礼を言ってつった足を伸ばして正常な状態へと戻していると、二人の元へリアスが軽く怒った様子で駆け寄ってくる。

 

「もう!準備体操もしないで飛び込むからこうなるのよ?わかった?なら私と一緒に準備体操を「「ヒャッハー!!」」話を聞きなさーい!」

 

リアスが定治達に準備体操の大切さを説こうとしたその時、足のつりが治った二人がリアスの説教を無視して再びプールに飛び込む。恐らく男子学生がプールで一番面倒くさがっているもの、それが準備体操。やらなきゃいけないのはわかってるんだけどそんな時間があったら一秒でも早くプールに飛び込みたい。もし足がつったとしてもそれはその時考えればいいじゃない。それが男子学生の心境。

 

「プハァッ!やっぱり飛び込みは楽しいな一誠!」

 

「おう!次はもういっちょ派手なので行くか!」

 

「やるやるー!」

 

「僕もやらせてもらうよ!」

 

足がつっても懲りないバカ二人とバカのノリについて行く木場とショゴス。一同満場一致の回答に気分を良くした定治はルールブックを呼び出しとある試みを行う事を口にする。

 

「いいねぇいいねぇ!みんなわかってるじゃん!ならアレやろうぜアレ!この前テレビでやってたアレ!ビヤーキさん呼んでさ!」

 

「ポテェイトォだな!よしやるか!……ん、何だコレ?」

 

「「!?」」

 

ポテェイトォをやる事にノリノリな態度を見せる一誠だがふと身体にに何かがぶつかったような感触を覚え、後ろを振り向きぶつかった物を手に取る。

 

一誠が手にしたソレは30センチほどの正方形の箱を布で覆い尽くし布の結び目に五芒星と目が描かれた札が貼ってあった。不思議そうにソレを手に取り眺めた一誠だがその近くでショゴスと定治が顔色を変える。

 

「アカァァァァン!?」

 

"バシーーンッ!!"

 

「ベブゥゥゥゥ!?」

 

「ワッショーーイ!!」

 

先ず最初に動いたのは定治。彼は一誠の頭を思わずぶっ叩き一誠の体をプール端に吹っ飛ばす。その次に動いたのはショゴス。ショゴスは定治に吹っ飛ばされた一誠が手離した箱を体を膨らませて覆い隠すように回収する。

 

一誠をプール端に叩きつけた定治はショゴスが箱を回収したのを確認した後、ショゴスと一緒にプールの角まで移動してコソコソと話を始める。

 

「ちょ、ショゴスくん何出しちゃってんの!?」

 

「さ、定治と一誠くんを助けた時に出しちゃったみたい……ごめんよぅ定治」

 

「あ……それ俺も悪いみたいなもんだ……。こっちこそごめんなショゴスくん。ショゴスくん、これそう簡単に出てくるとマズいからちょっと奥の方に入れさせて貰うわ」

 

「うんわかったよ定治。ア、アハハハ!そ、そこまで深く手を入れないでよ定治!くすぐったいよ!」

 

話を終えた定治はくすぐったそうにしているショゴスに肩まで身体を入れて箱を奥に隠してからプール端に吹っ飛ばされた一誠に両手を合わせて頭を下げる。

 

「いやー、マジですまん一誠!お前が拾ったコレ、多少の封印をしてはいるんだけど中身を見ちゃうとヤバイから思わず叩いちまった。マジすまんかった!」

 

「わ、わかった……けどアレには何が入ってんだ?結構慌ててたけど」

 

一誠は定治の謝罪に多少思う事はあるが一先ず許すとその次に先程の定治の焦り具合からあの箱には余程のモノが入ってるのではないかと思い、定治に箱の中身について訊ねると定治は少しの間バツが悪そうに口をどもらせたが暫くして決心がついたのか真面目な表情を見せる。

 

「あー、アレにはとある場所から回収した銅鏡が入ってる。わかると思うけどただの銅鏡じゃない。アレはガタノソアっていう神を直接見れるアーティファクトなんだよ。戦闘でも偶に使うんだけど扱いが難しくてな。普段は旧神の紋章で封印してショゴスくんに待たせてるってわけ」

 

「ガタノソア……?それはどんな神なんだい定治くん」

 

「わかりやすく言うと存在そのものがゴルゴンの目みたいな奴。見るものを石みたいにさせてしまう強力な呪いを持った神。この前呼んじまったクトゥルフさんの息子でもある」

 

「そ、そんな奴がいるのかい!?」

 

「おういるぞ。ガタノソアさん見た目とかは怖いけどガタノソアさん自身は結構気さくだし、呪いのオンオフは意図的にできるから連絡さえ入れておけば呪いをオフにして会ってくれるぜ。まぁうっかり呪いをオンにしちゃうこともあるから会う際はとある巻物が必要なんだけど。それと昔はその力でブイブイ言わせてたらしいけど今では丸くなってな、昔の事聞くと火山の奥に引きこもっちゃうくらいには面白い性格してるんだぜ?」

 

一通りガタノソアの説明を終えた定治は最後に"ま、旧支配者の神様達は一部の例外を除いて大抵面白いのしかいないんだけど"と付け加え近くに浮いているビート板を手に取る。

 

「さて、この話はメンドクサくなったからこれで終わり!あの人は基本火山から出ないから大丈夫、今後会う事は多分ないと思うぜ。ショゴスくーん、ダゴンさんから渦巻きの作り方教わったから流れるプールやろうぜー!」

 

「うんわかったー!」

 

「待ってよ定治くん!僕も混ぜてよ!」

 

「あ!待てよ定治!そんな面白そうなの俺も行くに決まってんだろー!」

 

定治は木場を安心させるようにウィンクして話を切り上げた後、ビート板に魔力を込めて放り投げる。魔力が込められたビーチ板が水中に着地するとそこを起点にした緩やかな速度の渦巻きが発生し定治とショゴスが渦巻きに向かって飛び込むと遅れて木場と一誠も二人につられて飛び込んでいった。

 

時間は暫く経ち渦巻きの流れるプールを堪能した男一同は流れるプールに飽きたので新たな試みに挑戦していた。

 

「ゴフッ!?ゴフッ!?」

 

「ゴホッゴホッ!」

 

「ゴホォ!?は、鼻に水が入った……」

 

今定治達が挑戦しているのはビート板に乗ってサーフィンをするという試み。幼い頃誰もがやったであろう試み、それを10代後半になって今更やってみようとしているのだ。

 

勿論発端は定治。

 

だがこのビート板でサーフィンをするという試み、やってみたらわかるが非常に難しい。乗るまでは出来るがその後のバランスを取ることに一同大苦戦。ビート板に乗ってはプールに飛び込むという行動を繰り返す定治と一誠と木場。ちなみにショゴスは数回やって飽きたのか水面にプカプカ浮きながらバカ3人の様子を見学している。

 

「3人ともそろそろ諦めなよ。その小さな板でサーフィンなんて出来るわけ無いでしょ。僕が3人とも乗せてあげるからそれで我慢しようよ」

 

「うるせぇ止めんなショゴスくん!後少しなんだよ!足で乗れる所まで行けたんだ!なら後はバランス取って波に乗るだけなんだよ!ビッグウェーブが俺を呼んでるんだよ!」

 

「バランス取るのがウルトラCな事にそろそろ気付きなよ!しかもプールに波なんてないよ!」

 

「安心しろ!ビッグウェーブなら俺が作る!」

 

「さっきからダゴンさんに教わった水を操る魔術何しょーもない事に使ってんのさ!流れるプールは楽しかったけど!」

 

「馬鹿野郎俺が教わった理由は最初からこう使うって決めてたからだよ!」

 

「またダゴンさんに筋肉バスターかけられたいの!?ていうかみんなも早くこんなバカな事やめなよ!どうせ出来っこないんだから!」

 

 

ショゴスと定治がやめるやめないの口論をしていると、定治と同じくビート板を手にした木場がフッと笑う。

 

「フ、ショゴスくんもう遅いんだ。何回もやっていく内に僕達はこのビート板に意地でも乗りたいと思い始めている……!今更引く事は出来ない!」

 

「バカなの!?」

 

「とりあえずショゴスくんはそこで見てろ!阿見定治、頑張ります!おっし!乗れ、たあぁぁぁぁ!?」

 

木場の発言にショゴスがツッコみを入れたすぐ後に定治が再びビート板に乗って当たり前の様にプールに落水。

 

そしてプールに落水して盛大に水柱を上げた定治の次に一誠が意気揚々とビート板を手にする。

 

「ハッ、まだまだだな定治!貸せ!今度こそ俺が乗ってやるぜ!「一誠〜、日焼け止めのオイル塗ってくれないかしらー?」は〜い♡喜んでやらせていただきま〜す♡」

 

「おい一誠ィ!?ビート板に乗ってサーフィンという男の子のロマンよりもおっぱいを取るのかよぉ!」

 

ビート板に乗るためビート板を手にした一誠だがリアスの甘い声を聞いた瞬間顔をニヤけさせながらビート板を放り投げる。その様子に定治が思わず罵声を浴びせるが一誠は顔に血管を浮かばせながら声を荒げる。

 

「当たり前だろうが定治ゥ!俺を誰だと思ってる!」

 

「おっぱい大好き一誠くん!そうだったなチクショウ!もう知らない!一誠なんて知らないんだから!もう一誠が波に乗りたいって言っても乗せてあげないんだから!この裏切り者ォォォォ!!」

 

声を荒げる一誠に対し定治は八つ当たり気味に水面を叩いた後ビート板を手にし、木場達の元で再びビート板に乗る試みを始める。

 

「よし!定治くん見てくれ!乗れ、なかったぁぁぁ!?」

 

「祐斗ーーー!?寄越せ!次こそ俺が乗ってみせ、る事が出来ませんでしたぁぁぁぁ!?」

 

「くっ!定治くん!」

 

「ああわかってる祐斗!」

 

「「ワンモアセットだぁぁぁぁ!!」」

 

「いい加減もう諦めなよ!!」

 

乗っては落ちてを繰り返す二人にショゴスがキレ気味にツッコミをいれるが木場と定治に諦める様子は全く無く、再度ビート板に乗ってその直後当たり前のようにプールに落水する。

 

この木場と定治の行いをリアスが一誠にオイルを塗ってもらいながらボンヤリと眺め、フフッと微笑む。

 

「定治と祐斗は元気ねぇ。あ、また落ちたわあの子達」

 

「(あ〜部長の肌やわらけぇ〜)」

 

"むにゅう"

 

「ーーハッ!?こ、この柔らかい感触はまさか!?」

 

一誠がリアスの肌を両手で堪能していると突如として背後にとても柔らかい感触を感じる。一誠が思わず振り返ってみるとそこにはニコニコと笑う朱乃の姿があった。

 

「あらあら、部長だけズルいですわ。ねぇ一誠くん、私にもオイル塗って下さらない?」

 

「ちょっと何やってるの朱乃!」

 

現在の朱乃の姿は水着の上を脱ぎ去っており、その大きな胸を一誠に直接当てていた。朱乃の予想外の行動に驚きと嫉妬による怒りを織り交ぜながら上半身を露わにして立ち上がるリアス。だが朱乃はというとリアスの表情を見ても依然表情を変えずにニコニコ笑う。

 

「ちょっと可愛いがってあげてるだけですわ。ねぇ部長、私に一誠くんをくださらない?」

 

「ダメよ!その子は私のよ!絶対にあげたりするものですか!」

 

「あらあら、部長ったら怖いですわ。……束縛の強い女性は嫌われますわよ?」

 

"ドゴンッ!!"

 

「……朱乃、少し調子に乗りすぎではないかしら?」

 

朱乃が最後に呟いた一言の直後、朱乃付近の飛び込み台がリアスの消滅の力により消し飛ぶ。リアスは青筋を浮かべ、消滅の力を手に宿しながら朱乃を睨むと朱乃もまた何時ものようにニコニコ笑いながら立ち上がる。

 

「あらあら、そちらがその気なら私も引きませんわよ?」

 

「フッ!!」

 

「ハァッ!!」

 

「ふぃー、乗り切れなかったか……。よし!次こそは乗ってやブベラッ!?」

 

「定治ーーーー!?」

 

「定治くーーーん!?」

 

消滅の魔力と雷。二人の力がぶつかったその時、丁度二人の間付近に落水して水面から顔を出した定治が衝撃の余波を食らってしまう。

 

水面から顔を出したと思ったら吹き飛ばされて再び水の中へ落ちていく定治の姿に木場とショゴスが悲鳴をあげる。だがしかし定治は直ぐにプールから飛び出し、顔に青筋を浮かべてルールブックを手に取る。

 

「ブハァッ!?誰がやりやがったゴラァ!?ぶっ潰してやーーー」

 

今すぐにでも自分を吹き飛ばした奴を潰す為、臨戦態勢に入って辺りを見回す定治。だがそこで定治が目にしたのは上半身を裸にして雷と消滅の力を撃ち合いながら口論をしているリアスと朱乃の姿。

 

「大体朱乃!貴方男が嫌いだったでしょ!」

 

「そう言う部長も男なんて興味ない、どれも同じに見えると言ってましたわ!大体リアスだけズルいわ!私だって一誠くんを可愛がりたいのに!」

 

「ーープッ」

 

臨戦態勢に入っている定治の姿など御構い無しに上半身を裸にして力をぶつけ合う二人、この光景を見て先程まで青筋を浮かべていた定治の表情が文字通り面白いモノを見たものへと変わってしまう。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!痴女大決戦だコレ!チョーウケる!アーッヒャッヒャッヒャッ!!」

 

争う二人を"痴女大決戦"と呼んで爆笑する定治。流石に"痴女大決戦"と呼ばれるのを無視できなかったのかリアスと朱乃は撃ち合いを止め、同じタイミングで爆笑している定治へと視線を向ける。

 

「定治、貴方何を」

 

「笑っているのですか?」

 

痴女などと呼ばれ、静かにキレた二人から出る怒りのオーラにオカルト研究部一同は思わず沈黙してしまうが定治は怒りのオーラを直接向けられていながらも関係無しに爆笑し続ける。

 

「だって面白いんですもん!一誠を可愛がりたいからって言う理由だけで上半身裸にしてバトってるんですよ!これが笑わずにいられますか!アッヒャッヒャッヒャッ!!」

 

二人を指差し爆笑する定治。そしてとうとう、リアスと朱乃の堪忍袋の尾が切れた。

 

「定治貴方」

 

「死にたいようですわね?」

 

「フ、こうなる事はわかっていたさ(イケボ」

 

定治が出したイケメンボイスと同時に二人の手からお仕置きの雷と魔弾が飛んでくる。襲いかかるお仕置きに定治は抵抗する素振りを見せずに両手を広げ、最後に大笑いする。

 

「アーヒャッヒャッヒャッ!さーてみなさんご一緒に!でも言いたくなっちゃったから仕方ないよねぇぇぇぇ!!ギャアァァァァ!?」

 

「定治ーーーー!?」

 

「定治くーーーん!?」

 

お仕置きをもろに受けて吹き飛ぶ定治の身体。そしてショゴスと木場の悲鳴と共に定治の身体はプールの近くに生えていた木に突き刺さるのだった。

 

オマケ

 

がたのそあ さん!

 

定治「なぁなぁガタノソアさん」

 

ガタノソア「ん?どうしたんだ定治?」

 

定治「ガタノソアさんってさ、ずっとマグマの中で生活してるけど暑くないの?」

 

ガタノソア「うーん、よく人間の女の子が「お風呂きもちぃー!もうずっと入ってられるー!」って言うだろう?」

 

定治「あー、言うかも」

 

ガタノソア「それだよ」

 

定治「ごめん意味わかんないんだけど!?」




ハイ原作4巻目突入しました。

今回は前書きで作者がパッと思いついたネタを適当に書いたのでしょうがいかがでしたか?多分また思いついたら書きます。面白かったならいいのですが……。

プール編ではネタとして皆さんも小さい頃やったであろうビート板に乗ろうする試みを10代後半の定治達にやらせてみました。

だって学園のプールでのネタって飛び込みとそれくらいしか思いつかなかったんだもん!

あ、それと今私の活動報告の方でちょっと参考にアンケートを取っています。あくまで"参考"にするだけなのですが、皆さんの意見が聞ければ幸いです。



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肉食系女子

※お知らせ※

タグを一つ消して、一つ追加しました。

今回からオリ主定治くんにヒロインがつきます。

急に路線変更してすみません。

こんな作者ですが今後ともよろしくお願い致します。


部長と副部長にお仕置きを食らった俺は木に突き刺さって数秒動けなかったけど何とか気合いで持ち直し自販機で飲み物を買いに行った。

 

「ふぃー、ヒドイ目にあった……」

 

いや本当に。あの人たち最近俺に容赦しなくなってるって。一誠の時はあんなに優しいのになんで俺の時はあんなに容赦無いの?定ちゃんコレが全く持ってわからない。

 

もしかして普段の俺の行いに問題が……?

 

いや、無いな。俺成績優秀で運動もできるもん。元気ハツラツさも一誠と同じくらいだし。

 

この前やったイタズラも部長と副部長のカップに滅茶苦茶クエン酸の濃度が高い水をカップ全体に塗っておいて紅茶飲んだ部長と副部長が盛大に吹いたのを見て爆笑したくらいだし。

 

うん、何も悪く無いね!いやー部長と副部長の吹くシーンは腹抱えて爆笑したなぁ。マジ最高だった。

 

「定治」

 

「ん?ゼノヴィアか、どしたん?」

 

冷えた飲み物を顔に当てて涼む俺にゼノヴィアが声をかけてくる。

 

あらやだこの子ったら結構際どい水着着てるじゃない。

 

欲情とか全然しないけど。

 

「少し話をしたい。ついてきてくれ」

 

「ん?まぁいいけど」

 

ゼノヴィアに連れてかれ俺はビート板等が仕舞われている部屋へと入る。あ、そうだスポーツドリンク飲も。やっぱ暑い日はキンキンに冷えたスポーツドリンクか炭酸だよね!

 

あーこの身体の中で水分が満たされる感覚堪りません!

 

「プハァッ!そんで?話って何よ」

 

あ、二口目飲んどこ

 

「うむ単刀直入だが定治、私と子作りをしよう」

 

「ブホォッ!?」

 

ちょ、待って!むせた!器官に入った!マジで入った!

 

コイツ何とんでもないこと言ってんの!?

 

「ゴホッ、ゴホォッ!?お前正気か!?言ってる意味わかってんのかテメェ!?」

 

お、落ち着け俺。先ずはさっき飲めなかった分の水分を補給しておこう。

 

「あぁ、※自主規制※をしようと言っている」

 

「ブホォッ!?」

 

待って!ホントに待って!2回目なの!むせたの2回目なの!器官が機能しなくなっちゃう!ていうか何コイツ堂々と言ってんの!?少しは恥じらいっていうの持てよお前女の子だろ!?

 

「ま、待てゼノヴィア!一体どうした!なんか俺お前に惹かれるような事した!?ていうか昨日俺に斬りかかってたじゃん!何でそんな思考に至ったんだよ!?」

 

いやマジで!俺顔はいい自身あるけど中身コレだよ!?惹かれる要素ないよね!

 

おいやめろゼノヴィア!真剣な顔で俺を見るな!俺の目を真っ直ぐ見るなァ!シリアスな空気を作らないでぇ!

 

 

「……そうだな。話すと少し長くなるがあの時のコカビエルとの一戦。実はあの時私はもっと早くに来る事が出来た。だが私はそれをしなかった、いや出来なかったというべきだろうか。理由はお前だ定治」

 

「……どういう事?」

 

あ、ヤベ

 

俺もシリアスになっちゃった。

 

「お前はあの時コカビエルに手を切り飛ばされたにも関わらず涙を堪える木場祐斗を思い、心配をかけまいとしていた。あの時お前が木場祐斗と背中合わせで見せた笑み。何時もふざけているお前があの時見せた笑みは確かな優しさがあった。気がつけば私はお前に見惚れミ=ゴに声をかけられるまで戦闘態勢に入ることができなかった。……ギャップにやられたとでも言うのだろうか、あの時お前が見せた笑みが私の頭の中で離れないのだ」

 

……待って、結構恥ずかしいんだけど。やめてくれよそう言うの慣れてないんだよ。

 

「それと、昨日の件は話が別だ。単純にイラついたから斬りかかった」

 

「イラついたから斬るとかお前何処の暴力系ヒロインだよ!」

 

「何、お前なら白刃どりすると思ってたさ。後はまぁノリだな」

 

「うんノリなら仕方ないね!」

 

ノリなら仕方ない、ノリなら仕方な……くねぇよ!幾ら何でも殺しに来るのはOUTだよ!やるならせめて竹刀でやってくれよ!

 

おい何微笑んでんだよ!?最後の方全然いい話じゃねぇだろ!

 

ていうかさっきから何で俺が常識人みたいな立ち位置になってんだよ!!

 

だが俺の心の声を無視しゼノヴィアは再度俺の目を見て話を始めやがったマジファッキン!

 

「それにこう見えて私はお前と相性が良いと思っているぞ。この数日間お前は私に日本での生活に慣れさせるため色々な場所へ連れていってくれただろう?」

 

ああ、確かに部長に頼まれていろんな所に連れて行ったな。

 

"つい先日"

 

『むぅ、中々取れないな』

 

『しょうがねぇなぁ、これは一回で取れるもんじゃねぇんだよ。数回に分けて……ホラ取れたろ?うわ、取ったはいいけどこのクッションちょっと俺の部屋に合わねぇな……よし、コレいらねぇからやるよゼノヴィア』

 

『う、うむ。ありがとう、定治』

 

『おーう』

 

 

 

『ここのカフェはウチの女子どももよく来る店だ。アイツら注文する時謎の言語言ってるからソレ言える方になった方がいいんじゃね?俺カフェラテしか頼めないけど。ここのカフェラテ美味いだろ?俺もここ好きなんだけどさぁ、女子どもの視線が怖くて中々来れないんだよなぁ』

 

『うむ、確かに美味いな。皆がよく来るのも頷ける』

 

『だろー?そうだそうだ、ゼノヴィアに相談したい事があんだけどさー。最近さー、祐斗がなんか近いんだよ。こう、身の危険を感じるっていうかさぁ』

 

『ふむ、確かに同性愛は良く無いな。生産性が無い。主もきっとお怒りになるだろう。だが木場自身は普通に接しているだけでお前の考えすぎかもしれない。暫くは様子を見た方がいいだろう』

 

『あーそうかもなぁ。裕斗の奴も俺に遠慮しなくなっただけなのかもしれないよなぁ。こういうのってホント難しいよなぁ』

 

『ああ、私もこの前お前のマネをしてガラスを突き破ったりしたのだが周りにドン引きされてしまった』

 

『ああやってたな!メッチャ爆笑したわアレ!まさか転入生が入学早々アレやるとは先生達も思わなかっただろうな!先生達目ん玉飛び出るくらい驚いててメッチャ面白かったわ!』

 

『バ、バカな!?定治がやっていた時は皆普通の顔をしていたぞ!?日本ではアレが普通なのではないのか!?』

 

『アッヒャッヒャッヒャッ!いい事教えてやるよ!アレやったの駒王学園で俺とお前だけだぜ!』

 

『私と定治だけだと……?なら一誠にもやらせなくてはいけないな。私だけがあの視線を送られるのはツラいものがあるからな』

 

『アッヒャッヒャッヒャッ!ヤベェわコイツwネタでもウケるわそれw』

 

※後日一誠をぶん投げてマジでガラスに突っ込ませてました。

 

「あの日お前と過ごした時間は純粋に楽しかった。気が合うとでも言うのだろうか。きっとお前となら良い関係を続けられる、そんな気がするのだ」

 

た、確かにコイツ意外とノリいいし、女だけどサバサバしてるから気は会うとは思ったけど……

 

そ、それとこれとは話は別だよね?

 

「そ、それだけで子作りする理由にはなりませんよね?」

 

定ちゃん何でかわからないけど思わず敬語になっちゃう。心なしか口が上手く回りません。

 

「ああその点だが、以前の私は神に仕え奉仕するという目的があった。だがしかし今はそれが無い。それについて今後どうするべきか部長に訪ねたのだが部長には悪魔として欲望のままに好きな様に生きろと言われてな。そこで私は破れかぶれとは言え悪魔になったのだ、これからは一人の女性としての幸せを掴んでみたいと思った」

 

「そ、それで?」

 

何でだろう、僕の声、凄い震えてるよ。

 

「うむ、悪魔になった私は新たな夢を持つ事にした。コカビエルとの戦いで私はお前の強さを目にした。武術を極め、英雄と同等の身体能力を持ち、多彩な魔術を扱う魔力量と知識、怪異な生き物を従えるカリスマ、そして何よりも私より遥かに多い聖なる因子の量。私は子供には何か特別な力を持って欲しいと思っている。お前と私が子を産めば恐らくかつてのアーサー王、騎士ローランといった伝説の英雄にすら劣らない聖なる因子を持つ子供が生まれる筈だ。理由はわかったな?なら早速」

 

「ま、待て!ほら、一誠とかどうだ?アイツはドラゴンの魂をその身に宿してるじゃん!アイツとかどうよ!きっと俺なんかより強い子を産むと思うぜ絶対!こ、ここは一誠にしておこう!きっとその方がいいですよゼノヴィアさん!」

 

「ふむ、確かにそうかもしれない」

 

「だろォ!?ここは一誠にしときましょうぜゼノヴィアの姐さん!」

 

「だが私は兵藤一誠よりもお前に惹かれている」

 

オーマイゴッド!

 

『(ヨンダ?)』

 

呼んでねぇよ!

 

「そ、そうだ!俺お前タイプじゃねぇんだよ!俺30歳以上の熟れた女の人がタイプなんだよ!こう、熟れた女性特有の色気持ってて母性に溢れている人っていうのかな?そういうのがタイプだからさ!悪いなゼノヴィア!俺お前と※自主規制※する気にはなれないから!」

 

「ふむ、その点なのだが確かお前が熟れた女性が好きになったのは初恋が母親でそれに引きずられてそうなってしまったのだろう?」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 

ちょっと待って!何でお前それ知ってんの!?それ昔からの付き合いの神話生物達と一誠くらいしか知らない筈なんだけど!?元浜と松田も知らない俺のヤバい秘密なんだけど!?

 

「一誠から聞いた」

 

何言ってんだあの野郎ゥゥゥゥ!?絶対に秘密にするって言ってくれてたじゃん!!何言ってくれてんだアイツ!?シバくぞあの野郎ゥゥゥゥ!!

 

後ナチュラルに人の心を読まないで!プライバシーって結構大事だから!

 

「お前の性癖は初恋によるものが大きい。ならば私がそれを上回ればいいだけの事。というわけだ、さぁ早速始めようか!」

 

「ちょっ待っ!俺人間!お前悪魔!そこら辺わかってんのかお前!?」

 

おいやめろ水着を脱ぐな!ハリのあるおっぱいを見せんじゃねぇ!

 

「フ、そんなものお前が悪魔に転生すれば片付く問題だろう。さぁ子供は何人欲しい?私としては最低3人は欲しいところだな!」

 

お願い気づいて!キミ今すっごい理不尽な事言ってる!そう簡単に人を悪魔にさせようとしないで!

 

おいやめろ組みつくなのし掛かるな俺の側に近寄るなぁぁぁぁ!!

 

「ぬぉぉぉ!?コ、コイツ力強っ!?へ、ヘェェェルプ!誰かぁぁぁ!!助けてぇぇぇぇ!!」

 

「あ、ここから定治の声が聞こえたよ!ほら一誠くんこっち!」

 

「ホントだ!よし行こうぜショゴスくん!」

 

おぉその声はショゴスくんとマイベストフレンド一誠!良かった!来てくれるって信じてたよ!さぁこの逆※自主規制※を今すぐ止めてくれ!三百円あげるから!

 

「大丈夫か定治!……あ」

 

おい、待て

 

全てを察したような顔をすんじゃねぇ

 

「………」

 

無言でゴムを取り出すなぁ!やめろォ!それを持って俺に近づくんじゃねぇ!ていうかお前どこからゴム取り出した!?

 

ゴムを近くに置くな!微笑みながら退出しようとするなァ!

 

「……学生なんだからゴムだけはしとけよ?流石に学生で"できちゃった♡"はマズいからな。ショゴスくん、自販機コーナー行こうぜ。アイス奢るから」

 

「わーい!」

 

ショゴスくんチョロすぎぃぃぃぃ!!おいやめろ何処へ行くんだ一誠!お願いだからこの場から立ち去ろうとしないでぇぇぇぇ!!

 

「待ってぇぇぇ!待てやマイベストフレンドォォォォ!!アイス食べに行くならせめてこの状況なんとかしていってぇぇぇ!」

 

「え?嫌だけど?」

 

「なんでよ!?」

 

ホントになんでよ!?

 

「…………」

 

おい何で真面目な顔してんだよ!一体何を喋ろうとしてんだよ!?

 

いやもうわかった!何も言わなくていいから!この場から去ってもいいから!お願いだから今すぐその口を閉じろ一誠ィィィィ!!

 

「……定治、俺は前からお前に対してある懸念をしていたんだ。コイツホントに結婚できるのかって」

 

「余計なお世話だこの野郎!」

 

「まぁ待て定治。お前は確かに顔はイケメンだし背も高い。オマケに文武両道で意外と面倒見もいい。性格もまぁ慣れればどうって事はない。だけどな、一番の問題はお前の性癖なんだよ」

 

よしコイツぶっ飛ばす!ていうかそういうお前も問題だらけだろうがこの性欲魔人!自分の事棚に上げてんじゃねぇよ!

 

「お前のタイプは30歳以上の熟れた女性、しかもできればお前のトコのおば……矢儀さんみたいに美人で母性溢れる人。まずこんな人がいるならもう二十代に絶対結婚してる。周りの男がほっとかないからな。それでもまだお前には未亡人という手が残ってるが、お前は亡くなった夫から新たに自分へと乗り換える女性というものが気に入らない。あくまで夫に一途な未亡人に惹かれるものはあるけど、実際お前が迫っても軽くあしらってくれた方が嬉しい。お前、あんまり言いたくないけどタイプにうるさ過ぎなんだよ」

 

「ぶっ殺すぞテメェ!」

 

クソッ!コイツ部長に大事にされてから心に余裕持つようになりやがった!恨みますよ部長!いつかあの綺麗な顔を納豆まみれにしてやる!ネッバネバにしてやるからな!

 

「まぁ落ち着け定治。お前がそんな性癖になったのは初恋である矢儀さんが大部分を占めてる。ならそれ以上の恋をすればお前の性癖は何とかなるっていうのが俺の考えだ。それに、逆※自主規制※から始まる恋ってやつもあると思います!」

 

「無ぇーよ!!」

 

あ!あの野郎逃げやがった!

 

「フ、一誠もああ言ってくれている。さぁ始めよう定治!何痛いのは私だけだ。むしろお前は気持ち良く「ッシャオラァァァ!!」ブホォッ!?な、何故だ……ガクッ」

 

危ねぇ!最初に気づいてればよかった!なんで今まで気づかなかったんだ!両手が塞がってても俺には足があるじゃない!足が空いてるならゼノヴィアのお腹に膝蹴りすればいいじゃない!もっと早くこうすればよかった!いやマジで!

 

気絶するゼノヴィアを退かして寝ているようなポーズを取らせる。後は水着をつけてっと。よしこれでOK。

 

そう言えばさっきゼノヴィアは俺に何故だとか言ってたな……

 

「何故だもこうもあるかバーカ!バーカバーカ!ええっとバーカ!バァァァァカ!!」

 

バーカバーカ!

 

チクショウ何だコレ!意味わかんねぇ!顔が熱いんだけど!マジで意味わかんねぇ!

 

クソがぁぁぁぁ!!

 

 

楽しかったプールの時間も終わり、一同は旧校舎にある部室へと集合していた。

 

「フフ、ゼノヴィアも大胆な事するのねぇ」

 

「その程度で済まさないで下さいよ!」

 

ゼノヴィアに迫られ大騒ぎした定治は事の顛末をリアスに話してゼノヴィアが自重するよう頼むがリアスは面白そうにクスクス笑うだけで注意するようには見えない。

 

「ウフフ、ごめんなさい面白かったからつい。それにしても私も見てみたかったわ。定治がゼノヴィアに詰め寄られて慌ててるところ」

 

「ホント面白かったですよ部長。定治があんなに困惑してるの久々に見ましたよ」

 

「クソッ!味方がいねぇ!」

 

「ショゴス、定治を落とすにはどうすればいいんだ?」

 

「そのまま押せ押せでいけば大丈夫だよ。定治、前に女の子こっ酷くフッてお父さんに骨何本か折られるくらいボコボコにされてるから自分に恋する女の子に対してあまりヒドいことできないもん」

 

「なるほど、礼をいうショゴス。お礼のチョコレートだ。受け取ってくれ」

 

「わーい!」

 

「ちょっとショゴスくーーーーん!?何言ってんのぉぉぉぉ!?」

 

「僕は事実言っただけだよ定治」

 

ゼノヴィアにアドバイスをしたショゴスはお礼にと貰った巨大なチョコレートを嬉しそうに食べる。父親にボコボコにされた自らの記憶を話されツッコむ定治だがショゴスは全く気にしている様子は無い。

 

「俺に味方してくれる人がいなくて絶望した!もうヤダ!俺もう寝る!」

 

周りに自分の味方をしてくれる人がいない定治はふてくされてソファにうつ伏せに寝転んでしまう。

 

ふてくされる定治の姿に何時も振り回される側の一同が思わず笑っていると部室に転移用の魔法陣が出現する。

 

「随分と賑やかだね」

 

「ま、魔王様!?どうして此処に!?」

 

魔法陣から現れたのはサーゼクスとグレイフィア。いきなり現れたサーゼクスに一誠達は驚きながらも敬意を払って跪く。

 

「(この人が魔王様、リアス部長のお兄様!)」

 

跪く一同の中で初めて魔王という存在に会ったアーシアが視線を送っているとそれに気づいたサーゼクスがアーシアに微笑みかける。

 

「アーシア・アルジェントだね。リアスが世話になっている。優秀なビショップと聞いているよ。リアスの事、今後ともよろしく頼む」

 

「は、はい!」

 

悪魔のトップであるサーゼクスに話しかけられアーシアは緊張気味に頭を下げてしまう。その姿にサーゼクスはクスリと笑い、跪くオカルト研究部のメンバーに視線を向ける。

 

「皆、そう畏まらなくていい。今日はプライベートで来たんだ。寛いでくれたまえ。……一人寛ぎすぎな子もいるけどね」

 

サーゼクスの言葉に一同はおずおずと頭を上げる。すると先程までふてくされていた定治が全く敬意を払っていない寝転んだ姿勢でサーゼクスの顔を見つめ、何か思い出したような顔を見せる。

 

「あ、思い出した。齋藤さんだ」

 

「だから齋藤さんって誰だい!?」

 

「………?」

 

ツッコむサーゼクスに定治は首を傾げる。するとサーゼクスは無言で寝転んでいる定治を起き上がらせ、定治の肩をガッシリ掴み顔を数センチ程の距離まで近づける。

 

「前にも言ったが私はサーゼクス・ルシファーだ。決して齋藤さんではない。いいね?」

 

「あ、ハイ(顔近ぇ……)」

 

「定治くん、此度のコカビエル討伐本当に感謝している。キミがいなければリアス達はやられていたかもしれない。感謝してもしきれないよ。魔王サーゼクス・ルシファーである私が改めて礼を言おう。この、サーゼクス・ルシファーが。ありがとう定治くん」

 

「それこの距離で言う事ですかね?」

 

後数センチでキスしてしまう距離のまま礼を言うサーゼクスに定治は顔が近いのを嫌がりサーゼクスを押し退ける。

 

「フフ、相変わらず物怖じしない子だ」

 

あからさまに嫌そうな顔で押し退けられたサーゼクス。しかしそれに対してサーゼクスは気にしている様子は無く、逆に全く緊張していない定治を見てクスクスと笑う。

 

だが一方でサーゼクスの後ろに控えているグレイフィアは再び寝転んだ定治を注意深く見ていた。

 

「(アザゼルは彼の正体はあの悪童アーミテイジだと言っていた。そして彼の持つ神器が最悪の神器と呼ばれた悪名高き深淵の門(ゲートオブアビス)だとも。にわかに信じられませんがお嬢様は定治様が魔王と同等か、もしくはそれ以上の怪物を呼び出したと言っていました。私の知る限り魔王レベルの怪物を呼び出せる神器は存在しない。ですが未だ能力も謎が多いゲートオブアビスなら可能なのでしょうか?……わかりませんね)」

 

「(……ウゼェな)」

 

探るように定治を観察するグレイフィアだが定治がソレに気づき、一瞬不機嫌そうな表情を見せて舌打ちを一つするとグレイフィアがハッとした表情で慌てて視線を逸らす。

 

舌打ち一つでグレイフィアの視線を逸らさせた定治は次にサーゼクスへと視線を向ける。

 

「で、魔王さんが此処に何の用です?」

 

「ああそれはだね。ほら、明日は公開授業だろう?私は妹が勉学に励む姿を是非とも見たくてね。こうして私自らやって来たのさ」

 

「公開……授業……?ハッ!?……ヤバい…忘れてた…マジでヤバい……」

 

サーゼクスが言った"公開授業"という単語を聞いた途端、定治が急にガタガタと震え始める。

 

まるで悪夢を見たように震え始めた定治にゼノヴィアがすぐ気づき、心配した表情で定治の元へ近づいていく。

 

「どうした定治、何を怯えている?」

 

「ヤベェ……すっかり忘れてた……あの地獄の日が今年もやって来ちまった……」

 

「何が恐ろしいのだ?公開授業とはそんなにも恐ろしいものなのか定治」

 

怯える定治の姿にゼノヴィアは噂に聞いた公開授業が怯える程恐ろしいものなのかと不思議そうに首を傾げて定治に問いかけるが定治はガタガタと震えているだけでゼノヴィアの話を聞いている様子は全く見られない。訳が解らず更に首を傾げるゼノヴィアに一誠が定治の代わりに彼が怯えている理由を話し始める。

 

「いや、違うんだゼノヴィア。ウチの公開授業は至って普通の授業参観だ。父親母親、家族が子供の授業風景を実際に見るっていう普通の授業参観なんだけどさ、普段バカやってる定治がその日だけは絶対に大人しいんだよ。理由はたった一つだけ、定治の母親の矢儀さんがメッチャはしゃぐから定治は恥ずかしくて仕方ねぇんだよ……。定治の母親、矢儀さんって言うんだけどな?この人がとんでもない親バカでさ。あの人、公開授業の度に定治の顔がプリントされたハッピと" I Love 定ちゃん♡ "って書かれたハチマキとうちわ、そして超高級ハンディカメラを装備してやって来るんだよ……」

 

定治と長い付き合いの一誠は過去の記憶を思い出す。はしゃぐ矢儀を背後に顔を真っ赤にして涙目で震える定治の姿。あれはずっと見られずにいられない。見てたら恐らく誰しも涙を流して憐れむだろう。流石にあのレベルはやり過ぎだ、と。

 

「……矢儀さんの猫可愛がりぶりはハンパじゃねぇ。クラスメイト全員が思わず同情しちまうレベルだ。普段は定治の親父の夢桐さんが抑えてるからそこまででは無いんだけど、その日は夢桐さんがどう頑張っても無理らしい。その証拠の一つに定治は過去に案内の紙を燃やしたり川にぶん投げたり色々妨害して矢儀さんが来るのを阻止しようとしたんだけど矢儀さんは定治がどうあがいても絶対にやって来る」

 

「や、やめてくれ母さん……学校で定ちゃんって呼ばないで……問題当てたくらいでそんなに喜ばないで……駆け寄って抱きつかないで……周りの人ドン引きしてるから……恥ずかしい……恥ずかしすぎる……やめてくれ……やめてくれ……」

 

「Oh……」

 

悪夢を見たように一人でに呟く定治。その姿にゼノヴィアは一誠の言葉が冗談などでは無い事に気づき、哀れみの視線を定治に送る。

 

だがしかし、一匹だけ全く違う反応をする者がいた。

 

 

「ごちそうさまー!ん?どうしてみんな定治にそんな視線送ってるの?……あー、定治フラッシュバックしてるね。しょうがないなぁ定治は」

 

 

チョコレートを食べ終えたショゴスは震える定治に気づくと握り拳を作り、ニコニコとした表情で定治の鳩尾に狙いを定めると

 

「どーん☆」

 

「ブホォッ!?」

 

定治の鳩尾を綺麗に撃ち抜いた。

 

一見リラックスした状態で放たれた拳。だがその拳は無駄な筋力を使わずにショゴス本来の身体の全体重が乗った非常に重い拳。全体重を乗せ、正確に鳩尾を撃ち抜いた拳を受けた定治はソファから転げ落ち鳩尾を抑えてピクピクと痙攣する事しかできない。

 

ショゴスは痙攣する定治の前で屈むと苦笑いを浮かべながら定治の肩に手を当てる。

 

「諦めが肝心だよ定治。定治が気づいてなかっただけで定治のママもう十日前には準備してたよ。それに今回は定治のパパどころかニャル様も巻き込まれてたよ。定治のママが公開授業に来るのはどう足掻いても逃げられない運命なんだよ定治。大人しく諦めて受け入れた方が身の為だよ」

 

それだけ言うとショゴスは痙攣する定治を小さな身体のまま担ぎ上げると振り返って一同に手を振る。

 

「定治も動かなくなった事だし、僕たちはそろそろ帰るね!じゃあみんなバイバーイ!」

 

「ヤバい……久々に食らった……ショゴスくんの拳マジヤバい…キャラで忘れるけどショゴスくん普通に強いんだった……マジ痛い……シャレになんないレベルで痛い……」

 

こうして定治は一同を置いてけぼりにし、絶望と激痛を鳩尾に抱えながらショゴスに担がれ家へと帰るのだった。

 

 

オマケ

 

"公開授業!公開授業よニャルちゃん!!"

 

マッマ「もうすぐ公開授業よ!年に何回あるかわからない大イベント!気合を入れて行かなきゃいけないわ!ニャルちゃん!定ちゃんを全力で応援し、定ちゃんの成長過程を見守る為にこれとこれを着ていくのよ!そうだこのうちわも忘れちゃダメよ!わかったわね!」

 

ニャル「えぇ!?何ですかこの悪趣味なハッピとハチマキとうちわ!?いくら私でもコレ装着するのはイヤなんですけど!」

 

マッマ「ア"ア"ンッ!?」

 

ニャル「ハイ着ます!喜んで着させて頂きます!だからその顔やめて!」

 

満身創痍パッパ「コヒュー……コヒュー……すまない定治……今年も矢儀を止められなかった……ハハ……また今年も周りの保護者の人達に謝り続けなければいけないのか……ゴフッ」orz




ハイ、というわけでヒロイン追加しました。

結構悩んだんですが結局追加しました。

ヒロインなんかいらねぇよ!と思われてた方、本当にすみません。もう決めた事なので何と言われようと変える気はありませんが。

ゼノヴィアをヒロインにした理由はゼノヴィアって結構強引な所あるからコイツなら定治振り回せるな、と思ったからっていうのが一つ。

そしてアニメとこの作品見比べてたらゼノヴィアが一誠に惹かれるのが神器くらいしかねぇ!と思ったからです。

まあ作者がゼノヴィア気に入ったっていうのもありますがね!!

ゼノヴィアが定治の性癖を改変できるかは今後次第、ということで。

オマケ?
今回の章で披露する予定のショゴスくんと斉藤さんの秘密技能。ネタバレ防止の為一部非公開。
ショゴスくんの秘密技能
○○(ショゴス流○○○○)
斉藤さんの秘密技能
○○○○ 隠れる ○○


今回の話で定治も言ってましたがショゴスくんは普通に強いです。今回の章ではそれを見せられたらいいなと思ってます。

次は多分公開授業。恐らく久々にマッマが登場すると思います。それではおやすみなさい。

2017/3/10 AM1:57追記
尚、この作品でのヒロインの追加要請等といったヒロインについての意見は一切受け付けておりません。ヒロインについては作者なりに考えておりますのでそこだけは皆様ノータッチでお願いします。


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懐かしき悪夢と公開授業

懐かしい夢を見た。とても怖くて、とても暖かい夢。

 

幼い頃俺は親にその力を恐れられ捨てられた。俺を捨てた父親は俺ともう関わらないつもりでいたらしい。だが俺の祖父はただ捨てるだけでは面白くないと言って俺の首に賞金をかけてから何処とも知れない場所に俺を捨てた。

 

祖父のかけた賞金は莫大で賞金稼ぎの悪魔どもはその金欲しさに俺を追い続け、俺の命をつけ狙っていた。

 

「ハァ……!ハァ……!」

 

一体どれだけ走っただろう。一体どれくらいの間食事をとっていなかっただろう。一体何時から睡眠をとっていないのだろう。

 

奴らは楽しんでいた。とうとう見つけられ、怯えながら逃げる俺を嘲笑うかのように。

 

その頃の俺は教育を満足に受けられず大した力もなく、神器もロクに使いこなせていなかった為ただただ逃げる事しか出来なかった。

 

何時間、何日も逃げに逃げ続けた。だが遂に追い詰められてしまった。三方を壁に囲まれ、上空と前には賞金稼ぎの悪魔の群れ。ここで終わってしまうのか、こんなところで俺は死んでしまうのか。そう俺が諦め掛けていた時、頭上から声が聞こえた。

 

「気に入らねぇ」

 

その言葉と同時に上空にいた悪魔の全員が地に落ち、生き絶えた。

 

男は上空にいる悪魔を全て倒すと乗っていた空を飛ぶ大きな黒い蛇から降りて俺の前で着地する。その表情は仮面で隠され伺い知る事は出来ないが男は前に立つ悪魔達に対して何かしらの不快感と苛立ちを感じている事だけはわかった。

 

「テメェらが何処の誰かなんて知りたくもねぇし興味もねぇ。だけどその下卑た笑みでガキを嘲笑っているのが全くもって気に入らねぇ」

 

強力な力を感じた。俺を虐待していた父親とは比べ物にならない程の強力な力を。

 

強力な力を感知した悪魔がたじろぐ中、男は死を告げる死神のように冷徹な声で悪魔達を指差す。

 

「だからテメェら全員一人残らず俺がぶっ潰す。ガキ、今すぐ目を瞑って耳を塞げ。見たいのなら構わねぇけどな」

 

その言葉と同時に俺を追っていた悪魔が恐怖を打ち払うように攻撃を仕掛ける。

 

「ナーク=ティトの障壁の創造」

 

だが男がそれよりも早く結界を張ると悪魔達の攻撃は全て結界に受け止められてしまう。

 

 

何発もの魔術を受けても男が作り出した障壁はビクともしない。だが悪魔達はそれでも諦めずに攻撃を仕掛ける。

 

何分経っただろうか。あれほどの攻撃を受けても結界には何の損傷も無く、男もまたそれがまるで当然のように振る舞っていた。

 

「攻撃は終わりか?なら、今度はこっちの番だ」

 

男は手の平を悪魔達に向け、聞いたことの無い言語で魔術を詠唱し始める。

 

 

 

dlgmrgm(小さな黒指)jgmug5auiamug(あらゆるものを透過し)kjadegumlugdng(数多の命を握り潰す)ーーーーニョグタの黒肢!」

 

 

 

詠唱しながら男が手で何かを軽く掴む仕草をすると悪魔達が心臓に手を当て、苦しそうにもがき始める。

 

数秒後、詠唱を終えた男が悪魔達に向けている手で何かを握り潰すような動作をした瞬間、悪魔達の胸が破裂した。

 

辺りに鮮血が舞い、悪魔達は苦悶の表情でその命を散らされ絶命する。

 

「話にならねぇ。ま、いいやユキちゃんボーナスだ、やるよ」

 

絶命した悪魔達を鼻で笑う男の手からはいくつもの湯気だった心臓現れていた。だが男は手に溢れんばかりに現れた大量の心臓に全く興味を見せず、上空を舞う黒い蛇に向かって投げると黒い蛇は放り投げられた心臓の全てを一個も零す事なく喰らい尽くし、満足そうに息を吐いた。

 

強い、強すぎる。俺を追っていた賞金稼ぎどもはそこら辺に転がっている雑魚どもとは違っていた。あの中には上級悪魔と同等以上の実力を持っていた者さえ居たはずなのに目の前で佇む男はそんな事関係無く悪魔達皆を平等に絶命させた。

 

その光景を見た当時の俺は震える程の恐怖と目を逸らさずにはいられない程の圧倒的な強さに対する強い憧れを抱いていた。あれほどの強さがあればもう誰にも傷つけられないで済むと思ったから。

 

「もう終わったぞガキ、目を開けてもいいぜ」

 

賞金稼ぎの悪魔達をアッサリと倒した男がハンカチで手を拭いながら振り返る。振り返った男の顔は闇夜に溶け込むほど黒い黒い仮面で隠されておりその表情を伺い知る事はできない。だがあの時の俺には男が目をつぶっていなかった俺を見て笑っているような気がした。

 

「マジか、目を瞑らなかったのかよ。それに見た感じだと目に恐怖以外の感情がある。スゲェなお前」

 

"グゥ〜〜"

 

「……ん?」

 

危機が去った事による安心と何日も食事を取れてなかった所為もあり俺の腹が大きな音を立てる。

 

ジロジロ俺を見る男だが俺の腹の音を聞くと男は仮面越しでも聞こえる大きな笑い声を上げ、懐から取り出したラップに包まれた三角形の物、おにぎりを手渡してきた。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!あんだけの血を見て腹の音鳴らすのかよ!面白いなお前!やるよ、食っとけ。安心しろ毒なんざ入ってねぇから。ただメチャクチャ美味いってだけだ」

 

最初はとても食べる気になんてなれなかった。男の言う通り毒でも入ってるのかもと思ったし、あれ程の殺戮を行なった男からおにぎりを受け取る気になんてなれなかったから。だが男は俺が食べようとするまでこちらがうっとおしくなるくらいのジェスチャーでガブッと食えと伝えてくる。

 

男の鬱陶しさに負けて俺はおにぎりを口にした。初めて食べたおにぎり、その味は空腹だった事もあり非常に美味く感じた。程よい温度で塩加減も絶妙、中の具材も米と塩の美味さと合わさり男の言う通り本当に美味しかった。

 

一口食べて中にまだ残ってるのに俺は次の一口を口へ運ぶ。気づけば涙が出てた。人の温もりを感じる暖かい料理、虐待を受けロクに食事も取れなかった俺にとってソレが初めて食べた温もりを感じる料理だった。

 

「美味かったろ?なんせ俺特製のおにぎりだ。美味いのは当たり前、ってな。ほら、お茶だ」

 

涙を流す俺を見ても男は気にせず、水筒に入ったお茶をくれた。ほのかに湯気が立つ暖かいお茶を俺が飲んでいると男は片耳につけている小さなイヤホンに手を当て誰かと話を始める。

 

「……ん、何?……ああ今助けたとこ……へぇ、うんわかったそうするよ」

 

短いやり取りの後、男は立ち上がる。

 

「さて、俺はちょっと用事があるからこれで行かせてもらう。お前は暫く此処で待ってろ。そうすればお前を拾ってくれる奴が来てくれる。それまでは大人しく待ってろ。ついでだ俺の水筒と弁当はやるよ」

 

俺に弁当と水筒を差し出すと黒い蛇を呼び寄せその場を離れようとする男に俺は名前を聞いた。そうすればいつかきっとまた会える気がしたから。

 

俺に名前を聞かれた男は"名前、ねぇ"と呟くと仮面を外した。その顔は東洋のアジア系で、年齢はおよそ10代後半、そしてその表情は何時もそうだと言わんばかりにヘラヘラとした笑みを浮かべていた。

 

「俺の名前はアーミテイジ、しがない魔術師だ。お前を助けたのはただの気まぐれ。別に感謝しなくていいし、俺の事は覚えてなくていい。ガキ、お前の過去がどんなのかなんて知らねぇけど人生始まったばっかりだ。精々楽しく愉快に生きろ、その方がいい人生送れるからな。楽しく愉快に生きていい人生送れてる俺が言うんだ、まず間違いない。それじゃあな未来の白龍皇。ユキちゃん、行こうぜ」

 

あの人はそう言って巨大な空飛ぶ蛇のような怪物に乗って飛び去っていく。俺はその姿をあの人から貰った弁当と水筒を抱えて魅入るように暫くの間眺め続けていた。

 

程なくして俺はシェムハザに拾われ長い間グリゴリで過ごす事になった。そこでの日々は騒がしくも楽しい日々だった。あの人は俺がこうなるのを知っていたのだろうか?いや、知っていたんだろう。何故ならあの人は笑っていたから。

 

今でもあの人が置いてった弁当箱と水筒は大事に持っている。再びあの人に会って、コレを返して、礼を言って、願わくばあの人と闘って、あの人を超える為に。

 

懐かしい夢を見た後の朝、ヴァーリは学園の門に寄りかかっていた。彼は話しかけてくる女子たちを鬱陶しそうに手で払いながら会いたい人物を待っているとようやく待っていた人物の内の一人、定治が歩いてやってきた。

 

ヴァーリから見て一人でのんびりと歩く定治の姿は心無しか落ち込んでいるように見える。

 

だがヴァーリにとってそんなものは些細なものにしか考えられない。

 

その為、ヴァーリの横を通り過ぎようとする定治にヴァーリは定治の心境を無視して定治にしか聞こえない声量で呟く。

 

「……アーミテイジ」

 

「あ、人違いだす」

 

「あ、あぁそうか。すまない」

 

「うぃー」

 

「……待て待て待て!」

 

予想外の返しにヴァーリは一瞬固まるが直ぐに気を取り直して定治の肩を掴む。だが肩を掴まれた定治はというと、あからさまに嫌そうな顔でヴァーリの方へと振り向いた。

 

「えー何だすか?人違いだって言ってるだすやん。俺阿見定治、NOTアーミテイジ、OKだすか?」

 

「いや間違いない!お前がアーミテイジだ!俺はヴァーリ、白龍皇だ!あんたには小さな頃助けられた恩がある!今日はその礼が言いたくて待ってた!」

 

「ほーん」

 

「は、反応が薄すぎるだとっ!?」

 

ヴァーリの言う通り定治の反応は薄く、今も興味無さそうに小指で耳の穴をほじり、取れた耳垢を息で吹き飛ばしていた。

 

「礼を言うのは別にいいだすけど後にしてくんないだすか?俺今日公開授業なんだすよ。それに悪いだすなぁ、今まで結構な数助けたから一々助けた人の顔なんて覚えてないんだすよぉ」

 

「そのだすだす喋りを止めろォ!」

 

「えー面白いのにー」

 

「こ、こいつ……!」

 

礼を言おうとするヴァーリに対して定治は話を聞く気など全く無く、ふざけた口調でヘラヘラ笑っている。この定治の反応にヴァーリが苛立ち始め、掴みかかろうかと思ったその時定治がおもむろにヴァーリの肩に手を置く。

 

「前に言ったろ、気まぐれに助けただけだから別に感謝しなくていいし俺の事なんて覚えてなくていいって。どうよ、楽しく生きてるか白龍皇?」

 

その声と表情は先程まのフザケた態度の定治からは想像出来ない程の優しいものでヴァーリは思わず呆気に取られてしまう。だがそれも一瞬でヴァーリは口角を吊り上げる。

 

「……ああ」

 

頷いて微笑むヴァーリを見て定治は満足そうに小さく頷いてヴァーリの肩から手を離した。

 

「ん、ならいいさ。助けた甲斐があった。そうだ、あの時やった弁当と水筒は返さなくていいぞ。俺もう新しいの買っちゃったし。じゃ、俺は授業があるから」

 

それだけ言って去ろうとする定治だが、ふと言い忘れていた事を思い出し、歩みを止めて振り返りヴァーリを指差す。

 

「あ、待った。言いたい事あるんだった」

 

「何だ?」

 

「お前の性癖なーに?……アッヒャッヒャッ、嘘嘘ジョークだって。あーアレだ、既に禁手化してるお前から見て一誠のヤツはまだまだ未熟かもしんない。お前らが闘う事自体は別に否定はしないけど、あんまり一誠の奴イジメてやんなよ?そうだなぁ、もし仮にお前が一誠の奴にイジワルしちゃったらその時は怖〜い魔術師がお仕置きしに行く事になっちゃうんで、そこんとこ夜露死苦ゥ!」

 

ヘラヘラと笑って冗談のように言う定治の姿を見てヴァーリは言っていることを正直に捉えていいのかわからずに困惑していると定治の表情がヴァーリに悪寒を走らせる程の冷酷なものへと一変する。

 

「あ、コレ冗談じゃなくてマジだから気をつけろよ。あとヴァーリだっけ?お前の中にいる龍にも言っとけ。失礼だからあんま人の魂覗くんじゃねぇよって。割とマジで俺そういうことされるのイヤだから」

 

言いたかった事を口にし終え、定治は表情を冷酷なものから何時ものヘラヘラと笑うものに変え、"んじゃよろしくー"と言って去っていく。

 

あまりの表情の変わり方にヴァーリは暫くの間呆然としてしまう。だが気を取り直し、先程定治が言っていた事を確認する為内に眠る龍アルビオンの名を呼ぶ。

 

「アルビオン、お前あの人の中を覗いてたのか?」

 

「……ッハァ!ッハァ!ば、化け物だ!アイツは本当に人間なのか!?底が知れなかったぞ!?あんなヤツがこの世にいたのか!?ヴァーリ!絶対にアイツを覗き込むな!下手をすれば覗きこんだだけで死んでしまうぞ!」

 

「……何だと?」

 

 

どうも久々にちょっとカッコいい所見せた定ちゃんです。

 

さて、ヴァーリくんに警告した後、僕は教室の扉の前に立っております。

 

あー開けたくねぇなぁ。授業サボりてぇなぁ。母さん風邪ひかないかなぁ。そしたら授業いつでも受けるんだけどなぁ。

 

それと気配でわかったけどドア越しに元浜と松田が待ち構えてるなぁ。

 

ん?何でわかったのかって?

 

ほら、俺ってほら感知系だからわかるんだよ。バックアタックは感じ取れないけど。

 

……んー、よし!うだうだ考えててもしょうがない!開けよう!母さんの事は後で考えよう!気持ちの切り替えは大事!元浜と松田には開けた瞬間にカウンター決めてやればいいや!

 

「おっはざー「定治貴様!」ブベラッ!?」

 

速っ!?俺が思ってたより殴るスピードが速っ!?

 

おいバカやめろ!のし掛かるな!その体制を今すぐやめろお前ら!キャメルクラッチとサソリ固めを同時にやるなイダダダダッ!?お前ら本気で俺を殺しにかかってんの!?

 

痛い痛いッ!折れちゃう!いろんなところが折れちゃうのぉぉぉ!

 

「聞いたぞ定治!お前転入生のゼノヴィアちゃんに迫られたらしいじゃねぇか!お前は熟女好きのはずだろ!?なんでそうなったんだよ!」

 

「俺が知るかボケェ!ゼノヴィアに聞けよイデデデデッ!?」

 

「顔か!所詮この世はイケメンが持てる時代なのかぁぁぁぁ!!」

 

「おのれ定治ゥゥゥゥ!一誠に続きお前までもかぁぁぁ!!」

 

「ギャアァァァァ!?」

 

イダダダダッ!?折れちゃう折れちゃう!チクショウコイツらにプロレス技を教えるんじゃなかった!よくよく考えてみればコイツら俺と一誠くらいにしか技掛けてこないだろうしなぁ!

 

ヤバいシャレにならないレベルで痛い!誰か元浜達を止めてくれる奴はいないのか!?

 

「で、これが定治結構好きなんだよねー。兵藤達とエロ本見てた時こういうの出た瞬間大興奮してたから間違いないよー」

 

「ふむ、なるほど」

 

桐生ゥゥゥゥ!何ゼノヴィアに良からぬこと教えてんだテメェ!マジ何でテメェは女なのにエロ本堂々と取り出してんだゴラァ!しかも俺の細かい性癖ゼノヴィアに教えてるみたいだし!なに人の性癖教えてんだよあのアホ!?マジふざけんなよお前!?テメェそんなんだから影で変態女とかエロの匠って呼ばれてんだよバーカ!

 

「おーし、お前らホームルーム始めっから席つけー」

 

おおその声は我がクラスの担任グレートティーチャー!グレートティーチャーが来たならもう安心だ!さぁ早くこのプロレス技から俺を助けてくれ!頼りの綱はグレートティーチャーだけだ!

 

「定治ー。お前もプロレス技くらってないで早く席つけよー」

 

「軽い!軽すぎんだろグレートティーチャー!この状況見て!止めてくれよグレートティーチャー!」

 

「無理だわー。俺今絶賛格ゲーの新しいコンボ考えてるから無理だわー」

 

「あんたよく教師になれたな!?」

 

クソッ!グレートティーチャー相変わらず適当な性格してるな!でもそんな所が僕は良いと思います!

 

そしてここで衝撃の事実を発表しちゃいます!実は僕、駒王学園全ティーチャーから定治呼ばわりされてます!阿見なんて入学して二ヶ月経つ頃には呼ばれなくなりました!なんでだろうね!

 

「出席とんぞー。定治ー」

 

「ハァイ!助けて下さイダダダダッ!?逝く!逝くから!俺の身体もう逝っちゃうからそろそろ離してくれよ元浜松田ァ!」

 

「「嫌だす」」

 

「クソがぁぁぁぁ!!」

 

「定治ー、他の生徒の声聞こえないから声落とせー」

 

「なら止めてくれよグレートティーチャー!イダダダダッ!?」

 

げ、解せぬ……さっきまでカッコいい俺だったのにどうして数分後にはプロレス技を掛けられているんだ……しかも誰も助けてくれない……なんか悲しくなってきた。

 

こうしてグレートティーチャーは終始俺の状況をスルーし続け、その結果俺はホームルームが終わるまで元浜と松田にプロレス技をかけ続けられるハメになり、俺は腰とか首にかなりのダメージを負うことになるのだった。

 

チャンチャン♪

 

……あ、ヤベ。母さんの対応どうするか全然考えてなかったマジオワタ。

 

 

 

時は流れ公開授業。そこでは9割以上の人が地獄と思うだろう光景が広がっていた。

 

「キャー♡定ちゃーん♡こっちよぉ♡こっち向いてー♡」

 

「(死にたい……)」

 

「「「(うわぁ……)」」」

 

地獄の光景の中心はハンディカメラとイタいうちわを手にしてはしゃぐ矢儀と羞恥心により顔を真っ赤にして涙目でプルプルと震える定治。この光景を見たクラスメイトと保護者一同はプルプルと震える定治の姿に同情し、憐れみの視線を送ってしまう。もし自分が定治の立場ならツラくて仕方がないだろう。定治はよく耐えている、と思いながら。

 

「すみません!ウチの家内が!本っ当に申し訳ない!」

 

「あ、相変わらずですなぁ阿見さんの所は……ハハハ……」

 

「何時もはおっとりとした普通の奥様なのにねぇ……」

 

一同が定治に憐れみの視線を送るいる中、生傷の跡がいたるところにチラホラと見える夢桐が頭を必死に下げ続けると長い付き合いの一誠の両親が苦笑いを浮かべる。

 

定治と一誠が幼い頃からずっとこの光景を見ている一誠の両親だが未だ矢儀の猫可愛がりぶりに慣れる事ができない。

 

一誠の父親と母親もまた一誠とアーシアの公開授業に備えてそれなりに準備し、公開授業当日は年齢の割にはしゃぎ、楽しく参加していた。

 

だがしかし、矢儀のはしゃぎ具合は一誠の両親とはまるで比べ物にならないものだった。

 

もし仮に矢儀のはしゃぎぶりを例えるとしたら、それは好きなアイドルのライブに来た女子高生がライブ中に好きなアイドルが去り際に自分の頬をキスしてくれたレベルのはしゃぎぶり、つまり周りが全く見えてない程のはしゃぎ具合である。

 

クラスメイトと保護者一同が定治に憐れみの視線を送る中、夢桐と矢儀を除いて一人だけ全く違う反応をしている者がいた。イタいハッピを着て、イタいうちわを手にした銀髪の美少女、ニャルラトホテプである。

 

「ング、クヒッ……お、面白すぎる……プフッ……こんな悪趣味なの着るハメになったけど来てよかった……!プフゥっ!もう我慢できないアハハハハ!最高っー!スゴい面白いんですけどアハハハハ!!」

 

周りの保護者達に配慮して必死に笑いを堪えていたニャルラトホテプだがとうとう笑いを抑えきれなくなり吹き出してから大爆笑する。

 

「すみませんすみません!おいニャル!お前も笑ってないで私と謝るんだよォ!」

 

「アハハハハ!すみませんそれ無理です!面白すぎてそれどころじゃないんでアハハハハ!!」

 

 

爆笑するニャルラトホテプに必死に周りの保護者達に謝罪を繰り返していた夢桐が声を荒げるが、ニャルラトホテプは気にせず笑い続ける。

 

「(もう殺して……)」

 

はしゃぎまくる矢儀の存在だけでも恥ずかしいのに謝り続ける夢桐、爆笑するニャルラトホテプというコンビネーションで教室の注目は阿見家に集中してしまい定治は余計に恥ずかしくなり顔をより真っ赤にさせてしまう。

 

そして未だに粘土に手をつけず顔を真っ赤にしてプルプルと震える定治に矢儀が意図せずして更なる追い討ちを仕掛けてしまう。

 

「定ちゃーん何作るの〜♡ママできればママの像を作って欲しいわぁ〜♡ママへの愛がたっぷり見える奴でお願〜い♡」

 

満面の笑みでうちわを振り回す矢儀が言ったこの予期せぬ追い討ち、これがついに耐えに耐え続けた定治の限界を超えさせてしまった。

 

「……ぁ」

 

「あ、やるな」

 

「ああ、絶対やるな」

 

「3、2、1、0」

 

「あ"あ"あぁぁぁぁぁぁ!!もう無理ィィィィ!!」

 

松田が0と言った瞬間、定治が絶叫しながら窓に向かって全力疾走。

 

そしてーー

 

「イヤァァァァ!!母さんのバカぁぁぁぁ!!」

 

"バリィィィィン!!"

 

「さ、定ちゃーーーーん!?」

 

ガラスをぶち破り逃走。

 

「「「(定治……かわいそうに……)」」」

 

何時やるかはわからなかったものの、この結果を予測していたクラスメイト一同は定治の心境を察して心の中で涙を零してしまう。

 

「(マジか……少しでも騒がせないように授業を粘土弄りにしたっていうのに……もうなんでもアリなのかあの人は……悪いな定治……マジメンゴ)」

 

英語担当のグレートティーチャーは過去の経験から問題を出して指すような普通の授業よりかは粘土弄りの方が矢儀が騒がないだろうと判断し、急遽授業内容を変更したのだが結果として定治は耐えきれず逃走してしまった。定治に心の中で謝罪し、頭に手を抑えてため息をつくグレートティーチャー。だが先程からずっと爆笑するニャルラトホテプを目にしてそのため息を更に深いものにしてしまう。

 

「(定治のお姉さんマジでうるせぇ……何で弟相手に愉悦して笑ってるんだよ……)」

 

「アハハハハ!アーハッハッハ!もうダメ!苦しい!お腹痛い!アハハハハ!ヒィーッ!」

 

「すまん定治、本っ当にすまない……ニャルは後で説教な」

 

「なんで!?」

 

 

オマケ

 

"駒王学園ティーチャー達の反応"

 

"バリィィィィン!!"

 

ティーチャーA「んん!?この音は!?……なんだ定治くんですか。みなさん気にしないで授業続けますよー」

 

小猫「(えぇ……)」

 

職員室

 

"バリィィィィン!!"

 

教頭先生「ハハハ、賭けは私の勝ちだねBくん。今日の飲みはキミの奢りね」

 

ティーチャーB「チクショー!これで勝ったら超高級フレンチ奢りで食えたのに!おのれ定治ゥゥゥゥ!!」

 

教頭先生「ハッハッハ、なに居酒屋も悪くないじゃないか。さて、今日はたくさん食べちゃうぞ〜」

 

校長室

 

"バリィィィィン!!"

 

校長先生「Cくん、業者さんに注文書流して下さい。いつも通りガラス一枚で」

 

ティーチャーC「わかりました〜」




人物紹介
グレートティーチャー(男) 適当な性格
ティーチャーA (女) 真面目な性格
ティーチャーB(男) 元ヤン
教頭先生(男) よく笑っている
校長先生(男) 厳しくも優しい、だが話は長い
ティーチャーC(女) おっとりとした性格

色んな先生方が居ますがいずれの皆が定治を阿見くんと呼ばず定治(くん)と呼びます。割と仲が良いので。

ニョグタの黒肢
ニョグタのわしづかみと呼ばれる魔術。この呪文は対象の人物に狙いを定め発動させると心臓麻痺のような症状を起こさせその次に胸を破裂させる。破裂した対象の人物の胸には心臓は無く、術者の手に心臓が現れる。詠唱は本来長いものだが定治はかなり省略させて発動する事が可能だす。


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定治がイジりたそうにそっちを見ている

どうしますか?

→イジり返す
逃げる
キレる
一誠に助けを求める
出番ですよ朱乃さん!
出番ですよ小猫ちゃん!
ゼノヴィア!私が時間を稼ぐ!その隙に奴を襲え!


公開授業の次の日、定治が八つ当たりにニャルラトホテプにレッグラリアットやらコブラツイストやらをやった次の日、オカルト研究部の一同はリアスに連れられ旧校舎にある一室へと招かれた。リアスが言うにはその部屋に僧侶の駒を与えられたリアスの眷属がいるらしく、一誠以降のリアスの眷属たちがまだ見ぬ仲間にドキドキしながら部屋に入るとそこには怯えるように一同を見る金髪美少女がいた。

 

「うぉぉぉ!!アーシアに続き金髪美少女だぁぁぁ!!ヒャッホーウ!!」

 

最初はドキドキしながらリアスの眷属を見た一誠だが可憐なその姿を見た瞬間態度を変えて大喜びしてしまう。

 

しかし、一誠が大喜びしている横では何故かリアスがクスクスと笑っていた。

 

「フフフ一誠、残念だけどその子、ギャスパーは男の子よ」

 

「……え、ちょっと部長何言ってるんですかこんなカワイイ子が男な訳ないですよね?」

 

「いいえ、紛れも無い事実よ。ギャスパーは男の子、女装が趣味なだけの普通の男の子よ。ね?ギャスパー?」

 

「え? は、はい……」

 

「……え?」

 

リアスの口から放たれた衝撃の事実。最初はリアスの言っている事を冗談だと思っていた一誠だが続けざまに言ったリアスの口調からリアスが冗談を言ってるわけでは無いと気づき、その事実に思わず固まってしまう。

 

そしてーーー

 

「えぇぇぇぇ!?」

 

旧校舎の外からでも聞こえる程の絶叫を上げてしまう。仕方ないね。

 

「う、嘘だろ……?こ、こんな事が……あっていいのかよ……!」

 

衝撃の事実を知りガクッと膝から崩れ落ちる一誠。そんな中、定治が面白そうにギャスパーをジロジロ見ながら木場に一つ尋ねる。

 

「祐斗ー、コイツホントに男なの?」

 

「うん、その筈だよ」

 

定治の問いに木場が頷くと定治はヘラヘラと笑いながら何故かギャスパーの元へと歩み寄っていく。

 

「えーホントにー?見た感じ女にしか見えないんだけどなーってホンマや!ホンマにチ○コ付いとるやん!」

 

「え、えぇぇぇ!?な、何するんですかぁぁぁぁ!?」

 

ここで定治、下手な関西弁を口にしながらギャスパーのスカートを捲るというとんでもない行動を起こす。この予想だにしない行動にギャスパーは驚き、感情を昂らせてしまい、自らが持つ力を思わず発動してしまう。

 

「いけないわ定治!」

 

リアスの声と同時にギャスパーは自らが持つ神器、停止世界の邪眼を発動する。この力は目に見えるものを関係なく停止させてしまう厄介極まりないもの。この能力が制御出来ないが為にギャスパーは旧校舎に封印されていた。

 

「(は、発動しちゃった……でもこれなら……に、逃げよう……)」

 

「おいおい逃げんなよ」

 

自らの見た景色を停止させるというこの能力を発動してしまったギャスパーは発動してしまった事に焦りを見せるものの、その場から逃げ出そうとする。しかし、そんなギャスパーの腕を止まっていると思ってい定治が掴む。すると完全に止まったと思っていたギャスパーはこの予想だにしていない光景に驚いてしまう。

 

「えぇ!?何で止まってないんですかぁ!?」

 

「え、何で止まんないと行けないの?意味わかんないんだけど。今何かしたの?」

 

「え、えぇぇぇぇ!?」

 

全く止まっている様子の無い定治を見て驚くギャスパーに対して定治は言っている意味が解らず首を傾げる。停止世界の邪眼が全く効いていないのを目の当たりにしたギャスパーは訳が分からず大騒ぎをしてしまう。しかし定治はそんなギャスパーを無視してヘラヘラ笑いながらギャスパーの身体を不躾にペタペタと触り始める。

 

「いやー世の中広いねぇ。女装してる男、男の娘っていうの?そんな奴実在するなんて流石に思いもしなかったぜ。一つ聞きたいんだけどさ、何で女装なんてしてるん?恥ずかしくないの?」

 

「……え?……だ、だって……この格好の方がかわいいんだもん…」

 

ペタペタ触りながら尋ねる定治にギャスパーが戸惑いながらも涙目で答える。するとギャスパーの返事を聞いた定治は面白そうに笑い声を上げる。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!"もん"って、男が"もん"っていうの初めて見たわ!アッヒャッヒャッヒャッ!何こいつ超面白ぇ!」

 

予想外の口調に定治は暫くの間大笑いし続ける。しかし数分経つと流石に面白く無くなって来たようで定治はギャスパーの腕を持ち上げて無理矢理立たせてギャスパーを部屋から連れ出そうとする。

 

「うーし、一通り笑えた事だし取り敢えず外出んぞ。あー面白かった」

 

「は、放して下さいー!」

 

「嫌でーす。アッヒャッヒャッヒャッ!」

 

抵抗するギャスパーだがいくら頑張っても定治から逃れる事は出来ない。

 

そんなギャスパーを無視して部室に連れて行く為に定治が振り返る。するとそこにはリアス達がポカンとした様子で見定治をていた。

 

「あれ、みんなどうしたんだよ。そんな鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」

 

首を傾げる定治にリアスは驚き、戸惑いながら一つだけ質問をする。

 

「定治、あなたギャスパーの能力が効かなかったの?」

 

「いやーそれが全く気づかなかったんですよねぇ。ホント、何されたか分かんないのが一番厄介ですよねーっておいこら逃げんな」

 

「ヒィィィ!?なんなんですかこの人ーーー!?」

 

定治の口調から察するに定治はギャスパーの能力が全く効いていなかったのを理解したリアスは思わずため息をついてしまう。

 

「ハァ…相変わらず規格外の子ね……」

 

「……凄いな定治くんは」

 

「ギャーくんの能力が効かない人間なんて初めて見ました」

 

リアスが呟いた一言に木場と小猫が頷いたのだった。

 

ギャスパーを部室へと連行した定治はソファに座り、ギャスパーの過去や能力などについて一通りの説明を受ける

 

「なるほど停止世界の邪眼ねぇ。面白そうなの持ってんじゃん」

 

「ふぇぇ……僕の話なんかしないで下さいぃ」

 

ギャスパーの事情などを粗方聞いた定治は興味深そうにギャスパーを眺める。するとギャスパーは先程の影響ですっかり定治に苦手意識を持ってしまった為、隠れるように段ボールに閉じこもってしまう。だがそれは間違った行動で、その行動を見た定治に悪戯小僧のような笑みを浮かべさせてしまう。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!おいおいやめてくれよ。そんな事されたら俺、余計にイジりたくなっちまうよ」

 

段ボールに隠れててもわかるくらい震えるギャスパーに定治はニヤニヤしながら歩み寄り、段ボールごとギャスパーを持ち上げて段ボールを上下に振り始める。

 

「ほーら、早く段ボールから出ないとシャカシャカチ○ンみたいに延々シャカシャカされちゃうぞー」

 

「ヒィィィィィ!?」

 

定治が上下にシャカシャカ振り始めたせいでギャスパーが悲鳴を上げる。そんな様子を見たリアスだが、これでギャスパーが段ボールから出てくれれば幸いだと思い、定治に強く注意せず紅茶に口をつける。

 

「定治、あまりギャスパーをイジメてはダメよ?」

 

「うーっすシャカシャカ」

 

「ヒィィィ!誰か止めて下さいぃぃぃ!!」

 

リアスの真意に気づいているの気づかないのかはわからないが定治はニヤニヤしながら段ボールを振る手を一向にやめない。

 

一方でずっと上下に振られているギャスパーは悲鳴こそ上げるものの段ボールから出る気は全くる無く、それが余計に定治の嗜虐心をくすぐらせ上下に振るスピードを上げさせてしまう。

 

「おい定治!流石にやりすぎだ!」

 

「そうです!ギャスパーくんが可哀想ですよ!」

 

「一誠、アーシアちゃん、そうやって甘やかすのがダメなんだよ。引きこもりっていうのは少しでも甘くしちゃうとつけあがっちゃうからな。引きこもり改善の為には心を鬼にして厳しく接しないといけないんだよ。だから俺はシャカシャカをやめませーんアッヒャッヒャッヒャッ!」

 

「ヒィィィィッ!?」

 

「(判断を間違えたかしら……?いえ、定治の言う通り時には心を鬼にする必要があるわ。定治の無茶苦茶ぶりはギャスパーにとっていい刺激になる筈よ……多分)」

 

流石にやりすぎなのではと一誠とアーシアが定治に注意するが定治は全く辞める気配は無く悪戯小僧モードを続行する。そして悲鳴を上げ続けるギャスパーにリアスは一瞬判断を間違えたかもしれないと思うがギャスパーの為を思い心を鬼にすると決断した後、時計がとある時刻を指しているのを見て立ち上がる。

 

「さてみんな、そろそろ私と朱乃は会談に向けての打ち合わせが入っているわ。祐斗、あなたも来てちょうだい。お兄様たちがあなたの力の事で知りたい事があるそうだから」

 

「わかりました」

 

「私達が出かけている間貴方達にはギャスパーの教育をお願いするわ」

 

「いいっすよー。シャカシャカシャカシャカシャカシャカ!」

 

「ヒィィィィ!?ホントなんなんですかこの人ーーー!?」

 

 

 

 

リアスにギャスパーの教育を頼まれた一同は旧校舎の外でギャスパーを鍛えていた。

 

「ほぉら走れ走れ!走らないと斬るぞ!」

 

「ヒィィィ!?」

 

「なぁなぁ、吸血鬼ってマジで十字架効くの?試していーい?」

 

「ヒィィィ!?こ、この人たち悪魔ですぅぅぅ!」

 

「悪魔だが?」「あ、俺は人間です」

 

「ヒィィィィィィィ!?」

 

ギャスパーを追いかけているのはデュランダルを手にしたゼノヴィアと十字架を手にした定治。

 

二人は全力疾走しているギャスパーに追いつくか追いつかないか位ギリギリの距離を保ちながらギャスパーを追い回す。そんな二人に恐怖を抱いて悲鳴を上げるギャスパーだがいくら悲鳴を上げてもゼノヴィアは熱血教師のような厳しい表情で、そして定治はヘラヘラ笑いながら追いかけてくる。

 

このように、先日のプールで起こった逆※※※未遂事件加害者&被害者コンビがギャスパーを追いかけ回していると、様子を見に来たついでに遊びに来た匙がやって来る。

 

「お、やってるなオカ研!って誰だそこの超絶美少女はァ!?」

 

涙目で走り続けるギャスパーを見て匙が鼻息を荒くする。だがその横では一誠がまるで少し前の自分を見ているような気持ちで匙を眺めていた。

 

「……匙、残念だけどソイツは男だ。もう一度だけ言うぞ。ソイツは、男だ」

 

「ハァ?何言ってんだ兵藤、こんなカワイ子ちゃんが男な訳無いだろ!」

 

一誠の言う事を冗談だと思い言葉を荒げる匙、しかし一誠の哀愁の漂う表情を暫く見てから一誠が冗談を言ってる訳では無いと気づき始める。

 

「……え、マジ?」

 

「俺も信じたくなかったよ……だけどな、定治がスカートめくって確認したんだよ……そしたらさ……付いてたんだよ……アレが……」

 

「嘘、だろ……」

 

匙がガックリと膝から崩れ落ちる。一方、ゼノヴィアと定治に追いかけられたギャスパーは息も絶え絶えの状態で地面にへたり込んでしまっていた。

 

「ハァ……ハァ……もう走れません〜」

 

「情け無い、健全な身体にならなければ神器を制御する事など出来んぞ!全く、このような根性無しでは先が思いやられる!」

 

「そ、そんな事言われてももう走れないものは走れませんー!」

 

へたり込むギャスパーに罵声を浴びせるゼノヴィア。しかしギャスパーは涙目で目を潤ませて弱音を吐くだけで再び立ち上がる様子は見えない。そんなギャスパーを見たゼノヴィアがイライラしながら再び罵声を放とうとしたその時、何故か小猫がギャスパーに歩み寄っていく。

 

「だらしないですギャーくん」

 

「こ、小猫ちゃ〜ん」

 

涙目で助けを請うギャスパー。しかし小猫が手に持つものを見た瞬間、悲鳴を上げて逃げ出してしまう。

 

「これを食べてスタミナをつけた方がいいです」

 

「やだぁぁぁ!ニンニク嫌いぃぃぃ!!」

 

「食べるんです。好き嫌いはいけません」

 

小猫が手に持つニンニクを見たギャスパーが逃げ出すと小猫は無表情のまま追いかけて行く。この小猫が人をイジるという中々見れない光景を見て定治は面白そうに笑い声を上げてしまう。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!いやー、小猫ちゃんナチュラルにSだなーアッヒャッヒャッヒャッ!……チッ」

 

愉快そうに笑っていた定治だがここで何かに気づき、舌打ちと同時にルールブックを手元に呼び出して何時でもゲートを出せるように魔力を込め始める。

 

「ん?どうしたんだ定治、ルールブック呼び出して」

 

「……お客さんだ」

 

定治が苛立たしげに顎をしゃくるとその方向には学園にいる限り滅多に見ない和服を着た男、アザゼルがやって来る。

 

「ソレを納めてくれ、お前さんと事を成すつもりは無い」

 

「アザゼルッ!?」

 

両手を上げてやってくるアザゼルを見て一誠がアザゼルの名を叫んだ瞬間、一同は驚きながらもそれぞれ自らの神器や武器を手にし始める。

 

「へぇ、アンタがアザゼルか」

 

アザゼルの真意が分からない一同は緊張した面持ちで警戒をしている中、定治はルールブックを手にアザゼルに近づいていき、アザゼルに確実に蹴りを当てられる間合いに入る。

 

「そんで?戦うつもりが無いなら何しに来たんだよ」

 

「ちょっと散歩がてら来たら何やら面白い事をやってるのが見えてな。アドバイスをしに来ただけだ。他意はない、本当だ」

 

「……ふーん」

 

他意はないというアザゼルを定治がジロジロと眺める。

 

定治が見る限り、アザゼルには本当に戦闘意思が無い。だが万が一自分が攻撃をした時はアザゼルはそれに全力で抗うだろう。自分一人ならまだしもここは駒王学園で、仲間である一誠達がいる。もし戦闘に発展してしまった場合、被害はこちらの方が大きくなってしまうだろう。

 

アザゼルに敵意が無いのを確認した定治はルールブックをしまう。

 

アザゼルの言う通り、奴は一誠を攫う気は無いのだろう。ならば自分が守る必要は無い。だがアザゼルは戦闘意思こそ無いが自分を警戒し、下手に自分が動こうものなら直ぐに戦闘態勢に入るのは確かだ。

 

「一誠、聞いてやれよ。俺よりか何度も接触しているお前の方が相手も話をしやすいだろ。俺はちょっとトイレしてくる」

 

「え、定治!おい!」

 

「阿見!トイレなんて言ってる場合じゃねぇだろ!」

 

「いやマジ無理、これすぐ行かないとヤバい奴だわ。俺にはここで堂々と漏らす度胸なんてないんでトイレ行ってきますね。大丈夫、少なくともコイツはここで何かするつもりは無いみたいだぜ。そういう訳なんで、後はヨロシク!」

 

自分がここにいない方が話はしやすいだろう。そう考えた定治は彼を呼び止める仲間の声を無視し、定治はトイレに向かって歩いて行った。

 

 

一同がアザゼルと接触してから数時間が経った。アザゼルのアドバイスを元に特訓をした一誠と定治だが何故か二人は困ったような表情でギャスパーの部屋の前で座り込んでいた。

 

「いやー、やりすぎちったなぁ」

 

「ああ、俺もやり過ぎちまった……」

 

"一時間前"

 

一誠『相手のコートにボールをシュウゥゥゥッ!』トス!

 

定治『超、エキサイティン!』アタック!

 

"パァンッ!"

 

ギャスパー『ヒィィィィッ!?』

 

匙『お前らコレ特訓だってわかってんのか!?ガチなバレーボールしてんじゃねぇよ!』

 

定治&一誠『ハッ!?つい何時ものノリでやっちまった!?』

 

一誠がアザゼルから聞いたアドバイスに従い、一同は途中で茶番を挟みつつも匙の神器で余分な力を吸ってギャスパーに神器の制御をさせようと試みた。

 

しかし何度やってもギャスパーが力を制御できている様子はなく、怯えたギャスパーが再び引きこもってしまうという最悪な結果になってしまった。

 

そんな事もあってから暫くの間、再びギャスパーを外に出す為にはどうすべきか悩んだ定治だが中々いい考えが浮かばず、気分転換にコーヒーでも飲もうと思い立ち上がる。

 

「一誠、俺コーヒー買ってくるわ。お前も何か飲む?」

 

「お前と同じので頼むわ。あ、ついでにコンビニの新作デザート出てたから買ってきてくんね?」

 

「あいよー」

 

 

一誠の返事を聞くと定治はコーヒーを買いに行く為、財布を片手にギャスパーの部屋から去っていく。一誠は去って行く定治が視界に消えるまで見届けた後、二人きりな事を利用して扉越しにいるギャスパーの説得を試みる事にした。

 

 

定治がコーヒーを買いに行ってから数分が経ち、コンビニでコーヒーとデザートを買って来た定治は鼻歌を歌いながらギャスパーの部屋まで歩いていた。

 

「ふんふーん♪ふー…ん?」

 

「俺の中には最強と呼ばれる龍の魂が宿ってる。正直怖いよ。この力を使う度、身体のどこかが違うものになっていく気がするんだ。けど、俺は恐れず前へ進もうと思ってる」

 

「も、もしかしたら大切な何かを失う事になるかもしれないんですよ?どうしてそこまで真っ直ぐ生きられるんですか?」

 

「……へぇ」

 

鼻歌を歌いながら一誠の元へ歩いていく定治だが一誠が真面目な声で何かを言っているのを聞き取ると、定治は二人で一体何を話してるのか興味を惹かれ、隠れて聞き耳をたてる事にした。

 

定治が隠れて聞き耳を立てている中、それに気づかない一誠とギャスパーが会話を続けていく。

 

「俺はバカだから難しい事はわかんねぇよ。ただーーー」

 

「ただ?」

 

「ーーーもう何も出来ないのはゴメンだ。前の戦いで俺は何も出来なかった。定治の奴が強大な敵を一人で相手にしてたっていうのに俺は何も出来ずにナイって奴に椅子にされてた。……ダチが頑張ってるのに自分は何も出来ないのってさ、結構ツラいんだ」

 

一誠は悔しそうに拳を握りしめた後、頭の中でいつも通りにヘラヘラと笑う定治の姿を思い浮かべる。

 

一誠にとって定治は小三からずっとつるんでいた大切な親友だ。思えばアイツは何時もふざけてばっかりで、それに巻き込まれていた自分にアイツは退屈なんてさせる暇を与えてくれなかった。

 

そんな定治が特別な力を持っているなんて悪魔になるまで思いもしなかった。

 

だが悪魔になってから知った。

 

凶悪なモンスター達を率いる定治の裏の顔に。

 

神器を使いこなしている定治と録に使いこなせていない自分との間に開いている実力の差に。

 

きっと定治はヘラヘラ笑いながら俺とバカやってる裏で数々の苦難を、戦いを乗り越えて来たのだろう。

 

もしかしたら比べる事自体おこがましいのかもしれない。

 

だけど自分にとって親友の定治と並び立てていないという現実はかなり心に来るものがあった。

 

故に、一誠は胸に秘めた決意をギャスパーに向けて口にする。

 

「今はまだ敵わないけど、いつか俺は定治に追いついてみせる。ダチに守ってもらうなんて情け無いマネもう味わいたくない。俺はアイツと同じ場所に立ちたいんだ」

 

決意を口にする一誠、その裏では定治が僅かに口角をつり上げる。

 

「(……一誠の奴、そんな事思ってたのか)」

 

「ふむ、中々カッコいい事を言うじゃないか」

 

「……親父」

 

笑う定治の隣に突如としてティーカップを手にした夢桐が現れる。定治は突如として現れた夢桐に驚く様子はなく、目だけを夢桐に向ける。

 

「あの子も男の子、という訳か。実に観測のしがいのある光景だったよ。まぁ、私達が育てた息子に追いつこうなどというセリフは多少癪に触るがね」

 

癪に触ると言いながらティーカップに入った紅茶を口にする夢桐、しかしティーカップから口を離した夢桐の表情は微笑みを含んだ穏やかなものだった。

 

「フフフ、ただの脆弱な人間だったあの子が強くなったものだ。前までのあの子だったらきっとさっきのような事は考えもしなかっただろう。それだけ見てもあの子は前より十分に強くなった。後はあの意思を貫き続けて、成長していけるかどうかだ」

 

「その点は大丈夫だろ。アイツはエロくてバカで、直情的だ。だけどな、ああいう時のアイツは一度言った事は絶対に曲げない。例えどんな事があってもアイツは決めた事を成し遂げる。俺はアイツのそういう所、結構尊敬してるんだよ」

 

「ハハ、そうかそうか。なら楽しみにしておく事だ。神々(われわれ)と共に歩むお前に一誠くんが追いつく日を、な」

 

微笑みながら言う定治につられるように夢桐は微笑んだ後、現れた時と同様に突如としてその姿を消す。

 

こうして再び一人になった定治はビニール袋からコーヒー缶を取り出して栓を開ける。

 

「……楽しみにしてるぜ、一誠」

 

コーヒーを口にしながらそう呟いた後、定治は表情を何時ものヘラヘラとした表情に戻してから一誠達の元へと向かっていくのだった。

 

 

オマケ"実は家族が一人増えてました"

 

ニャル「この度戸籍上定治さんの姉になりました阿見ニャル子です!みなさんよろしくお願いしますね★」

 

ショゴス「みんなー、僕が超楽しみにしてたポテチ誰が食べたか知ってるー?」

 

スズキ「それならバイト帰りの斉藤さんが食べてましたよ」

 

斉藤「げぇ!?アレショゴスくんのだったのかよ!?「斉藤さん覚悟できてるー?」ちょ、タイム!ショゴスくんタイムギャアァァァァ!?」

 

ユキ「定治、この本続き無いの?あったら貸してちょうだい」

 

定治「まだ出てないぞ」

 

ニャル「みんな興味持って!こんな美少女が阿見家の家族になったんですよ!?嬉しいでしょ!?ほら!こーんな美少女ですよ!?」

 

定治「みんなー、そろそろ俺の部屋で借りてきたDVD見ようぜー」

 

ショゴス「はーい!」

 

スズキ「わかりました」

 

斉藤「う、うーっす」

 

ユキ「わかったわ」

 

ニャル「お前ら待てやオラァァァ!喧嘩売ってんのかゴラァァァ!!特にユキィ!貴方私の部下でしょう!?なんで一緒にスルーしてるんですか!?」

 

ユキ「定治、今日貴方何借りてきたの?……あら、これ丁度見たかったのよ。最初にコレ見ましょ定治」

 

ニャル「ユキィィィィ!!」




ハイ、今回はここまで。今回出せなかった神話生物分はオマケで補充をお願いします。

……今回ギャスパーくんがヒィィィィッ!?しか言ってない件については申し訳ないと思っております(棒

前から思ってたのですが定治はイジり役よりもイジられ役の方が似合う気がします。そう思うのは私だけですかね?

最近パッパの出番が多いな……そろそろミゼーア様がキレそうなレベル。ミゼーア様に殺される前に出さなければいけないのかもしれませんね……

それにしてもハイスクールddのキャラが中々出せない、こういうところは本当に難しいですねぇ


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ケンカのやり方

三勢力の会談の日が近づいてきたとある日の事、一誠と定治は学園の屋上で昼ご飯を食べていた。現在、元浜と松田は用事があると言って別の場所に行ってしまった為屋上には定治と一誠しかいない。

 

「………」

 

「ん、ごちそうさまでしたっと」

 

昼ご飯を食べる中一誠はチラチラと定治の様子を伺い、定治が食事を終えたのが見えた瞬間地面に頭を擦り付ける程の土下座をする。

 

「定治、俺に戦い方を教えてくれ!」

 

「急にどうした」

 

先日のギャスパーの部屋で行われた会話を聞いていた定治は一誠が頼み込む理由をある程度理解しているものの、あえてそれを知らない風を装って一誠に尋ねる。

 

そんな定治の心情を知らない一誠は定治の問いかけを聞くと頭を上げ、決意を込めた表情で訳を話す。

 

「定治、俺は前の闘いでお前が戦ってる横で何も出来なかった。俺はもう足手まといになんかなりたくない。だから今すぐにでも強くなりたいんだ!」

 

「……ハァ」

 

一誠の口から理由を聞いた定治は心の中では一誠の言葉を嬉しく思う反面、何故か困ったように溜息をつく。

 

「参ったな……一誠、つまりお前は俺に武術とか身体捌きを教えて欲しいってことだよな?それもできれば今すぐにでも習得できるようなの」

 

「ああ、俺は武器とか使えねぇ!必然的に武器は自分の拳になる!だから俺はお前に武術とかを教えて欲しい、ッ!?」

 

定治の言葉を聞いてから食いつき気味に話そうとする一誠。しかし定治が一誠に反応出来ない程のスピードで箸を目に突きつけ一誠を無理矢理黙らせる。

 

 

「お前は武術を舐めすぎだ一誠。見様見真似のプロレス技ならともかく、武術を1日2日で習得できたら誰も苦労なんてしねぇんだよ。俺だって今のレベルになるまで十年以上の鍛錬が必要だったんだぞ」

 

呆れるように話して箸を下ろす定治。だが箸を下ろした後の定治の表情は何故か楽しそうにニヤリと笑っていた。

 

「そんな訳で悪いけど武術を教えてやるのはできない。だけどまぁ、ケンカで負けない方法なら教えてやるよ。放課後旧校舎の裏に来い、準備が出来次第そこで特訓を始めんぞ」

 

時は流れ放課後の旧校舎裏。一誠は定治に言われた通り旧校舎裏にある広い場所にいた。

 

定治が指定した場所に先に着いた一誠は動きやすいジャージ姿で準備体操をしながら定治を待っていると準備体操を初めて数分の所で定治が現れ、一誠に特訓の始まりを告げる。

 

「ん、準備オッケーみたいだな。そんじゃ始めるか。まず最初に教えるのは拳の握り方だ。これ意外と大事だからちゃんと覚えといてな。あ、ダメダメ親指を握り込むな。それやっちゃうと殴った時自分の拳がやられちまうから気をつけてな。……よし、オッケーだ」

 

定治は自らの手を見せながら一誠に拳のにぎり方を教えると一誠は見よう見まねで定治と同じように拳を握る。一先ず拳の握り方を理解した一誠を見て定治は一つ頷いた後近くの木まで歩いていく。

 

「拳の握り方はオッケーだよな?そんじゃ次は殴り方だ。先ず足を肩幅程度に開く。うん、そうそう。そんで次に殴る方とは逆の足と手が前に来るように一歩踏み込みながら腰を捻らせる。この時身体をブレないようにするのが大事だ。よし、出来たな?そしたら次は腕を引く。そんでもって足、腰、腕の順に身体を動かして、相手目掛けて真っ直ぐ撃つ!」

 

"ズドンッ!"

 

一誠が定治の身体の動きを見ながら同じように動くのを確認した後定治は木に向かって拳を放つ。

 

拳を撃ち込まれた木は倒れこそしないものの、大きな音をたてながら幹を震わせかなりの衝撃があったのを一誠に理解させる。

 

定治が木から拳を離すと撃ち込まれた箇所には大きなヘコみが出来ており、定治はヘコみを眺めて"ま、こんなもんか"と呟いた後一誠の方へと視線を移す。

 

「これが殴り方の基本だ。最初は大振りになってもいい。そんなのは今後幾らでも修正がきく。取り敢えず今のお前に大事なのは自分の体重が乗っかった拳を相手に当てる事だ。そんじゃやってみろ一誠」

 

「おう!」

 

定治の言われた通り一誠は拳を空に振り続ける。時間にして十分程だが一心不乱に拳を振り続け、横にいる定治に間違っている所を指摘されていた一誠の身体には強い疲労感が襲いかかる。

 

「よし、そんなもんでいいぞ。一旦休憩だ」

 

定治から止めの声を聞くと同時に一誠は息を切らしながら地面にへたり込んでしまう。

 

「……ハァ、ハァッ!い、意外とキツいなコレ……!」

 

「キツいだろ?俺もまさかお前がずっとやり続けられるとは思ってなかった、よく頑張ったな一誠。これで下地は出来た。疲れてる所悪いけど少し休憩を挟んだらまた特訓を再開するぞ。これでも飲んどけ」

 

数分の僅かな休憩、一誠は定治に投げ渡されたスポーツドリンクを手に取り、勢いよく飲んで失った水分の補給をしてから息を整えようとするが直ぐに定治が手を叩いて短い休憩の終わりを告げる。

 

「ハイ休憩終わり。そんじゃ早速再開、と行きたいところなんだけどその前に一つ質問だ。一誠、喧嘩で負けない為に大事なのは何だと思う?」

 

「うーん、相手の攻撃をなるべく喰らわないで自分の攻撃を喰らわせる事か?」

 

定治の問いに一誠は少し考えてから思った事をそのまま口にするとそれを聞いた定治は困ったように苦笑しながら片方の手を後ろポケットに入れ、もう片方の手で一誠の腕を持ち上げる。

 

「んー、確かにそれは大事なんだけどな?だけどそんなの常に出来るものじゃないんだよ。ケンカってのは避けられる攻撃より避けられない攻撃の方が多い。だから俺の中で一番大事だと思うのはーーー」

 

"ガチャン"

 

「……え?」

 

「ーーー痛みを恐れない事だ」

 

定治がポケットから取り出したのは手錠。これを定治は一誠の手首と自分の手首に取り付け、戸惑う一誠を無視してこれから行おうとしている特訓の内容について話し始める。

 

 

「部長はお前があまり怪我を負わないような闘い方を教えてたけどこれから俺がお前にやるのはそれとは全く逆。これは俺も親父相手にやらされた奴でな?痛みに慣れさせ、度胸をつける特訓だ。特訓内容は至ってシンプル、これから俺はお前を殴り続けるからお前はそれにビビる事なく殴り返せ」

 

これから行う特訓の説明を終えると定治はヘラヘラと笑いながら拳を振り上げる。

 

「やる事はわかったな?そんじゃ始めんぞ。度胸見せろよ一誠」

 

「うおっ!?オブッ!?」

 

突如として襲い掛かる定治の拳を咄嗟に避けようとする一誠。しかし定治はそれをさせまいと手首で繋がってる手錠を利用して一誠を無理矢理引き寄せて一誠の腹に拳を入れる。

 

「言っとくけど避けられるなんて思うなよ。お前に攻撃を避けさせない為に放課後ダッシュで家から手錠取ってきた訳だし。さぁ、まだまだ行くぜ」

 

言葉と同時に定治の拳が再び一誠に襲いかかる。

 

「はい目を瞑らない」

 

「グハァッ!?」

 

「はい蹲らない」

 

「グホッ!?」

 

「はい敵から目を逸らさない」

 

「ウグッ!?こ、このやろゲハァ!?」

 

「それじゃ反撃になってない」

 

「ブホォッ!?」

 

淡々とダメ出しをしながら殴ってくる定治に最初は言われた通り殴り返そうとする一誠。しかし一誠の拳が届く前に定治の拳が再び一誠を襲い、一誠の拳は空を切り続ける結果になってしまう。時間にして僅か数分、しかしこの数分の間絶え間なく殴り続けられた一誠は拳を振りかぶるのがやっとの状態にまで追い込まれてしまう。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「……俺がお前を殴った回数は27回でお前が殴り返したのは5回。その内俺がまともな攻撃だと思ったのは1回もない。どうだ一誠、痛みには慣れそうか?」

 

「…………」

 

淡々と自らの殴った回数と一誠が殴った回数を口にしながら一誠に尋ねる定治だが一誠は顔を下に向けたまま言葉を返す様子は無い。そんな一誠の様子を見て定治はまるでわかっていたかのように溜息をついた。

 

「……ハァ、もうちょっと根性あると思ってたけど返事無し、か。ま、最初はそんなもんだ。一誠、誰だって痛いのは嫌だ。だけどな、強くなる為には痛みにビビらないのが一番大事なんだよ」

 

定治は一誠の頬に軽く一発、拳を撃ち込む。

 

「……小猫ちゃん級」

 

「(……ん?)確かにお前が最初言ったように相手の攻撃を喰らわないで自分の攻撃を喰らわせるってのが一番の理想だ。だけどそれが出来たら苦労しねぇ。相手の攻撃を喰らわずに自分の攻撃を喰らわせる、それが出来続けられる状況があるとしたらそれは殆どの場合自分より格下が相手の時くらいだ」

 

一誠が突如口にしたセリフに首を傾げる定治。だが定治はすぐに気を取り直して一誠の胸部に先程より強めの一撃を入れる。

 

「……アーシア級」

 

「(……アーシアちゃん?さっきから何て言ってるんだコイツ?……まあいいか)ボクシングとか格闘技の試合見た事あるだろ?ああいう試合の勝利パターンを見てみると相手の攻撃を喰らう中で自分の最高の一撃を喰らわせて勝つっていうケースが意外とあるんだよ。その為に必要なのは痛みの中でも冷静に考えて行動できる力。それはケンカでも言える事だ」

 

定治は先程から知り合いの女の子の名前を呟く一誠に訳がわからず頭にクエスチョンマークを浮かべるも直ぐに気を取り直し、自らがケンカの中で大事だと思っている事を語って一誠の肩に腰を入れた拳を打ち込む。

 

「……イリナ級」

 

「……一誠お前まさか」

 

"ズドンッ!"

 

一誠がオカルト研究無事女子の名前を三回呟くとここで定治は何かに気づき、殺さない程度の手加減を加えた割と本気の拳を一誠の腹部に撃ち込む。

 

「これは部長級!!」

 

定治の拳を撃ち込まれた瞬間一誠は幸福そうな顔で"部長級"と口にする。

 

そんな一誠の様子を見た瞬間、定治の頭の中で先程よぎった考えが確信へと変わる。

 

「やっぱりお前俺の一撃一撃をおっぱいでランクづけしてやがったな!?」

 

"ズドンッ!"

 

大声でツッコミを入れながら再度一誠の腹部に割と本気で拳を撃ち込む定治。しかし拳を撃ち込まれた一誠はとても幸せそうな顔で拳を受け止めダメージを負っている様子は見えない。

 

「姫島先輩級!ああ!最初俺はお前に殴られた時痛くて痛くて仕方がなかった!それでどうすればこの痛みにビビらずにすむか、殴られながら考えた!そしたらふと頭に考えがよぎったんだ!男のお前の拳に殴られてるんじゃなくて女の子のおっぱいに攻撃されてるって思ったら痛みなんて感じないんじゃないかって!試してみたら案の定だったぜ!女の子のおっぱいの攻撃なら全然痛いと思わねぇ!むしろご褒美だぜ!」

 

「特訓の趣旨わかってんのかテメェ!?自身満々に言ってんじゃねぇよこのボケェ!!謝れ!さっきまで真面目に話してた俺に今すぐ謝れ!」

 

「え?何か言ってた?ランクづけに夢中で聞いてなかったわ"ズドンッ!"ありがとうございます!」

 

珍しく真剣に自分の考えを話したのに相手がおっぱいランクづけを行なっていた。

 

これに定治は怒りの余り再び拳を腹部に撃ち込むが一誠は悲鳴を上げずお礼を言うだけで効いているそぶりは全くない。

 

「何お礼言ってんだよ!?殴り返せつってんだろォ!?」

 

「え、何でご褒美なのに殴んなきゃいけないんだよ」

 

"ブチィッ!"

 

定治の予想を斜め上に超えて痛みを克服した一誠。しかし定治は自らが語った真面目な考えを無視された事にキレかけており、口をヒクつかせながらルールブックを呼び出し手に取る。

 

「よ、よぉし、特訓内容を変更してやる……!そんなにお前がランクづけしたいならびっきりのを喰らわせてやんよ……!ショゴスくん、カモォォォォン!」

 

最早キレる一歩手前の定治が呼び出したのはショゴス。

 

呼び出されたショゴスは元気な声と共に人間の姿で定治が作った門から現れる。

 

「はーい!呼ばれて飛び出て僕とうじょーう!定治どうしたの?この前潰した狂信者達の残党でも見つけたの、ってあれ?一誠くんだやっほー!」

 

人間の姿で現れたショゴスは一誠を見つけるとニコニコと笑顔で両手を振る。

 

「……え?何でショゴスくん?」

 

ショゴスが現れたのに意味が解らず首を傾げる一誠。そんな一誠に定治は一言でショゴスを呼び出した理由を口にする。

 

「強いから」

 

「……は?」

 

再び首を傾げる一誠に定治は再度ショゴスを呼び出した理由を口にする。

 

「ショゴスくん、肉弾戦だけだったら俺より強いから」

 

「……え?ショゴスくんが?お前より?」

 

「おう、俺じゃショゴスくんに肉弾戦じゃ勝てない。ショゴスくんちょっと耳貸して……コブシヲ イッセイニ ウチコメ イッセイヲ シズメルンダ ショゴスクン」

 

訳がわからない一誠を無視し、定治はショゴスの耳元でコソコソと話しをするとショゴスはニコニコと笑顔で頷く。

 

「うん、一誠くんにパンチすればいいんだね定治!事情はよくわかんないけどわかったよ!それじゃ早速いくよ一誠くん!お腹に力入れてね!」

 

「え、ちょ待っ!?ショゴスくん行動すんの早「どーん☆」オブゥゥゥッ!?こ、これは……矢儀さん級……だ……ガクッ」

 

「あ、気絶しちゃった」

 

ショゴスが笑顔で撃ち込んだ拳。その拳はプールの日で定治に撃ち込んだのと同じ無駄な筋力を使わずにショゴス本来の身体の全体重が乗った非常に重い拳。いくら普通の攻撃をおっぱいに攻撃されたと思い込んで痛みを克服できる一誠といえどその衝撃を受け止めきれるものではなく、一誠は膝から崩れ落ちるように気絶した。

 

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!!ざ・ま・ぁ!!アッヒャッヒャッヒャッ!!よくやったショゴスくん!やっぱりショゴスくんはサイコーだぜ!アッヒャッヒャッヒャッ!!よーしよしよしよし!よーしよしよし!」

 

「アハハ、やめてよ定治くすぐったいよ」

 

気絶した親友を見てバカ笑いしながらショゴスを撫で回す定治。

 

「いやー、最高に笑えたぜ。そんじゃ一誠をアーシアちゃんの所連れてくか」

 

「あ、なら僕帰っていい?僕そろそろおやつの時間なんだよね」

 

「おう、ありがとな。お疲れさん」

 

「お疲れ〜」

 

数分経ち、笑いが治った定治はおやつの時間と言って帰ったショゴスを見送って門を閉じる。

 

その後定治は気絶した一誠を担ぎながらオカルト研究部の部室へと向かうのだが、先程の光景を思い出してため息をつく。

 

 

「(……ショゴスくんが人間態になれるようになって確信したけどショゴスくんの動きってやっぱりシステマに似てるんだよなぁ……ルールブック歴代の所持者の中にロシアかソ連の軍人でもいたのか?教えた奴頭おかしすぎんだろ……なんで教えようと思ったんだよ……ショゴスくんもショゴスくんで自分流に改造できちゃってるし……頭おかしすぎんだろ……)」

 

 

定治は自分の事を棚に上げて深淵の門歴代の所持者の頭のおかしさに溜息をついた後、担いでいる一誠に視線を向ける。

 

 

「……バカみたいな事やってたけど一誠は一誠なりに前に進もうとしてる。……俺も覚悟決めて、後ろから前に振り向いて進まなきゃいけないのかもな」

 

 

「あ、おかえりなさい定治さん★今日はカレーですよ★ーーーえ?二人きりで話をしたい?もう、定治さんったら二人きりでナニしようとしてるんですか★やらしいですねぇ★ーーーアハハ、ジョークですよジョーク★それじゃ一番奥の部屋でいいですか?あそこなら夢桐のかけた魔術のお陰で絶対に周りに聞こえないでしょうし」

 

 

 

「ーーーそれで定治さん、お話とはなんでしょう?」

 

 

『ーーーーーーー』

 

 

「ーーーフフ!フフフフフフフ!ええ、ええ!勿論良いですとも!喜んで力をお貸ししましょう!」

 

 

「ーーーフフフ、珍しい事もあるものです。貴方は貴方を狂わす可能性があるアレを危険に思い、あんなにも使いたがらなかった。なのに今日突然ほんの一部だけとは言え、使う気になるとはね。定治さん、何かあったんですか?」

 

 

「ーーーフフ、そうですか。深く聞くのは野暮ですし、この話はこれで終わりにしておきましょう。それで、今回は私だけですか?」

 

 

「ーーーなるほど、私だけですね、わかりました」

 

 

「それじゃ時間も惜しいですし早速始めましょうか。覚悟はできてますよね?」

 

 

「ーーーよろしい。では、儀式を始めましょう。わかってるとは思いますが、かなり痛いので気をしっかり持っていて下さいね?ま、定治さんなら大丈夫だとは思いますがね」

 




ハイ、という訳でショゴスくんの秘密技能

武道(ショゴス流システマ)

が明らかになった回でした。

それではまた次回お会いしましょう。


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会談

まさかこの小説がお気に入り1000超えるとは思わなかったでゴザル。

皆さん本当にありがとうございます!

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!


会談当日、ギャスパーと小猫を部室に残した一同が会談が行われる部屋へと行くと既に場には三勢力のトップとその護衛を務める者達、そして定治とニャル子がいた。

 

リアス達より先に会談の場についていた定治は三勢力のトップ達と同じテーブルを囲み机に足を乗せた姿勢で椅子に座っている。

 

「ジ〜〜〜ッ!!」

 

この定治の無礼な態度にミカエルの後ろではイリナが定治をこれでもかと睨んでいる。だがしかし定治はイリナの視線を全く気にかける事なく、やって来た一同にヘラヘラと笑いながら手を振る。

 

「よ、遅かったじゃん」

 

「え、定治!?なんでお前魔王様達と一緒の席に座ってんだよ!?」

 

自らの上司たる魔王達と同じテーブルを囲んでいる定治の姿に思わず大声を出してしまう一誠。だが定治はそんな一誠を見ても直、席から立つ事なくヘラヘラ笑う。

 

「えー?そんなの立ったまま話聞くのダルいからに決まってんじゃん」

 

「なっ!?定治、お、お前なぁ……!」

 

予想の斜め上を超える定治の回答を聞いた一誠は呆れと怒りの含んだ表情で拳を震わせる。その様子を見てサーゼクス達が愉快そうにクスクスと笑う。

 

「フフ、別に構わないさ。それは他の者達も同じ、そうでしょう?ミカエル殿にアザゼル殿」

 

「ええ、かまいませんとも」

 

「ま、コイツは天使でも堕天使でも悪魔でもない。俺たちがどうこう言う理由なんて無いさ」

 

サーゼクスの問いかけにミカエルとアザゼルが頷くとサーゼクスは一つ頷いて手をリアス達へと向ける。

 

「そういう訳だ、気にしなくていいよ一誠くん。さて、それでは紹介させてもらいましょう。私の妹とその眷属達です」

 

サーゼクスの言葉と共にリアス達が一斉に頭を下げる。その姿を確認し、次にサーゼクスは定治へと手を向ける。

 

「そして改めてご紹介を、今回のコカビエルの件において私の妹に協力してくれた阿見定治くんです」

 

「どうも阿見定治でーす★」

 

サーゼクスに手を向けられた定治は何時も通りヘラヘラと笑いながら軽く手をあげる。

 

定治が見せた三勢力のトップ達を前にしても普段と変わらないこの立ち振る舞いにサーゼクスは困ったように苦笑いを浮かべる。

 

「……相変わらず物怖じしない子だ。さて、これで今回の会談のメンバーが全員揃った。では、早速会談を始めよう」

 

 

 

会談は順調に進んでいきリアスはソーナ達が録画した映像が終わると共に先のコカビエル騒動の解説を終える。

 

「ーーー以上が私達が関与した事件の顛末です」

 

「私ソーナ・シトリーも彼女の報告に偽りがない事を証言致します」

 

「ご苦労、下がってくれて構わない」

 

サーゼクスの言葉通りリアスとソーナが頭を下げて一歩引いた後サーゼクスは視線をアザゼルへと向ける。

 

「リアスの報告を受けて、堕天使総督アザゼル殿の意見を伺いたい」

 

「意見も何もあれはコカビエルが勝手に起こした事だ」

 

「預かり知らぬ事だと?」

 

そう尋ねるサーゼクスの表情は固い。だがサーゼクスの問いに対しアザゼルは軽く笑って流すだけで謝意の気持ち等は一切見られない。

 

「目的がわかるまで泳がせてたのさ。ま、アイツはケンカを売っちゃいけない奴に売っちまって、その結果四肢を引き裂かれたみたいだけどな。なぁ阿見定治、いやアーミテイジと言った方がいいか?」

 

「「「なっ!?」」」

 

「……へぇ」

 

アザゼルが口にした"アーミテイジ"の名を聞いた瞬間、定治が口角を釣り上げ、三勢力のトップ達とヴァーリ、そして一誠と匙を除いた全員が驚きの声を上げる。

 

「アーミテイジ!?あの悪童と呼ばれた魔術師アーミテイジの事!?」

 

「え?アーミテイジって何ですか?」

 

"アーミテイジ"の名を聞いてリアス達が驚いている中、"アーミテイジ"という名に聞き覚えの無い一誠が首を傾げる。するとそれに気づいたサーゼクスが"アーミテイジ"という人物について話を始める。

 

「ああ一誠くんは此方の側に来たからそう日が経っていなかったね、なら知らぬのも無理はない。アーミテイジというのは悪童、狂笑、狂騒、愉快犯、邪教潰しといった数々の異名で呼ばれた神出鬼没の魔術師の事さ」

 

「(あらやだ異名の殆どが悪いイメージばっかりじゃない)」

 

「アーミテイジは何処の勢力にも属していない魔術師で顔は闇のように真っ黒な仮面で隠している為わからない。わかる事と言ったら狂ったように五月蝿い笑い声を上げるという事だけ」

 

定治の内心を他所に"アーミテイジ"について語るサーゼクスにアザゼルが頷いて同意する。

 

「そう、アーミテイジはその神出鬼没さから正体がわからず、誰もその正体を掴めなかった。唯一奴の気まぐれで素顔を見たウチのヴァーリを除いてな。俺もアーミテイジの噂は聞いている。いくつもの邪教の教団を壊滅させ、語るのも悍ましいくらいの儀式を未然に防いで来た英雄ってな。そんな英雄アーミテイジ様がまさかこんなガキだとは思わなかったが」

 

"アーミテイジ"についてサーゼクスとアザゼルの二人が語り終えるとその話を聞いていた一誠は納得がいかないような表情で首を傾げる。

 

「え、話を聞く限りいい奴じゃないですか。魔王様、何でアーミテイジにはそんな悪口みたいな異名がついてるんですか?」

 

アーミテイジがサーゼクスとアザゼルが話す通りの人物なら褒め称えられこそすれど、何故悪童や愉快犯といった酷い異名がつけられたのかわからない。そう思った一誠が再度首を傾げているとサーゼクスが苦笑を浮かべて何故アーミテイジに酷い異名をつけられているのか理由を語り始める。

 

「アーミテイジはいたずら好きで有名なんだ。アーミテイジがやってきた英雄的行動、それを塗り潰すくらいにはね。現にその被害は悪魔側も被っている。アザゼルの話を聞いた時まさかとは思ったがその反応から察するにやはりキミがあの悪童アーミテイジなんだね?」

 

サーゼクスはアーミテイジの異名の原因について困ったように語り終えた後、サーゼクスは定治の方を向いてアーミテイジの正体について確認する。すると定治はヘラヘラ笑いながら頷いてサーゼクスの問いを肯定する。

 

「おう、悪童っていうのは全くもって不本意な異名だけど俺がそのアーミテイジであってるよ」

 

自らが"アーミテイジ"だという事に一切否定する事なく頷く定治の姿にサーゼクスは何故かため息をついてしまう。

 

「……ハァ、やっぱりか。なら私はキミに確認しないといけないことがあるな……」

 

「え、何々?」

 

サーゼクスに"確認しなければならない事"と言われるがそれに対して全く身に覚えのない定治は訳が解らず首傾げる。するとサーゼクスはそんな定治の姿にため息をついて指を三本立てる。

 

「……ハァ、キミに確認しないといけないのは3つ。先ず1つ目、レーティングゲームランキング1位、ディハウザー・ベリアルが寝ている時に額に"肉"と書いて頬に"屁のつっぱりはいらんとですよ!"と書いたのはキミなんだね?」

 

アーミテイジ『アッヒャッヒャッヒャッ!チョーウケる!あ、おはようございます!とても面白い寝顔ですね!そうだ、ニャルに見せるように写メ撮っとこ』

 

「あー名前に聞き覚えは無いけど確かにそれやったわー。ニャルに大富豪負けちゃった時の罰ゲームでやったわー。いやー我ながらいい出来だったなアレ」

 

「ホント面白かったです★写メ見て思わず吹き出しちゃいました★」

 

「……2つ目、レーティングゲームランキング2位ロイガン・ベルフェゴールの寝室で早朝バズーカをやったのもキミだね?」

 

アーミテイジ『おっはざぁぁぁぁす!アッヒャッヒャッヒャッ!何鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してんだよwもっとリアクションとってくれよwあ、ついでにオッパイ揉ませてもらいますね!』

 

「あーソイツの名前も聞き覚えないけどそれはやったわー。テレビで見てやりたくなったからニャルにターゲット適当に決めてもらってやったわー。結構タイプだったんでやるかどうか結構迷ったんだけど結局面白そうだからやったなアレ」

 

「いや貴方迷った時間1秒くらいでしたよね。驚く程早いくらい決断してましたよね」

 

「……3つ目、レーティングゲームランキング3位、ビィディゼ・アバドンの寝室にシュールストレミングを撒いたのもキミなんだね?」

 

アーミテイジ『うわくっせ!マジくっせ!アッヒャッヒャッヒャッ!臭すぎて逆に笑えてきたアッヒャッヒャッヒャッオロロロロロロ!?』

 

「あーその名前にも聞き覚えないけどそれはやったわー。一回シュールストレミングがどれくらい臭いのか試してみたくなったからやったわー。いやーまさかシュールストレミングがあんなにも臭いとは思わなかったわー。俺本気で吐いたもんアレ」

 

「ちょ、そんな面白そうな事やってたんですか!?私も誘って下さいよ!」

 

「……ハァ」

 

ニャル子の発言を無視しながら過去に自分がやったイタズラを懐かしそうに、且つ悪びれる事なくヘラヘラ笑いながら語る定治にサーゼクスは呆れて再度ため息をつく。

 

「……ハァ、キミという子は全く……。参ったな、先程言った件で魔界だとアーミテイジは生け捕りに限られているがその首には莫大な賞金が掛けられている。キミがアーミテイジならその件でまた忙しくなるな……」

 

呆れたように、そして困ったようサーゼクスそう話すと自らに賞金が掛けられている事を知った定治が驚きのあまり勢い良く立ち上がる。

 

「ハァ!?俺賞金なんてかけられてたの!?俺寝起きドッキリやっただけじゃん!意味わかんねぇ!寝起きドッキリやられたくらいで悪魔が賞金かけてんじゃねぇよ!」

 

「定治さん貴方今スゴい理不尽な事言ってますよ★」

 

笑顔でツッコむニャル子を無視しながら定治が納得がいかないように騒いでいるとサーゼクスは呆れた様子で最早何度目かわからないため息をつく。

 

「……ハァ、賞金の件については私からも言っておくが文句を言うならロイガン・ベルフェゴールに言ってくれたまえ。他の二人は"正体がわからないアーミテイジなら探すだけ無駄"と諦めたのだがロイガン・ベルフェゴールだけは"責任を取らせる"と言って未だに血眼になって探しているらしいからね」

 

「ロイガン・ベルフェゴール?」

 

ロイガン・ベルフェゴール、サーゼクスが言う事が確かならそれは定治が早朝バズーカをやった後反応が悪かったという理由でついでに胸を揉んだ人物。

 

定治はターゲットをニャル子に適当に選んでもらっただけなのでロイガン・ベルフェゴールについて全く知らない。だがもしそのロイガン・ベルフェゴールという人物が魔界において影響力のある人物だとしたら恐らく自分にとって色々とマズい事になる。そう考えた定治はロイガン・ベルフェゴールがどうかそこまで影響力のない人物では無いように、と内心祈りながらサーゼクスに一つ尋ねる。

 

「……あの、そのロイガン・ベルフェゴールっていうのはどんな人?俺、早朝バズーカをくらった人ってことくらいしかわかんないんだけど(ほんとはついでにおっぱいも揉んだけど)」

 

「さっき言ったようにレーティングゲームのランキング2位でレーティングゲームトッププレイヤーの一人。魔界でも指折りの実力者として知られる有名な悪魔だよ」

 

「……因みに悪魔陣営だと結構影響力ある人?」

 

サーゼクスの発言に定治は若干焦りながら尋ねるとサーゼクスは当然だと言わんばかりに頷く。

 

「勿論。魔界においてレーティングゲームというのは非常に重要視されている競技だ。そのトッププレイヤーの一人なのだから影響力は無い方がおかしい」

 

「(アカン)」

 

ここで定治、自らがやったイタズラの相手がどんな人物なのかを大まかに理解し、危機感から顔から汗を垂れ流す。

 

ようやく自分が以下にマズい立場に立っているのかを理解した定治が焦っている横でサーゼクスは定治こそ本物の阿呆だと理解したようで呆れてため息をついてしまう。

 

「……ハァ、なるほど。ようやくわかったよ。定治くん、キミはあまり深く考えずに行動するタイプか」

 

「(アカンアカンアカン……まさか賞金かけられてるとは思わなかった……魔界行ったらヤバいじゃん俺絶対ヒドい事されんじゃん……何だよ責任って……もうアレだ、魔界には近寄らないようにしなきゃ)」

 

顔から汗をダラダラ流し、魔界に絶対近づかない事を定治が心に決めていると後ろにいるニャル子が何かを感じ取り、ニコニコ笑いながら定治の肩を叩く。

 

「定治さん、アホな事考えてないで準備して下さい。お客さんが来ましたよ」

 

「あん?何だよニャル。今俺考え事してんだから邪魔すんなよ……へぇ」

 

最初はニャル子が何を言ってるかわからず首を傾げる定治だがすぐに異変を感じ取る。直後、三勢力のトップとヴァーリ、聖剣を手にしているイリナとゼノヴィアと聖魔剣を手にしている木場、そして一誠とたまたま一誠の手を握っていたリアス以外の皆がまるで時が止まったように動かなくなった。この光景を見た定治は口角を釣り上げて手元にルールブックを呼び出す。

 

「なるほど、確かにこりゃお客さんだ。……ふーん、コイツは驚いたぜ。まるで本当に時が止まってるみたいじゃねぇか」

 

「まさかこの能力は……!ギャスパーが敵の手に落ちたとでも言うの!?」

 

「ん?どういう事です?」

 

定治が尋ねるとリアスはギャスパーが待つ停止世界の邪眼のような停止能力を待つ者はかなり少なく、恐らくは今現れている魔術師達がギャスパーを捕らえ無理矢理禁手化させているのだろうと話す。

 

このリアスの言葉を聞いた瞬間、先程までヘラヘラ笑っていた定治の表情が冷酷な物へと豹変する。

 

「……なるほど、つまりアレか。アイツらは俺にケンカ売ってるって事か」

 

定治は懐から小型のイヤホンを取り出すとそれを耳にはめ、ニャル子の名を呼ぶ。

 

「行くぞニャル、売られたケンカを買いに行く」

 

「ええ、わかりました」

 

ニャル子を連れて真っ直ぐ窓へ向かう定治。だがふと何かを思い出したのか足を止めて一誠の方に振り向く。

 

「ああそうだ。一誠、ここは俺達でなんとかするからお前にはギャスパーの救出を頼むわ」

 

「はぁ!?無茶言うな定治!相手はあの数だぞ!?いくらお前がルールブックでショゴスくん達を呼べたとしてもあの数に勝てる訳がないだろ!」

 

定治自身と隣にいるニャル子だけであれ程の数を相手にすると言う定治に一誠は止めようとするが何故か定治は一誠の発言に笑いながらルールブックに魔力を込める。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ、何言ってんだ一誠?チェック、ゲートの制限解除」

 

「「「ッ!?」」」

 

定治が込めた魔力に呼応してルールブックが光を辺りに撒き散らすと同時に校庭に数えるのも馬鹿らしくなるほどの無数の門が現れる。門は駒王学園を夕焼けの日差しから覆い隠し、辺りを暗い闇の中へと変貌させる。定治が生み出したこの人間の所業を超えた光景に一同は言葉も出ない程驚き、文字通り絶句してしまう。

 

「"あの程度の数"で俺達が勝てる訳がない(・・・・・・・)?逆だ逆、"あの程度の数"で俺達が勝てない訳がない(・・・・・・・・・・・)。一度解放したらそう簡単に閉じれないっていう理由もあるんだけどさ、俺は前の戦いからずっと0章を解放しっぱなしにしてんだよ。ユキちゃん、ショゴスくん」

 

窓を蹴りで破壊し定治は忌まわしき狩人のユキとショゴスを召喚するとニャル子とショゴスと共にユキの背中へ飛び乗る。

 

「前はそんなに見せられなかった分、今回はちゃんと見せてやるよ。ルールブックの本当の力、その一部をな。行くぞニャル、ユキちゃん、ショゴスくん」

 

部屋から飛び出た定治がユキの背中に乗って上空から魔術師達を見下ろすと魔術師達が定治達へ魔術で一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 

「ナーク=ティトの障壁」

 

襲いかかる魔術を定治は嘲笑うようにナーク=ティトの障壁を創造し、魔術を受け止めさせる。

 

「聞こえるか定治」

 

襲いかかる魔術が障壁でかき消されていく光景に定治が愉快そうに笑っていると定治が耳につけたイヤホンから夢桐の声が聞こえる。

 

「ああ、聞こえるよ親父」

 

夢桐の声と同時に夢桐の気配を感じ取った定治が屋上へ目を向けるとそこには煙草を口に咥えた夢桐が定治と同じイヤホンを耳につけて定治と同じように愉快そうに笑っていた。

 

「サポートをしてあげよう。存分に暴れて来い定治。お前はお前が敵と認識したもの、その全てを皆殺しにして来るんだ」

 

「元からそのつもりだよ。けどいいのかね?三勢力トップの前だぞ、やりすぎたら危険と思われて俺消されない?」

 

「ハハ、何を言ってるんだ定治。三勢力トップの小僧共の前だからこそ存分に暴れる必要があるんじゃないか」

 

屋上で佇む夢桐は定治の発言を聞いてもなお、愉快そうに笑う。

 

「危険だと思われる?むしろそれがいい。小僧共には教えてやるのさ。定治、お前が敵に周るとどうなるのかを、な」

 

夢桐の言葉を聞いた定治は一つ頷いた後、子供のような純粋で残虐な笑みを浮かべる。

 

「りょーかい」

 

三勢力のトップ達は後に語る。たった一人の人間の力であれ程の惨劇が生まれるとは思わなかった。絶対に阿見定治(アーミテイジ)を敵に回してはいけない、と。

 

「行くぞ神話生物共(ダチ公共)!魔女狩りと洒落込もうぜ!」

 

これより、悪夢が始まる。




はい、今回はここまで。

サーゼクスがひたすらため息をつく回でした。

リアスもそうですけどサーゼクスもツッコミ役が似合うなと私は何となく思いました。理由?特に無いです!

次回は数の暴力って素敵やん?って感じでお送りしたいと思っています。

それではノシ


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笑う男と女

前回後書きで数の暴力でいくと書いたな

すまない、ありゃ嘘になった。

作者の文章力の無さが露呈して中止になってしまいました。

ホントすみません


舞台は一旦切り替わり場所は今回の会談を襲撃した魔術師達の作戦本部。そこには魔術師達の中でも指折りの実力者が魔術を用いて襲撃中のメンバー達に指令を出していた。

 

「と、当主様大変です!今確認が取れました!あの男はアーミテイジ!いくつもの教団を壊滅させてきた邪教潰し、悪童アーミテイジです!」

 

そんな中、一人の女の魔術師が"当主様"と呼ばれた男に慌てた様子で駆け寄り"アーミテイジ"の名を口にする。

 

「な!?アーミテイジだと!?」

 

「ハァ、ハァ……はい!ですからお気をつけ下さい!」

 

余程急いで来たのだろうか女の魔術師は蹲るような姿勢で必死に息を整えようとする。だが苦しそうな息とは違い、周囲の魔術師達に見えていない女の表情は愉快そうに笑っていた。

 

そして労をねぎらおうとした"当主様"が女に近づいた瞬間、女の手にバールのような物が握られーーー

 

「油断してると、こんな風にされてしまいますから★」

 

「ガッ……!?」

 

ーーー"当主様"が反応するよりも速く、女の握るバールのような物が"当主様"の喉を貫いた。

 

「ギ、ギザマ……!」

 

喉を貫かれ苦痛に満ちた表情の中女を睨む"当主様"。それに対し女は愉快そうに笑いバールのような物を傷口を広げるように上下に動かしていく

 

「一体いつから裏切っていた、ですか?やだなぁ、そんなの最初からに決まってるじゃないですか。ホント、貴方がバカで助かりましたよ。少し誘惑してあげただけでこんなにも愚かな行動をしてくれたんですから」

 

バールのような物を上下に動かしながら女がローブを脱ぎ捨てる。ローブを脱ぎ捨てた事で見えた女の容姿は正に絶世の美女としか言えないほどに美しく、少し微笑んだだけで見るものを魅了させてしまいかねない程。だがそんな絶世の美女の女が浮かべている表情は悍ましい程の歪んだ笑みだった。

 

「人間というのは愚かな生き物です。美しい異性に見栄を張ろうという理由だけでこんなにも愚かな行動をする。ホント、なんて無駄で、なんて面白いんでしょう」

 

女は周りにいる魔術師達を嘲笑しながら指を鳴らす。

 

フィンガースナップの音同時に"当主様"の身体が縦に二つに割れる。

 

"当主様"だったものからは血飛沫が撒き散らされ、辺りにいる魔術師が目を逸らしてしまう中、一人の魔術師は目を見開く。

 

「バ、バカな……!?お、お前はアーミテイジの後ろにいた女……!?な、何故そこに……!!いやいる!お前は今もアーミテイジの後ろにいる!ならお前は何なのだ!?」

 

魔術師は見ていた。"当主様"を殺した見目麗しき女がアーミテイジの後ろにいた筈の銀髪の少女、ニャル子になるその瞬間を。

 

魔術師は魔術越しに駒王学園を見る。そこには先程の景色と変わらずアーミテイジの後ろに目の前で笑う銀髪の少女と同じ姿の少女がいる。

 

「おやおや?何をそんなに驚いてるんです?姿形が同じ人間が二人いるくらいじゃないですか。この世界にはそういう神器もあるでしょうし、そんなに驚く程でもないでしょう?」

 

驚き戸惑う魔術師を見て首を傾げるニャル子。

 

しかし何処からか声を聞いたような仕草をとると頷いてバールのような物を魔術師たちに突きつける。

 

「さて、お喋りも楽しいですがそろそろお仕事を再開しませんと。本体(わたし)から催促も来ている事ですし」

 

「さ、させるか!」

 

「多少力を持つ程度の女風情が私達を舐めるなよ!」

 

突きつけられたバールのような物に立ち向かうように魔術師達が魔術を発動させる。だがその行動をするには余りにも遅すぎた。

 

「あー、そういうのいいですよ。もう終わってますので」

 

ニャル子の言葉と同時に魔術師達の胸部から血が噴き出す。

 

「それでは皆さん、サヨウナラ。アハハハハ!!」

 

血を撒き散らして絶命する魔術師達の姿を見ながら手から溢れ落ちる無数の心臓を踏み潰し、ニャル子は高らかに笑い声を上げた。

 

 

分霊からの連絡を受けとり、ニャル子は本部側の魔術師達を始末し終えた事を定治に伝える。

 

「定治さん、終わりましたよ。向こうの中心人物は全て消しておきました。残りはあそこの下っ端達だけです」

 

「おう、よくやった。流石はニャルって言った所だな」

 

「フフ、貴方のお役に立てた様で何よりですよ」

 

ニャル子の報告に定治が笑って褒めるとニャル子は嬉しそうにニコニコと笑う。

 

あんなにもニャル子を嫌っている定治がニャル子に笑顔を見せた、この光景を見てユキは何かに気づいたのか神妙な面持ちでショゴスに声をかける。

 

『……ショゴスくん』

 

『うん、定治舌出して』

 

『ん?ふぉい』

 

ユキの言葉にショゴスが頷き、定治に舌を出すよう頼むと、定治は躊躇うこと無くショゴスに舌を見せる。すると定治の舌を見た瞬間ショゴスは神妙な面持ちになる。

 

『……やっぱりね。通りでニャル様が協力的な訳だよ』

 

ショゴスが見たのは定治の舌に刻まれている黒色の木蓮の花のような紋章。

 

一見、それは美しく見えるがその美しさの裏にはニャルラトホテプの力が見え隠れし、普通の人間なら見つめ続けるだけでその者の正気を奪いかねないモノ。

 

その事を知っているショゴスは顔から汗を垂らし、紋章から目を晒して息を吐く。

 

そしてショゴスが汗を垂らして紋章から目を晒した一方で、定治は出した舌を戻してショゴスの身体を軽く叩く。

 

『ま、そういう事だショゴスくん。今のニャルは純粋に俺の味方をしてる。今回はこの前みたいな事はやらかさないから安心していいぜ』

 

それだけ言って定治は校庭を見渡す。そこでは薄暗い闇の中で無慈悲に魔術師達の命を奪う神話生物達の姿がぼんやりと見えていた。

 

「流石、斉藤さん達グールは仕事早くて助かるぜ」

 

門に覆われた校庭は星のない夜のように暗くさせ、余程視力が良くない限り校庭全体を見渡せない程。そんな校庭から定治の耳には音もなく魔術師達を狩る斉藤率いるグール達の殺戮の音と魔術師の悲鳴が聞こえていた。

 

「ぐっ!?ガハッ!?」

 

「ど、どこだ!?何処にいギャア!?」

 

グール達は音も無く、鋭い爪で魔術師の首を引き裂き、鋭い牙で肉を噛みちぎり魔術師達を絶命させる。

 

その様子を定治はヘラヘラ笑いながら楽しんでいた。

 

「いい調子だ。けどまぁ、良すぎるせいでこれじゃ他の奴らの出番無くなりそうだぜ……ん?」

 

無慈悲に魔術師達を狩るグール達に定治がヘラヘラ笑っていると背後に気配を感じる。振り返るとそこには爪と牙を血に濡らした本来の姿の斉藤がユキの背中に乗りながら定治に手を振っていた。

 

「よお定治。オーダーは?」

 

「もう殺ってんじゃん、今殺ってるそいつら皆殺しで」

 

「あいよ」

 

ヘラヘラ笑いながら答えた定治に斉藤はニヤリと笑って現れた時と同じように音も無くその場から消え、再び魔術師達を殺していく。

 

数分経ち、魔術師達の死体が積み重ねられていく中、統率力のある魔術師を中心にグールの殺戮の範囲からどうにか離れる事が出来た魔術師がちらほらと現れ始める。

 

「よし!距離を開けばこちらのものだ!この場で一気に殲滅するぞ!」

 

「「「ハッ!」」」

 

グールの群れから抜け出した魔術師達は一箇所に集まり仲間を殺し続けるグールに怒りと殺意を抱きながら魔術を詠唱する。

 

背後にいる獣の存在に気づかずに。

 

『なるほど、つまりは無防備に背後を晒して俺達の槍で貫かれたい訳だな?欲しがり屋さんじゃないの』

 

「なっ!?アッーーー!!」

 

「ど、どうされたのですかアッーーー!!」

 

『フ、この数……槍が足りなくなっちまいそうじゃないの』

 

どうにかグール達と距離を取り魔術を発動しようとさせる魔術師。しかしその背後には魔術師達を取り囲む様に配置されていたムーン=ビーストの群れが自前の槍で魔術師達を刺し貫いていく。

 

「汚ねぇ」

 

「汚い。謝って下さい定治さん」

 

「マジメンゴ」

 

薄暗く見えづらい校庭でもムーン=ビーストがナニをやっているのかおおよその検討のついたニャル子が定治を軽く叱ると定治は適当に謝る。

 

そんなやり取りをしている中でもムーン=ビースト達は容赦無く手に持つ槍で魔術師達を刺し貫いていく。

 

だが魔術師も唯でやられるつもりはない様子で、奇跡的にムーン=ビーストの群れから抜け出す事が出来た魔術師が息を切らしながら魔術の発動を行おうしていた。

 

「ハァッ、ハァッ!ど、どうにか抜けられた!この距離ならば!『アイ、アイ』……え?」

 

 

ムーン=ビーストの群れから抜け出した魔術師が奇妙な声につられて振り返るとそこには金属的な灰色の色をした16フィート程の木、ザイクロトランが大量に並んでいる光景だった。

 

『アイ、アイ、ザダバルアイ』

 

ザイクトロンは頭の頂にある口のようなもので何かを呟きながら身体を上下に揺らす。

 

この見慣れぬ木、ザイクトロンに魔術師はムーン=ビーストの群れから抜け出せた後の安心感からか、その奇妙な姿を見ても何もせず言葉を飲み込み呆気にとられてしまう。

 

それが最悪の結果になってしまうとも知らずに。

 

『アイ、オレダヂテギダオス、サダバルアイ』

 

魔術師が呆気に取られていると、ザイクロトランは太い枝で掴み上げて魔術師を持ち上げる。

 

「な!?や、やめろ!このぉ!」

 

ザイクロトランに持ち上げられた魔術師はここでようやくザイクトロンの危険性に気づき、掴まれた枝に魔術で攻撃する。しかしザイクトロンの枝は切れることなく、燃やそうとしても他のザイクロトランが直ぐに鎮火させ、それどころか抵抗をしてしまった事によりザイクロトランの怒りを買って魔術師は腕をへし折られてしまう。

 

「ガァァォァ!?う、腕がぁぁぁ!?」

 

『アイ、アイ』

 

『デギ、デギ』

 

『グウ、グウ、マルノミズル』

 

『デモ、ゾノマエニゴロズ』

 

『ウン、ゴロジデ、ゾノアドグウ』

 

魔術師が見たのは何本ものザイクロトラン達が顔を寄せ合い何か話し合っている姿だった。ザイクロトランは何回かのやり取りを終えた後枝を魔術師の四肢、首を掴み力の限り引っ張っていく。

 

「や、やめて……!やめてぇぇぇぇ!!」

 

『グウ、グウ、グウ!』

 

「ひぎゃ……!」

 

必死の声も虚しく、生々しい音ともに魔術師の身体は引き裂かれる。死ぬ間際の魔術師は恐怖と悲しみに満ちたもの、それをザイクロトランは丸呑みにして魔術師だったものを食らい尽くした。

 

中央ではグール達が音も無く殺し、その先を抜けるとムーン=ビーストに貫かれ、奇跡的にムーン=ビーストの群れを抜けても強靭な身体を持つザイクロトランが待ち構えている。この無慈悲に殺されていく魔術師達の姿にニャル子は愉しげにニヤニヤと笑う。

 

「いやーヒドい事しますねぇ定治さん。グールもムーン=ビーストもザイクロトランも実力としは大した事無いですがいずれも数がバカみたいに多い。あの程度の魔術師達が相手に出来る数じゃありませんよ」

 

「アイツらに勝たせない為にやってんだからそりゃそうだろ。今のコイツが作る門に制限なんてものは一切無く、門を一つ設置するだけでその種族全てを呼び出せる。……まぁ、そんな門のせいで呼んでもいないのに勝手に門を通して覘く奴らが出てきちまうのが厄介なんだけどな」

 

ルールブックの力を自慢げに語る定治だが、門の中から強大な力を持つ者達がこの光景を眺めているのを察知し、表情を険しいものへと変えていく。

 

『ハハハ!面白そうな事をやってるじゃないか定治!嫁では無く私が行きたいくらいだ!』

 

『よしなんし、今宵の宴にわっちらは招待されておらぬ』

 

『そ、そうですよシュド=メル!こ、今回、定治様はアレしか招いてません……!わ、私だってお役に立てるのに……と、とにかくズ、ズルはダメですよ!』

 

今門越しに覗いてる者達は三柱の神々。ただ覗いているだけなので力の波動は感じられないがシュド=メルやミゼーアといった今にも出てきそうなの神がいる、今出て来られるのは定治にとって非常にマズい、魔術師を殺すのが目的なのにアレらが出てきてしまっては駒王町どころか最悪世界に甚大な被害が出てしまう。そう考えた定治は耳につけたイヤホンに手を当てて、駒王学園を覗いてる神々に話しかける。

 

『クティーラちゃんの言う通り、見るだけならいいけど今回あんたらは招待してないんだ、そこから出てこようとすんなよ。シュド=メルさんもそうだけど特にミゼーアさん、あんたに言ってんだからな』

 

『ん、わっちかえ?何故かや?わっちは前からお前さんに呼ばれでもしない限りそちらには出向かんと前からいっておろうに』

 

定治にそう言われたミゼーアは何故自分がそう言われてるのか解らずにいるが一度鼻で匂いを嗅ぐと定治が何故自分にああ言ったのかを理解する。

 

『……あぁ、なるほど。先程から加齢臭のような臭いがすると思えば、お主がいたのか丸いの』

 

『口を閉じてろ雌犬。獣臭いお前の吐息がここまで来て吐き気がする』

 

『は?』

 

『あ?』

 

ミゼーアが夢桐の匂いを嗅ぎとり悪態を吐くと、すぐ様夢桐がミゼーアに悪態を返す。両者とも未だに本気になってないとはいえ、危惧した通りミゼーアと夢桐の間が険悪な物へとなっていくのを感じとり、定治は呆れ気味にため息をつく。

 

『……始まったよ、ホントに仲悪いな親父とミゼーアさん。マジめんどくせぇ、クティーラちゃん悪ぃけど親父とミゼーアさんの仲介頼むわ』

 

『え、えぇ!?わ、わたしではお二人の仲介には役不足だと思うんですけど……!?』

 

『(逆にあの二人の勢力に組みしてなくて温厚な性格してるクティーラちゃんくらいしか無理なんですよ……)……いけるいける!クティーラちゃんなら出来るって!俺カワイイクティーラちゃんならあの二人の仲介できるって信じてるから!だから任せたぜクティーラちゃん!』

 

『そ、そんなーーー!?』

 

門越しに何か騒いでる様子のクティーラを無視し定治は再び視線を校庭へと移すとそこには大量の死体が積み重ねられており、定治は頭の中からミゼーアと夢桐の事を忘れ、まるで大量に死体が出来るのを待ち望んでいたかのように愉しそうに笑う。

 

『大体三分の一くらい削れたな。そんじゃ味方を増やすとしますかね。ニャル、調整頼む。チェック』

 

『ええ、おまかせを』

 

定治がそう言ってニャル子に手の平を差し出すとニャル子もまた頷き手の平を定治の手の平に合わせ、校庭に巨大な魔法陣を生み出す。

 

『『ゾンビ創造』』

 

定治が保有する膨大な魔力を媒介に魔術を展開させ、ニャル子はその魔術が校庭全域のみに発動するよう手の平を通して調整する。二人が発動したゾンビの創造の魔法陣は校庭全体を包み、生み出された魔法陣の中にある動かなくなった魔術師の死体が突如として一人でに起き上がっていく。すると定治はリアス達が過去に見た事もない程に口角を釣り上げ、歪んだ笑みを浮かべて炎の精を呼ぶ。

 

「炎の精、らいとあーっぷ」

 

定治の呼び声に応え、上空に大量の炎の精が現れるとその身体で薄暗い校庭を明るく照らす。

 

炎の精が放つ明かりは校庭全域を明るく照らし、定治が呼び出していた神話生物達の姿が現れていく。

 

そしてついに、魔術師達は忘れようとしても決して忘れられないだろう悍ましい神話生物達の軍勢を目にしてしまう。

 

「う、嘘でしょ……!?」

 

「こ、こんな事があっていいの……!?」

 

炎の精が照らした校庭で魔術師が見たのは見渡す限りに存在する神話生物の群れと魔術師だったモノ。

 

 

地上には魔術師だったゾンビ、グール、ムーンビースト、ザイクトロン。

 

「アァ……」「アゥ……」「ぃぁ……」

 

『ひぃ、ふぅ、みぃ……いいねぇ、こりゃ当分飯には困らねぇな。今日は宴会が出来そうだ』

 

『やらないか』

 

『アイ、アイ』

 

上空には炎の精、ビヤーキ、ポリプ。

 

『燃やせ燃やせ!魔女狩りだ!火炙りにしようではないか!』

 

『ふむ、この数なら我々は取りこぼしを狩るとしましょうか』

 

『HAHAHA!!今日は魔術師のミンチをご所望かい?贅沢なモノを要求するじゃないか定治!』

 

更に地中にはクトーニアン、そして魔術を用いて逃走した際に追撃する手筈のティンダロスの猟犬が定治の呼び声を今か今かと待ち構えている。

 

『……シュド=メル様が見てる手前言いたく無いけどこれ私出番あるの?』

 

『多分無いと思うで。あ、それはウチらもやったわ』

 

この軍勢は校庭にいる魔術師の数より遥かに多く、魔術師達を囲む怪物達の軍勢を目の当たりにして魔術師達は恐怖の余り、各々違った反応を見せ始める。

 

「こ、こんな事……あ、あっていい筈が……」

 

「あ、ああ、あぁぁぁぁ!!」

 

「ハ、ハハ……ハハ……」

 

ある者は膝から崩れ落ち、ある者は自らが見る光景に耐えきれず狂ったように顔を掻き毟り、ある者は現実から逃げるように力無く笑う。

 

この魔術師達の行動を一頻り見て定治はその反応を待ち望んでいたかのように、愉しそうに、そして狂ったような五月蝿い笑い声を上げる。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!結構な数で来たみたいだけど悪ぃな!俺は生まれてこの方、数の戦いで負けた事がねぇんだよ!アッヒャッヒャッヒャッ!!」

 

狂ったように五月蝿い笑い声を上げながら定治は呼び出した神話生物達を見渡した後、腕を上げる。

 

「いやーお前らがあまりにも手こずるから大多数の奴らが無駄足踏んじまったじゃねぇか。ま、もうそんなのどうでもいいか、そんじゃそろそろ死んどけ。無駄死にご苦労さん、面白いもの見せてくれてありがとな。ーーーやれ」

 

定治が腕を下ろしたと同時に放った号令と共に神話生物とゾンビが魔術師達に襲いかかる。

 

襲いかかる神話生物達に大半が諦めて大人しく殺されていく中で必死に抗う魔術師達もいるがそれも長く続く事は無く

 

「よ、よせ!や、やめろぉぉぉ!!」

 

ある者は仲間だったモノに食い散らかされ

 

「ガフッ!?」

 

「ピギャ!?」

 

ある者はグールとビヤーキの爪で切り裂かれ

 

「熱い熱い!やめて!やめてぇぇぇぇ!!」

 

ある者は炎の精に生きたままその身を焼かれ

 

「アッーーー!!」

 

ある者はムーン=ビーストに貫かれ

 

「アァァァッ!!」

 

ある者はポリプに身体をグチャグチャにされ

 

魔術師達の命は瞬く間に散らされていく。

 

「いやー、地獄地獄」

 

「フフ、絶景ですねぇ」

 

その様子を定治のニャル子は目をそらす事なくただ歪んだ笑顔でニヤニヤと笑う。

 

しかし、定治の耳につけたイヤホンに二つの声が聞こえてくると定治はその歪んだ笑みを消して直ぐに臨戦態勢へと入る。

 

『定治、後ろに注意だ』『定治、後ろに注意せい』

 

『は?』『あ?』

 

「ショゴスくん、ニャル」

 

「はーい」

 

耳につけたイヤホン越しに夢桐とミゼーアの声が聞こえた少し後、背後から龍の首を象ったような魔術が襲いかかってくる。だが龍の首は定治の声に応えたショゴスが伸ばした触手で器用に龍の首を横に薙ぐ事でことごとく受け流されてしまう。

 

その様子を攻撃を仕掛けた本人であるカテレア・レヴィアタンは目を見開いて驚いてしまう。

 

「私の攻撃を防いだ!?いや受け流したのか!少しはやるようですねアーミテイジ……何っ!?いない!?」

 

脆弱に見えたスライムのような生物に受け流されたのを見たカテレアが驚いている中、先程までいた筈の定治の姿が忽然と消えている。慌てて辺りを見回すカテレアだが定治の姿は何処にも見当たらない。

 

『ユキちゃん飛行に集中して!定治がアレを使った!下手すれば僕達も巻き込まれちゃう!気を引き締めていくよ!』

 

『ええ!任せてちょうだい!』

 

次の攻撃をいつでも受け流せるよう形を変えながら触手を揺らすショゴスは焦った様子でユキにそう言うとユキもまた険しい顔つきで戦闘態勢へと入る。

 

そんな中、ショゴスの後ろではニャル子が愉快に歪んだ笑顔で笑う。

 

「ええ、我が貌の全て、存分にお使い下さい定治さん」

 

"ギフト・千の貌、No.526 吸血鬼ルラ"

 

カテレアの後ろに突如として宙を浮かぶルールブックが夢桐と同じ音声を発し、無数の蝙蝠がカテレアの辺りを舞う。

 

咲け(Bloom,)、』

 

カテレアの周囲を無数に舞う蝙蝠の中で女の声が聞こえてくると、蝙蝠の群れの中で駒王学園の制服であるスラックスが現れ、風を受けてひらめく。

 

輝け(Glow,)、』

 

足が見え隠れする次に、蝙蝠の群れの隙間から駒王学園の制服からはち切れんばかりの女性の大きな胸とスラリとした身体が見え隠れする。

 

威厳の花(Magnolia.)

 

そして蝙蝠に囲まれながら宙を舞う黒髪碧眼の美女がその姿を晒し、歪んだ笑みを浮かべて口に生える鋭い牙と黒く輝く木蓮の花のような紋章をカテレアに見せつける。

 

「こんにちは、名も知らぬ悪魔さん」

 

宙を舞うルールブックと蝙蝠と共に美しくも恐ろしい女吸血鬼が現れた。




ハイ、今回ここまで。

今回の一番の反省点は数の暴力があまり出来なかったことです。

作者自身の文章力の無さが恨めしい……

Bloom,Glow,Magnolia
これを発動する為にはルールブックに隠されている章に書かれているページのいずれかを解放し、0章に記されたとある儀式をルールブックを媒介に行う必要がある。この儀式を行った結果、定治には様々な贈り物が贈られておりそれは木蓮の花のような紋章で身体に刻まれ定治の意思次第で自由に発動できるという。定治が発動できるとされるルールブック※※※の能力の一部。……なんでこんなダセェ名前にしたのかって?そりゃ作者の遊び心です。ツッコミは無しだよ!


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吸血鬼ルラ

俺はひたすらに走った。旧校舎はいつも通り静かで音なんてまるで聞こえなかった。

 

視界に部室の扉が目に入り、俺は何も考える事なく部室へと入る扉を開けた。

 

「ギャスパー!ーーーえ?」

 

そこに立っていたのはスズキさんだけだった。周りには心が壊れたようにその場から動かなくなり震える幾人かの魔術師。

 

「遅かったですね一誠くん」

 

「あ、貴方はスズキさん!?どうしてここに!?」

 

俺の代わりに部長が訪ねるとスズキさんはため息をついた後微笑む。

 

「勿論、定治に頼まれたからですよ」

 

スズキさんの後ろにはいるギャスパーと小猫ちゃんがソファに気絶しているように眠っていた。

 

「最初私は定治にキミの手助けをしてあげて欲しいと言われていました」

 

スズキさんは震える魔術師の方へ目を向ける。

 

「ですが私が出た門を通してクティーラ様が出て来そうな気配を察知した為私が終わらせておきました。見せ場を奪ってしまったようですみませんね」

 

そう言ってスズキさんはため息をついた後部室の扉に手をかけて部屋から出て行く。

 

「では行かせて貰います。そちらの少年少女の手当は一応して起きましたのでご安心を。そちらも直に迎えが来るでしょう。一誠くん、心を強く持ち覚悟を決めておきなさい」

 

「ーーーえ?い、一誠が消えた!?」

 

スズキが部室から去った直後、一誠の姿が突如として部室から消えたのをリアスは目の当たりにした。

 

 

先程まで部室にいた筈の一誠。しかし今一誠の視界に広がるのはコンクリートの床にフェンスの壁、そして定治が生み出した無数のゲート。部室にいた筈なのに一瞬で景色が変わった事を一誠は理解が追いつかず混乱したように独り言を吐く。

 

「こ、ここは!?え、屋上!?な、なんで!?さっきまで俺は部室にいた筈じゃ!?」

 

「私が連れてきたからだよ」

 

「ーーえ、夢桐さん!?」

 

「やぁ一誠くん」

 

混乱する一誠が声のする方に振り向くとそこには新しいタバコに火をつけた夢桐がにこやかに笑って軽く手を上げていた。

 

「どうやってここに、とは聞かないでくれよ?私にとっては当然の事だ、聞かれても困るだけだからね。何、ちょっとした魔法みたいなものさ。そんなに驚く程でもない。そうだ、下は見ないように」

 

 

夢桐が言っていた"私が連れて来た"という意味が理解できず困惑する一誠は困惑したまま夢桐が下を見ない方が良いという声につられて思わず下を見てしまった。

 

「っ!?、オブッ!!」

 

見えたのは幾多もの血だまりと死体。その死体のどれもが苦悶の表情を浮かべ悲惨な死を迎えた事は容易く想像できた。

 

胃から込み上げて来るものを抑える事ができない。堪えきれず一誠は床に吐瀉物を吐き出す。そんな一誠の様子を見て夢桐はため息をつく。

 

「だから見ないようにと言ったんだ。忠告は素直に聞いておくものだよ」

 

肺に入れた煙を吐き出し手に持つタバコを死体の方へと向ける。

 

「あれは定治が呼び出した神話生物達が行なった殺戮の残骸、今回の襲撃に加担した魔術師が皆殺しにされたという結果さ」

 

再びタバコを口に咥え煙を吐き出した後夢桐は口角を釣り上げる。

 

「だがここからだ、ここからもっと面白くなる。ここからを見せたかったからこそ君をここに連れてきた。よく見ておきなさい一誠くん、定治がBGMを使った。目を逸らしていると何も見る事なく終わってしまうよ」

 

 

 

一誠が屋上についたのと同時刻、会談場所にいた三勢力のトップ達もまた定治と神話生物が生み出した殺戮の後を眺めていた。

 

「……とんでも無いやつがいたもんだ。最悪の神器と呼ばれ恐れられた深淵の門(ゲートオブアビス)をあそこまで使いこなす奴がいるとはな」

 

アザゼルが冷や汗をかきながら深淵の門(ゲートオブアビス)の名を口にするとゼノヴィアがアザゼルの方へと目を向ける。

 

「最悪の神器、やはりあれがそうか」

 

定治が普段深淵の門(ルールブック)と呼ぶ神器、その本当の名が深淵の門(ゲートオブアビス)だと直感していたゼノヴィアがそう言うとミカエルがゼノヴィアの直感を確信させるように頷く。

 

「ええその通りです。アレこそが深淵の門(ゲートオブアビス)。神すらも知らぬ内に存在したとされる神器、神器のシステムのバグとも他の神が作ったとも言われる謎の多い神器です」

 

ミカエルは定治が手に持つ深淵の門(ルールブック)へと目を向ける。

 

深淵の門(ゲートオブアビス)は謎の多い神器。私もアザゼルも知らない事の方が多い程アレは謎に包まれています。ですが2つだけ、2つだけ確かな事があります。一つはアレが聖書の神すらも恐れさせ、強力な封印を施したものであるという事、そしてもう一つはアレがただ所有しているだけで人を狂気に陥れる最悪の代物なのだという事です」

 

「そう、他の神器でもその力に担い手が釣り合わない場合など理由は様々だが暴走してしまうケースは確かにある。だがそれは担い手の努力次第でいかようにも防ぐことができる。しかし深淵の門(ゲートオブアビス)は別、アレは最初から人が扱うように出来てない。例え深淵の門(ゲートオブアビス)を使いこなせていたとしてもアレは徐々に人から正気を奪っていく。使っても、使わなくても深淵の門(ゲートオブアビス)は等しく担い手を狂気に陥れ暴走させる、故に最悪の神器。そんなアレを完全に使いこなしているどころか、アイツは正気を保ったまま楽しそうに笑っていやがる。とんでもない奴がいたもんだ」

 

深淵の門(ゲートオブアビス)の事をある程度知っているミカエルとアザゼルが冷や汗を垂らしながら語るとゼノヴィアが定治へと目を向ける。

 

「……私は定治とは短い付き合いだが定治と一緒にいて一つだけわかった事がある。それは定治が偶に狂気を狂気と認識していない時があるという事だ」

 

普段の生活の中で見せる定治の笑みと今定治が浮かべている笑みは確かに別物。しかし普段見せる笑みも今浮かべている笑みも浮かべる理由はきっと同じものだという事をゼノヴィアは確信していた。

 

「恐らくアイツは普通の人間なら狂ってると思われる事を"楽しい事"くらいにしか思ってない。この殺戮の光景も奴にとっては友人とスポーツでもやって遊んだ後くらいのものなのだろう。……この平和な国であのような人間がいるとは思わなかった。定治、お前は一体何者なんだ。何が原因でそうなってしまったのだ」

 

ゼノヴィアの困惑とも悲しみともとれる呟きは周りにいる誰にも、定治の耳にも届く事なく搔き消えた。

 

 

とある国に一人の女給仕がいた。

 

「ああ奥様、おはようございます。今日も一段と麗しいご様子で」

 

女給仕は一人の貴族夫人に仕えていた。

 

彼女は他の女給仕に比べ、実に忠実で、実に優秀だった。

 

「奥様、頼まれていたものが完成致しました。こちらになります。急所を外し、中にいるモノをじっくりと殺す、実に素晴らしい一品にございます」

 

彼女は夫人が欲しいと言った物全てを用意した。例えそれがどんな物だろうと彼女は必ず用意した。

 

「さぁ奥様、次は何をご用意致しましょう?村娘?貴族の娘?ご安心下さい、私は貴方様の忠実な僕。さぁ、なんなりとご命令を」

 

その者の名はルラ。

 

一人の女が狂う様子をただただ眺め、愉快に笑っていた真なる吸血鬼。

 

 

『退却ーーーッ!!退却しろぉぉぉぉ!!巻き込まれるぞぉぉぉぉ!!』

 

定治が吸血鬼ルラへと姿を変え、その姿を見た斎藤達神話生物が一斉に門に逃げ出す中、ルラとなった定治を見てミゼーアは愉快そうに笑っていた。

 

『カカ、懐かしい貌でありんすなぁ』

 

『え?ミ、ミゼーア様はあの姿の定治様をご存知なのですか?』

 

初めて定治が吸血鬼ルラへとなるのを見たクティーラに対しティンダロスの王の一柱であるミゼーアは懐かしそうにクツクツと笑う。

 

『あぁ、知っているとも。忘れもせん、あの貌は彼奴が昔わっちら王に会いに行く為だけにわっちらの国に侵略し、一滴も血を流すことなくわっちの前に来た時の貌』

 

"ほう?お主がこの世界に来たという異物か。……嫌な奴の匂いがするのう。お主はあの丸いのの使いかや?"

 

"いいえ、お父様の使いではありませんよ。私の名は定治、今は吸血鬼の姿をさせて貰ってますが普通の人間ですよ"

 

"カカ、彼奴の貌をしたお主が普通の人間だと?冗談も大概にしなんし。それで定治とやら、丸いのの使いではないと言うのなら何の用でわっちの前に現れた?"

 

"貴方達に会いに来た。まぁ挨拶って奴ですわ、。そして挨拶のついでに一つお願いがしたいと思っていますの。あぁ、そのお願いというのはーーー"

 

ミゼーアが脳裏に浮かべたのはかつて定治がミゼーアらティンダロスの王達に会いに行く為だけにティンダロスへと現れた時の光景。

 

『カカ、あの貌を使うとは定治もかなり本気になっておるようでありんすなぁ。さて、あの貌相手に彼奴らがどうするのかお手並み拝見と行こうか。まぁ、何も出来んとは思うがのう』

 

呼び出した神話生物達の殆どが門を通って校庭から去ったのを見送った後、ルラは眼前の悪魔へと視線を移す。

 

 

「さて、神話生物たちも退いてくれたみたいだし、早速始めましょう。ーーーあら」

 

ルラの元へ何発もの魔弾が襲いかかって来る。だがルラはそれを避ける素振りすら見せず、周りに従えている蝙蝠達が盾となり襲いかかる魔弾を全て防いだ。

 

「……チッ」

 

魔弾を全て防ぐと何処からか舌打ちが聞こえて来る。舌打ちのする方向へと目を向けるとそこにはもう一人の悪魔が苛立たしげな表情をしていた。

 

「あらあら増援みたいね。……ふーん、これで2対2。フェアな勝負になった、と言うところかしら?ニャル、取り敢えずあっちの相手をして上げて頂戴」

 

「了解でーす★」

 

「目の前にこの私がいるというのに余所見とはいい度胸ですね!」

 

独り言のようにルラがもう一人の悪魔を見て呟いているとその隙を好機と判断したカテレアがルラに攻撃をしかける。

 

だが攻撃の為に振り下ろされた腕はカテレア本人の意識とは逆に動きを止めてしまう。

 

「なっ!?」

 

言う事が効かない身体に驚くカテレア。カテレアの認識した限りルラは指先一つも動かしていない。ただ赤い瞳の視線をカテレアの仲間であるもう一人の悪魔クルゼレイ・アスモデウスからカテレアへと移しただけ。

 

だがもう一度ルラの瞳を見た瞬間カテレアは理解した。最初あの吸血鬼瞳の色は碧色だった。だが今のルラの瞳の色は碧色とは全く違う赤色。もしそれがカテレアの身体が突如として言う事を聞かなくなった理由なのだとしたらーーー

 

「ま、まさか……!その眼は……!」

 

「支配の魔眼。私が使う魔術の中に人を操る支配という魔術があるのだけどこの目はそれと同じ効果があるの。因みに私達を囲んでる蝙蝠達の目も私と同じ支配の魔眼を備えているの。それを貴方は私が姿を変えた時に迂闊にも見てしまった。つまりーーー」

 

自らの魔眼について話した後ルラは驚愕するカテレアの表情を見て愉快そうに笑った後カテレアを優しく抱き締め耳元で先程まで言いたくて言いたくてたまらなかった事を口にする。

 

「貴方は最初から私の支配下だったのよ。今まで自由に動けていたのは私が許していたから。だけどそれももうお終い」

 

「へ、蛇を!蛇さえ飲めれば!「あ、そう。それじゃあ、さようなら」ガッ!?」

 

動かない身体を必死に動かそうとするカテレアをルラは赤子を抱くように優しく抱いて微笑んだ後、ルラは口元に生えた牙をカテレアの首元に突き刺す。

 

「あ、あぁぁ……」

 

牙を突き刺しカテレアの血を吸っていく。血を吸われカテレアの身体が徐々に萎んで行き、カテレアの身体から血が無くなると魔力を、魔力が無くなると最後に魂を吸い尽くす。後に残ったのはミイラのようになったカテレアの死体。その死体の頬にルラはキスをして死体を放り投げる。

 

「ごちそうさま、美味しかったわよ貴方。さて、あちらはどうなってるかしら?」

 

死体を放り投げた後ルラは視線をニャルとクルゼレイのいる方へと向ける。視線の先には満身創痍のクルゼレイと身だしなみ一つ崩れる事なくバールのようなものを器用に回しているニャルの姿。

 

「ハァ……ッ!!ハァ……ッ!!」

 

「蛇を取り込んでいてもその程度の実力ですか。話になりませんねぇ、()をつけて話す気すら起きませんよ」

 

クルゼレイの苦悶の表情とは対照的にニャルの表情は至極退屈そうなソレだった。目を凝らし、ニャルの一挙一動を注意深く観察するクルゼレイ。クルゼレイの身体は至る所をバールのようなものに突き刺され風穴が出来ている。これほど身体に風穴を開けられて死んでいないのはクルゼレイの前に立つニャルがわざと急所を外しながら死なないように且つ苦しむように攻撃をしているから。

 

これ以上攻撃を食らう訳にはいかない。クルゼレイの本来の目的は現魔王であるサーゼクス達の抹殺だ。仲間のカテレアが襲われているように見えたから加勢をしたが今は後悔しかない。

 

前に立つ少女の動きが全く見えない、気がつけば自分の身体の風穴が一つ増えている。既にオーフィスの蛇を取り込んでパワーアップは済ませている。

 

だがパワーアップをしてもなお目の前の少女の動きが全く見えない。

 

そしてまた、ニャルが持つバールのようなものに血が滴り落ちる。

 

「グガァァァァァ!!?」

 

次に風穴が空いたのは頬、絶叫するクルゼレイは頬を抑え血を止めようと頬を抑えるが血は止まる事なくクルゼレイの手から溢れ落ちる。

 

「フフ、そっちももうすぐ終わりかしらニャル?」

 

ニャルの隣にルラが立つ。ルラは絶叫するクルゼレイを愉快そうに笑うと隣に立つニャルがつられるように愉快そうに笑う。

 

「ええ、もうすぐ終わりますよ。存外つまらなかったですけどね」

 

血に塗られたバールのようなものをハンカチで拭いた後、ニャルは己の手を握り締め自らの持つ力を感じながら満足そうに微笑む。

 

「フフ、それにしてもやはりいいですねコレは。力が漲ってくる。これも定治さん、貴方のお陰ですねぇ。素晴らしい、貌を貸す価値もあるというものです」

 

「そう、それは良かったわ」

 

満足そう微笑むニャルの舌には定治であるルラと同じ紋章が刻まれている。その紋章をルラは横目で見た後、絶叫するクルゼレイを指差す。

 

「それで、アレにまだトドメを刺していないということはアレは私にくれるという事かしら?」

 

「ええ、その通りです。やはりトドメは主人公である貴方が指すものですから」

 

「そう、ありがとうニャル」

 

ニャルが問いに対して頷くとルラはニャルに微笑んだ後、支配の魔眼を持つ蝙蝠達をクルゼレイの元へと向かわせる。

 

「ぐグッ!!」

 

蝙蝠達が向かってくるのを確認したクルゼレイは蝙蝠達の目を見ないようにしながら蝙蝠達から距離を取る。一つ羽ばたくたびに身体から血が溢れ出る。だが飛び続けなければならない。羽ばたきをやめたらあの蝙蝠達に襲われる。魔術で身体の傷を塞ぐのを急がせる。まだクルゼレイは勝負を捨てていない、身体を癒し逆転のチャンスを伺う。

 

「グバァ!?」

 

あの笑みを驚愕のものに変えてやる、そう思った直後クルゼレイの身体は再び何かに貫かれた。

 

「蝙蝠達に気を取られすぎよ。横や後ろは見ていても下は見えていなかったようね」

 

ルラがそう言うとクルゼレイはつられるように下を見る。クルゼレイが下を見た先には校庭の土が形を変え、杭となってクルゼレイの身体を貫いていた。

 

「吸血鬼には元素を操るという能力があるの。ネットで調べたら直ぐに出てくるくらいには有名な能力。土も酸素やケイ素、アルミニウムなどと言った元素で構成されている、それを操ればこの程度朝飯前なのよ」

 

対して力を使う事なくクルゼレイを貫いたルラはクルゼレイにつまらなさそうな視線を向ける。

 

「全く、弱すぎて話にならないわ。さっきの女悪魔もそう、よくもまぁその程度の力で私がいるこの地を襲おうと考えたものね」

 

「ま、まざが……!ガデレアば……!?」

 

クルゼレイが下を見るとそこにはミイラのように干からびた姿のカテレアが目に入る。魔王の子孫であり実力者のカテレアが殺された事に目を見開くクルゼレイに対しルラはさも当然のような表情で首を傾げる。

 

「死んだわよ?血も、魔力も魂も何もかも吸い尽くされて死んだわよ?私に挑んのだから当たり前でしょ?」

 

「お"の"れ"!お"の"れ"ぇぇぇぇ!!人間風情がぁぁぁぁぁ!!」

 

「五月蝿い」

 

仲間が殺され怒りのままに絶叫するクルゼレイにルラは苛立たしげに眉を潜めると、ルラの言葉と同時にクルゼレイを貫く杭が一つ増える。

 

「怒った所で何の意味も無いわ。だってあの悪魔はもう死んでるんだもの。でも大丈夫よ、貴方ももうすぐあの悪魔の元に行けるもの。そこで思い出話でもしてるといいわ。まぁ、死後の世界というものが悪魔にもあったらの話だけどね?」

 

先程まで叫ぶクルゼレイに眉を潜めていたルラだったが今浮かべているのは口元を歪めた悍ましい笑顔。この笑みを見て、クルゼレイは漸く絶対的な死を感じ取り、漸く恐怖と絶望の感情が芽生えてくる。

 

「ぎ、ぎざばは一体何者なのだ……!?」

 

「ん?私はただの人間よ?あぁ、今は吸血鬼だったわね」

 

絶望の表情を浮かべ尋ねるクルゼレイにルラは首を傾げるが直ぐにクルゼレイが何を聞きたいのか理解する。

 

「あぁ、聞きたいのはそういう事じゃないのね?そうねぇ……んー、まぁこの姿ならいいか。じゃあ教えてあげる。私ルラは他人、特に私が気に入らない奴らが今の貴方のような表情をしてるのを見るのがスゴく好きなの。ホント、たまらないくらいに。質問の答えはこれでいいかしら?」

 

楽しそうにそう語るルラだったが一通り言い終えた後思い出したように困ったような表情で慌てて両手を振る。

 

「あ、勿論これは定治(わたし)の本心じゃないわよ?これはルラ(わたし)の意見だから、勘違いしないでね?」

 

「(えぇ……)」

 

両手を振るルラの隣でニャルが困惑した表情を浮かべるがルラはそれを無視する。そして少し経った後ルラはその表情を変える。

 

「でもさっきからずっと同じ表情を見てたから流石に飽きてきちゃったわ。だから、そろそろ死んで頂戴な」

 

先程までの困ったような表情から一変してニコリと可愛らしい笑みを浮かべながらルラは人差し指を上へと向ける。

 

「ガフッ……!」

 

人差し指を上へと向けた瞬間校庭の土が幾多もの杭へと変化しクルゼレイの身体を突き刺し、絶命させる。

 

「さて」

 

クルゼレイの絶命を確認し、ルラは元素を操り校庭の杭を元のものへと戻す。校庭が元の形に戻った後、ルラは先程から疑問に思っていた事を誰に言うでもなく独り言のように口にする。

 

 

 

「さっきあの女悪魔が何で私がアーミテイジだと知っていたのか疑問だったのだけれど、さっき女悪魔の血を吸った事で理由がわかったのよ」

 

ルラは三勢力のトップ達のいる校舎の一室へと目を向けながら変身を解き、元の定治の姿になる。

 

 

「なぁ、言い訳があったら聞かせてくれよ。ーーーあらま」

 

直後、定治の身体は校舎へ吹き飛ばされた。




はい、今回ここまで。

いやー長引いてしまった。申し訳ないです。

さて次回は裏切り者登場です。ニャルラトホテプ様の貌の一つである吸血鬼ルラの紹介については次回にやる予定です。

それではノシ


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選手交代

お ひ さ


砂埃が舞い砕けたコンクリートがポロポロと地面に落ちる。その有様が定治の受けた衝撃を物語る。だが定治の身体は傷一つ付いていなかった。

 

『サンキュー親父、ナイスサポート』

 

吹き飛ばされ、叩きつけられた定治はヘラヘラとした何時もの笑みで自身を守ってくれた泡に腰掛けながらインカムに手を当てる

 

『全く、お前は偶に慢心して警戒を解く癖がある。それは悪い癖だと何度も言ってるだろう』

 

インカムからため息混じりに苦言を呈する夢桐の声が聞こえる。しかし定治は特に気にした様子はなく肩を竦めるだけ。

 

『やれやれ、相変わらず手厳しい親父だぜ』

 

インカムから手を離して服に着いたコンクリートの破片を払いおとす。少し白くなった制服にため息をついた後に前方を見ればそこには吹き飛ばされた定治にニヤニヤとした笑みを浮かべるニャルラトホテプと白い龍のような甲冑を身に纏った男、ヴァーリーがいた。

 

「ヴァーリ、お前お返事に人を吹き飛ばすとかどういう教育受けてきたんだよ」

 

「悪いな、生憎アザゼル達に会うまでは暴力くらいしか碌な教育を受けてなくてな」

 

「え、まさかのマジレス?なんかごめんね?そんなつもりじゃなかっブッ!?」

 

ジョークのつもりで言った事に予想以上の返しが来てしまい思わず謝る定治だったが再びヴァーリによって学園の壁に叩きつけられる。

 

「いやそんな怒らんでも…マジ悪かったってブフッ!?」

 

何とも言えないような表情で陥没した壁から出たと同時に再度攻撃が加わる。コンクリートが砕け教室に転がり、暫くして起き上がる定治の姿をヴァーリは困惑した表情で眺める。

 

「…何故避けようとしないアーミテイジ」

 

「あれ?なんか俺今割と理不尽な事言われてね?」

 

ヴァーリの言葉に今度は定治が困惑した表情を見せる。「いやどうしろと」と思わず言いそうになるのをグッと堪え、ユキを呼び寄せ背中に乗りヴァーリと視線の高さを合わせる。

 

「不意打ち避けろって言われても困るんだよ。お前も子猫ちゃんもいきなり不意打ちするのホント何なの?アサシンなの?気配遮断Aなの?って違う違う、それが聞きてぇんじゃねぇんだよ。不意打ちばっかするから話それたじゃねぇか」

 

ため息をつき口から出た血を拭う。指についた血を払い落とし、ヴァーリを真っ直ぐに見据える。

 

「お前さ、裏切ってたの?魔王の血縁者って奴?とかその他色々な奴らにに今回の情報教えてただろーーーショゴスくん」

 

ヴァーリが放つ魔力の弾丸をショゴスに受け流させる。その様子にヴァーリは「ほう」と言って感心した様子を見せる。

 

「ああそうだ。俺はあちらに着くことにした。こっちよりもあっちの方が面白そうだったからな」

 

「なるほどねぇ」

 

ユキの上で胡座をかいて頬杖をつきながら定治はルールブックに手を置く。

 

「お前さアザゼルに育てられてんだろ?そいつに申し訳ないとか思わないわけ?……んー、でもアレかそれよりも優先したい事がある、って所か?」

 

「なんだ、よくわかってるじゃないか」

 

「俺にケンカ売ってきたのもそういう訳かーーーーは?」

 

甲冑越しに笑っているだろうヴァーリに呆れたように、そして何処か感心したように定治がため息をついたその時、定治の表情が固まる。定治が目にしたのはルールブックから3枚の紙が切れ、空中に静止するという光景。静止した紙を見るとそこには

 

"ミゼーア"

 

"クティーラ"

 

"シュド=メル"

 

と書かれている。それらを理解した瞬間、定治の表情が明らかに変わる。想定外、困惑、そして尋常ではない程の危機を感じたものへと表情を移り変えて行く。

 

「ーーーっ!おいおい!?おいおいおいおい!?マジかよ!?」

 

この時定治は何故ニャルラトホテプがニヤニヤと笑っていたのかに気づいた。あれは吹き飛ばされた定治を嘲笑していた為ではない。定治に気付かれずにルールブックの封印を弱める事に成功した笑みだったのだ、と。

 

紙から木蓮の花の紋章が輝きそれと同じものが定治の身体に浮かぶ。それと同時に定治の身体のある所は角ばった刺々しいものに、ある所は細長い触手のような何かに変化していき定治の身体に激痛が走る。

 

「イッデェェェェェェ!!」

 

あまりの痛みに絶叫する。定治本来の、人間としての組織である皮が、肉が弾け飛び作り変えられ、それらがまるで新しい組織のように定治の身体と一体になる。

 

血反吐を撒き散らしながら絶叫する定治。だがそれでも身体の変化は止まらない。

 

平■せよ■らは■■なる支配者

ル■ルブ■ク 第■■ ■支■者

 

■望せよ■ら真■■体現■

ル■ルブ■ク 第■■ 外■『クソがぁぁぁぁぁ!!ショゴスくぅぅぅん!!ユキィィィ!!』

 

『うん!』『ええ!』

 

ルールブックに隠されたページの封印が解け始めると同時に定治はルールブックに魔力を注ぎ込みながら声を荒げる。二匹の怪物はその呼び声に応え、定治の魔力の干渉により光を失った3つの紋章を肉ごと抉り、千切る。

 

抉り取られた肉が空中でウネウネと動くがそれを幾多にも千切り、ショゴスとユキが口に入れ噛み潰し咀嚼する。

 

『っぶねぇ!!ニャル!テメェやりやがったな!!ミゼーア!シュド=メル!クティーラ!テメェらも悪ノリしてんじゃねぇ!!』

 

『カッカッカッ、いやぁすまぬすまぬ』

 

『ん?タイミングを間違えたか?』

 

『わ、私は定治さんに私の力が必要だと思って…そのぅ…』

 

『アハハハ!!アッーハッハッハッ!善意のつもりだったんですがねぇ!』

 

千切った箇所から血が流しながら定治はニャルラトホテプと門の先にいる存在に向ける。激怒する定治に対しクティーラ以外の神格達は悪びれる様子も無い。

 

他の神格はともかくニャルラトホテプは定治の奥で眠る"秘密"を知る存在だ。だというのにあの神は味方となっていても定治の想定外の事を本当に"善意"とちょっとした"悪戯心"でルールブックの封印を弱める。それが余計に定治を苛立たせる。

 

『これだから神って奴は……!「定治」何だよ!」

 

苛立たしげに声が聞こえた後方へと振り返るが声をかけてきた人物を目にした時、怒りではなく驚きの表情を浮かべる。

 

「……一誠、か?」

 

定治が目にしたのはヴァーリが身に纏う甲冑とどこか似ている赤い甲冑を身につけた一誠だった。定治は以前この姿の一誠をライザーとリアスの結婚式の際に目にしている。だがあの時と違い身に纏う甲冑は何処か一誠に馴染んでいるように見える。

 

「ああ、そうだ」

 

赤い甲冑の兜を納め、強い意志を持つ目をした一誠の表情が眼に映る。こういう目をした時の一誠はとても強い。一誠の強い目を見たお陰か定治は冷静さを取り戻し、改めて自分の状況を確かめる。身体のあちこちには血が流れ落ち、ルールブックの封印も押さえつけてるとはいえ弱まっている。近くには信頼する二匹の怪物と今すぐにでもしばき倒したいニヤついた笑みを浮かべるニャルラトホテプ、そして強大な力を持つ神が3柱。笑える程最悪な状況だ。

 

だがそんな最悪の状況で最高の親友が来てくれた。

 

なら俺がする事は一つ、拳を親友に突き出す。

 

「ワリ、ちょっとキツいわ。任せてもいいか親友」

 

「おう、任せとけ親友」

 

すれ違い様に拳を軽くぶつけ、定治が赤龍帝、一誠に道を譲る。

 

「悪いなヴァーリ、選手交代だ」

 

時を少し遡ろう。

 

 

一誠はルラになった定治の蹂躙劇を見ていた。ルラになった定治はニャル子と共に魔王の血族の者達を圧倒的な力で追い詰めている。その様子に一誠は拳を握り締める。

 

「夢桐さん、これも定治の…ルールブックの力なんですね」

 

「そう、聖書の神が封印したルールブックの隠された章を使いあの子は這い寄る混沌と呼ばれる神と契約をしたのさ」

 

定治の隣にいる夢桐はタバコを口元で揺らす。吐いた煙がルールブックとよく似た本の形となる。煙で作られた本には何かを分ける為の章と思われる目次欄が記されている。

 

「普段ルールブックにはこれらの章しか記されていない。だが血と魔力を注ぎ、隠された章を見つける事でルールブックは元の姿を取り戻す」

 

夢桐が指でなぞると煙の目次欄に新たな章が5つ加えられる。

 

「先の堕天使との闘いで使用した魔術を記した0章、そして今使っているのが更に隠された章の4つ。この隠された章を使い定治は這い寄る混沌と呼ばれる神と契約したのさ」

 

契約、という言葉を耳にした時一誠の表情に不安が見える。悪魔となって契約という名の取引自体の悪印象は薄れつつあるがそれでも隠された章に記された神との契約は危険なものなのではないかという考えは拭いきれない。そんな一誠の考えに気づいているのだろう夢桐が煙を吐きながら笑う。

 

「何、そんなキツいものじゃないさ。あの子はその神を一時的に信仰する存在となりその証として自身の血肉を渡す。神はその返礼を渡す、そういったものさ」

 

「ただその返礼を受け入れきれなかった場合は狂うか死ぬがね」と夢桐は心の中で付け加えておくが当然一誠の耳には入らない。今はまだ言わない方がいい、言うのはバカ息子がその気になってからだ。

 

煙を新たな煙で搔き消し、夢桐は吹き飛んだ定治をチラリと見て深いため息をつく。

 

「全く、お前は偶に慢心して警戒を解く癖がある。それは悪い癖だと何度も言ってるだろう……そろそろ潮時だな」

 

夢桐が定治の父親としての険しい顔つきで一誠を見据える。

 

「すまない、少し長話をしすぎてしまったね。だがそろそろ本題に入ろう。私が君をここに連れて来たのは君にバカ息子の力を見せる為、そしてアレを見た上で聞いておきたい事があったからだ」

 

夢桐が一誠の肩に手を置く、たったそれだけで一誠の身体に緊張感が走る。下手な回答をすれば自分はただですまないだろう。だが夢桐が尋ねてくるのが一誠の予想通りなら答えは最初から決まっている。例えどうなろうともこの答えを変えるわけにはいかない。

 

「キミはあの時、私の息子に追いつくと言っていたね。この私が育てたバカ息子の力はとてつもない。しかもあれでまだまだ本気じゃない。その気になればアイツは一人で一つの勢力を簡単に壊滅させるよ。そんなあの子にキミは本当に追いつけるというの「追いつきます!」ほう?」

 

肩に置いた夢桐の手に少しだけ力が入る。それだけで心臓が握られているような危機感を覚えてしまう。しかし一誠の目には強い意志が宿っている。答えを変えるつもりはない。

 

「今の俺には口約束しか出来ません。だけど、必ず、必ず俺は定治に追いつきます。俺の魂に誓ってもいいです。……それに」

 

「それに?」

 

夢桐の顔が早く続きを話せとばかりに一誠の顔に近づくと一誠は照れ臭そうに笑う。

 

「ダチに守られてばっかなのは性に合わないんですよ、俺は」

 

夢桐の顔が、手が、一誠の身体から離れ、クックッと笑う。その表情はとても穏やかなものだった。

 

「私に恐れながらも顔色を伺う事なく自分の意志を貫いたか。ああ、やはりキミは観測しがいのある子だ」

 

微笑みを浮かべた後夢桐は一誠の赤龍帝の籠手に触れる。

 

「よし、それじゃあ早速バカ息子の手助けをしてやって欲しい。ニャル子が少々やらかしたみたいで定治をこのままにさせておく訳には行かなくなった。そこで代わりにキミに白龍皇を止めてもらう。私も少しばかり協力してあげよう」

 

幾多もの小さな魔法陣が空中に展開される。魔法陣は絶えず動き続け赤龍帝の籠手が身体に馴染んで行くのを一誠は感じていた。

 

「堕天使の小僧がキミに渡したおもちゃを使って赤龍帝の籠手をより馴染ませる。感情の赴くままに動き、ドライグと息を合わせなさい。それが勝利の鍵となる」

 

「はい!わかりました!」

 

幾多もの魔法陣か赤龍帝の籠手に収められる。籠手に宿るドライグの魂が一誠とより繋がっているのを確信する。負ける気がしない。例え自分より強い白龍皇だろうが必ず勝ってみせる。

 

「行くぜドライグ!!」

 

『……おう!!』

 

Welsh Dragon Balance Breaker!!!!

 

赤龍帝の籠手を掲げドライグに呼びかける。ドライグがそれに応え籠手を起点として身体が鎧に覆われていく。

 

拳を握り、開いて感触を確かめる。赤龍帝の鎧、ライザーの時以来に発動するそれは前回より一誠の身体に馴染んでいる。準備は整った。校舎の方を見ると血反吐を撒き散らしながら怒り狂っている定治が見える。

 

何が起きているのかは今の自分には理解できないがやるべき事は分かっている。

 

「さぁ、ゆっくり息を吸って」

 

言われた通り息を吸う。力がみなぎって行く。

 

「そう、目は真っ直ぐ。敵から目を逸らさない」

 

言われるまでも無い、敵から視線を逸らすのは負けに等しい。

 

「定治から殴り方は教わっているね?ならキミがやる事は決まっている」

 

わかっています、夢桐さん。

 

「ーーーさぁ」

 

背中を押されると同時に翼に力を込める。

 

「行って来い一誠くん!」

 

「はい!!」

 

赤龍帝が親友の元へ飛翔した。

 

『(あの力……まさかあいつは……!?)』

 

その一方で夢桐の力を感じたドライグは何かに気ついていた。




ニャル子「定治さん!ルールブック本来の力を出せるようにしておきましたよ!!」



隠された5つの章
聖書の神がその危険性から消そうとしたが消せなかった為封印した章。血と魔力を注いで探す事で見つける事が出来る。これによりルールブックは本来の姿に戻るがその封印を解いたとしてもただの人間如きでは使いこなせる訳がない。

Broom,Grow,Magnolia.(咲き、輝く、威厳の花)
神をも超える精神を持つ定治がその神を信仰する契約を行う事で得られる恩恵。どんな恩恵を与えるかは神が決める為必要以上に与える場合もあればあまり意味のない恩恵を与える場合もある。恩恵を与えられる際に襲う激痛はPOW120が素で絶叫するレベル。

ミゼーア
外なる神ではないが、その強さから外なる神に分類される角の世界の王、その中でも最も強いと言われる存在。フェンリルの元となった神と言われている。

シュド=メル
クトーニアンの中でも最も大きく、強大な力を持つ。彼が起こす地震は一都市を簡単に滅ぼす事が出来る天災そのものと言える存在

クティーラ
クトゥルフの娘であり母と呼ばれる存在。クトゥルフ勢力の中でも最も最奥の秘密の存在であり彼女がいなければクトゥルフは蘇る事が出来ないと言われているとか

時間はかかりますがこの作品は好きなので更新するつもりです。


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赤龍帝と白龍皇

戦況は多くの者が予想がつかない状態で進んでいた。

 

「オラァッ!!」

 

「グッ!?」

 

かたや魔王ルシファーの血を継ぎ幾多もの攻撃手段と神器を使いこなす白龍皇。もう一方は神器をろくに使いこなせず半ば無理やりに禁手化した赤龍帝。

 

一目瞭然の戦力差だというのに戦況は赤龍帝が押している。その様子に魔王、大天使、堕天使達も驚きは隠せない。

 

拳を振るう赤龍帝に負けじと白龍皇が多くの魔弾、拳で応戦する。しかし赤龍帝、一誠は怯む事なく拳を打ち込んでいく。

 

一誠の脳に声が響く

 

 

「そろそろだ」

 

夢桐の声が脳へ直接入った瞬間に一誠は僅かだが距離を取る。

 

"Divid!!" "Boost!!"

 

距離を取ったと同時にヴァーリの神器の力によって一誠の力が半減されるが1秒も経たずに直ぐに一誠の力が二倍になり、再度一誠が踏み込んでいく。

 

その様子に全ての門を閉じ終えた定治が眉をひそめる。

 

「親父、何した?」

 

「一誠くんの倍化の力を白龍皇の半減の力の直後になるように調整しただけだ」

 

特に思う事も無い様子で夢桐がギミックを明かす。先ず最初に一誠に自身の限界まで倍化の力を溜めさせる。勿論ヴァーリはそれを半減させるだろう、だがその直後に倍化を発動すれば一誠は再び最大倍化で戦える。それを繰り返しているだけだと

 

「倍化している数秒の間は普段の何倍もの力で戦える。その数秒をほぼほぼ10秒にし、半減されている時間を短くすれば一誠くんは有利に戦える。私は一誠くんにそのタイミングを教えて有利性を保たせている。それだけの話だ。勿論白龍皇はその有利差を覆そうと半減のタイミングをずらそうとするだろう。だが私にそれは通じない。一誠くん、3秒間カウントストップ、その後再度倍化だ」

 

"Divid!!" "Boost!!"

 

 

あらゆる時間、空間に同時に存在する夢桐の前ではいくら天才と言われるヴァーリでさえ後手に回らざるを得ない。ヴァーリは夢桐の存在を知らず、ただ単純に一誠の方が優れてると思わざるを得ない。その勘違いが余計にヴァーリの思考に焦りを生む。

 

「実力が上な分奴にはプライドがある。タイミングの読み合いとはいえ奴は格下に負けている。焦るだろうなぁ?その焦りはやがて恐怖、いや奴の場合は楽しさへと変貌し、それが慢心と油断になってより一誠くんの勝利に加担する」

 

「けど白龍皇って半減した力を自分のものにしていくんだろ?時間が経つほど一誠不利になるんじゃねぇの?」

 

「確かにその差は埋まらないだろう、むしろ開くばかりだな。だがあの子にはとっておきを渡している。後はそれをあの子が上手く扱えるかどうかだ。それに一誠くんはお前の手解きである奥義を開眼してるみたいじゃないか」

 

「いやあれはアイツが勝手に開眼したんだよ!!」

 

 

ヴァーリは驚いていた。

 

最初ヴァーリはアーミテイジに選手交代、そう言われた際は呆れ気味にため息をついたがその感情は不意打ち気味に打ち込まれた一誠の拳の重さに打ち消された。

 

自身が無様に殴られた様子に定治が腹を抱えて笑い

 

とりあえずやってみろよ、ありえねぇとは思うけど満足出来なかったその時は俺が相手するぜ

 

その言葉がゴングとなりヴァーリと一誠の戦いは幕を開いた。

 

それから何度殴り合い、倍化半減の読み合いをしただろうか。

 

気がつけばヴァーリは目の前にいる格下なライバルに脅威を抱いていた。

 

急所、致命傷になるだろう攻撃は避け、防ぎ

 

例え攻撃を受けたとしても

 

「Dカップありがとうございます!!オラァ!!」

 

怯む事なく拳を打ち込んでくる。

 

なんだ、コイツは?

 

そう思わずにはいられない。

 

向かってくる拳を掴み、攻撃を一旦止めさせ、ヴァーリは尋ねる。

 

「お前は痛みというものを認識してないのか?それとも、お前もアーミテイジ同様イかれてるのか?」

 

「人のエロ本落し物扱いにして生徒会に届けるイかれ野郎のアイツと一緒にすんじゃねぇ!!」

 

何処からか「テメェもあの後俺のエロ本を学校掲示板に貼り付けてたじゃねぇか!!ご丁寧に定治コレクションって書いてよぉ!!」という声が聞こえたと共にヴァーリの顎に一誠の額がぶつかる。少し視界が揺らいだ瞬間に腹に膝蹴りが入り掴んだ拳が手放してしまう。

 

「確かに痛いもんは痛ぇ!だけど俺には定治との特訓で開眼して奥義パイスカウターがある!あらゆる攻撃をおっぱいにやられたものと考え、痛みをご褒美に変える奥義だ!」

 

「やはりイかれてるじゃないか」

 

「クヒ……ッ!フヒッ…!パ、パイスカウ…ククッ……!」

 

「おいしっかりしろニャル!おい!ダメだ笑い過ぎてて呼吸ができてねぇ!」

 

揺らぐ意識を戻してみると遠くで蹲る銀髪の少女の肩を揺さぶる定治の姿が見える。格下だと思っていたライバルにこうも苦戦するとは思わなかった。

 

悪い癖だと自覚しているが口角が釣り上がってくる。やはり戦いとはわからないものだ。笑みが溢れ、高揚感が高まってくる。そしてそれによって生じた隙をライバルは見逃さない。

 

「グゥ!!」

 

アスカロンの力を宿す鋭い拳が腹に突き刺さる。だが、それでもこの笑みは治らない

 

「ああいいぞ我がライバル赤龍帝!いや兵藤一誠!もっとだ!もっと俺を楽しませてくれ!次は何をしかけてくる!その全てを受け止め、俺が勝利してみせよう!」

 

「……ッ!………クヒヒッ!!」

 

「おいおい殴られてるのに楽しませろとかヴァーリの奴も変態発言しやがった!龍の神器使いは変態ばっかりかよ!!落ち着け!深呼吸しろニャル!」

 

『フッ……!ウフ……!な、なんなのあの子達…!アホにも程がある……フフ、フッ…』

 

「クソがぁぁぁ!!ユキちゃんもツボってやがる!!俺の周りはこんな奴ばっかりかよぉぉぉ!!」

 

「「うるせぇ(やかましい)!黙ってろ定治(アーミテイジ)!!」」

 

校庭には頭を抱えて絶叫する定治に向けて二人の怒声が響いていた

 

 

闘いは現在ヴァーリが押し返していた。倍化と半減の読み合いを止め、闘争本能を剥き出しにしたヴァーリの攻撃が一誠に襲いかかる。

 

致命傷になるだろう攻撃を防ぎ、躱す一誠だが徐々に追い詰められてしまいまともに攻撃を受けてしまう。

 

「どうした兵藤一誠!貴様の力はそんなものか!?」

 

「クソッ……!」

 

口に溜まる血を吐き出し、再度殴りかかるがヴァーリはそれを物ともせず一誠の腹に拳を打ち込んでくる。

 

「カハッ……!?」

 

一瞬呼吸が出来なくなるほど強い一撃の後、顔面に拳が、肩、胸、脚に魔弾が直撃する。倍化の有利こそ保っているもののヴァーリには一誠から奪いに奪い続けたパワーが溜まってきている。両者の差はもはや歴然だ。ヴァーリの攻撃はパイスカウターで受け止めきれる痛みではなくなってきている。

 

だがそれでも一誠は諦めていなかった。

 

「ウオォォォォッ!!」

 

拳がヴァーリの顔面に突き刺さる。だがその後直ぐに満面の笑みを浮かべたヴァーリの拳も一誠の顔面に打ち込まれる。

 

「そうだ!それでこそ我がライバルだ!!ああいいぞ!もっとだ!もっと俺を楽しませろ!!」

 

意識はもう薄れつつある。だが負ける訳にはいかない。部長達を守るため為、もう足手まといではないと証明する為、そして定治に追いついてみせるという夢桐に誓った言葉の為。再度口の中に溜まる血を吐き出し拳を握りしめる。

 

呼吸を乱れさせるな、敵から目を晒すな、敵に勝つ為、己が全てをぶつけろ

 

今一度ヴァーリに拳を撃ち込もうとしたその時

 

一誠の決意に応え、身体から無数の小さな炎が溢れ一誠の内側から声が発せられた。

 

『その熱意、素晴らしいぞ少年!』

 

「「ハ?」」

 

溢れた炎に定治とニャル子の表情が固まる。そして直ぐに定治は険しい表情でルールブックを開き、ニャル子は冷や汗をダラダラと垂れ流す。

 

「アイツじゃねぇ!だけどあの炎はまさか……!おいおいマジかよ!!」

 

「定治さん!ちょっと私にも見せて下さい!」

 

ページを漁り、やがて二人の目に留まったのはとある唯一の存在が記されたページ。そこに記された存在は既に召喚済みのサインが記されており、定治の表情が更に険しくなり、そのページに記された存在の名を口にする。

 

「フサッグァ…!!」

 



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