モブだった俺がちょっくら革命起こす話 (橘 翔)
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頼まれたので、とりあえず村を出ようか。

どうも橘です。

ごめんなさい気分で書いてるので

ヘタクソです……はい。

こんなグダグダな主人公もいてもいいんじゃね?

とかいいつつグダグダでもないけど……

変更︰聞かせて を 聴かせて にしました


ただのモブキャラで終わるはずだった。

 

辺境の村に生まれ、

 

父の天職を継ぎ、

 

幼馴染みと結婚し、

 

平凡な家庭を作る。

 

そう思ってた。

 

「ぐへへ、白イウムがいやがるぜ!」

「高く売れるな!」

「いや男だ!奪う!」

「殺す!殺す!」

 

まさかのここで人生endとか……あり?

 

――◇◆◇――

 

俺はリオン。ここら辺では(ここら辺しか知らないけどな)珍しい容姿なせいか村では有名だ。一般的な黒色の目や髪ではない、目を引くこの銀髪や、赤い目は我ながら異色だと思う。歳は16。天職は衛士をやってる、とはいってもせいぜい村人同士のケンカの仲裁や見回りだけだが……

俺達の村、レザリアはサクシード南帝国の領土にある小規模な村だ。交易商人のおっちゃん曰く、この村は人界の最南端にあるらしい。サクシード南帝国の領土にはこのような村の他にアルガディアという中規模の街がある……らしい。そしてその先には央都セントリアがある…………らしい。あくまで‘らしい’なのは、聞いたことがあるだけだからだ。基本的に村人は村から出ない。そもそも、不朽の壁によって人界は分けられているし、天職はあるし、特殊な天職でもなければ(それこそ交易商人とか)遠出なんて出来ない。

いつかこの村を出てアルガディアの街の衛兵隊に行く。そして腕を磨いて、央都にいく。これが俺の夢だ。

 

俺は今、村の外の見回りをしている。なんでも最近不審な動物の死体を見かけるんだとか。まるで剣で裂かれたかのような傷は、人でなければ出来ないだろう。そのため不審者を警戒している。家畜以外の動物の無闇な殺傷は禁忌目録で禁じられているはずなのだが……サクシード南帝国は砂漠が主な地形なため、動物も危険度の高いものが多い、にも関わらずのこの事件だ。なんにせよ、油断は出来ない。

 

そして警戒し始めて2日目。噂の死体を発見した。うさぎや羊、果てには火炎熊まで。しかも、一定間隔をあけてポツポツとある。かなりのやり手だな。原因解明の手掛かりになるかもと思い、辿ってみることにする。

 

辿っていくこと3時間。果ての山脈に着いてしまった……まさかこんなに近くにあるとは。レザリアが最南端というのは本当のことらしい。死体の血の跡が洞窟内に続いているので、更に入ってみる。ダークテリトリーに入らなければ禁忌目録には触れないので大丈夫だろう。

 

――◇◆◇――

 

はい、回想終わり。

洞窟に入って少し進んだらゴブリン集団と出会った。うん、これ俺の人生詰んだな。

 

「やれるだけ足掻こう……」

 

正直、戦いなんてしたことないので勝てないとは思う、が……ここでただやられるのは衛士としての天職が泣く。

 

「なんだなんだぁ?こいつ俺らとやりあう気だぜ!」

「うひゃひゃひゃ」

「ばっかじゃねーの!?」

 

てか、こんなやつらに殺されたくない。

ピタリと構えた銅剣にも全く怯まず、一匹が飛びかかってくる。とはいえ、ゴブリンの方が体格が小さいため、

 

首を落とすのは簡単だった。

 

容易く一撃で屠られたことに動揺したのか、残りの仲間がザワザワしだす。いや、衛士舐めんな。師匠が鬼畜すぎてこれくらい朝飯前になってるわ。

 

さて、どれくらいやれるか……

 

――◇◆◇――

 

――ピキッ

 

あーあ、いっちゃったか。

使い物にならなくなった銅剣を最後に投げる。あ、当たった、ラッキー。

これで6匹屠ったことになる。逆に言えばまだ十数匹残ってる。武装は無し。

流石にここまでか……

ゴブリンが俺の武装が無くなったことに気づいたのか、一匹飛び出してきた。この一撃で俺の天命は……無くなる。

結構いい人生だったなと思いつつ、最後への覚悟を決めた。

 

「死ねーーー!!!」

 

しかし、その凶刃が

 

まるで見えない壁に当たったかのように跳ね返った。

 

何度繰り返しても同じだ。

え、なにこれ、どうなってるの?

そこで意識が途切れた。

 

――◇◆◇――

 

目の前にいるのは……男?

ここはどこだ?

 

「私は茅場晶彦。ここは君の精神の中だ」

 

は?誰?てか俺死んだ?

 

「いや、まだ死んでいない。私の意識が続く限りだがね……」

 

ほう、守ってくれてるのか。

で?対価は?

 

「君のその頭の回転の速さ、さっぱりした性分は実に気持ちがいいな。私からの要望は……この世界を正して欲しい」

 

頭に情報が流れ込んでくる。

これは……

 

「この世界は歪んでいる。なんとかコンソロールからリアルと接触を図り、元の姿に戻してくれないか?」

 

なんとまぁ大層なお役目で。

ま、命と交換ならしょうがないか……

 

「そんなに簡単に諦めれるものなのかい?」

 

この命はあってないようなものだからな。

どうすればいい?

 

「アドミニストレータを倒し、リアルとコンタクトしてくれれば文句はない」

 

この情報は?現実世界(リアルワールド)のことやらアンダーワールドのこと、

 

ソードスキル(・ ・ ・ ・ ・ ・)のこととかさ。

 

「困難なミッションを頼むからね。少しでも役に立つと嬉しい。他には……」

 

目の前に浮かぶ選択肢。

この10個のスキルは?

 

「ユニークスキルと呼んでいる。いわゆる、個人専用スキルだ。どれか1つを使えるようにしておく」

 

選ぶのか……

じゃあこの片手長剣スキルで。

 

「わかった。情報は入ってるね?」

 

おーけー。問題ない。

 

「それでは、よろしく頼む。それとついででいいのだが……キリトという名の少年も助けてやってくれ」

 

意識が途切れた。

 

――◇◆◇――

 

目を覚ますと透明な防壁が砕ける音がした。どうやら何度も錆び付いた剣を叩きつけて壊したらしい。カヤバの意識が弱くなったからかもしれないが。

 

「さっさと死ねーーー!!」

 

おっと、

 

体術スキル【エンブレイサー】

 

カウンターの手刀が黄色の光をひきながら胴を寸断する。おおう。素手で殺れるのかい。

 

このときリオンは知らなかったが、リオンのイメージで手刀が本物の刃のように切れるようになっている。そもそも、自分の方が技術が上という自負があったため、イメージがより強固になっているのだ。

 

「えい、や、そい!」

 

3匹〜♪首がいい位置にあるね♪

 

「ウラァァ!!この岩砕きのウガルム様が相手だ白イウム!」

 

――……じ……

 

――ご……じん……

 

――御主人!

 

名乗りをあげるゴブリンは無視し、傍らに落ちている銅剣に目が行く。あいつか?喋れるの?

 

――まだ私は行けます!

 

ん、わかった。今までありがとな。最後まで一緒だ。

 

来いッッ!!

 

銅剣が浮いてこちらに向かって飛んでくる。いや、手に収まりに来る。

 

――ピタッ

 

あぁ、5年は使い込んでるからな。よく馴染む。

 

お帰り。

 

「なんだテメェ……」

 

敵の大将でさえ驚くのも無理はないか?物体を触らず移動させれるなんてな。俺もびっくりだ。

 

だが、遠慮はしないぞ。

 

驚いて隙が出来てるよっと。

 

「せらぁぁ!」

 

不意打ち気味に放つ

 

片手剣ソードスキル【バーチカルアーク】

 

一撃目、右手を武器ごと切り落とす。

 

ニ撃目、心臓ごと胴をぶった切った。

 

断末魔の叫びさえ、あげさせない。

 

「「「…………」」」

 

リーダー的存在を倒され呆然とするゴブリン集団に切っ先を向ける。

 

「死にたがりは出てこいよ。でなければ早く去れ」

 

限りなく低い声で言ったのが効いたのか、ひとり残らず逃げて行った。

 

「あはは……」

 

周りのゴブリンの死体を見て、流石に顔が引き攣ったりした。やりすぎたかな☆

 

ふと、銅剣を見ると端から消えかかっている。

 

「君の声を聴かせて……」

 

そっと耳元に銅剣を当てる。

 

――御主人!最後に活躍出来て満足だ!

 

――今まで、共に戦ってくれて

 

――使ってくれてあり……と……

 

「こちらこそ、ありがとう」

 

言い終わると同時に消えた。なるほど、オブジェクトと話す能力か……

神聖語、いや英語を使いこなせることについて眩暈を感じながら帰路についた。

 

――◇◆◇――

 

レザリアに帰るととりあえず村長に報告した。最初は信じられないといった顔をしていたが、ゴブリンの生首を見ると流石に言葉を失った。

 

その日は緊急会議が開かれたらしい。俺は許しが出たため休んでいた。

 

「流石に疲れた……」

 

色々あり過ぎた……俺の人生も、見えない何かに巻き込まれた様な気がする。

 

――コンコン

 

「どうぞ」

 

来訪者は幼馴染みのステラ・レザリアだった。苗字から分かるように、村長の一人娘だ。

 

「ステラ……どうした?」

「リオン!」

「ふぐっ……!?」

 

まさかの抱きつかれた。彼女の髪からサスリアの葉のいい匂いがする。

 

いや、そうじゃなくて。

 

「どうした?」

「……バカ……心配したんだから……」

 

お?おう?

とりあえず感謝の意を込めて頭を撫でておく。

 

「心配させてごめんな。もう大丈夫だから」

「…………」

 

めっちゃ頭を擦り付けてくる。可愛い。

 

だから、そうじゃ、なくって!

 

「今日はどうした?」

「用が無いと来たらダメなの?心配するのも?」

「あー、悪かったよ……」

 

心配されると、悪い気はしないな。

両親にも多大に心配されたが、こいつもそれに劣らずだろう。

 

「もう無茶しないで……」

「あー、そのことなんだけどさ」

 

この流れで言うのはキツいな……

 

「俺、央都行くわ」

「…………は?」

 

そりゃ、そうなりますよね……は、反省はしてるよ?……たぶん……

 

――◇◆◇――

 

その後、どうしても行かないといけないことを必死に説得し、親にも説得し、今は村長宅前だ。

 

バカヤロー疲れるじゃねえか……

 

「村長、失礼します」

「入れ」

 

ガイノウス・レザリア。この村の最高権力者。いや12時間前くらいはこんな言葉知らなかったっす。

 

「央都だと?」

「はい」

 

理由は今回の事件で危機感を感じた……とかにしておく。

 

「ふむ……」

「だめですか?」

 

流石に突拍子すぎたか?

 

「ジェイクと決闘しろ……それで勝てたなら」

「ああ、確かにごちゃごちゃ言いそうだ」

 

苦い顔をして、村長が頷く。

ジェイク・バルバード。ここの村の有力農民であるドルトン・バルバードの息子で確か18。あいつも衛士をやっているため、央都に行くとなると何か言われるかもしれない。なまじ親が権力を持っているため、扱いに困っているのだろう。

 

「明日の正午だ」

「わかりました」

 

そのまま村長宅を後にする。

 

めんどくせえええええ……

 

――◇◆◇――

 

周りに人が集まっている。そりゃそうか、決闘なんてそうそう見れたもんでもない。今年一番の行事かもな。

 

「今より、衛士リオンと衛士ジェイク・バルバードによる決闘を行う!寸止めを厳守、また降参や反則をした時点ですぐ剣を引くこと。この決闘の勝者にはアルガディアの衛兵隊への推薦状を贈る。それでは、始め!」

 

お互いに礼をしたあと剣を構える。

 

「央都に行くのはオレだ!」

「はぁ……」

 

ジェイクは明らかに力が入りすぎている。

 

「うおおっ!」

 

素直な上段からの切り払い。それを掬い上げるように弾く。

 

「なっ!?」

「これは……」

 

明らかに銅剣の手応えが軽い。まるで木の棒みたいだ。

 

「せい、はぁ!」

「……」

 

弾くことに集中する。右、左、ときに地面に叩きつけ、跳ねあげ。10分もすると明らかにジェイクの息が上がっている。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「そろそろ終わりだ」

 

片手剣ソードスキル【スラント】

 

咄嗟に防御した相手の剣の腹に当たり、砕く。

 

「なっ……奥義……だと!?」

終わりだ(チェックメイト)

 

何故か観衆が沸き立っているが、気にせずに礼をして剣を収める。

未だ呆然としているジェイクを横目に、推薦状を受け取る。なんかごめんね(笑)

 

そのまま家に帰って荷造りをする。これからどうしようか……衛士の時の貯金は大切にして……服はこれだけあれば……

 

――ガチャ

 

ん?侵入者?

振り向きざまに手を掴んで捻ろうとして

 

「リオン」

 

ステラだった。あっぶね!?投げるとこだった!

 

「行っちゃうんだ……」

「まぁな。ステラと仲良く出来て楽しかったよ。ありがとう」

 

本心から感謝を述べる。そう、こいつが色々な事を教えてくれた。まだ右も左もわからない頃から。

 

「そう……」

「?ステラ?」

 

あれ?なんで泣いてるの?

なんとなく茶化す雰囲気でもないし……

 

「帰って……くるよね?」

「ん、いつか必ずな」

「じゃあ、待ってるね」

 

抱きついてきたので抱きしめ返す。

温もりが惜しくて、しばらくそうしていた。

 

――◇◆◇――

 

こうして、俺はレザリアを離れた。

それが、俺の冒険の始まり。

 

実はみんなにはひとつだけ隠しごとをした。

 

「よろしくな」

 

今俺が帯びている、新しい相棒。

 

天裂剣

 

長い刀身を持った、白き剣。

 

ゴブリンが去った後に突き刺さっていた、おそらくカヤバからの贈り物。

 

どうやらゴブリンを撃退したことによってobject control authorityことオブジェクト・コントロール権限レベルとsystem control authorityことシステム・コントロール権限レベルが異常なほど上がって60となっていたのだ。天裂剣はclass55objectなので片手で使うには結構ぎりぎりだった。

 

刀身が俺に答えるようにリィィィンと鳴る。

 

あらゆる物には、意志があるのかもしれない。

改めて、この世界の美しさに気づいた。

 

「行こうか、相棒」

 

こうして、俺の長い闘いが始まる。




ごめんねノリで書いちゃった(^p^)キラッ☆

こんな最初から最強主人公も悪くないのではないかな?え?緊張感皆無?そ、そこは見逃してよ……

えーと、宣伝ぽくなって嫌なんですが
僕は他の作品をメインにしています。
この作品は息抜きです。
更新は不定期だと思います。
結構見直しはしたのでこれで面白くなかったら僕の実力不足ですね。
それでもって方だけお付き合いくださったら嬉しいです。

リオンは感情をあまり持たないタイプです。
そのくせ正義感だけはあったり、腹黒かったり、絶望に敏感なところもある変なヤツです。それでも、結構この子を僕は気に入っているので、アドミニストレータ倒して、キリト、ユージオと友好関係を築き、出来たら最終負荷フェーズまで走りきりたいなーと。
実力はキリトと同格かそれ以上です。ただ、意思の力がキリトより弱いので、そこがまだまだ強くなれる伸び白かも?(これ以上はいらない気が)

明日の9:00,21:00に1話ずつ、今回含め合計3話あります。読んで批評感想などありましたらぜひ教えてください。参考にさせていただきます。


長々とありがとうございました!
それではこの辺で!


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街に着いたけどさっそく困る件

初めまして、橘です。

待っていてくれた方ありがとうございます!
(自分で言っといて不安↑)

ソード・アート・オンラインは名作。


アルガディアに着いた!

まさか2日も野宿するとは思わなかったけど……意外とこの世界って広いのな……

まずは宿探し……かな?

 

――◇◆◇――

 

「うへぇ……」

 

見つからないなぁ……サクシード南部剣術大会が近いこともあってか、宿がない……参加するために来たはいいものの、寝泊り出来ないのは痛いぞ……

 

「ねぇ、あなた」

「ふぇ?」

 

広場のベンチで項垂れていたら、凄く綺麗なお姉さんが目の前にいた。ここら辺では珍しい茶色の長い髪を靡かせ、俺を見つめている。

……は?

 

「宿が無いの?」

「あ、はい……」

 

やめて、現実逃避してたのに……冷やかしならどっかいけよおい。

 

「私の部屋に来る?1人には広すぎて……」

「え?いいんですか!?」

「ええ、困った時はお互い様でしょ?」

 

ごめん、お姉さん!さっきの撤回!あんたいい人だ!

え、いや、でも、だめでしょ。男だよ?

 

「こっちよ」

 

勝手に自己完結しやがった……

しょうがないのでついていった。

 

しょうがなくだからな!?

 

――◇◆◇――

 

「狭いかもだけど、ベットは2つあるわ。そっちを使って」

「ありがとうございます」

 

ふへー。ベットだぁ……

久々のふかふか具合に溺れる。

 

「あなた、名前は?どこから来たの?」

「リオン。レザリア」

 

最小限の返事で済ます。失礼かなんて気にしてられないぐらい眠い。

 

「そう。私はのことはメルトって呼んでね」

「ふぁ~い……すぅ……」

 

眠気には勝てないよね。

心地よい眠気に意識を手放した。

 

――◇◆◇――

 

「ん……」

 

ここは……?

あ!

 

隣を見てみるとメルトさんの規則正しい寝息聞こえる。どうやら熟睡しているようだ。

 

「リアルの時計が欲しいな……」

 

情報でしか知らないが、あったら便利だろう。一体今は何時だろう……

外は意外と暗かった。

 

「とりあえず、稽古するか」

 

メルトさんを起こさないようにしながら身支度を整え、外に出た。

 

――◇◆◇――

 

……999、1000ッ!

 

「っ!はぁ〜」

 

木剣での素振りは師匠に教えて貰った時から欠かさずやっている。これをしないと落ち着かないぐらいには。

 

と、後ろからまばらな拍手が贈られた。

「中々やるじゃない」

「メルトさん、おはようございます」

「おはよう」

 

あれ?あの紋章……

 

「メルトさんは衛兵隊だったんですね」

「あぁ、リオンも入るつもりなんでしょう?」

「はい。一応、大会に出るつもりです」

「そう、頑張ってね」

「はい!」

 

メルトさんが急に耳元に顔を近づけてくる。

いい匂いがした。まる。

 

「正直、女性差別が激しいけど……お互い頑張りましょ」

「…………は?」

 

ちょっとまて。

 

「あの……」

「ん?どうかしたの?」

「僕、男なんですけど……」

「………………?」

「いや、だから男ですって」

「……は?」

「だからおと」

「冗談はよしてよ」

「ガチです」

「?」

「あ、本気ってことです」

 

ああ、メルトさんが目を回し始めた……

 

「この顔で、この声で!?」

「え、なんかすいません……」

 

確かに中性的な顔立ちだし、声も高めのテノールだし、髪も男にしては長めだ……だけど男ですから。男ですからぁ!!

 

「私は……男と同じ部屋で……?」

 

まって腰の鉄剣に手を伸ばすのはやめて、目が据わってるから!ね!ね!?

 

「かくなる上は……覚悟!」

「ええええ!?」

 

追いかけっこは1時間続いた。

 

――◇◆◇――

 

「なんかすいません……」

「いや、私も勘違いしていたわ……はぁ……」

 

現在は部屋でお互いに謝罪しいる。

 

「それで……宿なんですけど……」

「ああ……このまま使ってくれていいわよ。こっちも連れ込んだ責任ぐらいあるでしょ?」

「すいません。お言葉に甘えて」

 

ついでに甘えて……教えて貰うことにする。

 

「あの……剣術大会のこの《型》って何ですか?」

「……え?」

 

ん?なんか変なこと言った?昨日手に入れた参加要項に書いてあって気になったんだけど……

 

「その状態で大会に出るつもりだったのかしら?」

「ま、まぁ」

「はぁー……」

 

確かに……よくよく考えると不味いか?

 

「いいわ、ついてきて。教えてあげる」

「メルトさん……あ、その、衛兵隊は?」

「今日は警護の任は無いから大丈夫よ」

「す、すいません」

 

それから大会には型の演武なるものがあることを知り、そしてアルガディア流の型を教えて貰うことになった。

 

迷惑しかかけてない……

 

――◇◆◇――

 

「驚いた……」

 

今、私の目の前で見事なアルガディア流の型を行っている……いや舞っているリオンは、数時間前から教え始めたばかりだ。1度私が手本を見せると彼は「あぁ、あと一回だけお願いします」とだけ言った。とりあえず、言われた通りにもう一度行うと彼は

 

ほぼ再現してみせたのだ。

 

もちろん、詰めは甘い。だが2回見ただけ(・ ・ ・ ・)だ。そこから細かい注意を教えて、現在に至る。

 

「ふぅ……」

 

考え込んでいたらしく、いつの間にかリオンは舞いきっていた。周りから拍手が湧く。それに律儀に会釈すると

 

「どうでした?」

 

と聞いてきた。もちろん

 

「100点をあげるわ。驚いた、上達するのが早すぎないかしら?」

 

としか言えない。もしかしたら……私よりも……

 

「ありがとうございました。知らずに大会、なんてことにならなくて良かったです」

 

彼の底知れない強さを、もっと知りたい。

 

そんな、羨望とも、尊敬ともつかぬ感情を持て余しつつ、私達は宿に戻った。

 

――◇◆◇――

 

結局……寝泊りはさせてもらっている。

あの後、大会の注意事項などを教えて貰い、メルトさんの仕事の手伝いなんかをしながら数日。

 

ついにサクシード南部剣術大会当日だ。

 

相棒に今回は使えないと謝罪する。最近振ってないな……また素振りしてみようか。

 

型はおそらく完璧だ。それに、本戦も権限レベルの差から勝てるだろう。それでも、

 

「手は抜かない……」

 

それは相手への、そしてなにより剣への侮辱だ。

 

密かな闘志を燃やしつつ、少年の戦いは始まる。




どうも橘です。

リオンは長めの銀髪や幼い顔立ちから男の娘に見えたりします。身長は165くらいかな?
天才肌なのでやれば出来ます。やれる状況があればどこまでも強くなれる(最強)
書いてる時も結構楽しいです。流れ思いついたらとりあえず構想無視して書いて、そっから修正してるカンジなので笑
ソード・アート・オンラインは全巻持ってます。そこからの情報が頼りです。

ネーミングセンスには目をつぶってね☆

あとは今日の21:00からの第3話で書き溜めは終わりです。是非お付き合いください笑

それではこの辺で!


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剣術大会は無双の場である。

どうも橘です。初めましての人初めまして!

予約投稿なのでどれくらい待ってくれてる人がいるかわからなくてガクブル笑

え?いなかったら心折れますけどなにか?



「サクシード南部剣術大会を開催いたします!」

 

「「「うおおおーーーー!!!!」」」

 

始まった……か……

ここからだ。

ここから始まるんだ。

 

――◇◆◇――

 

選手は全てで60人。その中から型の演武で16人に絞られる。そこから本戦が勝ち抜きトーナメント式で行われ、優勝者がアルガディア衛兵隊への入隊権を得る。

 

控え室で見ていたが、容貌は強面なメンツが多いが実際は権限レベルは俺より下だろう。

あとは反則に気をつけるだけかな……

何故だろうか。カヤバから情報を貰った時から、公理教会への盲信的服従が無くなった気がする。禁忌目録は守るが、逆に触れなければ何をしてもよい。そのような輩がいないとも限らないのである。今まではそんな奴に会ったこともなかったが、俺は情報として知っている。貴族の悪夢のような横暴を。

 

「54番!前へ!」

 

舞台に上がるとかなりの観客がいた。

このアリーナはコロシアムのような半球型をしており、おそらく1000人近くの収容規模があるはず。年に一度の大行事だ。自然人も集まるのだろう。

 

ひとつ大きく息を吐く。

メルトさんの助言を思い出す。

 

よし、舞おうか。

 

貴賓席、審査員席に礼をし、貸し出された銅剣を抜く。

 

アルガディア流一番の型……

 

――◇◆◇――

 

その演武はまさに舞うように優雅に、そして力強く行われる。細かい注意事項なども含め一挙一動が完璧に調和された舞に、やがて全観客が魅了され始める。

 

終盤になるにつれ、ざわめきがなくなり、まるでリオンのための舞台になっている。

 

そう。そこは彼の世界。

 

 

彼の掌の上……

 

 

――◇◆◇――

 

剣を仕舞う。

やりきった。と思ったらそれまで静かだった観客が爆発したように拍手してきてビックリした。静かなのはいいけど反応が薄いのは怖かった……

 

入れ替わりに入っていく青年が顔を青くしながら登ってくる。

この観客の雰囲気ではやりにくいか。期待満々だもんな。

 

審査員が公平であることを祈るよ。

 

青年に睨まれた。

 

いや、俺を睨まないでよ……

 

――◇◆◇――

 

やはりというべきか、本戦にリオンは選ばれた。恐らく観客にはリオンの演武しか頭にないだろう。

 

彼は光だ。

 

自分の存在を無意識に輝かせ、周りを魅了する。

 

そして彼はからっぽだ。

 

自分から求めることを知らず、傲慢になることも驕り高ぶることもない。

 

それゆえ人は彼に惹きつけられる。

 

そこを、彼のための世界にする。

 

それが、リオンの才能だ。

 

――◇◆◇――

 

三回戦も勝った。

 

ここまで勝ち抜いて来ただけあって相手の動きはなかなかよかったけど、俺の能力がチートすぎて笑える。

まるで銅剣が木の棒だ。軽い軽い。

 

さて、決勝なのだが……

相手が少し変だ。

明らかに能力は平均以下、権限レベルも同様だろう。

ならなぜ決勝まで?

 

確かめねばならないだろう。

 

今までになく気を引き締め、決闘の場に向かう。

 

――◇◆◇――

 

決勝戦なだけあって、観客の熱狂ぶりがすごい。

相手は先ほど考察した通り、剣気、構え、何から何まで弱かった。

………………一体何を?

 

「始めっ!」

 

剣を抜き構えるとその途端

 

「イャアアア!」

「っ!」

 

――ガキッ

 

刃の交わる音が響く。ビックリした……まさかいきなり切りかかってくるとは……

 

だけど……

 

「力比べなら負けないよ?」

 

鍔迫り合いで思いっきり押し込む。

 

だが、

 

「シッ……」

 

踏み込んだ右足の甲を踏み抜かれる。

 

「うっぐ……」

 

審判を見るが素知らぬふりをしている。観客からも足元なんて見えなかったのだろう、不思議そうに眺めている。

 

「お前……審判を抱き込んだな?」

「は?知らないね。足が滑ったんだよ」

 

こいつ……

 

「お前名前は?」

「見てなかったのか?いや、辺境の村からの出身じゃ文字も読めないか!いいよ教えてやる!俺はジン・アルガディアだ!」

「っ!?お前領主の……貴族の血か……」

 

読めるんですけど、と毒づきながら考える。

この世界には法を守るという絶対原則がある。しかし、それと同時に抵触しなければ何をしてもよいと考える輩もいるのだ。

例えば……ジンのように。

貴族はこのような利己的な考えが多い。むろん、全員がそうではないし、下等伯爵家では農民と結婚することもあることから正しい人柄の貴族が大半になってきている。俺はこれを貴族の血の呪いから来るものだと考えた。その血が濃くなればなるほど、やがて人として腐敗していく。

 

「貴様のような凡人が俺に適う訳が無かろう!諦めろ!ふはははは!」

 

こいつ……本来なら侮辱した罪で負けてもおかしくないはずなのだが、審判はやはり無視している。

 

「うるせえ……」

「な、なに?」

「うるせえよ……クズが……」

 

やはり、こんな世界間違ってる。なぜこいつは罰せられないのか?なぜ、人々はこいつに苦しまないといけないのか?なぜ……

 

「貴族とか、金とか、権力とか……俺には関係ない。法で裁けないなら、俺がお前を裁く」

「言ってくれるなぁ!?ならやってみろよ!」

「あぁ、その自尊心……ぶち壊してやる」

 

観客達も流石に焦れてきたのかざわめいている。

 

何の前触れも無く俺は剣を引きながら飛び退った。支えを失ったジンの剣が俺に迫る、が、

 

「せぁ!」

 

体術スキル【弦月】

 

後方に宙返りしながら放たれた蹴りがジンの剣の鍔に当たり、上にはじき飛ばす。

 

まさか蹴りで防がれると思わなかったのか、目が大きく見開かれる。そして細められた。というか、舌打ちしたよなおい……

 

「……アルガディア流秘奥義、《碧飛斬》」

 

おっと、秘奥義と来ましたか。

会場が大きくどよめく。そりゃそうだ。秘奥義なんてめったに使わないことになっている(それも個人の判断ではあるのだが)し、なにより止まれない(・ ・ ・ ・ ・)のだ。

こいつ寸止め無視する気か?

いや、受けれなかった俺の責任ってことか。

 

「ふぅ……」

 

あの構えはソニックリープだな。突進技……なら。

 

大きく剣を引き絞り、前傾姿勢を取る。

 

「イェァァアア!!」

「せぁ!!」

 

2人ともほぼ同時に……いや俺の方が動き出しが少し早い。

 

思いっきり地面を蹴って剣を突き出す。

 

片手剣ソードスキル【レイジスパイク】

 

こっちも突進技で勝負だ。

 

ペールブルーの光に包まれたお互いの剣が交錯する、その時、

 

(ここっ!)

 

――キンッ

 

俺の剣がジンの剣の腹を思いっきり叩いた。

 

2人の突進が終わった、その丁度真ん中に破壊されたジンの剣が突き刺さる。

 

ジンの方を見ると肩を震わせているが、これでもう決着はついただろう。

 

呆然としていた観客がわぁ!!と歓声をあげる。今までにない見事な決着に貴賓席の貴族でさえ、手を叩いている。1人、息子が負けて腹立たしそうな男もいたが。

 

コロシアム全体に礼をすると会場を後にした。柄に手を当てて「ありがとう」と呟きながら。

 

――◇◆◇――

 

結果、リオンは優勝し衛兵隊に入隊することが出来た。彼が帝立修剣学院受験に必要な推薦状を得ることは、この日の戦いを見ていた人々ならわかりすぎるほど明らかだっただろう。

そして、衛兵隊としての天職をこなすうちに人々からの信頼もちゃっかり勝ち取っているリオンだった。

 

実は裏でファンクラブのようなものさえあったのだが、彼は知らないままだ。




どうも橘です。

何回も橘言ってるとくどいかな……

タグでもあらすじでも書いた通り、リオン無双です。はい。このあたりなんて敵無しです。戦闘描写が少ないのはそのせいさ、うん、きっと、たぶん。難しいからしょうがない……
あと、リオンは無意識にモテます。僕の妄想が爆発した結果です。やむをえん!

これでとりあえず溜めてた分は投稿し終わりました。
予約投稿なのでどれくらい読んでくれる人がいるのかドキドキです笑

いつになるかわかりませんがまたお会いしましょう!

それではこの辺で!


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先輩はとらぶるめーかー。ただし強い

お久しぶりです。

こっちの筆が進む進む……



「へ?」

「はぁ……」

 

今目の前にいるゆるふわ系ポンコツ少女は、これから俺がお世話する先輩らしい。

 

どうしてこうなった……

 

――◇◆◇――

 

入隊してから半年後、衛兵隊長から推薦状を貰いアルガディアを去った。その時には安息日にお別れ会なんてものを開いてくれるぐらい皆と仲良くなれた。まさかメルトさんに泣かれるとは思っていなかったけど……

皆と別れを告げて(特にメルトさんあたりはすごくお世話になったなぁ。半年間だが、みっちり仕込まれたのも、メルトさんのおかげだ)2日後、

帝立修剣学院の入試を受けた。型が知らないものだったので少し焦ったが、なんとか見様見真似でやりきった。

その後、試験官との立ち会いは連撃を封印しつつ武器破壊して完封した。え、いや、弱かったんだもん……

 

結果は10位。型をサボったのは流石にバレたらしい。

 

そして、ここから初耳だったのだが、試験の上位12名は上級修剣士の傍付きとなってお世話をするらしい。稽古に付き合ったり、掃除したりなど中々大変そうだし、あちら側から指名されるので怖いものだ。

 

せめてまともな人がいいな、なんて思っていたのが間違いだったのか?俺を指名したのは12位のソフィア・ランゼルス先輩だったのだ。

 

――◇◆◇――

 

「失礼します……」

 

名前と女だってことしかわからないけど……どんな人だろうか?そんな、期待とも不安ともつかぬ気持ちを抱いて入室した俺を迎えたのは、

 

「え!?きゃああああ!?避けてぇぇ!」

 

すっ転んだ先輩が飛ばした(投げた?)分厚い教科書だった。

 

――◇◆◇――

 

なんかこの時点で察していたが、この先輩ドジっ子か!?とりあえず教科書をキャッチしてついでに起こしてやる。

 

「先輩の傍付きに任命されました、リオン初等連士です」

「そ、そそ、ソフィア・ランゼルスです!」

 

それとなく先生から聞いていたけど……実際見ると苦笑いしか出ない……

 

「あ、え、えっと」

「落ち着いてください……」

 

この人教えるとか出来るの?

結構深刻な不安を感じる初邂逅すぎる……

 

――◇◆◇――

 

それから半年。

わかったことは、どうやらソフィア先輩は極度のあがり症なようだ。

実際、型の演武などは鳥肌がたつ程素晴らしいし、状況判断力がずば抜けている。

ただ、緊張してしまう。

 

例えば、観客がわんさかいると本来の5割。それが大事な試合だと3割ほどしか力が出せないのだ。年に4回行われる検定試合がもっとも顕著なものだろう。恐らく、素材はピカイチ。しかし、それを生かしきれていない。

 

それを、引き出す手助けをするのが傍付きの役目なのかもしれないな。

 

――◇◆◇――

 

「先輩……」

 

先ほどもいったが、ソフィア先輩はあがり症だ。なら、気ごころ知れた仲の人に対しては?その答えは……

 

「下着ぐらい自分でまとめてください!これでも異性なんですよ!?」

「えぇ〜いいじゃーん。りっくんのけちー!」

 

ずぼら&天然の最凶コンボだ。

 

三等爵家のランゼルス家の主人は過保護なことで有名だ。そのせいで箱入り娘状態で修剣学院に放り込まれたらしい。そりゃ人に慣れてないわな……

 

だが、馴れた人に対してはまるで猫だ。甘える。それはもう、やばい。何がって理性的に。整合騎士も真っ青な攻めっぷりだ。

現に俺も、りっくんなんてあだ名で呼ばれながら身体をもたれかからせてくる先輩に手を焼いている。あなたは二重人格ですか……?

 

「だからくっつかないでください!」

「えぇーいいじゃーん!」

「だめですっ!」

「なら……」

 

先輩の目がすっと細くなる。不覚にも、悪寒が走る。プレッシャーが変わったな……

 

「立ち会いして、勝ったら30分ぎゅーね」

「わ、わかりました」

 

こうなるともう止められない。そして大概、負ける。

 

どうしてこうなった……

 

空を仰ぎつつ、思わず1ヶ月前を振り返った。

 

――◇◆◇――

 

その日は、修練場で稽古をしていた。普通に型の練習なのだが、

 

「えっと、あの」

「大丈夫です。落ち着いてください」

 

やはりまだまともに会話出来ない。さすがにへこむ。これでも優しくしてるつもりなんだけど……

と、そこで

 

「やれやれ!見てられないなぁ!」

「ほんとになぁ!」

 

先輩がビクッと肩を震わせる。また始まったよ……

 

どうやら先輩が3爵家跡取りなのに嫉妬して、同じ貴族が様々な嫌がらせをしてくるようなのだ。今回も同じ場所で稽古していた上級修剣士の人だ。まだなにやらグチグチ言っている。

さすがに先輩に帰ろうと提案しようとしたが、ちょうどそこで俺に声がかかる。

 

「傍付きの君!どうだね?我々と稽古しては」

「いえ、僕は」

「なぁに!遠慮することはない。君も苦労しているだろうからねぇ」

「…………」

 

そして耳元に寄せて小声で

 

「君が望むなら他の上級修剣士の傍付きになるように教官に申請してあげよう」

 

その瞬間、ついに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キレた。それはもう大人気なく。しかも俺が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい速度で下段から振り上げられた木剣が、その貴族の横顔を掠めて振り抜かれた。

 

「なっ、なっ……」

 

口をぱくぱくさせている彼に会釈する。

 

「すいません、手が滑りました」

 

白々しいにもほどがある謝罪だが、睨みつけて黙らせる。こいつにもいい加減分からせてやる。

 

「僕はソフィア先輩がいいんです。他の人に、なんてふざけないでくださいね?」

 

そう、いくら気まずくても、ソフィア先輩はいい人だ。少なくとも、目の前のやつよりは。その思いを込めつつ口元だけ笑ってあげると、

 

「ひぃっ!」

 

あ、逃げた。

大したことないな、と拍子抜けしていると

 

「リオンくん……ありがとう……」

 

何故か申し訳なさそうに先輩から感謝された。慌ててフォローする。

 

「先輩は悪くないです!そんな、こっちこそ面倒なことにしちゃって……」

「ううん、それより、ほんとに変わってもらった方がいいなら」「先輩」

 

それだけは違う。

 

「僕は先輩、が、いいんです。先輩がいい人なのはわかるし、意外と楽しいですよ。傍付きしてると」

「リオンくん……ありがとう!」

 

今度は満面の笑みだ。思わずこっちまで笑顔になる。

 

「そうそう、笑ってください。そっちの方が可愛いです」

「かわいっ!?もう!りっくんったら!」

「?りっくん?」

「そ!リオンくんだからりっくん!」

「は、はぁ……?」

 

どうやら壁は取り除けたかな?

 

そんな風に安堵していた時期もありました。

 

――◇◆◇――

 

冷や汗が頬を伝う。今目の前にいるのは、先輩の姿をした別人だ。

 

なによりも効率のいい攻撃、防御を瞬時に判断し繰り出してくるその手腕は俺を追い詰める。

 

「くっ……」

 

ソードスキルを……と構えようとした時には剣を弾かれる。ってか、やばっ!対応早すぎか!

 

スルッと滑らかに、つまり無駄のない軌道で首筋に剣が当てられる。

 

「はい、私の勝ちね」

「ッ!!」

 

耳元で囁かれた声は、いつもの先輩と比べたらあまりにも艶っぽくて、背筋がゾクゾクするような感覚に襲われる。まるでそれは狩る側に狙われたような、舌なめずりされているような感覚。

 

「やったぁ!また私の勝ち〜!」

「あはは……強すぎですよ」

 

元の先輩に戻ってほっとする。剣を持った時の先輩は洒落にならないぐらい強い。独自で編み出した攻防自在の戦法の対処法をまだ俺は見つけれていない。

 

「はいはーい!部屋戻るよ!」

「わかったから落ち着いてください……」

 

これから始まるのは……

ただひたすら恥ずかしい時間だ。

 

――◇◆◇――

 

「んふふ〜♪」

「御機嫌ですね……」

 

ん?今の状況か?

 

先輩のベットの上で先輩を抱きしめている。

 

まってくれ違うんだ。そんないかがわしいものではないんだ。

正確には俺があぐらをかいてそこに先輩が座りこんでいる。そして先輩を後ろから抱きしめている。

立ち会いに負けるといつもこの罰ゲームだ。いや、あんま罰ゲームになってないけど。

それに……

 

「あー!りっくんまた敬語使ったー!」

「あ!ごめんごめん、ソフィア」

「ふふ〜ん♪」

 

何故か敬語を禁止され名前を呼び捨てしなければならない。なぜだ……

 

「あったかいね……」

「ああ……」

 

上目遣いで見上げてくるソフィア。ドキッとしながら見つめ返すと、そのまま押し倒される。ん?押し倒される?

 

「ちょ!?おま、なにやってんの!?」

「暴れないで!いい匂い……」

「まてまてまて、汗かいてるから!な!?」

 

やばい。そろそろ理性がもたない。

 

「おい、やめろって。もうそろそろ我慢出来ないぞ?」

「りっくんなら……いいよ?」

「ッッ!?」

 

あれだ、後ろに雷落ちてるオノマトペが表示されそうなレベルの衝撃。理性が剥がれ落ちていく。

 

「ソフィ……ア……」

「りっくん……」

 

2人の距離が近づいて……いやまてだめだめだめ……

 

「だめだ!ったく、誘惑しないでくれるか!?」

「ええええ!?りっくんのけち!ヘタレ!」

「ヘタレは違うだろ!……違うよね?え?え?」

 

それで怒られるとかちょっと理不尽じゃないかな?

 

「はぁ……何回目なの……?もぅ……」

「え、なんかごめん……」

 

ヘタレでしょうか?いいえ、誰でも。……だと信じたい。

 

まぁ、こんなんが先輩との日常で、

 

とても楽しんでる。

 

ソフィア先輩と会えてよかった。

 

これって次回何かあるフラグ……!?




どうも橘です。

アリシゼーション編のSSってあんま見たことないのは気のせいでしょうか?
意外と難しい訳でもなく楽しく執筆しています。評価はわかりませんが……
この作品では容姿については主に言及しません。して欲しい場合は感想やメッセージなどで言ってくれれば追加します。(要するに面倒なだけ←)

戦闘描写がないっ!

平和だ……平和すぎるよ……アンダーワールド……
整合騎士が出てきたらようやくユニークスキルの御開帳です!僕も楽しみ……((っ•ω•⊂))ウズウズ
皆さんもお楽しみ頂けたら幸いです。

評価、感想など気が向いたらください。橘のやる気が上がります。

それではこの辺で!


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学院生活=ハチャメチャ


のんびり更新

お久しぶりだぜ

りっくんはキリト並のモテ度


「そこまで!勝者、ソフィア・ランゼルス!」

「やったぁ!りっくん!やったよ!」

 

すげえ……あの先輩やりやがった。

 

最下位のソフィア先輩が、ついに、最後の検定試合で、

 

 

主席にまで登り詰めた。

 

 

そりゃ、素材はピカイチだったけど……元主席も唖然としてるし。どうやら恥ずかしがり屋の克服に少しはお役に立てたのか?

 

こりゃ凄い人に仕えることが出来たなとしみじみ思う。

 

こちらに来ようとしてコケたソフィア先輩を助け起こしたら抱き着かれたり、それでなんか物凄い視線が刺さったりしたけど、うん……

 

彼女の勝利は、俺にとって最っ高のプレゼントだ。

 

――◇◆◇――

 

その次の日、つまり先輩方が卒業してしまう日。俺は南セントリア修剣学院の校門で先輩を待っている。ソフィア先輩には本当にお世話になった。それに、仲良くしてくれて嬉しかった。

卒業証書を手にして、目に涙を溜めながらこちらに歩んでくる先輩は綺麗だ。

 

「りっくん……その、今まで、」

「ソフィア、綺麗だよ」

「……ありがとう」

 

もう、彼女はここを卒業した。つまり、もう、先輩と傍付きの関係ではいられない。

 

「卒業おめでとう」

「もう!なんでリオンの方が大人びてるの?」

 

こうやって笑いあえるのも、おそらく最後。また出会える確率は極々低い。この1年、色んなことがあった。楽しいこと、悲しいこと、怒れること、辛いこと、嬉しいこと。先輩のおかげで随分色がついた。華やかになった。

 

「私ね、君に言いたいことがあったんだ。でも、やめた。また出逢えて、1人の人間って平等な立場になれたら話すよ」

「そっか……ならはやく俺も貴族にならないとな」

「ほんとだよ!頑張ってね!」

 

この世界の封建制度はおかしい。だから、こんな世界を直すために、君が普通に幸せに生きれるようにするため、俺はここにいるんだよ。ソフィア。

 

「俺もソフィアに言いたいことがある」

「なら、また会おうね!」

「ん、それまでやらかすなよ?ただでさえ危なっかしいんだから」

「もー、なにそ……れ……」

 

彼女の頬に水滴が伝う。

 

「絶対……だから……ね?」

「ああ、約束する。その時は、全部教える」

「何を?」

 

元ソフィア・ランゼルス上級修剣士の傍付きだったなら、せめてもの意地として、

 

彼女を笑わせよう。

 

「俺の全てを」

 

 

 

 

 

 

満開の花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

――◇◆◇――

 

たかが一時期の旅だと思っていた。頼まれたからなんとなく、と。でも違うんだ。ここに生きている人々はあたりまえだけど人間で、だからこそ悩んだり、笑ったりするんだ。でも、彼らは気づいていない。自分たちが縛られた存在だと。なら、その人たちを解放してあげたい。

 

初めて、自分の意志が出来た。

 

それだけでもこの旅に意味はあったし、それ以上にこの世界結構腐敗してるからなんとかしたいし……(主に貴族)

 

「茅場……ありがとう」

 

ありがとう、か。似合わないなぁ……

 

この世界を解放したい、か。似合わないなぁ……

 

でも、本音だ。

 

 

 

 

それじゃ、頑張りますか。

 

 

 

 

――◇◆◇――

 

そして春。

高等練士への昇格試験。試験官が入学試験の時の人だった。俺にだけいきなり本気で切りかかってきた(大人げないなぁ、おい)けど、完封した☆

その後演舞、神聖術の試験でも危なげなく通過し、

 

主席上級修剣士となった。

 

いや、そこは自惚れる訳じゃないけど、わかってた。茅場チートがあるしなぁ……そこじゃない。俺が最も驚いたのが、

 

次席が女子だった。

 

え?それがどうしたって?

 

上級修剣士は専用の寮がある。そこに順位の通りに部屋割りされる。(主席が三階の301号室、次席は302……306号室まであり、二階にも六部屋となっている。一階は専用食堂、修練場、大浴場など。上級修剣士マジパネェ)しかし、個別に別れるのは寝室だけなのだ。基本的な生活スペースは2人で共有する。廊下から中に入ると大きなリビングがあり(そこに備え付けのシャワーやらキッチンやらある。上級修剣士マジパネェ)、奥に2つドアがあってそこから各寝室へ行く感じ。つまり……

 

同級生の女子と半同棲だとよ。

 

――◇◆◇――

 

「いい!?絶対寝室は覗かないこと!!じゃないとぶっ殺すわよ!?」

 

あまりの剣幕にただコクコク頷くことしか出来ない。まてまて、ぶっ殺すとか懲罰権執行対象だろ……

 

どうやらこの気の強そう、いや、超強いお嬢さんが同室の方らしいですよ?

 

――◇◆◇――

 

彼女はラウラ・レオパルド。レオパルド家は四等爵位、つまりソフィア先輩よりは爵位が下なのだが……

 

「ちょっと、何見てんのよ!」

 

とっつきにくいことこの上ない。もっと仲良くしようよ……どうやら平民に負けたのが悔しいらしい。

 

ここら辺では珍しい青い髪はとても綺麗なんだけどなぁ……性格キツいんだよなぁ……

 

「何!?まさか変なこと考えてないでしょうね!」

「いや髪が綺麗だなぁって思って」

「ふふん♪そうでしょう?って、じゃなくて!ちがああああああう!!!」

「は?」

 

忙しい人だなぁ。

 

「さっきから何!?そんなに勝ったのが嬉しいの!?」

「いや、普通に仲良くしようとしただけなんだけど」

「ぬっるううううい!!」

「!?」

「いい!?あなたと私は敵!いつか互いが倒れるまで戦う運命なの!そんな馴れ合いなんて意味無いわ!」

「えー仲良くしよーよー」

「聞いてたのあなた!?だから……」

「だめ、かな?」(ウルウル)

「うっ……(なにこの可愛い生物!?これじゃ私が悪者みたいじゃない!)」

「だめー?」(ウルウル)

「べ、別にいいわよ?(私のばかああああ)」

 

 

 

チョロい(ゲス顔)

 

 

 

――◇◆◇――

 

それともうひとつ、大きな変化。

 

傍付きが来た。

 

うん。まじか。忘れてたよ。誰を傍付きにするか決める時も「残った人でお願いします」って言ってさっさと帰ったし。しかも、

 

俺の傍付き、ニ等爵位の貴族だってよ。

 

――◇◆◇――

 

「ミーア・ラクス初等練士です。一年間よろしくお願いします」

「あ、えっと、よろしく」

 

まじかあああ!と心の中で絶叫する。二等爵位ってだけでも相当なのにしかも女子かよ!?

 

「あー、俺はリオンだ……です?」

「存じております」

「あ、はい」

 

いきなり彼女が膝をつく。

 

「は!?」

「私はリオン様をお慕い申し上げております」

「…………はい?」

「一目その勇姿を拝見したその日から、私はリオン様を追いかけて参りました」

「え、え、いつ?」

「とある日、それはリオン様が鍛錬されていた時です。たまたま見学しに来ていた私はリオン様の立ち会いを見かけました」

 

――◇◆◇――

 

その頃の私は親からの英才教育に窮屈さを感じておりました。もちろん、家庭教師は優秀でしたし、剣の腕は上達していました。でも、私には何も無かったのです。与えられた課題をこなしていくだけの生活に私はうんざりしていました。ここに見学しに来たのもそこからです。親の支配から逃れることが出来たなら、私にも何か見つけることが出来るのではと。しかし、当たり前ですが何も感じませんでした。すっかり失望して帰ろうとすると生徒達がある方向に集まっていきます。ほんの少しの好奇心から見に行くと、そこには

 

教官を圧倒しているリオン様がいました。

 

「あぁ、そーいやよく喧嘩吹っ掛けられてボコボコにしてたな……」

 

まさしく圧倒でしたね。その戦いぶりに、誇りを感じたのです。

 

「誇り?」

 

はい。私には意志がありませんでした。しかし、リオン様は平民出、あ、お気に障るようでしたら申し訳ございません。

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

平民出身なのにも関わらず堂々としていました。自信に満ち溢れていました。

 

私もあんな風になりたい。そう思ったのです。

 

理由なんて後からいくらでもつけれました。でもやはり一目惚れなのでしょうね。とりあえずリオン様を追いかけることを決め、この学院に入学しました。

 

まさかリオン様の傍付きになれるとは想像していませんでしたが、これも何かの縁、いや運命!

 

「お、おーい?熱くなりすぎだ……」

 

と、言う訳で

 

「おぉ、テンションの落差が……」

 

これからよろしくお願いいたします。

 

「不安だ……」

 

――◇◆◇――

 

なんだか騒がしくなりそうなメンツだ……

 

でも、

 

絶対に楽しくなりそうだ。

 

残り一年間

 

どんな事が待っているのだろうか。

 

 

 

 

だがそんな期待は

 

叶えられることは、無かった。




どうも、橘です。

たまには息抜きでこっちを書いたら


たのすぃー♪


元々SAO大好き人間なので執筆が早い早い。
キリトを上手く表現出来るかが不安なんですけどね……

それではこの辺で!


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春は別れの季節?いえいえ、始まる季節

どうも、評価が上がったり、感想がきて

やる気が有り余って書き上げました。

単純で悪いか!?



上級修剣士となってからの生活は目が回るようだった。主にラクスにストーカーされたり、ラウラに八つ当たりされたり(俺の周りろくな人いねぇ……)していた。うん、2人とも美少女だからいいんですけどね、はい。

 

 

胃が痛い……

 

 

――◇◆◇――

 

私の隣室のリオンはちょっと、いやかなりおかしなやつだ。

 

「せいぁあああ!!!」

 

――バキッ

 

修練用の丸太を叩き折ったり(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「ハァハァ……もっと、もっとください!」

「おま、打たれにくるって正気か!?」

 

二等爵家の傍付きに木剣の一撃を求められたり、

 

「ふぅ〜……終わった……」

「何が?」

「ん?神聖術の教科書の内容」

「へぇ、どこまで?」

「全部」

「へぇ、ぜん……全部!?馬鹿にしてるの!?」

「えええ!?ホントだって!」

 

馬鹿みたいに飲み込みが早かったり、

 

「まだまだだねー」

「くっ……」

 

 

 

 

 

いまだに勝てなかったり。

 

 

 

 

 

彼ほどの剣士がいるなんて思いもよらなかった。まるで勝てるイメージが湧かない。

お父様のような力強さはない。お母様のような鋭さもない。

 

なのに勝てない。

 

彼の姿からは勝とうとする気が感じられない。でも、気づいた時には、ある時は後ろ、ある時は横から、剣閃が飛んでくる。でも、それだけなら負けない。それだけではないから負けるのだ。

 

あんな滑らかに斬撃を繰り返す人を彼以外に知らない。

 

まるで始めからそのつもりだったかのように、一切の無理矢理を感じさせないで、無理矢理な方向から剣が迫る。いつになったら彼に追いつけるのか。

 

私は焦っていたのかもしれない。

 

だが、そんな時、それこそ毎日のように彼に立ち会いを挑んでいた時、

 

彼が初めて怒った。

 

普段、私のどんな罵倒にも眉ひとつ動かず飄々している彼が、だ。

 

「何を焦っているんだ?毎日のように向かってくるくせに、何一つ成長していない。ふざけるな!もっと、もっと……」

 

彼が呟いた言葉を私は忘れられないのだ。

 

「自分を大事にしてくれ……」

 

頭が真っ白になった。次に沸沸と怒りが沸き起こる。お前に何がわかる、そう叫びたかった。けど……

 

「お願いだ……」

 

彼は、泣いていた。何故かは知らない。けれど、

 

あの彼が怒って、泣いたのだ。

 

私は戸惑った。彼は絶対王者だと、完璧な、天才だと思って、いや思い込もうとしていたから。

 

ほんとは知っていた。

 

彼がどれだけ日々の鍛錬を欠かさなかったか。独学で神聖術を学ぼうとどれほど努力していたか。

 

なら、私は?

 

自分の非を認めるのが怖かった。私が完璧で、それでもなお負ける相手だと、言い訳出来なくなるから。闇雲に足掻いているだけだった。

 

けど、彼は私を叱ってくれた。

 

お父様はいつも褒めてくれた。さすが私の娘だと。叱ってくれたのは今は亡き祖母のみだった。

 

「……あれ?」

 

祖母は私の誇りだ。いつだって正しくて誇り高くて……なのに……

 

「あいつとお婆ちゃんが?……まさか、そんなわけ」

 

被って見えるなんて……そんなこと……

ないんだから……

 

――◇◆◇――

 

リオン様はやはり素敵だ。

 

他の上級修剣士を寄せ付けない圧倒的な実力。それでいて謙虚な姿勢は崩れない。

 

学業も優秀、欠点を探すのが難しいほどだ。

 

「ふぅぅう……」

 

今日もリオン様の布団の匂いを嗅ぐことから私の傍付きの仕事が始まる。見つかると怒られるので要注意だ。もちろん、証拠隠滅に余念は無い。

 

部屋の掃除といってもほとんど片付いているのでやることがない。よって物を盗る……コホン、借りることも出来ない(無許可だが)のだ。

 

その後は修練場で稽古をつけてもらう。ここでも学ぶことがたくさんある。

 

「リオン様!手は抜かないでください!」

「そしたらわざと受けるからだろうがああああ!!」

 

まったく……つれないお方だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、今日も傍付きの仕事が終わってしまう。楽しい時間は本当に早いものだ。

 

「それでは失礼します」

「ん、いつもありがとう」

「〜ッッ」

 

ほんと、あの笑顔は反則だ。あの笑顔でいじめられた(ry

 

――◇◆◇――

 

そんなある日、その日は久しぶりの大雨だった。

 

「降りますね……」

「そうだね……」

 

いつものようにラクスと稽古を終え、自室に戻ったところだ。

 

「クンクン……」

「……こら」

「あぅ」

 

なんで真っ先に布団ダイブしますかね……俺の楽しみを……匂い嗅ぐなよ。

あと、その、ね、

 

「なんですか?スカートの中が気になりますか?」

「ッッ!!?」

 

こーゆーとこだけ鋭いな……てか、お前がダイブするから……

 

「ふふふ、今すぐ全てを差し上げてもよろしいのですよ?」

「ほんと……お前ってやつは……」

「冗談です、雰囲気ぐらいは作ってくださいね?」

「そこが冗談なのな……」

 

ったく、俺じゃなかったら襲ってるな。黙ってりゃ「可愛いし」

 

「え、あ、う、あの、そのようなことを言われると、その……」

「え、あ?……うわあああああ!?」

 

声に出てたああああ!?

 

「きゃーだ・い・た・ん♡」

「棒読みで言うなこら。あと顔赤いよ」

「ッ!!」

「はいはい、睨まない睨まない」

 

睨んだ顔も可愛いけどね。お互いに苦笑しあう。

 

「それでは失礼します」

「ん、おつかれ」

 

軽く手を振ると律儀に会釈して部屋を出ていく。うーん、やっぱり変だけどいい子だなぁ。

 

「よく降るわね……」

「あれ、デジャヴ」

「でじゃ?」

「気にしないでくれ……」

 

シャワーを浴びに寝室を出るとラウラが先にコヒル茶を飲んでいた。最近態度が柔らかくなりましたね。

 

「あ?」

「ひぃっ!」

 

ば、バレた?まさかね……

 

――ゴロゴロ……

 

「きゃ!!」

「うぉ、落ちたかな?……ん?きゃ?」

 

あれー?ラウラってあんな声出せるの?てか……

 

「雷嫌いか?」

「うっさいわね!悪い!?」

 

――ピシャッ!!

 

「きゃあああ!!?」

「うお!?」

 

ラウラが飛び付いてきた!なんだここで俺の記憶を抹消しようというのか!?

 

「…………」

「…………」

 

ところがラウラはそのまま離れない。もちろん危害も加えてこない。

 

「……どうした?」

「怖いから……傍にいて欲しいの……」

 

くっ、なんだこいつ、別人かよ。しおらしくなって潤んだ瞳で上目遣いとかどちらさまですか?

 

「わかったよ……」

「あ……」

 

優しく頭を撫でてみる。彼女が安心するように、出来る限り優しく。

 

「嫌か?」

「別に……むしろ好きかも」

 

こんな素直な人、ぼく、知らない。気持ち良さそうに目を細める様子はまるで猫だ。

 

「すぅ……」

「え……」

 

寝た。寝やがった。

 

「ったく、風邪ひくぞ?」

 

はぁ、無防備だなぁ……

 

彼女のベッドに寝かせてそのまま自分も隣に横になる。人肌って暖かいなぁ……

 

「おやすみ……」

 

悪いとは思ったけど、睡魔に勝てず意識が遠のく。怖いって言ってたし、ラウラのためだ(大嘘)

 

ひときわ大きな雷が落ちた時、何か予感めいたものを感じた。

 

 

――◇◆◇――

 

「やぁ、久しぶりだね、リオン君」

 

茅場か?久しぶりだな。

 

「今日はお願い2つ目だ」

 

今度はなんだ?一応セントラル・カセドラルは目指してるんだが……

 

「それがだな……キリト君を覚えているかい?」

 

あぁ、なんか最後の方言ってたな。

 

「実は殺人罪で捕まってね」

 

へぇ、度胸あるなぁ。

 

「驚かないのかい?」

 

俺もよくやりたくなったからな。

 

「そ、そうか。という訳でキリト君を助けてもらいたい」

 

どこにいる?

 

「明日にはセントラル・カセドラルの中だ」

 

わかった。不法侵入する。

 

「…………決断が早いな」

 

……だってそっちのほうが楽しそうだから……

 

「……君も既に普通をやめたのかい?」

 

え?

 

「何でもない。とにかく頼むよ」

 

わかった。まかせ……ろ?

 

「なぜ疑問形で終わるんだい?」

 

意識が途切れた。

 

――◇◆◇――

 

その日からリオン主席上級修剣士は姿を消した。同室の者や傍付きが見つけたメモによると、

 

『ちょっと出掛けます。いつまでかかるかわからないけど、席を確保してくれてるとありがたいです。ラクス、ちゃんと掃除しといてくれよ?あと戻ったらおかえりって言って欲しい。ラウラ、俺以外に負けるな。あともうちょい強くなって楽しませてくれ。またいつか リオン』

 

とまぁなんとも気楽な文章が並べてあった。リオンの席はラクスの強権発動により12位として残され、部屋の掃除もきちんとされていたという。

 

2人は信じている。いつかと言ったからには、必ず彼は帰ってくると。

 

だって、彼は、最強の剣士だから。




どうも橘です。

バーが黄色くなった!初めてだ!

とまぁレベルの低い喜びを全力で味わっております。読んで頂いている皆様に感謝を……

次話から戦闘シーンが入ります。ユニークスキルが無双します。りおんむそうします。

まぁ、戦闘技術の工夫なんて思いつかないのでゴリ押し感が否めないですが……

が、頑張るもん!

それではこの辺で!


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最強の助っ人、現る

モチベーションが……

高い(((o(*゚ω゚*)o)))

お気に入り50件ありがとうございます!



さてと……どうするかな……

 

茅場から連絡を受けた翌日の早朝、学院を出発した。正直、学院規則なんて破りまくっているけど、籍が残っていたら嬉しいな。また、あの2人と学院で学びたい。

 

セントラル・カセドラルは巨大な白い塔だ。なんでも100階まであるとかないとか……周りを壁が囲んでおり、その中には例え帝国の王でも入ることが出来ない。実質、寝食をしているのは整合騎士とアドミニストレータなど、極小数だけではないだろうか?

 

「こりゃ高いな……」

 

今は壁の周りを探索している。うん、歴史の先生が聞いたら卒倒するな。

どうやら壁は高さ15メルほどらしい。となると……

 

「登るのは無理……か?」

 

実はここに来るまでに(人目を避けながらだったため)1日費やしているので、これ以上もたもたするのは避けたい。

 

「うぉっ!?これ巨人が使うのかよ……」

 

そのまま壁の周りを廻ると、恐らく正門を見つけた。うん、見つけたけど、さ……デカすぎる……10メルの扉って絶対不必要だろ……とりあえず押してみるか。

 

「せーのっ!」

 

――ギギ、ギ……

 

お!?開いた!?防犯意識低いな……

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

こんなことするの俺くらいでしたね、はい。

 

――◇◆◇――

 

気を取り直して中を覗く。そこは植物園のような場所だった。柵で仕切ってありどうやら迷路のような地形になっているらしい。

 

「骨の折れることを……」

 

探索するのはめんどくさいなぁと思っていると、

 

 

 

 

 

 

「こっちじゃ!」

「誰だっ!」

 

突如声が聞こえ、咄嗟に剣の柄に手を添え周りを見渡す、

 

「はようせい!」

「……は?」

 

なんと今まで柵だったところに小さな扉が出現していた。声はどうやらそこから聞こえてくるらしい。可憐な声だが、どこか圧倒的叡智を感じさせる不思議な声だ。

罠か?と疑っていると、

 

「はやくせんかっっ!!」

「は、はい!」

 

怒鳴りつけられたので反射的に扉を潜った。

 

――◇◆◇――

 

中は外と全く違って、例えるなら地下道のようだった。木張りの廊下に松明の明かりが揺れる。

 

「ここ……は?」

「探知された。このバックドアはもう使えん」

 

声の発生源は意外と低い場所にあった。目線を下げると、

 

「なんじゃ、そんな間抜けな顔をして」

「口調と容姿が合ってないからしょうがないと思います……」

 

そこにいたのは見た目10代前半の少女だった。どうやら彼女がここに俺を呼び込んだ張本人らしい。口調はミスマッチを極めているが……

 

「ほれほれ、さっさと出んか」

「おい、こら、押すなよ。えっと……おばちゃん?」

「……馬鹿にしとるのか?」

「すいませんでした」(迫真)

 

何この幼女、怖い。底知れない何かがあるな。イジるのはほどほどにしなきゃ……

とりあえず、促されるままに大広間のような場所に出る。見ると同じような扉がいくつもあるようだ。なるほど、これで色々な場所にひとっ飛び出来る訳か。

 

「ほい」

 

少女の掛け声でガタンゴトンと壁がせり出し扉を隠し、元々なにも無かったかのように壁になった。からくり屋敷みたい……

 

「へぇ……」

「ほぅ、驚かぬのか?」

「普通の人とはちょっと違うので」

「……変わったやつじゃ」

 

彼女は苦笑すると歩き出した。

この出会いがまたひとつ、歯車を動かす。

 

――◇◆◇――

 

大広間の奥には大図書館があった。

 

見渡す限りの本本本。

 

「ようこそ、わしはカーディナル。もと調停者であり、今はこの図書館の唯一の司書じゃ」

「リオンです。あの……」

 

彼女は恐らく……

 

「あちら側に近い人ですか?」

「……」

 

彼女の目が大きく見開かれ、大きくため息をついた。

 

「ただものではないとわかってはいたものの……ここまでとはな」

「セントラル・カセドラルに入ろうとするなんて俺ぐらいですしね」

「なぜおぬしは現実(リアル)について知っておる?」

「ある人に教えてもらったので」

「……」

 

しばらく考え込んでいるのか瞑目していたが、突然、

 

「む、キリトのやつめ、ようやく来たか」

 

その言葉にどれだけ驚いたことか。まさかあちらから会いに来るなんて。

 

「すまんな、新たなる客人を迎えに行くゆえ、適当なところでくつろいでおれ」

「あぁ……」

 

そのまま先程の扉に消えていくカーディナルを見つめながら、キリトについて考えて、いや、茅場から受け取った情報を思い出していた。

 

――◇◆◇――

 

デスゲームSAOでの英雄。黒の剣士。その驚くべき実力は茅場でさえ驚かせた。

 

俺が驚いたのは、彼がとても弱かったことだ。

 

剣の実力ではない。心が、だ。

 

でも彼にも仲間がいた。心を許したパートナーがいた。その人達に支えられて、彼はSAOをクリアした。

 

どんな人なんだろうか。少なくとも

 

1度は剣を交えてみたい。

 

そうしたら、何か、

 

見つけることが出来るだろうか?

 

――◇◆◇――

 

奥からやって来たキリトは初め怪訝な顔をしてこちらを見た。明らかに警戒されている……

 

「この人は?」

「リオンです。はじめまして、なのかな?キリト」

「な、なんで俺のことを……」

「さっきわしが言ったのを聞いたか?」

「いえ、もっと深く知っています。あのデスゲームの頃から」

「ッ!!」

 

キリトの顔が真っ青になる。

 

「君は……一体何者なんだ?」

「話すと長くなりますけど……いいですか?」

「ああ、構わない。カーディナルもいいよな?」

「ふむ、確かに興味深い話ではあるな」

「それじゃ、拙い話ですがお聞きください、あれはちょうど二年ほど前のことです……」

 

――◇◆◇――

 

おおかたのことを話し終わると2人とも呆れていた。

 

「お人好しじゃな。それも、馬鹿がつくほどの」

「俺も同意見だ」

「え、酷いなぁ……」

 

少なくとも変なことはそんなにしてない……はず。

 

「何らかの形で茅場が右眼の封印を解いたみたいじゃな」

「ん?なんだ?その右眼の封印って」

「急ぐでないわアホゥ。順を追って説明するに決まっておる」

「僕も聞いても?」

「構わん、が、相当な覚悟がいるぞ?」

「わかっています。知りたいんです、真実を」

「よし、ならば話そう。わしが知っている全てを……」

 

――◇◆◇――

 

茅場から聞いていたものの、この世界の歪さを再認識して途方も無い気持ちになる。1人の女性に管理された、平穏な世界。でも、それが本当に幸せなのだろうか?

どうやら本当に右眼の封印は解かれていて、禁忌目録違反もすることが出来た(ティーカップをテーブルに置くことがそんなに悪いことには思えないが……)。うーん、ほんとに人間辞めちゃってるなぁ……

カーディナルの話によると、最終負荷実験なるダークテリトリーからの侵略が迫っているらしい。確かに、俺が出会ったゴブリンもその偵察なんだと思う。彼女はそんな地獄を作り出す前にこの世界を消そうというのだ。また、現実世界の人間であるキリトに10人ほどのフラクトライトをエスケープして渡すことも可能だと言う。彼女の選択は間違っていないと思う。多数をとって全滅するよりは数人を次へ繋げた方がいいのかもしれない。だけど……納得出来ない自分もいて……

 

「それで、結論は出たか?わしの提案に乗るか、それとも蹴るか」

「……俺はアンタの提案に乗るよ。けど、俺は足掻くのをやめない。もっといい選択肢を考え続ける」

「ふん、好きにせい。いづれわかる時が来る。諦めなければならぬ時が来ることを」

 

カーディナルの顔に寂しそうな影がさしたのは気のせいだろうか。

 

「おぬしはどうする?」

「僕……は……」

 

俺がしたいことをすればいいんだ。誰かが、いや、今まで支えてくれた人達の声がする。なら、

 

「キリトと同じ……ただ、俺は闘う。闇の軍勢と」

「……勝ち目が無いとわかっていても?」

「その時は、この世界を消してくれ。最後まで諦めたくないんだ」

「おぬしも馬鹿じゃのぅ……2人とも、大馬鹿者じゃ」

 

そう呟くカーディナルは優しいお母さんみたいだった。

 

――◇◆◇――

 

「き、キリト?この人は誰?」

 

ユージオ。俺とは違い、自らの力で封印を破った、キリトの親友。なーるほど、体は細いが筋肉が程よくついている。意思も強そうだ。

 

「こいつはリオン。協力者だ」

「そ、そうなんだ」

 

目に見えて肩の力を抜いた。警戒を解いた野生動物みたい……なんだこの子、可愛い系極めてるのか?草食系男子なのか?

 

「よろしく」

「こちらこそ」

 

これでこちら側(革命側とでもしようか)のメンツが揃ったわけだ。

 

少ないっすね……

 

――◇◆◇――

 

その後軽い問答があり、《武装完全支配術》の会得へと踏み出した。整合騎士が操る必殺技をこちらも覚えようってわけだ。

 

「よし。それではまず、卓上にそなたらの愛剣が横たわるさまを強く思い描くのじゃ。わしがよいと言うまでやめてはならんぞ」

「……解った」

「やってみます」

「…………やんなくてもいいですか?」

 

3人にポカンと見つめられる。いやだってさ……

目を閉じ、剣の記憶に潜り込む。いや、

 

剣の声を聴く(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

目を開けると腰とは別にもう1本の天裂剣が目の前に浮いている。あくまでもイメージなのだが……

 

ふと、3人を見ると開いた口が塞がらないといって風情でこちらを見てくる。いや、照れるなぁ。

 

「おぬしは……本当に……」

 

呆れてモノも言えないみたいな目を向けないでください。心が折れそうです。

 

と、イメージの剣が一枚の羊皮紙に変わった。

 

「おぬしの武装完全支配術はそれじゃ」

「なるほど……」

 

これは……強力な力だ。英語を翻訳出来るとこのようなところで便利だな。

 

「ほれ、2人も始めんか」

「あ……忘れてた」

「流石にリオンみたいには出来ないな」

 

2人とも苦笑していた。まったく、失礼な。そのあと2人の術式も完成し、準備万端となった。

キリトとユージオは剣の回収のために3階から、俺は50階から登り始める。

 

俺としては1人でアドミニストレータを倒せれたらベストだと思っている。

 

その時は頼むよ、相棒。

 

キリト達を送ったカーディナルが戻って来る。

 

「いくぞい」

「……」

 

ローブから彼女の感情が微かに聴こえる。それは彼女が唯一知りたがったもの。

 

後ろから優しく抱きしめる。

 

カーディナルは驚きはしたものの怒りはしないようだった。そのまま数十秒で離す。

 

「また、会いましょう。その時は、もっとゆっくり話しませんか?色々知りたいんです、あなたのこと」

「ふん…… 」

 

目が赤かったのは、見間違えだろうか?

 

確認する間もなく、扉が開いた。カーディナルは顔を背けているため表情を伺うことは出来ない。

 

荒れ狂う過剰な光に目を細めつつ、外へ踏み出す。

 

パタンと音がした後には、扉は綺麗さっぱり消えていた。

 

目の前に大きな扉がある。

 

これを開けたら……

 

戦闘開始だ。




どうも橘です。

戦闘描写があるといったな……あれは嘘だ。

はい、すいませんでした。全然進まねぇ……次こそ本当に戦闘開始です!いきなり第二位の整合騎士に挑むリオン笑

評価、感想などください。ぜひください。主に橘がにまにまするためです。お願いします笑

それではこの辺で!


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正々堂々?なにそれ?おいしいの?

えっと、あの……

戦闘描写……かな?



整合騎士は百戦錬磨の猛者だ。学院を卒業さえしていない(言ってて悲しくなる)俺が敵う相手ではない。ならどうするか?

 

ずる賢い戦い方で、がむしゃらに、意地も何も捨てて、勝ちに行くんだよ。

 

――◇◆◇――

 

50階の扉を開くと同時に走る。どうやら整合騎士は5人のようだ。

 

「なっ……!?」

 

どこか困惑している整合騎士を見て不思議に思うが、なるほど、咎人キリトとユージオの情報しか無いわけだ。急に白髪の別人が走ってきたら困るよなぁ……

 

「……くっ、構えろ!」

 

流石、真ん中のちょっと偉そうな整合騎士は殺気を感じたらしく警戒を促す。

 

それじゃ、作戦其ノ壱……成功させるぞ!

 

「貴様は何者だ!!!」

 

ちょっと偉そ(ryが堂々と名を聞いてくるが、知ったことではない。それより、油断している今がチャンスだ。あいつとの距離はおよそ20メルほどまでになった。これならいける……か?

 

「よかろう!ここまで来たならそれなりの覚悟があるはず、この整合騎士ファナティオ・シンセシス・ツーが相手しよう!」

 

すいません、バックドアでひとっ飛びでした……

 

ファナティオはそのまま詠唱を開始した。恐らく武装完全支配術だろう。

 

だが、遅い。

 

周りの騎士たちもファナティオを守るように立ちはだかる、が、

 

助走をつけたジャンプで4人の上を飛び越える。

 

そのままファナティオに肉薄した。

 

「……ッ!」

 

流石に驚いているようだ。けど、剣は抜かない。俺が狙うのは……

 

お前の剣だ(・ ・ ・ ・ ・)

 

ファナティオが握っていない柄の下部分を持ち

 

体術スキル【飛撃】

 

スピードの乗った飛び膝蹴りが相手の右手首を打つ。

どうやら左手を身体を防御するように動かしていたため、俺の一撃に完全に不意を突かれ、

 

剣から手が離れた。

 

 

 

…………キタキタキターーー!!!

 

 

 

そのまま剣を持って下がる。たぶん、手首が折れてるだろう。曲がりなりにも体術スキルが直撃したのだ。そうでもなければ離さなかっただろうし。

 

「貴様ッッ!!そのような行いが許されるとでも思っているのか!」

 

……はい、若干狡いですよね。剣を奪う戦い方なんて(笑)

 

でも……

 

 

もっと狡いこと、するよ?

 

 

ファナティオの剣に意識を集中し、記憶に潜る。

 

………………天穿剣、鏡、か、

 

君の声を聴かせて(エンハンス・アーマメント)!」

 

一筋の光が先端から伸び、こちらに追撃しようとした1人の取り巻き騎士の足を貫いた。

 

見るとファナティオが驚愕している。ふふん♪

 

「なぜ、なぜ貴様がそれを……」

「さぁね?」

 

取り巻きの足をを全員分貫き、ファナティオにも放つ。予備動作が無いから使いやすいなぁ。呆然とした敵は随分呆気なかった。この世界の住人は予想外の出来事に弱いらしい。

 

――◇◆◇――

 

「よっこいしょっと」

 

5人をとりあえずひとかたまりにさせた。重いよ……鎧が重すぎるよ……

 

「ちょっと借りるね」

「な、なにを!?」

 

ファナティオの鷹を模した兜を取る、と、

 

「え、女?」

「ッ!見るな!」

 

えええ……知らなかった。

兜を丈夫な鎖に変えて(英語が分かるようになったので術式を覚えるのは難しいことではなかった)5人まとめて拘束する。あ、もちろん太ももと二の腕を穿って抵抗出来ないようにしたよ☆

 

周りを見ると取り巻きにも動揺があるようだ。女だと知らなかったのだろうか?何故自分の部下にも隠していたんだ?

フィナティオは意気消沈して項垂れていた。

 

…………???

 

「貴様もそのような顔をするのか?」

「……は?」

「私が女だと知ると、どんな剣士も、暗黒騎士さえも!そのように軽蔑した視線を向けるのだ!」

「……」

「何故だ!女の何が悪い!私とは、女の私とは命のやり取りなどやる価値もないと言うのか!」

「黙れよ」

 

――パシンッ

 

ファナティオを平手打ちしていた。そのあと、呆然としている彼女の赤くなった頬を優しく撫でる。俺は俺なりに思ったことを話してみることにするかな。

 

「一番女だって気にしてるのは……あんたじゃないのか?」

「なんだと……?」

「男らしい口調をして、兜を被って、必死に自分の性別を隠して」

「……やめろ」

「女だとバレたら途端に項垂れて、俺に愚痴を喚いて」

「やめろぉ!!」

「もっと堂々としていいと思うよ」

「……どの口が言うのだ。あんな顔をしたお前が」

「ならあなたはどうして化粧をするんですか?」

 

彼女の唇は薄く紅がかかっている。

 

「女であることを忌みながら……なぜ?」

「……私にも、恋焦がれている男ぐらいいるのだよ。あの人が私に剣の腕以外を求めてくれるかと待ち続けてはや100年。新米の女騎士に後塵を拝すれば、せめて化粧の一つもしたくなろうというものだ」

「なら、その気持ちに素直になれば……」

「貴様は知らんのだ。もし教会の権威が失われてみろ。瞬く間にダークテリトリーからの軍隊に人界は蹂躙され、地獄と化すだろう。人界を守るという任務の前には、私の恋心など麦葛に等しい」

「…………ふざけるな」

「なに?」

「今の整合騎士だけでこの人界を守れるとでも?」

「……それは……」

「この世界の人々がそこまで腐っているとでも思っているのか!!」

「……どういう意味だ」

「貴様ら整合騎士は腐敗した貴族と盲目的な平民しか見てこなかったらしいな。もし義勇兵を募れば軽く数千は兵が集まるだろう。もしその軍隊の育成に専念したら?なぜそれを最高司祭はやらない!!」

「…………」

「結局、あんたらは最高司祭様のかわいい駒だったんだよ。だけど俺は、こんな教会ぶっ壊して、この人界の人々に賭けたいんだ。僅かでも希望を託したいんだ!」

「……貴様は……一体何者だ?」

 

それは……

 

「ただの平民だ。多少物事は知っているけど、平民だ。騎士とか、司祭とか……あんま平民舐めんなよ?ただ守られているだけのヤワな奴じゃないさ」

 

それきり、ファナティオは沈黙した。

 

――◇◆◇――

 

この戦いに勝っても……アドミニストレータを倒しても、それが終わりじゃない。始まりだ。俺は……この世界を守りたい。

 

色々な人に出会った。人と人との繋がりは、想像以上に温かくて、美しかった。

 

この世界の人々を、俺は信じる。

 

だって、

 

たくさんの人が俺を信じてくれたから。




どうも橘です。

えっと、はい

リオンのチート性能には目をつぶってね☆

自分でもちょっと引いてます(^ω^;);););)
い、一応、記憶開放術は使えないから!それで許して( 涙目 )

キリトとこいつが組んだらどうなるのか寒気を覚えつつ彼らは白き塔を登ります。登るったら登ります。

それではこの辺で!


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その檻で、何を想うのか

タイトル詐欺じゃないよね?(不安)

前半よりも後半を大切にしようとして、失敗しました。

原作よりシリアス成分少なめだと悩むこの頃……

4,10 昇降盤係の名前を原作に沿わせました。


――ギィィイ……

 

扉が開く。

ファナティオ達を拘束した後、キリトとユージオを待っていた俺が目にしたのは

 

2人の修道女らしき幼女に引きずられたキリト達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、なんでだよ。

 

――◇◆◇――

 

『なっ!?』

 

幼女達は揃って声を上げた。どうやら整合騎士が捕らえられているなんて、さらに言うなら他に侵入者が居たなんて思いもしなかったのだろう。

うーん……見た感じ敵意は無いんだけどなぁ……なんかキリト達引きずってるし……

よくよく考えてみればあの2人が青年を難なく運べていることも疑問だ。あの歳でそこまでオブジェクト・コントロール権限が上がることなどあるのだろうか?

とりあえず油断しないほうが良かろうと判断し、天裂剣を鞘走らせる。

 

「あ、あなたは……一体……」

「どうやって私達より先に上に!?ずっと見張ってたのに……」

 

ようやく衝撃から立ち直った2人が口々に叫ぶ。

 

すいません。バックドアでひとっ飛びでした。(デジャヴ)

 

ともかく、彼女達への警戒ランクを一つ上げる。見張ってた……つまり俺達を狙っていたらしい。こんな可愛らしい顔で近づかれてもわからんわそりゃ。キリト達に同情の目を向けようとした、が、

 

キリトがいない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

気づいた時には後ろから修道女達の腕を浅く切りつけていた。木剣だとばかり思っていたが、鞘だったようだ。あぶねぇ……気づかなかった……

切りつけられた2人は驚く間もなく床に倒れた。

 

「……ルベリルの毒鋼?」

「正解」

 

その時ようやく見れたキリトの瞳は、どこかやるせなさを含んでいた。

 

――◇◆◇――

 

修道女の衣類からおそらく解毒剤と思われる薬品(何も確証が無くて怖すぎる……)をユージオに飲ませた後、修道女2人を整合騎士と同じように拘束する。さすがに手足を抉るのは気が引けたのでやめておいた。

キリト達は整合騎士達をみて若干引いている。いやなんでだよ。

 

「お前……相変わらず無茶苦茶だな」

「キリトには言われたくないけどな」

 

互いに苦笑しあう。イレギュラーって大変だ。

 

「整合騎士は強くなかったの?」

 

どうにか麻痺から回復してきたユージオが問いかけてきた。んー……

 

「あの人の、この剣奪って開放武装術で倒した」

「へぇ、君の剣で?どんな技なの?」

「いや、あの人の剣で」

「へぇ……ええええ!?」

「は!?どういうことだよリオン!?」

 

ユージオは驚愕、キリトは……羨望?を表しながら問い詰めてくる。

結局、説明しようとはしたが全く理解されず断念した。そんなに難しいかなぁ……?

 

――◇◆◇――

 

一通り装備を点検したあと(天穿剣は返しておいた)、先に進むことにする。そのさい、2人が修道女達にむかって何かを言っていたようだ。彼女達にも彼女達なりの目的があったのだろうか?

 

「なぁ、あの子たちって何者?」

「ん?あぁ、言ってなかったっけ?整合騎士だよ」

「なっ!?」

 

あの歳で!?でも、ようやくあの馬鹿力の説明がついた。子どもに整合騎士って……公理教会も余裕無いのかな?

 

どうやら、2人は武器庫の前でも整合騎士を倒してきたらしい。ふむふむ、いいペースである。

 

「これで整合騎士の人数はだいぶ減ってきたはずだ。このまま上を目指そう」

 

頷きあうと、先へと続く扉を開いた。

 

――◇◆◇――

 

扉の先の通路からは冷たい風が吹き付けてきた。ん?どうやら階段で登るのでは無いらしい。

 

「うわぁ……」

 

この先の階は真ん中が筒状にくり抜いてあった。1層ごとの高さもそこそこあるため、このままでは登れない。キリト達2人が愚痴をこぼす。

 

「こりゃどうやって登るんだ?整合騎士サマは空を飛べるのか?」

「流石にそれはないよキリト。空を飛べるのはかの最高司祭様だけらしいよ?」

「じゃあどうしろっていうんだ……」

「…………どうやらお迎えみたいだよ?」

 

えっ、と2人が上を見上げると

 

円盤が降りてくる。

 

それは3人の前で音もなく接地した。

 

「お待たせ致しました。何階をご利用でしょうか?」

 

円盤に乗っているのは少女だった。見たところ武装は無し。警戒の必要は無いと判断して喋りかけてみる。

 

「どこまで行けるのかな?」

「はい、八十階の雲上庭園までご利用いただけます」

「俺達反逆者ってなってるけど、乗せても大丈夫?」

「私はこの昇降盤を動かすことのみが仕事でございます。それ以外の命令は受けておりません」

「なるほど、じゃあ80階までよろしく。だってよ、2人とも乗れば?」

 

2人は暫く顔を見合わせていたがこれ以外に移動手段が思い浮かばなかったのだろう、恐る恐るといった感じで昇降盤に乗った。

 

「それでは、失礼いたします。システム・コール、ジェネレート・エリアル・エレメント」

 

円盤に取り付いていた筒の中に風素がきっちり10個生成される。どうやら中々な高位の術者のようだ。そのまま3つをバースト、吹き出した風が円盤を浮き上がらせた。

 

「なぁるほど」

 

まるでエレベーターだ。キリトも思い当たるところがあったのだろう、へぇやら、ふぅんやら言って周りを見渡している。可哀想なのはユージオで顔を青ざめさせて手摺りに掴まっている。

そのうちキリトの関心が風景から少女に移ったらしい。少女に向かって訪ねた。

 

「君は、いつからこの仕事をしてるの?」

 

すると少女は、さも当然のように答える。

 

「この天職を頂いて今年で百七年になります」

 

これには3人とも絶句した。きっと少女にとってそれは当たり前のことなんだろう。なんて、なんて残酷な運命なんだろうか。あの「バースト」の式句を何度繰り返してきたのだろうか……

 

「君……名前は?」

 

不意にキリトが訊いた。

少女は長い間首を傾げた後、ぽつりと答えた。

 

「名前は……忘れてしまいました。皆様は、わたくしを昇降係とお呼びになります。昇降係……それがわたくしの名前です」

「そんな寂しいこと言わないで」

 

ついこぼした心の声は、少女の目を見開かせた。それさえ気づかないまま、無意識に言葉を紡ぐ。

 

「人は皆意味があって生きて、今この時を生きているんだ。ほんとは……もっと……自由で……」

 

自分が何を言っているのか、わからない。それでも必死に、彼女への言葉を探す。

 

「君は……エアリーだ。エアリー、それが君の名前」

「エアリー……」

 

少女は噛み締めるように新たな自らの名を呼ぶ。

 

「エアリーは何かやりたいことは無いの?」

「私は……」

 

ふと、こちらと目を合わせる。まだ彼女の瞳を見たことがなかったとそこで初めて気づく。それは真夏の蒼穹のように、深い藍色だった。

 

「私は、この昇降洞以外の世界も知りません」

 

今ここで、

 

「ゆえに……やってみたいこと、と仰られても決めかねますが……」

 

ようやく、

 

「してみたいことは……」

 

彼女の人生(物語)が、

 

「……あの空を……この昇降盤で、自由に飛んでみたい……」

 

始まる。

 

「君の願い、ちゃんと預かった」

 

俺に出来ることなんて限られてるけど、それでも

 

「待っててよ」

 

手の届く範囲くらいは

 

「叶えてみせるから」

 

幸せにしたいって思っちゃうんだよ。

 

――◇◆◇――

 

最後の階で円盤はピタリと止まった。うまく出来てるなぁ……

おもむろに、エアリーは深く一礼した。

 

「お待たせいたしました、八十階、雲上庭園でごさいます」

「ありがとう」

 

それぞれ頭を下げ、円盤から降りる。最後、俺が降りる時、微かに

 

「……待っています」

 

と、聞こえた気がしたが、確かめる前に円盤は降下した。

 

きっと、アドミニストレータを倒しても、その先のことまで考えないといけないんだ。

 

出来るだけだけたくさんの人に、幸せを……

 

そう祈ることしか出来なかった。




どうも、橘です。

投稿遅くなってすいません。構想が(; ・`д・´)

アリシゼーション編はモブキャラが好きです。
エアリーしかり、セルカしかり……

ちなみに僕が一番好きなのはアリスではなくセルカだったりします。(同志がいたら感想などで教えてくださると嬉しいです……)

フラグ建築士一級のリオンですが、これ以上増えることはない……はず。たぶん、きっと、おそらく。

次はアリスと初対面だ!頑張ります!

それではこの辺で!


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黄金の暴力、理不尽極まりない

お久しぶりです

いつの間にか年越してた……

あとエアリーって名前あるんかい!自分で命名しちゃったよ!?とりあえず修正しました。



また、大きな扉の前に到達した。このサイズからして、この先は大きな広間のような空間だろう。そこに整合騎士が待ち構えている可能性は大いにある。

 

「リオン、聞いてほしいんだけど……」

「もし黄金の鎧の整合騎士が相手になったら、出来るだけ傷つけないで欲しい」

 

…………

 

「わかった。ただし、」

「わかってる、そんな甘くないって」

「だから僕達はこの短剣を使う」

 

2人は短剣と言うよりは十字架のペンダントのような剣を見せてくる。こんなんで大丈夫なのか?簡単にポッキリいきそうなんだけど。

 

「心配しなくていい、これはカーディナルの一部だ。髪の毛だったらしいぞ」

「んんん?リンクが繋がってるのか?そんでその整合騎士をカーディナルが無力化すると」

「大体あってるよ」

「なるほどね……」

 

悪くないとは思うけど……

 

「それでも甘くないぞ?刺せるかが勝負だろ?」

「覚悟の上さ」

「僕はこの時のために、セントラルカセドラルを登ってきたんだ。今更、立ち止まったりしない」

「ん、わかった」

 

2人の覚悟が伝わってきて、思わず苦笑する。こいつらを説得するなんて不可能だ。

 

「よし、開けるぞ」

 

そして、扉が開く。

 

――◇◆◇――

 

扉が開く一瞬前に詠唱する。構成はイメージで補完。光素と風素、炎素などを組み合わせ、蜃気楼に似た状態を作るのだ。

 

「ディスチャージ」

 

周りの景色を自身の体に投影し、同化させる。これでバレずに近づける。

 

八十階の雲上庭園はその名の通り、庭だった。芝で覆われた床や小川まで流れている始末。2人は丘の上の整合騎士に気を取られているようだ。

 

そのまま気づかれないように、壁に沿って走り出す。

 

「アリ……ス……」

 

アリス……おそらくあの整合騎士の名前だろう。黄金の鎧からユージオが探し求めていた人物だと判断する。呆然としているユージオを見て、少し不安が募った。生半可な覚悟では足りないのはユージオもわかっているはずだが……

 

2人が少しづつ近づいていくと音もなくアリスの右手が掲げられた。

 

「もう少しだけ待ってください。せっかくのいい天気だから、この子にたっぷり陽を浴びさせてあげたいのです」

 

可憐な声が響く。が、堂々たる様子で佇む姿から高位の騎士と予想される。

 

「まずいな……」

 

あの様子だと恐らくユージオは戦えない。キリト一人で相手するのには荷が重いかもしれない。

どのみち透明化もあと数十秒しか持たないので、後ろから奇襲をかけることにする。

 

2人は少し相談すると、二手に別れて走り始めた。どっちかが攻撃を受けてそのうちにもう一人が……といったところか。こちらも合わせて走り始める。

 

いや、まて。

 

アリスは剣を帯びていない。まさか素手で戦うことは無いだろう。ならなぜ?

 

と、

 

アリスの側にあった小さな木が消え、黄金の剣が出現した。……出現した!?

 

 

 

 

 

なんだそれ。

 

 

 

 

 

「(まずいまずいまずい!!)」

 

おそらくあの剣は記憶開放状態。あの木が古の形だったのだろう。つまり、なんらかの大技が……

 

アリスが剣を振りかぶる。

 

あの距離から!?遠距離系の攻撃か……?

 

剣が柄を残して、消えた(・ ・ ・)

 

アリスの手から離れた黄金の嵐がキリトを襲った。いとも簡単に打ち倒される。このままユージオが?いや、だめだ。

 

予想通り、すぐにユージオにも黄金の嵐が襲い掛かった。

 

だが、十分だ。アリスの後ろまであと2メル。

透明化が消え、鞘付きのまま天裂剣を振りかぶる。狙うのは、残っている柄。武器を離せば、あとは拘束する。

 

「なっ……!?」

 

アリスが気づくが、黄金の嵐が帰ってくるまでまだ時間がある。これなら!

 

「くらえ!」

 

――ガンッ!!

 

 

 

 

 

 

だが、弾かれたのはこちらだった。おもわず姿勢を崩す。

そこへ黄金の嵐が襲う。あれは……金木犀の花ってことか?刀身が分解したのか!とっさに下に滑り込んで回避する。飛んでいるだけあって下まで範囲が届いていなかったらしい。前髪が少しだけ触れると文字通り木端微塵になった。そのままもう一度、起き上がりざまに打ち付ける、が、

 

「エエイ!!」

 

黄金の嵐は剣の刀身となって迎え撃つ。

 

――ガガーンッ!!

 

また弾かれる。これは不味いな。

 

どうやら剣の重さが違う。それもかなり。あれだけ無数の花に分解したものが、いとも簡単に2人を打ち倒した。その理由もこの重さだろう。もとが重ければ重いほど、分割しても重くなる。その究極版とでも言える。そのせいで打ち込んでもろくに衝撃が伝わらないし、

 

「ふっ……ッ!」

「ぐぁ!?」

 

攻撃をいなすことさえ出来ない。これ無理ゲーじゃね?

 

――◇◆◇――

 

打ち込む、弾かれる、打ち込まれる、吹き飛ぶ、を繰り返している。もうすぐ壁際、逃げ場が無くなる。正直、どうやっても勝てない。だけど、負けたわけじゃない。だって

 

アイツらが何もしてない訳ないだろ。

 

「エンハンス・アーマメント!!」

 

ユージオの武装解放術か!

 

足元から氷の蔓が伸び上がりアリスを捕らえる。即座に意図を理解し、咄嗟にアリスの利き腕を掴んだ。そのままアリスごと凍結させられる。何も無いところから氷が束縛しにくるのか……こりゃ不意打ちの拘束にぴった……

 

――ジャラァァァ……

 

突然、黄金の光が弾けた。まるで花吹雪のように舞っているが、これらひとつひとつが超硬度の花びらだ。瞬く間に氷が削り取られ、割れた。

 

「お前たちは剣での果し合いを望んだのではなかったのですか?お前の相手は後でします」

 

憎らしい程平然としてアリスが花達を剣に戻そうとした時、

 

「エンハンス・アーマメント!!!」

 

キリトの声が響き渡った。キリトが狙ったのは、戻る直前の剣。漆黒が噴出し、花たちに激突する。あまりの衝撃に吹き飛ばされた。いや、どんな威力だよ!?

 

「えっ……」

 

初めてアリスが驚きの声をあげる。これが、最初で最後のチャンス。

 

「ユージオォォォーー!!!!」

「うおぉぉぉ!!」

 

ユージオが懸命に地を蹴る。アリスまであと4歩。

 

突然、白亜の大理石にヒビが入る。あと3歩。

 

力に耐えきれず、壁が破壊される。あと2歩。

 

空気が猛烈に移動し、その気流にキリトとアリスが巻き込まれる。あと1歩。

 

ユージオが伸ばした手に僅かに触れながら、2人は塔の外へと落ちていった。

 

「くそっ!!」

 

咄嗟に術式を唱えようとするが、大理石は元に戻り始めた。ユージオが駆け寄った目の前で、最後の穴が埋まる。

 

「キリトーーー!!!!アリスーーー!!!」

 

必死に呼びかけ壁を叩くユージオを止めてやれないほど、俺自身も呆然としていた。




どうも、橘です。

ひっさしぶりに書いたので今までと雰囲気が変わってないか不安です笑

オーディナル・スケール!観てきましたか?とりあえずあと2週したい感。

これからものんびり更新していきますねー

それではこの辺で!


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男二人旅(大嘘)

キリトとアリスが塔から落ちた。かなりの耐久力を持つ白亜の壁も、2人の武装完全支配術が生み出したパワーに耐えきれなかったのだ。結果、壁が割れて2人は青い空に吸い込まれていった。

 

「そんな……なんで……」

 

ユージオが呆然としている。当然だ。想い人と親友を失ったのだから。

かくいう俺もかなり動揺している。

それほどまでにキリトの存在は大きかったのだと初めて気付かされた。

 

不意にユージオがこちらを向く。その瞳には未だ意志が煌めいていた。

 

「あの2人がそんな簡単に死ぬ訳が無いよ。きっと、また戻ってくる。だから、僕達はそれまでに」

「この先を目指す、だろ?」

 

なんだ、まだやれるじゃないか。

改めてユージオを見直す。少しキリトに似ているのかもしれない。

 

そうして、2人で上層へと足を踏み出した。

 

――◇◆◇――

 

ユージオにとってキリトとはどんな存在なのだろうか?

 

「えぇと……そうだな……」

 

……どうやら声に出ていたらしい。

 

「一言で言えば、英雄、かな?」

「英雄……」

 

その響きには複雑な感情が入り混じっていて、思わずユージオを見る。半歩前を歩く戦友は、決して顔を見せてはくれなかった。

 

「僕はルーリッドの村で木こりをしていたんだ」

 

そこから語られるのはユージオの人生。

 

木こりとして最高司祭が作った超硬度の木を切り倒そうとしていた。

そんな中出会ったのがベクタの迷い子のキリト。

何から何まで規格外なあの少年は、ゴブリンの集団を退け、その木を青薔薇の剣で切り倒した。

 

ん?ゴブリンの集団?

 

「ま、待ってくれ!ゴブリンの集団と戦ったのか!?」

「うん、まぁ正確にはキリトが全部やっつけたんだけどね」

「…………」

 

まさか俺以外にもゴブリンと遭遇しているとは……これは本格的にヤバイ状況なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

それなのに最高戦力の整合騎士を倒してる俺たち(白目)

 

 

 

 

 

 

いや、意識を切り替えよう。どのみちこのままじゃ負ける。たぶん。きっと。

 

……ちょっと不安になってきたよ……

 

「そんなキリトが僕をアリスのもとまで導いてくれた。あの斧を振り続ける毎日から。だから、キリトは僕の英雄さ」

 

ユージオ……

 

「だからって1人じゃ何も出来ない、なんて話にならないからね。笑われないように頑張るよ」

「おいおい、自分の評価低いな……君は強い。剣でも、精神でも」

「ほんと?だといいな」

 

こいつはキリトを隣に見ながら歩いてきた。だから自分を低く見る癖がついてるな。俺からしたら十分立派な剣士だ。

 

「自信を持て、ユージオ。君はもっともっと強くなる」

 

そっとつぶやいたがユージオには届かなかった。

 

――◇◆◇――

 

また大きな扉に辿り着く。今までのパターンだと

 

「ここに整合騎士がいるはずだ」

 

ユージオも頷く。

 

「恐らく、ここで最高戦力を投入してくるはずだ。油断するなよ?」

「そっちこそ」

 

ゆっくりと扉を開くと

 

白い煙が漂ってきた。

 

すわ敵襲か!?と思いきや、ただの湯気だった。

 

 

 

 

 

てか温泉だった。

 

 

 

 

 

「(ええええええええ!?!?)」

 

いや、まじで。知識でしか知らないものの、まんま温泉だ。むしろ銭湯かもしれない。

大量の湯がプールほどもあろう湯槽になみなみと張られている。どれほどの水が使われているのだろうか。

 

「リオン!あそこ!」

 

あまりの衝撃に立ち竦む俺をユージオが引っ張る。ユージオが示す先には大きな影が見えた。

 

「おぉう、少し待ってくれねえか?王都に帰ってきたばっかりで体が凝っていけねぇ」

 

デカイ!?

 

立ち上がった影は2メル近くありそうだ。どうやら脱衣場に向かっているらしい。

あまりに隙だらけで逆になにも出来ない……それはユージオも同じようで、静かに相手の様子を伺っている。

 

「待たせたな」

 

現れたのは壮年の偉丈夫だった。歴戦の猛者を思わせる古傷を数多刻んだ肉体を、東の地域で使われているゆったりとした……なんだっけ……そうだ浴衣!っぽいもので包んでいる。野太い笑みに気圧されそうになりつつもなんとか立ち止まる。

 

「あー、なんだ、その、聞いときたいんだけどよ」

「なんですか?」

 

思わず敬語になってしまう。

 

「ファナティオは……無事か?」

 

まさかの部下の心配だった。不器用な優しさに思わず肩の力が抜ける。

 

「無事ですよ。流石に拘束しましたけど」

「そうか……なら、オレも命までは取らないでおこう」

「余裕ですね」

 

少し怒気を孕んだユージオの言葉に眉一つ動かさずニヤリと笑った。

 

あの、ユージオさん?物凄い形相してどうされたんですか?

 

「僕がやらなくちゃいけないんだ!」

「あ、おい!?ばか!!」

 

危惧した通り、ユージオが馬鹿正直に1人で突っ込んでいった。

 

「ベルクーリ・シンセシス・ワン、参る!!」

 

ベルクーリは剣を振りかぶると、

 

――ブンッ

 

完成された、としか表現しようがない一撃を放った。が、

 

「(なんだ?遠距離攻撃……か?)」

 

未だにユージオとの距離は五メル近くあるのだ。なにも変わったように見えない。ユージオはそれを挑発と受け取ったのかソニック・リープを発動させ一気に肉薄す

 

何かにユージオがぶつかり、ボロ雑巾のように吹き飛ばされた。

 

は?

 

「ユージオ!!大丈夫か!?」

 

よく見ると先ほどのベルクーリの斬撃をなぞるようにナニカが存在している。

 

「斬撃が……残ったのか!?」

「おうよ。この時穿剣はちょいと先の未来を斬るのさ」

 

それは恐ろしい性能だ。斬撃に囲まれたらお終いか!?

 

「相変わらず無茶苦茶な性能だな」

「さて、お前さんはどうする?」

 

どうするもなにも……

 

「やるしかないだろ?逃がしてくれそうにないし」

 

獰猛な笑みだけが帰ってくる。

 

治療を終えたユージオがフラフラしながらも隣に立った。

 

「ユージオくん。言いたいことは山ほどあるけど」

「う……ご、ごめん」

「俺らがアイツに勝ってるところは?」

「……あ」

 

1人じゃないこと。

 

「そんじゃ、やりますかね」

「うん……今度こそ攻撃開始だ」

「相談は終わったのか?」

 

おうおう、待っててくれるとか泣けるね。

 

「その余裕、すぐにぶっ潰す」

「やってみろ、若造」

 

俺とユージオは、この高い壁を越える!!

 

――◇◆◇――

 

2人同時に走り出す。ベルクーリは少し意外そうな顔をした。

 

「あの技を見たヤツは皆遠距離攻撃を仕掛けてくるんだがな」

 

剣を構えただけで威圧感が増す。数多の修羅場をくぐり抜けてきた自負、と言えばいいのだろうか?何にも屈しない意思を感じる。

 

だが、勝たなければならない。

 

「ディスチャージ!!」

 

先ほど生成しておいた熱素を放つ。1つの大きな火球なので斬られてもそのままベルクーリに当たるはずだ。

 

「ふんっ!!」

 

やはり、見惚れるような斬撃を繰り出す。残った斬撃に火球が当たると弾けた、がベルクーリには届かない。どんな方法使ったんですかねぇ……

 

「これだから面倒なんだよぉ!!」

 

若干ヤケになりながら残った斬撃に打ち込む。幸い、少しの抵抗の後通り抜けた。斬撃も霧散したようだ。

 

「ふっ!」

 

ベルクーリと切り結ぶ。なんというか、正直だ。フェイント、連続技、一切無し。だが、その一振りに凄まじい意思を感じる。気を抜くと吹き飛ばされそうだ。

 

ユージオはどこいったんだ?

 

「こっちだ!!」

 

襲ってきたのは幾本もの氷の槍。ユージオは浴槽で武装完全支配術を発動させたのだ。ベルクーリはニヤリと笑っただけだった。

 

――ズッ……

 

な……んだこれ。空気が、重い。ベルクーリの目が鋭くなる。ありえないプレッシャーだ。

 

そしてベルクーリは、背後から襲ってきた槍を、何もせず(・ ・ ・ ・)に壊した。

 

そう表現するしかない。振り向きもしなかった。剣は俺のと鍔迫り合いしていた。それなのに、氷の槍が砕け散った。

 

「(どうなってんだよクソ!!)」

 

訳わかんねぇよコンチクショー!!一体幾つ隠し玉があるのさ!!

 

もうこれユージオに任せようかな。

 

「ユージオ後は頼んだ!!」

「え!?」

「なに!?」

 

体術スキル【衝破】

 

片手ではありえない威力の掌底がベルクーリに突き刺さる。まだ、足りない。

 

体術スキル【飛撃】

 

上半身はスキル使用後のため硬直していたが、まだ下半身は動く。スキルでブーストされた飛び膝蹴りが更にベルクーリを吹き飛ばす。

 

吹っ飛ばした先は、ユージオの目の前の浴槽だ。ユージオも瞬時にやりたいことを理解してくれたのか、浴槽に剣を突き立てた。

 

「こ……おれぇ!!」

 

少しずつ凍っているものの間に合わない……か!?

 

気休めに凍素を放つが、ベルクーリに破壊される。いや、だからそれ強すぎるよね。

 

「ユージオ!!」

 

ユージオは絶望したような顔を向けてきた。確かに、この作戦は1度きりだ。でも、やれるさ。

 

「俺はお前を信じてる!!!」

「ッ!!!」

 

そう、俺は信じてる。お前なら、やれる。自分を信じろ!

 

「うぉぉおおお!!!」

 

ベルクーリがもうすぐ起き上がる。

 

記憶解放(リリース・リコレクション)!!!!」

 

瞬間、凄まじいまでの冷気が吹き渡り。

 

浴槽全てが凍った。

 

 

 

 

 

……わぁーい。規格外だー。

 

 

 

 

 

見渡す限りの氷、氷、氷。このエセ銭湯全体がスケートリンクみたいになってしまった。

 

「(つ、つぇええええ!!!)」

 

正直、足止め程度に考えていた俺を叱らねばなるまい。これはもう最強の必殺技だ。現にベルクーリも氷の中に閉じ込められて……

 

「ぬぅぅぅぅん!!!」

 

――ベキベキ!!

 

……鳴っちゃいけない音が聞こえるんですけど!?あの状態から抜け出せるのか!?だがユージオも黙ってはいない。

 

「咲け、青薔薇!!」

 

しゃらん、と美しい音が響く。即席のスケートリンク上に氷の薔薇が咲き乱れる。この光景は、美しくも、残酷だ。

 

「な……に……!?」

 

ベルクーリから力が抜けていく。この薔薇は氷に捕まった者の天命を吸い上げて咲いている。根こそぎ気力も奪われたのだろう。ベルクーリはかなり青い顔をしていた。それはユージオも同様なのだが。

 

「せい!!」

 

とりあえず、ユージオを救出する。氷を四角く切り取って熱素で溶かす。

 

「あ、ありがとう」

「よく頑張ったな」

「……こりゃ1本取られたな」

 

……なんと言えばいいのか分からんが。

 

「ユージオ、青薔薇を解除してくれ」

「?分かった」

「なんのつもりだ若造」

 

この人は悪い人じゃない。もしかしたら、

 

「この世界について教えてください、ベルクーリさん」

「……」

「単刀直入に聞きます。今の戦力で闇の軍勢と戦えますか?」

「……わからん」

「良い意味じゃなさそうですね……」

「情けないことにな。整合騎士も人間だ。数の力には勝てん」

 

やはり、ベルクーリも同じ危惧を抱いていたようだ。

 

「改善するために最高司祭を倒す、と言ったら?」

「……俺らは、命令には逆らえん」

「右眼の封印……」

「ほぅ、坊主も知ってたのか」

「解除されましたけどね」

「なん……だと……」

 

ベルクーリの体から力が抜けた。

 

「お前さん達なら、もしかしたら……」

「僕達には指揮官がいません。もし、革命をおこせたら、その時はあなたに……」

「……」

 

それきり、ベルクーリは沈黙した。




どうも、橘です。

ユージオの記憶解放術強すぎ笑
原作と同じ倒し方になったのは申し訳ないです、はい。

ユージオはキリトに様々な気持ちを抱いていると思っています。それが良い感情であれ悪い感情であれ、それを表してみたいです。

それではこの辺で!


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