転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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復帰3話目、久しぶりに長いのを。

実際、家同士というだけでなく皇族と王族の婚姻ともなれば、そりゃあ色々と不健全な理由も面倒な事情も絡んでくるよね~って感じで。

とはいえ、最後にある意味、台無し(?)になるかもしれませんが。








第374話 国家間関係がらみの国際政略結婚ってこんなもんだよね~という実例

 

 

 

 

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「和仁、お前もいい歳だろう? 良い頃合いだし、そろそろ政略結婚でもしようじゃないか」

 

「……………………は?」

 

 スナック菓子感覚(?)で”政略結婚のススメ”をしてくる兄上(皇国今上天皇)に、思わず思考の急ブレーキがかかる天草宮和仁親王殿下である。

 

 

 

 1943年、そろそろ栗が美味しくなる秋のイタリア・ローマにて、日本皇国今上天皇(ただし分霊体(ワケミタマ))からその一言は紡がれて、

 

「政略結婚って、いったい誰と……」

 

 正直、全く相手に心当たりのない和仁親王だったが、

 

「目の前にいるだろう?」

 

 そう照仁陛下(ワケミタマ)が視線を向けた先には……

 

 

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「えっ!? わたしぃっ!?」

 

 すると陛下、何食わぬ顔で……

 

「そう驚く事か? マリアンナ嬢、そなたはベルゴロ伯爵令嬢であろう? 慣例として王族へ嫁ぐに不都合のある家柄ではあるまい?」

 

 まあ、確かに慣例として王族との婚姻は伯爵家(上級貴族)以上という風習が古い時代にはあったようだが。

 

「いえ、それは欧州の因習っていうか、王族と皇族は違うっていうか、そもそも前世は日本の小市民だったりするわけでして」

 

 思いもよらぬ流れ弾、いや狙ったうえでの直撃弾か?に何やらしどろもどろに返すマリアンナだが、

 

「気にする事はない。我が弟も前世の出自で言うなら似たようなものだ。であろう?」

 

「いや、確かにそうだけども。庶民なのは間違いないし」

 

(まあ、空自(・・)つっても所詮は国家公務員だし、公僕は庶民で間違いじゃないよな?)

 

 ちょっと自信のない和仁であった。

 

「それに厳密に言えば、マリアンナ嬢の嫁入りというより和仁の婿入りとおいう表現の方がより現実に近い」

 

「……………………は?」

 

 二度目だった。

 

 

 

「兄上、どういう意味だ? いや、何が動いている?」

 

 べらぼうに嫌な予感を感じる和仁だったが、

 

「そう難しい話ではない。和仁がマリアンナ嬢と婚姻しイタリア国籍を取ると同時に、マリアンナ嬢の血筋を論拠に正式にサヴォイア公爵家(・・・・・・・・)を継がせるという事だな」

 

「はあっ!? なんだその無茶苦茶な……」

 

「無茶苦茶? この手の話は欧州ではそう珍しくはあるまい?」

 

「いや、それは欧州のとにもかくにも王侯貴族が全部親戚みたいなものだから成立するのであって」

 

 和仁の言いたいことも分かる。

 例えば現英国の王室とベルギー王室はどちらもザクセン・コーブルク・ゴータ家の流れだ。

 ゴータ家よりハノーヴァー朝と言った方がわかりやすいだろうか?

 英国を示すと具体的には18世紀に旧王朝であるスチュアート朝が断絶し、ドイツのハノーヴァー家(ハノーヴァー選帝侯家)から招いたのがジョージⅠ世だったりする。

 更にジョージⅠ世が新たな英国王に招かれた理由というのもハノーヴァー家の出元であるブラウンシュヴァイク=リューネブルク家が前王朝スチュアート家と血縁関係があって「血の正統性がある」かららしい。

 ちなみにブラウンシュヴァイク=リューネブルク家はヴェルフ家でもあり、その家系図を見てると心底頭が痛くなってくること請け合いだ。

 しかも英国王だけでなくロシア皇帝とかも出してる家柄だし。

 実は英国王室は以前はハノーヴァー朝を名乗っていたが、第一次世界大戦のおりに「敵国の貴族家名や地名を王家が名乗るのはいかがかと」ということになり、居城にちなんで”ウィンザー朝”に改名したのは1917年、作中時間で言うならまだ四半世紀ほど前の事だ。

 

「では全く新たな血筋を受け付けないと本気で思っているのか? 例外なく?」

 

 実際、血縁のない他国の王族の血脈を取り入れるのも同じくらいよくある。

 近親縁者の婚姻を繰り返すことで起きる”血の衰え”を遺伝子が発見する前から体感的に理解している王侯貴族もまた多いのだ。

 

「だが兄上、その話が本当であるとしても周囲の反発は必至だ」

 

 まあ、西洋諸国にありがちな東洋人に対する偏見や蔑視は、相応に根深いものがあるようだが……陛下は典雅な”やんごとなきスマイル”を浮かべ、

 

無礼(ナメ)られたら、そこで試合終了。なら、無礼(ナメ)られないようにすればよいだけの話だ」

 

「わっ……ルド○フと安○先生の合体技だぁ」

 

 ちょっと小声のマリアンヌ・ツッコミが入り、

 

「弟よ。『暴力は全てを解決する』というのは、ある局面においてはとても正しい。人類史がそれを証明している」

 

「は? それ一歩間違えれば黄禍論が再燃しそうな……」

 

「では少し品の良い言い方をすれば、『(国)威を魅せる』という事だ。正義は必ずしも力に成りえぬが、力は往々にして正義になりうる。まさに前世の第二次世界大戦やその後がそうであろう?」

 

 東京裁判やニュルンベルク裁判の例を出すまでもないだろう。

 それも過去の話ではなく21世紀でもそんなものだ。

 例えばA合衆国のT大統領とか、R国のP大統領、C国のX主席とか、I国のN首相とか。

 どれだけ殺しても弾圧しても自国では正義であるらしい。

 

「それはさておき、アオスタ新王にもバチカンにも根回しはしてある。心配はするな。どちらも乗り気だ」

 

 現在進行形の皇国軍を見れば、確かに乗り気にもなるだろう。

 というか、拒絶すればどうなるか想像できないほど能力が低ければ、国家や宗教のトップには立てない。

 

「そりゃあ武威って後ろ盾が……ああ、だからこその”政略結婚”か」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 確かにバチカンにとりドイツは”防共の防壁”としては優秀で有益な部類だ。

 反共という一点は信頼も信用もできるが、カソリック/プロテスタント問わず宗教色が強いというわけでは無い。特に今生ではヒトラー自身がオカルティズムに傾倒しておらず、むしろ徹底した合理主義者の現実主義者。シカゴ学派かな?

 逆に感情の変動値は小さめで、その分、情動や情緒に疎い部分がある。

 バチカン的には文句は無いが、ちょっと思想面で物足りない部分がある。

 共産主義者より奪還され、”レーニンの街”というふざけた名称から本来の名に戻ったサンクトペテルブルグは、大公を擁する事により確かに熱量高めの宗教的要地となったが……

 残念ながら、あそこは宗派が違う(サンクトペテルブルグ正教)。

 無論、同じ法曹国家として関係を繋ぐために”枢機卿”を名乗る許可や、深紅の法衣(カーディナル)その物ではなくその生地を進呈したが……

 枢機卿として『信仰の守護者』となるのは良いが、上記の宗派違いに加えてまだ国家(勢力)としての規模は小さく、武威の質は良いがロジスティクスを含めた軍事力として考えると国力に比例したものでしかなく、イタリア遠征とかは現実的ではない。

 今は赤色勢力の不俱戴天の敵対者として存在するだけで満足すべきだろう。

 

 そこで文字通り、ムッソリーニ政権崩壊後の『バチカンを含むイタリアの軍事的後ろ盾』として白羽の矢が立ったのが、日本皇国という訳だ。

 ただし、ムッソリーニ政権軍を圧倒する軍事力は申し分ないが、実質的に国教とするのが宗派違いどころか全くの異教である、バチカンには未知に近いアニミズム型宗教の”神道”だ。

 しかも皇家に密接に結びついているというのが不安材料ではあったのだが……だが、日本皇族とイタリア王族の婚姻となれば当然、話は違ってくる。

 それも旧王家の正統な血統である令嬢が嫁ぐのでなく、皇国天皇の末弟が事実上入り婿。婚姻すると同時にマリアンナの血統を担保にアオスタ新王朝で公爵となる直系が途絶えたサヴォイア家を継承するというのだ。

 先も書いたが、和仁自身に(新旧イタリア王家の血統が無い以上は)イタリア王位継承権はないし、婚姻=新サヴォイア公爵となると同時に皇国皇位継承権は喪失するが……”血は水よりも濃い”という諺があるが、継承権がなくとも血の繋がりが消えるわけでは無い。

 そして、天皇を”現人神”と崇める日本皇国における天皇家の権威は、まさに”天上の領域”にある。

 つまりバチカンの視点では、『宗教の違いや信仰の外側にある別次元の安心材料』になりうるのだ。

 この辺りの嗅覚や観察眼は、長年にわたり欧州王侯貴族の冠婚葬祭を取り仕切ってきた総本山ならではだろう。

 

「和仁、お前の皇位継承権は消滅し、イタリア新王朝の王位継承権も存在しない。持つとすればやがて生まれる(マリアンナの血を引く)かもしれない男子であろう」

 

 まあ、最低限の血統ガイドラインは守られるのは、逆に和仁にとり安心材料かもしれない。

 公爵になるとはいえ、扱い的には王配に近い。

 

「どちらもお前には必要あるまい?」

 

「まあ、王位も皇位も要らないけど、現在皇国で俺が関わっているプロジェクトはどうなるんだ?」

 

 すると陛下は少し考え、

 

「プロパガンダが必要なのは”今”だ。イタリアの乱痴気騒ぎが収まるまで。未来永劫という訳でもあるまい?」

 

 要するにイタリア国内事情で必要なうちはとどまって欲しいが、喉元過ぎれば自由にしてもらって構わないという事だろう。

 

「……プロパガンダって言いきっちゃったよ」

 

「おためごかししても仕方あるまい。もっとも、あまり心配する必要も無さそうだが」

 

「??? まあ、いいか。イタリアは根回し済みだとしても本国は?」

 

皇太后(ははうえ)からはな……」

 

 ちなみに結婚について、最大の障害になるのが皇太后のご意向の筈だが、

 

「『この際、最低限人間の女が相手なら、結婚相手の貴賎は問わない』と言の葉を頂いている」

 

 皇族にしては寛容すぎる妥協にも思えるが……和仁は『女に興味がなく、かといって男色というわけでもない。色気のある話題もほとほと無く、このまま飛行機と添い遂げるのでは?』となどとまことしやかに囁かれていたのだから、さもありなん。

 ぶっちゃけ、マリアンナがお相手なら、存外に上等上出来だろう。

 

「他国の旧王族に連なる血筋の伯爵令嬢で、尚且つ現王家とも親戚筋。国内の反対勢力が出るにしても、さぞかし口煩い輩もやりづらいであろう」

 

 妙に楽しげな陛下である。

 当然だが、一番反対勢力になりそうなのは、今上天皇ご兄弟の中で唯一未婚である和仁を狙っていた国内ご令嬢。華族を筆頭とした名家や旧家だろう。

 まあ、この世界線の日本皇国の華族制度は形骸化して久しいが、それでも相応の国内勢力ではある。

 ただ今回、照仁陛下が言うように家柄や出自で文句をつけるのは難しいだろう。

 予想だが、『皇国の皇位継承権を喪失して皇族から離脱し、イタリアの王位継承権のない公爵になる』という辺りを攻めてくるだろうか?

 もっともその程度であれば、いくらでもやり込めようはある。

 

「何より政略結婚とは政治の一環。今は戦時中、内政よりも外交が優先されるのは自然であろう?」

 

 怒涛の正論である。

 

「兄上、俺はいいんだよ。宮家に生まれた以上は政略結婚も責務の内と割り切れる。だが、マリアンナはなぁ……」

 

「弟よ……それ本気で言ってるのか?」

 

 思い切り呆れた顔をする今上陛下である。

 

「あ、あのねカズヒト! 貴族令嬢も基本的には古来から政略結婚の道具だと思うのっ!!」

 

「お、おう!」

 

 何故か猛烈にアピールを始めるマリアンナにタジタジの和仁。

 それを横目で見ていた照仁は生暖かい視線と微笑まし気な表情で、

 

「どうやら、”政略結婚に偽装した恋愛結婚(・・・・)になりそうではないか?」

 

 

【挿絵表示】

「うにゃあぁ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと可愛いマリアンナでしたw

まあ、政略結婚……
皇国→(おそらく)イタリア完全攻略の布石
王国(含むバチカン)→まだ基盤の弱いアオスタ新王朝の後ろ盾確保
なのは間違いないですが、実際には恋愛結婚っぽいですw

マリアンナは基本、チョロイン?
んー、でも和仁も割と露骨な皇子様ムーブかましてしなぁ~。

今回はイタリアやバチカンからのメリットが語られましたが、皇国にも無論メリットがありまして……それはおいおいに。

とりあえず、皇国皇族と王国旧王族の貴族令嬢の婚姻なので皇国としては間違いなく皇族外交の分野、それも割と(主にイタリアの事情で)急を要する案件なので、陛下が分霊体を飛ばしてきたって状況みたいです。

さて、次回もラブコメ(?)路線かな?
次回もどうかよろしくお願いします。





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