転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
いえ、帰宅してから文章整えてたらこんな時間に(泣
さて、今回はいよいよ”北イタリア社会主義共和国”勢力圏の都市を攻略するようですが、果たして……
書類上はイタリア王国や皇国の内務省管轄の治安組織が”主役”でも、実際の”北伐”という要素を考えれば、”主力”はどう考えても先陣を切る皇国軍だった。
そして、パルマ郊外に拠点を築いた彼らが真っ先に赤色勢力から分捕りにいったのは、ド直球なミラノの玄関口とも言える都市、”ピアチェンツァ”だった。
史実の第二次大戦でもは連合国側の激しい空爆に見舞われた街だったが……
「これは酷い……」
ああ、下総兵四郎だ。
いや、何というか……
「うへぇ……内戦の真っ最中じゃん」
小鳥遊君、それな!
いや、ホントに誰が敵で誰が味方かも分からない無秩序な市街戦が、都市一杯に際限なく展開されてるって感じだ。
(空爆で一面焼け野原ってのも悲惨だろうが……)
「見渡す限り瓦礫の山ってのも酷いもんだが、街が原型を残したまま荒廃の限りってのも別の方向性で悲惨さが滲むな」
「大尉殿、この惨状でそのコメントはどうよ?」
「他にどう言えと? 強いて言うなら、さっさとこんな不毛なお仕事済ませてリビアに帰りてぇってとこか?」
ナーディアと妹分達の平たい胸と膨らんだ腹を撫でまわしてぇなぁ~。
「本音出過ぎでしょう」
とりあえず、俺はまだ真新しい愛銃を手に取った。
☆☆☆
唐突ではあるが、皇国軍が“北伐“と略すイタリア北部を舞台とした一連の対ゲリコマ戦は、戦後しばらくは正当に評価される事は無かった。
何しろ、この時代はまだまだ『完全装備の正規軍が、貧弱な武装のパルチザンに勝つのは当たり前』と思われていた時代だ。
特にこの世界線、『ソ連正規軍70万に率いられた230万の”赤衛国際革命旅団(Красная гвардия Интернациональной революционной бригады)”を僭称する共産ゲリコマからなる総勢300万の軍勢でノブゴロドを攻めたが、サンクトペテルブルグ
まあ、あの戦いは練度や司令官や装備の質、何より「ゲリコマが正面切って正規軍モドキの戦いをせざるを得なかった」状況というのも大きな敗因だったりするのだが……
ともかく21世紀では軍事的常識の不正規戦・非対称戦の難しさやゲリコマの厄介さを世界が認識するのは、史実においてもまだ相対時間で20年は先の話だった。
最も真っ当な評価を世界からされないことは、日本(あるいは日英独)にとって何かと都合がよいので、放置することになるのだが。
しかし、北イタリアで現在進行形で起きている都市戦内容は中々に凄惨だった。
トーチカのように強固な防御を誇る場所は、皇国正規軍がその火力をいかんなく発揮させ、徹底的に叩き潰したが……そのような場所は”ピアチェンツァ”には多くなかった。
それも当然でゲリコマの本質であり基本戦術は、「隠れ潜み、油断や隙を突いて奇襲をかけること」だ。
そう、屋内や廃墟などの遮蔽物の影や裏や隙間から、場合によっては地の利を生かして地下下水道からさえも仕掛けてくる。
正規軍とゲリコマの相性の悪さは、「ゲリコマの地の利を活かした”少数による潜伏からの奇襲攻撃”という要素により、装備に勝る正規軍が”待ち”の戦い、局所的に攻勢のイニシアチブを握られ防戦一方になるというシチュエーションが多発すやすい」からだ。
しかし、皇国軍は時代を考えれば、「例外的なほど対ゲリコマ相手の都市戦」に精通していた。
勿論、転生者による年代を跨いだ長期の入れ知恵やテコ入れは大前提だ。
だが、それだけではない。
まずは軍自体が陸海空を問わずに街や森、人工あるいは天然の要害に潜む「正規軍とは違うゲリコマの厄介さ」を共通認識として持っており、その研究を重ねていたこと。
そして何より、この”ゲリコマ
現代日本人なら「治安組織」と考えると、「被疑者の逮捕や捕縛」を優先すると考えてしまう。
しかしそれは、裁判などの「(日本国内なら)法に則った手続き」をする為に必要だからしてるだけだ。
だが、「犯人の射殺命令」が出ていればそれに従うのもまた彼らなのだ。
そして、今回の作戦では”テロリストに捕縛の必要なし”と「最初から無制限に近い犯人射殺命令」が出ていた。
であるのならば、軍隊とは違う行動原理で動いているとはいえ、トリガーを引くことに躊躇いなど持つはずはなかった。
”SST”、”SAT”などの治安警備部隊は、皇国陸軍や海軍陸戦隊のように複数の人数で扱う重火器は用いず、原則として個人携行火器ばかりだ。
そういう意味では、イタリア共産ゲリコマと大差ない軽装部隊とも言える。
だが、戦術と技量に加えて火器以外の装備が違い過ぎたのだ。
そもそも彼らは「犯人の身柄の拘束」を最優先とする一般警察とは最初から前提が違うのだ。
港湾を含めた沿岸警備と保全を行う”沿岸警備庁”の”SST”、警察/公安系治安組織の”SAT”……名前こそ現代の現実世界にある特殊警備部隊と同じだが、史実より半世紀以上も前倒しで設立された目的が、「ゲリコマ化した敵国破壊工作員や国内不穏分子対策」なのだ。
無論、その活動の中には「コンクリートジャングルとも呼べる都市部に潜んだ対ゲリコマ市街戦」も想定されている。
ただ、小鳥遊君の言う通り既に「内戦時の市街戦」の様相を呈している現状は、皇国治安組織の想定していた「平穏な市街地で突如勃発する都市掃討戦」と異なる。
ここで皇国正規軍との連携が重要な意味を持ってくるのだ。
思い切り銃撃戦をやってるような状況であるなら、正規軍が持ち前の火力を存分に投射できる。
あるいは火力が無いと突破できないストロングポイントへの立てこもりなどもだ。
前線航空統制官と前線砲撃統制官が大活躍するシチュエーションである。
入り組んで視界と射界が悪く道路が狭い都市部都市戦で機甲部隊が機動力を活かすことは難しいが、「とりあえず火力と防御力で何とかなる状況」なら、装甲化された正規軍は普通に都市でも強いのだ。
ただ、逆を言えばそれだけで都市部のゲリコマを駆逐し尽くす事は不可能で、状況不利となればゲリコマは迷いなく隠れ潜み、次の奇襲の機会を伺う。
そして、その逃げ隠れた瞬間こそ、治安組織の強襲部隊の強みが最大限に発揮されるのだ。
彼らの戦術は間違ってもテロリストと正面から堂々と銃撃戦を挑むことではなく、「奇襲を得意とする隠れ潜むテロリスト相手に、”
だからこそ、”SST”や”SAT”は軍の斥候や偵察隊と違う視点で「よく敵を視る」のだ。
より詳しく言えば、「軍とは違う視点で敵の”動き自体”をよく観察する」ようだ。
それは事前に攻略する都市の詳細な地図を入手して「ゲリコマが如何にも潜みやすそうな場所」を検証するところから始まるらしい。
戦略爆撃で何もかも吹き飛ばした後の瓦礫の集合体ならともかく、今回のように「都市の原型が残った状態」ならばその有効性は失われることはない。
また、想定される状況に特化された個人携行装備も実に興味深い。
例えば、沿岸警備庁の”SST”。皇国軍(主に海軍陸戦隊)との共用装備がいくつかあり、”二式四十粍擲弾銃”や以前に小鳥遊君が言及していた”二式九糎対戦車噴進砲(二式ロタ砲)”、銃床が折り畳めコンパクト化できる”海兵28式短機関銃”、武35式自動拳銃などだが……どうも使用弾を中心に独自性が出ていた。
”SST”が二式四十粍擲弾銃向けに独自開発したのは、クロロアセトフェノン(CNガス、みどり剤とも呼ばれる)という催涙剤を充填した”催涙弾”だ。
まあ、これは確かに警察機構っぽいのだが、問題は二式ロタ砲の方で、海軍陸戦隊では主に対装甲用の成形炸薬(HEAT)弾や対人/対軽装甲用の汎用榴弾が主に戦闘時に使われるが、SSTでは新たに英国人が大好きな”粘着榴弾(HESH)”を開発した。
HESHとは平たく言えば、プラスチック爆薬の塊で、発射されると戦車の装甲にへばりついて爆発、その際の装甲内側に伝播される衝撃でホプキンソン効果を起こして飛散した内部破片で乗員を殺傷するという物だが、皇国軍のロタ砲であまり使われないのは、「敵戦車の装甲の材質や純度、厚みなどの様々な要素で破片効果が大きく増減し、威力が不安定になる」からだ。
しかし、”SST”が対象とするのは、装甲が売りの戦車ではなく、図体は大きいがまともな装甲なんてない”不審船”だ。
それならば、「高温高圧のメタルジェットの一点集中で装甲を穿つHEAT」より、プラスチック爆薬を叩きつけるほうが効果的と判断されたのだ。
ついでに言うと、装甲材ではなく壁やその他の一般的な構造材や遮蔽物にも単純な「高速発射されたへばりつく爆薬」だけあり効果的だ。
そして、海兵28式短機と武35式拳銃は、皇国軍がハーグ条約やジュネーブ条約に抵触しないようFMJ(フルメタルジャケット)弾を使用するように調整されているが、”SST”はJHP(ジャケッテッドホロ―ポイント)弾、前話で話したダムダム弾の子孫を使用弾としていた。
当然、防弾装備を持たない生身の人間のような「柔らかい標的」には効果覿面だ。
お次は、内務省管轄の”SAT”。
こちらにも二式擲弾銃とそれ用の催涙弾、二式ロタ砲とそれ用のHESHをSST同様に供与されている。
催涙弾の使い方は当然、SSTでもSATでも大差ない。
HESHは、SSTが不審船や「遮蔽物に隠れるあるいは盾にする襲撃者を遮蔽物ごと吹き飛ばす」目的で使われるが、SATはドアブリーチやウォールブレイカー、「建物のドアや壁に向けてぶっ放してぶっ壊す」為に使われ事が多い。
時には「内部の人間をまとめて吹き飛ばす」事もあるが、SATが投入されるような相手なら特に問題はないだろう。
加えて、必要であれば搭乗する、本職の海軍戦闘艦に比べれば見劣りするがそれなりに武装した巡視用の艦船艇の火力支援が受けられるSSTに比べ、SATはその任務の性質から独自装備が豊富だ。
象徴的なのはショットガン、軍用にも使われる散弾銃で、有名どころだとウィンチェスターM1912やレミントンM31、加えて新しいイサカM37なども配備されており、アメリカからの正規輸入品だけでなく国内ライセンス生産も行われており、特に最新のモデルは『ソウドオフ、ピストルグリップ&メタル・フォールディングストック』という組み合わせが主流になっているようだ。
また、拳銃についてもSATは独自の物を採用している。
これは軍(主に歩兵)にとって拳銃は、文字通りの”
ブローニング・ハイパワーのライセンス生産品である武35式軍用自動拳銃は、装弾数が多いし弾の威力もあるが、動作の確実性やより強装あるいは大口径の弾丸への対応力から、リボルバーが好まれているようだ。
特に象徴的なのは、1935年に357マグナム弾と共に「強力な357マグナム弾の発射に耐えられる拳銃」として発表された”S&W M27”、通称”レジスタード・マグナム”だ。
史実ではこれの3.5インチ銃身モデルがコルト・シングルアクション・アーミーと共に『パットン将軍の愛銃』として有名なのだが、”この世界線”においては、警察関係で一般的に普及している38スペシャル弾のリボルバーより高威力のリボルバーを欲していたSATが、M27と357マグナム弾が発表されるなり飛びつき、輸入のみならずショットガンと同じく日本でのライセンス生産契約まで取り付けてしまったらしい。
余談ながらSATだけでなく内務省関係の警察庁などの治安組織は「アメリカ産のショットガンと拳銃のヘビーユーザー」であり、例えば、一般的な制服警官には共に38口径/4インチ銃身の”S&W M10”や”コルト・オフィシャルポリス”が輸入/ライセンス生産品を問わずに広く普及していて、私服警官には服の中に隠蔽携行しやすい2インチ銃身のM10や”コルト・ディテクティブスペシャル”が官給される場合が多いようである。
また、警察機関の火力戦の主力兵装とも言える短機関銃は流石にSSTと同じく海兵28式だが、狙撃班が使う狙撃銃はシモヘイ御用達の”九九式狙撃銃”と基本的に同じものだが、陸軍のそれがかつての主力小銃である”梨園改三式歩兵銃”の改修であったのに対し、SAT向けの製品は新たに狙撃銃として追加製造された物であるらしい。
他にも、まだ開発途上ではあるが”閃光手榴弾(スタングレネードやフラッシュバンとも呼ばれる)”の試作品が既に試験配備されていたりと
このように装備だけでなく、訓練から編成・戦術にいたるまで良くも悪くも非対称戦・不正規戦に特化した両部隊が如何なる猛威を振るうかは……まあ、程なく明らかになるだろう。
なんか”SST”と”SAT”が何だか妙な事にw
いえ、SSTはまだ「陸戦より不審船に相手を変えた海軍陸戦隊」という雰囲気があるのですが、SATはもう何だか「どこの国の対テロ特殊部隊だよ?」という物騒な集団に……
「ロケランでHESHぶっ放して後ろに隠れてるテロリストごと壁に大穴空けて、グレランで催涙弾叩きこんだ後に突入」
いや、これって軍隊よりはマイルド……なわっきゃあないというw
ちなみにSAT、警察系の組織らしく(?)、ショットガンとリボルバーの愛好家が多いみたいです。
ただし、ショットガンは米国系の現行型や最新型、拳銃に至っては35年に発表されたばかりの357マグナム弾のリボルバーをいち早く導入しているという。
おまけにSATのみならずSST込みで拳銃弾はメタルジャケットじゃなくてホロ―ポイントなんですよねぇ~。
あれ? もしかして皇国正規軍相手にするよりヤバいんじゃ……
とりあえず、次回は市街戦が本格化するみたいですよ?
いや、まともな戦いになるんか?
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