転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

393 / 439
いや~、ちょい難産気味でいつもより執筆時間がかかりました。
まあ、ほぼサブタイ通りな内容ですが……日本皇国についての新情報、いくつか入ってたりします。
前話が終戦に向けての予想なら、今回は終戦後の予想など。

後は米国の現状かな?







第390話 戦争当事国の武装が第二次世界大戦終結後、世界に溢れる理由……に偽装した皇国の戦後世界における頭痛の種について

 

 

 

「少なくとも今生の日本、日本皇国は日英同盟が理由で『第二次世界大戦に参戦』して、日英同盟がドイツと停戦して、最後はどうにもしまらない終わり方になったけど、形はどうあれムッソリーニの”ファシスト・イタリアは打倒”できたから戦争を継続する理由が無くなる訳だ」

 

 英国もだが、イタリアの平定を成し遂げたら「もう第二次世界大戦を継続する理由が日本皇国にはない」と皇国親王、やがてサヴォイア公爵となる男は告げた。

 

「とはいえ、終戦宣言は今のところ出せないんだがな……残念ながら」

 

 思わずため息を突きそうな表情になる和仁だった。

 

「その理由はやっぱり、独ソ戦が終わってないから?」

 

「まあ、そうなる。少なくとも戦争の趨勢が決まるまで、安易な終戦宣言はかえって危険だ。何しろ米ソの動きが不穏すぎる」

 

「さっき言ってた”反転攻勢(バグラチオン)”に”ノルマンディー上陸(オーバーロード)”のこと?」

 

「ああ。皇国の諜報部も情報部も遊んでいる訳じゃないからな……兆候はガッツリ掴んでるよ」

 

 

【挿絵表示】

「今の戦況から考えると……一発逆転狙いの”乾坤一擲の大博打”ってとこ?」

 

「かもな。大統領選も近いし」

 

 ※1944年は米大統領選挙がある。

 

「最近のルーズベルトの支持率は”アカい側近””アカい米マスゴミ”、各種ロビイストが必死で動いている割にはイマイチ芳しくないようだし」

 

 対抗馬である共和党の”トーマス・SL・デューイ”は、『若く、米国孤立主義者でゴリゴリの保守派』というまるでルーズベルトと正反対の男だった。

 そして、彼を押し上げる共和党の”アンドリュー・ヴァーデンバーグ”と”ロジャー・タフト”、熱烈な反共主義者の”ハルバートン・フィッシャー三世”や反ルーズベルトの”ヨーゼフ・ウィリアム・マーティン・ジュニア”、”ブルーノーツ・バートン”などが中核となりデューイを後押ししていた。

 その模様を赤化汚染されていない米国では希少な独立系メディアが報じる事により、予想以上にまとまった”抵抗勢力”となっていたのだ。

 しかも最近は”レンドリース絡みで米軍の主流派との関係も冷え込んで”きている上に、デューイと共和党は『戦争に飽き始め、”ソ連に回す金を米国市民に使うべき”と自然発生的に考え始めた米国保守層市民』の支持を集めつつあった。

 

「知ってるか? 1980年代以降のアメリカは『(米国が認定する)悪に放ったトマホーク巡航弾の数だけ大統領の支持率が上がる』とされていたんだ」

 

「それを前倒ししようって事か……」

 

 そう考えこむ表情をするマリアンナに、

 

「まあ、米ソにとって望む結果が出る公算は低いだろうが……とりあえず、”市民に分かりやすい勝利という結果”をルーズベルトが求めているのは間違いないだろうさ。それはスターリンも一緒だろうが」

 

 我々の知る歴史とは、ドイツもその周辺国も状況が違いすぎるのだから当然だろう。

 史実のノルマンディー上陸作戦は1944年6月6日がいわゆる”D-DAY”で、バグラチオン作戦の発動は同じ44年の6月22日。

 何度かこれまでも話題に出したが、そもそもノルマンディー上陸作戦は、『ソ連(スターリン)が、ドイツのバルバロッサ作戦以降、英米連合軍に対して執拗に求めた「ヨーロッパ第ニ戦線」の形成要求を実現するために立案された』と思い切り史実の資料にすら記されているのだ。

 平たく言えば、「ルーズベルトを囲うアカいフレンド達が、スターリンからの命令に従い米国を動かした」という事になる。

 まあ、盛大に赤化汚染していた当時のアメリカがどういう国か実によくわかる。

 

「ルーズベルトが大統領の椅子から転がり落ちたら、下手しなくても即座に対ソ支援(レンドリース)も中止って事になりかねないだろうからね~」

 

「まあ、デューイが大統領になったら公約的にまずそうなるだろうな。とりあえず、米ソの独仏への挟撃が失敗するならそれで構わないが……もし万が一にも成功したら、確実に面倒なことになるだろうから、あんまり気楽に終戦宣言は出せないのさ」

 

「つまりドイツの次は、対日英同盟戦?」

 

「ソ連の状態はよくなく、米国は世論の誘導とかも必要だろうから、そんな即座にはできないだろうけどな。それにドイツもフランスもその周辺国もそこまで弱くない」

 

 米国自体は史実と”この世界線”でも大差ないがソ連はより劣勢であり、ドイツはレニングラードを陥落させ、英国と停戦を成し遂げ、周辺国との関係も良好だ。

 そして1943年11月現在、ドイツの国力は堅調に増大を続け、フランスは順調に再軍備をし国防力を強化している。

 

「結果から言うなら『万が一』の事態は想定すべきだが、実際にはgdgdな終戦ってのが一番、可能性が高いと思うぞ? 米ソはドイツ勢力を攻めきれず、かと言ってドイツも今以上の領土拡張は負担が大きくなり過ぎあまり意味がない。日英は正直、もう戦争に旨みがない……というか日本皇国も、この先、戦争とは別のベクトルで面倒なことになりそうだし」

 

「というと?」

 

「仏領インドシナがな……いや、ベトナムは”クォン・タム殿下”が王として返り咲き、ベトナム王国として復帰する道筋が既にできてるからいいんだが、同じ、”今のところは公的にはフランスの保護領扱いの”ラオス”と”カンボジア”がなぁ……」

 

 現在、正統フランスからぶん投げられたシリアとレバノンがどうにかこうにか独立に向けて軌道に乗ったというのに、今度はベトナムの隣国にも手を付けなければならない段取りになっているようだ。

 

「皇国政府としても将来的にあり得るポル・ポトの虐殺を容認する訳にはいかないからな。ラオスも”ラオス人民民主共和国(しゃかいしゅぎ)”じゃなくてラオス王国として成立・安定化させておきたいところだしな」

 

 日本皇国も”戦後世界”に向けて日々動いているということなのだろう。

 

「正直、皇国政府としても戦後は頭の痛い問題なんだ。インドシナ情勢の他にもイタリアを除いても、従来から親交のあったトルコやギリシャを含めてリビア三国連合(トリニティ)に独立予定のシリアにレバノンって急速に増えた”地中海沿岸の友好国”……今も”治安回復”名目で訓練込みで兵器を含めた装備供与はしてるけど、戦後は今度は『地中海の治安維持』って名目で兵器供与を本格化させなくちゃならない。まあ、要は中東の安定化のための伏線だよ」

 

 

【挿絵表示】

「そりゃまた大事(おおごと)ねぇ~」

 

 思い切り呆れた表情になるマリアンナだったが、和仁は溜息を突きつつ……

 

「それも仕方ない部分があってな。要は地中海の新旧友好国が自国である程度の国防と治安維持ができないと、皇国はいつまでもこの土地から足抜けできないんだ。100万の軍勢を延々と地中海に貼り付けておくなんて現実的じゃない? 現在、皇国軍は公称300万以上とされているが実情はかっつかつで、三次(最終)動員まで行った予備役と、間口を広げた軍の採用枠応募者に”予備士官制度”の学生まで、つまりまだ訓練中で実戦配備についていない者も含めての数字さ。軍人や軍隊ってより、軍属まで含めて300万人以上って表現の方がしっくりくる」

 

 現在、日本皇国の最新国勢調査では、国土が直接的に戦火に晒されない状況での戦時という特殊状況でベビーラッシュ(いつ戦場に行くかわからないから……という奴だ)が起きたことと、史実の大日本帝国に比べて資金的余力も国力も高く、日中戦争のような無意味な消耗戦に陥ってないせいもあり元々国民の栄養状態良好(加えて地味に医療水準も戦後レベルなので新生児の死亡率も明確に低い)、更には南は台湾島&北は樺太島という南北に延長された領土の開発も順調に進んでいるせいもあり、最盛期の戦後日本人口(1億2800万)に匹敵する程になってるとする資料があるが……

 それでも300万の有効な労働力を軍隊に取られるというのは、国政としては悪夢以外の何物でもないだろう。

 

 ちなみに和仁が語る”予備士官制度”は、米国のROTC(Reserve Officers' Training Corps)を参考に制度化されたもので、「主に大学生に学費の免除と単位の優遇と引換に、短期士官養成コースを受講させ、国家非常時には呼集する」という軍のリクルート制度の一つだ。

 まあ、学生側も「学費もタダになるし、万が一にも徴兵が始まって二等兵から始めるよりは……」と一定数の受講者がいた。

 現状、皇国では「議会の承認がなければ徴兵は行われない」とされているが、近衛内閣が”挙国一致内閣(たいせいよくさんかい)”である以上、本当に必要となれば問題なく施行される可能性は常に秘めているし、実際に「国勢調査との兼ね合いで、完全失業者や非就労者を中心とした徴兵予定者リスト」の作成は内々に始められているらしい。

 

 他にも、皇国空軍や海軍には、常に不足しがちなパイロットを確保するために、予備士官制度とは別に”飛行予科練習生(通称:予科練)”制度も有している。

 単純に「若年層が衣食住が保障された全寮制の寄宿舎で飛行免許が取れる」事が大きな売り文句だ。

 

「徴兵なんて皇国政府だって好き好んでやりたくないが、大軍を地中海に張りつけさせ続けるならば……まあ、徴兵制度が恒常化してもおかしくはないからな」

 

 むしろ、これだけ派手に戦争をやってるのに、未だに徴兵に至ってない日本皇国が驚異的だろう。

 これは歴代転生者達が心血注いだ(赤化が徹底排除された)教育制度や政府広報の賜物だが、現在の皇国臣民の意識としては「軍人=特殊公務員=一般公務員より給与の良い高給安定職」であり、エリートコースの一つと認識されている事も大きい。

 実際、戦前は「正規軍人、特に将校養成校は狭き門」という認識が一般的だった。

 

「多分、英国もコモンウェルスに対して似たり寄ったりの兵器供与や訓練はするだろうし、ソ連は戦後を迎えられれば”アカいフレンズ”を増やすために武器(エサ)をばら撒くだろうし、米国は……その時の政権方針次第か? レンドリースはともかく多かれ少なかれ、政治の道具として”対外有償軍事援助(Foreign Military Sales:FMS)”くらいはやりそうだが」

 

「あー、なるほど。そういう流れで世界中が武器に満ちると」

 

「皇国には縁の薄そうな話だが、戦時中に作り過ぎた余剰装備の有効利用って側面があるしな」

 

「ん? ”皇国には縁が薄い”ってどういうこと?」

 

 和仁は頷き、

 

「基本的に友好国に供与する兵器は第二次世界大戦のそれ……相手が米ソなんかの本体でもなければ、10年程度はそこまで酷い陳腐化は起こさないだろうが……」

 

 史実でも朝鮮戦争当時は第二次世界大戦当時の兵器がまだまだ現役で、一部は60年代のベトナム戦争でも正規装備として実戦投入されていたくらいだ。

 

「皇国はもう現行装備、全部じゃないけど戦後に改変予定の兵器群に関してはもう生産調整が入ってるから、そこまで余剰兵器は出ない……場合によっちゃあパラダイムシフトによる装備変更と並行しての友好国への兵器供与になるかもしれんのよ」

 

「え~と……」

 

「分かりづらいよな……どこから話したもんかな? あのな、前に”天皇家には転生者(サクセサー)が多い”って話はしたよな?」

 

「あっ、うん。覚えているけど……たしか、アマテラス陛下もそうよね?」

 

「”AKDの親玉”じゃねーし。いや、それはともかく……”転生者”なのは兄上、照仁陛下や俺だけじゃないんだ」

 

「えっ?」

 

「次兄の”康仁(やすひと)”親王、三兄の”信仁(のぶひと)”親王、四兄の”貴仁(たかひと)”親王……全員が転生者で、おまけに『軍の”技術畑(・・・)”』の所属なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれ、最後に爆弾(=和仁の兄たち)の気配ガガガ……


いえ、予定では今回で和仁とマリアンナのエピソードは終わらせるつもりだったんですよ?

ただ、米国と戦後の日本皇国の状況を書いてると、いつか入れようと思ってた皇族の皆様、和仁の残る兄三人(親王トリオ)の話を入れたくなりまして……
いや~、なんせ主に”技術面で”戦後に関わってきますし(えっ?

それは次回に譲るとして……日本皇国も戦後に面倒見る、もとい。支援するべき土地が増えて大変です。
そもそも北は樺太、南は台湾まで南北に本国領土が延伸してる上に、地中海沿岸諸国とインドシナ半島をカバーしなくてはならないという。

今話題のホットスポット、ペルシャ湾やホルムズ海峡は守備範囲では無いんですが、かと言って友好国が他人のフリができるほど離れているわけでもなく……
シーレーンの事や戦後の赤化著しいインドシナ半島情勢を考えると、戦後も放置できるはずもなく。

結局、「ある程度、国防も治安維持も自前でできる、”ちゃんとした独立国”になるまで支援する」のは、究極的には(史実米ソの末路を知る転生者が主に)「大量の皇国軍を国外に長期的進駐」をさせたくないからであり、それが逆に「アフターケアまで万全の独立支援をする皇国」という評判を呼び……

和仁:「あれ? 嫌な予感が……」

さて、次回は個性派(?)揃いの兄君達の話題かな?

ご感想、高評価、お気に入り登録してくださると大変嬉しいです。
次回もどうかよろしくお願いいたします。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。