これはうしとらのアニメが始まったばかりの頃にPixivに投稿したお話になってます。
少しでも暇つぶしになったら幸いです。
以前、藤村先生が借りてきた映画。
センパイと先生と私で観た映画。
大泥棒の三代目が城に囚われた令嬢を助ける物語。
センパイも、先生も、楽しそうに観てたけど。
私も、表向きは笑っていたけど、本当は吐き捨てたくなるほど嫌いだった。
なぜならば、
悪党に囚われても、助けてくれる正義の味方なんていないから。
そんなものが実在していたら、私はとうに解放されてるはずだから。
私を化け物から救ってくれる正義の味方なんていないのだ。
「てめえが死ね、虫けらジジイ」
そう言って、私が呼び出したサーヴァントは業火を吐き出し、お爺様を灰にした。
まわりにいた蟲達も、そのサーヴァントが出した電撃で全て焼き払われてしまった。
なぜ、こんなことになったのか。
今夜は、お爺様が入手した触媒を用いてサーヴァントを召喚するだけのはずだった。
呼び出した後はあらかじめ令呪を用いて作った偽臣の書を兄さんに預けて、サーヴァントのマスターの座を譲るだけだった。
お爺様が入手した触媒は、長い金色の髪の毛。ただし、人のものではない。
2000年前に京の都を震撼させた人を食らう伝説の大妖のものだそうだ。
その姿は獣そのもの。まるで、二本の足で立つ獅子のようで、その顔に浮かぶ紋様はまるで『虎』のようだった。
現界したその大妖を見るや否や、お爺様は大喜びで話しかけた。
『虎』は全く興味のなさそうな顔で話を聞いていたのだが、お爺様のある一言であからさまに表情を変えた。
すなわち、食事についての話だ。
好きなだけ食わせてやる。自分も大勢の人を食らった。別に止めたりはしない。
その言葉を聞いてその『虎』はニヤリと笑った。歓喜の笑いではない。それを見た途端、笑顔とは本来、獣が敵を威嚇するための表情であったという話を唐突に思い出した。
それほどまでにその笑みには敵意と殺意と、そして、怒りが込められていた。
お爺様だった灰を踏みにじった後、『虎』はこちらに向かって歩いてきた。
兄さんは、先ほどの光景を見て腰を抜かしている。
「おう、小娘。おめえがわしを呼んだますたぁか?」
「しかし、ハラァ減ったな。おい、小娘」
ああ、そうか。自分を呼び出した愚か者を食らう気なのか。私はやっと楽になれるのか。
ごめんなさい、センパイ、姉さん。
私は今日、ここで。
「おめえ、『はんばっが』って知ってっか?100個用意してこい。『かにぎょうざばっが』でもいい」
は?
「おいおい!何勝手なことしてんだよ!お前は僕のサーヴァントなんだぞ!僕の言うことを聞け!」
兄さんが冷静さを取り戻し、偽臣の書を使って『虎』に言うことを聞かせようとした。
『虎』の体に電撃が走る。
だが、相当の苦痛のはずがまるで蚊に刺されたかのように、ボリボリと体をかくだけだ。
「おめえ、バカか?カミナリ出すのはわしの十八番よ。てめえの毒で死ぬアホがどこにいるってんだクソボケ」
そう言って、兄さんを張り飛ばした。
「おい、小娘。今すぐ『はんばっが』を買ってこい」
「あの、ひょっとして、ハンバーガーのこと?」
「おう、そういやそんな名前だった」
訳がわからない。なぜ2000年前の大妖が現代のファーストフードを知ってるのか。
「あ、あの。今、私そんなにお金無くて」
いくら何でも100個も買えるほど今の私の財布は暖かくない。
「あ?なら……おい、小僧!」
そう言って兄さんに近づくと、逆さ吊りにして小刻みに降り始めた。
「わっわっわっ!やめろよ!キボヂわるっ!」
そして、兄さんのポケットから財布が出てくると中身を確かめ、
「茶色の紙切れが、ひい、ふう、みい……こんだけあれば買ってこれんだろ。今すぐ行って…いや、こんなところでじっと待つのはきれーだ。おい、小娘、サイフ。わしが乗せてってやるから案内しろ。そんではやく『はんばっが』を食わせろ」
もはや、ただの財布としかみなされてない兄さんと私を連れて外に出ようとする『虎』。
「あの、その。その姿のままじゃ」
「問題ねぇ、姿は消していく。おめえらは黙ってわしの背中に乗っとけ」
「で、でも」
「ウジウジと鬱陶しい小娘だな、おめえ。もたくさしてんじゃねえよ」
「知ってっか?乗りてえ風に乗り遅れた奴をマヌケってんだぜ?」
「わ、わかりました。行きます」
「な、なんで僕までグワっ!足を引っ張るなあ!」
新都にあるバーガー屋までサーヴァントを案内するのが、私のマスターとしての最初の仕事になるとは夢にも思わなかった。
今思えば、私はこの人生で初めて、乗りたい風に乗れたのだと思う。
化け物から救ってくれる正義の味方はいなかった。
けれども、私の世界を広げてくれた『とら』ならば、確かにそこにいた。
私のサーヴァント、ライダーとの関係の、これが、始まりだった。