夢幻世界と幻想郷の境界に建っている夢幻館は二人組の襲撃者との戦闘で瓦礫の山と化してしまった。
住む場所を失った夢幻館の住人は八雲 紫から夢幻館の再建の代価として一つの依頼を受ける。
それはZ市にいるヒーロー、サイタマの監視と調査だった。
これは夢幻館の番人を務めていたエリーによる少々私情の入った調査報告書である。
 
 

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夢幻館の麗しき女主人「風見 幽香」様。
これは幽香様の従者をやらせてもらっているエリーによる報告書でございます。
 
  


夢幻館 → Z市

 

 

それは突然の出来事でした。

 

 

何の前触れもなく二人組の無法者が夢幻館を襲撃、くるみと私を打ちのめして館に侵入し…

私たち二人のご主人である幽香様が侵入者たちを迎え撃っているのでしょう。

 

 

館の壁が内側から外側に向かって弾け、破片が飛び…

その直後に、ちょっとした家屋なら楽々飲み込めるであろう極太の光線が空の彼方へ飛んでゆく。

 

 

そんな光景が館のあちこちで目に入り、幾度も繰り返される攻撃で館は穴だらけになり…

 

 

終には夢幻館は耐えかねて地盤から崩壊、見るも無惨な瓦礫の山と化しました。

 

 

そして現在…

 

 

 

 

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私たちは幻想郷の外、Z市という街の中にある廃墟地帯におります。

目的はとある人間の調査と監視、そのためにこれから接触するところでございます。

 

 

幽香様の知己であり、妖怪の賢者と云われている八雲 紫。

彼女に夢幻館の再建をお願いした際、その代価として幻想郷の外にいる人間の監視を幽香様に依頼しやがったのです。

 

 

今思うと襲撃者の片割れ、博霊の巫女は紫がけしかけた可能性がありますわね。

巫女の襲来、夢幻館の倒壊、八雲 紫への依頼。

そう考えると夢幻世界と幻想郷を隔てている境界が緩んで出入口が広がったのも彼女の仕業ではないかと勘繰りたくなります。

幽香様が彼の賢者に対して何も仰ってくださらないのが気になりますが…

きっと私のような凡人には到底辿り着けない考えをお持ちなのでしょう。

 

 

「さっきから人っ子1人、見かけないね…」

 

 

一見、背の低い少女にしか見えない長い金髪の吸血鬼、くるみが疲れた口調で喋る。

普段は笑顔の愛くるしい彼女もこの異様な光景にはいい加減辟易している模様です。

人の住まないゴーストタウン。人気は一切感じられず、あるのは激しい戦闘の爪跡のみ。

 

 

「妖怪と違って本当に消えないのね」

 

 

こちらは我らの幽香様。

暇を持て余しておられるのか、広げた日傘をくるくると回しておられます。

ああ、美しゅうございます。

 

 

幽香様の見つめる視線の先には家ほどの大きさの怪人の死骸が一つ、道路に寝転がっております。

無謀にも私たちに襲いかかった怪人でしたが幽香様の光線の一撃で頭部を消し炭に変えられ

憐れ名も無き怪人は物言わぬ体と化したのです。

身の程を弁えない愚か者です。万死に値する行為です。死して当然です。

 

 

人の畏れが元で形を成す妖怪は死ぬと欠片も残さず消滅しますが…

どうもこの怪人というのは我らの知る妖怪とは根本が違うようです。

今もくるみが指でつんつんとつついておりますが反応を示しません。

 

 

「見えてきたわね。例の男がいる場所」

 

 

幽香様の紅い瞳に映っているのは例の男が住んでいるマンション、その一室。

目を細め、形の良い唇を三日月型に歪ませて…

背筋が凍り、身を震わせ、恐れおののきする程にとても暗い暗い笑顔を浮かべておられました。

 

 

それはそれは何よりも妖しく美しく…

 

 

 

 

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怪人発生率が多いと云われているZ市。

そのZ市でも屈指のホットスポットである立ち入り禁止区域。

怪人を討伐する役目を持ったヒーローたちでさえも危惧し、避ける難所。

そんな場所に好き好んで住む物好きなヒーローが1人おります。

件のヒーローが私たちの目的の人物なのです。

 

 

「いらっしゃい。…で、誰?」

 

 

開いたドアの隙間からハゲが顔を出しました。

この辺一帯が我が物顔で怪人たちが蔓延る危険地帯だということを一瞬忘れさせ、人の住まう安全な土地と錯覚してしまいそうな、悩み事とは縁のなさそうな能天気なハゲが…

 

 

ターゲットの男である「サイタマ」を前に、くるみは物珍しいのか無遠慮にじーっとハゲ頭を見つめ、幽香様は相手の実力を品定めをするように眺めております。

流石です。相手が何者であろうと手を抜かない姿勢にこのエリーは感服しております。

不肖、幽香様の従者をやらせて頂いてもらっているこのエリーも引き締め直して…

 

 

「先日隣に越した者で、引っ越しの挨拶に来たのですが…」

 

 

粗品ですが…と調理前のパスタを作り笑顔で手渡す。私たちは洋風派なのです。

無論、何の考えもなしにパスタを選んだわけではございません。

大抵の人間はパスタを作る機会はないでしょうから、料理をするという建前のもと家の中へ押し入り、家捜しをするという戦法です。

 

 

「お、サンキュー。もう帰っていいよ」

 

 

品を受け取るや否、扉をバタンと閉めやがりました。

ええ、それは気持ちのいいぐらいに。

あまりの雑な扱いっぷりに私たち一同は暫し唖然としました。

あの幽香様でさえ呆気に取られてキョトンとしております。実にキュートです。

 

 

私が言うのもなんですが私たちの容姿は整っている方だと自負しております。

それこそ道行く殿方が思わず振り向き、跡を追いかけ食事等に誘ったり

ここ立ち入り禁止区域に足を踏み入れようとした際には親切丁寧に説明をした上に体を張ってでも止めようとする者が現れたぐらいです。

もっとも彼らに興味を持たない私たちは足を止めることなく素通りさせてもらいましたが…

 

 

…とはいえこれほどまでに関心を持たないのは、些かムッとくるものがあります。

 

 

今度は強めにインターホンを鳴らして中にいる家主を呼びつけてみましょう。

 

 

扉が開いた瞬間、その隙間に指を入れて強引に開けさせるのは……私ではなく、幽香様。

 

 

「まどろっこしいのは面倒だから、単刀直入に言うわ」

 

 

 

 

私と戦いなさい …と

 

 

 

 

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あの後もごねるサイタマを説得し、なんとか採石場まで引っ張り出すことに成功しました。

 

 

――んで負けた方が勝った方にメシを奢る。…で、いいんだよな?」

 

 

お世辞にもカッコいいとは言い難い黄色のヒーロースーツを纏ったサイタマが親しそうに幽香様に確認してきやがります。

死ねばいいのに…

 

 

対する幽香様はまるで舞踏会に参加する淑女のように上品にクスッと笑って肯定しました。

ああ、憎しみだけで人が殺せたらと常々思います。

 

 

「でもここでサイタマを殺したらマズイんじゃないの?」

 

「構いません。あの女、八雲 紫も知った上で幽香様にお願いしたのでしょう。

 ここで死ぬような男ならば所詮そこまでの男。

 逆に幽香様をお相手に生き残る程の男ならば何かしら価値があるのでしょう」

 

 

首を軽く傾げるくるみに私は憶測を立てて説明をする。

もっとも私にとっては、幽香様に近づき害を与える者は皆等しく無価値ですが…

 

 

「くるみ、エリー……避けなさい」

 

 

日傘の尖端をサイタマに向け、短く告げる幽香様。

私たち二人は意図を察知し、上空へと飛び上がり、浮遊する。

途中サイタマが浮かぶ私たちを見て「おお、すげっ!」と感嘆の声を漏らしましたが…

 

 

そのサイタマに極太の光線が発射されました。

 

 

避ける暇もなく、躱わす隙も与えず

白色の分厚い光の束にサイタマは飲み込まれました。

 

 

サイタマからしてみれば、巨大な壁が忽然と現れ、高速で迫ってくるようなもの

体の頑丈な妖怪なら兎も角、人間ならば間違いなく致命傷を負い、場合によっては命を落としてしまう情け容赦のない幽香様の無慈悲な一撃。

矢鱈と勘の鋭いあの巫女は発射前に動いて物の見事に避けましたが、あれは例外中の例外です。

普通は為す術も無く攻撃に晒されてしまうのです。

 

 

その幽香様が放った分厚い光の壁に大きな孔が穿たれ…

 

 

次いで孔を起点に二つに大きく裂けていき…

 

 

雲が風で散って、霧が消え去るように煌めく粒子となって横に広がり…

 

 

最後には跡形もなく消え失せました。

 

 

…後に残るのは拳を前に突き出したサイタマの立ち姿。

信じられないことに幽香様の一撃を拳一つで防いだのです。

 

 

「貴方、何者なの?」

 

 

凍てつくような視線で問いかける幽香様にサイタマは…

 

 

「俺か? 俺は趣味でヒーローをやっている者で…」

 

 

 

 

サイタマと言うものだ

 

 

 

 

それが私たち夢幻館の住人とサイタマとの出会いの一幕でした。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

ワンパンマンのキャラの幻想入りがあるんだから
逆に東方のキャラがZ市に行ってもアリかな…? と思って書いたんだ。

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