ーツナsideー
ーーーー『ラル・ミルチ』。
元イタリア海軍の軍人で、『特殊部隊COMSUBIN』の教官であり、現在はツナの父・沢田家光のボスを務める〈CEDEF〉のメンバー。かつて『最強の7人の赤ん坊・アルコバレーノ』の『雨のアルコバレーノ』になる寸前、教え子であったコロネロが代わりに受け、『なりそこない』として生きていたが、ツナ達の活躍によって元の身体に戻った。
しかし、長年『アルコバレーノの呪い』を中途半端に受けていた後遺症なのか、肉体の老化が止まってしまったようであるが、プレシアの調べによると、コロネロが元の肉体年齢になる頃には元通りになるとの事で、現在も〈CEDEF〉のメンバーとして活動しつつ、バジルを鍛えている。
そして10年前、なのはとフェイトとはやての教官を一時期引き受けたのだが、そのあまりにもスパルタな修行で、なのはは毎日死体同然に疲弊し、フェイトは精神崩壊寸前まで追い詰められ、はやてに至っては臨死体験を繰り広げ、三途の川で他界した両親に再会した事が何度も会ったり、3人一緒にお花畑を眺めたりしたとか・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「「(ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!)」」」
そして、その鬼教官と8年ぶりに対峙し、なのは達は『時空管理局三大美女』と謳われたその美貌を、おたふく風邪になったみたいに腫れ上がってしまい冷たい床に正座して、まるで江戸時代のお裁きを受ける罪人の様な心持ちで、背中に不動明王が浮かび上がる様な憤怒のオーラを纏い、ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・と擬音を上げながら仁王立ちするラル・ミルチに脅えていた。
「(・・・・なのはちゃんって、一部の教え子達からは『鬼教官』って呼ばれているみたいだけど・・・・)」
「(ラル・ミルチさんと比べれば、なのはちゃんの鬼教官は幼稚園児向けの児童漫画に出てくる可愛い鬼で・・・・)」
「(アッチは地獄絵図に出てくるような『大鬼』だからな♪)」
ツナとエンマがソレを苦笑し、リボーンは楽しそうにしながら話していた。
なのは達の腫れ上がった顔を見て、獄寺と了平とランボは爆笑し、山本とクロームとバジルは苦笑し、ヴィータはFW陣とリィンと共に必死に笑いを堪え、アインス達は「お労しい」と言わんばかりに涙を流し、雲雀は興味無しと欠伸をしていた。
「・・・・さて」
「「「!!!」」」
遂に声を発したラル・ミルチに、正座したままのなのは達はビクゥッ!! と身体を揺らした。
「高町。テスタロッサ。八神。正直言って俺はお前達にーーーー“ソコまで期待を寄せていない”」
「「「!」」」
ラル・ミルチからの言葉に、なのは達は目を見開く。
「人間には『戦闘の才能』と言うものがある。お前達はその才能の『8割以上』を、『時空管理局の魔導士の戦い方』に使い切ってしまった。今からソレをより『実戦的な戦い方』に昇華するには、時間が無さ過ぎる。例えるならば、10年間アマチュアのカルチョ、サッカーしかしてこなかった選手に、いきなりプロのやり方を教え、ワールドカップに出場して優勝しろという様なものだ」
「う~ん、分かり易いような分かり難いような・・・・」
「ましてや、相手のジェイル・スカリエッティ側は『死ぬ気の炎』を使ってくる。『魔導士の戦い方』と『死ぬ気の炎の戦い方』はまるで違う。いや、ソレ以前に、奴らと同じ『炎』を使うのであればーーーー」
そう言ってラル・ミルチが会議室の扉に戻ると、アタッシュケースを持って来て開いた。
中に入っているのは『パルスオキシメーター』と、『十数個のリング』であった。それも、『守護者達のニューボンゴレリング』に似た形状で、宝石部分は各々の魔力光のカラーをしていた。
「ラル殿。この『リング』は・・・・?」
「・・・・『この時代の沢田』が、もし高町達が『死ぬ気の炎の戦い方』を本格的に学びたいと言い出した時に備えて、俺に持たせていた『リング』だ」
「えっ!? お、オレが?」
「流石です10代目! 先を見越してこんな物を用意していたとは!」
「うむ。見事な先見の明です、10代目」
「い、いや、獄寺くん、シグナム。用意したのはこの時代のオレだから・・・・ってそうだ、ラル! この時代のオレ達はどうしたの?」
「この時代の僕達から、どうやって『元の時代に戻った』のか、聞いていませんか?」
尊敬の目をする獄寺とシグナムに苦笑していたツナは、この時代の自分達の事を聞き、エンマもどうやって帰還してのかを聞くと、ラル・ミルチは少し難しい顔を浮かべる。
「ネオプリーモ、イヤ、沢田達と古里達は今は、“イタリアに行っている”」
『イタリア?』
イタリアを知らないFW陣を除いて首を傾げていたが、ラル・ミルチは話を続ける。
「少し前に、沢田達が共に戦った『仮面の戦士』がいてな。ソイツと少々因縁のある者が、イタリアで自分の軍団を編成しようとしている。その標的‹ターゲット›となっている者は記憶を失い、今は普通の高校生として生活しているので、沢田達ネオボンゴレと古里達シモンファミリーが代わりにソイツを捕らえる為に、イタリアに向かった。過去のお前達がどうやって戻ったのかは、俺は聞いていない」
「そう、なんだ・・・・」
「因みに、その『因縁のある者』って・・・・?」
「ふん。逆恨みですらない八つ当たりの為に、騒動を起こしている情けない小僧だ」
と、ラル・ミルチが吐き捨てる様に言ったが、どうやらこの時代のツナ達とエンマ達も戦っている様である。
「あの、ツナさん。今までちょくちょく出ていたけど、その『仮面の戦士』って、一体何なの?」
「あぁ〜・・・・ソレは今はこの際、無視して」
なのはが問うとツナは言葉を濁した。『彼ら』の存在が知られれば、〈時空管理局〉が漸く一応は平和に暮らしている彼らの『敵』になる可能性を考慮したからだ。
「ーーーー取り敢えず先ずは、FW陣の『死ぬ気の炎の属性』を調べるぞ」
リボーンが話を区切るように言うと、パルスオキシメーターを取り出して準備する。
「コレで私達の『属性』が分かるの?」
「あぁ。獄寺、お前が見本を見せてやれ」
「はい」
ティアナの問いにリボーンは獄寺に指示すると、クリップを上げて、獄寺は人差し指を奥まで入れる。
すると、
ーーーーピピピピピピピピッ・・・・。
メーターの液晶に赤いランプが灯り、更に青、黄、緑、紫の光が点滅した。
「この様に、自分の持つ『属性の波動』によって、各々の炎の色が光るんだぞ。獄寺は5つの『属性』を持っていて、最も強い波動が赤、つまり『嵐』だぞ。ソレより弱い波動は点滅する事になっているぞ」
『おぉ〜!』
メーターの説明を受け、先ずは隊長陣を調べる。
なのはは『大空』。フェイトは『雷』。はやては『雨』。アインスとリィンは1番強いのは『雲』で、他に『霧』。シグナムは『雨』。ヴィータは『嵐』。シャマルは『晴れ』。ザフィーラは『雷』である。
そして、FW陣も調べ、ティアナは『霧』。スバルは『晴れ』。キャルは『雲』。そしてエリオは『嵐』の属性が1番強く、他に『雷』の属性を持っていた。
「ーーーー良し。次はこのリングを使い、炎を灯してみろ」
リボーンに言われ、なのは達は各々の魔力光の色の宝石が付いたリング(FW陣は予備のリング)を使って炎を灯した。
が・・・・。
ーーーーボゥ!
『!?』
なのは達3人と、守護騎士達が灯した炎は、なのは達の頭くらい大きく、全員が目を見開いた。しかしその顔は、戸惑いの色が濃かった。
「スゴい! なのはさん達の炎! スゴく大きい! ツナ達にも負けてないよ!」
「は、はい! 私達の炎は、こんなに小さいのに・・・・」
スバルは目を輝かせてそう言うと、キャルも頷いて、自分達の小指の第1関節くらいの大きさの炎を見てボヤく。
が、
『・・・・・・・・・・・・』
「あれ? どうしたんですか?」
「馬鹿スバル。なのはさん達見て、何も思わないの?」
「え?」
戸惑いと動揺が大きいなのは達の顔を見て、スバルとキャル(とフリード)は首を傾げ、ティアナはスバルの頭をコツンと叩いた。
「・・・・『炎』を灯せるくらいの『覚悟』は残っていたようだな。FW陣のひよっこ達も中々やる。しかし、高町。テスタロッサ。八神。守護騎士達・・・・何だこの惨憺たる『炎』は? コレならまだ子供の頃のお前達の方がマシだったぞ?」
ラル・ミルチがそう言うと、1人を除いたFW陣が首を傾げると、リボーンがその1人に目を向けて声を発した。
「ーーーーエリオ。お前なら何がダメなのか察しているだろう?」
「えっ? ぼ、僕ですか!?」
「あぁ。遠慮はいらない。ハッキリと言ってやれ」
「・・・・・・・・・・・・」
全員の多種多様の視線を向けられて及び腰になるエリオだが、1回深呼吸してから意を決して声を発する。
「その・・・・ツナ兄ぃ達の『炎』は、小さいけどスゴく綺麗で力強く感じるんですけど、なのはさん達の『炎』、大きいけど、弱々しくて、薄くて、今にも消えてしまいそうに感じがしました」
『!?』
「(ニヤリ)流石は日頃から雲雀にマンツーマンで鍛えられていねぇな。そうだ。『死ぬ気の炎の戦い』は『炎の大きさ』で決まらない。『炎の純度』で決まるんだぞ。『純度』の高い炎こそ、より『強い覚悟』を持っている。『純度の低い炎』は『弱い覚悟』をしているって事だぞ。ーーーー因みに、コレが10年前、始めて炎を灯した時のなのは達の炎だぞ」
エリオの指摘に隊長陣は肩を揺らし、薄く笑みを浮かべたリボーンがレオンをカメラに変え、そしてソコに映し出された映像には、幼い頃のなのはとフェイトとはやてが、始めて『死ぬ気の炎』を灯した映像が映し出された。
『大きさ』はFW陣と同じだが、『純度』は今のなのは達よりも綺麗であった。
「まさかここまで腑抜けていたとはな・・・・」
「「(ビクッ!!)」」
背後からのラル・ミルチの静かな怒気を孕んだ声に、なのはとフェイトとはやては再びビクッと跳ね上がる。
ーーーーゴン!×8
「「「きゃんっ!」」」
「あだっ!?」
「「「「な、何で私達(我ら)まで!?」」」」
ラル・ミルチは一瞬でなのはとフェイトとはやてだけでなく、リィンを除いた守護騎士達にも拳骨を振り下ろされ、頭に大きなコブを作る。
「守護騎士達も、『炎』が昔より純度が落ちている上に、高町達‹コイツら›を甘やかし続けていた責任だ」
『うぅっ・・・・』
昔よりも腑抜けていた事と、なのは達3人を甘やかしてきた事の自覚を、ツナ達との日々で痛感していた守護騎士達はグゥの音もでなかった。そしてラル・ミルチは改めてなのは達3人に向き直る。
「お前達3人に『期待』は持っていないが、一応『教え子』だからな。せめて、死ぬ可能性を少しでも下げれるように鍛えてやる。その為にも、腑抜けきったその性根を叩き直す!ーーーー『ザムザ』!」
ラル・ミルチが匣‹ボックス›兵器から『雲の死ぬ気の炎』を纏った大きなムカデ、『雲ムカデのザムザ』が飛び出してきた。
『!?』
「「「ぎゃっ!! ザムザ!?」」」
宙を浮かぶ大きなムカデにFW陣はギョッとなり、なのはとフェイトとはやては顔を青ざめさせると直ぐに立ち上がり、ダッと逃げようとするが、その3人を纏めて巻き付いて捕らえるザムザ。
『ーーーーーーーー!!!』
「「「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・!!」」」
目の前でザムザの威嚇され、3人は涙目になってしまう。
「さて、さっさと訓練に行くぞ」
「「「い、いぃぃやぁああああああああああああああああああああああっっ!!!」」」
ラル・ミルチと共に会議室から出るなのは達3人の悲痛な叫びが、アースラ全体に響き渡った。