I.S.F インフィニット・ストラトス×Fate   作:ボイス

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「よぅ、衛宮」

「…………」

 不意にかけられた声音に対し、振り返る士郎の片眼である視界に映るのはふたりの女生徒であった。

 ひとりは、金の髪をうなじで束ねた生徒。

 もうひとりは、太めの三つ編み髪に小柄で猫背。

「…………」

 今一度、士郎はふたりの女生徒を見改めていた。顔と名前が一致しない彼からすれば、返答につまるのは致し方ない。

 思わず不躾に視線を向けてしまっている士郎ではあるが、長身の生徒はニタリと――どこか意味深のように――口元を歪ませていた。

「お? なんだなんだ? そんなにマジマジと見入って。あ? なんだ? アレか? 惚れたか? 俺の魅力に中てられたのは、そりゃまぁ仕方がねェな」

 何がそんなに面白いのか、ゲラゲラと笑いながら士郎の背をバシバシと叩き彼女。

「…………」

 無言のまま、士郎は片眼をぱちくりとさせていた。

 呆然、である。

(なにを言ってるんだ……コイツは……)

 そのようについ胸中で呟いてしまうのも当然と言えよう。

 なによりも、士郎を一際困惑させたのは相手の恰好であった。独自にカスタマイズされているIS学園指定の制服にもかかわらず、胸元は大きく開かれ、スカートは短く深いスリットすら入っている。加えて、上下ともに黒い下着が露出する程に。

 制服を身に纏っているとはいえ、女性特有の肢体のラインがはっきりとわかる。

 彼とて歳相応の男児であり、眼のやり場に困るのだから。

 士郎の心の声に同調したかのように、小柄の生徒が口を挟む。

「なに言ってんスか? みっともない恰好に呆れてるんスよ」

「あ? お前こそなに言ってんだよ。見惚れてる、の間違いだろ?」

「うわぁ、そこまで自信満々に応えられるなんて、ある意味アホっスね」

 そんなふたりのやりとりを耳にしてはいるのだが、自意識過剰としか思えぬ言動に対し、どう反応していいのかわからないといった複雑な心境になりながらも彼は言葉を洩らしていた。

「ええと……」

「ダリルだ。ダリル・ケイシー」

「フォルテっス」

「……どうも」

 軽く自己紹介する彼女たちに、一拍間を置き会釈する士郎であるが――ダリル、フォルテとの両者の名には聴き覚えがあった。

 千冬と真耶から教えられていた、IS学園一年生以外の専用機所持者の存在。楯無の他に二年生と三年生にそれぞれひとりずついるとも聴かされていた。

 もっとも、あくまでも士郎が知っていたとする範囲は、学年と名前、所持する専用機IS、所属国家のみである。

 三年生のアメリカ代表候補生、ダリル・ケイシー――

 二年生のギリシャ代表候補生、フォルテ・サファイア――

「…………」

 頭の中にしまってある情報をもとに、彼は別の事を考えていた。声をかけられたということは、なにかしらの用があるということになる。

事実、ふたりからは挨拶だけをしにきたという雰囲気は感じ取れていなかった。

 意識したわけではないのだが、些か表情を硬くする士郎は問いかけていた。

「それで……ケイシー、先輩……? なにか、俺に御用でしょうか?」

 確か機体の名は『ヘルハウンド』だったかと探りを入れながら自然と構える。

 が――

「なんだよ、そんなに構えんなっての」

「あ、いえ、そういうつもりはないんですけれど」

「身構えんなよ、気楽にしろっての。表情堅ェぞ? オイ」

「はあ……」

 陽気に笑いながら歩み寄るダリルは士郎の背を再びバシバシと叩くと、そのまま腕を伸ばし肩を組んでいた。

「――――」

 無造作、とも呼べるほどに肩に手を回してくる彼女に対し、士郎は困惑するだけである。

 表現するならば『気さく』な性格であろう。とはいえども、それは良く言えばであり、悪く言ってしまえば馴れ馴れしいことに他ならない。

 身長差により肩を組まれているため頬が触れるほどに密着されており、女性特有の甘い香りが士郎の鼻腔をくすぐる。

 だが、ここで更に士郎を戸惑わせる事態が生じていた。

「あの……」

「あ?」

 敢えて視線を逸らし、申し訳なさそうに言葉を洩らす士郎であるが、相手は気にした様子も見せていない。指摘するかどうか迷う彼ではあるが――やはり示すべきであると告げていた。

「……その……すみません、胸が、当たってるんですが……」

「なんだ、ンなことか? 当ててやってんだ。気にすんな」

「…………」

 士郎は言葉を失うのみである。

(……え? なんでそのぐらいで、的な感じで済まされるのさ……)

 自身が知り得る範囲に該当しないタイプの女性である。

 自堕落、わがまま、暴君姉として振舞う――衛宮邸で主に士郎に対してだが――藤村大河とて、恥じらいに関してはここまで無頓着ではない。

 敢えて、敢えてであるが――

 例えるならば、恥じらいを一切合財捨てた藤村大河と美綴綾子、蒔寺楓の三人を足して半分に割ったような感じの人間だと判断するのは士郎の心の中の秘密である。

 半ばヘッドロックに近い体勢へと変わっていく状態である士郎の一方、フォルテとしては些か不機嫌そうな表情へと変わっていく。

 心なしか、声音にも棘が含まれていくことになるのだが。

「先輩、彼、嫌がってるっスよ」

「あ? なにを嫌がってるってんだよ。男にとっちゃ役得だろ?」

「――――」

 よりによって、なんてことを言うんだと抗議しかける士郎であるが、首に回されているダリルの腕が喉を締め付けているため声が出ない。

 豊満な胸を彼に押し当てながら――当然わかっていながらなのは言うまでもないが――フォルテは続ける。

「超が付くほどガサツで恥じらいもない相手に、どう対応していいかわかんないってトコっスよ」

「…………」

 見事なまでに的を得ている指摘である。欲を言えば、ストレート過ぎずに、もう少し言葉を包んでもよいと思うところであるが。

 と――

「…………」

 先から鼻腔をくすぐる甘い匂いに士郎の意識が向けられる。

 この匂いと似たようなものを、以前どこかでかいだような覚えを感じていた。

 それと同時に、締まる戒めが些か緩まったところで士郎は口を開いていた。

「先輩、あの……」

「ダリルでいいっての。それにお前、本来俺とタメだろ? 敬語なんてやめろっての」

「それじゃあ、ダリルさん……香水、つけてますよね?」

「なんだ? クセェか?」

「いえ、そうではなくて……この香水って――」

 学園祭時に接客した、とある女性と同じ香りがしたために。

 香水の種類などごまんとある。高いのか安いのか、ブランド物なのかそうでないのか、士郎が香水に詳しいわけもない。たまたま似たようなものを眼の前の女性が使っているのかもしれない。個人的には高価なイメージが拭いきれていなかったりする。

 それ故に、士郎自身もどうしてそんなことを口にしようとしたのかわからぬのだが。

 そもそも、何を訊こうとしたのだろうか。

 だが、そんな彼の疑問を遮るように割り込んでいたのはフォルテである。ああなるほどと合点がいったという顔をして。

「汗臭いから離れろって言いてェんすよ。安物のコロンでどんなに誤魔化しても、もともとの汗臭ェもんは汗臭ェっスからねぇ」

 そう告げると、フォルテは士郎へと視線を向ける。

「アンタも、物事はハッキリと言ってやったほうがイイっスよ? この人は、ちゃんと言われないと理解できない可哀想な人っスから」

「…………」

 どうして先からもうひとりはこんなにも毒舌なのだろうか……?

 そんな士郎の胸中での疑問など知る由もなく、フォルテの発言にダリルは食ってかかっていた。

「お前、コレ、結構高価ェんだぞ?」

 高い、との言葉にやはりそうかと頷き士郎。

 しかしながら、フォルテは呆れ顔となるだけだった。

「先輩に、そんなモンが買える甲斐性があるとは思えねえっスよ」

「うるせぇなぁ。ああ、そうだよ。貰いモンだよ。それがどうしたよ? 悪いかよ? ああ?」

「あろうことか逆ギレっスか? つくづくクズっスね」

「なんだとー」

「まぁ。そんなことはどうでもイイっス」

「どうでもよかねェだろうが。おい、衛宮、俺は汗臭くねぇからなっ!?」

 そこはハッキリとさせておくぞとばかりに何故か少々きつめに念押ししてくるダリルであるが、対する士郎はといえば気のない返事で応えるのみ。

 と――

 本来の目的を思い出したのかダリルは表情を改める。

「それよりもだ衛宮、ちっとばかし付き合えよ」

「……付き合う?」

「ああ、お前、一丁前に専用機を持ってんだろ? ヤろうぜ。相手しろよ」

「…………」

 その一言で士郎は理解していた。

 コイツはISでの模擬戦を望んでいる――

「…………」

 とはいえど、模擬戦をするにも今の士郎には制限が課せられていた。身体が動くことに変わりはないが、片眼を覆う眼帯姿。補助杖を使い歩行するのがやっとの恰好である。加えて、彼は現在二点によりIS操作一連の類全てを行うことを許されていなかった。

 一点は、今の姿の士郎である。にも関わらず、そんな現状の彼を相手にダリルは模擬戦を挑むというのだから。

 どう応えようかと迷う士郎だが――その前にフォルテの気だるそうな声音が割り込んでいた。

「先輩、彼、一応怪我人なんスよ? 無理に模擬戦なんかに付き合せて、更に余計な怪我でもさせたらやっぱマズイっスよ?」

「あ? ンなこと気にしてんのか そんなモン唾でもつけときゃ治んだろうが」

 それがどうしたとばかりに応えるダリルに対し、心底呆れたかのように――わざとらしき大きな溜め息を漏らしながら――だるそうにフォルテは続けていた。

「そりゃ先輩みたいな怪我とは無縁の脳筋メスゴリラとは違うっスからねェ」

「……お前、さっきから聴いてりゃ、俺のことボロクソじゃねぇか?」

「気のせいっスよ」

 ぷいとそっぽを向くフォルテであるが、そんな彼女にもこのような悪態をつくにも理由がある。

 それもそのはずに。

 フォルテにとってみれば、自分の大切な恋人が他人にやたらべたべたと触れ合っている姿など、見ていて決して面白いわけがない。なによりも、先から必要以上に密着し過ぎている。

 ダリルもダリルとて、士郎の反応を面白がっては更にからかうために始末が悪い。

 故に、フォルテの心情、表情ともに不愉快度は増すばかりである。

「それと、彼も嫌がってるっスよ。いつまでも肩組まれてて迷惑そうっスよ。先輩があまりにも汗臭いから辛そうなんスね」

「お前、ぶん殴られてェのか? なんだよ、お前もコイツとヤってみてぇだろ?」

「……正直、どうでもいいっスかねェ」

「なんだよ。ノリが悪いなぁ。ホントは一発ヤってみてぇんだろ?」

「先輩みたいな興味本位は、生憎と微塵もないっスねぇ」

「…………」

 さて――

 ふたり……士郎を含めて三人ではあるが、先からの会話はこの場に居るだけの者たちで交わされている。

 会話だけは、であるが。

 たまたま廊下に居合わせている他の女生徒たちからの士郎への視線は酷く白かった。否、むしろこれ以上ないほどの侮蔑に近い。

 『ヤる』やら『一発』やら、部分部分の言葉だけとられてしまえば、あらぬ誤解を受けかねないために。もはや遅いが。

 別の意味で余計な面倒事に巻き込まれていることに関し、士郎は頭が痛かったのだが。

「まあいい、そういうわけだ。つーことで付き合えよ」

「……今からですか?」

「今からに決まってんだろ? ほら、いくぞ」

「あ、いや――」

 士郎の返答を待とうとせず、ダリルは半ば無理やり連行しようとする。

 だが――

「なにをしている」

 割り込み一喝する声音。そちらへ三人が視線を向けてみれば――そこに立つのは織斑千冬であった。

 思わず『うげっ』と声を漏らしていたのはフォルテであったりするが。

 瞬時に状況を見抜いた千冬の鋭い眼光は、その中のダリルへと定められていた。

「ケイシー、なにをしている」

「なにって、別になんもしてねーんですけど? なぁ、衛宮?」

 同意を求めるように肩に手を回した恰好のまま応えるダリルではあるが、千冬はフンと鼻を鳴らしていた。

「大方理由は察しがつく。衛宮はまだ怪我が治っていない。余計なちょっかいをかけるな」

「ちょっかいなんて出してやしませんよ。ただ模擬戦に付き合えって話をしただけですし」

「言ったはずだ。衛宮の怪我は治っていない。そんな状態のコイツと模擬戦の許可など出せるわけがなかろう」

 あくまで淡々と告げる千冬ではあるが、対照にダリルは軽口を叩く。

「そんなにマジになんなくてもいいじゃねーんすかねぇ? 模擬戦つったって、シミュレーターもあるんですから」

 ダリルが口にしたシミュレーターとは、学園内に設けられている仮想IS訓練用のものである。

 ISを操作する上でのあらゆるデータを取り組み、仮想空間内で再現するAI――

 とはいっても、シミュレーターは所詮シミュレーターでしかないのだが。

 ISコアが組まれているわけではないため、操作性においてはハイパーセンサーなどといった、どうしてもコアに頼らざるをえない機能が備わっていない。

 当然のことながら、IS訓練には実際の機体を使用した方が成果として影響があるが。

 マイナス面が大きく突出するが、シミュレーターでの特性が完全にないわけでもない。場所や天候などといった立地条件を自由に組み替えることができるのは、データを取り組み仮想空間内で再現するAIならではといったところであろう。

 例えれば、IS学園である一生徒に対し、市街地で周囲に被害を一切出さずに模擬戦をしてみろといわれたとしても、どだい無理な話であろう。射撃に関してもペイント弾を使用し周囲に配慮したとしても、逸れた流れ弾の行方までは対処できない。

 一寸の狂いもなく、とある市街地を忠実に再現して模擬戦時においてて好き放題破壊されても懐がまったく痛まないといった上流階級富裕層者にとっては別であろうが。

「生徒同士が切磋琢磨することは別に間違っちゃいやしませんが? 教師が生徒の技術に対する向上心を抑制するってのはおかしいと思いますがねェ?」

 ダリルが指摘する件は間違ってはいない。生徒同士が模擬戦を行い、互いに勝っている部分、劣っている部分、戦略性、行動、考察力、洞察力等、なにを補うべきかが分かるものや得られるものはおおいに存在する。

 しかし――

 千冬は一切取り合おうとはしなかった。

 何故ならば、士郎がISの操作を許されぬ残るもう一点というものが、千冬の許可が必要であるからだった。

 如何なる理由があろうとも、千冬自身からの許可が下りない限り、ISを起動、ならびに触れることすら認めらぬ現状維持である。

 無論の事、模擬戦などもってのほかであり、更に付け加えておくのならば、整備すら許されていないのだから。

 以上を踏まえた上で、彼女が容認するわけがない。

「どんな容であれ、許可は出さん」

「シミュレーションぐらい問題ないでしょう? 別に怪我するわけでもねーんですし。それとも……」

 そこで一度言葉を区切り、ダリルは自身の唇を舌でぺろりと舐める。

「なにか、衛宮にゃシミュレーションを触らせちゃ不味いことでもあるってんですかねぇ?」

 ISによる模擬戦ならまだしも、仮想訓練すら規制するということに対してかまをかけるダリルではあるが――それがどうしたとばかりに、千冬の表情に変化はなにも現れはしない。

「好きなように捉えろ。どう詮索しようがお前の勝手だが、二度も言わせるな。許可はせん」

「お堅いこって」

 はあやれやれと肩を竦めるダリルに――そこでようやく千冬の表情に変化が生まれる。ニタリ、と邪に口元は歪みへと。

「そうか、そんなに模擬戦がしたいというのなら、特別に、このわたしが相手になってやろう」

「…………」

 なにを告げられたかわからぬと、ダリルは一瞬真顔になり――無言となっていた。その返答は、半ば予想はしていなかったからだ。

 構わずに、千冬は続ける。

「お前たちが満足するまで、存分に組手稽古の相手をしてやると言っている」

「ちょ――まっ、待ってほしいっス! なんスかっ!? 『たち』? 今、『たち』って言ったんスかっ!? まさか、わたしも入ってるっスかっ!?」

 だるそうにしていたフォルテが自分を指さし食ってかかるが――千冬はつまらなそうに視線を向けるのみ。

 ()()()()()()

 元世界最強、織斑千冬を相手にしてなど、身体がいくつあっても足りはしない。

 瞬く間にダリルとフォルテの両名は顔色を悪くするのみ。

「いやいやいやいや」

「わざわざ織斑先生のお手を煩わせるまでもないッスよ」

「ほう? 衛宮は良くて、わたしでは不服だと言うのか?」

「いやいや、お呼びじゃないんで、ご遠慮願いますよ」

「そ、そんなこと言ってないっス! 滅相もないっスよ!?」

 が――

 千冬は、返答の変わりにごきりごきりと拳を鳴らしていたのだった。

「なんで骨鳴らしてるっスかっ!? 意味わかんねっスよっ!?」

「わからないだと? そんなものは至極簡単だ。それはな、これからお前たちを殴るためだ」

 この言葉にフォルテは顔色を一気に蒼くする。

「な、殴るって言ったスかっ!? た、体罰っスよ、体罰っ!? そ――それに、サンドバッグなら、このド腐れ先輩ひとりだけで十分スよっ!? 鬱憤晴らしにちょうどイイっスよ」

「なにしれっと俺だけにしてんだお前。もともとの提案は、フォルテ、お前だろうがっ!?」

「知らないっスよ。リアルサンドバッグは先輩だけにしてほしいっス」

 なんとか取り繕うとするフォルテと、冗談ではないとするダリル。責任を擦り付け合う姿は見ていて酷く始末が悪い。

 だが――

 千冬にとっては、そんなふたりのやりとりなど関係がないのだが。

「遠慮するな、連帯責任だ。二人まとめてでも構わん。それに体罰と言ったな? ああ。その通りだ」

「み、認めたっスね! なら――」

「認めたから、どうだというんだ?」

「……ス?」

「こちらの口頭による指導に従わぬ者に対し、やむを得ず、教育的名目上、肉体的苦痛を与える罰を加えることはわたしとて心が傷む」

「…………」

「ああ、本当にな……私的に罰を科す目的で、今からお前たちの身体への暴力行為に移らねばならんとはなぁ。それに、仮にも専用機持ちであるお前らふたりが今更体罰だなんだと泣き言抜かすわけでもあるまいなぁ?」

 ニタニタと底意地の悪い笑みを浮かべる千冬に対し、フォルテはぶんぶかと頭を振る。

「横暴っスよ!? 顔と言動とが一致してねっスよっ!?」

 と――

 もはや付き合ってられぬと、脱兎のごとく駆け出し逃げるふたりであるが――格別千冬は追いかけるわけでもない。

「逃げ足だけは見事な奴らだ」

 フンと鼻を鳴らす彼女は士郎へと向き直る。

「衛宮、お前もあのふたりに馬鹿正直に付き合う必要もない。相手にするな」

「いや、断るもなにも有無を言わさぬ流れでしたから……」

「お前らしいといえばお前らしいが、言うべきものはきちんと口にしろ」

「……善処します」

「まぁ、そう堅くなるな。半分は冗談だが、一応気には留めておけ。今のお前に、これ以上の負担をかけさせるわけにはいかんからな」

 千冬は士郎の肩をぽんと叩いていた。

 

   ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「存外、ブリュンヒルデの監視の眼はキツイものがあるね。引き続き機会はうかがうけれど、なかなか難しいと思うぜ?」

 一言二言頷き――

「ああ、ああ……なにかあったらまた連絡するぜ、叔母さん」

 携帯電話の通話を切り、彼女は笑みを浮かべていた。




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