スタスク「今日からこの俺様がナザリックのニューリーダーだ!」
モモンガ「所詮お前はナンバートゥーなのだ!」
だいたいそんな話。

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第1話 異世界への道

さて、今日のオーバーロードは…。

 

 

 

2126年……人々を支配する悪の政府と企業は、

圧政に苦しむ下層市民のためにとてつもないゲームを作り出した!

 

体感型ゲームDMMO-RPG、ユグドラシル。

基本の職業は2000以上。

課金をしデータクリスタルをぶち込めば装備の見た目も自由自在。

凄まじい自由度を誇るゲーム! 

人々はたちまち熱中した!

このゲーム、運営がとち狂うことが稀によくあるが、その他は本当によく出来ているのである!

 

そんなユグドラシルで数千あるギルドで第9位を達成した42人のギルドがいた。

社会人かつ異形種であることが入会条件のアインズ・ウール・ゴウンである。

そしてそんなギルドに一人の自動人形(オートマトン)が所属していた。

アインズ・ウール・ゴウンには戦闘メイド・プレアデスが常に玉座の間を守っていた…、しかし!

悪の人間達から異形種を守る正義のナザリックは全ての攻撃をはねのけた!

戦闘メイド達に出番はなかったのである。

その中にシズ・デルタという大変可愛らしい自動人形(オートマトン)がいたが、

我らの主人公………彼はそんな可憐な見た目ではない。

ロボであった。

角ばった黒い頭、紅い胴体、白い腕、白い足、そして戦闘機の翼が二翼背中についていて、

ブロック状の肩には大きなビームキャノンが接続されている。

かつて日本や合衆国で人気を博した

日常系ロボットアニメ・トランスフォーマーのスタースクリームというキャラクターの模倣だ!

見た目こそ強くたくましい戦士ロボであるが、彼の特徴は何と言っても裏切りだ。

 

「みんな良く聞け!

 今日からこのスタースクリーム様がアインズ・ウール・ゴウンのニューリーダーだ!

 モモンガのような老いぼれ骸骨の時代は終わったぜ!」

 

「まーた始まったよ」

 

「今月三回目か。 調子いいなぁスタスクさん」

 

「きゃー! やめてー! スタスクさん、ちょ…撃たないでぇー!

 ペロロンチーノぉぉ! タブラさん! 見てないで止めて!」

 

今日もスタースクリームは裏切るのである!

スタースクリームのニューリーダー病とも言われている裏切り癖。

スタスクを語る上では欠かせない重大な要素で、

プレイヤーたる彼もそれを再現するのに余念がない。

スタースクリームと同じ姿を再現しようとする彼が、裏切りを再現しないわけがないのだ!

 

「裏切らないスタースクリームはスタースクリームじゃない! 覚悟しろ、モモンガトロン!

 俺のミサイル攻撃でお陀仏だぜ!」

 

「誰ですかモモンガトロンって! しかもぜんっぜんミサイルじゃないし! きゃー!」

 

ナザリック内でミサイル攻撃という名のビーム攻撃を繰り返し、

モモンガと追いかけっこをするのはもはや日常風景。

さぁ、戦いだ!

 

「いや、その理屈はおかしい。 初代以外は意外と裏切ってないぞ。

 まぁお前の見た目は完全に初代のスタースクリームだけど。

 ビーストウォーズ2130、

 グレートメタルスゴリラに出てくるスタースクリームはすごい忠義者で―――」

 

アルベドの産みの親、設定厨のタコ頭モンスター、タブラ・スマラグディナは

その風景を眺めながらのんびりとツッコミを入れるが当然のように誰も聞かない!

 

「モモンガトロン! 時代は新しいリーダーを必要としている!

 るし★ふぁー、義によって助太刀! これは革命である!」

 

そこにイタズラ大好きのナザリックの問題児が参戦…、

悪ノリは加速する。

一体、ナザリックのニューリーダーは誰になるのだろうか!

 

「叛乱……いい響きだ。 これぞ悪……。

 だが、ニューリーダーはこの私だ!

 バカなお前達に、このナザリックは率いることはできん!」

 

「テメェ、ウルベルトロン! 裏切りやがったな!」

 

ぐぬぬ顔でスタースクリームは叫んだ!

 

「誰だよウルベルトロンって! …って、ぐわーッ!?」

 

ニューリーダー宣言をした途端に

スタースクリームのロックオンはモモンガからウルベルトへと切り替わった。

肩部ビーム砲・ナルビームがウルベルトのすぐ目の前に着弾し爆発!

ウルベルトは煤だらけだ!

その時である!

 

「いまだ! スタースクリームとウルベルトロンとモモンガトロンと……

 ええい面倒だ、全員を誅殺せよ! Myゴーレム’s!!」

 

「「「「ギゴガガガガ」」」」

 

るし★ふぁーが命じた途端、円卓の壁に設置されていたゴーレムが動き出したのだ。

 

「うわーーー!」

 

「ぬわーーー!」

 

「きゃーーーーーー!」

 

ゴーレムのビーム爆発だ!

スタースクリームとウルベルトとモモンガを爆風が襲う!

だが、彼らだけではない。

 

「えっ、ちょっ、あれ動くの――ぶふっ!?」

 

「ぎゃあああああッ!!!」

 

「ひょえええええ!!!」

 

「腐れゴーレムクラフタぁぁぁあああ!!」

 

円卓の間の全てをビーム爆発と煤が襲う。

全てのプレイヤーの目にダメージ0が連続して表示された。

ダメージはない。 だが全員真っ黒だ!

その時である!

 

「終わり! 終わりです終わり! 今のなんですかるし★ふぁーさん!

 あっ、皆さん今日もありがとうございました」

 

スタースクリームが急に攻撃を止め、口調も丁寧なものに変わった。

一体何を企んでいるというのか!

 

「はーい、スタスクさん今日もお疲れ様でした」

 

モモンガがにこやかアイコンを表示させて笑う。

企みなど何もない。

そう、彼らは結局、社会人ギルドなのだ!

OnOffとホウ・レン・ソウを大事にする性分なのであった。

 

「いやぁ、今日も叛乱は失敗かぁ」

 

「一体スタスクさんがギルドリーダーになるのは何時の日だろうねぇ」

 

「あのバカじゃギルド運営は無理だろー」

 

「ははは! 確かに」

 

「あっ、るし★ふぁーさんはそこに正座」

 

「アッハイ」

 

「なんであのゴーレム動くんですかねぇ」

 

「あれはね、モモンガさん」

 

「カロリックストーンの数も合わないんですよねぇ」

 

「……」

 

フッ、とるし★ふぁーの姿が消えた。

ログオフである!

 

「あっ! ちょっと! るし★ふぁーーーーー!!!」

 

「ちょろまかしたな」

 

「ちょろまかしましたね」

 

これはナザリックの日常風景。

モモンガはこんな日々が大好きだった。

 

 

――

でー、でー、でー、でーん(アイキャッチ)

――

 

 

「そんなこともありましたねぇ」

 

笑って会話する骸骨とロボは、楽しげだがどこか寂しさに溢れていた。

彼らが全員揃っていた日々も今は遠く…。

ユグドラシル屈指の強豪DQNギルド『アインズ・ウール・ゴウン』も二人きりで、

そもそもゲーム自体があと少しで終わる。

今日の24:00で、全部終わるのだ。

2年ぶりにログインしてくれたヘロヘロも先程帰ってしまった。

 

「モモンガさん、そろそろ玉座行って魔王ロールプレイして締めましょうよ。

 ほら、それも持って。 その杖も一度くらいギルド長の貴方が握ってあげれば喜ぶでしょう」

 

スタースクリームが項垂れ気味の頭を持ち上げてそう言った。

 

「そうですね……そろそろ良い時間だし」

 

ギルド武器である豪華な杖を手に取り、寂しそうな声色のモモンガだが、

それに反してスタースクリームの声は笑いを押し殺したような震えた声だ。

 

(あっ、この人ヤル気だ)

 

本人(本ロボ)は隠しているようだがバレバレだった。

最後なんだし、何より恒例行事(叛乱)は人数が多いほうが色々と盛り上がる。

例え、NPCでも賑やかしが多いと精神的な楽しさが違うのだ。

そう思うモモンガが執事や戦闘メイド達を従えて廊下を歩く。

玉座の間は目前だ!

大きな大きな扉が開き、守護者統括アルベドが脇に立つ空の玉座にモモンガが腰掛けた。

 

(ごくり……。 何時だ…何時仕掛けてくる、スタスクさん!)

 

ちょっとそわそわしつつモモンガが平静を装っている。

そわそわカタカタと震える手でギルドマスター権限でアルベドの設定を覗いたり、

設定最後の一文を浮ついた感情でなんとなく書き換えたりしていた…

その時である!

 

「モモンガトロン!」

 

いままで大人しく従っていたスタースクリームが恐ろしげな声色で突如叫んだ!

思わずモモンガはビクリと肩を揺らし、

何度か書き換えていたアルベドの設定の変更を決定してしまった。

 

「俺は長い間この時を待っていたんだ!

 その杖と玉座はこのスタースクリーム様が頂くぜ!」

 

「ぬぅ! スタースクリーム! 最後の最後にこの私を裏切るのか!」

 

このモモンガ、のりのりである。

 

「HAHAHAHAHA! お前を倒すために開発した俺様の部下達を見せてやる!」

 

「なに!?」

 

「コンバットロン! 来い!」

 

スタースクリームが叫ぶと、玉座の間の大扉をぶち破る金属音だ!

 

「ああっ!? そ、そいつらは!

 この前スタスクさんが散々自慢していた

 合体することで真価を発揮するスタスクさんお手製NPC!

 自動人形5人組のコンバットロン!

 『最後にこいつでモモンガさんにデッカイ反乱起こしてみせますよ!』

 と、言っていたブルーティカスを使う気か!!」

 

「ふふふ! なかなか記憶力がいいじゃないか、モモンガ!

 脳みそまでアンデッド化しているわけじゃないようだな。

 一体一体はレベル50程度だが、

 合体することでレベル250相当(当社比)の巨大ロボになるのさ!(スタスクの願望です)

 コイツでさすがのモモンガさんも永遠にグッドナイト! ハハハハ!」

 

果たしてモモンガの運命やいかに!

 

「おやめください!」

 

「至高の御方々がこのように相争うなど…! ど、どうか……!

 スタースクリーム様! 何かお気に召さぬことあれば、このセバスにお申し付けください!

 この老骨……全てを捧げ、スタースクリーム様のご不満を鎮めてご覧にいれます!」

 

オロオロと右往左往するサキュバスと竜人な執事長。

と、彼女らと共にやはり右往左往する戦闘メイド達。

と、やはり彼女らと一緒に右往左往するコンバットロン5体。

 

「ええい邪魔をするな貴様ら! これは私とスタースクリームの問…だい……、

 え? あ、あれ? んんんん!?」

 

「なんだお前達、このニューリーダーに逆らうのか!

 千葉トロンみたいな渋い声だしやがって!

 …………ん?」

 

何故かボクサーのようなファイティングポーズで見合っていた骸骨とロボ。

彼らはようやく異常事態に気付いたのだ!

 

「「えええええええええええ!?」」

 

二人は幽霊を見たかのように怯え、そのままお互いの肩を抱き合って震え上がった!

 

「「しゃ、喋ったぁぁーーーーーーーーーーー!!!!」」

 

勝手に喋った!

勝手に動いた!

きゃーきゃーきゃー!

騒ぐ二人。

一体ナザリックに何が起きたというのか!

果たして彼らの運命は!



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