漠然とだけど解る。
ボクの身体は…もう幾何も保たない。
後天性免疫不全症候群…それによってボクの身体の免疫力が低下し、あらゆる感染症や細菌への抗体がなくなり、それによって…無菌室でメディキュボイドに繋がれて…。蝕まれていく身体で、ただ死を待つだけ。
でも…メディキュボイドのフルダイブを使用したVRMMOの世界で出会った仲間と、そして友達と過ごした日々が、何よりも輝いて…。
あぁ…こんなにもボクは満たされたんだ…。あとは…その時が来る。それまで精一杯生きれば良いや… 。
『本当にキミはそれで良いのかい?』
…誰だろう?ここって…メディキュボイドのマイルーム…、基本的に隣のアミュスフィアを使わない限り、ここにダイブ出来ないのに…?
『僕が誰だなんて、そんなことはどうでも良いんだ、重要なことじゃない。
キミは、その身体を治したいと…そう思わないのかい?』
…ムリだよ…、ボクのこの病気にはクスリへの抗体があるんだ。それに…倉橋先生が手を尽くしてくれたけど…延命するくらいしか打つ手がないみたいだし…。
『じゃあもし、僕がその病気を治せるって言ったら?』
ははっ、面白い冗談だね。
そんなことが出来るなら、まさに魔法みたいだ。
でも…そんな漫画みたいなことなんて…。
『そんな漫画みたいな事があるとしたら、キミは元気になった身体でどうしたいんだい?』
元気になった身体で、か。
…やっぱり…自分の身体でアスナやキリト達と…学校に行きたいなぁ…。
一緒に勉強して、
一緒に御飯を食べて、
一緒に…お休みの日には遊びに行って…
一緒に……学校を卒業は…歳的にムリかな…あはは。
『じゃあ僕がそれを叶えてあげるよ。』
え?
『でもその対価として…
僕と契約して、魔法少女になってよ!!』
「これが…ボクのOSS…マザーズ・ロザリオ!!」
神速の十一連突が、目の前の異型に叩き込まれる。見るからに漫画やアニメで出て来そうなグロテスクで、絵に描いたようなその怪物は、見事に四散。周囲を覆っていた不穏な空間…曰く、魔女の結界は霧散した。
「ふぅ、これで今現れている魔女は一掃できたかな?」
『流石だね木綿季。こう言うのを獅子奮迅の活躍、って言うのかな。』
「流石にそれは言い過ぎだよ。」
背後から音も無く現れた彼?に、ボクは振り向くこともなく応じる。
彼?と契約して…ボクの願いである健康な身体を得た代わりに、街に現れる異型…魔女を狩ることを約束した。元々戦うのには慣れていたし、それによって動き回れるなら願ったり叶ったりだ。
余命幾ばくもないと思っていたボクが、まさにいきなり全快したとなったときは大騒ぎだった。担当医の倉橋先生は驚くやら喜ぶやらで、駆けつけたアスナと一緒になって大泣きし始める始末。まぁそのあとは、アスナを連れて来たキリトと一緒に宥めるのに大変だったけど、検査諸々を経て、問題のない健康体と診断され、社会復帰のためにリハビリをこなして…。そして退院の日になると、アスナと一緒に迎えに来た人がいた。どうやらアスナの両親らしく、ボクを引き取りたいと言った。曰く、前々から倉橋先生に打診していたらしく、リハビリ完了の暁には一緒に暮らしたいと話していたとか。どうやらアスナが掛け合ってくれたらしく、以前ボクが彼女とお母さんにぶつかってみるように助言したのも知っていたらしい。それで…お母さんの方も恩義を感じて賛成したらしい。…別にそんなつもりじゃなかったんだけどなぁ…。まぁボクの方も退院出来るとも思ってなかったのも事実で、嬉しい誤算…と言うかなんというか…。ともあれ、帰る家は…有るにはあるけど、すぐに住むことが出来ないのも事実なので、そんなこんなで結城家にお世話になることになった。…このままアスナの家に養子にでもなれば、本当に
そして結城家に来て1日目の夜。宛がわれている部屋で、若干緊張しながら就寝準備していると、窓に気配を感じて見てみれば…白い猫?だか狐?だか解らない生物がいた。ソイツから、前に言ってた契約…魔法少女になったこととその意味、役割を聞かされた。それと同時に…メディキュボイドのダイブから目覚めたときに手に持っていた宝石…ソウルジェムとか言うらしいそれを持って、魔法少女への変身をさせられた。眩い光と共に、ボクの着ていたパジャマは霧散して…、赤と紫を基調とした服に身を包み、手には無骨で…とても手に馴染む直形片手剣が握られていた。…何処かで見たような服だと思って鏡を見れば、ALOでボクのアバターがしていた服その物を纏った自身の姿。…流石に耳は尖ってないし、髪も明確なまでに紫になってない。あと背中にインプの羽根もない。でもそれ以外は、あの姿その物だった。
そして…導かれるままに繰り出した魔女狩り。
最初こそはゲームとは違う、本物のモンスターを目の当たりにして、若干すくんでしまったけど、手に持った剣をがむしゃらに…、そして何時ものように振るってみると、まるでALOのソードスキルのようなエフェクトと共にホリゾンタルが発動。呆気なく魔女の部下である使い魔を、まるでポリゴンが霧散するかの如く葬った。
「あれ?…これって案外…イケるのかな?」
そこからは、まるでALOの中にいるかのように、軽やかに、そして思うがままに剣を振るって一匹、また一匹消し飛ばしていく。VRMMOの中のモンスターよりも緩慢で、見切りやすい動き。それだけにボクは、脚色が強いかも知れないけども、蝶のように舞い、蜂のように刺すかのように剣を振るい、切り裂く。
そして…使い魔をある程度片付けると、その群れの奥にいた一際大きな異型…魔女本体に狙いを定める。剣を顔の高さに持ち上げ、肘と片足を引いて、まるで弓を引き絞るかのように構える。
そして…一呼吸。
脚に篭めた力を一気に解放し、アスナのリニアーの速力ほどではないけど、それに迫るほどの踏み込みで一気に突っ込む。
渾身の力を込めて、相手を突き貫くソードスキルであるヴォーバル・ストライクの模倣。けれども、模倣と言っても、やはりソードスキルのエフェクトが発生して、刺突の威力を上乗せするかのようにアシストが掛かり、ボクの身体より一回り二回り大きなその体躯を一撃で貫き…そして…
霧散させた。
『木綿季、君の魔法少女としての力は他に類を見ないものだ。一体何をイメージしたんだい?』
魔女の体から放り出されたジェムをまじまじと見つめていると、白い猫もどきが歩み寄ってくる。どうやらボクの闘い方に興味があるみたいだ。
「何…って言われてもなぁ…。ボクはただ、戦いの時の格好、なんて言われたから、ゲームの中での格好を思い浮かべたらこうなった、としか言えないんだけど。」
『剣を持って戦う魔法少女は中々珍しいからね。少し聞いてみただけさ。』
「だよねぇ…、魔法少女って言ったら、フリフリの服を着て、そんでファンシーな杖を振りかざして呪文を唱えるのが普通だよねぇ。」
『キミ達の魔法少女への概念は僕の知るところではないけど、君の力は賞賛に値するよ。魔法少女を始めて一週間だなんて到底思えないくらいだ。』
ボク自身、これだけ戦えるのは驚いているのは確かだ。何せ、ALO…いや、元はデスゲームだったSAOにあったソードスキルが、現実でも扱えるんだ。驚くのもムリはなかった。それに…ボクの
曰く、魔法少女として契約したとき、戦いのイメージその物が戦闘スタイルに反映されたのだろうとのことだけど…。
「とりあえず…今日はこれくらいにして家に戻るよ。アスナにバレたら、どやされそうだしさ。」
『そうしたいのなら、木綿季の好きにすれば良いよ。少なくとも、この辺りに魔女は居ないみたいだ。』
「らじゃっ。じゃあまたね、キュウべぇ。」
『あぁ。また木綿季。』
そう白い猫もどき…キュウべぇと分かれ、ようやく慣れてきたこの夜の街を駆けだした。時間的に、普通は寝静まっている時間で、もう日付は変わっている。…確か今日も編入試験のための家庭教師が来る日だったんだよなぁ…。アスナ達と同じ学校に入るためとは言え…頑張らないと!そう思うと、疲れたはずの足取りが自然と軽くなり、ボクは家路へと急いだ。
そして…
魔法少女として戦う中で出会った仲間。
「へぇ…アンタも剣で戦うんだ?ちょっと私と手合わせしてくれないかな?」
「いいよ。ボクもさやかの力に興味あるし、実戦形式…デュエルしよう!」
敵?味方?どっちか解らない人。
「ここはアタシの縄張りだ。グリーフシード目当てなら、他を当たりなよ。」
「べ、別にグリーフシードが目的じゃないよ!魔女を倒さないと、犠牲者が出るんだ。ここは協力して…」
「…何か調子狂うな…。」
そして…
「ど、どうしたの?紺野さん。まるで人を射殺せそうな目をしてこっち見てるけど…。」
「平気、へっちゃら。平気、へっちゃら。平気、へっちゃら……」
「確かにマミさんの
そして…新しい友達。
「ま、待ってよ木綿季ちゃん!」
「ほら、まどか!急がないと、クレープ売り切れちゃうよ!!」
それと共に向けられる…嫉妬の目。
「|まどかとあんなに仲良さげに…!うらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましいうらやましい…」
「はぅっ!?な、何なの、この悪寒…。」
そして…訪れるは
「タンクローリーよ!!」
「
背から生えるのは…コウモリを彷彿させる半透明の黒い翼。
それをはためかせ…ボクは…ボクらは行く。
すべてを終わらせる魔女の舞踏会。それのフィナーレを迎えるために。
VRMMOで出会った沢山の友人が生きるこの世界を、
現実で友達になってくれた皆を、
家で帰りを待ってくれる大切な人達を護るために。
ボクは…全てを込めて。
取り戻したこの命を燃やす。
魔法少女ユウキ☆マギカ
始まりそうにない、なぁ…。
誰得…。