人魚を釣り上げたので世話する事にした   作:ちゅーに菌

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この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス(https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja)に準拠します。

どうもちゅーに菌or病魔です。

さあ、今回からようやく本格的にSCPが出るようになります。

一部変更点としてこっちの方がしっくり来るかなと思ったので
Ω-8→Ω-7´
となりました、どうもすみません。

実は2017年頃にこの話で出す予定の情報を2ヶ月ぐらい掛けて考えたのですが、スマホの荒ぶりで丸々消し飛び、猛烈にモチベーションが抉れたため、この話を投稿するまで情報の再生にとても時間が掛かったりげふんげふん。

それではお楽しみください。




メニューと藤丸立香

 

 

 

 

「メニューが幾つか出来たので試食だ!」

 

「はいっ!」

 

「………………」

 

 とりあえず、喫茶店で出すメニューが幾つか。完成したのでその場に居合わせ、絶妙な引き笑いをしているぐっさんに食わせることにした。後、店は開けておらず、厨房は外から見えないのでリップちゃんも実体化させている。

 

 他の店員はそれぞれの理由でいないのでリップちゃんを除けばぐっさんと二人っきりである。ひょっとしたら我ら二人がカルデアで一番暇な者なのではないかと考えたが、悲しいのでそれ以上は考えるのを止める。

 

 ちなみにぐっさんは中国産の真祖だと大々的にカルデアに伝えたところ、かなりすんなりと受け入れられた。まあ、本来は敵対的な組織に属している俺でさえ、今ではカルデアの職員から昔話を聞かせて欲しいと引き止められる事もあるので当然と言えば当然だろう。

 

 

 その1 "秒替わり定食"

 

 

 基本的には主食、汁物、主菜、副菜、副菜の美しいまでの黄金率にちょっとしたものを付けただけの至って普通の定食である。アレルギーは俺が全智者で見て判断して勝手に避けたモノを出すので問題ない。

 

「びょ、秒替わり……?」

 

「その時、店の冷蔵庫にあったもので余っていたり日切れが間近だったり多かったりしたモノを食材を使ってイブさんの気分で作られる定食だ」

 

 例えば日切れの近い卵が多く残っていたら日替わり定食にオムレツが乗ったりするようなことだ。つまりはただの喫茶店の知恵である。

 

「俺は大々的に言っているが、喫茶店の日替わりランチ等はだいたいそのようなもんだ。わざわざオススメにされていないだけ温情だな」

 

「わぁ……美味しいです!」

 

 今回は二人ともご飯、肉の山椒焼き山芋のおかか煮添え、なめ茸のホウレン草和え、大根のべったら漬け、寄せ玉子の清汁、黒糖ムースである。

 

 リップちゃんはとても嬉しそうに食べており、ぐっさんは食べる度に眉間押さえているが、箸は止まっていないので楽しんでくれていることだろう。善きかな善きかな。

 

「なんでお前は……あんなに巫山戯た奴なのにご飯に関してだけは"えんまちゃん"より美味しいのよ……」

 

「概念レベルで食べ手のことしか考えてないからじゃねぇかな?」

 

 そもそも外なる神(アウター・ゴッド)クラスの邪神である俺にとって食事はひと欠片も必要が無いことである。故にそんな俺が料理をする理由は大前提として他者に食べさせることが支柱となっているのだ。

 

 それがなんだと思われるかも知れないが、案外これは非常に重要なことだと個人的には思う。何せ、三大欲求のひとつによって生み出された料理と、欲求を介さず生み出された料理とでは明らかな差がある。欲求を持ち、作られた料理にはどうしても本能的な雑味が加わり、欲求を介さない料理にはそういったものが一切ないのだ。

 

 こんな言い方はどうかと思うが俺の料理はある種、料理として解脱しているのである。まあ、味としてはそんなに大差無いがな。よく味わえば違いがわかる程度なので普通は気にするようなことではない。

 

「後は年の功だな」

 

 えんまちゃん――恐らく紅閻魔ちゃんをぐっさんを知っていることに少し驚いたが、流石に俺からすればまだまだ幼女もいいところの娘に料理で負けたら凹む。マジで凹む。

 

 

 その2 "ヒュドラ肉のステーキ・人魚さんの祝福風味"

 

 

 300gのヒュドラ肉のステーキである。ちなみに名前には書いてあるが、特に人魚さんは関わっていない。デフォルメの人魚さんが描かれたお子さまランチの旗のようなものが立っているだけである。

 

 ちなみにヒュドラから奇奇神酒というお酒が体内から沢山ドロップしたので、デカンタに移してそれも付けてある。しかし、改めて考えると職務中に酒はマズいな……紙パックでも作って詰めておいたモノを出した方が持って帰れるからいいかも知れない。

 

「ヒュドラ……?」

 

「大丈夫だ。俺はちゃんと"ヒュドラ調理師免許"を持っているからな」

 

「そ、そんなものがあるんですか!?」

 

 俺はヒュドラ調理師免許と書かれた免許証をぐっさんとリップちゃんに見せた。ちなみに登録番号はNo.2と書かれている。まあ、俺を含めて持ってる奴は二人しか居ないらしいけどな。発行元がぼやいていたのをまだ覚えている。

 

 紀元前、もうかれこれ2000年以上前の話だから懐かしいなぁ……。

 

「ちなみにヒュドラは調理(毒抜き)よりも一体倒すと群れで寄ってくるから危険だ」

 

 まあ、一網打尽にしてしまったがな。お陰で在庫に肉が溢れている。

 

「…………ねぇ、秒替わり定食で食べたお肉と同じ味がするんだけど」

 

「喫茶店の知恵だ」

 

「その丁寧なごり押しを止めろ」

 

 ステーキの二人の評価はとても良さそうだった。まあ、素材がいいからな。

 

 

 その3 "ニンジングラッセ"

 

 

 ツヤツヤのニンジンである。ちなみにグラッセとはフランス料理用語で、つやを出す調理法。そのように調理した食品のことだ。

 

 作り方はにんじんの皮をむき、好きに切る。今は放射状に6等分に切って面取りをしてある。次に塩少々が入った熱湯でにんじんが柔らかくなるまで茹でる。更に鍋にバター・砂糖を入れ、弱火にかけ砂糖を溶かす。最後に茹でたにんじんを加え、バターがなくなる程度までしっかりからめるといった次第である。

 

 付け合わせと呼ばれればそれまでだが、これだけでも中々いいツマミになると俺は思う。

 

「ちょっと動かないでくれ」

 

「何よ?」

 

 俺はニンジンの葉っぱをぐっさんの頭の上に乗せた。

 

『おれはパセリ……』

 

 その直後、男性の低い声でそんな音が響き渡る。

 

「………………なにこれ」

 

「ニンジン」

 

『おれはパセリ……』

 

「意味わかんないわよ!?」

 

 母さんが持って帰って来た謎のニンジンである。最初はキモいと思っていたのだが、普通のニンジンではこうはいかないのでなんだか愛着が沸いて、今では家の庭で割りと沢山栽培しているのだ。

 

「"SCP"なんじゃないでしょうねそれ……」

 

『おれはパセリ……』

 

 ぐっさんが頭の上の葉っぱをリップちゃんの頭の上に乗せながらそんなことを呟いている。

 

「なあ、ぐっさん」

 

「何よ? というかその変なあだ名、止め――」

 

「SCPって何?」

 

 その言葉を吐いた瞬間、ぐっさんはポカンとした表情で固まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 SCPとは、SCPと呼称される自然法則に反した物品・場所・存在を取り扱う組織――"SCP財団"の名称である。名前の意味はSpecial Containment Procedures、つまり特別収容プロトコル。

 

 SCPの保護・研究を世界各国の政府より委任された秘密組織であり、財団はSCPオブジェクトが一般市民の目に触れれば彼らの日常生活や正常な感覚を揺るがすだけでなく、場合によっては人類の生存そのものを脅かしかねないと考えている。そのため、財団は集団パニックや予想される混乱を避け、人類の文明を正常に機能させるためSCPを秘密裏に保管し、また一部のSCPについては、将来の脅威に対処するための知識を求めて研究を行っているということだそうだ。

 

「そんな組織を"母さんが創設した"とか新手のギャグかよ」

 

「は……? 今なんて?」

 

 この星にあるSCP財団とやらは母さんが創設した組織らしい。昔、手紙の中にそんな単語が書いてあったことを、ふと思い出したのである。

 

「なんで尚更知らないのよ!?」

 

「興味が無かった」

 

「そういう奴だったわねそう言えば……」

 

 ぐっさんは目を閉じて溜め息を吐いた。

 

 ちなみにリップちゃんはお腹がいっぱいになったためかすやすやと眠ってしまったので、毛布を掛けておいた。何故か時々"飴玉……飴玉が……"と何やら呟いており悪夢にうなされるような様子に見えるが、飴玉の悪夢とは随分ファンシーだな。

 

 話を戻すと、ぐっさんがSCPとぼやいていたのはSCPオブジェクトというモノの事だそうだ。

 

 SCPオブジェクトは自然法則に反した異常な存在・場所・物体・現象の総称であり、大きく分けると3つにクラス分けされる。

 

 ひとつはSafeクラス。現時点において安全かつ確実に収容できるか、対象をわざと活性化させない限り異常な現象は発生しないというものがこのクラスに割り当てられる。必ずしも異常な現象が発生しても財団職員と全人類に影響はないという意味ではない。

 

 ふたつ目はEuclidクラス。性質が不明であるか予測ができない場合に割り当てられるクラス。自我や知性を持つ異常存在に対しても、それ自身が思考・活動することにより本質的に予測不可能であるという観点から、通常はこちらに分類される。

 

 最後にKeterクラス。財団職員および全人類に危険をもたらす存在で、収容時に複雑な手順を要するか現時点で財団による収容ができない場合に割り振られる。

 

「正直、言っていいか?」

 

「何よ?」

 

「オブジェクトクラスの意味がわからないから、わかりやすいモノに例えて欲しい」

 

「包丁、ゴリラ、隕石」

 

「なるほど」

 

 若干、ぐっさんがとても投げやりな気がするが、なんとなく理解できた。それにしてもぐっさんはSCP財団のことよく知っているな。

 

「カルデアの職員には例外的にレベル2セキュリティクリアランスが与えられているのよ。だから、財団の最低レベルの機密に目を通す事は出来るわ」

 

 そう言いながらぐっさんは財布から2と大きく番号の振られたカードを取り出して俺に見せてきた。

 

「収容されているSCPオブジェクトのファイルを暇潰しに眺めるのは丁度いいわ。まあ、最低レベルだからあんまり見れないけれどね」

 

「はーん」

 

 つまりあれか、ぐっさんはもっと高いセキュリティクリアランスとやらがあったら嬉しいんだな?

 

「…………おい、待て。なんで無言で出て行く? 止まれ!」

 

 ぐっさんの言葉を聞き流しつつ、俺は母さんの研究室まで移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイテム番号:SCP-████

 

オブジェクトクラス:Euclid

 

特別収容プロトコル:

SCP-████は小型追跡装置を埋め込まれ、現在はサイト-《削除済み》に収容されています。SCP-████は模範的な態度と財団職員への協力を継続したことから、サイト職員として認可されたことに伴い、現在のところクラス3(制限付き)の社会的権利を与えられています。

SCP-████は、危険性がなく、交流したスタッフの士気を大きく上げることが観察されています。

 

説明: SCP-████(かつては藤丸立香として知られる)はコーカソイド系の女性です。記録によるとSCP-████は████で生まれ、確保された時点では██歳でした。彼女はオレンジに近い茶髪に黄色い目をしており、記録の時点での身長は███cm、体重は██kgでした。彼女はいかなる物理的異常の傾向も見せず、あらゆる点において標準的かつ健康な人間であると観察されます。試験も行われましたが、対象とヒトを隔てる特性はなにも見つかりませんでした。

 

対象は活発な性格であり、誰とでもコミュニケーションが可能な存在ならば何とでも可能です。また、対象の身体的、精神的なあらゆる能力は平均の域を出ません。少なくとも平均的な財団職員から見れば特筆すべき特徴は何もありません。そのため、多くの財団職員にって対象は才能がない等と感じ、庇護欲に駆られ、愛情を向けます。これはミーム的な特徴こそ持ちますが、異常性はありません。更に対象と交流したすべての財団スタッフが、この愛情に対し好意的な反応を示しています。通常は社会病質(ソシオパス)的な傾向を示すDクラスでさえも、そうなのです。

 

事案記録████-1: /████/02/14、SCP-████は数日掛けてサイト██内の食堂にある物品から███個のチョコレートを作製し、それらを財団職員とSCPオブジェクトに配り歩きました。チョコレートに一切の異常性はありませんが、SCP-████が対象へチョコレートを渡すと、如何なる状況においてもSCP-████へ対象に纏わる何かを返すという異常性が発現しました。

渡された対象への返す理由についてインタビューを実施すると、貰うだけでは申し訳ない、貰ったら返さなくてはならない、生まれて初めて母親以外からチョコレートを貰った等と要領を得ず、ミーム的な影響や脅迫的精神病的な様子は一切ありません。

 

十代の日頃の感謝を止めさせるのも忍びないし、面白そうだからこのまま実験として申請してしまおう。ちなみにO-5宛もあるようだ。異常性のないただのチョコレートなら問題あるまい―ナイア・ルラトホテップ博士

 

実験を承認します―O-5██~██

 

 

+実験記録████-1: /████/02/14

 

 

実験████-1-A:/████/02/14

 

対象: D-█████

 

返した物: D-█████が過去に起こした複数の強盗事件で使用していたオートマグナム

 

関係性: D-█████はSCP-████と接点を持って以来、非常に模範的かつ優秀なDクラス職員です。月末の解雇後、フィールドエージェントとして再雇用が予定されています。

 

物品について: D-█████のオートマグナムは逮捕された事件から今まで、サイト██から████km離れた場所にある証拠物品保管庫に保管されていました。オートマグナムを出現させた方法は現在まで確認されていません。

 

どうやらチョコレートのお返しに悩まなくていいようだな―ナイア・ルラトホテップ博士

 

 

実験████-1-B:/████/02/14

 

対象: ブライト博士及びライツ博士

 

返した物: 《削除済み》

 

関係性: 担当補助研究員

 

お前ら十代の少女へのチョコレートのお返しにポルノやら大人のオモチャを渡すのは倫理的にどうなんだ?―ナイア・ルラトホテップ博士

 

 

実験████-1-C:/████/02/14

 

対象: ●●|●●●●●|●●|●

 

返した物: (´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ.. エージェント██████、███博士、D-████

 

関係性: (ノ'∀')人('∀'ヽ)

 

Σ(゜ロ゜;)!!―ナイア・ルラトホテップ博士

 

 

実験████-1-D:/████/02/14

 

対象: SCP-076

 

返した物:ブレード状の武器

 

関係性: 他のSCPオブジェクトの収容違反時に共闘した事例あり

 

ちなみにチョコレートの味の感想は普通に甘くて美味しいとのこと―ナイア・ルラトホテップ博士

 

 

実験████-1-E:/████/02/14

 

対象: SCP-939-101

 

返した物: 最も長い抜けた牙

 

関係性: 気のおけない女友達

 

相変わらず、SCP-████はどういうわけか他の会話の出来るSCPオブジェクトに襲われることが非常に少ない。しかし、チョコレートを渡すついでにSCP-939-101を抱き枕にして仮眠を取るのは見ているこちらの肝が冷える―ナイア・ルラトホテップ博士

 

 

実験████-1-F:/████/02/14

 

対象: SCP-1004-JP

 

返した物: 使用形跡のある救命胴衣に包まれたアカサンゴ(SCP-████の要望でネックレスに加工しました)

 

関係性: SCP-████が一方的に気に入っている。恐らくSCP-████はSCP-1004-JPの発言に負の感情を抱いていない。

 

アザラシにチョコレートを食わせていいのだろうか?―ナイア・ルラトホテップ博士

 

 

実験████-1-G:/████/02/14

 

対象: SCP-2662

 

返した物: ゲーム、ポケットモンスターの中でぜんこくNo.132であり、HP、こうげき、ぼうぎょ、とくこう、とくぼう、すばやさの個体値が最大値である個体

 

関係性:SCP-2662が愚痴を話せる相手

 

私にも昔はSCP-2662のような時期があったものだ―ナイア・ルラトホテップ博士

 

ナイア博士、記録に虚偽を記載することは禁止されています―O-5██

 

 

実験████-1-H:/████/02/14

 

対象: ナイア・ルラトホテップ博士

 

返した物: 本体である輝く黒い多面体と、それを収める金属製の小箱からなる物体。多面体は、直径約10センチメートル(4インチ)程のほぼ球形の結晶体で、不揃いな大きさの切子面を数多く備えている。また、多面体は箱の内面に触れることなく、金属製の帯と奇妙な形をした七つの支柱によって、箱の中に吊り下げられている。色はほぼ漆黒で、ところどころ赤い線が入っている。箱は不均整な形状をしており、非地球的な生命体を象った奇怪な装飾が施されている。それと熱海旅行のパンフレット。

 

関係性: 担当主任研究員兼サイト管理者

 

ちょっとブライトとライツも連れてSCP-████と4人で温泉旅行に行ってくる―ナイア・ルラトホテップ博士

 

畜生め! 今日は珍しく大人しいと思ったらこれだ! 誰でもいいからアイツらを連れ戻せ!―O-5██

 

 

 

+ アクセスはレベル4以上のクリアランス職員またはナイア・ルラトホテップ博士の承認を受けた職員に限定されます

 

補遺1: 収容の経緯: SCP-████は奇妙な者達と暮らしている少女がいるというネット掲示板の書き込みによって財団の注意を引きました。職員を確認に向かわせたところ対象は8体の異常存在と生活しており、全て財団に記録のあるオブジェクトです。また、内4体に関してはKeterクラスのオブジェクトでした。その中のオブジェクトは人型に限りません。

事態を重く見た財団は収容に財団の機動部隊からなる四個連隊を急遽編成して投入しました。収容に際して財団は半数以上の職員を失うであろうと予測していましたが、SCP-████の状況下にあるアノマリーらは抵抗を見せず、異常性そのものに抵触しようと活性化せなかったため、負傷者すら出さずに再収容されました。

 

 

補遺2: インタビューログ《削除済み》より抜粋、日付██/██/████

 

対象: SCP-████

 

インタビュアー: ナイア・ルラトホテップ博士

 

<記録開始>

 

ナイア博士: 誕生日と出生地、名前を手短に紹介してくれ。

 

SCP-████: わかりました……私の名前は藤丸立香、████の████で████年の██月██日に生まれました。

 

ナイア博士: ありがとう。でははじめの質問、SCiP……もとい君の家に居た方々と暮らし始めたのはいつ頃かね?

 

SCP-████: えーと……はっきり覚えてないけど、たしか7才か8才だったと思います。最初はひとりだけだったんですけど、いつの間にか増えてて、そのまま皆で暮らしてました。

 

ナイア博士: 最初のひとりとは?

 

SCP-████: ████さん(SCP-●●|●●●●●|●●|●)のことです。

 

ナイア博士: ………………少し失礼(ナイア博士はSCP-████の耳を手で塞ぐ)。

 

ナイア博士: 《データ削除済み》

 

SCP-████: ナ、ナイアさん……?

 

ナイア博士: 悪いね。個人的な確認だよ。いやはや興味深い。ところで君はどうやって同居人たちを大人しくさせているのかね?

 

SCP-████: え? 私は頼んだだけですよ? 今日は大人しくしてて欲しいって。

 

<記録終了>

 

分析: SCP-████は何らかの方法によってSCiPの異常性を完全に抑制させることが可能。

 

彼女は今日は大人しくさせていると言っていた。明日、何か起こる前にもう一度8体のオブジェクトらと引き合わせた方が得策だと私は思うね。ましてや半数がKeterクラスオブジェクトだ。妙な意地は張らん方がいいぞ? 勿論、サイトの自爆スイッチに手を掛けながら見守ろうじゃないか―ナイア博士

要請を認めます―O-5█

 

 

 

 

 

++ アクセスはレベル5のクリアランス職員にのみ可能です。

 

 

 

 

 

「ん……?」

 

 そこまで目を通したところでナイア・ルラトホテップ博士は反射的に手元の端末の電源を落とした。

 

 その直後、ナイア博士のいる研究室の中に酷く古い術式が浮かび、そこから見知った顔――子のイブ・ツトゥルが現れた。

 

「へい、母さん。突然だが、セキュリティクリアランスが欲しい」

 

「本当に唐突だな」

 

 そう言いながらもカルデアに来て、ようやくイブ・ツトゥルがSCP財団について知り、関心を持ったということにナイア博士は少しだけ嬉しそうに眉を上げる。

 

「して、理由は?」

 

「暇潰し、後あった方が便利そうだ」

 

「なるほど」

 

 それだけで納得出来る内容ではないだろうと思いきや、悠久の時を生きる邪神にとっては全ての行動原理がそのようなものである。真意はどうあれ、そう言われてしまえば追求も出来ない。

 

「まあ、別に構わないのだが、特に理由もなく部外者に権限を持たせると評議会の連中が後で煩くてな」

 

「母さんは創設者なのにO-5のどれかだったり、もしくは全員が母さんじゃないのか?」

 

「それは無粋と言うものだ。それにO-5評議会は原則的にSCiPと関われんのだよ。私はただサイト管理者として彼らに誠意を持って頼み込むだけさ」

 

 口ではそういっているが、明らかに上の者に向けた態度ではない。寧ろ己の言葉を聞き入れないことなどあり得ないとでも言わんばかりの様子である。

 

「では――」

 

 ナイア博士はとある名簿を取り出し、それをイブ・ツトゥルに見えるように机に置く。

 

「契約といこうか。何大したことはない。たまに外に出たがるトカゲや腐った男等を収容室に叩き返すだけの簡単な仕事さ。お前の得意分野だろう?」

 

「…………書いたら借金背負わされたりしないよな?」

 

「お前は私をなんだと思ってるんだ……」

 

「諸悪の根源」

 

 そう言いながらイブ・ツトゥルは懐からペンを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ぐっさん」

 

 戻って来た俺はぐっさんにカードを渡した。

 

「レ、"レベル4セキュリティクリアランス"……」

 

 母さんから貰ったセキュリティクリアランスカードとやらである。ちゃんとぐっさんのものだ。

 

「ちなみに俺のもあるぞ?」

 

 俺のカードにもぐっさんのモノと同じく、4の番号が大きく印字されていた。それだけではなく、他に3枚のカードがある。

 

「なんでこんなの……」

 

「なんか名前だけでいいから書いておけば特別にくれるっていうから、俺とぐっさんと人魚さんとリップちゃんとついでにフランチェスカの名前書いといた。暇な時に逃げたSCPオブジェクト収容房に戻す仕事を手伝ってくれてもいいとか言ってたな」

 

 それなら貰えるものは貰っておこうという事である。ぐっさんの口振りだとSCP財団とやらは中々楽しそうだしな。

 

「機動部隊の仕事じゃない。何に書いたの……?」

 

「"Ω-7´"とかいう奴の名簿」

 

「は…………?」

 

 この後、無茶苦茶怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………(つーん)』

 

 食堂から戻って来た人魚さんが試食会があったと言うことを知り、拗ねてしまった。アクアを抱えて、頬を膨らませたままそっぽを向いている。

 

「おーい、人魚さーん……」

 

『………………(ぷいっ)』

 

 顔を合わせると別の方向へ背ける。膨らんだ頬を指でつついてみるがまるで反応がない。モチモチして柔らかい頬っぺがあるだけである。

 

 ………………おやつをたかりに行ってたのは人魚さんなんだけどなぁ……。

 

『………………(ガブガブ)』

 

「痛い痛い」

 

 思っていることが読み取られたかのように人魚さんは指を齧ってきた。

 

『………………』

 

 これは堪らないので人魚さんを撫でることにシフトすると、人魚さんは器用にも頬を膨らませたまま目を細めていた。猫かな人魚さんは?

 

 とりあえず人魚さんのご機嫌を取るために背中から抱き締める。

 

『Aaaaa――……』

 

 すると人魚さんはちょっとだけ機嫌を直したようで声を上げ、身を寄せて密着してきた。その表情は嬉しそうに緩んでおり、見ているだけでこちらも幸せな気分になる。

 

 なんか俺すっかり人魚さんと番いになったなぁ、子供もいるし。

 

 これが外堀から埋められると言うべきか、気づいたらこうなっていたと言うべきか。とりあえず、俺は人魚さんが許してくれるまでそのままそうしていることにした。

 

 

 

 








FGOの主人公がSCP財団のある世界線にいたら収容されていないわけがないんだよなぁ……("100の人格を持つ山の翁を全ての心を掴む"、"人間への怨みで復讐者へと至った狼を手懐ける"、"悪のカリスマである教授にとって大切な者となる"、"人類全ての欲を従える"等を見ながら)





Anomalousアイテム一覧-JP - SCP財団
http://ja.scp-wiki.net/log-of-anomalous-items-jp

切った葉を人間が可食なものの上に乗せると、男性の低い声で「おれはパセリ……」と呟く音声を発する、ニンジンの一種。


SCP-2521
オブジェクトクラス: Keter
http://ja.scp-wiki.net/scp-2521
Keterに分類される人型オブジェクト。身長は約2.25m。 頭部には毛らしきものが生えている。両手に数本で構成される触手を持ち、粘性の強い粘液で物を掴む。細かい動作も可能。壁をすり抜ける異常性を持つため、収容はほぼ不可能だが、性格自体は非常に温厚で、こちらからSCP-2521を言語によって言及しない限り基本的に何もしてこない。だが、言及してしまえば即座に瞬間移動し、媒体であれ人であれ連れ去ってしまう。連れ去られたモノは現在まで発見されていない。絵は言語と認識していないらしく情報を伝えることが出来る。500文字以内でSCPを作るというコンテストで、1文字も文字を使わないというとんでもない発想で優勝した怪作である。


SCP-076
オブジェクトクラス: Keter
http://ja.scp-wiki.net/scp-076
さわやか


SCP-939
オブジェクトクラス: Keter
http://ja.scp-wiki.net/scp-939
分かりやすく例えるとバイオハザードのゲームで出て来るリッカーのような見た目の生物。人間だけを捕食することに加えて、人間の声真似をすることも可能。しかし、食事としてではなく、捕食した側から吐き戻していく。どのように生きているのか不明だが、繁殖も可能。幼体は人間と全く同じ姿をしており、時が立つと本来の姿に戻る。SCP-939の繁殖に出るSCP-939-101の名前はKeterちゃんである。


SCP-1004-JP
オブジェクトクラス: Keter
http://ja.scp-wiki.net/scp-1004-jp
人間に対して殺意を抱いたKeterクラスの恐ろしい海豹


SCP-2662
オブジェクトクラス: Keter
http://ja.scp-wiki.net/scp-2662
まだギリギリ青年の神話生物



~機動部隊Ω-7´ 期待の新人~


イブ・ツトゥル 暫定 Keter
人型実体でも埋葬機関で数百年務める底知れない女性。少なくとも街ひとつを有機物のない土地に変えることが可能。幻夢境にいる本体の方は更に不明。


パッションリップ 暫定 Keter
何よりもの異常性としてトラッシュ&クラッシュ――掴んだ相手を距離を無視してしまっちゃえる危険極まりない女の子。ちなみにSCP-2501 "鉤爪"というものが、トラッシュ&クラッシュのダウングレードバージョンのようなものだったりするので、財団に嬉しくない上位交換の存在である。


虞美人 暫定 Keter
星の触覚。中国産の真祖。なんだかそれだけ言うと爆発しそうだが、よく考えなくても宝具撃つ度に爆発しているので、やはりぐっさんは中国産なのだろう。生きて動いて勝手に爆発する核弾頭のようなもの。


フランチェスカ 暫定 Euclid
異常性が未知数なので、オブジェクトクラス分けに則ってとりあえずEuclid。しかし、金太郎飴のような不死性と、フランソワの方で大規模な現実改編に限りなく近い幻覚効果を持つ宝具を持つため、コイツはコイツで中々である。


人魚さん 暫定 Apollyon
90mの方はあくまでもケイオスタイドで作られた仮初めの実体であり、本体は体長7400万km2。また、死の概念が存在せず、SCPオブジェクト特有の不壊特性並みにダメージも受け付けず、更に生命の海は虚数空間のため内部が四次元ポケットであり、止めに生命の海に取り込んだ対象を強化した上で自身の駒に変える。おまけにラフムも出せる。文字通り、SCPでもここまでのモノはあまり見掛けないぐらい、ぼくのかんがえたさいきょうのえすしーぴー。
※ちなみにSCP-2317が立った時の高さが200万kmである。どないせいっちゅーねんこんなん。神が力を失う冥府に叩き落として、死の概念を付与して、ケイオスタイドを無効化してようやく倒せるのも納得である。真面目に戦わせたらApollyon過ぎるため、この小説では基本的にマスコットか、配下が戦うに留まる。
・Apollyon
世界を滅ぼせる力を持つうえに確保も収容も保護も出来ず、プロトコルすら組めないという"手遅れ"系オブジェクトにつけられる。


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